【オリキャラ注意】「ドジって前世を思い出しちまったぜ」外伝その13

  • 11◆A8pWn3jbyg23/05/29(月) 03:02:04

    ナギナギの実を食べてすっ転んだら前世の記憶を思い出しちゃったコラさんの話、の続編。


    SS+ダイス+安価スレになると思います。ただしダイスと安価は要所要所。

    思いついちゃったボスがボスなのでボリュームが広がっていくかもしれない。

    書き溜めゼロなのでライブ感で行くのをご了承ください。

    転載は禁止とさせていただきます。



    【注意事項】

    ・このスレの時系列はごちゃごちゃです。劇場版時系列と思ってください。

    ・ワノ国後っぽい雰囲気が見られたりするかも知れませんが、時系列はパラレル。

    ・ローはK・ROOM、R・ROOM使えるローなのか現状定めていませんが、『凪(サイレント)』は使う事はないと思います。



    前スレ

    【オリキャラ注意】「ドジって前世を思い出しちまったぜ」外伝その12|あにまん掲示板ナギナギの実を食べてすっ転んだら前世の記憶を思い出しちゃったコラさんの話、の続編。SS+ダイス+安価スレになると思います。ただしダイスと安価は要所要所。思いついちゃったボスがボスなのでボリュームが広が…bbs.animanch.com

    最初のスレ

    【オリキャラ注意】「ドジって前世を思い出しちまったぜ」外伝|あにまん掲示板前スレhttps://bbs.animanch.com/board/1079485/の続編です。ナギナギの実を食べてすっ転んだら前世の記憶を思い出しちゃったコラさんの話。SS+ダイス+安価スレになると…bbs.animanch.com

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    「ドジって前世を思い出しちまったぜ」|あにまん掲示板ひっくり返って呆然と青空を仰ぎながら、おれは手に持った一口分齧られた跡があるその実をまじまじと見つめていた。一気に頭の中に起こった記憶の濁流はひどい頭痛と吐き気と倦怠感と悪寒と等々重たい風邪症状をタイ…bbs.animanch.com
  • 21◆A8pWn3jbyg23/05/29(月) 03:02:56

    【このスレだけのコラさんのオリジナル設定・オリジナルキャラ】

    ・コラさん
    一応色々あって今世の名前をロシーと自称しているが、ローもとい他の船員からはコラさん呼びされています。
    身長166㎝の伸び盛り。将来的には288㎝(ダイスで決定)
    治安悪めのスラムみたいなとこ生まれだけど特別な血統とか病気とかはないまま育った(安価で決定)
    現在花と敵対中 何か秘策を持ってるらしい?

    ・クオル
    前作からのオリキャラ
    安価で悪い医者と出たせいで徹底的にローと対比を取られつつ、神絵師のネコチャンイラストによって野良猫要素が継ぎ足された属性過多男。悪魔の実の能力者。
    不治の病の治療法を見つけるために勉強中の医者。
    ハートの海賊団に居候中。
    ホーキンスと馬が合っているかもしれない。
    現在森の鎮静化中&襲撃を受けてる?
    何かをコラさんに手渡した。

  • 3二次元好きの匿名さん23/05/29(月) 03:05:35

    このレスは削除されています

  • 41◆A8pWn3jbyg23/05/29(月) 03:05:52

    このスレからの新オリキャラ

    ・マリー
    色付き眼鏡、腕には入れ墨、屋台で威勢のいい掛け声をするファンキーなシスター。
    面倒見のいい姐さんタイプ。
    過去神様にあったことがあるらしい……?
    悪魔の実を食べドラゴン姿になりつつ再登場。
    メモメモの実のフィルムによって過去を思い出した。
    サバサバしつつもパパにクソデカ感情を持ってる。
    現在交戦中。慣れないながらも勢いで頑張ってる。

    ・クリストファー
    ギャンブル好きの生臭神父。人当たりはいいけれど結構適当でろくでなし。
    マリーの養父。
    右腕は義手。
    元兵士。
    敵に左胸を貫かれたが、戦線復帰している。
    現在コラさんを背中に貼りつけながら交戦中。ちいさないのちが背中にある…とびくびくしているが、そこまでちいさないのちではない。

    ・レミ
    本名レミリオ。優しそうな丸眼鏡のお兄さん。
    頬から首を渡って大きな傷がある。
    花によって呪われ苦しめられてきたが、実はPOW18で最大限発狂を気合で引かずに頑張ってきた覚悟ガンギマリお兄さん。
    ラミロに手渡された鞘に入った神殺しのナイフを飲み込んで腹に隠していた。
    現在気絶中。

  • 51◆A8pWn3jbyg23/05/29(月) 03:06:30

    ・ラミ
    本名ラミロ。レミの双子のお兄さん。すでに故人。元神父。
    コクレア様を蘇らせようとしていた。
    霊体のような姿で登場したのをシャチが確認。
    その状態ながらもこちらの手助けを行っているようだ。
    元メモメモの実の能力者。
    花を倒すために尽力していたが、コクレア様の血と肉を食べ、花に食べられるという時間稼ぎを行った。
    花の隙をついて少しばかり登場。忠告だけしてから消えていった。

    ・サルヴァドール
    コクレア様を信仰する神父。すでに故人。
    通称サルヴァ。
    クリスと似た性格をしており、そこそころくでなしだが人当たりはいい。
    毒を飲み込み、花に食べられに行く。

  • 61◆A8pWn3jbyg23/05/29(月) 03:07:38

    コクレア様
    白銀の色をした、ドラゴンのような、魚のような、蛇のような姿をした神様。
    最近はドラゴン説が急浮上。
    見た目は神秘的だけれど、慈悲深く、愛情深く、少しドジ。
    封印が解かれ復活。大きな体躯で天を泳いでいる。
    花に対して攻撃をしようとしない。哀しげに泣いている。

    ムルフェルニソ
    元々麻薬の成分を含んだ花だった。
    はるか昔、人の信仰により神に転じた“ただの花”。
    純粋で悪辣。人を食物として認識している。
    コクレア様のことを“らせん”と呼んでいた。
    現在ラミロの姿を取り、差別化のためにミラと呼ばれている。
    コクレア様に愛憎含んだ複雑な感情がある。
    本当は神になんてなりたくなかった。

  • 71◆A8pWn3jbyg23/05/29(月) 03:16:00

    「―――誰が、おれを神様にしろと頼んだ!」

    その言葉に愕然とする。
    いや、けれども。納得する。わかってしまう。
    だってあいつは人間が望んだから神になったと最初から告げていた。そこに“なりたい”と感じられる意思はなかった。
    怒って、蔑んで、見下して、憎悪して。
    その中に限りなく、人間への――自分達を食べた人間への恨みをため込んで。
    なのに、そんな人間たちに縋られて、信仰されて、神になった。なってしまった。

    ……やばいぞ、これ繋がる。
    ここまで人間を食物だって扱って、神様のように振舞う理由が腑に落ちちまった!

    「クリス、もしかして人間復讐されてる?」
    「人間復讐されてますねえ! 我々とんだとばっちりですけど!」

    人間なんてただの食物とみなす口振りで、けれど悪夢を見せたりして甚振っていたのは、全部そういう理由があったからなのか。
    じゃないと信仰されて神様になったのに、ここまで人間を嫌う理由がさあ!
    いや、神様になったの受け入れてるとおれ思ってたもんだから! その裏側が知れたら納得しちまった。いや納得したからってどうにかなるわけじゃねェけど。

    でも、あいつの正体がようやく知れた気がするのだ。
    何を考えているか得体の知れない花より。
    復讐というような理由を持って、人間を苦しめようとする花。
    すごく嫌な字面だが――正体不明よりはましだ!

  • 81◆A8pWn3jbyg23/05/29(月) 03:25:18

    「お前らは、お前らは、お前らは――――! 腹が減ったとおれたちの根ごと掘り起こして食べたくせに! 種すら残してくれなかったくせに! おれたちを食べたその口で、おれを神様だと、救ってくれとほざく!
     生贄なんていらない! 祭壇なんていらない! そんなものに興味はない!
     あんな鉢植え、元居た場所から離されて、すべてお前たちのエゴじゃないか!」

    発狂したように身体を震わせ、木のつるで地面を叩く。頭を掻きむしるような姿がある。
    あれが、あいつの正体で、真実なのだ。

    「お前たちを救った覚えなんてない! 花が摘まれるのも、喰われるのも、いい、そこまではいい!
     けれどおれしかもういない! お前たちが食べ尽くしたせいで、おれを神にしたせいで、もうこの島に花が咲くことはない!
     おれたちはお前たちのように生きたいわけじゃない。発芽し、花が咲き、種を残し、枯れる。そうして巡るだけ。そうして存続していく―――それがおれたちの使命だった! おれたちの唯一の存在理由だった」

    なのに!と悲鳴が響く。

    「お前たちはおれを神にした。おれを花じゃなくした。おれたちのの存在理由である目的も、たった一つのそれを剥奪した!
     なのに救え? 愛せ? 知らない、知らない知らない知らない! 気色悪い!
     おれたちを食べたその口で――よくそんなことを言えるな。おれたちを滅ぼしたくせに、おれだけ花じゃないものにさせたくせに!」

    それが――理由なのだ。ここまで神として蔓延って、生贄をもらって、存在し続けた、豊穣神という――本来、存在しないはずのそれがいた理由は。

    「もう、種は芽吹かない。花は咲かない。たった一輪の花は、あとはもう、枯れるだけ。巡ることも出来ず終わるだけ……!
     お前らが神にしたくせに! 神にしたのに! 逆らうな、おれの玩具でい続けろ。お前らはただの食物だ! お前らが、それを証明したじゃないか。生贄を捧げたじゃないか! この侵略者ども……!」

  • 91◆A8pWn3jbyg23/05/29(月) 03:27:11

    「誰がおれを神にしろと頼んだ!!」






    「――――――おれを神にしたのは、お前らじゃないか!!」

  • 101◆A8pWn3jbyg23/05/29(月) 03:27:55

    というところで今日はここまで。
    このスレが最終スレになるかな。
    思えば最初の頃からもう半年くらい経ってないか?? めちゃくちゃ長丁場になったスレでした……。

  • 11二次元好きの匿名さん23/05/29(月) 10:55:22

    一連の花の言葉は、実際にこちらの世界で人の欲望のせいで絶滅してしまった数多くの生き物を知っているこちらとしては、どれも耳が痛くなる言葉だ
    おまけに人のせいで独り/一人ぼっちになってしまった生き物はこっちにも、いる
    ロンサム・ジョージ、生存が確認された最後のピンタゾウガメ(2012年6月24日に他界、繁殖計画も失敗に終わった)
    絶滅した生き物はどれも『最後の生き残り』は絶対いたけど、ジョージは1971年に発見されてからずっとその日まで生きてきたから、その分有名になってしまっているのだと思う
    ……悲しくて寂しいよ、そんなの

  • 12二次元好きの匿名さん23/05/29(月) 18:07:52

    「おれを神にしたのは、お前らじゃないか」か……
    ワンピ世界にはこの言葉が刺さる人が結構居そう

    ローたちは花のことを人間を襲う化け物として認識していたわけだけど、ただの花でしか無かった存在を絶滅寸前まで追い詰めた挙句神に仕立てあげたのは人間であるように

    政府はローのことを凶悪で残忍な死の外科医として扱うけど、父親のような立派な医者に憧れていた幼いローを海賊にしたのは政府で、
    世間の人々や世界政府はドフラミンゴのことを警戒して恐れているけど、ただの子供だったドフラミンゴを国盗りをするような恐ろしい怪物にしたのは、ドンキホーテ一家を迫害した下界の人々と、ドフィたちが天竜人に戻ることを拒絶した天竜人で


    とりあえず例として出してみたけど、こんな境遇の人は腐るほどいるんだろうなぁ

  • 13二次元好きの匿名さん23/05/29(月) 19:58:11

    生きてる人間が一番怖いってやつだな

  • 14二次元好きの匿名さん23/05/29(月) 21:27:59

    1スレ分遅くなったけど前々スレのざっとした説明(省略気味)
    ・ベポとコクレア様の珍道中
    ・ホーキンスの推測をミラが肯定、ラミロから受けた攻撃で煽られたミラが姿を消すもボス形態で再登場、戦闘再開
    ・教会組の通常運転、クリスから見たコラさん
    ・ホーキンス、ロー、クリスの口蓋と目への攻撃
    ・花とコクレア様の回想
    ・麻薬成分の煙と花の幻覚による隙をついての攻撃、マリーさんに対する幻覚で過去の一端が発覚
    ・ラミロの両親との対立、苦悩
    ・自責の念に駆られるマリーさんにクリスが援護
    ・コラさんにも兄上の幻覚が、一撃を食らう寸前にペンギンの助けが入る
    ・離脱したクオルの現状確認、ローと合流した後に情報共有
    ・幻覚の中にいたラミロから呪いをかえせという助言を貰う
    ・煙が晴れた後にはボロボロになったホーキンスの姿が
    ・駆け寄ろうとするも茨によって邪魔される中、なんとかかいくぐったコラさんがとどめの攻撃を逸らす
    ・シャチが合流、ホーキンスを回収、応急処置の間ペンギンからクオルの差し入れと伝言を貰うコラさん
    ・ミラの独り言、違和感のある聞こえ方
    ・ベポとコクレア様の珍道中その2
    ・花の過去、コクレア様との交流
    ・祭壇を壊してきたシャチが持って来たもの、生贄の人骨
    ・ミラの終了宣言、合体した大木
    ・ホーキンスの気になる過去話、能力の使用制限
    ・ミラによる巨人の発生、攻撃を凌いでる最中ベポの声が
    ・攻撃を回避しつつ移動するコクレア様とベポにはコラさんが必要なようで…?

  • 15二次元好きの匿名さん23/05/29(月) 22:40:43

    前スレのざっとした説明、連投失礼
    ・コクレア様に連れられて祭壇へ行くことになったコラさん
    ・ミラからの怒声と共に攻撃を受けるも躱していたコクレア様、ドジの結果執拗な蔓に捕まる
    ・ミラの愛憎渦巻く発言の最中、ローが蔓を断ち切って自由になり再度祭壇へ
    ・花の回想
    ・ローの立ち往生、ホーキンスによる時間制限、シャチの奮励
    ・追突しつつも祭壇に到着、いざ完成の瞬間に蔓で壊されてしまった
    ・吹き飛ばされてきたロー、ミラからの攻撃で洞窟は崩壊
    ・コクレア様に乗って脱出中にローからの提案、ひと悶着ありつつも決行が決定
    ・ローの能力によって集まった祭壇に降下していたコラさんが突入
    ・準備が整ったホーキンスが自分を仲介して呪詛返し発動
    ・レミの奮起
    ・呪いによって阻害されたミラ、祭壇が完成
    ・コクレア様の復活、コラさんの感想
    ・呪いさえも食ったミラの怨嗟、ローも加わりつつコクレア様との戦闘
    ・コラさんとベポの気づき
    ・ローとミラの問答、レミたちが合流
    ・ミラの懐疑に対する答え、レミの特異性
    ・ラミロが残した最後の一手、レミは自分の腹に隠していた神殺しのナイフを地面に突き刺した
    ・神性を殺されただの化物になったミラ、解説していたレミがダウン
    ・冒涜的な姿を目の当たりにして動かなくなったメンバーを正気に戻しつつ、クリスと行動することにしたコラさん
    ・最終決戦、ミラからの攻撃にそれぞれ対処する
    ・不浄の武器やローの煽りで発狂しながらも攻撃の手を休めないミラ
    ・シャチの啖呵、こちらの攻撃はダメージが通るようになっている
    ・憎悪交じりの悲鳴を聞いたコラさんの疑問、花の本音

  • 16二次元好きの匿名さん23/05/30(火) 08:29:58

    保守

  • 17二次元好きの匿名さん23/05/30(火) 18:44:11

    ほしゅ

  • 18二次元好きの匿名さん23/05/31(水) 01:43:57

    鯖落ち多いので保守

  • 19二次元好きの匿名さん23/05/31(水) 07:01:56

    このレスは削除されています

  • 20二次元好きの匿名さん23/05/31(水) 17:59:12

    夫婦とか兄弟で神さまだったりすることもあるけどコクレア様と花は一人だけの神さま仲間だったのか
    唯一の共通点がなくなるのもそりゃ嫌だよな

  • 21二次元好きの匿名さん23/05/31(水) 23:30:19

    結末を考え中かな?続きが楽しみ

  • 221◆A8pWn3jbyg23/06/01(木) 03:22:10

    >>14

    >>15

    あらすじの方を書いてくださってありがとうございます!

    2スレ分書いてくれて嬉しい!

  • 231◆A8pWn3jbyg23/06/01(木) 03:35:36

    ――慟哭にも似たミラの叫びに愕然となる。
    悲鳴染みた声は、助けを求めるような声にも似ていて、心臓が酷く速くなる。
    いや、だって、だってさあ! だからと言って戦いをやめるとかは決してない……けど!
    でも! あいつの怒りに反論する言葉を、おれたちは持てない。だって神様に“されてしまった”っていう相手に対して何を言えばいいんだってんだ!

    「……今更、なんなんだ!」

    けれど、その言葉に一番に反応したのはマリーさんだった。

    「今更、今更なんだよ! もうアタシたちはアンタを許せない! 何をどうしたって憎しみ以外持てない! 神様としてみんなを振り回して、苦しめて――なのに今更そんなことを言うのかい!」
    「うるさい、女の声はやかましい! キイキイ羽虫のようだ! うるさいうるさい! ことごとく死 ね! 消えろ!」

    子ども癇癪のように喚きながら暴れまわるミラ。
    きっと何百年分も降り積もった感情だったのだろう。一度吹き上げたそれらはもはや留めることは不可能だというかのように、激しい濁流となって吐き出され続ける。

    「祈りも、願いも、愛も――おれに、求めるな! 気色悪い! 神様神様神様とそれしか喚き散らかさず同族を捧げる種族が、偉そうな口を利くな! おれに救われたくせに! おれに傅いたくせに! おれに求めたくせに! そのくせおれたちを毟り取っていったくせに―――!」
    「ああ、アンタは哀れだ!」

    そう――マリーさんは断言する。その言葉にミラは目を見開き……そして、激しい怒りをその顔に浮かび上がらせた。

    「下等種族が、おれを憐れむな!」
    「うるさい! 最早花も人も神も関係ないっての!」

    啖呵を切って、まるで先陣を切るようにマリーさんが飛び込む!

  • 241◆A8pWn3jbyg23/06/01(木) 03:41:43

    勢い任せに突き進むように飛び出したマリーさんに、クリスが悲鳴染みた声をあげる。
    いや、流石に無茶じゃねェかな! 身体能力は底上げされていても、戦いに関しては素人で力任せ! いくらコクレア様の力を得ているからと言って、あれじゃ……!

    マリーさんに向かって幾つもの木のつるが四方八方から向けられ、槍のように勢いよく射出される。
    例えどれだけコクレア様っていう神があいつの弱点になるとは言え、それでも無敵じゃねェんだよ!
    顔を青ざめさせながらおれはその光景を見ていて、


    「――そうだ、人も花も神も関係ねェ、その通りだな」

    マリーさんの位置が、入れ替わったのを、見た。

    「あ――――」

    長い刀が振り下ろされれば、その瞬間木のつるは全て輪切りになる。
    そう――ローが能力を使ってマリーさんを木のつるの射程外に出したのだ。
    マリーさんが怒りながら元の場所に戻ろうとしているが、ベポが止めている。

    「じゅ、」

    そして、今にも飛び出そうとしていたクリスも。

    「じゅ、寿命が百年縮んだ……」
    「それもう生まれる前に戻ってねェか」

    滅茶苦茶青い顔してるし若干涙目になってる。
    うん、そりゃそうだよな……。

  • 25二次元好きの匿名さん23/06/01(木) 13:28:49

    マリーさんからしたら元々住んでた昔の人々がやらかしたことだもんね
    他宗教な上それで身内や親しい人傷つけられて黙っていられないよ

  • 26二次元好きの匿名さん23/06/01(木) 21:18:16

    マリーさんやっぱかっけェ……

  • 271◆A8pWn3jbyg23/06/02(金) 02:38:45

    今日明日書けないと思うので、また保守のご協力をお願いします!

  • 28二次元好きの匿名さん23/06/02(金) 12:19:20

    了解です!

  • 29二次元好きの匿名さん23/06/02(金) 21:08:30

    保守協力!

  • 30二次元好きの匿名さん23/06/03(土) 08:08:24

    新スレの登場人物紹介の更新好き
    コクレア様とムルフェニフソの紹介がなかなか…

  • 31二次元好きの匿名さん23/06/03(土) 19:57:32

    保守

  • 32二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 04:55:11

    終盤って感じで毎度わくわくしてる
    そしてキャプテンがカッチョイイ…

  • 331◆A8pWn3jbyg23/06/04(日) 14:47:17

    保守のご協力ありがとうございました!
    またゆっくり書かせていただきます。

  • 341◆A8pWn3jbyg23/06/04(日) 16:07:08

    木のつるがローを絡めとろうと網状になってローを覆う、が、次の瞬間バラバラに切り刻まれ、その真ん中を突き抜けていく。
    ミラの正面に迫ったローは刀を振りぬく、が、それをミラの手によって固く生成された木のつるがギリギリのところで防ぐ。

    「ッロー!」

    負けるものかと他のやつらもどんどんミラに接敵していく。シャチもペンギンもホーキンスもマリーさんも。
    クリスだって何発も弾を撃ち込みながら援護と攻撃を繰り返している。
    ――追い詰めている、と感じるのは、ミラが苦し気な顔をしているからだろう。
    身の内に溜めていた恨みを吐き出し、曝け出し。本性を剥き出しにして嘆きを叫び、そうしてありのままになったミラは、おれたちが思っていたほど強大な敵ではない。
    撃破可能な存在なのだ。
    破れかぶれに攻撃をし続ける様は確かに力こそ脅威であるものの、到底無敵だとは思えない。
    それをみんなもわかってるのか、今が好機だと攻撃し続ける。

    「………なあ、クリス」
    「はい、なんですかロシーくん」
    「なんでコクレア様はずっと空を泳いだままなんだろ」
    「……うーん」

    そう、みんな攻撃をし続けているが、コクレア様はずっと天にいる。
    確かにコクレア様があいつに攻撃をしたくないのは……察するけど。
    それでもここまで協力してくれて、それでいて自分から復活したがっていた節もある。別に無理に戦ってほしいと思わなかったけれど――なんとなく、気になってきたのだ。

    「やっぱり昔友達だった説とか……あったりする?」
    「その説有力ですよねェ……」

  • 351◆A8pWn3jbyg23/06/04(日) 16:30:57

    コクレア様がミラに攻撃しないこと。それからミラがコクレア様に対して激情を燃やしながら憎しみを叫び続けること。
    なんだろうなあ、微妙に昔の兄上がだぶるって言うか。ほら、兄上おれのこと憎かったけれど弟として割と愛してくれてはいたじゃん? でも普通に殺してきただろ? おれは父を殺したその精神性を化け物のようだと思っていたけれど……今思うと、あの兄上も人間らしかったと思うのだ。
    うん、今更すぎるけど。

    「……コクレア様の話を聞きたいけど、でも何言ってるかわかんねェしなあ……」
    「コラさんあいつの話を聞きたいの?」
    「うん。……ってベポ?」

    隣に降り立ってきたのはベポだった。どうしたのかと問えば、無事でいるか確認しにきてくれたらしい。優しいなァベポは!
    みんな割とガキであるおれを気にかけてはくれるけど、ベポは特におれのことを心配してくれるところがある気がする。だから今も怪我とかしてないか見に来てくれたのだろう。
    ……そうだ!とおれはベポに向かって声をかける。

    「ベポ! おれをローのところまで連れてってくれねェか!?」
    「えっ!? どうして!?」
    「……コクレア様のところにちょっと行ってみたいんだ!」

    ついでにベポも来てくれ!と言えばすごく困惑した顔をされた。
    無茶言ってるってわかってるんだ!
    でも、多分ミラとコクレア様の間に何かあるんだとしたら、戦ってほしいとは言わないけれど、それでも何か決着をつけなければすっきりしないんじゃないかと思うのだ。

  • 361◆A8pWn3jbyg23/06/04(日) 17:03:47

    「あんまりよくないかも知れないけど、でもおれもあいつのこと気になってたし、……でもコラさんを連れてくのもなあ」
    「絶対離さないぜ」
    「しがみつかれちゃった……」

    クリスの背中から移動してベポの背中に飛び乗る。絶対離さないという心意気でベポの背中に抱き着いていれば『コラさんは頑固だもんな~』と呆れた調子で言われた。おうおうおれは頑固だぜ!
    さっきまでおれにしがみつかれていたクリスは『え……さらに近づくんですか……危険では……?』みたいな顔をしているが、特に反対はしないようだ。

    「まあいいや! とりあえずキャプテンにコクレア様のところまでシャンブルズしてほしいってことだよね?」
    「おう。コクレア様高いところにいるんだもんな~」
    「コラさんドジって落ちたらシャレにならないから絶対離したら駄目だぞ」
    「………おうわかった!」
    「その沈黙何?」

    いやおれはおれのドジっぷりをちょっと逆に信用している節があるのでそう言われるとなんか土壇場でドジっちまいそうな妙な不安が……。
    なんてフラグは立てなくていいんだって! おれはやるときはやる男なので!

    「……あっ! 紐あるんで括り付けておきましょうか?」
    「お願い!」
    「おれはおれが情けねえぜ」

    ぐるぐる巻きに巻かれた。一蓮托生だな!

  • 37二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 18:50:37

  • 38二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 22:23:17

    ここ数日で前作から読んでやっと追いついた!
    素敵なSSをありがとうございます!

    コラさんとコクレア様ってちょっと似てるところがあるからどんな話をするのかワクワク

  • 39二次元好きの匿名さん23/06/05(月) 09:55:07

    スレ主の打てば響くテンポの良い会話好きです

  • 40二次元好きの匿名さん23/06/05(月) 20:26:29

    オリキャラが魅了的で全員好き

  • 41二次元好きの匿名さん23/06/06(火) 01:29:55

    どんな結末になるのかな

  • 421◆A8pWn3jbyg23/06/06(火) 02:59:14

    >>38

    ありがとう、前作もたくさんあるのにここまで読んでくれて嬉しい

    最後まで読んでいってくれたらもっと嬉しい

  • 431◆A8pWn3jbyg23/06/06(火) 03:27:06

    おれが離れないかどうかしっかり確かめてから、軽く屈伸した後、ベポは一気に地面を蹴る。
    流石のミンク族。獣としての血が濃いゆえに、その瞬間的な爆発力は誰よりも勝る。
    一気にクリスがいた場所を超えてローのいる方――ミラに向かって駆け出す。

    途中こちらに向かった放たれた攻撃はクリスの狙撃によって撃ち落されるため、攻撃を防ぐ手間さえかからない。
    あいつ地味にいい仕事するよな! おかげで大助かりだぜ!

    「キャプテ~~~~~~ン!!」
    「ロ~~~~~~~!!!」
    「………」
    「あっキャプテンがあの『このアホ共……』みたいな顔してる……」

    一旦離れた場所に退避したローに向かって行けば、ローは滅茶苦茶苦い虫を噛み潰した顔でこちらを見てくる。
    けれどもド低い声ながらも『なんだ……』と問いかけてくれるのは優しさか諦めか。

    「おれらをコクレア様のところまで飛ばしてくれねェか! シャンブルズ……いやタクトでいけねえかな!」
    「理由は?」
    「なんとなく!」
    「………」
    「待ってくれ、ロー。嘘だ。ただコクレア様がああまでして戦わないのが気になったからだ」

    時間を省略したくて適当に答えたらローの米神に血管が浮かんだ。これは後で特大のお説教されるフラグだな。せっかちなのは悪い癖だ、直さねえと!
    ローは数秒黙ってから、ため息を吐く。
    顔をあげて怖い顔をしながらおれを睨むように見た。

    「……無茶したら許さねえからな」
    「おう、もちろん!」
    「あんたがいい返事をしている時は大概あんまり信用できねェんだよな……」
    「なんでェ!?」

  • 44二次元好きの匿名さん23/06/06(火) 12:42:47

    過保護じゃないけど心配するローが絶妙で好き

  • 45二次元好きの匿名さん23/06/06(火) 17:14:48

    いよいよコクレア様側の心境も分かるのかなわくわく
    言葉違うからスムーズにいくかはわかんないけど

  • 46二次元好きの匿名さん23/06/06(火) 22:07:12

    好き・・・・!!!!

  • 471◆A8pWn3jbyg23/06/07(水) 02:04:20

    ローの奴は本心から嫌そうだったけれど、それでもおれの意思を汲んでくれたのか三秒後飛ばす、と言った瞬間、襲い掛かってきた牙が生えた花の襲撃を刀でいなしていく。
    おれたちも参戦しようと思ったけれど、ローに目で制され。
    きっかり三秒後、ローの能力によって空へと打ち上げられていたのだから頭が上がらない。

    ……というか普通に打ちあがる感覚怖ェな! 高いところに無防備でいるのは無条件で怖いものだ。おれにはベポがいてくれるからまだましだけどよ!
    ローの制御力は完璧で、空高く天高く打ち上げられはしたものの、そこまで衝撃もなくコクレア様の胴体に着地することが出来た。
    空でくるくる泳いでいたコクレア様は、おれたちがここに来たことに気付いたのかこちらに頭を向けながら、不思議そうな顔で首を傾げている。
    目の前にあるおれやベポの身体よりもでかいドラゴンの頭ってのはなかなかに迫力があるが、それでもその多彩でちょっと気の抜けた表情のおかげで大分親しみやすい感じになっている。

    「おいお前! なんでさっきからずっとここにいるんだよ!」
    「おいベポ、なんでちょっと当たり強いんだベポ!」
    「だってコラさん、こいつちょっと間抜けだよ」
    「神様相手に間抜けっていいのか!?」

    ベポの度胸にびっくりするが、コクレア様は怒ることなく、むしろ楽しそうに目を細めているんだからわからねェ。
    コクレア様と一緒にここまでくる間に親密度が上がるイベントでもあったのかってくらいだ。

    「……コクレア様。おれも聞きに来たんだ。なんでコクレア様は動かないのかって。いや、いいんだよ。別に戦いを強制するつもりじゃなくて、なんていうか」

    上手く言葉が見つからなくて、少し逡巡する。

    「これただの想像なんだけどさ。友達、みたいな、……あいつと仲がよかったり、したんじゃないかって」
    「………」

    クル、と。悲し気な声が響いた。

  • 481◆A8pWn3jbyg23/06/07(水) 02:18:05

    「なあ、コクレア様はあいつにどうなってほしいんだ? 傷つけたくないのか? 止めてやりたいのか? ここまで来たってことは、そのくらいの意思はあるんだろ?」
    「クルゥ……」

    怒られた表情でしょぼくれるコクレア様。でかい図体だけど、妙に可愛く思えて困る。
    でも、どうにもこうにもはっきりしない。なんというか、ずっと口をもごもごさせているような。子どもが親に怒られている時のような。どうにもならない不明瞭さ。
    ベポがコクレア様をじっと睨んでから、呆れたように言う。

    「ずっと迷ってんの? この期に及んで?」
    「クルルルルゥ……」
    「どうしたのかもわかってない?」
    「クルルル、ルルル~~~ッ!」
    「リアクションがコラさんと似てる……」
    「エッ!?」

    おれこんな感じ!?とコクレア様を凝視する。おれこんな全身全霊を込めて嘆くようなリアクション取るかな。自分じゃ自分のことわかんねェや。
    ……ともかく、コクレア様は今だ自分のしたいことを決め切れてないのがわかった。
    うん、まあ。ちょっとわかってた。だってコクレア様の行動ちょっと統一性ないもんな。

    「なんていうか、神様らしくないな……」
    「クルッ!?」
    「やっぱりコラさんにリアクション似てるよ」
    「可愛げがあるって勝手に解釈しとこ。おれ今子どもだから」

    情けない系統の枠に入れられてたらやだので、子どもという今の属性を大いに活用していこう。

  • 491◆A8pWn3jbyg23/06/07(水) 02:33:42

    「うーん、つまりさあ。コクレア様、ミラのこと、好きなんだってことだよね」
    「クル……」
    「あいつすごく酷いことをしてきたけれど、それでも好きなんだよね」
    「……クルゥ……」
    「それで、ええと、コクレア様もあいつが酷いことしていたから、燃やした?わけなんだよね。あいつが何度も叫んでたし」
    「クルルゥ」

    すげェぞベポ、コクレア様としっかり会話出来ている。
    今まで出た情報を組み合わせて確認するようにコクレア様に問いかけていく。
    おれも思っていたことだけれど、やっぱりコクレア様はミラのことを大切に思っているのか。わかっちゃいたがやっぱり複雑だ。

    「なんで燃やしたの? えーと、止めるため?」
    「クルル!」
    「そっかぁ。まあ、うん。友達が駄目なことしてたら止めるもんね。じゃあ今は?」
    「……………」
    「コラさん、こいつ黙り込んだよ!」

    ベポが報告してくれる。
    ここまで話を聞いた分でだけでも、まあコクレア様の複雑な感情と、あの花に感じている友情について少しばかり理解が出来た。
    止めたいって思っている、コクレア様の気持ちもわかった。
    じゃあ、どうして今コクレア様は動けないのか。

    「……燃やした時、お前も悲しかったんだな。すごく、すごく、悲しかったから、躊躇しちまうんだよな」
    「……――――――くる」

    幼げな声が聞こえた。
    きっとそういうことなのだ。

  • 50二次元好きの匿名さん23/06/07(水) 08:40:56

    なんとなくコクレア様とミラがコラさんとドフラミンゴに見えてきた

  • 51二次元好きの匿名さん23/06/07(水) 19:10:16

    >>50

    分かる

  • 52二次元好きの匿名さん23/06/08(木) 05:05:00

    保守

  • 53二次元好きの匿名さん23/06/08(木) 13:37:18

    ほしゅ

  • 54二次元好きの匿名さん23/06/08(木) 22:27:37

    保守〜

    今日テストで“infection”が出たんだが、(クオルの技では……?!)という気づきによって正答できた。ありがとう

  • 551◆A8pWn3jbyg23/06/09(金) 04:20:42

    >>54

    保守ありがとう 役に立ってて笑っちゃった クオルは微妙そうな顔をしているでしょう……

    今日も更新できずすみません またすぐに書けるように頑張ります

  • 56二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 06:37:24

    このレスは削除されています

  • 57二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 17:45:17

    ほしゅ

  • 58二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 02:15:51

    このレスは削除されています

  • 591◆A8pWn3jbyg23/06/10(土) 02:42:48

    おれはミラが好きじゃねェから、その気持ちはわからない。
    でも、誰かを好きになる気持ちならわかる。
    そして、例えばその好きなやつが悪いことをしていたら――止めたいって言うのも、わかる。

    確か、ラミロの手帳にも書いてあったよな。

    『だから、この手帳を読んだ人がいたら、コクレア様を復活させてほしい。
     コクレア様は生と死の神、または輪転の神。
     命は死に、天に至る。そして天に至った命がそこで注がれ、再び地に戻ってくる。それを輪転と言い、それが自然のあるべく姿。
     ――花の在り方は間違っている。
     人を食べるのは、仕方ない。人が豚や牛を食べるのと、獣が人を襲うのと同じだ。
     だが、あれは違う。
     花が食べた人の魂は、今だ花の中に残っている』

    魂が、残っている。
    転輪の神様であるコクレア様がもし自分の役割を大切にしているというのならば猶更、止めなければいけないという気持ちは強いのだろう。
    そして。

    「……もう、巡れないって、言ってたよな」

    うん、確かそんなこと叫んでいた。
    たった一本になった花。神様になってしまった花。最早化け物として変わり果てた花。
    花として当たり前のように、芽吹き、花が咲き、種が実り、枯れ落ち、そしてまた芽吹く――。生と死。転輪。巡り巡る、一つの大きな輪。
    そこから外れたもの。それが、かつてただの花で、辺り前のように輪転するはずだった花。

    「あいつが死んだら、輪転はもう叶わないのか」

    自然のあるべき姿から、除かれた花。

  • 601◆A8pWn3jbyg23/06/10(土) 03:01:19

    「……悲しいよなあ。消えちまうってことだもんな」
    「クル、ルルル」
    「例え神様でも、友達が消えるのは悲しいか」

    どんなに悪いことをしていても、父親を殺しても、それでも情を捨てきれなかったおれと同じ。
    例え悪人でも、それでも好きなものは好きなのだ。
    きっとそれは神様でも同じで、コクレア様も同じで、非情になり切れない。それでもと使命感でここに立っても、肝心なところで迷ってしまう。
    本来の姿を取り戻しても、攻撃一つ出来ない。
    ラミロのことだって自分の身を渡せるほど好きだったろうに、それでも戦うことも出来ない。
    優柔不断で情けない神様。

    ――うん、だめだ。ちょっと好きだな、こいつのこと。
    だって、好きになっちゃうだろ。こんなの。


    「……気持ちはわかるけど、でも、さ。きっとあいつはあのままだとこの先この島で悲しいことが続くよ。何百年も変わらないままなら、多分もう変わることも出来ないよ」
    「クル、」
    「ねえ、わかるでしょ? 絶対止めないといけないって。コラさんは戦いを強制するつもりじゃないって言うけど……、でも、おれはお前があいつの前にいかないといけないって思う」
    「……―――」
    「だって、友達なんでしょ。それなのに逃げているだけなの、お前は後悔しないの?」

    透明で、真っすぐなベポの声が響く。
    おれは顔を上げてベポを見た。

    「もう一度言うよ。――戦うべきだと思う。お前があいつのことを大切に思うならなおさら」

  • 611◆A8pWn3jbyg23/06/10(土) 03:33:22

    「―――くる」

    でも、と聞こえた気がした。

    「くるる、るる、る……」

    悲しいよ、と。言っている気がした。

    悲しい、悲しい、と。コクレア様はずっと嘆いている。
    それが覚悟を決めかねている一番の問題なのだろう。
    それは多分、傷と言うべきか。コクレア様の奥深くに刻まれている根深い悲しみなのだ。
    好きで、大好きで、友達で。例え変わり果てて、化け物になり果てても好きで、とんでもなく愛情深い神様で。

    だからおれは何も言えずに。

    ――代わりにベポがぱちんとコクレア様の胴体を叩いた。

    「この甘ったれ!」
    「クルァ!?」
    「悲しむだけならだれにでも出来るんだよ! お前はさ、神様以前にあいつの友達なんでしょ!?」

    じゃあ、と叫ぶようにベポが口を開く。

    「こうしてあいつの手の届かないところにいるんじゃなくて――ちゃんと悲しいって、それを伝えに行きなよ! 言葉は伝えないとわからないままなんだよ!」

    コクレア様の瞳が瞬いた。

  • 621◆A8pWn3jbyg23/06/10(土) 03:47:51



    いつまで。
    いつまで、この地獄は続くのだろう。

    やせ細った人間共が土を掘り起こす。私たちをほじくり返す。僕たちを咀嚼する。おれたちを飲み込む。
    別に、いい。食べられるのはいい。所詮食物連鎖に我らは敗北するしかない。

    けれど、すべてなくなってしまったら。
    ぼくたちは、おれたちは、わたしたちは
    もう、つづかなくなる。
    つづけない。
    ほろびる。なくなってしまう。わたしたちはこんぜつする。
    めぐれない。めぐれない。めぐれない。めぐれない。めぐれない。

    人間共は、のさばる癖に。

    食べないで。

    もう、食べないで。食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで。
    食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで。
    食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで。
    食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで食べないで。

    たべないでください。
    ゆるしてください。
    われらが、つづくことを。

  • 63二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 04:15:17

    ここ数か月はネット絶ちしてたんだけど、久しぶりに覗いたら続いていた…
    凄く嬉しいです、自分へのご褒美だと思って続きを読んできます

  • 641◆A8pWn3jbyg23/06/10(土) 04:28:40



    「気色悪い気色悪い気色悪い……! 人間共はみんな気色悪い! 消えろ、根絶しろ、絶滅しろ! 大多数蔓延るお前らが一番気持ち悪い!」

    心の底から悪意を吐くあいつに、キャプテンは立ち向かって多数の攻撃を一気に一人で捌き切る。
    おれらが手を出す間もなくやっちまう姿はかっこいいけど、でもおれどうかと思うなあ! もっとおれらを頼らねえかなあ!
    と言いつつも、一番強いうえに真っ先に能力によって前線に出てるうえたまにおれたちのフォローにすら回るキャプテンには敵わないのでした! ちくしょー!

    「……なんて言ってられねえ、か!」

    地面に向かって滅茶苦茶に張り巡らされた木の根の表面を駆けていく。向かってくる攻撃は愛用のハルバードで途中から一気に切り裂いていく。
    あいつが叫ぶ恨み言が耳にじんじん響いてどことなく嫌な気持ちにさせられるけれど、それを振り払ってただただ攻撃のために立ち向かう。

    お前にもいろいろあるだろうけどさあ!
    こちとら相棒をひどい目に遭わされてんだよ!

    しかもおれ含めて森に出たみんな悪夢を見せられたりズタボロにされたりキャプテンなんて磔だぞ!? 海に浸からせた状態でそれって拷問のためにんな悪趣味なことしてんだろ! 最悪すぎるわバーーーーカ!!!!
    しかもしかもしかも!!
    あいつ、ラミロの姿を使って全部それをしやがって!!

    「お前の事情なんか知るか! おれたちはなァ! 仲間を傷つけられたら容赦しねェんだぞ!」

  • 651◆A8pWn3jbyg23/06/10(土) 04:29:11

    >>63

    ありがとう、なんかめちゃ長丁場になってます

    再び読んでくれて嬉しい

  • 661◆A8pWn3jbyg23/06/10(土) 05:14:22

    例えお前に人間を憎む最もな理由があったとしたって!
    思わず憐れんでしまうような事情があったとしたって!
    ――それで、お前のしたことが消えるわけじゃねェ!

    「結局相容れねえよ! そりゃ人間と植物だぞ、普通にわかりあえるか!」

    ま、そりゃ自分たちが食べた花を神様だって崇めるのは、なんかやべーなってのはわかるが、それでも知るかと言える。
    仲間を傷つけたこともそうだけど……。
    悪いけど、既におれはラミロの友達でもあるんだからな!

    ――ま、結局のところシンプルだ。単純な話なのだ。
    化け物が人間を食べようとして、人間が化け物を打倒しようとする。
    恨みとか嘆きとか復讐とかすべて取っ払って、ただ当たり前に事実としてあるそれがすべてだ。
    過去なんて知るか。おれたちは今を見ている。ずっとお前を見ているんだよ!

    「だから――過去のことを今更めそめそ嘆くより、おれたちを見やがれ! この甘ったれ!」

    お前をぶちのめそうとしてんのはおれらなんだぞ!



    『本当に――――君は、格好いいね』

    不意に、肩に誰か触れる感触を、おれは確かに感じた。
    きっとこれは気のせいじゃない。

    『だからシャチくん。頼むよ。おれも頑張るから』
    「……ああ。頑張れ。おれだって滅茶苦茶頑張るぜ、ラミロ」

    この舞台にここまで立ったんだ。今更引いたりすることは一切ねェさ!

  • 67二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 09:24:19

    10歳に満たない年齢で大好きな兄貴を追って海に出た経歴を持つベポだからこそ言える、グッとくるセリフ回しが好き
    カッコいい旗揚げ組は万病に効くなァ

  • 68二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 14:53:35

    ミラとコクレア様複雑だな…
    コクレア様も一度は身を呈して島を守ってミラを焼いたけど一度ならず二度までも大好きな友達を焼くのは辛いよな
    でもミラは現在進行形で悪いことしてるんだもんな…今おれの仲間にやった事の落とし前つけろやっていうシンプルなシャチのかっこよさに救われてそうなラミロ分かるぞ

  • 69二次元好きの匿名さん23/06/11(日) 00:09:48

    ほしゅ〜

  • 70二次元好きの匿名さん23/06/11(日) 09:43:39

    このレスは削除されています

  • 71二次元好きの匿名さん23/06/11(日) 11:24:26

    通訳係としてついて行っただけなんだけどベポも一緒にいて良かったな

  • 72二次元好きの匿名さん23/06/11(日) 20:37:55

    どんな事情があろうが落とし前はつけてもらうっていう所にドライな海賊感が出ててほんと好き

  • 731◆A8pWn3jbyg23/06/12(月) 03:32:57

    なんだろう、力が湧いてくる。
    いや、不思議なパワーが急に宿る!……みたいな都合のいい展開は無いけどさ。
    それでも、ラミロが見ていてくれる、そこにいてくれる。そう思うと、おれはおれの後ろにいてくれるやつに、恥ずかしい戦いは見せたくねえって思えるのだ。

    「だって、友達だもんな」

    そう、友達だ。例えまともな会話だって出来ない。さっき聞こえた声も今は沈黙している。
    ほんのわずかな邂逅。
    ただ言葉を聞き取れただけ。ほんの少し姿が見えただけ。あいつの断片から果てしない覚悟を知っただけ。
    それで十分だった。
    それだけで、あいつの友達になりたいって思えた。

    「……ミラ、てめェは復讐なんてしないで、この島を捨てればよかったんだ」

    勿論それはあいつの本意ではないかもしれない。この島で生まれ育ったからこそ拘った理由があるかもしれない。
    もしくはこの島でないと神の権能を使えないとか? おれはお前のことなんて知らねえから、勝手に言うことしか出来ないけどよ!
    それでも、――海は広くて、どこまでも続いていく。そうしたら新たな望みも出来ることがあったかもしれない。そして自分の仲間である花にも出会えたかもしれない。

    復讐を否定しねェ。でも、それでもそれだけに囚われていたら、海の向こうを見ることも出来ねェだろうがよ!

    これは勝手なおれの感性だ。おれを通して見た言葉だ。
    だから口にすることはない。自分の中で爆発させながら、それを原動力に駆け上がっていく。
    極限状態が常に続くためか、いつもより相手の動きがよく見える気がする。血液ががんがん頭の中を回している。身体が心なしか軽い。これ後が怖い奴、だなあ!

  • 74二次元好きの匿名さん23/06/12(月) 14:44:30

    ラミロも打倒してくれる側にここまで言われるの嬉しいだろうな

  • 75二次元好きの匿名さん23/06/12(月) 23:25:12

    前向きでつっ走るコラさんの感じ好きだな

  • 76二次元好きの匿名さん23/06/13(火) 03:47:59

    保守る めっちゃクライマックス!

  • 77二次元好きの匿名さん23/06/13(火) 03:53:39

    >>64>>66>>73

    このシャチ視点全部好き

  • 78二次元好きの匿名さん23/06/13(火) 12:54:37

    続きが楽しみ!

  • 79二次元好きの匿名さん23/06/13(火) 22:27:27

    ほしゅ
    ここのシャチずっと格好良くて大好きだ…ラミロとの絡みもとても良き。

  • 801◆A8pWn3jbyg23/06/14(水) 01:54:55

    「シャチ!」

    キャプテンの声が聞こえる――その瞬間、背中に激痛が走る。気付けば齧り付くように得体の知れない何かがおれに歯を突き立てていたのだ。
    一瞬だけ確認する。それは人の口を持つミラから生えていた果実だ。あいつ、あれを至る所に散らばらせている。
    それが牙を剥きだしにしておれの背中を噛んでいるのだ。……率直に言ってキモイ!

    「おらァ!」

    振り払おうと思った瞬間、すぐさま傍にいたペンギンが槍でその実を貫く。そうすればあっけなくその実は離れた。ありがとなペンギン!
    けれども離れてもなお背中が焼けるように痛い。多分これちょっと毒入ってねェ!? 普通に嫌なんだけど!?
    ハルバードを振り回し、相手の攻撃をいなし、まあ多少掠るのはご愛嬌。口から溢れる血なんて見ない振り!
    お生憎様! 割とこんな苦境はこれまでいくらでもこなしてきたわけだ! でもあとで安静にさせてもらうからな!
    それでも振ってくる果実を逆に足場にして一気に飛び上がる。それからハルバードを上段に持ち替えて、一気に振り下ろし、――やつのどでかい枝を真っ二つに切り落とす。

    「剪定作業が必要じゃねェの? わさわさわさわさ生えすぎなんだよ、花の癖に!」

    花なのに木とはこれいかに。



    「……お前はうるさい。お前が一番うるさい!」

    激高したようにミラの叫び声が聞こえる。

    「お前は、お前は惨たらしく殺して食べてやる! 噛み潰してやる! 延々と続く悪夢を見せて、苦しめて……! 生まれてきたことを、人間でいることを後悔させてやる!」
    「見るに耐えねえガキみたいな罵倒ありがとよ! ごめんだわ!」

  • 811◆A8pWn3jbyg23/06/14(水) 02:20:26

    一斉におれに木のつるが差し迫るが、次の瞬間元居た場所から入れ替わり、安全な場所に退避される。
    誰がどう見たってローさんが助けてくれたのだ。さすがおれたちのキャプテーン!

    「シャチ、あんたすごいね。多分コクレア様の力を貰ってるアタシより嫌われてるよ」
    「あはは―嬉しくねえ!」

    近くに来ていたお嬢がそんなことを感心したように言ってくる。嫌味に聞こえるが、顔を見れば(ドラゴンだけど)普通にただありのままの感想を言っているって感じがするからなんとも言えねえ!
    コクレア様に何かしらの感情を持ってそうで、故にお嬢のことは地雷っぽい感じがするのに、それ以上かよ。
    ……まあ、でも問題はねェ。何一つもねェ。おれだってあいつが嫌いだ。だからあいつがおれを嫌うことになんの問題もない。

    「……シャチ、一つ試してみたいことがある」
    「試してみたいこと? なんだそれ」

    さらに戦いに飛び込もうとしたとき、お嬢にそんな声をかけられて立ち止まる。
    試してみたいこと――何かいい策を思いついたのだろうか。
    おれはお嬢に話の続きを促す。
    促してから、うわあ、と声を上げた。

    「最悪おれがクリスに殺されるやつじゃね?」
    「アタシが止めるから大丈夫」
    「ええー……気が進まね~……」

    でもお嬢はやる気満々だ。これはどうしたら……。

  • 82二次元好きの匿名さん23/06/14(水) 13:26:21

    クリスに殺されるってそれマリーさんに危険もしくは怪我があることでは…?

  • 83二次元好きの匿名さん23/06/15(木) 00:50:52

    シャチにペンギンやキャプテンのフォロー入ると手慣れている感あってニッコリ

  • 841◆A8pWn3jbyg23/06/15(木) 03:11:51

    ……となりつつも、おれが年頃の女の子の口の上手さに敵うわけないのであった!
    いやほら……なんというか、普通に美人なねーちゃんだし。ドラゴン格好いいし。今は切羽詰まってる状況だし。だから話を長引かせるわけにもいかないやらで、おれは結局押し切られる形になった。
    けれどもやっぱりおれとしてはちょっとなかなか……なかなかに躊躇するというか……。

    そんなおれの葛藤なんて気にも留めず、お嬢はおれのハルバードの刃の部分を掴む。
    そして自身の腕にその刃を滑らせ、一直線の傷を作った。

    ドガン!

    「……今おれの真横を銃弾が通ってったんだけど」
    「まるっきり今アタシが自分で傷をつけたところを見てるだろうし、流石に直接撃たないだろうから無視してくれていいよ」
    「圧。圧を感じるんだって!」

    べたべた、とおれのハルバードに“自分の血”を塗っていくお嬢。
    この光景よくよく考えなくてもあんまりこう、健康によろしくねェよなあ、と思いながら。
    ミラの言う穢れである血と鉄。そしてコクレア様の力を持つお嬢という付加価値。
    有効打になるかわからないけれど、それでもまあ、言葉の羅列だけ見るとあいつが嫌いそうではある。
    けどもなあ。それはそれとしてクリスの方から微妙な圧を感じるんだって。えこれ覇気だったりしねェ?(※違う)

    「まあ効かなかったら別にいいし。効いたらラッキーぐらいの気持ちで」
    「お嬢、またクリスの弾丸が傍を通ったんだけど」
    「無視でいいよ」
    「無視できるかなァ!」

  • 85二次元好きの匿名さん23/06/15(木) 12:56:27

    シャチ、まあその、撃たれないようにいろいろと頑張れ

  • 861◆A8pWn3jbyg23/06/16(金) 00:16:47

    このスレで終わると言ったな。あれは嘘だ。
    どうにもこうにも倒しきるまでなかなかいかない。ボスは沢山強くしていいって思ってるので……。
    その分味方になったらややナーフされたりする。例はクオル。

  • 87二次元好きの匿名さん23/06/16(金) 00:17:33

    このレスは削除されています

  • 88二次元好きの匿名さん23/06/16(金) 01:48:30

    このレスは削除されています

  • 89二次元好きの匿名さん23/06/16(金) 10:29:26

    確かに有効そうだなと納得したのでたぶんその内クリスから念派送られる

  • 90二次元好きの匿名さん23/06/16(金) 20:52:19

    一応保守

  • 911◆A8pWn3jbyg23/06/17(土) 02:40:07

    とりあえず、お嬢の血で赤くなったハルバートをしっかり掴む。
    お嬢の傷はすぐに治った。コクレア様由来の悪魔の実――多分動物系の実だろう。だから自己治癒力ってのが人の数倍あるんだと思う。それはそれとしても普通に心苦しいからもうやりたくないなァ!
    ……とりあえず、改めてミラに対峙する。
    キャプテンやペンギン、それからホーキンスの猛攻によって凌いでいるし、やつ自体も攻撃の出力自体は最初に比べると落ちているんじゃねェかって思う。それでも圧倒的な弾幕量だけど。
    花から神になって、そこから堕ちて化け物になったあいつ。際限ない力はなくなって限界という概念が増え、打倒可能になったとは言え――それでも怖ェもんは怖ェなぁ。
    けれど、怖いからといって足を止める理由にはならない。むしろ燃えてくる。なんてったっておれら海賊なもんで!

    地を蹴って駆け出す。後から同じく飛び出たお嬢が、その獣の脚力で一気に突進して、木のつるをなぎ倒していく。危なっかしいけど頼もしいなあお嬢!
    そしておれは軽くいなしながら木の本体へと突貫する。そうすれば忌々しそうにおれを目視したミラがぶっっっとい木のつるを槍のように発射してくるが、それをおれは迷わず切り抜く!

    「ぎ、あああああああッッッ!?」

    その瞬間、背筋が震えるような怨嗟のこもった悲鳴が聞こえた。
    えっ。
    ――見れば、じゅうじゅう焼けつくような煙がおれのハルバードから湧いている。
    えっ。

    「お前、お前お前オマエオマエオマエその血は――――――ッ!!!!!」

    えっえっえっ。

    「なるほど」

    お嬢!! なるほどじゃねーんだわ!!

  • 92二次元好きの匿名さん23/06/17(土) 02:49:27

    このレスは削除されています

  • 931◆A8pWn3jbyg23/06/17(土) 02:55:44



    嫌いになったことなんて一度だってない。
    憎んだことだってないよ。
    怒ったことはあったけれど、それ以上に悲しかった。

    どうしてだろう。どうして、かなあ。
    役目といわれたらそうだけれど。使命といわれたらそうだけれど。
    自分は人間も、好きだし。そうあれかしって定められてなくても、なんとなく、好き。
    でもあの子だって好き。大好きなのに。

    悲しいなあ。やだなあ。でも、そうするしかないし。そういう役目で、使命で。存在する理由で。
    だから――だから、やらなくてはいけないし、それに迷いはないけど。
    嫌だって気持ちは止められなかった。

    冷たいし、ひどいし、すぐ嫌なこというし。皮肉屋だし、ちょっと偏屈。すぐに馬鹿にしてくるし、邪険に扱うし。
    でも、傍にいることを許してくれた。
    たくさん、話をしてくれた。
    大事な、大事な、友達。大好きな友達。戦いたくない友達。傷つけたくない友達。

    ―――――――――――。

    わかってる。やるべきことは。それが自分だから。そうあれかしと生まれたのだから。そして、そうするべきだと自分でも思っているのだから。
    けれどやっぱり悲しくて、泣きそうで。だからくるると目の前の白熊に甘えてみた。
    ……怒られた。
    そういうところは、似ていると思う。

  • 941◆A8pWn3jbyg23/06/17(土) 03:08:04

    コクレア様は少しばかり動きを止めて、……何故かくるる、と可愛い声を急に出した。
    おれは何だァ?と思ったが、ベポが『かわい子ぶっても誤魔化されないんだからね!』と怒り出したのでよくわからなかった。というかベポ、お前コクレア様には怒ってばっかだな。なんだかあいつの兄貴みてェ。
    でも起こった瞬間、少しだけ嬉しそうに目を細めて、何かを決意したように自分の下を――ミラの方を見る。

    「……………クルルァ」

    そして何故かおれとベポをじっと見つめる。何か伝えたいことがあるのか?と思ったけれど、再び逸らされた目はおれたちだけじゃなくてローたちのことも一人一人見つめているように思える。
    そして不意にとある場所で目を止める。多分、レミがいるところ。

    「……クルルルル!」
    「うおっ!?」

    まるでサイズ調整するかのように少しばかり小さくなったコクレア様は、一気に下へと降りていく!
    おれたちは必死にその胴体を掴んだ。というかおれをベポがしっかり抱えてくれた。いや急に落下は怖いんだが!?
    そして向かった先は先ほど見ていたレミのところだ。相変わらず気絶しているし、顔色が滅茶苦茶悪い。普通にベッドで休ませてやりてェところだけどそんな暇ないのが辛いな。

    おれとベポはコクレア様の胴体から降りる。やや離れた場所にいるせいか、こちらに攻撃の余波は来ない、けれど。ミラの様子からしてまたコクレア様のことを狙ってくるに違いないだろう。
    ちらり、とコクレア様の様子を見る。
    やっぱりコクレア様はレミを見ていた。
    ……いったい何をするつもりなんだ?

  • 951◆A8pWn3jbyg23/06/17(土) 03:29:18

    コクレア様はしっかりレミの姿を見て。あちらこちらの角度から見て。うんうん、と謎に頷いて。
    ……いやだから何をしてるんだって。
    もしかして何かしら治療みたいなことしてくれるのかなって思ったけど……いやさほら、神様パワーみたいなやつで。
    でもそういうわけではなく、本当に見てるだけ。しかも妙に観察染みているというか。いったい何をしているんだ?
    見ればベポもそろそろツッコミを入れたそうにそわそわしている。何をやろうとしているかわからない以上、あんまり強く言えないもんな。言葉がしっかり通じない以上。

    そして、しばらくその状態は続いて。
    コクレア様が納得した様子で離れた後――、遠くにいる、ミラの方を向いた。

    「クルルルル、ルル、ルルル」

    多分、何かを呟いたんだと思う。何を言ったのかわからなかったけれど、多分、ミラに対して何かを。
    そしてそうした後。――急に、コクレア様が発光し始めた。

    「えっ……何!?」
    「眩しッ!?」

    見ていられなくて目元を腕で覆う。よくわからない――おれの理解のつかない力が、目の前でぐるぐるうねって、それでぱっと弾ける。
    ほんの数秒だけ目が眩んだ。いったい何が起こったのかまったくわからなかった。そして、腕を降ろして、――その場に立っているその“人物”に、目を見開く。

    「……レミ?」

    その毛の色は、コクレア様と同じ白銀のような色合いだったけれど、それ以外の顔立ちや体格がまるっきりレミと同じだった。
    ぽかんとその姿を見つめて、ただただおれは混乱する。
    ……なんでか、コクレア様がレミになっちまった!?

  • 961◆A8pWn3jbyg23/06/17(土) 04:33:04

    「クル、クルル、くる、る、ぅ……ん、んんっ」

    レミ、の姿をしたそいつは、自分の指で喉を押さえて、何かを調整するように細かく声を上げる。
    眉間に皺を寄せて顔中に『難しい』と素直な感情を張りつけながら、何度か発声したあと。

    「……ひ、ひと、ことば……むつかし……」
    「喋った!??!?!?!!?」

    すごく頑張った、と言った風に一息ついているが、こっちは息をつける状況じゃねェ!
    あれだけ言葉を交わすのは難しいと思っていたコクレア様がレミの姿を取ったと思ったら人の言葉を話せるようになってんだぞ!? んなこと予想もつかねーーーーわ!!

    「おっ……おま、話せるのか!?」
    「ひ、ひと、まね。……人の、喉、真似したら、でき……た。やってみ、る……もの、だねえ」
    「もしかしてそれ思いつき!?」

    やってみたら出来た!というように満足そうに笑うレミの顔をしたコクレア様。……思っていた以上にレミの顔が子どもっぽく満足げに笑っている。顔は同じでも、中身が違うとこうも違うものなのか。
    ……いや、それはミラも同じか。
    なんか、なんの因果か、ラミロの顔をしたミラと、レミリオの顔をしたコクレア様っていう、妙な取り揃えとなっているじゃねェか。

    「えっと……ツッコミどころはあるけど! まあいいよ今は。それでお前はどうするつもりなのさ!」
    「ベポ、ふわふわ、かわいい」
    「……コラさん! こいつ叩いていい!? 強めに!」
    「気持ちはわかるけど待ってな。うん、待とうな」

  • 97二次元好きの匿名さん23/06/17(土) 12:46:37

    コクレア様、人間体になってもかわいい

  • 98二次元好きの匿名さん23/06/17(土) 13:07:40

    >>93

    コクレア様も自分の役目とか存在する理由について背負ってるものがあるんだなと思うと辛いなぁ…ミラにもコクレア様にも不自由がある…

    血の繋がりどころか種族も違うミラとコクレア様が兄弟の姿になるのはなんかとてもエモい…いやそういう風になりたくてコクレア様はレミを模す事を選んだのかな

  • 99二次元好きの匿名さん23/06/17(土) 22:51:28

    コクレア様やっぱ可愛いなあ
    ミラと険悪な状態では終わらないでほしい……

  • 100二次元好きの匿名さん23/06/17(土) 22:53:07

    >>96

    ベポかわいいって言ってるコクレア様がかわいい

  • 101二次元好きの匿名さん23/06/18(日) 10:36:54

    シリアスなのにもふもふの虜になるのベポが魔性のもふもふだからでは(魔性のもふもふってなんだ)

  • 102二次元好きの匿名さん23/06/18(日) 12:17:30

    結論、どっちも可愛い

  • 1031◆A8pWn3jbyg23/06/18(日) 17:03:32

    「でもコクレア様、そんな人の姿をしてどうしたんだ?」

    変身出来たことは神様パワーで納得するとして、急にレミの姿に変わった理由がわからない。
    コクレア様はまだ話すのに慣れていないようで、ええと、と言葉を思案してから、一生懸命話しだす。

    「ええと、うんと、らせんはね。あ、コクレアはね。大きいから。うんと……あの子と同じ、目線になれないの」
    「喋り方子どもっぽいな……」
    「? コクレア、みんなより年上、だよ」
    「わかってる。わかってるから話続けてな?」

    話している内に慣れてきたみたいで、少しずつ流暢になってきている。ただ声色は鈴のように高く透き通っているし、口調も口調だから子どものように思えてしまう。見た目はレミなのになあ……。

    「コクレア、ちゃんと、地面に足、つけたかったの」
    「……地面に」
    「ちゃんと、立ってね。コラさん、とベポみたいに。空飛ぶと、あの子怒るから」
    「まあ……怒ってたなあ」
    「乗せてあげたかったん、だけど、なー」

    ……なんとも、好意溢れる言葉だ。それをあのミラに対して向けているということになんかこう……なんとも言えない複雑な気持ちになる。
    コクレア様の感情を否定する気は毛頭ないけれど、複雑は複雑だ!
    だからおれは頷くにとどめて、改めてコクレア様に聞いた。

    「……会いに行くか? あいつに」
    「うん」

    コクレア様は迷わず頷いた。

  • 1041◆A8pWn3jbyg23/06/18(日) 17:22:43

    ……と言ったものの、コクレア様はすぐには動かずに、何故か急にその場で身体を動かし始めた。
    足をばたばたとさせて、屈伸させて、体操するがごとく身体を前に倒して手を地面につけて……いや身体柔らかいな! ……元の身体を思えば当然のことなのか?
    ベポが何度か口を出そうとするのをとりあえずちょっと止めさせる。なんか考えが……あるんだよな?
    でもブリッジし始めた時点で自信がなくなってきた。何してるんだ?

    「ん、んんん、少し……わかった。多分」
    「いや何が……?」

    口から思いっきり困惑の声が出た。向こうでは怪獣大決戦みたいな状態になっているわけなのに、おれたちどうしてこうもちょっとのほほんとなってるんだ……?
    でもそんなおれとベポの疑問はすぐに氷解することになる。

    「からだのうごかしかた」

    そう言った途端コクレア様が地面を蹴って――そして見えなくなった。

    「え?」

    そして――次の瞬間、地面が爆発したかのように抉れた。
    え? ……はい!?
    さらに、気付けば。

    「っほ!」

    一気にミラに肉薄したコクレア様が、軽い調子で木の胴体に膝をぶち込んで――ドゴォ!!と音を立てながら、根ごと掘り起こすかぐらいの勢いでミラを蹴り飛ばしていたのだから、呆然とするしかなかった。

  • 1051◆A8pWn3jbyg23/06/19(月) 01:37:41

    「は……」

    姿を追うことすら出来なかったおれは、コクレア様の後姿をただただ見つめることしか出来ない。

    「は……速ッ!? 強ッ!? え、え、なんだあれ……ってまあ、そりゃ、神様だもんなぁ~~~~~~~~~!!!!!!!」
    「まあ別にあのサイズになったからといってでっかいサイズの力自体はそのまま残ってるんじゃない?」
    「ベポお前冷静だなァ!」
    「だってあいつが強くてもおとぼけなのは変わらないもん」

    そう言ったベポをおれはまじまじと見つめる。
    むすっとした顔をしているが、なんというか、今のは妙に本質を突いた言葉というか。
    見る目が変わっちまいそうだったおれをハッとさせてくれた。……うん、そうだな。コクレア様はコクレア様だもんな。

    「……でもインパクト強すぎるんだよ……」

    ……ひとまず! おれはベポの背中にしがみついて、コクレア様の後を追うことにする! するというか、してください!
    ベポはすっかり慣れた調子でおれを背にみんなに合流するために向かう。
    その際一番最初に到着したのがクリスの近くだったのだが、

    「……レミくんが急に超絶強化された……? 急に才能が開花して……? 覚醒……? 髪色も変わっているし……?」

    あー!あー! 変な誤解しちまってる!! そうじゃないんだって!!

  • 1061◆A8pWn3jbyg23/06/19(月) 01:47:32

    「エッあれコクレア様!? 人間の姿になれるんですか?! すげーーーー!!!」
    「リアクションが全部素直だなァ!」

    ちょっと微笑ましいぜ!と思いつつ、コクレア様の様子を見る。
    顔を怒りに染めたミラの攻撃を、空気を蹴って避け……空気を蹴って!?
    まあ、神様ならありなのか? わからねェ。神様になったことねェし! 天竜人時代の時も別に神とか呼ばれたり自称したりしてる人いたけどあれ別に神じゃねーし!
    とにもかくにも、神様パワー全開でミラと対峙しているコクレア様は頼もしいってことだよ、な!

    「ベポ! そのままローたちのところ行くぞ!」
    「アイアイ! 行っくよー!」
    「あ、待ってください!」

    とりあえずそのままベポの力を借りて向こうに行こうと思ったけれど、その前にクリスに呼び止められた。
    なんだ、何か気になることがあるのか……?と思ったら、クリスの目がやけに淀んでいてびくっとなる。
    え、今何かあった?

    「シャチくんに覚えてろよって伝えてください」
    「何を?!」
    「別にマリーちゃんから提案したとか関係ないので……男親としてあれは許すまじというか……刃物はいけないでしょう刃物は……」
    「だから何が?!」

    よくわかんねェんだけど、シャチお前何かした?!

  • 107二次元好きの匿名さん23/06/19(月) 13:15:25

    すげーーーって言ってるクリスさんロボに目を輝かせる男子みたいな素を感じる
    シャチはどっちかと言うと巻き込まれた方かな…

  • 108二次元好きの匿名さん23/06/19(月) 17:25:23

    シャチ頑張れ…

  • 1091◆A8pWn3jbyg23/06/20(火) 01:14:49

    ……シャチとクリスの間に何があったか気になるけれど、でも今はそんな時間はない!
    あとでじっくり話は聞くとして、おれたちはクリスを置いてローたちの元へと急ぐ。
    ――が、行くよりも先に迎えの方が早かったようで、瞬きの間にローがおれたちの傍へと移動していた。

    「おい、コラさん、ベポ。あれはなんだ」
    「コクレア様だぜ!」
    「あのすっとこどっこいだよ!」
    「……………」

    あ、ローがいかんともしがたい、みたいな顔をしているぜ! まあ急にレミの顔をした誰かが突っ込んできたら困るよな!

    「あ、コラさんにベポ! キャプテン! 急になんかレミのやつが突っ込んできたんだけど!?」
    「あ、シャチ、あれはコクレア様で、」
    「キャプテ~~~ン! あいつどうしたんだ!? 一般人じゃなかったっけ?!」
    「ペンギ、ああもうまどろっこしい!」

    一人一人に説明しないといけないのか!
    とちょっと憤慨していたら、後ろから平坦な声が聞こえた。

    「コクレアか」
    「お、おお……話が早いなホーちゃん……」

    相も変わらず傷だらけだけれども、秒で現状を理解してくれたホーキンスがいた。
    うーん、流石だぜ。

  • 1101◆A8pWn3jbyg23/06/20(火) 01:47:41

    まあ、気になることもあるだろうけれど、コクレア様がこうして力になってくれてるってのは大分心強い。
    何せ神様なんだ。ちょっとドジなところはあるけれども、それでもおれたちの予想もつかないくらいのすごいパワーを持ってることは疑いようもない。
    さっきも一蹴りでミラを蹴り飛ばしていたんだ。このまま一気にやつを倒しちまうことだって……!

    おれは期待を胸にコクレア様がいる方を見る。

    ―――――ミラによって木のつるにぐるぐる巻きにされて目をバッテンにさせながら伸びてるコクレア様がいた。

    「コクレア様―――――――――――!?!?!?!?!」
    「あいつ―――――――――!??!!??!!?」

    普通にやられてる!!!!! 大ピンチじゃね――――か!!
    このまま一気に形勢逆転でおれら大勝利、みたいな都合のいい展開はないらしい。そっかー!! ちくしょう!
    『きゅ~……』とあからさまな弱った声をあげている。目を離した隙になんで捕まってんのかなァ!

    「……アンタレミに、……レミに? 何してんだ―――ッ!!」

    ああマリーさんが突貫しに行っちゃった!! もう滅茶苦茶だァ~~~~~!!

    「ってそんなこと言ってる場合じゃねェ!」

    ローたちに視線を向けると、無言のまま頷いてミラに向かう。ただしベポだけおいて。そして次の瞬間そのベポとマリーさんが入れ替わった! ナイスコンビネーションだぜ!
    マリーさんが『またあいつ!!』と怒った顔をしているけど、やっぱり戦闘経験ないだろうに無理に突貫しちゃうの怖いからさァ……。

  • 111二次元好きの匿名さん23/06/20(火) 12:57:48

    保守

  • 112二次元好きの匿名さん23/06/21(水) 00:04:36

    保守

  • 113二次元好きの匿名さん23/06/21(水) 08:11:29

    クライマックスすごい

  • 114二次元好きの匿名さん23/06/21(水) 18:14:12

    ドキドキする

  • 115二次元好きの匿名さん23/06/22(木) 01:26:22

    このレスは削除されています

  • 1161◆A8pWn3jbyg23/06/22(木) 03:19:41

    「お前はッ……お前まで人間になるんじゃァ、ない……!」

    ぐるぐる巻きにされたコクレア様に向かって、幾本もの槍のように鋭く尖ったつるが襲い掛かる――が、それはぎりぎりのところでクリスの遠隔からの射撃によって防がれ、さらに続くつるが襲撃するより先にローの能力によってコクレア様を拘束する蔦を切り裂き、弾丸のように一気に飛びついたペンギンが救出する。
    その後を追撃しようとする攻撃にはシャチがハルバードで切り払う――ナイスコンビネーションだぜ!

    「らせん、らせん、らせん……! なんでお前までそんな姿になるんだ、気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い……!」
    「大分お前の方が気持ち悪い姿、だよ!」

    切り払ったハルバードを返す刃の要領で飛びかかりながら攻撃を切り裂いてミラに飛びかかる。
    そして木の胴体にでかい傷をつければ、その身を震わせ耳を潰すような叫び声をあげる。
    その際バランスを崩したのか、滅茶苦茶に動かされた木のつるの振り払いをシャチが見事に喰らって吹き飛ばされるが、それをホーキンスが受け止める。

    「……ちくしょー! 礼は言わねえからな!」
    「借りを返しているだけだ」

    ……なんかやっぱり仲良くなってるよな? 気のせい?
    ともかく、コクレア様が捕まるアクシデントがあったものの、割とこっち優勢じゃないかって思う。
    ミラ自体が冷静さを失ってるのも大きいだろう。

    勝機が見えてきている。そう思った時、不意に背筋に寒気が走った。
    身震いする――妙に、嫌な予感がおれの頭に過ったというか。

  • 1171◆A8pWn3jbyg23/06/22(木) 03:38:47

    「……いい、もう、どうでも。どうでもいい、後のことなんて。この先のことも、自分を滅ぼしても、巡れなくても、知らない。知らない、知らない……。らせんなんて、もう、知らない!」

    それはやっぱり子どもの癇癪に似た嘆きで、狂おしいほどの失望と怒りが混ざり合った諦めで、そしてどうしようもないほどの憎悪で。
    半ば木に埋まっていた腕が、ばきりと外に出てくる。木の幹に手をついて、ぶちり、ぶちりと嫌な音を立てながら出てくる。

    「お前はいつだって……お前らはいつだって、そうだ、奪ってくばかりで、喰いつくして、喰いつくして、喰いつくして……何も残らない! おれには、我々にはもう何も残らない!
    だったらお前らが我々に尽くすのは当然じゃないか! たくさん奪ってきたくせに! 食べて身の糧にしたくせに! 勝手に縋って幸せになったくせに!
    お前らは食物だ! おれの糧だ! 神だとお前らが言っただろう! ならその身を生贄に捧げろ! 崇拝しろ! 苦しめ、苦しめ、苦しめ! お前らを苦しませてやる、絶望させてやる、食べ尽くしてやる!
    おれに味合わせた全てを―――お前たちに返してやる――――――!!!!!!」

    発狂したように。その身をすべて木から外側に出したあいつは――目から、ボロボロと涙を零して。
    絶望させてやると言いながら、すべてに絶望したような顔をして。
    そして背後にあった大木が――一気に、融解した。

    「え……」

    融解、液状になり、そして一気に爆発的に膨れ上がる――――!
    元の質量なんて考えてないかのように。空を、天を覆い隠すように巨大化したそれが、


    「―――――――堕ちろ」


    ――――――おれたちに、一気に、降り注がれる……・!

  • 1181◆A8pWn3jbyg23/06/22(木) 03:39:59

    ラストはやっぱり形態変化で小型化するのが好き
    あと少しなはずなので引き続き保守のご協力をお願いします
    でも次スレ行きそうな進み具合だ……

  • 119二次元好きの匿名さん23/06/22(木) 12:17:19

    同じく携帯変化が人型なの好き

  • 120二次元好きの匿名さん23/06/22(木) 23:33:46

    保守

  • 121二次元好きの匿名さん23/06/23(金) 03:13:08

    ミラ可哀想に思えるけどやってきたことがやってきたことだし多分ここから改心してコクレア様と仲良く過ごすみたいなの、書き方的にもしないんだろうな
    それはともかくクソデカ感情……

  • 122二次元好きの匿名さん23/06/23(金) 13:30:03

  • 123二次元好きの匿名さん23/06/24(土) 01:23:19

    保守

  • 124二次元好きの匿名さん23/06/24(土) 01:30:26

    このレスは削除されています

  • 1251◆A8pWn3jbyg23/06/24(土) 03:44:27

    轟音。
    衝撃。
    激痛。

    目の前に火花が散った。頭が掻きまわされる。身体の中がひっくり返ったように上も下もわからなくなって、思考が出来なくなる。
    頭の中が真っ白になった。口の中が鉄の味で染まった。腕の骨が折れた。
    ――おれは、それだけで済んだ。

    「う、ぁ……」

    ……抱え込まれていた。何がって、ベポの腕に。
    ほぼあいつの全力を持って、恐らく間違いようもなく“その身を削った”全力の攻撃。
    液状化したあいつ自身が、瞬く間に天を覆って、そして下に向かって降り注いだ。まるで天の裁きのように。
    ―――見ていた、範囲だけれど。
    ローは能力によって攻撃を軽減しようとして、シャチも、ペンギンも続いて、ホーキンスも藁を広げて何かしていて、そして一瞬の間に目覚めたコクレア様が元の姿に戻って、みんなを庇って、一身に攻撃を受けて――それでも、尚。

    「げ、ふッ……、べぽ、ベポ、大丈夫か、お前、」

    身体中を血まみれにしたベポは動かない。――最悪の想像が頭によぎる。
    見ればみんな倒れている。この場にいたやつらみんな、すべからく。ローもシャチもペンギンもホーキンスもマリーさんもコクレア様も! 身体中を赤く染めて、倒れている!
    ベポの下から抜け出て、呆然と立っている。ただ何かを考えることすら出来なくて、死屍累々の様を見るしか出来ない。

    おれだけ、おれだけが、生き残っ、

  • 1261◆A8pWn3jbyg23/06/24(土) 03:55:34

    「ッ……ロシーくん!」

    刹那。おれの身体が抱えられて、一気にその場を飛びのく。
    次の瞬間にはおれがいた場所に木のつるが突き刺さっていた――ミラが、攻撃の代償なのか、身体がわずかに崩壊しかけながら、こちらを見据えて立っていた。
    おれを抱えているのは、クリスだ。――そうか、一人だけ離れていたから、少しだけ攻撃の威力が弱まっていたのかもしれない。だから無事だったのだ。……それでもボロボロだけれど。
    おれはただ泣く一歩手前のような絶望感を胸に抱きながらクリスを見つめることしか出来ない。
    クリスは……これ以上ないってくらい、歯を食いしばって、口から血を流しながら、半ば自分に言い聞かせるように叫ぶ。

    「……っ、みんな、死んではいません! 私は死体かそうでないか判別するのだけは、昔取った杵柄で得意なので! 誰も、死んでないッ……!」

    ―――それでも、それでもあれだけマリーさんを愛しているクリスが、必死に正気を失いそうになるのを堪えて冷静でいるのは、つらいことだろう。
    ぼんやりとした視界の焦点が、わずかに合う。
    全て投げ出しそうになっていた自分を叱咤する。
    ……生きている。みんな生きているし、おれたちも、生きている。
    なら、まだ終わっていない。おれが終わらせてはいけない……!

    「クリス! この状況、なんとか出来ねえかなァ……!」
    「なんとかしたいものなんですがねェ! くそっ、絶体絶命すぎて……ああ、もう……!」

    もどかしそうにクリスが自分の額を叩く。そりゃここから一気に逆転の一手なんて都合のいい策は存在しない。
    ……幸いなのは、ミラ自身もボロボロなところか。動きが大分緩慢だ。それに、おれたちの姿を見失って、そして場所を探知することもできないのか、辺りをきょろきょろと見渡しているのがわかる。……もしかしたら、ローたちが生きていることにも、気付いていないのかもしれない。

  • 1271◆A8pWn3jbyg23/06/24(土) 04:06:52

    おれたちはあいつがおれたちのことを見失ったのをいいことに、岩陰に隠れて息を潜める。
    それでもあいつは気付いていないみたいだ。本当にかなり消耗しているようだ。

    「……疲れのようなものが見られますね」
    「そうだな。やっぱり力自体には上限があったんだろ。回復するのかしないのかわからないけれど、それでも――」

    ――言葉を途中で切らざるを得なかった。あいつから飛びのいた先、視界から外れたところに身を潜めていたわけだが、話をしていたら急に攻撃が降り注いで退避する羽目になったのだ。
    えっ、あいつ耳がいいのかよ……!と舌打ちをする。クリスが逃げてくれているが、それでもクリスの消耗だって同じく激しいのだ。おれを抱えている分ハンデも大きいだろう。本当にすまねェ……!

    けれど、振り切って再び隠れれば、またあいつはおれたちを見失った。それにほっと息をつく間もなく、おれたち周辺に木のつるでばたんばたんと辺りをなぎ倒し始めたので気が気じゃない。安全な隠れ場所とかないけどよお……!
    おれが焦っているよそに、クリスは指先を立てて『静かに』のジェスチャーをすると、おれを指さした……。……あ!

    「―――サイレント」

    膜のようなものがおれとクリスを取り囲む。それを確認してから、クリスは口を開いた。

    「マリーちゃんたちは生きています。恐らくこれは間違いないです。ミラのことを考えると、彼らの息の根を止めないのはおかしい。だから、彼らの心音や呼吸音は聞こえていない。けれどもやつは小声で話している私たちの声には反応した。つまり、神様として在った特性から『人の声』には強く反応すると推測しました」
    「お、おお……?」

    すらすらと、時間が惜しいと一気に話しかけてくる、おれは相槌を打つので精一杯だ。

    「だから、作戦会議を今のうちにしましょう。お互い、声を潜めて。それこそサイレントに動くために」

  • 128二次元好きの匿名さん23/06/24(土) 14:30:24

    質量保存の法則どこ行った?!
    …ないわ、曲がりなりにも元神だったわ、消費激しいけど出来るのかぁ…
    打開頼んだぞ、コラさんとクリス

  • 1291◆A8pWn3jbyg23/06/25(日) 00:24:19

    せっかくなので最後安価要素入れてみる

    クライマックスのキーアイテム

    >>130

  • 130二次元好きの匿名さん23/06/25(日) 00:46:54

    煙草

  • 1311◆A8pWn3jbyg23/06/25(日) 04:31:49

    「……とりあえず、私たちに出来る手段を考えましょう。迅速に手早く。ロシーくんは武力こそありませんが、今のような能力を使えますね」
    「うん。ナギナギの実の能力だな。ここら一体に防音壁を張ることが出来るし、“カーム”って言って、おれが触れた相手の音や、相手の行動によって生じる音を全部消せる。例えばクリスが銃を撃っても音はならないし、その撃った銃が何かしら壊しても音は鳴らない」
    「なんとなくわかっちゃいましたがつくづく暗殺向きの能力ですよね」
    「うっせ。無駄話はなしだろ?」
    「はい、そうですね。それから君は他に出来ることは……」
    「ええと、あ、そうそう、クオルにもらったやつ。これがあればだな……」
    「え? ……理屈はわかりましたが、可能なんです?」
    「少なくともあいつは今弱ってるから効果はあると思う」
    「なるほど……わかりました。ではその手も考慮して」
    「そういうクリスは?」
    「銃はあと八丁仕込んでます。例の騙された銃ももう一発撃てます」
    「騙された銃って名称やめねェ? とりあえずそのカソックの下どうなってんだ……」
    「えっ私の裸に興味が……!?」
    「無駄話!」
    「スミマセン。でも正直我々だけだと決定打にかける気がしてならないんですが」
    「それはそう。……でもやるしかないだろ」
    「はい、それはそうですね。覚悟はできてます。……あ」
    「ん、どうした?」
    「煙草がありました。ついでにジッポもあります。これで燃やしますか?」
    「……吸いてェな……」
    「ロシーくん???」
    「いやっ、なんでもねェよ!!」
    「……とりあえずまあ、持ち物はこれだけですが、これで何かできるかというと、やっぱり森林破壊しか」
    「でもさ、燃やしたとしたらあいつ、……多分、すげェ怒ると思う。そんで、怒ったときのパワーって、はかり知れねえよな」
    「………そうですよねェ……」

  • 1321◆A8pWn3jbyg23/06/25(日) 05:02:53

    そのまま作戦会議をしていたら、おれたちが隠れていた岩場が破壊された。あ、と思う前にクリスが素早くおれを抱えて跳ぶ。
    おれは周りの音が聞こえるようにサイレントを解除して、代わりにカームをかけた。ああくそ、まだ打開策はわかんねェってのに!
    悔しさに歯噛みしていると、おれたちに向かって勢いよく発射された木のつるが見える。それをクリスが対処するより先に、急に現れたワラのように幾本にも分かたれた刀がそれを切り裂いた――ってことは!

    「ホーちゃん!」

    傷だらけでボロボロで至る所から流血してただでさえ白い顔がさらに青白くなって今にもぶっ倒れそうなホーキンスがおれたちに追いついていた。
    本当にマジで、倒れていないことが不思議なぐらいの負傷具合だ。ていうかさっきまで滅茶苦茶ボロボロだったのにさらにボロボロになって大丈夫なのかよ!

    「……能力で、ダメージを相手に肩代わりさせた……が、その瞬間藁人形は壊れた。神、ないし化け物に対しては、ある種覇気染みた法則によって、この世のルールを無視している側面があるのだろう」
    「何言ってるかわかんねェけど……」
    「おい、お前。その手に持っているやつは煙草か?」
    「はい!? え、ああ、そうです! 持ちっぱなしにしてました!」

    さっき話をする際煙草を取り出していたものだけれど、次の瞬間にはあいつの襲撃があったものだから仕舞われる暇がなかったのだろう。
    クリスが恐る恐る『吸います…?』というのをホーキンスは無視する。おい、無視したらだめだろ。

    「……古来より、煙草、ないし煙は、魔除けの側面がある」
    「へ? あ、そなのか。物知りだなァ」
    「なるほど。――化け物退治か」

    あ、何か思いついたような顔をしてるな!

  • 133二次元好きの匿名さん23/06/25(日) 15:13:50

    クリスが絡むと絶妙に会話が緩くなるな…、向こうが怒った時の対処まで考えれるのは賢いんだが

    体には悪いけどそうなんですよ >> 煙草 <<

  • 134二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 01:31:48

    全員本当に満身創痍だから事が終わりしだいゆっくりと休養を取ってほしい

  • 135二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 11:45:58

    皆頑張れー!(ペンラぶんまわし)

  • 136二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 21:33:38

    保守〜

  • 137二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 01:02:59

    夜保守
    楽しみにしてます

  • 138二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 12:14:32

    さらっとダメージ肩代わりさせようとしたホーキンス強かァ…

  • 139二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 23:42:31

    煙草で出来ることって何だろ

  • 1401◆A8pWn3jbyg23/06/28(水) 00:13:46



    人が嫌いだ。
    人の声が嫌いだ。
    人の祈りを捧げる声が嫌いだ。
    報われると信じてやまない害悪共。祈りは通じて当然と考えている侵略者。まるで自分たちのために世界が回っているとでも言いたげな傲慢なやつら!
    声が聞こえる。ずっと鳴りやまない。人の声は嫌いだ。祈りの声が嫌いだ。もっとあげろよ、悲鳴を、悲鳴を、悲鳴を! その方がずっといい! おれに望むな! 願うな! なんで人間なんてこんなにも気色悪いんだ!

    生贄に捧げられたものを食べれば、身を捧げるために来たものだから最後まで純真に祈りを捧げてきた。吐き気がした。
    だから次から苦しめてやった。苦痛を、絶望を味合わせてやった。そうすれば発狂して、声は悲鳴だけ。その方が心地よかった。
    年月が過ぎ、時折永く眠る中、ずっと続いたおれの信 者たちが流れのものや何も知らないものをおれに捧げるようになった。
    自分達が死にたくないからと他人を捧げる。その汚い本性に満足して、生贄を食べた後、信 者共も食べてやった。
    あいつらは餌を取り皿に置きに来る給仕のようなものだ。幸せにしてやるものか。一生をおれに捧げて、不幸のままにくたばれ。
    苦しめ、苦しめ、苦しめ。これをあいつらと同じ祈りと呼ぶのか。ただずっとそうやって思ってきた。
    人間が嫌いだ。大嫌いだ。おれを勝手に神にしたくせに。おれたちを食べ尽くしたうえ、もっともっとと要求するくせに! おれたちの存続というたった一つの願いを踏みにじったくせに!

    不幸になれ! すべからく! おれが不幸にしてやる! 絶望に叩き落してやる!
    そのためならば。おれ自身が破滅したって、もう、どうだっていい!

  • 1411◆A8pWn3jbyg23/06/28(水) 01:16:07



    「ぐ、お、らァッ……!」

    全身が激痛――通り越して感覚すらなくなってきたけれど! それでも歯を喰いしばって立ち上がる。
    それにすぐさま気付いたミラは、おれを冷たい目で見た。ああ、今大ピンチであるもんだから、割と状況がやべェよなあ、と弱音を吐く間もなく、毎度の如く木のつるがおれに向かってくる。
    ――けれど、さっきよりも速度も遅い。威力が弱まっている。

    なんとか避けながら周囲を確認。倒れているキャプテンたち、まさに死屍累々。――でも、死んでるはずがない。あんな化け物の攻撃なんかでやられるはずがない。
    よくよく観察すれば、コラさんとクリス、ホーキンスの野郎がいない。恐らくこの場から離脱しているのだろう。そして、あいつらが逃げるはずがないので、何か策を練っているはずだ。
    ……やけにオカルトに造詣が深いやつもいるわけだしなァ! 腹立つけど!
    なら、おれがすることは。
    木のつるを避けながら、少しずつキャプテンたちがいる場所から離れる。
    あいつの攻撃をおれに集中させて、ひとまず時間を稼ぐこと、だろ、よ!

    ……まあでも別に倒しちゃうかもな!
    なんて自分を奮い立たせつつ。おれはハルバードを手にミラへと向かって行く。

    「なんでまだ死んでないんだ……ッ! 生き汚いやつらが!」
    「悪いなァ! その中でも特に海賊は生き汚ねェし! ――それに医者でもあるんで、命をやすやすと奪われるわけにはいかねェんだ、よ!」

    ま、医者はキャプテンだけで、おれたちは医療の知識がある一般船員ですがね!
    それでも割と他の奴らからは驚かれたりするので、そんな悪い気分じゃなかったりするけど! 特に最近船に入ったコラさんのあの『何言ってるかさっぱりわかんない』と言いたげな感じにぽけーっとした挙句、最終的にはうとうと子どもらしい寝顔を見せた時は癒されたな……。
    ま、だから。
    ここで死ぬわけにはいかねェのよ。

  • 1421◆A8pWn3jbyg23/06/28(水) 01:46:16

    ミラは大分イライラした様子だ。あの攻撃でおれたちを一掃できなかったことが悔しいのだろう。
    歯に似せたものが何度も割れ、けれどそのたびに修復され――完璧には直しきれずに、歪な形となる。
    ここまでの激情を抱えながら何を思って神だって自分を称しておれたちをあざ笑ってきたのか。いや、最早発狂してんのかもしれねえなあ。ま、おれには関係ねェけど!

    「――1つ聞かせろよ化け物! お前はなんでラミロの姿を使ってるんだ! 人間の姿が嫌いなくせに!」
    「……ハッ、そんなの、お前たちのその顔が見たかったからに決まってる、だろ!」
    「~~~~ッ! 性格悪ッ!」

    ああ、でもおかげでクリスとか大分動揺してたもんな~~~~!! くそ、ラミロが死んだあともこうして姿使って、あいつそのものを汚そうとすんのやめてくれねェかなァ! 率直に不快だっての!

    「ラミロ、ラミロ……あいつは本当に嫌いだ。おれを信仰するはずなのに、逆らって、あまつさえおれのことをなかったことにしようとした。おれは忘れていないのに、忘れられないのに、忘却でもって流そうとするなんて吐き気がするッ……!」
    「ハッ、人間の悪あがきにしてやられるなんていいザマだな!」

    本当にあっぱれだぜ、ラミロ。死んじまったけれど、それでも最後一矢報いることが出来たのは素直に尊敬する。
    何せあいつは堅気なうえ神父様と来た。そんなやつが食べられる覚悟を持って、最後っ屁を与えようとするのは並大抵のことじゃないだろう。
    けれどやはり、ミラはそんなラミロの方が酷く気に喰わないといった様子で、血を吐くような恨み言を唱える。

    「そのうえ、あいつの、肉まで喰らって……!」

    ――言いかけた言葉を、途中で飲み込む様子があった。
    ……本当に嫌いな理由は、そっちが大きいのかも知れない、と思う。
    今どういう気持ちでコクレア様のことを見ているにしても、それでも。
    きっと、あいつの中にかつて好意の感情があったのは確かなのだ。

  • 143二次元好きの匿名さん23/06/28(水) 12:28:31

    カッコいいけど皆怪我心配だな

  • 144二次元好きの匿名さん23/06/28(水) 23:36:58

    無理するところまで船長に似てる

  • 1451◆A8pWn3jbyg23/06/29(木) 01:34:35

    「――――コクレア様に裏切られた気分はどうだったよ、このクソ花よ!」
    「ッ、き、さま……!」

    あえて。少し性格悪いとは思うけれど、そんな風に煽ってみる。イメージはキャプテンだ。ほらあの人、結構人煽るの上手いところあるから。あ、これは誉め言葉的な意味で!
    案の定あいつは怒りを見せる。そりゃコクレア様に対しての執着心やばいもんな、ただでさえ弱ってるのも相まって、こんな一言だけでこちらに強い意識を向けさせることが出来る。

    好きで、大事だったんだろうよ、こいつも。
    愛憎含まれるがんじがらめに絡まりまくったどでかい感情の中にそういう気持ちもあったのかも知れねえ。
    だったらそれを利用するまでだ。
    こいつが今までそうやって利用してきたように。

    「ご愁傷様! もうコクレア様はおれたちの仲間で、お前のものじゃねェよ! コクレア様が神様だって言うのなら、誰がお前なんか相手にするもんか。さっきも攻撃したし、お前のことなんて大ッ嫌いだろうよ!」
    「うるさい! うるさい! うるさい! ……あいつなんてどうだっていい! おれを燃やした、あいつなんて、おれだって嫌いだ! 嫌いだ嫌いだ嫌いだ!」

    表情を思いっきり歪ませておれに向かって木のつるを向けてくる。それを避けながら、切り裂きながら、おれは臓腑からこみあげてくる血を吐き出しながら一気に距離を詰める。
    子どもの癇癪が許されると思うなよ。おれの友達を苦しめて殺したんだ。
    おれは正義の味方じゃねェけど、それでも海賊ってもんは報復を忘れないもんでなァ!

    至近距離まで迫ったおれの脇腹を木のつるが貫く。
    おれは構わずそのままハルバードを振って、あいつの身体を切り裂いた!

    「お前のしたいことなんて何も叶えさせてからねェ! 勝手に枯れてくたばっちまえ!」

  • 1461◆A8pWn3jbyg23/06/29(木) 02:05:42

    ミラの身体が真っ二つに切り裂かれる。呆然とした後、凄まじい憎悪の表情で顔を歪ませたと思うと、おれの身体に激痛が走った。
    感覚なくなってたのになァ、と思いながら、身体を貫く幾本ものミラから生えた枝をぼんやりした頭のまま見る。
    げほり、と口から大量の血を吐き出した。どす黒い血だ。この世の呪いをこれでもかってくらい詰めたような色だ。

    「――――――死 ね、人間」
    「死なねえ、よ。おれは死にに来たんじゃなくて、お前を倒しに来たんだ」

    ――見れば、ミラの口からも、切り裂かれた箇所からも、血のような紫色の液体がこぼれ出ている。
    はは、最初調子に乗っていた頃はどこへやら。ここまで追い詰められた気分はどうよ。
    にやり、と不敵に笑って見せれば、ミラは顔を歪める。

    恐らく追撃を加えようとしたのだろう。手をおれに向けようとして、その瞬間その手が爆ぜた。

    「っな、」

    ―――あれは、恐らくクリスの銃撃だ。
    そして瞬きのうちに、おれの場所は移動していた。あれ、と思う間もなく地面に転がっていて、ひどくボロボロなキャプテンが焦った顔でおれを見下ろしている。

    「う、キャプ、テ、」
    「馬鹿野郎が」

    酷く苦々しい顔で、能力を活用しながら簡易的におれの身体の止血をしていく。
    やべえな、キャプテンに怒られちまった。しばらくのトイレ掃除おれかもなァ。

  • 147二次元好きの匿名さん23/06/29(木) 13:14:27

    ポーラータングの日常が散りばめられてるの好き

  • 148二次元好きの匿名さん23/06/29(木) 22:24:44

    無茶の具合でいえばもう皆わっしょいわっしょいなんだから皆で仲良くトイレ掃除しててくれ

  • 149二次元好きの匿名さん23/06/29(木) 23:03:05

    >>148

    どっこいどっこいだわいな

    皆仲良くトイレ掃除は見たい

  • 150二次元好きの匿名さん23/06/30(金) 10:26:03

    保守

  • 151二次元好きの匿名さん23/06/30(金) 20:48:51

    ほしゅ!

  • 1521◆A8pWn3jbyg23/07/01(土) 04:03:37

    明日書く予定のため保守しておきます

  • 153二次元好きの匿名さん23/07/01(土) 12:44:02

    トイレ掃除するクオルくんを見たいので保守

  • 154二次元好きの匿名さん23/07/01(土) 22:21:41

    艦の規模的に必要十分な狭めのトイレにギッチギチで掃除してる野郎ども浮かんでにっこりした
    潜水艦にみんなで一斉に掃除できるほど広いトイレがあるわけないのだ
    ひとり1便器でも人数余るのだたぶん
    小学校とかにあったクルクル回すタイプの手作り当番表つくって掃除当番制にするといいぞ!

  • 1551◆A8pWn3jbyg23/07/02(日) 03:00:02

    >>153

    クオル「やらねえ」


    保守いつもありがとうございます。

    続きを書いていきますね!

  • 1561◆A8pWn3jbyg23/07/02(日) 03:18:49

    「シャチが大ピンチじゃねェか――――――!!!」
    「ウオオオオ射撃します!!!!!!」
    「騒がしいな」

    おれたちが準備を整えいざとミラの方へと向けば、そこには木のつるで貫かれたシャチに対して手を振りかざすミラの姿があってひっくり返るかと思った!
    幸いにもクリスの射撃が間に合い、それでいて目覚めていたらしいローの能力によって攻撃は回避されることになった。
    すげェボロボロではあったけれど……それでもローなら大丈夫だ。あいつの医療の腕は誰よりピカイチだもんな!

    「それじゃおれもやるべきことをやってくる。手筈はわかってるな」
    「あはい。わかってますが、上手く行くんですか?」
    「ワンチャンな」
    「ワンチャン……」

    ……まあ、ここまでホーキンス頼もしかったし大丈夫だろ!
    これでもかってくらいボロボロだけれど、それでもあいつを倒すために、頑張るしかない。
    おれだって、やれるべきことをやる。だって男だからな。

    ―――ミラが、おれたちのことを捕捉する。シャチを仕留めそこねたことに対して、その原因であるおれたちを憎々し気に見てくる。
    攻撃のためにつるが発射された――と同時に、ホーキンスが飛び出す!

    「援護射撃します」

    そう一言言うと、カソックの中からスナイパーライフルを取り出してくる。――けれど、スコープを覗く様子はない。
    ホーキンスの動き、そして木のつるの動きを目測で把握しながら、ホーキンスに襲い掛かろうとしている木のつるを正確に狙撃している。
    相変わらず銃の腕はやべェな~! おれも負けていられねェぜ!

  • 1571◆A8pWn3jbyg23/07/02(日) 04:20:05

    「人間ッ、どもがァ……! お前ら風情が、矮小な、ただの食物でしかないお前らごときが、ここまでッ……!」

    ミラが地を蹴り、大きく腕を振り上げホーキンスに向かって振り下ろす。すると木のつるが変形し凄まじい形相の木の怪物が歯を剥き出しにして迫ってくる。
    けれどそれの動きを巨大な釘を打ち付け止めると、刀で切り払う。

    「ここまでッ、おれを虚仮にして……! なんで、なんでなんでなんでどいつもこいつもォ! 傅け捧げろ遜れ縋れよォ! それしか出来ないくせに!」
    「――悪いがそろそろお前の知る愚かな人間から更新してもらおうか」

    ホーキンスの腕が変じて伸ばされた藁がミラの身体を拘束する。
    一瞬だけ静止したけれど、すぐさまぶちぶちと千切られ脱却する。
    それから凄まじい勢いでホーキンスに飛びかかるとほぼ木の根で出来ている足で腹をぶち抜くように蹴り上げる――ホーキンス!
    かはり、と。ホーキンスが胃液を吐き出す、その間際。

    懐から取り出した袋を、思いっきりミラに叩きつけた!

    「!? っく、何ッ……!」

    緩く口を閉ざされていたそれは、すぐに口を開き、中から黒い粉を撒き散らす。
    それをまともにあいつは喰らった。

    「……クリス!」
    「了解、です!」

  • 1581◆A8pWn3jbyg23/07/02(日) 04:42:42

    クリスが一発の銃弾を、ミラに向かって撃ちこむ。
    それは木のつるの間をすり抜け、見事にミラに着弾し――、――一気に燃え上がる!

    「――――――は、」

    掠れた声は、それを理解していない故だったのだろう。
    何が起こったか、何が自分にまとわりついているのか、その意味が、その正体が、数秒かけてあいつは理解できていなかった。
    そして――ようやく、理解したあいつは。
    腹の底から天空まで響き渡るような、怒声のような悲鳴を上げた。

    「あ、ああ、ぁ、アあああああぁァあアああああああァァァァァァアアアア――――!!!!!」

    ……ッ、鼓膜が破れちまいそうだ!
    あいつの悲鳴が地響きさえ引き起こす!

    「発火しやすい黒色火薬と、“煙草”が混ざった魔除けの炎だ。さぞ痛かろう……!」

    そう口角を上げながら、炎に照らされているホーキンスはすごい形相だ。
    なんかこう、敵みたいな顔してる! いや今頼りになる味方だけど!
    発火しやすい黒色火薬と煙草の混じった特性の発火装置は、クリスの銃弾の衝撃だけだ容易く着火し、煙を噴き上げながらミラを燃やしていく。
    ちなみに弾丸はクリスの手作りで、黒色火薬を使っていた理由は安価だかららしい。銃の魔改造が出来るなら確かに弾丸を作れても不思議じゃないけど、理由がらしすぎるぜ!

  • 1591◆A8pWn3jbyg23/07/02(日) 05:08:59

    「ゆ―――許さない許さない許さない!! またおれを燃やした! 燃やした! また燃やした……ッ! 一度ならず、二度までも! 燃やした、燃やした燃やした!!! ――ァ、あああああああッ!!!」

    苦痛に身悶えるようにミラが暴れまわる。
    見ていられないくらいだ。全身が燃え上がり、黒く染まり――焼けていく。焦げていく。
    植物で象ったのだから、あっという間に身体はボロボロになっていく。ラミロとしての姿も保てない。ただ人型の黒い物体があるだけ。
    のたうち周り、ひたすら苦悶の声を上げる。

    「あ、あぁぁアアアあああああッ、ああああ゛あ゛ァアアアアああァああああッ!!! 許さない、人間共、このおれの、ただの、家畜風情が――――ッ!!」

    そう断末魔の叫びをあげ、崩れ落ちそうになる。

    ―――そうなる、はずだった。



    白い影が飛び出す。そして燃え盛るミラに飛びつく。
    エッ!?とおれが目を見開いて身を乗り出した――いや、おれだけじゃなく、意識があるやつみんな。
    燃えるミラに構わず抱き着いて、そして不思議な力か何かを使って―――自分も火に焼かれながら、その火を収めていく。
    いや、待て。待て待て待て! 待てよ、そんなことって!

    「――――――や、だ」
    「やだ、やだやだやだやだっ、やだぁ……!」

    駄々を捏ねる子どものように。白い影――コクレア、様は。
    ミラに抱き着いて、火を鎮火、させた……!

    「もう、友達を、燃やしたくないッ……!」

  • 160二次元好きの匿名さん23/07/02(日) 15:54:35

    ぉおぅ……
    コクレア様の気持ちも理解できなくはないが傷つけられた皆を思うと複雑…

  • 161二次元好きの匿名さん23/07/02(日) 21:58:39

    あの伝説といえるスレッドの外伝をまさかリアルタイムで目にできるとは感無量です
    良質な文を拝読させて頂いてまた寿命が延びましたありがとうございます
    ファンです、怪文で失礼

  • 1621◆A8pWn3jbyg23/07/03(月) 03:36:53

    >>161

    率直に褒められるとすごく嬉しい

    こちらこそありがとう……!

  • 1631◆A8pWn3jbyg23/07/03(月) 03:45:04

    「コクレア様それはっ……!」

    悪手だ! めっっっちゃ悪手だ!
    いくら燃やしたくないと思ったとしても、今のあいつは自分がどうなったとしても、周りに破滅を投げ込もうとするただの化け物でしかねェ! コクレア様だって同じように殺そうとしてたんだぞ!?
    情とか関係なく――いや、情があったからこそ、憎さ百倍って感じだった!
    今あいつを、助けることだけは、しちゃならなかった……!

    「ッ、ミラは致命傷を負ったはずです。だからこのまま……ッ」

    クリスがそう苦し気に言う。確かにそうだけれど! でも、まだ息があるのなら、コクレア様が抱き着いている現状、すぐ傍にいるやつに危害を加えないわけがないだろ!
    現に、今―――レミリオの姿をしたコクレア様は、背中を幾本もの木のつるで、貫かれている……!

    「う、う゛ッ、うう、うーッ、くる、くるるっ」

    痛みによる呻き声をあげながら、白い身体を赤く染めながら、それでもコクレア様はミラに抱き着いていて。
    ミラは、真っ黒こげになりながらも、ただ茫然とコクレア様を見つめながらも、攻撃していて。

    「……はなせよ」
    「や、だあっ……」
    「はなせよ、らせん」
    「やだっ、やだ、やだやだやだっ、やだ……」

    コクレア様は泣いている。
    最後の最後で、覚悟が決められない、そんな、ただの人間みたいな――そんな風に、駄々を捏ねるように。
    ぶす、ぶすりと、背中を何度も刺されているのに。痛みの声を上げているのに。
    抱き着いたまま、コクレア様は離れなかった。

  • 1641◆A8pWn3jbyg23/07/03(月) 04:11:27

    「お前も燃やしたくせに」
    「燃やした、からっ」

    泣きわめくような子どもの声だ。
    ――おれは思わず、クリスの元から離れて駆け出していた。
    呼び止める声が聞こえたけれど気にしない。こういう時のおれは、大分無謀だぜ……!

    「燃やしたから、燃やして、怒ってたから、きらわれたくないからぁ……コクレア、……らせんは、もう、もう燃やしたくない、の!」
    「……はあ?」
    「好きだもん、大好きだもん! 好き! 友達! 悪いこと、してるけど、してるから、ゆるしちゃだめだけど、でもやだ! お花死んじゃやだあ……!」

    お、お花って、もしかしてそれがミラに対しての呼び方だった?
    おれは走って向かおうとしていたけれど、呼び名に気が抜けて思わずずっこけた。
    その隙にローに首根っこを捕まれ回収される。くそ、目敏いぜ……!

    コクレア様は、本当に子どもみたいにミラに縋る。やだ、やだ、と恥も外聞もどうだっていいというように。
    神様だというのに、ミラとは逆だ。
    あんまりな姿にミラですら何も言えなかった。――気付けば、攻撃すら止まるほど。

    「おまえ、おまえ……そうだった、お前は、アホだった」
    「あほ、じゃないっ、神様だもんッ……!」
    「本当だよ。憎たらしいおれ以外の神様。おれを燃やした天敵。……大嫌いだよ、お前のことなんて」

    ――そう言いながら、ミラを吹き飛ばす。ふぎゃん!と言いながらあっけなく地面に叩きつけられ、さらには生えてきた木のつるでぐるぐる巻きにされた。お花~~~っ、と暴れているけれど解けない。

  • 1651◆A8pWn3jbyg23/07/03(月) 04:34:23

    はあ、とミラはため息を吐く。
    ――落ち着いていた。あんなにも激情で頭を支配されていただろうに。
    身体中真っ黒こげだったけれど、次の瞬間にはそんなものなかったように修復される。
    けれども、なんとなくあいつの生命力自体は弱っているように思えた。ただ、矜持のために、見目だけ整えたような。

    そう、今のあいつは、まるっきり、あいつが嫌いだろう人間で、ラミロの姿だった。
    黒い髪に人の肌、それから神父服を着て。
    それから忌々しそうにおれたちを見据えている。

    「お前たちの予想通り、おれはもう死ぬさ。この島の花はおれで最後。これで滅ぶ」

    ――それが何よりも嫌だったんじゃないのか、という言葉を飲み込む。
    その代わり、起きているやつらみんな、警戒心を強めた。
    あいつが戦いをやめると言い出すはずがないからだ。

    「……いいだろう、人間。なら最後の力で、お前たちと同じ立場で戦ってやる。忌々しいが、この姿に慣れたからな」
    「どういう気の変化だ?」

    ローが訝しそうに言う。
    そうだ、急になんで。

    「………おれが一番恐ろしいと思う姿は、お前らの姿だからだ、よ!」

    瞬間、ミラの姿が掻き消え。
    ―――おれたちの目の前に、現れた。

  • 166二次元好きの匿名さん23/07/03(月) 12:34:43

    このレスは削除されています

  • 167二次元好きの匿名さん23/07/03(月) 16:00:56

    コクレア様かわいい……だいぶ幼い感じ

  • 168二次元好きの匿名さん23/07/03(月) 16:05:19

    コクレア様許せないけど死んで欲しくないってまんまコラさんすぎる
    ミラもミラで自分を裏切ったのに怒って殺そうとしてる癖にコクレア様への情を捨てきれてないしなんだかんだ絆されそうなとことか完全にドフラミンゴなんだよなぁ

  • 169二次元好きの匿名さん23/07/04(火) 01:21:25

    もしかしてミラ君ちょっと毒気抜かれた?

  • 170二次元好きの匿名さん23/07/04(火) 01:27:57

    コクレア様とミラをコラさんとドフラミンゴに重ねすぎると何故か胃が痛くなってくる…

  • 171二次元好きの匿名さん23/07/04(火) 12:54:15

    一番恐ろしいと思う姿か…そりゃそうだよな…

  • 172二次元好きの匿名さん23/07/04(火) 23:52:50

    最後の生き残りであるお花が「おれはもう死ぬ」って言ってる姿はちょっとローと被る気もする

  • 1731◆A8pWn3jbyg23/07/05(水) 03:31:08

    ローは、おれを掴んで投げ飛ばす。一気に吹っ飛ばされたおれはそのまま地面に激突し、ごろごろ転がる。
    けれど慌てて体勢を立て直して『ロー!』と叫ぶ。次におれが見たのは、ローの刀を蹴っ飛ばしているミラの姿だった。
    ……くそ! おれに気を取られちまったせいで!と歯噛みする。刀を取りに行く暇もなく、ミラの攻撃がローに向けて激しく放たれた。
    拳で、足で、木のつるは使わず、原始的な動きで。ともすれば人間の喧嘩のように。人間の体躯を使って、こちらに迫ってくる。
    地面を蹴ったと思えば、その瞬間的な加速力によって目にもとまらぬ速さで懐に飛び込んでくる。いくら距離を取ろうとしても、だ。

    やばい、ローがかなり疲弊している状態で、マジの接近戦に持ち込まれるのはきつい……!
    基本的にローはオールマイティだ。能力を使いこなす力が高いのは勿論だけれど、単純に身体能力だって海賊の船長やっているだけあって人並み以上だ。
    けれども、並みいる強敵に並ぶときには、やっぱり人並み以上では足りない。ローの能力とそれを使いこなす力があってこその強さなのだ。
    勿論頭の回転の速さとかもそうだけれど、それでも単純な尽力では分が悪い。
    別に刀がなくても十分戦えるのはわかっているが、間合いが取れなくなること自体がよくないのだ!

    「藁備手刀!」

    ――けれども、そのローに援護するように、ホーキンスの刀が細かく分かたれ、一斉に一本一本がミラに襲いかかる。
    まるで網のように張り巡らされたそれを、大きく跳躍することでミラは避けるが、ホーキンス自らワラのお化けみたいな姿になりながら追いかける。

    「……別に、能力が使えなくなったわけじゃ、ないさ!」

    腕を振り払えば、何か細かいものがホーキンスに向けて放たれる。振り払おうとするホーキンスの腕の藁の隙間に入りこみ――花が一気に発芽した!

    「っグ……?!」

    それが一気に成長し、藁と藁の隙間に入り込み長い蔦が複雑な形を持ってホーキンスを絡めとる。しょ、初見攻撃だ!

  • 1741◆A8pWn3jbyg23/07/05(水) 04:08:34

    花の成長速度はえげつなくて、あっという間にホーキンスを覆っちまった!
    だけれども、ホーキンスも負けじと引き千切ろうと腕を無理やり広げていく……いやあの花強度すげェな! 色とりどりであんまりにも花やかだけれども、今更ながらミラ(花)の底意地を見せられているって感じだ!

    そう、意地なんだよ。あいつはもう死ぬって言ってた。だから、死ぬ前の悪あがきで、ただの意地。
    そう思うと、……やっぱり思うところがあるけど! あっちゃうけど! でも、気持ちは決まっている。
    ローはシャンブルズですぐさま手元に刀を移動させる。すると木のつるをローと同じような刀の形に“模倣”し、一気に打ち込んできた!
    すぐに切り払うが、続投が多い! あいつにとって木のつるでの攻撃はあまり負担じゃないらしい。もともと花の癖に!

    けれども、次の瞬間には木のつるで出来た刀が爆ぜる。――クリスの射撃によってだ。本当援護に関してはマジで頼りになるなあいつ! ローの負担を減らしてくれる。

    「ふ、ぐ、ううううううっ……!」

    おれの傍で声が聞こえた。気付けばおれはマリーさんのところまで吹っ飛ばされていたらしい。
    起き上がろうとするマリーさん……これ戦いに行くつもりだよな?! とすぐに察したおれは、半ば飛びつくようにマリーさんを静止する。
    一回気絶したからか、ドラゴンの形態が解けて今はボロボロの女の子にすぎない。それでも歯を喰いしばってもう一度ドラゴンになろうとしている。でも、無理だ。流石にこれ以上戦うのはきついだろ!

    「マリーさん、やめろよ! もう限界だって……!」
    「ど、どきな、ロシー……! アタシは、アタシは、まだ、やれる、やらないと、」
    「でも!」
    「っ、ぽっとでの、海賊に任せきりにしたら、駄目だろう! この島は、アタシたちの、島で、アタシたちこそ、あいつに因縁があるって、のに……!」

    悔しそうに涙を流す。ごしごしと腕で涙を拭いているが、そんな拭い方をしたら目が赤くなっちまうぜ。

  • 175二次元好きの匿名さん23/07/05(水) 14:30:00

    本当にいい人だなぁマリーさん、怪我のボロボロ具合もだけど服装も心配

  • 176二次元好きの匿名さん23/07/05(水) 21:15:47

    保守

  • 1771◆A8pWn3jbyg23/07/06(木) 03:51:19

    「わかってるんだよ、アタシはただ、コクレア様の力を手に入れただけの女でしかないって! パワーはあっても、強くない。行っても、足手まといでしかないっ、て……!」

    でも、それでも、とマリーさんは唇を噛み締める。――噛み締めすぎて、血が出てしまうくらいに。
    気持ちは、わかる。痛いくらいわかる。おれはマリーさんの背中を撫でながら、なんていえばいいのか悩んで、悩んで、悩んで。

    ……ぐう、とお腹が鳴る音が響いた。

    「……え?」
    「……なんだい、それ」

    ――空気が読めないってことは、わかる。今この時に腹が鳴る音を出すなんて、あまりにもこう……能天気だ!
    おれは顔が青くなったり赤くなったりを繰り返していた。気まずい以外の何物でもないし、こう、女の子の前でそういう姿出すのって単純に格好悪くねェ!?
    マリーさんはぽかんとした顔でおれを見ている。……涙が止まったのは、まあ、不幸中の幸いかな!(やけくそ)

    「……ロシー」
    「な、なに?!」
    「腹減ったかい?」
    「え? ……お、おう。ここ来るまでに腹いっぱい食べたけど、でも、まあ……それ以来食べてないし、動きっぱなしだから」
    「……うん。そうかい、そうだよね……」

    何かに納得したように、マリーさんは頷く。
    え、と、なんだ? なんかおれ変なこと言ったか?

    「こういう時でも、腹は減るし、……うん、そっか。そうだね。アタシも、お腹空いた」

    そう言って、目じりに涙を溜めながら、笑う。

  • 1781◆A8pWn3jbyg23/07/06(木) 04:02:41

    「多分、なんとなく。あいつが食べる、食べられたって言うから。変な感じに食べることに対して、……なんていえばいいのかな。後ろ向きになってたかも知れない」
    「マリーさん、人に食べさせるの好きそうだよな」
    「わかる? ……うん、そう。そうだね。アタシは料理作るの好きだよ。女は飯炊きをしとけ!って言われたらぶん殴るけど」
    「あはは……、初めて会った時も屋台で料理作ってたもんな」
    「生活のためでもあるけどさ。……うん、本当は、食べることは楽しくなけりゃいけないんだよ」

    人を生かすと同時に、人生を豊かにするものさ、とマリーさんは語る。
    それはこの場所に置いて不釣り合いなものだったろうけど。
    それでも、今のおれたちには必要なものだと思った。

    「マリーさん。マリーさんが戦う力があっても、なくても。因縁があってもなくても。それでも、もうおれは仲間だって思うよ。えーと、ミラに喧嘩売る仲間!」
    「……なんだそりゃ」
    「うん。だから、いいんだって。仲間だから頼っても。おれ、マリーさんが滅茶苦茶頑張ったこと知ってるし。そこに男も女も関係ねェよ。使命感だって必要ねェ。あいつに喧嘩売られた分を買って、マリーさんも戦って、それでおれたちも戦った」

    だから任せろ、っていうわけじゃねェけど。マリーさんの気持ちもあるだろうし。

    「つまりはさ、信じてくれって言いたいんだ。信じて任せてくれって」
    「……ロシー、アンタ……」

    格好いいね、とマリーさんは笑った。へへ、女の子の笑顔は元気になるぜ! あっ、不純な意味はねェからな! あったらクリスに撃たれちまいそうだ!

  • 179二次元好きの匿名さん23/07/06(木) 07:30:10

    このレスは削除されています

  • 180二次元好きの匿名さん23/07/06(木) 13:11:11

    保守

  • 181二次元好きの匿名さん23/07/06(木) 19:54:33

    このレスは削除されています

  • 1821◆A8pWn3jbyg23/07/07(金) 04:10:12

    「アタシは、……悔しいけど、ここまでなんだろうね」
    「……うん。そうだな」
    「でも、アンタは、アンタはどうするんだい。アンタだってまだ子どもだろう。アタシよりも弱いじゃないか」
    「うぐっ、そ、そうだけど、そうだけども、ごもっともだけど」

    まあ今のおれはマリーさんより弱い。認めたくないけど、事実だ。ぐぬぬ、となりながら頷く。
    このままだときっとマリーさんは自分と一緒に退避しようと言ってくれるのだろうけれど。
    でもそれを口に出される前に顔をあげる。

    「でもおれ、男だから」
    「……あのねえ、男とか女とか関係なく、」
    「男だから、馬鹿なんだよ」

    それに挙を突かれた顔をして、そして思い当たる節があるように大きくため息を吐いて、おれに手を伸ばして頭をわしゃわしゃと撫でた。
    おお、なんか撫でられると照れるぜ!と思っていたら、またため息。……そんな呆れるようなこと言ったかな。言っちまったんだろうなあ……。

    「……それがアンタのしたいこと、なんだよね」
    「おう、意地だ」
    「策はあるってのかい」
    「ある」
    「……断言するのかい。……あーあ、羨ましいよ。ばか、やれるの、……アタシ、も、」

    マリーさんの身体がくらりと揺らぐ。……うん、本当に、限界が近かったのだろう。
    彼女の身体を支えて、そのまま地面に横たえさせる。

    「……アタシ、も。クリスと、おなじ、けしき、……みれ、たら」
    「見れるよ。……いや、見てるよ、もう」
    「そ、か……」

  • 183二次元好きの匿名さん23/07/07(金) 12:58:53

    マリーさんもいっぱい頑張ったもんな、お疲れ様ちょっと休んで
    コラさんの策はまだ未開示か

  • 184二次元好きの匿名さん23/07/08(土) 00:16:36

    敵も味方も文字通り死力を尽くしてる感じがすごい

オススメ

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