【SS・CP・閲覧注意】幼少期からウタの匂いを嗅ぐのが好きなルフィ PART9

  • 1二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 23:19:48
  • 2123/03/21(火) 23:20:25
  • 3123/03/21(火) 23:20:51
  • 4123/03/21(火) 23:21:14
  • 5123/03/21(火) 23:21:44
  • 6123/03/21(火) 23:22:13
  • 7123/03/21(火) 23:22:39
  • 8123/03/21(火) 23:23:05
  • 9二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 23:23:46

    もう2年くらいウタの匂いを嗅げてないルフィさんもそろそろ限界ですよ

  • 10二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 23:24:16

    てぇてぇよ、永遠に──

  • 11123/03/21(火) 23:25:28

    ここはウタ限定匂いフェチなルフィと「ルフィならまあいいよ」なウタが嗅ぎつ嗅がれつしたり一緒にお風呂入ったりする文をスレ主がつらつらと投げていくスレです

    前スレで黒ひげが撤退、現実世界で2人きりになったルフィとウタがすごくいい感じになったところで海軍とビッグマムが邪魔しに来ました

  • 12二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 23:27:35

    >>9

    嗅いでなかったっけ?と思って前スレ読み返したら抱きしめたってしか書いてなかった

  • 13123/03/21(火) 23:30:10

    ──────────────────

    〜 五老星の部屋 〜

    「どうなっている!?何故トットムジカが現れた!!」

    「そんな兆候は無かった……ウタウタの実の能力者が禁断の曲を歌わない限りは顕現することはない筈だぞ……!!」

    「まさか赤髪の娘が……海軍に反抗して楽譜に手を出したとでも言うのか!?」

    「しかしそれならば、何故あの娘がトットムジカの存在を知っている?あれが現れた記録など、もう何年も……」

    「ええい、そんなことは後でいい!!アレを野放しにすれば、民衆や海軍への被害は計り知れんぞ!!」

    「かと言ってどうすると言うのだ……あんなものが顕現してしまってはもう……」

    「何とかしてあの娘を眠らせればあるいは……しかし……」


    「……いや待て、何か様子が妙だぞ……?」

  • 14123/03/21(火) 23:34:26

    ───────────────────

    「何だありゃ!?」

    「あれは……!!」


    道化師の如き様相に、ビッグマムを遥かに上回る巨体。

    『異形』としか言い表せない何者かが、エレジアの城よりステージ上に降り立った。

    その頭上で歌い踊るのは、先程自らが決死の覚悟で逃したはずの幼馴染。

    未だ立ち上がれずにいるルフィは、その状況に困惑することしかできずにいた。


    「……ウタ……? 何だ……それ…………?」


    交戦中だった強者達も、皆一様にその異形の『魔王』に視線を奪われる。

    こんなものが暴れ始めればタダでは済まない。事情を知らない者から見てもそれは明らかであり……

    この存在と『トットムジカ』を結び付けられる者からすれば、それは尚更のことだった。

  • 15123/03/21(火) 23:38:35

    「まさか、アレがママの言っていたトットムジカなのか……!?」

    「あ?トットムジカ?」


    「参ったねェ〜……歌姫側にこちらへの敵意はないと聞いてたんで、あんなものを相手にすることも無いと思ってたんだがねェ〜……!」

    「アレが暴れ出せば更に攻撃は激しくなる!!皆さんも再度気ィ引き締めてくださいや!!」


    「ウタ……あいつ、何やって……!?」


    しかし、その場にいるほぼ全員が改めて身構えた中で、例外がただ1人。

    【四皇】ビッグマムは、ようやく現れた自らの獲物に向き合い笑みさえ浮かべていた。


    「マーマママ!!てめェの方から出てきやがるとは!!わざわざ探す手間が省けたよウタ!!

    だがそんなところにいたんじゃ届かないねェ……とりあえずそのデカブツから引き摺り下ろしてやらなきゃな!!


    威国!!!」

  • 16123/03/21(火) 23:42:53

    ゾロとジンベエが2人がかりでようやく跳ね除けた斬撃が、今度はトットムジカに襲いかかる。

    しかし────


    「…………………」ガッ


    ガギィン!!


    「……!」

    「な……」


    ビッグマムの攻撃の直撃を受けたにも関わらず、トットムジカは反動で少し後ろにズレた程度で無傷のままだった。

    これには流石のビッグマムも眉を顰める。防がれることはあれど、自分の攻撃がそもそも効いていないというのは初めての経験だったらしい。


    「ちィ……やはり情報通りウタワールドとの同時攻撃じゃないと通じねェらしいね……

    向こうにいるのはオーブンとブリュレ達だけか……厄介なモンが出て来ちまったみたいだね!!」

  • 17123/03/21(火) 23:47:54

    「…………ウタ……」


    今や遥か上空にいるウタの表情は、ルフィからは見えない。

    ルフィの中に湧き立ち始めた言い知れぬ胸騒ぎをかき消したのは、先程ウタの窮地を救った男の声だった。


    「ルフィ先パーーイ!!!」

    「!」


    城から走って来たバルトロメオが躊躇いなく戦場へ飛び込み、動けないルフィを守るかのように『バリアボール』を展開する。

    それとほぼ同時に、ルフィは何者かによってバリアごとステージの端まで飛ばされた。

    さっきまで自分が倒れていた場所に代わりに立っていたのは、これまた能力を展開したローだった。


    「動けねェなら下がってろ麦わら屋!!馴染み揃って世話の焼ける奴らだ!!」

    「お、交代か?助かるぜ、1人であの怪物の相手は流石にキツいんでな」

    「無駄口叩いてねェで敵を見ろ!!1人でも2人でもアイツにとっちゃ同じだ!!」

  • 18123/03/21(火) 23:51:28

    バリアで身を守りながら戦況を見据えるバルトロメオ。

    その後ろで未だ動けぬルフィだが、笑みを見せる余裕は戻って来た。


    「ロメ男……今日は助けられてばっかだな、ありがとう」

    「お、オォ〜〜…………!!な、何という勿体無いお言葉……!!

    ……ハッ!?いやいやいけねェ、しっかりするべバルトロメオ!お前の仕事は今泣くことじゃ
    ねェべ!」


    忙しなく変わるバルトロメオ表情がピッと切り替わり、真剣そのものの表情になる。

    その雰囲気に何かを察したルフィは、此方もまた真剣な表情を見せた。


    「ルフィ先輩!ウタ様から伝言だべ!」


    「ウタから……?」

  • 19123/03/21(火) 23:55:26

    本日はここまで

    ここまで長くなるとは思わなかったよね

  • 20二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 00:31:17

    >>12

    でも口付け寸前まで行ってるんですよね

  • 21二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 07:02:47

    維持

  • 22二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 16:27:45

    あげとこ

  • 23二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 22:45:57

    保守

  • 24123/03/23(木) 00:04:58

    も少しペースを上げていきたい

  • 25123/03/23(木) 00:05:57

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    数分前──


    「……心配してくれてありがとう。やっぱりゴードンは優しいね。


    …………でも……」

    「………………………」



    「…………やっぱり私、隠れてるだけなんて出来ない」



    「ウタ…………」

    「……本当にごめんなさい。ワガママばっかり言って……

    ……でも……私、ずーっと誰かに守られてばかりで……

    私を守るために誰かが傷つくのを見てるだけだなんて…………もう、嫌なんだ」

  • 26123/03/23(木) 00:08:22

    「……………………」

    「……あの時はまだ、私が弱くて取り込まれちゃったし、今でも言うこと聞いてくれるとは私も思わないけど……

    もしかしたら今なら、暴れさせないことぐらいは出来るかもしれない。

    ゴードンが鍛えてくれた私なら、それぐらいのことは出来るようになってるんじゃないかな……なんて」


    ゴードンの表情からは、その感情を窺い知ることは出来ない。

    何故だかサングラスがその時だけやけに暗く見えて、その奥にある瞳の色は分からない。


    「……別に海軍や海賊をやっつけようってワケじゃないんだ。そんなことしたら折角のルフィの考えが無駄になっちゃうし。

    ただ、ファンのみんなは私が守ってあげたいってだけ。みんなを気にかけながらだと、どうしてもルフィ達は全力で戦えなくなるだろうし……」


    置いてけぼりで首を傾げるロメ男くんの横で、ゴードンは何も言わない。

    こうなったらもう最後まで言ってしまおう。返事を聞くのが少しだけ怖かった。

  • 27123/03/23(木) 00:12:15

    「……あの時の電伝虫の映像、シャンクス達の攻撃がトットムジカに全然効いてなかったんだ。

    12年前の話とは言っても、シャンクス達の攻撃が全然通じないなんて普通じゃ考えられないし……

    ロメ男くんのバリアみたいに、何か仕掛けがあるのかもしれない。何かはわからないけど、それを解かないと攻撃が効かないとか……

    ……そうじゃなかったとしても頑丈なのは間違いないし、だから攻撃はできなくてもみんなの盾にはなれるんじゃないかって……」


    自分でも都合よく考えすぎだと思う。

    12年前に何が起こったかなんて、忘れたくても忘れられないのに。


    ……ゴードンは少しのため息を漏らした後、呟くように一言だけ言った。


    「………………………………………



    ………………私は止めたぞ」

  • 28123/03/23(木) 00:16:08

    「!」

    「……私が何を言おうと、お前の心はもう決まっているんだろう。

    ……ならばもう、お前の好きにすればいい」

    「……ゴードン…………」


    いつになく冷たい、突き放すような言い方。

    ……やっぱり怒ってるよね。それとももう、呆れて何も……


    「…………………………


    だが、1つだけ聞かせてくれ」


    「え……?」



    「…………1人で背負い込むつもりは、無いな?」

  • 29123/03/23(木) 00:19:25

    「1人で……?」

    「……ルフィ君達は今、戦っているんだろう。

    シャンクス達もきっと、もうすぐこの島へやって来る。

    彼らはきっと、お前もまた戦っていることを知ればすぐにでも手を差し伸べてくれるだろう。


    …………そんな時に、その手をちゃんと握り返すことを約束してくれるならば……私はもう何も言わない」

    「……ゴードン…………」


    ゴードンはきっと、私が1人で全部何とかしようとしてるんじゃないかと、それで無理をするんじゃないかということを心配してるんだろう。

    ……だとしたら大丈夫だよ。私はそこまで強くないし……

    私に手を差し述べてくれる人達は、きっともっと強いから。


    「……うん、約束する。

    せっかくこっちに手を出してくれてるのに、それを無視しちゃったら失礼だもんね」


    「…………そうか」


    ゴードンの口元に、少しだけ笑みが戻った気がした。

  • 30123/03/23(木) 00:21:18

    本日は短くここまで

  • 31二次元好きの匿名さん23/03/23(木) 06:55:38

    覚悟を決めたか…

  • 32二次元好きの匿名さん23/03/23(木) 16:03:15

    宇宙猫ロメ男

  • 33123/03/23(木) 22:38:30

    また少しずつ

  • 34123/03/23(木) 22:38:54

    「……ウタ様」

    「あ、ロメ男くん……ごめん、置いてけぼりだったよね」


    「……話は全く見えねェし、聞きてェこともいろいろあるんだべが……

    …………誰かの覚悟に水を差すことほど野暮なコトは無ェべ。

    ウタ様が覚悟決めたってんなら、おれはそれを後押しするだけだべ!おれに手伝えることなら何なりとお申し付けくだせェ!」


    一昔前の特攻隊長みたいな気合の入れ方をするロメ男くんを見て、何だか妙な笑いが出て来た。

    新聞で見たことがある彼の顔は、まさに私が嫌いな「海賊」そのものだったけど……


    「……ふふ、変な人。

    あなたも海賊だよね?ルフィの友達なの?」

    「いんや、友達だなんて畏れ多いべ!おれはルフィ先輩と子分盃を交わして……

    ……いや交わしてねェなアレは。おれ達が勝手に押しかけていったっつーか……」

  • 35123/03/23(木) 22:41:48

    「よく分かんないけど……子分かぁ。ルフィも立派になっちゃったなぁ……

    それじゃロメ男くん、1つだけ頼まれてくれないかな?」

    「おうとも!おれに出来ることなら何でも……」

    「ルフィに伝言を頼みたいんだ。私しばらくちゃんと喋れないだろうからさ」

    「伝言……? うし、承知したべ!一字一句違わずに伝えるから安心するべよ!」

    「んーっと、じゃあ……こうしようかな?」

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


    『私、今から無茶するけど……もしもの時は、助けてくれたら嬉しいな』


    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    「……これがウタ様からの伝言だべ。確かに伝えたべ、ルフィ先輩!!」


    「…………ウタ…………」





    『みんなー!!驚かせてごめんね!さあ、ライブを再開するよ!!』

  • 36123/03/23(木) 22:45:52

    「……は?」

    「えェ?」

    「今のは……?」


    魔王の頭上から響いたのは、あまりにもこの状況に似つかわしくない朗らかな宣誓。

    その場にいる誰もが困惑する。その声は確かにウタのものであった。


    「何を言ってんだいあの子はァ〜……?」

    「ライブを再開……?しかしこの状況でライブなど……」


    『みんなには見えないかもしれないけど、実は今、エレジアにすっごく悪い海賊が来てるんだ!

    さっき私と一緒に戦ってくれた海賊達とか、海軍の人たちも一緒に戦ってくれてるんだけど、なかなか追い払えないの……

    でも安心して!私が連れて来たこのすっごいので、みんなのことは絶対に守ってあげるからね!!』


    「発言の意図が読めん、一体誰に向かって言って……

    ……いや、待て。まさかウタワールド側にいる観客達に向けて言っているのか……!?」

  • 37123/03/23(木) 22:48:21

    ───────────────────

    「また海賊が来てるの!?」
    「でもどこに?どこにもいないよ?」
    「それよりあれ!ウタの下にいるやべーやつ!何なんだあれ!?」
    「まさかあれもライブの仕掛けなの?ウタが連れて来たって言ってたけど……」

    『……っ……だ、大丈夫!安心して!悪い海賊は私とみんなが追い払ってあげるからね!!』


    ……呼び出しただけで意識が持っていかれそうになった。ズキズキと頭が締め付けられる。

    想像以上にキツい。今こうしてファンのみんなに向けて喋っているだけでも、体力と精神がゴリゴリ削られていく。

    でもまだだ、まだ大丈夫。まだ何とか暴れさせずに保ててる。このまま何とかしなくちゃ。


    「な、何だかよく分からないけど……ウタは今、おれ達のために戦ってくれてるんだな!」
    「そうよ!あんなすごいロボットまで連れて来て!流石は私達のウタだわ!!」
    「それならみんなで応援しなきゃだな!せーの!!」


    「「「「U・T・A!!U・T・A!!U・T・A!!」」」」

  • 38123/03/23(木) 22:51:15

    ───────────────────

    ファンのみんなの声援が、私を後押ししてくれる。

    私の心を蝕んでいく負の感情が、みんなから貰った溢れんばかりの正の感情に押し返され始める。


    『みんな応援ありがとう!!すっごく力になってるよ!!

    さあ、悪い海賊め!!私の目が黒いうちは、ファンのみんなには指一本触れさせないからね!!』


    「ハァ……?」


    ステージの真ん中に鎮座する一際大きなお婆さん。新聞も見たことがある顔だった。

    きっとあれがさっき名前の出てたビッグマムだ。ビッグマムは不愉快そうに私をずっと睨みつけている。


    「何を守るって……!?ハハマママ、舐め腐ったガキだねェ!!おれを誰だと思っていやがる!?

    てめェ、おれに狙われてるってのがどういう意味か分かっちゃいねェようだな!?人の心配よりまずはてめェの心配しなァ!!!」


    ゴギィン!!!

  • 39123/03/23(木) 22:55:16

    「……!」

    「……ちっ!」


    なぜか顔がついている大きな剣で斬りかかってきたけど、やっぱりトットムジカには傷一つついてない。

    思った通りだ。トットムジカには何かギミック染みた防御性能があるらしい。


    『貴方がどれだけ強くても、貴方の攻撃はこっちには通用しないの!!

    この会場にいる人達には、絶対に傷なんてつけさせないから!!』


    「……成程ねェ〜」

    「……? 黄猿さん、どうされましたか?」

    「……ウタウタの世界側には、わっしらもビッグマムもいない。いるのはこっちじゃ眠ってる観客達だけ……

    どうやってトットムジカなんて呼び出したのかは分からんが……


    あの子は観客達を不安にさせねェ様、全てを『ライブの演出』にしちまうつもりなのかもねェ〜……」

  • 40123/03/23(木) 23:00:55

    ───────────────────

    「ウタ…………」

    「ウタ様は何かとんでもねェ覚悟の元に、あのデカブツを呼び出したみたいだべ!

    しかしすげェべ、ウタ様の切り札!あれならいくら四皇ビッグマムでもきっと……


    ……ん? ルフィ先輩?」


    ルフィは遥か昔の、12年前の記憶を呼び起こしていた。

    自分が「ビリビリに破って海に捨ててやる」等と言い放った、ウタの人生を狂わせた元凶のことを。


    「あいつ、まさか……」


    ウタは今、会場の皆を守るために、自分の夢を守るために戦っている。

    そんなウタが残した、「助けてほしい」というある種真っ直ぐなメッセージ。


    傍に零れ落ちた麦わら帽子を拾い上げ、自らの心音が高鳴りつつあるのを感じながら、ルフィは笑った。


    「……ししし、寝てる場合じゃねェなァ……!」

  • 41123/03/23(木) 23:04:54

    本日はここまで

    拙者は歯を食いしばってる女の子が好き侍

  • 42二次元好きの匿名さん23/03/23(木) 23:22:27

    某、其方と同じく頑張っている女の子大好きワノ国侍
    義によってスレの保守に参った

  • 43二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 00:08:23

    正攻法でトットムジカを盾として使うの格好いいな
    作中でも取り込まれるまではかなり制御できてたし可能かもと気付かされた

  • 44二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 06:56:33

    守!

  • 45二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 15:25:17

    ロボット扱いされるトットムジカに悲しき過去

  • 46123/03/24(金) 21:43:43

    本日はお休み

  • 47二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 22:01:45

    トットムジカを制御できたら、マジでほぼ最強だもんな
    ウタちゃんがんばえー

  • 48二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 22:21:14

    何というかとてつもなくスレタイで損している気がするスレ

  • 49二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 02:21:31

    REDをアマプラで観て初回の「やっぱりそうだ!」で匂いか!?ってなったのはこのスレが原因

  • 50二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 09:13:44

    保守れす

  • 51二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 19:51:00

  • 52123/03/25(土) 22:12:57

    ※本日は少しだけ流血表現がありますので悪しからず

  • 53123/03/25(土) 22:13:23

    「寝てる場合じゃ……? ルフィ先輩、もう動けるんだべか!?」

    「いや、まだだ、まだ足りねェ……一発だ、一発分でいい……

    一発分覇気が戻れば、ビッグマムに全力の一撃ぶち込んでやる……

    それで倒し切る……絶対に……!!」

    「おォ〜!!ドレスローザ以来の一発KO宣言!!コレ程頼もしいことはねェべ〜!!

    そういうことならお任せあれ!!この無敵のバリアで!何があろうとルフィ先輩を最後までお守り致しますだべ!!」

    「ああ、ありがとう……!」


    それだけ言ったルフィはそのままその場に倒れ込んだ。少しでも早い体力の回復に努めようという算段だ。

    気合いでバリアの強度が変わるものなのか、バルトロメオは結んだ指に一層力を込める。


    だがそうしている間にも、均衡は徐々に悪い方へと崩れつつあった。

  • 54123/03/25(土) 22:17:36

    ───────────────────

    「クッソジリ貧だ!未来視がここまで厄介とは……!」

    「ここまでおれに食らいついて来たのは麦わら以来だ……タフさなら比肩し得るかもしれんな。

    だがそろそろ限界のようだな。先程までよりも動きのキレが落ちているぞ」


    カタクリの足止めを買って出たサンジ。

    しかし地力の差は如何とも埋め難く、少しずつ押され始めていた。


    (チッ、景気良くボコスカ殴りやがって……こちとらもう膝が笑ってんだ!これ以上はヤベェ……)


    「貰った!!」

    「あ!?」


    ガクッ


    「!? しまっ、足が……!」



    『危ない!!!』ズン!!

  • 55123/03/25(土) 22:21:39

    「……!?」

    「……厄介だな」


    2人の間に割って入ったのは、鍵盤で構成されたトットムジカの巨大な腕。

    その未来が見えたのか、カタクリはサンジに殴りかかる寸前で退いていた。


    『大丈夫!?怪我はない!?』

    「……ああ、大丈夫だ!ありがとうなウタちゃん!

    クソッ、レディの手を煩わせるなんざ一生の不覚だ!!このまま終われるか!!」

    「……ここへ来てまだ燃え上がるか。色欲もここまで来れば立派な武器ということだな」


    呆れとも感心とも読める表情を浮かべながらカタクリはもう一度身構える。

    サンジも仕切り直しの体勢を取りながらも、その思考の一部はトットムジカへと向いていた。


    (……しかし、アレが何なのかは結局分からねェが……四皇の攻撃すら通じねェ様な化け物だ。マトモな代物とは思えねェ。

    そんな怪物をあんな風に使役して、ウタちゃんの身体は大丈夫なのか……?)

  • 56123/03/25(土) 22:25:49

    ──────────────────

    「注射(インジェクション)ショット!!!」

    「三刀流!!“煉獄鬼斬り”!!!」


    ズズズン!!


    「く……ああ鬱陶しい!!」グォン

    「ぐっ……!」


    ゾロとロー、2人の剣士がビッグマムを攻め立てるもビッグマムが揺らぐ気配はない。

    まるで虫でも払うかの様に弾き飛ばされる2人。


    「クソッ、コレでもダメか……!」

    「こんだけやってんだ、ちったあ効いてほしいもんだがな……!」

    「効いてはいるはずだろう、有効打になってねェだけだ!!」

  • 57123/03/25(土) 22:29:22

    「だったら有効打になるまで攻め続けるだけだ!!“千八十煩悩鳳”!!」ギュオ

    「フン!!」ガキン!!

    「!! ヤベェ客席に!!」

    「!? う、うわあああ!!」


    『ダメーッ!!』ガシィン!!


    ビッグマムにより弾き飛ばされた“飛ぶ斬撃"が、その勢いのまま客席を守る海兵へと襲いかかる。

    その一撃を防いだのは、またしてもトットムジカの腕だった。


    「!」

    「た、助かった……!」


    「おいゾロ屋、客席まで巻き込む気か!?」

    「うるせェ!!そこまで気にしてられる相手か!!第一あいつが守ってんだからいいだろうが!!」

  • 58123/03/25(土) 22:33:41

    今麦わらの一味が全力で戦えているのは、トットムジカを使役したウタによる防衛も大きい。

    しかし、トットムジカの頭上のウタに疲労の色は濃い。まるで何時間も戦い続けていたるの様な様相だった。


    『はあ……はあ……!』

    (……顔色を見る限り、そう長くは保たなさそうだな……

    しかしいくら何でも体力の消耗が激しすぎやしねェか?ありゃ一体何なんだ……?)


    「…………こいつァ、少し任せてもいいかもしれやせんね……」

    「! イッショウさん何処へ?」

    「海の方で少し不穏な気配が見えたモンで……あい、すぐ戻りやす」

    「あっ、ちょっと!イッショウさん!?」


    藤虎は能力で浮かせた瓦礫に飛び乗り、海の方へと姿を消した。

    その様子を見ていた黄猿はため息混じりに一つ溢す。


    「まァた勝手なことを……まァ〜、イッショウが何か見えたって言うんなら間違いは無いだろうねェ〜……

    お前ら、イッショウが戻るまで踏ん張りなよォ〜。あの嬢ちゃんもいつまで保つか分からんからねェ〜」

  • 59123/03/25(土) 22:37:15

    ───────────────────

    『う……ぐ……!』


    ウタの消耗はウタワールド側からでも見て取れた。

    歯を食いしばりながら必死の形相でもがくウタの姿に、観客達も不安の色を隠せない。


    (甘かった……まさかここまでキツいなんて……!

    もう体力も限界……このままじゃ……嫌だ……!!)


    自らの体力が尽きてしまうだけならまだいい。

    最悪なのは、トットムジカに行動の主導権を握られてしまうこと。

    それだけは何としてでも避けたかったウタは、気力一つでこの状況に抗い続けていた。


    (心はまだ負けてない……みんなのおかげでまだ戦える……!

    もう少しだ、もう少し耐えればきっと……!)

  • 60123/03/25(土) 22:41:33

    ───────────────────

    『…………!!』ブッ

    「!?」

    「ウタちゃん!?」


    現実世界のウタの鼻から鮮血が噴き出した。

    体力が限界を超えた証だろう。白いワンピースに真っ赤なシミが迸る。


    『う……ぁ……』

    「ウタちゃん!!それ以上はもうダメだ!!その怪物を早く……」


    「ハーッハハママママ!!どうしたウタ!?急に鼻血なんて噴き出しやがって!!

    どうやらもう限界の様だね!!一気にケリつけてやるよォ!!!」


    ビッグマムの叫びと共に、エレジア上空で急速に雷雲が発達し始める。

    やがて降り注ぎ始めた雷の雨は、まさしく絶望の雨だった。


    「“天満”!!!“大自在天神”!!!」

  • 61123/03/25(土) 22:45:25

    『!!!』

    「こりゃ流石にマズイねェ〜!八尺瓊勾玉!!」


    ここまで客席の防衛についていた黄猿が飛び上がり、光の球で雷を相殺し始めた。

    しかし「意思を持った雷」は光の球を巧みに躱し、僅かではあるが相殺を免れた雷が客席へと降り注ぐ。


    『うう……ああああああ!!!!』


    トットムジカは……否、ウタは、その撃ち漏らしを全てその身で受け止めた。

    限界を超えた身体に鞭打ち、最後の力を振り絞る。

    結果として、観客にも海兵にも、傷を負った者は誰一人としていなかった。


    『……………………ぁ』


    しかしその代償はあまりにも大きく。

    ウタはトットムジカの頭上でへたり込み、ピクリとも動かなくなった。

  • 62123/03/25(土) 22:50:18

    ウタの静止に伴い、トットムジカもまたその動きを止めた。

    異様な沈黙と緊張感がステージを包む。


    「チィ、しぶとい小娘だね……いい加減諦めたらどうだい!?」

    『……………………』


    俯いたままのウタの表情は、ステージ上から読み取ることはできない。正気を保っているかすらも分からない。

    その口元がほんの僅かに動いたことに、果たしてこの場にいる何人が気づけただろうか。


    ウタが発したのはほんの数文字。

    『助けて』。ただそれだけのこと。


    声にさえならないその叫びは、沈黙に吸い込まれていった。



    だがそんなウタの声無き声も、“その男”にだけは、ハッキリと届いていた。




    「当たり前だアアアアアア!!!!!」

  • 63123/03/25(土) 22:55:26

    本日はここまで

    当たり前らしいですよ奥さん

  • 64123/03/25(土) 23:15:13
  • 65二次元好きの匿名さん23/03/26(日) 00:32:40

    ルフィ頼むぜ……!

  • 66二次元好きの匿名さん23/03/26(日) 00:40:42

    むしろルフィがウタの匂いを嗅ぐのがこのスレの主目的で、それら他は全てルフィが匂いを嗅ぐための過程のはずでは...(勘違い)

  • 67二次元好きの匿名さん23/03/26(日) 09:15:43

    ルフィ…頑張れ!

  • 68二次元好きの匿名さん23/03/26(日) 18:35:05

    あげとこ

  • 69123/03/26(日) 22:22:31

    みんな頑張れ〜(他人事)

    それでは本日分を

  • 70123/03/26(日) 22:23:00

    「る……ルフィ先輩……!!」

    「ありがとうロメ男、お前のおかげで治った!!やれるぞ!!」

    「は……ハイだべ!!今バリアを解くべ!!」


    バリアの解除とほぼ同時にビッグマムへと駆け出すルフィ。

    ルフィの咆哮と共に麦わら勢力が俄かに活気付き始めた。


    「ようやく目覚ましやがったか……トラ男!!」

    「おれに指図するな!!」


    「あいつは恐らく一撃でケリをつけるつもりだ!!おれ達はビッグマムの動きを止めるぞ!!」


    「よし来た、わしに任せい!!」


    ゾロの一声にいち早く反応したのはジンベエだった。

  • 71123/03/26(日) 22:26:21

    「五千枚瓦正拳!!!」

    「!!!」

    「ぐお!?」


    水流を纏ったジンベエの拳が数多のビスケット兵を打ち砕く。

    本体のクラッカーが怯んだ隙に、ジンベエは戦線を離脱し海へと飛び込んだ。


    「ありったけをくれてやる!!食らえビッグマム!!

    “海流一本背負い”!!!」

    「ああ!?」


    ドッパァン!!!


    「!!!」

    瀑布の如き海流がステージ上のビッグマムに襲いかかった。

    あまりの水量と悪魔の実の特性により、さしものビッグマムも堪らずその動きを止める。

  • 72123/03/26(日) 22:30:46

    「ママ!?」

    「ガラ空きだ!!!画竜点睛(フランバージュ)ショット!!!」

    「!!?」


    ドゴォン!!!

    「……ぐ……っ!!」


    ガシャアン!!!

    「……! …………」

    「ちったァ効いたかモチ野郎!!おれとの勝負中によそ見してる暇なんざねェんだぜ!!」

    「…………ああ、その様だな……!」


    動揺したカタクリに、サンジの渾身の一撃が叩き込まれた。

    一撃で倒し切るには至らなかったものの、カタクリは踏ん張りきれずステージ端まで大きく吹き飛ばされる。

  • 73123/03/26(日) 22:35:00

    「ママにカタクリまで……!?何だこいつら、急に息を吹き返しやがって……!!」

    「おめェらもウチの船長とやり合ったんだろ?だったらその力をみくびっちゃあいけねェよ!!強さに限らずなァ!!」


    フランキーと交戦中だったペロスペローは焦りの色を隠せずにいる。

    無茶ばかりするものの、その無茶で何度も救われてきた麦わらの一味が発するその言葉の意味は重い。


    そして未だ満足に動けずにいるビッグマムに、ゾロもまた渾身の一撃を放とうとしていた。


    「あいつが一撃で決めるつもりなら、こっちは少しでもビッグマムの体力を削るだけだ!!

    下がってろよトラ男、巻き込まれたくなけりゃな!!」

    「……!」バッ



    「“一大・三千・大千・世界”!!!!」

  • 74123/03/26(日) 22:38:45

    ズバッ!!!!

    「ぐえ〜!!」

    「!!!」


    斬れた手応えではなかったが、ビッグマムの反応は今までとは明らかに違うものだった。

    巨像を一太刀で両断する一撃をまともに食らい、呻き声を上げながらビッグマムは後退する。


    …………だが。


    「……おんどれクソガキィ!!!」

    「!!?」バッ

    バコォン!!!


    「ぐおあ!!」

    「ゾロ!!?」


    すぐさま体勢を立て直したビッグマムの拳が、空中にいたゾロを捉えた。

    咄嗟の刀のガードは果たして間に合ったのか、まともに拳を受け止めたゾロは遥か遠くまで殴り飛ばされてしまった。

  • 75123/03/26(日) 22:42:54

    「ママママ……麦わらが目を覚ましたからっていい気になるんじゃないよガキ共がァ!!

    麦わら1人で何が出来る!!この程度でおれを倒せると思うなよォ!!!」


    ダメージや疲労の蓄積は見え始めたものの、未だビッグマムの牙城は崩れない。

    荒れ狂うその様相はまさに怪物。長年に渡り海に君臨する大海賊の姿だった。


    しかしそんなビッグマムの前で、ローは1人不敵に佇んでいた。


    「……? おいトラファルガー、おめェは逃げねェのかい?随分といい度胸じゃないか!!」

    「……可能性が高い方に賭けてるだけだ。いつまでも自分が最強だと思わないことだな」

    「ああ?」




    「ビッグマム〜〜〜!!!!」

  • 76123/03/26(日) 22:46:34

    遙か上空からエレジアに響き渡る雄叫び。

    ローの能力で上空へと飛び、天を覆わんばかりに膨れ上がった巨大な拳を振り翳すルフィがそこにいた。


    「!?」

    「やれ……麦わら屋」


    不敵な笑みを浮かべながらその一言だけ言い残し、ローはステージから姿を消した。

    ルフィが何をするのか察した他の面子もその身を移し、残されたのはビッグマムただ1人。


    かつてダグラス・バレットの巨拳を真っ向から打ち砕いた、ルフィの渾身の一撃。

    それよりも更に巨大な拳が、今にも振り下ろされようとしている。


    だが、受ければ不味いと分かっている攻撃をわざわざ受け止めるほどビッグマムも愚かではない。


    「マーマママ!!威力だけは大したもんだがね!!そんなもんが当たるとでも……」



    『……………………』ズズズ

  • 77123/03/26(日) 22:51:20

    「……は?」


    沈黙したままだったトットムジカが再び動き始める。


    力尽きた筈のウタが、尽きた筈の体力を振り絞り、再びトットムジカを駆っていた。


    『……やら……せない…………!!』

    「!!?」


    ウタの顔は憔悴し切ったものだったが、その眼の光は未だ失われていない。

    その光景を見たビッグマムは、自分が今まで感じたことのない感情を初めて感じた様な気がした。


    『これで……さい……ご…………!!』


    伸びてきたトットムジカの巨大な腕が、呆気に取られるビッグマムの姿を掴み上げ……


    『あ……あああああああああ!!!!』ズズーン!!


    そのまま、思い切り地面に叩きつけた。

  • 78123/03/26(日) 22:54:55

    「ぐえっ!」

    『はあ…………ゲホッ、は……あ……!!』


    その攻撃自体でのダメージは恐らく無い。だが、『時間稼ぎ』には十分な一発だった。

    薄れゆく意識の中で、ウタは最後の願いをルフィに託す。



    『…………ルフィ……おねがい………………!!』



    「………………!!!」


    ウタの願いは、ルフィに確かに届いていた。

    その瞬間、ルフィの中に感じたことのない高揚感が湧き上がる。


    自らの身体が、神々しささえ纏った真っ白な姿に変貌していくのを感じた。

    自らの鼓動が、聞いたことのない陽気なリズムを刻み始めたことを感じた。



    まるで何かから『解放』されたかの様に、ルフィは瞬間的に己の限界を超えた。

  • 79123/03/26(日) 22:56:39

    「おおあああああ〜〜〜〜〜!!!!!」


    そして、全てを賭けた一撃が『怪物』目掛けて振り下ろされ……



    その瞬間、エレジアの大地は揺れた。

  • 80123/03/26(日) 22:57:51

    本日はここまで


    拙者はオーズ戦みたいな連携レイドバトルも大好き侍

  • 81二次元好きの匿名さん23/03/26(日) 23:22:33

    やったか!?

  • 82二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 06:40:37

    保守

  • 83二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 13:36:55

    保守

  • 84二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 20:41:40

    あげとこ

  • 85123/03/27(月) 22:29:24

    フラグを建てるのをやめてください
    フラグを建てるのをやめてください

  • 86123/03/27(月) 22:30:32

    凄まじい衝撃が敵味方関係なく襲いかかる。立っていられない者もいた。

    衝撃が止んだ後、訪れたのは少しの静寂……そして。


    「………………っぶあァ!!!」


    ビッグマムに叩きつけられた拳がみるみるうちに縮んでいく。

    白く変色していたルフィの服装もいつの間にか元に戻っていた。

    やがて力尽きたルフィは、糸が切れた操り人形の様に力無く落下していく。

    特に抵抗する素振りもなく、そのままステージを囲んでいる海へと落ちてしまった。


    『………………………っ」


    それとほぼ同時に、客席を守る様に立っていたトットムジカが霧散し始める。

    結局、ウタの精神がトットムジカに飲み込まれることはなく、先にウタの体力が尽きてしまったらしい。


    しかし、曲がりなりにもウタと共に観客達からの応援を受け、その力を人々に求められたせいなのか。

    消失する寸前のトットムジカの表情は、どこか満足げに見えた。

  • 87123/03/27(月) 22:33:56

    トットムジカの消滅により、足場を失ったウタはルフィと同じく重力のまま落下し始める。

    しかしその落ちる先はルフィと同じ海ではなく、ステージを構成する硬い床の上だった。


    「やべェ!」

    「いかん!」


    ジンベエが海へ飛び込みルフィの救出へ向かう一方、ウソップは“必殺緑星”で落ちていくウタの落下地点にクッションを作る。

    ウタは葉っぱの上で一度バウンドした後、柔らかな草の上に仰向けに倒れ込みそのまま動かなくなった。


    「……ぅ……」


    トットムジカが消滅したことからも分かる様に、既にウタの意識は遥か彼方へと消えていた。

    しかしウタの意識の消失は、即ちウタワールドの消滅を意味する。

    少しのタイムラグがあるとはいえ、観客達が目を覚まし始めるのも時間の問題だった。

  • 88123/03/27(月) 22:38:50

    「…………………」

    「……や、やったのか……?」


    ビッグマムはステージ中央で倒れたまま動かない。

    ペロスペローはその様子を信じられないものを見る目で見ていた。


    「ま……まさか……ママが……!!?」

    ───────────────────

    「しっかりせい!!生きとるか!?」

    「…………」


    海底に沈んでいたルフィはジンベエにより引き上げられた。

    ウタ同様に気を失っているらしく、ジンベエが呼びかけてもピクリとも反応しない。

    「何やら見たことのない姿になっておった……あれ程無茶をすればこうなるのも当然か……!」

     

    「……………………ぐ……」

    「!!?」

  • 89123/03/27(月) 22:44:16

    動かなかったビッグマムが、その上体を起こし始めた。

    信じられないものを見る視線、諦めの感情を含んだ視線、どこかホッとした様な視線──

    その場にいたあらゆる者の様々な視線が、再び動き出したビッグマムへと向けられる。


    「……クソ……あれでまだ動けるのか…………!!」

    「あァ……痛ェな、こんなに痛ェ思いしたのは久しぶりだよ……!」


    ルフィの一撃は確かにビッグマムに届いていた。届いて「は」いた。

    だが、倒し切るには至らなかった。それだけのことだった。


    「麦わらと……あの娘は、どこだい……?」

    「!?」

  • 90二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 22:47:57

    ママ、空気…、、
    無理か

  • 91123/03/27(月) 22:48:34

    「……おや、いるじゃないか……よくもこんな痛い目に遭わせてくれたねェ……?」


    ステージ上で倒れたままのウタを見つけると、ビッグマムは狂気的な笑みを浮かべながら自らの大剣を振りかざす。

    明らかに正気ではない────消す気だ。


    「ママ!!ダメだ!!殺すのはまずい!!まだオーブンやブリュレ達が戻ってきていない!!

    このままウタを殺してしまえば彼奴らは2度と戻って来られなくなる!!待ってくれママ!!」


    カタクリが必死で呼びかけるも、ビッグマムが止まる気配は微塵もない。

    そしてサンジと黄猿が飛び出すよりも一瞬早く、炎を纏った大剣がウタを目掛けて振り下ろされた。



    「死になァ!!!!」




    ガキィン!!

  • 92123/03/27(月) 22:54:44

    「………………あ?」


    その手に残ったのは、決して砕けない鋼の塊を叩いたかのような硬い手応え。

    思い切り振り下ろした筈の剣は、何者かによって受け止められていた。


    「……………………」


    自分の剣を真っ向から受け止めた者の姿を見て、ビッグマムはその目を疑った。


    特徴的な目の傷に、右腕一本で振るう名刀。

    そして、異名の由来にもなっている、風に揺られる赤い髪。




    その男、赤髪のシャンクス。




    この時代の頂に限りなく近い男が、遂にその姿を現した。

  • 93123/03/27(月) 23:00:21

    本日はここまで

    シャンクスがやって来たぞっ

  • 94二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 23:00:24

    遅いよシャンクス
    いやマジで遅いよ!

  • 95二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 23:02:13

    シャンクスやっと来たか…
    遅刻や。大遅刻。

  • 96二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 23:05:52

    ルフィいなかったら今頃ウタが4回くらい死んでましたよお頭

  • 97二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 23:10:25

    でも映画も実際このくらいの大遅刻だったと思う

  • 98二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 23:16:24

    こっちのシャンクスは最初から来るつもりだったのになんでこんなに遅刻してるんですか

  • 99二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 00:04:44

    まさか本誌の活躍に合わせて来るとは…

  • 100二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 00:49:08

    遅刻だが、最悪の瞬間には間に合ったからセーフ

  • 101二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 08:35:07

  • 102二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 16:32:56

    保守

  • 103二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 22:01:02

    かっこいとこ,持って行ったな。
    遅刻したくせに。

  • 104123/03/28(火) 22:55:16

    本誌で出て来たタイミングで出せたのはホントに偶然ですね

  • 105123/03/28(火) 22:56:20

    「……赤髪……!?」


    ビッグマムの頬を一筋の冷や汗が伝った。

    冷や汗など流すのは何時ぶりだろうか。数十年ぶりの感覚をビッグマムは思い出していた。

    それ程までに、今目の前にいる男の発している覇気は凄まじいものだった。


    「……ママママ……ロジャーのとこのガキが随分とデカくなりやがって。

    今更何しに来たんだい?まさかてめェもウタを狙って来たんじゃ……」


    「……いや、少し違うな」

    「んん?」


    「なあビッグマム。確かにおれ達は海賊だ、欲しいものを戦って奪うのは海賊なら何もおかしくはない。

    だが、欲しがるものを間違えたら痛い目を見ることも知ってるよな?



    ……おれの娘に刃を向けるって行為の意味が、分からないわけじゃあ無いよな?」

  • 106123/03/28(火) 23:00:45

    口調こそ冷静に聞こえるが、シャンクスの表情からはその内に渦巻く激情がありありと見てとれた。

    これ以上少しでも刺激すればどうなるかは、火を見るよりも明らかだった。

    そんなシャンクスを見ても、ビッグマム側も譲るつもりは毛頭なさそうだ。


    「ハァ?娘ェ……? 

    ……マーマママ、なるほどそう来たかい!!

    前に海賊の娘だって言ってたんだ、何処の木っ端海賊の娘だと思えば……まさかてめェの娘だったとはね!

    だがウタは昔父親に、つまりてめェにこの島に置き去りにされたそうじゃないか!!

    それなのに今更のこのこやって来て父親ヅラかい!?流石はロジャーんとこのクルーだ、随分と面の皮が厚いんだねェ!!」


    「……まあな。確かにおれ達はあの日、ウタをこの島へと置いて行った。

    きっと寂しい思いをしていただろう。だが、これがあいつの為になると思っての行動だった。

    許されるつもりも無かった。おれ達はあいつと決別するつもりでこの島に置いて行ったんだ」

  • 107123/03/28(火) 23:05:38

    「マママ……知らねェよ!!てめェら親子の身の上話には興味無ェな!!そこどきなァ!!!」

    「!」


    バキィン!!!


    「……チィ……!」

    「…………」


    4倍以上の体格差があるにも関わらず、ビッグマムの巨剣を受け止めたシャンクスはびくともしない。

    鍔迫り合いのまま、シャンクスは『身の上話』を続ける。


    「……だが、誰に似たんだか随分と諦めが悪くなっちまったらしいな。

    あんなことがあった後でさえも、ウタはおれ達のことをまだ父親だと呼んでくれるらしいんだ……



    ……だったら、それに応えないわけにゃあいかねェだろうが!!!!」

  • 108123/03/28(火) 23:09:43

    シャンクスの形相が猛烈な怒りを孕んだそれへと変貌すると同時に、凄まじい規模の覇王色の覇気が放たれた。

    海軍やビッグマム海賊団の一般兵では話にならず、一部の海軍中将さえも倒れ伏す。

    この時、カタクリは生まれて初めて、自らが覇王色の覇気で威圧される感覚を味わったという。


    「…………!?」


    ビッグマム本人が揺らぐことは流石に無かったが、覇気が治まる頃には既に戦える戦力は殆ど残っていなかった。

    立っていたのはスイーツ三将星や一部の大臣達のみ。その他は全て今しがたシャンクスが放った覇気だけで無力化されてしまった。


    「これは……!まずい、ママ!!」

    「おっと、何もするなカタクリ」ガチャ

    「!?」


    「お前程の男だ。下手な真似をすればどうなるか『見える』だろう?」

  • 109123/03/28(火) 23:14:14

    どんな未来が見えたのか、ベックマンに銃口を向けられたカタクリは動きを止めた。

    やがてウタの眠るステージを取り囲むように、赤髪海賊団がその姿を現す。


    「何カッコつけてんだお頭、大遅刻したくせによ」

    「まあ遅刻の責任はおれ達全員にある。こりゃあ後で全員で土下座だな」

    「…………そうだな。


    ……おい、ビッグマム」

    「あ!?」


    「おれ達の宝に手を出した以上、こちらとしては今すぐにでもお前を海にでも沈めてやりたいところなんだが……

    そんなことをすればお前は抵抗するだろう?そうしたらきっと観客達も巻き込まれる。

    そうなったんじゃ意味がない。今後ろで倒れてるそいつらが命懸けで守った物を、おれ達が傷つけてたんじゃあこいつらに顔向けが出来ない。


    おれ達としちゃあ、お前らがここで引いてくれれば助かるんだがな……」

  • 110123/03/28(火) 23:17:38

    「…………!」


    言葉とは裏腹に、シャンクスからビッグマムへと与えられた選択肢は実質『撤退しろ』の一択だった。

    生まれついての怪物とも称されるビッグマム。当然己の強さにも絶対の自信を持っている。

    だが、手負いの自らと万全の赤髪海賊団が衝突すれば、どうなるかは想像に難くない。

    引き際を誤る様では海の皇帝は務まらない。長年の間君臨し続けて来た大海賊としての経験も、ビッグマムは持ち合わせていた。


    「……チッ!!退くよお前ら!!」


    シャンクスは兎も角、ビッグマムが眠っている海賊を気にして手加減する理由はない。

    互いに万全だったならば、ビッグマムは衝突を選んでいたかもしれない。

    しかし、ビッグマムにとっては自分がここまで傷を負うことが想定外だった。

    全てはあの麦わらのルフィが想像以上の抵抗を見せたからだ。いつか絶対にこの手で潰してやろう……


    未だジンベエの腕の中で動かないルフィを睨みつけながら、【四皇】ビッグマム率いるビッグ・マム海賊団はエレジアを後にした。

  • 111123/03/28(火) 23:22:01

    本日はここまで

    ようやく嵐は去りました

  • 112二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 23:33:27

    かっけぇえ
    遅刻したけd(((

  • 113二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 23:55:34

    またルフィ殿が気絶しておられるぞ

  • 114二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 00:07:29

    改めてシャンクスの覇王色性能おかしいって…

  • 115二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 06:55:22

    ほしゅ

  • 116二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 08:34:27

    遅刻したくせにかっけぇなこの野郎!!

  • 117二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 17:50:16

    神避を撃つまでもなかったか

  • 118二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 21:55:14

    ホント強いしかっけえよなシャンクス
    遅刻してるけど

  • 119123/03/29(水) 22:20:23

    本日お休み

  • 120二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 22:25:49

    おいおいまた遅刻かぁ〜?(理不尽)

  • 121二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 23:21:02

    このスレが大好きすぎていつもこんな感じ

  • 122二次元好きの匿名さん23/03/30(木) 06:59:32

    しゅ

  • 123二次元好きの匿名さん23/03/30(木) 16:10:53

    あげとこ

  • 124二次元好きの匿名さん23/03/30(木) 20:57:37

    ゆっくり休んでくれスレ主
    そして続きは1スレ使い切るくらい頼むぞ!

  • 125123/03/30(木) 22:39:54
  • 126123/03/30(木) 22:40:11

    ───────────────────

    「中将の一部まで持っていくとはねェ〜……

    これが四皇、シャンクスの覇気か……」


    ビッグマムが撤退する中、大将黄猿もまた冷や汗を垂らしていた。

    気絶を免れた者達でもよろめいたり膝をつくなりで、海軍側でまともに立っていられたのは、その場を離れていた藤虎を除けば黄猿1人。


    「さて、どうするかねェ〜……」


    『おいボルサリーノ!』

    「!」


    『現状を報告せい!赤髪が現れたとの一報の直後通信が一斉に途絶えた!

    一体そっちで何が起こっとるんじゃ!?まさかビッグマムと赤髪が衝突を……!?』


    痺れを切らした様子のサカズキから黄猿の電伝虫へ直接連絡が入った。

    受電に手間取り少しだけ間を空けてから、黄猿が間延びした声で応答する。

  • 127123/03/30(木) 22:44:20

    「……ビッグマムなら撤退したよォ、赤髪が追い払った形でねェ〜……

    ただ、ウチもその時の赤髪の覇気の流れ弾でみんな持ってかれちまったねェ……

    今海軍で戦えるのはわっしとイッショウ、それから一部の中将達ぐらいだねェ〜」

    『何じゃと……?』


    半ば諦めた様にも聞こえる声色で黄猿が答える。

    実際問題ここから赤髪海賊団と衝突するのは現実的ではなく、そもそも「海軍は海賊を捕えるもの」という名分を取っ払えば衝突する理由もない。

    ……無論、向こうから仕掛けて来なければの話だが。


    『……被害状況は?』

    「負傷者あり、死亡者は無し。軍艦もビッグマムに沈められた数隻以外は皆航行可能な損傷具合だねェ」

    『…………観客への被害は』

    「ビッグマムが現れた時はどうなることかと思ったがねェ〜……

    死者どころか負傷者も無し。観客への被害は皆無だったよォ〜」

  • 128123/03/30(木) 22:49:26

    『………………ほうか』


    短くそれだけ返し、サカズキは小さく唸る。

    赤髪海賊団への対応を考えているのか、兵を退かせるタイミングを計っているのか。


    『……赤髪や麦わら達の動きは?』

    「ウタと麦わらの両名は気を失っちゃあいるが……今は2人とも両勢力が囲んじまってるよォ〜。赤髪もウタの近くにいる……

    ウタが眠っちまったから、ライブ自体もこれでお開きみたいなもんだねェ。

    麦わら達は兎も角、わっしらが今からウタを狙う理由も無いと思うけどねェ〜……」


    ウタワールドが消滅した以上、仮にウタがここで命を落としたとしても世界の滅亡は免れる。

    そもそも今の状況でウタが死亡する可能性はまず考えられない。誰よりも堅牢な守護者達が今は彼女の周りにいる。

    この様な状況になった以上、ウタを護る理由も、ウタを狙う理由も海軍には存在しない。

  • 129123/03/30(木) 22:53:31

    「……方は付きやしたか、ボルサリーノさん。何やらすげェ覇気が飛んで来やしたが……」

    「!」


    姿を眩ませていた藤虎が戻って来た。

    やはり藤虎もまたシャンクスの覇気には耐え切っていたらしい。


    「戻ったかい。言っていたその不穏な気配とやらには対処できたのかい?」

    「えェ。先程撤退した筈の黒ひげの連中が、少し離れた沖で待機していたモンで……

    この島の瓦礫を少々お借りして牽制したら、大人しく退いて行きやした」

    「油断も隙もありゃしないねェ〜……こっちの騒ぎが落ち着いたら乗り込んでくるつもりだったのかねェ」

    「で、あっしらはどうしやすか。また上からの指示待ちで?」

    「そんなところだねェ〜。そろそろ何か言ってくるか……」


    『政府からの通達が来た』

    「!」


    『……これ以上民衆を危険に晒す必要もない。全軍撤退せい』

  • 130123/03/30(木) 22:57:40

    ───────────────────

    「どうだ、ホンゴウ」

    「酷く消耗してるが……まあ、それだけだ。暫くゆっくり休ませてやれば、いずれ目を覚ますはずだ」

    「……そうか」

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    「ルフィはどうだ?チョッパー」

    「うーん……いつも通りだな。ビッグマムから受けたダメージに加えて自分で無理した分の反動も乗っかってる。

    受けたダメージ自体はそこまで深刻じゃ無さそうだけど……無理した反動の方が酷いな。多分またいつもみたいに数日は目を覚まさないと思うぞ」

    「まァそうだろうな。寧ろ四皇と正面からぶつかってダメージが深刻じゃないのが不思議なぐらいだ」


    「……あれ?」

    「ん?どうしたウソップ?」


    「海軍が退いてくぞ?」

  • 131123/03/30(木) 23:00:19

    「ん、本当だな……中将も大将も退いて行きやがる」

    「ホントにすごい人数来てたのね……軍艦何隻分かしら」

    「そういや、結局ウタが海軍に狙われてた理由ってのは何だったんだ?」

    「さあ……後で理由は話すって言ってた本人達が伸びちゃってるし……」


    「……海軍に狙われてた?」


    「え? ……あ」

    「赤髪……」


    ウソップ達の話す声が聞こえていたのか、いつの間にか麦わらの一味の輪の背後にシャンクスが立っていた。

    まさか自分たちの娘が何かしでかしてしまったのだろうか。シャンクスの表情には僅かに焦りの色が見える。


    「……すまない、ルフィの仲間達。今の話を詳しく聞かせては……」



    「……それはあっしからお話しいたしやしょう」

  • 132123/03/30(木) 23:03:34

    「ん……げっ!?」

    「た、大将藤虎……!?」


    撤退命令を受けた筈の藤虎がステージに降り立った。

    一味は臨戦体制に入るが、当の本人は電伝虫越しに漏れてくるサカズキの声と何やら言い争いをしている。


    『おいイッショウ、何するつもりじゃ。撤退命令に従わんかい』

    「えェ、あっしも戻りますとも。ただし用を済ませてからだ。

    ワケがあったとは言え……罪も無い1人の女の子に刃を向けて、ことが済んだら即撤退なんて真似、あっしにゃできねェ」

    『相手は四皇じゃ。貴様1人の義理を通すために戦争でも起こそうっちゅうんか?』

    「そんなつもりはござんせん。あっしは海軍としてではなく、1人の男として謝りてェだけだ。どうせ海軍基地は出禁なもんで……

    それにこの場にいるのはあっしと海賊だけだ。あっしが頭を下げても、市民相手に潰れる面子などありゃあせんでしょう?」



    『………………好きにせい』ガチャ

  • 133123/03/30(木) 23:06:27

    電伝虫が切れた音が聞こえると、藤虎は改めてシャンクス達を向き直る。

    シャンクスの右手はグリフォンの柄に添えられていたが、今の所抜かれそうな気配はない。


    「……海軍もワケありみたいだな」

    「えェ、お生憎様で。まず何から話しやしょうか……

    ……あっしら海軍がこのエレジアに来たのは、世界政府の命を受けてのことでやす。

    端的に言えば、あんた方の娘さんのライブを中止させろと。麦わらの一味さんは知っているようですが、そんな指令が出やしてね」


    「それは……何故だ?」

    「赤髪の、あんたがどこまで知ってるかは知らねェが……政府はウタウタの能力の特性と危険性を危険視していたんで。

    ただ、普通にライブをしているだけならそんな指令も出なかったことでしょう。海軍にも政府にも、お嬢さんのファンは大勢いる……

    だがそこに、ウタウタの能力を狙った【四皇】がエレジアへ接近しているという報告が入っちまった。

    ……あんたとさっきのビッグマム、それから黒ひげの3人だ」

  • 134123/03/30(木) 23:09:47

    藤虎は全てをシャンクス達に伝えた。

    ウタの命を守るために、ウタへ切先や銃口を向けたこと。

    武器こそ向けたが、実際にその力を振るったのは自分だけだということ。

    今倒れている麦わらの男とその仲間が、ウタを護るために戦い抜いたこと。


    「……………………」

    「とりわけ麦わらのルフィは勢いが良かった。命にかえても守り抜いてみせるという気概が感じられやした。

    本来であればこんな事、あんた方に話す話じゃあないんでしょうが……

    それじゃああっしの気が済まねェんで。こうしてお伝えさせて頂きやした」


    「………………そうか」


    怒り、安堵、後悔……

    話を聞き終えたシャンクスの胸中には、複雑な感情が渦巻いている。


    いつの間にかシャンクスの右手は、グリフォンの柄から離れていた。

  • 135123/03/30(木) 23:13:11

    「そうだったのね……」

    「……何か、大変なんだな海軍も」

    「同情には及びやせん。平和と市民を守るのがあっしら海軍の本分なもんで……

    本当ならお嬢さんの目が覚めるまで残りてェんだが……生憎そうも言ってられねェ。

    本人には直接言いやしたが、お嬢さんが目を覚ましたら、『海軍を恨んでくれてかまわない』とだけは伝えておいてくださいや」

    「…………………ああ」


    それだけ言うと藤虎は深々と頭を下げ、ステージを後にする。

    麦わらの一味も赤髪海賊団も、その後ろ姿を攻撃するような真似はしなかった。



    「…………待って……!」

  • 136123/03/30(木) 23:15:46

    「……!」


    か細く小さな呼び止める声も、自らで目を閉じてしまった藤虎にはよく聞こえた。

    赤髪海賊団に囲まれながら、虚な目のまま半ば無理やりに上体を起こすウタ。


    「ウタ……もう目が覚めたのか?」

    「……………………」


    シャンクスの呼びかけにも反応はない。最早はっきりと意識があるのかも分からない。

    その場にいる皆が見守る中、ふらふらと身体を揺らしながら、至極ゆっくりとウタの口が動いた。




    「………………ありがと、う」

  • 137123/03/30(木) 23:19:16

    「…………?」

    「…………………っ」フラッ


    一言だけ言うと、ウタはまた糸の切れたマリオネットの様に力無く倒れ眠ってしまった。

    すうすうと寝息が聞こえ始めると、少しだけ困った様に藤虎が呟く。


    「…………まさか礼を言われるとは……こいつは困りやしたね……


    ………………礼を言うのはこっちでさァ」


    独り言の様に呟いてから、藤虎は瓦礫に飛び乗り飛び去って行った。

    後に残されたのは互いに顔を見合わせる麦わらの一味と赤髪海賊団、それから眠っている観客達。


    眠っていた観客達が目を覚まして動き出し、思い思いにライブの想い出を語りながら帰路に着くのは、それから少し後のことだった。

  • 138123/03/30(木) 23:21:43

    本日はここまで

    やっと色々終わりましたね

  • 139二次元好きの匿名さん23/03/30(木) 23:52:10

    海軍も無事に帰れてよかった

  • 140二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 00:28:38

    なんとか収まってよかった
    ウタとルフィはいつ起きるかな

  • 141二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 06:49:26

    ほしほし

  • 142二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 09:42:04

    保守

  • 143二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 12:34:33

    黒ひげ…。やっぱ狙ってたのか。

  • 144二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 13:48:57

    赤犬も流石に何か思うところがあったのかな

  • 145123/03/31(金) 22:43:25

    また明日

  • 146二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 00:27:04

    保守

  • 147二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 08:14:37

  • 148二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 13:48:58

    油断ならない黒ひげ好きよ

  • 149二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 22:22:41

    遅刻の理由次第じゃウタは殴っていいと思うよ
    どんな理由でも殴っていいと思うよ...

  • 150123/04/01(土) 23:07:46

    ごめんよ

  • 151二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 23:39:37

    このレスは削除されています

  • 152二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 23:51:00

    ウタちゃん、シャンクスを思いっきりぶん殴れ。
    それくらいして良いと思うよ。うん。

  • 153二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 08:44:02

    観客も海軍に安全に送ってもらえるし良いタクシーも来てラッキーだな!

  • 154二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 17:06:13

    あげとこ

  • 155123/04/02(日) 22:35:34

    終わりが近づいてくると自分でも寂しくなるね

  • 156123/04/02(日) 22:35:55

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    『ウタ、ありがとう!』

    『元気が出たよ!』

    『ウタのおかげでまた明日からも生きていけそうじゃ』


    よかった、みんなに喜んでもらえて。

    こんな変な終わり方になっちゃってごめんね。もうちょっと歌いたかったけど……


    『いいよ、ウタはおれ達を守ってくれたんだろ?』

    『あのピエロみたいなでっかいの、ちょっと怖かったけど……でもすっごく強かった!』

    『また配信で素敵な歌を聞かせておくれよ、それが毎日の楽しみなんだ』


    そっか……ありがとう。そう言ってくれて嬉しいよ。

    私の歌を聴いたことないって人もまだまだたくさんいるだろうし、私もっともーっと頑張るね!

  • 157123/04/02(日) 22:41:22

    『ところでウタちゃん、途中でステージに乱入してきた五番目の皇帝とはどういう関係なの?』

    『麦わらとも何だか随分仲良さげだったけど……』


    あ、あはは……みんな目が怖いよ……

    友達だよ、まだ友達。配信で時々子供の頃の友達の話してたでしょ?あれルフィのことなんだ。


    『へー、ということはあの石鹸の作り方も麦わらから教えてもらったんだ。ちょっと意外かも』

    『…………まだ、ね……』

    『あ、そう言えばウタちゃん、お父さんは結局来てくれたの?』

    『そういやそうだったな。それっぽい海賊はおれ達も見かけてないけど……』


    ……それは……分かんないなあ。

    私もまだ見かけてないんだよね……


    ……でも私今、何だか誰かに抱っこされてるみたいな気分なんだ。何故かは分からないけど……

    すごく暖かくて、優しくて……ふふふ。


    何か、すっごく幸せだ。

  • 158123/04/02(日) 22:45:15

    ───────────────────

    「…………!」パチ


    目が覚めると、私はエレジアの自室のベッドの上にいた。

    ところどころ記憶が吹き飛んでて色々思い出せない。えーっと確か……


    覚えてるのは、トットムジカを呼び出してルフィに助けてって言ったところまで。

    その後……ぼんやりとだけど、あのビッグマムって海賊を掴まえた……様な気が……


    そこまで思い出して、ハッと気がついて自分の服を見てみる。

    ……知らない間にパジャマに着替えさせられていた。あのお気に入りの白ワンピース、鼻血がついたままだったりしたら嫌だなあ。


    起きたばかりだからか、何だか頭がふわふわして、まだ夢の中にいるみたい。

    試しに自分のほっぺたをぐいと引っ張ってみる。ちゃんと痛い。


    「……………………」


    ……お腹すいた。

  • 159123/04/02(日) 22:50:45

    意識が少しずつハッキリしてきたところで、ベッドから降りて鏡を見てみた。


    「うわ……」


    ひどい寝癖。顔も何だか自分で思ってるより疲れてるように見える。

    降りてみて分かったことだけど、ハッキリしてるのは意識だけで身体は全然言うことを聞かない。

    歩くだけで身体の節々が軋んでる様な気がする。


    「うぐぐ……」


    それでも何とか歩けばするので、取り敢えず部屋から出た。

    私の部屋はカーテンを閉め切ってたから分からなかったけど、どうやら中々に変な時間に目が覚めてしまったらしい。

    廊下の窓から見える月は少し欠けていて、真上を通り過ぎてから少し経つぐらいだろうか。

  • 160123/04/02(日) 22:53:51

    少し歩いて、部屋の一つから灯りが漏れていることに気がついた。ゴードンの部屋だった。

    灯りをつけっぱなしで寝てしまったのか、それともこんな時間まで何かしているのだろうか。


    コンコン

    「どうぞ」


    ノックをすると反応があった。まだ起きているらしい。


    ガチャ

    「…………や」

    「ん……? おや、目が覚めたのかい」

    「うん……おかげさまで」


    ゴードンは読んでいた本を伏せて歩み寄ってきた。

    元々割と遅くまで起きている人ではあったけど、こんな時間まで読書……?

    いや、もしかして……


    「……もしかして、起きててくれたの?」

  • 161123/04/02(日) 22:57:19

    「ああ……もうすぐ起きるかもしれないと思って起きていたんだが……

    身体は大丈夫か?どこか痛んだりは……」

    「あー……大丈夫ではあるんだけど……

    ちょっと、全身痛いかな……あはは」

    「そ、それは……」


    少しだけ照れ臭くなって笑ってしまうと、ゴードンもまた少しだけ表情を崩した。

    あれだけ無茶をしたのに、またこうして五体満足で話せてるのが何だか嬉しかった。


    「……ごめんなさい。ワガママばっかり言ったのにいっぱい心配までかけちゃって……」

    「…………うむ。もうこれっきりにしてくれ」


    ……流石にあの無茶を擁護はしてくれなかった。

    まあ正直結果オーライでしかなかったし……ゴードンの言う通りこれっきりにしておこう。

  • 162123/04/02(日) 23:01:25

    「そういえば、ファンのみんなは?ライブの後は大丈夫だった?」

    「ああ、皆怪我もなく無事だったよ。昨日の内に皆それぞれの家へ帰って行った。

    とても素晴らしいライブだったと、皆口を揃えて言っていたよ」

    「そっか……ふふ、嬉しいな」


    自然と顔が綻ぶ。ちゃんとみんなに楽しんでもらえたんだ。

    それにみんな無事だったってことは、私ちゃんとみんなのこと守れたってことだよね。海軍のおかげでもあるけど。


    …………ん?昨日の内?


    「……結構寝てたんだね私」

    「あれだけ無理をしたんだ。1日で目を覚ましたことの方が不思議なくらいだ」

    「あはは……


    ……それで、なんだけどさ」

  • 163123/04/02(日) 23:05:25

    「?」

    「私が寝ちゃってトットムジカが消えちゃった後も、多分あの海賊はまだ倒れてなかったんだよね。

    ルフィのすっごいパンチで潰れるところまではギリギリ覚えてるんだけど……その後の記憶が無いんだ。

    その後、誰が助けてくれたのかなって。海軍のみんなは私と一緒にファンのみんなを守るのでいっぱいいっぱいだったし……」

    「………………」


    「…………それに……

    ……気を失った後に、ちょっとだけ夢を見たの。

    ファンのみんなが沢山ありがとうって言ってくれて、すごく嬉しかったんだけど……


    …………その時、何故か誰かに抱っこされてるみたいな気分だったんだ。

    外の世界の私はあの時気を失ってたはずだし、誰かが私のことを抱っこして運んでくれたのかな……


    それでさ、もしかしてなんだけど……

    ……私をここまで運んでくれたのって…………」

  • 164123/04/02(日) 23:08:53

    いつもみたいに髪を結っていたら、きっと今頃忙しなく動いてたんだろうな。

    落ち着いて話してるつもりだったけど、どうにも自分で期待を抑え切れてる気がしない。


    「…………フフ」

    「!」


    そんな私の様子が可笑しかったのか、ゴードンは小さく笑った。

    その後ゴードンから返ってきた答えは、私の期待通りのものだった。


    「……ああ。お前の思っている通りだ」

    「…………!!」


    「彼らなら別の部屋にいる。起きているかは分からないが……

    少なくとも、船長の彼は寝ずに起きていると言っていた。私と同じ理由だろう。


    …………会いに、行くか?」

  • 165123/04/02(日) 23:12:19

    ゴードンの言葉は疑問系だったけど、私の答えなど分かりきっているとでも言うかのように移動用の灯りを用意し始めた。

    実際私の答えは決まってるんだけど。


    「………………ふう」


    何度か深呼吸をして、少しだけ心の準備。

    会うの何年ぶりだろう。12年ぶりか。


    「………………………」


    ……ダメだ。何度深呼吸しても期待も不安も拭いきれない。

    実際シャンクスと会った時、私はどんな反応をしてしまうんだろうか。

    喜ぶ?怒る?泣く? それとも……


    「……お前の気持ちも分かる。不安になる気持ちも……

    心の準備は必要だろう。少し時間を置こうか」

    「……うん」

  • 166123/04/02(日) 23:16:26

    ゴードンに少しだけ待ってもらって、何とか心を鎮める。

    大丈夫だ私。別に戦いに行くわけじゃないんだから。


    …………よし。


    「……さて、行こうか」

    「うん」


    ようやく会える。シャンクスに会える。

    ドキドキしながらドアノブを回し、扉を開けて……


    ガチャ



    「あっ」

  • 167123/04/02(日) 23:18:01

    「ん?」

    「えっ」



    「「「………………………」」」



    12年間ずっと会いたかったその人は。


    今まさに、この部屋のドアノブに手をかけようとしていたところだった。

  • 168123/04/02(日) 23:20:43

    本日はここまで

    さあ感動の再会だぞ感動だぞ

  • 169二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 23:39:29

    ハンカチとバケツ用意しときますね。

  • 170二次元好きの匿名さん23/04/03(月) 00:13:39

    し、締まらねえ…

  • 171二次元好きの匿名さん23/04/03(月) 06:46:54

    待機

  • 172二次元好きの匿名さん23/04/03(月) 16:19:56

    あげとこ

  • 173二次元好きの匿名さん23/04/03(月) 21:52:29

    このレスは削除されています

  • 174123/04/03(月) 21:52:44

    本日はお休み

  • 175二次元好きの匿名さん23/04/04(火) 06:34:47

    おい〜?情けないお頭をウタが金的してもいいのんか〜?

  • 176二次元好きの匿名さん23/04/04(火) 16:48:48

    ルフィが気を遣ってシャンクスの尻蹴飛ばしてここまでよこした可能性

  • 177123/04/04(火) 22:49:01

    ルフィならまだ寝てるよ

  • 178123/04/04(火) 22:49:29

    「……来ていたのか」

    「あー…………何だ、そろそろウタが起きたんじゃないかと思ってな……」


    大人達は少しだけ気まずそうな会話をする。

    シャンクスがここまで来たのは偶然か、それとも何かを察したからか……


    私はと言うと……歩きながらゆっくり心の準備をするつもりだったのに、いきなり目の前に現れられたら心の準備も何もない。

    あまりにも咄嗟のことだと思考がまともに働かない。考えていたこととか、全部、全部……


    「……しゃ…ん……」


    ……あ

    だめだ



    ぜんぶ ふっとんだ



    「し゛ゃ゛ん゛く゛す゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!!!!」

  • 179123/04/04(火) 22:53:57

    「!」

    「うわあああああああ!!!!しゃんくす!!!しゃんくすううゔゔゔ!!!!」ガバッ


    「う、ウタ……」

    「ばか!!!かなしかった!!さみしかったあ!!ばかばかばかあああ〜〜!!!」ポカポカ


    「…………すまな」

    「しゃんくすのばかあ〜〜!!!うわあああ〜〜ん!!!」ギュウウ


    「………………ウタ……」

    「フフ……」


    嬉しいはずなのに、涙が後から後から溢れてくる。

    何も考えられない。何も考えたくない。

    自分が何を言っているのかが自分でも分からない。

    困ったようなシャンクスの声と、少し微笑んだゴードンの笑い声は、響く私の泣き声で掻き消されてしまった。

  • 180123/04/04(火) 22:58:04

    「…………落ち着いたか?」

    「おちつがない……やだ……はなれない゛……」ギュ


    たった数分で落ち着けるわけない。

    こっちはずーっと会いたかったんだから。

    ぜったいはなさない。


    「……ん……」ギュウウ

    「ウタ…………」

    「…………んん……!」ジワ

    「……………………」


    ポン


    「!」


    シャンクスの大きな手が、私の頭を優しく撫でた。

    昔より硬くてゴツゴツしてて、あれからどんな生活をしてきたのかが何となく伝わってくる。

  • 181123/04/04(火) 23:01:55

    「……すまない、ウタ。気を悪くしたのなら謝るしかない。

    ……年頃の娘とどう接すればいいのか……そんな知識が無くてな……」


    シャンクスがどこか及び腰なのは、お互いに年月が経ってしまったことからの私への気遣いもあったらしい。

    でも知らない。そんなの関係ない。


    「……ちしぎなんていらない……むかじとおなじでいい……!!

    むかじみたいに……また……だきしめて……!」

    「……………………」


    ギュッ


    「!」

    「…………これで、いいか?」


    「…………ゔん……!」

  • 182123/04/04(火) 23:06:30

    また涙が溢れてきた。でも、今度はきっと笑えてる。

    沢山あった話したいことも聞きたいことも沢山あったはずだけど……


    昔は当たり前だったその腕の中の温もりが、今はこんなに愛おしい。

    今はもう少しだけ、私のワガママに付き合ってもらうからね、シャンクス。


    「……シャンクス……!」

  • 183123/04/04(火) 23:10:24

    ───────────────────

    ゴードンは私が泣き止むまで見届けると、「シャンクスとはもう話したよ」と言って自室に戻ってしまった。

    側から見たらちょっと薄情に見えるかもしれないけど、きっと私とシャンクスに気を遣ってのことだ。

    赤髪海賊団がいる部屋まで、月明かりが差し込む廊下をシャンクスと2人で歩いて行く。


    「……………………」

    「…………ねえ、シャンクス」

    「ん?」


    「……ありがとう。ちゃんと来てくれて」

    「……ああ」


    「…………大遅刻だったけど」

    「う……そ、それは……」

  • 184123/04/04(火) 23:15:07

    「……フフ、いいよもう。来てくれたんなら今更怒ったりしないからさ。

    でも、なんで遅れたの?まさか悪い海賊に襲われてたとか……」


    「…………今更隠しても仕方がないか……」

    「?」


    「ウタ……お前ももう知ってるかもしれないが……おれ達はもう【四皇】なんて呼ばれちまってる。

    此間の怪物みたいなデカい婆さんもそう。世間じゃおれ達の方が誰よりも一番悪い海賊扱いされてるんだ」

    「………………」

    「今のお前が今のおれ達を見れば……どう思っちまうんだろうな。それだけは少し怖いよ」

    「…………まあ、その辺は知ってるかな。でもそれが……」


    「……先に言っておく。ここから先はただの見苦しい言い訳だ」

  • 185123/04/04(火) 23:20:27

    「?」

    「……あのドレスローザの親娘が出てきた配信の後、おれ達はすぐにエレジアへ向けて出発した。

    だがまあ……折角の娘の晴れ舞台だ、何か贈り物を用意して行こうって話になってな。

    それでエレジアまでの道中にあった島に寄ったんだが……それが不味かった」

    「マズかった?」


    「少し浮かれてたんだろうなおれ達は。そんな資格がどこにあるんだって話なのに。

    おれ達のナワバリの島ならまだしも、その島は海賊なんてものとはほとんど縁のない平和なカタギの島だったんだ。

    そんな島がいきなり海賊、それも四皇の一団に乗り込んで来られれば……どうなるかは何となく分かるだろう?」

    「…………なんとなく」


    「……誰かが通報したんだろう、あっという間に海軍がやって来た。

    しかもあろうことか……あの英雄ガープが先頭で突っ込んできやがったんだ」

  • 186二次元好きの匿名さん23/04/04(火) 23:22:20

    理由がルフィとウタが予想してた二日酔いの次くらいに情けないよシャンクス...

  • 187123/04/04(火) 23:24:26

    「今のおれ達なら負けることはないにしても、あんな怪物と真正面からやり合ってたら双方無事で済むはずもない。

    何とか穏便に済ませられないかと思っていたんだが……

    ……あの爺さん、突っ込んで来るなり『さっさと行かんかバカタレが!!』って耳元で叫びやがってよ……耳が潰れるかと思ったぞ」

    「うわー……何か想像できる……」

    「……というかウタ、普通に話してたがお前ガープのこと知ってるのか?」

    「あ、うん。ルフィのお爺ちゃんのすっごい海兵さんでしょ、知ってるよ」

    「そ、そうか、ならいいんだが……

    まあ幸か不幸か、何故かおれとお前の関係を知ってたガープがその場の指揮を取っていたから大事にはならずに済んだ。

    島の住人達も幸い話せば分かる連中でな、事情を話したら買い物ぐらいならしていけばいいと言ってくれたんだ」

    「そっか……よかった」


    「……いや、むしろ本題はここからなんだ」

  • 188二次元好きの匿名さん23/04/04(火) 23:30:19

    >>186

    ちゃんと最後まで聞いてから判断しろ

    まだ本当にしょうもない理由かどうか分からないのに早漏過ぎるぞ

  • 189123/04/04(火) 23:33:25

    「え?」

    「年頃の娘に贈るプレゼントは何がいいかなんて、ウチの連中じゃてんで見当もつかない。

    店の人間にでも聞けばよかったんだが、全員が全員しょうもない意地を張り始めてな……」

    「あー……うん……」


    「やれ服だ、やれ化粧品だといい歳した野郎どもが店先で言い争いしてたのは海賊とは違った意味で恐怖だっただろうよ。

    とっくに遅刻だってのに収集がつかなくなって来たもんで、もうおれが無理やり決めて止めたんだ」

    「おお、流石シャンクス」


    「…………まあ、それをお前が気にいるかはまた別の問題なんだがな……」

    「……?」


    そこまで言ったシャンクスは自重気味に小さく笑うと、懐から何かを取り出した。



    色とりどりの花が沢山詰め込まれた、とっても綺麗で大きな花束だった。

  • 190二次元好きの匿名さん23/04/04(火) 23:35:03

    シャンクス達にとっても大切な再会だもんな…

  • 191123/04/04(火) 23:43:36

    「わあ……!」

    「……おれの発想力じゃこれが限界だったもんでな。クルーの奴らにもありきたりだ何だと散々言われたよ」


    両手で持たないと溢れそうなぐらいの大きな花束。こんなのどこに持ってたんだろう。

    少しだけ顔を近づけてみる。色んな花の香りが混ざった、何だか優しい気持ちになれる香りがした。


    「…………気に入って、くれるか?」

    「………………」


    自分の両目からつう、と涙が流れるのが分かった。だけど、口角は自然と上がっていく。

    確かにありきたりだし、置き場所にも困っちゃうし、生花だからいつかは枯れちゃうけど……


    ……だけど。

  • 192123/04/04(火) 23:44:57

    「……うん……すごく嬉しい。

    …………すっごく嬉しいよ!!ありがとうシャンクス!!」


    これ以上ない、最高のプレゼントだった。

    これなら、遅刻も許してあげようかな。

  • 193123/04/04(火) 23:48:20

    本日&本スレはここまで

    不器用な愛情っていいよね

  • 194二次元好きの匿名さん23/04/04(火) 23:50:21

    お疲れ様
    次回と次スレ待っておくよ

  • 195二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 00:04:41

    割と許せる理由だけど、情けないのは情けない理由でもあったな
    まあ12年ぶりに会う娘のために気合が入り過ぎたってことか

  • 196二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 00:05:47

    >>188

    ウタの気持ちはともかく情けなさすぎるぞシャンクスって話だったでござる

  • 197二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 00:07:24

    そういやこの話匂いが云々の話でもあったな...(スレタイを見ながら)

  • 198二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 00:09:07

    でも何プレゼントするかの言い争いしてる間に黒ひげ海軍ビッグマムにウタが危険に晒されてたのはアウトすぎるよシャンクス...

  • 199二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 11:45:22

    200は次スレ貼るように取っておけるかな

  • 200123/04/05(水) 12:11:49

オススメ

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