(SS閲覧注意)輪廻転生｜あにまん掲示板

1二次元好きの匿名さん24/02/10(土) 22:34:32

初めて貴女に会ったとき、私は動けなかった。
感じるものは光、風、雨。
貴女の発する心地よい、空気の振動。
私はただ、振動に合わせて体を揺らすだけ。

貴女に再会したとき、私は翼を持っていた。
複眼越しに、小さな脳が貴女の笑顔を映し出す。
脳裏に焼き付く、万華鏡めいた光景。
貴女の声に呼応する。か細い羽ばたきで。

貴女に再会したとき、私は翼を持っていた。
脆弱な薄羽でなく、羽毛に覆われた翼。
昼間しか役に立たない、その目で貴女を認識する。
貴女の声に呼応する。意味を持たない歌声で。

貴女に再会したとき、私は四肢を持っていた。
翼は無くとも、力強い四肢を持っていた。
貴女の声に呼応する。意味を持たない鳴き声で。
貴女は初めて、私に名前をくれた。
貴女は初めて、私に触れてくれた。
鉄の獣に跳ね飛ばされ、死にゆく私を看てくれた。
私の骸を、土に還してくれた。

私は海にいる。狭く暗い、穏やかな暖かい海にいる。
心地よいベッドにしがみつき、そのときを待っている。
暗い海から上がるもまた暗闇。私は泣き叫ぶ。貴女の声と貴女じゃない声。
無秩序なファンファーレに迎えられ、貴女に再会する。
暗闇の中、貴女の腕に抱かれて。
光を取り戻し、か細い羽音でも、意味無い歌声でも、鳴き声でもなく。
初めて貴女に問いかける。「ママ」、と。