【長編ssスレ】パルデアの核弾頭 in ガラル【キャラ崩壊注意】

  • 1二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 19:00:37
    【※性格改変注意】チリ婦人、ヤブからアーボック【ssスレ】|あにまん掲示板https://bbs.animanch.com/board/3001788/こちらの概念からインスピレーションをお借りして、他スレでssを書いていた者です。ssスレとして立て直しました。↓私のスレh…bbs.animanch.com

    ↑こちらのssを書かせていただいた者です。


    SVキャラの性格が反転した世界。


    今回は、

    反転グルーシャさんが、性格は本編通りのガラル地方へと乗り込むお話です。


    前回同様、キリの良いところまで直接投下からのライトニングでまとめる方式で行きます。


    前とは違って、

    オチがおぼろげにしか浮かんでいない見切り発車ですが、完結目指してチマチマ書き進めますので、

    お暇でヒマで仕方ない時にでも、ご笑読や保守いただければ幸いです。

  • 2二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 19:03:10

    来やがった!って気持ちと続きを待ってた!って気持ちが拮抗してる

  • 3二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 19:06:45

    自分の某所垢です。こちらにも前作を投稿しておりますので、まとめ代わりに……


    けつあつ主にポケモンSV二次創作の者。ssや小説を書くのが趣味です。

    こちらでは、ちょっぴりダークだったりシュールな作風を投稿します。複垢持ち。

    投稿する文章のジャンルや毛色で使用を分けています。

    ↓正気なのを書く垢

    https://www.pixiv.net/us…
    www.pixiv.net

    ↓登場人物のステータス


    グルーシャ→パルデアの藤○弘、。


    スノーボーダー時代はサムい性格だったが、ポケモンや勝負と出会って熱血ではない何かに変貌。


    勝負服は柔道着。


    常人離れしたスタミナやバイタリティを持つ。勝負の腕はオモダカに匹敵。

  • 4二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 19:09:01

    ※時系列は「2人のチリちゃん」後〜剣盾の本編直前あたり。ガラル勢の性格は本編通りです。

    「薄明」要素とかも上手く拾えたらなあ……

  • 5二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 19:16:14

    『ナッペ山ジムリーダー・グルーシャ超人伝説』

    ・リハビリとして始めた各種の武道や手習い、あわせて24段と3級。

    ・キャッチコピーは『絶対零度のウィンターヒート』。もしくは『パルデアの核弾頭』。

    ・背丈ほどの岩を蹴り返してもビクともしない脚力。

    ・怪我をした野生のクレベースをかついで雪山を登るスタミナ。

    ・ビリリダマがひしめく地雷原で柔道の取り組みを行う胆力。

    ・オモダカが繰り出したドドゲザンのドゲザンを真剣白刃取り。

    ・1km先の迷子の泣き声を聞きとる聴力。

    ・武者修行と称して訪れたホウエン地方にて、132ばんすいどうの海流を、10匹のサメハダーに追われながら逆行。

    ・巨大なミサイルにしがみついて軌道を変え、爆発に巻きこまれながらも、成層圏から無傷で生還

  • 6二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 19:19:06

    人間じゃねぇ!

  • 7二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 19:19:36

    10近くになりましたら本文を投下していきます。
    「またやってるよ」と気長〜に見守っていただければ幸いです

  • 8二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 20:16:58

    待ち

  • 9二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 20:22:16

    主です。
    次レスから本文となります!書きだめがほとんどありませんので、亀更新になりますがご容赦くださいませ……

  • 10二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 20:22:54

    待ち
    この性格の場合厄介じゃないナンジャモのファンなのか別の厄介さを醸し出しているのか気になる

  • 11二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 20:24:29

    >>10このスレ世界ではナンジャモがグルーシャ好いてる感じです

  • 12二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 20:26:42

    (part1)
    瑠璃色にたゆたう大海原。夜明け前の月あかりに照らされた西パルデア海の沖を、1匹と1人が、サメハダーも顔負けの猛スピードで進んでいた。
    「待っていろおおお!あと5時間で着くからなああ!!」
    ザザザザザザザザ……!
    水平線へと向かって、爆速でクロールをかき続ける男。
    そのはるか頭上の夜空では、男の切り札――チルタリスが、主の大きなリュックサックをぶら下げて併走している。
    「見ろ、チルタリス!ボク達の急く思いが、この子らにも通じているみたいだな!」
    恐れと慄きから。弾丸のような速度で男が近づいて来るなり、野生の水ポケモンたちは二手に分かれて道を開けていく。磯の臭さにどっぷり浸った柔道着や、濡れそぼった青い髪も気にとめず、『パルデアの核弾頭』ことグルーシャは、ガラル地方へ向けて渡海していた。ライドポケモンやボートに頼らず、もちろん生身で。
    きっかけは、ガラル地方の消印がついた1通の手紙。
    『拝啓、パルデアのウィンターヒート様。
    まずは、見ず知らずの貴方へ突然の便りを送る不躾をお詫びいたします。』
    送り主の実直さが、ひと目で伝わる冒頭。一番弟子・ナンジャモにも劣らない整った筆致は、便せん数枚に及んでいた。

    『……もしもで構いません。もし、ガラル地方に降りたつ機会があれば、どうか、わたしの大切な人を助けてください。勝負の道に魂を込めた男。ポケモンを愛し、手持ちを信じ、己に克つ男。
    わたしでは想像もつかない大きな苦しみを乗りこえられた貴方なら、きっと彼の孤独も癒してくれると信じています。
    ラテラルタウンジムリーダー・サイトウ』

  • 13二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 20:43:32

    「やっとチリさんが1人に戻れたかと思えば、今度はグルーシャさんが消えるなんて!!」
    四天王が働くリーグのオフィス。自分のデスクを大人顔負けの力で叩きながら、ポピーが怒鳴り散らした。
    「まあまあポピーさん、落ち着いて!」
    グルーシャ捜索のため、部屋中を右往左往している職員たちの目がいっせいにポピーを向く。
    「ジムチャレンジの期間が終わっているだけ良しと思いましょう!」
    困り笑いのアオキが、椅子の上に仁王立ちのマトリョーシカをなだめていると。
    ロトロトロト……。
    彼の気まずさを見計らったように、アオキのスマホが宙に浮かんだ。
    「はい、アオキです!」
    『アオキ。ポピーくん。このアホをどうにかしなさい』
    辟易した第一声は、チリとともに各地を聞き込みに回っているハッサクだった。
    『10秒に一度は道草を食いたがるわ、
    刑事よろしく黒い革手帳やバカ高いレインコートを買いたいと聞かないわ……
    今は山頂からフリッジタウンに下りて、ライムさんと雪だるま作りの最中でしてね……。
    まったく、人探しに来ておいて、青いバケツや木の枝を採取する羽目になるとは……』
    「それで、グルーシャさんの足取りは分かりましたか?」
    仏頂面のポピーが、長々と続きそうな愚痴を止めた。皮肉屋のドラゴンいわく、グルーシャには「用事ができた」らしい。ナッペ山の職員にそう言い残したジムリーダーは、切り札のチルタリスにぶら下がったまま、何処かへ飛び立ったきり消息が掴めないのだという。
    『空港にも問い合わせましたが、ここ数日間でグルーシャくんが搭乗した記録はなし。つまり彼は、パルデア地方のどこかに潜伏している可能性が高いと小生は推測しております』
    「潜伏て……。まるで凶悪犯のような言い回しですわね……」

  • 14二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 20:46:07

    ポピーの机上には、『グルーシャ超人伝説』のレジュメ。

    ハッサクの声に苦笑いしながら、何かのヒントになればと紙をめくっていたポピーは、とある一文に目をとめた。

    「……いえ、待ってくださいハッサクさん!」

    はたと思い至ったポピー。

    「アオキさんも思い出してください! グルーシャさんには違う地方を徘徊する癖がありますわ!」

    『武者修行と称してホウエン地方に渡り、サメハダーに追われて海流を逆行。』

    ポピーと同じ一節を目にしたアオキも、彼女の横で目を見開いた。

    「まさか、自力で……!」
    『武者修行……』

    スマホ越しに息を飲むハッサクも、どうやら思い出したらしい。
    「グルーシャさんとチルタリスのバイタリティなら、十分可能ですわね……!」
    「今回も泳いで行ったのか、あるいは飛んで行ったのかは分かりませんが、他の地方へ旅に出た可能性は大いにありますね!」

    『またもや無許可で抜け出すとは……
    小生はアカデミーにいるトップへ連絡を。おふたりは、職員とともに他のリーグへ片っ端から問い合わせなさい』
    ハッサクの怜悧な指示とともに通話は切れた。

    「ポピーさん!まずは前回滞在していたホウエン地方から確認を取ってみましょう!」
    「了解しましたわ!リーグやジムだけではなく、ショップやバトルタワー、あらゆる施設を当たってみますわね!」

    見合わせたアオキとポピーがコクリと頷く。
    2人がふたたびデスクに戻るや、通話を聞くために集まっていた部屋中の職員たちも、いっせいに各々の持ち場へ散開した。

  • 15二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 21:29:10

    いいね、完結させてくれよ

  • 16二次元好きの匿名さん24/05/08(水) 02:18:05

    >>14

    『どこまで上を目指すかは、キミ次第ですね』

    「………」

    海の町バウタウン。かたわらに灯台がそびえ立つ、大海原をのぞんだ柵の前。

    「……分かってるわよ。片手間じゃ無理って事くらい」

    なにかに行き詰まった時。親友のソニアに打ち明けても晴れないほどの悩みを抱えた時。ルリナは決まってこの場所に佇む。


    彼女の頭にこびり付いているのは、先日のヤローとの勝負。結果はもちろん自分の敗北。

    リーグ委員長・ローズが控え室に現れ、意味深な言葉とともに、試すような笑みを浮かべながら覗き込まれたのだ。

    きみはジムリーダーに不適格。モデル以外にも、やるべき事があるだろう。

    ……そうキッパリと叱られた方がどんなに楽だったか。先日のあれは、委員長なりの最後通告なのだろうか。

    ヤロー相手にだけではない。直近のルリナは、公式戦であらゆる相手に黒星を重ねている。


    間もなく始まる今年のジムチャレンジ。ここで醜態を晒せば、自分は間違いなくマイナーリーグ行き。最悪、ジムリーダーの資格までも取り上げられ、ただのトレーナーに戻ってしまうかもしれない。

    「……あの子みたいに……いっそ……逃げれば……」


    言いかけたルリナの首が、激しく横に揺れる。


    ローズの不敵な面持ちと入れ替わるように脳裏をよぎったのは、1人の少年。元同僚――しかも自分やサイトウよりも、ずっと幼いジムリーダーだった。だが彼は、ある日を境にリーグから姿を消してしまったのだ。

    負けん気が強く、滅多にへこたれないルリナでさえ吐き気を覚えそうになる、ジムリーダーとしての並々ならぬ重圧。

    今年も、あの子抜きのジムチャレンジとなる。


    自分への不甲斐なさ。プロとしてのやるせなさ。思えば彼も、今の自分と同じ――いや、それ以上の苦しみを抱いていたに違いない。

    「……違う。気づいてあげれば、よかったのよ」

    怯えに続いて、自責の念が口を割く。

    しょっぱい潮風に吹かれながら震えるルリナの語気。

    ユニフォームのノースリーブから生えた褐色の両腕が、自分のしなやかな身体を抱きしめた。

    ……その時。

  • 17二次元好きの匿名さん24/05/08(水) 02:21:37

    「おおりゃあああ!!!」
    ザッバアアアアアアン!!
    「ひゃあああああ!!?」

    うずくまろうとしたルリナの足元から、はじける水音とともにけたたましい絶叫が上がった。

    「ゲホゲホッ……ここはっ……どこなんだあ……!」
    柵の根元からは、水とともに吐き出される、こもり倒した呻き声。
    「ひっ……ひっ……!こ、こ、ここは、バ、ババ、バウ、タウンでっ……そ、その、へっ?」

    ずぶ濡れの腕。そして、びっちょりと濡れた水色の頭頂部が、まるで日の出のごとく、徐々に堤防の切れ目から上がってきた。
    突然の衝撃に尻もちを付いたルリナは、への字に重ねた両膝を笑わせながら、唇を震わせている。
    「そ、そうか……!やったぞ、チル……タリス!」切り立った堤防の角を掴み、柵の下段の隙間を這って、ニュルリとバウタウンに入ったグルーシャ。

    「サイトウくんとの、約束どおり、ボク達はガラル地方に、降り立ったぞおおお!!」
    ルリナの足先。仰向けに返ったグルーシャの口から、途切れとぎれの雄叫びが轟いた。
    それから数秒遅れで飛んできたチルタリスも、彼のかたわらにフワリと降り立つと、腹を激しく上下させている主の顔をのぞき込み、「ピイィ♪」と笑いかける。

    「サ、サイトウちゃんの……し、知り合い?」
    「いやあ……厳密には、これから、知り合いになるん、だけどね……!」
    アスファルトに大の字で、息も絶え絶えにつむぎ出すグルーシャ。さしものスタミナの化け物も、約8時間を超える遊泳は身にこたえているらしい。(もっとも。ルリナを始めガラル勢は、この男の名前や素性すらまだ知らないのだが)

    「あ、あなたたち、何者なの……?」
    「……ボクか」
    数分かけて息を整えたグルーシャは、ムクリと直角に上体を起こした。

    「ボクの名は、グルーシャ!パルデア地方のジムリーダー最後の砦。そして……」
    言葉を切ったグルーシャは、へたりこんだままのルリナへと正座で向き合い、
    「勝負の道に、魂を込めた男だ!」
    チルタリスの前に鎮座する大きなリュックから1通の手紙を抜き出すと、両端を持ってルリナへ差し出した。

  • 18二次元好きの匿名さん24/05/08(水) 09:07:54

    保守

  • 19二次元好きの匿名さん24/05/08(水) 17:46:17

    初遭遇がグルーシャだとパルデア地方まるごと勘違いされそうだな…じゃあ他の誰が無難かって言うと難しいんだが

  • 20二次元好きの匿名さん24/05/08(水) 23:58:13

    >>19

    ポピー連れたアオキとか…?

    いやそれはチリがパルデアに残ることになって大変だ

  • 21二次元好きの匿名さん24/05/09(木) 01:10:04

    >>17

    「……本当に、あの動画の本人……なんですか!?」

    「まさか!あのPVを観てくれたのか!!」

    「は、はい。ソニ……友達とサイトウちゃん。3人で拝見……しました!」

    「いやあ、ルリナくん!敬語なんて必要ないさ!勝負を極める者どうし、水臭いじゃないか!」

    バウタウンのジム内。リーダーやジムトレーナーのみが使用できるシャワールーム。

    全身にまとわりついた海水をグルーシャが洗い流している間、更衣室の長椅子に腰かけたルリナは、彼が受け取ったという便箋に目を通していた。

    「サイトウちゃん、やっぱりオニオンくんに観せたんだ……」

    「……オニオンくんとは?」

    「この手紙にも書いてあったでしょ?ラテラルタウン、もう1人のジムリーダー。いいえ。ジムリーダー『だった』子……」

    3つ折りに戻した便箋を椅子のかたわらに置き、眉をひそめたルリナ。気まずげな彼女の沈黙を合図に、カーテン越しのグルーシャは、シャワーの温水と湯気に包まれながら、頭の中で手紙の内容を反芻した。

    ガラル地方には、2人のジムリーダーが一定周期で交代する町が2ヶ所ある。

    チャレンジャーの戦略や発想の柔軟さを試すため。そして、どちらが町の顔にふさわしいか。どちらがジムリーダーたる資質を持つのかを、リーグ委員長のローズや秘書オリーヴ、そして、チャンピオン・ダンデの判断によって見極めるため。

    1ヶ所目は、こおり・いわ使いの親子が交互に務めるキルクスタウン。

    そしてもう1ヶ所は、かくとうタイプのサイトウが、ゴーストタイプの少年とともに務めていたラテラルタウンである。

    しかし現在のラテラルタウンは、サイトウ1人がジムリーダーを担っている。

    「……そうか……ふるいに掛けられたのか」

    「貴方はふさわしくないってハッキリ突きつけられてた方が、後腐れないだけマシだったかもね」

    顔をしかめたまま、うつむいたルリナの唇が笑みをこぼす。

    「ふるいに掛けられる前に、オニオンくん、ダメになっちゃった」

    「……ん?」

    どういう事だ?とカーテンをシャッと鳴らすグルーシャ。

    「ああ、待って待って!それセクハラだから!!」

    ご開帳を防ごうと、開きかけたカーテンにワタワタと両手をかざしたルリナが続ける。

  • 22二次元好きの匿名さん24/05/09(木) 10:38:46

  • 23二次元好きの匿名さん24/05/09(木) 17:47:30

    >>21

    自身と同じく、オニオンも勝負の腕を著しく崩していた。焦りにかられ一心不乱に勉学やトレーニングに励んでは、また負けの繰り返し。

    生来の気弱さや人見知りから、周囲に相談もできなかったらしい彼は、いつしかポケモンへ対する愛情や勝負への熱意も薄れ、やりがいも見失い、


    ある日とうとう無断でリーグを飛びだしたきり、サイトウいわく、家の自室で、ろくに食事もとらず入浴もせずに引きこもる毎日を過ごしている。

    「何回話しに行っても門前払い。わたしとヤローくんなんて、部屋をノックするなり、何かをドアに投げつけられたわ。

    でも、サイトウちゃんにだけは気を許してるみたい……。当然よね。苦しんでるオニオンくんを見てると、こっちまで気まずくなって、いつの間にか避けるようになっちゃって……。リーグからいなくなる前、最後の最後まで寄り添おうとしたの、サイトウちゃんだけだったもの……。

    自分も追い込まれた今になって、あの子の気持ちが身をもって分かったわ……」

    自嘲気味に言い残したルリナは、顔を両手で覆ったまま、しなだれて黙りこくった。

    同時にシャワーの音も止まり、湿った沈黙が部屋に流れる。

    「……すまん!出るぞ!」

    「あっ。いいわよ」

    だが、静寂はすぐに破られた。ルリナが背中を向けるや、勢いよく切られたカーテンの音。シャワーから躍り出たグルーシャは、リュックサックの大きな口からタオルや予備の柔道着を取り出しながら、テキパキと着替えはじめた。

  • 24二次元好きの匿名さん24/05/09(木) 18:09:02

    「オニオンくんとやら、ボクに憧れてくれてるんだってな!」
    「そうみたい。オニオンくんに動画を観せたら、『この人みたいに強くなりたい』って言ってた。そう手紙に……」
    「ようし、善は急げ!あらゆる準備が万端だ!さっそくオニオンくんの家へ……」
    「まさか、歩いて行く気じゃないでしょうね?」
    気を吐くグルーシャへ、思わず振り返ったルリナ。
    「無論だ!新たな土地に来たら、まずは歩いてみるのがポリシーでね!」
    「待って。あなた、ガラル地方は始めてなんでしょ?」
    「問題ない。大まかな地図や風土は頭に入れてある!」
    「問題あるわよ!たとえ耳や頭で把握してても、実際に行くとなるとワケが違うわ」
    「……確かに。それは一理あるな」
    もっともなルリナの忠告に、柔道着の両腕がじっくりと組まれた。
    予備の青い道着に着替え終わっているグルーシャ。この男は、無類の探検マニアでもある。
    「まずはサイトウちゃんと会いましょう?いきなり家に押しかけたら、オニオンくんビックリしすぎて倒れちゃうかも知れないし」
    「ハッハッハ!確かにそうだな!まずは手紙の礼も言わなくちゃいけないしねえ!」
    どうやらこの人は、思い込んだら止まらない性質らしい。
    本気になった時のエンジンジムリーダーで多少は慣れているルリナは、哄笑するグルーシャに胸を撫でおろした。
    「それに。ラテラルタウンに行くには、ワイルドエリアっていう危険な場所を抜けなきゃダメだし」
    「なにっ!危険だと!?」
    「そうよ!強い野生のポケモンたちがウヨウヨいるんだから!不気味な建物もいっぱいあるし!無事に抜け出せる人の方が少ないぐらいの、すごく危険な場所なのよ!」
    立ち上がり、腰に手をやったルリナが大げさにそっくり返る。彼女にとっては、グルーシャの向こうみずを止めるための驚かせのつもりだった。
    口をへの字に曲げ、右手の甲をかざし、拳をつくって震わせるグルーシャ。これで徒歩なんて面倒くさいマネは諦めてくれるだろう。
    凛々しい笑みを浮かべたルリナは完全に安堵していた。
    「大人しくタクシー呼びましょう?わたしが代金は払うから……」
    「……面白い!」
    「へっ?」
    しかし、油断大敵。グルーシャの思いがけない一言に、目を見開いて点にするルリナ。

  • 25二次元好きの匿名さん24/05/09(木) 18:10:09

    「そんな場所にこそ、宝や神秘は眠っている!ちょっと待ってろ!」
    スマホを片手に呆然と見つめるルリナをよそに、グルーシャはリュックの中から新たな上下を引っ張りだし、柔道着の上から重ねはじめた。

    ワイルドエリア……そこには、未知なる部族が住んでいるのも知れない!」
    「は?ぶ、部族……?」

    たじろぐルリナも気にとめず、探検用の正装に早変わりしたグルーシャ隊長。
    上下水色の迷彩服に、緋色のベレー帽。服と同じ色の髪の毛は、後ろを1つに束ねてある。

    「不気味な建物!凶暴なポケモンたち!生存者が少ない危険地帯!きっと謎の部族たちが、よそ者が入るのを拒んでいるに違いない!」
    「い、いや……凶暴ってほどは」

    降格の危機に対する気後れやオニオンへの後ろめたさもあり、いつもなら切れ味よく否定するルリナは、すっかりグルーシャ隊長のペースに乗せられてしまっている。
    「よし!グルーシャ探検隊、結成だ!行き先はワイルドエリア!探検が無事に終わり次第、ラテラルタウンを目指そう!」
    優先順位がすっかり入れ替わっている。
    喉元まで出かかったルリナのツッコミを待たず、グルーシャ隊長はシャワー室を飛び出してしまった。
    「ちょっ、待って!待ちなさいったら!ああもう!」
    試合後よろしく豪快に頭を掻きむしったルリナも、シャワー室をかけ出すと、受付そばに佇むジムトレーナーのサワコに指示を飛ばした。

    「キャンプセット!カバンごと!それから、リーグから支給されてるズボンとジャンパー!アウトドア用!急いで!」
    「は、はい!」

    トテトテとジムの奥に入っていくサワコ。
    すでに入り口で待っているグルーシャが、満面の笑みで手を振ってくる。迷彩服と自分とを交互に見やる職員たちのささやきが、いちいちルリナの耳についた。
    「まさか彼氏さん……?」
    「そんな……だってルリナさんって、確かターフタウンの……」

    冗談じゃない。あんな彼がいてたまるか。それに、ヤローくんはライバルであって……!

    受付にもたれかかったルリナは、居心地の悪さから少しでも逃れようと、デスクの上を指で小刻みに鳴らしながらサワコを待った。

  • 26二次元好きの匿名さん24/05/09(木) 22:11:48

    このレスは削除されています

  • 27二次元好きの匿名さん24/05/09(木) 22:13:45

    ほしゅあげ

    サワコって誰だっけ

    って思って調べたら一部フェチの癖に刺さったこの子か

  • 28二次元好きの匿名さん24/05/10(金) 07:48:59

    保守

  • 29二次元好きの匿名さん24/05/10(金) 15:49:15

    保守

  • 30二次元好きの匿名さん24/05/10(金) 22:28:23

    ピオニーと合いそう

  • 31二次元好きの匿名さん24/05/11(土) 01:22:34

    >>25

    「あっ、みてみて!色違いのギャラドスがいるわ!」

    ワイルドエリア。はじめこそ徒歩での探検を渋っていたはずのルリナは、「これは何だ!」「あれを見ろ!」というグルーシャの雄々しい呼び掛けにほだされるうちに、

    普段の重圧から少なからず和らいだ事もあってか、エリアが見せる風光の数々にすっかり華やいでいた。

    「いやあ。この巨木も見事だな!樹齢100年はありそうだぞ!」

    グルーシャもニッコリと目を細めながら、かたわらに立つ大きなモミの木を見上げて嘆息している。

    「オレンのみ3個に、グラボの実でいいかなあ……」

    「あっ。ごめん、サワコちゃん!わたしも手伝うからね!」

    「あ、ありがとうございます!ルリナさんがお好きだって聞いた、ちょっぴり辛口のシーフードカレーにしようかなって」

    グルーシャいわく、探検も一区切りついたらしい一行は、げきりんの湖をのぞみながら小休止を取っている。

    「い、いいの?サワコちゃんって料理が上手らしいじゃない!すっごく楽しみ……!」

    「パルデアでも名高い、本場ガラルのカレーか!ボクも魚や野菜なら捌けるよ!何でも申し付けてくれ!」

    「わかりました!それじゃ、お言葉に甘えますね!」

    大きなモミの木の下でキャンプを囲んでいるのは、グルーシャとルリナだけではなかった。

    「グルーシャさんとルリナさんには、まな板でエビとイカを剥いてもらって……」

    「よし、心得た!」

    「まかせて。家の手伝いで慣れてるから!」

    ジムで飛ばされたルリナからの指示を「お前もついてこい」と早合点したジムトレーナーのサワコ。そして……

    「ボールガイさんは、木を集めて火をくべてもらって良いですか?」

    「ボルボル……なんで僕まで……」

    「ハッハッハ!アンタのガタイの良さが気に入ったからだ!そうだ。ボールガイくん、アンタ武道をやってみろ!きっと板につくぞ!」

    「だから、これは着ぐるみで……ハア……」

    ジムの表でうろついていた所を運良くつかまったボールガイ。4人の一行は、カレーづくりに取り掛かっていた。

  • 32二次元好きの匿名さん24/05/11(土) 01:27:44

    ボールガイがうちわで仰ぐとともに、パチパチと音を鳴らしだす焚き火。
    汗ばんできたのか、ボール男は着ぐるみの額をしきりにぬぐっている。

    「あ、暑くないの?」
    「汗をかいているのはボールガイだボル。断じて中の人ではないボルよ」
    調理台から気遣うルリナに、毅然と答えるガラルリーグ非公認マスコット。どうやらキャラ作りは完璧らしかった。

    「グルーシャさん、筋がいいわね。父さんがいたら褒めてもらえるかも」
    「そう言えば、ルリナくんの家は何を?……いや待て。漁師と見た!」
    「うふふ。正解!」
    いっぽう、2つの調理台で横ならぶグルーシャとルリナ。

    「いやあ、どうりで手際がキレイなはずだ!
    ボクのは、サバイバルで身につけた自己流だからね!」
    睦まじく話してこそいるが、さすがと言うべきか、2人とも鮮やかな手さばきでイカやエビの下ごしらえをこなしている。

    「サ、サバイバル?」
    「ホウエン地方に行った時、海水浴をしていたらサメハダーに追われてねえ!」
    「はっ?さ、サメハ……!?……だ、大丈夫だったの!?」
    驚きのあまり、ルリナの鮮やかな手つきが止まるまでは。

    「しかも10匹。そしたら、逃げるうちに海流に飲まれてしまってさ……。気がつくと、みなみのことうに打ち上げられていたんだよ。
    そして、そこで1ヶ月間、獲れたモノだけで生き延びたんだ。ボクはねえ、魚の捌き方や生き延びる術を身体で覚えたんだよ!」

    いきつけの喫茶店で一緒に観た、グルーシャのPR動画。
    爆笑した自分やソニアとは違う、険しい真顔でソニアのスマホを睨んでいたサイトウちゃん。彼女が漏らしていたとおり、この人は本当に超人だったりして……
    『パルデアの核弾頭』の片鱗を感じたルリナは、ハッハッハ!と高笑うグルーシャをアングリと見つめたまま硬直した。

  • 33二次元好きの匿名さん24/05/11(土) 01:32:53

    主です。お分かりの向きも多いでしょうが、


    ルリナがソニア・サイトウと観た(ついでにオニオンも観たらしい)この世界のパルデアリーグ公式chがあげているグルーシャのPVは↓がイメージ元です笑


    せがた三四郎フルVer.

    藤○さんの姿をグルーシャさんに、歌詞をポケモンに即した言い回しに変えていただければ……


    「真面目にバトらぬ奴らにはっ♪身体で覚えさせるぞおお♪」

  • 34二次元好きの匿名さん24/05/11(土) 10:37:24

    お前によしオレによしが聞こえてくるのなんでだろう

  • 35二次元好きの匿名さん24/05/11(土) 18:44:41

    保守

  • 36二次元好きの匿名さん24/05/11(土) 21:07:02

    >>32

    「ごちそうさま!とっても美味しかったわ!」

    「よかったです!すみません。お皿洗いまで手伝ってもらって……」

    「いやいや!一飯の恩義というやつだ。気にするな!そうだろう、ボールガイくん!」

    「もっちろん!具材の食感と、お米の絶妙な芯の残りかた!それに程よい辛さがマッチして、サワコちゃんのカレーは、味のトライアタックだったボルね〜!」

    一列に並んだ4人。談笑しながら、澄んだ湖ですすがれたプレートやカップが、次々とカゴに積まれていく。

    「……だが、探検の収穫はこれだけか」

    食器をまとめたカゴや、4人がけのテーブルもサワコのキャンプセットに収まったころ。それぞれの手持ちたちを原っぱに放った3人は、独りごちるグルーシャへと集まってきた。

    「こ、これは何でしょうか?すごく神秘的な輝きですね」

    グルーシャの両手に乗っているのは、赤とも紫ともつかない不思議な光を放つ、2つの小さな石ころ。

    「友達が……ソニアがタブレットで見てた画像と似てるわね……。確か……えっと」

    アウトドア用の黒いキャップとジャンパーで腕組みしたルリナ。同じ格好のサワコも、人差し指をアゴに当てながら、2つの輝きに見入っている。

    「ねがいぼしボルね!」

    「そうそうボールガイさん、それ!」

    ボールガイの言葉にルリナの顔が晴れた。目を見開いたサワコも、ねがいぼしを見つめたまま「これが幻の……!」と唸っている。

    「拾った人のお願いごとが叶うってウワサのアレ!しかも2個も!グルーシャさんって、とってもラッキーボーイボルねえ!」

    「いやっはっは!ボーイって年でもないよ!なんだ、てっきりボクは部族が作った装飾品の類かと!」

    身体をウキウキと揺らしながら、両肘を前後にスライドさせるボールガイ。彼の肩を叩いて、赤い顔のグルーシャがはにかんだ。

    「ソニアやマグノリア博士が言うには、ポケモンのダイマックスにも、ねがいぼしが関係してるとかしてないとか……」

    親指と人差し指でアゴをつまみ、ねがいぼしを睨んでブツブツと呟くルリナ。その振るまいは、長考する時の友人・ソニアを思いおこさせる。

    「ダイマックスとは?初耳だな!」

    メンバーをキョトンと見渡すグルーシャの瞳。同じく(1名半笑いの表情で)ポカンと顔を向けた3人の目線と重なる。

  • 37二次元好きの匿名さん24/05/11(土) 22:12:51

    このレスは削除されています

  • 38二次元好きの匿名さん24/05/11(土) 23:33:47

    このレスは削除されています

  • 39二次元好きの匿名さん24/05/11(土) 23:48:44

    >>38

    冒頭切れちゃってるね

  • 40二次元好きの匿名さん24/05/12(日) 00:00:40

    >>39

    (あらまー!心優しい人、教えてくれてありがとうございますわね!)

  • 41二次元好きの匿名さん24/05/12(日) 08:58:45

  • 42二次元好きの匿名さん24/05/12(日) 14:58:48

    age

    ボールガイがいるのシュールでジワジワ来る

  • 43二次元好きの匿名さん24/05/12(日) 21:38:25

    イッチの規制対策に保守

  • 44二次元好きの匿名さん24/05/13(月) 08:21:08

    保守

  • 45二次元好きの匿名さん24/05/13(月) 15:15:00

    >>36

    「そうだったわ。グルーシャさんは初めてのガラル地方だったわよね」

    ジャンパーの袖をめくったルリナは、右腕の甲をグルーシャへ見せた。

    「……こ、これは一体!」

    「だ、ダイマックスバンドって言うの。今さらだけど、グルーシャさんって反応が濃いわね……」オープンフィンガーのグローブがはまった褐色手元を凝視し、大げさに身構える隊長。思わず困り笑いしたルリナが続ける。

    「このダイマックスバンドには、あなたが持ってる『ねがいぼし』が組み込まれていて、勝負で使えば、自分のポケモンをますます大きく強くできるの。その現象がダイマックス!」

    「……ダイマックスすれば、ボクのチルタリスの力も、32ビット級から64ビット級になれるのか……?」

    「ま、まあ、そんな感じ……の解釈で構わないわ。ただし、このバンドを持ってる人しかダイマックスは出来ないの」

    グルーシャの目先へと、誇らしげにバンドを近寄せるルリナ。モンスターボールを模した赤い光が、ディスプレイにチカチカと明滅している。

    「それに、いつでもどこでもダイマックスできる訳じゃない。ガラル粒子が存在するパワースポットに限る。以上、ソニアや博士からの受け売りおわり!」

    「……強さが大きくなって、武運が長久に……?」迷彩服の腕を組み、首を左右にかしげるグルーシャ。

    「……はあ。わたしにソニアなみのプレゼン力があればなあ……」

    眉をへの字にしかめた彼の頭上には、大きな?が浮かんでいるようだ。

    「……よし!口で言うより、見てもらった方が早いかもね!」

    ゲンナリした溜め息から一転。キッとグルーシャを見すえ、一行から距離をおいたルリナは、ジャンパーとズボンを脱ぎ落として公式戦のユニフォーム姿に戻った。

    「習うより慣れろって言うでしょ?腹ごなしに、ガラル地方の戦い方を教えてあげる!」

    「……まさか、勝負か!」

    「そういう事!」

    意図を理解し、喜色満面のグルーシャ。彼の少年のような笑顔に、ルリナもいたずらっぽく目を細めた。

    「分かった!チルタリス、戻ってくるんだ!」

    「ぴぃぃ♪」

    「カジリガメ、グルーシャさんと勝負よ!」

    「ガウ!」

    遊んでいた原っぱから、鷹匠のごとく主の腕の上に舞い戻るチルタリス。かざされたダイブボールに吸い込まれたカジリガメ。

    勝負スタイルも十人十色ならば、相棒の戻し方も人それぞれだ。

  • 46二次元好きの匿名さん24/05/13(月) 15:27:13

    「あなた、こおりタイプの使い手なんですってね!でもどうしてその子なの?」
    「ハッハッハ!それこそ、習うより何とやらさ!ボクもパルデア流でお相手するよ!」
    フワリと地に降りたチルタリスを合図に、ねがいぼしをボールガイに預けたグルーシャは、湖のほとりでストレッチしているルリナと相対した。
    「……なるほど。それ、ユニフォームだったのね……!」
    脱ぎはらわれた迷彩服の下からは、パルデアリーグの白いマークが右胸に入った青の柔道着。
    「いかにも!エキシビションとはいえ、勝負は勝負!この地のリーグで禄を食んでいるにふさわしいか、魂に問わせてもらおう!」
    リングマの威嚇を思わせる「大」の構えをとるグルーシャ。と同時に、主の腕から舞い降りたチルタリスが、顔を怒らせながら威勢よく鳴いた。
    「魂ね……。カジリガメ!出番よ!」
    不動のグルーシャに対して、ルリナの脚が高らかと上がった。美しく振りかぶったジムリーダーに、2人の横で観戦するサワコとボールガイが、ワクワクと胸の前で両手を握っている。
    今まさにダイブボールが放たれんと、振りかぶるルリナが静止した……その時。
    「あああああっ……!」
    遠くからこだまする悲鳴。
    「な、何かあったの!?」
    「分からん。だが、かなり苦しんでいたようだな……!」
    ルリナの脚が地に落とされ、グルーシャも柔道の構えをといた。勝負が中断した一行。そして、彼らのかたわらで遊んでいた手持ちたちも、何事かと辺りをキョロキョロと見回している。
    「あれって……まさか、サイトウちゃん!?」
    「あの子が、ボクを呼んだサイトウくんか!?」
    ふためく一同から、ルリナの双眼鏡とグルーシャの敬礼ポーズが同時に構えられた。
    「そう!……まさか、あのポケモンに襲われたの!?」
    「なんだとッ!?人命救助!!」
    「え、は、はっや!!」
    双眼鏡から目を外したルリナが、思わず声を上げる。
    「一体どう鍛えたら、あの領域に……」
    「サワコちゃん、ボーッとしてるヒマはないわよ!」
    「ぼ、僕たちも追いかけなきゃボル!」
    続いて走り出した3人を待たず、弾丸の速度のグルーシャは、あれよあれよと少女たちの元に近づいていった。

  • 47二次元好きの匿名さん24/05/13(月) 15:31:19

    げきりんの湖から真北――ナックルシティへ至るゲートの前では、1人の少女――サイトウが腹を押さえて横たわっていた。
    そして、彼女の目の前には、黒いポンチョに身を包んだ小柄な人物。そして!ポンチョの手持ちらしいヨノワールが繰り出されている。
    「こ、こんなの……真の強さじゃ、ない……!」「……るさい……大人しく……わたして……」
    ゆらり、ゆらりと揺れながら、少女の頭に歩み寄るポンチョ姿。暗くよどんではいるものの、中性的な声色から、どうやら子供らしい。
    だが、目深くかぶられたフードとマスクのせいで、素顔は全くうかがえない。
    一瞥もせずに手持ちを通り過ぎるポンチョ姿。突き出されたままのヨノワールの拳からは、うっすらと黒いモヤが上がっている。
    どうやら、生身の少女相手にシャドーパンチを浴びせたらしい。
    「今なら、まだ引き返せます……!目を……覚まして……くださいっ……!」
    「ローズさんと……オリーヴさんに渡さなくちゃ……ソレさえ集めれば、ぼくは強くなれる……ジムリーダーにも、ダンデさんにも負けないくらい……!」
    サイトウからの涙を浮かべた説得も効果はない。うわ言のようにブツブツと呟くポンチョ姿は、彼女の手の平に乗っている石ころへとかがみ込んだ。その瞬間。
    「……ぉぉおおおお!!」
    ドドドドド……という足音ともに、とつぜん響いてきた雄々しい叫び。かたや石に手を伸ばしたまま、かたや横たわったまま。爆速で近づくグルーシャへと、ポンチョとサイトウ、そしてヨノワールまでもが一斉に目を丸くした。
    「おおおりゃっ!!!」
    「ゲフ!!」
    2.2mの身体を真横に吹き飛ばす、加速しきった鋭い飛び蹴り。
    弾かれたボーリングのピンのごとく地面をしたたかにきりもんだヨノワールは、遠くの原っぱに目を回して気絶した。

  • 48二次元好きの匿名さん24/05/13(月) 22:53:31

    強いなあ……

  • 49二次元好きの匿名さん24/05/14(火) 01:04:20

    香ばしくなってきましたね

  • 50二次元好きの匿名さん24/05/14(火) 09:16:25

    保守

  • 51二次元好きの匿名さん24/05/14(火) 15:43:35

    >>47

    「アンタがサイトウくんだな!立てるか!?」

    「これしき、どうという事は……あ、アナタは……!」

    グルーシャに肩を組まれ、呻きながら立ち上がったサイトウ。

    「……!ま、まさか」

    「いやあ、ルリナくんの言った通りだ!ワイルドエリアのポケモンは凶暴きわまりないな!!」

    そして、鼻から下をピッタリ覆う黒マスクごしに、瞳孔を小さくしたポンチョ。2人はいっせいに息を飲んだ。

    「本当に、来てもらえるなんて……!」

    「何を言うんだサイトウくん!困っている者がいれば、いつ何時でも駆けつける!それがボクのポリシーだ!」

    間に割って入り、サイトウとポンチョの肩を交互に掴むグルーシャ。

    「ハッハッハッ!それにしても良かったよ!2人とも大事には至らなかったみたいだな!」

    「……っ」


    「ああ、すまん!傷にさわったな!」

    喜んだ時のクセで2人の背すじをパシパシと叩いてしまったグルーシャは、横腹を押さえて顔をしかめるサイトウの背すじから、素早く手を離して詫びた。

    そして、グルーシャから遅れること30秒ほど。

    「ぴゅいい♪」

    「グ、グルーシャさん!!魂を吸い取られたら、どうするつもりなのよ!?」

    「ヨ、ヨノワールに生身で飛びかかる人なんて、初めて見ました……」

    「はああ、無茶苦茶すぎる……!この人なんなの本当に……!見てる方がショックで倒れちゃいそう……!」

    「ハッハッハ!鍛え方が違うからなあ!」

    「……グルーシャさん。きっとだけど、ルリナさんとサワコちゃんは褒めてないボル……」

    さすが主人♪と笑顔のチルタリスに導かれる形で、ルリナたちも彼の元へと追いついた。愕然と刮目しながら頭を抱えるルリナ、自分の両肩を抱き寄せて震えるサワコ。猫背のボールガイ。

    思い思いに慄く3人は、頼もしさを超えた薄ら寒さを覚えているようだ。

  • 52二次元好きの匿名さん24/05/14(火) 15:51:43

    「そうだ!サイトウくんの怪我を見てあげた方がいい!見た所、腹をケガしている!」
    「なっ!?急いで治療しないと!」
    「お気遣いは、無用です……ぐっ……!」
    額に脂汗をかいたサイトウが、隣合うルリナの胸元に力なくもたれかかった。
    「大丈夫じゃないでしょ!……とりあえず、ナックルジムの医務室を借りに行きましょう!サイトウちゃん、しっかりして!」
    「ポンチョくんの方は無事ボルか!?」
    ボールガイからの問いに、肩を落としたまま黙り込んでいるポンチョ。
    「きっと、野生に襲われたショックで呆然としているんだボル……」
    と解釈したボールガイは、無言でポンチョに頷いたきり、それ以上の詮索は避けた。彼や、抱きとめたサイトウへ必死に呼びかけているルリナ。応急処置のため、湖まで戻りタオルを絞っているサワコ。3人とも。そしてグルーシャも、「サイトウとポンチョは、野生のヨノワールに襲われた」と考えていた。
    「……さて。サイトウくんの手当ては任せるとして……」
    治療しようと、ふたたびサイトウを横たえた女性陣。ユニフォームを脱がせるらしい彼女たちへ顔を背けたグルーシャは、ボールガイとともにポンチョの手を引くと、気絶するヨノワールへと駆け寄った。
    「グルーシャさん、この子はどうするんだボル?」
    「そうだなあ、ポンチョくんはどう思う?」
    「あっ……いや、その」
    「……そうだ!せっかくなら、グルーシャさんが面倒みてあげれば?ボル!」
    「そいつはいい!さっそくガラル土産ができたな!ボクの手持ちに加えて、立派なポケモンに叩き直してやろう!」
    そう言ったグルーシャの目はニッコリと細まっている。が、声のトーンは笑っていない。
    「……や、やめてください」
    「む?何故なんだ」
    「あの……そのヨノワールは……」
    「……そうか。君は優しいんだな!」
    何故かモジモジと言い淀むポンチョ。しゃがみ込んだグルーシャが、紫の瞳をのぞき込んだ。
    「なーに、手荒なマネはしないよ!手持ちとは、すなわち家族と同じだ!肉親となったからには、ジックリみっちりと絆を深め合うつもりさ!」
    ポンチョの白い両手を握りしめ、勢いよくシェイクするウィンターヒート。ポンチョの控えめな物言いも重なり、彼の早合点は止まらない。

  • 53二次元好きの匿名さん24/05/14(火) 15:58:51

    「では早速!」
    しゃがんだ姿勢のまま、かたわらのヨノワールへ向き直ったグルーシャは、懐からモンスターボールを取り出した。
    「アンタに決めたよ!遠慮なく収まれ!」
    ゆるく下手に投げられ、軽く弧を描いたボール。だが、ヨノワールに当たったボールは、光を放つことなく、そのままコン!と落下した。地面に転がるボールを見つめ、眉をひそめて訝しがるグルーシャ。
    「ん?」という彼の唸りに、「うぅ……」と鳴いたポンチョが、バツが悪そうに顔をそむけている。と、すかさず、ボールから強い口調の電子音声が流れ出した。
    『ひとのものを とったら どろぼう !』
    「何だと!?」
    グルーシャの叫び声に、サイトウを介抱する女性たちもヨノワールを見やった。
    「防犯ブザーなんて久しぶりに聞いたわ。わたしも小さい頃に、野生だと思って誰かのヒンバスにやらかした記憶が……って、ちょっと待って」
    自分たちは、大きな事実を見落としているのかもしれない。嫌な「まさか」が頭をよぎり、口元に手を当てたルリナ。
    「……このヨノワールは、野生じゃないって事ボルね」
    落ち込んだ口ぶりで独りごちるボールガイ。ようやく合点がいったサワコも、大きな目を瞬かせ、ハッと息を飲んだ。
    「……そういう事か」
    神妙に足元を見つめるグルーシャも、一同と同じ結論に達したらしい。
    「……つまり、このヨノワールを所有する何者かが、サイトウくんを襲った事になるな」
    何者か、の部分を強調したグルーシャ。カミソリのような彼の眼光に射抜かれ、ポンチョ姿の全身が震えだした。
    「……なんて……なんてひどい事を!!」
    立ちすくむポンチョに詰め寄ろうと、弾かれたように立ち上がるサワコ。だが、ルリナの腕が彼女の肩を引き止めた。
    「サワコちゃん、落ち着いて。
    ……ねえ、怒らないから正直に教えて。サイトウちゃんを怪我させたのは、あなた?」
    ジムトレーナーに代わり、ポンチョのフードをのぞき込むルリナ。自身の両腕をつつみ込む、褐色の手。その暖かさに、黒いフードが少しだけ頷いた。
    「……ぼくは……弱い……から……」
    「……だから?」
    相手を刺激しないよう、つとめて柔らかい口調で問いかけるルリナ。しかし、ポンチョの細い声に、彼女の胸はチクリと痛んだ。何故だろう。他人とは思えない。

  • 54二次元好きの匿名さん24/05/14(火) 15:59:41

    このレスは削除されています

  • 55二次元好きの匿名さん24/05/14(火) 16:02:03

    光ひとつない、この子の濁った瞳。

    何かを――きっと強さや力のたぐいを渇望しているのが、ひと目で分かる。この眼差しには見覚えがあった。まるで、もう1人の己に見られているような感覚。
    一歩間違えば、自分もこうなってしまうかもしれない。

    「くっ……!」
    「あっ、待って!!」

    ルリナが物思いにふけった隙を見逃さず、

    「ヨノワール、かなしばり」

    褐色の両手を弾くや、目を覚ましたヨノワールへ指示を飛ばしたポンチョ。

    「ボル……!ま、まさか僕たちに……!」
    「ぐっ……卑怯者……堂々と勝負しなさい……!」
    「お願い……素直に話して……!」
    「……アゼル……」

    2人は棒立ち。ルリナは重力に抗うような四つん這い。
    肩の上のチルタリスともども固まったグルーシャは、何をやろうと考えたのか、片足立ちで謎の舞いを決めたまま。

    「ノルマ失敗……ビートくんに怒られちゃう」

    硬直した一同を放置したまま、ヨノワールをボールに収めたポンチョは、フラフラとした独特のフォームでゲートの中へと走り去っていった。

  • 56二次元好きの匿名さん24/05/14(火) 16:25:35

    以上part1になります。


    ↓まとめ

    パルデアの核弾頭 in ガラル part1 | Writening瑠璃色にたゆたう大海原。 夜明け前の月あかりに照らされた西パルデア海の沖を、 1匹と1人が、サメハダーも顔負けの猛スピードで進んでいた。 「待っていろおおお!あと5時間で着くからなああ!!」 ザザザ…writening.net

    書き溜めなしだと、あれもこれもと書きたくなって、お話がまとまらない……


    ↓はグルーシャさん謎の舞いポーズ

    龍神に舞をささげ、精神統一がmaxになった瞬間だけ、一瞬だけ分身したり軽いバリアを張れたりする

  • 57二次元好きの匿名さん24/05/14(火) 22:11:53

    闇堕ちオニオンくん!!?

  • 58二次元好きの匿名さん24/05/15(水) 07:52:44

    保守

  • 59二次元好きの匿名さん24/05/15(水) 17:45:47

    マサラ人みたいなグルーシャだ

  • 60二次元好きの匿名さん24/05/15(水) 17:45:52

    ナックルジムの医務室。運良くロビーにいたキバナに出迎えられ、サイトウを運び込んだ一行は、「詳細が分かるまで、この件は他言無用」と誓わせたサワコとボールガイを、キャンプセットや支給ジャンパーとともにバウタウンへ帰した。
    サイトウの治療を終え、廊下に出てきた医師や看護士いわく、完治には時間がかかるが、臓器や骨に別状はないという。ホッとユニフォームの胸を押さえたルリナは、リュックサックを背負ったグルーシャとともに軽く会釈すると、先頭のキバナに続き、医師と入れ替わりで医務室に入った。

    「……あの黒ずくめが……本当に、オニオンくんなの……?」
    白いベッドで上体を起こしているサイトウは、ルリナの問いかけに、力なく頷いた。
    「どうして……」
    あの大人しかったはずの彼が?だけど、サイトウちゃんは絶対に嘘などつかないはず。
    「嘆かわしい……!一体なぜ!親しい人を傷つけるようなマネを!!」
    脇から下を、包帯や厚いテープでグルグル巻きにされた、痛々しいサイトウの姿。呆然と壁を見つめるルリナと横ならび、ベッドの横から患者を見下ろすグルーシャが、柔道着の拳をワナワナと震わせた。
    「……ねがいぼしです。わたしが肌身離さず持っている『お守り』を見てみたいと……。オニオンくんからワイルドエリアに誘われました」
    「ねがいぼし……まさか……!?」
    大きなリュックサックを床に置き、いそいそと中身をかき分けるグルーシャ。そして、10秒と経たないうちに。
    「これを狙っているのか!?」

  • 61二次元好きの匿名さん24/05/15(水) 19:51:38

    彼の両手のひらには、先ほどの探検で見つけた、神秘的な輝きの石ころが2つ乗っていた。

    「グルーシャさん、何度おわびしても足りません。無理やりお呼びしたばかりに、大きな面倒に巻き込んでしまって……」

    「そんな事、天地が返っても思うんじゃないぞ!
    ボクは、自分の意思でアンタやオニオンくんを助けに来たんだ!」

    顔を怒らせたグルーシャの、荒々しくも心優しい返答。彼の両手にある「ねがいぼし」を見つめながら、眉間をよせ、サイトウは瞳に露をためた。

    「どうか……。どうか、彼を責めないであげてください。この事は内密に……!」
    ルリナとグルーシャを見上げ、哀願するサイトウ。その頬を一筋の涙が走った。

    「サイトウちゃん……。オニオンくんを――信じたくないけど、犯人をかばいたい気持ちは分かるわ。だけど……ずっと隠し通すなんて出来ないわよ」
    「ボクも同感だ……。
    アンタ達のトップなり委員長なりに、せめて何者かに襲われた事だけは報告すべきだと思う……」

    どうやらオニオンは、「ねがいぼし」を求めて蛮行に走ったらしい。という事実だけは把握できた。しかし、その他にも疑問が尽きないせいで、これ以上サイトウにかける言葉が見当たらない。
    ――いったい何のために集めているのか?
    ――単独での行動なのか。はたまた共犯者がいるのか。
    ――あのオニオンが?
    何故・なに?の大波が頭の中を荒れくるい、苦虫を噛み潰したように顔を見合わせたきり、ルリナとグルーシャは沈黙した。

  • 62二次元好きの匿名さん24/05/16(木) 00:02:57

    ドキドキ

  • 63二次元好きの匿名さん24/05/16(木) 08:13:08

    保守

  • 64二次元好きの匿名さん24/05/16(木) 15:53:31

    >>61

    「……なあ、サイトウ。知ってるかもしれないが、『ねがいぼし』を後生大事に持ってんのは、オマエや……そこのグルーシャさんだけじゃない」

    3人のやりとりを無言で見守っていたキバナが、パイプ椅子の上から横槍を入れた。

    「トレーナーの中には、オマエみたいに願掛けで持ってるヤツも居れば、他のジムリーダーみたいに、万が一ダイマックスバンドがぶっ壊れた時にそなえて、厳重に保管してる連中もいる。オレさまも、その1人だ」

    前後が逆さまに置かれたパイプ椅子。ベッドの離れ――ルリナとグルーシャの背後で、背もたれにしなだれたキバナ。ドラゴンストームへと顔を向きやった3人は、一様に聞き入っている。

    「だからさ、サイトウ。たとえ、今日のところは内緒で済んでもだ。同じように第2第3の被害者が生まれちまったら、ダンデや委員長に、オマエは何て言い訳するんだ?たまたま似たタイプの野生に襲われて、偶然『ねがいぼし』を奪われました、ってか?」

    ルリナとサイトウは知っている。心から相手を案じて忠告する時。キバナは、こうして寂しげな笑みを浮かべ、粛々と語りかける。

    「……そうよ。キバナさんの言う通り。オニオンくんが『ねがいぼし』を狙ってるなら、こうしてる間にも、他の場所が襲われてるかもしれない」

    「かも、じゃないぜ。マジだ」

    微笑んだまま、キバナが有無を言わせぬ語気でルリナに付け足した。

    「分かって、います」

    ぐうの音も出ない正論で諭され、顔を正面に戻したサイトウ。先ほどより、一層うつむく彼女だが、シーツごしの太ももに置かれた両手は、ギリっと音を立てて握りしめられた。

    「ですが、この件をハッキリと打ち明けてしまえば、オニオンくんの帰る場所がなくなってしまいます……っ!!」

    ひと息に吐き出した大声が、傷に響いたらしい。痛みに表情を歪め、「わたしが、こらえれば良いんですから……!」と漏らしたサイトウは、ルリナとグルーシャに手を添えられながら、ゆっくりと仰向けになった。

  • 65二次元好きの匿名さん24/05/16(木) 16:19:48

    「ハァァ……」
    逆さまに置かれたパイプ椅子の背もたれに、盛大なため息をついて前のめるキバナ。
    ジムやリーグを無断で抜け出したオニオンだが、本人不在のまま下された処分は、失踪する直前の連敗によるマイナーリーグ落ちのみ。寛大にも、ジムリーダーやジムトレーナー、そしてチャレンジャーとしての資格は剥奪されていない。
    ひとつには、彼の返り咲きや復帰を望むファンが少なからずいる事。
    そして、彼とサイトウとの浅からざる仲を知るダンデが、上の理由を盾に、ローズとオリーヴを懸命に説得したらしいからだ。だが、サイトウが案じるように。
    彼女の怪我が、オニオンの仕業だと明るみにでたらどうなる。あらゆる資格の剥奪や、リーグの登録抹消で済めば御の字。最悪、司法の裁きやファンからの誹謗中傷、報復まで受けかねない。
    さりとて。どんな理由があれど、隠し事やウソをつくのは己の――人としての信条に反する。それに、再犯の可能性がある以上、いつまでも隠す事など不可能。

  • 66二次元好きの匿名さん24/05/16(木) 16:24:19

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  • 67二次元好きの匿名さん24/05/16(木) 16:54:15

    背もたれの銀の縁で頬づえをつき、仏頂面で考え込むこと数分。
    口の端を少し引きつらせながらも、普段の明るさを取りもどしたドラゴンストームが、一同へ切り出した。
    「……分かった。オレさまに任せとけ!
    なーに!ダンデと委員長には上手く言っといてやるよ!」

    パイプ椅子から勢いよく立ち上がり、自分のアゴを親指で示したキバナ。

    「あ、あっさり伝えちゃっていいの?」
    「ああ。グルーシャさんも言ってたろ?襲われた事『だけでも』伝えるつもりさ!」

    不安げに瞳を震わせるルリナとサイトウに、スマホを浮かべたキバナが、イタズラっぽく歯を見せた。

    朱色のスマホの画面には、ダンデの連絡先。
    「発信」をタッチしようと、キバナが指を伸ばした瞬間。

    「キバナくん、ちょっと待ってくれ」

    サイトウを見下ろしたまま、腕を組んで押し黙っていたグルーシャが、にわかに声を上げた。

    青い柔道着に、一同の視線がキョトンと向く。

    「……ふふっ。なあ、サイトウ。ルリナ。さっきから思ってたんだが、グルーシャさんってカブさんみたいな喋り方だよな」

    先ほどまでの沈んだムードを払おうと、明るく微笑むキバナ。

    「……どうした?」

    「ボクに良い提案がある!」

    パチクリと目を合わせたドラゴンストームに、グルーシャの目尻も、ニッコリと力強く細まった。

  • 68二次元好きの匿名さん24/05/16(木) 16:55:28

    このレスは削除されています

  • 69二次元好きの匿名さん24/05/16(木) 16:55:55

    このレスは削除されています

  • 70二次元好きの匿名さん24/05/16(木) 17:24:29

    ↑気にすんなー
    言われてみればカブさんっぽいね
    性格的にも近いかも?

  • 71二次元好きの匿名さん24/05/16(木) 19:32:48

    >>70

    主です。大丈夫っす!


    わざわざ上げてくれるなんて、お人好しだなあと笑


    まあ通報はしましたけどw

  • 72二次元好きの匿名さん24/05/16(木) 22:57:02

    ほしゅあげ
    トレーナーの性格はA世界そのままだけど逆グルーシャの介入で他の要素が変わる剣盾時空?

  • 73二次元好きの匿名さん24/05/17(金) 07:39:19

    保守

  • 74二次元好きの匿名さん24/05/17(金) 19:03:45

    あぶね保守

  • 75二次元好きの匿名さん24/05/17(金) 22:29:48

    ポケマス花江ボイスのせいで炭●郎みがあるグルーシャだな

  • 76二次元好きの匿名さん24/05/18(土) 06:34:17

    保守

  • 77二次元好きの匿名さん24/05/18(土) 16:32:04

    保守

  • 78二次元好きの匿名さん24/05/18(土) 16:44:29

    >>67

    ジムチャレンジの開会式はもちろん。緊急時の集合場所にもエンジンシティが選ばれているのは、この街がガラルのほぼ中心に位置しており、トレーナーたちが各地から速やかに行き来しやすいからである。エンジンジムの会議室には、サイトウ以外のジムリーダー7人。チャンピオン・ダンデ。そして、委員長のローズと秘書・オリーヴまでもが一同に介している。壇上に並んだキバナとルリナから、「サイトウ襲撃事件」の詳細が語られるにつれ、一同は徐々にどよめき、互いに顔を合わせだした。

    「なんて事だ……ポケモンくんに人を襲わせるなんて!」

    「欲しい物のためなら何でもやる……。平和なガラル地方にも、おっそろしい輩がいたもんじゃ……!」

    居ならぶメンバーのど真ん中から、真っ先に立ち上がったカブ。その隣で太ましい腕を組んだヤローも、額に冷や汗を浮かべながらゴクリと喉を鳴らしている。

    「それでサイトウちゃんは!どうなったんだい!?」

    「命に別状はありませんか!?」

    「ああ。怪我はしてるさ。だが、医者の手当てを受けて大丈夫だ。多少は動けるし意識もある。今は、オレさまのジムで寝かせてるところさ」

    ほのお・くさタイプの右隣では、同時に身を乗り出したキルクスの親子――安堵したメロンとマクワが、これまた同時に、ホッと息をついて腰かけなおした。

    「犯人のツラは割れているんですか?」

    「……いいえ」

    窓ぎわの最後列――カブとヤローの左のテーブルから飛ばされたネズの質問に、ルリナは一瞬だけ詰まりながらも平静を装った。

    「犯人は顔を隠してたわ。黒いポンチョを深くかぶって、大きめのマスクを付けてた。だから、ハッキリとした人相までは分からなかったのよ。


    それに、協力者が……先に行って追い払ってくれたおかげで、わたし達が駆けつけた頃には、犯人は背中を見せて逃げる最中だったから」

  • 79二次元好きの匿名さん24/05/18(土) 16:55:47

    「まあハッキリしてんのは、黒ずくめで背が小せえって事ぐらいだな」
    慣れないハッタリに、少しだけ声をうわずらせたルリナを、落ち着きはらったキバナが補足する。サイトウが懇願したように、2人とも犯人が何者なのかは知らない。故に、その名前など分かりようがない。だが、特徴だけは正確に伝えておく。サイトウの気持ちは痛いほど分かる。しかし、オニオンの行為を庇いだてする訳にもいかない。
    ナックルジムの医務室で第一報をダンデへ告げた際。キバナは、あえて「誰のしわざか」をぼかし、他のメンバーの推理力や洞察力に託したのだ。
    「……そうですか」
    2人の言葉に、じっとりとした目線を天井に向けたネズは、それきり沈黙を決め込んだ。
    「彼女を襲ったポケモンは?」
    ネズと隣り合い、目を閉じて清聴しているポプラからも問いが飛ぶ。
    「えっと……」
    答えて良いものか。一瞬キバナを見やったルリナは、軽い頷きを受けてから、途切れとぎれに切り出した。
    「……ヨノワール、でした」
    「なるほどねえ」
    杖を支えに目を閉じたままのポプラが、ルリナに二の句を告げる。
    「……誰がやったかなんて、あたしには検討もつかないよ。だけど……」
    呼吸がおかれるや、最長老の瞑想が解かれた。
    「吊し上げるだけなら、誰にだって出来るさ。でも、あたしらの役目は「裁くこと」じゃない。導くことだ。違うかい?
    子供の不始末は、それを導いた大人たちの責任でもある。リーグに携わる以上、その事、ゆめゆめ忘れちゃいけないよ」
    ジムテストに劣らない目力で、一同を見回すポプラの言葉。要領を得ず、キョトンとする一同。しかし。それとは裏腹に、ルリナとキバナは思わず目を剥いた。自分たちは、一言も「子供」とは口にしていないはず。
    『あの子を苦しみから救ってやっておやり』
    全てを見透かされ、そう投げかけられたような心地がした2人は、壇上からぎこちなく首を縦に振るしかなかった。そして。
    「……ポプラさんの金言、毎度の事ながら耳が痛みますね」
    天を仰いだまま漏らしたネズも、自分に笑いかけてくる妹の顔、そして、ポプラほどの確信には至っていないものの、
    仮面から涙をあふれさせながら、バトルコートで膝をつく1人の少年を思い浮かべ、かすかに眉間を寄せた。
    「……どうしますか委員長」
    最前列。ガラルリーグのトップ2人、そして秘書が横並んだ1台の机から、ダンデが隣のローズに仰いだ。

  • 80二次元好きの匿名さん24/05/18(土) 17:05:28

    「ジムチャレンジの開幕まで、あと10日!
    ルリナやキバナが言った通り、皆が保管する『ねがいぼし』を手に入れるために、犯人は必ずジムを狙ってくると思います!」

    「それだけじゃないよ。『ねがいぼし』は、ガラルの色んな場所に落っこちてる。何も知らないチャレンジャー達が出くわして、そいつに絡まれでもしたら……!」

    「しかも、犯人が複数である場合……各地で未曾有の混乱が起きるでしょうね……。最悪……延期や中止も……」

    「そんなの良くないよ!ジムチャレンジもチャンピオンカップも、延期や中止なんて絶対ダメ!!」

    「委員長!落ち着いてください!」

    ダンデに続いたメロン。そして、マクワの不吉な言葉に、滅多に見せない怒りの形相で立ち上がったローズ。背広に両手を添えたオリーヴが、彼を懸命になだめている。

    「……わたくしとした事が。ごめんね。気持ちが高ぶっちゃって、つい」
    秘書に両肩を押さえられたローズは、数秒の深呼吸の後、背後の一同へと苦笑いで会釈し席についた。

    「いいえ。委員長、気持ちはオレも同じです。
    大勢のファンが待ちに待っているジムチャレンジ!それを、指をくわえて台無しにされる訳には行きませんから!」

    獅子を思わせる雄々しい面持ちで、ローズへと握り拳をかざすダンデ。しかし。

    「ならどうしろと?ジムチャレンジの準備に、手持ちの最終調整。そのうえ、おれのようにトレーナー以外の仕事まで普段通りこなす者までいます。まさか、この忙しい時期に皆さんでパトロールにでも出かけるおつもりですか?」

    「うーむ。悩ましい……!ネズくんにも一理ある。だけど!ダンデくんの言う通り、何も手を打たずに、犯人が暴れるのを見ているだけなんて、僕には耐えられないよ……!」

    ぼやくネズに続いて、カブが歯がゆげに頭を抱えた。
    怪しい動きがないか各地を巡回しようにも、それぞれの多忙が許さない。
    さりとて。サイトウを襲った犯人が、またいつ現れるか分からない。
    あっちが立てば、こっちが立たず。ジムリーダーたちの結束は、すぐに一枚岩とはいかないようだ。

  • 81二次元好きの匿名さん24/05/18(土) 17:06:11

    「なあ、みんな!聞いてくれ!」

    各々独りごち、ざわめきだした一同。
    だが、キバナの一声で、会議室はピタリと静寂を取り戻した。

    「みんなの悩み、ごもっともだ!

    だから、とてつもなく頼りになりそうな!
    そして、カブさんにも負けないほど熱い助っ人を連れてきたぜ!」

    「頼りになるっていうか、見ててハラハラするっていうか……お待たせ、いいわよ!」

    「やっとか!」

    キバナの前置きが終わり、会議室のドアから顔をだしたルリナ。彼女の合図を受けて、廊下から凛々しい声が響いてきた。

  • 82二次元好きの匿名さん24/05/19(日) 00:16:48

    カブさんとの対面が楽しみ

  • 83二次元好きの匿名さん24/05/19(日) 08:39:14

    保守

  • 84二次元好きの匿名さん24/05/19(日) 12:31:02

    ガラルでのグルーシャの知名度はどんなもんかな
    ブルーベリーでは本人曰くちょっと知られてる、らしいけど

  • 85二次元好きの匿名さん24/05/19(日) 14:08:33

    主です。


    >>82

    かっとび具合は違えど、お互いに挫折を糧にした組なので(この世界のグルーシャさんなら特に)絶対不仲にはなりようがない!笑


    >>84

    そうなんすね!特別会話ばっかり楽しんでて、ランダムは盲点だったなあ


    (我が推しリップさんは「この場所じゃトーシロー」みたいな事言ってた記憶あるので、その人の職種によるんでしょうけど)


    アスリートなら(それこそカブさんあたりに)知られてない訳はないだろうと解釈してます

  • 86二次元好きの匿名さん24/05/19(日) 14:10:50

    あとカブさん、何故かダンデは呼び捨てだった記憶を投下してから思い出してしまい……

    まとめでは修正しときます

  • 87二次元好きの匿名さん24/05/19(日) 23:41:03

    ほしゅー

  • 88二次元好きの匿名さん24/05/20(月) 06:10:20

    >>86

    一目置いた相手は呼び捨てなんかね

  • 89二次元好きの匿名さん24/05/20(月) 15:41:51

    >>81

    「たのもう!」

    青い柔道着を羽織った男がドアをくぐるなり、釘づけになるガラルリーグ中の目。線の細さを思わせない精悍な顔つき。襟元からのぞく引き締まった胸筋。そして、

    「初めまして!パルデアという地方でジムリーダーをやっている、しがない男です!」

    型破りな一面ばかり見せられていたルリナは、予想よりも無難な彼の挨拶に内心おどろいた。意外や意外、この男は人並みの謙遜はできるのだという事実に。

    「いやあ、ガラルに着いてからというもの、こちらのルリナくんやキバナくんには世話になりっぱなしでねえ!」

    体育会系のカブや、厳しいスパルタで知られるメロン親子の顔も綻ばせる、明朗で気持ちのいい物腰と笑顔。

    「いや、いい男じゃないか!旦那と出会う前のあたしなら、絶対に放っとかなかっただろうね!」「やめてくれよ母さん……。失礼じゃないか……」「あっはは!相手を素直に褒めて何が悪いのさ!」

    哄笑する母が、気まずげにうつむく息子の二の腕を、隣からバシバシと叩いた。

    「この人はグルーシャさん。サイトウちゃんを助けてくれた、その……たぶん、ギャラドスのハイドロポンプも弾きかえしちゃうぐらいタフな人」言葉を選んだらしく、困り笑いで一同に告げるルリナ。

    「ああ。確か、『勝負の道に魂を込めた男』だったっけか」

    サイトウが担ぎ込まれた際、グルーシャ当人から伝えられたモットーをキバナが復唱する。

    「その通り!勝負を極めんと頂点を目指す男!それが、パルデアのジムリーダー最後の砦・グルーシャの信念なのだ!」

    しみじみと腕組みしながら頷くグルーシャ。

    「つまり、彼はパルデア地方のトップジムリーダーなのか!オレ達のキバナと、一体どちらが強いんだろうな!」

    「おいおいダンデ!そこは、オレさまだってハッキリ言ってくれよ!見るからにツワモノとは言え、やすやすと白星を譲る気はないからな!」

    ルリナやサイトウから伝えられたのは、「グルーシャがヨノワールを倒した」という事実のみ。人並み外れたタフさの片鱗――生身でノックアウトした、という点まで知らないキバナは、当の『パルデアの核弾頭』やダンデと誇らしげに談笑するばかりだ。

  • 90二次元好きの匿名さん24/05/20(月) 16:02:36

    「あ、あの。ぼくはヤローといいます。グルーシャさんが得意にしとるタイプは何ですか?」
    「断然!こおりだ!ボクがジムを構える雪山と一緒でね!常に極限状態に身を置いてこそ、トレーナーとして、人としての真価が問われる!」
    「はえー……!グルーシャさんって、サイトウさんにも負けんほどストイックですなあ!」
    「グルーシャ……グルーシャ……」
    アポ無しの珍客と、一同が好きずきに語らう間。アゴをつまんで右上を見つめていたカブは、聞き覚えのある名前を連呼しながら、記憶の糸をたぐりよせていた。
    「グルーシャくん、と言ったよね。人違いならすまないんだけど……」
    考えこみ、道着男の整った目鼻立ちをしげしげと眺める赤いユニフォーム。
    「きみは確か、雪上スポーツをやっていなかったか?」
    「……おおお……!」
    カブから遠慮がちに切り出されるや、グルーシャの顔が、満開の笑みに晴れ渡った。
    「まさか、まさか!あの頃のボクを知っているのか……!!」
    「やっぱりそうか!みんな!ニュースやワイドショーで何度も特集されていた人だよ!ほら、世界2位のスノーボーダー!」
    周りを見渡して華やいだカブに、ほかの何名かも思い至ったようだ。
    「……ウソ。ひょっとして、ソニアが昔メロメロになって推してた、『絶対零度マジック』……!?」
    彼と出会って以来。そして、彼がヨノワールを蹴り飛ばして以来。3度目の大きな驚愕に、唇を覆った指の隙間から、ルリナの声が震えた。
    「イヤッハハハ!いやあ、キザの極みだよね!
    あれは、スノボの協会が勝手に考えたキャッチコピーでね!マスコミから呼ばれるたび、小っ恥ずかしくてたまらなかったなあ!」
    顔を赤らめ、豪快に笑い飛ばす道着男。ルリナは、にわかに信じられなかった。いつぞや、ソニアから見せられたスポーツ誌のインタビュー。もっとクールで皮肉屋。鼻持ちならなかったグルーシャ選手と、目の前にいる、熱血を通り越した何かが同一人物だとは思いもよらなかった。

  • 91二次元好きの匿名さん24/05/20(月) 16:10:45

    「一体なにが、クールなきみをそこまで変えたんだ?」
    過去のグルーシャを知るカブも、ルリナと同じ疑問を持ったようだ。
    「……そうだな。話せば長くなるが、『七転び八起き』『捲土重来』とだけ言っておこう」
    パルデア四天王の長――毒舌のドラゴンが好みそうな、ことわざや熟語での比喩。
    「そうか……。ぼくはカブ。ここエンジンシティのジムリーダーだ。きみとも、とても実りある勝負ができそうだね」
    その意味を理解したらしいカブは、同じく柔和に目を細めたグルーシャと、ニッコリと微笑みあった。
    「まったく。キバナが抜かした通り、やたら暑苦しい方ですね……。
    まあ、ガラル地方は寒冷ですから。カブさん然り、これぐらいのハイテンションでちょうど良いのかもしれません」
    「ハッハッハ!よく見抜いたねえ!ボクは極度の暑がりでね!だが、ガラルは確かに涼しい!どうりで汗ばまないはずだ!」
    「はぁ……今のは、当てこすりってやつですよ。真に受けてどうするんですか。まあ……悪い奴ではなさそうなので、安心はしましたけどね。
    ……ネズです。おれは断然、あくタイプ。よろしくな、グルーシャさん」
    ゆるりと立った猫背のシンガーも、この珍客に心を開いた様子だ。
    「うっ……に、握りつぶす気ですか、おまえは」
    壇上のグルーシャに歩み寄ったネズは、彼の握力に面を食らいつつも、ガッチリと握手を交わした。

  • 92二次元好きの匿名さん24/05/20(月) 17:58:54

    「いやはや、素晴らしいですね!」
    2人が手を解いたと同時に、一同のやりとりを楽しそうに聞いていたローズも、拍手とともに腰を上げた。
    「こんな逸材が、わざわざガラル地方に来てくださるとは!ファンの皆さんに一層よろこんでもらえるぞ!グルーシャくん!ぜひガラルリーグのチャンピオンカップに飛び入りを!」
    ホクホク顔で壇上に踊りでたローズ。恰幅のいい背広姿が、青い柔道着の肩を力強く寄せた。
    「開幕前のエキシビションも捨てがたいな!異なる地方のトップジムリーダーどうしの一騎打ち!想像するだけで高ぶってきたぜ!」
    「うわあマジか。そうだわ。どうするよオレ様……。メロンさんにもマトモに勝てた試しがねえのに、ドラゴンの天敵がもう1人……!ガンガンのピーカン照りにしてぶっ潰すしかねえか……!」
    「ち、ちょっとキバナさん!?」
    狼狽するルリナ。ローズの一声に誘われたのか、気が早いメンバーは、グルーシャとの勝負を想像し、すでに活気づいている。ガッツポーズで席から立ち上がり、気を吐くダンデ。勝負の獰猛な目つきで腕を組み、宙をにらむキバナ。
    勝負バカ達は、こうなると誰にも止められない。「……ルリナくん。ボクは、彼らに何かを伝えに来た気がするんだが……?」
    組まれた肩をローズに揺さぶられながら、なすがままに首をグラつかせるグルーシャ。彼の、そして数名のトレーナーの脳内からは、自分たちは何故ここにいるのか、当初の目的が薄れかけていた。
    「委員長!ダンデ!キバナさんも!すっごく大事なこと忘れてない!?」
    「その通りじゃ!まずは黒ずくめをこらしめてやらんと!」
    「犯人を捕まえるため、グルーシャくんがお悩みを解決、だったよね!」
    部屋中に轟くルリナの叫び。続くヤローやカブも、ローズの言葉に流されてはいないようだ。
    「ジムチャレンジよりも何よりも、まずは『サイトウちゃん事件』をどうにかするのが先だろ!ほら、早く!席につきなッ!!」
    「3人とも、お願いですから落ち着いてください!でなければ、母さんの堪忍袋の緒が……!」
    会話が弾んで止まらない3人を、メロンとマクワも止めている。

  • 93二次元好きの匿名さん24/05/20(月) 17:59:44

    さじを投げたのだろうか、
    いつも口うるさいはずのオリーヴに至っては、
    無愛想なポーカーフェイスで座ったまま、3人を止めようとする気配もない。なかなか静まらない勝負バカたち。すると、ついに。

    「……ぃいい加減にッ……!」
    「坊やたち。そろそろ黙りな。おいたが過ぎると……1人ずつじゃれつくよ」

    怒鳴りかけたメロンをさえぎるポプラ。

    ローズを、ダンデとキバナを。魔女の形相で睨みつける88歳の凄みに、ひしっと抱き合った3人はピタリと静まった。

  • 94二次元好きの匿名さん24/05/20(月) 23:05:00

    0時なる前にあげとこ

  • 95二次元好きの匿名さん24/05/21(火) 07:19:54

    保守

  • 96二次元好きの匿名さん24/05/21(火) 16:54:35

    >>93

    「「「グルーシャ警備保障?」」」

    ダンデとローズが、おずおずと席に戻った後。咳払いとともに、壇上のキバナが本題を切り出した。

    「その通り。なにかと身動きが取りづらいオレ達に代わって、ガラル各地のパトロールや警備を、グルーシャさんに手伝ってもらおうと思う」

    「巡回や警備だけじゃないぞ!

    困り事があれば、通話1本でどこへでも駆けつけるからな!どんな依頼でもかまわない!仕事の手助けや家事炊事!ポケモン勝負や取り組みの相手!もちろん、ヒマさえあれば話し相手もドンと来いだ!」

    「お、お身体は持つんですか!?」

    「心配いらないよ!鍛え方が違う!人助けもできて、大手を振ってあちこちを探検もできる!いやあ、一石何鳥あるか分からないな!」

    案ずるマクワに、力こぶのポーズで応じるグルーシャ。

    「グルーシャさん。あの、本当に。頼むから。無茶はしないでね……!」

    「ハッハッハ!そればかりは保障できないなあ!みんな。ボクの連絡先だ!24時間。年中無休で依頼を待っている!」

    (一見、彼を心配しているようにも取れる)ルリナからの牽制。肩先にすがる彼女も気にとめず、いっせいに浮かんだ一同のスマホが「ロトロト……」と光った。

    「さあて!『グルーシャ警備保障』の初仕事!誰かいないか!」

    早速、まるで競りのような勢いでうながすグルーシャ。

    「あはは、気持ちはありがたいよ?だけど、急に言われてもねえ……」

    テンションが置いてけぼりを喰らい、キョロキョロ見合わせる一同を、苦笑いのメロンが代弁する。

    「……あの」

    「む。どうした?」

    すると。ジムリーダー達の真ん中から、太い腕がゆっくりと挙げられた。

    「本当に、何でも引き受けてもらえるんですかね?」

    「ヤローくんか!そうだ、何でもかまわない!」「そしたら、ぼくのターフタウンまで来てもらえませんか?」

    「ターフタウンか!心得た!」

    「はい。ちょうど、農業の人足を探しとったところなんですわ」

    「分かった!一日一善!行くぞぉぉ……」

    けたたましくドアが開け放たれるのが早いか。みるみる遠ざかる叫び声とともに、グルーシャは一瞬で会議室を後にした。

    「えっ!?あっ、あの!タクシー呼びますから」「……ヤローくん、タクシーは自分で使った方がいいわ。

    あの人なら走って5分で着くから」

    「は、走っ?」

    嘘のような真実に、ギョッとルリナを見張ったドラゴンストーム。

  • 97二次元好きの匿名さん24/05/21(火) 16:57:00

    「……ああ、そんな!待って待って!置いて行かんでくださーい!」
    数拍おいて状況を理解したヤローも、慌てて部屋から飛び出した。

    「……ひ、ひとまず解散でいいのか?」
    怒涛の展開に、目をパチクリさせてダンデが呟く。
    「ひ、ひと区切りは付いたかもね。犯人に関してはとりあえず様子見。何かあったら、ひとまずグルーシャさんに連絡してみて」
    「……って事で。どうですか、委員長」
    そして、壇上のルリナとキバナも〆に入る。

    「うん。わたくしに異存はないよ。頼もしい限りですね。とりあえずお開きで」
    何故か、どことなく覇気がないローズからの異議なし。

    「では。皆さんは持ち場へもどり、引き続きジムチャレンジの準備に。

    ……ローズ委員長。大事なお話がありますので、もう少しだけお付き合いを」

    「奇遇だねオリーヴくん。わたくしも頭が痛くなってきた所なんですよ」

    「皆さん。助っ人がいるとはいえ、くれぐれも独断専行はなさらないよう!」

    オリーヴからの発破を最後に。集っていたジムリーダー達は、まばらに退出し始めた。

    オリーヴに語気強くうながされたダンデまでも立ち去り、部屋に残されたのは、両肘を支えに机でうつむく委員長と、となりで力なく額をかかえる秘書のみとなった。

  • 98二次元好きの匿名さん24/05/21(火) 23:25:12

    0:00まえage

  • 99二次元好きの匿名さん24/05/22(水) 09:19:15

    保守

  • 100二次元好きの匿名さん24/05/22(水) 16:56:56

    >>97

    「……オリーヴくん、これはちょっと良くないハッスルだね」

    「申し訳ございません。まさか、こんな形で明るみに出るなんて……」

    数分前まで、2人のジムリーダー、そして思わぬ闖入者が立っていた壇上。同じ一点を凝視しながら、机で隣あうローズとオリーヴは、絞り出すように密議を交わし始めた。

    「きみは、オニオンくんを推薦した時――『ねがいぼし』集めをお願いした時、何と伝えたんですか?」

    秘書にも、そしておそらくガラルリーグのトレーナーなら誰もが馴染みのある、大きな三日月につり上がった口元。しかし、目は笑っていない。

    誰かに喝を入れる前。あるいは、大きな叱責を下す前――まさに、今この瞬間。ローズの間のびしたバリトンボイスは、いつにも増して低くよどむ。勝負おわりに詰められたルリナをして、「キッパリと叱られたほうがマシ」と感じさせるほどの威圧感がオリーヴを見すえる。

    「……『ねがいぼし』を、ローズさ……委員長に差し出せば……誰もがうらやむ強大な力が手に入ると」

    それを自分に向けられるのは不慣れだった彼女は、プレッシャーに気圧されるまま、恐々とまごつきながら報告した。

    「違うよ。違う違う!オリーヴくんも分かってない!」

    椅子を鳴らし、勢いよく立ち上がったローズ。会議中に見せた怒りをもしのぐ剣幕。肩をビクリと跳ねたオリーヴにも構わず、机の前に躍り出たローズは、秘書に向かって舞台役者のごとく両腕を広げた。

    「わたくしが『ねがいぼし』を集めているのは、私腹を肥やすためでは断じてないんだ!

    この地の未来を守るため!そのためにこそ、より多くの『ねがいぼし』が必要なんです!!

    全ては、ガラルに住まう全ての人たちに、1000年先の繁栄を約束するため!それが、大勢のファンの期待をになう委員長として!何より!ガラル地方の盛衰を一挙にになう、マクロコスモスの長としての使命なんですから!」

  • 101二次元好きの匿名さん24/05/22(水) 17:05:34

    大仰な身ぶりを利かせながら、爛々と目を輝かせるローズ。
    「……それを、よりによって秘書たるきみが――
    わたくしが拾い上げた大切なオリーヴくんの推薦トレーナーが、ポケモンや人さま、ひいてはリーグに対する最大の侮辱を働いてしまった……。おまけに、他の地方からも横槍が入る始末……。これではもう、人目につかないように『ねがいぼし』を集めるのは不可能だ」
    「……面目、次第もございません!」
    身ぶりをひそめ、うなだれたローズ。上司を――恩人を失望させまいと、立ち上がり最敬礼したオリーヴ。無機質な白の机上を見下ろす彼女の目柱が、徐々にゆるみ出した。
    ――この方の目に広がるのは、おそらく常人では理解できない景色、さながら無限の大宇宙に違いない。自分は本当に、この方にとって必要なのか。側にいながら相容れない。この方が太陽だとすれば、自分は小っぽけな月。寄り添おうと追いすがるあまり、この方の輝きに影を落とす事しかできない。一介の研究者から拾い上げられたあの日から……この方に忠誠を誓ってから、ずいぶん遠くへ来た気がする。
    「オリーヴくん。顔をあげて」
    柔和に降ってきたローズの声。我に返ったオリーヴは、くしゃりと鼻を鳴らして直立に戻った。

  • 102二次元好きの匿名さん24/05/22(水) 23:25:29

    やりかけの剣盾をやるかという気分になってきた

  • 103二次元好きの匿名さん24/05/23(木) 08:53:52

    ほっしゅ

  • 104二次元好きの匿名さん24/05/23(木) 18:31:03

    保守

  • 105二次元好きの匿名さん24/05/24(金) 00:01:27

    ほしゅり

  • 106二次元好きの匿名さん24/05/24(金) 09:28:36

    しゅ

  • 107二次元好きの匿名さん24/05/24(金) 12:13:21

    >>101

    「……ポプラさんの言葉ってさ、後からじわじわ胸に来るよねえ」

    ため息をつき、自嘲ぎみに漏らすローズ。泣き塗れるオリーヴへと、背広の懐からハンカチが差し出された。深いグリーンをオレンジの縁(ふち)が囲む。かつてオリーヴからプレゼントされたダイオウドウ柄だ。

    「導いた大人の責任か……いいよ。それ、きみにお返しします」

    目元を拭いハンカチを返そうとしたオリーヴを、物憂げな微笑でローズが制する。

    「あとは、わたくしだけでやりますから」

    「……い、いんちょう?」

    「お疲れ様でした、オリーヴくん。オニオンくんと、ついでにビートくんにも伝えてください。もういいからって」

    わたくしだけ――ローズのみで『ねがいぼし』を集める……?つまり。自分は、お役御免?

    「お待ちください!償いや尻ぬぐいでしたら、何でもやります!!お願いします!引きつづき、貴方のお側に……!」

    「違う違う。怒ってなんていません。きみやオニオンくん、ビートくんの将来を思って、心を鬼にして突き放すんですから」


    おそらく、この場にいたトレーナーの数名は確実に勘づいている。サイトウを襲撃した犯人がオニオンである事に。オニオンの不始末は、導いたオリーヴの落ち度。そして、オリーヴの不手際は指示を出した自分の責任。

    『秘書や子供たちは、自分の指示に従っただけ』今回の事件のみならず、いずれ計画の全てが公になった時。自分から少しでも距離をおかせておけば、世間は少なからず同情にかたより、司法の目も多少は甘くなるだろう。どのような形であれ、やり直すチャンスは充分に与えられる。ダンデからの説得どおり。オニオンから、あらゆる資格を剥奪せずによかった!それに。自分が獄につながれたとしても、マクロコスモス指導者の座はオリーヴが引き継いでくれるはず。すでにグループの経営を任せてある有能な彼女なら、たとえ自分がいなくなっても、ますますガラルの産業と興行を盛り立ててくれるだろう。

  • 108二次元好きの匿名さん24/05/24(金) 12:18:52

    ……上記の思考を0.5秒でめぐらせ、秘書の肩に柔らかく手をおいた苦笑のローズ。

    しかし、そんな彼なりの気づかいも、
    ハンカチを胸にたぐりよせ、泣きむせぶオリーヴにとっては胸をえぐられるばかりだ。

    白衣の肩から手を外したローズは、先ほどの彼女からの謝罪にも負けないほど、腰を直角に曲げた。

    「オリーヴくん。今の今まで、本当の本当に、言葉では言い尽くせないほどお世話になりました。きみが居なければ、ダイマックスバンドも生まれえず、今日のガラルリーグは影も形もありません」

    お辞儀のまましばらく経ち、人好きのするいつもの委員長スマイルで上体を戻したローズは、
    しゃくり上げたままのオリーヴの頬を、肉付きのいい色黒な指で優しくすくい上げた。

    「だけど、クビだなんて思わないでほしい。きみも、オニオンくんやビートくんも。
    わたくしにずーっと付き合わせっぱなしだったんですから!

    きみがくれたそのハンカチや、長年の熱心な働きぶりに対する、ささやかなプレゼント返しです!
    久々の長いバケーションだと思ってさ!3人揃って、気楽に羽根でも休めておいで!

    遠くないうちに!特にきみは、もっともっと忙しくなるんだからね!」

    引き止めなければ。秘書として支えなければ、彼が独りぼっちになってしまう。
    だが、彼流の精一杯の優しさを無下にしたくはない。

    使命感と感情の板挟みに遭い、嗚咽するばかりのオリーヴ。
    そんな『元』秘書の背中をポンポンと叩いたローズは、何事もなかったかのような軽やかさで踵を返すと、

    「……ダンデくんの11回目の防衛、見たかったなあ」

    泣きじゃくるのに必死な『元』秘書にも聞こえないほどの呟きを残し、普段通りのせっかちな歩調で廊下へと出て行った。

  • 109二次元好きの匿名さん24/05/24(金) 12:26:29

    以上、part2です。


    ↓まとめ

    パルデアの核弾頭 in ガラル part2 | Writeningナックルジムの医務室。 運良くロビーにいたキバナに出迎えられ、サイトウを運び込んだ一行は、 「詳細が分かるまで、この件は他言無用」と誓わせたサワコとボールガイを、 キャンプセットや支給ジャンパーと…writening.net


    >>72さんも言われた通り、


    性格や立ち振る舞いはA世界=本編と変わらない代わりに、


    イレギュラー(この世界のグルーシャさん)が混ざっちゃったたせいで、


    本来とちょっと違う筋書きや流れを辿っているイメージを目指してます。

  • 110二次元好きの匿名さん24/05/24(金) 20:47:09

    あげほしゅ
    剣盾のマイナーチェンジ版ぽくて面白い・・・

  • 111二次元好きの匿名さん24/05/25(土) 06:49:16

    保守

  • 112二次元好きの匿名さん24/05/25(土) 15:19:48

    ほしゅ

  • 113二次元好きの匿名さん24/05/25(土) 18:23:25

    ↓part3
    「ハハハ、大した手伝いが出来たかな?」
    「いやいや、大助かりですわ!こんなに早うひと段落するなんて!」
    「ありがとうグルーシャさん!あとは、この野菜と果物を届けるだけだね!」
    ターフタウンでの作業――農作物の刈り入れや土の耕し、そしてジムミッションの支度まで済ませたヤローとグルーシャは、ヤローの弟とともに3人、大きなカゴを背中にデリバリーの道を急いでいた。
    「しっかし、たまげたなあ。ぼくでも転がすのがやっとのワラの束を、あんなに軽々と持ち上げるなんて」
    「いやなに!ツンベアーを担いで雪山をかけ回る修行に比べたら、あれぐらい朝飯前って奴だ!」
    「つ、ツンベアーを!?……おいらも、毎日ウールーをしょって農作業してたら、グルーシャさんみたいに粘り腰になれるかな……?」
    「やめときんさい……この人だから出来るんだよ」「特別な鍛錬はいらないよ!一日一日を大切に過ごせば、お兄さんやボクに負けないくらいタフになれるぞ!」
    思い思いに談笑しながら、夕焼けの道路を歩く3人。その上空には、グルーシャがパルデア海を渡った時と同じく、彼の切り札・チルタリスが主のリュックサックを身体から下げつつ、ゆっくりと並走している。ターフタウンからガラル鉱山を抜け、エンジンシティ。そして、いわくの場所――ワイルドエリアに差し掛かった3人は、門をくぐった所でいったん立ち止まった。
    「……サイトウさんが襲われたのは、ナックルシティの門の方でしたよね」
    「いかにも。オニ……犯人は、あちらのゲートの中に逃げていった」
    滑らせかけた口をつぐみ、ヤローへと腕を組んだグルーシャ。
    「えっ?なに!?兄ちゃんケガしたの!?」
    「いいや。ケガをしたのは兄ちゃんの知り合いじゃ」
    事情を知らない弟を背中越しにたしなめたヤローは、石橋の脚が描くアーチの向こう側――エンジンリバーサイドに向かって、敬礼のポーズで目を凝らしている。

  • 114二次元好きの匿名さん24/05/25(土) 18:24:02

    「……あっちに行ったって言うんなら……ナックル、ラテラル、キルクス……それに、シュートシティに用があるんじゃなかろうか……」
    「新たな『ねがいぼし』を探しに、か?」
    「……うーん……。グルーシャさんもお分かりでしょうけど、ぼくは考え事が苦手なタチなんですわ。でも。そんなぼくでも引っかかっとる、ボンヤリした違和感っちゅうヤツがありまして」
    朴訥とした彼に似つかわしくない、推理小説の探偵ような厳しい口ぶり。ん?と唸り、グルーシャが彼の背中に続きを促した。
    「あなたが言うた通りに、次の『ねがいぼし』を漁りに行ったんなら、とっくに第2第3の騒ぎが起きててもおかしゅうはない」
    「なるほど。欲しい物のためなら実力行使も厭わない相手だからな……。たとえば……仮にボクが犯人なら、あの後、ラテラルタウンとやらを真っ先に襲う……と思う。ボクの読みが正しければ、オニオンくんが姿を消し、サイトウくんが倒れている今、あそこはジムリーダーが不在のはずだからな」
    キバナやルリナ、サイトウとの約束――犯人の正体は明かさない。律儀に契りを守ろうと、何時にもなく慎重に合いの手を入れるグルーシャ。
    「……関係者に事件が知られたのを悟り、ほとぼりが覚めるのを待っているのだろうか?」
    「でも、身を潜めるにも住まいがあるはずです。犯人は襲いに行ったんじゃない!きっと住み処に帰ったんじゃ!」
    農業で鍛えあげた大きな右手が、強く拳を握る。

  • 115二次元好きの匿名さん24/05/25(土) 18:24:25

    「……これは、農作業の合間に天気を読むのと同じ、つまり……父ちゃん譲りの勘なんですが」
    深呼吸を挟んだヤローが、グルーシャと正面に向き直った。
    「サイトウさんをひどい目に合わせた犯人……。あの手この手で『ねがいぼし』を集めとる輩は、ナックルシティから上――つまり、さっき挙げた土地におる誰か……だと、思っとります」
    確信は乏しい。それに、仲間を疑いたくはない。断言するのがはばかられたのか、悲しげに眉をひそめ、語尾が消え入るヤロー。だが、一見お人好しで素朴に見える彼の思わぬ推理の鋭さに、グルーシャは思わず目を剥きかけた。と、その時。
    「ぴぃぃ!ぴぃぃ!」
    「あっ!そうだね!兄ちゃんたち、早く行かなきゃ!ハロンタウンの人たちが待ちくたびれてるよ!」
    はるか頭上から、チルタリスの鋭いソプラノが発破を掛けてきた。
    「あぁ、いかんいかん!グルーシャさん。今のは気に留めんでください!ルリナさんあたりがおったら、『ミステリーにハマってるの?』なんて笑われそうですわ!」
    頬を染め、たははと頭を搔くヤロー。
    「いや。大変参考になったよ!」
    オニオン容疑者だとバレていない事を祈りながら、グルーシャもニッコリと目を細めた。その後は特段の会話もなく、3人と1匹は、ブラッシー駅を通り過ぎようとしている。

  • 116二次元好きの匿名さん24/05/26(日) 00:19:30

    気付かなそうな人が最初に怪しがるの王道

  • 117二次元好きの匿名さん24/05/26(日) 09:37:28

    保守

  • 118二次元好きの匿名さん24/05/26(日) 17:52:56

    保守

  • 119二次元好きの匿名さん24/05/26(日) 23:47:59

    確定はしてなくてもほぼバレてるな

  • 120二次元好きの匿名さん24/05/27(月) 09:32:16

    ほしゅ

  • 121二次元好きの匿名さん24/05/27(月) 14:01:04

    主です!お待たせしてしまいすみません!
    構成や展開などにかなり迷ってまして、少し書き溜まりしだい上げていきます!

  • 122二次元好きの匿名さん24/05/27(月) 22:57:50

    待つよ保守

  • 123二次元好きの匿名さん24/05/28(火) 08:43:58

    保守

  • 124二次元好きの匿名さん24/05/28(火) 18:46:06

    待機

  • 125二次元好きの匿名さん24/05/28(火) 23:54:12

    日付変わる前の保守

  • 126二次元好きの匿名さん24/05/29(水) 09:50:28

    待ち

  • 127二次元好きの匿名さん24/05/29(水) 19:09:10

    保守

  • 128二次元好きの匿名さん24/05/29(水) 19:19:57

    主です。大まかな流れは6割ほど見えてきました!あとは文を考えるだけ……あと少しだけお待ちくださいm(_ _)m

  • 129二次元好きの匿名さん24/05/29(水) 23:52:48

    おやすみほしゅ

  • 130二次元好きの匿名さん24/05/29(水) 23:55:24

    >>128


    めちゃ考えて書いてるんだろうなってssから伝わってくる。無理すんな

    でも頑張れ

  • 131二次元好きの匿名さん24/05/30(木) 07:56:38

    保守

  • 132二次元好きの匿名さん24/05/30(木) 19:36:21

    保守セーフ

  • 133二次元好きの匿名さん24/05/31(金) 00:43:03

    応援

  • 134二次元好きの匿名さん24/05/31(金) 00:46:43

    >>115

    時を同じくして。ガラル最北の街――夕刻のシュートシティでは。

    「……コーヒーは?紅茶の方が良いかしら」

    「ぼくは……コーヒーで。砂糖もミルクも要りません」

    「オニオン選手は?」

    「ぼ、ぼくは……ぼくも同じで」

    「ふたりとも大人ね」


    エンジンシティを後にしたオリーヴは、さっそくオニオンとビートを呼び寄せた。

    街の名物のひとつ、大きな観覧車に程ちかい住宅地。積み木のように隙間なく密集した小さな民家のひとつに、仮眠室も兼ねたオリーヴのラボがある。

    「待ってて。お湯が湧いたらすぐに出せるから」

    床に散乱した書類を踏み鳴らし、キッチンに潜り込んだオリーヴ。切り抜かれたカウンターの向こうでは、ケトルの湯立つ音がだんだんと大きくなってきた。


    「……どういう風の吹き回しでしょうか」

    「今日のオリーヴさん、変……だよね」


    部屋の中心に鎮座するテーブルに腰掛けながら、2人のトレーナーは怪訝に顔を見合せた。オニオンもビートも、この部屋でオリーヴと会合するのは何度目になるか分からない。だが、その話題の大半は『ねがいぼし』集めの近況報告や、ガラル粒子が濃厚な――『ねがいぼし』が落ちている可能性が高い場所の申し送りなどなど。簡潔な一方通行と軽い返事で終わる事がほとんどだった。


    「オニオンさん、珍しく気が合いますね。オリーヴさんともあろう人が、優雅にお茶会とは」

    だが、今日の彼女は様子が異なる。いつもなら話題や要点を真っ先に切り出すはずが、この部屋に入ってからというもの、のらりくらりと雑談をまくし立ててるばかりだ。

  • 135二次元好きの匿名さん24/05/31(金) 00:53:22

    「……出来たわ。インスタントだから、口に合うかは分からないけれど」
    2人の少年の前に置かれたマグカップ。
    「本当は豆からドリップした物が好きなんだけど、今まで多忙すぎたせいで喫茶店になんか通う余裕がなくて」
    自身の分のマグカップを手に腰掛け、2人と向かい合ったオリーヴ。
    「……でも、久しぶりに行ってみようかしら。せっかくだから3人でいかがかしら?そう言えば、パルデア地方の有名な喫茶店が、近いうちにガラルへ出店するとか……」
    「本題は何ですか?まさか、世間話のために呼ばれたとは思いませんけど」
    違和感が拭いきれなくなったビートが、身を乗り出しながら鋭く問うた。
    「……そうだったわね」
    マグカップに自嘲ぎみな笑みを落としたオリーヴ。湯気をまとう黒い水面をしばらく見つめたオリーヴは、瞳を上げて2人に哀願した。
    「お願いします。ローズさまを助けてあげて」
    涼やかな口調で、だが声を震わせるオリーヴに、マグカップを傾けるビートの手が止まった。
    「助ける、とは?お互いに推薦されてから数日。2ケタも集めていないオニオンさんはともかく、ぼくは20個以上も『ねがいぼし』をお渡しして、少なからず委員長に貢献しているはずです」
    ビートからの当てこすりに、うぅ……とうつむく隣のオニオン。
    「……2人とも、落ち着いて聞いてちょうだい」
    むくれてジト目を向けてくるビート。そして呆然と固まるオニオンへと、オリーヴは気まずげに続けた。「ローズ様……委員長からの伝言です。これ以上の『ねがいぼし』集めは無用。あとは自分のみで大丈夫だと」
    「『ねがいぼし』は、」
    「無用?」
    オニオンとビートの輪唱にかまわず、粛然と告げるオリーヴ。
    「本社に問い合わせたら、わたくしも当分の間は出社無用ですって。グループの経営も秘書も、違う社員に引き継いであった。書類上は有給あつかいになっているみたい」
    一息にまくし立てたオリーヴは、熱くなる目柱をまぎらわせようと、ぬるくなったコーヒーを勢いよく傾けた。

  • 136二次元好きの匿名さん24/05/31(金) 00:59:44

    「……3人そろって、用済みという訳ですか?」
    状況を把握したビートは、みるみる青ざめていく。
    「違う。あの方は、1人で咎をかぶろうとしているだけ」
    ワナワナと慄くピンクのコートに、オリーヴがかむりを振って否定した。
    「あなたは、まだこれから。もちろんオニオン選手も。 ローズ様は、将来ある子供たちが捕縛の徒になるのを防ごうと、わたくしもろとも、敢えて切り捨てられたんです!」
    「ほ……?」
    ホバク……年端もいかないオニオンには腑に落ちない単語。
    「捕まえること、捕まることです。この場合は、ぼく達がお縄につく事」
    「……!」
    ビートの耳打ち。もしや自分は、ただならぬ過ちを犯したのでは。「……委員長は」
    直感で悟ったオニオンは、ポンチョの肩を徐々に弾ませながら、過呼吸ぎみにオリーヴへ尋ねた。 「ロ、ローズさんは……『ねがいぼし』を使って、何をしたいんですか?」
    「同感です。委員長からは『ガラル地方の未来のため』としか」
    「ぼ、ぼくは『誰にも負けない力が手に入る』ってオリーヴさんから」
    推薦した者が異なれば、交わされた情報も異なっている。両肘を杖にテーブルに顔を伏せたオリーヴは、ローズの真意への思い違いを、
    そして、そんな売り言葉でオニオンを焚き付けてしまった事を改めて後悔した。
    「……オニオン選手……ごめんなさい。ビート選手の言う通り。これはガラルの行く末を思っての頼みでした」 うつむいたままのオリーヴは、ローズの目論見を――自分が知りえる、推測しうる限りの真相を伝え始める。

  • 137二次元好きの匿名さん24/05/31(金) 01:03:11

    「おふたりとも、ブラックナイトってご存知かしら?」
    「「ブラックナイト?」」
    「ええ。3000年前、この地を襲った大災害。突然ダイマックスしたポケモン達が暴れだし、ガラルは滅亡寸前に陥った……」
    「ずいぶんと壮大な……まるでSFのオープニングじゃあるまいし」
    「これは重要な話よ」
    苦笑するビートからの茶々をいなし、真顔のまま続けるオリーヴ。
    「ブラックナイト……つまり、大規模なダイマックス現象が発生した原因には諸説あるの。けれど……調査を進めるうち、わたくし達は――ローズ様は、こう睨んだ。
    ブラックナイトは、1匹の強大な生物によって引き起こされたのだと」
    自分たちを交互に目配せするオリーヴに、2人の少年が喉を鳴らす。
    「……これを見てちょうだい」
    白衣の懐からスマホを取り出したオリーヴ。画面に映っているのは、右端にローズが微笑む『エネルギープラント』の解説である。
    「ナックルシティにそびえる塔。この塔の頂上から吸収されたエネルギーは、地下のプラントで電気に変換されて、ガラル全土に送られているの。つまり。ガラル地方のライフラインは、そのほとんどが、塔が吸収したエネルギーで賄われている」
    「エ、エネルギー?」
    フードの内側から、目をパチクリと瞬かせるオニオン。
    「そうよ。エネルギーとは、すなわち『ガラル粒子』に他ならない」
    「要するに、ぼく達は『ガラル粒子』のおかげで快適な暮らしができている。という解釈で構いませんか?」
    「さすがローズ様の推薦トレーナーね。理解が早いのは良い事よ」
    「と、当然です」
    理解が追いつかない弟分を彼なりにカバーしたつもりか、不意に褒められたらしいビートは、顔を赤らめて仰け反った。
    「……続けるわね」
    モジモジと人差し指どうしをすり合わせながら、わずかに頷くオニオン。
    「でも、ガラル中に散らばった粒子の数にも限りがある。ローズ様は、いずれ訪れるエネルギーの――ガラル粒子の枯渇を、もっとも恐れておいでだった」
    画面の明かりを落としたスマホが、オリーヴの懐に収まった。
    「そこでローズ様は、ある計画を立案されたの」
    眉間を寄せ、身を乗り出すオリーヴ。彼女から醸し出される静かな圧に、オニオンとビートは彼女の顔に視線を釘づけた。
    「……『ムゲンダイナ』」

  • 138二次元好きの匿名さん24/05/31(金) 01:07:09

    ブラックナイトを招いた元凶。と、ローズやオリーヴが結論づけた強大な生物。饒舌になろうとする欲をこらえ、難解な箇所は砕きつつ。元秘書は静かに語り続ける。
    おそらく純度の高いガラル粒子の塊で構成されているムゲンダイナの肉体。ローズの真意は、『ねがいぼし』の微弱な力で刺激を与え、ムゲンダイナを復活させる事。ブラックナイトを人為的に再現させ、エネルギー――ガラル粒子の枯渇を防ぐ事にあった。
    「『ねがいぼし』を集めていたのは、一個人のためではない。1000年先の繁栄を約束するためだと、別れ際にそう仰っていたわ……」
    「……ハァ……ハァ…ハァ……!」
    「……オニオンさん?オニオンさん!」
    「か、過呼吸よ……!」
    オリーヴが言葉を切ったと同時に、オニオンのポンチョが激しく上下し始めた。
    「オリーヴさん!ビニール袋を!急いで!」
    呼吸を乱し、ビートの太ももに倒れ込んだオニオン。弾かれたように立ち上がったオリーヴが、自分たちをコの字に囲む長机――数台のモニターとキーボード、積みあがったゴミ溜めの一角から、1枚のコンビニ袋をひったくった。
    「……ぼく達を、利用していたんですね」
    ポンチョのフードを上げ、黒いマスクを剥がされたオニオンは、口と鼻に袋を宛てがわれながら、ビートの太ももで荒い呼吸を続けている。
    「……ぼくを利用して、オニオンさんを騙して、犯罪の片棒を担がせた……!」
    オリーヴを睨み、怒気をはらんでいくビートの声。彼が代弁するにつれ、オニオンの目から何筋もの涙が零れだした。
    「……思えば、推薦された時から。いいえ。養護施設で目を付けてもらった時から、ムゲンダイナとやらを甦らせるために、ぼくを利用するつもりだった……」
    「違う!それは断じて違うわ!!計画が決まったのは今年に入ってからよ!!ローズ様は、あなたの事を……行き場を失い、塞ぎ込んでいたオニオンさんの事も心から気にかけて……!」

  • 139二次元好きの匿名さん24/05/31(金) 01:10:54

    「それで?あなたのボスを助けて欲しいとは?」
    オニオンの横髪に優しく指でとかすビートは、相棒――ミブリムが見れば卒倒するほどの鋭い形相でオリーヴを見つめながら、彼女の弁明をはねつけた。
    「……ローズ様の……計画を、阻んで欲しいの!」
    気迫に押されまいと苦しげに叫んだオリーヴに、これみよがしに鼻を鳴らすビート。
    「とんだお笑い草ですね?散々おだててこき使っておきながら、今度は邪魔をしろ?オニオンさん。落ち着きましたか?帰りましょう。大人はいつもこうだ。時間を無駄にしました」
    「オリーヴもお払い箱にされたのよ!!時間の無駄とは何よッッ!!!」
    敵に回したビートは、相手を食いに食いまくる。それに、物言わず浅い呼吸ですすり泣くオニオン。
    怒り、焦り、不安、やるせなさ。心につもった憤懣が爆発したオリーヴも、ビートに劣らぬ剣幕で机を叩くや、堰を切ったように泣きわめいた。「ダンデに!それか新チャンピオンに!!ムゲンダイナを捕獲してもらうはずだったのにッ!!オニオン、さんが!余計な事するせいで!計画は前倒しになっちゃうかもだし!!このままだと、ローズ様が、一人で突っ走って!独りぼっちになっちゃうのよッ!!」
    床に落ちて破裂するマグカップも気に留めず、テーブルクロスに突っ伏したオリーヴは、激しく嗚咽を漏らすばかりだ。
    「……独りぼっち……ね」
    外聞も体面もなく泣きじゃくるオリーヴの姿。か細く漏らしたビートには見覚えがあった。ローズと出会う前の自分自身。己の膝でうずくまっているオニオン。
    なんだ。彼女も『子供』だ。寄る瀬を必死にさがす、迷えるメリープ。誰かの手元から、いきなり大海に放たれた水ポケモン。三者三様。この場の人間は、確かな何かを失っていた。

  • 140二次元好きの匿名さん24/05/31(金) 01:12:23

    「……何をすれば?」
    先ほどよりは、いささか角の取れたトーン。泣き崩れるオリーヴの背中が、ビートの呼びかけにピタリと止まった。
    「……委員長を邪魔するには、何をすればと聞いているんです」
    「……ありが……とう……」
    鼻をすする白衣の隙間から、こもった礼が聞こえる。
    「オニオンさんはどうするんです?このまま、ぼくと一蓮托生になりますか?……決して無理強いはしません」
    「……ぼくにも、協力させて。どんな事情があっても、オリーヴさんに拾ってもらった事に変わりはないから……ローズさんの計画を止めよう」
    ようやく息を整えたオニオンは、途切れとぎれに紡ぎながらムクリと起き上がった。かぶり直されたポンチョのフード。ふたたび目鼻を隠す大きなマスク。テーブルに放られたコンビニ袋が、乾いた音を立てる。
    「……まったく、どこまでお人好しなんだか。オリーヴさん。2人とも協力します。ぼくも委員長に利用されっぱなしはシャクですから」
    「……取り乱して、ごめんなさい」
    上体を起こし、メイクが崩れるのも構わず手の甲で涙をぬぐうオリーヴ。
    「ふん。こちらこそ、泣かせた事は謝ります。ぼくの気まぐれと、『弟』の優しさに感謝するんですね」
    誇らしげに鼻息を出すビート。
    しかし、その横でオニオンは密かに唇を噛んでいた。

    人生で初めて嘘をついた。

    ローズの計画を、ムゲンダイナの復活を止める気などハナから無かった。リーグから逃げ出したのも、サイトウを痛めつけた――トレーナーとして最大のタブーに手を染めたのも、オリーヴに――ローズに利用されたのも、全ては自分が弱いせいだ。
    もっと強く。ささいな過去など帳消しにできる強さを。
    過呼吸を整えている間、オリーヴの発言を脳裏で反芻していたオニオンは、ふと答えにたどり着いていた。ムゲンダイナを手にすれば、『ねがいぼし』など目ではない、莫大な力が自分のものになる。そればかりではない。ガラルを救った英雄として、諸手を挙げてメジャーに復帰できるはずだ。あえなく復活したムゲンダイナをダンデにかわって横取りする。
    そのためにも、今は大人しくオリーヴやビートに従っておこう。引き金を引くのは、ぼくだ。

    「……ぼくにも、協力させて」

    そう思い立ったオニオンの口は、無意識に動いていた。

  • 141二次元好きの匿名さん24/05/31(金) 10:43:56

    続きがめっちゃきてる!

  • 142二次元好きの匿名さん24/05/31(金) 20:46:27

    保守

  • 143二次元好きの匿名さん24/06/01(土) 07:03:16

    待機

  • 144二次元好きの匿名さん24/06/01(土) 15:47:01

    ほしゅう

  • 145二次元好きの匿名さん24/06/01(土) 22:38:53

    待ち

  • 146二次元好きの匿名さん24/06/02(日) 08:57:45

    ho

  • 147二次元好きの匿名さん24/06/02(日) 19:40:28

    保守

  • 148二次元好きの匿名さん24/06/03(月) 00:20:29

    おやすみ

  • 149二次元好きの匿名さん24/06/03(月) 10:37:13

    おはよう

  • 150二次元好きの匿名さん24/06/03(月) 11:33:42

    >>140

    「いやぁ。グルーシャさんはともかく、ぼくらまでご一緒させてもろうて」

    「お世話になってるんだから当然よ!こんなに美味しい野菜、いつもありがとうね!」

    ハロンタウンに農作物を届けたヤロー兄弟とグルーシャは、出迎えられたお得意さま――ホップママの提案でバーベキューを囲んでいた。息子や祖父母。そして、お隣さんのユウリたちも交え、金網の灯りと具材の焼ける音、弾む会話が、更けゆく夜の裏庭を明るく照らしている。

    「ホップのウールーに負けないぐらいモッフモフだあ……!」

    「ぴぃぃ♪」

    折りたたまれた羽に、うっとりと横顔を埋めるユウリ。長い首を曲げながら、彼女に寄りかかられたチルタリスがニッコリと頬を寄せた。

    「うふふ。ユウリったら、トレーナーさんのポケモンに触れるの初めてだもんね」

    ユウリの母親は、ポケモンにあやされる娘の姿を微笑ましく見つめている。

    「可愛らしいだけではないぞ!ボクの手持ちの中でも、その子はズバ抜けてタフなんだ!

    現に、パルデアからガラルまで8時間かけて渡ったが、ご覧の通りピンピンしている!」

    「もしかしてグルーシャさん達、そらをとんでガラルまで来たのか!」

    「いや、飛んできたのはチルタリスさ!ボクは、チルタリスの真下を泳いできた!」

    「お、およいっ!?」

    「さすがに途中で気を失ってねえ……。バウタウンに流れ付かなければ、今ごろは土左衛門になっていたな!ハッハッハ!」

    「す、すっげー!キバナさんといい、トップジムリーダーは格が違うな!」

    串を両手に顔を輝かせるホップを、迷彩服のグルーシャが豪快に笑い飛ばした。

    「何言ってるのホップ!広い海を身体ひとつで渡れるわけないじゃない!グルーシャさんったら、ジョークのセンスが抜群ね!」

    「ジョーク?扇子?何のことだ?」

    「ホップさんのママさん。ぼくが知っとるグルーシャさんなら、多少の無茶でも出来かねませんわ……」

    息子の無邪気さを笑う母親に、グルーシャとヤローは至って真顔で腕を組んだ。


    「……オニオンさん、元気じゃろうか」

    会話も落ち着き、ふたたび飲み食いに没頭し始めた一同。弟に焼けごろの串を手渡したヤローが、空を見上げながら独りごちた。

  • 151二次元好きの匿名さん24/06/03(月) 11:38:54

    暖かな昼の名残りは消えかかり、薄い花色に染まった空。日が傾いた夜空の下。今ごろも、オニオンは独り寂しくラテラルの自宅で閉じこもっているに違いない。
    「……ひもじい思いしとらんかなぁ……。こないだルリナさんと持っていったご飯、手つけてくれとるかなぁ……。オニオンさん、強いトレーナーに憧れとるらしいんです。グルーシャさんが来てくれたって知ったら、絶対に喜ぶはずなのに……。
    気晴らしに、ぼくらと農作業でも……いいや。
    ルリナさんと素潜りでも、カブさんとトレーニングでも、ポプラさんやメロンさんらとお茶会でもよかったんです。
    あそこまで追い詰められる前に、大人の誰かが、一人でもオニオンさんと話ができとれば……」
    雲の切れ間に光る星へと、ヤローの後悔が吐き出される。隣で耳をかたむけていたグルーシャは、紙コップを握りつぶしながら、うるむ目元を左手で押さえた。
    「グ、グルーシャさん?」
    「すまん……!感極まって、つい!」
    歪んだ紙コップを打ち捨て、ヤローの両肩をしこたまに揺らすグルーシャ。
    「安心しろ!オニオンくんは必ず正気に戻す!一度かわした約束を、おいそれと曲げてたまるかああ!!」
    「うわっ、わわっ!た、頼もしい限りです!」
    サイトウの襲撃犯を隠す罪悪感もあってか、グルーシャの手つきが激しさを増していく。屈強な巨体を親以外に揺らされた試しのないヤローは、エンジンでの会議でネズを唸らせた力強さを肌で受け止めながら、つぶらなひとみをパチクリさせて上体を前後にシェイクするしかなかった。

    ウオオオォォン……

  • 152二次元好きの匿名さん24/06/03(月) 11:50:58

    このレスは削除されています

  • 153二次元好きの匿名さん24/06/03(月) 11:56:16

    むっ?」

    そして、バーベキューもたけなわになった頃。ホップ邸の庭に、謎の雄たけびが轟いてきた。
    「今のは何だ?」
    「キュウ……?」
    クチバシと両手に、それぞれ大きなバケツを抱えるグルーシャとチルタリス。
    「ポケモン……ですかね。でも、あんな鳴き声は聞いた事ありませんわ」
    「でも、すごく怖そうだったよね……」
    バトルコートから運び出したバーベキュー台を、納屋そばのレンガ塀に寄せるヤロー兄弟。
    「たぶんだけど、まどろみの森かも……!」
    ユウリ母娘とともに、チョロネコとゴンべを遊ばせるホップ。庭の全員が、いっせいに動きを止めた。
    「まどろみの森?」
    「ああ!なんでも、恐ろしいポケモンが住んでるから、誰であろうと入ったらダメって言い伝えがある場所で…」
    「つまり……前人未到という訳か」
    「いや……昔、ポケモン博士の孫が入ったらしいけど、中で怖い目にあったし、めっちゃ怒られたってさ」
    「なるほどな……」
    常人ならば恐れをなすに違いない。しかし、ホップからの驚かしもグルーシャ隊長には通じない。
    「……な、なあ。グルーシャさん、まさか入りたい訳じゃないだろ?」
    「危険の中にこそ宝は眠る。いやあ、その博士の孫とやら、探検の素質がありそうだな!」
    グルーシャ隊長の右拳が、迷彩服の胸の前でガッツポーズを作っている。勝負前のカブやキバナに劣らぬ鋭い面持ち。
    「ちょっと待てって!マジでヤバいから!フリじゃないからな!!」
    「グルーシャさん、無茶せんといてください!美味いバーベキューまでご馳走になって、これ以上ハロンタウンの皆さんにご迷惑は……」
    こいつ本気だ!
    えも言われない危なさを感じたホップとヤローは、庭を後にすべく――まどろみの森に突入すべく踵を返したグルーシャ隊長の背中に、全力でしがみついた。

    ウオオオォォン……

    夜の田舎町に鳴りわたる、2度目の咆哮。
    「た、た、大変だ!!」
    それと、ウールーと腹ごなしの散歩に出ていたはずのホップ祖父が、大慌てで庭に駆け込んできたのは同時だった。

  • 154二次元好きの匿名さん24/06/03(月) 21:07:29

    ほしゅあげ
    剣盾勢、本編と性格は変わらないけど人間関係やら時系列が変わってくるのか!

  • 155二次元好きの匿名さん24/06/04(火) 07:54:17

    保守

  • 156二次元好きの匿名さん24/06/04(火) 17:57:32

  • 157二次元好きの匿名さん24/06/04(火) 18:01:29

    >>153

    「ウールーが森に入った!ばあさんもアイツを追いかけて中に!」

    「なんだって!?」

    バーベキュー台が寄せられた真横――バトルコートそばの塀から、蒼白のホップが身を乗り出した。

    「そんな!体当たりでもしたのかよ!?」

    いつもは厳重に閉ざされているはずの木の扉。しかし、無理やりこじ開けられたのか、取っ手にぶら下がった錠前は掛け金がポッキリと折れている。

    「よし来た!さあ、アンタ達も一緒に来るんだ!前人未到の森の奥に、幻の生物『ナトゥー』は実在した!」

    「えっ?はっ?な、ナトゥーって何だよ!?」

    「こうしている間にも、ホップくんの祖母とポケモンが捕食されているかもしれん!!」

    たじろぐホップにも構わず、グルーシャは森へと続く門に向かって一目散に駆け出した。

    「ああもう!恐くてたまらないけどさ、家族が危ないんなら話は別だ!なあ、かーちゃん!」

    「……きっと、ダンデも同じこと言い出すわね。ヤローさん、無茶なお願いしてごめんなさい。うちの子が突っ走らないように見ててあげて」

    「任せてください。誰かが困っとるのに、しっぽを巻いて帰るわけにはいきませんから。グルーシャさんもついとる事だし百人力ですわ!」

    頭を垂れるホップのママに、ぶ厚い胸板をドンと叩くヤロー。

    「お前はどうする?」

    「兄ちゃんが行くんなら、おいらも行く!」

    「……分かった。でも、絶対に兄ちゃんから離れちゃいかんぞ」

    兄とお揃いのハットごしに頭を撫でられ、ヤローの弟は大きく頷いた。

    「わたしも行かせて!ホップが……みんなが無事かどうか、ハラハラしながら待つだけなんて耐えられないよ!」

    「ンべ!」

    「ミー!ミー!」

    気を吐くユウリの足下では、飼い主を囲んだゴンベとスボミーが、勇ましい鳴き声とともに全身をはずませている。

    「……分かったわ。ただし。危ないって思ったら、すぐに逃げ出すこと!ママとの約束よ」

    微笑みあう母娘の指切りげんまん。森の入り口から庭へ、両手をけたたましく振りまくるグルーシャ隊長。

    2人の母親とホップ祖父を残し、グルーシャと合流した一同は、夜更けの森へと足を踏み入れた。

  • 158二次元好きの匿名さん24/06/04(火) 18:08:27

    「……ボクが愛読する『月刊オーカルチャー』によれば、原人ナトゥーは荒野に生息する夜行型の知的生命体……」
    「ここ、森だろ」
    「不気味な毛並みで四足歩行。ヘルガーのような遠吠えを放ち、錆びた金属やポケモンの肉が好物らしい……」
    「ひ、ヒトなのに四つん這いなのか?」
    ウオオオォォ……!
    「しっ!また聞こえたぞ!」
    いかがわしい情報が披露されるにつれ、(それにホップが疑問を挟むにつれ)鳴き声が距離を縮めてきた。懐中電灯を逆手に構え、ジリジリと進むグルーシャ。彼のすぐ後ろにつくヤローは、いつでも手持ちを繰り出せるように、腰だめに構えながら子供たちを従えている。
    「かなり近くにおるみたいですね……!」
    「だけど、暗くてよく見えないぞ……!ばーちゃんとウールーは何処なんだ……!」
    グルーシャとヤローはもちろん、ユウリはゴンベとスボミー。ホップはチョロネコ。
    それぞれの手持ちや仲間を引き連れ、あるいは肩に乗せ、立ち止まっては忍び歩く一同。声をひそませようと、ユウリは手のひらを口に当てている。
    「ケホッケホッ……それに、すごい湿気……」
    「いや、待て……これは霧だ!」
    そして、咳き込むユウリにグルーシャが叫んだ瞬間。あたりは異変に包まれた。懐中電灯なしでは前後の判別もつかないほど暗かったはずの森の中が、とつぜん日が差し込んだかのように明るくなったのだ。
    「ホップさん、あそこ!」
    「あっ!ばーちゃん!ウールー!」
    ヤロー弟が指さした先。一同の先には、地面に横たわる祖母と、半泣きのウールーの姿が。ホップとともに祖母へと駆け寄り、首筋で脈を取るグルーシャ。
    「心配ない!気を失っているだけだ!」
    「よかった……心臓止まるかと思ったぞ……」
    「ぐめ!ぐめ!」
    かたわらにしゃがむ隊長からの笑みに、ホップはウールーを抱きしめた。
    「めぇーっ!」
    だが、主と再会できたはずのウールーは、喜ぶどころか、彼の腕のなかで身じろぐばかりだ。
    「ぐめめ!めぇーっ!!」
    「ホ、ホップ!あそこ!!」
    横髪をしたたかに揺らし、全力で首を振りまくるウールー。
    「ど、どうしたんだ?ケガでもしてる……の……か」
    切羽つまったユウリの悲鳴と、圧じみた気配。強烈な違和感を感じたホップは、顔を上げるや、真顔のまま硬直した。

  • 159二次元好きの匿名さん24/06/04(火) 18:11:15

    「で、で、出たあああああ!?」
    ウールーを抱いたまま、一同に猛スピードで舞い戻ったホップ。
    もうもうと立ち込める霧の中には、シアンとマゼンタ。異なる色の体毛を持つ、2体の生物が一対に並んでいる。
    「ホップさん、後ろに隠れてください!」
    ヤローのたくましい腕が、すぐさま切り札――タルップルを繰り出した。するどく2体を睨むグルーシャも、ホップ祖母をおんぶしながら、悠然と立ち上がる。
    「……アンタ達が、原人ナトゥーか?」
    ウ?ウオ?聞きなれない単語に首をかしげ、一瞬だけ互いを見つめた2体。しかしすぐに居住まいを戻すと、凛々しい眼差しを一同に向け、ふたたび沈黙した。
    「いやあ、これは大発見だぞ!!ハッハッハ、ナイストゥミーチュー!!もし良ければ、記念に写真でも1枚……」
    「なっ、おおい!グルーシャさん!?」
    「待って待って待って!ケガしたらどうするんですか!?」
    「せめてばーちゃんは連れてきてくれええ!」
    ヤローやユウリ、ホップの制止も効果がない。2体の生物をいかめしく見つめていたグルーシャだったが、一転して華やぐや、出会ったばかりの脅威にむかってフレンドリーに近づいていった。あろう事か、気絶した老婆を背負ったまま。
    「ウオオオン!!」
    「ヒィィロト……!」
    2体同時の威嚇。スマホロトムは、迷彩服の胸ポケットへと光速で引っ込んだ。
    「むっ。やはりそうか。慣れない文明に対して警戒があるらしい」
    「文明じゃなくて、間違いなくぼくらにだよ!」
    「やむを得ん……。分かり合うためにも、まずは勝負だな!」
    2体の生物を、どうやらポケモンではなく未開の民族だと勘違いしたままのグルーシャに、ヤロー弟のツッコミが冴える。
    「ほう、生身で来るか!面白い!ツンベアー!組み手だ!!」
    「ガオ!」
    一行に戻ったグルーシャは、修行仲間でもあるツンベアーを繰り出した。

  • 160二次元好きの匿名さん24/06/05(水) 00:03:20

    そこ遭遇しちゃうのか!

  • 161二次元好きの匿名さん24/06/05(水) 11:04:48

    保守

  • 162二次元好きの匿名さん24/06/05(水) 21:30:28

    ほっしゅ

  • 163二次元好きの匿名さん24/06/06(木) 08:22:34

    ほしゅ

  • 164二次元好きの匿名さん24/06/06(木) 16:53:18

    >>159

    「そうか。こんなに狭い所だとチルタリスじゃ小回りが効かん。腰を据えて戦うために、あえてツンベアーを出したんじゃな!」

    「なるほど!さすがトップジムリーダー……って、もしかしてグルーシャさん、こおり使いだったのか!でも、なんで切り札がチルタリスなんだ?」

    「ルリナくんからも聞かれたな!分かった。今からパルデア流をお見せしよう!」

    ヤローとともに先頭を切るグルーシャが、背後へ雄々しくサムズアップする。

    「行くぞツンベアー!森を零下で覆い尽くせ!!」迷彩服の腰から掲げられたテラスタルオーブ。

    初めて目にする虹色の輝き。

    背中で眠るホップ祖母に配慮してか、柔道の「大」の構えは取らないまま、グルーシャの手から緩やかにオーブが投げ上げられた。

    「大きい、雪の結晶……!?」

    「いったい何が起きてるんだ……!?」

    宝石のごとく艶を増すツンベアーの巨体。ユウリとホップが息を飲んだ。その頭上には、王冠を思わせるこおりのジュエルが燦然とそびえている。


    「これぞパルデア流奥義!

    全てのポケモンをこおり技のエキスパートに変える神秘!人はこれを『テラスタル』と呼ぶ!」

    ヤローも、後ろの子供たちも、

    主の足下で身構えているゴンベやチョロネコも、グルーシャの口上に聞き入った。

    「ツンベアー。つららおとし!」

    2匹の珍獣を勇ましく指さすグルーシャ。主からの指示が早いか、砲丸投げよろしく背後に振りかぶる右腕。

    「ガルルルル……!」

    獰猛な唸り声とともに、ツンベアーの手のひらから鋭利な氷柱が生えだした。

    「メ、メロンさんのヒヒダルマより太いや……!」

    「テラスタル……技の威力や手持ちのタイプが変幻自在っちゅう訳か!」

    ヤロー兄弟の嘆息と同時。

    剛腕から投げ抜かれた巨大なつららが、シアン色の体毛目掛けて弧を描く。

    ところが。


    「……効いていないのか?」

    大人の胴回りほどはあった巨大なつららが、シアン色の眼前に差し掛かるや、忽然と消えてしまった。

  • 165二次元好きの匿名さん24/06/06(木) 16:56:04

    「タルップル、りゅうのはどう!」
    眉を潜めるグルーシャの横から、ヤローの指示が炸裂する。が、これも不発。渦を巻いて放たれた衝撃波も、次はマゼンタ色の目前まで迫るや、虚空に開いた歪みの中へと飲み込まれるように消えてしまった。
    「チョロネコ、ひっかくんだ!」
    「ミャア!!」
    ホップの足下から躍り出たチョロネコが、2体に向かって飛びかかる。だが、手応えがない。
    チョロネコが空中から爪を立てた瞬間。2体の生物の姿は、蜃気楼のごとくグニャリと歪んだ。不測に驚き、バランスを崩して転倒するチョロネコ。
    「なっ!大丈夫か!?」
    「めぇーっ!」
    うろたえるホップの腕の中から、主に呼応してウールーが喚いた。
    「物理も効かず、とくしゅも効果なし……もしや、幻覚の類か?」
    「糠に釘を刺すみたいで、まるで吸い取られとるみたいな感覚です!」
    その後も。タルップルのりゅうのはどう。ツンベアーのつららおとし。チョロネコのひっかく。ゴンベのたいあたり。この場にいるトレーナーの技という技が何度くり出されたか分からない。
    しかし、ダメージを与えるどころか、2体の身体に掠ることさえ叶わない。
    「逃げた方が、いいかも……!」
    額に汗を浮かべ、肩で息をする一同。その中から、ひときわ苦しげなユウリが絞り出す。もはや打つ手なし。
    「踏み入るな」。これは彼らなりの忠告なのか。あるいは、遠くないうちに起きるであろう大事を伝えるべく現れたのか。今のところは、誰にも知る由がない。なぜなら。
    「「ウォォォォォォォォ……」」
    トレーナーたちの技をひとしきり防いだ後。2体の遠吠えが一斉に上がったとたん、立ち込めていた霧が濃さを増し、視界を完全に奪われた一同はパニックに陥ったからである。

  • 166二次元好きの匿名さん24/06/06(木) 16:57:53

    このレスは削除されています

  • 167二次元好きの匿名さん24/06/06(木) 16:59:34

    「ホップ!ホップ!わたしの手に捕まって!」

    「その声、ユウリか!何も見えないそ!!」

    「ぐめー!?」

    「おおおい!兄ちゃんはここじゃ!動かずに!じっとしとれよお!」

    「まずい!今度はボク達が2人に増えてしまう!あちらの世界のボクは一体どんな男なんだろうか!?」

    「何ワケ分かんない事いってんのさ!兄ちゃああん!」

    「タルップ!」

    「ミャアオ!フシャアア!」

    「ガオオオオ!!」

    ユウリの、ホップの。ヤロー兄弟にグルーシャ。そして、それぞれの手持ちの声が入り乱れる。

    ウォォォォォォォォ……

    やがて。何度目か分からない2体の雄たけびを最後に、一同は意識を失った。

  • 168二次元好きの匿名さん24/06/06(木) 17:06:04

    part3以上です

    ↓まとめ

    パルデアの核弾頭 in ガラル part3 | Writening「ハハハ、大した手伝いが出来たかな?」 「いやいや、大助かりですわ!こんなに早う、ひと段落するなんて!」 「ありがとうグルーシャさん!あとは、この野菜と果物を届けるだけだね!」 ターフタウンでの作業――…writening.net

    ガラル勢の性格「は」一緒

    =細かい流れや人間関係に違いが生まれてるという路線を目指しています。


    リアルの忙しさ&文章が思いつかないもので、まあ遅筆


    コメントや保守に心から感謝です!


    関係ありませんが、

    前作の逆リップさんしかり、本文のオリーヴさんしかりしっかりしてそうな女性キャラの弱々が性癖……

  • 169二次元好きの匿名さん24/06/06(木) 17:12:45

    ※追記
    残りのレス数的に次パートをキリの良いところまで収められるか不安なので、本文の続きは勝手ながら(書き溜めしだい)次スレから投下していきます。

    気晴らしに考えている話もチラホラありますので、

    本スレの残りは(もし落ちていなければ)ライトニングやらで単発ssでも投下できればなと……

  • 170二次元好きの匿名さん24/06/07(金) 00:26:19

    保守

  • 171二次元好きの匿名さん24/06/07(金) 11:15:33

    無理せず頑張ってー

  • 172二次元好きの匿名さん24/06/07(金) 12:36:16

    主です。

    >>171

    あざます!気晴らししながら書いていきますね



    ss未満の幻覚なんですけど、寝てる時、


    Bの口悪ネモさんが、SV本編ゼイユさんを勝負おわりに大人気なくバチボコに泣かす姿が浮かびました笑


    ↓イメージ(このurlの演者が笑わない感じ)



  • 173二次元好きの匿名さん24/06/07(金) 12:40:36

    追記


    バトルコートにて


    「Happy birthday フッフッ fuck you!!!」両中指凸凸


    「うわああああん!!!!!!」ダッ


    これでひとネタ書けねえかなあ

  • 174二次元好きの匿名さん24/06/07(金) 20:58:49

    >>172

    >>173動画の人に草

    ゼイユ姉ちゃん、マウント取られたら大泣きするよりもキィーー!ってブチ切れるイメージww

  • 175二次元好きの匿名さん24/06/08(土) 02:08:17

  • 176二次元好きの匿名さん24/06/08(土) 11:16:44

  • 177二次元好きの匿名さん24/06/08(土) 22:41:34

  • 178二次元好きの匿名さん24/06/08(土) 22:44:18

    そんな保守する意味あるか…?

  • 179二次元好きの匿名さん24/06/09(日) 09:40:37

    保守

  • 180二次元好きの匿名さん24/06/09(日) 17:35:30

    >>178

    SSスレはのんびり待つもんだからスレ主が連載終了宣言したりもう更新が見込めなくなるまでは保守したい

  • 181二次元好きの匿名さん24/06/09(日) 20:25:41

    主です。

    いつ再開するかも分からないような当スレを保守してもらい、すごくありがたいです……

    急病やら怪我なんかでポックリ行かない限り、反転グルーシャさんも必ず完結させますので、

    次スレが立ったら「まーた始まったよ」などと、生ぬるく見守ってもらえればありがたいです。

    ここが落ちても、別個にスレ立てたり支部などに上げますので、無理に保守していただかずとも大丈夫です 。

    次レスに気晴らしに書いたネタ貼ります。

    ここが落ちていたら、それこそ別個スレや支部にでも後編は貼ります。

  • 182二次元好きの匿名さん24/06/09(日) 20:34:50
    If前作。もしもB世界のネモが、A世界(本編)ネモと入れ替わったら 前編 | Writening「ケッ、カモられちまったか」 「運営に通報しとけば?」 「ムダだムダだ。概要欄には、入ってる『かも』としか書かれてない。 ハッサク大将らしく言うなら、看板に偽りはなしってこったな。 アコギなクソ出品…writening.net

    ※Bネモのセリフに下ネタが含まれます。


    タイトルどおり。

    てらす池に居たのがホムウェ組&2人のネモが交換されていたらという小ネタ。


    いちおう文中の舞台は本編(A)のつもりです。


    キャラのステータス


    Bネモ→口の悪いゲームオタクだが、勝負はクソ強。根は友達や他人おもい。



    ちなみに、ボタンちゃんの笑い方は完全な憶測です……

  • 183二次元好きの匿名さん24/06/10(月) 00:03:59

    入れ替わり系はおもろい

  • 184二次元好きの匿名さん24/06/10(月) 03:45:23

    某所のSSどっちのアカウントのも読ませてもらいました。あれとこっちが同じ作者様とは思えなくて・・・・・・書き分け力がヤバ過ぎる

  • 185二次元好きの匿名さん24/06/10(月) 13:52:05

    >>184

    スレ主他にも書いてたの今知って他垢見に行ったけど違いすぎて面白かった

  • 186二次元好きの匿名さん24/06/10(月) 23:32:16

    保守

  • 187二次元好きの匿名さん24/06/11(火) 10:29:26

    保守

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