- 1◆iNxpvPUoAM23/07/05(水) 00:54:52
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新入生の入学式を見に行ったら妹(ウマ娘)がいた|あにまん掲示板「お前なんでこんなとこいんだよ」「またまた〜、今日って入学式っすよ? トレセン学園の一年生の」「ああ、そうだな」「でしょ? だからほらほら、お祝いの言葉のひとつやふたつと言わず、たくさんくれてもいいん…bbs.animanch.com前スレ
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- 2◆iNxpvPUoAM23/07/05(水) 00:55:18
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前回までのあらすじ
仕事しながら寝落ちして過去編回想してたにぃやん
目が覚めたらソラにバレて怒られました - 4◆iNxpvPUoAM23/07/05(水) 01:03:14
────翌日
「そんじゃ、このあと行ってくるから」
「ぁ、はい、わかりました」
「え〜!」
昼休み。
いつも通りトレーナー室に昼飯を食いにきていたソラとハルカにそう告げると、あからさまに嫌そうな顔でソラがぶーたれやがった。
「なんだよ」
「あたしも行きたい」
「授業あんだろが。なんか言わせるつもりだよお前」
「行きたい行きたい! ミャーコ先輩のレース見たい!」
「お前のレースとは一切関係ないのに休ませられません。残念ですがお留守番です」
「ちぇ〜! ちぇ〜! ちぇ〜!」
「うるせぇよアホ。ハルカ、これ頼む」
なおもぶーぶー言いやがるソラを無視して、ハルカにトレーナー室の鍵を手渡す。
「は、はい、お預かりしました。ぇと、レガリアさんの……レース、なんですよね」
「だな。GⅠ級の……デカいレースだ」
「トゥインクルシリーズにおける……皐月賞です、よね」
「……あぁ」
「応援、しています。レガリアさんのこと」
「伝えとくよ」 - 5◆iNxpvPUoAM23/07/05(水) 01:08:07
「あたしも! あたしも応援してるって伝えといて! 絶対!」
「ああ」
「絶対だかんね、にぃやん!」
「分かってるよ。じゃああとは頼むな。ソラは晩飯食って帰っとけ」
「ぇ、そんなに遅くなるの?」
「わかんねーけど、多分な」
「おい、まさか晩ごはんってミャーコ先輩のことを」
「は?」
「ミャーコ先輩のこと食うつもりだろ!」
「お前マジでぶっとばすぞ」
「うーわ、なんか久しぶりな感じする。めっちゃ久しぶりな感じするけど昨日も言われてるんだよなそれっ!」
「なに言ってんのお前……」
「あーあ、あたしも行きたかったなー。ハルカ先輩も行きたかったですよね?」
「授業を受けろ。何度も言わすな」
「はい。すみません」
「じゃ、いってきます」
「いってらっしゃい、ですっ」
「てらー……」
そこそこ強引に別れを告げ、トレーナー室を出る。
午後のトレーニングメニューは渡してあるし、ハルカもいるならソラは大丈夫だろう。
何かあれば成瀬先生を頼るようにも伝えてある。まあ心配するようなことはないだろうが。
「さて、一旦帰って車だな」
口の中だけでそう呟いて、廊下を進んでトレーナー棟を出る。 - 6二次元好きの匿名さん23/07/05(水) 01:11:12
このレスは削除されています
- 7◆iNxpvPUoAM23/07/05(水) 01:11:40
もう今日は戻るつもりはないから、荷物も全部持ってきた。唯一の忘れ物といえばソラだが……まあ、自分で帰ってくるだろ。
そこまで過保護になってもな。あいつも年頃の女の子だし。
いい加減兄貴離れもしてもらわないとな。
最近あいつ、何かと俺にくっついてくるし。
ちょっと視界から消えると探しにくるし、風呂にも突撃してこようとするし、トイレにまで着いてこようとしたときはアホなのかなって思った。
アホだったわあいつ。
昔からメンタル弱るとすぐああなんだよな────
「ハァイ。こんにちは」
「ん?」
校門を出る手前で、声をかけられた。
振り返ってみるとそこにいたのは────ひとりのウマ娘。
銀髪のウマ娘だった。
長い髪を、青と白のリボンで左右に分けたツインテールで、髪の先に向かうにつれて不思議な色のグラデーションがかかっており────
「……」
いまだ解明されていない謎多き生き物、ウマ娘をして、まるで異世界人のような……そんな印象を受けた。
「……ちょっと、聞いているのかしら。あなたに呼びかけているんだけれど」
「あぁ」
ウマ娘は不機嫌そうにこちらを睨む。
唐突に声をかけられたから驚いただけなんだが、どうやら無反応すぎたらしい。 - 8◆iNxpvPUoAM23/07/05(水) 01:12:59
「ようやく会えたな」
ソラ曰く────……いや、ソラだけに言われてるわけじゃないが、どうやら俺は表情が怖いらしい。
特に初対面の時は嫌悪感丸出しのような顔をしてるとかどうとか。
そんなつもりはないんだが、こっちにその気がないのにそう思われるのは結構きつい。
なので、俺は意識して口元を緩め、笑みを作ってからそのウマ娘に言った。
だというのに。
「……」
俺の顔を見て、逆に相手がしかめっ面。
なんでだよ。
「急にそんな顔をされても気持ち悪いだけだからやめてもらえるかしら」
「……」
なんなんだよ、じゃあどんな顔すりゃいいんだよ!
心の中で石ころを蹴っ飛ばし、無理やり作った表情を戻した。
「最初からそうしていなさい」
「へいへい。……で、俺の予想は合ってるか?」
「ええ。ちゃんと顔を合わせるのはこれが初めてね、カケル」
俺の問いかけにそう答え、少女は俺の目の前へ。 - 9◆iNxpvPUoAM23/07/05(水) 01:14:24
「改めて自己紹介させてもらうわ。私の名はソフィーティア。ここではない、別の世界にてあなたたちの動向を監視する組織の一員よ」
「……」
なんか……なに?
前々から別の世界の人間だとか、ぬいぐるみを介して話しかけてきてたとか、それを見たり聞いてりしていなければ『さむッ』って反応されるようなこと言ったぞ、こいつ……。
「あぁ、そんなに怖がらないで。ちゃんとあなたと同じ種族よ。これは仮の姿」
「仮の姿?」
俺の問いに、ソフィは頷く。
「この世界には、こちらにはいないウマ娘という種族がいる。それに少し興味があってね、その姿を取ってみたの」
「ウマ娘がいない……そういや、この世界特有の種族、とかなんとか言ってたな」
「並行世界、といえば話はわかりやすいかしら? 可能性の数だけ世界が存在する────……そういうの、ご存知?」
「……ああ」
SFアニメや小説、映画でもよくみる話だ。
人間の存在しない、機械だけの世界。
剣と魔法の世界。銃と荒野の世界。天使と悪魔の世界。
そういった空想の世界が────つまり、本当に存在すると。
……本気で言ってんのかこいつ。胡散臭すぎるだろ。
いや、でもぬいぐるみ越しに喋りかけてきてたし……置いた覚えのない場所にあったこともあるしな。
とりあえず、このままじゃ話が進まない。
仮にそうだとして、だ。 - 10◆iNxpvPUoAM23/07/05(水) 01:16:59
「で……その異世界人が、俺になんの用なんだ」
「急いでいるんでしょう? 歩きながら話すわ」
「は?」
「ミヤコのレースを見に行くんでしょう?」
「それはそうだけど……え、来んの? ってかミヤコのことも知ってんの?」
「いちいちうるっさいわね。すぐに理解して行動に移しなさいな。これだからお猿さんなのよあなた」
「……」
こいつ、初対面からなんなんだ……!
しかも俺の家の方向にずんずん歩いていきやがるし……くそ、俺のこと監視してるってマジくせぇな。
「おい、待てよ」
仕方なく俺はソフィの後を追い、並んで歩くことに。
歩きながら問いかける。
「それで?」
「正直なところ、今はまだ全容は話せない」
「……は? 勿体ぶっといて、話せないってなんだよ」
「まだ話す時ではない。それだけのことよ」
長い髪をさらりと手で払い、ソフィは言う。
「ただ、あなたたちにコンタクトを取る必要が出てきたの」
「はぁ……?」 - 11◆iNxpvPUoAM23/07/05(水) 01:20:35
「今日はただの顔見せ、ということよ。少し前に言ったでしょう、後日会いに行くって」
「ああ、聞いたけど……じゃあもう帰ってもらっても」
「ハァ?」
「なんだよ」
「せっかくわざわざ来てあげたのに、お茶すら出せないなんてケチくさいわね、あなた」
「……」
「まあ歩きながらお茶を飲むような行儀の悪い子ではないから、出されたところで困るだけなのだけれど」
なんなんだこいつ、なんなんだマジで……。
「私の監視対象はカケル、あなただけではないの」
「……どういうことだよ。そういやさっき、あなたたちにって言ってたな」
「ミヤコレガリア。ソラノメモリア。ハルカミカゼ。ノアドパルフェ」
「……!!」
「あなたを含め、この四人のウマ娘が現段階での監視対象」
「なんでノアまで」
「話せない」
「……またそれかよ」
「他にも監視しておきたい者はいるけれど、あなたがその中心にいることは事実」
「俺が?」
なぜ俺なんだ。
俺を監視する必要ってなんだ。
俺はただのトレーナーで、ウマ娘のような特別な存在じゃない。
なんだってこいつは俺を……──── - 12◆iNxpvPUoAM23/07/05(水) 01:29:22
「理解できない、という顔ね」
「……当たり前だろ。俺を見ても、なんも面白いもんなんてないだろ」
「ええ、全くない。ソラたちとじゃれあってるだけだもの」
「……」
こいつ、マジで見てるのか……。
「けれど、必要なことよ」
「はぁ」
「時が来れば話す。今は私を信じなさい」
「……」
正直、胡散臭い。 胡散臭いが────
「……」
dice1d1=1 (1)
・ソフィを信じる。
今の段階で、信じようが信じまいが、なにがあるわけじゃなさそうだしな。
「わかった」
「ふぅん。存外、物分かりがいいのね。これも歳を取ってるおかげかしら」
「なんだそれ」
「こっちの話よ」
結局よくわからないまま、俺はソフィを信じることに。
胡散臭いし訳がわからんし、でも信頼していいと、頭の奥底でそう叫ぶなにかがいる。
……なら、俺はそれに従う。
- 13◆iNxpvPUoAM23/07/05(水) 01:35:00
再開してすぐこんな短くて申し訳ないでありますが、本日はここまで…
書き溜め部分に加筆修正したいところが出てきたので、また追加して明日以降に投下いたします
今後ともよろしくお願いします - 14二次元好きの匿名さん23/07/05(水) 01:36:20
お疲れ様でした〜
再開本当に嬉しいです。また気長にお待ちしてます - 15二次元好きの匿名さん23/07/05(水) 01:37:13
お疲れ様でしたー
久々に読めてよかった - 16二次元好きの匿名さん23/07/05(水) 10:30:00
ほ
- 17二次元好きの匿名さん23/07/05(水) 20:50:30
し
- 18二次元好きの匿名さん23/07/06(木) 02:24:32
ゅ
- 19二次元好きの匿名さん23/07/06(木) 12:40:16
ーイ
- 20二次元好きの匿名さん23/07/06(木) 23:24:13
一応保守
- 21◆iNxpvPUoAM23/07/07(金) 02:42:21
「で、お前ほんとに行くの?」
「当たり前でしょ」
「そ、か」
話しているうちに我が家に到着。
どうしてもついてくると言って聞かないため、ソフィを車に乗せてふたりで中山レース場へ。
「フゥン……この世界の移動手段ね。たしか、車だったかしら」
「ああ」
ソフィが助手席に乗り込んだのを確認し、俺も運転席へ。
カバンから二つボトルを取り出し、一つをソフィに投げ渡す。
「ほら」
「え、ちょっ……! なによ!」
「お茶」
「は?」
「歩きながら飲む趣味はないんだろ。座ってれば飲めるよな」
渡したのは、ペットボトルのお茶だ。
キーを取りに部屋に戻った時、冷蔵庫から取り出しておいたのだ。
俺も一本取り出し、キャップを開けて口に含んでから車にキーを差し、エンジンに火を入れ、発進させる。
向かうは中山レース場。
平日だし、大学リーズはトゥインクルシリーズほど人気のある大会じゃないし、15時くらいには着けるだろう。 - 22◆iNxpvPUoAM23/07/07(金) 02:43:03
ちらりと視線を横に向けると、ソフィは手に持ったボトルをまじまじと眺め続けていた。
「飲まないのか?」
「……いえ。あなたにそんな気遣いがあったことに驚いていたの」
「お前の知ってる俺はどんなやつなんだ」
「そうね……存外、今と変わらないわ。こうしてヒトの形で対面したことがなかったから、少し変わって感じているだけでしょう」
「はぁ。……ってか、会うのってこれが初めてじゃないよな」
「あなた、ナンパなんてする性分だったのね」
「するかよ! マジで会ったことあるだろ」
「……まさかあなた、覚えて」
「阪神レース場で会ったよな。先月、ソラのレースで」
「……あぁ」
「あのとき、なんか意味深なこと呟いてたのってソフィだろ?」
「ええ、そうね」
「なんであの時は声かけなかったんだよ」
「あの時はまだ声をかけるべきではない、と判断していただけよ」
「ふーん。……なら、かける必要があったってことか」
「そうなるわね。理由は話せないけれど」
「いいよ、別に。そのうち話してくれるんだろ」
「そうね。時が来れば」
「なら、その時で構わない。俺もいまはソラたちのことで手一杯だ」
「それで構わないわよ、今はね」 - 23◆iNxpvPUoAM23/07/07(金) 02:43:31
「……なんかこの先、ヤバいヤツを相手にしなきゃいけないって感じに聞こえるな」
「どうかしら」
「匂わせるだけ匂わせといて、しらばっくれんのかよ」
「言えないもの」
「ほとんど言ってるようなもんだろ」
「私は何も言っていないし、あなたがそう考えているだけよ」
「お前、お前ほんと……」
「お茶、いただくわ」
「ぁ……お、ぉぅ」
さっぱりした顔でそう言い、ボトルを開けてお茶を口に含む。
なんなんだ、こいつ。
言うだけ言ってだんまり……でも、俺も何かわかるようなわからないような、小さなささくれが引っかかってる感じだ。
それにこいつの扱い方……というか、距離感がわからない。が、なぜか昨日今日出会ったばかりな気もしない。
ソフィは俺のことをずっと昔から知っているような口ぶりだし、それが関係してるんだろうが……ともかく。
知らないのに知ってるという奇妙な感覚を持ちつつも、いまはようやく会えたという気持ちの方が大きくて。
「まあ……なんだ。よろしく」
「ええ、こちらこそ」
よくわからないまま、なぜかソフィへの信頼感だけは本物だと確信しつつ、俺はそれを受け入れた。 - 24◆iNxpvPUoAM23/07/07(金) 02:44:49
────中山レース場
レース場に着いたのは15時過ぎ。
ミヤコの出走するGⅠ級レースは15時35分出走────……トゥインクルシリーズと同じだな。
関係者以外は控室への立ち入りは禁止されているため、俺がミヤコと顔を合わせるにはパドックに行くしかない。
そろそろウマ娘の紹介がされている頃合いだ。
「ミヤコに挨拶してくるけど、ソフィも行くか? ミヤコにも話あるんだろ」
「……はぁ」
入場し、ゴール前の見やすい位置に陣取って訊ねると、ソフィは分かりやすくため息をついた。
「レース前に混乱させてどうするつもり? あなたそれでも本当にトレーナーなのかしら」
「……」
確かにその通りだ。
大事なレース直前にこいつの変な話を聞かせて困らせるわけにはいかない。
その通りだ。
でも自分で言い出すのムカつくんだよなこいつ……なんなんだマジで。
ソラとは違うベクトルでムカつくんだよな……! - 25◆iNxpvPUoAM23/07/07(金) 02:45:23
「じゃあ俺行ってくるけど、荷物頼んでいいか?」
「この私を顎で使おうだなんて。失礼しちゃう」
「んだよ。じゃあ持ってくけど」
「いいわよ、置いていって。ちゃんと見ていてあげる」
「おぅ、頼んだ」
荷物をソフィの隣の席に置き、貴重品だけポケットに突っ込んでから俺は観客席を後にした。
通路を歩いて、パドックへ向かう。
ミヤコのトレーナーとしてこの中山レース場へ来た思い出はそう多くない。
弥生賞と皐月賞……そして有馬記念の3回だけ。
最後まで走り切れたのがそのうち2回で……最後は、レース中の故障。
辛く苦しい思い出が胸の中を過ぎるが、そうも言ってはいられない。
ミヤコはもう走り始めていて、俺がいなくてもしっかりと勝てている。
むしろ俺がいた時よりも成績はいいし、大学リーグでも注目のウマ娘だ。
今回ミヤコは1番人気に指名されて、優勝を期待されている。
中山で1番人気も皐月賞以来か。 - 26◆iNxpvPUoAM23/07/07(金) 02:46:07
「ほんと、ここには色々な思い出が詰まってるな」
思い出を振り返りながら、ひとりごちる。
辛い思い出、嬉しい思い出。
色々な想いがレース場には詰まってる。
それは俺たちだけのものじゃない。
これまで走ってきた優駿たちや、これから走るであろう未来のウマ娘たち、全ての夢と想いが詰まってる。
三冠クラシックの出発点。
そしてグランプリの終着点。
俺たちの忘れ物。
ついぞ取れなかったGⅠという大きな目標。
今日、ミヤコはそれに挑戦する。
あいつは俺に言った────……初めてのGⅠは自分が取りたいと。
もう俺の担当じゃないのに、個人的なわがままだって言って、譲らなくて。
でも俺も、初めてのGⅠはミヤコと取るものだと思っていた。
ずっとずっと、担当をした時から、ずっと。
だから────……今日は。
見せてくれよ、お前がGⅠを取るところを。
胸の中に熱い想いを滾らせて。
俺はミヤコの待つパドックへ足を踏み入れた。 - 27◆iNxpvPUoAM23/07/07(金) 02:48:27
〈いよいよやって参りました、大学リーググレードレース!〉
〈中山レース場は芝2000M! 【アリエス杯】!!!」
〈大学リーグのグレードレースは星座の名が冠されており、非常にユニークですね〉
〈トゥインクルシリーズにおける皐月賞と全く同じ条件で行われる本レースは、大学リーグの皐月賞とも呼ばれる非常に大きなレースになります!〉
実況アナウンスの声が響く。
いよいよパドックにウマ娘たちが入場する時間だ。
〈さあいよいよ出走ウマ娘がパドックへ登場します! まずは1番人気のこのウマ娘!〉
〈ミヤコレガリア!!〉
呼びかけに応じ、トゥインクルシリーズでも使われている入場ゲートからミヤコが躍り出る。
その瞬間、歓声が巻き起こった。
「……」
シリアスな面持ちで現れたミヤコは、慣れた手つきで肩にかけた上着を取り払い、その身を包んだ勝負服を観客たちの前に晒す。
「……ぁ」
それは、何度も見た勝負服。
可愛らしいポップな色合いの、全身を覆うスーツのようなそれは────……俺とミヤコで何ヶ月も悩んでようやく完成させた、勝負服。
トゥインクルシリーズから大学リーグに移るにあたり、勝負服を変えるのは珍しいことではない。
むしろ心機一転として変えて走ることの方が多く、同じものを着続けるミヤコの方が珍しい部類かもしれない。 - 28◆iNxpvPUoAM23/07/07(金) 02:48:56
「……よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げ、深々とお辞儀をする。
静かに風に揺れるマフラーはミヤコの緊張を表しているかのようで。
しかしその瞳には、たしかな熱がある。
今日、必ず取ると────……決意の炎がゆらめいている。
「……ぁっ」
そうして、目線が合う。
最前列で見ていたから時間の問題ではあったが、認識されたと理解すると、途端に恥ずかしい気持ちになる。
トレーナーとして見ていた時は何も感じなかったのに……今となっちゃ、ただのファンだな、俺。
「ふふっ」
「……おぅ」
小さく振られる手に、俺も軽く手を振って返した。 - 29◆iNxpvPUoAM23/07/07(金) 02:50:43
・・・
「来てくれたんですね、カケルさん」
「約束したからな」
「ふふ、ありがとうございますっ」
ウマ娘たちの紹介が終わり、最後の公開練習。
パドックの周囲を歩いて気持ちを整える者がいれば、ファンたちに手を振ったり話たりする者もいる。
ミヤコは……トゥインクルシリーズでも、俺と話してたっけな。
あと数分経てば控室に一旦戻り、それからレースが始まる。
ここはファンや観客たちに、レース前に自分の存在をアピールできる最後の場所なのだ。
「……脚の調子、どうだ?」
「はい。大丈夫……と言い切るのは、少し怖いです。大学リーグになっても、中山では走っていなかったから……」
「……だよな」
「でも……たくさん練習しました。スクーリングもさせてもらって、準備はできています」
「そ、か。……ちゃんと見てるからな、ミヤコ」
「はいっ! カケルさんは約束を守ってくれたから……次は、私が約束を守る番だね」
「あぁ、そうだな。破ったらソラを送りつけてやる」
「ぁ、あはは……それって、罰になる……のかな」
「なるだろ。あいつめちゃくちゃうるさいし」
「元気で、可愛らしいと思うけれど」
「ミヤコとハルカにはな。俺相手になるとクソうぜぇ」
「ふふ、仲良し兄妹で羨ましいなって思ってますよ」 - 30◆iNxpvPUoAM23/07/07(金) 02:51:04
「まぁ……悪くはないかもしれねーけど。とにかくミヤコは自分のレースを……って、もう俺の仕事じゃないな、これは」
「……ううん、聞きたい」
「……」
「聞かせて、カケルさん」
「あぁ、わかった」
軽く息を吸って、吐いて、
「自分のレースをしてくれ。俺がいるからって無理に力まなくていい。無茶をしないで、無事に帰ってきてくれ」
少し恥ずかしいが、いつか口にしたのと同じ言葉をミヤコに伝えた。
それを聞き入れてミヤコは優しく微笑んでから、力強く頷く。
「はい! 行ってきます、トレーナーさん!」 - 31◆iNxpvPUoAM23/07/07(金) 02:52:00
・・・
〈さあ中山レース場、大学リーグGⅠ級【アリエス杯】!!〉
〈かつてトゥインクルシリーズで名を挙げたウマ娘たち〉
〈そしてこの大学リーグでレースデビューを果たした遅咲きの精鋭たち〉
〈新たな時代を彩る大きな花を、今日、この中山で咲かせます!〉
〈出走者数は18名! フルゲートで行われる、このアリエス杯────〉
〈────……いま、出走です!!!〉 - 32◆iNxpvPUoAM23/07/07(金) 02:52:38
短いけど本日はここまで
次回、レース開幕 - 33二次元好きの匿名さん23/07/07(金) 08:27:26
お疲れ様です〜
- 34二次元好きの匿名さん23/07/07(金) 19:53:18
ほ
- 35二次元好きの匿名さん23/07/07(金) 19:53:37
イェーイ!
にぃにの彼女だにゃん! - 36二次元好きの匿名さん23/07/08(土) 02:21:34
ほ
- 37二次元好きの匿名さん23/07/08(土) 12:19:24
し
- 38二次元好きの匿名さん23/07/08(土) 21:22:23
アッ…語りスレ落としちゃった…
- 39二次元好きの匿名さん23/07/09(日) 00:47:24
代理の人が立ててたけど今はちょっとペースゆっくり目なのと
元のスレ主さんが今も見てるなら立てて欲しさあるししばらく様子見かな…… - 40二次元好きの匿名さん23/07/09(日) 12:17:56
ほ