皆で埋めたタイムカプセル一人で開ける硝子の話読みたい2

  • 1二次元好きの匿名さん23/10/23(月) 19:24:47
  • 2二次元好きの匿名さん23/10/23(月) 19:25:34

    スレ立て乙です!!!
    構成力と文章力が本当に神で最高です………!!完結楽しみにしてます!!

  • 3二次元好きの匿名さん23/10/23(月) 19:28:06

    とりあえず規制されてない内に建てとくか…って感じなので今から飯食ったりなんやりで時間空きます 何なら今日は更新ないかもしれない 保守してくれると嬉しいですノシ

  • 4二次元好きの匿名さん23/10/23(月) 19:28:57

    >>3

    猫夏油!の方だったんですか!!!!????

  • 5二次元好きの匿名さん23/10/23(月) 19:29:48

    続き待ってる!!!!

  • 6二次元好きの匿名さん23/10/23(月) 19:30:43

    スレ立て乙です
    最後がどうなるのかドキドキしてます…

  • 7二次元好きの匿名さん23/10/23(月) 19:30:45

    >>3

    夏油猫!夏油猫じゃないか!このスレ大好きで定期的に見直してるから嬉しい

    絵描けて文も書けるのは最早羨望どころじゃない…

  • 8二次元好きの匿名さん23/10/23(月) 19:33:01

    >>3

    久しぶりの夏油猫〜〜〜!!ほんとあなた様の描かれる夏油猫大好きです、というかどのイラストも可愛くて好きです〜〜〜!!間違ってなければ他カテでいつも面白くて感動するスレ見てたので最新話見て大丈夫かなぁと心配してたのでここでスレ立ててくださった時めちゃめちゃ安心しました、戻ってくるのを楽しみに待ってます!!

  • 9二次元好きの匿名さん23/10/23(月) 19:53:31

    まさか夏油猫と同じ人とは……同じ人だよね?

  • 10二次元好きの匿名さん23/10/23(月) 20:18:15

    10保守
    たくさん読めて幸せや

  • 11二次元好きの匿名さん23/10/23(月) 20:52:34

    >>9

    今気づいた。

  • 12二次元好きの匿名さん23/10/23(月) 21:30:27

    捕手

  • 13二次元好きの匿名さん23/10/23(月) 23:03:17

    うおぉ今前スレ1から読んで猛烈に涙が出そうだ……………ほしゅほしゅ

  • 14二次元好きの匿名さん23/10/23(月) 23:15:52

    保守ありがとうございます それとすみません今日更新無理そうです……
    今週中には片が付くといいな(低めの目標設定)

  • 15二次元好きの匿名さん23/10/23(月) 23:18:40

    >>14

    ゆっくりでいいので楽しみにしてます!

  • 16二次元好きの匿名さん23/10/23(月) 23:19:40

    2スレ目にも突入したことですし、ゆったりスタイルで大丈夫かと

  • 17二次元好きの匿名さん23/10/23(月) 23:20:41

    >>14

    見たい…絶対にあり得ないとしても見たいよ…

  • 18二次元好きの匿名さん23/10/24(火) 06:13:53

    悲しくて美しいお話ありがとうございます
    保守

  • 19二次元好きの匿名さん23/10/24(火) 08:49:31

    最高のスレ☆

  • 20二次元好きの匿名さん23/10/24(火) 09:15:29

    無理だ尊い…
    待ってます!

  • 21二次元好きの匿名さん23/10/24(火) 09:33:23

    前スレ読んできたけどこれは神スレ

  • 22二次元好きの匿名さん23/10/24(火) 10:06:10
    夏油猫|あにまん掲示板まずいbbs.animanch.com

    多分スレ主が立ててたやつ

    猫が可愛いんだ

  • 23二次元好きの匿名さん23/10/24(火) 17:14:23

    夕方の保守
    夏油の勘違い拗ね拗ねを打破するカタルシス楽しみですわ

  • 24二次元好きの匿名さん23/10/24(火) 19:46:42

    あーーーっ!!
    ずっと更新を待ち侘びいてた人が好きなスレたててた…いいSSだなあと思ってたが…
    例の本誌の1ヶ月前くらいから音沙汰なかったから安心した…楽しみに待ってます…

  • 25二次元好きの匿名さん23/10/24(火) 21:20:35

    今日は来てくれるかな?
    わかる、正直本誌でスレ主様確か五条推しだったはずだから大丈夫かなって心配してたから無事生還できて(?)るっぽくて良かった

  • 26二次元好きの匿名さん23/10/25(水) 00:59:03

    保守

  • 27二次元好きの匿名さん23/10/25(水) 01:11:05

    保守

  • 28二次元好きの匿名さん23/10/25(水) 01:56:48

    夏油猫以外でこの方の立てたスレが知りたい

  • 29二次元好きの匿名さん23/10/25(水) 06:23:12

    保守

  • 30二次元好きの匿名さん23/10/25(水) 10:19:14

    保守

  • 31二次元好きの匿名さん23/10/25(水) 12:10:50

    良スレ

  • 32二次元好きの匿名さん23/10/25(水) 17:51:01

    「…………は?」

    微かな呻きが第一声だった 切れ長の双眸が大きく見開かれる 唖然という言葉を辞書で引いたら例として今の夏油の表情が挙げられるに違いない あるいは青天の霹靂か

    「今、何て」

    「どういう意味だ?」

    どうもこうも言葉通りだよ これが五条の居ない理由

    五条は────

    「硝子」

    再びの言葉が遮られる ぐりぐりと親指で眉間を掻くのは、この男が努めて平静を保たんとする時の癖だった 無理やり吊り上げた口角が痛々しい

    「紛い物相手とはいえ、言っていい冗談と悪い冗談があると思うんだが」

    目の前に居るのがこんな時に質の悪い冗談を言うような奴に見えるか?……返答は無かった

    縋るような視線の向く先は私か、それとも

    「だからっておかしいじゃないか」

    「だって、だって悟はっ!」


    「最強に、成ったじゃないか……」

  • 33二次元好きの匿名さん23/10/25(水) 17:55:31

    わーい、おかえりなさーい!
    初っ端からめっちゃ重い、重いけど描写というか地の文が好きだー!!
    夏油と硝子がんばれ、ここから少しでもハッピーな道を進むんだ………!!

  • 34二次元好きの匿名さん23/10/25(水) 18:07:13

    お前2人で最強って言ってた癖に「君1人でもなんでも出来るじゃん私いらなくね(要約)」って突き放されて1人で僕最強だから!ってヘラヘラしてた五条知らんのか

    死んだから知らんか…そっか…

  • 35二次元好きの匿名さん23/10/25(水) 20:12:54

    めっちゃ辛い…

  • 36二次元好きの匿名さん23/10/25(水) 22:26:40

    保守

  • 37二次元好きの匿名さん23/10/25(水) 22:34:39

    スレ主、ありがとう

  • 38二次元好きの匿名さん23/10/25(水) 23:30:54

    うーん今日中にもう一レスくらいはと思ってましたがダメそうです 今週中に終わるの無理かもしれんね…… 気長にお付き合いください……



    こっから下は何の話か心当たりの無い方はスルーしてください

    ご心配してくださった方がいるみたいで申し訳ないです この通り元気です
    消えてた理由は向こうの総合スレで軽く話してます 原作やキャラクターが嫌になったとかでは決してないです もしそうだったらこのSS書いてねえんだわ
    また向こうでもスレ建てしたいなーと思ってるのでその時はよろしくお願いします!

  • 39二次元好きの匿名さん23/10/25(水) 23:32:58

    投稿お疲れ様です!
    スレ主のペースで最後まで走り抜けてくれたら嬉しいです

  • 40二次元好きの匿名さん23/10/25(水) 23:37:48

    絵がめちゃくちゃ上手いけどしんどい
    夏油は屍体を糧にして咲く桜を美しいとは思えないと言っていたけど
    夏油自身も人々の普通の生活を守るために環境に食い潰された「屍体」側だったんかな…辛いわ

  • 41二次元好きの匿名さん23/10/25(水) 23:38:17

    向こうのSSも好きなんで楽しみですありがとうございます
    気長に待ってます

  • 42二次元好きの匿名さん23/10/25(水) 23:44:03

    (向こうの総合スレってなんだ…)

  • 43二次元好きの匿名さん23/10/25(水) 23:54:26

    このレスは削除されています

  • 44二次元好きの匿名さん23/10/26(木) 07:07:02

    絵が上手いけどその絵が辛い…夏油は今までどんなふうに桜を見ていたのか

  • 45二次元好きの匿名さん23/10/26(木) 11:52:03

    一番更新楽しみにしてるスレ

  • 46二次元好きの匿名さん23/10/26(木) 18:27:09

    保守
    お元気そうで安心しました…

  • 47二次元好きの匿名さん23/10/26(木) 22:16:15

    桜の樹の下にはってやつ、ネタは知ってても元の小説は読んだ事なかったから今度借りてこようかな、気になってきた

  • 48二次元好きの匿名さん23/10/27(金) 07:28:53

    おもしろいです。

  • 49二次元好きの匿名さん23/10/27(金) 07:57:20

    楽しみだね

  • 50二次元好きの匿名さん23/10/27(金) 11:41:30

    >>47

    短いからすぐに読めるし、おすすめ

  • 51二次元好きの匿名さん23/10/27(金) 12:44:00

    行き詰まって来たから気分転換に書いたもの

    夏油視点です

    遺棄「夏油さま」 

    幼い声に振り向くと、かわいい養い子たちがよく似た顔ではにかんでいた そのうちのひとり、美々子の手にはまんまるのクッキー缶 どうしたのかと問えばもうひとりの奈々子が元気よく答える


    「タイムカプセル!」


    ぱか、と蓋を開けたクッキー缶は彼女たちの宝箱のようだった キラキラシール、うさぎのヘアピン、香り付き消しゴム、ほんのり色付きのリップクリーム……お揃いにできるようふたつずつ、求められるがまま買い与えた嗜好品たちがやや乱雑に並べられている


    「これをうめるの」


    「おとなになったらあけるの!」


    タイムカプセルだなんてどこで知ったのかと聞くと、少女たちは顔を見合わせナイショと笑う 大方ラルゥ辺りが吹き込んだのだろう 未だ人見知りの改善されないふたりだが、彼(いや彼女?)には不思議と懐いていたので 


    「何か夏油さまの物もちょうだい」


    「いっしょにうめよ?」


    「うーん……」


    くすくすと楽しそうな双子の頭からは大事なことが抜け落ちているみたいだ クッキー缶に手を伸ばし、おもちゃの指輪を手に取る 宝石を模した飾りのついたそれは最近の彼女たちのお気に入りだった


    「埋めてしまったら、明日からはこれで遊べないよ?」…
    telegra.ph
  • 52二次元好きの匿名さん23/10/27(金) 13:52:45

    わあああ夏油の救いを求める悲痛な祈りが辛い……この夏油の解像度の上がる良いSSだ………

  • 53二次元好きの匿名さん23/10/27(金) 20:00:01

  • 54二次元好きの匿名さん23/10/27(金) 22:21:56

    「どうして」

    長い沈黙を破ったのは夏油の方だった

    時計の時刻は相も変わらず午後11時7分02秒 明けることのない夜の中、項垂れる少年の背はやけに小さく見えた

    「どうしてそれを教えたんだ」

    ……五条はちょうど地方に出張中で〜だの、残念ながら予定が合わなくて〜だの、その場しのぎの優しい嘘を吐かれて、オマエはハイそうですかって納得出来るのか?

    返事はない 代わりに彼の青褪めた顔が何よりも雄弁に物語っていた

    「……私という記録は」 

    夏油が口を開く そして堰を切ったように溢れ出した

    「2007年3月28日23時07分02秒時点から更新されることはない」

    「実体化を保てるのは術式の媒体となる映像機器が再生されている間のみ、こちらから外部への干渉は不可能」

    「……なあ、分かるだろう硝子?」

    刺すような視線が身体を射抜く 悲痛な訴えに耳を塞ぐ権利も目を逸らす資格も私には無いだろう 残酷なことをしている自覚は十二分にあったから 

    「知ったところで私はどこにも行けないよ」

  • 55二次元好きの匿名さん23/10/27(金) 22:28:41

    >>54

    残酷…実際現実で行動を起こすことはできないから知らない方が幸せではあったんだよな…でも知った方が良いと思うんだよ、複製でもたった一人の親友の最期は

  • 56二次元好きの匿名さん23/10/27(金) 22:55:48

    桜の木は病気になりやすい
    仮に屍の養分で綺麗に咲いたとしてもそれがずっと綺麗に咲き続ける保証なんてどこにもない

    だから土を替えたり剪定したりこまめな手入れをする頼もしくて優しい人たちが必要だった
    大事なのは屍の養分だけじゃないそんなたくさんの優しい人たちの力が必要だったんだ
    あの世界にはそれが足りなかったんだ…

  • 57二次元好きの匿名さん23/10/28(土) 08:08:08

    保守

  • 58二次元好きの匿名さん23/10/28(土) 14:17:57

    伝えなかったら嫌われたんだなって納得しちゃうし伝えたとしてもどこにも行けないし、データ夏油はどうしたら……わからねえ……

  • 59二次元好きの匿名さん23/10/28(土) 21:09:42

    保守

  • 60二次元好きの匿名さん23/10/29(日) 00:20:29

    「だからね、なーんにも出来ない」

    12年前と変わらない姿のまま、17歳の夏油傑は自嘲めいた笑みを零した 成長の止まった身体は今もあの年の三月に囚われている 

    「私は、アイツに何も」

    打ちひしがれる夏油を前に、私はただ立ち尽くすことしか出来なかった ノイズ混じりの静寂が帳のように私達を包み込む

    こうなることは予測できていた

    事実を告げれば彼を傷付けることになるのは自明の理だった 思い詰めながらも未来を信じようとした少年にこの現実はあまりに酷い

    それでも、本当のことを告げたのは

    「……いや、今更か」

    「この件にオリジナルもレプリカも関係ないよな」

    嘘や建前を使ったところで、この頭の硬い男は見当違いな苦しみを抱え続けると思ったから 

    「だってあの日、悟の隣に立てなくなった時点で私は──」

    きっとそれを、アイツは望んでいないだろうから

  • 61二次元好きの匿名さん23/10/29(日) 00:22:59

    進捗が終わってて不甲斐のうございます……明日(もう今日だけど)はもうちょい頑張りたい……

  • 62二次元好きの匿名さん23/10/29(日) 00:24:52

    >>60

    描写が本当に上手い…知らせない方が絶対傷つくものね、知らせても知らせなくてもどちらかが正解なんてことはないけどオリジナルの代わりに知ってくれ…オリジナルの方はもう現世にはいないのだから

    >>61

    絵が可愛いけど血…!まあ離反してからの方が楽しそうではあったけどね…

  • 63二次元好きの匿名さん23/10/29(日) 07:27:32

    ほしゅ

  • 64二次元好きの匿名さん23/10/29(日) 09:50:19

    つら……無理しないように続き待ってます………!!幸せになって………

  • 65二次元好きの匿名さん23/10/29(日) 17:50:21

    護衛の件がなかったらこんなことにはならなかっただろうに…起きてしまったから戻らないけどさ

  • 66二次元好きの匿名さん23/10/29(日) 21:00:18

    念のためほし

  • 67二次元好きの匿名さん23/10/29(日) 22:58:55

  • 68二次元好きの匿名さん23/10/29(日) 23:39:55

    ……あのさあ

    後ろ向きな呟きを無理やり遮る それ以上は言わせてやるものか

    これっきりだからな、五条

    此処には居ない男に心の中で悪態をつく 私が何を言ったところで、奴はへらりと軽薄な笑みを浮かべるばかりなんだろうけれど

    橋渡し役にはうんざりしている

    雑踏の中に沈む背を見送ったやるせなさも、平然と自分が居なくなったあとのことを託される焦燥感も 言付けする方はされる方の気持ちなんかちっとも考えていない あんな思いはもう二度とごめんだ

    だけど

    「……っ」

    目の前で泣きそうな顔をしている友人を放っておけるほど、私は薄情者じゃない

    本物の夏油は今頃地獄なり何なりで五条とよろしくやってるんだろう アイツの最期を詳しく知っている訳じゃないが、全て終えた後の五条のどこか清々しい横顔を見るに、そう悪いものでは無かったのだと思う 案外憑き物の落ちた顔で一年振りの親友を出迎えたのかもしれない

    でもこの夏油の前に、五条が現れることは永遠に無い たったひとり、時の止まった世界に置き去りにされた彼へ言葉を届けてやれるのは私しか居ない

    ……本当に、いつまで経っても世話の焼ける連中だよ

    「硝子……?」

    いいか、よく聞け夏油

    五条はオマエを嫌ったことなんて一度も無いよ

  • 69二次元好きの匿名さん23/10/30(月) 07:44:20

    しんどい

  • 70二次元好きの匿名さん23/10/30(月) 12:14:49

    硝子姉さんーーーーー…………泣
    ありがとう、そして硝子さんも幸せになってくれ頼む………

  • 71二次元好きの匿名さん23/10/30(月) 20:31:03

    保守保守

  • 72二次元好きの匿名さん23/10/31(火) 01:44:03

    保守

  • 73二次元好きの匿名さん23/10/31(火) 07:49:14

    保守

  • 74二次元好きの匿名さん23/10/31(火) 13:11:44

    そうだよ、嫌いになるわけないじゃないか…

  • 75二次元好きの匿名さん23/10/31(火) 21:40:36

    読者は本物がどうしたか知ってるからなんとも言えない
    ここにいるデータの夏油の心を救って欲しいぜ

  • 76二次元好きの匿名さん23/10/31(火) 21:41:21

    あと置いてかれちゃった硝子さんの心もこの対話で和らげられて欲しいぜ……

  • 77二次元好きの匿名さん23/10/31(火) 21:44:02

    さしす…

  • 78二次元好きの匿名さん23/10/31(火) 22:51:58

    最近進捗死んでて本当に申し訳ない……10月今日で終わるのマジ……?

  • 79二次元好きの匿名さん23/10/31(火) 22:54:01

    >>78

    か、可愛い…魔女っ子硝子さん可愛すぎだろ…!

    夏油と五条も可愛い幽霊だな〜硝子さんに使役でもされてるのかな

  • 80二次元好きの匿名さん23/11/01(水) 00:10:55

    「え?」


    夏油の眼が大きく見開かれる 何その顔、そんなに驚くようなことじゃないだろ


    「いや、だって……」


    だってもクソもあるか 十年以上アイツを見てきた私が保証してやるとも


    もし五条が生きてたら、絶対オマエに会いに来てたよ


    五条悟が生きていたら その仮定を口にした瞬間、心の何処かに棘が刺さる心地がした ちくりと広がる痛みに気付かない振りをして、眼の前の夏油を見つめる


    自らや仲間を屍体と定義してしまったこどもの視野狭窄を咎め、花の美しさを説く大人に夏油傑はなれなかった


    彼が待ちわびた救いは現れなかった


    それでも、夏油傑がどれだけ変わり果てようと、かの男をたった一人の親友と呼び続けた人間が居たことが、少しでも眼の前の少年の救いになればと思う


    だから夏油、そんな顔しないでよ


    「…………………………」


    いや信じてねえなこれ


    ま、無理もないか コイツの石頭は今に始まったことじゃない だがちゃんと伝わってくれなきゃこっちも困る、五条も草葉の陰でブチ切れること間違いなしだ


    ……あのことについて話せば少しは納得してくれるだろうか


    あのこと

    >>83

  • 81二次元好きの匿名さん23/11/01(水) 02:48:08

    ksk

  • 82二次元好きの匿名さん23/11/01(水) 02:48:54

    0の時の最後の言葉

  • 83二次元好きの匿名さん23/11/01(水) 02:49:11
  • 84二次元好きの匿名さん23/11/01(水) 07:25:57

  • 85二次元好きの匿名さん23/11/01(水) 15:26:57

    保守

  • 86二次元好きの匿名さん23/11/01(水) 17:10:00

    ほしゅ

  • 87二次元好きの匿名さん23/11/01(水) 21:06:31

    ほし

  • 88二次元好きの匿名さん23/11/02(木) 00:14:44

    ──あれは二年前のこと

    「メリクリ~!!」

    騒々しい音を立て医務室の扉が開いたのは、コーヒーでも淹れようかと立ち上がった矢先のことだった 諸々の後処理がようやく一段落ついた頃、日付はとうに変わっていた

    「あ〜、疲れた 遅くまでやってる店で予約しといて良かったよ」

    しばらく姿の見えなかった男の手には白い箱が抱えられている まさかと思うが今から食べるのか?

    「逆に聞くけどクリスマスにクリスマスケーキ食べなくていつ食べるの?」

    我が物顔でベッドに腰掛ける五条は箱の包装紙をぺりぺりと剥がしている せめてそこで食うのはやめろ、抗議しつつ戸棚からマグカップをふたつ取り出した 角砂糖5つね!と横から明るい声が飛んでくる 知ってる


    「お疲れ」

    美味そうに甘ったるいコーヒーを啜っていた五条がふと顔を上げる ホールケーキは残り三分の一ほどに減っていた

    そっちこそ 労り返すと五条の口角が緩いカーブを描いた 目元を覆う包帯はそれ以上の表情を読み取らせない

    色々大変だったけどさ、そう前置きして彼はぽつりと呟く

    「終わってよかった」

  • 89二次元好きの匿名さん23/11/02(木) 07:14:14

    まさか百鬼夜行の日…?

  • 90二次元好きの匿名さん23/11/02(木) 11:23:25

    二年前だもんなそうだよなあ

  • 91二次元好きの匿名さん23/11/02(木) 18:03:05

    ほしゅ

  • 92二次元好きの匿名さん23/11/02(木) 19:02:24

    ……最後に夏油と何の話したの?

    「なに、気になるの」

    ううん、そういう訳じゃないけれど

    聖夜の狂騒は幕を閉じた きっとコイツも夜が明ける頃には普段と変わらぬ五条先生の顔に戻っている だから、らしくないことを言うなら今のうちだと思った

    私は最後まで蚊帳の外だなって



    「……あのこと、まだ怒ってる感じ?」

    ささやかな恨み言に、五条はフォークを苺に突き刺したまま固まっていた だがそこは五条悟、再始動にそう時間は掛からなかった

    僕なりに気ィ遣ったつもりなんだけどなだの女心って分かんね〜だのぼやきながら、ひとり役目を終えた、終えてしまった処刑執行人は残りのケーキを頬張っている 食いながら喋るのやめな?

    ……ないがしろにされてる訳じゃないことぐらい分かってる でも、少しくらいはさ──

    「うん、硝子ならいっか」

    こちらの言葉を遮るようにフォークが皿に置かれる

    「傑と何話したか、だっけ」

    「僕はただ事実をありのまま伝えただけ だってアイツ、ぜーんぜん分かってないでやんの!」

    ケラケラ笑う五条はマグカップの縁をなぞり、そして

  • 93二次元好きの匿名さん23/11/02(木) 20:39:12

    そして……そして……!!!

  • 94二次元好きの匿名さん23/11/02(木) 21:19:39

    まあ当然だけど硝子と、もしかすると夜蛾先生にしかそれは話す気なかったよね…夜蛾先生に話すかは微妙だけどさ
    仮に話すとしたらそのくらいの人選かな

  • 95二次元好きの匿名さん23/11/02(木) 21:35:05

    そして、オエッとケーキもどした?

  • 96二次元好きの匿名さん23/11/02(木) 23:47:55

    >>94

    五条と夏油の青い春を身近で見てきた人じゃないと、教えても意味ないもんな

  • 97二次元好きの匿名さん23/11/03(金) 01:00:46

    「……悟が、そんなことを」

    一字一句違わず告げてやった言葉は、どうやらこの夏油の心にも響いたらしい 黒い瞳が動揺に揺れている

    言っとくけど嘘じゃないからね?五条の言ったことそっくりそのまま伝えただけ

    「流石にもう疑わないよ」

    君はそんな人じゃない、苦笑混じりに夏油が零す

    「……嫌われたんじゃなかったんだな」

    それから彼は目を閉じて

    「悟……っ」

    両手で顔を覆った ……夏油?

    「オリジナルの私は何をやってたんだよ」

    「どうせ何にも出来なかったんだろ」

    「悟はずっと、こんな私を信じてくれたのに、私は……私はっ!」

    漏れ聞こえる声が嗚咽であることに気付くのにほんの少し時間が掛かった だって、この男が泣いている姿なんて一度も見たことがなかったから

    失ったと思い込んでいたものがずっと自分へ向けられていたこと それを返す相手は二度と此処へ現れないこと ようやく受け入れられた親愛が遅効性の毒のように夏油の体内を回り始める

    「私は、悟に何も」

  • 98二次元好きの匿名さん23/11/03(金) 08:35:18

    保守

  • 99二次元好きの匿名さん23/11/03(金) 12:58:01

    うあああ………アニメでの親友だったんだ、を聞くと余計に重みが……辛い……

  • 100二次元好きの匿名さん23/11/03(金) 13:33:25

    「親友だった」んじゃなくて本当は「ずっと親友のままだった」んだよね

  • 101二次元好きの匿名さん23/11/03(金) 20:54:42

    「悟」

    「君がどれほど想ってくれようとも」

    「やっぱり私にそんな資格はないよ」 

    「だって、だってッ、貰ってばかりで何も返せないのに……!」

    うわ言のように繰り返される言葉はノイズに混じって宙に消えるばかりだ

    震える肩を擦ろうにも、幽霊同然の身体に触れることは叶わない 当然、指の隙間からこぼれ落ちる涙を拭ってやることも

    近付けるのに届かない過去の亡霊 その心に触れる手段はひとつしかない


    「……すまない、取り乱した」

    腫れた目を擦る夏油が格好悪いところを見せたねと自嘲めいた笑みを零す 気にすんな、オマエを特段格好良いと思ったことはない

    「えっ…………」 

    何でそこでちょっと面食らうんだよ……まあ少しは落ち着いたみたいだね

    そう言って夏油の隣の机に腰掛ける 貰ってばかりで何も返せない、だったか

    そんなことないと思うよ

    「…………」

    なあ夏油、大人になった五条は何になったと思う?

  • 102二次元好きの匿名さん23/11/03(金) 21:54:10

    >>101

    何に…最強…ではない?

  • 103二次元好きの匿名さん23/11/04(土) 01:13:40

    「俺だけ強くても駄目らしいよ」
    最強だった男のターニングポイントとなった決意…
    高専時代の夏油には思いもよらない進路だよね

  • 104二次元好きの匿名さん23/11/04(土) 08:47:09

    本物の夏油も教師になった五条を知ってどう思ったんだろうなぁ…

  • 105二次元好きの匿名さん23/11/04(土) 15:20:17

    「何って……」

    私の問いかけに夏油は僅かにたじろいた だがそれも一瞬のこと、回答は迷いなく寄越された

    「最強」

    他に何があるんだと言いたげな口振りだった 膝の上に置かれた拳がきつく握りしめられる

    「きっと今よりずっと強くなって、ひとりで高みに立っていたんだろう」

    切れ長の眼がそっと伏せられる 彼の表情はひどく暗いもので

    「……二人じゃなくて、一人で」

    その事実が夏油を打ちのめしたことは火を見るより明らかだった

    ……オマエの言うことは間違っちゃいない 現代最強の呪術師は五条悟ただひとりだ

    でもそれだけじゃ駄目だって思ったんだろうな

    「え?」

    夏油が怪訝そうな顔でこちらを見つめている だがコイツこそがオマエを大して適性も無さそうな道に進ませた半分……ううん七割くらいの原因なんだろうね 心の中で語り掛ける

    ──そうだろう、五条先生?

  • 106二次元好きの匿名さん23/11/04(土) 19:44:13

    先生……

  • 107二次元好きの匿名さん23/11/04(土) 22:55:57

    五条はさ、教師になったんだよ

    「は?」

    夏油があんぐりと口を開ける 言っている意味が分からないという顔だった まあ気持ちは分からなくもない 当時の私も同じことを聞かされれば、エイプリルフールにはまだ早いぞと鼻で笑うことだろう

    「教師って……あの教師?」

    他にどの教師があるんだよ

    「あの悟が!?」

    うん、あの五条が

    「し、信じられない…………」

    呆然とした様子で夏油が続ける 悟が先生? あの天上天下唯我独尊の擬人化のような男が誰かを教え導く立場に?ガキのお守りは二度とごめんじゃなかったのか?そもそも向いてないだろ……うわ、散々な言い様

    だけど本当だよ 五条はひとを育てることを選んだ どれだけ高みに至ろうと、アイツはアイツなりにひとを愛することを諦めなかった

    多分 それはオマエが五条にあげたものなんだよ、夏油

    「……私?」

    ふふ、ピンときてなさそうな顔

    ……そうだな オマエに倣って、私も花で喩えさせてもらおうかな

  • 108二次元好きの匿名さん23/11/04(土) 22:58:28

    まあそりゃ驚くよね…当時を知っている者なら尚更

  • 109二次元好きの匿名さん23/11/05(日) 08:34:58

    善悪の指針…

  • 110二次元好きの匿名さん23/11/05(日) 17:24:41

    保守
    この神スレ絶やしてなるものか

  • 111二次元好きの匿名さん23/11/05(日) 21:06:09

    桜の樹の下には屍体が埋まっている

    ぐちゃぐちゃの死体から養分を吸い上げて、桜の花が咲いているのだとしたら この世界の美しいものは、誰かの犠牲の上に成り立っているのだとしたら もし、そのことを理解してしまったら

    二度と桜を美しいとは思えない……だったっけ?

    「……その話と悟が教師になったことに何の関係が?」

    夏油が怪訝そうに首を捻る まあ聞きなってば

    つまりオマエは地中の屍体に思い至る前は、地上の桜を美しいと思えてたってことだろう

    「っ!」

    息を呑み固まる男に私は更に続ける

    花は、世界は、美しいのだと 守るに値する価値があるのだと オマエは信じていた 違う?

    「でも私は……もう、そんな風には」

    夏油が力なく首を横に振る 項垂れる彼の瞳に、窓の外で咲く桜の花は映らない

    「未来の私も此処には現れなかった だから私はずっと、屍体に囚われて、」

    確かにそうかもな でも今の夏油と未来の夏油がどうであろうと、過去の夏油が花を慈しんでいた事実は消えないだろ?

    「え……?」

    その事実が誰かを変えたことも、ね

  • 112二次元好きの匿名さん23/11/05(日) 22:53:44

    硝子さんのカウンセリングが染み渡りますね……

  • 113二次元好きの匿名さん23/11/06(月) 07:48:56

  • 114二次元好きの匿名さん23/11/06(月) 11:20:38

    泣いてしまう…夏油が五条に与えた影響ってほんとうに大きいと思うんだよね…

  • 115二次元好きの匿名さん23/11/06(月) 12:52:34

    入学したての頃、五条がどんな奴だったか覚えてるか?

    「最悪だった」

    即答かよ、私も同感だけどさ 笑いを噛み殺しながら当時の五条を思い浮かべる

    傲岸不遜、傍若無人 周囲の人間には無愛想かつ無関心 おまけに誰に対しても等しく放たれる皮肉と煽りのせいで、生来の整った容姿は完膚無きまでに台無し そんな図体ばかり大きなこどものことを

    ──雑魚には興味ねえから 精々足引っ張んなよ

    脳裏に蘇るのは顔合わせのホームルーム 微妙に遅れてきた挙げ句、とんでもないことを言い放った男のサングラスに隠された蒼い双眸だ

    「ひとの顔を見るなり変な前髪とは何だ、失礼にも程があるだろう」

    教室の空気が凍る中、真っ先に口を開きそれを咎めたもう一人の男は今、私の隣に腰掛けている 未だに腹に据えかねるものがあるらしい、眉間には不機嫌そうに皺が寄っている まあ実際変だけどな前髪

    「えっ…………」

    何故か鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている夏油をよそに、校庭の桜へと目をやる

    出会いと別れ、そして芽吹きの季節 私達の出会った春にもあの桜は咲いていた それだけじゃない、名もなき草花だって大地に根を張り懸命に花ひらいている どこかひとの営みに似たそれらを美しいと、私はまだ思えている

    あの頃の五条は桜の木を見上げたりはしなかった ましてその下で咲くちいさな花々なんか視界にも入っていなかったんだろう

    花も、世界も、どうでもいい

    そうやってつまんなそうに頰杖ついてた五条に、そんなことないって教えてやったのはアンタだろ夏油

  • 116二次元好きの匿名さん23/11/06(月) 14:54:37

    地縛霊みたいなカプセルの夏油君の時間が豊かな未来へつながっていく...
    硝子さんの言葉
    愛だなぁ

  • 117二次元好きの匿名さん23/11/06(月) 22:07:08

    紙の本にしてほしいくらい好き

  • 118二次元好きの匿名さん23/11/07(火) 00:01:32

    家入硝子さんお誕生日おめでとうございます

  • 119二次元好きの匿名さん23/11/07(火) 00:08:06

    硝子ちゃんお誕生日おめれとー!!

    >>118

    三人ともkawaii

  • 120二次元好きの匿名さん23/11/07(火) 00:12:42

    >>118

    ハピバ硝子さん!!!そうか、もう11/7なのか………!!!本誌では色々と苦しいかもしれんが最後には笑ってくれることを願ってる………!!

  • 121二次元好きの匿名さん23/11/07(火) 06:05:52

  • 122二次元好きの匿名さん23/11/07(火) 12:29:17

    保守

  • 123二次元好きの匿名さん23/11/07(火) 13:44:29

  • 124二次元好きの匿名さん23/11/07(火) 14:42:39

    色合いが言語化できないけどきれい

  • 125二次元好きの匿名さん23/11/07(火) 18:19:22

    保守

  • 126二次元好きの匿名さん23/11/07(火) 19:11:48

    >>115

    さらっと前髪をディスっていく硝子さん草

  • 127二次元好きの匿名さん23/11/08(水) 01:05:21

    >>118

    遅刻だけど誕生日おめでとう硝子さん…今からでも幸せになってくれ…

  • 128二次元好きの匿名さん23/11/08(水) 07:06:46

    「私、が……?」

    しらばっくれるなよ 初日に殴り合いの大喧嘩までした相手に、無視されようが話し掛けてたのはどこの誰だっけ?

    ね、別に放っておいても良かったんじゃないの 隣の男に目線を戻すと、彼は恐る恐る口を開く

    「……初めてだったから」

    「同年代で、同じものが視えるひとに会ったのは」

    ……初めてねえ きっと五条もそうだったんだろうな アイツは育ちが特殊だから、高専に来るまで同年代の友人なんて居なかったろうよ

    この奇妙な空間にタイムカプセルの中身を持ち込めれば良かったのに そして過去の私が撮った写真を見せてやるのだ 切り取られた学生時代はどれも他愛もないもので、だけど五条の隣には大抵夏油が写っていて、どちらも馬鹿みたいに笑っていて

    そんな初めての日々が、青い春が、五条悟の世界を鮮やかに塗り替えたのだ 

    花は、世界は、美しいと 守るに値する価値があると たったひとりの親友がそう教えてくれたから ソイツと過ごした青春がそれを何より証明していたから

    オマエが愛せなくなった世界を、変わらず五条は愛していた

    だから五条は教師になった 世界を変える手段として、種を蒔いて水をやって花を育てることを選んだ ……あの天上天下唯我独尊の擬人化みたいな男がだぞ? 他の誰でもない夏油傑がそうさせたんだ

    大丈夫、オマエが五条に残したものは沢山あるよ



    …………なあに、また泣いてんの?

  • 129二次元好きの匿名さん23/11/08(水) 07:48:51

    >>128

    泣きそう

  • 130二次元好きの匿名さん23/11/08(水) 16:43:55

    保守

  • 131二次元好きの匿名さん23/11/08(水) 19:51:57

    「っ、泣いてない゛……」

    隣の席から聞こえてくるのは掠れた声と時折鼻をすする音で 嘘つけと笑ってやれば、夏油が制服の袖で乱暴に目元を擦った さとる、唇だけで男がそう呟く

    「こんな暗い所で十何年も待つ必要なかったんだな」

    「見えない先の自分に縋らずとも、変わらないものはずっと近くにあったのに」

    「……馬鹿だなあ、私」

    ようやく気付いたか そりゃそうだ、土の下から助けてと叫ばれたところで誰も聞こえやしない オマエが其処に居ることすら埋めた張本人以外には知らないんだから

    「でも君は会いに来てくれたじゃないか」

    ……だとしても、だよ

    オマエの声に耳を傾けてくれる奴は、ちゃんと地上に居たのに 今更告げてやれば、コイツはどんな顔をするのだろう 困らせてしまうだけだろうか

    こちらの気持ちを知ってか知らずか、夏油は穏やかに笑んでいる 目は赤く腫れていたけれど、清々しい表情だった

    「望んでいたものとは違うが、答えが得られて良かった」

    「ありがとう、硝子」

    瞬間、ノイズが一際強くなり、そして


      ぐわん

  • 132二次元好きの匿名さん23/11/08(水) 22:40:45

    うゔ(;_;)
    ありがとう硝子さん…………

  • 133二次元好きの匿名さん23/11/08(水) 23:36:44

    眼の前の風景が揺れる 電波の乱れたテレビ画面のように、教室の輪郭がゆっくりと崩れていく

    「大丈夫かい?」

    いつの間にか腰を上げていた夏油がこちらへ手を伸ばしている いや触れないんでしょオマエ……気持ちだけありがたく受け取って自力で床に足を下ろす 数度瞬きするが視界は戻らない ねえ、これなに?

    「さっき話したろ 私という記録が実体を保てるのは、術式の媒体となる映像機器が再生されている間だけだ」

    なるほど 私達がこうして喋っている間も現実世界ではテープが再生されていて、それが終わりに近づいてるって訳か

    「あと、これは言い忘れてたんだけど……」

    罰が悪そうに頭を搔く夏油 歯切れの悪い声だけでなく、彼の姿そのものにもノイズが混ざるようになっていた

    「リピートがさ、出来ないんだよね」

    ……リピート?

    「コピーされた記憶や人格、言い換えれば魂の情報の複製だ 単なる情報としてなら半永久的に保管が可能なんだろうが、一度実体化してしまうとそうもいかない」

    とん、夏油が自らの胸を叩く

    「記録の再生は一度きり」

    綻び始めた教室の真ん中で、晴れやかに笑う

    「お別れだ、硝子」

  • 134二次元好きの匿名さん23/11/09(木) 00:02:48

    今日はここまでです
    やっと終わりが見えてきました あともう少しお付き合いください
    花の下りすごい比喩的な話をしてるので分かりにくかったらすみません でもこの話をする為に梶井基次郎引用してきたようなものなので……

  • 135二次元好きの匿名さん23/11/09(木) 00:26:41

    投稿ありがとうございます。別れは悲しいけど、夏油(記憶)と硝子さんの結末、楽しみにしています

  • 136二次元好きの匿名さん23/11/09(木) 01:05:33

  • 137二次元好きの匿名さん23/11/09(木) 07:05:43

    夏油…偽物とはいえどもう会えないのか…

  • 138二次元好きの匿名さん23/11/09(木) 10:13:34

    空港のクズども、見てるか?
    お前たちの仕事だったのに姐さんが一人でやってくれたぞ

  • 139二次元好きの匿名さん23/11/09(木) 19:55:57

    保守

  • 140二次元好きの匿名さん23/11/09(木) 20:09:40

    一気に読んでしまった…涙が…続き楽しみにしてます

  • 141二次元好きの匿名さん23/11/10(金) 06:42:23

  • 142二次元好きの匿名さん23/11/10(金) 06:42:49

    このレスは削除されています

  • 143二次元好きの匿名さん23/11/10(金) 07:18:35

    相変わらずこのかたの五条は癒しだから見れて幸せ、絵柄が可愛くてふわふわしてて癒される

  • 144二次元好きの匿名さん23/11/10(金) 10:23:59

    ⭐︎

  • 145二次元好きの匿名さん23/11/10(金) 20:51:19

    薄々そんな気はしていた この手の邂逅に二度目が無いのはお約束ってやつだろう

    「外での時間経過までは分からないけれど……大丈夫、ちゃんと帰れるから」

    私のことはいいよ それより夏油はどうなるんだ テープの再生が終わったら、オマエという存在は──

    「消えることは怖くないさ」

    こちらの言葉を遮り、夏油は首を振る たった一度の邂逅を待ちわびていた少年は凪いだ瞳をしていた ちょっと前までしゃくり上げて泣いてた癖に

    ああ、だけど 夏油傑の情報を持った何かが一歩踏み出す 教室のドアへと歩みを進める

    「紛い物の魂でも、還るべき場所へ行けるなら」

    「……きっとそこで、彼とまた」

    開け放たれたドアの向こう側に廊下は無く、灰色の空間がどこまでも広がっていた よく出来た領域だと思っていたが、教室の外までは作り込まれていないらしい アレだ、ドラマの撮影セットみたいな感じ

    「元気でね、硝子」

    男の背が、灰色の世界へ呑み込まれるように消えていく

    その背を見送って、私は目を閉じる 伝えるべきことは伝えた 夏油も少しは救われてくれたはずだ ドアが閉まる前、こちらを振り返った表情は穏やかだった

    だから、これでいい



    ………………本当に?

  • 146二次元好きの匿名さん23/11/11(土) 07:08:27

    保守

  • 147二次元好きの匿名さん23/11/11(土) 14:34:01

    硝子さん…

  • 148二次元好きの匿名さん23/11/11(土) 15:06:55

    ん?最後の一行…

  • 149二次元好きの匿名さん23/11/11(土) 21:59:50

    まだ何かあるのか…?

  • 150二次元好きの匿名さん23/11/11(土) 22:18:58

    ザザザ……

    耳に障るノイズ音が足音を打ち消していく 教室の外、暗澹と広がる灰色の空間はところどころ亀裂が入っていて、そこからはらはらと崩れ落ちてゆく 終わりが近いのは明白だった

    まだだ

    ヒールの付いたパンプスはお世辞にも走るのに適しているとは言えないけれど、脱ぎ捨てている時間もなさそうだ 砂の嵐を潜り抜けながら、私は走った 張りぼての教室は振り返らない

    私は、まだ



    どれほど時間が経ったのだろう 進んでも進んでも代わり映えの無い風景に、ぽつんと浮かぶ背中を見つけたのは、長らくしていない全力疾走に身体が悲鳴を上げ始めた頃だった

    遠ざかっていく背中に、何を言っても無駄だと諦めて、何も言えないまま見送った それが私たちの最後になった 最後になってしまった

    一歩、踏み出す また一歩、もう一歩

    あの日追えなかったオマエに

    ノイズに掻き消されないよう、声を張り上げる

    あの日言えなかった言葉を


    ──待って!

  • 151二次元好きの匿名さん23/11/11(土) 22:22:34

    そっか…そうだよなあ
    硝子さん、止められなかったもんなぁ

  • 152二次元好きの匿名さん23/11/11(土) 23:33:06

    「硝、子…………?」


    振り向いた夏油は随分と驚いた様子だった 私が追いかけてくるとは露も思わなかったらしい


    「どう■て────に?そ■───息■切───」


    慌てて駆け寄って来た彼の身体は、向こう側(といっても何も無い灰色空間だが)が透けて見える程薄くなっていた 声もノイズ音に掻き消されてほとんど聞き取れない ははーん、コイツこの姿を見られたくなくてわざわざ教室出てった節あるな この格好つけが


    「危──■よ──も■も戻─くな■──ら、どう──■んだ」


    何やら心配していることは分かるが、ここまで来て引き返すつもりはさらさらなかった




    この夏油は、夏油傑本人ではない コイツはあくまであの頃の夏油の記憶を持った何かに過ぎないし、もうすぐ跡形も消えてしまう


    それに彼は消滅を恐れていない 花も世界も愛せないままでも、たったひとりの親友からの友愛が変わらなかった事実は、確かにこの夏油のこころを救ったのだと思う 答えが得られてよかった、そう言った彼の横顔は満ち足りたものだった もう他に望むことは無いのだろう


    だから、これはただの自己満足だ


    誰かとの橋渡しでもなく、誰かからの伝言でもない 夏油のためでもなく、五条のためでもない


    私が、私のために、私の言葉を伝えたい 中途半端で別れてしまった友人に、ちゃんとさよならを言いたい


    弔いは、生者が明日を生きるための行為なのだから


    硝子が夏油に伝えること

    >>155

  • 153二次元好きの匿名さん23/11/11(土) 23:34:19

    私がいただろ
    何が一人だ
    馬鹿野郎

  • 154二次元好きの匿名さん23/11/11(土) 23:35:56

    私がいたろ
    何が独りだ
    馬鹿野郎

  • 155二次元好きの匿名さん23/11/11(土) 23:36:11

    五条にスカートのけん怒っておいて

  • 156二次元好きの匿名さん23/11/11(土) 23:36:12
  • 157二次元好きの匿名さん23/11/11(土) 23:36:15

    私がいただろ
    何が一人だ
    馬鹿野郎

  • 158二次元好きの匿名さん23/11/11(土) 23:37:01

    うそぉ………スレ主さん今頃頭抱えてんじゃないか………?w

  • 159二次元好きの匿名さん23/11/11(土) 23:41:42

    まあくだらない話でさよならをするのもアリでは・・・うん・・・

  • 160二次元好きの匿名さん23/11/12(日) 07:28:48

  • 16115523/11/12(日) 07:38:41

    朝起きて見ました

    まさか安価になるとは思っておらず……申し訳ないことしちゃった……

  • 162二次元好きの匿名さん23/11/12(日) 08:39:03

    でぇじょうぶだ
    数多の安価を捌いてきたスレ主に判断をお任せするんだ

  • 163二次元好きの匿名さん23/11/12(日) 14:30:08

    安価確認しました
    新宿でロクに対話させてもらえず五条にバトンタッチしたのがわだかまりになってて、それでもこの空間に来てからずっと夏油の為に五条の気持ち代弁してやってた硝子ちゃんが最後の最後でようやく自分の思いの丈を…ってのが結局五条への伝言なのは何か……と安価は絶対やろがいの間で揺れています どうしようちょっと考えさせて……

  • 164二次元好きの匿名さん23/11/12(日) 14:36:34

    お疲れ様です、頑張ってください、イラストもありがとうございます!

  • 165二次元好きの匿名さん23/11/12(日) 14:54:11

    保 守

  • 166二次元好きの匿名さん23/11/12(日) 14:55:14

    背中押してる…!

  • 167二次元好きの匿名さん23/11/12(日) 17:05:55

    再安価でもいいと思う(小並感)
    安価踏んだ本人も安価のつもりじゃなかったみたいだし

  • 168二次元好きの匿名さん23/11/12(日) 21:48:36

    硝子姉さん…

  • 169二次元好きの匿名さん23/11/13(月) 06:43:17

  • 170二次元好きの匿名さん23/11/13(月) 06:51:12

    最初の安価でスカートから始まって最後の安価もスカートとかなんか運命感じる…しかも狙ってないのが凄い

  • 171二次元好きの匿名さん23/11/13(月) 13:37:49

    主さんの悔いの残らない方向でやってほしい
    応援ほしゅ

  • 172二次元好きの匿名さん23/11/13(月) 22:00:30

    ほしゅー、そろそろ残りの数やばくなってきたな……

  • 173二次元好きの匿名さん23/11/13(月) 23:59:50

    これは
    「私が居ただろ、何が独りだ馬鹿野郎」&「歌姫先輩のスカート借りパクは絶許だから私と先輩の分で二発殴っておいて」のダブルでいいんじゃないですかね…2つ目は「あっそうだついでに」みたいな感じでくっつければ多分自然かと

    スレ主さんの思いのままにお書きくだされ
    安価に縛られ過ぎる必要は無いですよ

  • 174二次元好きの匿名さん23/11/14(火) 06:44:13

    お待ちしてます

  • 175二次元好きの匿名さん23/11/14(火) 14:29:36

    ほしゅ

  • 176二次元好きの匿名さん23/11/14(火) 19:41:35

    >>173

    しばらく考えたんですがこれでいこうと思います まだ何も書いてないのでちょっと待ってて……

  • 177二次元好きの匿名さん23/11/14(火) 23:53:11

    保守です

  • 178二次元好きの匿名さん23/11/15(水) 08:19:18

    言伝ての後は己の言葉で、というのがグッとくるんだよなぁ
    硝子さん頑張れ

  • 179二次元好きの匿名さん23/11/15(水) 17:27:25

    ほしゅ

  • 180二次元好きの匿名さん23/11/15(水) 22:37:31

    保守

  • 181二次元好きの匿名さん23/11/16(木) 08:19:56

    ほしゅ

  • 182二次元好きの匿名さん23/11/16(木) 18:09:25

    保守

  • 183二次元好きの匿名さん23/11/16(木) 21:26:23

    保守ありがとうございます 更新滞っていて申し訳ありません 実生活がバタバタしてて中々時間が取れず……ちゃんと終わらせられるよう頑張ります

  • 184二次元好きの匿名さん23/11/16(木) 23:23:20

    お疲れ様です。どうか無理をなさらず。ご自身のペースで執筆してくださいませ

  • 185二次元好きの匿名さん23/11/17(金) 09:17:06

    保守

  • 186二次元好きの匿名さん23/11/17(金) 17:44:20

    保守

  • 187二次元好きの匿名さん23/11/17(金) 23:22:16

  • 188二次元好きの匿名さん23/11/18(土) 07:43:28

    保守

  • 189二次元好きの匿名さん23/11/18(土) 17:21:13

    ほし

  • 190二次元好きの匿名さん23/11/18(土) 20:12:56

    保守

  • 191二次元好きの匿名さん23/11/18(土) 22:24:18

    私が教室飛び出してまで追い掛けてきたのがそんなに意外?

    少し意地悪に問うてやると、夏油は困った表情で眉間を抑える そして無言でこくりと頷いた 開きかけた唇がすぐ真一文字に結び直されたのは、今や何を言ってもノイズに呑まれてしまうことを自分でも理解しているからか ああ、この際一方通行でも構わないとも

    ここまで付き合ってやったんだ ちょっとは私の話も聞いてよ、夏油



    ──そもそものはなし 私が何を思ってビデオテープを再生したのかってとこからだけど

    オマエのことを知りたかったんだ

    ほら、誰かが歌ってたろ 未来の自分に宛てて書く手紙なら、きっと素直に打ち明けられるだろうって……あ、分かんない?ちょうどあの頃の曲だと思ってたんだけど違ったかな

    ……とにかく あのビデオテープの中には多かれ少なかれオマエの本音が隠されてるんだと思った

    それを知りたかった あの頃オマエが何を考えていて、何を思っていて、何を感じていたのか 分かりたかった

    今更かもしれないけれど、だって

    だって夏油、何にも話してくれなかったから

  • 192二次元好きの匿名さん23/11/18(土) 23:42:41

    ま、流石にこんな形でご対面出来るとは思わなかったけどね 教室でオマエの姿を見た時は本当に驚いたよ

    「…………」

    別に糾弾がしたい訳ではない 吐露した言葉が恨みがましく聞こえていないか気になって、なるべく明るい調子で話そうと努めている しかし眼の前の男の顔を見るに、あまり上手く取り繕えていないのかもしれない まあ、それはお互い様か

    そりゃあ誰にだって言えないことはあるだろうよ オマエにも、私にも、きっと五条にすらも

    ……うん、分かってるよ

    「さ、と■……も───」

    ノイズまみれの声がまた此処に居ない男の名前を呼ぶものだから、ついさっき聞いたばかりの泣き言がリフレインする


    『こんな暗い所で十何年も待つ必要なかったんだな』

    『見えない先の自分に縋らずとも、変わらないものはずっと近くにあったのに』


    その悔恨が、自分に向けられたものでないことも理解している

    ……それでもさあ

    ぎゅっ、と拳を握り締めた 声が震えないことを祈りながら、口を開く 吐き出す


    私だってずっと近くに居たろ

  • 193二次元好きの匿名さん23/11/19(日) 08:26:01

    ショウコサアアアアアン

  • 194二次元好きの匿名さん23/11/19(日) 15:47:19

  • 195二次元好きの匿名さん23/11/19(日) 21:09:44

    流石にそろそろ次スレ立てなきゃなんですが今ちょっと無理そうです 本当ぐだぐだですみません……
    管理人ちゃん、自宅のホスト規制解いてくれ 必要だろ

  • 196二次元好きの匿名さん23/11/20(月) 08:18:13

    保守

  • 197二次元好きの匿名さん23/11/20(月) 17:19:09

    保守

  • 198二次元好きの匿名さん23/11/20(月) 22:58:12

    保守
    規制解除間に合えばここで次スレ貼ってくれる感じかな

  • 199二次元好きの匿名さん23/11/21(火) 10:42:41

    ちょっと厳しそう?

  • 200二次元好きの匿名さん23/11/21(火) 17:09:51

オススメ

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