- 1白狼◆geHpeEEBiEi.23/04/02(日) 19:20:22
現行本スレ
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ダンジョンマスター専用掲示板 その61|あにまん掲示板前スレhttps://bbs.animanch.com/board/1494849/脳内設定スレhttps://bbs.animanch.com/board/1488245/※脳内設定置き場として共用…bbs.animanch.comこのスレは「ここだけダンジョンがある世界の掲示板」の番外編のようなスレです
あらすじ
【ギルド職員『白銀』より飛び級試験を受けた下級冒険者「白狼」、彼は生まれや能力こそ一線級を誇る実力者だが、今回彼に与えられた依頼内容は「『白蛇と黒猫の虚空』を入手せよ」という存在すらも確認できていない未知の代物だった】
【はたして『白蛇と黒猫の虚空』とは何なのか、そして白狼はこの無理難題を潜り抜け、無事に上級冒険者になれるのか……】
白狼の設定
https://bbs.animanch.com/board/1319851/?res=108
- 2白狼◆geHpeEEBiEi.23/04/02(日) 19:25:36
【勢いよく飛び出した白狼であったが、その実心当たりがあるとかはなく、ほぼ無策で『白蛇と黒猫の虚空』を探しに出たようだ】
んー……ぼくは狼だから、猫や蛇のことなんて分かんないなぁ
【あの『白銀』でも知り得ぬ存在などただの獣に分かるはずもなく、ましてどう手に入れ納得させるかなんて考えてもいなかった】
まずは、猫と蛇に聞きに行こう
その前に……白銀に質問したことをもう一度まとめておかなきゃ
【現時刻は深夜も深夜、一度ギルドの宿泊施設に戻って情報をまとめ、明日の朝から調査を開始するようだ】 - 3白狼◆geHpeEEBiEi.23/04/02(日) 19:31:11
【白銀より提示された今回の試験の情報】
・『白蛇と黒猫の虚空』であるなら、どこでどのように手に入れても構わない
・ただし、誰が見てもそれが『白蛇と黒猫の虚空』であるようなものでなくてはならない
・『白蛇と黒猫の虚空』が存在する場所は白銀は知らず、そもそもそれが「何」であるかさえ知らない
・今回の試験に期限はなし、入手が不可能であれば辞退も可能である
こんなところかな
【小さな紙切れにぐにゃぐにゃの字でまとめた「メモ」を大事そうに魔法の雑嚢にしまい、その日はゆっくりと眠った】
【試験は朝日と共に始まる】 - 4白狼◆geHpeEEBiEi.23/04/02(日) 19:43:21
最初は白蛇に聞きに行こう
【野生の蛇、蛇の魔物問わず「白い蛇」と思われる生物にひたすら話を聞きに行く】
【白狼としては「分からなければ聞く」というのが、もっとも正解に辿り着きやすい方法だと考えたようだ】
【セントラリア郊外にいた蛇に話しかける】
質問、『白蛇と黒猫の虚空』って知ってる?
「オイラはただの蛇だよ、そのような仰々しい存在とは縁がないね」
分かった、ありがとう
【突然襲いかかってきた蛇の魔物に問いかける】
『白蛇と黒猫の虚空』って知ってる?
「そんなの俺が知るわけないだろ!それより早く離してくれ!俺が悪かったからさぁ!」
分かった、ありがとう
【蛇によく似たドラゴンにも聞いてみた】
『白蛇と黒猫の虚空』って知ってる?
「私は竜種、生憎だが獣たちに伝わる秘宝は知り得ていない」
そっかぁ、残念
「待たれよ私を超えし獣よ、その存在は知らぬが賢く強大な「白き蛇」の居所は知っている」
そうなの?その蛇はどこにいるの?
「極東の山奥……とある寺院跡地に住まう「祖白様」という蛇がいる、その者は地に永く息づく存在だ……決して怒りなど買わぬように」
分かったよ、気をつける
【そうして白狼は「祖白様」に会いに行くため、極東へと向かっていった】 - 5白狼◆geHpeEEBiEi.23/04/02(日) 20:01:56
【極東寺院跡地、春先にも関わらずその場は雪化粧で白く染まり、小鳥たちの鳴き声など一つもない静寂に包まれていた】
静かだね、おやしろさまはどこかな?
【恐らくこの場は件の白き蛇の縄張り、無論白狼はそれを察知していたがそこへ向かうしかない、虎穴に入らずんば虎子を得ず、ということだ】
『警告、危険領域ノ生体反応ヲ確認、敵性意思極大、戦闘状態二強制移行シマス』
ん、来たみたいだね
【寺院の深奥から重圧のような威嚇音が鳴り響き、大地が呼応するように揺れ動く】
「妾に許可なく立ち入る無礼者は……そこの獣か……?」
【ゆらりとうねり、とぐろを巻く】
【白蛇の舌先が断罪を下すように向けられ、蛇眼がこちらを品定めするように鈍い光を当ててくる】
そうだよ、聞きたいことがあってきた
【しかしその圧には臆することもなく、視点を変えれば蛮勇とも呼べる態度で白狼は向き合った】
君は『白蛇と黒猫の虚空』って知ってる?
「妾に問いを投げるか、愚かな……獣風情が人の真似事とは嘆かわしい……」
【白き蛇はその言葉とは裏腹に、どす黒い笑みを浮かべた声で彼の毛皮を舐めまわす、苛立ちが毒のように蝕み、獲物を己の領域へと誘い込むつもりだ】
喧嘩したいの?いいよ、相手になってあげる
「ンフフフフフ……!面白き道化よ、精々食い応えのある最期を迎えよ!」
【毒牙が開かれ死毒が滴る、「祖白様」は問いに答えるつもりはなく、自分をただの贄としか見ていないようだ】
しょうがない、やるよD.D.D.
『解合確認、《Deformation》』
【対する白狼も両手持ちの斬れぬ大剣を片手に迎え撃つ】
【ここは既に狩人たちの饗宴だ】 - 6白狼◆geHpeEEBiEi.23/04/02(日) 20:22:21
【牙を剥いたその瞬間、視界がぐらりと揺れて地に足がついていた感覚を失う】
【「祖白様」の尾先が廃墟に向けて槍のように突き刺され、横薙ぎの突風のようにこちらへ突進してきたのだ】
【あまりの速さ、あまりの暴威】
【寺院跡は一瞬にして半壊状態になった】
「ほう……これは中々、妾の肢体を組伏せるとは」
【白狼は確かにその巨撃を真正面から受けた、だが今は蛇の背に乗って剣を構えている】
一直線、狩人としてはまだまだだね
「妾はこの地に住まう神のようなもの、今は知らずとも直に理解するだろう……お前は贄であるとな」
そう、じゃあこっちの番ね
【鈍器と化した機剣D.D.D.を思い切り背中に叩きつける、その衝撃は風圧を生んで砕けた木片を宙に浮かせ、吹き飛ばした】
【あり得ざる怪力に白蛇も苦悶の表情を浮かべるも、その眼にはどこかおぞましい笑みが含まれていた】
【それからの戦況はほぼ一方的にも見えていた、白狼は単調な「祖白様」の攻撃を受け流し、隙を見せたところを一気に攻め立てている】
【だが白蛇は一向に倒れる気配もない】
結構、しぶといね
「ククク……アーッハッハッハッ!ああ、これだから道化は面白い……お前は何と戦っているか分からぬようだな」
『警告、不可侵領域ヘノ侵入ヲ確認、致死確率測定不能、直チニ撤退スルコトヲ提案シマス』
……ふーん
【白狼の視界に入ったのは一面の毒沼、周囲一帯を溶かしながらこちらのテリトリーを失くしているようだ】
「これが妾の毒、獣には真似できぬ「死を操る」不可侵の毒、逃れられまい、息もできまい、ああ哀れよなぁ……だが慈悲深き妾は救済してやろう」
【正面に立っていた「祖白様」は大きく口を開く】
「さぁ……胃の淵で乞うてやろう、お前はどこまで生きていられるかな?」 - 7白狼◆geHpeEEBiEi.23/04/02(日) 20:46:18
この毒、いい方法だと思った
だからちょっと期待したのに……
「何?」
獲物の前で油断するな、まだ狩りは終わってない
『解号確認、《Defiant. Drifters》』
【D.D.D.が元の6mの機剣へと戻る、しかし先程よりも圧倒的に出力を上げ、刃の一つ一つが星のような煌めきを纏っている】
牙も爪も力も知恵も、狩りは使えるものを全部使う
だけどお前はそれを怠った
『D.D.D.システム正常起動、放出率80%』
今からお手本、見せて上げるよ
【そう挑発すると、白狼は大地が逆上がる程の脚力で跳躍し、毒の及ばない空中へ向かい「祖白様」を見下ろす】
今のぼくの牙のひとつ、これで仕止める
【次の瞬間、D.D.D.の刃は流星のように輝き、古き存在の威光をかき消していく】
【それを見た白狼はこれに合わせるように剣を「祖白様」へと振り下ろす】
【歴史を否定する一筋の流星が、永きを揺蕩う神の蛇に一撃を与える】
【「祖白様」はその一閃に絶叫し、寺院跡に真っ白な巨体が横たわる、白蛇が出していた死毒もまた輝星によって蒸発した】
『敵性反応消失、戦闘状態ヲ解除シマス』
これで勝ちかな
【蛇神の頭上に狼は座す、その表情は狩りを終えたにもかかわらず全くの凪に近い顔をしていた】 - 8白狼◆geHpeEEBiEi.23/04/02(日) 21:07:47
「馬鹿な……妾の玉体に傷をつけるなど……!獣が……贄風情がつけあがったな……!」
【横たわる蛇より恨み言が流される】
あ、まだ生きてた
でももう戦えないよね、その傷だと
【D.D.D.の斬撃による流血はない、しかし「核」とも言うべき根本を断ち斬られて「祖白様」は力を喪失してしまった】
「……殺せ、この惨めな姿をこれ以上晒して何をする」
殺さない、その前に質問しなきゃいけないから
「下らぬ妄言を……!妾は獣に成り下がる誇りは持ち合わせておらぬ!貴様が止めを刺さぬのなら、この身で……ヒッ……!」
【白蛇が目にしたのは白狼の姿だった】
【先程とは何も変わらない、獣でありながら人へと変容した愚かしき道化】
【だが目の前の眼は何だろうか】
【赤い、赤い目がこちらを捉えている】
【その目にはどうしても認めざるを得ない「核の差」を感じてしまう、深く重い獣たちの怒りに吸い込まれそうになってしまう】
「あっ……あ、ああ……!その眼は……お前は……!妾を、妾をどうするつもりだ……!」
どうもしないよ、聞きたいだけ
『白蛇と黒猫の虚空』って知ってるかって
「し、知らぬ!妾はこの地の生命を吸い上げ生き永らえてきた!だがお前も!お前の求めるものも何も知らない!だから……!お願いだから殺さないで……!」
ふーん、そっか
じゃあこれで終わり、これからは誰かをいじめちゃダメだよ
【怯える「祖白様」を何とも思わず、ただ道端の石ころを気紛れに見ただけのようにその場を去る】
【去り際に見かけた蛇の姿は、まるで蛇に睨まれた蛙のように恐れを抱いていた】 - 9白狼◆geHpeEEBiEi.23/04/02(日) 21:10:48
【戦いを終えた後、白狼は麓の村へ行き、そこで寺院跡に住まう白き蛇の暴乱についての話を耳にした】
「だからあの周辺は立ち入り禁止なんだ、あれの怒りに触れたら……考えるだけでも恐ろしい」
そうなんだ、でももう大丈夫だよ
「は、はぁ……不思議な旅人さんだなぁ、それじゃあこの先の旅もお気をつけて行ってくだされ」
うん、頑張るね
【……これは少し先の話になるが、寺院跡に眠る「祖白様」はその後一度も暴れることはなく、麓の村には活気と平和が戻ったと伝えられている】
【それはそうと、本来の目的である『白蛇と黒猫の虚空』についての調査は不発に終わってしまったようだ】
んー……白蛇は知らなかったみたいだね
それじゃあ次は黒猫に会いに行ってみよう - 10白狼◆geHpeEEBiEi.23/04/02(日) 21:16:11
猫はいっぱいいるもんね
【正直、白狼は白蛇を基準とした調査にはあまり期待していなかった】
【何故なら情報を集めるなら猫が最適、このセントラリアにも多くの猫たちが集まっている】
いっぱいいるから情報もいっぱいになる
ぼくにしてはよく考えたと思う
【自信満々に王都内を歩き出した】
【黒猫であることを問わず、見かけた猫には話しかけ、『白蛇と黒猫の虚空』に関する多くの可能性を集めようと考えたのだ】 - 11白狼◆geHpeEEBiEi.23/04/02(日) 21:25:53
【猫たちに話を伺う】
「そもそも私たちカフェ勤めよ?冒険者のアレコレは知ってても、そういうものには縁もないわ」
「キョーミも無いしねー」
んー……そっかぁ、残念
【猫カフェは外れだったようだ、次は野良猫に行ってみようか】
「世渡りってのは大変でねぇ、お前さんも知りたくなったのかい?タダ飯の場所」
それは大丈夫、秘宝は知らなそうだなぁ
有名な黒猫とかは知ってる?
「人気者にはお近づきになりたいよなぁ……カフェの連中は羨ましいね」
んー……違うみたい
「我輩は猫魔物、よく無限牢獄下層にも現れる」
黒猫の秘宝とか知ってる?
「ネコノポリス、善き国である」
ネコノポリスかぁ……行き方は知ってる?
「猫しか知らぬ猫の道、今なら高級缶詰と交換」
ん、じゃあ買って上げるね
【白狼が次に向かうのは、どうやら猫に囲まれた幻の大陸、ネコノポリスのようだ】 - 12白狼◆geHpeEEBiEi.23/04/02(日) 21:47:57
「我輩についてくるといい、客として歓迎する」
ん、ありがと
「ただその剣は置いていかれよ、ビビる」
あー、そっかぁ
分かった、D.D.D.は拠点に行ってて
『承認、休眠状態ニ移行シマス』
【6mの巨剣は宙に浮いて一直線に宿泊施設……ではなく、何故か『無窮の天路』の拠点がある方向へ向かっていった】
あ、間違っちゃった
でも大丈夫だよね、ネコノポリスに行こう
【魔猫は町並みを潜り、小さな小道から小さな小道へと渡り歩いていく】
【白狼もそれについていくが猫と狼では体格が違う、猫の華麗さに追い付くには意外と大変だ】
む、大変な道だね
「本来ネコノポリスは幻である、だが我輩たちはたまにお客を招き入れねば飽きが来るのである」
今回のお客はぼくってこと?
「そうである、狼であることは気にせず、変わり者ばかりがいる茶会であるため、お客は誰であれ歓迎」
よかった、猫を驚かせると思った
【魔猫が導く小路はより狭く、より人の目が少なくなっていく】
【ネコノポリスまでの道行きは長い】 - 13白狼◆geHpeEEBiEi.23/04/02(日) 21:59:22
「ここが茶会の会場、主催が来るまではもう少しかかるのだ」
おー、猫がいっぱい
【ようやくネコノポリスに到着した、ちょうど昼頃で茶会に参加する猫もそれなりにいるようだ】
【白狼は怖じけずに猫たちの中には加わっていく、猫たちは驚いてその場を離れていこうとするが、危険がないことを理解したのか、段々と彼を気にせずまったりと過ごしていく】
「お客さん、今回は誰に呼ばれたのかね?」
さっきの魔猫、缶詰を奢ったら誘ってくれた
「ほうほう彼に!これはこれは」
「なにか目的があるようですね?」
「飽きが来ぬほど気になるにゃあ……」
【猫たちは白狼を取り囲んで自由に歓談を始める、どうやらあの魔猫が客を誘うことが珍しいようだ】
ねぇ、ここで有名な黒猫って誰?
「なるほどなるほど!これは誘いますな」
「今日は彼の勝ちですにゃあ……」
「お探しの黒猫はここの主催です、どうぞお楽しみに……」
分かった、待ってるね
【どうやら主催が「有名な黒猫」らしく、魔猫が白狼に興味を持ったのは主催に興味があると考えたからなのだろう】
【そんなことを考えていると、主催の影が見え始め「お客」を迎える茶会も本格的に始まったようだ】 - 14白狼◆geHpeEEBiEi.23/04/02(日) 22:14:52
「ようこそ、私の茶会へ」
【白狼の前に現れたシルクハットを被った黒猫が、丁寧に一礼をして彼をもてなす】
こんにちは、ここに招いてくれてありがとね
「いいえ、此度は侯爵が貴方を招いたのですから……どうぞ、ごゆっくりお過ごしください」
ありがとう
ねぇねぇ、君は『白蛇と黒猫の虚空』って知ってる?
「おやおや……面白いことを聞きますね、教えて上げてもいいですが、一つ勝負しませんか?」
勝負……?
【黒猫が発した「勝負」という言葉に、猫たちは一斉に歓声を上げる】
【すると中央のテーブルに賭け事の道具が並べられ、周辺の雰囲気が怪しげに変化する】
「我々は飽きやすく、常に新鮮な刺激を求めてましてね……こちらで一勝負してみませんか?」
「ねぇ……冒険者の狼さん?」
!
【隠す気はなかったが、こちらを見抜かれていたのだろうか、黒猫は怪しく笑って賭けに誘う】
【対する白狼は賭けなんて下手どころか経験すらない、恐らく負ける可能性が高いものの、しかしここで負けたら『白蛇と黒猫の虚空』に関する情報を失ってしまう】
いいね、受けるよ
勝負はキライじゃないし、負けたくないからね
「よろしい……ではゲームスタートです!」
【黒猫の掛け声と共に完成が再び上がる、そして盤上に互いのカードが配られる】
【……コインは既に、投げられた】 - 15白狼◆geHpeEEBiEi.23/04/02(日) 22:25:14
【黒猫はカードを見ながら笑みを浮かべ、そして白狼に提案した】
「私は『白蛇と黒猫の虚空』に関する情報を賭けます、貴方は何を賭けますか?」
「もちろん……相応のものをお願いしますよ?」
……
【恐らく、相手方は相当に良い手札なのだろう】
【たぶん負けてしまう、そして飽きやすい彼らのことだ、一度負ければチャンスは二度と巡ってこない】
君にとって、その情報はどれだけ大切?
「貴方があれについて考えているくらい、大切だと思っていますよ」
むむ……
【心理戦も数段上手……これでは無意識に起こるブラフ等も効かないだろう】
「私はこれで決まりです……さあ、貴方はどうしますか?」
……ぼくは
ぼくは、これを賭けるよ - 16白狼◆geHpeEEBiEi.23/04/02(日) 22:37:47
【彼が賭けたのは……否、彼は何も賭けなかった】
ぼくは『白蛇と黒猫の虚空』について何も知らない、だから賭けられない
言い換えれば……この勝負に「無」を賭けるよ
「……」
【黒猫はその言葉を受け取り、黙って白狼の姿を見つめる】
【よく見れば周りの猫もその鋭い猫目でこちらを凝視している】
【なるほど、ここは狩場だ】
【主催の彼という存在を中心とした立派な狩りの場所、実に人らしく、かつ獣のように賢しいやり方だ】
「あなたの選択は……それでよろしいのですね?」
【とどめの一言だろうか、主催は真っ直ぐにこちらを見つめる】
【先日の白蛇よりも圧倒的に厄介な狩人に対して、白狼は……】
うん、そうだよ
ぼくにはこれしか賭けるものがない、だからこれに賭けるしかないんだ
【素直に、真っ直ぐに答えた】
「……フッ、フフフハハハハハ!」
「私の負けです、「無」を賭けられたのならこの勝負は私が降りなければ、成立しませんからね」
【カードを盤上に起き、両手を上げて降参の意思を示した】
あれ……?勝ったの?
【何故だかは分からないが、白狼は黒猫に勝利することができた】
【主催が賭けに負けたその様子に、観衆の猫たちも大盛り上がり、白狼は猫たちに大いに歓迎され、その日の茶会はゆるやかに流れていった】 - 17白狼◆geHpeEEBiEi.23/04/02(日) 22:48:23
「さて……此度の茶会はここでお開きです、それでは皆様……二次会はマタタビを持ってご参加ください」
【主催は参加者に向けて丁寧に一礼し、その場はお開きとなった】
じゃあ……『白蛇と黒猫の虚空』について、教えてもらえる?
【勝負に勝った白狼は黒猫より件の情報を求めた、その言葉に黒猫は帽子を外して向き直る】
「教えるも何も……私も知らないのですよ、それについてはね」
「先程は失礼しました、私たちは「飽きること」に慣れすぎていまして……少々刺激的な催しを行うのです、ああ「お客様」は丁重にもてなしてお返しいたしております」
じゃあ……あれは嘘だったの?
「ええ、お力になれず申し訳ありません……ただ一つ言えることとすれば、我々猫はその秘宝を知り得ていない、という事実があることが貴方にお渡しできる情報です」
そっかぁ……残念だなぁ……
【黒猫もまた、不発に終わってしまった】
【だが……ネコノポリスにおいて白狼の名は「類い希なるお客人」として、一部の変わり者たちに知れ渡ることになった】
【さて『白蛇と黒猫の虚空』とは一体何なのだろうか、残す手がかりは……「虚空」のみである】 - 18白狼◆geHpeEEBiEi.23/04/02(日) 22:57:26
【前回までの二つのことは獣に関する出来事だった、しかし最後の手がかりは「虚空」と、言葉そのものも聞き馴染みのない不安定なもの】
【こればっかりは自分の力ではどうにもできないので、冒険者ギルドでそれらしい情報がないか、聞き込みを始めた】
【だが……今回はそれらしい情報どころか、「虚空」に関する情報すらも得られなかった】
【冒険者たちに「虚空」に関する依頼やダンジョンは無いかと訪ねても、返ってきた答えはどれも「知らない」、「よく分からない」といったようなものばかり】
【白狼自身もこれ以上の探索は、ほぼ不可能かと思い始めていた】
やっぱり……難しいんだなぁ
【酒場でぐったりと休み、初めて愚痴らしい愚痴を溢してしまった】
【そんな白狼を負の感情が襲い続ける、続行か辞退かは既に決まったようなものになりかけていた】 - 19白狼◆geHpeEEBiEi.23/04/02(日) 23:06:51
【もう辞めようかと諦め半分でギルド内を彷徨いていたとき、とある話し声が聞こえてきた】
「なぁ最近確認されたダンジョンの噂、お前は知ってるか?」
「いや……知らないな、噂になるほどのダンジョンだろ?絶対危険だから行かないぞ」
「違う違う!そのダンジョン、「何も無い」んだって!トラップもモンスターも……ましてやダンジョンマスターの存在も!」
何も無い……?
【彼らが話していたのは正しく「虚空」に相応しいダンジョンだった、白狼はその会話に耳を傾けている】
「はぁ?絶対裏に何かあるだろ……場所だけは教えろ、絶対近づきたくないから」
「そんな……まあ気が変わったら一緒に行こうな、場所はセントラリアから南に行ったところ、実は本格的な調査はまだ済んでないから、俺たち下級でも行けるみたいだぜ?」
「ホントお前なぁ……だからこの前も~……」
セントラリアの南に「虚空」のダンジョン……
行くしかないよね
【当たりに近づける臭いを嗅ぎ付けた狼は、手早く支度を始め、誰にも気づかれないよう静かにダンジョンがある方向へと出発した……】 - 20白狼◆geHpeEEBiEi.23/04/02(日) 23:12:32
着いた
【単身……詳しく言えばD.D.D.も一緒ではあるが、白狼は一人で噂されているダンジョンの前に立っていた】
「何も無い」がある場所、確かに目には見えないけど感覚がする
【入り口は目に見えず、しかし近づくと大地が歪んだように平衡感覚がずれ、よく見れば転移門のように空間に境目がある】
じゃあ行こう、誰かが来る前に……
ここで『白蛇と黒猫の虚空』を手に入れるんだ
【全くの未知に包まれた「虚空」の中へ、白狼は恐れなどなく立ち向かっていった】
【ここが……試験最後の冒険の地であると信じて】 - 21白狼◆geHpeEEBiEi.23/04/02(日) 23:22:14
【虚空のダンジョン内はまさに「何も無かった」、壁も大地も空もなく、歩いているのか宙に浮いているのかすらも分からない感覚にあった】
すごく……やりづらい
ここ、本当なら入った人全員「何もかもが無かった」状態になってるんだろうなぁ……
【白狼は念には念を入れ、あらゆるものに同調する独自の能力、すなわち《共鳴》の力を使ってこの空間と同調し、辛うじてダンジョン内で活動することができていた】
【白狼はこのダンジョンに《共鳴》が通用したのは、恐らく本当にこのダンジョンは「無」という概念しかないからだと推測した】
でも……『何にも無い』がここにはたくさんある、ようやく一番近いものを見れた
ここから『白蛇と黒猫の虚空』を見つけ出そう
【白狼はその場で止まり、もしくはそこら中を歩きながら、無の中から自分の求める「虚空」を探し出そうと懸命に捜索した】
【しかし、このダンジョンにあるのは「無」】
【全てが「無かったこと」になっていくようだ】 - 22白狼◆geHpeEEBiEi.23/04/02(日) 23:47:48
【何も無い、何も無い、何も無い、何も無い】
【どこへ行こうと、どこを歩こうと、どこを飛ぼうが泳ごうが見つからない】
【そのダンジョンは何も無い、がずっと続いている】
【その中で唯一存在している白狼は、永遠にそこへ辿り着けない】
【「虚空」とは、そういうものだった】
何で掴めないんだろう、ようやく見つかったのに
【顔には出ていないが、白狼の心は折れそうになっていた】
ここには「何も無い」が、あるのに
「何も無い」が手に入れられない
おかしいなぁ……どうしてなんだろう……
【全く変化の起きないこの現状に希望を失い、白狼は愕然としたままゆっくりと目を閉じていった─────】
……ん、寝ちゃってた
危ないね、危険は無いかな?
【数時間は経っただろうか、連日の調査による疲れもあって白狼はダンジョンの中で眠っていた】
【しかし、白狼に変化はなかったようだ】
ああ、よかった
「何も無かった」みたいだね
【突如、ダンジョンの様子は一変する】
【無で覆われていた空間は瞬時に吹き飛び、目の前に広がったのは、何の変哲もない洞穴の景色になっていた】 - 23白狼◆geHpeEEBiEi.23/04/02(日) 23:49:52
あれ……?これは……?
「やあ、このダンジョンを解明してくれてありがとう、素敵な挑戦者さん」
【困惑する白狼の前には高密度のエネルギー体、俗に言う「ダンジョンコア」と呼ばれるものが言葉を発して近づいてきたのだ】
君は誰なの?
ここのダンジョンを作った人?
【素朴な問いかけに迷宮の核は答える】
「 はこのダンジョンの作り手だよ……このダンジョンは何も無かったところに突然生まれたんだ、文字通りの「何も無い」ダンジョンとしてね」
うん、それはぼくも理解してる
でも……どうして今は洞窟みたいになっちゃったの?
「それはね、君がこのダンジョンの謎を解いたからだよ」
謎……?何にも無いのに?
「そう、それが答えなんだ」
「ここは「何も無い」ダンジョン、だけどここに来る人は必ず「何も無い」と決めつけて、ダンジョンの罠に引っ掛かっちゃうんだ」
罠って……?
「このダンジョンは……「何も無いがある」ダンジョンじゃなくて、「何も無い」ダンジョンなんだよ」
「賢い人ほど絶対に「無」という概念があると決めつけるような仕組みが、このダンジョンの最大の罠なんだけど、実際には本当に「何にも無い」から「無がある」と思い込んじゃいけないんだ」
「……君はこのダンジョンを素直に「何も無い」と言ってくれた、 を枷から解放してくれたんだ!」
そうなんだね、じゃあ『白蛇と黒猫の虚空』はここには無かったんだ……
「君の探し物?ごめんね、ここには本当に何も無いから……代わりに をあげる、こんなダンジョン、無い方が絶対にいいからね!」
【その言葉を最後に喋るダンジョンコアは白狼の手元へと落ち、その後は何の変哲も無いただのダンジョンコアになってしまった】
うーん……ダンジョンコアを手に入れられてたけど、結局……『白蛇と黒猫の虚空』は無い……
これじゃあ飛び級はできないのかなぁ……
【がっかりとして草原に倒れ込んだ、仰向けのまま見上げる空は、いつも以上に透き通っているように見えた】 - 24白狼◆geHpeEEBiEi.23/04/03(月) 00:02:11
【ダンジョンを攻略したその日はずっと草原に寝転んで空を見ていた】
【結局、自分の考えられる全てを出し尽くしても『白蛇と黒猫の虚空』には届かなかった】
【思えば、白銀が知らない時点で自分は知り得るはずもないものだと、少しだけ考えていたところもあった】
「よう、こんなところでどうしたんだ?」
あ、ノコギリだ
【仰向けになっていたところを覗き込んできたのは、自分を救ってくれた冒険者の青年だった】
今ね、ダンジョンの攻略してたよ
「おお!頑張ってるなぁ、どんな依頼だったんだ?」
飛び級試験、白銀から受けたの
「白銀さんの飛び級受けられたのか!いいなぁ~俺も受けてみたかったぜ!」
……でも、失敗しそうなんだ
「そうなのか?まあ難しいからなぁあの人の試験って、だけど失敗しても誰も……白狼?」
【獣……いや、狼のような雰囲気の青年は涙を浮かべて、自分の力では届かなかった無力感を悔しがっていた】
「泣くほど悔しかったか、大変だったな」
泣いてないし……目に水があっただけ
「うん、そうだな……でも、冒険は楽しかったか?」
【ノコギリ青年は白狼を勇気づけるでもなく、励ますでもなく、ただ静かに白狼の近くに寄り添っていた】
【そして白狼は彼の言葉に答える、「冒険は楽しかったか?」と言われたら答えは一つだ】
もちろん、楽しかったよ
【これまでは持つはずのなかった感情、それがここでようやく得られることになったのだ】 - 25白狼◆geHpeEEBiEi.23/04/03(月) 00:07:58
「そっか、楽しく冒険できてよかったな」
【その答えを聞くとノコギリ青年は立ち上がって、ギルドへの帰路を目指していく】
「お前もなるべく早く帰れよー!美味いもの食って、明日から頑張っていこうなー!」
【彼の言葉に突き動かされる、やはり自分にとって冒険者とは─────】
ああ、そっかぁ
分かったよ、『白蛇と黒猫の虚空』の手に入れ方
ふふ……ようやく、ぼくは見つけたみたいだ
【長いようで短い旅を経て、ついに白狼は『白蛇と黒猫の虚空』を得られた、あとは……それが何であるかを彼らに証明するだけだ】 - 26白狼◆geHpeEEBiEi.23/04/03(月) 00:11:28
以上で、このスレでの描写は終わりになります
彼が得た答えは……本スレで明かしましょう
それでは、短い駄文でしたがここで飛び級試験の描写を終えます
見てくださった方はありがとうございました - 27極東の巫女23/04/03(月) 00:23:24
お疲れ様でした~
- 28水使い23/04/03(月) 00:24:22
お疲れ様でしたー!!!素晴らしい長文をありがとうございます!!!
じゅみようがのびた