JAMの怪奇事件簿(SS)

  • 1◆xvwuoBeAw.AD23/09/01(金) 20:23:23

    アプリのキャラストのグッドエンディングで後輩の相談に乗るようになるし、その流れでオカルト絡みの事件とか解決するようになった世界線のお話が見てみたいよね。

    例えば霊感があるからこっくりさんの不正に気づいちゃって、タキオンやポッケの力を借りながら予言の実現(犯行)を未然に防ごうと奔走するお話とか……

  • 21/37 ◆iYE2HOM81Xsm23/09/01(金) 20:23:50

     夏場に立ち返ったような太陽が、ひんやりとした濃い青色の影をトレセン学園の長い廊下に落としている。
     小さなウマ娘が独り、その影の中を歩いていた。

     肩まで伸ばした芦毛は生来のくせっ毛により先端がくるりと巻かれ、同じく色素の薄いカールしたまつげをしきりに瞬かせている。
     トレセン学園の制服とは違ったパリッとした紺のプリーツスカートに上品な白のブラウスという出で立ちで、胸から提げたプラスチック製のネームプレートには「レセット」と彼女の名前が、彼女の通う都内の小学校の名前とともに立体印刷されていた。

     ブーンと甲高い音を響かせながらカメラ・ドローンが窓の外を行き過ぎるのを見て、レセットの気分はいくらか軽くなった。

     卒業アルバムに使う写真を撮るために複数機が巡航しているあのドローンは、知らない人だらけのこの学園にあって間違いなく「私達の側」に属した存在だ。
     数日前に「採用は別のクラスの誰かのお家とのコネだ」という噂話を聞いたのを思い出す。具体的にそれがどういう意味なのかはクラスの誰も分かっていなかった。

     撮影中なら、手を振れば気づいてもらえるだろうか?いや、気づいてもらえたところで意思疎通はできないか……

     「おや、どうしたんだい?こんなところで……」

     びくりと肩が跳ね、尻尾の毛が根本から逆立った。
     声のした方に顔を向けると、無人だとばかり思っていた廊下に、いつのまにか一人のウマ娘が居た。無機質に並んだ扉のひとつを開けて半身を乗り出すようにしている。

     真っ黒な影と、青白い光の強烈なコントラスト。
     逆光で顔はよく見えないが、白衣のシルエットだ。しかしよく見れば肩にはセーラー襟が乗っているので先生ではない。暗めの栗毛。襟足はボサボサで、毛並みと同じ赤銅色の瞳が鈍く光っていた。

  • 32/37 ◆iYE2HOM81Xsm23/09/01(金) 20:24:10

     「あ、あのあの……迷ってしまって」
     「迷って?ふうん……」

     試すような口調と視線に、何かあらぬ疑いをかけられているのではないかと不安になる。考えてみれば「道に迷った」というのも、いかにも小悪党の言いそうな台詞だ。
     スカートと一緒に握り込んだ拳にはじっとりと汗が滲んでいた。

     しかし、白衣のウマ娘は予想外にも半分袖に埋もれた右手でちょいちょいと手招きをした。

     「おいで、お茶をご馳走しよう」

     戸惑っていると、白衣のウマ娘は「キミの事情は少し解るつもりだ」とレセットの胸に人差し指を向けた。見下ろすと、ネームプレートが白く揺れた。

     「オープンキャンパスの子だろう?客人はもてなすのはホスト側の責務だからね」

  • 43/37 ◆iYE2HOM81Xsm23/09/01(金) 20:24:27

     その部屋の第一印象は「ドラマの撮影セット」だった。
     左手には物々しい実験器具の数々が置かれた一角。謎の蛍光色に照らされたフラスコが、これまた謎の機械の上で低い音を立てて振動している。
     一方の右手側では、落ち着きのある色調の家具や可愛らしい小物が、暖かい色の間接照明に照らされて静かに、整然と佇んでいた。
     それらが交わり合わずピッタリと境界線を描きながら隣接しているのも、ドラマや舞台の場面転換を想起させる。

     「ああ、あまりそっちには行かないでおくれよ。勝手に触ると怒られてしまう」

     どうやら、より近寄りがたい印象の実験器具のスペースこそ彼女のテリトリーであるらしく、白衣のウマ娘は「悪いね、ソファを前に簡素な椅子に座らせてしまって」と申し訳無さそうにしながら理科室にあるのと同じ、四角い木の椅子を取り出した。

     このときになって、レセットはようやく彼女の顔を見た。蛍光色の明かりに彩られながら優しく微笑んでいた。

     「さて、せっかくだからお話ししようじゃないか。私はアグネスタキオン」

  • 54/37 ◆iYE2HOM81Xsm23/09/01(金) 20:24:45

     「タキオンさん?!あ、あの、URAファイナルズ、見てました!私はレセットっていいます!それじゃあ、ここが……あっ名前は……」
     つい先程タキオンがネームプレートを指していたことを思い出して顔が熱くなる。

     「ありがとう。ここは学園に使わせてもらっている研究スペースだよ。こうしてお茶を入れたりもする……ときにレセット君はなぜこんなところに?」
     「今回は体験入学で、その……」
     問われたことで改めて自らの醜態を思い出す。「初めての場所での探しもの」という特殊なシチュエーションとはいえ、学校という極めてシンプルな構造であるはずの施設で迷子になってしまったのだ。

     そんな様子を汲んでか、タキオンはゆったりと白衣を風になびかせながらレセットに空のカップを手渡した。
     「恥じることはない。ここはそう……チャネルが開かれていると彼女が言っていた。私にとっては必ずしも好ましいことではないけれどね」
     カップに琥珀色の紅茶が注がれる。
     タキオンは立ち上る香りに一度言葉を切ってから「実際にはもっと感覚的な言葉を用いていたかな?」とつぶやくように付け足した。

  • 65/37 ◆iYE2HOM81Xsm23/09/01(金) 20:25:07

     「チャネル……?」
     「んー、そうだねえ……レセット君。君は雷がジグザグな軌跡を描くのは何故か、知っているかな?」
     タキオンはホワイトボードを振り返ると、そこに書かれていた数式をさあさと消して雲と雷の絵を描いた。

     レセットはしばらくの時間考え込んだ。それは今まで疑問にも思っていなかった事だ。学校の授業でも雷の正体は静電気で、金属ではなく高いところに落ちるものだということくらいしか習っていない。

     「……電気がジグザグだから?」
     ようやく絞り出した回答に、タキオンは「それは順序が逆で、稲妻の折れ曲がった姿から今日の電気のピクトグラムがあるのだよ」となぜだか嬉しそうに答えた。

     「雷は空気中の湿気の多いところ、真空に近い空気の薄いところ、そういった電気の通り道を探して走り回るんだ。その結果がジグザグに折れ曲がったステップになる……このときの導電性の“通り道”をチャネルというんだ」
     雷の絵の周りに障害物が描き足される。
     「……話を戻すと、この“旧理科準備室”には迷えるウマ娘を誘引するなんらかの力がある」

     「あるいは、“彼女”に」

     タキオンの瞳が怪しく光って、無人のソファを見据えた。アンティークの家具たちが主の帰りを待つように静かに佇んでいる。その存在感だろうか、何かの気配を感じるようだった。

     「実験は……方法を思いついたらにしよう。今のままでは確証バイアスだけでも説明が付きそうだからね」
     そのときふと、二人の耳が足音を捉えた。
     コツコツと高い音が廊下で反響している。
     「彼女が帰ってきたようだ」

  • 76/37 ◆iYE2HOM81Xsm23/09/01(金) 20:25:29

     「おかえり、カフェー」
     上機嫌な声に迎えられ、青鹿毛のウマ娘、マンハッタンカフェは思わず眉根を寄せた。タキオンときたら、ご機嫌なときほど厄介なひとなのだ。
     旧理科準備室に漂う紅茶の香りも、彼女の存在を増長させているように思えた。
     「相談はどうだったんだい?」
     「……ポッケさんのことでしたら、今日の話にはなりませんでした」

     ポッケことジャングルポケットはカフェやタキオンと同期のウマ娘だ。
     この旧理科準備室の事は知っているものの相談を持ち込むことは稀である。どちらかというと頼られる側に立つ事のほうが多いのが彼女だ。
     そんな彼女が“稀に”持ち込む相談は、決まって彼女の苦手分野であり、カフェの得意分野のものである。

     今回はまだ詳細を聞けていないけれど、その例に漏れないであろうことは予想できる。

     「……急用のご友人の代わりに、オープンスクールの手伝いをされるそうです……が、きちんとできているでしょうか。今もそれらしい子とすれ違いましたが」
     ピンクのパーカーを被った姿という、平時なら学園内で見かけない私服姿だったのでトレセン学園生ではないと思う。
     「今はその……自由時間なんです」
     カフェの目が角椅子の上で緊張した面持ちのウマ娘に留まる。
     小学生くらいだろうか。小さくて可愛らしい芦毛のウマ娘だ。……手には紅茶のカップ。

     「彼女もそのオープンスクールの参加者だそうだよ」
     なるほど。これでタキオンの上機嫌に合点がいく。
     アグネスタキオンは野暮で杜撰で不摂生だが、同時に年下の若駒には妙に優しい気質の持ち主でもある。それはそれで余計に彼女を不審者然とさせてもいるのだが……美点は美点だろう。
     手荷物をソファの上に置いてから、小さなウマ娘に向き直る。

     「あ、あの、わたし、レセットです」
     レセットの頬は短時間でみるみる上気し、瞳には興奮の色が揺れている。尻尾は一言ごとに右へ左へと向きを変えていた。
     「はじめまして……私は……」
     「カフェさん、ですよね?マンハッタンカフェさん!」
     目を丸くしていると、タキオンが「URAを観ていたそうだよ」と短く付言した。

  • 87/37 ◆iYE2HOM81Xsm23/09/01(金) 20:25:50

     URAファイナルズは懐かしさすら感じる思い出だ。時間で言うとまだそれほど経ってはいないはずだが、自分のアスリートとしての全てをたった1走に向けて磨き上げた日々の燃え殻が、遠い過去のように錯覚させている。
     そんな自分の輝かしい日々を追いかけてくれているというのは、なんだか気恥ずかしく、同時に励まされるようだった。
     こちらまで頬が赤くなってないか少し心配になって指先を当ててみる。

     「……それで、おひとりのようですが……どうしてこちらに?」
     「えと……実は、『自由時間で先輩方の話を聞いてくる』という課題が出てまして……この辺りで相談を聞いてくれるから、と」
     「それはまさしく私たちのことだね」
     「……そうですね」

     確かにカフェはこの旧理科準備室で後輩の相談に乗っているし、タキオンがいつの間にか事態を把握していて助け舟を出してくれたなんてことは両手に余る。
     が、「よく共に相談を受けている」と思われるのは些か腹落ちしないものがある。

     「……レセットさんは……何か相談があるのでしょうか」
     「いえ、えっと……先生に課題を出されただけなので、特に無いんですけど」
     「なんでもいいさ。走りのこと、勉強のこと、恋のこと……」

     ―― 怪奇のこと

     そう続けなかったのはタキオンなりに気を遣った結果だろう。
     無為に怖がらせるようなことは言わなくていい。という考えは私も同じだった。


     だから、このときレセットが怪奇の相談をしたのは偶然に他ならなかった。

  • 98/37 ◆iYE2HOM81Xsm23/09/01(金) 20:26:15

     「……私の学校で、こっくりさんが、流行ってるんです」
     まだ話すべきか迷っているかのように、少しずつ言葉を切りながら、レセットの相談は始まった。

     半年ほど前、それは恋占いとして流行り始めた。
     彼女の学校で主流だったのは鳥居と50音が書かれた紙の上にコインを置く、オーソドックスなスタイルのものだ。

     「私はあんまり興味がなくて、何度か誘われて参加する程度でした。でも、ああいうのって普段来ない珍しい子が来ると、話題がその子に集中するじゃないですか」
     その光景は想像に難くない。根拠のない情報源であるこっくりさんは好奇心 ―― あるいは嗜虐心 ―― を満たすにはちょうどいいものだ。
     「そうですね……居心地は良くなかったでしょう」

     そうした経緯もあり、元々距離を置いていたレセットはほとんど参加しなくなっていった。
     一方で熱狂的にのめり込むクラスメイトも居て時々恐ろしく感じるほどだったという。

     「降霊術だから危ないと聞くが、そこのところどうなんだい、カフェ」
     「……おすすめはできませんね。こっくりさんは“あちらがわの子たち”に呼びかけ、対話する儀式ですから……思わぬものを呼び寄せてしまうかもしれません」

     よわいもの、よくわからないもの、あるいは参加者の意思思惑。そういったものを受け入れてしまいやすい状況が整っているとも言える。

     「……そのうち先生からも禁止されたんですが、それでも一部生徒の間で続けられていて、事故を言い当てたとか、失くしたものを見つけたとか……そういう噂話は時々耳にしました」
     そうして水面下で続いていたそれが、レセットの足元に浮上してくる日が来た。

     「先週のことです。どうしても伝えたい事があるって切り出されたんです」

  • 109/37 ◆iYE2HOM81Xsm23/09/01(金) 20:26:36

     昼休憩の終わり際、学校の空き教室、カーテンが引かれた薄暗闇の中。いつもこっくりさんをしている3人組が後片付けをしていた。レセットが来たことに気づくと、その中の一人が進み出てメモを手渡した。
     「来週のオープンスクールについて、こっくりさんに伺ってたの」
     メモはこっくりさんの最中に取られたもので一文字一文字間隔を空けながら「6の133」「わざわいにおおわれる」と書かれていた。


     「6の133は私の学生番号です」

     「災い……」
     「つい2日前のことです。隣のクラスの子が救急車で運ばれたらしいんです。私と同じように悪いこっくりさんのお告げを受けていた子で……今日のオープンスクールには参加できませんでした」
     レセットがその子と違ってオープンスクールに参加できているのは、オープンスクールの日付を指定してこっくりさんに尋ねたからだ、と、こっくりさんをしていた子は言ったそうだ。
     つまり「わざわい」は今日起きるということになる。

     「私、トレセン学園で走りたいんです!もし、先生方の心象を悪くするようなことが“災い”だったらと、思うと少し心配で……」
     「レセット君にはそれが一番の災厄なんだね」
     タキオンが優しい声色で微笑む。

     ほうと一息、肺の空気を押し出して視線をレセットから手元のカップに移した。
     レセットの抱える不安はアドバイスや経験談の提供で解消できるものではない。
     少し息を入れるつもりで臨んだほうが良さそうだ。

  • 1110/37◆iYE2HOM81Xsm23/09/01(金) 20:27:19

     暗幕の引かれた旧理科準備室は、ちょうどレセットにこっくりさんのお告げがもたらされた場面と同じ暗さなのではないかと思えた。
     少し部屋を明るくしようかと上げた視線に、雷雲が描かれたホワイトボードが留まる。
     そういえば、午後の予報はあまり良くなかったはずだ。ワンテンポ遅れて、思考がはたと思い当たって止まった。

     「タキオンさん、そこにあった数式は……何か大切な、意味のあるものだ。と言っていませんでしたか?」

     「ん?……あーっ!」
     その声が引き金になったかのように、丸底フラスコから勢いよく煙が吹き出し始めた。タキオンが慌てて装置の操作パネルに飛びつく。
     次の瞬間、カシャンと音が響いてフラスコが砕けた。ビルの爆破解体のように下部から粉々になって沈む奇妙な割れ方だった。

     「……爆発するかと」
     「もう少し遅れていたらそうなっていたね。助かったよ……ああ、この煙は吸わないように」

     慌てて自分とレセットの口を塞ぐ。勢い余って平手打ちのような形になってしまったが、息を止めているので謝罪の言葉は後回し。
     ハンカチで口を抑えたタキオンが、粘度が上がる過程で固有振動数がどうのと講釈をたれながら換気と後片付けをする様をしばらく見守ることになった。

     驚いて取り落としたレセットのカップは机の上を転がり、ガラスの天板に琥珀色の水面を広げていた。

  • 1211/37◆iYE2HOM81Xsm23/09/01(金) 20:27:39

     「うん、もういいだろう」 
     タキオンが手をはたきながら事もなげにそう言い放った頃には3分ほどの時間が経過していた。
     さすがにずっと息を止めては居られなかったので、カフェとレセットの口には少し前からハンカチが当てられている。

     「すみません、こぼしてしまって……」
     「いえ、こちらこそ急にすみませんでした……おかわりのコーヒーを入れましょうか」
     「あ、ちょっと待ってください」
     レセットがスマホを取り出す。「水没」の二文字が頭をよぎったが、ちらりと覗かせた画面には正常にメッセージアプリが映し出されていた。
     「友達からでした。ここにくるそうです」
     「紅茶のおかわりと追加が必要だね」
     指を滑らせて返信を打ち込み始めたレセットに、タキオンが言った。

  • 1312/37◆iYE2HOM81Xsm23/09/01(金) 20:27:58

     レセットの友人、オリーブターナーは二つ結びにした鹿毛の頭に、名前と同じオリーブ色のキャップを被ったウマ娘だった。背はタキオンと比較しても若干高いが、体操服の裾から除く手首はトレセン生では見かけないくらいほっそりとしていて華奢な印象を受ける。

     「あ、すぐに帰るから……帰りますので、おかまいなく」
     そう言ってこれまで旧理科準備室を訪れた多くのウマ娘たちがそうするように、そわそわと落ち着かない様子で視線と耳を泳がせながら、誘導されるままにソファに収まった。

     「まあ、そう言わずゆっくりして行きたまえよ」

     タキオンが紅茶のカップを並べる。
     すでにコーヒーカップもあったので、4人が囲む机の上には人数より多い6つのカップが並んだ。よくあることなのだが、傍から見れば奇妙な光景だろう。

     「えと……伝言です。レセットちゃん。『割れ物注意』……だけど、もう遅かったみたい」
     テーブルの隅には、先程の騒ぎの片付けに使った紅茶の染み込んだ布巾が残されている。

     「……今のがこっくりさんのお告げ、ですか?」
     「……はい。すぐ伝えようと探してたんだけど……ねえ、改めてこっくりさんをするみたいだから、来てくれない?レセットちゃんが心配で……ほら、モユクちゃんいつも言ってるじゃない?雷の日に樹の下に入るみたいに、悪いことが起こると分かっていれば避けられるって」
     「えっと……」
     オリーブが興奮気味に耳と尻尾をバタつかせ、レセットが困った顔をこちらに向ける。

     「行こうじゃないか」
     タキオンが大仰に白衣をはためかせて立ち上がった。
     カフェも首肯してあとに続く。

     本当に、上機嫌なときほど鬱陶しいひとだ。

  • 1413/37◆iYE2HOM81Xsm23/09/01(金) 20:28:15

     トレセン学園は広い。
     毎年秋の聖蹄祭でカフェが喫茶店を出店しているカフェスペースのように、普段は誰の気にも留められていないような施設や教室がいくつもあったりする。(このせいで「聖蹄祭のときにだけ出現する扉」なんて噂ができたこともあるが、平時からちゃんとそこに存在している。)

     オリーヴが案内したのも、そんな誰の意識にも引っかからないような、校舎の隅の用途不明のスペースだった。
     物置に見えなくもないが、そうだとしたら使われていない物置だ。
     天井はやや低く、3方向が壁で塞がれた八畳くらいの半部屋になっている。明かりは開放部から入ってくるのみで、今はスマホのライトにより白く照らされていた。
     こっくりさんをするにはこれくらいの明るさがちょうど良いのだろう。
     かすかにコースから練習の声が届いていた。

     待ち構えていた2人のうち1人は明るめの栗毛をしたウマ娘で、切りそろえられた前髪に防滴形の流星、長い後ろ髪を2本のみつあみにして垂らし、くりんとした目には大きめの黒縁メガネをかけている。短めの眉は意地悪そうにつり上がっていた。
     もうひとりは人間の女の子だ。トレセン学園内では少々珍しい。黒くてしっとりしたロングヘアーをべっ甲のバレッタで留めている。背中を丸めて栗毛のウマ娘の影に隠れるように立っていた。表情も対照的で、眉は切れ長の目と一緒に八の字を描いている。

     「ようこそ、レセットさん……そちらの方々は?」
     「えっと……」
     「なに、しがない学生だよ。彼女の課題の手伝いだと思ってくれ」
     訝しげな視線を投げかけられながらも、タキオンは涼しい顔で答え、赤銅色の瞳で周囲と彼女らを見渡した。その目が床に広げられた紙の上で止まり、小さく「ほう」と息を漏らす。

     それは50音と鳥居の書かれた半紙だった。

  • 1514/37◆iYE2HOM81Xsm23/09/01(金) 20:28:33

     物怖じしないタキオンに得体の知れなさを感じたのか、それとも暖簾に腕押しと判断したのか、黒縁メガネのウマ娘は崩れた調子を整えるように咳払いをした。
     「……私はマチノモユク、こちらは伏見宵(ふしみ よる)さんです」
     伏見がペコリと頭を下げる。タキオンは応じて短く名前だけ告げ、カフェもそれに倣った。(つられてやや粗野になってしまったことを少し反省した)

     「それで、レセット君を呼び出したの何故なんだい?」
     「もう聞いてると思うけど、前にこっくりさんで良くない結果が出たから詳細を……本人が居たほうが確実だから。逆に不参加のギャラリーが居るのはちょっと、ね……」

     部外者は立ち去れということか。
     確かにこっくりさんは普通、その場に居る全員が参加するもので、見学者などは置かない。
     やましいことがないとしても見られていてはやりにくい、あるいはそもそも降霊に失敗して実行できない、という言い分は妥当だ。

     隣でレセットの表情が緊張したものに変わるのが分かった。

     対してタキオンは口に手を当てて「ふうん」といつもの感銘とも軽視とも取れる声を漏らす。

     「信じられませんか?」
     「いやいや、まだ科学的な説明が追いついていない事象というものは往々にして存在するものだよ……しかし、信じられないというのなら……そうだね、『信頼に足らない』と、言葉を選ぼうか。疑っているんだよ。これは私の性分だから悪く思わないで欲しい」
     「……わかりました。でしたら、実際に見せましょう。いつもの……は、持ってきていないので少々お待ち下さい」

  • 1615/37◆iYE2HOM81Xsm23/09/01(金) 20:29:00

     モユクはくるりと踵を返して壁際に向かうと、そこに置かれていた彼女の物であろう鞄の前でしゃがみ込んだ。しばらくゴソゴソと何かしていたが、やがて振り返ると
     「……簡易的にこちらで」
     と、右手を突き出した。
     握られていたのは、細長い銀色のテープに吊るされた消しゴムという奇妙なアイテムである。
     内心首を傾げているところにタキオンがぽつりと「ダウジングか」とつぶやいたことで、ようやくそれが即席の振り子であることに気づいた。

     「原理はこっくりさんと同じ……タネの無い手品と思っていただければ」
     続いてポケットからコインを取り出し、オリーブに手渡す。
     「位置を当てます。私があっちを向いてる間にそちらで誰か握って隠してください」
     「え?私もですか?ダウジングもこっくりさんと同じで3人必要って……」
     「……なんとかなります……隠し場所は多いほうが信じてもらえると思いますから。伏見さんはいつも通り補佐をお願いします」

     オリーブは仕掛ける側に回りたかったのか少し残念そうに耳を萎びさせながら、コインを見せてくれた。おそらくこっくりさん用に持ち歩いていたのだろう。普通の10円硬貨だった。

  • 1716/37◆iYE2HOM81Xsm23/09/01(金) 20:29:21

     「……例えば、磁石はどうでしょうか?」
     「カフェー、これは普通の硬貨だ。磁石には引かれないよ。仮に鉄だとしても、消しゴムの中に隠せるような磁石では有意な反応は期待できないだろう」
     硬貨である以上、偽造や改造は法律に引っかかる。コイン自体には何の仕掛けもないと考えて良い。というのがタキオンの所感だった。

     淀みなく確認の会話を続けながらタキオンは自分を指差した。モユク(と伏見)は壁を向いているが、ウマ娘の耳に相談の声が届かない距離ではないからだ。
     オリーブがコクリと頷き、コインが受け渡される。
     タキオンはそれを少し見つめてから右手に握り込んだ。

     「……決まりました」
     「では、そのまま両手を前に出してください」

     カフェとタキオン、レセットにオリーブ4人の4組8本の手が並ぶ。

     「では、振り子さまを呼びます」
     モユクが少し迷った素振りを見せてから、振り子を床に置き、その上で伏見と手を繋いで輪を作った。
     「いつもは振り子を持った人が真ん中に入るんです」とオリーブが教えてくれた。

     「……先ほど申しましたとおり原理はこっくりさんですから、参加する全員が振り子に集中してくださいね」

     振り子が手の甲の上にかざされる。
     産毛がかすかな風を感じ取りはしたものの、それ以上は何も起こらずすぐに右手から左手へと移動していった。

     問題のタキオンの右手の上。
     最初は変化が無いように見えた。が、徐々に揺れが大きくなり、時計回りに円を描き始める。
     モユクは小さく「なるほど」とつぶやいてから、振り子を次の手へ移動させていく。

  • 1817/37◆iYE2HOM81Xsm23/09/01(金) 20:29:45

     「コインはタキオンさんの右手です。合っていますか?」
     一巡してから、モユクの指がタキオンの右手を指さした。

     「すごい!」
     オリーブが熱のこもった拍手を送る。

     「お見事……」
     タキオンが何も持っていない左手の方を開けるので、カフェも両手を開いた。レセットと興奮気味のオリーブもそれにならう。


     そして、もったいぶって最後に開かれたタキオンの右手にもコインは無かった。


     誰ともなく息を飲む音が聞こえた。緊迫感で空気が凍る。

     「……ククク、悪い悪い。冗談だよ」
     タキオンがさっと腕を振ると、コインが現れた。どうやら白衣の袖の中に隠していたらしい。
     「手品のようなものと言うから少し対抗心が芽生えてね……お返しだよ」
     「……とにかく、右手にあったのなら的中は的中です」
     「うん、そこに関しては異論はないよ」

     それにしても気分を害するには十分すぎたようで、タキオンからコインを受け取ったモユクの眉間には深く溝が刻まれていた。
     「では、先輩方には出ていってもらいます」

  • 1918/37◆iYE2HOM81Xsm23/09/01(金) 20:30:02

     「ひとつ、分かったことがある。ダウジングは”タネのある”手品だよ」
     旧理科準備室の空気はコーヒーと紅茶の匂いが混じり合って、重たく感じられた。
     ややあって発せられたタキオンの意見にはカフェも同意するところだった。

     ちょっとずるい気もするがこっくりさんと原理が同じ、すなわち降霊術なら、私にはそれが判る。少なくとも今回、振り子はモユクの意思で動かされたものだ。

     「実は、振り子の動いた範囲にコインは無かったんだ」
     「……説明していただいても?」

     タキオンはコーヒーフレッシュを一つ手に取ると、ストンと袖の中に落として見せた。白衣の袖がぶかぶかで容易いのもあるだろうが、なかなか手際が良い。
     そのままダウジングのときのように腕を突き出す。
     「さあ、今コーヒーフレッシュはどこにあると思う?」
     「なるほど……手首、ではありませんね」

     ゆったりサイズの白衣は簡単な動作でコインを肘のあたりまで落とし込むことができる。手首に隠しているならまだ振り子と近いからという言い訳も立つだろうが、肘なら並んだ隣の手よりも遠い。

     「フジ君直伝だよ。手慰みに練習していた甲斐があったねえ」
     そういいながら腕を振ってコーヒーフレッシュを手の中に戻す。解って見ればややオーバーアクションだ。
     「しかし……結果としてダウジングは成功していました」
     「まさに、そこが突き詰めるべき点だね」

  • 2019/37◆iYE2HOM81Xsm23/09/01(金) 20:30:16

     テーブルの上には私のスマホが置かれている。
     表示されているのは先程レセットから受け取ったショートメッセージだ。

     『おおうものよりはなたれる』

     ―― 覆うものより放たれる。
     それが、新たに下されたこっくりさんのお告げ。

     「……彼女らのこの後の予定、わかるかい?」
     「概ねですが……詳しく知っているひとがいますから、聞きに行きましょう」

  • 2120/37◆iYE2HOM81Xsm23/09/01(金) 20:30:38

     「ほら、ここです……」
     「『オープンスクールにより午後よりCグラウンド使用はできません』……なるほど」
     ひと月も前に食堂の掲示板に貼り出されたB5サイズ、モノクロ印刷の簡素なお知らせは、周囲のイベントごとやチームの勧誘などの華やかな掲示物の中にすっかり埋もれてしまっていた。
     開放感のあるガラス張りの壁から覗く空は灰色。除湿運転の空調が少し肌寒かった。

     「おー、連れ立って出歩いてるとは珍しい。何してんだ?」

     振り返ると、オープンスクールの参加者たちが数名のトレセン学園生に先導されながらぞろぞろと入ってくるところだった。
     声をかけてきたのは引率の手伝いをしていた鹿毛のウマ娘、ジャングルポケットである。非常に声が大きい。ここに来たのはなにも掲示物を見るためではなく、彼女が来ると見込んでのことだった。

     「手伝っているとは聞いていたけど、ちゃんとやっているみたいだね」
     「ったりめえだろ……そういや自由時間に一人、お前らの部屋を紹介したんだが、会えたか?」
     「ポッケさんの紹介でしたか」

     引率のボランティアも一時休憩だからと言うポッケとともに空いているテラス席に座る。
     館内では物珍しさに引き寄せられた在校生たちの好奇の目が、オープンスクール参加者たちの頬を温めていた。


     「さて、もう一度確認するが、なにか私の目に見えない存在によって振り子の対象が教えられていたわけではないね?」
     「おい、よせよ……何の話だよ……」
     ポッケが一瞬にして顔をひきつらせる。彼女はこういった類の話が苦手なのだ。

     「……少なくとも、本人の言うように降霊術のたぐい、というわけではありません」
     「では、簡単だ。実演してみせようか」
     思わず目を丸くした。タキオンにはすでに先程の手品のタネがつかめているというのである。
     「ちょっと?俺にもわかるように」
     どこまで話すか少々迷ったが、相談を受けたところから手短に説明した。(怪異の気配はないことを念押しさせられた)

  • 2221/37◆iYE2HOM81Xsm23/09/01(金) 20:31:07

     「ではポッケ君、少し手品の手伝いをしてくれたまえ、タネは……」
     「……なンか、割としょーもないな」
     「得てしてそういうものだよ」

     内容はあのときと同じ、コイン隠しだ。
     タキオンが目を閉じている間にコインをカフェとポッケで隠す。

     「……ポッケさんが隠し場所を知っているんですね」
     「そのとおり、あのときもこちらにオリーブ君が参加していただろう?これは助手が手品師に隠し場所を教えるタイプの手品というわけだ」
     カフェは頷きながらも、ささやかな抵抗としてあの時と状況を変えて”共犯者”であるポッケの左手にコインを握らせた。

     「いいですよ」
     「ふむ……」
     ポッケがどうやってコインの場所を伝えるのだろう、と彼女の顔をまじまじと見つめたが、少し困ったような視線を向けられただけだった。
     「そうやって助手を見つめ続ければあのときも即座に指摘できたかもしれないね……さ、振り子の登場だ」
     それは振り子とは名ばかりのマドラースプーンだった。自然に振れることはなさそうだ。
     タキオンがその先端を軽くつまみ、モユクがしたのと同じように手の上にかざしていく。

     はたしてそれはコインを隠したポッケの左手の上で円を描いた。
     「……と、いった具合だ」
     「どうやったんですか?」
     「まあ、そう焦らず。さっきも言った通り、これは助手から隠し場所を教えてもらうのがタネだ。つまり……」
     「……振り子は視線誘導」
     「そういうこと」
     しかし、アイコンタクトしようと顔を上げれば動きでわかるはずだ。目の端には映る。実際ポッケはあのときのカフェたちと同じように顔を振り子の方に向けていた。もちろん声やハンドシグナルも出していない。

     「……それらを使わず、サインを送る方法……ありますね、確かに」
     タキオンが「ほう」とつぶやき、ポッケは「おっ」と小さな歓声を上げた。
     ウマ娘には、目や口以外にも意図的に動かせる表情筋がある。それも隣りにいると見えにくい場所に。

  • 2322/37◆iYE2HOM81Xsm23/09/01(金) 20:31:31

     ポッケの鹿毛に触れる。
     それは「ヒエッ?!」という奇声とともにピクリと1度大きくはねてからカフェの指に収まった。
     「……手元に視線を集めておいて、耳の動きで合図を出す。これなら参加者には悟られず、助手から手品師にサインを送れます」
     動きの大きさによっては、参加せず離れて見ていたとしても気づかないかもしれない。そしてそれは、ウマ耳を持たない伏見には不可能な方法だ。

     「ですが、こっくりさんは……実際に当たっています」
     本題の「わざわい」は未だに訪れていないが、オリーブがレセットを呼びに来たときのお告げと、オープンスクール前に的中した件については不可解なままである。
     しかし、同じ原理を謳っていたダウジングにタネがあるとすれば、これらも同様である可能性は大きい。
     「本当に降霊術ができんなら、ダウジングでだけ嘘をつく必要は無えよな」

     必要で言えば、そもそも予言をする必要性もよくわからない。

     「なあ、こっくりさん自体は遊びの一環なんじゃないか?」
     「ことの始まりに関してはポッケ君の言う通り。遊びでいいだろうね」
     流行の切掛は恋占だったとレセットも言っていた。


     「……もしかしたら……いえ」
     もしかしたらと口にしたことで集めてしまった二人の視線を払う。
     「……実際に聞いてみましょうか」
     「ビビらすために手品を使うなんてのはリスペクトが無ぇ。フジ先輩みたいにしまいにゃ立ち会ったみんなが笑えないとな」
     ポッケが低めの声で、ずいと身を乗り出す。
     「乗りかかった船だ。俺にも一枚噛ませろよ」

  • 2423/37◆iYE2HOM81Xsm23/09/01(金) 20:32:00

     「覆うものより放たれる。か……」
     3人揃ってダークグレーの雲行きを見上げる。急かすように足早に流れていた。

     「天気は……悪いよな」
     「ええ……ですが、天候のことだとすると、レセットさんだけに忠告した点が不自然に思えます。もっと直接的な……」
     重たい雲に“覆われた”空だ。全員同じものを連想しているんだろう。だけど、それはあまりにも不確実なものだ。
     それに、もともとのお告げは『わざわいにおおわれる』で、そちらとは合致していない。

     「先の予言と比較してみようか……同じような予言を受けたという子が居たそうだが」
     「そうでしたね……今日は、お休みしているとか……」
     「あー、あっちの先生から聞いたなその話。なんでも、蜂の群れに襲われたとか……ああ、怖え怖え」
     ポッケが自分の言葉に肌を粟立てる。

     そのときのお告げの詳細はわからないが、蜂の群れも「覆う災い」と言えるかも知れない。
     そう考えていた耳にブーンと甲高い音が聞こえたものだから、カフェは咄嗟に身構えた。

     「あれは彼女らの学校が手配したものだったね?」
     「ん?ああ……」
     二人はカフェの様子など意に介さず空を見上げている。
     「今回参加してる生徒の中にあれのリースやってるところの社長令嬢が居るんだよ……自由時間にはコースへの行き方を聞かれたが、様子を見に行ってたのかもな」

  • 2524/37◆iYE2HOM81Xsm23/09/01(金) 20:32:33

     こうしてタキオンやポッケとお茶していると実感しにくいが、トレセン学園はけっこうなお嬢様学校である。才能は路傍にだって芽吹くが、目に付きやすいのは整備された場所ということだろうか。
     「……レセットさんも、上品な方でした」
     「ああ、あの子も社長令嬢らしいぜ。これも本人から聞いた」
     「仲良くやっているようだね」
     ポッケはなかなかに面倒見が良い。今回、オープンスクールを手伝っているのだって友人の代打である。

     「……タキオンさん、少し伺いたいのですが」
     「なんだい?」

     「……」
     カフェの問いかけにタキオンは一瞬目を見開いた。そしてすぐにそれを弛緩させると、うれしそうに答えた。
     「ああ、たしかにそういう物はある。研究もされているはずだ」
     「……家庭事情で聞きかじっていたのかも知れませんね」
     「しかし、だとすると……きっと本人たちが想像しているより危ないぞこれは」
     「ええ、ですから……止めましょう。私達で」

     「おい!」
     ポッケの声があまりに大きかったので、テラス席にいた殆どのウマ娘が驚いて会話を止めた。
     「詳しく、簡潔に、俺にもわかるように頼む」

  • 26◆iYE2HOM81Xsm23/09/01(金) 20:33:59

    ――― 箸休めポイント ―――

    以降解決編になります。
    少し時間を空けての投稿になります。

  • 2725/37◆iYE2HOM81Xsm23/09/01(金) 22:24:06

     ぽつりぽつりと雨がターフの細い葉を揺らし始めた。その脇では多くのウマ娘たちが引率に従って体育座りをしている。
     一般にウマ娘は生来より荒天候に強く、この程度の雨ではレースは中止にならない。それは練習も同じだ。

     踊り場の影に少女は身を潜めた。
     彼女はこの集いにあって例外的である。一人離れて雨宿りを申し出ていた。

     ……ここまでは計画通り。
     コースを見下ろすスタンドから人目を忍んで移動した非常階段。ここならコースを伺いつつ身を隠すこともできる。十全に事を運べるだろう。

     ため息を一つ。

     こんなの上手く行きっこない。それでも、失敗すれば自分のせいになるんだろう。「念には念をの腹案」に至っては本末転倒気味だ。

     スマホと連動したカメラを確認し、コントローラーを握る。
     眼下で4基のモーターが甲高い唸り声を上げ始めた。

     コースでは最初の組が走り始めている。
     G1ウマ娘とともに走れるのだから、あの子たちにはいい思い出になっただろう。それを台無しにしてしまうことへの後ろめたさも感じていた。
     ターゲットであるレセットに順番が回ってくるまではまだ余裕がある。

     コントローラーの出力摘みを回すと、ドローンはふわりと地を離れた。3メートル、4メートルと上り、2階席の高さに居る自分の目線の高さへと昇ってくる。

  • 2826/37◆iYE2HOM81Xsm23/09/01(金) 22:24:26

     「だあああああああああ!!」

     出し抜けに大声がコンクリートに反響してわんわんと響いた。

     「取った!!!」

     目の前に両手でがしとドローンの胴体を掴むウマ娘が現れた。
     一瞬重力に抗うように空中で静止したかと思うと、あっという間に地面に消えた。

     慌てて下を覗き込む。
     ジャージ姿のウマ娘。ふたりとも先程まで私達を引率していたトレセン学園の生徒だ。

     「大丈夫っスか」
     「ああ、サンキューな」
     「練習してた甲斐ありましたね、チームアップ」

     ドローンは本体側の電源を切られて沈黙した。今はただ、長く伸びたアルミテープが風になびくのみである。

     「さ、降りてこいよ。じゃなきゃ力づくでとっ捕まえるぜ?」

  • 2927/37◆iYE2HOM81Xsm23/09/01(金) 22:25:16

     「よっ、お二人さん。こっちは片付いたぜ」

     大粒の雨が叩きつけるコンクリート製の階段の下、ポッケは陽気に手を振った。
     足元にはドローンが跳ね返る水しぶきを浴びながら踏みつけられている。
     ドローンのキャッチ作戦にはもうひとり、ポッケの友人(名前は聞いてない)が参加していたが、私達と入れ替わりでオープンスクールの手伝いに戻っていった。

     「失敗したのね!!」
     ポッケの後ろに伏見の姿を見留めたモユクが突如ヒステリックな金切り声を上げた。
     タキオンが右手でそれを制し、伏見のほうはポッケが間に割り込むようにして背中で庇った。

     その余韻が少しの間コンクリートに跳ね返り、雨の空に消えていくのを見送ってから、マンハッタンカフェは口を開いた。
     「……最初から無理な計画でした」
     「そうとも。今回の事件 ―― と言うべきかは疑問が残るね。『今回の一件』としよう ―― は、”いくつかの思い違い”と”不完全な知識”でできている。いやあ、逆算するのは大変だったよ」

     「あの……詳しく話していただいても?」
     レセットが所在なさげに集まった面々の顔を見回す。
     私達3人に、オリーブ、モユク、伏見。レセットを加えて7人。
     客席スタンドの屋根のほんの半端の下で、互いが互いを睨むように、見張るように、肩を怒らせながら、不安げに、諦めたように、不愉快そうに、あるいは決意を込めた表情で立っている。

     「……もちろんです。多分に推論を含みますが……ご納得いただけるかと」

  • 3028/37◆iYE2HOM81Xsm23/09/01(金) 22:25:38

     雨のカーテンに薄らいだコースを見やる。
     在校生との併走はつい先刻、強くなる雨脚と雷に追いやられるまで行われていたが、さしものウマ娘といえど顔を打つ雨粒にとうとう目を開けていられなくなって中止となり、今はそのおかげでできた最後の自由時間の中にある。

     「さて……順を追って話しましょう。最初は、オリーブさんが呼び出しに来たときの予言からです」

     ―― 割れ物注意
     「実際にあの時、旧理科準備室では割れ物が出ていました……一見すると、予言は的中しているように見えます」
     レセットが頷く。彼女からしてみればその認識なのだろう。
     「ですが、思い返してください……割れたのはタキオンさんのフラスコでした。中に入っていた薬品が漏出し、割れ物よりよっぽど危機的な状況でした……」
     視線を送られたタキオンが肩を空かす。
     「この、事実とお告げの齟齬が何を意味するのか。考えていました……そして、思い出したんです。私が、あの部屋に到着する直前に、一人の子供とすれ違っていたことを」

     それを思い出した時、ポッケの言葉をもう一度確認してみた。
     旧理科準備室を教えた相手は一人。
     もちろん、ポッケ以外の人物が教えた可能性、他の細々とした可能性は残る。しかし、カフェがレセットではない子供とすれ違った事実は変わらない。

     「あれは旧理科準備室の外で、物音を聞いていたんです……私が近づいてきたときには、通行人としてすれ違ってしまうことでやり過ごして……」

     そうして予言に使えそうな物音や会話が聞こえてくるのを待った。ややあって聞こえてきたのはガラス製品の割れる音だった。

  • 3129/37◆iYE2HOM81Xsm23/09/01(金) 22:26:08

     「これが、最初のお告げ『割れ物注意』の正体です」
     「恐らく、本命のお告げの信憑性を上げるための一工夫。といったところだろう。レセット君は普段からこっくりさんには乗り気でなかったようだし」
     「仕上げにメッセンジャーのオリーブが『お告げを伝えるために探していた』と言えば、こっちからしたらお告げのほうが先にあったように見える。だろ?カフェ」
     ポッケが得意げに目配せしてくる。このあたりは私達で事前に共有している推理だ。
     頷くと、彼女はニッと微笑んだ。


     「あの、では、その後のダウジングは……?」
     「耳だよ」
     「耳?」
     「モユクさんは、オリーブさんの耳の動きでどこに隠したかを知ったんです」

     視線がオリーブに集まる。
     緊張で耳がキュッと絞られた。

     「……割れ物注意もオリーブちゃんだったね」
     レセットが震える声を絞り出す。
     「待って!違うの!」
     「ええ、違います……少し、順序だって話してもいいでしょうか?」

     2人ともが、カフェの言葉に目を丸くし、頷いた。

     最初は私達も同じ早合点をしていた。最初のお告げも、次の手品も、オリーブが実行犯であればシンプルで納得もいく。しかし、そうではない。
     その話の前に、目の前の状況を説明しておく必要がある。

  • 3230/37◆iYE2HOM81Xsm23/09/01(金) 22:26:23

     「……こっくりさんのお告げ。『災い』の正体がそれです」
     ポッケに踏み敷かれているドローンを、その躯体に巻き付いた銀色のテープを指差す。
     「タキオンさん」
     「うん。間違いないよ。あれは導電性アルミテープだ」
     「どうでんせい?」
     レセットがカサカサと揺れるテープを目で追う。一際長い一端が強風に揺られて雨の中をのたうっていた。
     「名前の通り、電気の通り道になるテープだよ」
     「そして、それは雷の通り道……”プラズマチャネル”になり得ます……今回の事件は、ドローンを使った避雷針の作成……雷の誘導を試みたものです」

     タイミングを伺っていたかのように、ひときわ眩しい稲妻が走った。ほんの1秒遅れて轟音が肺を揺らす。
     元々あまり気分が良さそうではなかったレセットの顔はみるみる青くなっていた。
     「それじゃあ、私……もう少しで……」

     「ち、違う!ちゃんと……」
     「わかっているとも。これは、ここに来る途中で回収してきたものだ」
     タキオンが取り出したのはラジオのアンテナのような伸縮式の小さな棒である。今はペンのようなサイズだが、伸ばせば2m近くになる。
     「800m地点のハロン棒に取り付けられていた。自由時間にポッケ君にコースの位置を聞いていたそうだね?おそらくこれの設置が目的だったのだろう」
     「これはおそらく……地上側の避雷針です」
     ドローンの飛行高度とテープの長さ、誘導の成功率を考えれば地上側にもなんらかの仕掛けはあるだろう。というのがタキオンの予測だった。そして、ドローンのキャッチ作戦に志願したポッケに代わり、併走の最中に目を光らせていたのである。

  • 3331/37◆iYE2HOM81Xsm23/09/01(金) 22:26:41

     「近くのハロン棒に被雷させ、驚かす。それが今回の一件の目論見というわけだ」
     「これは間接的に……オリーブさんの口から聞いた言葉ですが……『予言は避けられないとしてもこっくりさんを続けるのは、雷の日に樹の下に逃げ込ませる』ため……」
     「最初は殺意を証明する言葉かと思ったよ」
     「ええ。ですが……この一件はあくまで、小学生の企てたものなんです……先の言葉から判るのは殺意ではなく、モユクさんは避雷針を経由した雷には殺傷能力がないと勘違いしていた、ということです」

     モユクの顔に困惑の色が浮かぶのを見て少し安心した。この反応は推理の的中を告げている。

     「実際には避雷針が雷を無力化するようなことはない。木に落ちた雷はより良い通り道を探して木陰に居た人に向かって飛ぶこともあるし、地面から人体へ流れることすらありえる」
     「そういった必要な知識がないままこの計画を実行したのは……おそらく、今回の計画がこの1週間で本来の計画から変更になったものだから、ではないでしょうか?」
     「どうしてそれを?」
     思わずといったふうに聞き返した伏見をモユクが睨みつける。目には涙が滲み始めていた。

     「こっくりさんによる詳細の通告は、当日……つまり今日の昼前という非常に余裕のないタイミングで行われました。そのほうが正確だから、という言い分を信じないのなら……何か直前で予定を変更したから……そのせいで今日までお告げを訂正できなかった。と考えられます」
     もちろん、お告げの文言の変更があった事も大きい。
     似た言葉を選んではいるが「災いに覆われる」「覆うものより放たれる」の2つでは受ける印象が違いすぎる。

  • 3432/37◆iYE2HOM81Xsm23/09/01(金) 22:27:10

     「事前に聞いていたこっくりさんグループは3人。オリーブ君が居たから、全員揃っていると思ってしまった」
     しかし、レセットの話を思い返したとき、オリーブは後からのめり込んでいったという言葉を思い出した。こっくりさんを始めた3人には含まれない。

     そして、空いた一人の席は誰のものだったのかを考えた時、今回のオープンスクールに参加していない生徒が居ることに思い当たった。それ以外のウマ娘の生徒が全員参加していることは幸いにもポッケがスタッフとして把握していた。

     「ひとり、入院したために今回不参加の子が居るそうですね……原因は、蜂刺され」
     「おそらく、当初の予定では“わざわい”は蜂で、ドローンで巣を吊り下げて落下させる計画だったんじゃないかな?それが調達かリハーサルか……いずれかの段階で事故を起こした」
     「……そうして、あなたたちは計画の変更と、それに伴うこっくりさんの言葉の変更を行う必要に迫られた」

     「動機に関しては……憶測の域を出ませんが、今回の一件はレセットさんにこっくりさんを信じさせるためのものだったのではないでしょうか?」
     「単に脅かすのが目的ならわざわざリスクを犯してまでお告げを正確なものに訂正する必要は無いからね」
     「そう考えた時、オリーブさんが実行犯の候補から外れたんです」

     “割れ物注意”と“ダウジング”はどちらもこっくりさんがインチキであると分かっていなければならない。オリーブがタネを知っているであろう中心グループ3人の中に含まれないのなら、レセットを引き込むためにせっかくの信​者を1人失うことになる。

     「“割れ物注意”のお告げを実行し、聞き耳を立てていた人物……あのとき、私とすれ違った子は、伏見さん。あなたですね?」

     伏見は半ばポッケの後ろに隠れていたが、このときポッケが振り返るために身を捩った事で顔がよく見えた。覇気のない、青ざめた顔をしていた。

  • 3533/37◆iYE2HOM81Xsm23/09/01(金) 22:27:25

     「ピンクのパーカーを脱いでしまえば、ここではウマ娘でない事のほうが目立ちます」
     ウマ娘の耳ならフラスコが割れた音の後に続いた会話も聞き取れていただろう。というのもこの推理の根拠だった。

     「じゃあ、ダウジングのときは?」
     この質問をしたのはオリーブである。彼女もまた、信じていたものを1つ失おうとする不安に土気色の顔をしていた。

     「オリーブさん……ババ抜きですごく弱かったりしませんか?」
     「どうしてそれを……」
     「耳です……あなたの耳はすごく正直に動くんです……」

     ずっと緊張に絞られていたオリーブの耳がピクリと動いた。
     今のは意識して動かしたのかもしれない。

     「普段の段取りと違ったのは、3人必要という言い分を崩してでもオリーブ君を隠す側に入れる必要があった、ということさ」
     「これが、今回の一連の騒動の顛末です」
     「何か反論はあるかな?」

  • 3634/37◆iYE2HOM81Xsm23/09/01(金) 22:28:29

     ざあざと雨が叩きつけている。その音だけが支配する沈黙を破ったのはレセットだった。
     「あの……ポッケさんが止めてくださったんですよね?」
     ポッケの足元には依然としてドローンが踏み敷かれている。その上で彼女は事もなげに「ああ」と頷いた。
     「ありがとうございました」
     「いいってことよ」
     レセットもまた頷くと、意を決したようにモユクの方へと向き直った。
     「……都合よく雷が落ちなかった時はどうするつもりだったの?」

     当然の疑問だ。いくら上空高くまでアルミテープの避雷針を伸ばせるドローンとはいえ、落雷は確実ではない。むしろひどく実現性が低い。
     今回の一件が無知に起因していて、殺​害目的ではないと判断したのもこの犯行がいかにも失敗しそうだったからだ。

     ややあって答えたのは伏見だった。
     「サブプランは」
     「ちょっと!」
     「直接墜落させてぶつける事だったわ。そうなったら私は適当に失敗するつもりだったけど」

     「なんでこんな事を?」
     「あなたの家が、うちのお父さんの会社を買収しようとしてるでしょ?こっくりさんを信じさせれば、止められると思って……」

     長い沈黙の後、雨音にかき消されそうな声で
     「走るのだって速いのに、全部全部私を貶めなくたっていいじゃない」
     と付け加えたモユクの頬からは涙の雫が滴っていた。

     「知らないよ、そんなの……」
     突き放そうとしたわけではなく、本心からの困惑と不理解がレセットの言葉になって雨の中に染み入った。

  • 3735/37◆iYE2HOM81Xsm23/09/01(金) 22:29:06

     「カフェ、これをご覧よ」
     そう言ってタキオンが新聞を押し付けてきたのはあの雷雨の日から2週間ほどの日が行き過ぎた午後のことだった。
     普段カフェが目を通すことのない経済面には、とある企業の合併のニュースが報じられている。

     「敵対的買収ではないようだ……時期から考えて、おそらく最初から彼女の勘違いだったんだろう」
     「そうですか……」
     ふわりとカーテンが持ち上げられ、少し肌寒くなってきた秋の風が舞い込んだ。

     「よっ!やってるかい?」
     「ポッケさん……どうぞ」
     「あーいや、長居はしないつもりだ。二人にこれを、雁首揃ってる時に開けたくてな」
     それは、手作りと思わしき便箋だった。片隅には可愛らしい丸文字でレセットの名前が綴られている。
     「こないだのオープンスクール参加校から。お世話になった先輩に手紙を書こう!っつう企画で来たもんだ」

     新聞を脇に退けて便箋を受け取る。

     「……ずっと気になってたんだけどさ」
     ポッケが彼女らしくない声色で視線を落とす。
     「あん時、俺らが止めなくても計画は上手く行ってなかったんだろ?だったら、全部話す必要あったのかなって」

  • 3836/37◆iYE2HOM81Xsm23/09/01(金) 22:29:22

     落雷の誘導はあまりにも成功率が低く、腹案の激突は操縦する伏見が失敗させるつもりだったと語っている。
     私達はタキオンの言うところの「頭脳とチームワーク」で全てが起こる前に事態を食い止めることができたけれど、ポッケの言う通り、放って置いてもドローンが一基墜落するくらいの被害で終わっていた可能性が高い。止めた上でレセットには秘密のまま終わらせるという選択だってあったかもしれない。

     少女たちを無為に傷つける結果になったのではないかというポッケの後ろめたさや不安も十分に理解できた。

     「僅かな可能性でも、大惨事になっていたかも知れない。失敗が露呈しなければ次の犯行が計画されていたかも知れない……勘違いは消えても、こっくりさんのシンパを増やしたいという思惑や、競争能力へのやっかみは消えないだろうから」
     タキオンがティーポットから琥珀色の紅茶をゆっくりとカップに移し、ポッケに差し出した。
     「きっと彼女ら全員にとって、良い結果だったはず。私はそう信じているよ」

     「……ポッケさんが心を痛めているのも、幾分か彼女らの受けた傷を共有しているからだと思います。……それでも、解決に協力したことは後悔していないんですよね?」
     あなたは優しい人です。
     「……」
     「カフェ、手紙を」
     「そうですね」

  • 3937/37◆iYE2HOM81Xsm23/09/01(金) 22:29:40

     可愛らしい文鳥のマスキングテープを傷つけないよう、小箪笥からペーパーカッターを取り出して便箋の封を切った。


     『―― あの日、恥ずかしくて言い出せませんでしたが、私はポッケさんにカフェさんがどこに居るのかを聞いて、旧理科準備室へ向かいました』

     「なんだ、聞いてなかったのか?」
     「……そういえば、ポッケさんが紹介したんでしたね」
     「なんとなく察せてはいたよ。彼女、カフェのことは知っていたし、ここに来たときの第一声が「ここが」だったからね。あれは迷い込んだというよりは、探し当てたというふうだった」
     「それは私が聞いてないときですよね」

     『たいへんな事もあったし、巻き込んでしまったけど、それは間違いじゃなかったと思います。私、トレセン学園を目指します。きっといつか、カフェさんにもタキオンさんにも、ポッケさんにだって負けない走りをしてみたいんです』

     「そっか」
     「楽しみだね」
     「……ええ、」
     誰かから悪意を向けられるという体験を経てなお、彼女はまっすぐに向かってきているのだ。
     少し励まされたような気分になってソファの背もたれに身を沈めた。
     舞い上がった暗幕の切れ間から、爽やかな秋晴れの空が覗いていた。

    ―― Part.13 「みつぞろい で ある が ゆえ に」おわり

  • 40◆iYE2HOM81Xsm23/09/01(金) 22:31:52

    みたいな話が読みたいので誰か書いてください


    (>​>1 とトリップが変わってるのはトリップに使った文字列が長すぎて1文字削れたからです)

  • 41二次元好きの匿名さん23/09/01(金) 23:12:36

    名文だ、ありがたい…と思って読んでいたら、最後にやられました。そこにあるものが違うのならないです。

  • 42二次元好きの匿名さん23/09/01(金) 23:28:06

    もうここにありますね
    追いつきましたので感想をば
    すごく力の入った良長編でした…SSってなんだ…?
    キャラクターのエミュ精度が高くてセリフが読みやすかったです
    以下ネタバレ注意です

    推理パートに関して
    犯人(首謀者)がわかりやすかったのと動機は解決編から推察するしかなかったので「どういう手段で犯行に出るのだろう」という点に着目して読んでみました
    箸休めポイントの時点でドローンを利用した放電ギミックかな?と思ってはいたのですが…実際はもっと危険でした
    雷の対策に木の近くに寄るのは逆効果では?と思ってましたが伏線でしたね
    最後の爽やかな描写もこれからの未来を暗示しているようでいろいろと想像が膨らみますね、素晴らしい…

  • 43二次元好きの匿名さん23/09/01(金) 23:43:23

    なんだかポッケ言いたいこと言ってくれた気がしますね…第二第三の被害が出なくて良かったんだ

  • 44二次元好きの匿名さん23/09/02(土) 00:50:31

    ポッケちゃん優しい



    >>

    アグネスタキオンは野暮で杜撰で不摂生だが、同時に年下の若駒には妙に優しい気質の持ち主でもある。それはそれで余計に彼女を不審者然とさせてもいるのだが……美点は美点だろう。


    ここめちゃくちゃ笑った。たしかに不審者然──!

    推理はあまり得意じゃないので淡々と進む物語の雰囲気を味わいました。楽しかったです……

  • 45◆iYE2HOM81Xsm23/09/02(土) 11:30:35
  • 46◆iYE2HOM81Xsm23/09/02(土) 22:55:04

    おまけ上げ
    サムネイルにするなら顔アップのほうが良いと判断してバッサリトリミングされた全体図

オススメ

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