【SS】暴れん坊将軍U『幸せの花売り』

  • 1第五園長21/11/20(土) 04:52:35

    5時までに更新すれば毎日投稿ですよね、では3作目です
    本日分から、スレタイにタイトルもつける事にしました

  • 2第五園長21/11/20(土) 04:53:30

       「暴れん坊将軍」

    暴れん坊将軍 オープニングテーマ

    「幸せの花売り」

  • 3第五園長21/11/20(土) 04:53:46

    江戸の大通りが賑わっていない日は無い。そして天下の8代将軍吉宗もまた、ここにいた。


    ───お花、いりませんか?─
    ───お花、いりませんか?─
    「お、お侍しゃんっ、おひゃな!いりませんか?」
    ─あうぅ…
    「おお、これは見事な薔薇だ。1つ頂こうか」
    「あ、ありがとうございまひゅっ!」
    「ははっ、こちらこそありがとう。また、買わせてもらうよ」

  • 4第五園長21/11/20(土) 04:54:23

    「それで買ってきたのがこの薔薇なのかい、新さん?」
    「ああ、童(わらべ)の花売りでなぁ。この花も素晴らしいが、健気に花を売る少女もまた、真に可憐であったよ」
    「あら、そんならあたしも一目会いたかったねぇ。せっかくだ、この薔薇はここに活けておくよ」
    「ああ、おかみさん助かるよ」




    「えへへ〜、お兄様、今日ね、今日ね、
    お花を買ってくれた人がいたの!」
    「そうかー、良かったなライス。明日も行ってくるか?」
    「うん!また行ってくるね!」


    ─ライスのお花で、誰かが幸せになれるなら─

  • 5第五園長21/11/20(土) 04:54:58

    翌日、大通りにて─
    「お花、いりませんか?」
    「お花、いりませんか?」
    「お嬢さん、素敵なお花ですね。1輪買おうかな」
    「ありがとう、ございまひゅ!」
    ─あぅぅ…
    「はっはっは、ところでお嬢さんは1人で花売りをしてるのかい?」
    「ううん、お兄様がお花を作ってるの。だから、2人なの」
    「そうか、お兄さんと2人かい」
    (こりゃ丁度いいわい」
    「お爺さん、どうしたの?」
    「いやいや何でもないよ、また買いにくるよ」
    「うん、ありがとうございました!」


    「さっきのお爺さん、笑ってくれたなぁ…。えへへ」  
    「昨日ぶりだな、お嬢さん」
    「あー!昨日のお侍さんだ〜。今日も、お花買ってくれるの?」
    「あぁ、また買わせて貰おうか」
    「ありがとう、ございましゅ!」
    あぅぅ…

  • 6第五園長21/11/20(土) 04:55:35

    (おい、あのガキだ)

    「うむ、やはり子どもは良い。国の宝だなぁ」
    ──お花、いりませんか?──
    ──お花、きゃっ──
    ──貴様、何をする!この衣がいくらするか知ってるか!?──

    「む!まずいな、行くか」

    「小娘が!この場で斬り捨てても良いのだぞ!!」
    「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

    「止めよ、子どもを泣かせるな」
    「何だ貴様は!?貴様も斬られたいか!?」
    「俺は天下の風来坊・徳田新之助。この場で腰の物を抜くと言うなら、俺が相手してやろう」
    「チッ、この落とし前は必ずつけるぞ!」

    「ごめんなさい、ごめんなさい」
    「謝るな。それより、花が踏まれてダメになってしまったな。とりあえず、あそこに行くか」
    「え?」

  • 7第五園長21/11/20(土) 04:55:59

    「そうかい、そりゃ災難だったねぇ」
    「ライスが悪いの。ライスがいると、周りの人を不幸にする…」
    「そんな事ないよ。ホラ、お茶だよ」
    「ありがとうございま…ひゃっ!?」
    「あっつ!あっつ!」
    「アンタ、五月蝿いよ!ごめんねぇ、熱かったかい?」
    「いや五月蝿いってお前、俺ァ」
    「お黙り!向こうで着替えておいで!全く、鈍臭いったらありゃしない」
    「やっぱり、ライスは悪い子なんだ…」
    「そんな事ないったら。新さん、後でこの娘を送ってやってくれよ」
    「元よりそのつもりだ、任せておけ」

  • 8第五園長21/11/20(土) 04:57:09

    「これがお主と兄の家か。随分と…いや、止めておこう」
    「おお、ライスお帰り。…そっちの人は?」
    「ただいま、お兄様!この人は徳田新之助さん。ライスのこと、助けてくれたの」
    「おお、それはかたじけない」
    「いや、礼には及ばんよ。それより、ここには2人で?」
    「はい、ですが幸せですよ」
    「失礼だが、手に職はあるのか?」
    「はい。この家の裏で、薔薇を育てています。ライスには、いつも助けられてますよ」
    「えへへ…。お兄様はね、青い薔薇を育ててるの。ナイショだよ?」
    「青い、薔薇?」
    「ああ、ライス。悪いけど、裏の花を見てきてくれないか?俺はこの人をもてなすから」
    「うん、わかった」


    「さて、改めて、ライスを助けていただき、ありがとうございました」
    「何、民を守るのは武家として当たり前の事よ。それより、青い薔薇とは何だ?この世にその様な物はなかったはず」
    「それは…。いえ、あなたはきっと悪人ではない。お話しましょう」

  • 9第五園長21/11/20(土) 04:58:46

    「私とライスは、本当の兄妹ではありません。しかし、別の土地で本当の兄妹の様に暮らしていました。ところが、彼女の両親が芥子に手を出してしまいましてね。医者は、治すには青い薔薇が必要だと言いました」
    「ふむ…」
    「もちろん、青い薔薇なんて物はこの世に存在しません。あそこで何も打つ手はないと知れば、ライスは死を選んでいたでしょう。そんな事!あってはならない!!そこで私は、ライスを故郷から連れ出す事にしました。青い薔薇は、この土地では育たないと嘘をついて」
    「ふむ…」
    「彼女の両親は、今も生きています。しかし、もうライスをライスと認識出来ないかもしれない。いつかライスが現実を受け入れる程に強くなるまで、私は赤い薔薇を育てるのです」
    「芥子の花は、数年前に大元を潰した。二度と世に現れることはない。
    と、将軍が言っていたそうだ」
    「それは良かった…」

    「では、俺はこれで。また、薔薇を買わせてもらうぞ」
    「ありがとうございました」
    「ありがとう、ございましひゃ!」

  • 10第五園長21/11/20(土) 05:02:27

    「では、俺はこれで。また、薔薇を買わせてもらうぞ」
    「ありがとうございました」
    「ありがとう、ございましひゃ!」


    「半蔵、ライスシャワーに因縁をつけた武士はどうした」
    「ハッ、大商人(おおあきんど)の越後屋の屋敷に」
    「俺があの場を収めた時に、視線を感じた。必ず、何か裏がある」
    「上様、大事(だいじ)にござります」
    「おその、何を見た」
    「奴らの屋敷で、芥子の花を」
    「何!?芥子の花だと!?」
    「量は多くありませんでしたが、間違いなく」
    「まさか、狙いはライスシャワーの兄君か!?」

  • 11第五園長21/11/20(土) 05:10:49

    「しかし越後屋よ、惜しかったな」

    「ええ、真に。花の知識がある者がいれば、芥子栽培も軌道に乗るのですがな」

    「仕方あるまい、大っぴらには出来んのだ。身寄りのない花屋が手に入れば、我らの先は安泰と言うもの。必ず、奴らを手に入れろ」

    「ははっ、お代官様が残していた芥子の花、必ずやこの越後屋が咲かせて見せましょう」



    「貴様らの様な下衆共に、花など咲かせられるか」

    「何奴!?」

    スパーン

    「代官よ、この顔に覚えはないか?」

    …?

    カーンッ

    カーンッ

  • 12第五園長21/11/20(土) 05:18:23

    「う、上様!?」
    「なんですと!?」
    ハハーッ

    「心を惑わす芥子の花を隠し持ち、再び人々を脅かさんとする代官!並びに、金儲けの為ならば罪無き人々を食い荒らし、美しい兄妹の愛を利用せんとした越後屋!断じて許せん!!」

    「両名潔く腹を切れぃ!」


    「恐れながら、恐れながら上様には血の花を咲かせていただきたく…」
    「貴様、まだ罪を重ねるか!」
    「者共かかれ!こやつは上様を騙る偽物じゃ!!」
    「であえ!であえ!」
    ドタドタドタ

    スラァ…
    チャキッ
    「半蔵!おその!」
    「「ハッ!」」

  • 13第五園長21/11/20(土) 05:21:32

    デーンデーンデーン

    【作業用BGM】◎良音質◎ 暴れん坊将軍 殺陣のテーマ

    「助けてくれぇー!金ならやる!いくらでもやる!!」

    ザシュッ

    「ぐ……」


    バタッ バタッ

    「残るはは貴様のみぞ、代官!」

    「ぬぅ、きぇぇぇ!」

    キン! ガッ!

    「成敗!」

    ドシュッ


    チャッ キン

  • 14第五園長21/11/20(土) 05:27:24

    数日後…


    「お兄様、ただいま」
    「お帰りライス。どうした?そんなに暗い顔をして」
    「お兄様、ライスね、今日街で青い薔薇が売ってたんだ」
    「えぇ!なんだって…!」
    「でもね、それは青い薔薇じゃなくて、赤い薔薇を藍で染めたんだって。青い薔薇なんて、本当は存在しないんだって!街の人が言ってたんだ…。
    ねぇお兄様、ライスは、やっぱり誰も幸せに出来ないのかな…?」

  • 15第五園長21/11/20(土) 05:35:56

    その夜──
    「ねぇお兄様、この川に青い薔薇があるの?」
    「うん、そうだよ。見てごらん。川に落ちないようにね」
    「うん…、でも青い薔薇なんて何処にも……?
    ううん、ある。青い薔薇が、ある!」


    それは、月の光を浴びて水面に写った薔薇だった。トレーナーは1輪の薔薇を持ってきていた。何の変哲もない、赤い薔薇を。しかし水面のそれはゆらゆらと揺れ、どこまでも深い青だった。


    「ね?本当に、青い薔薇はあったでしょ?」
    「うん、本当に、本当にあったんだ!」

  • 16第五園長21/11/20(土) 05:39:14

    人は、進歩する。いつかきっと、彼女の両親が救われる事を祈って。今日も暴れん坊将軍は己が道を征くのだった…。


    初代暴れん坊将軍 エンディング


  • 17第五園長21/11/20(土) 05:41:22

    今回ビターエンドです。

    ですが、ライスシャワーがこの先折れる事は無いでしょう。

  • 18二次元好きの匿名さん21/11/20(土) 05:43:45

    今日のおはよう時代劇も面白かった

  • 19二次元好きの匿名さん21/11/20(土) 05:44:17

    >>12

    >「恐れながら、恐れながら上様には血の花を咲かせていただきたく…」


    なにちょっと上手い言い方してんだこのヤロウ、と思わせるこの代官は一味違うな。

  • 20第五園長21/11/20(土) 05:44:47

    地味に御庭番の男の名前が変わっています。
    暴れん坊将軍シーズン1が男助八→半蔵。シーズン2が才蔵だとか。
    分かるかい
    これからは半蔵で統一する所存

  • 21第五園長21/11/20(土) 05:46:47
  • 22第五園長21/11/20(土) 05:48:06

    オチが…力技すぎたかも
    まぁいっか

  • 23二次元好きの匿名さん21/11/20(土) 05:53:16

    >>22

    実際の暴れん坊将軍もこんな感じのとき結構あるぞ

  • 24二次元好きの匿名さん21/11/20(土) 05:55:51

    お兄さま警察だ!
    …ssの出来に免じて今回は見逃す!次はないからな!

  • 25二次元好きの匿名さん21/11/20(土) 05:59:07

    素晴らしいものを見た……今日はいい日になる

  • 26二次元好きの匿名さん21/11/20(土) 06:21:06

    将軍ssとても好き、本当にありがたい

  • 27二次元好きの匿名さん21/11/20(土) 06:28:48

    何で越後屋が切腹させられるの

  • 28二次元好きの匿名さん21/11/20(土) 07:25:15

    毎回毎回クオリティが高い!

  • 29二次元好きの匿名さん21/11/20(土) 08:00:26

    お勧めで見かけたけど滅茶苦茶笑った
    そして朝から新作が来ていた
    しかも園長のひとりだった
    面白かったこと以外訳がわからない……

  • 30第五園長21/11/20(土) 16:11:20

    >>24

    やらかした

    >>27

    芥子の花はアヘン(麻薬)の原料です。それを栽培しようとする一味のトップとなれば、まぁ死罪ではないかと。

    他には、麻酔の原料として少量だけ栽培されていたとか。

  • 31第五園長21/11/21(日) 04:09:54

オススメ

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