【オリキャラ注意】「ドジって前世を思い出しちまったぜ」外伝その12

  • 11◆A8pWn3jbyg23/04/24(月) 03:07:29

    ナギナギの実を食べてすっ転んだら前世の記憶を思い出しちゃったコラさんの話、の続編。


    SS+ダイス+安価スレになると思います。ただしダイスと安価は要所要所。

    思いついちゃったボスがボスなのでボリュームが広がっていくかもしれない。

    書き溜めゼロなのでライブ感で行くのをご了承ください。

    転載は禁止とさせていただきます。


    【注意事項】

    ・このスレの時系列はごちゃごちゃです。劇場版時系列と思ってください。

    ・ワノ国後っぽい雰囲気が見られたりするかも知れませんが、時系列はパラレル。

    ・ローはK・ROOM、R・ROOM使えるローなのか現状定めていませんが、『凪(サイレント)』は使う事はないと思います。


    前スレ

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    最初のスレ

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    「ドジって前世を思い出しちまったぜ」|あにまん掲示板ひっくり返って呆然と青空を仰ぎながら、おれは手に持った一口分齧られた跡があるその実をまじまじと見つめていた。一気に頭の中に起こった記憶の濁流はひどい頭痛と吐き気と倦怠感と悪寒と等々重たい風邪症状をタイ…bbs.animanch.com
  • 21◆A8pWn3jbyg23/04/24(月) 03:08:15

    【このスレだけのコラさんのオリジナル設定・オリジナルキャラ】

    ・コラさん
    一応色々あって今世の名前をロシーと自称しているが、ローもとい他の船員からはコラさん呼びされています。
    身長166㎝の伸び盛り。将来的には288㎝(ダイスで決定)
    治安悪めのスラムみたいなとこ生まれだけど特別な血統とか病気とかはないまま育った(安価で決定)
    現在花と敵対中

    ・クオル
    前作からのオリキャラ
    安価で悪い医者と出たせいで徹底的にローと対比を取られつつ、神絵師のネコチャンイラストによって野良猫要素が継ぎ足された属性過多男。悪魔の実の能力者。
    不治の病の治療法を見つけるために勉強中の医者。
    ハートの海賊団に居候中。
    ホーキンスと馬が合っているかもしれない。
    現在森の鎮静化中&襲撃を受けてる?
    何かをコラさんに手渡した。

  • 31◆A8pWn3jbyg23/04/24(月) 03:08:53

    このスレからの新オリキャラ

    ・マリー
    色付き眼鏡、腕には入れ墨、屋台で威勢のいい掛け声をするファンキーなシスター。
    面倒見のいい姐さんタイプ。
    過去神様にあったことがあるらしい……?
    悪魔の実を食べドラゴン姿になりつつ再登場。
    メモメモの実のフィルムによって過去を思い出した。
    サバサバしつつもパパにクソデカ感情を持ってる。

    ・クリストファー
    ギャンブル好きの生臭神父。人当たりはいいけれど結構適当でろくでなし。
    マリーの養父。
    右腕は義手。
    元兵士。
    敵に左胸を貫かれたが、戦線復帰している。

    ・レミ
    本名レミリオ。優しそうな丸眼鏡のお兄さん。
    頬から首を渡って大きな傷がある。死んだ兄がいるらしい。
    過去失踪したことがあるらしい……?
    現在身体から“木”が生えている。

  • 41◆A8pWn3jbyg23/04/24(月) 03:09:43

    ・ラミ
    本名ラミロ。レミの双子のお兄さん。すでに故人。元神父。
    コクレア様を蘇らせようとしていた。
    霊体のような姿で登場したのをシャチが確認。
    その状態ながらもこちらの手助けを行っているようだ。
    元メモメモの実の能力者。
    花を倒すために尽力していたが、コクレア様の血と肉を食べ、花に食べられるという時間稼ぎを行った。

    ・サルヴァドール
    コクレア様を信仰する神父。すでに故人。
    通称サルヴァ。
    クリスと似た性格をしており、そこそころくでなしだが人当たりはいい。
    毒を飲み込み、花に食べられに行く。

  • 51◆A8pWn3jbyg23/04/24(月) 03:10:34

    コクレア様
    白銀の色をした、ドラゴンのような、魚のような、蛇のような姿をした神様。
    最近はドラゴン説が急浮上。
    見た目は神秘的だけれど、慈悲深く、愛情深く、少しドジ。
    現在力が封印されている。
    ベポと共に再登場。

    ムルフェルニソ
    元々麻薬の成分を含んだ花だった。
    はるか昔、人の信仰により神に転じた“ただの花”。
    純粋で悪辣。人を食物として認識している。
    コクレア様のことを“らせん”と呼んでいた。
    現在ラミロの姿を取り、差別化のためにミラと呼ばれている。
    コクレア様に対して思うところがあるらしい……?

  • 61◆A8pWn3jbyg23/04/24(月) 03:23:16

    コクレア様と共に現れたベポは、そのままホーキンスとおれのすぐ傍まで来ると、おれの身体をがっちりつかんで再び空へと飛びたつ。
    え、えええ……? おれはびっくりしたまま動けない。というかかちんこちんに身体が固まってる。

    空を飛んでる+びっくりしてる+神様の上に乗ってる=わけわからん!のコンボだ。

    ぽかんとかきょとんとしたおれの姿は今とてもキュートなことになっているだろう。だっておれまだ子どもだから。
    ……なんて現実逃避をしつつ。いや、別に逃避はしてないな。とにもかくにも、あっちこっちへと行っていた思考を戻す。それから現状を把握する。

    「―――おい、ベポ!」
    「キャプテンごめーん! 今急いでるんだ!」
    「ええと……?」
    「あ、コラさんもごめん! いや、おれも本当はよくわからないんだ! こいつの言葉おれにはよくわかんないから全部ニュアンスで読み取ってるんだけど!」
    「いやそれはそれですごいな。そのニュアンスってのはなんて?」
    「コラさん連れて祭壇のところに行く感じ……?」

    多分、とあやふやなことを言うベポ。いや、ニュアンスでそこまでベポに伝えてくれたのならすごい話だ。それを読み取るベポもとんでもないけど。
    どんどんと、ぐんぐんと、今の場所から離れていく。
    下からローの声が聞こえる。『ちょっと行ってくるなー!』と手を振ったらすげェ顔された。いやでも、なんか行った方がいいみたいだし……。

    「それで、ベポ。この人がコクレア様……なんだよな?」
    「うん、そうだよ。コラさんみたいにドジなんだ!」
    「どういうことだよ」

    神様って……ドジすんのか……?

  • 71◆A8pWn3jbyg23/04/24(月) 03:33:08

    スレ立てて一つ書いたところで今日はここまでにさせていただきます。
    また保守のご協力をお願いします。

  • 8二次元好きの匿名さん23/04/24(月) 06:41:33

    よきよき

  • 9二次元好きの匿名さん23/04/24(月) 06:44:17

    続きが楽しみや

  • 10二次元好きの匿名さん23/04/24(月) 06:44:58

    立て乙です!
    手鏡だけじゃなくてコラさんごと必要なのかな?

  • 11二次元好きの匿名さん23/04/24(月) 16:54:25

    保守

  • 12二次元好きの匿名さん23/04/24(月) 20:53:01

    楽しみにしてたよスレ主

  • 131◆A8pWn3jbyg23/04/25(火) 00:08:03

    とにもかくにも!おれたちはコクレア様に乗って祭壇の方へと飛んでいく。

    おれたち二人を乗せて重くないのかな、と思ったけれど、飛ぶのを阻害した様子はない。

    けれどもやたらふらふらと飛んで『あっちだってば!』とベポに怒られて、ハッとして持ち直すのを繰り返している。これって大丈夫なのか……?と心配になるけれど、なんかやたらベポと気安い感じになっている神様に、まあ、そういうものなのか……?と思い直した。今は深く考えてられない!


    けれど、そうそうやすやすと状況が上手く運んでくれるわけでもなく。

    それもちろんのことだけれど、妨害が背後から迫る。


    「ッ、“らせん”……! どこに行くつもりだ……!」


    見れば例の巨人がこちらに向かってきている。巨人から蔦が幾つも現れたと思うと、それらがおれたちを捕らえるために一斉に発射された。


    dice1d100=48 (48)

  • 141◆A8pWn3jbyg23/04/25(火) 00:23:50

    「らせん、らせん、らせん……! お前はまたおれの邪魔をするのか!? ここまで来てもなお、封印されてもなお、お前は……!」


    激しい怒り。さっきまでも多少怒った様子は幾つもあいつから見受けられてきた。

    けれどもこんなにも激しい怒りは、今初めて認識する。

    ……ミラがコクレア様に対して何か複雑な感情を抱いていることはわかっていたけれど……でも思っていた以上に、その遺恨は激しいみたいだ。


    「お前あいつにすごく嫌われてるの!?」

    「くるるぅ……」

    「そんな不服そうな声出されても」


    ……対してコクレア様に関しては、うんん……? そんなに、あいつに対して敵意みたいなの感じないの気のせいか?

    むしろベポの発言に対して妙に不本意そうな声を上げてるような……。

    それが妙に気になる。

    ……気になるけれどそれどころじゃねェ!


    背後から迫りくる幾本もの蔦やつるが、今にもおれたちを捕らえ、または叩き落としそうだ!

    さっきみたコクレア様の機動力に掛かってるけれど……!


    回避ダイス(蔦の数五本単位で計測。切り上げ)

    成功値:90以下

    dice1d100=82 (82)

    dice1d100=37 (37)

    dice1d100=62 (62)

    dice1d100=80 (80)

    dice1d100=67 (67)

    dice1d100=47 (47)

    dice1d100=39 (39)

    dice1d100=43 (43)

    dice1d100=80 (80)

    dice1d100=60 (60)

  • 151◆A8pWn3jbyg23/04/25(火) 01:04:03

    ――多少危ういところがあったけれど、マジでおれたちが乗っていたとしても、まるで重さを感じさせない動きでくるくると迫りくる攻撃をかわしていく。

    殊更に太く大きなつるは身体をねじりながら回転し、自身の身体を輪にするかのように避けたと思ったら、そこからすぐにカーブを描きながら加速していく。

    おれはコクレア様にしがみついて、さらにそのおれを背中から抱えるようにベポがしがみついている。いくらコクレア様が華麗に避けたとしたって、風圧は変わらねえんだよなあ!


    「っぐ、コラさん、大丈夫……!?」

    「俺は大丈夫だ! ってかコクレア様、マジですげえな、力が封印されてたんじゃなかったのか?」

    「くるるるる!」

    「任せとけ!……みたいなこと言ってるみたい。うーん、力が封印されたことと、動き回ること自体は関係ないのかな。でもコラさんみたいに変なところでドジるかもしれないから気をつけないとだめだぞ!」

    「お前普通に厳しいよなあ!」


    涙がちょちょぎれるぜ!……と思いながらも、背後から迫りくる敵を確認する。

    どんどん離れていっているけれど――それでも、すごい勢いで追いかけて、再び攻撃を放とうとしている。

    巨人の上に乗るミラは本当に恐ろしい顔をしている。

    本当に、感情的で、どこか人間臭く感じるのが、ひどい違和感だ。


    「く―――る―――るぅっ!」


    どんどん加速していく。振り落とされそうになるのをベポに助けられながらなんとか耐える!


    「らせん、待て……! どこに、行く、つもりだ……!」


    dice1d100=54 (54)

  • 161◆A8pWn3jbyg23/04/25(火) 01:11:43

    うっわ、結構離れてきてるのに! それなのに、撃ちだされるつるは必死な様相で自身をひび割れさせながら高速でこちらへと向かってくる!

    しかもさっきよりも量が多くなっている。

    ……でも、さっきの起動なら! これらも安定して避けれる、はず……!


    「あっ、コクレア様そっちじゃない! あっち!」

    「くるっ!?」


    あっ、ドジって微妙に出遅れてる……!



    回避ダイス(蔦の数五本単位で計測。切り上げ)

    成功値:70以下


    dice1d100=76 (76)

    dice1d100=63 (63)

    dice1d100=39 (39)

    dice1d100=47 (47)

    dice1d100=34 (34)

    dice1d100=18 (18)

    dice1d100=23 (23)

    dice1d100=88 (88)

    dice1d100=39 (39)

    dice1d100=34 (34)

    dice1d100=63 (63)

  • 171◆A8pWn3jbyg23/04/25(火) 01:54:26

    ――とうとう追いついてきた木のつるが、コクレア様のしっぽを叩く!

    「くるるっ……!」
    「うわあ!」

    瞬間身体が揺らぎ、その隙を見計らって他の数十本のつるが一気にコクレア様に巻き付いた。
    動きが無理やり止められる。コクレア様の鱗だらけのその身がぎゅう、と締め付けられ、悲痛な声をあげている。
    やば、これ完全に捕まった……!

    「べ、ベポ! なんとか出来ないか!? おれのことはいいから!」
    「いや駄目だよ! おれがコラさんから手を離した瞬間すっ飛んでく未来が見えるもん!」
    「見聞色か……??」
    「信頼」
    「そんな信頼やだー!!」

    ……なんてふざけていられない!
    コクレア様は頑張って抵抗してくれているみたいだけれど、コクレア様に巻き付けられたつるからは、ひたすら『逃がさない』という怨念染みた執着を感じるほど執拗に締め付けてくる。
    他のつるが攻撃を仕掛けてくることはしなかった。
    その代わりにすさまじい勢いで、巨人に乗ったミラがこちらに向かってくる!
    ひええとおれは叫ぼうとして――けれど、その声が、耳に届いた。

    「らせん、らせん、らせん……! また燃やすのか、おれを燃やすのか!? おまえが――お前が、おれを害するのか!? 他でもないお前が、また、おれを、おれを……!」

    そう叫ぶ、その声を聞いて、はっと、する。
    それが……あまりに、泣きそうな声に聞こえて。

    「お前は、おまえ、だけは、おまえが……! どうして、お前は、人間なんかの、味方を―――!」

  • 181◆A8pWn3jbyg23/04/25(火) 02:44:40

    おれは、それの言葉に、その声に、――この花が抱える、コクレア様に対する思いが、なんとなくわかった気がした。
    明確に言葉にすることは上手く出来ないけれど、そこには引き裂かれるほど苦しい、愛憎染みた何かがあった。
    愛憎――そう、愛、なのだ。それに似たもの。
    ろくでなしの――人を食物として扱う、神様のふりをした醜悪な何かだと思っていた、のに――!

    なんでそんな泣きそうな声で言うんだ。ラミロの身体を使っているからか?
    散々人に酷いことをしてきたのに。人を食物だと言いきり、生贄を捧げさせ、誰かの大切な人を奪ってきたあげく、悪夢を見せ、人を苦しめ、苦しめることを愉しんで、――なのに!

    「―――――切断(アンピュテート)!!!」

    「あ――――!」

    青い膜が一瞬で張られる。そして一拍置いてから、コクレア様を縛り付けていたものがバラバラになる。

    「ッロー!」
    「こいつの相手はおれだ! ……さっさと行け!」

    おれは引き留めかけて、それをぐ、と飲み込む。
    言う言葉はそうじゃないだろ、と自分の頬をべちん、と叩きながら、改めて叫んだ。

    「ありがとう、ロー! ……言ってくる! 任せた!」
    「くるるるるっ!」

    コクレア様も『任せた!』というかのようにひと鳴きしてから、身体をくるりと回転させ――再び、速度を上げ祭壇の方へと飛んでいく……!

  • 191◆A8pWn3jbyg23/04/25(火) 02:45:01

    というところで今日はここまで
    また保守のご協力をお願いします!

  • 20二次元好きの匿名さん23/04/25(火) 08:24:32

    花からコクレア様への複雑巨大感情……現状コラさん以外で察してる人はいない感じかなぁどうなるんだ……

  • 21二次元好きの匿名さん23/04/25(火) 11:26:30

    ほしゅほしゅ
    花はコクレア様のことペットに近い何かみたいに思ってそうだな…
    友達とも仲間とも認めきれない(認めたくない)けど一緒にいて楽しかったのは確か…みたいな?
    最初は本当に仲間だと思ってそうだけど…

  • 22二次元好きの匿名さん23/04/25(火) 11:44:15

    花は人間のことが嫌いなのかな?だから人間の味方のコクレア様のことも嫌いとか?だとしたら人間が花になんかしたのかな

  • 23二次元好きの匿名さん23/04/25(火) 12:44:41

    複雑な感情いりまじってそうだけど、ペット扱いではなさそうな気がする
    割と普通の友達だったのでは

  • 24二次元好きの匿名さん23/04/25(火) 18:49:17

    これまでの描写を見るに花にとってコクレア様は愛玩動物どころか唯一くらいの対等な存在として同族意識やそれが反転した憎しみを抱いてそうだなぁと思った
    自分達花を勝手に食べて勝手に崇拝した人間のことは嫌悪と僅かな恐れを含みながらも結論くだらない存在だと思ってそうだけどコクレア様へ向けるほどの愛憎はなさそう
    コラさんが「泣きそうな声」と感じた事が物語的にどう作用するのか心臓ソワソワする

  • 251◆A8pWn3jbyg23/04/25(火) 23:25:28



    歌が、聞こえる。
    なんとも腹立たしいほど能天気な歌だ。



    「くるる、るるるー、くるるるぅ~……」

    ………。

    「くるる?」

    べつに 構いません 続けていい うるさいですが 不快ではありません

    「くるる!」

    私は 歌いません

    「くるる……」



    けれど、人間の捧げる歌の方が嫌いだったから。
    なので、許容してやった。

  • 261◆A8pWn3jbyg23/04/25(火) 23:33:55



    『神様』『神様』『神様』『偉大なる神様』『神様』『神様』『神様』『偉大なるムルフェルニソ』『我らが救世主』
    『救ってください』『愛してください』『幸福にしてください』『許してください』『生かしてください』『殺してください』『楽にしてください』『苦しめてください』『恵んでください』『与えてください』『求めてください』『殺してください』『教えてください』『導いてください』
    『幸福を』『幸福を』『幸福を』『幸福を』『幸福を』『幸福を』『幸福を』『幸福を』
    『お腹がすいたの』『ひもじいの』『苦しいの』『救われたいの』『逃げたいの』『許されたいの』『泣きたいの』『縋りたいの』『乞いたいの』『認められたいの』『救われたいの』『愛されたいの』
    『苦しいのは嫌だ』『辛いのは嫌だ』『悲しいのは嫌だ』『死ぬのは嫌だ』『死なれるのは嫌だ』『このまま生きるのが嫌だ』『逃げられないのが嫌だ』『幸せになれないのは嫌だ』『寂しいのは嫌だ』『台無しになるのは嫌だ』
    『子どもだけは助けて』『夫は』『妻を』『家族を』『恋人を』『お願いします』『私はどうなってもいいのです』
    『民が生きられるように』『周りの人が救われるように』『大事な人が幸せになれるように』『すべての人が幸福になれるように』
    『あなたは私を幸せにしてくれた』『救ってくれた』『許してくれた』『逃がしてくれた』『生かしてくれた』『愛してくれた』『夢を見せてくれた』『大事な人を守ってくれた』『ありがとう』『ありがとう神様』
    『神様』『神様』『神様』『偉大なる神様』『神様』『神様』『神様』『偉大なるムルフェルニソ』『神様』『神様』『神様』『我らが救世主』『神様』『神様』『神様』『偉大なるムルフェルニソ』『我らが救世主』
    『神様』『神様』『神様』『我らが救世主』『神様』『神様』『神様』『我らが救世主』『神様』『神様』『神様』
    『神様』『神様』『神様』『偉大なる神様』『神様』『神様』『神様』『偉大なるムルフェルニソ』『神様』『神様』『神様』『我らが救世主』『神様』『我らが救世主』『神様』『神様』『我らが救世主』
    『神様』『偉大なるムルフェルニソ』『神様』『神様』『我らが救世主』『神様』『神様』『神様』『神様』『神様』『神様』

  • 271◆A8pWn3jbyg23/04/25(火) 23:40:16




    許されたくて、救われたくて、幸せになりたくて、生きたくて、死にたくて、逃げたくて。

    縋って、願って、祈って、腹は満たされて。

    ――愛してほしいと求めて。

    愛して、愛して、愛して、愛して――――――、


    何が、したいんだ?


  • 281◆A8pWn3jbyg23/04/25(火) 23:44:09




    「くるるーぅ、るー、るるる~」

    ……あなたの 歌は

    「くるぅ!」

    なんだか なんでも どうでも よくなります

    「くる!?」





    だから。

    お前だけは、お前が傍にいることだけは、許してやってもいいかなって。


  • 291◆A8pWn3jbyg23/04/25(火) 23:44:33







    ―――――――――そう、思ってたのに!!!!!





  • 301◆A8pWn3jbyg23/04/26(水) 01:10:46



    「どけ、どけどけどけどけェェェェ!!!!!」

    なりふり構わない攻撃を、ローは自身の能力によってすべて捌き切る。
    ロシーたちに向かうであろう木のつるは“ROOM”によって無理やり方向を転換させ絡めさせる。種の発射も昆虫の強襲も、限界である身体を振り絞って鬼哭による切断を行う。
    口の中は常に血の味がする。頭がガンガンと金づちで殴られているかのように痛い。身体中がガラスになって、粉々に砕ける直前のような身体の状態だ。
    つまり絶不調。気を抜けばこのまま倒れてさえしまえるほど、限界近い状態で、それでも神を名乗るそれに立ち向かっていた。

    ローの背後には、銀色の竜に乗った大切な恩人と、大切な仲間がいる。何をしようとしているのかわからない――あくまで推測しか出来ない――状態で、正直なところ彼らを二人だけにさせて不安が残るものの、それでも冷静な頭の中理性だけでは動かない情動がある。
    それは、あいつらなら何かをやってくれるだろうというという信頼だ。

    「神の前にたった一人で立ちふさがって、なんのつもりだ! 悪夢の中閉じこもって自分から出られもしなかったくせに!」
    「ハッ、神を名乗りながらガキみたいに喚くような奴になに言われても効かねえな!」

    迫りくる巨大な木のつるを、刀を振るうことによって先端から一気に切り裂いていく。流れるままに幹を切り裂いていった先―――、巨人の頭にいるミラに向かって刀を一気に突きさそうとする。

    「注射(インジェクション)――ショット!」


  • 311◆A8pWn3jbyg23/04/26(水) 01:20:38



    「おい結局お前のやりたいこといつやれるんだよ!」
    「もう少しだ」
    「お前なあ!」
    「おれも急いでいる」

    おれはホーキンスに悪態をつきながら、今もなおどんどん威力を増していく攻撃を凌ぐので精一杯だ!
    キャプテンはコクレア様に乗ってどっかいったベポとコラさんを追いかけて行っちまったし。いや行く前に『頼んだぞ』っておれに言ってくれたから(ペンギンのやつが『いいやおれに言った』とか言ってたけどおれに言われたんだよ!)まあいいんだけどよ!
    あいつらの天敵であるお嬢が滅茶苦茶頑張ってくれているようだけれど、それでも身体中ボロボロで見ていて心が痛い。いやだって戦ったことないお嬢さんが、割と気力だけでこんなに頑張ってるんだぜ? 父親であるクリスはそんなお嬢を見てやばい顔をしている。おれら結構限界近いってやつ?
    せめてホーキンスの野郎が加勢してくれれば、と思うが(腹立たしいことにこいつもキャプテンと並ぶ実力の持ち主だし――いやキャプテンのが強いけど!)今やつは本気で集中しながら能力を行使して何かを作っている。
    くそったれ!と叫ぶが――現状打破の方法が思いつかない以上、こいつに頼るしかないのだ!

    というか、縛り条件が多すぎるんだよ。
    あの不気味な大木そのものを切り倒したらその瞬間レミリオが死ぬ。この時点でやばい。襲い掛かる木のつるとかを切っても出てくるのはレミリオの血液。この時点で重症決定。……どうしろと!
    なんか呪い? みたいなもんらしいけれど、おれらにゃそんなオカルト染みたことどうしようも出来ねえよ~!!
    と内心叫びたい気持ちのまま必死にハルバードを振るう。

    そんで、おれの身体は勝手に、ホーキンスに今にも襲い掛かろうとしていた昆虫も、自分自身が傷つきながらも追い払ってしまうように頑張っちゃうのだから、もう本当、本当自分がいっそ逆にむかつく! かっこいいなあおれ!

  • 321◆A8pWn3jbyg23/04/26(水) 01:31:33

    「あと三分だ」

    この際限のない戦いにどうしたもんかと怒りの発散する場がないばかりにひたすらイライラを自分の中にため込むばかりだったが――、やたら平坦で、涼やかな声が際限のなかった戦いに、ひとつ楔を打ち込んだ。

    「あと三分間凌げ」

    ……つまり、あと三分経てばホーキンスが作り出している何かが出来上がる、ということか。
    おれはがしがし、と頭を掻いた。
    はあ、とため息を吐いて――ホーキンスに返事はせずに駆け出した。
    そしておれの前で戦っているペンギンの背中を思いっきり叩く。

    「いてェ! 何すんだよ!」
    「あと三分でどうにかなるってよ! あとひと踏ん張りだ!」
    「マジかよ!?」

    本当に本当に本当に! 腹立たしいこと! であるけれど!
    あのいけ好かない男は妙に律儀で、下手な嘘をつかねえもんだから、そうなるってなら、そうなのだろう。
    信頼とかじゃない。好意なんてもってのほか。でも、あいつはそれをこれまでの行いで証明しやがったのだ。あー、むかつく!

    「クリス、お嬢! あと三分間、あの木を傷つけないで、切らないで、なんとかおれらも無事の状態で! 耐え忍んでくれ!」

    応、という返事が戻ってくる。
    ……あと少し!

  • 331◆A8pWn3jbyg23/04/26(水) 01:32:03

    というところで今日はここまでで。
    また保守のご協力をお願いします。
    そろそろ終わりも見えてきたかもしれない。まだあるけれど。

  • 34二次元好きの匿名さん23/04/26(水) 07:34:52

    やっぱり花はラミくんのコクレア様を「食べる」って行為めちゃくちゃ地雷だったのでは…人間に食われる神様の図……
    コクレア様が人間側に着いて庇う形で対立することになったのめちゃくちゃ焼けたんだろうな脳が…
    バトルはここから大詰め感あってワクワクするし同じくらい終わって欲しくないずっと詳細にこの話を読んでたいよ~~の気持ちがある
    シャチがペンギンの背中ぶっ叩くとこ爽やかで大好き

  • 35二次元好きの匿名さん23/04/26(水) 14:27:04

    レミくんの藁人形と花の中に魂が囚われたままっぽい祭壇に埋まってた人の骨か…何するんだろうなぁ怖楽しみ
    あと3分って言われて根拠が全く不明でも気合い入れられるのは即席だけどちゃんとチームって感じだ

  • 36二次元好きの匿名さん23/04/27(木) 00:46:38

    レミリオに大きな傷がついた経緯もそろそろ明かされるかな…?やったのはやはりラミロの周りだけは絶対不幸にすると言って憚らない花なのか…

  • 37二次元好きの匿名さん23/04/27(木) 08:46:22

    今更だけど花が麻薬成分の霧を散布したのはこちらが悪夢対策にサングラスを装備したから対策の対策をされた感じだったのかなかしこい……
    皆まだ保険でちゃんとサングラスかけたままなんだろうか

  • 38二次元好きの匿名さん23/04/27(木) 18:33:27

    >>37

    ゴキゲンギラギラサングラスホーちゃん「あと三分だ」

    ってコト…?

  • 39二次元好きの匿名さん23/04/27(木) 20:17:58

    >>38

  • 401◆A8pWn3jbyg23/04/27(木) 22:45:39

    >>37

    >>38

    サングラスをかけていたとしても元来の格好良さは透けて見える……ってね

    と上手いジョークを言ったつもりになってみる

  • 41二次元好きの匿名さん23/04/27(木) 22:56:10

    フフフってなった
    そうだよなサングラスかけたままだとしても「三分だ」のかっこよさは損なわれないし茨で拘束されたところは耽美度が中和されてちゃんとニチアサ的になる(?)

  • 421◆A8pWn3jbyg23/04/27(木) 22:56:12

    ついつい道を外れがちだったりふらついたりしがちだったコクレア様をなんとか声をかけながら応援したりして操ること数分―――、背後の状態が気になるけれど、ひとまずおれたちは祭壇に到着した。
    飛ぶ勢いのまま突っ込むという形で。

    「減速って知ってる!?」
    「くるる……」
    「ほしがみえる」
    「あーあーコラさん目を回してる! まったく……おれの毛並みがなかったらどうなってたことか……」

    お互い『うわあああぁぁぁぁぁぁァァァァ~~~~~~~!!!』と悲鳴をあげながら飛び込んだわけだけれど、ベポがおれを抱えることで守ってくれたおかげで(ベポはバウンドしていた。でも無傷らしい)無事ですんだ。ありがとな。
    ベポがコクレア様に説教する中で『テンション上がっちゃったの!? よかったね!?』とよくわからない同意を返していたけれど、正直光景がちょっとかわいくてしばらくぶりに癒されてしまった。

    「ベポ、ともかくまずおれはどうしたらいいんだ? ていうかおれなんで連れてこられた? ええっと……鏡で何かすればいいのか?」

    疑問だらけになってしまったけれど、そこは勘弁してもらいたい。ベポはコクレア様に怒るのをやめて、ちょっと考えるように腕を組む。

    「……これは本当に、こう、ニュアンス的なんだけど」
    「うん? うん」
    「コクレア様、なんでかこう、儀式は“子ども”にやってもらいたいみたいで」
    「……? 子どもじゃないといけない理由はあるのか?」
    「うーん、あんまりなさそうな気がする。あえて言うなら好き嫌い…? いや、大人が嫌いってわけじゃなさそうなんだけど……」

    隣で『くるるるっ、くるるる!』と説明しているようだが、ベポには詳細までははっきりわからないみたいで、困った顔をしている。
    うんと、ともかくおれが……というより子どもがした方が嬉しい、ぐらいの気持ちでいればいいのか?

  • 43二次元好きの匿名さん23/04/27(木) 23:30:48

    もしかして今までのホーちゃんに対するシリアスも絵に起こしたら全部シリアル…?

  • 441◆A8pWn3jbyg23/04/27(木) 23:31:46

    「えっと……台座に鏡を差せばいいんだよな?」
    「くるる!」
    「そうだって! あ、そうそう、台座だよね」

    ベポは懐に手を入れると、そこから重たそうな石の台を取り出す。……よく入ってたな。
    それを祭壇の空いていた場所に置けばちょうど、といった風にあてはまる。足りなかったものが満たされたというように、一気に祭壇の雰囲気が増した。
    台座を見れば鏡をはめることが出来そうな穴が空いてある。……この手鏡の持ち手を突き刺せばよさそうだ。

    いったい何が起こるのか、おれはドキドキしている。何が起こるかわからないが――それでも、今の状態を好転させることがきっと出来るはずだ。
    そう思っておれは急いで台座の元まで向かって――、うっかり、といった風に躓いてスッ転んだ。ドジった!


    ――――そして、そのおれのちょうど頭があった場所を、勢いよく木のつるが通り抜けた。


    「んなっ……!?」

    ベポの驚愕の悲鳴が聞こえる。おれもぽかんと何が起こったのかを反芻しながら、超九死に一生を得た実感がわかぬまま、突如として現れた木のつるが祭壇を破壊するのをこの目で見た。

    「え、あ、」

    そして破壊した瞬間、木のつるが焼けただれる。激しい苦悶の声が辺りに響き渡る。
    そして同時に、祭壇の中に飛び込んでくる――いいや、飛ばされた姿を見た。
    ……ローだ!

    「な、なにが……ッ、……ロー!」

    慌てて駆け寄れば、ローはぐったりとした姿で腹から血をだくだくと流しているのがわかる。
    血の気が一気に下がるのを感じた。おい、何が、どうなって……!

  • 451◆A8pWn3jbyg23/04/27(木) 23:51:58

    「ゆるさないよ」

    外から声が聞こえる。おどろおどろしい……この世の憎しみをすべて含んだような声だ。
    そこにはラミロ、――ミラが立っている。
    けれど、その姿は異様だ。
    ミラの自体そのものは幻影ではないらしい。恐らく何かしら植物を利用したガワだと思うが――、それでも、顔の半分が焼けただれ、じゅくじゅくと膿み、身体中から血液とも言えないどす黒い液体を出しながら一歩一歩、こちらに近づいてくる様は心の底から異様と思える姿だった。
    片腕は取れて、そこからいくつもの木のつるがうねうねと蠢いている。片足も途中で取れかかっていて、茨がそれを代用していた。
    間違いなく――それは、このコクレア様の力が残る祭壇に来た影響だろう。こちらに向かってくるたびに、皮が削げ落ちているのがわかる。喉が震えた。――単純な恐怖が、せり上がってくる。

    「らせん、らせん、らせん、復活してどうするつもりだ。また燃やすの? おれを燃やしに来るの? おれを傷つけるの? お前が、おれを?」

    ローのことは目に入っていない。その目はらせん――コクレア様だけをじっと見つめ、爛々と輝いている。

    「お人形でいるのは許してやったじゃないか。おれの支配する島でおれから隠れながら存在するのは許してやったのに、ちゃんと滅ぼさないとわからないのか?」
    「くるる……」
    「おれに逆らうな。人間に従うな。神に戻ろうだなんて不遜なことを考えるな。お前はただの愛玩される獣であればいい!」

    そう叫んだ瞬間――ただでさえ壊された祭壇を、さらに大きな木のつるを使って破壊した――挙句!
    この洞窟そのものを大きなつるを使って、一気に砕き始めやがった!
    おれは倒れたままのローに覆いかぶさる。
    いったいなんなんだ、あいつは。……本当にコクレア様とどういう関係なんだよ!

  • 461◆A8pWn3jbyg23/04/28(金) 01:04:33

    「う、うわあ!」

    ベポがおれとローを抱える。そして、その次の瞬間、地面が大きく揺れ――おれたちがいる地面ごと、でっかい蔦が難十本もまとめて持ち上がった!
    地面が崩れるどころか、天井も崩落する。
    それでも押しつぶされなかったのは、ぎりぎりでベポが降り注ぐ瓦礫をすべて打ち砕いていたからだ。
    可愛い顔してるけどパワーがあって頼りになるかっこいい仲間なんだよな!

    「コラさん! 洞窟も祭壇も壊されちゃったけど! どうしよう!」
    「どうしようなァ!! おれもわかんねえよ!!」

    おれの傍にはぐったりとしたロー。止血する暇もなくて傷口を押さえていることしか出来ない。
    このままじゃやばいってことはわかる。わかるのに、急に現れた強大な敵のせいで、一気に思考が搔き乱される。
    見くびっていた。多分、そうなのだ。ここまで短い時間の間に追い詰められるなんて思ってなかった。猶予があると思っていた。それこそ、コクレア様を復活出来る程度には――。
    ああくそ! 情けねえ! ベポに抱えられるがまま、崩落した天井を掻い潜り――一気に外に撃ちだされた。

    「くるるるるるっ……!」

    コクレア様が急いでおれたちの周りをくるりと回ったかと思うと、その背におれとローを抱えたベポを乗せる。
    それから執拗に狙ってくる木のつるの攻撃を紙一重で躱していく。

    「くるるるるるるる! くーるーるぅ!」
    「コクレア様! 祭壇壊されたけどどうするんだ!?」
    「くるる……」
    「多分『どうしよう……』って言ってる気がする!」
    「コクレア様にもわかんねェかあ! うん、難しいよなァ!」

    つまり絶体絶命なのはかわんねェなあ!

  • 471◆A8pWn3jbyg23/04/28(金) 01:40:12

    「らせん、らせん……!」

    身体が半壊したミラが、蔦に乗っておれたちを追いかけてくる。例の巨人は…!と辺りを見渡して――普通にいた!
    ミラが動かしていないためか、そのでかい図体を置物にしてその場に留まっている。あいつも攻撃してくるようなことがないのは不幸中の幸いだが……それでも、今がその不幸中の真っただ中ってことに変わりはねえ!

    「ぐ、ゥ……!」
    「あ、ろ、ロー! 大丈夫か!?」
    「へい、き、だ、クソッ……最悪、すぎる……!」
    「キャプテン! 無理しないで!」

    ベポに抱えられていたローが姿勢を整える。おれとベポに挟まれる形でコクレア様に乗り直したローは、背後から追いかけてくるミラを睨んだ。

    「ベポ、どうなってる」
    「祭壇ぶっ壊されちゃった! どうしようキャプテン!」
    「……悪い。おれが止められなかったせいだ」
    「お前のせいじゃねェよロー! ていうかそんなこと考えるよりこれからどうするか考えようぜ!」

    でもコラさん全くこれからどうすればいいかわかんねェんだよな~~!!ともうやけくそで叫ぶ。
    ローだけのせいじゃない。それは勿論だ。おれだってもっと素早く動けていたらよかったし、コクレア様がおれを選ばなければよかったんじゃないか、すら考案する余地がある。でも今考えるべくは責任の所在じゃなくて、どうやってあいつに対抗すればいいか、なんだよな!

    おれがうんうんと頭を悩ませていると、ローが顎に手を当てて何かを考え込んでいる。
    何か思いついたのならいいけれど、まず止血しようぜ。大丈夫か? お腹周り真っ赤でおれすげー心配すぎてギャン泣き間際だ。

  • 481◆A8pWn3jbyg23/04/28(金) 02:37:46

    今日はここまでにさせていただきます!
    また保守のご協力をお願いします!

  • 49二次元好きの匿名さん23/04/28(金) 07:04:13

    さ、祭壇が……!

    えっコレマジでどうするんだ
    というか子供じゃないとダメ?ってなにか理由があるのかな、それか本当は子供じゃなくて転生を経験してるコラさんじゃないとダメとか

  • 50二次元好きの匿名さん23/04/28(金) 12:32:14

    さらっと出してたけど祭壇の欠けた台座部分ちゃんと探し当ててくれてたんだな合流する前に
    水晶の洞窟の方に封印されてるコクレア様も直接干渉できないあやふやな存在みたいだけど完全復活なしで戦う?
    ベポ乗せて飛んできた細いコクレア様みてコラさんが胸を打たれてたけど今や三人も乗せててめちゃくちゃ頑張り屋だ…

  • 511◆A8pWn3jbyg23/04/28(金) 21:38:17

    「……………コラさん、無理を承知で、――やってもらい、たい、ことがある」

    ローにしては大分遠慮した風に声をかけてきた。
    おれはきょとんと眼を瞬かせてから、『わかった、やる』と答えると、これまた不機嫌な顔になる。いやお前がやってほしいって言ったんだろ!

    「いや考え無しになんでもかんでもホイホイ頷くな! 話の内容聞いてから考えろ!」
    「でもローが言うことだぜ? ていうかこれただの勘だけど、おれが無理するってんなら、ローがもっと無理しそうな気がして……」
    「………」
    「図星っぽい無言出してくんじゃねェか」

    とにもかくにもコラさん怒らねえから言ってみなさい、とローに促せば、少し躊躇してから話し出す。
    その内容におれはぽかんとして――それからローに向かって口を開く。

    「……やっぱり一番無理してるのローじゃねェか!」
    「……怒らないって言った」
    「怒っ……いやでも! おれのはまあ、確かに多少無理するかもだけど割と大丈夫な部類だろ! 絶対お前もコクレア様も助けてくれるだろうし! でもあれだろ、ローの場合物理的に無茶するやつじゃねェか! 今だって能力行使するのも限界なんだろ!」
    「おれは強いから大丈夫だ」
    「そういう問題じゃね~~~~!!!」

    なんでこういう時クソガキに戻るんだよロー!

  • 521◆A8pWn3jbyg23/04/28(金) 21:48:21

    「二人とも! 喧嘩してる場合じゃないでしょ!」

    おれとローががやがや騒ぐものだからベポからお叱りが入った。
    ぐ、とおれとロー二人して口を噤んでから、顔を見合わせる。
    しっかり視線を合わせて見つめ合う。

    「……無茶のしどころか」
    「じゃねェと死ぬな、お互いに」
    「それは……嫌だな。自分が死ぬのも、みんなが死ぬのも」
    「自己犠牲精神なくちゃんと自分の死も拒否できるのは何よりだ」
    「それ皮肉かよ」

    別におれだって前世でも死にたいわけじゃなかったからな。それ以上に守ってやりたいもんがその時あっただけであって。
    ローはおれのことどう思ってるかわからないけれど、自分の命を軽視しているわけじゃねェ。
    だから、みんなでこの絶望的な状況を突破して生きて戻る。
    ……うん、それが一番だ!

    「よし、ロー! もうしょうがねェ、この戦いが終わったらしっかり休息取るぞ! 一週間くらい食っちゃ寝しろよ!」
    「性に合わねえ」
    「このワーカーホリック!」

    絶対たっぷり暖かいふわふわのベッドで休ませるんだからな……! 最終兵器ベポも投入させよう。おれのナギナギの実で安眠コースだ!
    ベポも交えて作戦について共有してから、各々の役割を確かめる。コクレア様にもだ。

    「頼んだぞ、コラさん」
    「ああ、こっちも、頼んだぜロー!」

    そしておれは――、コクレア様から飛び降りた。

  • 53二次元好きの匿名さん23/04/29(土) 00:05:46

    無茶は無茶でも賭ける価値があってお互い納得ずくなら二手に分かれるのも全然心持ちが違うよな…勿論穏やかではないだろうけど…どういう作戦か分からないけどがんばってほしい

  • 541◆A8pWn3jbyg23/04/29(土) 03:30:45

    今日はこれ以上更新できそうにないので、また保守のご協力をお願いします!

  • 55二次元好きの匿名さん23/04/29(土) 05:31:20

    「……怒らないって言った」がもうなんかめちゃくちゃ好きだ
    もう13年とか経ってるのにかわいいクソガキ健在だなあ

  • 56二次元好きの匿名さん23/04/29(土) 15:46:44

    保守

  • 57二次元好きの匿名さん23/04/29(土) 22:05:22

    前作ロシーくんも結構無茶したからローも一人で行動させるの渋り気味で過去保護気味みたいな解説が前にあったのを思い出して改めて「がんばえ~!!」の気持ちになってる
    花はコクレア様と正確に意思疎通できてた印象だけどラミくんやサルヴァのコクレア様語(?)レベルも高かったのかな

  • 581◆A8pWn3jbyg23/04/30(日) 04:30:11

    今日は書けなかった!また保守のご協力をお願いします!

  • 59二次元好きの匿名さん23/04/30(日) 15:00:54

    シンコラさんの肉体年齢相応な反応と前世の記憶から来る保護者ムーブとのギャップがほんとクセになる

  • 601◆A8pWn3jbyg23/04/30(日) 17:15:05

    落ちた瞬間顔が風にあおられてとんでもなくびろびろしている。
    うわあああああ普通にこええええええええええ!!!!!!!!
    このまま落下したら最悪死ぬのである。
    走馬灯のように、前世のおれがローを窓から投げ捨てたことを思い出した。……いやあれ怖いし痛かっただろうな……追い出すためにしたこととは言え、今罪悪感がすげえ来た!!!

    おれに向けて木のつるが射出される。それがおれを貫こうとした瞬間、上から同じように降ってきたベポがそれを蹴って止めたうえ、おれを守るように次々と襲い来る木のつるを破壊していく。

    「何を……?」

    訝し気にミラがこちらを見ていることはわかった。まあ傍から見たら急におれが落ちて、その次にベポが落ちて……とやつからしたら意味わからない状態なんだろう。ドジって落ちたとでも思ってくれたら幸いだ。
    ローのやつは、コクレア様の上で片膝をつきながら目をつむっている。
    けれど次の瞬間かっと目を見開くと、能力を発動した。

    「“ROOM”……――タクト!」

    青い膜が張った瞬間、辺りに散らばった瓦礫が勝手に動き出す。
    いや、勝手にじゃない。ローの能力によって操られているのだ。
    そして――――壊れた祭壇も、同様に集まっていく!

    そして、おれのすぐそばにいたベポが、おれの身体を掴むと、その祭壇に向かって投げつけた!
    うああああああやっぱり普通にめちゃくちゃこえええええええええええ!!!!!!!!!

  • 611◆A8pWn3jbyg23/04/30(日) 17:30:56



    「おら!!! 三分くらいたったぞ!!!!」
    「うるさい、聞こえている」

    おれはズタボロになりながらも、ホーキンスの野郎に向けて叫ぶ。
    制限つきの勝負はただひたすらこちらが不利なばっかりで、もう全員ボロボロ。
    お嬢に関してはクリスが精いっぱい守っていたようだが、それでも限界があるようで少なくない傷がついている。そのせいでクリスの顔が滅茶苦茶怖い。海賊顔負けの凶悪さだ。
    ペンギンとおれは前衛として突貫しているわけで、そりゃまあハートの海賊団としてみすみすやられるつもりはないが、だとしても怪我の具合はお察しの通り。すんげえしんどい、という言葉は飲み込んで。

    言われた通り凌いでやったぞ、とホーキンスを睨めば。
    わかっている、といった風にあいつは真っすぐにおれを見た。

    手に持っているのは藁人形だ。あいつの能力で作り上げたものなのだろう。

    「……それでどうするつもりだよ」
    「ようは、呪いだ」

    返答しているようで答えになっていない回答。こういうところが腹立つんだよ、と思いながら続きを待てば、ホーキンスはどこか――眉間に皺を寄せて、変に覚悟を決めたように藁人形を握りしめて、それから大木の方を見据える。
    その姿に何故か妙な胸騒ぎを覚えた。
    いや、別にホーキンスを心配する気持ちなんて一ミリもねェけど!

  • 621◆A8pWn3jbyg23/04/30(日) 20:15:30

    「……最悪、しばらく動けなくなる可能性がある」
    「は? おい、それって」
    「あとは頼んだぞ」

    そう言ってホーキンスは藁人形を大木に掲げた。
    そして一言、なんでもなさそうに、それでいて低く、荘厳とも思えるような声で、ただ口にした。

    「呪詛移し」

    その瞬間。
    ――視界の中に入っていたはずの大木は消え、
    そして――――ホーキンスの背中から、大木が生えてきた。

    「はっ……!?」

    めりめり、と嫌な音が響く。そして当たり前のようにホーキンスは嘔吐いたあと、口から大量の血を吐き出す。
    その血が全部どす黒くて、ヒュッとおれの喉から悲鳴染みた息が鳴った。
    いっそ芸術のように、ホーキンスの背中から羽染みた枝先が伸ばされのを呆然と見て――そして、ホーキンスが前に向かって倒れそうになるのを、おれは半ば意地で抱きしめるようにして支えた。
    いや、お前、なにやってんだ……!?
    ホーキンスの口から溢れた血が遠慮なくおれにかかるのがわかる。白いつなぎを真っ赤に染めやがる!

    「っ、おい、いったい何が……!?」

    急に大木が消失したのを確認したペンギンがこちらに向かってくる。
    お嬢は大木が消えた先――そこに残った青年に駆け寄っていて、クリスはこちらと向こうをきょろきょろと見ている。
    そしてホーキンスだけが、身体からいまだに枝先を伸ばし続けている。

    「……ホーキンス! しっかりしろ!」

  • 63二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 01:15:03

    誰にも相談せずに特大の無茶をするホーキンス……!
    レミくんの呪いを無理やり請け負った感じかな…すごいけど心配すぎるホーキンス事前に説明してホーキンス
    倒れそうなところを受け止めるのがシャチなところに今までの小競り合いと共闘が思われてぐっとくるな…

  • 641◆A8pWn3jbyg23/05/01(月) 01:56:55

    ホーキンスはおれの背中を掴みながら、ひどく荒い息を吐いている。そのたびに口から血を吐き出すから、おれは気が気じゃなかった。
    至近距離にいてホーキンスを支えている状態のおれの方から薄気味悪い枝の様子が見えるし、それがだんだん成長している姿もはっきり見える。
    あまりにも正気を削られてしまいそうな光景だ。

    「おい、……おい! ホーキンス、何を、お前、呪いを自分に移して、」
    「……ゴホッ、慌てる、な。これは……ただの……前準備、だ」

    でも滅茶苦茶苦しそうだけど!? 出血も多い。ホーキンスはキャプテンよりもでかいから、失血によるリスクは人より低いけど……いや普通に血の量がやばいライン来てねえかな?! 目測だけでもやべェぞ!?

    「やかましい。……今から、集中する、から。そのまま動く、な」
    「動くなって……」

    お前の血がこれでもかってくらいかかって、血液感染のリスクとか諸々あるんだけど、……という言葉が口から出そうになってなんとか押しとどめた。これ今言う台詞じゃねェだろ。
    少なくとも血を吐きながら、何か突破口を開こうとしているホーキンスの所業は、いくらおれが何を思おうとも、賞賛されるべきものだ。それだけは、おれは間違いなく認め、尊敬しなくてはならない。
    だからおれはホーキンスの身体を抱えながら、しっかりと目を見つめていった。

    「やっちまえ、ホーキンス。お前のやりたいことを……!」

    そういうと、ホーキンスはわずかに笑って、そしてもう一つの藁人形を取り出した。――そうか、こっちが今作り出した方の……。
    それを、キャプテンたちが行ってしまった方へと向ける。

    「呪詛――――返……し……!」

  • 651◆A8pWn3jbyg23/05/01(月) 02:26:24

    「ここまで来てそんな悪あがきを―――」

    怒りを帯びた極寒の声。まるで聞いた人間を凍傷にさせちまいそうだ。
    人間じゃないのに、わかりやすく殺意に塗れている。剥き出しになった感情を隠す素振りさえ見せない。
    もうおれたちが何をやりたいのかわかったのだろう、ああ、そうとも。ローのタクトによって、無理やり祭壇を再構成するのだ!
    これはローのオペオペの実の力と、ローが能力を使いこなす技能、それから空間を正確に理解し、並列的指向が出来るからこその滅茶苦茶強引なこう……力技ってやつだ。
    でも、提案したのがローだからこそ、出来るっていう確証が生まれる。ローのやつ、おれよりも頭いいからな~! だから、出来るって思う。信じられる!

    「やめろ、そんなの認めない。らせんは弱いままでいればいい。この島に神は二つもいらない……!」

    その声が聞こえた瞬間、ミラが腕を広げる。次いで巨人からいくつもの木のつるが生み出される。
    それは生み出されるたびにおれのほうに向かって撃ちだされて―――その数、おおよそ百を超え、いや、千本くらいあるんじゃないか!? というくらいおれの視界を埋め尽くす。
    え、これ……やばくね? 普通に量やばすぎね?

    「これ死ぬのでは……?」
    「こらっ! コラさん、ふんばって!」
    「わかってるけどよォ……!」

    何とか出来そうなのはローだけど、今ローは祭壇を再構成することに神経を使っている。そのうえであの千本近くある木のつるをどうにかしろってのもかなり難しい話だろ!?
    それでもおれは、ベポに軽く手助けしてもらいながら祭壇の方へと飛ばされていく。
    祭壇につくのが先か、あいつの攻撃が当たるのが先か……!

  • 661◆A8pWn3jbyg23/05/01(月) 03:06:08

    だが、木のつるは失速した。おれに届く前に。
    そして―――――、

    「――――――は?」

    ミラの身体から、大木が生える形で。

    呆然としたミラの顔。まるで予想もしていなかったという、――何が起こったのか、わからないと、まるで幼さすら感じる顔で。
    全ての木のつるの動きが止まる。
    ミラの背中から、胴から、頭から、そしてあの巨人からも、至る所から紫色の木が生える……!」

    「あ、の、」

    ミラの顔に怒りが灯る。顔中に激しい憎悪を滾らせながら吠えた。

    「あの男が……!」

  • 671◆A8pWn3jbyg23/05/01(月) 03:07:21





    「人を呪わば穴二つ、だ」

    「知らないのか?」

    「呪いは何倍となって――」

    「――――術者に戻る……!」



  • 681◆A8pWn3jbyg23/05/01(月) 03:21:15

    というところで今日はここまででお願いします。
    ホーちゃんがお耽美担当になっているまである。
    また保守のご協力をお願いします!

  • 69二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 10:45:40

    血みどろお耽美担当…?これがニチアサで…??(放映してない)
    ホーキンスのセリフの最後にドン!!が見えてかっこよかった!大木の寄生はなくなったけどボロボロ血みどろのままなんだろうなお疲れ

  • 70二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 20:48:44

    保守

  • 711◆A8pWn3jbyg23/05/02(火) 04:00:14



    何か忘れている気がするのです。
    何か大事なことを忘れている気がするのです。
    甘い臭いに頭がくらくらして、馬鹿になって、幸せになって、白 痴のようになりはてて。

    痛みで気がおかしくなりそうなのに、どこか気持ちいい。
    僅かに開いた唇から、よだれが溢れてしまいました。
    けれど拭う腕一つ動かせず。
    最早人間として何も機能しないまま。

    ――何か忘れている気がするのです。
    ――忘れてはいけないことを、忘れている気がするのです。

    兄の、優しい声が、聞こえます。
    けれど、こんな声だったのかとも思います。
    頬に触れるその手が、まるで自分の顔を引き裂きそうだなんて。
    どうして、信頼すべき、兄に対して、そんな風に思えるのでしょうか。

    「愚かだね、背信 者の弟なばかりに」

    ―――ああ、兄の声が。
    雑音のように、耳元でがなります。
    兄の声は、果たしてこんな声だったのでしょうか。
    自分は。
    何を、忘れたのでしょうか。

  • 721◆A8pWn3jbyg23/05/02(火) 04:25:40

    ――――いや、

    ――――いや、違う。

    忘れている記憶を手繰る。奥底に閉じ込めた記憶を引きずり出す。
    忘れてはいけない記憶があった。
    だから、それを思い出す。思い出す、思い出す。思い出す。思い出す。思い出せ。

    思い出せ!!!!!!!!!

    「あ゛ッ……ぐ、ぅ、う……!」

    全身が痛い。引き千切れそうだ。少し指先を動かすだけでも痛い。
    これはあれだ。
    自分で自分の顔から首にかけて切り裂いた時以上の痛さだ、と笑った。

    視界がぼやける。ぽた、ぽた、と血が出て、――それが自分の鼻から出ている血だと気付く。
    酷くどす黒い色をしている。けれど、それがまるで自分からあの花の毒素を抜いてくれているような気がして、逆に気分は健やかだ。
    ――嗚呼、呪いに浸されている中で。常に恨みと憎悪と叫びが渦巻く中で。それでも、皮肉な話だけれど、得られるものがあった。
    それは自分にとってかなり不本意なものだったし、出来れば経験したくなかったものだけれど。
    毎夜悪夢に苛まれ、常に自身に呪いが絡まりゆく地獄みたいな日々だったとして。
    それを――認めるものかと。憤怒を抱けるこの身を持てた。

    腹の奥底に抱えた、兄に託された大事な秘密を、この時まで隠し通すことが出来た。

    「ラミ……らみ、らみろ、ラミロ……!」

    ああ、僕の、兄の名前。
    大丈夫だ、僕はあなたを、――覚えている!

  • 731◆A8pWn3jbyg23/05/02(火) 04:36:04

    善人だって僕のことをあなたは言うけれど、僕はそんなに善人じゃない。
    望まれたことをしただけ。望まれたことを差し出されただけ。望まれたことを許しただけ。
    自分をしっかりと持つことが出来ない。
    指示されるのが楽だった。選択や決断だって、兄に決めてもらえる方がいい。自分で大事なことを決めることが恐ろしかった。だから人のためになることをすれば――それだけで、僕を許してくれるから。善意によって僕の道先を決めてくれる人がたくさんいたから。だから、そんな楽な道に逃げた。

    古本屋だって、ただ漠然とした形の夢でしかなかった。親や兄に言われてしまえば、家業を継ぐことだってかまわなかった。
    けれど先に兄が選んでくれた。古本屋をやれと言ってくれた。だからやることが出来た。それだけだった。

    ああ、なんて、愚かだったのだろう。

    自分で足を踏みしめて歩くべきだと、あなたは体現していた。
    だから人から立派だと言われ、賞賛され、――それが誇らしかったけれど、少し後ろめたく思ったのは、いつだって僕が兄の影という楽な道を歩いていたからだろう。
    そうやって歩いていたから。
    そんな風に、何も決断せずに生きていたから。
    ――だからこそ、兄は僕を置いて、一人であの花に立ち向かって行った。

    「うう、グ、ぅ、ううううっ……!」

    腕を地面に突く。身体が重い。ただただ重い。鼻からだけではなく、臓腑からこみあげた血が喉を通ってびしゃびしゃと地面に吐き出される。
    酷い惨状だ。
    今すぐ倒れ込んでしまいたい。
    でも、僕には――やるべきことがある。

  • 741◆A8pWn3jbyg23/05/02(火) 04:58:19

    「わすれ、てて、ごめん……!」

    ふらふらの身体に鞭打って立ち上がる。地面を踏みしめる。
    迷いなんてもうない。不安もない。恐れなんてもってのほか。
    ラミが命を賭してでも、やりたかったこと。願ったこと。祈ったこと。
    そして、託してくれたこと。

    「う、ぅ……う゛、ぐうぅ……!」

    ……ああ、悲しいな。大事な片割れがいないことを今更ながら実感する。
    実感して、思い知って、心に喪失感が吹き抜けて――でも、それでも生きていくしかないんだ。
    ラミロは僕という弟を愛して、友という隣人を愛して、つらく苦しい歴史のあるこの島を愛して、ちっとも優しくない世界を愛した。
    例え口では素直に言わなくとも、僕にはわかっている。
    だから、僕も。
    ラミロが愛したもののために、立ち上がらなくてはいけない。
    決断しなくちゃいけない。
    戦わなくてはいけない。

    「ッ、レミリオ……!」

    僕の名前を呼ぶ声がする。随分様変わりをした、僕にとっても大切な友人がこちらに駆けてくる。
    だから僕も同じように彼女のもとへと向かい――半ば倒れ込むようにして、しがみつきながら、必死に掠れた声を張り合えた。

    「頼みが、あるんだ……!」

  • 751◆A8pWn3jbyg23/05/02(火) 04:58:49

    というところで今日はここまでです。
    また保守のご協力をお願いします!

  • 76二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 11:38:39

    望まれたからとか選んでもらえたからとは言ってもそれを実際できるのはやっぱり善の人なんだなと思うよレミくん
    お互いにかなり相手を尊敬しつつちょっと引け目みたいなものあるの似てて兄弟…となる

  • 77二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 22:12:43

    レミくんマリーちゃんの姿に意外と驚かないんだなと思ったけど驚く余裕もないだけかもしれない……
    何かを忘れてたのはメモメモじゃなくて花の能力によるものかな…?

  • 78二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 08:30:17

    ほしゅ

  • 791◆A8pWn3jbyg23/05/03(水) 17:35:59

    ミラは激しい怒りを顔に出すものの、それでも自身から生えた大木に動きを阻害されている。
    あいつは自分がもたらした全てを操ると思っていたんだけど……、あの紫の木は、呪いだってホーキンスが言っていたな。その呪いがなんやかんやして返ってきたわけだから、なんか……なんか、大変なことになったんだろう! わかんねェ! おれホーキンスみたいに詳しくねェもん!

    けれど、あいつの攻撃が止まったことは確かだ!
    おれは妨害されることなく、修復がほぼ完了した祭壇に辿り着く。
    そこには既に台座だって装着されている!
    触れればひんやりとした冷たさがある。それはどこか、不思議な冷たさで――なんだろう、ただの石とも言えないような、不思議な感覚だった。

    「コラさーん! お願い!」

    ベポの応援が聞こえる。
    わかってる! ここでドジなんてしてられねェよ!

    「――――コクレア様! 復活してくれェ~~~~~~~!!」

    台座にある穴に、手鏡の持ち手部分を思いっきり突き刺した。
    そしてその瞬間、

    「くるるるるるるるる―――――――っ!!!!」

    高らかに、コクレア様の鳴き声が響いた。

  • 80二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 03:17:35

    ついにコクレア様が…!

  • 81二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 10:20:19

    ここまで本当に大変な道のりだったな皆……欠けてた台座も補完できたしコクレア様が望んだ通りコラさんが儀式をやってくれたし万全を期して復活かな

  • 82二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 13:00:14

    森に入ってからどのくらい時間経ったんだろ……探索しながら合流したり分かれたり悪夢見たりとか色々あったけど皆ぶっ通しで動いてるし戦ってるんだよな……

  • 83二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 23:52:54

    保守

  • 84二次元好きの匿名さん23/05/05(金) 03:02:50

    コクレア様がんばえー!(サイリウム振る)

  • 85二次元好きの匿名さん23/05/05(金) 13:44:41

    ホーキンス大丈夫かな……かなりダメージ負ってるっぽいけど

  • 86二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 00:31:03

    ほしゅ

  • 871◆A8pWn3jbyg23/05/06(土) 01:28:59

    コクレア様がこっちに向かってくる。攻撃こそ止んだとはいえ、障害物のようにその場に留まる木のつるを幾つも潜り抜けて、だ。

    「待て、」

    ミラが手を伸ばす。
    その声に、コクレア様は振り向かない。


    「待て、待てよ」

    「―――待って!」


    いっそ必死さすら感じられる。
    半身を木に飲み込まれながら、半ば溶けた手を伸ばし――、けれど、届くことはない。

    コクレア様は、祭壇の反対側から、手鏡の後ろに減速することなく突っ込む。つまりそれは、ほぼおれに向かって突っ込んでくると同義で、おれは『うおああああああっ!??!』とちょっと情けない声をあげてしまった。
    けれど、コクレア様はおれと激突することはなく。
    やる気に満ちた鳴き声と共に、手鏡の鏡面に吸い込まれていった。

    「え、えええっ……?」

    消えた……? 中に入って行っちまったぞ……?
    と、困惑する時間は数秒にも満たなかった。
    次の瞬間には、カタカタと手鏡が小刻みに震えだし――、そして、ひときわ大きく震えた、かと思うと。

    「のあっ!?」

    ――その手鏡の大きさからはとても考えられない巨体が、一気に外に向かって勢いよく飛んで行ったのだ!
    その顔はおれのほどの大きさもある。その胴だって。先ほどの少し頼りない状態と比べれば、あまりにも見違えた姿で――、銀色のドラゴンが、おれが潜水艦の中で見たことがあるドラゴンが、優美さと荘厳さを齎しながら空を切り裂くように飛んで行った。

  • 881◆A8pWn3jbyg23/05/06(土) 01:39:10

    「クルルルゥ――――!!!!!!」

    コクレア様が通った後は、木のつるがまるで弾かれるように吹き飛ばされていく。
    どこまでも響くような声を上げ空へと昇る姿は、蛇でも魚でもない。
    改めて見たらわかる。
    間違いなくドラゴンだ。
    美しい銀色の鱗を持つ――とんでもなくかっこいいドラゴンだ!

    「ちくしょう! ちょっと可愛い系って思ってて悪かったな―――!!」

    そう叫べば、視界の中で答えるようにコクレア様がくるりと回転した!


    ……ところで、今現在落下中のおれどうしよう。
    祭壇と共に急速落下しててちょっとこれやべえのでは? と思った瞬間、視界が移動してローに抱えられていた。いつもすまねえな……。

    「ロー、あれ」
    「ああ」

    ローもコクレア様をじっと見つめている。心なしか目をちょっと輝いているのは気のせいだろうか。

    ……とにもかくにも! コクレア様は見事復活した!
    ミラがあそこまで復活を封じようとしていた神様が復活した。
    コクレア様だけに頼るのはちょっとアレだけど、でも、それでも頼りになるのは違いねェ!
    少なくとも形勢逆転って言っても過言ではない、と思うんだけど!

  • 891◆A8pWn3jbyg23/05/06(土) 01:54:10



    「―――さい、あくだ」

    ぽつり、と。ミラが小さな声で呟く。

    「さいあくだ、さいあくだ、さいあくだ、さいあくだ、さいあくだ」

    頭を抱えながらぶつぶつと呟き続ける。
    また燃やされる。また滅ぼされる。また封じられる。
    また。また。また。
    他ならぬ、らせんの手によって。

    見た目を形どったラミロの目に絶望に似た色が浮かぶ。
    それは、決してミラが見ることがなかったラミロの顔だ。
    皮肉な話だが、それをミラ自身が表すことになるとは夢にも思わなかっただろう。

    「また、おれを」

    また、わたしを。

    脳内がぐちゃぐちゃになる。あの火の景色が蘇る。
    あの、憐れむように自分を見つめる姿も。悲し気な声も。
    ……なんで。
    ……………なんで、お前が、燃やすのだ。
    お前だけは、おれを傷つけないと思っていたのに。

    ――ああ、身体がじゅくじゅくと呪いに侵されていく。
    自分が放った呪いに喰われるなんておかしな話だ。

  • 901◆A8pWn3jbyg23/05/06(土) 02:41:35

    はは、と。口から空気が漏れ出る。
    ミラは金色の眼光をぎょろりとさせながら、自身を蝕む呪いを見つめた。

    そして――口から、大量の木のつるを生やしたかと思うと、その半身から生えた呪いの木を、逆に口内に引きずり込んでいく。
    顔自体を変形させながら、ばきり、ごきり、ぐしゃり、と。気味の悪い音を立てながら咀嚼していく。
    がきん、ぐじゅ、ごり、じゅぶ
    ばきゅ、べちゃ、ごりゅ、ぐじゅん
    聞くに堪えない、醜い音を、恐ろしい姿で咀嚼する様は正気すら削られてしまいそうなありさまだった。

    「―――呪いが、他でもないお前に生えたということは」

    ごくり、と喉が鳴る。呪いの全てを飲み込んだあと、半身はまるで引きちぎられたような無残な状態になっている。
    そこに木の根のような細かく先分れしたつるが一気に生えていく。

    「いつそうなったのか知らねェが、お前が本体なんだな?」
    「うるさいな、人間」

    冷たい声が、ローに返される。

    「いいよ、もうどうでも」

    自分よりも高い場所で、空で、らせんがじっと、ミラを見ている。

    「……いつだってそうだ。お前は、人間の味方をする。人間の何がいいんだ。お前はおれの味方であるべき、なのに」

    でも、もういい、とミラは吐き捨てた。

    「すべて、食べ尽くしてやる」

  • 911◆A8pWn3jbyg23/05/06(土) 03:53:12

    地面が揺れた。地面っていうか、最早この島そのものが揺れているかと思えるほどの激しい振動だった。

    ローによって地面に着地することが出来たのはいいものの、そのままミラの方へと行ってしまった。いやおれを置いていくなよ!?と言いたかったが、同じく地面に危なげなく着地したベポに背負われたので、うん、少しでも動きを阻害する可能性があるおれはばっちり置いて行かれるってことあな。普通に冷静で涙がちょちょぎれるぜ!

    まあともかく、ローはテクニカルタイプ。おれがそれを阻害する働きを齎してしまうのは本意ではないので不満はない。
    むしろベポに背負わせてて申し訳ねェくらいだ。

    とにかく揺れる地面はベポに背負われていなけりゃ普通にぶっ倒れちまっていただろうほどの激しさだ。
    ミラは、あの紫色の木を自分で食べちまったらしく(その光景自体は見ていないが)、身体から紫の木は消失している。
    けれども人間の姿を保てているわけではなく、両手両足がまるで木の根っこのようにぐるりとねじ曲がった状態でぶらりと垂れ下がっている。
    呪いを食べた影響だろうか。肌が常に泡立ち、崩壊を修復を繰り返している。けれどなんとなく、修復するたびにミラの身体がさらに力を増している気がして寒気がした。

    「らせん――本来の力を取り戻したからって、おれに勝てると思うなよ。神殺しの傷を負ったくせに、全盛期の力そのものを取り戻していると思うな」

    ……神殺し?
    ふと思い出すのが、マリーさんが見ていた、あの煙の中での光景。

    『マリーちゃんが生贄に捧げられそうになったとき、助けに入ったコクレア様を、お前たちは刺した!』
    『豊穣神様が与えてくれた力よ! あんな化け物、神様ではないわ!』

    いやまさか、そんな物騒なこと……、なんて、楽観的に考えてはいけないのかもしれない。
    それでも、おれたちはコクレア様を信じねえと!

  • 921◆A8pWn3jbyg23/05/06(土) 03:53:44

    というところで今日はここまで
    また保守のご協力をお願いします!

  • 93二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 12:33:36

    ほしゅ

  • 94二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 22:35:49

    本来の姿を取り戻したとはいえ、やっぱり全盛期の力はまだ出せないのか……
    コラさんたちの信仰心でパワーアップ来るか?

  • 95二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 09:14:53

    コクレア様を信じろ

  • 96二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 18:42:31

    保守

  • 97二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 23:15:09

    本物のドラゴン見て心なしか嬉しそうなロー…
    他のキャラたちとの対面も楽しみ

  • 981◆A8pWn3jbyg23/05/08(月) 01:48:15

    「らせん――お前も、おれに喰われて、死 ね――――!」

    ラミロが手を掲げる。その瞬間巨人が崩壊し、巨人の一部からまるで角が突き出すように一部がせりあがったと思ったら、そこから一気に天に向かって幾重にも重なりあい絡まり合った蔦が飛んでいく。
    胴体を太くしたそれは、まるで蛇のように大きく口を開き、コクレア様に襲い掛かる。
    けれどコクレア様も負けていない。クルァ!と威嚇するように叫んだかと思うと、身体を回転しながら一気にそれに突っ込んでいく。
    敵に噛みつかれる直前紙一重で避け、逆に胴体に向かって自身の身体を叩きつける。
    その瞬間その胴体の部分が崩壊し――修復する。コクレア様に触れられると身体が崩れるようだが、猛スピードで修復も行われ、特にダメージを与えた痕跡は残らない。

    「おれは無限だ、らせん! この地がある限り、おれは無敵だ!」
    「クルルルルゥッ……!」
    「だからさっさとお前もおれの食物となれ! 咀嚼して溶かして、飲み込んでやる、からさァ……!」

    そう狂気的に叫ぶミラ。そこに――ローが突っ込む。
    まともに止血が出来ていないのに、それでも構わず刀を手にミラに向かって能力を行使した。

    「アンテピュート(切断)ッ……!」
    「人間がおれたちの邪魔をするな!」

    周囲にある木のつるは一気に切り落とすが、ミラ自体に攻撃が作用することはない。
    これもまた、ミラも原理が違うものの一つ故だろう。

    「人間が神になんて敵わない。お前もわかっているだろう? 敵わないのに羽虫みたいに動き回るな、目障りなんだよ!」
    「ハッ、何を言ってやがる。お前の言動は腹立たしいことこの上ないが、だがあえて肯定してやる。――羽虫で上等。お前の機嫌を損ねるなら結構!」
    「……いらいら、するなァ!」

  • 991◆A8pWn3jbyg23/05/08(月) 03:20:08

    木のつるで編み上げられた蛇は、激しく呪いを振りまくようにうねりながら縦横無尽に辺りを荒らしまくる。

    「敵だ敵だ敵だ! お前らみんな敵だ! 忌々しい外来種どもめ! 我が物顔で島に足を踏み入れて、それで食物にすらならずのさばろうなんて不敬だろう!」
    「信仰してないものに傅く趣味は、ねェよ!」

    最初は始まりの一本だけだった蛇は、幾本も数を増やしていく。
    ベポが必死に避けてくれているが、おれたちもぎりぎりだ! なんてったって木や壁にだって構やしないとでもいうかのようにぶち当たる。醜い声をあげながら、のたうつように暴れまわった。

    けれどミラが腕を振れば、一気にそれはコクレア様に殺到する。
    そして――それを本当にギリギリで避け、自身の尾で叩き落とす。
    それを見ながらミラは忌々しそうに空を見る。

    「……そうか、あいつ、空は飛べないのか」

    木だから、空を飛べない。木のつるも元は地面から生えたものだ。
    地から生えたものであるあいつらは、空を飛ぶコクレア様のように、天を渡ることは出来ない。

    「――堕ちろ、堕ちろ。神様はおれだけでいい。この島の神はおれだけだ! お前はいらない!」

    「人間の味方をするお前なんて―――、」

    「――おれには、いらない!」

    悲鳴染みた声で叫ぶ。地から、空に向かって。
    やはり泣きそうな声に聞こえた。
    あいつ、――コクレア様に対して、どうしてそんな、裏切られたような声を出すのだろう。

  • 1001◆A8pWn3jbyg23/05/08(月) 03:21:24

    というところで短いですがここまで。
    多分最終戦、前作のようなダイスでHPを減らすんじゃなくてそのままSSになりそうです。
    最後はもうほぼほぼSSだけの状態になってしまった。
    最初に要所要所って言ってたからいいかな……。
    また保守のご協力をお願いします!

  • 101二次元好きの匿名さん23/05/08(月) 13:06:31

    ほしゅ

  • 102二次元好きの匿名さん23/05/08(月) 23:53:51

    このレスは削除されています

  • 103二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 08:17:01

    このレスは削除されています

  • 104二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 08:21:02

    レミくんが解放されてコクレア様も復活して完全にキャラが揃った感じだ…シャチ達の方も怪我人多いけどどうなってるのか気になるな
    前作はマッチアップ形式なところもあったけど今作はThe総力戦という感じで印象が違って面白い

  • 105二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 17:48:50

    このレスは削除されています

  • 106二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 20:15:01

    スレ主の戦闘描写すごかったからダイスなくても今回も引き込まれるだろうな、期待

  • 1071◆A8pWn3jbyg23/05/10(水) 00:53:51

    「クルルルルゥァアアア―――――!!!」

    コクレア様が吠える。その瞬間、すべての蛇の動きが止まり、崩壊し始める。
    それを見ながら舌打ちをし鷹と思えば、ミラが空に向かって両手を握る。そのワンアクションの後、崩壊した蛇からさらに新たな蛇が再生する!
    その蛇が複数本まとめて、ぐるぐるとお互いの身体を回転しながらコクレア様の前に出でたかと思えば、その直前で花開くように分れ、複数の方向からコクレア様に噛みつく。

    「クルァッ!?」

    噛みつかれたコクレア様は悲鳴染みた声をあげる。けれどもその身を震わせるとその蛇を振り払い、再び上空へと昇って体制を整える。
    ――ふと、おれは違和感を抱いた。

    「……コクレア様、ミラに対しては攻撃しねェな……?」

    対処するのはミラの攻撃ばかり。その攻撃に対して特攻…みたいな、なんていえばいいのかな、再生するはするけど、同時に弱点でもあるわけだろ、コクレア様に対してのあいつは。
    だとしたらコクレア様がミラに対して直接攻撃すれば結構なダメージ喰らわせられる気がするんだけど、コクレア様はそうしない。
    それがどうにも気にかかる。

    「コラさん、どうかしたの?」
    「……なんか、さあ」

    いや、もともとの反応で少しわかっていたことでもあったんだけど。

    「コクレア様とあの花って仲がいい……仲がよかった、のかな」

  • 1081◆A8pWn3jbyg23/05/10(水) 01:20:58

    「う、んんん……」

    ベポは難しい声を出しながら黙った。恐らくベポも思い当たる節があるのだろう。
    今更それを出してどうなるんだってわかってる。
    何をどうしたって、ミラはおれたちの敵で、味方になることはありえない。ああしてコクレア様に対して敵意を出して襲い掛かることに容赦がないことから、本気で消すつもり……なんだと思う。
    和解出来る余地なんてないだろうし、おれたちもおれたちの仲間を害されたのだから、あいつを許すことは絶対に出来ない。
    でも、同情ではないけれど――、あの泣きそうな叫びが、ずっと耳に残っているのだ。

    コクレア様は何を考えながら戦っているのだろう。
    いくら攻撃を向けられても、ミラに対峙しないところを見て、それが、コクレア様の悲しみにに見えて、やりきれなかった。

    一方のローは、ミラ本体と戦い続けている。
    ローの攻撃はミラに対して効果は示されないものの、それでもミラの攻撃に対して能力を行使することが出来る。
    故に有効な攻撃打は与えられないものの――、被害の軽減は出来ている、という現状だ。
    でも、ローに負担が大きすぎる。能力ありきでしか攻撃が防げない現状、今ローが無理なく能力を行使する段階を大きく超えて、恐らく今ローの中の致命的に大事な部分を削りながら戦っている。
    止めたい。止めたくてたまらない。でも、止められない。それがもどかしいし、悔しい。

    そして今おれたちに出来ることと言えば、その余波から逃げるだけ!
    ……辛いな、こういう時手出し出来る力がないことが。
    それにベポは今おれというお荷物を背負っている。……くそ、卑屈になんな!
    出来ることを考えたいけれど、思いつかないのがもどかしい。戦いに参戦したいのに!

  • 1091◆A8pWn3jbyg23/05/10(水) 01:53:30

    ミラはでかい蛇を操作しながら、下からどんどん木の昆虫を生み出しながらローに対して木のつるでの攻撃をしかけている。
    おれたち(というかベポ)はその昆虫に対処しているけれど、正直数が多すぎる!
    ローはミラと対峙して、コクレア様は大量の蛇を相手取って――結構ギリギリだぞこれ。
    コクレア様のおかげで同等に持ち込めたんじゃないかって思うけれど、そうにしては――、今やっぱり危ない状態なのでは……?
    だってほら、さっきも言った通り、コクレア様はミラに攻撃しようとしないのもあるし。

    「わりともっと神様パワー全開で大逆転! ……って思ったんだけど、さっきあいつが言ってたように弱体化してんのかなァ!」
    「それってやばくない?」
    「やばいと思う! でも、あいつはコクレア様自体が弱点なんだろ? そこらへんでどっこいどっこいにならねェかな」
    「……なるよ!」
    「……なるよな!」

    おれら二人とも希望的観測を言っているわけだけど、勘弁してもらいたい!
    だって悪い想像するよりいい想像する方が健康にいいんだこれが。

    視界の中で、ローが自身に撃ち込まれた木のつるを避け、逆に撃ち込まれた際地面に突き刺さった木のつるを自身の足で駆け上がっていく!
    ミラに接敵し、刀を思いっきり振るいながら、先ほど壊した祭壇の欠片をタクトによって弾丸のように発射した。
    ――コクレア様の祭壇であるから、それに関してミラが避ける様子を見せる。
    ……! そうか! あれもミラにとっては弱点なんだな!

  • 1101◆A8pWn3jbyg23/05/10(水) 02:14:31

    「なあ、お前はいったい何がしたいんだよ」

    ローが睨みながら、攻撃を続けながら問いかける。

    「お前の望みは何だ。目的もだ。何をもって、人間を食べ、苦しめることを楽しむんだ。復讐か?」
    「ハッ、馬鹿なことを。そんなことにかかずらっている暇はないよ。おれは神だ。人間がおれを崇拝して、おれの食物になるのは当然のことだよ。望みも何もない。そういうものであるだけさ!」

    そう断言する。断言するけれど――本当にそうか?とおれでも思う。
    そうだとしたら、なんで……例えばラミロ。あいつを不幸にするなんて堂々と言ってのけただろ。それによって、レミに対して呪いをかけたりした。
    人に悪夢を見せて苦しませるなんて悪趣味な芸当だって、神様がするなんて思えない。

    変なところで人間らしい感情を抱えているのだ。
    こう、ローが言っていた復讐心、というか。
    単純な、恨み、みたいなものがそこにはあるように思えてならない。

    そう、そうだ。ラミロ……だけじゃなくて。
    あいつ、普通に恨んでるんじゃないか? 人間のこと。

    自分達を食物として食べ尽くしてきた、人間のことを。

    ――その瞬間ぞわりと背中に鳥肌が立った。
    いや、食物ってそういうことだろ。頑なに人間を食物扱いするってさ。
    あいつは、自分たちがされたから、だからそれを返している……?

  • 1111◆A8pWn3jbyg23/05/10(水) 02:15:44

    というところで今日はここまでです。
    また保守のご協力をお願いします!
    あと感想くれたらモチベ上がるのでお願いします(小声)

  • 112二次元好きの匿名さん23/05/10(水) 08:19:04

    コラさんの中で花に対する考察というか解像度が少し上がったな
    花はコクレア様と仲が良かったしコクレア様にも今も思われてる様子がある反面人間のことは普通に恨んでいる…登場時の上位存在っぽさが作中でも剥がれてきた感じだ
    どう決着するのか楽しみ

  • 113二次元好きの匿名さん23/05/10(水) 13:49:41

    花が作り出す大きなモンスター?がオオサンショウウオとか蛇とかなの言う程じゃなさそうだけどちょっとだけコクレア様に近そうだなって思ってる
    元が地に根付く植物だからコクレア様のような飛べる生き物は模せないんだよね
    オリキャラ勢が家族や師弟の絆で強く結ばれてるから花の自分本位さや孤独が引き立って好き…マリーさんからクリスへの感情のターンが残ってるらしいのも楽しみ

  • 114二次元好きの匿名さん23/05/11(木) 00:12:02

    保守

  • 1151◆A8pWn3jbyg23/05/11(木) 01:56:45

    「……よく、言うね。僕は知っているよ。お前は、執念深い存在だってことを」

    透き通る声が響いた。
    おれはハッと顔を上げる――それは、ミラも同じだった。
    崖の上、そこからドラゴンに抱えられて降りてくる誰かの姿がある。
    血まみれで、歩くのも覚束ない、立っている姿さえどこか不安を誘うほどの死に体。

    「れ、レミッ!?? お、お前、無事だったのか……!?」
    「は、い。無事、です。おかげさま……で……」
    「どこか無事だい! アンタボロッボロのボロだからね!」
    「ボロッボロのボロらしいです……」
    「……とにかくボロボロなんだな!」

    レミを運んでいたドラゴン――マリーさんがガオ!と吠える。確かにマリーさんからしたら心配だろうな。
    ひとまず無事でよかったぜ。あんな木が生えていたから最悪のことも考えていたんだぞ。
    でも、……いや、普通にここまで来るの危なくないか!? マリーさんも止めなかったのかよ!
    ……ええと、おれが言えたことじゃねェけど!

    でも、どうしてだろう。ふらふらになって、マリーさんに寄りかかりながら立っているレミは、この前見たときのような不安定な様子は見受けられない。
    むしろこれまで見たどんな時よりもどっしりとしているというか。
    こう……ぶれていた軸が定まったというような。

    「……レミリオ。何をしにきたんだ? 兄を助けに来てくれたの?」
    「もうそれは通用しないってわかってるだろう、ムルフェルニソ。それともミラ、と呼べばいいかな。でも、きっと君は人がつけた名前を好んではいないんだろうね」
    「………」
    「10年間、苦しめられたよ。君の呪いに」

    まるで付き合いの長い友人に対するような口調だった。正直に言えばクリスよりも砕けている気がする。……そんなこと言ったらあいつショック受けそうだな。

  • 1161◆A8pWn3jbyg23/05/11(木) 02:14:54

    「ところでレミくんマリーちゃんに寄りかかりすぎだと思いませんか? マリーちゃんは妙齢の乙女ですよ」
    「唐突に現れて唐突に言うことがそれかな……」

    気付けばクリスが隣にいる。
    というか、クリスだけじゃない。
    いつの間にかシャチも、ペンギンも、ホーキンスだってここにいる。……ホーキンスさらに血まみれになってねェか!? 大丈夫!?

    「……………」

    ミラの目が、じっとレミを見つめている。
    そこにはおれたちにも向ける嫌悪じみた険しさがあるが――どことなく、レミに対してだけおれたち以上の警戒を持っている気がするのは、単なる気のせいだろうか。

    「10年も、かかった」

    ぽつりと言葉を吐き出したのはミラの方だった。

    「お前の身体を完全に呪いに侵すまで、10年だ。ラミロより、お前の正体の方がわからない。気色悪い。そのうえ呪いに今まで浸っていたはずなのに、どうして平常でいられるんだ。到底人間だと思えない」
    「……酷い言われようだな。仮にも花相手に人間と思えないって言われるかな普通……」

    とんでもない罵倒だ! いやいやいや、そんなレミを異常者みたいに言うか!?
    ……でもこう、10年間呪いに苦しんでいたのなら、なんかこう……後遺症というか、そういうのあっても不思議じゃないの、だろうか? そういうことを言いたいのか?
    そんなおれの疑問に答えてくれるのは、こういう時一番頼りになるらしいホーキンスだ。

    「例えばの話だが」
    「あ、ホーキンス! 怪我大丈夫か?! 大丈夫じゃねェな!!」
    「10年間身体中に大量の蜘蛛がまとわりついている想像をすればいい、蜘蛛に限らず自分の一番嫌いなものでいいが」
    「ひえっ」

    それは――すごい蜘蛛好きでもなけりゃ、正気でいられねェとおれでも思うけど……。

  • 1171◆A8pWn3jbyg23/05/11(木) 02:42:57

    「呪いは人の感情を搔き乱す。負の感情を増大させる。例えほんのわずかな滲みでも、それを広げ続ける。そうしてようやくやつはレミリオの身体を支配することが出来た。――10年だ。本来ならもっと早くに正気を失っても仕方なかっただろう」
    「……でも、レミはそんな、正気を失っているようには見えない」

    ああ、そうだ、とホーキンスも頷く。
    レミはどこか困ったような複雑な表情を浮かべる。
    空ではコクレア様と蛇の戦いが続いている。昆虫はどんどんと量産され、木のつるがおれたちを狙っている。
    そんな喧噪の中で、レミの周りだけは何故や穏やかだ。

    「僕の身体に秘密がなかったとは言いません。……兄が死んで、悲しかった。とてもとても悲しくて……辛くて……感情が揺さぶられるくらいには……」

    けれど、と。そう言ってから、胸元に手を当て、断言する。

    「彼の花を恨んだ頃は、一度もないんです」



    「―――――は、」

    驚愕の声を上げたのは誰だったか。
    家族が殺されたのに、殺した相手のことを恨んでないと断言した。
    仇に対する負の感情は一切ないと断言した。
    大事な人が殺されたというのに、それを断言するのがあまりにも異質に思えてしまう。
    けれどミラに情があるのかと言えば……それも、違うと思う。庇う様子を見せているわけでもない。

    「ああ、違うな。僕は彼の花に兄を海賊に殺されたと思い込まされていた。けれど、その海賊相手にだって、恨みの気持ちを抱いたことはありません」
    「な、なんでだ!? 確かおれらの海賊団のこと怖がってただろ! 恨んでないって、どうして……」
    「僕は、欠けてるんです。……そういった気持ちが」

  • 1181◆A8pWn3jbyg23/05/11(木) 02:43:28

    というところで今日はここまで!
    また保守のご協力をお願いします!
    感想したためてくれて助かります。モチベたすかる

  • 119二次元好きの匿名さん23/05/11(木) 08:52:24

    レミくん恨み辛み的な感情が先天的にほぼない人だった…?恨んでないというより恨む機能が搭載されてないみたいな…?一部の感情面だとミラより人間臭さがないかもしれない…

  • 120二次元好きの匿名さん23/05/11(木) 16:10:29

    森にいるメンバーはこれで全員集合か
    そういえばラミくんは花の中に魂が囚われてるけどサルヴァさんもいたりするのだろうか

  • 121二次元好きの匿名さん23/05/12(金) 00:59:00

    ラミロがレミのこと聖人だって言ってたのもこれに関係するのかな

  • 1221◆A8pWn3jbyg23/05/12(金) 02:24:21

    今日は更新できそうにないのでまた保守のご協力だけお願いします。
    ちなみにですが、このキャラの見た目とか知りたいようなキャラはいますか?
    あまりイメージを固定するのもあれかなと思ってオリキャラの見た目は完全に決定していないのですが、一人くらいなら描いちゃってもええやろ精神でラフ画になるかもですが一応
    なんだかんだ長い期間やっているので……

  • 123二次元好きの匿名さん23/05/12(金) 06:41:45

    SSも絵も描けるスレ主ならではの!ラミレミくんの容姿が知りたい
    どっちか描いてもらえるだけでもう片方も想像できて更に今の花がどんな顔でお喋りしてるかまでイメージしやすくなる

  • 124二次元好きの匿名さん23/05/12(金) 13:29:21

    おお 期待!

  • 125二次元好きの匿名さん23/05/12(金) 22:49:10

    保守

  • 126二次元好きの匿名さん23/05/13(土) 07:26:56

    保守

  • 1271◆A8pWn3jbyg23/05/13(土) 17:37:48

    >>123

    ラミレミ描いたついでに現在大変なことになっている姿も描いておきました

  • 1281◆A8pWn3jbyg23/05/14(日) 01:04:41

    「欠けていて、きっとその気持ちに共感は出来ない。その話を聞き、悲しみを共にすることは出来ても、妬み嫉み嫌悪憎悪……そういった気持ちだけは、僕には理解できないままでした。故に僕の中に生まれた負の感情は、すべてお前のもので、お前から生まれた呪いの感情を、僕は受け止めきれず、ただそこにある異物として存在していた」
    「……だから、10年間受け入れることが出来たのか。身体にまとわりつく蜘蛛より、籠に入っている蜘蛛とでは大分違う」
    「だから、お前が完全に僕を支配することは出来なかった。呪いに侵すことは出来なかった。廃人になることなくここにいるのがその証左だよ」

    レミは穏やかな顔を崩さない。ボロボロでありながら落ち着き払ってるその姿とは裏腹に、ミラは傷こそないものの、その顔は苛立ちに満ちている。
    けれど、と。レミは続けた。

    「今こうして、ここに立って。兄の事全てを思い出して、託してくれたものを理解して。僕は僕のやるべきことを思い出した。なら、もう迷いもない。10年ぶりにすがすがしくて、……真正面から、兄が死んだことを悲しめそうだ」
    「レミくん……」
    「ミラ。お前はきっと僕の何もかもを理解できていないよね。君が僕に植え付けた種子は、引きずり出したのだから」

    種子?
    初めて出てきた言葉だけれど、植え付けた、という言葉からはあまりいい意味を連想は出来なかった。

    「お前がかけた呪いは僕の中をずっと毒し続けた。どろどろに煮詰められ、記憶をお前によってすり替えられた僕は、不調を来す原因がわからないまま毎夜悪夢に苛まれた。ほんの少しずつ僕を削り取り続けて、いつか僕の人格そのものを破壊するつもりだったんだろう。そうしてお前の操り人形の一つにする。とんでもなく悪辣だ」
    「……」
    「けれど、種子が取り除かれて、僕の情報を知る由もなくなったお前は、森から出られないまま――ようやく最近干渉できるようになったぐらいで、僕のことを何も知らない。僕の腹の奥のことだって、きっと気付かないまま、僕を森の奥まで誘い込んだんだ」

  • 1291◆A8pWn3jbyg23/05/14(日) 01:57:06

    レミが自身の頬から首にかけてついている傷跡を撫でる。刃物で自ら切り裂いたというその傷跡を撫でる仕草はどこにも悲壮感がない。

    「お前は、なんなんだ」

    耐え切れない、といった風にミラがそう問いかける。
    それにレミが笑って答える。

    「ラミが残した、最後の一手だよ」


    そう言って、レミが自身の腹に手を置いて、――そして殴りつけるように拳で腹を押し込んだ。
    え!?とぎょっとするおれらをよそに、レミは嘔吐き、喉奥に手を突っ込む。おい、おいおい、何してんだ?!
    そのまま膝をつくと、胃液が吐き出される。
    待って、待って、と何をしようとしているか意味が分からず、とりあえずこれ止めた方がいいんじゃないか、いや意味あってしていることだよな、え、なんで急に吐いて、え?と大混乱に陥っていた時。

    レミの口から、何かが吐き出された。

    ぬるりと出てきたそれは――鞘に入ったナイフのような、形状をしていた。

    「……それは」

    何かを知っているのだろう、ミラが呆然とした声をあげる。
    対するレミは冷や汗を掻きながら……困ったように笑った。

    「……オエッ、げほ、……汚いところを見せてしまいましたが、ご勘弁を。絶対誰にも見つからない隠し場所というものが、腹の底だったんです」

  • 1301◆A8pWn3jbyg23/05/14(日) 03:02:04

    「……えっ覚悟ガンギマリすぎでは? あの超お人好しでいい人代表で私がギャンブルで大負けしても心の底から労わってくれるレミくんのお腹の中にあんな大きなナイフがずっとあったって怖……だから彼小食だったんですか……」
    「ちょっっっ、といろいろ台無しになるから静かにしてような!」

    しばらくその光景を見ながら呆然としていたおれだったけれど、隣にいたクリスのツッコミどころ多めの発言に思わず突っ込んだ拍子に素面に戻る。
    今起こった現状を反復する。レミは急に何かを吐き出した。それは鞘に入ったナイフのような形状の刀だった。
    ……よくわからないことが多すぎる! もっと説明をしてほしい!
    そう思っていたら、何かに気付いたミラが、……ぞっとするほどの濃密な殺意を滾らせた。

    そして、次の瞬間大量の木のつるの触手をレミの方へと殺到させる――が、次の瞬間木のつる同士が絡めとられ、身動きが取れないよう地面に埋まる。――ローの能力だ!
    けれど鬼気迫った勢いのミラは、勢いよくレミの方へと今までその場から動かなかった身体を動かしこちらへと向かってくる。……いや、急になんでそんな必死に―――!

    「クルルルァ!!」

    けれど、ミラの身体は横っ面からコクレア様に噛みつかれて上空へと持ち上げられる。
    ミラは抵抗するが、コクレア様の勢いに追い付いていない!
    よくわかんねェ、よくわかんねェけど……、あいつ、レミのやつ、何かミラにとってかなり不都合になることを、しようとしている……?

    「―――ミラ。お前がかつて僕たちの両親に渡したものだよ」

    穏やかな声が響く。ずっと、その穏やかさは変わらない。
    レミと話した時の少しおどおどした弱気な様子は見る影もない。決意と覚悟が、そこにある。

    「ホーキンスさんの尽力によって、線は遠ざかった。あとは断ち切るだけ。根強く結びついた、お前の神としての権能も、切り離されればただの化け物だ」
    「やめ……!」

  • 1311◆A8pWn3jbyg23/05/14(日) 03:33:50

    「だから―――もう、神様なんてやめてしまえよ」

    レミが鞘からナイフを抜く。
    長年それはずっとレミの腹の中で胃酸にさらされていただろうに――驚くほど美しい白銀の刀身をしていた。
    それを抜き放ちながら、レミがミラに告げる。
    それは、断罪というより、どこか告解を受け入れる神父のような、ゆるしの声をしていた。

    そして、そのナイフを。
    ――思いっきり、地面に向かって突き刺した。

  • 1321◆A8pWn3jbyg23/05/14(日) 03:34:32

    というところで今日はここまでで。
    また保守のご協力をお願いします。

  • 133二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 10:26:55

    >>127

    わー!ゲームキャラっぽい絵柄でめちゃくちゃ可愛いしイメージと近い!!双子の顔立ちだけど顔つきが違って素敵だ

    そしてミラに形借りられてるラミくんの姿も神殺しの武器…?隠してたレミくんも大変なことになってる……

  • 134二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 22:12:44

    保守

  • 135二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 08:26:19

    >>127

    二人ともかわいい色々大変なことになっているけどもそれはそれとして可愛い

    クライマックス前に解像度が上がってありがたいな……

  • 136二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 18:33:20

    レミくん凄すぎる…ナイフを飲み込む時痛かっただろうに

  • 1371◆A8pWn3jbyg23/05/16(火) 01:45:57



    呪いが入ってくる。入ってくるということは、お前の一部も入ってくる。
    怒り、憎しみ、嘆き、悲しみ、諦念。それが自分のものではないとするならば、きっとお前のものだった。

    欠けた自分の中で、その感情を知らしめるほどの感情の熱。
    本来花が持ちえないもの。信仰によって存在を確立してしまった結果、得てしまったもの。

    何百年。
    何千年。
    幾星霜――どれほどのものかわからないけれど。
    もういいだろう、それほどまでの情念は、最早呪いにしかならないそれは、自身の身を亡ぼすだけだ。

    本来、違っただろう。お前の望みは。
    人を支配し、食物とし、苦しめる――そんな望みではなかっただろうに。
    変質した花は、神と呼ばれた花は、存在し続けてしまった。本来いらぬ感情を得てしまった。

    もう、終わりにしよう。

    生あるものに憐れみとゆるしを。
    ――きっと、もう輪転することは叶わないけれど。

  • 1381◆A8pWn3jbyg23/05/16(火) 01:56:58

    ぱりん!と。まるで、――そう、ガラスを砕いたような音が響いた気がした。
    それはこの場にはそぐわない音で――けれど、どこか悲しい響きがあって。
    いくつかの木のつるが地に落ちる。
    昆虫は動きを止める。
    騒めいていた森が――静かになっていく。

    「……離れていた。故に、切り離された」

    ホーキンスが何かを言っているけれど、意味がわからねェ。
    もっと説明が欲しい、と思っていると、おれ達を囲うようにでかいコクレア様がぐるりとその身を巻く。
    そしてさらにローもおれたちの傍に移動していた。

    ……これ、レミのおかげで勝利したってことだよな?
    いやほら、至る所であいつの力が失われたような証拠が次々と浮かび上がる。
    散々ボロボロになったけれど、それでも今、もしかしたらだけど――あいつの、神の力ってやつに、致命的な罅が入ったようにしか思えないんだ。

    けれど、なんだろう。まだ胸が騒めく。
    そしてそれは同じようで――ローの厳しい顔も崩れない。

    「……この、ナイフは」

    やけに静かになった空間に、レミの声が響く。

    「このナイフは、もともとはあの花が、僕らの両親に手渡したものです。起源は知りません。これの明確な正体も。どこからあの花が、神殺しの刀剣を手に入れてきたかなんて」

    けれど、とさらに続ける。

    「ホーキンスさんが、彼を神という概念から遠ざけたおかげで――そのほか様々な軌跡みたいな要因が重なって、その神という特質性を、殺すことが出来ました。だから、あれは、もう神ではない。ただの――――」

  • 1391◆A8pWn3jbyg23/05/16(火) 01:57:42

    .






    「―――化け物の、はずです」






    .

  • 1401◆A8pWn3jbyg23/05/16(火) 02:15:13

    「あ、あ、あああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」

    ――――!
    咄嗟に耳を塞ぐ。鼓膜をぶち破りそうな悲鳴染みた大声が当たりに響く。
    というかあれって声って言えるかなあ! 弦の切れたヴァイオリンとかを無理やり響かせたようなひどく耳障りの悪い音だった。
    かろうじて――ギリギリ人型を保っていたミラの身体が完全に崩壊する。
    木とか植物がぐちゃぐちゃに混ざり合ったそれに、人の身体をした……ミイラみたいなものが幾つも張り付いている。
    何百もの金の目がぎょろぎょろと表面に湧き出る。
    ヒッ、と思わず悲鳴が出てしまう程度には、あまりにも生理的嫌悪を掻き立たせる醜悪な姿だった。吐き気すら催す。眩暈がする。強制的に恐怖が頭の中を支配する。
    狂気的、そのもの。

    「冒涜的だな」

    ホーキンスの声がいやに冷静ではっとする。
    辺りを見ればペンギンとベポ、それにマリーさんが醜悪なそれにくぎ付けになっていて、思わず叫ぶように声をかける。
    それでいてローも微動だにしない。何かよくないものを思いついたかのように青い顔をしている。

    「……本性を剥き出しにしたのか。呪いそのものみたいな姿だけど、けれどもう神になったのだから撃破可能にあ、もうだめ」
    「……………レミ――――――!?!」

    途中まで落ち着いていて穏やかな声だったのに、最後行き成り急激に声が下がったかと思えばそのままぶっ倒れた。
    あっ……そうだよな! 普通に無理してたよな! さっきまで木が生えてたんだもんな!!!
    にしてもこれ……どうすんだよ!

  • 1411◆A8pWn3jbyg23/05/16(火) 02:26:22

    というところで今日はここまで
    ここから本当のクライマックスかなというところ
    最終決戦はちゃんと各々活躍させたいけれどライブ感なので偏るかもしれない
    ちなみにレミのPOWは想定すると18になるかもしれない
    また保守のご協力をお願いします

  • 142二次元好きの匿名さん23/05/16(火) 11:24:32

    もう神ではないただの花、と続くのかと安心したらまだ全然化け物だった
    レミくんのPOW18本当にPOWだけでここまで耐えれちゃった感よ…これにはミラも怪訝な顔になる…クリスもそこそこ高そうだなぁ

  • 143二次元好きの匿名さん23/05/16(火) 18:34:33

    神ではなくなっただけで化け物ではあるんだな……
    いやでも化け物と神なら今の力の弱ったコクレア様でも勝てるかな?コクレア様は花と戦うことはあまり望んでなさそうなのが気がかりだけど

  • 1441◆A8pWn3jbyg23/05/17(水) 03:13:38

    今日も書けそうにないため保守しておく
    基本覚悟ガンギマリ枠が多いです

  • 145二次元好きの匿名さん23/05/17(水) 12:23:38

    どこか告解を受け入れる神父のような、っていう花に対するレミくんの声が印象的だな…
    味方勢のオリキャラに現神父シスターと前任神父と前前任神父がいるけど唯一神様に仕えたことのないキャラだねレミくん

  • 1461◆A8pWn3jbyg23/05/17(水) 16:49:00

    >>140

    誤字報告

    もう神になったのだから→もう神ではなくなったのだから

    です。脳内変換よろしくお願いします

  • 1471◆A8pWn3jbyg23/05/17(水) 17:00:34

    ミラの身体はぐねぐねと動き、常に変体し続ける。
    表面が泡立ち蒸発したかと思ったら、人の腕のようなものが生え、それが途中で避けるように分れ、木の枝が飛び出てくる。
    かと思ったらその先で花の成長とはてんでバラバラに枯れた花が生え、その花の真ん中が口のように開き得体の知れない悲鳴を響き渡らせる。
    木のうろが現れたと思ったら、まるでザクロの実のようにびっしりとした金色の何重にも円が描かれた目が現れ全員バラバラに瞬きをするさまがなんとも不気味だ。

    どんどんとでかくなる巨大な木かと思ったら、途中で若葉が生えたかと思うと大きな白い花を咲かせる。
    けれどもその花を囲うように網状の木のつるが現れ、さらにその上から人間の口を模した実が大量にぶら下がった。
    ケタケタ笑ったり、悲しそうに泣いたり、怒号を響かせていたり。
    しまいにはその口から玉虫色の液体を吐き出して苦し身悶え始めるものだから、もう見ているのも怖い!
    ちなみにその液体は地面に垂れた瞬間に蒸発している。なんの液体なんですかねこれは……。

    先ほどもう力尽きた木のつるが幾つも地面に倒れたが、それを食いつくすように新たに現れた木のつるが、倒れた木のつるをぐるぐると囲ってドリル状に変形する。
    新たにこの周辺をすべて自分のものに書き換えるように、線が切れたものを無理やり結ぶように、圧倒的な力技で支配しているかのようだった。

    「か、神様の力がなくなった方が怖くねえ!?」
    「だがもう撃破可能な敵だ」
    「ホーちゃんクールだな!! おれもう泣きわめきそうなんだけど!」

    元海軍の意地で立っているけど、わりと膝がくがくだぜ!
    いやだって考えろよ、今までだいたい相対するのは人間だったわけじゃねェか。
    こんな得体の知れないトンデモ化け物とか聞いてねェ!

    「――何、撃破可能となった時点で、あとはこちらのものだ。何、海賊が宝欲しさに怪物を倒す話はごまんとある」

    お前はあいつらの正気を戻してこい、とちょっと様子がおかしくなっているやつらを指さされた。
    正気!? 殴れば戻る!?

  • 148二次元好きの匿名さん23/05/18(木) 01:01:09

    冒涜的なものを見て発狂してないだけマシかなー?
    この場合のお宝ってなんだろ、ドロップする?(現実逃避)

  • 149二次元好きの匿名さん23/05/18(木) 08:41:31

    よし!コラさん!精神分析(物理)だ!!

  • 150二次元好きの匿名さん23/05/18(木) 15:18:38

    状況が状況だから当然なんだけどコラさんずっとセリフに!ついてて叫んだり声張ったりして頑張ってるからそろそろ喉イタイイタイになりそう
    喉どころじゃない傷だらけそれはそう…コラさんだけじゃなく皆喉に優しいジュースとかで水分補給して欲しくなるながんばれ…

  • 151二次元好きの匿名さん23/05/18(木) 21:32:38

    元海兵の記憶もちとはいえこどもの拳(精神分析)VS屈強なタイプの皆様なのでHP1か0.5くらいと引き換えに正気に戻るんなら実質タダ
    コラさん思いっきりやっちゃってください

  • 1521◆A8pWn3jbyg23/05/19(金) 02:54:44

    手始めにおれは動かなくなっているベポによじ登って頭をぺしぺしと叩いた。
    いくら子どもだと言ったって多少の力仕事をしてきたのだ。
    そりゃ有効打にならなくともそこそこの衝撃になる。ベポの毛並みにちょっと沈んでいる気がするが。

    一方、あいつらを直視しても平気だったやつらは近くにいるやつの救出にあたっていた。
    つまりはシャチはペンギンの襟首を掴みがくんがくんと揺り動かし、クリスはレミを比較的安全な場所に移動させたうえ、ドラゴン姿のマリーさんを抱っこしながら声をかけている……あっその状態でも抱っこ出来るんだ!? お前力持ちだな!?

    「ベポ! ベポベポベポ! 正気に戻れー!! おらーーーー!!!!」

    叩いたら治る機械にするように遠慮なくベポの頭をひっ叩く。
    やがてその衝撃が煩わしくなったのか『やめてー!』両手を天に向かって伸ばしたためうっかり落ちそうになりつつ、ベポの背中にしがみついた。

    「……ってあれ!?」
    「正気に戻ったようで何よりだぜベポ! あとはローにお前のもふもふアタックだ!」
    「なにそれ?」
    「……ガルチュー?」
    「!! 任せて!!!!」

    確かもふもふアタック的な意味だよな、と聞きかじっただけの単語を言えば、ベポはちょっとだけ目をきらめかせてローに飛び込んでいった。
    ベポの愛あるアタックならローの正気も元に戻るだろう。
    ちょっと『あ! あそこにドフラミンゴがいる!!』ってやろうとしたけど、流石にちょっと、あんまりだしな。うん。

  • 1531◆A8pWn3jbyg23/05/19(金) 04:13:59

    「……あ! ロシーくん無事でしたか! 危ないので後ろに下がっててください!」
    「わかった!」
    「あれェ!? なんで背中にへばりついてくるんです?!」

    危ないですよ!?と言われるけど、この神父服掴みやすくて助かるな、と思うだけでおれは図太く行くのであった。
    いやまあ、碌に戦闘能力がないおれがこんな行動するのよくないのわかるんだけどさ。
    ホーキンスに撃破可能な敵だって言われたもんだから。

    「……今なら、おれの出来ることが出来そうな気がするんだ」
    「ロシーくんの出来そうなこと?」
    「クリスなら銃使う遠距離型だし、敵の攻撃が当たっても文句言ったりしねェから勘弁してくれ!」
    「いや私が嫌ですけど?! えっこんな子どもを背中に抱えて……? 私結構乱暴に動くんですけど……」
    「おれも男だ! わがまま言っている自覚あるから! クリスが気にしないように、絶対に振り落ちない!」

    だから頼む!と頼み込めば、少しだけ逡巡した後仕方なさそうにあ~~!と声をあげる。

    「ちゃんと背中にへばりついててくださいね! 私器用なタイプじゃないんですからね!」
    「わかった! あと拳銃持ってたら一個貸して!」
    「こんな子どもに拳銃を……? ウッ戦場の闇を思い出した」

    気に病ませちまってたら申し訳ねェけど! 明確な攻撃手段がない今クリスに頼るのが一番正解な気がするんだよな!
    これでも銃の扱いにはそこそこ自身があるんだ。何分、能力が能力だったからな。
    身内に撃つことはついぞ出来なかったけれど、敵に容赦する性質じゃねェぜ。

  • 154二次元好きの匿名さん23/05/19(金) 12:48:59

    「ベポベポベポ!」て呼び掛けてるコラさんなんかかわいいなあとおもいました

  • 155二次元好きの匿名さん23/05/19(金) 22:59:23

    保守

  • 156二次元好きの匿名さん23/05/20(土) 03:45:22

    >>127

    遅レスだけどスレ主の描いてくれたラミレミくんが読んでて想像してた通りで、文章でのキャラの表現力凄いなと思った

  • 157二次元好きの匿名さん23/05/20(土) 14:20:02

    コラさんとベポのやり取りは癒し、出来る範囲で頑張って
    あと闇深な境遇だったのは自分もだろクリスさん…

  • 158二次元好きの匿名さん23/05/21(日) 01:20:53

    ガルチューなら任せてなベポ可愛い!
    精神分析(もふもふ)は効く

  • 159二次元好きの匿名さん23/05/21(日) 13:00:26

    保守

  • 1601◆A8pWn3jbyg23/05/21(日) 16:53:16

    なんとかクリスを言いくるめて拳銃を一丁貰う。その一連の流れの間にローも正気を取り戻したらしく、コラさん!と言いながら横に並走する。

    「アンタ今子どもなんだぞ、無茶するな!」
    「今……?」
    「あー! あー! 頼むロー! クリスがほら、なんとか逃げ回ってくれるみたいだから! クリスが敵の攻撃全部避けてくれるみたいだから!!」
    「私に責任が一気に降りかかってくる!? イヤー! 小さい命を背負うの荷が重いー!!」
    「おれそこまで小さくねェけどな」

    この年でのこの身長なのそこそこ大きい方だと思うぜ。思えばローなんておれくらいの歳の時なんて米粒くらいの大きさしかなかったしなァ!
    それはともかくクリスには負担を急いて申し訳ねェとは思ってる。うん、マジで。すみません……。

    「……クリス」
    「アッハイ! 船長さんのお子さんは出来る限りの範囲でお守りしますとも!」
    「おれの子どもじゃねェ。……この人はすぐに無茶するから、もし危ないことをしようとしていたら首根っこ引っ掴んでとめてくれ。最悪気絶させていい」
    「はい!」
    「ロー!?」

    あっヤンパパじゃなかったんだ~、と呑気に言っているクリスとは裏腹におれは大焦りだ。
    結構そういうとこ扱い雑だよなロー! 身から出た錆か!? スミマセン!!

  • 1611◆A8pWn3jbyg23/05/21(日) 17:21:16

    「……ひとまず、やることは一つだ。碌に作戦を立てる暇もなかったが、」
    「あいつを倒すってことだよね!」
    「ああ、そうだ」

    ローの背後からベポが抱き着きながらちょっと上機嫌に返事をしている。最近ローの背中をおれが占領しているばっかりだったしな。ローも心なしかつやつやしている気がするのは気のせいか? おれもあとでガルチューしてもらおう……。
    見ればペンギンも正気に戻っているようでシャチと声をかけあっている。マリーさんも傍で少々頭が痛そうにしながらも、やる気満々な感じだ。
    ホーキンスはいつも通り。……でもボロボロだけどな!
    レミは離れた場所で寝かされている。今度は悪夢を見ないでいればいいけれど。

    「つまりは――最終決戦ってやつだな」

    ほんとのほんと、これまで散々ズタボロにされたり、ひどい目にあったり、散々な目に遭ってきたし。
    その中で色んな事実が発覚して、傷を抉り出されたり、泣いたり、苦しんだり。
    それもようやく終わる。多分、これで最後だ。
    あの――神じゃなくなった化け物を打ち倒すのだ。

    「……なんというか」

    おれにしか聞こえないような声で、クリスがぼそっと呟く。

    「たまたま来た海賊さんが大活躍してラスボスを倒す、なんて割と都合のいい話すぎません? 私の運大丈夫? 生きて帰ったあとギャンブルに行っても私の運命力の採算とるために大負けし続ける運命しか見えないんですが」
    「発言に気を付けような」

    もっと燃えること言おうぜ!

  • 1621◆A8pWn3jbyg23/05/21(日) 18:19:06

    ぐじゅり、と下半身を崩壊させ、けれど新たな足を生み出しながら、その化け物はこちらに向かってくる。
    見るだけで正気を削られそうなフォルムだ。辺りに漂う甘ったるい香りは頭の奥を痺れさせる。……これあの、麻薬成分とかじゃないよな? おれそういうの詳しくないんだけど、ほら、海軍っていっても麻薬とか取り締まっていた方ではないので……。
    ベポなんて片手が開いてるときは鼻をつまんでいる。それでもわかるものがあるのか、すっげェしかめっ面だ。

    「あああァアああぁ繧峨○繧あああぁァあああああぁアアああァ!!!!」

    不明瞭なノイズのような叫びをあげながら、ミラはこちらに迫ってくる。
    うおおこえ~!という気持ちはちょっと横に置いておいて、と。今はとにかく、とにかくだ! あいつをぶっ倒すために覚悟を決める。
    おれにだってやれることはある。おれにしかやれないことがある。役立たずだから、って言って後ろを向くより、前を向いてがむしゃらに走る方がおれらしい!
    それで、一人の子どもだって助けることが出来たんだ!
    ……まあおれは死んだけどな! 笑い事じゃねーけど!

    「……今そこはかとなく怒りが湧いた」
    「キャプテンどうしたの?」
    「なんでもない」

    コクレア様は今は上空でぐるぐる回っている。
    何をすればいいか困っている様子だ。
    さっきはおれたちに向かってくるあいつの攻撃を防ぐために、噛みついて引き離してくれていたけれど今離されている現状、本気であいつに攻撃するつもりはないんじゃないかって思う。
    別にそれに対して何か思うってことはない。コクレア様にはコクレア様の思うところがあるだろうし、それに“神頼み”するのはあまりに格好がつかない。

    ええい、男は度胸!

    「クリス、頼んだぜ!」
    「荷が重い~……いや、ロシーくんは軽いんですが」
    「お前ローも軽々と持ってたしな」

  • 163二次元好きの匿名さん23/05/21(日) 18:42:45

    キャプテンのコラさん自虐&自己犠牲センサー優秀で笑う

  • 164二次元好きの匿名さん23/05/21(日) 22:14:18

    コラさんはホントさぁ
    あんたが命を助けた子どもがどんだけあんたに心を救われたと思ってるんだ
    故郷の仇とも言える世界政府の犬になって七武海撃破する程度にはあんたのこと大好きなんだからなその子ども

  • 1651◆A8pWn3jbyg23/05/22(月) 04:10:10

    ミラは次々と自分の足――根っこをおれたちへと放ってくる。地面を潜ってこちらに殺到する大量の紫色の根は、おれたちへとその手を伸ばしたかと思ったら、急に割けたように枝分かれを繰り返して何百もの槍となって殺到してくる。
    風を切り裂き高速で撃ちだされたそれを、各々の方法でいなしていく。
    ローは刀を使って切り払い、シャチとペンギンはお互いの身体をぶつけながら離れると、自分に向かう攻撃は武器で払いながら潜り抜けると、そのつるを伝ってミラへと向かって行く。
    かと思えばシャチとローの身体が入れ替わる。急に身体の位置が入れ替わったことに慌てることもなく、シャチは迫りくる木のつるをハルバードで一気に切り払った!

    けたけたと笑う木の実の砲弾が大量に撃ちだされる。
    だがそれは次の瞬間すべて釘で撃ち落される。
    見ればホーキンスが――なんか藁の身体になって巨大化している。

    「えっホーちゃんどうしたの!?」
    「――降魔の相」

    ……よくわからねェけど、強くなっているみたいだ!
    クリスは怖……って反応をしているけれど、ああいった姿もホラーの怪人っぽくてかっこいいと思うぜ!

    「オラァ!」

    そして男らしい声でミラの攻撃を切り払い、どんどん前に進んでいるのはマリーさんだ。
    クリスは時折マリーさんに呼びかけて心配している声をあげているが、本当に躊躇なく、恐れもなく突っ込んでいる姿は、危うさを感じるが同時に尊敬すら覚える。
    だってさっきミラの姿見て怖がってたろ。クリスによって正気に戻されたけど、でも普通に年頃の女の子には怖いと思うんだよな。戦いとかさ。
    それでも踏ん張って頑張っているところがすごいと思う。肝が据わっている。
    クリスは心配で仕方ないみたいだけど!

  • 1661◆A8pWn3jbyg23/05/22(月) 04:12:04

    というところで今日はここまで。
    また保守のご協力をお願いします!

  • 167二次元好きの匿名さん23/05/22(月) 13:37:46

    早めだけど保守

  • 168二次元好きの匿名さん23/05/22(月) 19:02:39

    確かにホーキンスの降魔の相は怖いというか不気味
    夜に見たらトイレ行けなくなる

  • 169二次元好きの匿名さん23/05/23(火) 00:38:06

    夜保守
    前作と合わせて映画みたいで面白い

  • 170二次元好きの匿名さん23/05/23(火) 08:08:04

    みんな戦闘シーンかっこいいね…スタンピードしてる

  • 171二次元好きの匿名さん23/05/23(火) 19:04:19

    クリスがローの事ヤンパパだと思ってたの笑っちゃったな
    随分若いけどまぁ色々ありますよねって納得してそう

  • 172二次元好きの匿名さん23/05/23(火) 23:50:07

    頑張れみんなー!(ペンラ振り回し)

  • 1731◆A8pWn3jbyg23/05/24(水) 01:29:58

    ベポも負けていない。得意のカンフーを使って木のつるを次々迎撃している。
    しっかり見ているとわかるんだけど、ただミンク族の純粋な腕力とかそういうのを使っているというより、ちゃんと攻撃を腕のしなりなどを使って受け流している。
    それでいて、木のつるの弱い部分を見極めて攻撃している。
    そうすればあっけなく――っていうのは違うな。想像しているよりも軽い力で折れ曲がり、ぼきりと折れる。
    ――力押しじゃなく技量で戦うベポ、かっこいいぜ!

    「あ~、もう、ロシーくん、絶対離れちゃダメですからね。ハッ…、“おれの傍から離れるな……”ってやつですか。ロシー君が薄幸の美少女じゃないのは残念ですが私格好よくありません?」
    「とりあえず今の聞かれたらマリーさんにはたかれると思うぜ」

    そう軽口を言いながら、がきん、ごきん、と硬質の音を響かせて、神父服の中から取り出したやけにでかくて長い銃――スナイパーライフルというべきものだ――を出している。
    銃特有の黒光りを放つそれは、本来想定されている規定よりも大きい。クリスに合うくらいだと言えばわかりやすいだろう。
    なにせマズルそのものがでかい。ここからどんな弾丸が発射されるっていうんだ。

    「これはかの有名なベガパンクが手掛けた―――」
    「お、おお!?」
    「……という触れ込みで購入したら、別にベガパンクとは関係なしの曰く付きのものを私が魔改造したやつです!」
    「その紹介必要だったかなァ!」

    それただクリスが騙されたっていう話じゃん!なんていうツッコミをよそに、狙撃銃を片手で持つと、碌に標準機を見ずに引き金を引けば――――轟音を立てて、銃弾が発射される。
    耳にダメージが来たし、びりびりと肌が衝撃で痺れる。
    いやこれ……スナイパーライフルの見た目をしただけの別物じゃねェか!? 正しく“魔改造”している。多分ロケランとお仲間じゃねェかレベルだ!

    発射されたであろう銃弾が通った後は、次々に木のつるの丸い穴が空いたと錯覚するような勢いで爆ぜさせながら通りすぎていく。
    破壊力やべェあれ。どんな改造してんだあれ。

  • 174二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 01:40:26

    このレスは削除されています

  • 1751◆A8pWn3jbyg23/05/24(水) 01:48:12

    「狙撃銃に謝れ!」
    「ごめんなさい!」

    少なくとも使い方があまりにもこう……違うだろ! もっとこう、静かでサイレントであるべきで……。
    いや、おれが言うことじゃねェな。とりあえず強ければ、勝てればどんな改造されていてもいいんだ!
    今はなりふり構わずあいつにダメージを喰らわせなければ。

    銃弾はミラに直撃する。するが、――あまり、効いている様子は見られない。
    ただ表面を確かに削ったし、それは確かに開いてにこちらの攻撃が通用したという証でもあると思う。すぐに再生されたけれど!
    ミラはじろっとこっちを見る。それから嫌悪に塗れた声を響かせる。

    「―――――薄汚い侵略者共。鉄を置け。お前らの穢れが土に染み込むなんて虫唾が走る!」

    それはきっと、クリスの弾丸とか、ローの刀、シャチのハルバード、ペンギンの槍、ホーキンスの釘――人の血、とか。そういうものに向けて発せられた言葉だと思う。
    うん、確かに不浄マシマシだもんな。あいつの嫌いなものだよな。神でなくなったあいつにもそれは適用されるのか?

    「ハッ、何が侵略者だ。それはお前の方だろうが!」

    それは街に木のつるを忍ばせ、甘い臭いで誘い込み、人を捕食し、支配をしていたミラに対する啖呵だったのだろう。
    けれどローのその言葉にさらにミラは激高する。

    「お前らが―――人間が、お前らが、侵略者共だ! 醜い、醜い醜いうるさいうるさいうるさいうるさい! お前たちの祈りは全てうるさい、煩わしい!」
    「―――?」
    「気持ち悪いんだ! 理解が出来ないこの化け物どもめ! お前たちがおれを神だと言っただろう! お前たちが望んだんだろう! お前たちが願ったんだろう! お前たちが縋ったんだろう! お前らが喰い散らかした花に!」

    「―――隱ー縺後♀繧後r逾樊ァ倥↓縺励m縺ィ鬆シ繧薙□?!!!!」

    最後は、発狂したような叫びで、上手く聞き取れなかった。

  • 176二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 11:40:48

    絶対関係ないけど
    ○んでも鑑定団の「残念!」でしょげるクリスさんと呆れたマリーさんがワイプにいるのが思い浮かんでしまった

  • 177二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 22:44:15

    降魔の相VSミラの画が怪獣大戦争って感じで好き

  • 1781◆A8pWn3jbyg23/05/25(木) 01:40:15

    ミラの身体が膨れ上がったと思ったら――そこからたくさんの顎が出てくる。
    まるで口を広げるように空洞が生まれ、きゅいん、と音が鳴ったかと思うと、次の瞬間にはレーザーのように何かしらの力を纏った光線が発射される。

    「あんなのありかよ! 花だろ!」
    「花ってレーザービーム出るっけなァ!」

    ペンギンとシャチが同時にその場から離れる。離れた瞬間二人がいた場所に光線が通過する。
    一体どんな攻撃が出てくるかわからないびっくり玉手箱だ。そりゃ人間じゃないからおれらの予想内に留まらせるってのも難しいのかな!
    木のつるや光線の攻撃を掻い潜りながら、シャチがハルバードで襲い来る植物をどんどん切り払っていく。
    自身が切ったものを足場にしながらミラに迫っていった。

    「お前なあ……! 気色悪い姿になってるのに、まだ顔面をラミロのままにしてんじゃねェ、よ!」

    そう言いながら思いっきりラミロの顔をしたミラの顔面にその刃を叩きつける――いや躊躇ねェな!
    と内心ツッコミをいれたが、躊躇なんてしている暇なんかねェか。
    ミラはその顔を真っ二つにしながら、忌々しそうにシャチを見る。

    「死んだ相手に友情でも? ラミロは生き返りはしないよ」
    「そりゃそうだよ! でもだからこそ、ラミロが出来ねェことをおれがするんじゃねェか!」

    もうおれの大事な友達の一人だわ!なんて叫びながら追撃をする。
    背後から強襲してきたミラの攻撃は全てペンギンは槍で払った。

  • 1791◆A8pWn3jbyg23/05/25(木) 01:57:25

    「―――煩わしい!」
    「ぐ、ぶッ……!」

    まるでハンマーのように大きな木のつるが撓り、シャチとペンギンをまとめて吹っ飛ばす。
    苛立たしそうに耳を破壊しそうな凶声を辺り一面に響き渡らせながら次々と木の根を増やしていく。
    それを見ながら、コクレア様は悲しそうな声をあげ――、何かをしようとして、躊躇している。

    まるで、子どもの癇癪のようだ。自分の感情を辺り一面に喚き散らして思うがままにさせようとしている。それかどうしようもない感情を吐き出すことですっきりしようとしているのか。
    身を震わせながら人に不幸を願う悲鳴ばかりを轟かせるのは、耳だけじゃなくて自分の正気すら削り取ってきそうだ。

    「らせん、らせん、らせん……! どこへ行く! 空に逃げるのか! またおれを燃やしてお前は空に行くのか!」
    「クルルゥ……」
    「お前は、お前まで、おれの敵に回る、お前まで侵略者になる、お前は、お前はお前はお前はお前だけは!」

    あああああああ、という不明瞭な叫びと共に、戦慄きのような震えが地面を襲う。
    おれは慌ててクリスにしがみつくが、クリスはバランスを崩すことなくマジで安定性が強い。体幹どうなってるんだってレベルなんだけど。

    ミラの叫びに合わせて地面からあふれ出た木の根は、瞬きの間に粉々に切られ地面に落ちる。ローだ。
    ローのやつは滅茶苦茶無理をしながらあいつに接敵している。

    「醜い人間種どもめ! おれは神だ、神だぞ! 崇め、奉れ、縋れ、捧げろ! そうして生きてきたくせに、今更歯向かうな! ――気色悪い!」

    ――背筋が凍るほど、おれたち人間に対する憎悪。呪い。それらが放出されて体調だって悪くなりそうだ!
    クリスが弾丸をやつの口に撃ち込む。けれどあいつの口は壊れた代わりに、木の体表に現れた無数の口が代わりに叫ぶ。

  • 180二次元好きの匿名さん23/05/25(木) 12:11:35

    ほしゅ

  • 181二次元好きの匿名さん23/05/25(木) 20:24:04

    「コラさんの本懐はおれが遂げる」
    「ラミロが出来なかったことをおれがする」
    この船長にしてこの船員ありって感じで良すぎる

  • 182二次元好きの匿名さん23/05/26(金) 03:24:08

    文字化け変換してうわっとなった
    にしてもミラの今の姿どうなってるんだ
    マジで化け物そう

  • 183二次元好きの匿名さん23/05/26(金) 13:07:10

    シャチがずっと男前で好き
    完璧じゃないけど等身大のヒーローって感じが主人公力高い

  • 184二次元好きの匿名さん23/05/27(土) 00:45:59

    怪獣もかくやの見た目なんだろうなぁ
    花も空飛べるコクレア様に羨望してたのか、同類と思ってる奴が出来ることが自分に出来ない上に自分から逃げるのが嫌なのか

  • 185二次元好きの匿名さん23/05/27(土) 08:48:29

    多種多様のクソデカ感情……

  • 186二次元好きの匿名さん23/05/27(土) 19:27:46

    なんというか、おれは神だぞ!っていうのを元天竜人のコラさんの前で言ってるのがなかなか味わい深い

    今は転生して血筋も含めて完全にただの人間になったとはいえ、神を自称する化け物と相対するのが神であることを拒んだ元神の人間と、神の血を引く兄弟に助けられた神の天敵と、悪魔をその身に宿した能力者なの最高に皮肉効いてて好き

  • 1871◆A8pWn3jbyg23/05/27(土) 19:32:03

    ―――その口全てに、今度は釘が打ち付けられる。
    木の実はガラスを思いっきりひっかくような叫び声をあげながら地面に落ちて腐って溶ける。
    気付いたらホーキンスは宙に浮かび上がって大量の釘を浮かび上がらせていた――いやあれすべてワラで繋がってるのか!
    それがまるでマシンガンのように連続でミラに撃ち込まれ、ミラの身体を削り取っていく。
    確かにそれは聞いているようでミラが苦悶の声をあげる。

    「ああああぁぁアアアああアあアァあああああ!! 羽虫風情が!!!」

    カウンターのようにミラから鋭い破片がホーキンスに向かって発射された。
    それはでかいワラと化したホーキンスの腕を容赦なく抉る……!
    けれどホーキンスに目が向いた瞬間、バチィ!と焼けつくような雷の音が響いた。
    ローがミラの背後からカウンターショックを放ったのだ。

    「ッ、お前……!」

    超至近距離にいるローに対して当然のようにミラが木のつるを向かわせるが、すぐさまクリスが弾丸を撃つ。
    正確無比に発射された弾丸は多少の距離があるとはいえ見事に木のつるを真ん中から爆ぜさせる。
    ローに攻撃が届かなかったおかげで、ローの攻撃はミラに直撃した。

    「注射(インジェクション)――ショット!」

    勢いよく刀の切っ先が向けられ――その胴体を貫く!
    そして次の瞬間激しい電撃が刀を伝ってミラを包み込んだ。あ、そんな合わせ技ありなんだ!?
    貫かれたためか内外問わずローの電撃によって体組織が破壊されていく。
    よくよく考えなくても、なんでオペオペの実で電撃が出るんだろうな。おれわかんねェ!

  • 1881◆A8pWn3jbyg23/05/27(土) 21:08:50

    「ギ、ガアアアアアアアアアアア!!!」

    ミラが苦しみのあまり身体を滅茶苦茶に振り回す。辺り一面を振動させるほどに木のつるを振り回すものだから、周りにいた周りにいた面々はすぐさま離脱した。

    「人間が、人間が、人間が!! 不敬だ、神に逆らってただで済むと思ってるのか! お前らが望んで縋った神に! こんな蛮行を!」
    「悪いがお前みたいな化け物を信仰したつもりはねェ、よ!」

    迫りくる木のつるの群れを刀だけでいなし、刃の腹を当てた衝撃で後退することで攻撃を回避する。
    その分上から急に強襲したマリーさんがそのつるをその衝撃によって鎮める。木のつるはくの字に曲がりながら地に堕ちた。

    「うるさい! 散々人のことを苦しめたくせに! アタシらの神様はコクレア様だ!」
    「あああああらせんらせんらせんとうるさい! 人間はおれを信ずるべきだろう!? そのためにおれを生み出しただろう!」
    「ッ……」

    発狂したように喚くミラに、マリーさんは滅茶苦茶苦いものを精いっぱい飲み込んだような顔をした。

    「ああ、クソ……! 腹立たしい、のに! なんなんだい、全部腹が立つ悪意みたいな言葉ばっかりなのに……!」

    悲鳴みたいに聞こえちまう!とマリーさんが頭を掻く。

    ――悲鳴。
    それは確かに……おれもずっと思っていたことだ。
    だってあいつの言葉を聞いていたら、いつだって人間への憎悪とか、嫌悪とか、そういうので、塗れているけど。
    でも奥底に酷い嘆きのようなものが見えてならないのだ。
    もちろんそれに同情する余地はない。危害を加えさせられたのはこっちで、それでいていろんな悲劇を生み出してきたのだ。
    でも、それでも。
    相対して戦っている今――あいつの、絶望したように発狂する嘆きを、聞かなければならないと思ったのだ。

  • 1891◆A8pWn3jbyg23/05/27(土) 21:20:47

    「――――お前、神様になりたくなかったのか」

    その声は、特に叫んでもない、日常会話をするようなおれの声で。
    おれとミラの距離は遠く離れていたから、本来なら聞こえるはずのない声だろうに。
    ミラはおれの声を聞いて――ぴたり、と一瞬だけ動きを止めた。


    「……誰が、」

    「誰が頼んだんだ」


    その響きは濁りのなく、始めラミロの姿のままで現れた時と同じように、そのままラミロの声で。
    静かな水面に一粒垂れた雫のような色があった。


    「お前たちが望んだんだろ」

    「お前たちが願ったんじゃないか」

    「神様だって、神様、神様、神様って――たった一本になって、最早終わりしか残されていない、どこにもつなげられないただの花のことを」

    「何がしたいんだよお前たちは。おれたちを食べて、勝手に幸福になって、勝手に救われて、勝手に信仰して」


    そうして、種の絶滅まで追い込まれた花は、本来ただ生まれ種を生み枯れゆく、そうやって巡り終わり存続していくために、生きていた花は。
    奥底に秘めていたのであろう、嘆きを大声で吐き出した。


    「―――誰が、おれを神様にしろと頼んだ!」

  • 190二次元好きの匿名さん23/05/28(日) 09:09:11

    保守

  • 191二次元好きの匿名さん23/05/28(日) 20:18:05

    そうあれと存在意義を与えられたもの、かぁ…

  • 1921◆A8pWn3jbyg23/05/29(月) 03:08:29
  • 193二次元好きの匿名さん23/05/29(月) 10:01:34

    これから明かされるんだったら返答なくても大丈夫なんですけど
    “コクレア”様の方の名前は誰がつけたんですか?

  • 194二次元好きの匿名さん23/05/29(月) 19:20:45

    結局クリスってどのくらいの強さなの?
    ワンピースのキャラクターで例えると

  • 1951◆A8pWn3jbyg23/05/30(火) 00:38:24

    >>193

    コクレア様の名前は、この先出るかわからない情報なので言っちゃうと、コクレア様を信仰した人が名付けた名前です。

    どんな人かというとサルヴァ神父のずっとずっとご先祖様です。

    でも名前を付ける際コクレア様が立ち会って注文していたとかなんとか。

    ちなみにコクレアってのはラテン語で螺旋って意味。

  • 1961◆A8pWn3jbyg23/05/30(火) 00:43:59

    >>194

    強さとかその時々の章でルフィたちと比べての差で描写されるからなんとも……

    あえて今のメンバーで言うなら、ローやホーキンスにはかなわなくて、旗揚げ組よりは強いイメージ

    でも強さってのはその場その場で変わるのであまり上手く言えない……

  • 1971◆A8pWn3jbyg23/05/30(火) 00:55:51

    【小ネタ】
    花は雄雌ないし、コクレア様も特に雄雌ないです。
    というか決めてないだけなので別に想像上でつけてくださっても大丈夫な感じとなっております。

  • 1981◆A8pWn3jbyg23/05/30(火) 01:03:02

    【小ネタ】
    レミが神殺しの剣を使って花を化け物に変貌させたときSANチェックが起こっていて

    コラさん→SANチェック失敗 アイデア失敗
    ホーキンス→SANチェック成功
    クリス→SANチェック成功
    ペンギン、ベポ、メリー→SANチェック失敗 アイデア成功
    →探索者をその場に釘づけにしてしまうかもしれないような極度の恐怖症
    ロー→SANチェック失敗 アイデア成功
    →肉体的なヒステリーあるいは感情の噴出 (大笑い、大泣きなど)
    ※みんな気付いてなかったけれど、実はすごく恐怖に陥っていたけどガルチューでめっちゃ落ち着いた

    感じの発狂が行われてました。

  • 1991◆A8pWn3jbyg23/05/30(火) 01:15:31

    【小ネタ】
    ホーキンスの呪詛云々と釘を利用した攻撃は前スレのアドバイスを利用させていただいてます
    ストローマンズカード難しいので多分スレ内では出ない 無いものとして扱い中です

  • 2001◆A8pWn3jbyg23/05/30(火) 01:19:32

    【小ネタ】
    この長編のテーマは『食べる』です

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