- 1二次元好きの匿名さん23/03/16(木) 19:35:49
- 21/623/03/16(木) 19:36:04
──昼休憩 教室──
「ナカヤマー、アッキュートさーん!」
「おやジョーダンちゃん、今日も元気いっぱいねぇ? そんないきおいよくやってきて、どうしたのかしら? 声楽の補助教材でも忘れちゃったのかい?」
「えっヤバなんかいるのあったっけ?! 5限っしょ?!」
「そうそう。指定の楽譜のコピー教材を持ってきてね、って……」
「ジョーダン、そうじゃねぇだろうが……」
「おや? そうじゃない。って、なぁに? ナカヤマちゃん」
「え待って待って楽譜のことすっかり忘れてたんだけど……ヤバ、めっちゃガミられるやつじゃん……、あ、アキュートさん……!」
「はいはい、うっかり忘れちゃった子のために、予備も持ってきてるからねぇ。好きなのをえらんでちょうだい?」
「アキュートさんマジ女神すぎん? カミりすぎじゃん……えーどの曲にしよう。唄えるやつ……ってそうじゃなくてさ! アキュートさんっ!」
「はいはい? なぁに?」
「ハピおめ~~! 今日はアキュートさんのお誕生日っしょ? プレゼント、持ってきたし!」
「あらあら……!」
「誕生日おめでとう。……ま、見てる限り朝から祝われまくってたからな、とうに聞き飽きてるかもしれんがね?」
「もう、ナカヤマちゃんたら、聞きあきる、なんてこと、あるわけないでしょう? ……ふたりとも、お祝いのことば、ありがとうねぇ?」 - 32/623/03/16(木) 19:36:52
「アキュートさんいろんな子に好かれてるもんね? リッキーちゃんやタルマエちゃんみたいな後輩にも、ファル子さんやウインディさんとかにも」
「ふふふ、みんながあたしにやさしくしてくれているだけよぉ。慕ってくれていて、とってもうれしいのよ。ジョーダンちゃんやナカヤマちゃんも、いつもあたしにやさしくしてくれて、ありがとうねぇ」
「アキュートさんがやさしーから、みんなアキュートさんにやさしくしたくなるんだって。ね、ナカヤマ」
「さてね。……ところでジョーダン、プレゼント渡さなくていいのかい? 楽譜借りるためにわざわざ飛び込んてきたんじゃなかろうが。ぐずぐずしてると休憩時間か終わっちまうぞ?」
「それなーわかってるし。はい、アキュートさん、あたしからのプレゼントはこちらでーす! ほかの子とかぶってないといいんだけど」
「わぁ、ありがとうねぇ。いま開けてみてもいいかしら?」
「もちろん! あたしなりに? よろこんでもらえるよーなのえらんだつもり」
「きっと中身がなにでも嬉しいわ。選んでくれたのがジョーダンちゃんだもの」
「……アキュート、アンタ本当に丁寧に開けるな。包装紙も取っとくのか?」
「ええ、そのつもりじゃよ~。包装紙も選んでくれる子が多いでしょう?」
「お店で包んでもらうときこんなかからえらんでーって言われるもんね? あたしもさぁ、包装紙どれにしようか迷ったんだけどさー、お花の柄とかアキュートさん似合いそうじゃん? あとピンク系はイメージだし? でもたぶんそーゆー包装えらんでくる子多いだろうなって思ったから、あえてのミントグリーンにしたった! でもぱきっとした色じゃなくてやさしい色だから、ぴったりじゃね?」
「見てた限りだと確かにピンク系は多かったな。コパノあたりは風水に準じた包装紙だったが……」
「みーんならぶりーな包装紙をえらんでくれて、あたしはしあわせねぇ」
「ナカヤマめっちゃ見てんじゃん。ウケる。後方勢かなんか? でも包装紙とっといてなにに使うん? 宝物みたいにしまっとくの? あたしはどんなにきれいに開けようとしてもすぐ破いちゃう……」
「ああいうのは全部指だけでやろうとすると見るも無残になるんだ。カッターナイフでも使えばまた違うだろ。道具を使え道具を」 - 43/623/03/16(木) 19:37:45
「……なんでカッターナイフ使ってないのわかったし!」
「ふふふ、さすがにしまっておくだけだとかさばってしまうからねぇ、手のひらくらいのサイズ正方形に切ってね、一枚だけのこして、あとはメモ帳にするのよ。ファンの方からもらったプレゼントの包装紙も、そうしてるんじゃよ」
「相変わらず丁寧なことで」
「すごーい。でもそうやって使ってるって聞いたらファンの子たちもよろこびそー。あれでも、……残した1枚はなにに使うの? 」
「そうねぇ……ジョーダンちゃん、ナカヤマちゃん、なにに使うと思う? 当ててくれたほうにいいものあげちゃおうかしら」
「クイズ?! えっえっなんだろ、なんだと思うナカヤマ」
「当てたほうにってことはお互い敵同士だろうが。……ま、考えられるとしたらコレクションじゃねぇか?」
「コレクション? あ、プリ帳みたいな? 印刷した写真、アルバムにしまうみたいな?」
「そうねぇ、九割がた正解、かしら……でももうちょっと、もうちょっとじゃよ~。ヒントは~日記帳。あたしねぇ、毎日日記を書いているの。ぶろぐ、とかじゃなくて、紙の日記なのだけど……。あ、ナカヤマちゃんはぴんときたお顔ねぇ?」
「寧ろほぼ正解言ってるようなもんじゃねぇか。ジョーダン、回答権をやるよ。当ててみろ」
「えっ?! 日記帳に貼るだけじゃないんだよね?! ってことはー、……プレゼントの記録をとってる、ってこと?」
「ぴんぽんぴんぽんおおあたり、じゃねぇ。どんなものをいただいたか、そのときなにを感じたか、をのこしているのよ。いただいたときのきもちも、贈り物のひとつだからねぇ。正解者のふたりには、特製のクッキーをぷれぜんとしちゃおうねぇ。おやつのたいみんぐにでも、食べてね」
「わ、やった! アキュートさんありがと! アキュートさんのクッキー、ほくほくしてていつもおいしーんだよね」
「はい、ナカヤマちゃんももらってくれるかい?」
「回答したのはジョーダンだろ?」 - 54/623/03/16(木) 19:38:15
「ふふ、クイズは建前なの。お祝いしてくれたひとにね、ありがとうのきもちをこめて、作ってきたのよ。ナカヤマちゃんのはちゃあんと甘さ控えめにしてるから、安心してちょうだいね?」
「……へーへー。んじゃ、有難く頂くさ。用意周到にも程があるだろうが」
「それは褒め言葉になるのかしらねぇ? さて、ジョーダンちゃんのぷれぜんと、おーぷんじゃよ~! ……あら……!」
「へへ、どうどうっ?! キッチンミトンと、エプロンと、鍋しきのセットでーす! 包装紙といっしょのグリーンにしてみたった! ぜってー似合うと思って! ほら、当ててみてよ」
「ふふ、どう? 似合うかしら……」
「これね、腰のとこにギャザーがあってね、そこからAラインにふわーって広がんの。でねでね、後ろもクロスになっててさ、めちゃくちゃかわいいの! あ、でもポケットとかも大きくて汚れも落ちやすいってお店の人言ってた! ミトンと鍋しきもデザインがオソロなの。……ね、ナカヤマ、よくね? あたしのセンス……」
「……よく似合ってんじゃねぇか?」
「言い方テキトーすぎん?! あとなんでちょっと考えたし」
「ジョーダンちゃん、すてきなぷれぜんと、ありがとうねぇ? ちょうど、エプロンを新しくしようと思っていたところだったんじゃよ。さっそく今日から使わせてもらうわね」
「アキュートさんがよろこんでくれてよかった! あらためて、お誕生日おめでとう、アキュートさん! ……で、ナカヤマ」
「……なんだよ」
「ぐずぐずしてると昼休憩終わっちゃうよ? ほらほら~???」
「あら、もしかして、ナカヤマちゃんも、なにか用意してくれてるのかい?」
「……お返し用意しておいて言うせりふかい? ったくしらばっくれやがって……」
「ふふふ、ナカヤマちゃんが用意してくれてないなんて、思ってないもの」 - 65/623/03/16(木) 19:38:46
「随分と信頼されてんだな、私は。……ご期待に添えるかは知らんが、私からはこれを」
「なんかいま重い音しなかった? ごとって」
「ご推察通り重いものだからな。……が、ただでやるわけにはいかねぇ。そのくらいわかってんだろ? アキュート」
「えぇ、もちろんよ? ナカヤマちゃんのぷれぜんとを賭けたひと勝負、でしょう?」
「理解が早くて助かるぜ。勝負内容は──」
「いや勝負せずにあげりゃいいじゃん、誕プレなんだから。つかあたしの誕プレんときもプレゼントの中身当てさせられたけどなんで素直に渡さねーの?」
「……、うるせぇ、外野は黙ってろ」
「外野て。そもそも昼休憩に渡そうって言い出したの、」
「ふふ、ジョーダンちゃん、だいじょうぶよ。今回も中身当てかしら……?」
「いや、今回はコイントスだ。……プレゼントの中身は、菓子作りに重宝するだろうドライフルーツとナッツの瓶詰め。どうだい……魅力的だろ?」
「ジョーダンちゃんがくれたエプロンとミトンと鍋しきで、フルーツケーキでも作りたくなっちゃうわねぇ。ブランデーの香りをきかせたしっとりケーキ……もちろん、ふたりにもおすそ分けしちゃうわよぉ?」
「それが叶うかは勝利の女神の微笑みにかかっているがね。さァ、アキュート、ひと勝負付き合ってもらおうか。コインの表裏は二律背反。そら──、表と裏と、アンタはどちらに運命を賭ける?」
「ふふ……」
「……何笑ってやがる」
「え、もしかしてアキュートさん、いまの一瞬でどっちかわかったの?! どーたいしりょくすごくね?!」 - 76/623/03/16(木) 19:39:31
「ふつう、なら、わかってないと思うのよねぇ。でも……そうねぇ……、それじゃあ、おもて、でどうかしら、ナカヤマちゃん?」
「……チッ……気づいてやがんなら最後まで付き合えってんだ。ほらよ、女神様。アンタの勝利だ。好きなように持ってけ……ったくよ……」
「プレゼント選んでくれて、とおってもうれしいよ、ナカヤマちゃん。ありがたく頂戴するねぇ」
「え? え?? え??? なになに、どーいうこと?? 気づくってなに?」
「いまのは、素直じゃないナカヤマちゃんの言葉あそび、だったのよ。ジョーダンちゃん、あたしのこと、さっき女神って言ってくれたでしょう?」
「え、あ、うん。楽譜の予備貸してくれるアキュートさんマジ女神さま! ……女神さまがなんか関係あんの?」
「あたしが勝つかは勝利の女神さまの微笑みにかかってる。あとは前口上も、かしらねぇ。……かんたんに言うと、あたしが選んたほうが正解、ってことじゃよ。……違ったかしら、ナカヤマちゃん」
「そういう種明かしはタチが悪いぜアキュート……勘弁しろよ」
「え? え?? えーとつまり、勝負でもなんでもなくて、渡すための遠回りな理由がほしかった、って話? で、ナカヤマはそれ見破られたの?」
「見破っちゃったのよねぇ」
「へぇ~、……ねーナカヤマ、ひとつ言っていい?」
「言わんでいい」
「素直じゃなさすぎるくない????」
「言うなって言っただろうがよ。……ハァ……。アキュート」
「なぁに?」 - 87/623/03/16(木) 19:40:18
「誕生日おめでとう」
「ハッピーバースデーっ! アキュートさん!」
「ありがとう、今日ははっぴーな一日になりそうじゃよ!」
おしまい - 9二次元好きの匿名さん23/03/16(木) 19:41:43
- 10二次元好きの匿名さん23/03/16(木) 19:42:40
- 11二次元好きの匿名さん23/03/16(木) 19:45:15
ああ〜わちゃわちゃ09世代が尊いんじゃ〜
- 12二次元好きの匿名さん23/03/16(木) 19:51:15
09世代、1人で勝手に盛り上がってたのでそれを文にしてくれている方がいると思うと…
涙が…。
ジョーダンがプレゼントの説明してる時とか、可愛いナカヤマが素直じゃないのも可愛い - 13二次元好きの匿名さん23/03/16(木) 19:52:37
仲良し三人組シリーズだ!
いつもお疲れ様です、良かったです! - 14二次元好きの匿名さん23/03/16(木) 21:06:10
- 15二次元好きの匿名さん23/03/16(木) 23:48:41
「……かんたんに言うと、あたしが選んたほうが正解、ってことじゃよ。」
これについて追記しておくのですが、コイントスのルールとして、
・コインの表裏をきちんとあらためる必要がある
(こちらが表、こちらが裏、と相互に確認する)
・最初に表裏の宣言をする
というのがあるのですが、一切それをせずナカヤマはコイントスをしています。
このあたり地の文があるとわかりやすかったのですが、このSSのコンセプトは会話文オンリーなので。
そしてナカヤマの「コインの表裏は二律背反」という台詞は、
そもそも表裏をあらためていない(決めていない)からどちらが裏でも表でも、どちらが裏でも表にもなる……みたいなざっくりとしたニュアンスです。
よって、勝負に見せかけて勝負の行方は女神様の微笑み(選択)しだい……ナカヤマ、こういうまどろっこしいことしそうなイメージがあるんですよね。かっこつけなので。 - 16二次元好きの匿名さん23/03/17(金) 07:35:23
シリーズ(?)はちがいますが、
みんなが23年2月にウマカテで楽しんだスレを紹介しあうスレ|あにまん掲示板2周年ですがみなさんいかがお過ごしでしょうか私はトリップ忘れた上にIPが浜で死にました先月https://bbs.animanch.com/board/1547519/去年https://bbs.an…bbs.animanch.comこちらの84にて拙作のご紹介ありがとうございました!
こういうスレッドでのご紹介に預かれるのもめちゃくちゃ嬉しくなります……
- 17二次元好きの匿名さん23/03/17(金) 17:59:40