順平君という子を保護した

  • 1二次元好きの匿名さん24/04/16(火) 01:32:07

    久しぶりに母校を訪ねたら、なんかテロ的なヤバい事が起きていたらしく、バタバタしてて今日は危ないから帰って欲しいと言われた

    でも最近面白いことも無くて刺激が欲しかったから、こっそり校舎内に忍び込んで昔の教室とか見てみようと思って階段登ってたら、廊下に何か不思議なものが倒れてた

    不思議な生き物?的な何かはまだギリギリ息をしててすごく苦しそうだったから、助けなきゃと思って術式(対象の時間を少し巻き戻すやつでお皿割った時とかに便利)全開にして何とか治したら、普通の男の子だった

    今まで人一人まるごと対象に術式使うとかしたこと無くて、頭は痛いし鼻血は出るし意識保ってんのもキツいレベルだったから、なんか廊下にガラスとか散乱してるしそもそも窓なんか切り取ったように壊れてるし下の方でヤバい音とかしてるけど、一休みついでに意識戻るまでその子のそばに居た(真っ裸だったから服は着せた)

    意識戻ったその子はすごく憔悴してたし怯えてて、先生とか他の生徒の誰にも会いたくないって言ってたから、勝手知ったる誰にも見つからないルートで学校からその子を連れ出してとりあえず車に乗せた

    学校から少し離れた所まで行ってから家に送って行こうとしたら、家にはもう誰も居ないから帰りたくないって言われた

    仕方無しに家まで連れ帰ったんだけど、その途中で寝ちゃったからアパートの部屋に入れるの大変だったし、大家さんとばったり出くわしたから「甥っ子なんですけど、こっち来るの初めてなんではしゃぎ疲れたみたいで〜」って言ったら普通に信じてくれたしなんなら手伝ってくれた

    普段のコミュニケーションと印象って大事だなって心底思った

    意識無い人って滅茶苦茶重いんだなって思ったし、部屋に入れた後に起きるまで車で待ってればよかったんじゃ?とやっぱり正常な思考が出来てなかったことに少し笑った

    冷静になる為に近所のコンビニでご飯とか買って戻ったら、少しして目を覚ました

    とりあえず不便だから名前だけ聞いて、それ以外の事は言いたくなったらでいいから休んでなさいって頭撫でたら泣き出してしまった

    頭を撫でた時に見えてしまったんだけど、この子、いや順平君の額には煙草を押し付けられたような跡がいくつもあった

    オシャレでしてた髪型じゃないんだと気付いてしまって、胸が締め付けられるような心地だった

  • 2二次元好きの匿名さん24/04/16(火) 01:34:16

    それから落ち着くまで「もう大丈夫だよ」なんて何回も言いながら、頭を撫でたり背中を撫でたりしながら抱き締めてた

    きっと何一つ大丈夫じゃないしこの先の事も分からないけど、それでもそう言うしか出来なかった

    落ち着いた後、順平君はポツポツと今までの事を話し始めた

    映画が好きな事、学校で虐められていた事、理解のない教師の事、理解はあるけど女手一つで育ててくれてるお母さんに心配かけたくなくて虐めの事は言えなかった事、学校に行かずに行った映画館で出会った不思議な人の事、その人が自分を認めてくれて不思議な力もくれた事、そのあと出会った友達になれそうだった男の子の事、亡くなったお母さんを見てしまった時の事、学校でテロをしたのは自分だった事、友達になれそうだった子を傷付けてしまった事、今まで優しくしてくれてた不思議な人に体を変えられてしまった事、そしてそのまま死を覚悟していた事

    始めは泣きながら話していたのに、話が進むに連れてそれが無くなっていって、表情も消えていって、最後には感情の抜け落ちた顔で淡々と話していた

    この子は心を殺しながら話していると気付いて話さなくてもいいと何度も止めたけど、自分自身が口に出して話して整理したいからと言われて、黙って聞くしかなかった

    話し終わった順平君は私の顔を見てギョッとしていた

    大抵の創作で泣ける涙腺激緩人間がそんな話を聞いて泣かない訳がなかったので仕方無いし、まだちゃんと反応できるだけの感情が残っているとわかって更に涙が出てきた

    とりあえず鼻だけ擤んで、「えらい」とか「よく頑張ったね」とか何とか言いながらまた抱き締めて頭を撫で繰り回した

    順平君はされるがままだった

    ようやく涙が止まった私は、「君の気が済むまでここに居ていい」と告げた

    「え?」と驚いた順平君に、私は言葉を重ねた

    「だって行く宛てがないんでしょ?だったら連れてきた責任もあるし、そもそもここ君の知らない土地だろうし。あと、稼ぎならそこそこ有るからそれも気にしなくていいし。まぁ、部屋に空きはあるけど掃除とか片付けとかしなきゃだからしばらくはここのソファベッドで寝てもらう事にはなるかな?」

    この部屋は一人暮らしには贅沢すぎる2LDKなんだけど、事故物件だから格安で借りることが出来た神物件だったので当然1人くらい増えてもなんともないのだ

  • 3二次元好きの匿名さん24/04/16(火) 01:35:21

    だからこそ出来た提案でもあるし、連れてくるのに躊躇もしなかった

    「それに、さっきは責任って言ったけど、本当は私が君を放っとけないだけなんだ。だからお願い。元気になるまでしばらくお世話させてくれないかな?帰りたくなったら送っていくから」

    「それなら…しばらくお世話になります」

    ここまで言うと、さすがに順平君も折れてくれた

    私は「ありがとう。ちょっと顔洗って来るね。こんなのしかないけどよかったら食べて」とさっきコンビニで買ったお弁当とかお菓子とかをテーブルに置いて洗面台に行った

    鏡を見て我ながら酷い顔だと苦笑して、冷たい水目元を冷やして腫れを引かせてから戻ると、順平君は微動だにしていなかった

    良く考えれば当たり前の話だった

    今日会ったばかりの知らない人の家で寛げる訳が無い

    お風呂に入って温まったら少し緊張も解れるだろうかと脱衣場に連れて行ったら、「いやでも…」とか躊躇していたので「お湯に浸かって少しでも疲れを取った方がいいよ。それとも私にお風呂の世話して欲しい?」と言ったらまたギョッとして「分かりました…入ります…」と蚊の鳴くような声で言われた

    順平君が風呂に入っている間にタオルとコンビニに行った時に一緒に買った下着とTシャツと、買ったけど着てなかったスウェットを用意して、彼が上がるまで新大陸で一狩りすることにした

    一狩りどころか痕跡集めして二狩り三狩りしても順平君が上がってこないので、湯船に浸かったまま寝てしまっているのではと思って声をかけに行ったら、「大丈夫です!すぐ上がります!」と涙声で返されて、やってしまったと思った

    大人しく狩りを続けるべきだったと思いながら防具を作ったりしていると、順平君が「お待たせしました…」と申し訳なさそうにやってきた

    私は「待ってはいないよ。溺れたりしてなくてよかった」とまた頭を撫でた

    順平君の髪はサラサラしてて気持ちがいいなと思いながら、映画が好きだと言っていたことを思い出して、PS4のアマプラを開いて「好きなのあるかもしれないから見てていいよ」と言ったら、顔が少し明るくなって「ありがとうございます」と言ってきた

    やっぱり感情が無くなってしまった訳じゃないんだと安心して、風呂場に向かった

  • 4二次元好きの匿名さん24/04/16(火) 01:35:50

    風呂から上がると、順平君は何かの映画を見ていた

    邪魔しては悪いと思ってそっともう1つの部屋に行って、肌掛け布団と枕になりそうなクッションを用意して寝室に入った

    何度目かに様子を見に行くと、眠ってしまっていたのでソファベッドに上げて肌掛けをかけてあげた

    寝室に戻ってベッドに入りながらこれからの事を考えた

    明日も有休取ってあるし、とりあえず一緒に服とか買いに行って、ベッドとかも見なきゃな

    面白味のなかった平坦な日常が1人の少年によって変化と起伏に溢れたものになる予感がした

  • 5二次元好きの匿名さん24/04/16(火) 01:45:46

    こんな世界になれば良かったね

  • 6二次元好きの匿名さん24/04/16(火) 01:50:48

    そして次の日、目を覚ましたら順平君はまだ寝ていた

    きっと色々疲れているだろうから起こす事はせずに、朝食の準備をすることにした

    昨日はわくわくした気持ちで寝付いたけど、でも根底にあるのはまたこの子が屈託なく笑えるようにしてあげたい、という思いだ

    この子は一般的な子とは比べ物にならない激動の日々を過ごして、そして短期間で心をすり減らしている

    削られた心が修復されるのは恐ろしいほど時間がかかる

    そして決して完全には元に戻らない

    それでも少しでも彼の心身が健やかでいられるように私は見守っていきたいのだ

    これはただの同情でありエゴだ

    わかってはいても目の前で傷ついた子供に差し伸べた手を引っ込めるなんて出来るわけなかった

  • 7二次元好きの匿名さん24/04/16(火) 01:56:36

    良いSSだ

  • 8二次元好きの匿名さん24/04/16(火) 02:17:29

    色々考えながら朝食を作っていたら、指を切ってしまった

    いつもの調子で治そうとしたら急に眩暈がした

    そういえば昨日呪力がスッカランになるまで術式使って順平君を治したからまだ人に使える程回復してなかったのかもしれない

    ちなみに呪力とか術式とかは順平君から聞いた言葉だ

    私には元から不思議な力があるし、変なものも見えてたけど、それを口に出して言える環境にはなかったから何も知らなかった

    ちょっとした傷はすぐ治せるから絆創膏とか持ってなくて、キッチンペーパーとマステで代用した

    自分だけならいいけど、順平君に食べさせるのに血とか入ったら良くないし

    簡単に肉野菜炒めと味噌汁を作ってテーブルに置いて、順平君を起こした

    順平君は見慣れない天井に驚いたのか、急に起き上がって辺りを見回した

    私が「おはよう」というと、次第に思い出して落ち着いてきたのか「おはようございます」と返してくれた

    朝起きておはようと言って返されるのが久しぶり過ぎて感慨に耽っていたら、心配された

    この子は本当に優しくていい子だ

  • 9二次元好きの匿名さん24/04/16(火) 02:46:18

    順平君には野菜炒めを食べてもらって、自分は昨日買ったコンビニ弁当を食べる事にした

    順平君は「悪いですよ!」と言って交換しようとしたけど、「子供がコンビニ飯なんて食べるもんじゃありません」と昨日食べさせようとた事を全力で棚に上げて言ったら渋々了承してくれた

    食べながら今日の予定を話したらまた申し訳なさそうに「大丈夫です」と言ってくるので、「私がやりたいからやるだけだよ。それに、しばらくぶりに映画も見たいし?順平君が見たいのってある?」と言えば、やっぱりそれには惹かれるのかちょっと乗り気になってくれた

    食べ終わったら少しはにかみながら「美味しかったです」なんて言ってくれた

    その様子がマジで可愛いかったのでまた頭を撫でてしまった

    その時に額の火傷跡に指先が触れてしまい、順平君は身を固くした

    思わず「痛くない?」と聞きそうになって、言葉を飲み込んだ

    こういう時は下手に触れずにいた方がいい時もある

    私は「よし、じゃあ着替えて出発だ!」と殊更明るく言った

    会社でも近所でも陽キャと思われてる人間のムード変換能力を遺憾無く発揮させて貰った

  • 10二次元好きの匿名さん24/04/16(火) 03:04:19

    コンビニにすらスウェットで買い物に行くとか有り得ん主義者(近くの自販機は可)なので、順平君の服はとりあえず自分のものを着て貰った

    自分だけきちんとした身なりして、隣を歩く人がスウェットとかは絶対に嫌なので我慢してもらった

    と言っても順平君自身に選んでもらったから一応の納得はしてると思う

    正直自分の感情やらを押し付け過ぎているとは思うけど、ある程度振り回すような言動をした方が余計な事を考えなくて済んで精神の安定度合いが幾分かマシになる事を知っているから、業とやっている面もある

    何の衒いもなく考え無しにやっているように見せるのなんて私にはお手の物だから

  • 11二次元好きの匿名さん24/04/16(火) 04:07:03

    好きな服のブランドとかメーカーを聞いたら特にないって言われた

    どこ行こうか悩んでいたら、「G〇とかUNIQL〇でいいですよ」って言われたので、つい「〇UやUNI〇LOが安いだけのThe 無難な服屋と思ったら大間違いだぜ?良デザの物も普通にあるし組み合わせ次第でいくらでも化けるし、ダサいって言ってる奴は着こなすセンスが無いだけだ。あと体型が合ってないと全てダメになるからそこ棚に上げてるヤツ多いんだよ」と熱く語ってしまった すまねぇ

    という訳でG〇に行って色々試着して貰ったんだけど、順平君は細身でなんでも似合ったから滅茶苦茶テンション上がって、普段着とよそ行き半々で10着くらい買った(もちろん下着は別)

    そのあと別の服屋にも行って更に10着くらい買ったけど、ゼロからのスタートだしそれくらい買っても足りないくらいだと思ってた

    順平君は「こんなに買って貰っても僕着るか分かりませんよ…」と呆れたように言った

    自分は服が好きだから色々買ってしまうけど、そうでない人には20着って多いのか?とそんな疑問が浮かんだ

    次にベッドを買おうと思ってニ〇リに行った

    ベッドは好きなの選んで貰って(気を使ったのか一番安いヤツにしてた)、まだ残暑厳しいから寝具はN〇ールで揃えた

    当然ベッドは配送だからもう少しリビングのソファベッドで寝て貰うけど、ベッドパットとか枕はちゃんとしたの買って今日から使ってもらえるから良かった

    買い物は早々に済ませて家に帰り、色々物置いてある空き部屋にベッドを運べるように片付けと掃除をしなくてはいけない

    朝出る前に階下の住人には片付けで物音立てて煩くしてしまうので申し訳ないと謝罪済みだ

    ベッドまで運び終わったら菓子折を持っていく所存

    こういう積み重ねが急に男の子を連れてきても怪しまれない人徳に繋がるのだ

  • 12二次元好きの匿名さん24/04/16(火) 10:16:34

    片付けの前にご飯にしようかと思ったが、順平君が「なるべく早い時間に済ませた方が物音気にしなくて済むんじゃないですか?」と言ったのでそれもそうだと思い直して先に掃除と片付けを済ませることにした

    掃除や片付けと言っても、秋冬物の服とかマンガ本の段ボールが置いてあるだけだから大した作業にはならないし、それらは自分の部屋のクローゼットに押し込めば問題ないから部屋はすぐ片付いた

    マンガ本の段ボールを運ぶ時によろけて尻もちを搗きそうになった時には順平君が「危ない!」と言って手を伸ばしてくれたら、なんか背中が柔らかいものに包まれた

    振り向いたら大きなクラゲがいた

    思わず「かわいい!」と抱き着いてしまった

    「冷んやりプルプルで気持ちいい!」と急にテンションを上げてしまったので順平君は困惑していた

    マジで申し訳ない

    滅茶苦茶年長者ぶって余裕ある態度を取りたいと思って頑張ってはいたけどこれが本性なんだわ

  • 13二次元好きの匿名さん24/04/16(火) 10:53:04

    クラゲちゃんに抱き着いて感触を堪能していたら、順平君が「……続き、しなくていいんですか?」とおずおず訊いてきた

    しまった未知の感触に夢中になってた

    「ごめんごめん、クラゲちゃんが気持ちよくてつい夢中になってた。助けてくれてありがとう」そう言って、放っぽった段ボールを今度は危なげなく持ち上げて寝室に持っていった

    咄嗟に人を助ける判断が出来るなんてやっぱり優しい子だ

    この優しい子がこれ以上心を痛めなくて済むように、守っていかなければならない

    年長者として、大人として、子供を慈しみ守るのは当たり前の話だ

    昨日会ったばかりだから当然だけど、まだ甘えてもらう段階には至っていない

    いつか順平君が遠慮無く甘えてくれればいい

    どうかその権利を私に与えて欲しいと、そう、切に願った

  • 14二次元好きの匿名さん24/04/16(火) 13:06:29

    片付けと掃除が終わったあとは風呂に入ってご飯を食べた

    本当に映画を観なくてよかったのかと尋ねれば、今はめぼしいものが無いし月末に公開されるのが観たいから今度でいいと言われた

    “月末”、“今度”の言葉に、先の事を思う余裕が出来たんだと少し嬉しくなった

    「そっか。楽しみだなぁ」と笑って返したら、「そうですね」と微笑み返してくれた

    それが余計に嬉しくて、「観に行くのは公開初日がいい?それとも客足が落ち着いてからのがいい?ホラーだから昼よりはやっぱり夜の方がいいよね?」だなんて一気に捲し立ててしまった

    それに気付いてから「あ…ごめん…1人ではしゃいじゃって…」と言ったら、「ははっ、僕も同じようなとこあるんで気にしないでください。同じ映画楽しみにしてくれてるのも嬉しいですし」と少しだけど声を出して笑ってくれた

    庇護対象である子供にフォローされた気恥ずかしさで頬や耳が熱くなったけど、順平君が笑ってくれたならそれでいい気がした

    もっとこうやって笑い合っていければいい

    こうして私達の少し変わった共同生活が始まった

  • 15二次元好きの匿名さん24/04/16(火) 13:16:41

    ここまで一気に読んじゃった すごく好き

  • 16二次元好きの匿名さん24/04/16(火) 14:44:32

    最近職場でよく「いい事あったの?」と訊かれるようになった

    「まぁそっすね〜」って返したらおばちゃんに「コレでしょ〜?」と指を立てられた

    女の多い職場はこれだから…

    「んな訳ないっすよ〜!何時も言ってるでしょ?自分には2次元の推しが居ればいいって」と笑いながらいつも通りの返しをした

    私がオタクなのは関わってる人ならみんな知ってるから、おばちゃんも「あんたはそういう子だもんね〜」とカラカラ笑ってた

    いやマジで順平君はそんなんじゃないからな

    変な話を広められたくないから存在を明かす事すらしたくない

    おばちゃんの口は千里どころじゃなく走りやがるのでマジで気を付けないといけない

    とは言っても飲み会とかに参加するタイプでは無いのでその辺は問題無い

    そんなもんに参加するくらいなら家でゲームしてたい質だから

    周囲もそれを知ってるから誘ってくることも無いし杞憂でもあるんだけど

  • 17二次元好きの匿名さん24/04/16(火) 15:11:51

    仕事から帰ってきたら、順平君が微笑みながら「おかえりなさい」って言ってくれる

    一人暮らしが長くてまだ「ただいま」って言うのに慣れてないから、何時も先に「おかえりなさい」って言わせてしまう

    自分に気を使った微笑みであることは理解しているけど、それでも彼が笑って出迎えてくれるだけで疲れは飛ぶし明日の活力になる

    子供が居たらこんな感じなんだろうか、と過ぎった

    親子ほど年は離れてないけど兄弟と言うには離れ過ぎているように思う

    だから大家さんと出会した時に咄嗟に甥っ子と言ったのだ

    大家さんは自分の年齢を知ってるし、弟にしては若すぎると訝しまれるのも嫌だったから

    でも正直弟や妹が欲しいと思っていたから、こんな言い方は良くないが丁度良かった

    年の離れた弟に接するように彼を慈しみたいが、一人っ子で育った人間にそれができるかが問題だ

    とにかく頑張るしか無い

    何処かに良いモデルケースはいないものか

  • 18二次元好きの匿名さん24/04/16(火) 16:12:07

    順平君は私が仕事中は家事をしてくれている

    別に気にしなくていいと言ったんだけど、「衣食住全部お世話になっている以上は譲れないです!」と強めに言われてしまった

    食事だけは私が作る(順平君は私がやってるのを見てお勉強中)けど、ご飯炊いたり食器洗ったりは率先してやってくれる

    正直あまりいい子にしようとしてくれなくていいんだけど、恐らくこれはどう言ったって伝わらないし納得して貰えないだろう

    ただ─ただ君が笑って過ごしてくれるだけでいい─なんて、都合の良すぎる言葉はきっと恐ろしいだろう

    だって、私は何の血の繋がりも関係も無い赤の他人だから

    強いて言うなら高校のOBだけども、それだって10年以上の話だ

    教師からだって話題にもならないだろう

  • 19二次元好きの匿名さん24/04/16(火) 16:34:13

    ベッドが届くのは明日

    だから、寝る前に順平君の寝顔を眺められるのも多分これが最後になる

    やはりと言うか、順平君はあまり夢見が良くないようだ

    眉間に寄った皺を起こさないように指の背でごく優しく撫でて伸ばし、そのまま頭を撫でる

    現実に死を間近で見てしまった者の気持ちは理解できる

    そしてそれが強烈に脳にこびり付いて夢に出てくる事も

    これに関しては一朝一夕でどうにか出来るものじゃないし、眠っていなくともフラッシュバックして脳や精神が侵されていく

    きっと私がいない間、一人で泣いている事も少なからずあるのだと思う

    本当はずっと傍に居てあげたいけど、この生活の為にも仕事はしなくてはいけない

    なんとももどかしい事だ

    守りたい者の為に、それを置き去りにしなければならないなんて

  • 20二次元好きの匿名さん24/04/16(火) 19:34:01

    頭を撫で続けていたら、順平君の顔から険しさが無くなっていることに気付いた

    これで今日も安心して寝られる

    でも、明日からは出来なくなってしまうのが少し不安だ

    部屋に鍵は付いていないけど、わざわざドアを開けてまで寝顔を確認しに行くのはなんだか気が引けてしまう

    本当に親兄弟なら躊躇せずに出来る事のはずなのに

    遠慮せず甘えて欲しいなんて思いながら、私の方が遠慮してしまっているのかもしれない

    保護者としての自覚がまだ足りないようだが、それも仕方の無い事だ

    だって私はまだ母としても姉としても0歳なんだから

  • 21二次元好きの匿名さん24/04/16(火) 19:34:32

    それでも

    「順平君、私はまだお母さんとしてもお姉ちゃんとしても未熟だけど、だけど、君の幸せだけを願ってる。これだけは本当だから。この思いだけは未熟なんかじゃないから……」

    気が付いたら掠れた声で心中を吐露していた

    順平君の安らかな寝顔が滲んでいく

    神様なんて居もしないモノに祈ってでも、この子の幸せを願わずにはいられない

    いや、祈り願うだけではダメなのだ

    私がそうしなくてはいけないのだから

    苦しんで、悲しんで、辛い思いをしているこの子を幸せにする為に、私は何よりも強くあらねばならない

    居もしないモノに縋るなんて私らしくもない

    祈りなんて通じたことは無いじゃないか

    全部一人でやってきたじゃないか

    寝ているとは言え、この子の前で泣くなんて……いや初日に泣いてるな

    とりあえず私がこの子の前で泣くのは感動的なマンガとか小説とかゲームとか映画を観たい時だけにしないと……結構あるな

    まだ頼りないお母さん兼お姉ちゃんだけど、君の為に頑張るよ

  • 22二次元好きの匿名さん24/04/16(火) 20:50:20

    今日も仕事で疲れたけど、順平君が待っていてくれるので帰りの足取りは軽い

    日中はベッドが届いたはずだし、自分の部屋が出来てきっと今までより気兼ねなく過ごして貰えるに違いない

    「ただいまー」

    「あ、おかえりなさい」

    やった!今日は先にただいまって言えた!嬉しい!

    ウキウキなまま「ベッド届いた?」と訊いたら、「届きましたけど……」となんか口ごもってる

    「どしたの?なんかあった?」とまた訊けば、「…だって机とかテレビまで来るなんて聞いてないですよ…!」と返された

    「だって机はあった方がいいし映画だって観たいでしょ?」と言ったら「机はたしかにそうですけど、映画は今のままでも観れるじゃないですか…」と少し不満げに言われた

    私は意を決して言った

    「ごめん、順平君。今のままではダメなんだ」

  • 23二次元好きの匿名さん24/04/16(火) 21:29:29

    順平君は息を詰めて私を見た

    そんな顔させてごめん

    でも、でもね、もう我慢出来ない

    「ゲームやりたい……!モ〇ハンやりたいしアサ〇リとニ〇アとデト〇イトはトロコンしたい!でもテレビ1個だとそもそもプレ4で見てるから出来ないし、映画楽しそうに見てる順平君可愛いからいいやと思って我慢してたけどやっぱりゲームやりたい!」

    一息で言うと、順平君は気が抜けたような顔をした後、「何家主なのに遠慮してるんですか……!そういうのはちゃんと言ってくださいよ!ていうか僕ばっかり映画楽しんでたってことですか!?」と初めて怒った顔をした

    あらヤダ怒った顔も可愛い

    じゃないや「それは違う!ちゃんと映画観てたのは感想言い合ったのでも知ってるでしょ?順平君と映画観るのは楽しい!それはそれとしてゲームやりたいってだけ。何時も3時から4時くらいまで起きてるんだけどさ、その間基本ゲームやってるの。でもゲーム中結構騒いじゃうからさ、起こしたくないじゃん?子供にこそ睡眠は大切なんだから」

    そう言えば、「あなたって人は…」とクソデカため息をつかれた

    「大人なんだか子供なんだかわかんないですね…」

    「よく言われんのよねー」

  • 24二次元好きの匿名さん24/04/16(火) 22:51:59

    「とりあえず、リビングには新しいテレビ置くね。見てコレ。ワンボタンでプライム見れんの。すごいっしょ?今のテレビとプレ4は私の部屋に待って行こうか……あ」

    私が言葉を途切れさせると、順平君は「どうしたんですか?」と訊いてくる

    私は頭を抱えて「LANケーブル買ってない……長いの…」と呟いた

    順平君は「WiFiじゃダメなんですか?」と訊いてきたので、「ダメ…ダウンロード時間かかるしマルチやる時ラグヤバいから無理…まあマルチやらんけど」と答えた

    順平君に「やらないならいいじゃないですか」って言われた

    「それはそうなんだけど、でもダウンロード時間かかるのはやだからア〇ゾンでポチる。こんな時のためのアマプラよ。アマプラ最高!」と言ったら

    「映画も観れますしね!」とノってくれた

    ああ、少しでもノリとか話しが合う人と居るのってすっごく楽しい

    自分は基本他人と同居するの向いてないと思ってるけど、この事ならちゃんとやっていけそうな気がする

    いや、やっていくんだけども

オススメ

このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています