- 1二次元好きの匿名さん21/08/27(金) 19:49:04
とあるトレーナー室に、1組の男女がテーブルを挟んで向かい合っていた。
「困りましたなぁ」
と俺。
「困りましたねぇ」
と彼女。
俺と彼女を悩ませているのは、年内最後のマイルG1『マイルCS』だった。
「回避、できませんよね?」
「無理、でしょうなぁ」
かれこれ30分近く、俺たちはこんな会話を繰り返している。
俺と彼女はトレーナー同士で、よくこうしてレースの調整をしている。
別に同じチームという訳ではないし、談合など持っての他だ。
ただ、俺たちにはお互いの利益の為に、そうしなければならない理由がある。
その理由の片割れが、トレーナー室の戸を開けた。
「こんにちわ~、トレ……あれ? サルサのトレーナーさんじゃん」
現れたのは、長い赤髪をしたややつり目なウマ娘。
エキサイトスタッフ。通称、エキサ。
俺の担当ウマ娘だ。 - 2二次元好きの匿名さん21/08/27(金) 19:50:20
エキサは俺達を認めるなり、ニヤニヤと笑いだした。
「なになに、また逢い引き~?」
「茶化すなよ、エキサ。彼女に失礼だろう」
実際、彼女とは10歳近く離れており、こんなおっさんと噂になってはかわいそうだ。
「もう、エキサったらそんなんじゃないわよ!」
そら見ろ。彼女も否定している。怒っているからか、少し顔が赤い。
「はぁあ、そんなんだからいつまでも独身なんだよ、トレーナー」
何故か、ため息と共に呆れた目で見られた。
なんでだ?
「で、何の話してたの? また併走のお誘い?」
「いや、次のレースについて話合っていた……」
「え、マイルCSじゃなかったっけ? 別のレース出るの?」
エキサは驚きで目を見開く。
「いや、俺達はマイルCSで確定なんだがな……」
俺は端目で彼女を見る。 - 3二次元好きの匿名さん21/08/27(金) 19:51:42
「ごめんね、エキサ。サルサもマイルCSに出走が決まりそうなの。今は私の所で止めてるけど……」
彼女の担当ウマ娘は、サルサステップ。通称、サルサ。
エキサの双子の妹だった。
これが彼女とレースの調整をしていた理由だ。
エキサとサルサは、お互い気がよく知れている仲だからよく併走をする。
だから、レースで会わない様に調整する必要があったのだ。
今年のクラシック戦線で2人は、エキサルツインズとして少なからず話題を呼んだのだが……逆にそのせいで今回、URA理事会の要請で双子対決ができないか? と申し出があったのだ。
彼女が申し訳なさそうに告げると、エキサはキョトンと首を傾げた。
「え、いや、私知ってたけど……」
「え、そうなのか?」
逆に驚いて俺が言うと、エキサはあっけらかんと、
「いや、だって私ら同室だし」
そう返した。
俺は思わず、彼女を見つめる。
「あ、えっと……すみません。まだ年末のレース予定がないことをサルサ問い詰められまして……、その、ポロッと。……すす、すみません!」
勢いよく、立ち上がって彼女は頭を下げる。 - 4二次元好きの匿名さん21/08/27(金) 19:52:47
「いや、もういいです……。で、エキサ。お前はそれで構わないのか?」
「まぁ、多少はやりにくいけどさ。同時にすっごく楽しみ!」
エキサは満面の笑みで言い、
「第一、トレーナーは気を使いすぎ! 私としてはもっと早くツインズ対決が実現すると思ってたんだよ?」
そう続けた。
まぁ、取り越し苦労だったのらそれでいいか、と納得した時だった。
エキサが開けっ放しにしたトレーナー室に、一人のウマ娘が顔を覗かせた。
エキサそっくりで、目元がパッチリした垂れ目という以外、見分けがつかない。
組んで最初の頃は、よくお互いに成り代わってトレーニングを受けていたりした。
「あ、トレーナーさん。やっぱりこっちにいた~。また私を口実に、エキサ姉のトレーナーとデート?」
と、姉とよく似たニヤニヤ笑いで言った。
「そ、そそ、そんなんじゃないわよっ!」
彼女は顔を真っ赤にして否定する。そこまで怒られると、ちょっと落ち込むな。 - 5二次元好きの匿名さん21/08/27(金) 19:54:28
「はぁ……、トレーナーさん。ハッキリ言わないと伝わらないと思うよ、この人」
何のことだ?
「とりあえず、私とエキサ姉は先にトレーニング行ってるからね?」
そう言って、サルサはきびすを返した。
その後を、エキサが追いかける。
「あっ、お姉ちゃんを置いてくな~」
「あ、おい──」
訳がわからず、追いかけようとした時、スーツの袖を彼女に掴まれた。
「あ、あの、レースの調整の他に、もう一つ……話したいことが、ありまして……そ、そのいいですか?」
真っ赤な顔のまま、彼女が訪ねてきた。
浮きかけた腰を椅子に戻す。
「えっと……、なんでしょう?」
「こん、今度のクリスマスなんですけど、予定……空いていますか?」
「クリスマスですか?」
懐から手帳を取り出し、予定を確認する。
今の所は、予定という予定は入っていない。
そう彼女に告げると、彼女は何度か気を落ち着ける様に、深呼吸した。
見かけによらず大きな膨らみが上下するので、目を反らす。
「あの、なんで目を……?」
「いや、なんでもないです。クリスマスに何か?」 - 6二次元好きの匿名さん21/08/27(金) 19:55:59
エキサやサルサを交えてパーティーでも開くの──
「当日、ディナーを…………ご、ご一緒できないでしょうかっ!」
──時間が止まった。
ただ、耳まで赤く染まっていく彼女の姿だけが、時の流れを教えてくれていた。
*
人通りの少ない廊下。
私はサルサに追い付き、問いかける。
「うまく行くかな~」
「行ってくれたらいいよね~」
去年から、ずっとモヤモヤしていたのだ。
いい加減、決着をつけてもらわないとレースに集中できない。
「サルサ?」
「ん?」
「マイルCSは負けないよ?」
「ふふん、それはこっちの台詞~!」
「言ったな~!」
と、そこで二人同時に吹き出す。
どっちが勝つかはともかく、いい気分で出走できそうだとは思った。 - 7二次元好きの匿名さん21/08/27(金) 19:56:42
はァ〜どっちかが死ぬかと思ってたらハッピーエンドじゃねぇかよ最高
- 8二次元好きの匿名さん21/08/27(金) 19:57:27
乙
モブを育成したくなるな - 9二次元好きの匿名さん21/08/27(金) 19:58:39
私こういう世界観を借りて……あの……他の育成ウマ娘と同じシーンにいるけどいない……えっと
私こういうの好き! - 10二次元好きの匿名さん21/08/27(金) 20:02:16
このレスは削除されています
- 11二次元好きの匿名さん21/08/27(金) 20:04:13
そしてどっちもエルに踏みにじられるんだよね...美しい...これ以上の芸術は存在しえないでしょう...
- 12二次元好きの匿名さん21/08/27(金) 20:10:13
ニコ動で一二を争う知名度のモブウマ娘来たな。
- 13二次元好きの匿名さん21/08/27(金) 20:17:12
モブウマ娘SSは世界観の広がりを感じられて好きなので推して行く所存
- 14二次元好きの匿名さん21/08/27(金) 20:26:58
クソボケトレーナーと気振りウマ娘が共存しとる。
- 15二次元好きの匿名さん21/08/27(金) 20:31:23
👍
- 16二次元好きの匿名さん21/08/27(金) 20:35:56
え、今日三作目?
- 17二次元好きの匿名さん21/08/27(金) 20:51:17
1日でたぶん最も倒されてるモブウマ娘をこうしてくるか~
- 18二次元好きの匿名さん21/08/27(金) 20:54:57
このクソボケがぁ~~~~!!!!
- 19二次元好きの匿名さん21/08/27(金) 21:34:59
ええやん。ニヤニヤするわ。
- 20二次元好きの匿名さん21/08/27(金) 21:37:40
これはいいクソボケトレーナー
- 21二次元好きの匿名さん21/08/27(金) 21:37:42
素敵やん
- 22二次元好きの匿名さん21/08/27(金) 22:12:59
ヒトミミがくっつくの初めて見たな。