釘崎の関係者生やしたい(ダイス) その6

  • 1二次元好きの匿名さん23/12/25(月) 22:26:03

    続きます! 真依ちゃんの話!

  • 2二次元好きの匿名さん23/12/25(月) 22:26:29

    乙です立てありがとう

  • 3二次元好きの匿名さん23/12/25(月) 22:26:40

    乙っす

  • 4二次元好きの匿名さん23/12/25(月) 22:29:45

    前スレ199だけど着物あるかな

  • 5二次元好きの匿名さん23/12/25(月) 22:38:25

    あったらいいね

    >>4

  • 6二次元好きの匿名さん23/12/25(月) 22:40:26

    綺麗に埋まったw どんどん進めるぞ!


    真依「和子・・・さん・・・」

    当然ながら、誰も居なかった。部屋はきれいに整理されていたが彼女が使っていた文書机と座布団、筆記用具の一式が置かれていた。掃除はされているのだろうが長く使用された形跡はなく、道具は古ぼけていた。
    知っていた。知っていたはずなのに、真依はこの、主のいなくなった空間だけで辛くなっていた。事実がどうしようもなく重たく転がっていて、あの日が戻らないことを示していることが。

    そろばんに触れてみた、あのとき、彼女のようにできるだろうか。ぱちぱちと珠を動かして真似をしてみたが

    真依「ダメね、上手くできないわ・・・」

    彼女のように使うことができず、自嘲気味に息を吐いて立ち上がる。そんな時、ふと思い出した。

    真依「そういえば・・・和子さんの着物って・・・どこにいったのかしら」

    彼女との思い出、最後のピース。あのとき、指切りをして別れたあの日のこと。
    真依は失礼だとは思いつつも文書机の引き出しや押し入れを開いて着物の行方を捜した。

    真依「・・・無い」

    彼女は約束のことなど忘れてしまったのだろうか。会いにこなかった自分に愛想を尽かして、もう着物を別のどこかへやってしまったのだろうか。

    こんなときには悪い事ばかり思い出してしまう。禪院家で虐げられてきたこと、価値が無いと罵られたこと、友人の西宮から言われた忠告すらも真依を追いつめる。

    (勝手なことばかりしていたら、甘えてばかりいたら愛想を尽かされる)

    その言葉が頭をぐるぐると駆け巡って、真依の心をかき乱した。

  • 7二次元好きの匿名さん23/12/25(月) 22:42:45

    大丈夫や真衣さん!いい人達だったでしょう?

  • 8二次元好きの匿名さん23/12/25(月) 23:07:00

    そんなはずはない、自分はあの時確かに約束をした。だから、きっとあるはず・・・。
    真依はどうにか自分を奮い立たせて部屋を後にした。

    真依「和子・・・さん」

    足が重い、まるで泥の中を歩いているような気分になって真依は壁に寄りかかった。知っている場所なのに、誰もいない、それだけでここがまるで迷路のように不思議な空間と化して真依を苛む。

    夏彦「真依ちゃん!」

    真依の異変に気付いたのか夏彦がそばに駆け寄った。真依は夏彦の手を借りて再び立ち上がるとどうにか言葉を振り絞った。

    真依「ねえ・・・着物って・・・どこ?」
    夏彦「着物?ここにないなら倉庫に集めてあるから・・・っとと!」

    夏彦が何かに引っ掛かって転んだ。真依がその姿を見て少しだけ気持ちを明るくしていると夏彦が転んだ場所に違和感を感じた。

    真依「あら?ここって・・・あ!」

    思い出した。そう、そこの床板はあの時、真希が暴れて壊した床板だ。こっそり板を持ち込んで修繕した場所は彼女が後に和子との内緒のやり取りをする秘密の場所になっていた。

    真依「ちょっと退いて!」
    夏彦「転んだ事には触れないのね・・・うぅ」

    ぶつけた個所をさすりながら転がるように退いた夏彦を他所に真依は床板を調べた。踏んでも開かないようにスライドさせて、そこから片方の部分をおせば板が起き上がって外せるようになる。

    夏彦「へー、こんな仕掛けが・・・」
    真依「和子さんと、姉さんは覚えてるかしら・・・」

    わらにも縋る思いで板を外すと・・・そこには古びた鍵が入っていた。

  • 9二次元好きの匿名さん23/12/25(月) 23:08:22

    まさかの仕掛け

  • 10二次元好きの匿名さん23/12/25(月) 23:23:15

    真依「鍵・・・?」
    夏彦「ああ、これ、金庫の鍵だ。倉庫に大きな金庫があった」
    真依「それ、倉庫のどこ?」
    夏彦「行こう、こっちだ」

    夏彦と二人で倉庫へ向かう。倉庫は屋敷の大きさに比例して大きかったがその中の金庫はわかりやすい位置にあった。

    真依「大きいわね・・・」
    夏彦「ダイヤルはもう開いてる、あとはその鍵だけだ。こじ開ける理由も何もなかったからほったらかしにしてたけど・・・そんなとこにあったらわかるわけないな」

    夏彦の身長くらいある縦長の金庫は鈍い光沢のある黒色で何物も寄せ付けぬ頑強さを物語っている。

    真依「この鍵が・・・」

    差し込んでみるとぴたりとはまった。鍵がひらいて、同時に扉も開いた。

    夏彦「木の箱か・・・」
    真依「中身は?」

    ちょっと待ってくれ、と夏彦は倉庫の電灯のスイッチを押しにいった。真依はいくつかの箱を取り出しては近くに積んであった段ボール箱の上に置いていく。

    真依「たくさんあるわね・・・」

    この中に約束の品があるかも。さっきまでの不安に期待が混ざって真依は思わずそわそわしながら倉庫が明るくなるまで待った。

    真依「まだ?」
    夏彦「っと・・・あった、どうかなー?」

    パチンというスイッチが入った音とブーンという音が遅れて聞こえると倉庫の中が明るくなった。黄色い電灯なのではっきりとは明るくないが、それでも中身を確認するだけの光量は確保できただろう。

  • 11二次元好きの匿名さん23/12/25(月) 23:37:50

    真依「さて・・・どれが和子さんの・・・」

    箱に手を掛けようとしたときに金庫の中に封筒があるのが目についた。金庫の中にあったからか保存状態は悪くない。

    夏彦「どう?」
    真依「・・・」
    夏彦「?」

    真依はの中にある手紙を読んでいるらしかった。そして、そのうちに彼女の肩が震えだしたのを見て、夏彦は何も言わずにただ近くに腰を下ろした。




    和子『真依ちゃんへ、こんな回りくどいやり方でごめんね。こうでもしないと夏来さんがあの着物を着て欲しいって言うからこうするしかなかったの。鍵は二人の秘密の場所、きっと真希ちゃんは忘れただろうから私だけの秘密ね。
    読んでくれてるってことは見つけてくれてるだろうから、その前提で書きます。
    真依ちゃんはいつここに来てくれたのかしら、大人になった?それとももっと早く?
    それだとちょっとこの手紙は恥ずかしいから読んで欲しくないけれど・・・。もしも大きくなった真依ちゃんが来たならきっと、着物の似合う綺麗な女の子になってここにやってきてるはず。私の見立ては間違ったことが無いから、確実よ。何といったって貴女は可愛い可愛い私の娘。いつか、御家のことだとか、そんなしがらみもなにもかも忘れて貴女と家族になれる日が来ることを願ってここに私の願いを込めます。着物は染料のおかげでずっとずっと長持ちするらしいです。真依ちゃんが来るまで何年着ても悪くならなかったから、きっと真依ちゃんが着るころになっても大丈夫だと思います。できることならこの着物は貴女の子供の代まで、願わくば孫の代まで。
    もしも、私が生きている内にこの手紙を読むことがあったなら、できればでいいです。私を、おかあさんと呼んでください  和子より』

  • 12二次元好きの匿名さん23/12/25(月) 23:38:58

    お母さま…泣

  • 13二次元好きの匿名さん23/12/25(月) 23:39:08

    悲しいなぁ

  • 14二次元好きの匿名さん23/12/25(月) 23:39:38

    真衣さん泣いていいんやで

  • 15二次元好きの匿名さん23/12/25(月) 23:52:43

    真依「ひ・・・く、ひっく・・・」

    真依は涙を流しながら封筒を握りしめていた。夏彦は彼女の肩を抱いて、ただ黙っていることしかできなかった。

    真依「うぇぇ・・・、ごめんなさい・・・おかあ・・・さん・・・」

    困ったように笑う彼女が、可憐な花のように笑う彼女が、いつも真依の中にあった。そんな彼女に、真依は終ぞ彼女の望む言葉をかけてあげられなかった。その後悔に真依は涙がとまらなかった。

    夏彦「真依ちゃん・・・大丈夫?」
    真依「・・・うん」

    どれくらい泣いたんだろう。夏彦に肩を抱かれて泣き続けていた真依は赤くなった目元をこすって立ち上がった。
    目のまえには真依ちゃんの、と和子の手書きの文字でラベルが貼られた箱があった。
    箱を開けて、保護用のたとう紙をめくってみる。

    夏彦「おお、綺麗な藍色だな」
    真依「・・・」

    思い出の色、その色の鮮やかさはくすむことなく。新しい持ち主を待ちわびていた。滲む視界をごしごしとこすって、真依はその着物を抱きしめて、再び嗚咽を洩らした。

    夏彦「・・・なあ、真依ちゃん、よかったらそれ・・・着てあげてくれないか」
    真依「えっ?」
    夏彦「和子さんの、お願いなんでしょ?頼むよ」

    夏彦は真依にそうお願いした。真依はすこし躊躇ったが、了承した。

  • 16二次元好きの匿名さん23/12/25(月) 23:54:23

    夏彦…君はいい奴だ

  • 17二次元好きの匿名さん23/12/26(火) 00:23:02

    真依は和子の部屋を借りて、着物に袖を通した。禪院家での経験から和服を着ることは造作もなかったがどうにも落ち着かない。かつて自身が最も尊敬して、愛した女性の着ていた服だ。

    真依「これで・・・問題ないわよね・・・」

    運び入れてもらった姿見を見ながら真依は着物を整えながら独り言を繰り返した。

    大丈夫、大丈夫なはず、大丈夫かしら?、これでいいんだろうか?、変じゃない?とどうしても自信が湧かず何度も帯などなんども確認していた。

    夏彦『どんな感じ?着付けの人呼ぶ?』
    真依「だ、大丈夫よ!時間かかってるだけ!」

    部屋の外で待っている夏彦が心配して声をかけてくるのに飛び上がって慌てて答える。そして姿見を見てまた、自信なさげに溜息をついた。

    そんな時、真依の背中にそっと、誰かが触れたような気がした。

    真依「!・・・」
    『やっぱり、真依ちゃんは綺麗になったわ。よく似合ってる』

    姿見に、一瞬だけ映った。在りし日の、母の姿。

    真依「・・・お母さん」
    『ふふ、嬉しい・・・ありがとうね、真依ちゃん』

    しっかりみたいのに、もっと話したいのに、目の前が霞んで、声が詰まって。何も言えなかった。

    『幸せになってね・・・』

    そっと頬に触れる感触が伝わって。慌てて涙を拭ったがもうその時には何も映っていなかった。

  • 18二次元好きの匿名さん23/12/26(火) 00:24:28

    自分涙いっすか?

  • 19二次元好きの匿名さん23/12/26(火) 00:24:47

    御別れ…

  • 20二次元好きの匿名さん23/12/26(火) 00:35:02

    真依「・・・」
    目元を拭って、再び姿見を見る。そこには和子さんの着物をちゃんと着ている自分が映っている。大丈夫だ。
    もう、大丈夫。

    真依「ふぅ、もう大丈夫ね・・・お待たせ」

    そういって廊下に出ると夏彦が窓の外を眺めていた。いつもと違うのは彼も和服に着替えていたことだ。
    その姿は、真依のよく知る人物によく似ていた。

    真依「夏来さん・・・」夏彦「ん?何か言った?」

    振り返ると、いつもの優しい笑みを浮かべた夏彦が立っていた。彼女のよく知る、夏彦だ。

    真依「アンタまで着替えたの?」
    夏彦「まあね、知ってる人は着てくれってよく言われるんだけど・・・そんなに似てる?」

    仕草が若いので見分けはつくが確かにそっくりだった。普段の髪型ではなくきちんと整えてあるし、洋服を和服に変えるだけでここまで変わるのかと内心真依も驚いた。

    真依「これだと確かに名家の跡継ぎって感じね」
    夏彦「そうかな、そう見えるなら着た甲斐があったってもんだ」

    夏彦は少しうれしそうに、でもそれでいてどこか寂し気だった。真依はその背中を見て、夏彦と自分の違いに思い至った。

    真依(そうか・・・夏彦はこの家の人の誰とも会ったことが無いのね)

    そう考えて、真依は夏彦に少し申し訳なく思った。自分の思い出ばかりが先走って、この家に来る夏彦の気持ちを考えていなかった。自分にとっては思い出の場所でも、夏彦にとっては両親が亡くなった悲惨な現場でしかないのだ。

    真依(戻って来てくれとお願いされたって・・・辛いだけよね)

    夏彦の両親はここで暮らしたことがあるのだろうか、それすらも真依はしらないし、おそらく夏彦も知らないだろう。

  • 21二次元好きの匿名さん23/12/26(火) 00:41:23

    今日はここまでにしときます、また明日!(スレ主

  • 22二次元好きの匿名さん23/12/26(火) 08:04:43

    ほしゆ

  • 23二次元好きの匿名さん23/12/26(火) 13:14:49

    保守域展開

  • 24二次元好きの匿名さん23/12/26(火) 22:11:48

    干し柿

  • 25二次元好きの匿名さん23/12/26(火) 22:34:02

    再開します!

    真依「ねえ、夏彦」
    夏彦「?」
    真依「せっかくだから夏来さんのところにも挨拶にいきたいの、連れてってちょうだい」

    気まずい空気に耐えかねて真依は夏彦に一族の墓所の場所へ連れていくように言った。
    夏彦は少し迷ったがそのまま二人は連れ立って一族が眠る墓地へと向かうことにした。

    夏彦「ここだな」
    真依「ここ登っていくの・・・?」

    真依が露骨に嫌そうな顔をした。というのも長い石段が続いているからだ。しかも石段は古いのか切り出して加工していないのか不ぞろいでとにかく歴史を感じる。

    夏彦「自分が言い出したんじゃないか」
    真依「お墓がこんなところにあるなんて思ってなかったのよ・・・」

    泣き言を言いながら石段を登っていく。しばらく登って、どうにか登りきるとそこにはたくさんの墓石が並んでいた。

    夏彦「ここだ・・・えっと・・・夏来さん、辿ると伯父さんになるんだ」
    真依「そうなの?じゃあもしもがあればだけど・・・私達従姉弟になってたのね」

    夏彦の言葉には実感が伴わないことへの戸惑いが強かったが、真依がどこか嬉しそうにそう言ったので夏彦も
    つられて笑みを浮かべる。

  • 26二次元好きの匿名さん23/12/26(火) 22:49:14

    持参した線香を一族の墓、それを代表する当主を祭る慰霊碑にそれぞれ立てて携えた花を供えて二人は手を合わせた。

    真依「降りたら休憩しましょ・・・」
    夏彦「大丈夫?」
    真依「たぶん・・・」

    着物とセットの漆塗りの下駄を履いてきたまでは良かったが慣れない下駄で石段を延々と上ったものだから普通に真依は疲れていた。足もがくがくである。

    夏彦「ほら」
    真依「なによその手」

    前を歩いていた夏彦が階段に差し掛かるときに手を差し出した。

    夏彦「危ないでしょ、手、繋いで」
    真依「・・・階段くらい・・・」

    そう言いかけて、長く続く急な石段を見た真依は羞恥心と恐怖を天秤にかけて、着物などもろもろの安全を考慮して夏彦の手を取ることにした。

    真依「離さないでよ・・・」
    夏彦「わかってるよ、そっちこそ離さないでね」
    真依「絶対よ・・・?」

    足が限界に近く、力が入らないので恐々階段を下りる。結局上った時間よりも長かったかもしれない。

  • 27二次元好きの匿名さん23/12/26(火) 23:04:20

    あれぇ?!今日はないかと思ってた!

  • 28二次元好きの匿名さん23/12/26(火) 23:18:52

    時間が遅くなってしまいました!ちょっと今日は短いかも・・・(スレ主


    真依「はぁ・・・疲れた・・・」
    夏彦「お疲れ、これからどうする?」
    真依「確か近所に・・・茶店が・・・あったはずよ」

    そこで休憩しましょ、と真依は息も絶え絶えに言った。二人はそのまま真依の記憶頼りに茶店を探して歩いた。

    真依「・・・ここらへんだったはずだけど」
    夏彦「こんなところがあったのか・・・」

    真依が歩いたのは夏彦が用事でいつも通る大通りではなく路地や小道だった。そこはかつて病弱の和子が真依を連れて歩いた道。こっそりと教えてくれた彼女のお気に入りの茶店のこと。

    真依「おばあちゃんがやっていたお店なのよ」
    夏彦「そうなんだ・・・」

    まるで秘密基地へと続く道のようで夏彦も少しだけ歩くのが楽しかった。真依が笑顔で歩いていることも手伝っているのかもしれない。
    知らない道に色がついて、思い出ができていく。

    真依「あった、あそこよ」
    夏彦「おお、それっぽい」

    そこには路地裏にまるで時代に取り残されたかのような佇まいの茶店があった。店の前の長椅子には赤い布が敷かれていて雰囲気もかなり良い。初見で大体の人が一度は立ち寄りたくなる店構えだ。

  • 29二次元好きの匿名さん23/12/26(火) 23:24:38

    付き合い立てカップルみたいな距離感してんな

  • 30二次元好きの匿名さん23/12/26(火) 23:25:11

    コレは…デート

  • 31二次元好きの匿名さん23/12/26(火) 23:43:40

    夏彦「茶店か、ここらへんにもあったんだ・・・」
    二人が近づいてみると老婆が店の前で掃除をしていた。『商い中』の看板もかかっているので店も営業中なのだろう。

    真依「あのおばあちゃんまだ店にいたんだ・・・こんにちわ」

    真依が先んじて声をかける。すると顔を上げた老婆の顔がぱあっと明るくなった。

    老婆「おお、なんとまあ・・・お久しぶりです、奥様、それに旦那様まで・・・!」
    真依「?!」

    一瞬真依は驚いたが、奥様と旦那様という言葉でなにやら得心がいった様であくまで平静を装って笑みを浮かべた。

    真依「ええ、そうなの。夏来さんったら全然、一緒に出掛けてくれなくて」
    老婆「ふぇふぇふぇ・・・お忙しい方ですから、仕方ありませんよぉ」

    お茶をお出ししますね。と店の奥へ行った老婆を見送りながら夏彦は真依に耳うちした。

    夏彦「おい、なんで俺が伯父さんになってるんだ?」
    真依「あのおばあちゃんが私のこと和子さんだと思ってるみたいだから・・・つい」

    老婆はかなり高齢で、おそらく背格好と、特徴的な着物姿を見たせいで思い出の中のかつての夫妻をもてなしているようだった。

    夏彦「ここらへんって和子さんがよく来てたんだっけ?」
    真依「ええ、昔・・・ここで何度かデートしたん・・・だって」

    自分で言って恥ずかしくなったのか真依は頬を赤くして俯いた。まるで自分たちが二人に倣って、ここで・・・。

    老婆「ふぇふぇふぇ・・・相変わらず仲がよろしいですねぇ。本当に」

    老婆はしわだらけの顔のしわをさらに深くして笑みを浮かべている。

  • 32二次元好きの匿名さん23/12/26(火) 23:50:29

    きぶり婆

  • 33二次元好きの匿名さん23/12/26(火) 23:50:52

    真衣さんはわかりやすくデレますねぇ!

  • 34二次元好きの匿名さん23/12/26(火) 23:51:36

    間接団子キッスくるか…

  • 35二次元好きの匿名さん23/12/26(火) 23:52:09

    今日はちょっと早いですがここまでにしときます。明日も仕事だァ・・・(白目

  • 36二次元好きの匿名さん23/12/26(火) 23:56:24

    乙乙んご

  • 37二次元好きの匿名さん23/12/26(火) 23:56:47

    乙!ら

  • 38二次元好きの匿名さん23/12/27(水) 07:10:38

    保守

  • 39二次元好きの匿名さん23/12/27(水) 13:13:26

    保守域展開

  • 40二次元好きの匿名さん23/12/27(水) 20:06:43

  • 41二次元好きの匿名さん23/12/27(水) 22:06:24

    再開します!

    真依「あまり茶化さないで・・・」
    老婆「わかっとりますとも、奥様」

    お茶をうけとりながら真依は窘めたが、わしはよーくわかっとりますよぉと老人特有の訳知り顔をされて真依はますます顔を赤くした。

    夏彦「せっかくだ、ま・・・和子さんがよく頼むものを」
    老婆「承知いたしました」

    顔を赤くして夏彦の背を叩いているが当の夏彦と老婆は終始ニコニコ顔だ。そんな彼の顔がまるで彼女の思い出の中の夏来にかさなるようで・・・。

    (初恋も、術式も教えた事なんかない・・・!)

    不意に、そんな自身の過去がフラッシュバックした。もしかしたら自分の初恋は自らを初めて人間として、親として愛してくれた夏来だったのかもしれない。和子への憧れは夏来と添い遂げた彼女を羨んでのことだったのかもと。

    真依「馬鹿ね・・・そんな高望み・・・」
    夏彦「何が?」

    ㇵッとして顔を上げるとこちらを見ていた夏彦と目が合った。思っただけのつもりが口に出ていたらしい。

  • 42二次元好きの匿名さん23/12/27(水) 22:08:34

    おやおやぁ!?いいですねぇ!

  • 43二次元好きの匿名さん23/12/27(水) 22:09:01

    奥様呼び…

  • 44二次元好きの匿名さん23/12/27(水) 22:31:40

    夏彦はお茶を一口飲んで真依に向かってほほ笑んだ。


    夏彦「困ったこと、一人で抱えすぎちゃだめだよ。周りに誰かがいる内はその人を頼っていいんだから」

    真依「そうかしら・・・」

    夏彦「そうだよ、迷惑なら遠慮しなくたってみんな距離をとるもんさ」


    それに、迷惑なら僕たちは言い合えるでしょ?と夏彦は続けた。




    老婆「お待たせしました」


    老婆が持ってきたのはみたらし団子だった。棒状の団子についた焦げ目と醤油のタレが香ばしく掛かっている。


    夏彦「これは、なんともいい匂い」

    老婆「匂いだけじゃありませんよぉ、自慢の品です」


    一本を手に取って夏彦が齧る。表面はややカリッとしていて、団子だけでなく醤油の塩気と砂糖が程よく焦げて香ばしい。棒状のためかタレはしっかりと乗っているし、齧って食べやすい。

    夏彦は元々dice1d3=1 (1) だがこの団子は特に気に入ったようだ。

    1、小食

    2、大食いだが甘味が苦手

    3分け隔てなく大食い

  • 45二次元好きの匿名さん23/12/27(水) 22:32:29

    食事量ってダイスしてましたっけ?してたらそっちにしてください!

  • 46二次元好きの匿名さん23/12/27(水) 22:32:51

    ええ…そんなデカい図体して夏彦…燃費良すぎない?

  • 47二次元好きの匿名さん23/12/27(水) 22:47:12

    よくみると真依ももぐもぐと食べている。なんなら夏彦よりペースが早い。

    真依「ふぅ・・・」

    お茶を一口、唇を舐めて、すぐに二本目に手を伸ばした。まだ夏彦は一本目の最後らへんを齧ったばかりだ。

    夏彦「・・・」
    真依「あげない」

    結局夏彦が一本食べる間に真依は二本食べた。結構大きな団子だったがあっという間だ。
    老婆はそれを見てクスクス笑っている。そして追加の皿を持ってきた。

    老婆「奥様、旦那様の分も残してあげませんと」

    苦言を呈するような言葉だが実際はくすくすと笑いながらなのでかつての二人もこんな感じだったのだろう。
    夏来ももしかしたら小食だったのだろうか。

    真依「いいの、この人にあげたらずっと食べているから」
    老婆「ふぇふぇふぇ、そうでしたねぇ」
    夏彦(こっちでずっとならそっちは一瞬のような気がする・・・)

    夏彦はその言葉に何とも言えない表情をしていたが老婆と会話を挟みつつもうすでに持ってきてくれたお皿から団子を一本取って齧っているのを見て仰天した。

    夏彦「ま、こういうのもアリか」

    一本取って、齧る。そのうちに真依は既に一本目を食べ終わっていた。

  • 48二次元好きの匿名さん23/12/27(水) 23:06:15

    夏彦「おっと」
    真依「あ」

    今度は二本目を夏彦が取った。しかし。

    夏彦「・・・」

    一個目を齧って咀嚼したところで手がとまった。あまりにも早すぎる満腹であった。

    真依「・・・」
    夏彦「あげる」
    真依「ありがと」

    真依は夏彦から受け取ってナチュラルに齧った。

    夏彦「・・・(そもそも気にしてない」
    真依「・・・~~~!!!(齧ってから気付いた」
    夏彦「・・・(ちょっとお腹が苦しい」
    真依「・・・(恥ずかしい」

    誤魔化すように真依は早いペースで完食し、真っ赤な顔を抑えて悶えた。

  • 49二次元好きの匿名さん23/12/27(水) 23:09:51

    意識しててカワよ

  • 50二次元好きの匿名さん23/12/27(水) 23:10:23

    いちおう歳上が翻弄されております!

  • 51二次元好きの匿名さん23/12/27(水) 23:10:45

    コレが間接団子キッス…

  • 52二次元好きの匿名さん23/12/27(水) 23:41:28

    老婆はそんな真依の真意をしってか知らずかお茶のお代わりを出してからは特に話しかける風もなかった。
    少しして若い女の子が店の奥から出て来て、二人に応対した。

    少女「ごめんなさい、お客さんが来てたとは思わず・・・!」
    老婆「こら!京極家の旦那様がきてくだすったのになんて口の利きかただい!」
    少女「ういっ!? し、失礼しました!」

    どうやら少女は老婆のお孫さんらしい。老婆に叱られて飛び上がった。

    夏彦「お気になさらず、それよりさっきのをいくつか包んでもらえますか?」
    老婆「ええはい、すぐに・・・」

    老婆を宥めて持ち帰りの品を注文すると老婆はそのまま調理場へ向かった。残された少女は申し訳なさそうに真依と夏彦に話しかけた。

    少女「すみません、おばあちゃんのお相手してもらって・・・」
    真依「いいのよ、懐かしい店によったついでだもの」
    少女「そういっていただけるとありがたいです・・・けど、京極家の方が来なくなってめっきり元気がなくなって・・・最近はちょっとボケてきちゃってたから心配してたんですけど」

    元気になってくれてよかったです。と少女は笑顔で言う。真依は少しだけ罪悪感を抱きながら、夏彦の袖を引っ張った。

    真依「寂しい思いをしてたならもっとはやく教えてあげればよかったわ・・・」
    夏彦「十分間に合ったよ、ここに思い出があるってことが分かっただけでも価値もある」
    少女「ですね、それに御団子を焼いてる間だけはいつもハキハキしてるし」

    お孫さんはお団子を包んでいる祖母を見て嬉しそうだ。

  • 53二次元好きの匿名さん23/12/27(水) 23:57:34

    少女「えっと、お勘定ですね・・・串がひーふー」
    指折り串を数える少女。その後祖母の方を見ていくつ包んだ?と確認を入れる。

    老婆「10本!」
    少女「だそうで」

    夏彦はそれを聞いて懐から取り出した財布から札を数えず数枚差出した。

    真依「・・・」
    少女「えっと・・・あの」

    当然のようにピン札の万券である。真依は溜息をついただけだが少女は明らかに困惑していた。払いすぎなんて額ではない。まごまごしていると団子を袋詰めにした老婆がやってきて孫にとうとうげんこつを落とした。

    老婆「馬鹿!旦那様に恥をかかせるんじゃない!受け取りなさい!」

    お盆を持たされて少女はおずおずとお札を受け取った。

    老婆「すみません、躾が済んでいないもので・・・」
    夏彦「最近はこんなものでしょう、すこし遠慮すべきでした」
    老婆「申し訳ありません・・・」

    恐縮する老婆に夏彦は気にしていないことを重ねて伝えてから商品を受け取った。

    夏彦「それじゃ、行こうか」
    真依「ええ」

    二人は商品を受け取って席を立った。帰りがけにふと、夏彦は真依がハンカチを席に忘れていることに気付いて・・・

    夏彦「あ、真依ちゃん、ハンカチ・・・」
    つい名前を呼んだ。

  • 54二次元好きの匿名さん23/12/27(水) 23:58:29

    およよどうなる事やら

  • 55二次元好きの匿名さん23/12/27(水) 23:58:57

    旦那様プレイはまだまだ詰めが甘かったね

  • 56二次元好きの匿名さん23/12/27(水) 23:59:11

    >>55

    プレイは草

  • 57二次元好きの匿名さん23/12/28(木) 00:13:10

    真依「・・・!」

    夏彦は思わず口に手を当てたが真依は表情だけで夏彦を数回罵倒しているような顔になっている。
    老婆も驚いたような顔をしていて、真依の傍に駆け寄るとじいっと顔を見つめると悪い目でもさすがにわかったのかしょんぼりした様子に。

    老婆「奥様、ではありませんでしたか・・・」
    真依「ごめんなさい、おばあちゃん。だますつもりは・・・」
    老婆「いいえ、謝るのは私の方ですよ・・・奥様が亡くなったことは・・・知っていたはずなのに・・・」

    けど、見覚えはあるのよね・・・と老婆はそういうと真依の顔を見つめて、何かに気付いたように目をばちばちと瞬かせた。

    老婆「もしかして・・・奥様と一緒に来たあの・・・小さな女の子じゃ・・・?」
    真依「覚えてくれてたんですか?」

    老婆は真依がそういうと最初に来た時とはまた違った笑顔で手を叩いた。

    老婆「そうだった、そうだったわぁ・・・それで、違和感がなかったのねぇ」
    真依「違和感?」
    老婆「ふぇふぇふぇ・・・覚えてないでしょうねぇ、着物着物って、奥様と同じのがいいって、泣きながら来たんですよ?」

    懐かしいわぁ、と老婆は目をさらに細めて昔の話を思い出しているようだ。おそらくだが和子の着物が欲しいと駄々をこねた真依を宥めるために連れてきたのがここに来た最初だったらしい。その後、一人でやってきた和子がいつか真依に着物を譲るつもりだったことを聞かされていたのだという。

    老婆「だから、あなたがその着物を着ていても・・・ちっともおかしくなかったんだわ」
    真依「そんなことが・・・」
    老婆「真依ちゃん、綺麗になって・・・」

    老婆はそういうと目じりに涙を浮かべる。

  • 58二次元好きの匿名さん23/12/28(木) 00:21:17

    …自分涙いっすか?

  • 59二次元好きの匿名さん23/12/28(木) 00:25:41

    老婆「私はね、ずっと、辛かった・・・真依ちゃんも、あの時の騒ぎで一緒に亡くなったんじゃないかって・・・」

    老婆はさすがに姉妹が禪院家に戻されたことを知らなかったらしい。そこから風の便りで京極家の不幸を知り、悲しみの毎日を送っていたとのこと。

    老婆「辛かった、奥様や旦那様は本当に良くしてくださったし・・・私が小さな頃はよくお団子を届けに走ったもんで・・・京極家の皆さんとも、長い付き合いだったから」

    そういうと老婆は袖で涙を拭いながら続ける。

    老婆「私が死んだら、もうあの時の京極家を知る人がいなくなっちゃうって・・・そう思うと・・・ね」

    真依はその言葉を受けて閑散とした京極家の屋敷を思い出し、俯いて涙を堪えた。

    老婆「でもよかった、真依ちゃんが生きていてくれて・・・京極家を知ってる人が他にもいてくれて、こんなに嬉しいことはないんですから」

    夏彦は流石に感極まったのか、上を向いて溢れるものを堪える。少女は鼻をかんだ。

  • 60二次元好きの匿名さん23/12/28(木) 01:01:59

    その後、しばらく真依は当時の京極家を知る老婆と旧交を温め、夏彦もそれを聞く形でだが参加した。



    真依「はぁ・・・まったく、あんなところで口を滑らせるなんて」

    夏彦「結果オーライじゃない?」

    真依「・・・そうね、そうかも」


    そのまま二人は帰路についた。思い出の道を来て、これから思い出になる道を通って、思い出の人を思い出しながら。

    お土産のお団子は京都校の皆に届くころにはちょっと固くなっていたが、二人の話を聞けば今度はきっとみんなで来たくなるだろう。


    夏彦にとってあの屋敷が帰るべき場所になるかはまだ先の話・・・。







    真依ちゃんの好感度上昇!

    dice1d100=57 (57)

    +和子さんの着物(+30)

  • 61二次元好きの匿名さん23/12/28(木) 01:03:47

    真依ちゃんもフラグが立ってね!やったゾ!(白目
    ぶち抜いてもうてますがな・・・好感度合計値147

  • 62二次元好きの匿名さん23/12/28(木) 01:06:46

    むふふ…

  • 63ラブコメ23/12/28(木) 01:07:26

    >>61

    高すぎぃ!

  • 64二次元好きの匿名さん23/12/28(木) 01:11:44

    あとは我らがとげちゃんの好感度アップイベなんすけどー、ぶっちゃけとげちゃんも好感度高いんでぇ
    普通にぃ、自分の好意に気付いちゃう系の話になっちゃうんすよォ・・・いいすか?

    ちなみに今のヒロインズの好きの内容
    真希→守ってあげたい、支えてあげたい
    真依→家族になりたい、孤独にさせたくない
    野薔薇→家族、兄弟(だと思ってるけど実際は恋愛的な好きでまだ自分の好意に無自覚)
    です。

  • 65ラブコメ23/12/28(木) 01:12:31

    >>64

    いいっす…大歓迎っす

  • 66二次元好きの匿名さん23/12/28(木) 01:12:59

    ぜひぜひお願いします

  • 67二次元好きの匿名さん23/12/28(木) 01:16:54

    考えたら禪院姉妹どっちも好感度限界突破してるんだよな・・・これ多分壁ドンとかしたら顔真っ赤に
    なるんじゃないか・・・?ボディタッチでどぎまぎしたりするんじゃないか?!
    なんかこう、はかどらないか!?

  • 68二次元好きの匿名さん23/12/28(木) 01:25:02

    はかどりますねぇ!

  • 69二次元好きの匿名さん23/12/28(木) 01:42:45

    とりまとげちゃんの話をさわりだけ書いて今日は終わりにします。


    『ねえ、とげちゃん、とげちゃんはどんなけっこんしきしたいの?』

    沙織ちゃんと仲良くなって、都会のことに興味を持ち始めて、彼女みたいに可愛くなりたいって思った時
    幼馴染から聞いた言葉。

    そのときは既に田舎よりも都会の!って感じだったから、ドレスがいい!って言った気がする。
    そしたらそいつは私の言葉に興奮したように

    『知ってる?都会ではホテルで結婚式ができるんだよ!ビルより大きいホテル!』

    そうなの?!と素直に驚いた。確かに雑誌やTVで見たし、沙織ちゃんもあるって言ってた。
    だからあこがれた。

    「結婚式あげるなら!でっかいホテルの式場!」

    ってね。

  • 70二次元好きの匿名さん23/12/28(木) 01:57:29

    乙です

  • 71二次元好きの匿名さん23/12/28(木) 11:29:08

    このレスは削除されています

  • 72二次元好きの匿名さん23/12/28(木) 21:31:31

    保守

  • 73二次元好きの匿名さん23/12/28(木) 22:19:28

    再開します!

    釘崎は最近の生活にちょっとした変化を感じていた。それは再会した幼馴染のこと。
    彼がちょくちょく釘崎の事を気にかけるので彼女はそんな幼馴染と旧交を温めながら日常を過ごしていた。

    釘崎「あー、夏。そっちどんな感じ?」
    夏彦『今、任務の帰り、疲れてはいるけどケガはないね。そっちは?」
    釘崎「無問題、それよりそっちも高専の生徒なのよね?学校はどうなの?」
    夏彦『下手な任務よりそっちがキツイ感じかな、減らしてもらってるとはいえ休みがちになるし』

    能力、家系、全てにおいて他の術師より圧倒的に使い勝手のいい存在である夏彦はそれ故にどこに行っても引っ張りだこだ。最近は呪力のコントロールで呪物の呪力をエネルギーにすることでノーコストの付喪躁術を行使できるとかなんとか言っている。呪符に予め呪力を封じておくことで赤血躁術の要領で術を行使できるのだそうだ。

    夏彦『まぁ、留年はしないようにしてる』
    釘崎「へー、大変ね・・・」

    夏彦は準一級だが実力とキャリア的にはもう一級として申し分ない。それどころか彼が秘匿している術式『血盟破邪』を使いこなすことができれば今の術式の精度と合わせて特級と仮定してもおかしくはない。

    夏彦『近い内にまたそっちに任務で寄るから、そのときに何か食べに行こうか』
    釘崎「いいね、楽しみにしてる。真希さん誘っとく?」
    夏彦『そうだなぁ、誘うなら任務で関わるし・・・せっかくだから二人に応援要請するよ』

    準一級の応援はお小遣いになるよ。と夏彦は笑う。金遣いの荒めの釘崎から見ても夏彦の金銭感覚はちょっと緩いところがあるのでお小遣いがどれくらいになるかはわからないが期待できそうだ。

  • 74二次元好きの匿名さん23/12/28(木) 22:20:19

    おっすおす!

  • 75二次元好きの匿名さん23/12/28(木) 22:21:12

    まあ便利マンだからな

  • 76二次元好きの匿名さん23/12/28(木) 22:36:03

    >>75 術式もそうですが血筋的な信用もかなり高いんで『まあこの人なら』ってのができる人ですね。



    夏彦『それじゃ、数日後になると思うけど』

    釘崎「オッケー、んじゃあね」


    通話を終了して釘崎は夏彦から教えてもらった日程をカレンダーに書き込んだ。次に真希を探して高専を歩く。


    釘崎「お、いたいた。真希さーん」


    グラウンドで大刀を振りながら鍛錬していた真希は釘崎の声を聞いて手を止めた。


    真希「なんだ釘崎、お前今日は休みじゃなかったっけ?」

    釘崎「いや、今夏と電話してたんですけど」

    真希「夏彦が?」


    そういうと真希はちょっとだけ食い気味に聞いてきた。釘崎は少し驚いたが真希が呪術師としては自分よりも付き合いが長いことを思い出して納得した。


    釘崎「えっと、近々任務でこっちに来るから応援だすって・・・」

    真希「なるほど、そりゃ願ったりだ。アイツといると楽できるからな」


    キャリアと利益の総取りだ。と真希は嬉しそうに笑う。その笑顔になにか別のものも含まれるような気がしたのは気のせいではないのかもしれない。


    釘崎「そういえば夏って実力的にはとっくに一級になれるって聞いたんですけど・・・」

    真希「ああ、けどdice1d3=1 (1)  だからまだ準一級なんだと」


    夏彦が昇格しないのは・・・?

    1、報酬が高額になって依頼する人が困るから

    2、推薦者が多すぎて取り合いになってる

    3、推薦者があつまらない(妨害的な感じ

  • 77二次元好きの匿名さん23/12/28(木) 22:37:48

    偉い…偉すぎる夏彦

  • 78二次元好きの匿名さん23/12/28(木) 22:38:28

    素晴らしい人格者よこりゃみんな惚れるわ…ゴジョセン以外

  • 79二次元好きの匿名さん23/12/28(木) 23:02:54

    釘崎「あのボンボンめ・・・遊んで暮らせるだけの財産あるからって」
    真希「まぁ・・・そうだな」

    実際資産だけで言えばおそらく御三家と比べても見劣りしない財産を夏彦は持っている。またコネ的な意味でも。

    釘崎「そういやアイツ・・・私達といる時はラフな格好が多かったけど・・・」
    真希「ああ、私が稽古つけてやるようになってからそうなったな」
    釘崎「そうなんですか?」
    真希「ああ、服がボロボロになるまでしごいてやった」

    釘崎はそれを聞いて夏彦がラフな格好をしていることに納得した。釘崎だってお気に入りの服を着て仕事や鍛錬に行くほど馬鹿ではない。ボロボロになるならなおさらである。





    夏彦「お、きたきた・・・」
    釘崎「げ、早めに来たのにもういる!」
    真希「あきらめろ、狙いすましたかのように先に到着してやがるから」
    夏彦「なんか言い方ひどくない?」

    任務の当日、二人が集合場所にやってくると夏彦はコーヒーを片手に既に待っていた。

  • 80二次元好きの匿名さん23/12/28(木) 23:18:13

    夏彦「とりあえず、さっさと済ませよう。長引くといけるとこが少なくなる」
    真希「お、なんか食いに行くのか」
    釘崎「ごちになりまーす!」

    新田「おっす!今日はお二人も一緒なんすね!」
    釘崎「新田さんだ!今日はよろしく!」
    真希「新田さんか、珍しくない?」
    新田「いやぁ、京極さんはなんというか、サービスが良くて・・・」

    夏彦が空っぽになった紙コップを握りつぶしてゴミ箱に投げ入れる。
    釘崎と真希は車から降りてきた新田に挨拶をすると世間話を交わした。

    釘崎「サービス・・・?あだっ!」
    新田「なんか変な事考えてる?」
    真希「どう考えても心付けだろ」

    一瞬凄い顔をした釘崎を真希がチョップで正気にもどした。新田もあきれ顔だ。

  • 81二次元好きの匿名さん23/12/28(木) 23:23:41

    草むっつりかな?

  • 82二次元好きの匿名さん23/12/28(木) 23:38:41

    カワよ

  • 83二次元好きの匿名さん23/12/28(木) 23:51:34

    >>81

    やきもちですw



    任務自体はあっさりとしたものだった。廃墟に沸いた呪霊を三人で手分けして討伐し、午後にかかる前に呪霊はいなくなった。


    新田「お疲れ様っす、どこまで行きます?」

    夏彦「街についたら下ろしてくれて構いませんよ、お忙しいでしょうし」


    後部座席は夏彦が真ん中に寄せられ、二人が窓際。なんとなく甘酸っぱい雰囲気が漏れていることを新田は同性であることから察し、内心にやついていた。


    夏彦「それじゃあ俺たちはここで降ります、新田さん、お疲れ様です」

    新田「いえ、そんな・・・ありがとうございます」


    はい、と封筒を夏彦は差し出した。新田はそれを嬉しそうに受け取ると手を振りながら三人を見送った。


    真希「お前、補助監督の人に毎回配ってんの?」

    夏彦「まあね、ガソリン代も馬鹿にならないし、そういうの気にしないで仕事できた方がポテンシャルも上がるでしょ」

    釘崎「いったいいくら包んだのよ?」

    夏彦「三枚、ギフト券とかも入ってるけどそんくらいはね」

    釘崎「三枚・・・ってことは紙幣か」


    夏彦の言葉に釘崎はしばらく考えて・・・。


    釘崎「三千円?」

    真希「馬鹿かお前・・・」

    夏彦「それじゃあ補助監督の人が乗ってる車で満タンは無理だろ・・・」

    釘崎「え?違うの?!」


    あっけらかんと答えた釘崎に二人はあきれ顔で答えた。二人のリアクションから自分が見当違いな答えを言ったことはわかったがそれでも正解はイマイチわかっていない様子だ。

  • 84二次元好きの匿名さん23/12/29(金) 00:00:33

    今日はここらへんにしときますまた明日!

  • 85二次元好きの匿名さん23/12/29(金) 00:02:04

    乙を!

  • 86二次元好きの匿名さん23/12/29(金) 00:04:44

    >>83

    ヤキモチはカワよ

  • 87二次元好きの匿名さん23/12/29(金) 07:14:35

    保守

  • 88二次元好きの匿名さん23/12/29(金) 13:23:50

    保守域展開

  • 89二次元好きの匿名さん23/12/29(金) 22:01:08

    再開します!死滅回遊編制作決定!さあ存分に呪いあおうなんて余計なおせWi-Fi!




    真希と夏彦に呆れられて居心地が悪くなったのか釘崎はすこしふてくされたように二人の後ろを歩く。

    真希「拗ねたな」
    夏彦「拗ねた」
    釘崎「拗ねてないもん」

    実際はちょっと拗ねていた。しかしそれを引きずる釘崎ではない。彼女が気にしていたのは・・・。

    釘崎(真希さんと夏ってあんな仲良かったっけ・・・)

    少し前を歩く二人の距離感。真希は確かに誰かと距離を作る人物ではない。言いたい事は言うし、嫌いなら離れる。
    そんな彼女が、なんだか夏彦と近い。

    釘崎(もしかして真希さん・・・)

    夏彦と真希は釘崎と交流が途絶えてから少しして、それからの仲である。考えてみれば彼女は第二の幼馴染といってもいい。

    釘崎(私は私しか知らない夏をしってる・・・でも、真希さんも私の知らない夏を知ってる・・・)

    そう思うとなんだかもやもやする。自分らしくないはっきりしない気持ちがゆらめいては消えていく。しかし完全にはなくならず、燻って、影を残す。

    釘崎「・・・わぶっ」
    夏彦「なんだかぼーっとしてる。大丈夫?」

    考え事が過ぎたのか、立ち止まって振り返った夏彦にそのままぶつかった。

  • 90二次元好きの匿名さん23/12/29(金) 22:39:11

    夏彦「?」

    心配そうにこちらを覗き込む夏彦に釘崎は何と言っていいかわからず、別に、と短く返した。

    真希「別にじゃねーだろ、どうしたんだよ」
    釘崎「な、なんだかわかんなくて・・・」

    珍しく歯切れの悪い釘崎に真希も不思議そうにしている。釘崎はそんな空気に耐え切れず頭を掻いて唸った。

    釘崎「あーもう!わけがわからないんですけどー!!!」
    真希「うおっ!?」
    夏彦「???」

    夏彦は若干混乱していたがとにかく当初の目的として食事に行くことに。

    夏彦「なにかリクエストある?」
    真希「肉!」
    釘崎「寿司!」

    二人が同時に手を挙げた。

    夏彦「どっちもは困る、じゃんけんする?」
    真希「ここは先輩を立てろよ釘崎、コイツが連れてく寿司屋なんて私達にゃ味わかんねえよ!やっぱ焼肉だろ!」
    釘崎「いーやーでーすー!ザギンでシースーするんですー!」

  • 91二次元好きの匿名さん23/12/29(金) 22:40:05

    dice1d3=3 (3)


    1、寿司

    2、焼肉

    3、まだ揉める

  • 92二次元好きの匿名さん23/12/29(金) 23:39:00

    決着つかず!

    真希「あーもう!寿司だったら私がまたつれてってやるから諦めろ!」
    釘崎「それはそれ!これはこれー!」
    夏彦「どうしたもんかな・・・とりあえずちょっと休憩して、ね?」

    ヒートアップする議論を夏彦が宥める形で一旦休憩に、一切口を挟んでいないのに夏彦はすごく疲れた。

    真希「ここらへんに自販機あったよな・・・おい、釘崎、これでなんか買ってこい」
    釘崎「え、私?!」
    真希「これから飯奢るやつに飲み物まで買わせる気か?そして私は先輩だ、そうなると必然的にお前が行くべき」

    真希にビシッと指を刺されて釘崎は言い返せずに渋々自販機へ。

    釘崎「はぁ、もう・・・なにやってんだか」

    本当は寿司じゃなくてもよかった。ただ、夏彦に自分の意見が通れば。そんなつまらない意地だった。
    寿司はまた今度真希が連れて行ってくれる。それなら今回は譲ってもいいだろう。
    自販機を前にして冷静さを幾分かとりもどした釘崎はそう考えた。

    「あれ、君、今一人?」

    そんな冷えてきた頭と理性を逆なでする声。振り向いてみるとあからさまなチンピラだった。

    「かわいーね、俺たちと遊ばない?」
    釘崎「遊ばない、あっちいけ」
    「そんなこと言わずにさー」
    「そそ、ちょっとお茶するだけだし」

    ジュースを抱えているせいで思うように抵抗できず、チンピラたちは勝手に話を進めている。

  • 93二次元好きの匿名さん23/12/30(土) 00:07:25

    釘崎「うるさいなぁ!もう!あっちいけっての!」

    両手がふさがっているのを無抵抗で強がっているだけと判断したのかチンピラたちは釘崎を囲む輪を狭めてくる。

    釘崎(こいつ等・・・〆るか?)

    そう思いつつ腰に手をやろうとした時にチンピラの一人が目ざとく釘崎の動きに対応して後ろに回そうとした手を取った。

    「なにしてんの、もしかして他に連絡とか?」
    釘崎「離せ!触んな!」

    ジュースが地面に落ちた。抵抗はするものの体格差もあるし、釘崎は元々体術が抜きんでているわけでもない。
    掴まれる前ならまだしも体格で劣る以上、抵抗は難しい。

    「うわ、金槌?こんなの持ってたら危ないじゃん」
    釘崎「あ、こら!返せ!」

    ニヤニヤしているチンピラたち。釘崎は頭が沸騰しそうなほど怒っていたが・・・。



    夏彦「・・・なにやってんだよ」

    幼馴染の聞いたことのない冷たい声で一気に冷静に戻された。

  • 94二次元好きの匿名さん23/12/30(土) 00:25:32

    釘崎「夏・・・?」

    釘崎が戸惑うほど、目の前の幼馴染は威圧感に満ちている。普段の柔らかい表情が影も形もない。

    「あれ、彼氏?」
    夏彦「黙れ、とげちゃんに触った奴以外は見逃してやる。失せろ」
    「あ?こっちは四人いるんだけど?」
    「触ったヤツってこういうことか?」

    チンピラたちは調子に乗って釘崎の頭を叩いた。

    夏彦「・・・」
    「なんとかいったらどうだよ?」

    次の瞬間にチンピラ一人が宙を舞った。空き缶のように転がって壁にぶつかると痙攣しはじめた。

    「あ、え?」
    夏彦「どけ、でないとつぶすぞ」

    いつの間にか夏彦が拳を突き出すような恰好になっている。殴ったのは明白だった。距離もいつの間にか拳の届く距離まで移動している。文字通り瞬く間だ。

    「え、あの・・・」
    夏彦「お前は許さない」

    その場の皆が呆気にとられる中、夏彦は釘崎の手を掴んでいたチンピラの手首を握り、無言でへし折った。

    「ぎゃあ!い、いてえよ!いてぇぇ!」
    夏彦「失せろ、それとも両手とも行くか?」

    ドスの利いた声で再び呟くとチンピラたちは我先にと逃げ出していった。

  • 95二次元好きの匿名さん23/12/30(土) 00:41:25

    今日はここまで!また明日!

  • 96二次元好きの匿名さん23/12/30(土) 04:53:50

    夏彦怖〜

  • 97二次元好きの匿名さん23/12/30(土) 08:33:53

    保守

  • 98二次元好きの匿名さん23/12/30(土) 11:34:07

    保守域展開

  • 99二次元好きの匿名さん23/12/30(土) 18:55:24

    保守

  • 100二次元好きの匿名さん23/12/30(土) 23:19:22

    お休みかな保守

  • 101二次元好きの匿名さん23/12/30(土) 23:41:01

    再開します!

    釘崎「夏・・・?」

    釘崎が恐る恐る夏彦に声をかけると夏彦は先ほどと同じような速度で釘崎の前に立った。

    釘崎「な・・・」
    夏彦「とげちゃん!大丈夫だった?!変な事されてないよね!?」

    おろおろしながら釘崎の周囲をぐるぐる回る夏彦。釘崎はそんな夏彦を宥めながらちょっとホッとした。
    さっきの雰囲気がまるで抜き身の刃物のようで、当たり前だがそこまでの露骨な敵意を見せたことは少なくとも釘崎の前ではなかったからだ。

    釘崎「大丈夫だって、もう・・・ま、助かった。ありがとね」
    夏彦「うん」

    いつものへにゃっとした笑顔を見せて、二人は真希のところへ。

    釘崎(・・・さっきの夏・・・怖かったけど、かっこよかった)

    戦いの場で見せた真面目な雰囲気とは違う鋭い表情と強い感情。それが自分のためだと思うと何故だか嬉しかった。

  • 102二次元好きの匿名さん23/12/30(土) 23:52:26

    あるやん!やったぜ

  • 103二次元好きの匿名さん23/12/30(土) 23:53:00

    ニヤニヤ

  • 104二次元好きの匿名さん23/12/30(土) 23:57:33

    釘崎は夏彦と一緒に来た道を戻る。その最中でいろいろと考えていた。

    釘崎(あんな表情・・・真希さんに見せたことあるのかな・・・)

    もしかして私だけか?なんて考えると口元が緩んでしまう。夏彦と自分の間に特別ができた気がして、嬉しかった。

    真希「おせーぞ!なにやってたんだよ?」
    夏彦「いやぁ、なんか変なのに絡まれた」
    真希「マジかよ、まあいいや・・・ん」

    真希は若干不機嫌だったが事情を聞いて納得しつつも手をさし出した。

    夏彦「?」
    真希「何キョトンとしてんだよ、飲みもん買ってきたんだろ?」
    釘崎「あ、そうだ・・・あいつらーっ!あいつらのせいで落としたんだった!」
    真希「マジかよ、後で金返せよ」

    釘崎は地団駄を踏んだが真希はそんなことお構いなしに弁償を決定した。

    真希「おら、早く小銭だせ!」
    釘崎「うぅぅ・・・お昼の決定権譲るんで勘弁・・・」
    真希「ちっ、しゃーねーな・・・ってなわけで肉だ!夏彦!」
    夏彦「はいはい・・・近場の焼き肉屋でいい?高いのでもいいけど」
    真希「格式ばったのなんかノーセンキューだ、ガッと食って満腹になろうぜ」

    せっかくのただ飯だしな。と真希は上機嫌だ。ここまであっけらかんとしているともはや清々しい。

  • 105二次元好きの匿名さん23/12/30(土) 23:59:34

    いいやんいいやん青春してますねえ

  • 106二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 00:00:43

    >>104

    格式張った所より人目気にせずバクバク食える方がいいよね…分かるぜ

  • 107二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 00:05:50

    三人は連れ立って近場の焼き肉屋へ。

    店員「いらっしゃいませー」
    夏彦「三人で」

    夏彦が受付を済ませる間に二人は店内に貼ってあるフェアなどに目をやりつつ喋っていた。

    真希「そういや変なのに絡まれたって言ってたな、ケガとかしてねーか?」
    釘崎「ちょっと手首掴まれたくらいですけど、痕もないし大丈夫ですね」
    真希「お前がケガしてないならそれでいいけどよ、そうなると相手が心配だな・・・殴ったんじゃないのか?」

    真希がそういうので釘崎は頷いた。真希はそれを聞いてうげっと顔をしかめる。

    真希「アイツ本気出すと私より力強いし、武器術やらならともかく呪力も乗るから打撃力なら数段上なんだよな」

    真希がそういうので思い出してみると確かに夏彦に殴られたチンピラはまるで空き缶のように吹っ飛んでいた。
    死んでないよね?と思いつつ、夏彦がそこまで馬鹿じゃないだろうと結論付けて話を聞き流した。

  • 108二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 00:07:57

    愛のパワー(物理)を発揮したからなぁ全治半年ぐらいですめばなんとか

  • 109二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 00:08:38

    >>108

    下手しなくても重症ですね…

  • 110二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 00:16:26

    真希「アイツの体力、サポートに回るのが常だから前出る事すくねーけど前線でも十分やってけるからな」
    釘崎「あー、確かに・・・私じゃ目で追うのがやっとっていうか・・・」

    呪力量に騙されがちだが夏彦の身体能力は真希のお墨付きだ。実際、一人で任務に赴く際は術式にサポートさせ、自分が前にでて呪具やらで戦うのが多いのだという。

    夏彦「あっちのテーブルだってさ、行こう」

    受付を終えて店員を連れて夏彦が二人のところへ。会話は一旦終了して三人はテーブル席で注文することに。

    夏彦「とりあえず食べ放題で頼んだから好きなのどんどん注文してね」
    真希「よっしゃ、じゃあまずはなににすっかな」
    釘崎「私冷麺」
    真希「馬鹿!焼肉屋で麺なんか頼むんじゃねえ!米と肉で食うんだろうが」

    真希が釘崎が注文しようとしたメニューの冷麺を速攻でキャンセルしてご飯(大)三つとカルビを大量に注文した。

    真希「これくらいで良いんだよ!」
    釘崎「豪快・・・」
    夏彦「真希ちゃん、俺ごはん食べたら肉入らないんだけど・・・」

    釘崎はあっけにとられていたし、夏彦はご飯の量を見て完全に困っていた。

  • 111二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 00:21:18

    そう言えば夏彦見た目に寄らず少食でしたね

  • 112二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 00:26:07

    釘崎「うーん、やっぱり肉とごはんは正義ね」
    夏彦「ごはん・・・ごはんが減らない・・・」
    真希「もっと食え夏彦!お前は体の割に少なすぎるんだよ!」
    夏彦「やめて・・・胃が・・・もたれるから」

    食べ始めて10分もしない内に夏彦がごはんの量で泣き言を言い始めた。それに追い打ちをかけるように焼けた肉をどんどんと分けていく真希。釘崎はなんだかんだ言って楽しんでいたが。
    そこからさらに数分経つと夏彦は完全に背景になっていた。二人は雑談しつつ肉を突き続ける。

    真希「あー、うまい!この店は当たりだな」
    釘崎「食べ放題なのにメニューも多いし・・・あ、このタン塩追加で!」

    注文の品は一旦は夏彦の前に来るがすぐに真希と釘崎がそれを取りあげて焼き始める。夏彦はウーロン茶を傾けつつ、積みあがった肉を釘崎と真希の皿にこっそり載せていく。

  • 113二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 00:29:04

    弱弱胃袋

  • 114二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 00:50:27

    真希「あー食った食った、ごちそうさん」
    釘崎「こんなに食べたの初めてかも・・・ふー」
    夏彦「・・・」

    夏彦は結局今回の焼肉でほとんどごはんを食べただけで終わった。驚くほどの小食ぶりである。
    対する二人は奢りを十分に堪能し、満足げだ。

    釘崎「夏、大丈夫?」
    夏彦「胃が重い・・・」
    真希「マジでどういう体の構造してんだろうなコイツ・・・」

    体格で言えばこのなかで一番かつ男性にもかかわらず一番小食で最初にごちそうさまをした。しかし体力で言えば見た目通りであり、筋力ももちろんそうである。

    真希「草食動物的なアレか」
    釘崎「あー、なんかわかるかも」

    肉を食べずに草だけでムキムキの動物を頭に浮かべ、二人は夏彦をみやる。

    真希「ふぅ・・・食ったら元気出てきた、私はちょっくら高専に戻って鍛錬するわ」

    真希はそういうとそのまま高専に向かって歩き出してしまった。釘崎はそれを見送ると胃もたれのせいで口数の少なくなった夏彦と二人残されることになった。

  • 115二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 00:51:03

    今日はここまでにします、また明日!
    明日はできれば早めに始めたいなぁ。

  • 116二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 00:53:58

    乙〜

  • 117二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 00:56:56

    お疲れです

  • 118二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 10:06:34

    ほしゅ

  • 119二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 12:46:38

    ほしゅ

  • 120二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 21:00:53

    再開します!鐘つきと蕎麦があるのでとびとびになるかもですが・・・



    釘崎(二人になった・・・)

    ちょっと期待を抱いて夏彦を見る。しかし当の夏彦は顔を青くしているばかり。

    釘崎「マジで大丈夫なの?」
    夏彦「二級の呪霊祓うよりしんどい」
    釘崎「そんなに?」

    満腹の時に嗅ぐ油の焼ける匂いは強烈だ。それを堪能した夏彦はグロッキー状態である。
    釘崎はそんな夏彦を支えながら今度は近くの喫茶店へと入った。

    釘崎「ここでちょっと休憩しよ」
    夏彦「うん、ごめん・・・うっぷ」

    店員に心配そうに見られながら喫茶店に入った二人はコーヒーとアイスティーを注文して席についた。

    夏彦「ふぅ、ちょっと回復してきたか・・・」
    釘崎「立ち直りも早いわね」

    コーヒーを片手に顔色が戻り始めた夏彦。釘崎はちょっと心配してた自分が馬鹿らしくなった。

  • 121二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 21:44:57

    ハジマタ

  • 122二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 21:51:01

    >>120

    ゆっくり休んでもいいんやで?

  • 123二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 22:02:00

    釘崎はそういえば、と普段から任務を一緒にこなしていたらしい真希の言葉を思い出した。


    真希『あいつさ、立ち直りはえーんだよ。なんかこう、電源が切り替わったみたいに』


    真希の言によると極ノ番という術の奥義を使って呪力を使い果たしたにもかかわらず戦闘終了間際には復帰して真希を助けに来たという。呪力が枯渇するという感覚は釘崎には少しわかりづらい感覚だったが仮にそれを体力に置き換えて考えても確かに早い。


    釘崎「そういえば、夏って呪術師になったの何時からなの?」

    夏彦「どうしたの、急に・・・」

    釘崎「んー、まあ、私と別れてからのことが気になっただけ・・・こっちは沙織ちゃんが追い出されたりで面白くないことばっかで、フミにも言ったけど・・・もうあそこに戻るつもりないってくらいの思い出しかないのよ」

    夏彦「そっか・・・父さんの危惧した通りになったわけか」


    夏彦は引っ越しの当日、心配そうに沙織ちゃんたちの家族を見ていたのを思い出した。田舎はよそ者に厳しい。

    京極家という名家の流れを汲む京本家でもそれはかわらなかったのだろう。


    夏彦「そうだな、ホントに向こうに行って・・・すぐに両親が、その・・・亡くなってさ」

    釘崎「!・・・そうだったんだ、ごめん」

    夏彦「いいよ、確かにつらいけど、そのお陰でこうしてまたとげちゃんと再会できたわけだし・・・呪術師になったこと自体になんの辛い記憶もないよ」


    夏彦はそういうと少し寂しげに微笑んだ。


    >>122 休みがどのみち今日と明日しかないんじゃ・・・!くやしいのう!くやしいのう!

  • 124二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 22:18:08

    お、おう…乙だぜ

  • 125二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 22:18:43

    青春の良さと大人の世知辛さの両方を感じる…

  • 126二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 22:23:19

    釘崎「そうなんだ、まあ、それで言えば私もそうか・・・東京に行きたくて呪術をおばあちゃんに習って・・・どうにかこうにか東京に来たんだもんね・・・」
    夏彦「とげちゃんのおばあちゃん、自分でとげちゃんを一人前にしたかったんだろうね・・・でも、それじゃあ棘ちゃんをまともには育てられないだろうけど」

    環境が悪いよ、環境がね。と夏彦は珍しく毒づいた。夏彦もなんだかんだ言ってあそこは好きではないようだ。

    釘崎「夏もそう思うんだ?」
    夏彦「人としてもそうだけど、やっぱ田舎はヌルいよ。たまに土地神クラスに当たったりするけど・・・呪いのこもる人の多い施設がたくさんある都会とじゃ手強さが違う」

    夏彦の言葉に釘崎も確かにね、と溜息をついた。東京に来てしょっぱなの仕事でも虎杖のフォローが無ければ危なかった。まさか呪霊が意思を持って行動するとは。

    夏彦「経験浅い内に戦わされたけど・・・呪詛師もいた、馬鹿目隠・・・五条先生の影響で少なくなったとはいえやっぱり馬鹿はいる。悪意を持ったやつがね」

    コーヒーを一口飲んで息を吐いたが、最後の言葉らへんにまた釘崎が見た事のない、鋭い眼差しを見せた。

  • 127二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 23:02:26

    なんか書けば書くほど夏彦が師匠に似て来てる気がする・・・!



    釘崎はそんな夏彦の視線を見て、ふと寂しさと言いようのない焦りを感じていた。
    なんとかしてあげたいのに、自分ではどうにもならないのではないか、そんな気がして。

    釘崎「そうなんだ・・・」
    夏彦「うん、まあ・・・助けた人たちに感謝されたり、祓って安全になったところに新しい施設ができて賑わいだしたり、嬉しい事も多かったけど」
    釘崎「・・・うん」

    いろいろと考えたが釘崎はうじうじと悩んでいることが嫌になり、あーっ!と唸りながら頭を掻いた。

    夏彦「とげちゃん?!」
    釘崎「あー!もう!夏と話したいのはそんなジッメジメした話じゃないの!もっとこう、あるでしょ!?」
    夏彦「!?」
    釘崎「だってさ!幼馴染がこうして再会して!一緒にご飯食べて喫茶店言ってんのに!仕事の話ばっかじゃない!」

    一瞬、ぽかんとしていた夏彦はそんな釘崎の言葉を受けて思わず噴き出した。

    釘崎「何笑ってんのよ!」
    夏彦「あー、ふふふっ、ごめん・・・そうだったね、つまんないことばっかり言ってもしょうがないよね」

    夏彦はそういうと疲れたように椅子に体を投げ出して天井を見上げた。

  • 128二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 23:04:11

    流石やでトゲちゃんそのまま夏彦と結婚してもろて…

  • 129二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 23:05:02

    夏油さんの様にはならないさ

  • 130二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 23:45:05

    お疲れ

  • 131二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 00:14:30

    あけおめ!

    >>129

    ただ多分原作の世界線に放り込まれたら闇落ちするんじゃ・・・?

  • 132二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 00:29:14

    >>131

    トゲちゃん…

  • 133二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 01:01:13

    夏彦「ずっとそうだった、仕事ばっかりだったよ・・・こんな時間にも考えちゃうくらい」
    釘崎「夏・・・」
    夏彦「あの時、そうだ・・・師匠に当たる人に呪術のことを教わって、真希ちゃんと出会って・・・正直、初めて会った時の真希ちゃんは小さいころのとげちゃんを思い出すくらいすごかったよ」

    鍛錬してたらいきなり蹴られたからね、と夏彦は懐かしそうに笑う。釘崎は夏彦の雰囲気がまた緩くなったことに安堵しつつもまた真希の名前が出てきたので今度は釘崎が不機嫌になった。
    それからの生活や京都校に行ったこと、大変だったことを話し続けたがその際にも真希と真依の名前がちらほら出てくるので釘崎は終始もやもやが止まらなかった。

    夏彦「真希ちゃんや真依ちゃんとは何度も組んだから、もう仕事仲間って感じだね」
    釘崎「ふーん、真希さんとあの妹ばっかね、私はなんだってのよ」
    夏彦「・・・とげちゃんはいつだって心の支えだったよ」
    釘崎「・・・はずいからやめろ、どうせ真希さんたちもそうでしょ」
    夏彦「とげちゃんが、一番だよ・・・こう見えても一途な方だからね」

    不貞腐れて逸らしていた目線を前に向けた時に、夏彦と目があった。あの時、ずっと前に約束を交わした時
    その時と同じ眼差しで自分をみていた。

    釘崎(いつだって・・・、一番か・・・)


    夏彦『とげちゃん、ぼくは、とげちゃんがいちばんだから・・・だから』
    釘崎『だから?』
    夏彦『ぼくとけっこん、してくれる?』
    釘崎『でっかいホテルで!ドレス着せてくれるならいいよ!』

  • 134二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 01:22:19

    あの時のまなざしと約束を思い出した時、釘崎の頭は沸騰した。

    釘崎(わ、忘れてた!私・・・そうだ、してた・・・そんな約束・・・!)

    釘崎「~~~~!!!!」
    夏彦「?・・・とげちゃん?」

    夏彦の顔を見れない。釘崎は真っ赤な顔のまま俯いて、テーブルに頭をぶつけた。
    ぶつけた頭が痛んだが、それどころではない。

    釘崎(ずっともやもやしてた・・・夏が真希さんと話してたら、誰かの話をしてたら・・・今、理由がわかった)

    あのとき、あの約束を交わしたときに。

    お別れの挨拶をして、泣きながら別れたあの時から。

    釘崎(私・・・夏の事・・・好きだった・・・)

  • 135二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 01:37:18

    あら〜^ ^

  • 136二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 01:37:50

    えんだァァァァァァ!!イヤァァァァァァ!!

  • 137二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 01:47:02

    今日はここまで!とげちゃんの続きをもう少ししたら夏彦の話になります!
    ではまた・・・!

  • 138二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 01:47:23

    お疲れです

  • 139二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 01:47:38

    ではでは

  • 140二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 11:33:16

    ほしゆ

  • 141二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 16:12:16

    単発で更新!上手くいけば初詣までにもう一回いけるか・・・?


    優しい夏が好きだった。どんなに酷い目にあってもいつも私の後をついてきてくれる夏が好きだった。
    私らしい私をいつも認めてくれる夏が好きだった。

    好きがどういう意味だったのか。今まではずっと友達だと思っていた。
    でもそれが違うものだと自覚してしまったら、もう、前には戻れない気がする。

    釘崎(顔、上げられないじゃん・・・)

    机に突っ伏したまま、過去の事を全て思い出してぐるぐると考えのループにはまった釘崎(わたし)をきっと夏は心配しているだろう。
    でもだめだ、今顔を上げたら・・・きっと、真っ赤で、泣きそうになってる。うまく言葉を出せなくて、夏を困らせるだろうから。

    夏彦「とげちゃん・・・泣いてる?」
    釘崎「ないてない・・・」
    夏彦「・・・そっか」

    困ったように、でも優しい声だ。そんな彼の言葉が愛おしい。

    釘崎「もうちょっとまって・・・」
    夏彦「わかった、待つ」

    カップを持ち上げる音と、コーヒーを飲む音が聞こえてからしばらくして釘崎はようやく顔を上げた。

    釘崎「はぁ・・・もう、なんか大変な一日だった気がする・・・」
    夏彦「おでこ赤くなってる・・・そう?僕の方はいつだって楽しいけどね」

    皆やとげちゃんと一緒は、いつだって。と額が赤くなっているのを心配しつつも夏彦はやはりどこか嬉しそうだった。

  • 142二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 18:35:22

    ニヤニヤ

  • 143二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 20:32:34

    夏彦と別れて高専に戻った夜。釘崎は自室でずっと考えていた。
    夏彦へ気持ちをどう伝えたらいいんだろう。きっと、おそらく・・・たぶん、夏彦は自分の思いに応えてくれるはず・・・。でもそれだと真希さんたちはどうなんだろう。彼女も、そして京都校にも夏彦が気になっている女生徒がいるかもしれない。

    自分はそんな人たちを出し抜くような形で思いを伝えていいのだろうか。








    釘崎「あー・・・ねむ・・・」

    翌朝、若干の寝不足に悩まされながらも釘崎はトレーニングに参加した。若干遅刻気味かもと思いつつも寝ぼけた頭ではまともに考えることもせずグラウンドへと足を運んだ。

    真希「それ、マジなのか?」

    グラウンドにつくと真希が焦った声を上げているのが聞こえてきた。

  • 144二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 20:44:23

    釘崎はその声を聞いて何事かと皆のところへ合流すると虎杖も焦ったようにこちらへ話しかけてきた。

    虎杖「釘崎!お前なんか聞いてないか?」
    釘崎「なんなの・・・?」

    虎杖の声が頭に響き思わず顔をしかめ、頭を抱えた。思ったよりも寝不足が酷い。

    伏黒「なんなのじゃないだろ・・・昨日から京極さんと連絡ついてないって伊地知さんが・・・」

    伏黒もどこか焦っているのが見て取れる。釘崎もそこまでの情報がついてようやく皆が焦っている理由が分かった。

    釘崎「え、そんな連絡は・・・」

    慌てて携帯を見る。しかしながら連絡は来ていない。

    釘崎「夏・・・、いや、まさか夏に限って」
    伏黒「連絡豆な人だぞ、それに一級相当で仕事受けてる人が暇してるわけなんかない・・・連絡しないわけが」
    パンダ「そこまでだ伏黒、最悪を想定するのは俺たちの仕事じゃない。それに、機械的なトラブルや電池切れの可能性だってあるだろ?」

    伏黒の言葉をパンダが遮った。伏黒は反論しようとしたが釘崎が携帯を握りしめて明らかに動揺しているのを見て言葉を飲み込んだ。

    パンダ「真希、京都の人からは連絡ないのか?」
    真希「こっちだって寝耳に水だよ!とりあえず真依に聞いてみる」

    真希もちょっと焦った様子で携帯を操作し始めた。

  • 145二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 21:31:26

    京都校では京都校で混乱していた。

    歌姫「一級相当の術師が突然行方不明ってどういうことよ?!」
    五条『いや、それをこっちも聞きたかったんだけど・・・情報来てないの?』
    歌姫「来てない・・・下手な呪霊や呪詛師にやられるようなタマじゃない分、余計に心配だわ」

    アンタとちがって時間にも正確だし・・・と歌姫が続けると電話越しの五条も困った様子だ。

    五条『こっちとしては彼が個人的な理由で自由に動いているとしてもかまわないんだけど・・・上もうるさいし、なによりウチの生徒が結構心配してんだよね・・・ブッチした仕事なんてあると信用にかかわるし』
    歌姫「アンタが信用なんか気にするような奴だって知って驚いてるわ・・・とにかく、こっちも情報は集めるわ」

    歌姫は電話を切ると困ったように頭を掻いた。よりにもよって真面目な、しかも呪術界と表の両方で信用の高い御家の跡取りが行方不明なのである。ただの連絡の不備ならいいのだが・・・。



    真依「はあっ!?夏彦から連絡が無いってどういうことよ!こっちにもないわよ!」

    京都高専でも真希から連絡を受けた真依が携帯を手に大声を上げていた。

    真希『怒鳴るな馬鹿!』
    真依「ふぅ・・・はぁ、それよりそっちは?夏彦は最後に東京に来てたはずでしょ?」
    真希『ああ、昨日まで一緒だったし、ウチのパシリが最後だけど別れた時は何もなかったって』
    真依「たしか・・・その日の次が首都圏での仕事だったはずよ・・・住所あったかしら・・・送るわ」

    一旦通話を切って、メールで住所を送ると短く感謝と調べてみるという返信が帰ってきた。
    真依は真希たちが調べてくれるという事に少し安堵しつつもいつのまにかじっとりと手に汗をかいていたことに気付き、自分がまだ冷静になり切れていない事を知った。

  • 146二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 22:00:02

    波乱の予感…をヒッシヒシ感じるぜ

  • 147二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 22:01:02

    さてどうなるか

  • 148二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 22:18:02

    時間は遡って釘崎と別れた後の時間。夕闇が迫るころ、都心は帰宅する人の波でごった返していた。

    夏彦「都心はやっぱり人が多いな・・・」

    夏彦は釘崎や真希と食事や会話を楽しんで、上機嫌で電車に乗った。明日からの仕事も頑張れる。
    そう思いつつ補助監督と明日の打ち合わせをしようと携帯を開いたときだった。

    「もし、よろしいかな」

    不意に老人の声がして、顔を上げるといつの間にか男性が一人立っている。

    夏彦「えっと、なんでしょうか」
    「京本夏彦君・・・で間違いありませんか」

    旧姓で呼びかけられて夏彦は少し驚いた。旧姓を名乗っていたのは釘崎の故郷の村と引っ越しが決まってからの自分にとっては短い期間だ。つまるところ京本夏彦となのった時間が短いにも関わらず男性が自分を知っているらしいことに驚いたのだ。

    夏彦「どちら様でしょうか」
    「申し遅れました・・・私、京極勝弘の弟、京極正明と申します・・・。君の大叔父に当たるのかな」
    夏彦「えっ!大叔父さん・・・?」

    思わず声を上げた。しかしながらよく見ると目のまえの老人は京極家の仏間に飾ってある当主の写真にそっくりだった。血縁を感じさせる顔立ちに夏彦はどことなく安堵と同時に疑念を感じていた。
    この人が大叔父であるなら、何故今になってここに来たのだろうか。連絡なんていつでも取れるだろう。
    それなのに・・・。そんな疑念に応えるように正明は自分の服をまくって腹を見せた。

    正明「大病を患いましてね・・・恥ずかしながら、ずっと外国で治療を受けていたのです。飛行機に乗れるようになるまで時間がかかりましてね・・・あんなことが無ければ外国に骨を埋めていたかもしれなかったが」

    腹の傷跡は大きく、十字の傷跡は腹を跨ぐ上に縦の傷は胸まで伸びている。よほどの大手術だったのだろうか。
    そんな老人は夏彦の肩に手を置いて涙を浮かべながら言葉をつづけた。

  • 149二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 22:24:03

    どうしたどうした

  • 150二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 22:24:28

    移植?

  • 151二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 22:27:57

    正明「本当に、君だけでも生きていてくれてよかった・・・兄さんも、夏来くんも亡くなったと聞いて・・・一時はあとを追うべきかと考えていたんだよ・・・」
    夏彦「そうだったんですね・・・僕も大叔父さんが生きていてくれて嬉しいですよ」

    夏彦がそういってほほ笑むと正明は堪えきれず涙をこぼした。

    夏彦「しかしよく僕の場所がわかりましたね」
    正明「ああ、私も京極家の端くれ、呪術に関わって生きてきたからね。日本にさえ戻れれば窓や補助監督の人に連絡を取ることは難しくないのさ」

    そういうと正明はコンクリートの破片を拾うとそれを手のひらの上にわずかに浮かせて見せた。

    正明「ある程度の速度で飛ばすくらいしかできないが呪力が籠ればある程度のダメージが狙える。昔はこれと刀や呪具で戦っていたものさ」
    夏彦「なるほど・・・」
    正明「そういえば今は仕事中かい?急ぎでなければ話をしたいのだが・・・」

    少し考えたが明日の仕事も今日と同じく大したものではなかった。多少の世間話くらい大丈夫だろう。

    夏彦「大叔父さんのお願いは断れませんよ、京極家の事もあるし・・・親族ならそれこそ」
    正明「そうかい、それならそこのお店で」

    二人はそのまま最寄りの居酒屋へ向かった。

  • 152二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 22:37:42

    正明「こんな店に来るのはもう何年ぶりになるかな」
    夏彦「外国にいたんでしたっけ」
    正明「ああ、しかもほとんど病院の中だ、退屈なもんだったよ」

    夏彦は居酒屋の中が時間帯にしては空いているような気がしたが未成年の夏彦にはこれが普通なのかどうかわからず気にしないことにした。

    夏彦「そういえば、なにかお話があるんでしたっけ」
    正明「そうだね、それより何か飲もう、君は未成年だったかな」
    夏彦「ええ、まだ」

    正明が店員を呼んでお酒とウーロン茶を頼んだ。店員のまなざしが少し気になった夏彦は何げない仕草で出入口を確認し、正明との会話に臨んだ。

    正明「話というのは京極家の相伝の術式についてなんだ」
    夏彦「相伝・・・といいますと?」

    正明はすこしだけ周囲を気にする素振りを見せて夏彦にこっそりと小声で話した。

    正明「血盟破邪のことだ。君は知っているかい?」

    そのことを聞いて夏彦は少しだけ腹の底に得体のしれないものを感じた。他ならぬ自分の腹にだ。

  • 153二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 22:38:26

    ついに確信に踏み込むのか

  • 154二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 22:38:41

    >>153

    間違えた核心

  • 155二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 23:05:46

    正明「その様子だと、どうやら知っているようだね」

    夏彦の沈黙を肯定と受け取ったのか正明は続けた。

    正明「血盟破邪というのはかつて京極家が研究していた術式の中から偶然産まれたものだとされている。突然変異的なものなのか、もとより京極家にはそのような術式を使えるものがいたのかはわからない」
    夏彦「そうなんですか・・・」
    正明「ああ、しかし血盟破邪というのは本来は先祖の術式や呪力を次代に受け継ぐものだと、そういう言い伝えもある」
    夏彦「まさか、生得術式が個人の才覚によるものだというのは常識のはずですよ」

    相伝の術式というのは一族で特有の術式というだけで親から子供に必ずしも受け継がれるわけでは無い。
    もしも血筋によって必ず受け継がれるとするなら・・・。

    夏彦(そうさ、そうなら二人がこんなに苦しむことなんてなかった・・・)

    夏彦の頭に真希と真依の二人が浮かんだ。あの二人は名家に産まれながらも相伝の術式を持っていなかったために不遇な生活を強いられていた。あそこではむしろ彼女達のような人の方が多いだろう。

    正明「御先祖様はそれを必ず次代の当主や家族にそれを受け継げるようにする方法を探していたようだ」
    夏彦「ですが、当家ではそれは叶わなかった。そうですよね?」

    隔世遺伝的に発露するものならあるだろう。偶然に二代続けて同じ術式になるのもあるだろう。しかしそれを色々なオマケつきで確定させるなんてあまりにも馬鹿げている。

    正明「そうだな、それは夢物語というものだ・・・」

  • 156二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 23:25:08

    飲み物が運ばれてきたので二人はそれに口をつけて一旦休憩する。

    正明「しかしその夢物語に現実味が帯びてきたとしたら?」
    夏彦「・・・どういうことです?」
    正明「血盟破邪の能力は生得術式とは異なる術式の発露、そしてもう一つは・・・」

    そう言った瞬間に夏彦の視界が急にぐらつき始めた。

    夏彦「な、なんだ・・・?」
    正明「死にはしないさ」

    立ち上がって出入口を目指して走り出した夏彦を正明は落ち着いた様子で眺める。

    正明「親の世代からの特性、呪力そのものを受け継ぐこと」

    夏彦「ぐ・・・くそ・・・」

    扉に手を掛けようとして夏彦は床に倒れ込んだ。薄れていく意識の中で自分の傍にやってきた正明が自分に向かっていった。

    正明「君はその力がある。自力で血盟破邪に目覚めた稀有な例だからね」

  • 157二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 23:35:19

    ジジイ!

  • 158二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 23:49:26

    数日後、京都校も東京校も行方不明になった夏彦の穴埋めで忙しくなった。さすがに準一級以上の仕事に関しては他の術師が担当したがそれでもおおわらわで、大忙しだった。

    真希「はぁ・・・くそ、やり辛ぇな・・・」

    真希も単独の任務を幾度かこなしてはいたものの夏彦と組んでいたときと違い、フォローのない孤立無援の任務は普段以上に厳しく感じていた。

    真希「これで最後か・・・さっさと高専に戻るか・・・」

    帳が上がり、任務が終了した真希は補助監督に送られて高専へと戻る。その最中、不意に真希の携帯にメールが入った。

    真希「あん?・・・!すまん、降ろしてくれ!」
    新田「え?え?えええ?」

    言われるままに車を側道に停めると真希はすぐに得物を手に車を飛び出した。
    メールには『捕まった、任務の場所』の文と日付が描かれていた。それは夏彦が行方不明になる前に行くはずだった任務の場所。

    真希(ここからは遠くねえ、応援を呼びたいが捕まってるのが事実なら時間が惜しい・・・)

    走って現場へ向かう。するとそこはおあつらえ向きともいうべきか、廃ビルのようだった。

  • 159二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 23:49:40

    今日はここまでにします。また明日!

  • 160二次元好きの匿名さん24/01/02(火) 00:02:10

    お疲れ様

  • 161二次元好きの匿名さん24/01/02(火) 07:13:38

    保守域展開

  • 162二次元好きの匿名さん24/01/02(火) 09:13:43

    保守種

  • 163二次元好きの匿名さん24/01/02(火) 18:14:42

    ほしゆ

  • 164二次元好きの匿名さん24/01/02(火) 21:22:28

    再開します!

    真希「ここに夏彦が・・・?」

    携帯に電話を入れながらビルの入り口を潜ると不意に携帯電話の通話が切れた。

    真希「?・・・なんだよこんな時に・・・!」

    振り返って外に出ようとしたとき、帳が下りるのが確認できた。罠だと理解したときにはもう遅い。ビルを覆うように下りた帳のせいで真希は完全に孤立してしまった。

    真希「こうなったらやるしかねえな・・・」

    大刀の覆いを外し、真希はビルの奥へと足を踏み入れた。

    真希(物音もしない・・・いやに静かだ・・・)

    ビルの一階には誰もいなかった。物も呪霊の姿もない。ただ静寂が真希の緊張感を煽った。
    急かすように目の前にある階段が口を開けている。真希は階段を一歩ずつ踏みしめて二階へと向かう。

    真希「・・・誰かいるな」

    二階は壁が無く、ワンフロアが大きくある。奥には階段が見えるが・・・。部屋の真ん中に誰かが座っていた。

    真希「誰だ!」

    大刀を構えて叫ぶ。するとどうやら椅子に座っていたらしい人物はゆっくりと顔を上げた。

    真希「夏彦・・・?」

    顔を上げた人物はおそらく、夏彦だった。確信が持てないのは彼の顔の大部分が封印術式が書き込まれた呪布でぐるぐるまきにされているからだ。付け加えると衣服もボロボロで幾度かの戦闘を行った形跡があった。

  • 165二次元好きの匿名さん24/01/02(火) 21:46:57

    戦ったんか

  • 166二次元好きの匿名さん24/01/02(火) 22:05:03

    ピンチのゴリラ

  • 167二次元好きの匿名さん24/01/02(火) 22:14:05

    「・・・」
    真希「夏彦なのか!返事くらいしろよ!」

    真希の呼びかけも虚しく、男の両手に呪力がみなぎるのがわかった。

    真希「ちくしょう!」

    大刀を構え、踏み込もうとした刹那。自身の視界に影が差した。

    真希「ッ!」

    速い!あっという間に間合いに入られ、真希は咄嗟に体を捻って膝蹴りを入れた。しかしその膝蹴りの勢いはそのまま真希を後ろへと突き飛ばした。

    真希(くそっ!蹴った側がよろけるとか壁かよ!)

    ダメージはなかったが真希はその勢いのまま距離を取って再び大刀を構える。

    「・・・!」
    真希「うおっ!くっ!」

    大刀を振るうと相手は布で視界を塞がれているにも関わらず大刀の間合いを読み切ってスウェーで躱し、その勢いで振りかぶった拳を地面にたたきつけた。

    真希「っ!」

    ビルの床面に罅が入り、飛び散った瓦礫が真希の傍を掠めていく。体勢を崩した真希に夏彦?のタックルがモロに入り、真希の体が宙を舞った。

  • 168二次元好きの匿名さん24/01/02(火) 22:15:41

    真希(ぐっ・・・なんて馬鹿力・・・それに)

    砕けた床面と自身が体を打ち付けてできた罅からまるで卵の殻を割って出てくるように付喪神が出てきた。

    真希(間違いない、こいつは夏彦の術式だ・・・!)
    夏彦「まだ倒れないな」

    夏彦はせき込みながら立ち上がった真希に耳を向けて音を拾いつつゆっくりとこちらへ向かってくる。

    夏彦「さっさと倒れろ、でないと苦しむぞ」
    真希「ボケてんのか夏彦!私だ!真希だよ!」

    付喪神が真希の死角に回って攻撃の機会をうかがっているのを感じながら真希は叫んだ。

    夏彦「真希・・・ちゃん・・・?」
    真希「そうだ!なにがあったんだ!」

    真希が名乗ると夏彦はピタッと動きを止めた

  • 169二次元好きの匿名さん24/01/02(火) 22:16:44

    敵になるとこれほどめんどくさい術式はいない

  • 170二次元好きの匿名さん24/01/02(火) 22:25:55

    さてさてどうなるか

  • 171二次元好きの匿名さん24/01/02(火) 22:38:51

    真希「やっと通じた!ひやひやさせやがって・・・!」

    真希が安堵した瞬間、背後の付喪神が真希に攻撃を仕掛けた。

    真希「あっぶね!夏彦!ふざけんな!なに考えてんだよ!」

    付喪神を薙ぎ払って真希は夏彦に叫んだが夏彦はそれに攻撃的な笑みを浮かべて返答した。

    夏彦「そうやって誰かを真似たところでもう騙されない小細工なんかやめて正面から堂々とかかってきたらどうだ?」
    真希「はあっ!?私が真希だってわかったんだじゃねえのか?!」
    夏彦「何度も声や足音、所作でごまかそうとしてきたじゃないか!俺を消耗させるのが狙いか!」

    こんな封印術式までつかって!と夏彦は憤慨した様子で答える。

    真希「じゃあ問答でもなんでもやりゃあいいだろ!戦わなくてもっ!」

    夏彦が考え込んだ様子を見せると人差し指を立てて言った。

    夏彦「最後に一緒に行った場所は?」
    真希「釘崎と行った焼き肉屋!」
    夏彦「野薔薇ちゃんを俺はなんと呼んでる?」
    真希「とげちゃん!」
    夏彦「えっとじゃあ逆になんか質問して!」
    真希「なんでだよ!」

    そこまで問答を繰り返すとさすがに疑念を抱いたのか夏彦は付喪神を下がらせて、椅子に座り込んだ。
    夏彦「真希ちゃんなんだな・・・確かに一瞬、シャンプーの匂いしたけど・・・」
    真希「なんでわかんだよ・・・」
    夏彦「日付は跨いでると思うんだけど・・・違う匂いがするとわかるもんだよ」
    目が見えないと特にね。と夏彦は言う。

  • 172二次元好きの匿名さん24/01/02(火) 22:43:44

    シリアスが一気に消えて草

  • 173二次元好きの匿名さん24/01/02(火) 23:06:23

    真希「マジでなにがあったんだ?」
    夏彦「京極家の生き残りを名乗る老人に一服盛られた。気が付いたら顔に封印の術式を巻かれて・・・これ、どうにも触れてるところの呪力の流れを妨害するみたい」

    自分で剥がせない、どうしたらいいかな?と夏彦は問いかける。真希はそれを聞いて夏彦にあゆみ寄った。

    真希「呪力ねーから私にもどうなるか・・・」
    夏彦「とりあえずここから出るべきだとは思うんだけど外はどんな感じ?」
    真希「帳を降ろされた、術師を探すか、その目隠しを取る手段を探すかだな」
    夏彦「そうなると目隠しがなおの事邪魔だな・・・くそっ」

    がりがりと引っ掻いてみるがまったく呪布ははがれる気配はなく、ひっかき傷だけが増えていくばかりだ。

    真希「よせ夏彦!ケガしてるじゃねえか」

    夏彦の手を掴んで辞めさせる。どうやら目が見えないことと自身が狙われているという状況下で相当ストレスが溜まっているようだ。真希はともかくここから夏彦を連れ出さないといけないと考えを巡らせるが・・・。

    真希「とりあえず一階に降りるか、出口の方向を示すから術式か呪力かぶっ放せば抜けられるんじゃねえか?」
    夏彦「そうだね、それしかない」

    真希は夏彦の手を掴んで出口へと引率する。ドアを潜って階段へ・・・その時だった。

    真希「がっ!?」

    真希の全身に電撃が走った。

    夏彦「真希ちゃん!?どうした!何があった・・・!」

    口から煙を吐いて倒れこんだ真希の所在を探して手を彷徨わせる。そんな彼の背に、いつの間にか立っていた正明が声をかけた。

  • 174二次元好きの匿名さん24/01/02(火) 23:14:22

    正明「ようやく話が進みそうだね、夏彦君」
    夏彦「・・・いつからそこにいた?こうなるってわかってたのか・・・!」
    正明「ああ、だから君の携帯を使って最寄りの友達の中で呪力的な耐性の少ない彼女をここに呼び寄せたのさ。なんの為かは・・・言わなくてもわかるだろう?」

    夏彦は悔し紛れに壁を叩いた。罅が走り、天井からパラパラと埃が散ったが正明はそれに動じた様子もなく真希を肩に担いで歩き始めた。

    正明「人質ができたところで移動しよう。彼女の治療もしないと」
    夏彦「真希ちゃんは無事なのか?」
    正明「君が大人しくついてきてくれれば間に合うさ、死なれると困る。急ごう」

    目隠しをされていた夏彦には気が付かなかったが一階へと続くドアには出る際に引っ掛かるように術が仕込まれていたようだった。真希が誘い出されたのは他の二人、真依と釘崎と違い呪力で探知とガードができないからだ。
    現に術をもろに食らった真希はガードできず完全に失神しており、正明は彼女の脈やらを確認しながら運んでいる。

  • 175二次元好きの匿名さん24/01/02(火) 23:45:44

    釘崎「真希さんとも連絡がつかなくなった・・・」

    夕刻、高専にはいよいよ緊張が高まっていた。

    パンダ「さすがに楽観視はできなくなったか、単独行動は禁止だとさ」
    狗巻「・・・おかか」
    伏黒「新田さんの情報だと任務の帰りに突然車降りてどこかに行ったらしいですね」
    パンダ「夏彦が行方知れずになったこと、それに関係あるとみていいだろう」
    虎杖「誰も目撃者がいないなんて・・・」

    東京校の面々はあれこれと話し合うなか、釘崎は精神的にかなり追いつめられていた。
    夏彦だけでも大変なのに、とうとう真希まで居なくなってしまった。
    慕う存在が立て続けに行方知れずになったことと、前日にあまり眠れなかったことが響いた。

  • 176二次元好きの匿名さん24/01/02(火) 23:46:54

    一体どうなるんや…

  • 177二次元好きの匿名さん24/01/02(火) 23:48:15

    術師集めて何してるんだ?分かんねえ

  • 178二次元好きの匿名さん24/01/02(火) 23:48:43

    今日はここまで!また明日!

  • 179二次元好きの匿名さん24/01/02(火) 23:49:57

    >>178

    お疲れです

  • 180二次元好きの匿名さん24/01/02(火) 23:50:11

    乙ん

  • 181二次元好きの匿名さん24/01/03(水) 07:07:52

    保守

  • 182二次元好きの匿名さん24/01/03(水) 18:27:03

    保守

  • 183二次元好きの匿名さん24/01/03(水) 21:44:18

    再開します!
    釘崎は皆が話し合っているのを他所にふらふらと働かない頭を抱えて歩いていた。

    釘崎(ダメだ・・・とにかく休まないとおかしくなりそう・・・)

    居なくなった二人はどちらも簡単にやられるようなタマじゃない。自分がすべきことは今はとにかく休むことだ。
    頭を切り替えるためにも一旦休まないと・・・、そう思った時だった。

    釘崎「着信・・・?誰から・・・」

    携帯が鳴った。相手を見て釘崎は思わず声を上げた。

    釘崎「真希さん!?・・・も、もしもし!真希さん?!」
    「もしもし、すまないが、禪院のご令嬢ではありませんよ」

    電話越しに聞こえてきたのは老人の声だった。

    釘崎「誰だよアンタ?」
    「京極夏彦の親族です、貴女にも用がありますのでお会いしたい」
    釘崎「アンタの用件なんかしったこっちゃないわ、真希さんはどこ?」
    「それも含めて、お話をしたいのですよ」

    釘崎は歯を軋らせる。受話器からは「彼女の携帯電話を使っている事から察してください」と告げて電話は切れた。
    次に住所が送られてきた。

    釘崎「一人で来いってか・・・上等だよ・・・」

    こめかみに青筋を浮かべた釘崎は制服を翻して指定された場所へと向かった。

  • 184二次元好きの匿名さん24/01/03(水) 21:53:27

    おい〜芋づる式になってるやんけ!

  • 185二次元好きの匿名さん24/01/03(水) 21:57:28

    みんな報連相は軽くでもしようね

  • 186二次元好きの匿名さん24/01/03(水) 22:16:25

    この時の釘崎は完全に冷静さを失っていた。二人を奪われた怒りと寝不足の不調から頭が完全に働いていなかったのである。

    釘崎(誰だか知らないけど、二人に手を出したことを後悔させてやる!)

    釘崎がやってきたのは運送トラックなどが停まっている集積場のような場所だった。
    時刻は黄昏時で、物陰などの暗がりに潜まれれば目立ちにくく厄介だ。

    釘崎「誰かいないの?来てやったわよ!」

    無人の集積場で声を上げると老人が一人暗がりから姿を現した。

    正明「こんにちわ、釘崎さん」
    釘崎「アンタが真希さんと夏を拉致ったやつ?面覚えたからね・・・!」

    釘崎は即座に釘を飛ばして攻撃する。正明は老人とは思えぬ身のこなしでそれを躱すと手を上げて合図をする。

    釘崎「なにを・・・えっ?!」

    周囲に戸板を抱えた男性が並び、釘崎にじりじりと近寄ってくる。彼らは逃げ道を塞ぐように四方に立つとそのまま戸板を立ててさらに釘崎にじりじりと近寄ってきた。

    釘崎「っこの!」

    焦って釘を放ったが戸板の表面は金属か何かでできているらしい、刺さらずに跳ね返って地面に落ちた。男たちは攻撃が通じないのを確認して一気に釘崎を取り囲む。戸板で囲まれた釘崎はあっという間に身動きが取れなくなり壁の内側に追いやられる形になった。

    釘崎「こ、このっ!出せ!」

    蹴ったり金槌で叩いたりとしてみたが戸板そのものに本来結構な重量があるらしくびくともしない。釘崎が再び蹴りを入れようと片側に近づいた時になにやらスプレーのような音が響く。

  • 187二次元好きの匿名さん24/01/03(水) 22:19:45

    まさかの機動隊スタイル

  • 188二次元好きの匿名さん24/01/03(水) 22:20:31

    >>187

    釘崎火力ないからね…

  • 189二次元好きの匿名さん24/01/03(水) 22:25:02

    よく見ると戸板の隙間から細い管が伸びており、これがなにかを噴射したらしかった。

    釘崎「!?・・・なに、こ・・・れ・・・?」

    一瞬、甘い香りが漂ったかと思うと釘崎は膝から崩れ落ちた。

    正明「おや、随分と呆気ない・・・なるほど、お疲れでしたか」

    男たちが下がり、正明が釘崎を抱え上げると目元のクマを見て正明は溜息をついた。

    正明「とにかく、これであと一人・・・手早く済ませましょう」

    正明は釘崎を箱に閉じ込めるとトラックに男たちと運んで積み込んだ。トラックには人が入れるような木箱が既に二つ積んである。

    正明「さて、京都の実家へ向かえばあとは一人を待つだけか」

    正明はトラックが走り出したのを見てから建物の屋上に降り立った人物へ目を向けた。

    正明「十種影法術・・・本当に禪院は邪魔ばかりする・・・」
    伏黒「お前が黒幕か、釘崎はどこだ?」

    鵺を引き連れて伏黒が現着した。

  • 190二次元好きの匿名さん24/01/03(水) 22:44:25

    伏黒「答えろ!」
    正明「お断りします。禪院の関係者に話す義理もない。一枚噛ませろなんて言われた日には・・・」
    伏黒「俺は禪院家とは関係ない!はぐらかすな!」

    それは失敬と伏黒の言葉に反応したが正明は動じた風もなく伏黒を他所に歩き出した。

    伏黒「おい!待て!」
    正明「残念ですが私も忙しい、京極家再興の為にやらなければならないことがたくさんあるのですよ」
    伏黒「京極家だと?」

    伏黒が驚いた様子を見せた瞬間に正明が印を結んだ。

    正明「私に夏彦君ほどの力はありません、岩を動かしたり、人型にして使役するなんてもってのほか・・・ですが弱いなりにできることがある」

    伏黒が鵺をけしかけようとした瞬間に伏黒の周囲、屋根に乗っていた土埃が舞い上がり、まるで布のように伏黒の目や口に覆いかぶさった。

    伏黒「くそ・・・玉け・・・お”え”っ!」

    咄嗟に玉犬を出して追いかけさせようとしたが開いた口に土埃がもろに入って息ができなくなりせき込んでしまった。
    視界も奪われ、気が付いたころにはもう正明の姿はなかった。

  • 191二次元好きの匿名さん24/01/03(水) 22:48:20

    ぐぬね…伏黒ドンマイ

  • 192二次元好きの匿名さん24/01/03(水) 22:49:08

    小さければ呪力消費少なく操れるもんね

  • 193二次元好きの匿名さん24/01/03(水) 22:50:48

    とりあえずぼちぼちまた埋まりそうなんで、本編よりちょっと前の真希と直毘人のやりとり書いて次スレ行って
    いいでしょうか?

  • 194二次元好きの匿名さん24/01/03(水) 22:54:25

    オッケーです

  • 195二次元好きの匿名さん24/01/03(水) 22:54:47

    ほいほい

  • 196二次元好きの匿名さん24/01/03(水) 23:04:10

    了解です

  • 197二次元好きの匿名さん24/01/03(水) 23:08:09
    では!先にリンクだけ貼っときます 
    釘崎の関係者生やしたい(ダイス) その7|あにまん掲示板伏黒・・・どんまい!bbs.animanch.com

    真希はある日、よりにもよって禪院家当主である直毘人によって街の料亭に呼び出された。

    本来なら嫌で嫌でしょうがない実家がらみだが直毘人の「跡継ぎになりたいなら」という言葉で嫌々ながら会うことにした。


    真希「ちっ、酔っ払いのジジイがなんの用だよ?」

    直毘人「そう嫌そうな顔をするな、禪院家の当主になりたいというお前の野望を達する為には必要な話し合いだぞ」


    元々呪術師として大成し、禪院家の当主となるべく日夜鍛錬している真希である。それを引き合いに出されては聞かざるを得ないというのが憎たらしい。


    直毘人「お前、京極家の跡取り息子と仲がいいだろう」

    真希「だからなんだよ・・・」

    直毘人「以前、お前を京極の家に送った時・・・うまくいけばお前らはあそこの次期当主の娘となるところだった」

    真希「ああ、聞いたよ。クソ親父が余計なことしてご破算になったっていうのもな」


    直毘人はそれを聞くと忌々しそうに酒を呷った。


    直毘人「そうさな、あれは確かにワシも気分が悪い内容だった。それよりもだ、ワシが何故そんな取り決めをしたかわかるか?」

    真希「京極家の財産狙いじゃねえの?」

    直毘人「ぶわっはっはっは!それもそうだな、あそこを味方につければ金には困らんな!」


    格式の高そうな料亭だがお構いなしに直毘人は馬鹿笑いをしてさらに酒を呷った。

    真希は財産狙いだけではないことを何となく察して直毘人に続きを促した。


    真希「それで、どうした?」

    直毘人「ああ、勝弘がいたろう。京極家の当主だったあの」

    真希「ああ、勝弘さんか・・・」

  • 198二次元好きの匿名さん24/01/03(水) 23:09:46

    >>197

    ありがとナス!

  • 199二次元好きの匿名さん24/01/03(水) 23:11:24

    禪院家の裏話きたな…

  • 200二次元好きの匿名さん24/01/03(水) 23:13:48

    直毘人「あれは中々の人物でな、呪術師としてはワシには及ぶべくもないが・・・裂帛の気迫で常に戦場を支配するような・・・胆ッ玉の据わったいい男だったのだ」
    真希「へぇ」

    真希が京極家にお世話になったときは勝弘は優し気な初老の男性で、とても直毘人の言うような気骨溢れる人物には見えなかった。まあ子供相手だから当然なんだろうが。

    直毘人「術師としては今でも不足はないとワシは思っている、しかしな。実力主義が行きつくところは個人主義だ、家として盛り立てていくには個の力だけではいかん」
    真希「・・・」
    直毘人「そこでだ、ワシは京極の財産よりもあの勝弘の気骨が欲しい。個の力だけに寄らぬ集団を束ねる・・・カリスマというべきものがな」






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