- 1二次元好きの匿名さん24/04/22(月) 20:59:19元スレ:ここだけ救護騎士団の子育て奮闘記|あにまん掲示板トリニティ付近に捨てられて衰弱していた赤ん坊を拾ってしまったセリナ周辺状況のきな臭さから救護騎士団で世話をすることを決める団長以降救護騎士団の出動時、背中に赤ん坊がおんぶされている姿が目撃されるように…bbs.animanch.com
概念をSSにするスレ
概念や、ありそうなシチュエーション、見たいものの概要を
お前らが考えて、俺が書く
このスレが落ちない限り、概念が続く限り、だらだらと書いていこうと思う
非才の身だが、暇だったら読んでいってください。
- 2二次元好きの匿名さん24/04/22(月) 21:17:10
たて乙!
待ってました! - 3二次元好きの匿名さん24/04/22(月) 21:18:26
- 4二次元好きの匿名さん24/04/22(月) 21:27:07
あらすじありがてぇ
- 5二次元好きの匿名さん24/04/22(月) 21:27:34
立て乙
- 6二次元好きの匿名さん24/04/22(月) 21:49:33
アリスクに確認入りそうだけどヒヨリと泣き声対決とか出来るんだろうか
- 7二次元好きの匿名さん24/04/22(月) 21:55:47
サクラコ様ギャン泣き笑うんだよね
- 8二次元好きの匿名さん24/04/22(月) 21:57:11
スズランのママはトリニティの全員だ
- 9二次元好きの匿名さん24/04/22(月) 21:59:30
「うわぁぁぁん」
「えぇぇぇぇん」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!」 - 10二次元好きの匿名さん24/04/22(月) 22:08:36
「もう【大丈夫】ですよ」
- 11二次元好きの匿名さん24/04/22(月) 22:09:08
子育て日記:40日目 鷲見セリナ
スズランちゃんが初めての言葉を話してから2日。
初めて私達が理解できる言葉を喋った、ということは親としては言葉を教えたくなるもので。
絵本や図鑑、そして果ては自分達の名前までと、言葉をなんとかして教えよう、となるのが
親のエゴ、というものなのかもしれません
―――――――
「ほら、スズラン。ミネママですよ」
「いーあぁー!」
「ほらほら、ハナエママですよぉ~」
「んなーあ~」
「もう、二人とも。…セリナママも覚えてくださいね。」
「いあーまあ。」
3人でぎゅうぎゅうと肩を寄せ合い、ぽかんとしたスズランへと向き合う。
まだ発音が難しいのか、一向にそれらしい言葉には聞こえないが
きっと自分の名前を呼んでくれているように感じられるのは、それだけで嬉しいものだ。
スズランは少しずつ大きくなりはじめ、色づき始めた亜麻色の翼をぺしぺしと地面に向けて羽ばたいていた
どうやら髪色も同じ色のようで、それがミネ団長の庇護欲をさらに掻き立てているようだ。
最近は親ばかと言う方が正しいような振る舞いに少し頭が痛い
「……どっちが雛鳥か、わからないな」
- 12二次元好きの匿名さん24/04/22(月) 22:09:24
その声に振り返ると、正義実行委員会のツルギ委員長がそこに立っていた
その後ろには、正義実行委員会の部員達が数人
これまでであれば、少し身構えるような状況なのだろうが、今では少し違う。
「…正義実行委員会の委員長が、こんな時間になんの御用でしょうか」
「うゅーご!うゅーご!!」
べし、べし、べし、とスズランによって順番に叩かれる私たちの頭。
よくよく見れば、ツルギ委員長の指先には小さな擦り傷があるようだった。
後ろに控える部員達も、どうやら少し怪我をしてはいるものの、ツルギ委員長の後ろからスズランの姿を覗いているようだ
小さな怪我とはいえ、ばい菌がはいってしまえばすぐに化膿してしまう
きちんと手当をすることは良い事なのだろうが、きっと目的はそれではない。
「すみません。すぐに手当しますね。ツルギさん」
「うーぎぃ!」
スズランが私の真似をして、ツルギ委員長の名前を呼ぶ。
私が救急箱を取りに行こうと立ち上がったその瞬間だった。
「…あ゛あ゛あ゛――キャァァァアアアアアア!」
ツルギ委員長も、それを自分の名前だと認識をしたのだろう、数秒間の硬直の後、部屋に舞うつむじ風。
きっと翼を大きくはためかせたのであろうそれが、棚の包帯や医薬品の箱を吹き飛ばし
それが収まった頃には、正義実行委員会の部員達を残し、忽然と姿を消していた
- 13二次元好きの匿名さん24/04/22(月) 22:09:44
なんだったのだろうか、と唖然とするのも慣れたものでここ1カ月とちょっとの間、よく見る光景だ。
残された部員達の治療をしていると、次に現れたのはサクラコさん。
こちらもこちらでスズランの様子を気にしているようで、ドアの隙間から覗いている。
なんで入ってこないのかと言うと、初対面のときに泣かれて以降
自分の顔を見ると泣くのではないかと心配なのだそうだ
「あの…すみませんが頭痛薬を分けて頂きたく思うのですが…」
小さくか細いその声で話しかけてくるサクラコさんは
正義実行委員会の部員達の治療をするミネ団長の姿を眺めるスズランへと目を滑らせた
その気配に勘付いてか、スズランがドアの方へと目を向けるとばっちりと視線がぶつかり合う
「スズランさん……えと、わっぴー?」
「あっいー!」
サクラコさんの顔を見ると、一目散にベビーベッドへと駆け寄るスズラン
逃げ出したのかと落ち込むサクラコさんは、頭を押さえてしゃがみこむ。
しかし、スズランはベビーベッドから何かを引っ掴むと、一目散にドアの前へぽてぽてと歩いていた。
本人としては走っているつもりなのだろうけれど、その足が踏み鳴らすのはぺちぺちという音
「あら…?それは…」
にっこりと笑うスズランの手には、ウィンプルが握られており
それを下手っぴに被って、満面の笑みでサクラコさんに向き合っていた
サクラコさんはそれを見るや否やドアの隙間からするり、スズランを抱きしめる
「ああ、神のご加護のあらんことを…」
- 14二次元好きの匿名さん24/04/22(月) 22:10:19
「本当に、この子は…すみません…」
「いえ。もう大丈夫です。私は大丈夫です。」
サクラコさんが抱きしめたスズランをゆっくり離し立ち上がると、スズランはそれを見上げる。
最初は不思議そうな顔、徐々に不安そうな顔、そして目に涙を貯める
ほとんど泣かないあまり見る事のない表情に、私はスマートフォンを片手に構えて写真を一枚
慌てふためくシスターフッドの冷血で冷徹なトップと、それを困らせるスズランのツーショット。
「なぜ…なぜ…こうなるんでしょうか…ほら、わぴわぴー」
「あや゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
「すみません…あのこれ…」
サクラコさんに頭痛薬を渡し、スズランを抱きかかえると、ズランは私の白衣に顔を埋め、その鼻水と涙を拭っている。
苦手、というわけでもないようだが、なぜか毎回このオチになるのは、なんなのだろう。
大きくなったら、本人に聞いてみたいことの一つだ。
「ありがとうございます…夜分遅くに失礼、いたしました…」
なんとも言えない表情で救護騎士団の部室を後にするサクラコさんを見送りながら私が部室に向きなおすと
正義実行委員会の部員達も治療を終えたところで、スズランの頭を撫でて部室を後にした
明日は、ティーパーティーへの定期報告の予定がある
といっても、ナギサ様もセイア様も気にしてくれているだけで
昔のように、出向くだけで緊張するような会ではない。
先生も招いてのことだ、明日に備えて早く眠るとしよう
- 15二次元好きの匿名さん24/04/22(月) 22:16:50
- 16二次元好きの匿名さん24/04/22(月) 23:27:57
おつ。アリスクは先生が聞き取りして伝聞で……からスタートだろうか
- 17二次元好きの匿名さん24/04/23(火) 01:15:09
サクラコ様の他にギャン泣きされそうなのは、ハナコ辺りだと思う
いや、何となく - 18二次元好きの匿名さん24/04/23(火) 02:01:01
前スレ好きだったので続きが見れるのは嬉しい
アリウス組に会うなら先生に仲介を頼んでトリニティ外で待ち合わせが一番穏当…かな? - 19二次元好きの匿名さん24/04/23(火) 09:48:56
どうしても某ヒフミさん声の我らが光が出てくる
- 20二次元好きの匿名さん24/04/23(火) 12:00:15
なんというか、スズランのお陰でトリニティ全体の団結心が強くなってる気がする。
- 21二次元好きの匿名さん24/04/23(火) 21:03:44
サクラコ様がわぴわぴしながらあやしている姿はニヤニヤして見れる
- 22二次元好きの匿名さん24/04/23(火) 22:36:50
スズランが先生をパパと呼んだら混乱するだろうか
- 23二次元好きの匿名さん24/04/23(火) 23:04:08
子育て日記:41日目 朝顔ハナエ
スズランちゃんを連れだすとき、少しでも危険があるとミネ団長が考える場合は必ずミネ団長がスズランちゃんを背負います。
前回のティーパーティーへの参集のときもそうでした。
しかし、今回はその限りではないようで、ミネ団長はスズランを私に預けて生徒会室へと向かいました。
―――――
「救護騎士団、蒼森ミネ。参集に応じて参りました。」
ドアをノックして宣言するミネ団長の肩にはベビーベッドか担がれている。
教室など、その場所に長居をすることになるときは、いつもこの様子だ。
廊下を通り過ぎる生徒達も、もう見慣れた光景とばかりに気にもせず、私に抱っこされたスズランちゃんへと手を振って歩いていく。
お付きの生徒たちによりその両開きの扉が開かれると、そこには生徒会長達と先生が座っていた。
「ご足労頂き、ありがとうございます。」
"やぁ、みんな。スズランも元気そうだね。"
「忙しいのにすまないね。荷物を降ろして楽にしてくれたまえ」
先生の足元には、相変わらずいくつもの紙袋。
今回のお土産はスズランの玩具だろうか、鮮やかな色の箱の頭が飛び出していた。
私たちに用意された席には、スズランちゃんのために既にカットされたフルーツと離乳食
そして私達のために準備されたティーカップが並んでいた
「先生、お久しぶりです
ナギサさんとセイアさん…は、お久しぶりという程ではありませんね。」
ミネ団長が肩に担いだベビーベッドを降ろすと、スズランちゃんは手をバタバタと降ろしてくれと主張する
私がベビーベッドにスズランを降ろしてあげると、そこにぺたんと座るスズランちゃん
- 24二次元好きの匿名さん24/04/23(火) 23:04:26
「ぱーぁ!あいあ!ぃえぃあ!」
スズランちゃんは先生、ナギサ様、セイア様を順番に指さして名前を呼ぶ。
もしかして今、先生のことを「ぱぱ」と言ったのだろうか。
先生と会うときに先生のことを「パパ」と言ったのは最初に会った時だけだったはずだが。
驚いて、ミネ団長とセリナ先輩に目をやると
方や何もない空を眺めて頬が赤い、方や地面を見据えてもじもじと。
犯人は、この二人のようだ。
「やぁ、スズラン。今先生のことをパパと呼んだかい?」
「ぃえいあ!あー!」
「うんうん、私はセイアだよ。誰が先生のことをパパと教えてくれたかを教えてくれるかい?」
セイア様は意地悪く、その長いテーブルを回り込みくすくすと笑いながらベビーベッドを覗き込む
そんなセイア様にこつん、とおでこを合わせ、無邪気に笑うスズランにはまだ何を聞かれているのかわからない様子だった。
相変わらずもじもじとしている二人に、話が進まないとばかりにナギサ様がため息をつく。
「もう、セイアさん。意地悪はそこまでです。ほら、皆さんお席にどうぞ。」
その言葉に救われたとばかりに、ミネ団長とセリナ先輩は席に座る。
私も慌てて椅子に座るが、少し待ってみても、いつもの席にセイア様が戻ることはなかった。
「毎度のことですまないが、助けてくれないかい?」
私達がその言葉に振り返ると、スズランに耳を掴まれたセイア様がいた。
- 25二次元好きの匿名さん24/04/23(火) 23:04:39
―――――――――
「また泣かせたのですか、サクラコさん…」
「私だって、泣かれたくはないのですが…ないの…ですが…」
「…ギヒヒヒヒ…顔が怖いのが悪い」
「ツルギ!それを言い出せばあなたの方が大概なのですから!」
「子供の価値観というのは面白いものだからね、美人が怖いと言うのもある話だよ。」
少し遅れて来た正義実行委員会のツルギ委員長と、ハスミ副委員長
シスターフッドのサクラコ様と、マリー様、ヒナタ様
トリニティの首脳陣が集まるこのお茶会は公園での井戸端会議のように麗かに進む。
雑談のような連絡会がひとしきり落ち着いたころ、ナギサ様が咳払いをした。
「さて……、ここからが今日および立てした理由ではあるのですが…」
ナギサ様が、給仕をする生徒達に目配せをすると、少し頭を下げて別室へと控える。
ティーパーティーで込み入った話が為されるときというのは、このように生徒会長達と本人以外がいなくなる
そしてそのような時にされる話というのは、そんな軽い話題ではない、ということは想像に難くない。
ぴたりとやんだその談話の空気は、給仕の生徒達が全員別室に控えたのをナギサ様が確認して切り出される
「以前として明らかにならないスズランさんの出自
もう一歩、踏み込んだ調査が必要だと、私達は考えます」
- 26二次元好きの匿名さん24/04/23(火) 23:04:54
その一言に生徒会室内の空気がピリリと張ったのが分かる。
ミネ団長だけではなく、ツルギ委員長、サクラコ様までもが一瞬にして牙を構える。
「まったく、ナギサはいつも言葉が足りないね。そんなだから恨みを買うのだよ」
「申し訳ありません。詮索することが目的、というわけではないんです」
ナギサ様がハンカチで冷や汗を拭うように額を撫でる。
さきほどまでとは180度変わって敵意を向けられてしまっては気が気でないのだろう。
「私は、この子が大きくなり自分のことを知りたいと思った時
私たちは何も知りません、というのはあまりに不条理だと思うのです。」
ナギサ様が深く呼吸をする。
きっとこれを切り出すのには勇気が必要だったのだろう。少し呼吸が浅いのが見て取れる。
「情報というのは、時間と共に霧散します。
今分かることも、この子が大人になってしまってからでは分からなくなることも、あると思います」
「……言い分は分かった。しかし、手段はどうする?既に一度調べた事だ。」
ツルギ委員長がティーカップ空にしながら言う。
既にその目には敵意はなく、肩に担がれたその銃の引き金に指はかかっていない。
その隙間を埋めるかのように、サクラコ様はその涼し気な目元を伏せて言う
「この子の出自で分かっていることは、カタコンベにいたことのみ。となるとアリウス学園、ですね?」
「はい。そのために本日は先生に同席をお願いしております。」
- 27二次元好きの匿名さん24/04/23(火) 23:05:05
静かに私達を見守っていた先生へと目を向けると、そこには相変わらず穏やかな笑顔。
私たちの選択を見守るように、私達ひとりひとりの目を見て笑いかける。
「ミネ団長、セリナさん、ハナエさん。最終的な決定は、あなた達にお任せをいたします。
どうなさりたいか、この子のためを想い、どう決定するか。
それを尊重し、トリニティ総合学園として出来ることをしたいのです」
きっとナギサ様はここで結論を出すつもりではなかったのだろう。
しかし、隣に座るミネ団長へと目を向けると、そこには既に凛とした瞳をたたえた団長がいた。
団長は私とセリナ先輩へと目を向けて、その意思を確認する。
私だってきっと団長と同じ気持ちだった。
「お願いいたします。きっとこの子は、いつか自らの出生を知りたくなる日が来るでしょう。
少なくとも、このトリニティ総合学院という場所はそういう場所です。」
生まれ、育ち、家柄というものが強い影響を持つこの学園では、出自を気にする場面も多い。
それは誰しも明確なもので、まず分からないという事はないのが普通だ。
「はい、私もそう考えます。……先生。」
"うん。わかったよ。その前に、紅茶のおかわり、貰ってもいいかな"
先生が静かに頷きながらティーカップを掲げ、場の緊張は解かれていく
そうして、その空気はもとのお茶会へと戻り、太陽が傾き始めるまで
その和やかな空気をみんなで楽しむことになった。
- 28二次元好きの匿名さん24/04/23(火) 23:17:28
すまねえ、更新タイミング悪くて取り逃した
>>9 やるしかねえな、って。
>>10 サクラコ様の本音建前すれ違いコント、お話に取り込もうとすると案外難しいもんだね…
>>16 引き合わせ、ちゃおうかなって…
なぜって、面白そうだなって…
>>17 確かに、ハナコは色々と上手いけど、それが通用しないのが赤ちゃんって感じがある。
むしろ、その方がお話組み立てやすいまである。…やるか!
>>18 そう言ってもらえるのが一番うれしい。すごく続けるモチベーションになる
場所はどこで引き合わせようか悩んでるけど、とりあえず待ち合わせしてもらおうかなって。
>>19 わかる。それが過っちゃうから今アークナイツ起動しないようにしてる…
うちのロドス、帰ると一番にお出迎えしてくれるから…
まあ実質どっちもロリだし…まあ…
>>20 何も成長するのは赤ちゃんだけじゃないから
エデン条約以降、みんな少しずつ変わるのかなって妄想も入ってる
>>21 サクラコ様が慌てふためく姿いいよね…俺サクラコ様好きなんだ…
>>22 偶然、そのレス書いてる時にちょうど書いてた。
混乱にはならなかった…混乱には…
でもこのお話の中では、2名が赤面する羽目にしてみた
- 29二次元好きの匿名さん24/04/24(水) 00:07:46
セイアの耳はさわり心地いいだろうし仕方ない
……ちょっとしたクッション用に抜け毛保管してたりしないだろうか - 30二次元好きの匿名さん24/04/24(水) 09:46:46
そういえば色彩ヒエロって確か救護とシスフとアリウス分校で共闘してたような
共闘前の顔合わせになるのか、それともあの時共に戦ったってなるのか - 31二次元好きの匿名さん24/04/24(水) 18:41:57
ハナコが泣かれてコハルに泣きつく、永久機関だせ!
- 32二次元好きの匿名さん24/04/24(水) 18:52:47
スイーツ部に赤ちゃん用のお菓子のおすすめ聞いたり出来るだろうか
- 33二次元好きの匿名さん24/04/24(水) 23:25:51
寝てる間に落ちてほしくないから保守するペシ
- 34二次元好きの匿名さん24/04/24(水) 23:55:13
子育て日記:43日目 蒼森ミネ
先生がアリウスの生徒との接触を計画してくれている中でも私達の子育てが止まる、ということはありません
日々、この子の変化を見守るその日々というのはそれだけで幸せがあります
そして、時折目を疑うような変化もまた、この子の成長の一ページです
――――――――
「ミネ団長、…ちょっと、見てください」
昼休み、救護騎士団の部室へと戻ってきた私たちを迎え、スズランを受け取ったセリナが言う。
じっとスズランと向き合うセリナの横からスズランの顔を覗き込む。
その隣には、一枚の印刷された写真が握られていた
「あ、ずるい。セリナ先輩私も私もー」
写真ではまだ淡い色だったその瞳は、だんだんとオレンジ色に色づき始めており
毎日顔を見ていたはずの私達は少しその変化を見落としていたことの方に驚いた。
「赤ちゃんの瞳の色が変わると言うのは、本当だったのですね。」
「わ、きれいな色ですねえ」
写真と比べながらまだ淡い色を発しているその橙色を覗き込んでいると
その髪の毛もいつの間にか亜麻色の中に、一筋の鉄黒色に染まりかけた房を見つけた。
メッシュのように入るそのひと房の色違いは根本から少し色が違っている
「ふふ、スズランったらお洒落さんなのですね。」
「うぇい!」
- 35二次元好きの匿名さん24/04/24(水) 23:55:32
どやっとばかりに自慢げな顔をして見せるスズランは
その背中にある髪の毛と同じ色の翼をはためかせさらに感情を示して見せる
バサバサと振るわれたその翼は、もう既に体に対して十分以上に大きく、そよ風を起こしていた
私たちの翼は、この重たい体を持ち上げるには少々頼りない翼ではあるが、この子なら本当に飛んでしまうかもしれない
そんな感傷に浸る私の後ろで、先ほどまで隣に並んでいたはずのハナエは鼻歌交じりに何かを集めていた。
膝を折って、床をぴょんぴょんと飛び跳ねながら、何かを一つ一つつまみ上げては手のひらに乗せる
その繰り返しで既に大きな塊と化しているそれはすぐに片手には収まらない量になっていた
「ハナエ。何を集めているのですか?」
「これですか?」
ハナエの両手にこんもりと盛られたその綿のようなものは、スズランの幼綿羽
ダウンのようなそれは、よくよく見れば部屋中に撒き散らされていた
さすがに、救護騎士団の医務室ともあろうものがこの惨状というのは、ちょっと見せられたものではないかもしれない
「これでちょっとしたクッションでも作ろうかと!
きっと、スズランちゃんの羽根が生え変わるまでには、いっぱい集まりそうですし!」
そう言うと、その手の物を大切そうに抱えて、部屋の隅まで足早に。
そこには既に、手提げのビニール袋にいっぱいの幼綿羽が詰められていた。
いつの間に、と私もセリナも言葉を失う。
ようやくと口を出そうになった言葉は「まったくこの子は」ではあったが、実際に口を突いたのは別の言葉
「…私にもお願いします」
「私にもお願いします…」
- 36二次元好きの匿名さん24/04/24(水) 23:55:46
きっとセリナも同じ気持ちであったのだろう
少し恥ずかしがりながらも、二人して同じ言葉を口にすると
私達のが何を考えていたのか察したのであろうハナエがニッコリと、少し意地悪さを含んだ顔で笑う
「どうしましょっかねー」
「そんな殺生な!私だって、何か思い出の品が欲しいのです!」
「そうですよ、いじわるなんて言っちゃだめですよ!」
そんな私達の姦しいやりとりを、スズランはきょとんとした顔で眺める
自分の羽根がそんなにも珍しいものだろうか、と背中から回した翼を眺め
少しだけ「うー」とうなったあとに、少し気合を込めた「きゃい!」何をしているのかと眺めていると
その手に握った何かを、ぐいっと私たちの目の前に突き出した
「あい!」
私が掌を差し出すとその拳が開かれ、はらり、私の掌に落ちる。
そこには小さな、まだ小さな正羽が一枚握られていた。
ニコニコしたその笑顔を称えながら、両手を頬に充てた照れ笑い。
きっとこの子は、自分の大好きな羽根を私たちにくれたのだろう。
自分がとても大切にしている、生徒達からわけてもらった羽根のように自分の大切なものを。
羽根を抜くのだって、自然に抜けるのでなければ痛くないわけではない。
この子はきっと強い子だ。痛みを乗り越えてなお、愛を与えられる強い子だ。
もしかしたら私達とともに、私達のように救護の道を歩んでくれる子なのかもしれない。
その美しい亜麻色と鉄黒色が入り混じる、不思議できれいな模様の羽根に、3人で手を重ねて私達は想った
- 37二次元好きの匿名さん24/04/25(木) 00:09:23
>>29 もし、もしもクリスマスまで行き着けたら
セイアちゃんからのクリスマスプレゼントが抜け毛でつくったニードルフェルトとかに、したくなったよ。行き着けるかな…クリスマス…
>>30 すげえ!あっぶねえ!!完全に記憶の外で、初対面の体で書き始めるところだった!!!
すごい記憶力に助けられた…ちょっくら読み返してくる…
>>31 ああ、ハナコがわざとらしくコハルに泣きついて、困り散らすコハルの顔が目に浮かぶな。
だんだんと補習授業のお話のピースが嵌ってきたよ
>>32 スイーツ部のキャラ解像度足りなかったから逃げて避けて来たけど、ちょうど、ちょうどイベント来たからね、解像度上げてくる。誕生日イベントやりたいよね…
>>33 保守たすかる。ちょっと私事が忙しくて時間は遅いけど、できる限り毎日書くよ!
なんなら今、これ書いてる時間が一番心穏やかに生きてる時間まである
すまない、アリスクに会わせようと思ったら
解像度不足どころではない俺の記憶力のなさが露呈したからちょっと閑話挟ませてもらいました
急遽だったから差し込めるものが思いつかなくて、本来あんまり語るつもりなかったスズランのモチーフの話になっちゃった…すまない。
セクシーセイアで…すまない…
- 38二次元好きの匿名さん24/04/25(木) 05:31:56
亜麻色と黒鉄色の翼いいですわね
アクセントに差し色か羽飾りで青と白はどうかな
あとミカって最終編だと一応ティーパーティとして出席してた気がするけどここだとどう過ごしてるんだろう - 39二次元好きの匿名さん24/04/25(木) 15:44:27
保守う
- 40二次元好きの匿名さん24/04/25(木) 17:46:36
ヒフミによるペロロ様の英才教育()待ってます
- 41二次元好きの匿名さん24/04/25(木) 21:40:15
アズサはどういう顔をすればいいかわからないと言う。カシオミニをかけよう
- 42二次元好きの匿名さん24/04/25(木) 22:02:56
アリウスの面々に爆速で懐いて親代わりとしてちょっと嫉妬してしまう救護騎士団ズはいます
- 43二次元好きの匿名さん24/04/25(木) 23:02:59
アリスクで一番あわあわするのはサオリ。
- 44二次元好きの匿名さん24/04/26(金) 02:02:30
>>36子育て日記:50日目 蒼森ミネ
今日は、アリウスの方とお会いするお約束の日です。
場所はトリニティ学区の外れにある、古い教会。
シスターフッドも、正義実行委員会も、ティーパーティーも支援をするとのことでしたが
その"支援"が穏当なものとも思えず、お断りをさせて頂きました。
先生が共にいる以上、彼女たちも変なことはしないでしょう。
―――――――――――
「待ってた。」
先生と共に私達が古い教会を訪れると、そこには既にアリウスの二人がいた。
古ぼけたその教会はきっと今では使われていないのであろうが
直近に掃除がなされたのだろう、埃や黴臭さはなく、机や床、窓ガラスまで丁寧に掃除されていた。
きっと、シスターフッドの手回しだろう。
そこに立つ2人、確か名前は秤アツコさんと、戒野ミサキさん。
あまり顔を合わせる機会、というのもあるお二人ではないが、過去に会った事がある。
その際は4人組だったと記憶をしているが、残りの2名はどこにいるのだろうか。
「要件は先生から聞いてる。リーダーももうすぐ来るはず」
私の表情を見てか、ミサキさんが先に口を開く。
2人の手には、武器らしきものはなく、本来2人が持つであろう武器は遠く教会の壁に立てかけられている
「この子が、件の?」
「はい。例のカタコンベから、セリナ…この子が見つけ、私達が保護をしています。」
「…アリウスではあまり見ないタイプの子だね。」
- 45二次元好きの匿名さん24/04/26(金) 02:03:02
私の背中に背負われたスズランの顔を遠くから覗き込み確認する。
まずはヘイロウ、次に顔、最後に翼へと目を滑らせて、首を振る。
私もアリウス分校の事は調べたが、確かにあまり翼をもった生徒は多くはない。
しかし、それは逆に言えば、この子の血族に近い人がアリウスにいるのならば、探しやすいという事でもある
「すまない、遅れてしまったようだ。」
2人の背後、影からスゥと現れた長身の少女。
こちらは、錠前サオリさんだったはずだ。
両手を上げ、その片手にはマガジンの装填されていないライフル。
敵意はないことを示しながら、ゆっくりとその銃を壁へと立てかける。
足のベルトに仕舞われたナイフ、手榴弾に至るまでを床に置き両手を挙げた状態でこちらに近寄って来る。
「久しぶり、リーダー。」
「ああ。世話をかけるな。」
注意深く周囲を見渡すサオリさん、高く取られた窓の向こうを見据えると、その挙げた両手が少し強張る。
そして、あとの2人に目配せをすると、その2人も両手を挙げる。
まさか、とその視線の方向を見ると、その建物の上には黒い影。
数百メートルは離れていると思われるその距離から正確なことは分からないが3人はいるだろう。
そしてこの昼の日差しの中でも、黒い影を落とすのは正義実行委員会の制服だろう。
心配性なあの保護者達に深く大きくため息を一つ。
これでは私達が制裁を加えるために誘き出したかのようではないか。
だから"支援"をお断りしたというのに。
しかし、その支援者というのは1組ではなさそうだった。
- 46二次元好きの匿名さん24/04/26(金) 02:03:19
窓から頭を覗かせるウィンプル。
そして軽々と放り込まれた緑髪の少女が「ぐえっ」と声を上げて床を転がる。
その両手には、大きな対物ライフルが抱かれていた。
「あ、あの、こちらの方をお忘れのようでしたので…失礼いたしました…」
と、頭を下げて窓枠の外に消えたのは、ヒナタさん。
ということは、このあたりはシスターフッドが抑えている、という事なのだろう。
遠くからは正義実行委員会、近くはシスターフッド、正面には私達救護騎士団
彼女たちにとっては、これ以上ない四面楚歌だろう。
「うぇぇ…痛いです…」
「なぜヒヨリがシスターに投げ込まれている?
いや、聞くまでもないか…」
「リーダーたちに何かあった時の逃走経路確保だって、姫ちゃんに言われましたが…
うわぁぁぁぁん、やっぱり私じゃダメでしたーーーー!」
きっと、逃走経路を覗くように狙撃地点を確保していたのだろうが
それをシスターフッドが見逃してくれはしなかったのだろう。
見つかり、捕まりそして、ここに放り込まれるに至る、ということだろうか。
「セリナ、治療をしてあげてください」
「はい。団長」
セリナさんがヒヨリさんに駆け寄ると、怪我がないかを確認し、おでこに一つ大きなばんそうこうを貼った
- 47二次元好きの匿名さん24/04/26(金) 02:03:31
「……気にするなと言っても無理な話なのは分かりますが
あまり気にしないでください。過保護な保護者が多いだけなのです。」
「ああ、きっと私達を確保しようとするのであれば、もう動いているだろうからな。」
「私達が何もしなければ、無事に帰してもらえるってわけだね。
まあ、先生がそんなだまし討ちに加担するとも思えないし。」
私達の後ろに立っている先生に目をやると、先生は苦笑い。
きっと先生でも、ここまでの総出は想定していなかったのだろう。
いや、各組織の誰もが、各組織のほぼ総力をここに注込むなど予想はしていなかったのだろうが。
「なんでみんなそんな落ち着いていられるんですかぁ!
もう終わりです!洗い浚い吐いたら捕まって拷問されて殺されるんですー!」
「ヒヨリ、うるさい。」
「姫ちゃんもなんでそんな落ち着いていられるんですか!」
冷静沈着な3人の中、ひとり泣きわめくヒヨリさん。
この状況下で、私達がどう言い訳したところで、信じてもらうという事は難しいだろう。
どうしたものか、と頭を悩ませていると。先生が割って入る
"まあまあ、落ち着いて。"
"お茶もお菓子も用意しているから、ゆっくり食べながら話さない?"
手には、大きめのコンビニのレジ袋が握られていて
その中には、ペットボトルやケーキ、シュークリームなど、色々なお菓子が詰め込まれていた。
- 48二次元好きの匿名さん24/04/26(金) 02:03:42
先生の持参したジュースとお菓子を広げて、円卓に着いた私達。
と、そのはずだったのだが、どこからともなくロールケーキが差し入れられ
トリニティの制服を着た生徒達が、お茶会の準備を始め、なにやらテーブルの上がにぎやかになっていく。
"ナギサだね…"
「ええ、ナギサさんですね…」
そのお茶菓子がロールケーキ、というだけで断定してしまうのはあまりにだろうが
ここまでの事をさらっとできてしまう人と言えば、あの人くらいなものだろう。
アリウスの面々は、見慣れない様子でひそひそと話をしている。
漏れ聞こえるその内容は決して不穏なものではなく
「このケーキ、食べていいの?」
「これが、マカロン…?」
「姫、こういう場のマナーを知らないか」
「もう終わりなら全部頂いちゃいましょう」
と、なんというか、その雰囲気に似合わず、年相応なやりとり。
今まで、武闘派という噂ばかりに気を取られ、その生い立ちに同情を覚え
救護対象とすべきではないのか、と悩んでいた私の考えをきれいに裏切ってくれた。
そんな安堵からか、私の口を笑いが飛び出した
「ふふ、マナーなど気にせずお召し上がりください。
セリナ、ハナエ私達も頂くとしましょう」
私は、背負っていた少しおねむな様子のスズラン放し、膝の上へと抱きかかえる
銃と盾を床に置くと、アリウススクワッドの方々の緊張が少しだけ緩んだ
- 49二次元好きの匿名さん24/04/26(金) 02:03:56
――――
「すまない、私達にもその子の親というのは見当がつかない
その瞳の色、翼の色、髪の色、そのどれをとっても思い当たる者がいない。」
「そうですか…」
「そもそも、あのカタコンベに子供を捨てるにしたって
トリニティ側に行く事自体が簡単ではない」
確かに、アリウスの一件以降、通行は見張られている。
そんな状況下でわざわざ、子供をそこに捨てに行くと言うのも考えにくい。
ともすれば、誰がどうやってあの地下墓地に、どういう目的で入ったのか
なぜ、トリニティに近い浅い部分に置きざることができたのか、ということが解せない。
「私が親だったら、拾われるならそっちに、というのは納得出来るけどね
とはいえ、今のアリウスなら、前ほどひどい事にもならないとは思うから」
「まあ、今は連邦生徒会からの支援も多少はあるみたいですからね
主犯たる私達は…そこに戻ることもできないんですけどね…、はは…」
ようやくみんなの会話がゆったりと成立するようになってきた頃
スズランがおねむから目を覚まし、寝ぼけまなこでのびをする。
バサバサと翼をはためかせ、周囲を見渡すと、普段と違う場所にいることに気が付いたようだ
しかし、そこはスズラン。
特に気負った様子もなく、怖がる様子もぐずる様子も見せず
アリウスの4人へとにっこりと笑いかけて手を振っていた。
- 50二次元好きの匿名さん24/04/26(金) 02:10:11
>>38 ごめん…一切を考えてなかった…
なんなら、SSの設定上、最終章後なのか前なのかすら危ういからね…多分後。。。
強いていうなら、たぶん政治には参加させてもらえないから
お茶会とかには出て来てるんだろうなーってイメージはしてる
ので、きっとミカに会うときは、野暮用でティーパーティーを訪れた時かなって
>>39 授業部たすかる
>>40 たぶん、俺スズランちゃんはペロロ様好きな気がしてるんだ…
>>41 アズサは抱っこすることになったら困り顔する。そんな気がする。
そしてどうしようヒフミ、って聞く
>>42 任せろ、明日やる。今日たどり着こうと思ったら、トリニティ首脳陣過保護説が先に来ちゃった…
>>43 足とかに抱きつかれて「なんだ、何が目的だ!?」って言うよね。というか言わせる
すまねえ長いわりにちゃんとアリウスの面々の話にならなかった…
そして、うちにはヒヨリ以外いないので、解像度不足が…
- 51二次元好きの匿名さん24/04/26(金) 06:09:43
よい…良いペシ…これが一日の楽しみペシ
- 52二次元好きの匿名さん24/04/26(金) 14:32:24
ちょっと早いけど保守
持ってないキャラって解像度上がりにくいんよね…わかる - 53二次元好きの匿名さん24/04/26(金) 21:37:16
羽と手を振る姿以上に嬉しいこともないだろうな
- 54二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 00:33:15
手を振るスズランに、また四者四様のリアクションを見せる。
リアクションに迷って左右を見ているサオリさん
無表情で手を振るアツコさん
少しやわらかな表情に変わったミサキさん
少し身を乗り出して見ているヒヨリさん
そんな4人を見て、スズランもご機嫌なようで私の胸を叩いて床に降ろせと指示をする。
最近は歩いて転ぶ事もずいぶんと減り、自分の足で歩くことも増えてきたので室内などでは自由にさせていることも多い
そしてどうやらスズランは自分で歩く方がお好みのようだ。
床に降ろしてやると、セリナかハナエのところにでも行くのだろうか、と見守っているとトコトコと円卓を周り込む。
あら、と立ち上がった時には、既にスズランはサオリさんの足元へとたどり着いていた
「なんだ、どうしたんだ?
おい、私は、私はどうしたらいい……」
「さあ?みんな子供の世話のしかたなんて見たことないし。
なんなら、ヒヨリの面倒一番見てたリーダーが一番詳しいんじゃない?」
「フフ、サオリが困ってるなんて少し新鮮」
サオリさんの椅子の隣でじっとサオリさんの顔を見つめるスズラン。
困り果てて、椅子から立ち上がったサオリさん。
困っているとはいえ、害を与えるようにも見えず、少し見守ることにした。
たじ、と少し下がるサオリさん、そこにスズランはひし、と抱きついた。
「おりぃー!」
- 55二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 00:34:05
「姫!ミサキ!私はどうすればいい!?頼む。助けてくれ!」
しっかりと抱きついたスズランに今度は身動きをすることができなくなり
後ろの2人へと助けを求めるサオリさんだが、なにやらほほ笑むばかりで助ける気はないようだ。
ちらり、こちらへと助けを求める目を向けられるものの
なぜか楽しそうなスズランに、このまま引き剝がしてしまうのも気が引ける。
「なぜだ、姫、ミサキ!なぜ私を見捨てるんだ!」
「そりゃリーダーも私達を見捨てて自分探しの旅に行ったからね」
「自分が助けて欲しいときにだけ助けてもらえると思うのは、傲慢」
その会話に、一人だけ別に現れた理由を悟る。
なるほど、今はサオリさんは1人だけ別行動、ということなのだろう。
そして、この二人はそれを少し根に持っていると。
「あの、あの…スズランちゃん…?いえ、スズランさん…サオリ姉さんが困っているので…」
そんな中、唯一助けに入ったのはヒヨリさん。
ミサキさんの足にしがみつくスズランを優しく抱き上げると、自分の胸に抱き上げた。
その不慣れな手つきを見るに、この子も特に子供に慣れている、ということでもなさそうだ
サオリさんから離されて、今度はヒヨリさんの顔をじっと見るスズラン
なんとなく、このあとの光景が見えてしまった自分がいるが
まあ、特に問題があるわけでもないのでよいとしよう。
「すまない、ヒヨリ。助かった」
- 56二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 00:34:33
腰砕けに椅子へと座り込むサオリさん。
「あ~」とサオリさんを指差すスズランだが、ヒヨリさんは困り顔。
きっとサオリさんに近づきたいのだろうが、あの困りようを見るに戻すわけにはいかないのだろう
「ごめんなさい…サオリさんが困っちゃうので…」
「あぅ…」
「あー、あー!泣かないで、泣かないでください!」
ヒヨリさんの腕の中、ぐずり始めたスズランに、ヒヨリさんが慌てふためく。
あまり泣かないスズランではあるが、こうなってしまっては既に、私達が抱きかかえても遅いのは
今までの経験上、というよりもサクラコさんの経験上、分かりきっていた。
「あ゛ー…うぇ…びぇええー!」
「え、あの泣かないでくだ…泣かない…泣かないで…え、あの…
うわぁぁぁぁああああああん」
「びぇーーーーーー!!!」
「うわぁぁぁぁああああああん!!!」
これは、始めて見るかもしれない、
抱っこする側とされる側の泣き声の二重奏
さすがに、この状態で放置、というのもかわいそうだろう、と助けに向かおうとすると
既に、アツコさんがヒヨリさんの隣で、そのお面をはずしていないないばぁ、ぴたりと泣き止んでいた。
「姫ちゃんありがとうございますぅううう…」
- 57二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 00:34:52
「すみませんお二人とも、ほらスズラン」
スズランを受け取ろうと、私が手を伸ばす。しかし、スズランは羽をバサバサと抵抗。
珍しいこともあるものだ、とは思うがなんとなく妬けてしまうのが親心
「やー!」
「やーではありません、ほら、スズランこっちに来なさい。」
バサバサと抵抗するスズランをなんとか受け取る
当人はちょっと不貞腐れた顔で受け取られ、あっち、あっちと4人を指さす。
これは、まだ遊びたい、と言っているときのそれではあるが、この4人とは初対面
何か通じるものがあるのか。
ともすると、やはりもっと調べてみる価値はあるのかもしれない
「ヒヨリと遊びたいのかな…ヒヨリは…まあ、うん。子供みたいなものだしね。」
「ひどくないですか!?うう、辛いです…苦しいです…」
「てっきり自覚があるものだと思ってた」
「ないです!私だってもう…え、なんですかみんなしてその顔…」
コントのようなやり取りに、私はつい笑ってしまう。
スズランの鼻水を拭きにティッシュを片手に近寄ってきていたハナエも、それは同じようだ。
まさか、あのアリウス分校の生徒と、こんな形で笑いあう日がくるなど誰が想像をしていたのだろうか
そして、こんな日常を誰が思い描くことをできたのだろうか。
- 58二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 00:35:11
いや、きっと思い描くことすらなかったあの日々の方が間違いだったのかもしれない。
私達にはきっと違いはなかった。ただ環境が違ったそれだけのことだ。
「それにしても、この子は物怖じしないね」
「そうですね、あまり人見知りはしない子ですね。」
アツコさんが鼻を拭かれるスズランの顔を覗き込む。
それに気づいたスズランも、ぱっちりと目を見開いてアツコさんの顔を見る。
じっと顔を見つめた後に「おー」と声を上げたのは、どういう意味なのかはわからない。
「ん?何?」
優しい顔でほほ笑む彼女に、スズランは手を伸ばして頭を撫でる。
それを受け入れると「ふふ」と笑うアツコさん
「姫、そんな子供好きだっけ?」
「ううん。…そもそも子供好きとか嫌いとか以前かな
ミサキは、子供苦手だっけ」
「あんまり得意ではないかな。何を考えてるかわからないし。」
と、複雑そうな顔をするミサキさんに今度は手を伸ばすスズラン
少しそちらに近づけると、今度はミサキさんの頭を撫でる
「まあでも、嫌いでは…ないかもしれない」
- 59二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 00:37:05
「私達も何か情報があればまた連絡をする」
「はい。もしあなた方も助けが必要ならば連絡をください
救護が必要な人に手を差し伸べるのが、私たち救護騎士団ですから」
「…ああ、その時は頼む。」
そしてしばらく、真面目な話が終わったのち、テーブルの上に残ったお菓子と共にアリウスの面々は影へと消えた。
少しの間、その場に留まって耳をそばだててみたが、どうやら外で争いなどは起きなかった様子。
協力してくれた彼女らに何かあれば、と構えてはみていたものの、杞憂だったようで一安心
しかし、ここまで揃って、本当にただの過保護だったというのも少し滑稽な気もする。
"ナギサから電話だ。"
先生の電話が鳴る。このタイミングで、ということはきっと話の内容は筒抜けだったのだろう。
別に会話の内容を隠し立てする気もないので気にはしないが、悪趣味なのは変わりないようだ。
その電話に先生が出ると数言の会話が為された後に先生は言う
"スピーカーにするね"
『…あまり、重要と思われる情報は得られなかったようで、残念です』
「そうですね。しかし、アリウスの出身という説はまだ否定もしきれないようで」
そんな話をしていると、何やら窓の外や扉の向こうが騒がしい。
ちらりとその方向を確認すると、シスター服や黒いセーラー服の生徒がちらほらと。
どうもこの人たちも、やはりスズランの保護者らしい。
「セリナ、ハナエ。扉を開けてあげてください。ここまでしてくださったのです。事情は説明してあげないと。」
- 60二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 00:48:37
すまねえ、まことにすまねえ…
姫とミサキについては、解像度不足すぎて子供にどんな態度を取るかもわからねえから
あんまり出番を与えてあげられなかった…
もし、アリスク推してる人がいたならすまない…
ハスミの腹ペシ先生、まだ生きていたのか!?
もう少しだ、もう少し耐えてくれ
そのうち成長して自由に動き回るようになったスズランにハスミが振り回されるからな…
早めの保守が一番たすかる
書き込めなくても見られるから落ちる時刻まで余裕がなくなっていくと心臓に悪いんだ…
そして、そうなんだよすまない…キャラストか、せめてグルストがあると、普段のキャラクタ性が分かるから
少しはこの子はこう言う、って考えられるんだけども…
ああああああ、そうか。小さい子だから手と羽が連動しちゃうっていうそういう概念もあったわ
よし、手を振るついでに、誰かを羽ビンタさせよう
だれが羽ビンタされるの一番似合うかな…
次回、補習授業orシスフorミカorスイーツ部
(今のところの未記載既出概念多い順)
困ったことに、何も決まってない…
つまり、概念読み返したりして、俺がピンときた奴を書く、そういうこったぁ!!!
- 61二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 01:22:04
乙です
候補の中でビンタまでいかなくても一番当たってそうなのはヒナタかな
それ以外だとレイサ辺りも似合いそう
あとコハルの頭の羽とかカズサの猫耳の動きを見てキャッキャするスズランはいそう - 62二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 01:41:33
- 63二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 08:37:39
ヒヨリと一緒に泣いちゃうの良いペシ…今日もまた頑張れるペシ…ありがとう…
- 64二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 13:48:15
羽ビンタはやはりティーパーティーに受けていただく方がよろしいかと
- 65二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 14:40:58
- 66二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 17:55:27
泣き声二重奏で鼓膜やガラス窓は無事だったんだろうか
- 67二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 20:13:18
ミカは赤ちゃんにスキンシップしすぎて嫌われるタイプと見た
- 68二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 03:10:40
子育て日記:62日目 鷲見セリナ
かなりスズランちゃんの言葉がはっきりと形を成すようになってきました。
今までの母音に釣られがちだった言葉、濁音半濁音が不明瞭だった言葉が、だんだんと明瞭になりつつあります
そして、何を指示しているのかもよく分かるようになってきました
――――――――――――――――
「行きますよ、スズラン!誇りと信念を、胸に刻み!最後の、その瞬間まで!」
「きゅうご!!」
ミネ団長が空高く飛び上がる。
二人の大きな翼が上空で大きく広げられて、若干の滑空。
ぽい、とスズランの手から放られた手榴弾。
それを団長が空中で射抜き、足元で爆発が巻き起こり、そこに轟と着地をして、不良生徒達を吹き飛ばす。
「みねまぁま!」
「はい!」
起き上がって発砲しようとした相手に散弾のヘビーパンチ。
後方からの私たちの支援射撃よりも早く、相手をなぎ倒した。
だんだんと見慣れて来たこの異様な光景に、若干の戦慄を覚えてはいる。
「ぶーぶ。」
「姑息な…本当に救護が必要な人たちのようですね!」
公園の外から生け垣を突っ切る戦車。
兵器まで出されてはさすがに少し分が悪い。
- 69二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 03:10:57
こちらに視線を向けさせようと装甲に向けて発砲するがターゲットは変わらない。
それに気を引かれたのは、戦車の上にいた不良生徒達だけのようだ。
完全にこちらを捉える前にと、ハナエの襟首を掴んで移動を開始する
「セリナ先輩!ふたりが!」
私に引っ張られながらも、戦車に銃を撃つハナエ
しかし、その抵抗も甲斐なく、戦車の手法はミネ団長とスズランを捉えていた。
盾で正対するミネ団長と、戦車を睨むように目を離さないスズラン。
主砲が撃たれるか、というその瞬間、戦車の横腹を貫く閃光と、数秒遅れて到着する爆発のような発射音。
それと共に到着したのは、悪魔のような一人に連れられた正義実行委員会の人たち。
「きゃははははは!いーひひひひひひ!やらせねぇ!!」
「ちゅるぎー!」
「あっ…スズちゃん……。やってやる!やってやるぞォ!」
一瞬、悪魔のような顔が乙女になったような気もするが、それもたった一瞬のこと。
爆発した戦車から放り出される不良たちは空中で散弾に捉えられる。
いや、ツルギ委員長の発射数よりも多く蹴散らされているのは
ミネ団長のみでなく、ハスミ先輩と、マシロさんのものもあるのだろう。
- 70二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 03:12:00
その登場から瞬く間に制圧された不良生徒を確認すると、私達の後ろから声が響いた
「取り押さえなさい。誰一人逃がしてはなりません。」
「はいっす!包囲を崩さず、確保するっすよー!」
黒い制服の生徒達に取り押さえられる不良たち、そのほとんどは、身動き一つ取れそうにはないのだが
それでも容赦をしないあたりが、正義実行委員会らしい。
「これで、全てでしょうか?
セリナ、ハナエ、負傷者の治療にあたりますよ。」
「「はい、団長!」」
とは言うものの、負傷者といえば不良生徒達。
自分達で倒しておいて、それを治療するというのはマッチポンプな気がしてならないが、けが人はけが人だ。
負傷の少ない不良たちと、負傷の大きい不良たちは正義実行委員会の子たちにより振り分けられ
治療の必要な不良生徒は次々とこちらへと搬送される。
今までなら怪我人を無理に連れていく正義実行委員会と小競り合いになっていたのだと思うと
これもまた、最近変わった光景で、見慣れ始めた光景だった。
「ミネさん、スズランさん、お怪我はありませんか?」
「はい、私もスズランも、かすり傷の一つも…あら?」
ふとミネ団長の疑問符にそちらを見ると、おんぶひもが切れそうに、薄皮一枚を残して耐えていた。
団長の激しい動きにここまで耐えていたのだから、逆にすごい性能だったのが計り知れる。
- 71二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 03:12:23
「先生が下さったおんぶ紐だったのですが…まあ仕方がありませんね…」
スズランを背中から降ろし、地面に立たせると、ばんざい!とポーズを決めるスズラン。
そのご機嫌さからは、やはり自分で歩くのがお気に入りなのだと分かる。
「はしゅ!はーしゅ!」
「スズランさん、お喋りが上手になりましたね。」
その高い背を曲げて、スズランの頭を撫でるハスミさん。
それに照れるように頭を押さえ、パタパタとこちらへかけてくる。
「せりまま、ぼーろ、ぼーろ!」
「たまごボーロですか?…えっと、ちょっとまってくださいね。」
ポーチの中を探して、たまごボーロの小袋を取り出す。
その口を切ろうとするが、その手をスズランが抑え「や!」と否定した。
どういう意図なのだろうか、と考えてみるがそのまま手渡すと「あがと!」とお礼を言ってまたハスミさんのもとへと駆けだした
「はしゅ!あい!」
「…あの、スズランさん…私は…あなたにどう思われてるのでしょうか…」
そのままたまごボーロの袋をハスミさんに渡そうとするスズラン。
確かに、ハスミさんはお菓子や甘いものが大好き、という話は聞いてはいるが、この子はどこでそんなことを覚えたのか。
自分のお菓子を渡すことを心底嬉しそうにニコニコとしているスズランに、受け取っていいものかと悩むハスミさん。
ミネ団長も苦笑して「受け取ってあげてください」と口添えをした。
- 72二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 03:29:08
すまねえ、車が壊れちまったせいで、帰り着くのが遅くなった…
車の救護騎士団に助けてもらったよ…
なんだよHVの故障って…ハイブリッドがだめならエンジンで走ってくれよ…せめてエンジンはかかってくれよ…
みんなのコメで落ちる時間伸びててすごく助かったよ
ここから新しいグループの絡み書くと、話し方検証とかでもはや明け方になるから
前から少し考えてた「喋れるようになってきた時の話」を間に挟ませてもらった
すまねえ、明日というか、今日が本番だから…他グループ期待してた人がいたならすまない…
>>61 おつあり!そうか、コハルの頭、羽あったなぁ
そして、セイアちゃんの耳が好きなスズランちゃんだし、コハルの羽もカズサの猫耳も気に入りそう
>>62 すまねえ、そこまで深い設定は考えられてねえ…
キャラ自体のモチーフはあるんだけど、生徒たちの出生って作中であんまり語られていない
親の存在も不明瞭だから勝手な解釈いれると怒られるかなあ
っていう理由で深く掘れない、っていう俺の都合で正体ぼかしてるだけなんだ…
>>63 ハスミ腹ペシ先生、キャラ確立しとるwww
ヒヨリとハスミ…腹か?腹フェチなのか…?
>>64 ミカですね、わかります。
>>65 基本的に話の起伏が乏しく無価値でも、ただ幸せな日常話にしようと思うので、何かあっても、乗り越えさせるよ!!
>>66 あー威力の描写で、窓ガラスびびらせればよかったなあ、って思ったよ…
>>67 自分では嫌われる理由わからなくて、あの顔で泣いてて欲しいよね…
続けて、未出グループの概念あったら、何か書いてくれるととてもうれしい
- 73二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 10:14:21
先生経由で連邦生徒会が身元確認で来たとか?
- 74二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 10:22:43
補習授業部は、コハルの手榴弾……いや、コハルならまずはエッチな本かな
- 75二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 19:42:50
早い気もするけど保守
- 76二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 19:46:38
- 77二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 20:07:29
ただま&セルフ保守
今からお風呂に入って書きます。今日はとてもご機嫌なので、2本分書かせてもらおうかなって。
昨日の続きの喋るようになったお話を収めるのと、
今日の試合中、ずっと補習授業概念が頭チラついてたので、それを書かせてもらおうかなと思います - 78二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 20:08:15
やべえ落ちると慌ててたけど保守してくれてた…
ありがてえありがてえ… - 79二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 20:38:59
2本もですか!?
嬉しい…嬉しいペシ… - 80二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 20:43:14
「そりゃ、食い意地張ってると思われてるんじゃないのか?」
「くっ…、ありがとうございますスズランさん…」
ツルギ委員長に笑われながらも、両膝をついてスズランからたまごボーロを受け取るハスミさん
苦虫を嚙み潰したような表情を真っ赤にしながら受け取るそこにスズランの追撃
「ぽんぽ、ぽんぽ!」
お腹をよしよしと撫でられて、ハスミさんは両手で顔を覆う。
肌と同じく白い耳が、遠目で見てもはっきりと分かるほどに真っ赤に染まっている。
以前、ゲヘナの生徒に体格をバカにされたときは怒り狂ったとは聞いたことがあるが
きっと善意100%でやっているスズランには、怒るわけにもいかないのだろう。
それを笑うわけにもいかない正義実行委員会の生徒達とは対照的に
ツルギ委員長は耐えきれないとばかりに大笑いしていた
「ギヒヒヒ!ヒャハ…ヒャハハハハ…ギィ…ヒヒ……アガッ!!」
狂ったように笑うツルギ委員長の眉間に弾丸。
至近距離から放たれたその持ち主はハスミさん。
真っ赤な顔のまま片手でライフルを構えて、ツルギ委員長の眉間へと撃ち込んでいた
「ツルギ!笑い過ぎです!」
驚きながらも、大の字に天を仰ぐツルギ委員長。
それでも笑いは止まらないようで、地面に寝そべったまま、ゲラゲラと笑っていた
- 81二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 20:43:49
「ちゅるぎ!」
「あ゛?」
地面に寝そべったままのツルギ委員長の顔の横に立つスズラン。
撃たれた眉間をよしよし、と撫でられるとこちらの顔も真っ赤に変わってゆく。
それが恥ずかしいのか、顔を両手で覆い隠し、体を丸めるツルギ委員長だが
最近色々なことを覚えたスズランの手は止まらない
自分の胸に襷掛けしたポーチから、一枚の絆創膏を取り出して
裏のシールを剥がしてくれとミネ団長に渡す。
「みねまま、きゅーご!」
「はい、スズラン。」
ミネ団長がシールを剥がしてスズランへと返すと、ぺちん、とツルギ委員長のおでこに貼りつけた。
ウェーブキャット柄の、ピンク色の大きなばんそうこうがそのおでこで主張する。
自分が何をされたのかわからず、顔を覆い隠した指の間から目をぱちくり。
見えない絆創膏の柄を知りようもないのだろうが、周りから見れば異様な姿だ。
これが本当に狂犬や死神とすら呼ばれる、あのツルギ委員長の姿だろうか。
「ふふふ。ツルギ、よく似合っていますよ」
仕返しとばかりに手鏡で顔を移して見せるハスミさん。
「キャアアア!」と奇声を上げて飛び出していったツルギ委員長だったが
その日、トリニティではおでこにかわいい絆創膏を張り付けたまま戦うツルギ委員長の姿が
そこかしこで見かけられたのだと言う
- 82二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 20:56:39
こんなんこの絆創膏額縁入れて飾らないとやんけっっっっっ
- 83二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 21:11:21
- 84二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 21:19:36
同じ形の手榴弾は売られてる
だがあの敵味方識別のやつは誰もわからん - 85二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 21:30:10
- 86二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 21:33:04
市販品をコハル秘伝の改造…なのかなぁ
- 87二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 22:03:53
- 88二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 23:33:41
子育て日記:72日目 朝顔ハナエ
トリニティ校内であれば、最近は自分の足で歩き回るようになってきました。
しかし、どこで覚えたのか、セリナ先輩のようにフイと消えるようにいなくなります。
行方不明になってしまっては大変だ、と手を繋いで歩くようにしているのですが
それでさえも、何か気になるものを見つけてはいつの間にやら、その隣にいるので子守りが大変になってきました
―――――――――――――
「スゥちゃん!スゥちゃんどこに行ったんですか!?」
私はさっきまで手を繋いでいたはずのスズランちゃんが影のように消えたことに気付いて見まわしていた。
セリナ先輩と違って、ワープしたかのようにシャーレにいたりせず、常識的な範囲にいるだけマシではあるが
何を見て、どう学べばそれができるようになるのだろうか。
スズランが消えるのは、そこに怪我人がいる時だったり、きれいな羽の生徒を見つけた時だったり
はたまた、何かよくわからないものに興味を示してしまった時だったり
「あら、この子は例の…」
「誰かの子供!?誰が、誰か子供産んだの!?」
「救護騎士団が見つけてお世話してるんだそうですよ。
■■■して■■■■した結果、■■ちゃった、とかではないみたいですよ」
「バカハナコ!子供の前で何言ってるの!?」
「あはは…、コハルちゃん、全校集会を聞いてませんでしたね?
ナギサ様が全校に声明を出していたじゃないですか…」
「知らないわよ!そのときは久しぶりにハスミ先輩といっしょに正義実行委員会のお仕事してたし」
- 89二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 23:33:59
「そのハスミ先輩もだいぶ可愛がっていると聞いたぞ。」
「え、嘘!?」
補習授業部の面々に囲まれて、まんまるオレンジの目をぱちくりさせているスズランちゃん。
私はほっと一息胸をなでおろして彼女たちに駆け寄る
「あ、噂をすれば救護騎士団の!
こんにちは、ハナエさん。」
「こんにちわ~、すみませんスゥちゃんが…
自分で歩けるようになって、勝手に色々歩いちゃうんです…」
「無事合流できてよかったですね
悪い人に捕まっちゃったら■■されて■■■なことになっちゃうかもですからね」
ハナコさん、噂では知っていたがこの人は何を言っているんだろうか。
正直、意味はわかるはずなのに、喋っていることを脳が理解したがらない。
「ハナコ!いい加減にして!子供にそんな言葉聞かせるなんて死刑よ!死刑!」
「あら、たしかにそうですね…失礼いたしました…」
スズランへと目線を合わせて謝るハナコさん。
その手がゆっくりとスズランの頭を撫でようとするが、スズランは私の足の後ろへと逃げ込むと
珍しく涙を目に浮かべて拒絶する。
「やー!いやー!」
- 90二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 23:34:22
私の足にしがみ付いてしゃくりを上げ始めてしまったスズランちゃん。
自分から近寄って行って、離れると泣き出すことはままあれど
ここまで最初から人見知りをしたのは、初めてかもしれない。
「嫌われて…しまいましたね…」
「ハナコは怖いからな。仕方がない。」
アズサさんの突き刺すような言葉に、ハナコさんの顔が引きつって止まる。
石化したかのように笑顔のまま、しゃがみこんだ体制のままぴくりとも動かなくなった
「子供に卑猥なことを言うからでしょ!当然よ!」
「みなさん、そんなことよりスズランちゃんです!泣かせちゃったんですから!」
ヒフミさんがリュックを降ろしてその中身をごそごそと探す
「えっと、えっと…」とカバンの中から様々な
モモフレンズグッズや手りゅう弾、フリスビーのようなものなどなどが取り出され道の真ん中に広げられる。
よくこのリュックの中にこれだけいろいろなものが入るものだと感心していると
お目当てとしていたペロロ様のパペット人形を見つけ出して手に装着。
もう既に、その光景に唖然としていたスズランは泣き止んではいたもののパペット人形の口をパクパク
「『はじめまして、僕ペロロペロ~、泣かないでスズランちゃん』」
「ちゃーて。ぺろー」
パペット人形に頭を下げるスズランちゃん。
そのニコニコした顔は、お気に入りを見るときの顔
- 91二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 23:34:39
「みなさん、みてください。ペロロ様がペロロ様がスズランちゃんに気に入られてますよ!」
「きゃいーねー」
「ほらかわいいねって!かわいいねって言いました!」
「うん、理解者が増えるのは良い事だ。」
ペロロ様は独特なかわいいのセンスではあるが、ツルギ委員長を恐れず
ミネ団長がひっそり集めているウェーブキャットに囲まれて育ってきたスズランちゃんには、どこか刺さるものがあるのかもしれない。
うんうん、と後方で腕組みをして頷くアズサさんとわからない顔のリアクションをするコハルさん。
「ほら、スゥちゃんご挨拶しないとですよ~」
スズランちゃんは隠れていた私の足の陰から出て、ペロロ様パペットの頭を撫でる。
道におかれたヒフミさんのペロロ様リュックにもおじぎをしてご挨拶。
さっきから石化したままのハナコさんにはもはや目もくれていない。
というか、この人はいつまで固まったままでいるのでしょうか。
そんな事でショックを受けるような繊細な人ではない、と思っていたが思い違いなのかもしれない。
「スズランちゃんは将来有望です!
……ハナエさん、お時間あれば、スズランちゃんをお部屋にご招待したいのですが!」
「え!?あ、はい!今日は私はスゥちゃんのお世話役なので、時間は大丈夫です!」
目をキラキラとさせて今度は私に詰め寄るヒフミさん
かくして、私たちはヒフミさんの私室へとお邪魔することになったのだった。
- 92二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 23:35:04
―――――――――
「どうぞ、こちらです!」
ヒフミさんの寮の部屋の扉が開かれる。
そこには一面、モモフレンズたちの奇妙にかわいいぬいぐるみやイラスト、グッズが並べられていた。
一角にはたくさんのぬいぐるみが所狭しと並んでおり、私が手を握っていたはずなのに
気付いた時には、そのぬいぐるみ達の目前に立っておりキラキラと目を輝かせていた。
「あれ、えっ…」
「素晴らしい移動術だった。私にも気配が分からなかったぞ。」
自分たちの後ろにいたはずのスズランちゃんが、いきなり
しかも移動したそぶりも見せずに視界の中に突然いるというのは
やはり私が抜けているわけではないようだ。
困惑する私達をさておいて、スズランちゃんはその部屋の中を見渡す。
表情を言葉にすると「こんな素晴らしい世界があったのか」とでも言うような顔。
あっちを見ても、こっちを見てもモモフレンズのキャラクターに囲まれた部屋を嬉しそうに眺める。
子供ながら、色々なものを触りにいかないのは、医薬品が所狭しと並ぶ救護騎士団で鍛えられたお作法だ。
「ほぉぉ…きゃぃねぇー」
「ああ、見てくださいよアズサさん、コハルさん、ハナコさん…
これです、これが本来モモフレンズに向けられるべき視線です。」
自分の理解者の登場に、さっきから隅で表情が笑顔のまま凍り付いたハナコさんにも気が付かない様子
この人は、このまま放置していていいものだろうか、と少し悩むが私には解決できそうにもない。
- 93二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 23:35:20
「決めました、スズランちゃんの好きな子を連れて行ってあげてください!」
さあ、とばかりにぬいぐるみを手に取るヒフミさん
次々と目の前に差し出されるぬいぐるみの頭を順繰りと撫でるスズランちゃん。
本人はもうそれだけで満足げな顔をしているし、たぶん言葉の意味までは理解していない。
なので、スズランちゃんに代って私が尋ねる。
「いいんですか?ヒフミさん。
この子たちはヒフミさんの大切な子達なのでは?」
「はい!もちろんです!
ペロロ様、モモフレンズの仲間たちを好きになってもらえるのが、一番うれしいですから!」
「そうだな、同志が増えるのはいいことだ。
どうだ、コハルもこの可愛さをそろそろ理解できるんじゃないか?」
「私が異常なの…?このセンスについていけない私が悪いの?」
3人の熱量についていけずに置いてけぼりになっているコハルさん
私もかわいいと思う派ではあるだけに、ちょっと気の毒に感じてしまう。
「スズランさん、こちらがペロロ様、Mrニコライさん、ウェーブキャットさん…」
「ぺろ、にこら、うえぶきゃー」
次々に見せられるぬいぐるみ達に挨拶をしては楽しそうに笑うスズランちゃん。
白いカバさん、眼鏡のカバさん、茶色い…何?、おなじみの長い猫さん
みんなに挨拶をするスズランちゃんに、ヒフミさんは嬉しそうに紹介を続けた
- 94二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 23:35:48
そして、水色の鳥さんが目の前に現れた時、スズランちゃんの目がいっそう輝く
「こちらビッグブラザー様です!」
「びぐ!」
明らかに一段階上がった反応に
ヒフミさんが少しビッグブラザーさんのぬいぐるみを近づけると、スズランちゃんがぎゅっと抱きしめる。
ヒフミさんの腕ごと抱きしめてビッグブラザーさんにすりすりと頬ずりをする。
そこからそっとヒフミさんが手を抜くと、その手でスズランちゃんの頭を撫でる。
「スズランちゃんは、ビッグブラザーさんがお気に入りなんですね!
では、ビッグブラザーさんを連れて行ってあげてください」
ふんすふんす、と鼻を鳴らすスズランにヒフミさんが笑いかける。
「ほら、スゥちゃん、お礼言わないと。ありがとうございますって」
「あじゃまし!あじゃましゅ!」
ぴょんぴょんと飛び跳ねながらお礼を言うスズランちゃん
胸に抱いたビッグブラザーさんをぎゅっと抱きしめ、それをさらに包むように抱きしめるヒフミさん。
「まあ、うん。気に入るのが見つかったみたいで良かったわね」
「コハルちゃんも、お気に入りの子がいれば、一人連れて行ってもいいんですよ
テストの時のご褒美、受け取ってくれなかったですし」
「ううん、やめとく…」
- 95二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 23:36:15
スズランちゃんの顔を覗き込むようにしゃがんだコハルさん。
そこでようやくスズランちゃんはコハルさんの顔を認識したのか、こちらにもキラキラとした目を向けた。
「え、なによ?」
「きれーねー」
「きれい!?私が!?」
にゃ!と顔を真っ赤にしたコハルさん。
ぷしゅう、頭から煙があがったように、頭の上に乗せた帽子が飛び跳ねた
そこに片手でコハルさんの頭に生えた翼を撫でるスズランちゃん。
ツルギ委員長をはじめ、ハスミさんや正義実行委員会の方たちの黒い翼はスズランちゃんのお気に入りのひとつ。
「あ!なんだ!羽のことね!びっくりするじゃないもう!
…そっか、そういう風習もあったわね」
と、羽を一枚抜き取って、スズランちゃんの髪へと差し込んだ。
それに驚いたかのように目をまん丸にするスズランちゃんだが
しばらく何かを考えた後、自分の羽根を一枚抜いて、コハルちゃんに差し出す。
予想をしていなかったお返しに、驚きながらもおずおずと受け取ろうと手を伸ばすとカバンからゴトリ、と何かが落ちた
地面に落ちたそれに、みんなの注目が集まる。
はにわ?のようなそれは桃色水晶のようで、きれいに澄んだ色をしていた。
そこからのコハルちゃんの動きは実に素早かった。
スズランちゃんから羽根を受け取って、自分の胸ポケットに差し込むと
かばんから落ちたはにわをカバンの中にずぼりと突っ込む。
- 96二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 23:36:35
「あの、今のは…なんだったんでしょうか?」
私が尋ねると、コハルさんはしどろもどろ。
本当になんだったのかは分からないが、どうやら見られてはマズいものだったらしい。
「なんでもない、なんでもないってば!
あ、これ、これじゃない!?」
とカバンから取り出したのは、白黒に金色の意匠の綺麗なボール。
いや、トリニティの武器店でたまに見かける手榴弾だ。
なにやら液体を入れておくことができるとかできれいな見た目をしているが
実用性はあまり高くないとのうわさをよく聞く。
「コハル、こんなところで武器を出すものじゃ…」
とアズサさんが肩を掴んで制するが、その声掛けが裏目に出たようで
コハルちゃんの手からころりと手榴弾が転げ落ちる
それが爆発する寸前、アズサさんとヒフミさんと私がスズランちゃんに覆いかぶさる
わたわたと拾い上げようとしたコハルちゃん手の中で、その手榴弾は爆発して中の液体を飛び散らせた
「いったぁ!!…くない?あれ…なにこれ…くさい!とってもくさいです!」
私は驚いて飛び上がりながらも、スズランちゃんに怪我がないかを確認する
幸い、スズランちゃんにも、部屋の中にいたみんなにも怪我はない様子
しかし、コハルちゃんの手榴弾が撒き散らしたその液体で部屋中が水浸しだった
「これは…コハルが教会でもらえる聖水に、傷薬を混ぜたものだ…
臭いも、くさいがすぐ消える。が、しかし子供には危ないかと思って…」
- 97二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 23:36:58
アズサさんが髪の毛と羽根についた水気を払いながら言う。
はぁ、と深いため息をつくアズサさんとヒフミさんの態度に、コハルちゃんがしょぼくれた顔に変わる。
「ごめん…なさい…」
しかし、そんなみんなのテンションもどこ吹く風なのはきっとスズランちゃんが、救護騎士団の子である証
ビッグブラザーさんを頂いたときと同じようなキラキラ顔
「おぉ!」
「手榴弾はスゥちゃんの得意技ですからね。
いつもミネ団長の背中から投げて、敵を一網打尽なんですよ」
「…そうなの?」
「はい、スゥちゃんは爆弾投げのスペシャリストなんです!」
私の演説に、周囲のみんなは困り顔。
救護騎士団登場!といえばのみんなの顔に変わってゆく。
そんな変なことを言ったつもりではなかったのだが、なにがおかしかったのだろうか。
「小さい子には、爆弾より安全かもしれませんね…けがはしませんし…」
「そうですね、コハルさんの真似っ子で、これを持たせてあげてもいいかもです!」
「そ!それなら、いくつか分けてあげる!
まだ部屋にいっぱいあるし!」
「わ、いいんですか!ありがとうございます!」
- 98二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 23:37:21
―――――――――
さて、そんなこんなで部屋の掃除をみんなで終わらせ
ヒフミさんのペロロ様の絵本教室もひとしきり終わりをつげた頃夕方の鐘が学園内へと響き渡る。
目いっぱい遊んだスズランちゃんは、とろんとした目でビッグブラザーさんを抱きしめていた。
「そろそろお暇しないとですね、スゥちゃんと遊んでくれてありがとうございます!」
「いえいえ!ペロロ様の良さを分かって頂けただけで、私はうれしくてしかたがないです」
スズランちゃんを抱き上げると、寝ぼけまなこでヒフミさんとアズサさんに手を振る。
手を振り返してくれたヒフミさんと、アズサさんは部屋の隅へと目線を向けていた。
部屋の隅には、数時間前と一切変わらない笑顔で、ぴたりと静止したままのハナコさん
すっかりと気配を絶っていたので、私もすっかりと頭から抜け落ちていた
「ところで、ハナコはいつまでそうしているんだ?」
「…私は、空気です。」
器用にも口を一切動かさずに、微動だにせずに言葉を発するハナコさん
よほど、スズランちゃんに拒絶され、泣かれたことがショックだったのだろう
きっとどうしたら怖がらせないかを考えて、気配を消すことに至った…のかもしれない。
スズランちゃんが「あっち」とハナコさんを指さす。
その指のままハナコさんの方へと近づいてみると羽をばさばさ、羽毛の中に手を突っ込んでごそごそと何かを探すようにまさぐる
「あげぅ。」
ハナコさんに羽根を一枚差し出すスズランちゃん。
どういった感情なのかわからないが、ハナコさんはその羽根を受け取ると「ありがとうございます」と呟いて顔を真っ赤にして俯いていた。
そうして、補習授業部の皆さんとの初対面の一日は終わったのでした
- 99二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 23:48:15
>>73 実はちょっと、連邦生徒会というかシャーレ絡みは番外編書くのもありかな、と思ってる
テスト間近とかで、先生がスズランちゃんを預かることになった、とかで
シャーレでいろんな生徒と絡ませるか、パパと呼ばれてる事実にてんやわんやするか…
>>74 俺の頭の中で、本から水晶埴輪に変換されちゃった、読み返したら本だった…すまねえ…
>>75 早めの保守がいちばん助かる。具体的には俺の寿命が延びる。
>>76 敵味方識別、となるとさすがに神秘とかの分類だよなーってことで
聖水と傷薬入り手榴弾、にしてみた。違和感あったらごめん…
>>79,>>87 ペシ先www、いつも読んでくれてありがとうね。リアクションもらえるのすごくうれしい
>>82 後日譚書く余裕あれば、ちょっと大人になったスズランちゃんにそれ見られて「えぇ」って顔されて赤面するツルギが書きたい…
>>84,>>85,>>86 情報たすかる。解釈違和感あったらおしえてね。そっと、そっと方向修正しとくね…
すまねえ、かつてない分量になってしまった。
今日日中ずっと妄想してたから、書きたいことが大渋滞を起こしてたんだ…
すっと読める書き方できればいいんだけど、文章くどい癖があるのに長くしてしまったよ…すまぬ…
- 100二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 23:50:35
おつおつ、珍しく大ダメージのハナコ
- 101二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 23:56:42
前をスズラン、後ろをアズサにぶっ刺されて満身創痍になったハナコ、南無
- 102二次元好きの匿名さん24/04/29(月) 00:15:54
このレスは削除されています
- 103二次元好きの匿名さん24/04/29(月) 00:19:53
ペシぃ…スゥちゃんいっぱい喋れるね…きゃぃねぇー
ペシも嬉しいペシ。
ファウスト「あはは…えっと…”ぺし”じゃなくて”ペロロ”ですよ」
あっ(消息不明) - 104二次元好きの匿名さん24/04/29(月) 00:46:23
ハナコはさあ…最高やな!!
- 105二次元好きの匿名さん24/04/29(月) 00:49:16
そろそろ好き嫌いが出てきてお母さんたちが苦労するくらいにはなってんのかな……
- 106二次元好きの匿名さん24/04/29(月) 02:50:12
ハナコがちゃんと羽受け取れてえがった
スズラン…強くて優しい子…! - 107二次元好きの匿名さん24/04/29(月) 13:30:24
保守
- 108二次元好きの匿名さん24/04/29(月) 20:09:02
子育て日記:81日目 歌住サクラコ
トリニティ学区内で大きなテロが発生したとのことです。
レストランが爆破されて、怪我人が相当数発生した大規模テロとのことでした。
救護騎士団の皆さんは病院でその支援を行うため、そこに子供を連れて行くわけにもいかず
シスターフッドでスズランさんを預かることとなりました。
――――――――――――
「マリー、お願いしますね」
「サクラコ様はなぜそんな、柱の影に隠れているんですか…?」
「スズランさんは私と会うと泣いてしまうからです。」
「……、そうですか……」
懺悔質の当番だったマリーを呼び出して私は教会の柱に隠れていた。
もうすぐシスターヒナタが、スズランさんを連れてくる。
困り顔のマリーや、事情を知らないシスター達に様子を伺われながらも、
私は今、そのような些事を気にしていられるような状態ではない
子供は好きだ。しかし、泣かせてしまうのは本望ではない。
そして、私が預かろうと提案したのだから
シスターの子達に任せきるというのも、無責任な気がしている。
だからこうして、スズランさんの来訪を待ち望んで、いや、待っているわけだ。
「す、スズランさんをお連れしました」
「たー!」
教会の扉が開かれヒナタとスズランさんが入って来た。
- 109二次元好きの匿名さん24/04/29(月) 20:09:17
あの子は、教会の空気が嫌いだったりはしないだろうか。
知らない人ばかりのこの場所が怖かったりはしないだろうか。
そうであれば、別の場所を用意させた方がよいかもしれない。
そんな不安とは反対に、ヒナタに抱かれたスズランさんはニコニコと笑っている
その頭にはウィンプル。以前あげたものではないが
きっと救護騎士団の誰かにより手作りされたのだろう、頭に小さなそれを被っていた。
慣れないこの場所に不安な様子もなく、キョロキョロとそのまん丸な瞳で周囲を見渡す。
そして、私の顔を見つけると、ヒナタの腕の中でぺちぺちと
床に降ろしてくれと頼んでいる
「え、降りたいのですか?…はい、あんまり遠くに行っちゃだめですよ」
地面に足をつくと、一目散にこちらに駆けてくる。
準備をしていたマリーとヒナタも「あらあら」とその足取りを追ってくる
「しゃくらこ!」
「スズランさん、お久しぶりです。」
目線をあわせた私にひし、と抱きつくスズランさん
私と合うと、あんなにも泣いていたのに、嫌われてはいないようで一安心だ。
「だっこ!だっこ!」
事前には、最近のスズランさんは歩くのがお好き、との話だったのだが
今日はだっこの気分なのだろうか、私に両手を伸ばしてだっこを求める
- 110二次元好きの匿名さん24/04/29(月) 20:10:01
「はい、だっこですね。」
抱き上げると、ゆっくりと追いついてきたマリーが苦笑い
「サクラコ様、だいぶ懐かれているように見えるのですが…」
「普段はお会いするたびに泣かれています…
今日はきっと、ご機嫌がよいのですね」
近づいて来たマリーに、スズランさん誰だろう、という顔をする。
お茶会の時に顔を見たことはあるはずだが、和やかとはいえさすがに発言することも、自発的に行動を起こすこともしにくい場だ。
「こんにちは、スズランさん。マリーと言います」
「まりー、…まり!」
「はい、マリーです」
こっくん、と頭を下げてマリーに挨拶するスズランさん
マリーもそれに応じて会釈を返すと、スズランさんはマリーへと笑顔を向けた
どうも、この人懐っこい笑顔というのが、私をダメにする。
「サクラコ様、頬緩みっぱなしですよ」
「あら、そうですか?」
自分の頬に手をあてて確認すると、そこに添えられたのはスズランさんの手。
「おー…」という顔で私の頬を撫でるが、これはどういう感情なのだろうか。
- 111二次元好きの匿名さん24/04/29(月) 20:12:30
その様子を伺うシスター達にも手を振るスズランさんに、周囲は色めく。
普段は敬虔な空気が重苦しいほどに沈むこの教会の空気が少しだけ軽くなる。
「ひなちゃー」
いつの間にか横にいたヒナタ、その背中には、何人かのシスターが隠れてこちらを伺う
きっとこの子たちも、学園のアイドルと化しているスズランをひと目見たいのだろう
「サクラコ様、今日は私とマリーさんは、スズランさんのお世話、ということでよいのですか?」
「はい、さすがに私一人では大変ですからね。
…みなさんも時間があるのなら、スズランさんと遊んであげてください。」
私がみんなにも、スズランさんと遊んであげて欲しい、とお願いしたはずが、教会の中の空気がぴたりと止まる。
手を止めて、こちらを見ていたシスター達が、慌てたように自分の仕事に戻ってゆく。
もしかして、時間という言葉で、自分の仕事を思い出させてしまっただろうか。
「さすがに埃っぽい教会にずっといるのも気が詰まるでしょうし
…そうですね、談話室にでも移動しましょうか。」
私がスズランさんを抱きかかえたまま談話室に体を向けるとシスターの一人が慌てたように声をかける
なにやら、掃除中の様子で汗をかいているが、そこまで真剣に掃除してくれるということなのだろう。
「サクラコ様、お散歩などいかがでしょうか?…その間に談話室の準備をしておきます」
「はい、ではそうしましょうか。よろしくお願いしますね。」
「はい…!」
- 112二次元好きの匿名さん24/04/29(月) 20:12:57
今日はあとで、もちっとだけ書くんじゃ
- 113二次元好きの匿名さん24/04/29(月) 21:54:43
- 114二次元好きの匿名さん24/04/30(火) 01:04:42
お散歩していると更にわさわさ人が集まりそうね
- 115二次元好きの匿名さん24/04/30(火) 01:12:51
お散歩でミカがいじめられてる場面に遭遇する可能性があるのでは
- 116二次元好きの匿名さん24/04/30(火) 01:51:37
教会を出ると、もう夏もまっさかりの陽気が私達を照らしうだるような熱気にすこしだけ気が滅入る
胸に抱いたスズランさんに目をやると「あ゛い゛~」と熱気に嫌気が指した顔。
内輪でも持って出ればよかったと後悔していると
横に連れ立つヒナタが、日傘を差してくれるとその熱気は一気に消えた
日差しを遮ったからといって、こうも涼しくなることはないだろうと驚いて目を向けると
ヒナタが「すごいですよねー」、と声を上げる
「ミネ団長から、日傘をお借りしてきました。
スズランさんは暑いのが苦手とのことで、ミレニアムサイエンス製の冷風日傘だそうです
しかも、防弾仕様だから安心、とも言っておられました」
「これは、我々も欲しいですね…
ミレニアムサイエンスにお願いをしてみないとなりません」
見た目の貞淑さと引き換えのこの黒く厚手の服では、夏を乗り切るのは大変だ。
しかし、この傘があれば、熱中症で倒れるシスターも減るのではなかろうか。
ミネ団長も過保護というかなんというか、暑いなどと目の前で言えば
「気合が足りません」とでも返されそうだと思っていたのだが
勝手なイメージというもので、勝手に作り上げられたものというのは厄介なものだ。
「フフ、ミネ団長への認識を、改めなければなりませんね。」
一人でくすくすと笑う私に、スズランさんが同調して笑う。
対して、周囲が笑っていない気がするのは、気のせいだろうか
周囲はと言えば、マリーの困り顔と、ヒナタの困惑顔
近くを歩いていたはずの生徒には少し距離を取られたような気がする。
- 117二次元好きの匿名さん24/04/30(火) 01:51:57
なんでだろう、と思考を巡らせていると隣でマリーさんが袖を引く
「ところで、サクラコ様、どこへ向かうのですか?」
「えっと…考えていませんでした…そうですね
図書室…にはさすがに絵本は置いていないでしょうし
古書館に絵本か童話でもないか探しに行ってみましょうか」
―――――――
静謐な空気、誰もいないこの空気の中、ペンを走らせる音だけが静かに響いている。
本を保護するために薄暗く完璧に保たれた室温に、一面の本棚。
司書机では、一人の少女が本と向かい合っていた
「ウイさん、……古関ウイさん」
本を見ながらカリカリと夢中で何かを書き写すウイさんに声をかけるが
本に夢中になっているようで、こちらに気付く様子もない。
仕方ない、と古関さんの肩に触れると、びくり、と飛び上がりながら奇声を上げた
「ひやぁ!?…え、…シスターフッドのみなさん!?なぜ!?」
単にこちらに気付いただけではなく、少し怯えたような目をこちらに向けるウイさん
心外ながら、この方にはシスターフッドに誤解を与えてしまっているようなのでこの驚きようも仕方がない
背中を丸め、警戒した猫のようにこちらを伺うウイさんに
なんとか事情を説明しようと胸に抱いたスズランさんを見せてみるが
どうにも察せないようで、こちらに説明を求める目を向けていた。
- 118二次元好きの匿名さん24/04/30(火) 01:52:18
「少し、古書館の力をお借りできないかな、と思いまして」
「今度は、今度は何をさせるつもりですか…?」
できるだけ穏当な言葉を選んだつもりではあるが、なかなか警戒を解いてはくれないウイさん
困り果てていると、隣からマリーが声を上げた
「この子の読み聞かせに、童話か絵本をお借りできれば嬉しいのですが」
「童話…?」
とようやくスズランさんの存在に気付いたようで
スズランさんの顔をじっと見ると、この人はだれだろう、という表情を浮かべる。
あまり表に出ない人であるのは知っているが、ここまで話題になった子を知らないとなると
よほどこの古書館に引きこもっていたのだろう、というのが察せられる
「あれ、その子は救護騎士団のスズランさんですか?」
パタパタと階段を下りてくる足音。
少し速足なその音の方向を向くと、シミコさんがたくさんの本を抱えて駆け寄ってきていた
「きゅっ…救護騎士団?」
「ですです。救護騎士団で保護して育てているって噂の!」
その名前にさらに警戒を増すように肩をすくませるウイさん。
確かに、あの救護騎士団のイメージのままであるならば、このリアクションも頷けるが
きっとこの人の救護騎士団に対する印象は、3カ月前からアップデートをされていないのだろう。
今ではちょっと過保護なお母さんたちになっていると知っていれば、少しは印象も変わるだろう
- 119二次元好きの匿名さん24/04/30(火) 01:53:03
「そんな子をなんでシスターフッドがお連れなんですか…?まさか…」
「はい。救護騎士団の方々はお忙しいようなので、お預かりしているんですよ」
スズランさんを抱きなおし、ウイさんへと顔を向けると
手と翼をいっしょにぱたぱた、にっこりと笑って見せる。
さすがに子供にまでは警戒は向かないようで「ども」と会釈をするウイさん
少し警戒が解かれた不器用な笑顔の横に、シミコさんが本を置いて並ぶ。
「こんにちはスズランさん。わたしはシミコって言います」
「しゃみこ!」
「しみこです、しーみーこ」
シミコさんに手を伸ばすスズランさんに従って近づけると
スズランさんの手を取って握手をするシミコさん。
ぶんぶんと小さく上下に振られれた腕と連動して、スズランさんの亜麻色の大きな翼が上下する。
ちょうど悪くも、そこにいたのはウイさん。
ばさばさと上下する翼にぺしんぺしんと頭を叩かれる。
「わわ…あの。分かりました、分かりましたからぁ…」
「あ、委員長ごめんなさい。でもちゃんとご挨拶しないとダメですよ。
小さい子は、大人の真似をして成長するんですよ!」
ぐぬぬ、と気おされるウイさん。きっと自己紹介を考えているのであろうその顔は
「あの…えっと…」と次の言葉を探して、繋ぐ言葉をつぶやく。
その様子を次は何が起きるんだろう、とじっと見つめるスズランさんに、ウイさんは気おされているようだ
- 120二次元好きの匿名さん24/04/30(火) 01:53:18
「ええと…ご挨拶と言われても…困るというか…」
「あい!」
「あいではなく、ウイです…古関ウイ…これは…?」
羽根を差し出すスズランさんに、困惑顔のウイさん。
受け取っていいものか、と手を差し出したりひっこめたり
シミコさんと私の顔を伺いながら、どうしたらいいのかしどろもどろの様子を見せる
「この子は、親愛の表現に、よく羽根をくださるんですよ。ほら、この通り」
私は目線でウィンプルを指す。そこには、以前にスズランさんがくれた羽を差しているはずだ。
その様子を見て、改めて差し出された羽根をおずおずと受け取ったウイさん。
「ありがとう…ございます。」
「うーい!」
「へへ…はい。古関ウイです…よろしくお願いします…」
まだ警戒をしていたウイさんの表情がだいぶ柔らかに変わる。
この子は天性のコミュニケーションの達人なのだろうか。
私でもなかなか仲良くなるのが難しいウイさんをこうも簡単に篭絡してしまうとは。
手を伸ばしても届かないウイさんの頭に翼を伸ばし
軽くその翼で撫でるように触れられたウイさんは、少しくすぐったそうに笑った
- 121二次元好きの匿名さん24/04/30(火) 02:06:35
ハナコは、攻撃してるときより攻撃されてる時が活きると思った
もしそうじゃなかったとしても、俺がそうしてみせるんだ
そしてハナコは、もう一つは書きたいんだよね。前回石化してたから…
泣かれる対策に、恥も外聞もなくおしゃぶり咥えてはいはい目線にさせたい
そして、また、泣かせたいんだ…
補習授業部にはこのスレ中、少なくとももう一回は出てもらおうかな、と思ってる
>>103,>>113 ペシ先、なんか大暴走してない?新しい怪異かなにかになろうとしてる…?
>>107,保守たすかるう。確か残り落ちるまで1時間とかで出先で書き込めるWiFiないか探して慌ててた時だった気がする
>>114,お散歩してるのがシスターフッドだからね…集まり、にくいかもね…と…
でも、シスフが囲まれて、サクラコ様への誤解が少し解けるのも書きたいな…
>>115,ごめん。ミカはこの後(シスフと古書館の一連)の後にちょっくらティーパーティー編で出そうかなと思ってる
たぶん、このパート2中には一回会ってもらうと思う
そしてご存知ミカな扱いを受けてもらおうかなーと
そしてここで、ちょっとこの先のお話
なんか、調べてみるとお菓子って案外大きくならないと食べられないみたいで
スイーツ部を出すのはもうちょっと先になるかもしれん…
パート1:乳児期、パート2:幼児前期、パート3いけたら幼児中期
くらいの発育状況で、結末に向けていこうかなーって
まあそこまでスレが続けばの話だけどね!!!
相変わらずお昼は書き込めないからね!!!
- 122二次元好きの匿名さん24/04/30(火) 07:02:47
早いけど保守
とても微笑ましい… - 123二次元好きの匿名さん24/04/30(火) 11:09:41
ハナコは絞るほど味が出る
- 124二次元好きの匿名さん24/04/30(火) 12:27:50
トリカスが赤ん坊に手出しをするほどではないと願って
- 125二次元好きの匿名さん24/04/30(火) 21:27:20
遺言『保守ペシ』
- 126二次元好きの匿名さん24/04/30(火) 21:28:41
ほんのわずかな間、ウイさんはおとなしく撫でられていた。
しかし、周囲からの視線に気づくと、顔を隠すように俯きながら席を立つ。
「えっと…童話でしたかね。
たしか、童話集と古い絵本ならいくつか奥の書架にあったと思います
取ってきますので、少しお待ちください…」
「もう、委員長ったら照れちゃって。」
ぱたぱたとスリッパを鳴らして、奥の書庫へと歩き去ってゆく。
それを眺めてシミコさんがくすくすと笑う。
そして少し遅れ、私達に振り向きながら、ウイさんの背中を追った。
「あれでも、喜んでいるんですよ。
お手伝いしてくるので、少しお待ちいただけますか?」
と、奥の書庫に隠れて数分後
2人の両手いっぱい、たくさんの本を抱えて出て来たウイさんとシミコさん。
古い本から、比較的新しい本まで、いくつも積み重ねて
ウイさんはよろよろと、シミコさんはてきぱきと運んで戻ってきた。
その本たちが司書机に広げられると昔見たことのある表紙がちらほらと。
伝統的に語り継がれている童話
昔好きだったはずの、タイトルも忘れてしまった絵本。
見たこともない、かわいらしくも美しい不思議な表紙の本。
「お好きに見てください。
…持ち出すことはできませんが、どうせ人もいませんし
まあ…少しくらいなら、読み聞かせとか、して頂いて大丈夫です…」
- 127二次元好きの匿名さん24/04/30(火) 21:28:52
フイ、と視線を外した先には、ふかふかとしたカーペットの敷かれたひと区画。
アンティークではない肉厚のソファに、新しい照明は燭台ではなく電灯。
ちょこんとしたテーブルの木の色にもニスは厚く、まだ新しい。
古書館の雰囲気とは少し違うその一角は、きっとウイさんたちが寛ぐスペースなのだろう。
不器用なご案内に誘われ、ヒナタにいくつかの絵本を持ってもらってその一角へと向かった
「シスターマリー、読み聞かせをお願いできますか?
シスターヒナタ、本を捲って頂けますか?」
「「はい」」
靴を脱いでカーペットの上に上がると、もこもことしたその感触が靴下の上から私の足の裏を撫でた。
膝の上にスズランさんを乗せて、二人の方に向き直らせ
お話を聞く姿勢をつくると、察したのか少しだけきりっとした顔になる。
ヒナタとマリーは、どれにしようか、と顔を合わせて相談する
その中から懐かしい絵本を一冊取り出し、その1ページ目が捲られる
「では、…こほん。
『かみさま、わたしにつばさをください。おんなのこはかみさまにお願いをしました』」
読み聞かせが始まると、そこには絵本を食い入るように見つめ
真剣そのもので話を聞くスズランさんがいた
マリーの穏やかな声にあわせて、ヒナタがページをめくる。
それを遠くから、ウイさんとシミコさんが眺めていた。
- 128二次元好きの匿名さん24/04/30(火) 21:29:13
―――――
「あの…、マリー、ヒナタ…少し休憩にしませんか…?」
何冊かの絵本を読み終えた後、二人に休憩を提案すると
二人はハテナを頭の上に浮かべて私へと視線を向ける。
スズランさんも同じように私を振り返るが、少しだけ不満顔。
そして「もっと、もっと読んで」と、私の足をぺちぺちと優しく叩く。
しかし、それが今の私には一番効く。
「ちょっと、スズランさんさん今それは…」
足に電流が流れるような感覚。しびび、と足の芯が振動するかのような感覚に私は姿勢を正してはいられない、
しかし、シスターフッドのトップとしての矜持、2人の前で崩すわけにはいかない。
そう思っていたのは、スズランさんのその翼が、私の足先を撫でるまでのとても短い間だった
「――んっ!?」
「サクラコ様?あの…もしかして…足痺れちゃいました…?」
マリーが私に近づいてスズランさんを抱き上げ一気に足に血流が戻ると
それはさらに私の足の感覚を鋭敏にするように、痺れと振動が襲い掛かった。
「あー…、やー!」
マリーに脇を抱きかかえられたスズランさんは、私へと手を伸ばす。
私の「少々お待ちください…」という言葉を理解するにはまだ難しいようで
その目には涙、わたわたと伸ばされる手とバタバタと振り回される足。
スズランさんの小さな足に、弱く私の足をけり上げられ、私はカーペットへと突っ伏した。
- 129二次元好きの匿名さん24/04/30(火) 21:30:11
「なにをやっているんですか…」
カーペットへとへたり込む私を見下ろしながら、両手でお盆をもったウイさんがそこに立っている
そのおぼんの上には茶器が一式。嗅ぎなれた紅茶の匂いが、古紙の匂いに交じって鼻をくすぐる。
その後ろを追いかけるように、クッキーの缶をもったシミコさんが控えていた。
「そろそろ休憩かな、と思っていた…んですけど、それどころではないようですね…」
私の方を向いて、ジタバタとするスズランさんがぐずり、困り果てるマリーとヒナタ
そしてシスターフッドの顔たる私が突っ伏しているという、きっとここ以外では見せることがないような事態に、シミコさんも困惑していた。
小さなテーブルにお盆を置くと、ウイさんがスズランさんに向き合って説明をする
「これは、足が痺れているんです。…少しまってあげてください」
その説明が届いたのか届かなかったのか、マリーの手の中で暴れるのをやめる。
そっと地面に降ろされたスズランさんが1歩2歩、私に近寄ると頭を撫でる。
そして、自分のポーチから絆創膏を一枚取り出すと
シミコさんに差しだして、なにやら不思議なジェスチャーで伝える
「え、これを剥がせばいいんですか?…はい。」
絆創膏を受け取ったスズランさんが私に向き直る
キリッとした顔は、ミネ団長があの言葉を掲げるときの表情によく似ていた。
ああ、親子とは血ではないのだな、と考えていると
「きゅーご!」
その掛け声とともに、私の足に勢いよく絆創膏が貼りつけられた。
- 130二次元好きの匿名さん24/04/30(火) 21:41:38
サクラコ様…お労しや……
- 131二次元好きの匿名さん24/04/30(火) 21:43:12
――――
そうして、古書館をひと騒がせしたあと、連絡を受けて教会へと戻ることとなった。
読み聞かせをしている間に、ウイさんとシミコさんが絵本の写本を作ってくれていたようで
帰る頃には、真新しい本が一冊、マリーの腕の中スズランさんの胸に抱かれている。
トリニティでは伝統的な絵本、その原本の写本という、豪華なお土産を受け取ったスズランさん。
その価値を知ってか知らずか、目をキラキラとさせてシミコさんにも羽根を渡していた
「まあ、…絵本が読みたいなら…また来てください…
どうせここには、私とシミコしかいませんし、今度は…いえ」
「委員長は、スズランちゃんにまた来て欲しいんですって。」
「…そんなことは…まぁ、来るなら歓迎はするってだけ…」
「だ、そうですよ。素直じゃないですよね。私はスズランちゃんにまた来て欲しいです。
今度来る時までに、おすすめの絵本をさがしておきますね、お母さんたちと一緒にも来てくださいね。」
スズランさんに手を振る二人、私が改めてお礼を言おう
今度なにか、お礼の品でも持ってこようか、などと考えながら言葉を選んでいると
「…シスターフッドの皆さんも、たまにはこの子達を読みに来てください
本は…読まれるためにあるので……たまには誰かが呼んでくださると……
中にはシスターフッドの使う経典の原本などもあるので、こう…なにか得るものがあるかも…」
「ふふ、ありがとうございます。今度は茶葉をお持ちしますので、ご一緒にお茶でもいたしましょう」
小さな声で、少し早口のウイさんに言葉を返すと、その顔を見せないように振り返るウイさん
それを追いかけるように踵を返したシミコさんに大きく手を振られ
見送られながら、私たちのはじめての育児代行は、ひと区切りとなった
- 132二次元好きの匿名さん24/04/30(火) 21:54:59
>>122,俺、売ってる時の感情で鍵打変わるタイプの人なんだけど、シスフと古書館組だと
鍵打がズダダダダダ、ズダァン(救護騎士団)、からカンタタタタ、カン(シスフ古書館組)
になるから、空気感変わってなんかいいなーと、俺も割と省エネで書ける…という事に気付いたよ。
>>123,俺の頭に「牧場しーぼーりー」って流れた。もっと絞らなきゃ…
>>124,ごめん…たいへん…ごめん…。
>>125,あ、除霊しちゃった…成仏したら守護霊になってくれ、たのむ…
>>130,サクラコ様はおいたわしい=おいたわしくなければサクラコ様ではない=サクラコ様はおいたわしくするべき。Q.E.D.
ってなところで古書館シスフ編でした。
ヒナタマリーももうちょっと書きたいので、このままシスフ編に続けるか
お茶会(ミカ)編に繋げるかは少し悩んでる。
そしてちょっと、補習授業部のペロロ様鑑賞会編(ハナコリベンジマッチ)も書きたい…
書きたいものが大渋滞している割に、中身が定まりきってないので、どうするかちょっと悩んでるところ
どれから書きたい、も特にないので何か要望あれば、ってとこかなーって
- 133二次元好きの匿名さん24/05/01(水) 01:07:45
もう少しシスフも見たいしハナコリベンジは盛り上がるだろうな
やはり腕と翼が連動するのは天使だ - 134二次元好きの匿名さん24/05/01(水) 03:54:21
子育て日記:82日目 伊落マリー
困りました。子育ての経験値というのがあまりにも足りていません。
何度かお会いした時は、素直であまり泣かない大人しい子、という印象だったのですが
サクラコ様が用事で離れなければならない、となったとたんに泣き出してしまいました。
孤児院のお手伝いなどで、子供の相手は少し慣れているつもりでしたが、保母さんたちの苦労が偲ばれます。
――――――――――――――――――――――――――
「びぃえあああああああああああああ!!!」
談話室に、スズランちゃんの泣き声が響き渡る。
抱きかかえていたサクラコ様が用事で席を外すことになり、私が預かろうとした瞬間だった。
サクラコ様がいなくなることを察してか、バケツをひっくり返したような大泣き。
サクラコ様は「私は怖がられている。もしかしたら嫌われているのかもしれない」と言っていたが
これはどう考えてもその真逆。離れたくなくて仕方がないのだろう。
サクラコ様の服をしっかと掴んで、私の腕とサクラコ様の服の間で架け橋となっている
「スズランさん…すみません…スズランさん…」
予定の時間よりも早めに行動をするサクラコ様も、どうしたものかと時計を気にする余裕さえもない。
苦悶の表情で、スズランさんを撫でたり揉んだり、なんとか離れてもらおうとするが、上手くいかない。
「サクラコ様…あの…」
「私だって…私だって泣かせたくて泣かせているわけでは…」
「いえそうではなく。時間が…」
「っ…仕方ありません…」
- 135二次元好きの匿名さん24/05/01(水) 03:54:55
私の腕からスズランさんを抱き上げて高い高いと上に上げる。
反射的に泣き止んで、ばさりと大きく羽を広げたスズランちゃん。
何度かクルクルと回って止まり、時々口にする、誰も意味を聞けずにいる謎の言葉を言う。
「はーい、わっぴー!」
「わぴー!」
きゃっきゃと笑い始めたスズランさんを、固まっていた私の腕にダンクシュート
素早く私たちのもとを離れ「では、お願いしますね」と談話室の扉を後にした。
いつもの優雅な振舞いからはあまりに想像できなかったその素早さは
談話室でスズランちゃんを囲んでいたシスター達の口伝から、後世に語り継がれていく、というのは別のお話。
状況を呑み込めていない様子のスズランちゃんを抱きなおしてこちらに向かせる
何か、何かで気をひかなければ、と私は画策する。
「シスターヒナタ、私のウィンプルを外してください!」
「え、あ、はい!」
髪留めが少し髪に引っかかりながらも、持ち上げられたウィンプル。
そこから露わになった耳でできるだけ気を引こうと、耳に力を入れてぴこぴこと動かす。
きっと今、私の表情はこわばってしまっている事だろう。
気持ちが昂って勝手に動いてしまう事はあれど、自分の意思で動かそうとすることなんて、滅多にないのだから。
「おみみ!」
「はい、お耳ですよ~、ネコさんとおなじお耳ですよ~」
- 136二次元好きの匿名さん24/05/01(水) 03:55:50
頑張れ、私。となんとかスズランさんの気をひかねば。
サクラコ様にお願いをされてしまったのだから、なんとか完遂しなければ。
と、動け動けと念じる耳に、すぽん、と何かが突っ込まれる。
「ひゃあ!スズランさん!まって、くすぐったいです!」
「ふわふわ!きゃーいねー」
力が込められているわけではないものの、リンクスティップをふわふわと触られるのは奇妙な感覚だ。
それというのも、普段は触られる場所ではないわけで、人に耳かきをしてもらうようなこそばゆさ。
その感覚にゾクゾクとする背筋を押さえながらも、これで気を引けるなら、と耐え忍ぶ。
「んっ…あぁっ…」
「サクラコさん?」
「ちょっと…待って、ください…ヒナタさん、今…あっ、話しかけないでぇ…」
どのくらい耐えたのだろうか、スズランちゃんもようやく興味が薄れたようで
最後に私の頭を何度か撫でると満足げな表情。
へにゃりとソファに座り込んで、少しスズランちゃんを抱く位置を下げる。
すると、髪の毛が少しだけ引っ張られる感覚。
なんだろう、と振り返るとそこには顔を赤くしたヒナタさんがウィンプルを持ちあげたまま止まっており
その背後にいるシスターたちも、同じように頬を紅くしていた。
「え、あの…その…すみません…降ろしてもらえますか…」
そっと降ろされるウィンプル。
私はスズランちゃんを抱いた腕を片方離して、ベールで顔を覆い隠した。
- 137二次元好きの匿名さん24/05/01(水) 03:57:05
- 138二次元好きの匿名さん24/05/01(水) 09:06:12
乙!うむ…素晴らしいわマリーは慣れていない感ある
- 139二次元好きの匿名さん24/05/01(水) 16:45:23
サクラコ様、何やかんや子供の扱いとパスの仕方が上手くて笑ってしまった。実際こんな感じにパスしないと離せないよね…(尚受け取った側のその後)
- 140二次元好きの匿名さん24/05/01(水) 22:26:24
保守
これから数日、マリーの耳は触っていいものなんだと認識して、グズるスズランちゃんの姿がみえるみえる…… - 141二次元好きの匿名さん24/05/01(水) 22:33:03
掴まれるだけだったセイアとどこで差がついたのか
- 142二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 00:18:40
ぺちぺち、私の肩を叩くスズランさん。これは慰めてくれているのだろうか。
顔の火照りを少し冷ましてベールを解くと、そこにはなぜか笑顔のスズランさん。
そこにヒナタさんが櫛を持って私の顔を覗き込む。
「あの、シスターマリー、落ち着きましたか?
髪が乱れてしまっているので、お直ししますね。」
「ありがとうございます。」
ソファの後ろに回りこむヒナタさん。一度ウィンプルの髪留めを取って背もたれに置く。
耳の形が残ったそれを、スズランちゃんは興味深そうに、優しくつついていた。
ヒナタさんの手により優しく髪に櫛が入れられる。
髪の間に差し込まれては、すっと流れていく櫛の感覚が少し心地よい。
胸が温かくなるその感覚に身を任せていると、私の横髪に櫛とは違う優しい感触
「あら、スズランちゃんもしてくれるのですか?」
「あい。」
真剣な顔で手櫛を通すスズランちゃん。
きっと、そろそろ肩に届くほどに伸び揃え始めたその髪は
毎朝ミネ団長やハナエさん、セリナさんに整えてもらっているのだろう
髪はお手製の子供用ウィンプルに隠れてはいるが美しい亜麻色に照らされて輝いている。
「はい、終わりましたよ」
ヒナタさんがぽんぽん、と私の頭を撫でてウィンプルをかぶせる。
ぱちん、と子気味のよい音を立てて髪留めが止められて、いつもの感覚が頭に戻る。
- 143二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 00:18:59
「ありがとうございます。シスターヒナタ。
すみませんが、少し櫛をお借りしてもよいですか?」
「はい、どうぞ。」
よく手入れされた木製の櫛を受け取って、スズランちゃんのウィンプルを取ると、スズランちゃんの髪に通す。
櫛を通される感覚にくすぐったそうにするスズランちゃんがこちらを見てほほ笑んだ。
並んで見ている私達へと交互に目を向けるその姿に周囲で見ているシスターたちが口々に「かわいい」とささやく。
その言葉を聞いてか、表情が照れたように変わるも、心地良さそうに私に身を委ねる
ひとしきり髪を撫で終えると、スズランちゃんがこちらを見る。
「はい、終わりです。どうなさいましたか?」
「あがとー!」
お礼を言うと、私の膝の上から飛び降り、べたん!と床に突っ伏した。。
泣き出すのではないかと心配したが、むくりと起き上がると翼をバッと翼を広げる。
「おんも!おーんも!」
「お散歩ですか?一人で遠くに行っちゃだめですからね」
「あい!」
元気な返事ではあるものの、救護騎士団の皆さんがスズランちゃんを探し回っているのはよく知っている。
伝え聞いたところによると。消えるように突如としていなくなるのだそうだ。
「手を繋いでいても消える」とのことではあるものの、お預かりして行方不明とあれば面目が立たない。
- 144二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 00:19:12
さすがに、シスターヒナタと私の2人では荷が重いかもしれないな、と思案していると一人のシスターが口を開く
「あの、私もご一緒してよいでしょうか?今日のお仕事は、もう終わらせていますので」
それを皮切りにして、何人ものシスターが「私も」と口々と。
最終的に、談話室にいたほとんどのシスターが手を挙げていた。
さすがにこれだけの人数であれば、見失う事もないだろう
「…皆さん、ご協力をお願いし致します。
救護騎士団の愛し子です。何があるか分かりませんので、一応武装をお願いします」
――――――――
中庭の廊下を歩く私達。
両手を大きく振って歩くスズランちゃんを先頭にして私とヒナタが続きシスター達が付き従う。
教会を出るころには「私も」と言うシスター達によりちょっとした一団になっていた。
(やってしまった…)
そう気づいたのは、生徒達が私達を見て道を開ける姿を見てからだ。
行進するスズランちゃんはニコニコとご満悦で行進。
生徒達は道を開けながらひそひそと噂話をしている。
かといって貞淑を尊ぶシスターフッドがガヤガヤにぎやかな行進をするわけにもいかず
粛々とついて歩く姿は、どこかに進攻するかの如く見えているのかもしれない。
(サクラコ様になんと申し開きをしようか)
きっと私達が考えていることは一つだった。
ちらりと後ろを確認すると、みんな少し目を伏せて同じことを考えているようだった。
- 145二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 00:19:25
そんなスズランちゃんの大冒険、わたしたちのお通夜みたいな行進の前に現れたのは2人の黒い制服
糸目の長身と、小柄に大型のライフルを抱えた二人組。
イチカさんとマシロさんだ。
「シスターさんたちが隊列組んでどうしたっすか?
……おや、スーちゃんじゃないっすか。」
「いちか!」
しゃがみこんでスズランちゃんを撫でるイチカさん。
その後ろから、マシロさんが尋ねた。
「で、なんでこんな大行進に?」
正直にこれまでの経緯を説明すると、ほんの少しの間の後に廊下に笑い声が響く。
「あははは!それでこの大行進っすか!?あはは、ひひ…
シスターフッドともあろう方々が、子供一人になにやってんすか!
はは、おかし…ふふ……あ、いやすみませんっす…」
「私達も笑えないですよ。ピクニックが校内新聞に載ったんですから。」
そういえば、少し前に楽しそうにピクニックにする正義実行委員会が校内新聞に載ったことがあった。
しかも一面記事、芝生にマットとランチバスケットを広げる正義実行委員会
あの堅苦しい風紀機関がそんなことをするなんて、と話題になったのは記憶に新しい。
「そうっすね…しかもあの後から、恒例行事にしようって動きが…
なんだかんだ、みんな楽しんでいたらしいんすよね…」
- 146二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 00:19:41
「それはなんだか楽しそうですね!
水筒に紅茶を入れて、サンドイッチを持って、みんなでお外で賛美歌を歌うんです」
私の後ろからシスターヒナタが声を上げる。
両手を胸の前で組んで、夢を見るように目を瞑る。
「サンドイッチの具はなににしましょうか」と、既に決まったイベントのように計画を立てる
後ろのシスター達も「クッキーを焼きましょう」「私はスコーンを焼こうかしら」と口々に。
ついにおさまりがつかないこの賑やかな空気。
スズランちゃんはそれをどこか満足げな顔で見守りながら歩き出す。ついてきてる?と言わんばかりにゆっくりと。
先ほどまでの空気を嘘みたいに、シスターの友達が合流しだんだんと大きくなる行進。
話題はそれぞれ、スイーツにお化粧品、今日の食堂のメニュー。
バラバラの話題と足音がにぎやかに廊下に響き、その中には楽し気に賛美歌を歌う声も混じる
ゆくあてのない行進は続く。少しだけ後ろを振り返ると生徒の半分は参加しているのではないか、と思うほどの大集団
白い制服、黒い制服、シスター服、それぞれの制服が入り混じって歩いていた。
その一団に、ドタバタと足音を立てて近寄る人影。
「しゃくらこ!」
「シスターマリー、シスターフッドが侵攻を始めたと聞き及びまし……え?」
頬に伝う汗もそのままに唖然とするサクラコ様。
それもそうだろうきっと逆の立場だったらこの顔になっている。
「あの。えっと、サクラコ様もご一緒にお散歩いかがですか?」
生徒の大きな流れへと、ヒナタさんがサクラコ様を誘う。
そのにぎやかな大行進はゆっくりと、日が暮れるまで続いた。
- 147二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 00:35:04
>>138,ちょっとだけ、マリー孤児院育ち概念もあると思うんだ
トリニティの数少ないケモ耳属だし、そういうバックグラウンドがあるのかな、と…
>>139,サクラコ様、シスフのトップだからね、孤児院のお手伝いもやってるかなって。
そして、追い詰められたサクラコ様はこういうことする。俺はそう思ったんだ。
>>140,保守たすかる。もうちょっとは早めにマリーと絡ませておけば良かったと思ってる。
分別着くようになってきちゃったら、こうもいかないのかなーって
>>141,セイアちゃんの耳は放してもらえないくらいのお気に入りだからね。
すまねえ、遅くなってしまった…旅館にwifiがなかったんだ…
ネカフェ探して走り回ったよ…
とりあえず、シスフ編はこれで終わりかなって。
200もそろそろ見えて来たので
次回はティーパーティー編、ミカとの邂逅
ハナコリベンジ編まで書いたら
あとは幼児前期のオチに向かおうかなーって思ってる
スレ終わりに合わせて、小さいお話を少し差し込むかもしれない。
ちょっと暗いというか、陰湿なお話になるかもしれんが、すまない。
でも必ずハッピーエンドにはするから…
- 148二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 07:12:25
シスターフッドの大行進に草しかない
何やってんだよミカ!!(先行入力) - 149二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 07:26:42
今まで見てきたブルアカ赤ちゃんssは母親と娘に血縁関係があったけど、このスレのスズランちゃんは、血縁関係がわからない。だからこそ救護騎士団の娘であり、トリニティ生(アリウス分校も含む)全員の娘でもあるって感じる。将来名字ができるならトリニティに関係する名字になったりしないかな?
- 150二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 08:02:40
- 151二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 17:20:46
マリー孤児院概念わかるわ
- 152二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 17:45:39
スズランが1人で探検してる時にミカのいろいろに遭遇したら大変そう
- 153二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 18:12:28
何となくだけどミカ側からは歩み寄ろうとしなくて、スズランちゃん側からグイグイ行っても「私みたいな人に、余り関わっちゃ駄目だよ?」と嗜めてそう
- 154二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 22:26:10
シ ス タ ー フ ッ ド ミ ニ ミ ニ 大 行 進
- 155二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 22:29:19
子育て日記:84日目 鷲見セリナ
テロ以降、相変わらずトリニティ学区の主要な病院はどこも忙しいようで人手不足です。
そんな中ですが、今日はセイア様の定期健診の日でした。
普段は複数人で伺うのですが、みんなは病院のお手伝いのため
今日は私とスズランちゃんでセイア様のところに伺いました
――――――――――――――――
ここは生徒会室。普段であれば自室で受けて頂くのだが、ここにいたのだから仕方がない。
「はい、これで全て終わりです。
次は来月ですが、自室にいてくださいね。探すのが大変だったんですから」
「…君が私達を見つけるのが大変、と言ってもにわかに信じがたいのだけどね。」
「本当に、どこから入ってこられたのですか…?
入口は生徒会の生徒が立っておりますし、ここは最上階ですよ?」
「普通に入ってきたつもりだったのですが…」
採血をされた箇所をさすりながら、セイア様は少し不満顔。
採血は苦手なようで、毎回注射針を刺される前に少し抵抗をするのだが
今日はスズランの前だからか、それとも椅子の上に立ったスズランに耳を掴まれているからか
少しキリッとした顔を保ったままおとなしく採血させてくれた。
血を見て少し気持ち悪そうにしているナギサ様にお水を差し出す生徒会の生徒。
それと別の生徒が一人、グラスにミントの添えられたアイスティーを持ってきてくれる・
「まあ、ゆっくりとしていくといい。
私達も、スズランと一緒にいられるのは楽しいからね。」
- 156二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 22:29:50
セイア様がナギサ様に目を向けると、少し恥ずかしそうにしながらも目線を外すナギサ様。
相変わらず、スズランはセイア様の耳にご執心のようだし
小狐でもあやすかのように笑うセイア様が幸せそうなので、少しだけお邪魔させてもらおう。
「今日はお茶会の予定がなかったので、ありあわせのクッキーですが
よろしければ、ゆっくりとされていってください」
と、静かにも楽しいお茶会が始まるのだ、と席につくと
ドアがバタンと、大きな音を立てて開かれる。
「ナッギちゃーん、セイアちゃーん、あーそぼー」
「ミカ様、今はセイア様の健康診断中でして…」
扉守をする生徒の制止も聞かず、つかつかと生徒会室へと入って来たのはミカ様
あの一件以降、ティーパーティーとしての活動には参席していない、と聞くが
この様子では、こうやって普段から遊びに来てはいるのだろう。
「お?ミネ団長のところの…えっとー?」
「鷲見セリナです。」
「セリナちゃんね、よろしくー
…ってセイアちゃん、何その子?誰の子?どこの子?」
セイア様の椅子の後ろに立って、耳を弄々とするスズランを見て尋ねる。
そういえば、まだ直接お会いしたことはなかっただろうか。
「誰だろう?」という顔のスズランへと近寄るミカ様。
- 157二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 22:30:05
「はぁ…ミカさん、相手が子供とはいえ、失礼にも程がありますよ。」
血を見て貧血になったかと思えば、今度は頭を抱えているナギサ様
このように相手に対して感情を見せる、ということは
やはり、ティーパーティーのメンバーだけあって親しい間柄なのだろう。
「救護騎士団のスズランさんです。以前お話をしたでしょう。」
「あー、地下墓地で見つかったっていう孤児ね。思い出した思い出した。
こんにちはースズランちゃん、ミカだよ~」
ミカ様がスズランの顔を覗き込む。
普段なら、自己紹介をされたら元気よく「みか!」とでも返しそうなものだが
そのリアクションはいつまで待っても返ってこない。
ぽかんとした表情、この人は誰だろう、と考えているかのような顔で
じっとミカ様の顔を見ているだけのスズラン
「まだ言葉を覚えられない歳かー。ま、仕方ないよねー」
と、踵を返そうとするミカ様の後ろでスズランは呟く
「せいあ、せいぁ…」
一生懸命にセイア様の小さな背中に隠れようと、背中と背もたれの間に挟まりこむ
そして、セイア様の髪の毛を掻き分けて、その中へとすっぽりと身を隠した。
「あら?もうセイアちゃんの名前は憶えてる感じ?じゃあ人見知りだ!」
- 158二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 22:30:16
一瞬、失いかけた興味をもう一度スズランへと向けるミカ様
「こわくないよ~」と、セイア様の髪から頭だけを出したスズランの頬を包もうと両手を伸ばす
しかし、こうなったスズランは手強い、ということは以前にもあった話
「や!」
べちこん、とミカ様の手を払いのけるスズランに、ミカ様のフォローをしなければと椅子を立つ。
しかし、そこでへこたれなかったのがミカ様のいいところなのか、悪いところなのか。
セイア様の髪の毛の中から、スズランを抱きかかえくるりと一周まわって見せる。
「いい子いい子、ほら高い高い~」
ぽーん、と軽く空へと放り投げられるスズラン。
しかしそこはミネ団長の得意とする敵上直下攻撃の場所、ミネ団長と共に何度も経験した二人の領域。
キャッチをしようと腕を構えるミカ様の頭上、その身に対して大きすぎる程の翼をはためかせ体制を変えた。
そして器用にも、翼で落下位置を制御しながら滑空して、ミカ様の顔面に蹴りを入れた。
本当に不幸中の幸い、砂中の宝石くらいの微々たる幸運は、椅子の上に上るために靴下だったことだけ。
「ふべっ…」
蹴り上げた足で、そのまま着地までをしっかりと決めて、ミネ団長と同じ着地のポーズ。
子供というのは本当によく見て学ぶものだと感心しながらも、同時に私の肝は冷え切っていた。
とてとてと、私の方へと駆け込んだかと思ったが、そのまま素通り。
ナギサ様の後ろへと回り込んだかと思うと、そこから不満げな顔を覗かせる。
もう私はどうしたらいいのやら、固まっている事しかできなかった。
- 159二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 22:30:55
鼻頭を押さえながらよろよろと立ち眩むミカ様
普通なら膝を折って倒れ込むようなダメージな気がするが、なんでこの人は立っているのだろう
呆然としながらも、鼻血は出ていないかな、と頭だけが懸念する。
「いったーい…なにこの子…」
「これは、ミカが悪いね。」
「ええ、自業自得です。嫌がっている子供を抱き上げて
あまつさえ空に放るなどと…ミネ団長がいなかった事に感謝した方がよいくらいですよ」
自分の足に隠れるスズランを足に庇いながら立ち上がるナギサ様。
セイア様は、ポケットからハンカチを出しながらミカ様へと近寄る
「え…私が悪いの…?、蹴られたのに…?」
子供のような泣き出しそうな顔。
既に目には涙が浮かんでいそうだが、蹴られたダメージというよりも、精神的なものだろうか
「ほら、スズランにごめんなさいをするんだ。」
「え、私が謝るかんじ?蹴られたのに…?ちょっと不本意なんだけど…」
わたわたとする生徒会の生徒達、どうしようかと慌てる周囲
この場で平静を保っていそうなのは、ナギサ様とセイア様くらいなものだ。
そして不思議と、周囲が慌てていると、自分は冷静になるものだ。
やっと我に返った私は、スズランへと向きなおす。
「スズランちゃん、蹴っちゃだめ!ちゃんとごめんなさいして!」
- 160二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 22:31:07
私に怒られたことにびっくりした顔のスズラン。
泣きながらとてとてよろよろ、私のもとへと両手を出して歩いて来る。
「ごべんじゃーーーい…ごべんじゃーい!」
それを抱きとめると、ぎゅうと私の服を握って、ぐりぐりと頭をこすりつけた。
なんだか少し心が痛むが、暴力に訴えるのは悪い事だ、ということは知ってもらわなければならない。
「私に謝るんじゃなく、ミカ様…ミカおねえちゃんに謝りましょう。」
「みかね、ごべんじゃい…」
私のことを握ったまま、顔をミカ様に向けて頭を下げる。
そちらには、やれやれ、という顔のセイア様と、泣き顔のミカ様
そんなミカ様にセイア様は「子供が謝ったのに、君は謝れないのかい?」と親のように諭す
「ごめんね…急に私がだっこしちゃったからびっくりしたよね…
…えっと、そうだ…、ナギちゃんから、羽根が好きだって…聞いた…」
ミカ様が泣きべそ顔のまま、自分の立派な風切り羽を一枚抜く。
その手に握られたのは、風切り羽根と、星を模した羽根飾り。
普通、子供へのおまじないに渡すのは正羽、小さな羽根のはずだが、まあ羽根をあげるのには変わりないかもしれない
羽根を一枚手に持って、膝立ちでゆっくりと近づく。
この子は、苦手な人より羽根が好きなのか、それとも心が広いのか、私を離さないようしっかり握りながらも、片手で羽を受け取る
「そうだね…私なんかが構っちゃうと、よくないかもね。」
と、離れようとするミカ様に、スズランがその白く大きな羽根を持った手を差し伸ばした。
そこには、白い羽根といっしょに握られた、スズランの亜麻色と黒鉄色で出来た不思議な模様の羽根。
- 161二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 22:31:40
「ほら、ミカ。仲直りのしるしだってさ。」
ミカ様は、その羽根におずおずと手を伸ばした。
ゆっくりと少しその手は震えているようにも見えた。
そしてその羽先を優しく握ると、すぐにスズランの手はひっこめられる。
「ありがとね、ありがとね…」
ミカ様が泣きじゃくり始めると、それに同調したかのようにスズランもまた泣き出す。
「うわーん」と「うぎゃー」とその二重奏を聞いたのは2回目だっただろうか
子供のように鼻水を垂らして泣きじゃくるミカ様に
セイア様がハンカチで鼻を拭うと、そこに鼻をかむ。
やれやれ、とあきれた顔をするナギサ様が、横について背中をさすった。
「まったく、どっちが子供なんだかわかりませんね。」
「どっちも、というか同じレベル感にいるのがミカらしいね」
「セリナちゃんたすけてー
ナギちゃんとセイアちゃんが馬鹿にするー」
こちらに泣きついてこようとしたミカ様の顔面に
それを拒否するように伸ばした手が、べちん、と叩きつけられた
- 162二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 22:40:28
>>148,>>154,イメージ図がこちらとなっております。
正面のサクラコ様をスズランのイメージに置き換えてください
その正面には例の顔のサクラコ様がいらっしゃいます(添付画像)
>>149,オチがばれとるwwwくそうwwwもうひとひねりしなきゃwww
>>150,ペチ先復活したwww
>>151,ね、なんかよくない?とっても、よくない?なんならシスフ組孤児院時代あるとそれはそれでよくない?
>>152,きょうのお話のあと2人きりで出会ったらどうするんだろうね…俺にも予想がつかない…
>>153,ミカはね、ヘラってるのが一番味する。具体的にはイカの塩辛をスルメにしたくらい味する。
でも、俺はメンヘラが書けない。…メンヘラって、かわいく書くのが、とても難しいから…
というわけで、すまない、ミカ回だよ。散々な目にあっていただいたよ。
すまない、俺の趣味なんだ…ミカのかわいいお話を期待していた方にはすまない…
このお話、帰宅してから3回くらい書き直しているよ。
1度目は普通の仲良し→ナンカチガウ
2度目はスズランぐいぐい→ゼツボウテキニチガウ
3度目でこれ→チョットチガウキガスル
すまない、ミカって脳内でキャラ立てると大暴れするんだ…制御できないくらい大暴れするんだ…
ミカ推しのひと、かわいく書けなくて、すまない…
- 163二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 22:40:59
- 164二次元好きの匿名さん24/05/03(金) 07:06:36
ちょっと早いけど保守
- 165二次元好きの匿名さん24/05/03(金) 07:29:40
これは素晴らしいミカだ
警戒するのは正しい、スズランは賢いな
それはそれとしてあの着地は足を痛めるから気をつけなさって - 166二次元好きの匿名さん24/05/03(金) 14:11:46
似た者同士かー
- 167二次元好きの匿名さん24/05/03(金) 20:42:29
癒やされました、ミカかわいいね…
ヘラったミカにぽーろをあげるスズランがいそう - 168二次元好きの匿名さん24/05/03(金) 20:51:02
子育て日記:86日目 阿慈谷ヒフミ
日記を渡されて、何を書けばいいものやらと悩んでいます
今日は、救護騎士団のみなさんが病院のお手伝いということで、スズランちゃんを預かることになりました。
モモフレンズのアニメや絵本を準備して、お待ちしていました
――――――――――――――――
「ハナコちゃん…何してるんですか…」
「これで怖がられない…これで怖がられない…」
らしくもなく、少し暗い顔をしているハナコさんの格好は奇妙そのもの。
おしゃぶりを咥えてスモッグ姿、ガラガラを両手に持って、背中には翼の飾りを背負っている。
前回のあれがかなりショックだったらしく、昨日お話を頂いて以来
あれだこれだと引っ張り出して来て、頭を抱えていたのは知っていたが、これはなんというか、私たちの方が怖い。
コハルちゃんも、アズサちゃんも、なんだか冷たい目で見ているような気が。
「ハナコ…、だいぶ気持ち悪い…」
「任務と言うのは、気負っている時こそ失敗するものだ。少し肩の力を抜くと良い」
「これで怖がられない…これで怖がられない…」
そんな声も、ハナコちゃんには届いてはいないようで、ガラガラを小さく鳴らしながら地面とお喋りをしていました・
準備万端で待ち受ける中、ドアがノックされ扉が開かれると
そこにはビッグブラザー様を胸に抱き、ハナエさんと手を繋いだスズランちゃんが立っていました。
「ひふみ!こは!あず!……………はな…こ?」
- 169二次元好きの匿名さん24/05/03(金) 20:51:20
目をキラキラさせながら、部屋に駆け込んできたスズランちゃんが私の胸に飛び込む手前、足を止める。
奇妙な恰好をしたハナコちゃんを見て「なんだこの人は」と言わんばかりの表情に変わった
「ほらな。任務というのは、気負っていると失敗するんだ。」
「そりゃその格好は引かれないわけないでしょ」
アズサちゃんとコハルちゃんの冷たい言葉がハナコちゃんに突き刺される。
そんな冷たい言い方をしなくても、と思ったが、まだハナコちゃんはへこたれてはいない様子
いや、これはギリギリのところで耐えている、と言った方が正しいかもしれない。
床に肘をついて、目線を下げながら、ガラガラを鳴らす。
表情はギリギリ笑顔を保っているものの、少し引きつっている気がした。
「こんにちはスズランちゃん。ハナコですよ」
そんなハナコちゃんの格好を見て、フリーズしたままのスズランちゃん。
どうするべきか、と悩んでいるのかそれとも単純に引いているのか。
しばらく考えたのち、私にビッグブラザー様を預けるように手渡したスズランちゃん
ゆっくりと警戒するようにハナコちゃんのほうに歩み寄る。
そして、目線を下げたハナコちゃんの頭を撫でる。
「はなこ……いちゃいいちゃいね……」
痛い痛い、と言いたかったのだろうその言葉に、ハナコちゃんは床に崩れ落ちた。
そんな姿を見て、無言でポシェットから絆創膏を取り出すスズランちゃん。
試行錯誤するように、裏のシールを剥がすと、ぺちん。ハナコちゃんのおでこに、絆創膏を張り付けた。
- 170二次元好きの匿名さん24/05/03(金) 20:51:47
ハナコちゃんが復活するまでの間にトートバッグを受け取る。
その中には日記や離乳食、お気に入りのおもちゃ等が入っているようだ。
羽根が集められた本や、シスターフッドの方が被っている帽子、コハルちゃんの手榴弾。
いろいろなものが詰め込まれていた。
「では、スゥちゃんをお願いしますー
スゥちゃん、いい子にしてるんですよ。」
「はい。頑張りますね」
「あーい!」
ハナエさんがスズランちゃんに手を振ると、スズランちゃんは手を振り返す。
倒れ込んだハナコちゃんの横に座って、にっこりと笑って、その反対の手ではハナコちゃんの頭を撫でていた。
ハナエさんが扉の向こうに姿を消すと改めてハナコちゃんへと向きなおす。
「いいこいいこね」と頭を撫でていると、ハナコちゃんがゆったりと起き上がる
「あ、起きた。」
「ハナコちゃん、大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です。」
珍しく真人間の顔をしているハナコちゃん。
今更ではあるが、昨日から卑猥な言葉を一言も発していないあたり、もしかすると素はこっちなのかもしれない。
カーペットの上にぺたんと座ったままのハナコちゃんがスズランちゃんを撫で返す
まだ少し、警戒をしているような、不安げに見守るような目をしているスズランちゃんが、ハナコちゃんの膝の上に座る
ハナコちゃんが、天を仰ぐように顔を向け、停止した。
- 171二次元好きの匿名さん24/05/03(金) 20:52:43
今日は、まだ書くよ!今は小休止だよ!
- 172二次元好きの匿名さん24/05/03(金) 20:55:47
ハナコェ……
- 173二次元好きの匿名さん24/05/03(金) 23:08:14
草の草 ハナコは傍にコハルもヒフミもおるじゃろ?
でも空回りしている姿はかわいいから大丈夫です - 174二次元好きの匿名さん24/05/03(金) 23:14:18
ばんそーこー自分で貼れるようになったんだね、
スゥちゃんの成長を感じて嬉しいペチ
ペチにもばんそーこーペチンしてほしいペチ - 175二次元好きの匿名さん24/05/03(金) 23:15:24
怖かろう、悲しかろう
例え策を弄そうとも、己の心の弱さは守れないのだ - 176二次元好きの匿名さん24/05/04(土) 03:08:57
――――――――――
モモフレンズのアニメを見終えて、お昼ご飯を終えた後
みんなでモモフレンズのショップに行こう、というお話になった。
スモッグ姿でそのまま外に出ようとするハナコちゃんをみんなで止めてしばらく後
ショッピングモールにあるモモフレンズのポップストアにいた。
「はなこ!ぺろ!ぺろ!」
「はい~、ペロロさんですね。かわいいですね~。」
アニメをハナコちゃんの膝の上で見て、ハナコちゃんにも慣れたのか
ハナコちゃんの手を引いて、店内をあっちこっちと引き回す。
そんな引っ張り回されるのも、ハナコちゃんにはとても嬉しいようで、満面の笑みで引っ張られていた。
そんな騒がしい様子に舌打ちをする生徒に頭を下げながら、私達は見守る
「びぐ!びぐ!みねまま!」
「はい、ミネ団長と同じ水色の羽根ですね。」
ビッグブラザー様を見つけたようで、指差しながらきゃっきゃと笑う。
なるほど、ビッグブラザー様といえば水色の鳥さん。
ミネ団長の翼の色と同じその翼がお気に入りの理由だったんだ、と納得する。
そして、横に並んだピンキーパカさん、アングリーアデリーさんを見て
「ぴんきー、せりなまま。あんぐ、はなえまま」と指を指す
ああ、この子は本当に救護騎士団のお母さんたちのことが好きなんだろうな
もしかすると、モモフレンズが気に入ったきっかけは、それだったのかもしれない。
しかし、それでもやはり、モモフレンズが好きな事を共有できるのは嬉しい事だ
- 177二次元好きの匿名さん24/05/04(土) 03:09:09
私は、ビッグブラザー様とピンキーパカさん、アングリーアデリーさんのちいさな縫いぐるみを手に取る。
そのお会計を済ませて、みんなのもとに戻ると、アズサちゃんの翼の先を掴んで、目をこするスズランちゃんがいた。
「なあ、ヒフミ。私はどうすればよいのだろう。」
身動きがとれないアズサちゃんは困り顔。
「子供の扱いは慣れなくて」と言い訳をするアズサちゃん
普段なら、なんでもなんて事なさそうにこなすアズサちゃんにも苦手なことがあったのだなあ
と関心をしていると、かくん、とスズランちゃんの首が船を漕ぐ
私はしゃがみこんで、スズランちゃんのポーチに3匹のぬいぐるみのチェーンをつけると
スズランちゃんは、眠そうにしながらも「あじゃましゅ」とお礼を言った。
私は立ち上がりながら提案する
「ちょっと休憩にしましょうか。」
「あの!わたし、わたしだっこする!」
コハルちゃんが声をあげ、スズランちゃんの前に回る。
スズランちゃんも、抱っこされようと、ビッグブラザー様をアズサちゃんに預けて手を伸ばす
屈んで「よいしょ」と抱き上げたコハルちゃん。
ちょっと重そうに抱き上げたコハルちゃんがよろめくのをハナコちゃんが支え
私達はフードコートへと向かった。
――
フードコートへと到着すると、アズサちゃんが店を指さす。
「ヒフミ、アイスだ!アイスが売ってる!」
「じゃあおやつはアイスにしましょうか」
- 178二次元好きの匿名さん24/05/04(土) 03:09:27
コハルちゃんが「うんしょ」とスズランちゃんを抱きなおす。
子供とはいえ軽いものではない。
私達に比べると、少し体躯の小さなコハルちゃんには重労働だろう。
しかし、それもなんだか楽し気に見えるのは、珍しくお姉さんをしているからだろう。
「コハルちゃんの分は私が買ってきますね。何味がいいですか?」
「いちご…」
「すみません、私のもお願いします。コハルちゃんと一緒に席を探してますね」
自分のアイスをお願いすると、ハナコちゃんは笑顔で頷く。
周囲を見渡せば、さすがに休日のショッピングモール、空いている席を探すのも大変そうだ。
席を探してフードコートを歩き回っていると私達に声をかける知らない生徒達
「その子、救護騎士団のスズランちゃんだよね?」
「はい、そうです」
「私達ね、その子に羽根あげたんだ。そのときすっごい喜んでてね」
と、そんな事を話しながら、テーブルの上を片付け始める。
ちょうど席を立つタイミングだったんだろうか、と思っていると
もう一人の子がコハルちゃんにどうぞ、と椅子を引いた
「大した事はしてあげられないけど、席譲るくらいの事ならできるから」
「ナギサ様のお気に入りだし、私達もお気に入りだし、ね?」
- 179二次元好きの匿名さん24/05/04(土) 03:09:41
コハルちゃんが席に座るのを助けると、手を振って立ち去る二人組
私が頭を下げると「ばいばい」と手を振ってその影は人ごみに紛れていった
「いい人もいるものですね」
私が席に座ると同時に、後ろから声がする。ハナコちゃんの声だ。
振り向くと、アイスのカップを両手にもったハナコちゃんがコハルちゃんの隣に座る。
「善意というのはいいものだ。人とはこうあるべきだな」
その後ろからアズサちゃんが追いかけて、私の隣に座ると、バニラアイスを私に渡した。
この喧騒の中でも相変わらずコハルちゃんの胸の中でスヤスヤとお昼寝をするスズランちゃん。
両手を離せないコハルちゃんの口へ、アイスを運びながらハナコちゃんが言う
「なんでしょう、なんだか興奮しますね」
「何に興奮してるのよ、この変態」
普段なら大きな声を出すコハルちゃんも、小さな子を抱っこしているからかひそひそ声でハナコちゃんを𠮟りつける
そんなコハルちゃんの口に、ハナコちゃんはスプーンを突っ込む。
なんだかその目が怪しげなのは、私の気のせいだろうか
そのスプーンを引っこ抜いたかと思うと、すかさずの2口目
「むぐっ!?」と声を上げたコハルちゃんに、ハナコちゃんは楽し気に笑う。
「自分のも食べなさいよ!溶けちゃうわよ!」
「は~い。」
- 180二次元好きの匿名さん24/05/04(土) 03:09:54
同じスプーンでアイスを食べるハナコちゃん。
それを、うわぁという顔で見るコハルちゃん。
なんとなく、何事もなく、ただのんびりと時間が過ぎてゆく。
アイスを食べ終えて、ゆっくりと過ごしているとスズランちゃんが目を覚ます。
おおきなあくびをしながら、寝起きに羽根をバサバサと。
まだ少し寝ぼけた目をこするスズランちゃんに、ハナコちゃんが挨拶。
「おはようございます。」
「ごじゃましゅ…」
ぐいとのびをして、もぞもぞとコハルちゃんの膝から降りる。
地面に降り立つと、ぱっと腕を上げて着地のポーズ、もすこしへにゃり。
ペタペタと歩き始めたスズランちゃんを慌ててコハルちゃんが追いかけた。
「え、どこいくの?」
「といれ…」
「あの、私この子をトイレに連れて行ってくる!」
ペタペタよたよたと歩くスズランちゃんの手を引いて、コハルちゃんが歩き始める。
この時に、私達もついて行けばよかったと後悔するのは、その後の事だった
――――――――
『どうしよう、スズランちゃん見失っちゃった』
私のスマートフォンが鳴り、電話に出て聞こえた第一声に私は椅子を転がして立ち上がった
- 181二次元好きの匿名さん24/05/04(土) 03:10:39
「すぐに行きます、まずは合流しましょう」
私の慌てた様子に、ハナコちゃんとアズサちゃんも慌てて席を立つ。
既に少し乾き始めたアイス容器を手に取ると、近くにあったゴミ箱へと捨てる
「コハルちゃんが、スズランちゃんとはぐれちゃったって!」
「あら、迷子ですか…」
私が歩き出しながら事情を説明する
フードコートからトイレまではそう遠くなく、すぐにコハルちゃんとは合流できた。
トイレの前で涙を堪えながらも周囲を見渡し立ち尽くすコハルちゃん。
私達を見つけると、すぐに駆け寄ってくる。
「トイレはね、済ませたの。スズランちゃんが手を洗って
私も手を洗ったの、そしたらもういなくて…」
早口に説明するコハルちゃんの涙を、ハナコちゃんがハンカチで拭う。
こういう場合は、迷子センターだろうか。とはいえ、迷子センターがどこにあるかなんてわからない。
えっと、このショッピングモールのインフォメーションは、なんて考えていると
アズサちゃんがスマートフォンの画面を見ながら冷静に言う
「おかしいな、すごい速さで移動している」
「どこにいるか分かるんですか!?」
「子供は迷子になるものだからな。発信器をつけておいた。」
自分のスマートフォンの画面を見せてくれるアズサちゃん。
- 182二次元好きの匿名さん24/05/04(土) 03:10:53
- 183二次元好きの匿名さん24/05/04(土) 03:20:16
>>164,早めの保守たすかる
>>165,ありがと!いいミカでよかった!
なんとなく、ミカは警戒されそうな気がするよね…
なんでかは、分からないけど…
>>166,似た者同士というか、子供同士というか、最終的に仲良くなる気はする
>>167,ミカ好きな人はそれでいいんか…えぇ…?
ミカと並んでお菓子食べるスズランちゃん、いいね…書こう…
>>171,俺のせいじゃない、信じてくれ。
ハナコにおしゃぶり咥えさせようって言った人がいたんだ、信じてくれ!
>>173,ハナコは自分の頭脳の範囲だと無敵。それを超えると雑魚
つまり防御力が皆無、だと俺は信じてる
>>174,ペチ先戻ってきて…住まいは画面のこっち側だから…
スズランは、一生実装されることはないから、そんなメモロビすら発生することはないんだ…
>>175,策が通じないハナコ、最高にいいと、思う
はい、ミスったー!ミスりましたよ!
レス欄30行に綺麗に収めるのがちょっとしたこだわりだったんだけど
ミスりましたよ!
そして、このスレ内で終わらせるためには、あと10レスはいるから、ちょっと埋まる前に加速して書くよ!!!
明後日?明日?は遊びに出る時間が早朝だから、睡眠時間の調整…と思ってたけど
そんなことは関係ねえ、今日中にこのスレの幼児期前期を完結させるよ!!!
- 184二次元好きの匿名さん24/05/04(土) 05:22:43
やべーぞ誘拐だ!
- 185二次元好きの匿名さん24/05/04(土) 06:01:25
「ははっ!横にいるのが救護騎士団でさえなければチョロいもんだな、これでいいんだろう?お嬢様!」
高級車の後部座席、リビングのようなスモークフィルムの中、作業服の男達が声を荒げる。
「んーん!んーん!」とテープでふさがれた口で何かを言おうとするスズランを座席に転がすと
スズランは抗議のように羽をバタつかせた。
「ええ、各派閥にはもう、お互いの派閥が誘拐を計画した、と情報も流してあります
あとは足がつかない所に埋めてしまえば、混乱が起きるのも時間の問題でしょうね。」
「俺らとしちゃあ、身代金でも要求したいところだが
ま、金が貰えるなら関係がねえ。お支払いのほう、頼みますよお嬢様。」
「意地汚いわね。ちゃんと支払うわよ。無事に終われば色をつけてもいいわ」
「まったく、お嬢様学校も大変だねェ、派閥だ権力だ
大人より汚ねえ世界に足突っ込みやがって」
路地裏に車が止まり、ドアが開かれる。
ほとんど人通りのないその路地に生徒が降りると、また車は走り出した。
―――――――――――――――――――――
「誘拐の可能性が高い、ですか?」
病院への連絡で院長室へと呼び出され、その連絡を受けたミネは凍り付く。
自分の今の行動、やりたい行動、やるべき行動が頭の中を交錯する。
隣で聞くハナエとセリナも、その言葉に驚きを隠せない様子だ。
- 186二次元好きの匿名さん24/05/04(土) 06:02:57
「…団長」
「分かっています。申し訳ございません院長先生。
私の、私たちの子が救護を…いえ、私達は、私達が助けたいのです。」
団長は決意をした目で目の前の院長先生へと語り掛ける。
その言葉に、院長先生は穏やかな顔、穏やかな声で返した。
「ミネさん、セリナさん、ハナエさん。すっかりお母さんの顔ですね。
ええ、もちろん止めませんよ。行っておあげなさい。」
「「「ありがとうございます!」」」
3人は普段なら走ることはない病院を駆ける。窓の外は夕暮れ、夜の帳が降りようとしていた。
そして、病院の正面玄関を出た時には、そこにはトリニティの校章を掲げるヘリコプターが降り立っていた。
その座席にはナギサ、セイアが座っている
「ミネ団長!こちらです!ヘッドセットを!」
3人がヘリコプターへと駆け乗ると、座席に着く前に扉が閉められ、エンジンの甲高い唸りと共に高度を上げた
「まずは、申し訳ありません…情報は掴んでいたのです。誘拐を画策する動きがあると。
しかし、それがシスターフッドの手によるものだと…」
「そしてシスターフッドでは、同様の情報が正義実行委員会によるものと聞いた、とサクラコが言っていたね」
まあ、つまり何者かが掻き回そうとしている、という事だね
そんな政治的なことは後でいい。今は救出が最優先だ。」
- 187二次元好きの匿名さん24/05/04(土) 06:03:12
ヘリコプターは迷いなく飛んでいた。ヘリコプターのパイロットの聞く無線には、アズサの声が響く
『第3区画、4号線を西南西方向に逃走中。この先はスラム地区だ
あの地区では電波がよくない。このままでは行方を掴めなくなる。急いでくれ』
『こ、こちらシスターフッド、ヒナタです!車を目視しました!黒色の高級車、長いやつです!
スズランちゃんのヘイロウ確認、発砲は控えます!』
『こちら正義実行委員会、イチカっす。移動先の情報了解、スラム街に包囲網を敷くっす』
無線を聞きながら救護騎士団の3人は胸をなでおろす。
どこにいるのかが分かっている、それだけでかなりの情報だ。
ヘイロウを壊すというのは、子供相手であっても、並大抵のことではない。
わざわざ一緒に移動をしている、ということは無事であるのと等価であるからだ。
『すまない。発信が途絶えた。最終地点がスラム街であることは間違いない』
『こちらハスミ、スラム街の主要道路は3分以内に封鎖完了いたします
西方は正義実行委員会、東方はシスターフッド、南方は生徒会です。』
『こちら生徒会迫撃砲部隊、スラム街全域を射程内に収めましたわ。支援砲撃必要な際は連絡を下さいませ』
「みなさん…ありがとうございます…」
ミネがマイクへと呟く。その手には救護の証明が強く握られていた。
彼女は思う。トリニティ、三位一体を示すその言葉が形を成すことが今まであっただろうか。
エデン条約、その時ですら偽の情報に惑わされ統制を取れず、混乱をしていた学校が
学校のためでもなく、政治のためでもなく、ただ1人の子供のために団結をしていた。
- 188二次元好きの匿名さん24/05/04(土) 06:03:46
スラム街まで逃げ込んだ車が減速する。ブレーキを踏んだわけではない。
むしろ、急激な減速に、運転手はアクセルを踏み込んでいるはずだった。
正面には人影、ヘッドライトに照らされて、ドレスのような制服を着こんだ女の子、ミカが立っていた
「ちょっと待ってよ、その中には私の友達が乗ってるんだー」
「腕力だけで車止めやがったぞ!化け物かよ!」
「化け物って、ひどいなあ…。ちょっと撃たないでってば!痛いってば!」
フロントガラスを突き破る弾丸、それをものともせずに受け止めるミカ。
「ガキ連れて降りろ!」
ドアが開かれて、男達が車を飛び降りる。
その脇にはスズランが抱えられ、バサバサと翼で男たちを叩いていた。
「あっ、ちょっと逃がさないかんね!」
車を投げるように降ろすミカだったがその瞬間、ポン!と軽快な音の直後、車が爆散する。
一瞬で火の海と化した周辺に、巻きあがる爆風と舞い散る爆炎。
その勢いに目を閉じると、そこには男たちの影はもう残ってはいなかった。
「もー!」と不満げに頬を膨らませるミカ
ボロボロの制服から、画面の割れたスマートホンを取り出して電話をする。その先はナギサ。
「ごめんナギちゃん、逃げられちゃった…、位置情報送るね。」
「えっ、ミカさん?なんでもういるんですか?というかどこからその情報を!?」
- 189二次元好きの匿名さん24/05/04(土) 06:04:24
スラムへと踏み込むと、そこには不釣り合いなスーツの男達がぞろぞろと。
ギャングと思わしき男達が待ち構えていた。
物陰に身を隠して様子を伺うのは2人の少女たち。腕には自警団の腕章。
「一人捕まえてきます!
話を聞けば何か分かるかもしれません。」
「レイサ!?…ちょっと待て!」
ずかずかと敵前に身を晒すレイサ。その後ろからスズミが肩を掴もうとするが時すでに遅し
2人に気づいた様子のギャング達は、なんの躊躇いもなく発砲する
「わわわ!ちょっとやめてください!危ないじゃないですか!」
慌てて物陰に身を隠すレイサ、その後ろから閃光弾が空を飛ぶ
その炸裂にあわせてレイサが身を乗り出して射撃すると、視界を失った男が吹き飛ぶ。
その後ろからはライフルの制圧射撃
数秒後には立っているギャングは一人もおらず、そこには気絶した者だけが横たわっていた
「捕まえました!」
「レイサ…それでは意味がないです…
確かに、手掛かりになるとは、思ったのですが…」
「あっ…、起きてください、起きてください!」
レイサがペチン、ともたげた男の頬を叩いて起こそうとするが
起こすには少し過ぎた威力だったようで、男はさらに深い眠りにつくことになった
- 190二次元好きの匿名さん24/05/04(土) 06:05:06
給水塔の上、スコープを覗くマシロがスラムの隅々まで目を光らせる。その後ろにはハスミ。
無線機を耳に当て、捜索班からの連絡を待っていた。
「ハスミ先輩、見つけました。3時方向…赤い屋根の下、4人。
いえ、6人です。合流しました。右側に移動中…射撃しますか?」
「いいえ、ここで見失うことの方が危険でしょう。追跡を。」
ハスミの返答に「はい」と返すマシロ。
その口からは目標物が淡々と告げられていく。
「こちらハスミ、伝達、スズランさんを発見。C3地区からC1地区方面へ移動中
……ツルギ、ツルギ?聞こえていますか?…ダメですね、こんなときに何をしているのやら」
「どこに行ったんでしょうね。数日前からいないことが多かったですけど。
あ、倉庫…ですかね、方角…185、右側に大きな穴が開いた倉庫、入りました。腰を落ち着けたようですね。」
「最終地点を確認、C1地区の2番倉庫です。
…さあ、ツルギは私でも何を考えているのかわからない時がありますから。」
上空遠くから聞こえるヘリコプターの羽音。そちらに大きく手を振るハスミが倉庫の方角を指さすと
発光信号が返され、高度と引き換えに速度を上げると、夜の空を切り裂くように、2人の頭上を掠めるように飛んで行った。
「マシロ、動きは?」
「ありません、かなり疲労困憊の様子ですね。…8人、13人、続々と増えています。
スズランちゃんは…元気なようです。羽で犯人を叩きまくってますね」
「まったく、強い子ですね、あの子は」
- 191二次元好きの匿名さん24/05/04(土) 06:05:33
人気のないトリニティの路地裏、一人の少女がスマートフォンを触りながら歩く。
鼻歌を口ずさみながら歩くその少女の背後に、ぬるりと影が落ちた
「ギヘへへへ……お嬢さん、なぜこんな所に?」
「ひっ…ツルギ委員長…、何か御用でしょうか…?」
ツルギの背後にはシスター服。サクラコのその手には3枚の便箋が握られていた。
それは、各派閥に送られたリークの手紙。
「それは、あなたが一番よくお分かりかと思います」
まあ、ツルギ委員長が駆け込んで来た時は私も何事かと私も思いましたが…」
「…古書館とつながりがあるのはお前たちくらいしか浮かばなかったからな」
「まあ、ウイさんもシミコさんも、ツルギ委員長も怯え切っていましたから
直接ツルギ委員長が伺わなくてよかったとは、思います」
―――――
少し前、古書館でのこと
怯えるウイに、ツルギが詰め寄り、その後ろにはサクラコが立っていた
「ひいぃ…なんですか…ツルギ委員長とサクラコ様が…二人してなんの御用ですかぁ…」
「これを…解析しろ。」
「ツルギ委員長、だめですよ。経緯から説明しないと…はぁ…
…先日、この便箋が届きました、そこにはスズランさんが誘拐される、と。
文字は筆跡を隠そうとした跡がありますが、文字に親しいあなた方なら何か分かるかと」
- 192二次元好きの匿名さん24/05/04(土) 06:06:28
「とはいっても、筆跡が誰のものかなんて、その個人の筆跡がないとなんともいえませんね
私も委員長も手書きの文字は見慣れているので、素人が隠そうとしたくらいなら特定できるかもしれませんが」
シミコが難しい顔をすると、サクラコが指を鳴らし、シスター達が大量の紙束を持参する。
それらはノートのコピーの束のようで、個人ごとに括られている。
「ここに、全生徒のノートのコピーがあります。とはいってもこちらで動向が怪しい生徒に絞りました。
古関ウイさん、円堂シミコさん、無理なお願いなのは承知ですが"助けて"いただけますか?」
それから1晩、寝ずにノートの束と手紙を必死で捜索する図書委員の2名の大仕事が始まった
―――――
「と、いうわけでして、あなたを探していたわけなんです、こんな人通りの少ない道で、どこかで誰かと会われていたのではないですか?」
「吐け。地獄より酷い目に会いたくなければ、今吐け。
あの子に手を出せば、お前のヘイロウが無事では済むと思うな。」
完全に怯え切った女子生徒。何かを喋ることもままならない様子の彼女。
既にこの2人で、人違いがあり得ないという所までは既に調査が済んでいる。
あとはどんな計画でどう行おうとしていたかを聞き出すだけ、の状態であった。
しかし、そんな状況でサクラコのモモトークが鳴る
「…ツルギ委員長、もう遅いようです。」
「ギェァァァァアアアアアアア!!!!!」
彼女の腹に、何発もの弾丸が突き刺さる。弾倉が空になってなおカチカチと引かれる引き金
サクラコがその手を諌め、朧気に意識を保った彼女にサクラコが言う
「楽になるのはまだですよ。お話はゆっくりと聞かせて頂きます」
- 193二次元好きの匿名さん24/05/04(土) 06:06:51
スズランは考える、また一人になるのだろうか、と。
幼いながら、おぼろげな記憶をたどる。暗く何も見えないようなあの埃っぽい場所。
最初の記憶は、泣くのすらも疲れ、諦めていた時、そこで頬に当てられたセリナの優しい手だった。
抱きかかえられ、運ばれていったいつもの部屋は、ツンとした臭いが少し苦手だった。
でも、それが今では一番安心できる匂いに変わった。
大好きな3人がいる場所だった。
あの場所に帰りたい、と願う。
カバンにヒフミがつけてくれた3つのキーホルダー。
青い鳥、ピンク色のアルパカ、紫とピンク色のペンギン。
3人の母親を思い出すそれに、手を伸ばす。
声は出ない、きっと出ていたとしても、何も叫ぶ事はなかっただろう。
泣きそうになる。しかし泣くことは自分を救ってくれないのだと、理解している。
小さな手で握りしめたそのキーホルダーを、ぎゅっと胸に抱き寄せた。
その時、その場所に大きく土煙が上がる。
広い倉庫、がらんどうのその場所の屋根を突き破り、一人がそこに立っていた。
「あなた方も救護が必要なのだと分かってはいます。
しかし、今はそんな場合では、ないのです…!」
土煙の中、その影はギャング達へと突進する。
数人を蹴散らして、スズランを抱え上げて盾の内側へと包み込む。
「スズラン、助けに来ましたよ。不安な気持ちにさせてごめんなさい。」
その目に溜まった涙を拭い、口に貼られたテープを剥がす。
そして、スズランは周囲の男たちを指さして叫ぶ
- 194二次元好きの匿名さん24/05/04(土) 06:07:07
「きゅうご!」
「ええ、そうですね。戦場に救護に手を。
哀れな歩みへと、救護の手を。」
「クソアマが!とっととやっちまえ!」
取り囲む男達が口々に罵声を浴びせ、ミネへと銃弾を叩き込む。
しかし、1歩たりとも下がらせることはできない。その背後から射撃
2丁のライフルから放たれる弾丸は、ミネをも巻き込んで男たちを蹴散らしてゆく。
それは、ミネへの信頼。自分達程度ではミネに、ミネの守るスズランに怪我ひとつ負わせることはないという信頼。
「スズランちゃん、ミネ団長、無事ですか!?」
「スゥちゃん、ママたちが来ましたよ!」
地面に突っ伏した男達を踏むのも気にせず、セリナとハナエがミネとスズランに駆け寄る。
残った男達が数名、倉庫の入り口へと逃げようとするが
その瞬間、倉庫の入り口は戦車によって塞がれることとなった。
「スズランちゃん、無事ですか!?」
戦車からひょこりと顔を出したヒフミが叫ぶ。
その戦車の上には補習授業の面々に、サクラコとツルギ
逃げようとした男たちは、彼女らの斉射によって沈黙することとなった
無事に事件は幕を閉じる。
そう誰もが確信した時だった。
- 195二次元好きの匿名さん24/05/04(土) 06:07:20
お、あのトリニティの主要組織のお気に入りのスズランちゃんを誘拐か?このトリニティ自治区でそんな死にたがりが存在するとは思わなかったぜ。
私も同行しよう。 - 196二次元好きの匿名さん24/05/04(土) 06:08:15
「クソが…!クソガキどもが!」
一人の男が手に何かを握る。爆弾の起動ボタン。
どこにどれだけの爆薬が仕込まれていたのか、それをそこにいた者たちが知る前に
男は後悔することになる。
目の前に落ちた手榴弾。
白黒に金縁、スズランがポーチから取り出し、ぽい、と放り投げたそれは
男の眼前で爆発したそれは、非殺傷とはいえ気絶させるのに十分な威力は持っていた。
「きゅーごのてを!」
- 197二次元好きの匿名さん24/05/04(土) 06:34:02
- 198二次元好きの匿名さん24/05/04(土) 06:41:28
はい、建てといたよ
取り合えずテンプレとか分からんから、前回のあらすじ?とかからは今スレ主に任せた
一応前スレ(part2)と元スレは添付済
【SSスレ】ここだけ救護騎士団の子育て奮闘記 Part3|あにまん掲示板概念をSSにするスレ概念や、ありそうなシチュエーション、見たいものの概要をお前らが考えて、俺が書くこのスレが落ちない限り、概念が続く限り、だらだらと書いていこうと思う非才の身だが、暇だったら読んでいっ…bbs.animanch.com - 199二次元好きの匿名さん24/05/04(土) 06:42:48
- 200二次元好きの匿名さん24/05/04(土) 07:38:26
立て乙