- 1二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 23:14:11
- 2二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 23:14:39
3月28日、深夜0時過ぎ。
本当は出歩いちゃいけない、秘密の時間。
「申し訳ありません、まだ片付けていない食器等が並んだままで。ファルコンさん達が張り切りすぎてしまって…」
「いえ、こちらこそ…と言うか誕生日、過ぎちゃってますね。夜遅くになってしまって、本当にすみません!予定…大丈夫ですか?」
アタシは、フラッシュさんと一緒に寮のキッチンに居た。
「いえ、貴方の優しさには応えたいと思っていましたから。貴方の名前も、貴方と過ごす時間のことも…ちゃんと手帳にも書いてあります」
笑顔で嫌な顔一つせず接してくれるアナタこそ、本当に優しい人。
真面目で、ストイックな先輩。
こんな人になりたい、と思わせてくれる素敵な人。
「ケーキ、食べますか?貴方が来ることを想定して、予め切り分けておいた物ですが」
「はい、是非!」
アタシ達がこう言った付き合いがあることを、意外だと思う人も少なくない。
フラッシュさんが高等部で、アタシが中等部。
そしていつも、アタシも先輩も、違う相手と絡んでいる。
ウオッカ達には、驚かれたっけ。
アタシがフラッシュさんに、いつも勉強を教えてもらっていること。
何故かいつもタイミングを見計らっているのかってくらい、タキオンさんが後でやってくるけど。
タキオンさんにも宜しくお伝え下さい、とケーキの切り分けを渡される。
…多分今度の勉強会にもらん…合流してきそうだけど、早めに渡すに越したことはない。LANEで予定を聞いておこう。
「夜は冷えますから、紅茶をお淹れしますね」
これじゃどっちが祝う側なのか分からない。
思わずアタシがやります、と言おうとしたけどドイツではお祝いされる側が饗す物ですよ、とウインクしながら人差し指で唇を押さえられる。
真面目なのに、こういうお茶目な所も併せ持っている人だ。 - 3二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 23:16:48
「フラッシュさんが誕生日なこと、知ってはいたんですけど…何をあげれば良いのか迷っちゃって。アナタは…何でも出来るから」
「何でも、は出来ませんよ。ですが…ありがとうございます。その心遣い其の物が、何よりも嬉しいです」
「それでお祝いするのが遅れちゃったら、意味がないんですけどね…すみません」
「謝らないでください。むしろ、貴方に来て頂ける物として本日…いえ、昨日の予定を建てていましたので」
「…ありがとうございます」
淹れてもらった紅茶を飲みながら、ふと思い返す。
いつからこの関係が始まっていたのか、そのキッカケ。正直…よく覚えていない。
気がついたらアタシとフラッシュさん…時々、タキオンさん。
不思議で…何か大切な縁が、アタシ達を繋いでいる様な。
理屈の説明がつかないけれど、一緒にいると安心出来る大切な居場所。
「…美味しい」
「良かった。…貴方のその笑顔が見られて」
「…もう。本当にどっちがお祝いする側なんだか分からないじゃないですか」
「大切な人の笑顔があって、こうして一緒に居られる。それで充分私にとってはお祝いになっていますよ」
「……それじゃダメですよ!…こ、これ!」
思わず反射的に、突き出すような形になってしまった。 - 4二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 23:17:12
「…お花、ですね」
「すみません、ドイツの文化には詳しくなくって…でも、お祝いに行くなら何かプレゼントを用意しなくちゃって…急いで調べたんです。そうしたら…」
「わざわざ文化に合わせてもらう必要はなかったのですが…これは、メッセージカードですか?綺麗な字…」
「は、はい…女性に送るのに適しているのがお花だって…後、メッセージカードを送ると喜ばれるって…」
意図していないとは言え、聞きかじった知識を押し付ける様な形になってしまった。
ずさんな真似をしてしまったことと、この状況に慌ててしまっている自分が情けなくて、涙が溢れ出す。
「…泣かないでください。貴方が私を思って用意してくれた物を、喜ばない理由がありません。だから…もうこれ以上、謝らないでください」
何処からか取り出した綺麗なハンカチで、アタシの涙を拭ってくれる。
「はい…ありがとうございます…」
「お花も…カードも…とても美しいです。大切にしますね」
─大切な人の笑顔が見られるだけで嬉しい。
フラッシュさんが言っていた言葉の意味を、アタシは身をもって知った。 - 5二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 23:17:23
「すみません…落ち着くまで待ってもらって」
「気にしないでください。貴方の涙を拭うのは、私にとっては当然のことですので。…しかし、遅くなってしまいましたね…お部屋までお送りします」
「はい…フジさんに何て言いましょうか」
「素直に謝れば、許していただけると思いますよ。誠実に、理由を偽らずに」
「……一緒に、謝ってくれますか?」
「勿論。貴方をこんな遅くに連れ出したのは私ですから」
「そんな…元はと言えばアタシが…こういうのはナシ、でしたね。すみません」
フラッシュさんが、指でバツを作って微笑む。
「ふふっ。では、行きましょうか」
アタシの心に降る雨の中を、傘を差して一緒に歩いてくれる人。
肩を引き寄せられた時、紅く染まる頬の意味にアタシは当分気づけそうにはない。
─心の雨に傘を 終わり─ - 6二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 23:17:52
脳と心臓の停止から目覚めて、今日の深夜0時を迎えた所で今のうちに書きあげれば時差の関係で実質誕生日や!と書き上げようとしたは良かった物の、結局眠気には勝てず今の時間の投稿になりました
見た瞬間、色々な理解が及びませんでしたが取り敢えず全てスクショしました
フラッシュさん、お誕生日おめでとうございました
ご覧頂きありがとうございました - 7二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 23:20:36
過去作の一部です
良ければご覧ください(トレウマ、ウマウマ混在しています)
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ミ゜ッ(心肺停止)
- 9二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 23:22:33
- 10二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 23:27:07
- 11123/03/28(火) 23:32:51
- 12二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 10:02:21
いいね
- 13123/03/29(水) 16:25:10
おまけ
「本当はこんな形じゃなくて、ちゃんとお祝いしたかったんです。プレゼントだって…もっと考えられた筈だった」
「…時間がなかった、そう仰るのですね」
「言い訳するつもりはないです。限られた時間の中で、…フラッシュさんに何が1番似合うか…喜んで貰えるかは…考えたつもりです。いえ、考えて選びました。ただやっぱり…時間をかけて用意したかった。その後悔はあります。だって…いつも、お世話になってるから」
「…ありがとうございます。そのお話其の物が…新たな私へのプレゼントになりました。貴方は真面目で…本当に優しいのですね」
「…フラッシュさんがいつも優しくしてくれるから、アタシはそれを返したいだけですよ」
「私も…貴方にお返しをしたいのです。貴方の優しさをこうして感じると…尚のこと。ですから…次の貴方の誕生日、貴方のお祝いをする…その予定を組ませて頂いても良いでしょうか」
「えっ…」
「これなら、準備の時間も取れますから」
「準備…」
「共に、お祝いしましょう?どちらが主役か、どちらがもてなすべきかなどを気にすることなく、ただ互いを大切に思う気持ちをもって」 - 14123/03/29(水) 16:26:27
- 15123/03/29(水) 16:31:37
反応貰えてバチクソ嬉しかったので筆が乗りました
公式でまたなんかあったら爆散します
改めてありがとうございました - 16二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 21:26:31
やさしいせかい
- 17二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 23:50:14