【閲覧注意】伊織ママスレ 後半戦

  • 1二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 22:19:03

    このスレは【閲覧注意】タケルママがいるなら のスレの続き兼感想スレです


    元スレ


    【閲覧注意】タケルママがいるなら|あにまん掲示板伊織ママがいてもいいんじゃないか?bbs.animanch.com
  • 2二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 22:20:55

    建て乙

  • 3二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 22:21:46

    建て乙
    まさかの展開でびっくりしたわ

  • 4二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 22:22:38

    10まで埋め

  • 5二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 22:23:03

    うめうめ

  • 6二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 22:23:06

    建て乙~
    最初はわぁいママ~と思っていたのにまさかあんな

  • 7二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 22:24:10

    まさかの展開だったぜ

  • 8二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 22:24:20

    子供が終わりにするからってことはあそこから聖杯戦争かあ
    ハピエンになってくれー!!

  • 9二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 22:24:52

    埋め

  • 10二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 22:25:11

    埋め埋め

  • 11二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 22:38:27

    たておつ

  • 1222のエミュってた人24/04/27(土) 22:47:46

    スレ立てありがとうございます
    終わりの目処は何となく立っているのですが肝心の本文が書けていない有様なので気長に待っていてもらえると助かります

  • 13二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 22:54:17

    「ぼく」が泣いちゃった時にあわあわしてる伊織
    涙拭うか抱きしめるか撫でるか悩んだ故の動きと思うとかわいいな……

  • 14二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 07:25:07

    保守

  • 15二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 15:01:10

    ハピエンを伊織と迎えたいんだ

  • 16二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 15:48:23

    受肉家族エンドでも
    親離れはするものだエンドでも
    どっちでも泣くかもしれん

  • 17二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 16:12:06

    受肉エンドでずっと親子していてもいいし、もう一人で大丈夫と独り立ちして見送るエンドでも良い……
    なんにせよ「ぼく」と伊織が幸せな終わりであってくれ……

  • 18二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 21:40:17

    保守

  • 19二次元好きの匿名さん24/04/29(月) 01:03:06

    済まない、待たせてしまったな
    記憶は全て戻った。支障はない
    その様子だと、お前も同じ術にかかっていたのか
    令呪の魔力によるものか、それともお前自身の心の内の問題か……まあ、兎にも角にも、だ
    ———覚めたのだな、マスター

    あの時、お前には辛い選択をさせてしまったと思う
    俺の言も所詮は口約束。お前は揺籃に沈み、現から目を背けることもできた
    ……俺は肝心な時に、お前一人に別離を決意させ、全ての責を負わせてしまったな

    ああ、泣け泣け。泣いてしまえ
    子は泣くのが仕事だろう。今日くらいは、誰もお前を咎めないよ
    ……うん、そうだな。辛かったな。本当は、ずっと一緒にいたかったんだな

    ……大人になった姿を、見てもらいたかったんだな

  • 20二次元好きの匿名さん24/04/29(月) 01:05:06

    ……落ち着いたか?想いも、未練も、後悔も、全て吐き出せたか?
    そうか、ならいい。また云いたくなればいつでも云え
    それは決して悪ではないよ
    そも、人の想いとは一つに括ることは難しい
    過去を悼むことも、現実から目を逸らすことも、それでも前を向くと決めたことも、その全てが今のお前を象っている

    故に、辛きも、苦しきも、何も捨てることはない
    全てを拾って、お前は明日へ進んでいくといい

    まあ、生前の記憶さえも朧げな虚の身である俺に云われても、困るだろうが……
    ……そんなことはない?ずっと見守ってくれた、優しい人?

    ……ああ、そうか。お前は、俺をそのように云ってくれるのだな

  • 21二次元好きの匿名さん24/04/29(月) 01:07:06

    まだ、全ては割り切れぬだろう
    回顧がお前の手を引き、影を落とすこともあるだろう
    無理もない。そも人生とは儘ならぬものだ
    ……それでも、日々は止まってはくれない。過去は二度と訪れない
    時は流れ、変わり、移ろうもの。お前の前に立ち塞がるのは、途方もない今の続きだ
    この先、お前の人生には艱難辛苦が待ち受けている
    もしかすると、また全てを失うことも、あるのかもしれない
    ああそうだ。お前が失ったものは、この先永劫に手に入らぬものだ。替えのきくものではないことは、お前が一番分かっている事だな

  • 22二次元好きの匿名さん24/04/29(月) 01:09:15

    だが、全てを失う前に、お前に与えられてきたものは、確かにお前の中に息づいている
    それは、それだけは、決して失ってはいない筈だ

    ……でなければ、あの日お前は傘を置いてきたりはしなかっただろう?
    失うばかりではない。残るものは必ずある。生前のあれそれを何処かに落としてきて、それでも現界している俺の言だ。信用して欲しい

    ———それに、既に新たな縁は紡がれている。芽吹くものはある
    例えば……そう、そこで今にも飛びかかりそうに待機している、犬公とかな
    おっと、本当に飛びかかってくるとは。よしよし、居てくれて助かった
    夢と現の狭間にあったものだから判断がつかず、すわお前も夢の産物かと危惧していたのだが……どうやら現の者であったようだ

    ……だから、いつかお前が大きくなり、大事にしたい人ができた、その時に
    お前が貰った愛を、返してやりなさい
    それが、過去の残滓を次に渡し、確かに彼等は其処に在ったのだという証として、未来に紡いでいくことに繋がるのだから

  • 23二次元好きの匿名さん24/04/29(月) 01:11:18

    難しいか?……うん、難しいなぁ
    すぐにでも分かることではないし、分かったところでその様に在れるかはまた別の問題だ

    故に、今すぐにでも変わる必要もないだろう
    ……いつまで居てやれるか、確約はできないが
    これからのお前の生において、この身が果てるまでは、俺がお前の荷を共に背負おう

    ……つまり、まあ、なんだ。養父か、養母か、義兄か、それとも別の何かか……今更だ。好きに選べ
    俺としては剣として在ることに加えて、二つか三つほど肩書きが増えるだけだ。さして問題はあるまい
    何より、微睡みから覚めることを選べたお前ならば、今更混同はしないだろうしな

  • 24二次元好きの匿名さん24/04/29(月) 01:12:51

    では、改めて
    マスター。此度の召喚において、この身在る限り、俺はお前の願いに寄り添おう
    我が身、今や虚であれど、主命とあらば馳せ参じる次第だ
    お前であれば、正しき道を往けるだろうさ
    故にこそ、俺はお前を信じ、いつか訪れる別れまで、共に在ることを誓う
    この剣、好きに振るい、好きに使え

    覚悟はできたか?よし、良い返事だ
    ではまず、聖杯戦争のおさらいといくか
    おい、爺さん、もう起きても良い頃合いだ。霊基の変質に巻き込んでしまったのは申し訳ない限りだが、適応も済んだろう。寝坊している場合ではないぞ
    ん、おはよう。とはいっても、もう夕暮れだが
    ああ、お前にはまだ説明していなかったな。これは紅玉という
    そう、所謂……当世風に云えば、魔術、いや、魔法の本だな。喋るぞ
    はは、こういう類に食いつきがいいのは夢でも現でも相変わらずか

    これからも宜しく頼む、マスター

  • 2522のエミュってた人24/04/29(月) 01:15:46

    これで完結です
    ここまでお付き合い頂きありがとうございました

  • 26二次元好きの匿名さん24/04/29(月) 01:16:50

    うおおおおつでした!!!!
    爺さん!!起きてる!!!

  • 27二次元好きの匿名さん24/04/29(月) 01:21:05

    うわああああ(泣)
    エミュってた人おつ!!
    大作をありがとう

  • 2822のエミュってた人24/04/29(月) 01:23:21

    蛇足かもしれないですが、今後の希望を見出すのと辻褄を合わせるために作った設定のようなものをあげときます

    あくまでエミュ主の解釈なので好きに設定生やしたり無くしたりしてわいわい語ってくれると嬉しいです


    設定のようななにか・マスター

    聖杯戦争巻き込まれ系一般人のまだ幼い少年。兵庫県出身の宮本姓。汎人類史の伊織とは遠い血縁なのかもしれない。とある理由で家族が全員死亡している

    本来ならば汎人類史の宮本伊織が召喚される筈であったが、剪定事象の伊織が喚ばれたのは、伽藍堂故霊基が変質しやすくマスターとの相性が良かったからか、家族全員を亡くした共通点からか

    伊織を亡き家族に見立てたものの、結局のところ本当の家族はいないことを理解していたため、令呪の魔力も後押しし、心の底では享受しきれなかったことも相まって聖杯戦争が開始されるまで自己暗示をかけて誤魔化していた

    誰かなんて選べないくらい、もっと愛してもらいたかったし、もっと愛を返したかった。伊織の在り方がブレまくってたのはそのせい

    今後は聖杯戦争を駆け抜ける中で少しづつ成長し、自立していく

    それはそれとして多少欲張ってもバチは当たらないと思う


    ・宮本伊織

    セイバークラスのサーヴァント。伽藍堂の霊基のため軽度の精神汚染を伴って召喚された。内容はマスターに対して母性・父性・兄性を抱く程度のものだったが、令呪を使用されたことで精神汚染の強化に加え、記憶改鋳、認識阻害などが付与されてしまう

    マス…
    telegra.ph
  • 29二次元好きの匿名さん24/04/29(月) 01:51:53

    とある敵サーヴァント戦

    相手は「得意なクラスではない」というものの滅茶苦茶強いし何より伊織の動きを知っているような戦いをする

    あわやこれまで、というところで安全な所に隠れていたはずのマスターが駆け寄りながら「セイバー、勝って!」と令呪を発動。ブーストされた伊織の燕返しで敵サーヴァントに致命傷を負わせる。
    戦場に現れたマスターに慌てて駆け寄る伊織。すると少し離れた所から誰かの断末魔が聞こえた。

    「――全く。敵を仕留めたか確認せず目を逸らすとは、キミらしくもない」
    「アレのことは気にするな……キミのマスターを狙っていた。野暮なことはこの私が許さぬ」
    「私はもうどうせ消えるし、何より飯をくれないマスターなどマスターと認めていない!」

    聞こえた声は彼のマスターのものだったようだ。彼は伊織とそのマスターを見て何かを納得したようで、

    「しかし……そうか……ふふ」
    「それは……勝てないな」

    何処か嬉しそうにしながら、長い黒髪を三つ編みにしたサーヴァントは消滅した。



    神作品につられて衝動書きしてしまいました……

  • 30二次元好きの匿名さん24/04/29(月) 11:21:10

    素敵な物語をありがとう🙏✨

  • 31二次元好きの匿名さん24/04/29(月) 11:36:55

    すごい良かったーー!!完結乙です!!!
    本当にありがとうございます!!!

  • 32二次元好きの匿名さん24/04/29(月) 19:26:33

    名作に出会ってしまったな
    てっきりよくある怪文書スレだと思っていたのに…

  • 33二次元好きの匿名さん24/04/30(火) 00:47:38

    ガス爆発は7騎出揃って早々に何処かしらの陣営がおっぱじめてたんだろうな…
    そこからわりとすぐ目覚めてたのは本当にたまたまタイミング良かったのかはたまたもう戦いが始まるのをなんとなく勘付いたからなのか

  • 34二次元好きの匿名さん24/04/30(火) 10:03:20

    伊織「どけ!俺はお兄ちゃん(お父さん)[お母さん]だぞ!!」

    うーんこれは他鯖も困惑

  • 35二次元好きの匿名さん24/04/30(火) 20:57:34

    スレはハッピーエンドで終われて良かったけどもし目覚めなかったらと思うとゾッとしなくもない
    本当にどうなっていたんだろうか…

  • 36二次元好きの匿名さん24/04/30(火) 21:35:15

    姿を表さないセイバー陣営に痺れを切らした何処かが探し当てて…END

    聖杯戦争期限切れ自然退去

    前者はDEAD ENDだし後者も起きるタイミング逃したマスターは1人ずっと夢の中
    かな……

  • 37二次元好きの匿名さん24/05/01(水) 00:58:57

    ここでちゃんと目覚められたマスターくんには型月主人公の素養がある

  • 38二次元好きの匿名さん24/05/01(水) 08:00:44

    精神汚染……って思ったけど無かったら上手く説得するか寝てるとこ運ぶかで早いうちに教会連れてって退去しちゃいそうだもんな……

  • 39二次元好きの匿名さん24/05/01(水) 19:19:52

    このマスターピグレットランドで大はしゃぎしてたからキャスターにキュケオーンをお食べ!されてついつい喜んで食べに行ってしまいピグレットになっちゃって伊織に「マスター……マスター!?」って突っ込まれるギャグイベ挟まりそう
    たぶん元の姿に戻ったら説教されるやつ

  • 4022のエミュってた人24/05/02(木) 06:24:00

    感想ありがとうございます
    今更ですが別の可能性も見たくなったので書きました
    もし覚めなかったら、というBADEND分岐です


     ふと、違和感を感じることがある。
     例えばそれは、家を掃除しているときであったり、食器を棚に戻すときであったり、偶に⬛︎⬛︎が手伝いをしてくれるときであったり。
     そういった、何気ない日々の隙間に既視感が差し込まれる。それも、日課をこなして得るような達成感ではなく、無為に停滞の中を過ごしているかのような空疎を伴って。
     漠然とした焦燥が常に胸の内を渦巻いている。ぐるぐる、ぐるぐるととぐろを巻く。由も解らぬまま、それでもこの身に巣食う渦の目は、このままではいけないと伊織を諭す。
     内心で首を捻る。何が、いけないのだろうか。だって、今はあまりに平和だ。あの子は少しばかりわんぱくなきらいがあって、時たま傷やら汚れやらをこさえて帰ってくることはあるが、それでも不幸に遭ったことはないし、最近は拾ってきた犬公もいる。家は二人と一匹で暮らすには随分と広いが、部屋を満たすのは静寂ではなく、団欒による言の葉たちだ。
     案ずることは何もない。憂慮することは何もない。満たされている、筈だ。
     ……筈であるのに。
     何故、俺は、こんなにも———。

  • 41二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 06:25:25

    「どうしたの?」
     
     そこで、伊織は我に返った。ついていた肘を下ろし、いつの間にか伏せていた目を正面に戻す。眼前には、不思議そうな顔をした⬛︎⬛︎が目を瞬かせていた。座らせていた椅子はどうにも少しばかり座高よりも高いらしく、地につききらない足をプラプラと揺らしている。卓の上に置かれているのは数枚のプリントと筆記用具。リビングの壁に掛けられている時計は、その短針を八より少し過ぎた頃に向けている。⬛︎⬛︎の小さな手に握りしめられている鉛筆は、すっかり動きを止めてしまっていた。
     ———そうだ。俺は今、この子の宿題を見ていたのだった。

  • 42二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 06:26:07

    「ッあ、ああ。少し考え事をしていた、済まない。……さて、何処まで進んだのだったか」
     
     一度首を振り、先ほどまでの懸念を思考の底に沈める。身を乗り出してみせれば、⬛︎⬛︎は空白を埋めたプリントを此方に回転させて差し出してきた。それを受け取り、内容を確認する。入れ違いに、⬛︎⬛︎は横に捌けさせていた手付かずのプリントに取り掛かった。
     時折、間違っている部分を指摘し、一緒に解き方を考えてやる。炭を紙に滑らせる音と、秒針が時を刻む音が部屋に響く。
     外は珍しく車の通る音一つさえしない。静かな夜であった。
     家庭教師の真似事をしているものの、所詮は小学校の範囲であり、特に頭を悩ませるものはない。そうなってくると、余剰分の前頭葉が先程投げ出した疑念を浮上させる。とはいえ、答えが出ないものは仕方がないので、思考は早々に別の心配事を提示してきた。
     ───最近、どうにも視線を感じる。ゴミを捨てに行くときであったり、買い出しをするときであったり、伊織が家に帰るまで、誰かに見られているような気がするのだ。すわこれが世にいうストーカーかと振り返ってみても誰もいないので、自意識過剰かとも思ったが、一度抱いた疑念とは簡単には消えてくれないものらしい。知らぬうちに気を張っていたから、無自覚に気が滅入っていたのだろう。既視感だなんだと妙なことを考えてしまうのも、そのせいだ。

  • 43二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 06:27:57

     時計は九時を指している。いつの間にか半刻も経っていたようだ。⬛︎⬛︎も眠くなってきたのか、時折船を漕いでは目を擦っている。宿題の期限はまだ三日ほど先だ。今日はこのくらいで良いだろう。
     そう云おうとした瞬間、視界が真っ暗になり、何も見えなくなった。
     停電だ。この様子だと家全体の電気が落ちている。目が慣れ次第ブレーカーを確認しに行かなければ。その旨を⬛︎⬛︎に説明し、転んではいけないから、おまえはここで待っていてくれと念押しする。⬛︎⬛︎は戸惑っていたが、どうやら眠気が勝ったらしい。いつもより間延びした口調でわかったと返答があったので、すぐに戻ると返す。表情までは解らないが黒く動く塊が見えたので、うすぼんやりと輪郭が捉えられる程度には視界も順応したようだ。
     足元を見ると、異変に気付いたのか、卓の下で丸まり寝ていた犬公が起きだしている。珍しく牙をむき出しにして唸っているものだから、落ち着かせるためにふかふかとした毛並みを撫でてやると、今度はこちらにすり寄って、まるで心配するかのように見上げてきた。

  • 44二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 06:28:59

    「おまえはここであれと一緒に居てやってくれ」
     
     そう頼むと、犬公は一鳴きし、⬛︎⬛︎の元に歩いて行った。⬛︎⬛︎は椅子から降りて犬公を抱き上げ、柔らかい毛並みに顔をうずめている。あたたかくて心地が良いのかふくふくと笑っているので、少し離れていても平気だろう。緊張感のない事である。
     リビングを抜け、玄関に向かおうと廊下に足を踏み出し中間まで進んだところで、冷えた空気が頬を撫でた。
     ───玄関の扉が、開いている。
     それに気づき、急いで振り返ろうとした途端、

  • 45二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 06:29:51

    「───がッぁ、」
     
     影が一つ。伊織に解ったのはそれだけだった。
     胸のあたりを一息に貫かれている、恐らく心臓まで届いているだろう。凶器を引きぬかれ、力なく膝をつく伊織に目もくれず、影の気配が立ち消える。追いかけようとして力を入れたはずの足がぐらりと傾き、そのまま重力に従い倒れ伏す。胸部から灼熱のような痛みが発せられるが、そんなものにかまっている暇はない。
     腕を床に這わせ、己の身体を手繰り寄るように引き寄せる。その動作を繰り返す。繰り返す。繰り返す。
     疾くあの子の元に向かわねば。あの影はきっと逃がしてはくれない。ああでもどうか、後生だから───。
     余裕のなくなった思考回路が、延々と無駄な祈りを繰り返す。焦って、身体はうまく動かなくて、それでも進んで。
     急に、頭の奥で、何かが切れる音がした。
     
    「———ぁ」
     
     その瞬間、全てが解った。
     全てを、思い出した。
     何が途切れたのかも、解ってしまった。
     そうだ。とっくに手遅れだった。
     俺も、あの子───マスターも。

  • 46二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 06:30:50

     緩慢な動作を機械的に繰り返して、リビングに辿り着く。答えなんて解りきっていたが、確かめずにはいられなかった。
     果たしてマスターはそこに居た。動かぬ屍となって、床に転がっていた。犬公も同じようにして、すぐそばで息を絶やしていた。
     傷口は伊織と同じく心臓を一突き。人ではない伊織は霊核を砕かれても多少の猶予があるが、今を生きる者の身ではそうもいかないだろう。恐らく、一瞬だったはずだ。 
     あの子は、失ったものを取り戻そうと足掻いていた。二度と手に入らぬそれに、懸命に手を伸ばしては面影に縋りつき、もうとっくに物語は終わっているのに、頁を反対にめくっては過去に浸っていた。進む針を手折ったところで、時は戻ってくれないのに。
     
     ———それを知っていて、俺はお前を止めることができなかった。おまえと共に沈むことしか、この身如きには為せなんだ。……そして、挙げ句の果てが、この末路だ。

  • 47二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 06:31:31

     地に投げだされ、横たえられた手に向かって、碌に動かない腕を伸ばす。鉛のように重いそれは持ち上げることさえも億劫で煩わしかったが、少しずつ、少しずつ距離を狭めていく。体感では気が遠くなるような時が過ぎた様に思えたが、恐らく実際にはそれほど経ってはいないだろう。漸く、指先に触れた。手を重ねて、包むようにそっと握る。どちらとも付かない血が互いの掌を汚す。同じ赤の筈なのに、小さな手に刻まれていた令呪は霞み、残滓さえ残さずに消えていく。
     それは己も同様だ。手足の先が、光の粒子となって解けていく。惨劇の現場にしては不釣り合いなほど幻想的な光景。しかし、仮初の命を削り生み出された光は、物云わぬ主人を照らしてくれた。コロコロと表情が移り変わるかんばせは、今は不思議なくらいに安らかだ。

  • 48二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 06:32:41

     ———せめて、最期くらいは苦しまずに、家族の元に旅立てたのだろうか。
    虚構の幸福に微睡んだまま、逝くことができたのだろうか。
     眩い思い出を、摘まないままで。
     
     はくり、と空気を食む。震える喉からは音の代わりに血がせり上がり、口の端から滴り落ちる。
     もう、ここには誰もいない。彼岸の住人に声は届かない。
     けれど、こんなにも穏やかな顔をして眠っているのだから、何か云ってやりたくて。遺してやりたくて。
     しかし、なんて云えば。
     本物でもない俺が、何を———。
     
     ———ああ、そうだ。きっと、これくらいならば。
     おまえは、許してくれるだろうか。
     
    「………⬛︎、⬛︎  ⬛︎      ⬛︎」
     
     声にならないまま、息を紡いで。
     それが、最期だった。
     
     
     朝が来る。日が昇る。
     町には今日も生きる音が木霊する。
     その一角に、寄せ合い地に伏せ眠る骸が一つと一つ。
     しかし、あともう一人。人知れず消えた影法師に気づく者は、もう誰もいない。

  • 4922のエミュってた人24/05/02(木) 06:37:23

    これで分岐ENDは完結です
    朝から失礼しました

  • 50二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 07:41:04

    おつです
    うわあああああ探し当てられEND!!!( ;ω;)

  • 51二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 08:06:08

    おつでした
    必要ポイント足りなくて迎えたBADEND感……

  • 52二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 10:06:50

    正気に戻ったら戻ったで戦い方悩ましいよな
    マスター籠城にも限界あるしかといって戦場に連れてくのも難しい

    なんか上手いこと隠れて聖杯戦争終盤まで謎のマスター枠になってそう(というかなってないと色々マズいかも)

  • 53二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 12:21:43

    ポイント制マルチエンドだった場合
    学校行く以外で外行く選択肢取らなかったらこうなりそう

    ざぶーんやらピグレットランド行った時に伊織が飲み物買いに行ったりちょっと1人になったタイミングでキャスターやアーチャーから「このままじゃよくないよ(意訳)」みたいなこと言われたり、
    前スレで出てたカーネーション送るのとかが複重して伊織側が違和感持ったりしてゆるみが出る→目覚めに繋がる

    みたいな感じだろうか

  • 54二次元好きの匿名さん24/05/02(木) 20:39:26

    アーチャーとキャスターはまだ戦い始まってないのに自分の所に現れたセイバー陣営に「!?」ってなったりしたのだろうか
    でもギルひと目見て事情察するしキャスターもこっそり観察するなりして様子おかしいの判りそう

    状況改善には伊織側からどうしようもなさすぎて(精神汚染+令呪)ギルすらちょっと真面目に哀れみそうだ
    その分戻った姿みたらすごく上機嫌になる

  • 55二次元好きの匿名さん24/05/03(金) 07:54:27

  • 56二次元好きの匿名さん24/05/03(金) 17:56:18

    保守

オススメ

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