(SS・クロス注意)ヴィブとれ白浜

  • 1二次元好きの匿名さん23/12/01(金) 22:44:04

    このSSは下記のスレで誤った情報を流布してしまったため、訂正の意味を込めて書いたSSです。

    ご了承ください。


    とれとれ市場呼びって公式だっけ?|あにまん掲示板まだ呼んでないよね?bbs.animanch.com
  • 2二次元好きの匿名さん23/12/01(金) 22:44:21

    「とれとれ市場……その娘、誰……?」

     白浜港の定期船の動き始める時間、背後から冬の三段壁で感じるような薄ら寒い視線。
     振り向いていれば、そこには青と水色のリボンに包まれたツインテールのウマ娘が立っていた。
     この場にいるはずのない彼女────ヴィブロスは、海金剛の断崖のように鋭い目を向けている

    「今日は……お仕事だって……そう言ってたよね……?」

     ヴィブロスの嫌疑の視線は、俺の隣にいる少女に向けられていた。
     白浜海岸の如く白くて美しい肌と、和歌山発祥である醤油のように艶やかな黒い長髪。
     市堀川のイルミネーションのようにきらきらとした瞳で、その少女はぽかんと俺達を見つめている
     俺は弁明をしようとしたが、その前にヴィブロスの怒りが熊野にカルデラを作りそうな勢いで噴火した。

    「嘘つき! 今日だけじゃない、この間だってそう! とれとれ市場の営業時間は、18時半までだったよ!」

     以前、ヴィブロスを早めに返してあげるためについた嘘が、白浜町内循環線のように返ってくる。
     食事のラストオーダーですら17時半なのだ、16時だなんて嘘、簡単にバレるに決まっていた。
     何も言い返せない俺を見て、ヴィブロスは富田の水のように透き通った涙を流す。

    「とれとれ市場なんてもう知らない! その娘と一緒に、カタタのいかだ釣りにでも行けば良いじゃない!」

     そう言って、ヴィブロスは俺に背を向けた。
     引き止めなければいけない、けれど、彼女を傷つけた俺に一体何が言えるというのだろうか。
     言うべき言葉はまるで喉を通らず、間に合わなかった南海フェリーを見送るように、彼女を見送ってしまいそうになる。

  • 3二次元好きの匿名さん23/12/01(金) 22:44:36

    「────う~ん! いい天気やな~! こんな日は白浜をダッシュしたいな~!」

     その時突然、俺とヴィブロスの間を抜けるように、場違いなほど明るい声が響き渡る。
     二人で声の方向に目を向けてみれば、黒髪の少女がたっちょのように背を伸ばして、空を見上げていた。
     
    「よ~しっ! 行ってまうか! ……にっしっしっ!」

     やがて黒髪の少女は悪戯っぽい笑みを浮かべると、足を止めていたヴィブロスに近づいた。
     困惑の表情を浮かべるヴィブロスに対して、新鮮なクツエビのように赤裸々な表情を見せる。

    「なぁなぁ、私と、白浜のダッシュ対決せぇへん?」
    「……えっ?」
    「なにもしやんことないやろ? ほな決まり! さっ、いっしょにいこらー♪」
    「えっ? えっ?」

     そしてそのままヴィブロスの手を引いて、黒髪の少女は白鷺のようにぴゅうっと浜に向けて駆け出した。
     それは珍しい光景だった、どちらかといえば人を振り回すヴィブロスが、完全に振り回されている。
     ……まあ、俺『達』も例外なく、二河の火祭りの炎のように振り回されているわけだが。
     がさりと物音が聞こえる。
     物陰から黒スーツに身を包んだ二人組が、慌てた様子で飛び出して来た。
     俺はその人達と顔を見合わせて、一緒に彼女達を追いかけるのであった。

  • 4二次元好きの匿名さん23/12/01(金) 22:44:48

     ────ウマ娘と人間の身体能力の差は歴然である。

     ましてやウマ娘の得意分野である『走る』というアクションにおいては、普通の玉子とうめたまごほどの差。
     黒髪の少女は那智の滝のような汗をながして、ふらふらとヴィブロスの後を追っていた。

    「はぁ……はぁ……いやあさすがウマ娘さんやね、こら勝負したらあかんやつやったわ……」
    「でもでも! あなたもとても早くて、きらきらしていたよー!」
    「あはは、ありがとう、お世辞でも嬉しいもんやね」

     実際のところ、黒髪の少女はかなり健闘した方といえるだろう。
     結果としては大きな差はあったものの、俺などだったらもっと遅れてゴールに辿り着いていたに違いない。
     現に、彼女の好走に気を良くしたヴィブロスは、先ほどとは違い、浜木綿のような笑顔を咲かせている。
     そして、そんなヴィブロスを見て、黒髪の少女も楽しそうな笑みを浮かべた。

    「良い笑顔やなあ、走って少し気分も晴れたんちゃう?」
    「……あっ」
    「色々あった時は、白浜の綺麗な砂浜と海をみながら走ると、めっちゃ気分が良くなるんよ」
    「……うん、そうだね」
    「後は白浜温泉に入れば文句なしやけど……まっ、今はまず、とれとれ市場さんと、がんばりや」

     黒髪の少女はそう言って、イイダゴの丸々一匹入った踊りたこ焼きをひっくり返すが如く、優しくヴィブロスの背を押した。
     俺の目の前に、伏し目がちなヴィブロスが、ゆっくりとした歩調で近づいて来る。
     しばらくもじもじと目を逸らしていたが、やがて、実った熊野米の稲穂みたいに、頭を垂れた。

  • 5二次元好きの匿名さん23/12/01(金) 22:45:02

    「ごめんなさい……1月16日~18日を休館するみたいに、とれとれ市場にも事情があったはずなのに、私なにも聞かないで……」

     俺も悪かったよ、と言いながらヴィブロスの頭を丸編ニット生地のように、柔らかく撫でる。
     その期間中もとれとれの湯や海鮮寿司とれとれ市場は営業しているよ、と言葉を添えながら。
     ちゃんと説明をしよう、あの少女についても紹介しよう。
     もっとヴィブロスに、俺のことを、白浜市のことを、和歌山県のことを知ってもらいたいから。
     そうして、言葉を紡ごうとした、その瞬間。

    「あっかーん!」

     慌てた様子の、黒髪の少女の声が、海岸に響き渡る。
     俺達は目をなんば焼きの焼き目のように丸くして、彼女の方を見た。
     彼女は時計と、お付きの人が見せるスケジュール帳を見合わせながら、あたふたとしている。

    「もうこんな時間なん!? 今日私、忙しよぉのに!」
    「えっと……大丈夫なのかな?」
    「えっ、あっ……かっ、堪忍な! もっと姫らしく優雅に別れよう思ったんだけど……!」

     どうやら黒髪の少女のスケジュールはかどやのうすかわまんじゅうの餡子のみたく、みっちり詰まっているらしい。
     お付きの人と共に身支度をして、今すぐにでもその場を立ち去ろうとしていた。

    「まっ、待って! 私はヴィブロスっていうの! あなたの名前だけでも、教えてっ!」

     ヴィブロスは、そんな黒髪の少女に、慌てて声をかけた。
     黒髪の少女はその言葉に、野上大工のタンバリンを叩くが如く、ぽんと手を打つ。
     直後、彼女のお付きの一人がヴィブロスに駆け寄って、小さな紙片を手渡した。

  • 6二次元好きの匿名さん23/12/01(金) 22:45:18

    「せやせや、自己紹介忘れたらあかんね」

     ヴィブロスに手渡されたのは、いわゆる名刺であった。

    「私は白浜温泉特別観光大使────白浜帆南美や! よろしゅうな、ヴィブロスさん!」
    「……へ?」

     ヴィブロスは、ぽかんとした表情を浮かべた。
     めはり寿司を食べる時みたく、目と口を大きく開いた状態で。
     
    「ほななぁ、とれとれ市場さん! イベントの段取りと私のパネルの配置は、先の通りで!」

     そう言って白浜帆南美は、そそくさと海岸から立ち去って行った。
     ぽつんと取り残される、俺とヴィブロス。
     しばらく静寂が場を支配して、耐えきれなくなった俺が、彼女に声をかけようとしたその瞬間。

     ぽふんと、ヴィブロスが抱き着いてきた。

     パンダのようにふわふわな手触りとクエの白身のようにむっちりとした感触が伝わってくる。
     そして俺の胸に顔を埋める彼女の顔は、出来立ての和歌山ラーメンよりも熱くなっていた。

    「…………白浜帆南美さんと話していたことって」

     今度、この地域全体で、彼女とのコラボイベントがある。
     その際には俺も協力して、彼女のパネルを設置したり、スタンプラリーを手伝ったりするのだ。
     準備も大詰めで、急遽、早朝から打合せをすることになったのだけれど。
     このことをヴィブロスに伝えると、より強く、ぎゅうっと抱き着いて来た。

  • 7二次元好きの匿名さん23/12/01(金) 22:45:34

    「恥ずかしい……勝手に、誤解しちゃって……とれとれ市場、私の顔、見ないで……」

     言葉を発するごとに、ヴィブロスの顔の熱も、徐々に高まっていく。
     まりひめよりも頬を真っ赤に染め上げた彼女を見ていると、熱いはずなのに、茶がゆを食べた時のように安心する。
     しばらくの間、鉛山湾のさざ波を聴きながら、俺は柿の葉寿司みたく、彼女に包まれていた。
     やがて恥ずかしさも多少は収まってきたのか、胸元から小さな声が響く。

    「……とれとれ市場、今日はずっと一緒に居よ? ね? ね?」

     この時間じゃまだ早いよ、と俺は苦笑する。
     抱き着いているヴィブロスは、ゆっくりと顔を上げた。
     その顔には、どこか小悪魔めいた、彼女らしい笑みが浮かんでいた。

    「だーめ♡ 私、知ってるんだよ?」

     紀の川柿のよりも甘い声を響かせて、誰もを魅了する円月島のような丸い瞳で、ヴィブロスは告げた。

    「とれとれ市場は────8時半から開いてるって♡」

  • 8二次元好きの匿名さん23/12/01(金) 22:45:56

    おしまい
    ちゃんと調べてから書かないとダメですね

  • 9二次元好きの匿名さん23/12/01(金) 22:48:25

    誤字からよくここまでのものを生み出した お前さんは立派だ
    それはそうとうるせえよw 

  • 10二次元好きの匿名さん23/12/01(金) 22:49:53

    >>8

    ウワーッ、完全に騙されてました。

    確かに、今思えば16:00で終わりって早いなって思ったんですよね……。

  • 11二次元好きの匿名さん23/12/01(金) 22:50:16

    何が何だか分からないがとれとれ市場の事は伝わった(宇宙猫顔)

  • 12123/12/01(金) 23:16:39

    感想ありがとうございます
    スレ画像が完全にミスってて草

  • 13二次元好きの匿名さん23/12/02(土) 00:50:07

    県民だけど、とれとれ市場は地元番組のCMでしか名前聞かなかったし自分にとって遠かったから今まであんまり詳しく知らなかった……

    でもスレ主と元スレのお陰で興味が出てきた
    ありがとうな……

  • 14123/12/02(土) 01:08:29

    >>13

    正直これでお礼を言われて良い迷うけどこちらこそあざます

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