【SS】ここだけ牢屋に監禁され続けたサンジの世界 part5

  • 1123/02/20(月) 21:00:08
  • 2123/02/20(月) 21:00:41

    このスレのサンジの設定
    ・身長165cm
    ・髪型はソラさんと同じ
    ・父親と兄弟への反発と母と同じ名前をした海の戦士ソラに憧れているため争いごとが嫌い

    ロボット(ニスロク)
    ・全身真っ黒
    ・頭の形は鉄仮面
    ・ルナーリア族みたいに背中に翼と炎がある
    ・黒い歯車が浮いてる

  • 3123/02/20(月) 21:01:07

    イメージ

  • 4123/02/20(月) 21:01:31
  • 5123/02/20(月) 21:03:09

    【4日目】

    「おれ、サニー号に乗れるんだな」
    晴れ渡った青空の下、ルフィ達は身支度を整えてドッグから出したサニー号の前に立っていた。
    オレンジ色をした船首を感慨深げに眺めてサンジが呟く。
    その様子をウソップとフランキーが嬉しそうに見つめている。
    「おい、チビナス」
    呼びかけられた声に振り向くと、ゼフは手に何かを持って立っていた。
    脚には適切に処置が施され、ローが処方した解熱剤や痛み止めがよく効いているらしくゼフはなんでもないような風で立っていた。
    「おれはたくさん持ってるからな、お前が使え」
    そうぶっきらぼうに言ってゼフは手に持っていたものをサンジに手渡した。
    「これ、包丁?」
    「……おれが使ってたんだ、切れ味は申し分ねェよ」
    「…あ、ありがとう」
    こういうことには慣れていない。
    ごにょごにょとお礼を言って、ゼフの手から包みを受け取る。
    なんだか照れ臭くてサンジはゼフとうまく目を合わせることができなかった。
    ゼフも視線を逸らす。
    ポンと大きな手のひらでサンジの頭を撫でるとゼフはそれ以上何も言わなかった。
    ゼフ達が隣の船に乗りこむのを見送り、サンジもサニー号に乗り込もうと歩き出した。

  • 6123/02/20(月) 21:09:46

    「サンジ」
    サンジの背中に声がかかる。
    ーレイジュだ。
    「………いつか、オールブルーを見つけたあなたの料理を食べにいくわ。その頃にはあなたも私も父上ぐらいの歳になっているかもしれないけれど。………それまでに腕、上げとくのよ」
    少し回りくどい言い方にサンジは苦笑した。
    レイジュは素直なようで素直じゃない。
    いつもやさしい嘘をつく。
    お母さんもそうだった。
    それに何度も救われたから今も夢を見続けられているのだ。
    レイジュが話してくれる海の話はいつも平和なものだった。
    でも、それはきっと本当の話ではない。
    レイジュ達は戦争に行っていたのだから。
    「……うん。レイジュも気をつけて」
    「サンジ、海は広い。あなたの仲間達以外にもやさしい人達はたくさんいるのよ。これから、海に出るときっと傷つくこともたくさんある。それでも、あなたが旅の果てに笑っていることを祈ってる」
    「………うん」
    母とよく似たレイジュの瞳をしばらく見つめる。
    じんわりと瞳に涙が浮かぶのを感じてサンジは慌てて踵を返した。
    ルフィ達に続いてサニー号に乗り込む。

  • 7二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 21:26:02

    立て乙です!
    サンジくんの旅立ちだ…‼︎

  • 8123/02/20(月) 21:36:18

    レイジュが渡してくれた黒い革靴で踏みしめた芝生はなんだか暖かかった。
    横を見るとゼフが欄干に腕を置き、こちらを見ているのが見えた。
    ちょいちょいと先ほどサンジの頭を撫でた手がこちらを手招く。
    「おい、サンジ」
    名前を呼ばれてドキリとする。
    正確には名前を呼ばれたからと言うよりも、自分の名前を紡いだゼフの声がとても穏やかだったからだ。
    持っていた鞄がどさりとその場に落ちる。
    よろよろとゼフとの距離を縮めるために歩を進める。
    「ハッ、なんだテメェその面は」
    ゼフが心底おもしろそうにカラカラと笑った。
    「……サンジ、カゼひくなよ」
    凪いだ海にゼフの言葉が優しく響く。
    短い、けれど確かに愛情の籠ったその言葉にサンジはすでに滲んでいた涙が瞳から溢れていくのを感じた。
    子どもみたいに大粒の涙がこぼれ落ちていって恥ずかしい。
    けれど、それよりもゼフの言葉が嬉しかった。
    「おい、泣くなよチビナス。すぐに電伝虫で連絡取るんだ、忘れてねェだろうな」
    「ッ…もちろん!!おれは海の一流料理人になるんだ。そして、オールブルーを見つける。その時にはオーナーゼフ、あなたにも来て欲しい。奇跡の海に!!」
    強い決意が現れたサンジの表情にゼフは眩しい宝石を見るように瞳を細める。
    夢を託せる者がいることは幸せなことだろう。
    幾度となく奪うことを繰り返してきた人生の中で、そんな自分を慕う者に出会えた。

    ーーガキは嫌いだ。
    ーーだが、たまにはガキに夢を見るのも悪くはない。

    「あぁ、行くさ」
    ゼフの言葉にサンジは深く頭を下げた。
    それを見てゼフは船内へと入っていく。
    今度こそ2人の間にそれ以上の言葉はなかった。
    だが最後ではないのだ。
    いずれ、夢を叶えたら再び会える。

  • 9123/02/20(月) 21:58:03

    サニー号はナミの合図で海へと帆を進めた。
    ゼフ達の乗った船はサニー号とは別の方向へと進路を取っている。
    ゼフとパティ、そしてカルネは東の海にレストランを開業するらしい。
    マロージュ達もその道中でそれぞれ目的の場所があると言っていた。
    大きな電伝虫が遠ざかっていく。
    レイジュは最後までサンジのことを見送り続けていた。

    ふわりと蝶がサンジの目の前に現れる。
    懐かしいその気配にサンジはゆっくりと手を差し伸べた。
    蝶は美しい翅を畳むとサンジの指に止まる。
    そうして僅かに翅を揺らすと、再びその翅を広げどこまでも青い空の向こうへと飛び立っていった。

    「サンジーー!!」
    「うわっ!」
    びよんと伸びた腕がぐるりとサンジに巻き付く。
    そのままサンジの体は船首へと飛んでいった。
    「ちょっとルフィ!!サンジ君まだ体調万全じゃないんだから、無理させないのよ!」
    腰に手を当てたナミがみかん畑から声をかけた。
    「ニシシ!わりぃわりぃ」

  • 10123/02/20(月) 22:01:32

    よっと、と声をあげルフィはサンジを船首に座らせた。
    「サニー、新しい仲間のサンジだぞ」
    そう言うとルフィはサニーの頭を数度撫でた。
    「サンジも撫でてやってくれ、サニーのこと」
    太陽のような笑顔がサンジへと向く。
    そろりと手を出すとサンジはゆっくりとサニーの頭を撫でた。
    太陽の光に当たったサニーはとても暖かい。
    潮の匂いに混じって柔らかな木の匂いがした。
    フランキーが言っていた特別な木の匂いだろうか。
    確か、すごく強い木だと言っていた。だからサニー号はどんな嵐にだって耐えられるのだと。
    もう一度詳しく聞いておきたいなとサンジは思った。
    これからずっと乗ることになるであろう船のことを。

    ぐぎゅるるると豪快な音が隣から聞こえた。
    「なぁ、サンジおれ腹減った」
    「……ははっ!!了解、船長」
    派手な音を立てて鳴ったルフィの腹にサンジは思わず吹き出す。
    自力で船首から甲板へと戻ろうとしたサンジを軽々と抱え上げてルフィが芝生へと着地した。

  • 11123/02/20(月) 22:05:02

    「おーい!!おまえら、サンジがメシ作ってくれるってよ!!」
    元気のいいルフィの声に近くにいたウソップがあんぐりと口を開ける。
    「ル、ルフィがメシをおれたちにも勧めただと…!?」
    他の船員も珍しいものを見るようにルフィを見つめる。
    その視線を受けてルフィは口をへの字に曲げた。
    「おれだってそれぐらいするぞ!!おまえら失敬だな!!それに、サンジが初めておれの船でメシを作るんだ。普段はあんま気にしねェけど、これも記念ってやつだろ」
    「そうね、確かにとっても大切な記念日だわ」
    ふふと穏やかにロビンが笑う。
    「鍵付き冷蔵庫、今の暗証番号教えるから今度からはサンジ君が好きな番号にしていいわよ」
    「記念日なら、うめェ酒が飲みてェな。この前ワノ国で買ったやつ開けるか」
    「お前1人で飲み干すなよ、ゾロ」
    顎に手を当ててそう言ったゾロにフランキーが茶化すように声をかける。
    「んじゃ、おれは夜の宴会のために魚でも釣るかなァ!」
    近くにあった釣竿を手にしてウソップが笑う。
    「サンジ、料理作る前にもう一回診察してもいいか?」
    「もちろん。じゃあ終わったらまずわたあめ作ろうかな」
    「えーー!!!ほんとか!!!」
    ぴょんぴょんと跳ねながら医務室へと向かったチョッパーの後を笑みを浮かべたサンジが追いかける。
    「サンジー!!おれ、肉!!肉食いてェ!!」
    「分かった!!」
    ルフィの言葉にひらりと手を振って答えるとサンジは扉の中へと入っていった。
    「よっしゃあー!肉だーー!!」


    「ヨホホホホホ!!また一段と賑やかになりそうですね」
    「わっはは!あぁ、全くじゃ!!」
    ルフィ達の明るい声を風に乗せて、サニー号は次なる目的地へと帆を進めた。

  • 12123/02/20(月) 22:14:02

    ジューと肉の焼ける音と香ばしい匂いが漂ってくる。
    扉を開けた先には青いリボンで髪を一括りにした青年がいた。

    「おはよう!」
    扉を開いた仲間に明るい笑顔を見せ、サンジはちょうど出来上がったコーヒーを注ぐ。
    先に渡したコップから水を飲み干した仲間が机に座るのを見計らって湯気の立ち上るカップを置く。
    コトリと机に置かれたカップからはやさしい匂いが溢れている。
    「今日のメシも最高にうまいぞ!!」
    新しくクソジジイから教えってもらったやつなんだ。
    そうサンジは嬉しげに語った。
    何があったのかいつの間にかゼフのことを"クソジジイ"と呼ぶようになっていたが、それが愛ある呼び方であることは皆が知っていた。
    そう呼ぶサンジの声がいつも明るく嬉しいという感情を全く隠しきれていないからだ。
    ゼフの言葉を語るサンジを見ながら、口元を緩めた。
    まだ自分たちのようには活動してすることはできないが、だいぶ体調も回復してきている。
    コーヒーを口に含むと、扉の向こうからドタバタと足音が聞こえ始めた。
    今日も賑やかな冒険が始まりそうだ。




    終わり

  • 13123/02/20(月) 22:20:32

    感想や神ssそれに神イラスト、たくさんのイメソンをありがとうございました!!
    とても励みになりました

  • 14二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 22:26:09

    >>13

    完結お疲れ様でした…‼︎

    フィルムブルーのサンジくんがとても愛しくて毎回楽しみに読んでおりました!

    素敵なお話をありがとうございます

    支部に上がるのも楽しみにしてます

  • 15123/02/20(月) 22:29:30

    REDの終わり方に近いifのifendはまとめて投稿する際に支部に投稿します
    できるだけ早めに誤字脱字修正します!!


    このスレを立ててすぐで申し訳なさすぎるんですが以降はssの更新はありません
    落ちるまで管理はします!質問がもしあればそちらにも答えます

  • 16123/02/20(月) 22:29:43

    改めて亀更新のssにお付き合い頂き本当にありがとうございました!!!

  • 17123/02/20(月) 22:40:19

    ちなみに最後のシーンに出てこなかったロー達ハートの海賊団は夜のうちに原作通り麦わらの一味との同盟を解消して出航してます

  • 18二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 22:52:35

    今までずっとromってましたが終わりを見届けられて感無量です!素敵なSSをありがとう!

  • 19二次元好きの匿名さん23/02/21(火) 09:55:01

    面白かったー
    辛そうなのは苦手だからって食わず嫌いしないでもっと早く参加したかった…

  • 20二次元好きの匿名さん23/02/21(火) 10:20:51

    最後のシーンで青いリボンをつけたサンジと会話してる相手を明確に描写しないのがすごく素敵……

  • 21二次元好きの匿名さん23/02/21(火) 19:27:12

    保寿

  • 22二次元好きの匿名さん23/02/21(火) 19:32:24

    ここまでおつかれさまでした!!
    こんな素敵なssをありがとうございます!!!!!!!!

  • 23二次元好きの匿名さん23/02/21(火) 23:55:56

    romでしたが最後まで見届けられてよかったです!
    感動的なSSをありがとうございます!!!

  • 24二次元好きの匿名さん23/02/22(水) 09:03:34

    読みやすくて頭に入ってくる文章に
    難しいここだけ系なのにキャラ描写がしっかりしてて一気に読破しちゃった
    完結乙です

  • 25二次元好きの匿名さん23/02/22(水) 17:22:55

    この世界線のサンジ、とある一家の紅茶会議とか神が愛した天使魚とかの曲似合いそうだなぁ。

  • 26二次元好きの匿名さん23/02/22(水) 23:13:25

    今日このスレを見つけて、Part1から一気に最後まで読みきってしまいました…!!登場人物みんなの掛け合いや空気感が面白くて、ストーリーにワクワクドキドキして、本当に1本の映画を見させていただいたかのようでした!!完結お疲れ様です、神SSをありがとうございました!!!!

  • 27二次元好きの匿名さん23/02/23(木) 08:20:21

    休みだから読み返す

  • 28二次元好きの匿名さん23/02/23(木) 16:36:15

    イイハナシダッタナー
    ありがとう

  • 29二次元好きの匿名さん23/02/23(木) 16:54:06

    このレスは削除されています

  • 30二次元好きの匿名さん23/02/23(木) 21:23:58

    時間ある時に定期的に読み返してるけどこのサンジくんほんと好きだからサニー号に乗ってくれてよかった

  • 31二次元好きの匿名さん23/02/23(木) 22:55:26

    今読み切って追いついた!素敵なSSを本当にありがとう!
    ifサンジが違和感なく、一味もかっこよくて素晴らしかった!

  • 32二次元好きの匿名さん23/02/24(金) 07:52:32

    昨日の休みに一気読みした
    情景浮かぶ文章でキャラ崩壊しがちなifものなのにエミュ上手くて面白かった

  • 33二次元好きの匿名さん23/02/24(金) 16:58:07

    完結お疲れさまでした

  • 34二次元好きの匿名さん23/02/24(金) 17:45:15

    完結お疲れ様です!読んでいてとてもサンジ愛が伝わりました!

  • 35二次元好きの匿名さん23/02/24(金) 17:59:28

    完結おめでとうございます!!
    面白かった〜〜!

  • 36二次元好きの匿名さん23/02/24(金) 22:13:13

    何回読んでも最高なifSSシリーズで好き

  • 37123/02/25(土) 09:43:13

    たくさんの感想ありがとうございます!
    まだ投稿できる目処は立っていないのですが、支部には『FILM BLUE』というタイトルで投稿します
    多分スレ主がまとめ終わる前にスレ落ちるので先にタイトル書いておきます

  • 38二次元好きの匿名さん23/02/25(土) 19:16:47

    >>37

    まとめ楽しみにしてます

    ありがとう!

  • 39二次元好きの匿名さん23/02/25(土) 22:06:09

    >>37

    報告ありがとうございます!

    まとめ楽しみにしております

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