孤児院を訪問するアドマイヤベガ

  • 1◆dOdssBd8Q623/02/26(日) 20:53:38

    「こんにちは」
    トーマスとギャバンを戦わせていた男の子が、不思議そうな顔でこちらを見つめた。
    「お姉さんのこと、知ってる?」
    「しらない」
    「覚えてないか……もう三年半は経つものね」
    男の子は、なおも変わらない顔でこちらを見ている。
    普段、この子の周りの大人と言えば見知った職員ばかりでしょうから、いきなり知らない女の人に話しかけたらこうもなるわね。
    近頃は三冠ウマ娘としてテレビに出ることは増えてきたけど、こういう世代の子の印象には残りにくいでしょうし。
    「アドマイヤベガさーん!手続きの準備が整いましたのでこちらへ」
    「はい!……じゃあ、また後でね」
    男の子の頭を撫でて、私はその場を後にした。

    「家事は?」
    「ひとしきり、できるようにして来ました」
    「貯蓄のほうは?」
    「レースの賞金は使わないできたので、だいたい…このくらい」
    「安定したご収入は?」
    「三冠ウマ娘としての仕事があるので、しばらくは安定していると思います」
    「本当に、意思は変わりませんか?」
    「はい。変わりはありません」
    「そうですか……」
    職員さんの顔に陰ができた。
    「正直、引き取り手としては申し分ないのですが、それでもあなたにあの子を引き取らせるのは気が引けます」
    ……理由は、だいたい推測できた。
    「あなたは、一度あの子を誘拐したことがあります」

  • 2◆dOdssBd8Q623/02/26(日) 20:54:00

    あの男の子は元々、カレンさんのトレーナーさんの子供だった。
    トレーナーさんのことが好きだったカレンさんは、愛する人に妻子がいたことで脳がパンクし、当時赤ちゃんだった子供を持ち帰るという奇行に走ってしまった。
    タオルケットの上に赤ちゃんを乗せるという、骨盤とかを一切考えていないカレンさんの行動に怒った私は、赤ちゃんを取り上げ、寝具や服、おもちゃも厳選し、四六時中赤ちゃんの世話をした。
    最初は、問題になる前に元の親の元へ帰そうと思っていた。
    けど、世話をしているうちに、赤ちゃんはどんどん可愛く見えてきて、あと一日、あと一日だけと、帰すまでの日取りは伸び、私の赤ちゃんへの執着はどんどん深くなっていった。
    結果的に、学園の手が入って赤ちゃんは帰されるという形になって、事件は落ち着いた。
    落ち着いたはずだった。
    けど、そこから数年後、男の子の両親、カレンさんのトレーナーさんが交通事故で亡くなるという事件があった。
    カレンさんは、今も心を塞ぎこんでいる。
    そして私は、私は、真っ先にあの子のことを思い出していた。
    「きっちり、更生してきたつもりです。あの子の母親として恥じない人間となってきたつもりです。それでもと、判断なされるのなら、私はそれに従います」
    「………………」

  • 3◆dOdssBd8Q623/02/26(日) 20:54:14

    ごめんダイス振っていい?

  • 4二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 20:54:33

    どうぞ

  • 5二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 20:55:47

    競馬で孤児院訪問というと和田竜二


    つまりオペが浮かぶんだがアヤベさんか

  • 6◆dOdssBd8Q623/02/26(日) 20:57:23

    「今回、当施設としましては、あなたの孤児引き取りを」

    dice1d2=1 (1)

    1 認めます

    2 認めません

  • 7◆dOdssBd8Q623/02/26(日) 21:15:20

    「………認めましょう」
    「本当ですか!?」
    「あの子に再開した時の、あなたを見ていました。成長したあの子を見てどう思ったか、を。それで感じました。あなたの愛は、本物であると。そして、もう昔のあなたではないと」
    「ありがとう………ございますっ………!」
    気づいたら、私は泣いていた。
    あの子を帰してから、私はそこで溜まった感情を全てレースにぶつけた。
    いつかあの子に会えるように。
    そして今、その努力が、長い時間を経て実を結んだ気がした。

    「おねえちゃん、だあれ?」
    「アドマイヤベガ。アドマイヤベガっていうの」
    「あどわいやべが?」
    「そう。そして、あなたの新しいママよ」
    「ママなの?」
    「そう。覚えてる?私、ちょっとだけあなたのママをしていた時があったのよ」
    「しらない」
    「覚えててくれなくてもいいわ。これから、いっぱい思い出を作っていけばいいから」
    「おもいで?あたらしいママとのおもいで?」
    「そう、新しいママとの、私との思い出。だから、私、あなたのママになってもいい?」
    「……いいよ!」
    「……ありがとう、私をママにしてくれて」

  • 8◆dOdssBd8Q623/02/26(日) 21:16:00

    完です
    双子関係のエピソード盛れなかったのが心残り

  • 9二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 21:16:22

    お疲れ様

  • 10二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 21:16:46

    アドマイヤコジインってネタかと思ったらすごくまともだった

  • 11二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 21:19:56

    これなんか過去作なかった?誘拐したアヤベさんってなんか見覚えあるんだが

  • 12二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 21:21:51

    カレンは結局塞ぎ込んだままか…

  • 13二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 21:23:10

    乙です
    ただ1点だけ、カレンチャンがカワイくない行為をやらかすのは大きな解釈違いなので
    できればスレタイに閲覧注意と入れてほしかったです

  • 14◆dOdssBd8Q623/02/26(日) 21:23:18
  • 15◆dOdssBd8Q623/02/26(日) 21:23:59

    >>13

    以後気をつけます

  • 16二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 21:32:34

    >>12

    お兄ちゃんも死んだままだしな…

  • 17二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 23:12:45

    >>16

    いやお兄ちゃん死んでも生き返る系男子じゃねぇから

  • 18二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 23:15:49

    しれっと三冠取ってるの怖い

  • 19二次元好きの匿名さん23/02/27(月) 09:37:35

    >>18

    育成シナリオ的に不可能ではないからね

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