- 1二次元好きの匿名さん21/08/29(日) 00:46:39♀モブトレーナーの姦し私がそのウマ娘を担当になったのは──いや、ならされたのは、トレセン学園に入ってすぐの事だった。大学の先輩に呼び出された私は、先輩がサポートトレーナーとして所属するチームの一室を興味深く眺めていた。 「…bbs.animanch.com
クレイジーインラブと挑んだデイリー杯は6着に終わった。
私の初めて重賞挑戦は、それなりの結果に終わった。
まぁ人気の割には、大健闘と言っていいし、よくやった。
と、すんなり喜べるわけもないが、とりあえず私はそれとは別の用事でトレーナー室にクレイラを呼び出した。
いつもなら、入ってくるなり抱きつこうとするクレイラであるが、今日はハリセン片手に仁王立ちする私を見て固まっていた。
「ト、トレーナーちゃーん。ど、どうしたの?」
「尻だせ」
「え? ……トレーナーちゃん、そっちに目覚──」
「いいから、突き出せ」
「──ちょっと、説明してくれてもいいじゃないっ!」
- 2二次元好きの匿名さん21/08/29(日) 00:47:43
憤るクレイラに、私は眼鏡の位置を直しつつ言った。
「プールの更衣室」
ピクッと、クレイラの耳が反応する。
「スローモーション、ドカドカ、アンペールユニット、エキサイトスタッフ、サルサステップ、リボンマズルカ」
そして、ウマ娘の名前をあげる度に顔が引きつっていく。
私は腕組みを解いて、近くのテーブルにハリセンを打ち付ける。
パァン、と乾いた音がトレーナー室に鳴り響いた。
「説明、いる?」
「な、何の事だか~」
「へぇ、しらばっくれるんだ……」
明後日の方向を向いて、口笛を吹くマネをするクレイラに私の声が低くなる。 - 3二次元好きの匿名さん21/08/29(日) 00:48:44
「あんたからセクハラ受けたって苦情がさぁ……私の所に来てるんだわ」
「……」
「っていうかさ、私は昨日飲みに連れてかれたんだわ。それぞれのトレーナーにさぁ」
「えーと……た、楽しかった?」
場を和ませようとしているのか、おどけてみせるクレイラ。
自分が火に油を注いだと気づいてないらしい。
「そりゃあもう、楽しい……わけあるかぁあああっ!」
「ひゃうっ」
端から見たら、満面の笑みから鬼の形相に変わったように見えたかもしれない。
そんな気分で叫び声を上げると、クレイラはビクついて縮こまった。
「スローとエキサのトレーナーってさぁあ! 10年以上のトレーナーやってる大先輩なのよ! あの人達、担当には優しいけどメチャクチャ怖いんだから! てか、他は同期なのになんで二人だけベテランの担当に手ぇ出してんの!?」
「ト、トレ」
「ドカドカのトレーナーは最初こそ怒ってたけど、酔って来るなり、ずっと奥さんとの惚気話してくるのよっ! うっぜぇえええっ!」
「え、トレ」
「かと、思ったらユニのトレーナーがガチギレしてくんのよっ! あの人、担当のこと妹みたいに可愛がってるから怒りがマジなのよ! 私が手を出した訳じゃないのにさっ!」
「あの」
「サルサのトレーナーは、エキサのトレーナーとさっさとくっつけ! とっとと告れっ! 端から見て、まる分かりなんじゃボケェエエエエッ!」
「ちょ、関係な」
「最後は、ルカのトレーナーだよ! あの野郎、他の人の説教やら、なんやらの合間にネチネチネチネチ小言挟んで来やがって、あの挽割り納豆野郎がぁあああっ!」
「……」 - 4二次元好きの匿名さん21/08/29(日) 00:49:48
叫び終えて、はぁはぁ、と息を切らせる。
「トレーナーちゃん、大丈夫?」
「でさ、一番ムカつくのがさ」
「まだ続くの!?」
私は息を整え、ハリセンをクレイラに突きつける。
「あんた、今年の間プール使えないから」
「え……」
「今日、理事長室に呼び出されてさぁ。流石に目に余るって、言われちゃってさぁあ……」
思い出して泣きそうになる。
「次のレース1ヶ月後なのよ。しかも阪神ジュニアフィリーズだよ、G1だよ? デイリー杯であんたが頑張ったからエントリーできたのにさぁ……」
声に嗚咽が混じるのが、分かる。でも止められない。
「私さぁ、ちゃんと抗議したんだよ? せめて来年まで執行猶予くださいって……クレイラは大事な時期なんですって……でもダメだったよ。あんたさぁ、自分の弱点スタミナだってわかってるよねぇ……? なのに、なんでこんな事になっちゃうのよぉお」
とうとう涙まで流れ始めた。スーツの裾でそれを拭っていると、不意に頭が柔らかい物に包まれる。 - 5二次元好きの匿名さん21/08/29(日) 00:49:56
好きよ。支援
- 6二次元好きの匿名さん21/08/29(日) 00:50:42
「トレーナーちゃぁん、ごめんなさぁい……っ!」
クレイラが私の頭を抱きしめて、泣いている。
それはもう、子供のように泣いていた。
そういや、子供だったわ、この子。
「こんなことに、なるなんて、思わなかった、からぁ……」
泣きながら、途切れ途切れに謝るクレイラに私は背中と頭に手を伸ばし、母親がするように撫でてやる。
「もう、やっちゃった事は仕方ないかさ。反省してる」
「うん、してる……」
「本当にしてる?」
「うん」
「本当にホント?」
「してるよ?」
クレイラは顔を離して小首を傾げる。
「……じゃあ、私の尻を撫でてるこの手はなんだ、おい!」
「あ、あははは……」
バッとクレイラの手が離れる。どうやら、無意識らしい。 - 7二次元好きの匿名さん21/08/29(日) 00:51:36
「はぁ、あんたって奴は……」
「ごめんごめん、トレーナーちゃん!」
苦笑いを続けるクレイラを見て、ため息が漏れる。
「とりあえず、プールは使えないから別のトレーニングするわよ」
「うん、 なにするのっ!」
「そうね……。あ、後ろ?」
「え、後ろ?」
何かあるのか、と後ろ向いたクレイラの臀部目掛けて、ハリセンをフルスイング!
バァンッ!
「ぎゃにゃぁあっ!」
奇声を上げ、クレイラはお尻を抱えてへたりこむ。
「ト、トレ」
「とにかく今年中にあんたの根性叩き直すから、その気で」
「うぅ、トレーナーちゃぁん」
「あ、そうそう──」
涙目を浮かべるクレイラを無視して私は続ける。
「──今日、あと10発は行くから」
クレイラの顔から表情が消えた。 - 8二次元好きの匿名さん21/08/29(日) 00:52:39
コイツらデキてるんだ!
- 9二次元好きの匿名さん21/08/29(日) 00:53:14
助かる
朝日杯頑張ってね - 10二次元好きの匿名さん21/08/29(日) 00:57:53
ようやく眠れる
- 11二次元好きの匿名さん21/08/29(日) 01:05:23
前作のステと比べるとスタミナほとんど上がってないのに、根性かなり上がってんのな。
画像から連想してるのか、合う画像探したのかわからんけど芸細かい。 - 12二次元好きの匿名さん21/08/29(日) 07:15:04
おもしろかった。
また書いてほしい!