「これはどういうこと、ラクスさん」(窓の桟の埃を確かめながら)

  • 1二次元好きの匿名さん24/04/24(水) 07:38:41

    「そ、それはっ……先に、お風呂の掃除をしてから、と思っておりましたの……!」
    「言い訳はいいわ。忘れずにこちらもお掃除しておきなさい。全く、家事には自信があると豪語していらっしゃったのにこの体たらく。プラントでは女子の教育もできないのかしら」
    「は、はいっ……!申し訳ございませんでした、お義母様……」
    「あなたに義母と呼ばれる筋合いはありません。言ったはずです。
     私のことはカリダさん、と呼びなさい」
    「は、はい、カリダ、様……」
    「……さん、で結構。全く」

    ここだけ種本編後の同居期間、カリダさんがラクスにお姑さんムーブをしていた世界

  • 2二次元好きの匿名さん24/04/24(水) 07:41:13

    これまでシーゲル・クラインの娘として、プラントの歌姫として、蝶よ花よと育てられてきたラクスにとっては逆に嬉しいんじゃないか

  • 3二次元好きの匿名さん24/04/24(水) 07:41:46

    「よそ見をしない!火を使っている間は必ずその側にいなさい!」
    「は、はいっ!!……あ、これは」
    「包丁は手元に置いたままにしない!」
    「も、申し訳ございません」
    「刃物で自分を傷つけたとき、誰が最も悲しむか!!それを考えるのです!!」
    「……そこまで考えが、至りませんでしたわ……」
    「ならば明日からそれを考えて家事に挑むのです。ここは我々の戦場です、ラクスさん」
    「はいっ……!!」

  • 4二次元好きの匿名さん24/04/24(水) 07:45:14

    「……あ、キラ、まだ、寝てるの、ですね……」
    「ラクスさん!起きなさい!!」
    「か、カリダさん……、大声を出さずに、まだキラは……」
    「その子のことは一番私がよくわかっています!どうせその子は時間になるまでは起きません!
     そのくせ、学校にギリギリ間に合う時間にはきっちり起きる子です!!」
    「さ、さすがはお義母様……」
    「あなたに義母と呼ばれる筋合いはありません!!主人より2時間は早く起きて、家の風通しを良くして、自分の寝具はたたむのです。それがヤマト家の嫁の勤め!」
    「は、はい!!」
    「そしてきっちりぽんやりお目目で起きてきた旦那様を味噌汁の匂いではっとさせるのです!!」
    「あ、あの伝説の……!!さすがはお義母様!!」
    「だからあなたに義母と呼ばれる筋合いはありません!!」

  • 5二次元好きの匿名さん24/04/24(水) 07:49:52

    「だから何度言ったらわかるのです!家の不備があったらまず私に相談するのです。
     その後、キラかハルマさんにお願いしなさい」
    「でも、たまたまキラが通りかかったので……」
    「僕はずっと暇だったし……」
    「そうやって無駄に修理用の器材を買ってくるからそう言っているのです!!
     ハルマさんもよく自分で修理するよと言って、元々あるものをよく買いにいっていました」
    「父さんもやってたんだ……」
    「すごい無駄ですわ……」
    「全く……あと、木造の部分は専門の方に調整してもらったことがいいこともあります。
     私の知り合いに畳屋さんがいますのでそちらにお願いしましょう」
    「え、畳?」
    「畳の業者は往々にして木造建築に通じています……まあ、これは私の知り合いだけかもしれませんが」
    「母さんはすごいよねぇ……」
    「お義母様はすごいですわ……」
    「あなたに義母と呼ばれる筋合いはありません!!」

  • 6二次元好きの匿名さん24/04/24(水) 07:54:35

    「ラクスさん!!ラクスさん!!」
    「は、はい、カリダさん……!」
    「あの人の盆栽に水をやるのを忘れています」
    「え、でも、これはハルマさんがやるとおっしゃっていて……」
    「どうせ忘れます!」
    「そ、それはそうかもしれませんが……でも、こういったものはご本人が世話をするのも楽しみなのでは」
    「そうやって任せて枯れた時、悲しむのは誰だと思いますか?」
    「な、なるほど……?」
    「まあ盆栽の世話は私がやりましょう。あなたは草むしりをするのです」
    「は、はい!」
    「防虫剤は身に振りかけるのは忘れないように。また、家に入る前につなぎは脱ぐのですよ」
    「はい!」

  • 7二次元好きの匿名さん24/04/24(水) 07:57:07

    これラクス様カリダさんに対してめっちゃ好感度高くなってね?
    流石CEの聖母

  • 8二次元好きの匿名さん24/04/24(水) 07:58:33

    「ラクス……ごめんね?本当に、君には負担をかけてばかりで」
    「いいえ、それが私の意志ですので」
    「でも母さん、あんなに怒る感じじゃなかったんだけどね……」
    「それは、私が……いえ、私はここでは余所者ですので。
     仕方のないことだと思います」
    「……違うよ、ラクス。僕は少なくとも、君を余所者だとは思ってない」
    「え……」
    「こんなに優しい君を、僕は余所者なんて思うわけないじゃないか。
     父さんも、母さんも、そうだと思う」
    「あ……キラ……」

    「全く……夕飯の用意は私がしなければいけないではないですか。
     これは後でお小言ですね……」

  • 9二次元好きの匿名さん24/04/24(水) 08:00:25

    カリダさん所々人の良さが隠し切れてないな……?

  • 10二次元好きの匿名さん24/04/24(水) 08:04:17

    >>7

    >>9

    だってよぉ

    カリダさんだぜ?

  • 11二次元好きの匿名さん24/04/24(水) 08:06:24

    「ラクスさんに厳しすぎじゃないかい?
     さすがに、もう少し優しくしてもいいと思うけれども」
    「いいえ。彼女はまだ人に尽くすということの本質がわかっていません。
     意志と精神に見るべきものはありますが、まだ彼女自身の振舞には、どこか上に立つ者としての気品がつきまとっています。生まれによるものなのか、あるいはそれこそが彼女の本質なのか」
    「それは悪いことじゃないと思うけど……」
    「あの子はキラのことを愛している……少なくとも恋はしているでしょう」
    「いきなり本質をついたね」
    「そして、キラはもう……」
    「……でも、それはあの子が選んだ結果だ」
    「ええ。だから……せめて、あの子には、キラと共に生きて欲しいのです。これは私のわがままです」
    「まあ、今のキラに側にいてくれる女の子なんて、ラクスさんか、お姉さんのカガリ様ぐらいだろうね」
    「そして、キラは」
    「そうだね。ただの男の子だ。僕らが育てたんだから」
    「ならば、その側にいるのも、ただの少女であり、ただの妻であるべきでしょう。そう生きるのに、あの振舞はいつか邪魔になります」
    「……カリダさんはわりと本質を突くの上手だよね」
    「ただ思うままにしているだけですよ」

  • 12二次元好きの匿名さん24/04/24(水) 08:07:27

    不器用な姑ムーブしてる……

  • 13二次元好きの匿名さん24/04/24(水) 08:13:45

    「ラクスさん、これがヤマト家のぬか床です」
    「こ、これが……!」
    「これを株分けいたします」
    「……え?見せていただけるだけではないのでは……?」
    「そんなに楽をしたいのですかあなたは」
    「そ、そういうわけでは……!も、もしかして、世話をさせてもらえるのですか!?」
    「ですが、ヤマト家で維持しているものを、あなたのような新参者に世話をさせるわけにはまいりません。
     なので、株分けをするのです」
    「……」
    「よいですか。毎日3度はかき混ぜるのです。気温が高くなりすぎる場所においてはなりません。
     また、毎日匂いを感じ取りなさい。少しでも変だと思ったら、私に言いなさい。
     また株分けしますから」
    「……カリダさん」
    「維持することができるようになったら、漬物を漬けてみなさい。
     キラに、食べさせてあげたいのでしょう?」
    「ありがとうございますわ、お義母様……!!」
    「あなたに義母と呼ばれる筋合いはありません」

  • 14二次元好きの匿名さん24/04/24(水) 08:19:26

    このレスは削除されています

  • 15二次元好きの匿名さん24/04/24(水) 08:20:44

    「……孤児院にいる時はいいのですが。これは、なんとも……」
    「買いすぎてしまいました……」
    「実際、キラの食はまだ細いまま。いろんなものを買って、並べてあげたいという気持ちはわかりますが」
    「……」
    「夫を甘やかしすぎるのも、よい妻とは言えませんよ」
    「つ、妻……!?そんな、私は、そこまで……」
    「なるほど。その覚悟もなしに、ここにいると」
    「……!」
    「覚悟がないなら、出ていきなさい、ラクスさん。
     一人の男性の妻になるというのは茨の道です。あなたにその覚悟はありますか」
    「……でも、キラの、気持ちは……」
    「私が聞いているのはあなたの気持ちです。
     あなたには、キラの妻になる覚悟がないのですか!!」
    「……あります」
    「聞こえませんね」
    「あります!!わたくし、ラクス・クラインは、キラ・ヤマトの妻になるためにここにいます……!!」
    「……結構。では、この食材をしっかり料理し、キラとハルマさんに食べてもらった上でお裾分けをします」
    「はい、お義母様!!」
    「あなたに義母と呼ばれる筋合いはありません!」

  • 16124/04/24(水) 08:22:08

    次回に続く。
    ついつい思いついちゃったから書いちゃったけども流石に出勤前1時間じゃ書きあがらないです

  • 17二次元好きの匿名さん24/04/24(水) 08:42:29

    朝の忙しい時間に即興で書いてくれてありがたい……

  • 18二次元好きの匿名さん24/04/24(水) 08:46:25

    ああ、はい、こんどはそっちでも愛を語るんですね!
    いやほんと引き出しの数ぅ!

  • 19二次元好きの匿名さん24/04/24(水) 08:50:49

    所々ハルマさんのぐ―たらな部分が出るのすこ、ここがキラに遺伝というか似たんだなって

  • 20二次元好きの匿名さん24/04/24(水) 09:10:20

    もしかしてカリダさん、「義母と呼ばれるべきはヴィアのほう、ホントは叔母の私は義母と呼ばれる筋合いはない」とかいうおいたわしい考えをお持ちでは?

  • 21二次元好きの匿名さん24/04/24(水) 09:31:30

    ラクスが体調崩したら
    あなたが倒れたら
    困るのは誰か考えなさいって
    ツンデレ看病してくれるタイプの姑だ…

  • 22二次元好きの匿名さん24/04/24(水) 09:56:52

    このカリダさんラクスが他の親戚に理不尽にいびられてたら親戚に対してすごく怒ってくれるタイプだ…

  • 23二次元好きの匿名さん24/04/24(水) 18:31:11

    保守

  • 24二次元好きの匿名さん24/04/24(水) 21:11:37

    ワクワク止まんない

  • 25二次元好きの匿名さん24/04/25(木) 03:52:19

    わざと厳しい振る舞いするけどしっかり応えてくるから内心ちょっとノリノリでやってる部分ありそう

  • 26二次元好きの匿名さん24/04/25(木) 07:26:11

    「……夕飯の前に、カリダとラクスさんが話してると思ったから」
    「……父さん、これ……」
    「僕のせいだよねぇ……あまり気にせず入っちゃうか、すぐ立ち去るべきだったなぁ」
    「……」
    「キラは、知っていたんじゃないのかな」
    「僕は……」
    「いいんだよ。答えは急がなくていい。あと……必ずしも、彼女の想いに応える必要はないんだ」
    「……ラクス!!」
    「まあ……そうなるかな……さあ、キラ。頑張るんだよ」

  • 27二次元好きの匿名さん24/04/25(木) 07:37:00

    それは、僕がヤキン・ドゥーエで戦った後の話。
    僕がエターナルに戻ったとき、一番最初に飛び込んできたのは、彼女だった。
    その時、僕は彼女を抱き留めることも、言葉もなく、ただ立ちすくむだけだった。
    考えてみたら、その時から、彼女が泣いているところばかりを見ている気がする。
    『戻ってきて、くださいましたのね……』
    そういう彼女に、僕は首を振ったのか。あるいは、何も答えなかったのか。
    よく覚えていない。ただ。父さんと母さんのところに、帰らなきゃ、と言った気はする。
    ……要するに。自分の元に帰ってきてほしいと願う彼女に、僕の帰るべきところは君のところじゃない、と言ったようなものだ。
    そもそも、今の今まで、そんなこともろくに考えなかったわけだけど。
    ラクスは何もいわない。父さんも、母さんも。もしかしたら、ラクスとは話していたかもしれないけれど、僕とそんなことを話すことはなかった。

  • 28二次元好きの匿名さん24/04/25(木) 07:49:52

    アスランとカガリに引きずられて、ラクスに付き添われて、僕はオーブに行った。
    父さんと、母さんが生きていることは、カガリからも聞いていた。……あの、ヘリオポリスのカレッジにいく朝以来の、再会だった。
    雨の降る夜。
    母さんはただ何も言わずに僕を抱きしめ。父さんはその後ろで、よく帰ってきたなあ、とどこかとぼけたように言った。
    アスランとカガリは黙って頭を下げて、父さんと母さんのいる家から出ていった。
    ラクスも少し遅れて、扉を開いて出て行った。
    30分か、それぐらいか。母さんが何くれと水を出してくれたり、風呂に入らないか聞いてくる中、僕はふと、ラクスのことが気になった。傘を持たずに出て行った彼女。ごめん、ちょっと外を見てきていいかな、と父さんは怪訝な顔をして、母さんは何か察したようだった。
    ちょっと気になることがあるんだ、と言って、傘を持って外に出る。
    ……今考えてみると、本当に意味のない、行為だった。彼女が出て行ったのは、30分も前。とっくに、いなくなっているはずだ。だけど。
    「……ラクス?濡れちゃうよ、そんなところにいたら」
    口に出たのは、そんなとぼけた言葉。もう少し、気の利いたことが言えただろうに。
    扉の外。軒下。そこに、彼女はいた。

  • 29二次元好きの匿名さん24/04/25(木) 07:58:44

    「……いえ、わたくしは……」
    「カガリとアスランは……先に帰っちゃったのかな。忙しいもんね、二人とも……付き合わせて、悪かったなあ」
    そんなすっとぼけたことをよく言ったものだ。考えればわかる。
    カガリやアスランが、彼女を置いて帰るわけがない。もし彼女が残ったのであれば、それは彼女の意志のはずだ。
    「ラクスも……ありがとう」
    「……そんな。わたくしには、そんなことを、言われる資格なんて」
    僕はそれに何も答えなかった。あるいは、それで彼女は傷ついたのかもしれない。
    でも、僕には何も言えなかった。
    「ほら、入ろう?」
    「……わたくしには、ここに、入る資格なんて、ありませんので……」
    当時は意味がわからなかった。罪悪感。後悔。そんな感情だったのかな、と今ならなんとなく察しがつく。
    「……どうしようか」
    「……」
    彼女は何も言わなかった。さすがに、その時の僕でも、それはわかった。
    「……そっか。なら、落ち着くまで、一緒にいるから」
    彼女がかつて、僕にしてくれたように、ただ寄り添う。
    その時の僕には、それぐらいしかできなかった。

  • 30二次元好きの匿名さん24/04/25(木) 08:02:50

    こっちの方が准将回復するの早くなるのか

  • 31二次元好きの匿名さん24/04/25(木) 08:10:47

    カガリとアスランに無理を言って、一人キラと、彼の父と母がいる仮住まいに残った私。
    ただ、親子の再会を邪魔するような真似はしたくなかった。
    それに。彼の両親に会って、何を言えばいいのか、私の中にはまだ迷いがあった。
    私の想いはただ一つ。私のせいで傷つけた彼を支えたい、という気持ちだけだった。
    だが、それは果たして許されることなのか。彼の両親は私を許してくれるのか。私にはわからない。
    それでも、共にいたい。彼の帰るべき場所になりたい。その願いだけで、私はそこにいる。
    だから待った。あるいは、朝まででも、待つ覚悟だった。
    彼と両親が、落ち着いた後にでも、声をかけれれば、などという思い。
    そんな風に考えていた私に。
    「……ラクス?濡れちゃうよ、そんなところにいると」
    心が壊れかけてもなお、彼はそんなことを言った。
    家に入って、という彼。だが、私には、そのような資格はない、とこの段になって思ってしまった。
    そんな私に、彼は。
    「……そっか。なら、落ち着くまで一緒にいるから」
    そう言って、ただ隣に立った。
    私の決意。あるいは私の迷い。それを見透かしたような彼に、何か言う前に。
    「キラ……お客様を外で待たせるものではありませんよ」
    扉を開いて、彼の母が、そういった。
    「変わった子だね。キラのお友達……だよね?
     お布団は余分にあったかな、カリダさん」
    「あなたと私が同じ布団で寝れば、一つ余りますので」
    「そっか。じゃあ、そういうことで」
    迷う。一歩、前に出るか、後ろに下がるか。それをさせまいとでもするように。
    「ほら、家に入ろう?」
    彼は、自分から私の手を握ってくれた。

  • 32二次元好きの匿名さん24/04/25(木) 08:11:49

    カリダさん、ダメ出しする時は毎回「見なさい、こうするのです」ってお手本を見せてくれそう

  • 33二次元好きの匿名さん24/04/25(木) 08:25:31

    「キラはもう寝たよ」
    「では……改めて。キラの母のカリダ・ヤマトです」
    「僕はハルマ……まさかキラが女の子を家に連れてくるなんてことがあるとはね」
    「……申し訳ございませんでした」
    「こっちこそごめんね。気がきかなくて。
     キラは、なんというかとぼけたところがあるから……誰に似たんだろうね」
    「あなたですよ」
    「……あはは。で、君は?」
    「ラクス……ラクス・クラインと申します」
    「……うーん。随分複雑そうな関係だなあ……僕とりあえずいない方がいいかな?」
    「あなた。……ラクスさん。どうして、こちらに」
    「私が、キラを戦いに巻き込んでしまいました。その、お詫びに、と……」
    「詫びれば済むこととでも?
     取返しがつかないこと、というのはあなた自身もおわかりでしょう」
    「っ……」
    「カリダさん。……ごめんね。でも……そうだね。
     謝って済む問題じゃない、というのはそう。そして、何をやっても取り返しがつかない、というのも。
     でも……君もそれをわかってて、ここに来たんだよね、ラクスさん」
    「……それは、その通りですわ」
    「ではなぜここに来たのですか」

  • 34二次元好きの匿名さん24/04/25(木) 08:26:59

    「……」
    「カリダさんは、別に詰め寄っているわけじゃないよ。贖罪のつもりでここにいるのなら、その必要はないってだけ。
     ただ……ね」
    「……はぁ。ハルマさんは優しさが過ぎます。このようなことは自分の口で言ってこそ、決意となるのです」
    「カリダさんも大概だと思うけどね。でも、言葉は大事だよ?」
    「あなたはどうしてここに来たのか。その最も大きな感情を私に伝えなさい。
     そうしなければ、そもそも、こちらに宿泊させるつもりはありません」
    「私は……」
    「うん?」
    「私は、ただ、キラと一緒に、いたかったのです……」
    「……ということだけど。どうかな、カリダさんのお眼鏡にはかなったかな?」
    「全く……最初からそう言えばいいのです。では、キラと同じ部屋に布団を敷きますので」
    「……えっ?」
    「共にいたいとはそういうことでしょう。それともそんな覚悟がなかったとでも?
     ならその覚悟を今から整えなさい」

    ……それが、一年前の話。

  • 35二次元好きの匿名さん24/04/25(木) 08:28:47

    次回に続く。
    大分カリダさんがキラの感情のまま動く部分の祖として烈女方向に寄ってる分、ハルマさんはぽやぽや分多めでお送りしております。

  • 36二次元好きの匿名さん24/04/25(木) 19:07:02

    違ったら申し訳ないけどヨメ・キラノ先生みを感じる

  • 37二次元好きの匿名さん24/04/25(木) 19:34:57

    >>36

    文章の雰囲気とか分かりやすいよね

  • 38二次元好きの匿名さん24/04/26(金) 02:38:49

    「ラクス……!!」
    「……キラ!?今の言葉を、聞いてしまわれたのですか……!?」
    「ごめん……ごめんね、ラクス……」
    「お、お義母様と、お義父様が……!」
    「僕は君を、君の思いを、見て見ないふりをしていた……」
    「キラ……」
    「でも、そうだよね。
     優しいだけで、ここには、来ないよね……」
    「……はい。あなたの、帰る場所に、私はなりたかった。お義父様や、お義母様のように。
     わたくしは……あなたと共に、いたかったのです……」
    「……ありがとう」
    「……」
    「そして、ごめん。今まで君の思いに気づかなくて」
    「いいえ……」
    「……そうだね。僕の気持ちも。いつか言ったように、僕は君を余所者だなんて思ってない。
     僕も……そう。僕も、君に、側に、いてほしいんだ……」
    「キラ……!!」

    「ねえ、カリダさん。夕食はどうしようか」
    「あなたは夕食抜きです」
    「そんなぁ……一応、気を利かせたつもりだったんだけどなあ」
    「そんな優しいお父さんにはこちらを用意しております」
    「あ、羊羹。お茶が欲しいねえ」
    「ここに用意してあります。市販品ですが」
    「さすがは僕の奥さん。でも、僕らいつになったらこの部屋から出れるかな」
    「……二人して、浴室に移動しているようです。そろそろ出れるのではないでしょうか」
    「周囲が見えてないねぇ……若いなあ」
    「では、私は食材の処理をします」
    「じゃあ久しぶりに手伝おうかな、僕も。さっさと終わらせて、邪魔者は部屋に引っ込もうか」

  • 39二次元好きの匿名さん24/04/26(金) 02:43:54

    引出しの数凄いっす
    甘やかしたいけど敢えて厳しく接しているのか?と思ったけど
    烈女(節操をかたく守る女子。 また、信念を貫きとおす激しい気性の女子。)
    ってあるから今回はそういうキャラなんですかね?
    ここからどう盛り上がるのか楽しみです

  • 40二次元好きの匿名さん24/04/26(金) 02:52:13

    「さて二人とも。言いたいことが色々とあります」
    「はい……」
    「申し訳ありませんわ……」
    「お互いに、想いが通じ合った瞬間は周りが見えなくなるのはわかります。ですが、少しはしゃぎすぎです」
    「はしゃいじゃったね……」
    「浴室で幸せに浸ってましたわ……」
    「キラももう17歳でしょう。少しは自重というものを覚えなさい」
    「ごめんなさい……」
    「ラクスさんももう18歳でしょう。少しは周囲を見なさい」
    「キラの想いを伝えられて舞い上がってしまいました……」
    「二人を止めるつもりはありません。ですが、壁に耳あり障子に目あり。
     私たちへの配慮を忘れれば、そのうち、私たち以外への配慮も忘れてしまいます」
    「はい……」
    「肝に銘じますわ……」
    「まあまあカリダさん、お説教はこのぐらいで、ね?」
    「はぁ……全く」
    「せっかくのお赤飯とごちそうだしね。お酒は……二人とも飲まないかな?じゃあ僕とカリダさんだけ」
    「ありがとうございますわ、お義父様、お義母様……」
    「……ラクス」
    「違いますわ、キラ、これは、嬉しい、から……」
    「こんな風に、これからも何度も食事できるといいねぇ」
    「……ええ。全く」

  • 41二次元好きの匿名さん24/04/26(金) 03:01:03

    ちょっと短いですが、次回につづく。


    >>36>>37

    まーたバレてる…セリフとか言い回しはかなり似通っている自覚はあります。

    でも雰囲気でわかるとかなにそれ怖い。

    なお今回はifものです。こちらの系統です。

    【閲覧注意・怪文書】ご主人様の才能があるからキラを愛したのではありません…|あにまん掲示板愛しているキラだからご主人様になってほしかったのです!!ここだけドMなラクス・クラインが見事キラ・ヤマトをご主人様に育成する世界線bbs.animanch.com
    【閲覧注意・CP注意】ここだけキラとラクスが姉弟として育てられた世界線|あにまん掲示板メンデルから逃げ出すときに、カリダさんとハルマさんは二人を普通の姉弟として育てたがあまりにも遺伝子の相性が良くてキラが10+ dice1d5=@1 (1)@ 歳のときレッツ背徳してしまったキラとラクス…bbs.animanch.com
    【閲覧注意】「ミレニアムが戻るのは、一か月ぶりでしたかな?准将は……」|あにまん掲示板「……いや、失礼。すでに、彼とは」「いえ、お気を使わせて申し訳ございません」ここだけ、FREEDOMの前にラクスがキラに別れ話を切り出してしまっていた世界線bbs.animanch.com

    >>38

    厳しくするのと優しいのは両立すると思います。

    烈女は「意志を貫く」「自由意志で動く」の意味ぐらいで使ってます。

    まあ本編からして双子救って飛び出したあと、キラは手元で育てるぐらいなので大概烈女じゃないかなって…

    相変わらず解釈違い上等でやっております。

  • 42二次元好きの匿名さん24/04/26(金) 07:33:02

    このレスは削除されています

  • 43二次元好きの匿名さん24/04/26(金) 08:06:10

    >>41

    一貫したキララクの哲学に対する視点のクリアさとアイデアの数、弛まない文章力でまあヨメさん及びその別時空くらいしか特定しようがないのです(

    有名税って奴ですねぇ

  • 44二次元好きの匿名さん24/04/26(金) 19:56:19

    保守

  • 45二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 07:06:32

    保守

  • 46二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 15:12:42

    このレスは削除されています

  • 47二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 15:14:20

    このレスは削除されています

  • 48二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 15:14:46

    甘やかすだけが教育じゃないって良く知ってるタイプの母親だ

  • 49二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 15:15:01

    「なあカガリ」
    「どうした、アスラン」
    「なんかキラとラクスからこんなハガキが来たんだが」
    「今時アナログだな……というか、そういう関係になってたのか。驚く、というほどじゃないが」
    「あれから一年以上たったからな……一年同居していれば、そういうこともあるだろう。
     実際、露骨にキラとラクスの距離は縮まってはいたしな」
    「しかしなぜ直接言わないんだあいつら……?」
    「ラクスに言わせると様式美みたいなものらしい」
    「……キラは大丈夫なのか?それだけが心配だ。まともに戻った、というわけじゃないだろう、まだ」
    「この表情を見る限り、回復しているようには見えるが。また様子を見に行くか……」

    『拝啓
     アスラン・ザラ様とカガリ・ユラ・アスハ様におかれましては、ご健勝のことかと存じます。
     この度、結婚いたしました。
     未熟な二人ではございますが、これからも支えあって幸せな家庭を築いていきたいと思います。
     お近くにお越しの際はぜひお越しください。
     今後も変わらぬお付き合いの程、宜しくお願い申し上げます。
     敬具
     キラ・ヤマト、ラクス・ヤマト』

  • 50二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 15:21:03

    「……仕事にいかれるのですか?」
    「うん……ラクスと一緒になったんだし。僕も、いつまでも、ここでぼーっとしているわけにはいかないかな、って」
    「収入はあるのでしょう?まだ、そんなに無理をせずとも……」
    「ありがとう。でも、君だけに働かせているわけにもいかないしね」
    「……一緒にいれる時間は少なくなりますわ」
    「毎日帰ってくるよ」
    「本当に?」
    「……忙しくなったら、毎日は無理かもしれない」
    「では、そうなったら、私から職場におしかけますわ」
    「もう……そうだね。そうならないように、毎日帰ってこなくちゃね」

    「……去る者日々に疎し。夫婦の敵は、ありとあらゆるところに潜んでいるのです。
     子供がいないうちは、旦那様との時間を何より大切にする。できるようになりましたね、ラクスさん……」
    「カリダさん、そういえば僕の職場にちょくちょく殴り込んできてたね……」
    「キラがうちに来てからは、それも難しくなりましたが」
    「僕の仕事自体が、色々制約できちゃったからねえ」
    (※→このへんにカリダさんとハルマさん)

  • 51二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 15:28:38

    「……ただいま、ラクス」
    「お帰りなさいませ、キラ。
     お風呂にしますか、お食事にしますか、それとも……わたくしになさいますか?」
    「うん、まずはお風呂かな……」
    「ではご一緒に」
    「えっ……じゃ、じゃあ、食事で……?」
    「ではご一緒に」
    「えっ……?じゃ、じゃあラクス……?」
    「ではまずは一緒にお風呂に入りましょう」
    「あれ……?選択肢の意味、あった……?」

    「できるようになりましたね、ラクスさん……。
     寂しかったアピールをしつつ、まずは旦那様が入らなければ、他の人が入れないお風呂へと誘導する。
     完璧な新妻の所作と言えるでしょう」
    「……ねえ僕気まずいんだけど。キラとラクスさんがイチャイチャしているところを見るの忍びないというか……カリダさんはよく平気だね?」
    「キラが生きているだけで丸儲けです。ハルマさんもそうでは?」
    「それはそれとして恥ずかしいよ僕は……というか、そろそろ別居してもいいんじゃない?」
    「そんな余裕はうちにはありません……というのは嘘ですね。
     いずれ、キラとラクスさんとは別居するようになってしまうでしょう。それまでは、伝えられることはなるべく伝えなければ」
    「……乙女の勘、ってやつかな?」
    「はい」
    (※→このへんにハルマさんとカリダさん)

  • 52二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 15:38:38

    「キラ?この方はどなたですか?」
    「えっ」
    「お答えください、キラ」
    「この人はマリューさんだけど……?知ってるよね、ラクス?
     というか、孤児院でも結構あってた気が」
    「マリューさん、というのですね。距離が近い気がしますわ」
    「えっと……?ごめん、ちょっと僕には何を言いたいのか……」
    「私があなたにはいるのですよ」
    「う、うん……?そうだね?ラクスは僕にはもったいないほどのいい奥さんだよね」
    「恐縮ですわ。ですが、キラにはもっと自分の立場を周囲にアピールする必要があると思います」
    「えっと……?」
    「こう、結婚指輪をさりげなく見せつつ。『マリューさん、ちょっと距離が……僕には、妻がいるので』などと、しっかり牽制していただかないと」
    「……さすがにそういう関係にはならないと思うけど」
    「そんなことを言って、隙だらけなのでしょう」
    「まあ、そうだけど……でも、嫉妬するラクスもかわいいね……」
    「ではそんなかわいい私のために、他の女からは距離をとってくださいな」
    「仕事に差し支えない範囲でね。うん、心配させちゃってごめんね……」

    「できるようになりましたね、ラクスさん……。
     時には嫉妬を見せつけ、旦那様の自尊心と独占欲を煽る。これは夫婦生活においては重要なことです。
     通常であれば『こいつめんどくせえなあ』と旦那様から引かれるかもしれない。が、ことあのぽややんしているキラにはむしろプラスにしかならない。そこを見切ったアプローチ。
     できております。できておりますねラクスさん……」
    「あれは適当な言い訳でっちあげてイチャつきたいだけじゃないかな……」
    (隣の部屋にいたハルマさんとカリダさんは適当なところで退散しました)

  • 53二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 15:50:10

    「ただいま帰りましたわ、お義母様。
     新しく越してこられたピースクラフト様におすそ分けを渡して参りました」
    「ありがとう、ラクスさん。
     感じのいい方だったでしょう?」
    「はい。時間がかかって申し訳ございません……会話が弾んでしまって。
     隣の奥様も恋愛結婚だったらしく。旦那様とのなれそめについつい聞き入ってしまって……」
    「それは重要なことです」
    「と、いうのは……?」
    「家を守るのは妻の勤め。故に家内。隣人づきあいは重要です」
    「それはそうですわね……」
    「できておりますね、ラクスさん」
    「もったいないお言葉ですわ、お義母様」

    「キラ」
    「ん、なに、ラクス?」
    「お前を殺す、と言ってくださいませんか?」
    「え?嫌だよ。なんで?」
    「いえ、これは殺し文句であって本当に殺すわけではございませんわ」
    「……嫌だ」
    「そこを、なんとか……」
    「ねえ、君は誰?ラクスだよね。ラクス・ヤマト。僕の奥さん。
     そんな人に冗談でも、殺す、とか言えると思う?」
    「えっ」
    「別の意味で殺してほしい、っていうなら、今からしてあげる」
    「……き、キラ?これはある意味予定通りなのですが、目が、怖い、ですわ……?」

  • 54二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 15:56:19

    「あらあら、カガリお義姉様!アスラン義兄様!よくおいでくださいました!」
    「お、おう……?すごい明るいな。
     いやキラが回復したってことだから、それが嬉しいんだろうけど」
    「いやなんか今妙な言葉を聞いた気がしたんだが」
    「いえ、主人のことはもちろん嬉しいですが、それ以上に。
     お義姉様とはご無沙汰しておりましたから」
    「……主人?お義姉様……?」
    「お義兄様も、お疲れでしょう?ささ、お風呂は沸かしてありますわ。
     主人が帰るまで、しばらくお寛ぎくださいな」
    「……妙な呼び方をするな。鳥肌が立つ」
    「またまた御冗談を。お義兄様らしいですわ」
    「……おいカガリ。これは本当にラクスか……?」
    「いや、これは浮かれてるだけでは……?」
    「お義母様ー!お義姉様とお義兄様がいらっしゃいましたわー!」
    「なんか本当にただの奥さんになってるなあ……」
    「あの平和の歌姫の姿か……?これが……」

  • 55二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 15:56:41

    >>53

    別のお嬢様おじゃましてるううううううう?!

  • 56二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 16:02:39

    「あ、アスラン、カガリ。久しぶり……ごめんね。
     もうちょっと早く帰ってこれるはずだったんだけど」
    「モルゲンレーテには慣れたか、キラ?」
    「うん、まあね。でも、僕の仕事OS絡みばっかりだし、これなら端末あれば家で仕事できるかなって」
    「……そうか」
    「なに、アスラン」
    「いや……昔、俺にひたすら課題をやらせてたお前が成長したな、と」
    「もう……僕もいつまでたっても昔の僕じゃないよ。ねえ、ラクス?」
    「いえ、キラはいつまでたってもキラのままですわ?」
    「……言われちゃった」
    「しかし、カリダさんはともかく、ラクスが調理場に立つ姿も様になっているな」
    「綺麗でしょ」
    「……」
    「……」
    「え、どうしたの二人とも」

    「口がにやけ、心が躍っても、手元は狂わない。できるようになりましたね、ラクスさん……」
    「いえ、カリダお義母様こそ流石ですわ。その手さばき、マルチタスク。勉強になりますわ……」

  • 57二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 16:13:48

    口調こそ比較的冷静なまま言動が吹っ飛ぶのはヤマト家直伝なのかもしれない…

  • 58二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 23:03:11

    保守

  • 59二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 07:46:05

    このレスは削除されています

  • 60二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 07:51:53

  • 61二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 08:45:39

    聖人なだけでカリダさんもトンチキ側だなこれ?!

  • 62二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 09:20:30

    で、これ(ラクスの言動)ってハルマさんに実際したことあるんですか?カリダさん

  • 63二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 09:21:54

    ここのカリダさんは間違いなく割烹着を着てるな

  • 64二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 09:54:00

    あーわかったこれ
    「私どものような愛の仕方は確実に遠い距離が募らせて苦しめますから、いっそのこと至近距離でインフレ連打し続けるのが宜しいでしょう」を地で行くやつだ
    スタグフレーションを徹底メタる系カリダさん仕込みラクスさん

  • 65二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 10:08:30

    >>64

    ああなるほど

    ラクスポイントとキラポイントにおける「これだけのことを貰ってるのに自分は何もできてない!!(仕事と身分どころか友人たちも世界規模の仕事すぎて)」の問題点を、

    「姑ムーヴで細かいことをいう」ことで強制的に家庭レベルへと引き摺りおろしてるのか

  • 66二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 12:55:15

    保守

  • 67二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 17:06:02

    「ラクスとキラは買い物に行ったか」
    「しかし、ラクスが見ていて清々しいほど浮かれているような……」
    「大丈夫なんですか、カリダさん?」
    「ええ、問題ございません」
    「ですが……あれだけ浮かれていたら、逆に冷める時はあっという間なのでは?」
    「あれはお互いのことを知ろうとしているからそう見えるだけですよ。浮かれているかもしれませんが、その実、お互いを理解しあおうと必死になっているのです」
    「……お互いのことを知ろうとしている?」
    「一年間、ずっと一緒にいて、お互いのことを十分知ったから結婚したのでは……?」
    「いいえ。ラクスさんにとってはそうかもしれません。ただ、キラにとってはまだここが始まりです。
     そしてラクスさんにとっても、またここからが新しい一歩になるのです」
    「……難しいな」
    「では、こう言い換えましょう。ラクスさんはとっくの昔にキラのことが好きだったでしょう。ですが、キラはやっと今、ラクスさんを好きになり始めたのです」
    「……んん?わかるかアスラン」
    「さっぱりだ」
    「では釈迦に説法かもしれませんが、講釈を。ラクスさんは、随分前からキラのことを好きだった……というのは二人ともご存じかと」
    「ええ」
    「まあ、見ればわかるな」
    「ですが、キラはラクスさんのことを『好きになろうとしている』段階です」
    「……待て待て。そんな段階で、結婚したのか!?」
    「いや、カガリ。『好きになろうとしている』時点で、十分好きなんじゃないか……?」
    「これに関してはお二人とも正解です。早すぎる結婚であった、とは私も思います。ですが、キラが十分ラクスさんのことを好きになっている、というのは間違いないでしょう」

  • 68二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 17:13:28

    確かに種時点だとキラはラクスをあくまで同士として捉えてたみたいだし好きになるのは種終了以降だよな

  • 69二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 17:26:05

    「……うーん?」
    「キラは十分もう、ラクスさんのことが好きでしょう。あの子はそもそも、自分の領域に踏み込んだ人に対しては完全に受け身です。余程失礼な……それこそ、キラにとって元々大切な人のことを傷つけるような相手でなければ、勝手に好きになります。アスランくんもカガリさんも御存じでは?」
    「あー……確かに」
    「そうです、かね……?」
    「なので、ラクスさんが同居した、という時点でほぼ詰めろはかかっていた。あとは、キラ自身がほんの少しだけ些細なきっかけで踏み込めば……」
    「両想いになる」
    「はい。些細なきっかけ、というところにはほんの少しだけ策を弄しましたが。ハルマさんのおかげです」
    「……でも、両想いになったからと言って、結婚はまだ早いんじゃ」
    「その通りです。ですが、私はこういった形式ばった関係の構築があの二人には必要かと思いました」
    「んん……?」
    「夫婦という枠組に嵌める。そうすることで、二人の幸せにより近づくとカリダさんは判断した、と?」
    「はい。両想いになったから。同居しているから。それだけで、人は幸せになりません。
     まだ、人と人の関係は長いのです。……男女というのは、同居していても、容易に別れるものです。
     例えば……環境の変化。すれ違い。価値観の相違。単純に、会えない、というだけでも、男女というものは別れます。例え、その思いがいかに深く、大きくとも」
    「で、でも、ラクスだぞ!?」
    「ラクスさんの愛は深いでしょう。それこそ、今や、キラを世界と天秤にかけられるほど。ですが……それでも、男女というのは別れるものです」
    「……そうでしょうか?俺は、そうは思えませんが」
    「では、例えばの話をしましょう。ラクスさんが愛していても、愛するが故に別れる、ということはあるでしょう。
     今後、ラクスさんがかつての戦乱において果たしたような役割を果たそうとすることがあるのなら、猶更です。
     キラを戦いに巻き込まないために。そんなことを言いそうだとは思いませんか?」
    「ああ……」
    「……確かに」
    「そして、ラクスさんがそう言ったら、キラは断らないでしょう」
    「でしょうね……」
    「結婚、というものはそのための防波堤になります」

  • 70二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 17:37:27

    「結婚、とは何ぞや。アスランくん」
    「籍を入れること」
    「その通りです。では、私にとって、キラとラクスさんの結婚とは」
    「……ラクスが、ヤマトの家の嫁になること?」
    「正解です。さすがですね。お菓子をあげましょう」
    「ありがとうございます」
    「お前、カリダさんにはやたら下手にでるな……」
    「そう。今やラクスさんは天涯孤独。その上、あのようなお人柄です。穏やかですが、決めたことは貫き通す。
     ですが彼女はまだ若い。時には周りが見えなくなることもあるでしょう。そのためにも、『家族』という繋がりを作っておくのは悪いことではありません。例え、形式上の話でも」
    「えーっと、つまり。カリダさんはラクスとキラを結婚させることで、ラクスがキラに別れ話をすることがあっても止めたい。つまり、キラとラクスを別れさせたくない?」
    「ええ。キラが生きていくには、今後間違いなくラクスさんが必要でしょう。もうあの子は壊れかけてしまっている」
    「……え」
    「待ってください!キラは、ラクスのおかげで元にもどったのでは……!?」
    「そんなはずはありません。あの子の心にはすでに壊れてしまっています。そして、人の心は、一度壊れてしまったら、そう簡単に元には戻りません。ただ壊れた後、壊れたままで、どうにか生きていく術を見つけるのみです」
    「そんな、残酷な……」
    「ですが、それが事実です。ラクスさんには申し訳ないことをしました……壊れた者に生涯付き添うことを強要させることになる。でも、その罪は私が背負います」
    「……」
    「いや、あいつはそんなこと気にしないだろう」
    「それはラクスさんではなく、私が決めることです」

  • 71二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 17:49:01

    「……カリダさんが、気にするようなことはないと思います。きっと。
     ラクスはそんなやつじゃありません」
    「アスランくんは優しいですね」
    「いえ。ですが、もう一つ、気になることが。あの二人にとって、やはり結婚は早すぎるのでは……」
    「では、そちらの話をしましょう。結婚することで、問題になることは何でしょう、カガリさん」
    「……相手の親との関係?」
    「はい。まずは一つ目。ですが、そこは私とハルマさんが極力気を遣うことでどうにかしましょう。
     では、他には、アスランくん?」
    「より距離が近くなったことによる弊害。今まで言わなかったことを言うようになることで、互いの距離感が崩れる」
    「それも正解ですね。というより、むしろそれを乗り越えて欲しいからこそ、あの二人には結婚してもらいました。
     最初に言いましたが、絆を深めるのに最も手っ取り早いのは、お互いを知ることです。話し合い、共にやることを増やし、理解する。そういった機会を増やしたかった」
    「……それで、二人の間柄を強固にする、と。なるほど……形式ばった型に嵌めることで、積極的に絆を深めるということですね」
    「あとは……相手に任せきりになったり、逆に相手が負担ばかりかけてきたり……とか?」
    「はい。ですが、キラとラクスさんなら、それはいらぬ心配でしょう。むしろ、あの二人はお互いを思いやるあまりに、想いが明後日の方向に向かう方が心配です。そのためには、やはりお互いを知るしかないのですね」
    「なるほど……」
    「そういう意図があったのか……」
    「あと、夫婦間の問題といえば、性交渉でしょうか。ただ、あの二人はその点、相当噛み合っているみたいで、いらぬ心配でした。この間など、私とハルマさんがいるのに浴室で始めるくらいですので」
    「ッ!?」
    「げほっげほっ……!」
    「あら、どうしました二人とも、顔を真っ赤にして」
    「カリダさん!!」
    「あいつらのそんな話、聞きたくなかった……」
    「アスランくんもカガリさんも、初心ですね……むしろ、そちらが心配になってきました」

  • 72二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 17:55:31

    >>70

    そうだよな

    そう簡単に心の傷は癒されない

  • 73二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 18:00:21

    「気になることは他にも色々あるのですが、結局はあの二人が互いの理解を深めるのを後押ししたかった、というだけです。あとは親の我儘と思ってください」
    「……はぁ」
    「しかし、俺には、あの二人が別れることなど、想像もつきませんでした」
    「そんなものですよ、男女は。理解しようが、何しようが、別れる時は別れます。
     そのための家族。あるいは子供。自ら、あるいは周囲が別れがたくするお節介も、何だかんだと有効なものです。
     ……本当に、ただのお節介で済めばいいのですけれども。このご時世ですので、キラもラクスさんも、このままただの夫婦として片田舎で住む、などということは許されないでしょう」
    「俺たちがそんなことはさせません」
    「そう気張るものではありませんよ、アスランくん……カガリさんのことが大事なら、ちゃんと側にいてあげることです。キラとラクスさんは、私が面倒を見ますから」
    「……いや、私とアスランは、そんな……」
    「それも言ってはいけません、カガリさん。例えその場の誤魔化しでも、それが真実になることがあるのですから。
     そういう意味では、今のキラとラクスさんを見習うべきです。
     四六時中愛を語って、お互いを知って、それでもなお足りない。それが男女なのです」
    「……」
    「ラクスさん。あるいは、アスランくんとカガリさんも。あまりにも、皆さん、優秀すぎます。
     それでは、世界が放っておきはしないでしょう。世界の平和と、あなたたち自身の関係。
     それを、天秤にかける時が来るでしょう」
    「それは……」
    「二人は、それを乗り越えることができるかもしれません。ですが、キラには。あるいは、今やただの少女になってしまったラクスさんには。それを独力で乗り切ることはできないでしょう。
     他の皆の力を借り、家族の力を借り、やっと二人が生きていける。たとえ平和な世界であっても、そんなものです。
     増してや、今の時代では……」
    「たった二人の幸せを求めるだけでも、難しい……」
    「本当は、離れ離れになっても、互いを信じる強さを持てればいいのですけれども。繰り言になってしまいますが、キラには、それは無理な話でしょうね……」

  • 74二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 18:15:26

    これが親の夢!親の望み!親の愛!

  • 75二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 18:15:50

    >>65

    そう言う感じです

    カリダ「『ほら、おうちから出たくないでしょう?』って夫が思えるように立ち回りなさい、さもないと想いだけが昂ぶって、いつしか寂しくなってしまうのはあなたなのですよ」をすっごいツンデレトーンでやってる。

    あなたのキラポイントが高いのは百も承知なのです!から始めた思考実験ですね。


    『ならば、その側にいるのも、ただの少女であり、ただの妻であるべきでしょう。そう生きるのに、あの振舞はいつか邪魔になります』

    『あの二人はお互いを思いやるあまりに、想いが明後日の方向に向かう方が心配です。そのためには、やはりお互いを知るしかないのですね』

    遠くの人の建前の振る舞いより、妻として夫を立てる振る舞いを学びなさい

    相手の価値を高めるだけでなく、お互いに取引を続けて夫婦生活=経済を活気づかせなさい。

    こんな献身的な教えを全身張ってやれる人はそういない。「烈女」たるのも宜なるかな。

  • 76二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 18:16:46

    「いずれにせよ、ラクスさんのことを、キラはまだ知りません。
     そして、ラクスさんのことを好きになったキラのことを、ラクスさんもまた、知りません。
     お互いを知る。あの二人にとっては、そのための結婚です。
     一年もあれば、きっと二人の間で何らかの答えを得てくれるでしょう」
    「……そこはさすがに二人任せなんだな」
    「ええ。あの二人がまた羽ばたくときまでに、それだけの猶予があればいいのですが……」
    「……」
    「カリダさんは、また、戦いが始まると……?」
    「食うや食わずやの子供ですら、そう思ってます。今はそういう時代、でしょう?」
    「……」
    「暗い気持ちにして申し訳ありませんね。でも、二人には知っておいて欲しかった。
     あの二人は、まだまだ始まったばかり。あの子たちを支えてやってください。
     そして、あなたたちも、そうです。あの子たちを頼ってあげてください……」
    「カリダさん!顔を上げてください……!」
    「そ、そうだぞ!あいつらのためなら、できる限りのことはする!」
    「……ありがとうございます」
    「カリダさん……」
    「さて、そろそろ、二人が帰ってきますね。夕ご飯の準備も始めなければ。
     いいキャベツをお隣さんからいただいたんです。アスランくん、ごちそうしますね?」
    「ただいまー」
    「お義母様、ただいま戻りましたわ!聞いてくださいな、キラったら……」
    「……互いに話し合う、か」
    「簡単じゃないよな、本当に……」

  • 77124/04/28(日) 18:19:23

    エロ書いてたらいつの間にか更新が開いてしまいました。また次回。

    >>64>>65>>75

    なんか自分でも考えてない考察が始まってる……

    お、俺はそんなつもりじゃ……ただ嫁姑するラクスさんとカリダさんが見たかっただけで……

  • 78二次元の承影24/04/28(日) 19:49:53

    >>64 >>65  >>73 >>75 >>76


    もしかしたら、種自由の後でも、同様に私は思えます。


    映画の中でも、キラはかなり不安定だったし。ラクスも結構不安定。でもそれを「高い知能」と「ずば抜けた体力」で、なんとか取り繕えていた。


    キラくらい精神が疲弊し病むと、身体も結構損ねる。自由でも食欲が回復してないみたいだし。種死で戦えてしまったのも、かなり心身に鞭打ってのことだし。常人なら、「障碍者手帳」を貰えてしまうかもしれない精神衰弱でしょう。


    心の病でも、「高めの知能」で「気遣いする優しい性格」な人の場合は、かなりフォローできるので、その実態を当人も周囲も気が付かず、重篤な二次障害を発生させることがしばしばありますし。



    あと、ラクスもキラほどではないけど、彼女も「天涯孤独」になり、種自由では父の政治目標を受け継いで果たしていかないとならないのなら、そりゃ結構な過酷で、いつ病むかわからない危険ゾーンに入っていると思います。漢方・中医学とかいうと「精神病の未病状態」かもしれない。

  • 79二次元好きの匿名さん24/04/29(月) 06:31:58

    保守

  • 80二次元好きの匿名さん24/04/29(月) 14:47:10

    保守

  • 81二次元好きの匿名さん24/04/29(月) 19:30:21

    保守

  • 82二次元好きの匿名さん24/04/30(火) 05:25:36

    保守

  • 83二次元好きの匿名さん24/04/30(火) 12:58:14

    「ラクス、どうしたのさ急に。一緒に本を読みたいなんて」
    「ええ、こちら、お母様からおすすめされたので」
    「……ラブコメ?こういうの母さん好きだったの……?」
    「いかがでしょうか、キラ」
    「うん、いいよ。仕事もひと段落ついたし、お茶でも飲みながら一緒に読もうか」
    「ありがとうございますわ」
    「ううん、僕こそ。こんな風に、君としゃべれる時間とれるのは、嬉しいかな」
    「……はい。……え?」
    「こっちの方が一緒に見れるでしょ?」
    「はい……♡」

    「趣味や性生活とは離れた娯楽。それもまた夫婦にとって必要なひと時なのです。
     頑張るのですよ、ラクスさん……」
    「あのコッテコテの少女漫画、まだ持ってたんだねカリダさん……」

  • 84二次元好きの匿名さん24/04/30(火) 20:59:43

    保守

  • 85二次元好きの匿名さん24/04/30(火) 21:01:18

    カリダさん達くらいの世代でコッテコテと言われるってかなりの直球王道モノなんだろうな…

  • 86二次元好きの匿名さん24/05/01(水) 03:23:39

    保守

  • 87二次元好きの匿名さん24/05/01(水) 10:55:29

    保守

  • 88二次元好きの匿名さん24/05/01(水) 12:26:10

    「……はぁ」
    「どうしたのですか、キラ」
    「ん……ちょっと我儘言っちゃってね。カガリに怒られちゃった」
    「キラが我儘……?珍しいこともあるものですね」
    「ラクスとお祭りに行きたいって言ったんだけど、来賓としてか?って言われちゃって。
     普通にお祭りに参加したい、って言ったらダメだって」
    「ああ……」
    「言われて初めて気が付いたよ。僕はともかく、ラクスは本当だったら、もっと厳重に警備されたりする人だよね。
     そりゃそうだ……」
    「では、こちらを」
    「ヘッドギア……?なにこれラクス?新手のゲーム?」
    「ちょっとしたシミュレーターを作ってみましたの」
    「え、何このクオリティ……」
    「一緒に遠出もままなりませんので、お義母様と一緒に作ってみましたわ」
    「……母さんなんでこんなもの作れるの……?」
    「さあデートですわ。旦那様から誘ってもらえて私は調子に乗っております」
    「誘えなかったんだけどね……じゃあ、一緒に遊ぼうか」

    「ふふふ……夫の悲しみをすぐさまフォロー。できていますね、ラクスさん……」
    「キラのことがあったから、僕らもあんまり遠出できなかったからねえ。
     色々作ったものがこんなところで役立つとは」
    「アップデートもしっかりとしましたので。私たちもこちらで楽しみましょう」
    「懐かしいね、本当」

  • 89二次元の承影24/05/01(水) 16:32:09

    映画版では、キララクはタンデムでバイクに乗ってましたね。

    意外とツーリングも趣味になるかな。

    中の人つながりで、森里蛍一とベルダンディーを思い出しましたオッサンです。

  • 90二次元好きの匿名さん24/05/01(水) 16:37:31

    このお母さん何者!?

  • 91二次元好きの匿名さん24/05/01(水) 16:52:25

    >>90

    姉がメンデル研究員のヴィアさんだもの

    カリダさんの才を盛っても誤差よ誤差

  • 92二次元好きの匿名さん24/05/01(水) 21:51:23

    保守

  • 93二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 07:11:26

    >>90

    実はモルゲンレーテのシステム部門で働いてたのが夫婦の馴れ初めなのかもしれん。

    在宅でもちょこちょこやってたのを幼い頃からキラが見ていたからそっち方面での才能がスパコ補正で開花しまくった結果が本編のアレだと思うとちょっとやれんけども(実際ドラマCDでもプログラム関係はアスランより組むのが早く独創的だという描写だったし)。

  • 94二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 18:00:14

  • 95二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 22:41:30

    保守

  • 96二次元好きの匿名さん24/05/03(金) 07:20:37

    保守

  • 97124/05/03(金) 09:29:18

    申し訳ございません
    少し別のネタを思いつきましたので一旦止めてしまいました
    保守していただければ、そちらのネタが終わり次第継続いたしますが、落としていただいてもその後継続いたしますので、ご容赦いただければ幸いです
    取り急ぎご連絡とさせていただきます

  • 98二次元好きの匿名さん24/05/03(金) 16:22:21

    保守

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