- 1二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 14:25:33
- 2二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 14:33:06
バシャッ!!
すぐ近くを横切った車が水溜まりを跳ねた。
水溜まりの泥が美里のブーツに思いきりかかってしまった。
ブーツは泥水でビチョビチョだ。
「せ、せっかく綺麗に手入れしたばかりなのに・・・!」
美里は思わず落胆、放心状態になってしまった。
仕方なく近くの公園に向かい、そこの水道の水で軽く洗おうとするも
蛇口を捻っても水が出てこない。どうやら壊れてるようだ。 - 3二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 14:38:57
「そ、そんな最悪・・・」
美里は本当に全身の気が抜けてしまうのを感じた。
今日はもう家の中でおとなしく過ごそう、そう考え家路につくことにした。
帰る途中、さっきまで穏やかだった風が次第に強く吹き始めた。
美里はだんだん不安な気持ちになってきた。
「何だか嫌な予感がしてきます・・・」
その悪い予感は的中するのだった。 - 4二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 14:46:23
工事現場の近くを通りかかった時だ。
そこの砂山が強い風で飛び散り、美里のブーツにサーッとかかってしまった。
「う、うわッ!!」
泥水で濡れている上に砂がかかってしまうものだから、さっきよりもブーツが更に汚れてしまった。
「か、勘弁してください・・・」
とりあえず家に向かって歩くものの、災難はまだこれで終わらなかった。 - 5二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 14:52:32
「嘘、そんなこと・・・」
普段通っている道が浸水しているではないか。
どうやら水道管が破裂してしまったからのようだ。
ここは遠回りして帰るべきか、いや遠回りしている間に更なる災難に見舞われるかもしれない。
それを恐れた美里は、意を決し浸水した道に足を踏み入れた。
何とかギリギリブーツの中に水が入らない程度の深さだ。
「頑張って、ここから抜け出すんです!」
早く安全な家に帰って一安心したい。美里は足を止めず歩き続けた。 - 6二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 15:01:24
あと2、3メートルほどで抜け出せられる。一瞬気が緩んだその時だった。
「うわわわッッ!!」
かなり深い所に左足を入れてしまったようで、水が一気にブーツの中に入り込んできた。
「つ、冷たいです!ひーッ!!」
ここで諦めるわけにはいかない。あと少しでこの地獄を脱出することができるのだ。
「あ、諦めませんよ!」
全身に力を入れ、中に水が入って重いブーツを動かした。
「あと少し!あと少しなんですから!!」 - 7二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 15:10:09
何とか水地獄を抜け出すことができた美里。
「や、やった!やりました・・・!」
美里は何とか住んでいるマンションの前まで来ることができたが、
エレベーターが故障中で停止状態になっていた。
「そんなァ、今朝までちゃんと動いていたのに・・・」
散歩に出かける前までは正常に動いていたエレベーターがまさか
2、3時間の間で故障になるとは予想外もいいところだった。
「当然だけど階段しかありませんよね・・・!」 - 8二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 15:20:07
美里の部屋は7階にあった。名字が七尾だけに(笑)
もうヘトヘトで体力の限界にある彼女にとって、7階まで階段で行くのはかなりキツかった。
弱音を吐きそうになるも、気を取り直した。
「あとは階段を上がればいいだけなんですよ、私のバカ!」
美里は階段を一段、一段ゆっくりだが上り始めた。
階段を上る度に、ブーツの中に入った水が自分の進行を邪魔するように感じる。
「わ、私は諦めませんよ!」
1階、2階、3階と着実に上がっていく。ゴールである7階はもう遠くない。 - 9二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 15:29:02
「私は負けません、諦めません!!」
4階、5階、6階、そして遂に7階まで上り、自分の部屋である702号室に辿り着いた。
玄関を開け、自分の部屋に入った時の安心感は途轍もなかった。
「や、やっと帰って来れました・・・!」
美里は少し休んで体力を回復させてから、汚れたブーツの手入れをすることに決め、
とりあえず風呂に入りシャワーを浴びた。
そして着替えるとソファーにもたれかかった。
「あのお気に入りのブーツを履いて出かけると、十中八九酷い目に遭うんですよね・・・」 - 10二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 15:38:55
そう、あの大学の進学祝いで親が買ってくれた大切な茶色のロングブーツ。
あのブーツを履くと高確率で何かしら災難に見舞われるのだ。
自分には何か履き物に関して何か呪われているのだろうか。
しかし、そんなことを考えても仕方がない。
「さてっと!」
美里は大きなウサギのぬいぐるみをギュッと抱き締めた。
「何か嫌なことがあっても、あなたを抱き締めると自然に癒されるんですよね」
その大きなウサギのぬいぐるみは、美里が幼稚園の頃からずっと大切にしている宝物だ。
美里はウサギが大好きだ。本当に可愛らしい。
大学生活で一人暮らしになっても、絶対に手放したくない。
ずっと一緒にいたい。
「いつまでも、いつまでも一緒ですからね。私の可愛いウサちゃん」
THE END - 11二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 17:28:21
まさかのウサギ好きの人のSSとはビックリ
なかなか面白かった - 12二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 17:38:41
読んでて想像力がすごいと感じたわ
また書いてほしい - 13二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 22:54:29
ウサギ好きの人のブーツが汚れちゃったネタまで拾うとは。愛を感じてええなあ