ニシノフラワー「桜が咲いています」

  • 1二次元好きの匿名さん21/09/04(土) 23:27:02

     それはとても不思議な光景でした。もう夏は過ぎて秋に差し掛かるスプリンターズステークスの頃にグラウンドの隅に満開の桜が咲いていました。桜と言えば思い浮かぶのはやはりバクシンオーさんです。私と同じスプリンターで、同じクラスでライバルであり友人であるお姉さん。少し……そう、バクシンし過ぎてから回ってしまう所がありますがみんなの為に頑張ってくれる頼れるお姉さんです。

     幾分かぼぅっとしながらその桜を眺めていました。いつの間にか足を緩めて。ああ、こんなコースの真ん中で留まっては迷惑ですねと足を桜の方に向けます。秋ににつかない濃厚な桜の香りが鼻をくすぐります。まるでそこだけ季節が春に切り取られたようなそんな暖かい気持ちに誘われるように足を向かわせて行きます。

     …………さーん

     

  • 2二次元好きの匿名さん21/09/04(土) 23:27:28

    ばるかん

  • 3二次元好きの匿名さん21/09/04(土) 23:35:24

    フラワーって名前に入ってますし、自慢じゃありませんが桜花賞も勝っています。スカイさんに連れていってもらった花畑は好きですが桜も嫌いじゃありません。

     ……ワーさーん。

     フラワーさん!!そっちに行っては行けません!!


     振り替えると血相を変えたバクシンオーさんが私の方に向かってバクシンしてきていました。


     ふぇあ、バクシンオーさん?

     今すぐそこから離れて下さい。いえ、離れさせます。


     あまりにも鬼気迫るバクシンオーさんの顔に驚きながらも振り返ると桜吹雪がまるで私を包むように、秋口から春先へ連れ去るように私の姿を覆い隠そうとします。


     バクシンオーさん!!


     声を上げようと息を吸い込むと濃密な春の香りが気道に入ります。春の暖かい空気が私の意識を眠らせるように、連れ去るように……

  • 4二次元好きの匿名さん21/09/04(土) 23:36:54

    まて、嫌な予感がする。やめろ

  • 5二次元好きの匿名さん21/09/04(土) 23:42:20

     ウオオ行かせません。バクシンバクシーン


     意識を落とす直前、バクシンオーさんの腕が私を抱えます。まるで桜の花びらはそこから逃げる私達を許さないとでもいうように身体に、足元に纏いついて来ます。

     しかしバクシンオーさんはそのスプリンターとしての類いまれなる脚で春の風を振り払い、足元の花びらを吹き飛ばし桜の嵐からからがら逃げ出す事に成功しました。……私はそこで意識を手放した。次に目を覚ましたときには保健室のベッドで寝かされていました。


     ep.菊の季節に咲く桜.

  • 6二次元好きの匿名さん21/09/04(土) 23:44:59

    ホラー?

  • 7二次元好きの匿名さん21/09/04(土) 23:47:05

    スターオー…

  • 8二次元好きの匿名さん21/09/04(土) 23:48:09

    スターオー「ちっ、バクシンの奴邪魔しやがって!」

  • 9二次元好きの匿名さん21/09/04(土) 23:50:00

    >>7,>>8

    秋口の桜でこの題名にしましたがスターオーではないです。

  • 10二次元好きの匿名さん21/09/04(土) 23:58:24

     おはようございます。ニシノフラワーさん。

     先ほどまでの春の香りではなく、保健室の薬品の香りでもなく、香りたつ珈琲の匂いがしました。目が覚めた私の前にいたのは黒衣に身を包んだ青鹿毛のウマ娘。マンハッタンカフェさんでした。
     カフェさんは私の身体に手を伸ばすと点いていた桜の花びらを一枚とり再び椅子に座りました。


     ……これについて少しお時間をいただいてもよろしいですか?バクシンオーさんは……そんなに長くは聞いてくれませんでしたので。


     カフェさんは青鹿毛の長髪を揺らし綺麗に笑いました。

  • 11二次元好きの匿名さん21/09/05(日) 00:12:28

     フラワーさんはサクラと聞くと何を思い浮かべますか?やはり桜花賞ウマ娘ですから桜花賞でしょうか?それともサクラバクシンオーさんでしょうか?または夢破れたウマ娘達の儚さをサクラに見立てていたりとか……最期のはいらないお話でしたね。失礼しました。

     もちろん今回は植物の桜についてですがフラワーさんは日本に多くある桜の品種を御存知ですか?

     ソメイヨシノですか?

     はい、ソメイヨシノは接ぎ木という方法で子供を増やして行きます。他の木にソメイヨシノの木を継いでソメイヨシノにしていくんです。……ですからソメイヨシノ同士では子供が出来ないんです。そのまま枯れていく事になります

     そんな……

     ではそんな子も成せず朽ちる定めのソメイヨシノが長年、学園で健やかに育つウマ娘達を見ていたらどう想うでしょうか?妬ましい……とまでは言いませんが子供が欲しいぐらいは思ったかもしれません。

  • 12二次元好きの匿名さん21/09/05(日) 00:23:49

     そこで白刃の矢がたったのがフラワーさんです。飛び級で進級しており他のウマ娘より幼く、桜花賞、フラワーと縁の深い貴女を子供にしたかったのでしょう。

     可哀想ですね。

     ……ですが秋口に咲いた姿からわかるようにアレはマトモな存在ではありません。その証拠に


     そう言ってカフェさんはさっきとった桜の花びらを指から離します。するとまるで磁石に吸われるように私の身体にピトリとくっつきました。


     ……すごく執着されてます。残念ですがこのままでは良くない結果を招いてしまいます。

     それでどうすればいいんでしょうか?そういえばバクシンオーさんは?

     ……色々言っても混乱してしまうと思いましたので鉄を集めて下さいと言ったらすぐに出て行きました。

     それを早く言って下さい。

  • 13二次元好きの匿名さん21/09/05(日) 02:03:13

     妖物は鉄を忌む。カフェさんはそう言ってました。そのために技術室から鉄釘を借りようとしましたが既に空っぽになっていました。おそらくバクシンオーさんが既に持っていったのでしょう。

     そのままバクシンオーさんを探しますが先ほどのやり取りで縁ができてしまったのか春の香りを避けるように進むと最も春の匂いが濃い場所に出ていました。そう……あの桜の前です。

     練習場には先着していたバクシンオーさん以外おらず傍らに桜の咲く練習場の風景はまるで桜花賞の頃のような景色をしています。

     曇に覆われた空を背にしてなお白い衣を纏い存在感をます桜の木に相対します。


     ちょわっ!!フラワーさん。危ないから来ちゃいけません。

     桜さん。貴女の想いをさんから聞きました。その……とてもとても悲しい事なんだと思います。でも私には夢があります。友達がいます。目標があります。ですから私は

     貴女のもとへは行けません


     私を襲おうとしてきた桜に、その生い立ちに共感してしまい涙が止まりませんでした。でもそれを伝えないのは良くないなって思ったので桜さんに伝えました。

  • 14二次元好きの匿名さん21/09/05(日) 02:09:00

     風の音が花びらを舞い上げながらも悲しい音で吹いていました。バクシンオーさんは鉄釘を構えています。

     私は桜の花びらの上を歩いて行きます。おそらくここに足を踏み入れると私の身体は花びらの中に沈んで行ってしまうのでしょう。バクシンオーさんは私のその行いを止めようと手を伸ばしてくれます。

  • 15二次元好きの匿名さん21/09/05(日) 02:22:35

     ですが私の身体は沈みません。足元の花びらは私の足についたある部分によってその力を失くします。

     蹄"鉄"

     ウマ娘のレースで使われる鉄具が私の脚が、身体が花びらの海に沈まないように支えていました。

     一歩一歩桜への道を歩きます。風が哭いています。バクシンオーさんは私の後ろを、何時でも止めれるようについて来てくれてます。

     二人で桜への花道を歩きます。近づけば近づく程にこれからやろうとしてる事への緊張感に自然と顔色が強ばります。


     フラワーさん。大丈夫です。学級委員長がついてますよ!!

     ありがとうございます。バクシンオーさん。安心しました。

     横に並びバクシンオーさんが握ってくれた手を握り返します。

  • 16二次元好きの匿名さん21/09/05(日) 02:35:10

     ついに桜の幹まで来ました。桜は木の模様が顔のように見えたり少し怖い見た目でした。ですが春のような暖かさは本当に私を想ってくれてのものなのだと思いました。

     あまり手洗い真似はしたくはないですが……たぶんこの桜さんの想いを終わらせてあげる事しか私には出来ないんだと思います。

     私は蹄鉄を木の幹に押し付け桜に抱きつくように腕を回して、手に釘を握り押し付けました。

     ごめんなさい。こういう形でしか答えられませんが。そしてありがとうございます。何時もみんなを見守ってくれて。

     目を腫らし泣きながら何度も打ち付けました。

     どのくらい経ったでしょうか?木の幹に抱きついて泣きじゃくる私と。それを見守るバクシンオーさんが寮長のフジキセキさんとヒシアマゾンさんに見つかる頃には桜の花びらは木の上にも、練習場にも跡形もなく消えてました。

  • 17二次元好きの匿名さん21/09/05(日) 02:51:26

     あとがたり

     結局あのあと私とバクシンオーさんは反省文の提出を両寮長から言い渡されました。しかし二人とも苦笑いをして何か辛い事があったのだろう。提出は急かさないから気持ちの整理をつけるんだよと優しい言葉をもらいました。

     後日カフェさんにお礼にいくと、解決させたのはフラワーさんですからと私の頭を撫でたあとにお守りをくれました。中身はあの木の皮だそうです。
     カフェさんが言うにはあの木は私の事を大事に思ってたそうなのできっと護ってくれると言ってました。

     拒絶や恐怖をしないで受け止めて、伝えて、泣けるというのは凄い事だと思います。私では……きっとそうは出来なかったでしょう。

     カフェさんは珈琲を飲みながらそう笑ってくれました。……私も貰ったのですが苦かったので砂糖を入れたら少し渋い顔をサレテしまいました。

     練習中、今も時々あの木が目に入ります。季節外れに咲いた桜と短い時間の冒険とちょっぴり悲しい思い出が頭によぎります。

     ep.菊の季節に咲く桜 fin

  • 18二次元好きの匿名さん21/09/05(日) 02:59:40

     閲覧ありがとうございます。拙い文章でうまく表現できたかどうか不安ですがこのお話は終わりです。フラワー×バクシンのメルヘンな普通のSSです。ヨシ


    参考文献

    『夜魔』甲田 学人 著 桜下奇憚

     注:この話はこちらの短編のエピソードをプリティー要素マシマシで書いてます。興味を持たれた場合も注意を


    拙作

    カフェからこんな時間に呼び出された|あにまん掲示板 こんな時間にトレーナー室に押し掛けてすいません、トレーナーさん トレーナーさんならご存知だと思いますが、私……幼い頃から人には見えない者が見えたんです。トレーナーさんなら、信じてくれていると思ってま…bbs.animanch.com
  • 19二次元好きの匿名さん21/09/05(日) 03:02:54

    おもしろかった

  • 20二次元好きの匿名さん21/09/05(日) 09:31:05

    グッド。

  • 21二次元好きの匿名さん21/09/05(日) 09:36:01

    良かったよ

オススメ

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