【長編ssスレ】パルデアの核弾頭 in ガラル【キャラ崩壊注意】

  • 1二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 19:00:37
    【※性格改変注意】チリ婦人、ヤブからアーボック【ssスレ】|あにまん掲示板https://bbs.animanch.com/board/3001788/こちらの概念からインスピレーションをお借りして、他スレでssを書いていた者です。ssスレとして立て直しました。↓私のスレh…bbs.animanch.com

    ↑こちらのssを書かせていただいた者です。


    SVキャラの性格が反転した世界。


    今回は、

    反転グルーシャさんが、性格は本編通りのガラル地方へと乗り込むお話です。


    前回同様、キリの良いところまで直接投下からのライトニングでまとめる方式で行きます。


    前とは違って、

    オチがおぼろげにしか浮かんでいない見切り発車ですが、完結目指してチマチマ書き進めますので、

    お暇でヒマで仕方ない時にでも、ご笑読や保守いただければ幸いです。

  • 2二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 19:03:10

    来やがった!って気持ちと続きを待ってた!って気持ちが拮抗してる

  • 3二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 19:06:45

    自分の某所垢です。こちらにも前作を投稿しておりますので、まとめ代わりに……


    けつあつ主にポケモンSV二次創作の者。ssや小説を書くのが趣味です。

    こちらでは、ちょっぴりダークだったりシュールな作風を投稿します。複垢持ち。

    投稿する文章のジャンルや毛色で使用を分けています。

    ↓正気なのを書く垢

    https://www.pixiv.net/us…
    www.pixiv.net

    ↓登場人物のステータス


    グルーシャ→パルデアの藤○弘、。


    スノーボーダー時代はサムい性格だったが、ポケモンや勝負と出会って熱血ではない何かに変貌。


    勝負服は柔道着。


    常人離れしたスタミナやバイタリティを持つ。勝負の腕はオモダカに匹敵。

  • 4二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 19:09:01

    ※時系列は「2人のチリちゃん」後〜剣盾の本編直前あたり。ガラル勢の性格は本編通りです。

    「薄明」要素とかも上手く拾えたらなあ……

  • 5二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 19:16:14

    『ナッペ山ジムリーダー・グルーシャ超人伝説』

    ・リハビリとして始めた各種の武道や手習い、あわせて24段と3級。

    ・キャッチコピーは『絶対零度のウィンターヒート』。もしくは『パルデアの核弾頭』。

    ・背丈ほどの岩を蹴り返してもビクともしない脚力。

    ・怪我をした野生のクレベースをかついで雪山を登るスタミナ。

    ・ビリリダマがひしめく地雷原で柔道の取り組みを行う胆力。

    ・オモダカが繰り出したドドゲザンのドゲザンを真剣白刃取り。

    ・1km先の迷子の泣き声を聞きとる聴力。

    ・武者修行と称して訪れたホウエン地方にて、132ばんすいどうの海流を、10匹のサメハダーに追われながら逆行。

    ・巨大なミサイルにしがみついて軌道を変え、爆発に巻きこまれながらも、成層圏から無傷で生還

  • 6二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 19:19:06

    人間じゃねぇ!

  • 7二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 19:19:36

    10近くになりましたら本文を投下していきます。
    「またやってるよ」と気長〜に見守っていただければ幸いです

  • 8二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 20:16:58

    待ち

  • 9二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 20:22:16

    主です。
    次レスから本文となります!書きだめがほとんどありませんので、亀更新になりますがご容赦くださいませ……

  • 10二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 20:22:54

    待ち
    この性格の場合厄介じゃないナンジャモのファンなのか別の厄介さを醸し出しているのか気になる

  • 11二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 20:24:29

    >>10このスレ世界ではナンジャモがグルーシャ好いてる感じです

  • 12二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 20:26:42

    (part1)
    瑠璃色にたゆたう大海原。夜明け前の月あかりに照らされた西パルデア海の沖を、1匹と1人が、サメハダーも顔負けの猛スピードで進んでいた。
    「待っていろおおお!あと5時間で着くからなああ!!」
    ザザザザザザザザ……!
    水平線へと向かって、爆速でクロールをかき続ける男。
    そのはるか頭上の夜空では、男の切り札――チルタリスが、主の大きなリュックサックをぶら下げて併走している。
    「見ろ、チルタリス!ボク達の急く思いが、この子らにも通じているみたいだな!」
    恐れと慄きから。弾丸のような速度で男が近づいて来るなり、野生の水ポケモンたちは二手に分かれて道を開けていく。磯の臭さにどっぷり浸った柔道着や、濡れそぼった青い髪も気にとめず、『パルデアの核弾頭』ことグルーシャは、ガラル地方へ向けて渡海していた。ライドポケモンやボートに頼らず、もちろん生身で。
    きっかけは、ガラル地方の消印がついた1通の手紙。
    『拝啓、パルデアのウィンターヒート様。
    まずは、見ず知らずの貴方へ突然の便りを送る不躾をお詫びいたします。』
    送り主の実直さが、ひと目で伝わる冒頭。一番弟子・ナンジャモにも劣らない整った筆致は、便せん数枚に及んでいた。

    『……もしもで構いません。もし、ガラル地方に降りたつ機会があれば、どうか、わたしの大切な人を助けてください。勝負の道に魂を込めた男。ポケモンを愛し、手持ちを信じ、己に克つ男。
    わたしでは想像もつかない大きな苦しみを乗りこえられた貴方なら、きっと彼の孤独も癒してくれると信じています。
    ラテラルタウンジムリーダー・サイトウ』

  • 13二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 20:43:32

    「やっとチリさんが1人に戻れたかと思えば、今度はグルーシャさんが消えるなんて!!」
    四天王が働くリーグのオフィス。自分のデスクを大人顔負けの力で叩きながら、ポピーが怒鳴り散らした。
    「まあまあポピーさん、落ち着いて!」
    グルーシャ捜索のため、部屋中を右往左往している職員たちの目がいっせいにポピーを向く。
    「ジムチャレンジの期間が終わっているだけ良しと思いましょう!」
    困り笑いのアオキが、椅子の上に仁王立ちのマトリョーシカをなだめていると。
    ロトロトロト……。
    彼の気まずさを見計らったように、アオキのスマホが宙に浮かんだ。
    「はい、アオキです!」
    『アオキ。ポピーくん。このアホをどうにかしなさい』
    辟易した第一声は、チリとともに各地を聞き込みに回っているハッサクだった。
    『10秒に一度は道草を食いたがるわ、
    刑事よろしく黒い革手帳やバカ高いレインコートを買いたいと聞かないわ……
    今は山頂からフリッジタウンに下りて、ライムさんと雪だるま作りの最中でしてね……。
    まったく、人探しに来ておいて、青いバケツや木の枝を採取する羽目になるとは……』
    「それで、グルーシャさんの足取りは分かりましたか?」
    仏頂面のポピーが、長々と続きそうな愚痴を止めた。皮肉屋のドラゴンいわく、グルーシャには「用事ができた」らしい。ナッペ山の職員にそう言い残したジムリーダーは、切り札のチルタリスにぶら下がったまま、何処かへ飛び立ったきり消息が掴めないのだという。
    『空港にも問い合わせましたが、ここ数日間でグルーシャくんが搭乗した記録はなし。つまり彼は、パルデア地方のどこかに潜伏している可能性が高いと小生は推測しております』
    「潜伏て……。まるで凶悪犯のような言い回しですわね……」

  • 14二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 20:46:07

    ポピーの机上には、『グルーシャ超人伝説』のレジュメ。

    ハッサクの声に苦笑いしながら、何かのヒントになればと紙をめくっていたポピーは、とある一文に目をとめた。

    「……いえ、待ってくださいハッサクさん!」

    はたと思い至ったポピー。

    「アオキさんも思い出してください! グルーシャさんには違う地方を徘徊する癖がありますわ!」

    『武者修行と称してホウエン地方に渡り、サメハダーに追われて海流を逆行。』

    ポピーと同じ一節を目にしたアオキも、彼女の横で目を見開いた。

    「まさか、自力で……!」
    『武者修行……』

    スマホ越しに息を飲むハッサクも、どうやら思い出したらしい。
    「グルーシャさんとチルタリスのバイタリティなら、十分可能ですわね……!」
    「今回も泳いで行ったのか、あるいは飛んで行ったのかは分かりませんが、他の地方へ旅に出た可能性は大いにありますね!」

    『またもや無許可で抜け出すとは……
    小生はアカデミーにいるトップへ連絡を。おふたりは、職員とともに他のリーグへ片っ端から問い合わせなさい』
    ハッサクの怜悧な指示とともに通話は切れた。

    「ポピーさん!まずは前回滞在していたホウエン地方から確認を取ってみましょう!」
    「了解しましたわ!リーグやジムだけではなく、ショップやバトルタワー、あらゆる施設を当たってみますわね!」

    見合わせたアオキとポピーがコクリと頷く。
    2人がふたたびデスクに戻るや、通話を聞くために集まっていた部屋中の職員たちも、いっせいに各々の持ち場へ散開した。

  • 15二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 21:29:10

    いいね、完結させてくれよ

  • 16二次元好きの匿名さん24/05/08(水) 02:18:05

    >>14

    『どこまで上を目指すかは、キミ次第ですね』

    「………」

    海の町バウタウン。かたわらに灯台がそびえ立つ、大海原をのぞんだ柵の前。

    「……分かってるわよ。片手間じゃ無理って事くらい」

    なにかに行き詰まった時。親友のソニアに打ち明けても晴れないほどの悩みを抱えた時。ルリナは決まってこの場所に佇む。


    彼女の頭にこびり付いているのは、先日のヤローとの勝負。結果はもちろん自分の敗北。

    リーグ委員長・ローズが控え室に現れ、意味深な言葉とともに、試すような笑みを浮かべながら覗き込まれたのだ。

    きみはジムリーダーに不適格。モデル以外にも、やるべき事があるだろう。

    ……そうキッパリと叱られた方がどんなに楽だったか。先日のあれは、委員長なりの最後通告なのだろうか。

    ヤロー相手にだけではない。直近のルリナは、公式戦であらゆる相手に黒星を重ねている。


    間もなく始まる今年のジムチャレンジ。ここで醜態を晒せば、自分は間違いなくマイナーリーグ行き。最悪、ジムリーダーの資格までも取り上げられ、ただのトレーナーに戻ってしまうかもしれない。

    「……あの子みたいに……いっそ……逃げれば……」


    言いかけたルリナの首が、激しく横に揺れる。


    ローズの不敵な面持ちと入れ替わるように脳裏をよぎったのは、1人の少年。元同僚――しかも自分やサイトウよりも、ずっと幼いジムリーダーだった。だが彼は、ある日を境にリーグから姿を消してしまったのだ。

    負けん気が強く、滅多にへこたれないルリナでさえ吐き気を覚えそうになる、ジムリーダーとしての並々ならぬ重圧。

    今年も、あの子抜きのジムチャレンジとなる。


    自分への不甲斐なさ。プロとしてのやるせなさ。思えば彼も、今の自分と同じ――いや、それ以上の苦しみを抱いていたに違いない。

    「……違う。気づいてあげれば、よかったのよ」

    怯えに続いて、自責の念が口を割く。

    しょっぱい潮風に吹かれながら震えるルリナの語気。

    ユニフォームのノースリーブから生えた褐色の両腕が、自分のしなやかな身体を抱きしめた。

    ……その時。

  • 17二次元好きの匿名さん24/05/08(水) 02:21:37

    「おおりゃあああ!!!」
    ザッバアアアアアアン!!
    「ひゃあああああ!!?」

    うずくまろうとしたルリナの足元から、はじける水音とともにけたたましい絶叫が上がった。

    「ゲホゲホッ……ここはっ……どこなんだあ……!」
    柵の根元からは、水とともに吐き出される、こもり倒した呻き声。
    「ひっ……ひっ……!こ、こ、ここは、バ、ババ、バウ、タウンでっ……そ、その、へっ?」

    ずぶ濡れの腕。そして、びっちょりと濡れた水色の頭頂部が、まるで日の出のごとく、徐々に堤防の切れ目から上がってきた。
    突然の衝撃に尻もちを付いたルリナは、への字に重ねた両膝を笑わせながら、唇を震わせている。
    「そ、そうか……!やったぞ、チル……タリス!」切り立った堤防の角を掴み、柵の下段の隙間を這って、ニュルリとバウタウンに入ったグルーシャ。

    「サイトウくんとの、約束どおり、ボク達はガラル地方に、降り立ったぞおおお!!」
    ルリナの足先。仰向けに返ったグルーシャの口から、途切れとぎれの雄叫びが轟いた。
    それから数秒遅れで飛んできたチルタリスも、彼のかたわらにフワリと降り立つと、腹を激しく上下させている主の顔をのぞき込み、「ピイィ♪」と笑いかける。

    「サ、サイトウちゃんの……し、知り合い?」
    「いやあ……厳密には、これから、知り合いになるん、だけどね……!」
    アスファルトに大の字で、息も絶え絶えにつむぎ出すグルーシャ。さしものスタミナの化け物も、約8時間を超える遊泳は身にこたえているらしい。(もっとも。ルリナを始めガラル勢は、この男の名前や素性すらまだ知らないのだが)

    「あ、あなたたち、何者なの……?」
    「……ボクか」
    数分かけて息を整えたグルーシャは、ムクリと直角に上体を起こした。

    「ボクの名は、グルーシャ!パルデア地方のジムリーダー最後の砦。そして……」
    言葉を切ったグルーシャは、へたりこんだままのルリナへと正座で向き合い、
    「勝負の道に、魂を込めた男だ!」
    チルタリスの前に鎮座する大きなリュックから1通の手紙を抜き出すと、両端を持ってルリナへ差し出した。

  • 18二次元好きの匿名さん24/05/08(水) 09:07:54

    保守

  • 19二次元好きの匿名さん24/05/08(水) 17:46:17

    初遭遇がグルーシャだとパルデア地方まるごと勘違いされそうだな…じゃあ他の誰が無難かって言うと難しいんだが

  • 20二次元好きの匿名さん24/05/08(水) 23:58:13

    >>19

    ポピー連れたアオキとか…?

    いやそれはチリがパルデアに残ることになって大変だ

  • 21二次元好きの匿名さん24/05/09(木) 01:10:04

    >>17

    「……本当に、あの動画の本人……なんですか!?」

    「まさか!あのPVを観てくれたのか!!」

    「は、はい。ソニ……友達とサイトウちゃん。3人で拝見……しました!」

    「いやあ、ルリナくん!敬語なんて必要ないさ!勝負を極める者どうし、水臭いじゃないか!」

    バウタウンのジム内。リーダーやジムトレーナーのみが使用できるシャワールーム。

    全身にまとわりついた海水をグルーシャが洗い流している間、更衣室の長椅子に腰かけたルリナは、彼が受け取ったという便箋に目を通していた。

    「サイトウちゃん、やっぱりオニオンくんに観せたんだ……」

    「……オニオンくんとは?」

    「この手紙にも書いてあったでしょ?ラテラルタウン、もう1人のジムリーダー。いいえ。ジムリーダー『だった』子……」

    3つ折りに戻した便箋を椅子のかたわらに置き、眉をひそめたルリナ。気まずげな彼女の沈黙を合図に、カーテン越しのグルーシャは、シャワーの温水と湯気に包まれながら、頭の中で手紙の内容を反芻した。

    ガラル地方には、2人のジムリーダーが一定周期で交代する町が2ヶ所ある。

    チャレンジャーの戦略や発想の柔軟さを試すため。そして、どちらが町の顔にふさわしいか。どちらがジムリーダーたる資質を持つのかを、リーグ委員長のローズや秘書オリーヴ、そして、チャンピオン・ダンデの判断によって見極めるため。

    1ヶ所目は、こおり・いわ使いの親子が交互に務めるキルクスタウン。

    そしてもう1ヶ所は、かくとうタイプのサイトウが、ゴーストタイプの少年とともに務めていたラテラルタウンである。

    しかし現在のラテラルタウンは、サイトウ1人がジムリーダーを担っている。

    「……そうか……ふるいに掛けられたのか」

    「貴方はふさわしくないってハッキリ突きつけられてた方が、後腐れないだけマシだったかもね」

    顔をしかめたまま、うつむいたルリナの唇が笑みをこぼす。

    「ふるいに掛けられる前に、オニオンくん、ダメになっちゃった」

    「……ん?」

    どういう事だ?とカーテンをシャッと鳴らすグルーシャ。

    「ああ、待って待って!それセクハラだから!!」

    ご開帳を防ごうと、開きかけたカーテンにワタワタと両手をかざしたルリナが続ける。

  • 22二次元好きの匿名さん24/05/09(木) 10:38:46

  • 23二次元好きの匿名さん24/05/09(木) 17:47:30

    >>21

    自身と同じく、オニオンも勝負の腕を著しく崩していた。焦りにかられ一心不乱に勉学やトレーニングに励んでは、また負けの繰り返し。

    生来の気弱さや人見知りから、周囲に相談もできなかったらしい彼は、いつしかポケモンへ対する愛情や勝負への熱意も薄れ、やりがいも見失い、


    ある日とうとう無断でリーグを飛びだしたきり、サイトウいわく、家の自室で、ろくに食事もとらず入浴もせずに引きこもる毎日を過ごしている。

    「何回話しに行っても門前払い。わたしとヤローくんなんて、部屋をノックするなり、何かをドアに投げつけられたわ。

    でも、サイトウちゃんにだけは気を許してるみたい……。当然よね。苦しんでるオニオンくんを見てると、こっちまで気まずくなって、いつの間にか避けるようになっちゃって……。リーグからいなくなる前、最後の最後まで寄り添おうとしたの、サイトウちゃんだけだったもの……。

    自分も追い込まれた今になって、あの子の気持ちが身をもって分かったわ……」

    自嘲気味に言い残したルリナは、顔を両手で覆ったまま、しなだれて黙りこくった。

    同時にシャワーの音も止まり、湿った沈黙が部屋に流れる。

    「……すまん!出るぞ!」

    「あっ。いいわよ」

    だが、静寂はすぐに破られた。ルリナが背中を向けるや、勢いよく切られたカーテンの音。シャワーから躍り出たグルーシャは、リュックサックの大きな口からタオルや予備の柔道着を取り出しながら、テキパキと着替えはじめた。

  • 24二次元好きの匿名さん24/05/09(木) 18:09:02

    「オニオンくんとやら、ボクに憧れてくれてるんだってな!」
    「そうみたい。オニオンくんに動画を観せたら、『この人みたいに強くなりたい』って言ってた。そう手紙に……」
    「ようし、善は急げ!あらゆる準備が万端だ!さっそくオニオンくんの家へ……」
    「まさか、歩いて行く気じゃないでしょうね?」
    気を吐くグルーシャへ、思わず振り返ったルリナ。
    「無論だ!新たな土地に来たら、まずは歩いてみるのがポリシーでね!」
    「待って。あなた、ガラル地方は始めてなんでしょ?」
    「問題ない。大まかな地図や風土は頭に入れてある!」
    「問題あるわよ!たとえ耳や頭で把握してても、実際に行くとなるとワケが違うわ」
    「……確かに。それは一理あるな」
    もっともなルリナの忠告に、柔道着の両腕がじっくりと組まれた。
    予備の青い道着に着替え終わっているグルーシャ。この男は、無類の探検マニアでもある。
    「まずはサイトウちゃんと会いましょう?いきなり家に押しかけたら、オニオンくんビックリしすぎて倒れちゃうかも知れないし」
    「ハッハッハ!確かにそうだな!まずは手紙の礼も言わなくちゃいけないしねえ!」
    どうやらこの人は、思い込んだら止まらない性質らしい。
    本気になった時のエンジンジムリーダーで多少は慣れているルリナは、哄笑するグルーシャに胸を撫でおろした。
    「それに。ラテラルタウンに行くには、ワイルドエリアっていう危険な場所を抜けなきゃダメだし」
    「なにっ!危険だと!?」
    「そうよ!強い野生のポケモンたちがウヨウヨいるんだから!不気味な建物もいっぱいあるし!無事に抜け出せる人の方が少ないぐらいの、すごく危険な場所なのよ!」
    立ち上がり、腰に手をやったルリナが大げさにそっくり返る。彼女にとっては、グルーシャの向こうみずを止めるための驚かせのつもりだった。
    口をへの字に曲げ、右手の甲をかざし、拳をつくって震わせるグルーシャ。これで徒歩なんて面倒くさいマネは諦めてくれるだろう。
    凛々しい笑みを浮かべたルリナは完全に安堵していた。
    「大人しくタクシー呼びましょう?わたしが代金は払うから……」
    「……面白い!」
    「へっ?」
    しかし、油断大敵。グルーシャの思いがけない一言に、目を見開いて点にするルリナ。

  • 25二次元好きの匿名さん24/05/09(木) 18:10:09

    「そんな場所にこそ、宝や神秘は眠っている!ちょっと待ってろ!」
    スマホを片手に呆然と見つめるルリナをよそに、グルーシャはリュックの中から新たな上下を引っ張りだし、柔道着の上から重ねはじめた。

    ワイルドエリア……そこには、未知なる部族が住んでいるのも知れない!」
    「は?ぶ、部族……?」

    たじろぐルリナも気にとめず、探検用の正装に早変わりしたグルーシャ隊長。
    上下水色の迷彩服に、緋色のベレー帽。服と同じ色の髪の毛は、後ろを1つに束ねてある。

    「不気味な建物!凶暴なポケモンたち!生存者が少ない危険地帯!きっと謎の部族たちが、よそ者が入るのを拒んでいるに違いない!」
    「い、いや……凶暴ってほどは」

    降格の危機に対する気後れやオニオンへの後ろめたさもあり、いつもなら切れ味よく否定するルリナは、すっかりグルーシャ隊長のペースに乗せられてしまっている。
    「よし!グルーシャ探検隊、結成だ!行き先はワイルドエリア!探検が無事に終わり次第、ラテラルタウンを目指そう!」
    優先順位がすっかり入れ替わっている。
    喉元まで出かかったルリナのツッコミを待たず、グルーシャ隊長はシャワー室を飛び出してしまった。
    「ちょっ、待って!待ちなさいったら!ああもう!」
    試合後よろしく豪快に頭を掻きむしったルリナも、シャワー室をかけ出すと、受付そばに佇むジムトレーナーのサワコに指示を飛ばした。

    「キャンプセット!カバンごと!それから、リーグから支給されてるズボンとジャンパー!アウトドア用!急いで!」
    「は、はい!」

    トテトテとジムの奥に入っていくサワコ。
    すでに入り口で待っているグルーシャが、満面の笑みで手を振ってくる。迷彩服と自分とを交互に見やる職員たちのささやきが、いちいちルリナの耳についた。
    「まさか彼氏さん……?」
    「そんな……だってルリナさんって、確かターフタウンの……」

    冗談じゃない。あんな彼がいてたまるか。それに、ヤローくんはライバルであって……!

    受付にもたれかかったルリナは、居心地の悪さから少しでも逃れようと、デスクの上を指で小刻みに鳴らしながらサワコを待った。

  • 26二次元好きの匿名さん24/05/09(木) 22:11:48

    このレスは削除されています

  • 27二次元好きの匿名さん24/05/09(木) 22:13:45

    ほしゅあげ

    サワコって誰だっけ

    って思って調べたら一部フェチの癖に刺さったこの子か

  • 28二次元好きの匿名さん24/05/10(金) 07:48:59

    保守

  • 29二次元好きの匿名さん24/05/10(金) 15:49:15

    保守

  • 30二次元好きの匿名さん24/05/10(金) 22:28:23

    ピオニーと合いそう

  • 31二次元好きの匿名さん24/05/11(土) 01:22:34

    >>25

    「あっ、みてみて!色違いのギャラドスがいるわ!」

    ワイルドエリア。はじめこそ徒歩での探検を渋っていたはずのルリナは、「これは何だ!」「あれを見ろ!」というグルーシャの雄々しい呼び掛けにほだされるうちに、

    普段の重圧から少なからず和らいだ事もあってか、エリアが見せる風光の数々にすっかり華やいでいた。

    「いやあ。この巨木も見事だな!樹齢100年はありそうだぞ!」

    グルーシャもニッコリと目を細めながら、かたわらに立つ大きなモミの木を見上げて嘆息している。

    「オレンのみ3個に、グラボの実でいいかなあ……」

    「あっ。ごめん、サワコちゃん!わたしも手伝うからね!」

    「あ、ありがとうございます!ルリナさんがお好きだって聞いた、ちょっぴり辛口のシーフードカレーにしようかなって」

    グルーシャいわく、探検も一区切りついたらしい一行は、げきりんの湖をのぞみながら小休止を取っている。

    「い、いいの?サワコちゃんって料理が上手らしいじゃない!すっごく楽しみ……!」

    「パルデアでも名高い、本場ガラルのカレーか!ボクも魚や野菜なら捌けるよ!何でも申し付けてくれ!」

    「わかりました!それじゃ、お言葉に甘えますね!」

    大きなモミの木の下でキャンプを囲んでいるのは、グルーシャとルリナだけではなかった。

    「グルーシャさんとルリナさんには、まな板でエビとイカを剥いてもらって……」

    「よし、心得た!」

    「まかせて。家の手伝いで慣れてるから!」

    ジムで飛ばされたルリナからの指示を「お前もついてこい」と早合点したジムトレーナーのサワコ。そして……

    「ボールガイさんは、木を集めて火をくべてもらって良いですか?」

    「ボルボル……なんで僕まで……」

    「ハッハッハ!アンタのガタイの良さが気に入ったからだ!そうだ。ボールガイくん、アンタ武道をやってみろ!きっと板につくぞ!」

    「だから、これは着ぐるみで……ハア……」

    ジムの表でうろついていた所を運良くつかまったボールガイ。4人の一行は、カレーづくりに取り掛かっていた。

  • 32二次元好きの匿名さん24/05/11(土) 01:27:44

    ボールガイがうちわで仰ぐとともに、パチパチと音を鳴らしだす焚き火。
    汗ばんできたのか、ボール男は着ぐるみの額をしきりにぬぐっている。

    「あ、暑くないの?」
    「汗をかいているのはボールガイだボル。断じて中の人ではないボルよ」
    調理台から気遣うルリナに、毅然と答えるガラルリーグ非公認マスコット。どうやらキャラ作りは完璧らしかった。

    「グルーシャさん、筋がいいわね。父さんがいたら褒めてもらえるかも」
    「そう言えば、ルリナくんの家は何を?……いや待て。漁師と見た!」
    「うふふ。正解!」
    いっぽう、2つの調理台で横ならぶグルーシャとルリナ。

    「いやあ、どうりで手際がキレイなはずだ!
    ボクのは、サバイバルで身につけた自己流だからね!」
    睦まじく話してこそいるが、さすがと言うべきか、2人とも鮮やかな手さばきでイカやエビの下ごしらえをこなしている。

    「サ、サバイバル?」
    「ホウエン地方に行った時、海水浴をしていたらサメハダーに追われてねえ!」
    「はっ?さ、サメハ……!?……だ、大丈夫だったの!?」
    驚きのあまり、ルリナの鮮やかな手つきが止まるまでは。

    「しかも10匹。そしたら、逃げるうちに海流に飲まれてしまってさ……。気がつくと、みなみのことうに打ち上げられていたんだよ。
    そして、そこで1ヶ月間、獲れたモノだけで生き延びたんだ。ボクはねえ、魚の捌き方や生き延びる術を身体で覚えたんだよ!」

    いきつけの喫茶店で一緒に観た、グルーシャのPR動画。
    爆笑した自分やソニアとは違う、険しい真顔でソニアのスマホを睨んでいたサイトウちゃん。彼女が漏らしていたとおり、この人は本当に超人だったりして……
    『パルデアの核弾頭』の片鱗を感じたルリナは、ハッハッハ!と高笑うグルーシャをアングリと見つめたまま硬直した。

  • 33二次元好きの匿名さん24/05/11(土) 01:32:53

    主です。お分かりの向きも多いでしょうが、


    ルリナがソニア・サイトウと観た(ついでにオニオンも観たらしい)この世界のパルデアリーグ公式chがあげているグルーシャのPVは↓がイメージ元です笑


    せがた三四郎フルVer.

    藤○さんの姿をグルーシャさんに、歌詞をポケモンに即した言い回しに変えていただければ……


    「真面目にバトらぬ奴らにはっ♪身体で覚えさせるぞおお♪」

  • 34二次元好きの匿名さん24/05/11(土) 10:37:24

    お前によしオレによしが聞こえてくるのなんでだろう

  • 35二次元好きの匿名さん24/05/11(土) 18:44:41

    保守

  • 36二次元好きの匿名さん24/05/11(土) 21:07:02

    >>32

    「ごちそうさま!とっても美味しかったわ!」

    「よかったです!すみません。お皿洗いまで手伝ってもらって……」

    「いやいや!一飯の恩義というやつだ。気にするな!そうだろう、ボールガイくん!」

    「もっちろん!具材の食感と、お米の絶妙な芯の残りかた!それに程よい辛さがマッチして、サワコちゃんのカレーは、味のトライアタックだったボルね〜!」

    一列に並んだ4人。談笑しながら、澄んだ湖ですすがれたプレートやカップが、次々とカゴに積まれていく。

    「……だが、探検の収穫はこれだけか」

    食器をまとめたカゴや、4人がけのテーブルもサワコのキャンプセットに収まったころ。それぞれの手持ちたちを原っぱに放った3人は、独りごちるグルーシャへと集まってきた。

    「こ、これは何でしょうか?すごく神秘的な輝きですね」

    グルーシャの両手に乗っているのは、赤とも紫ともつかない不思議な光を放つ、2つの小さな石ころ。

    「友達が……ソニアがタブレットで見てた画像と似てるわね……。確か……えっと」

    アウトドア用の黒いキャップとジャンパーで腕組みしたルリナ。同じ格好のサワコも、人差し指をアゴに当てながら、2つの輝きに見入っている。

    「ねがいぼしボルね!」

    「そうそうボールガイさん、それ!」

    ボールガイの言葉にルリナの顔が晴れた。目を見開いたサワコも、ねがいぼしを見つめたまま「これが幻の……!」と唸っている。

    「拾った人のお願いごとが叶うってウワサのアレ!しかも2個も!グルーシャさんって、とってもラッキーボーイボルねえ!」

    「いやっはっは!ボーイって年でもないよ!なんだ、てっきりボクは部族が作った装飾品の類かと!」

    身体をウキウキと揺らしながら、両肘を前後にスライドさせるボールガイ。彼の肩を叩いて、赤い顔のグルーシャがはにかんだ。

    「ソニアやマグノリア博士が言うには、ポケモンのダイマックスにも、ねがいぼしが関係してるとかしてないとか……」

    親指と人差し指でアゴをつまみ、ねがいぼしを睨んでブツブツと呟くルリナ。その振るまいは、長考する時の友人・ソニアを思いおこさせる。

    「ダイマックスとは?初耳だな!」

    メンバーをキョトンと見渡すグルーシャの瞳。同じく(1名半笑いの表情で)ポカンと顔を向けた3人の目線と重なる。

  • 37二次元好きの匿名さん24/05/11(土) 22:12:51

    このレスは削除されています

  • 38二次元好きの匿名さん24/05/11(土) 23:33:47

    このレスは削除されています

  • 39二次元好きの匿名さん24/05/11(土) 23:48:44

    >>38

    冒頭切れちゃってるね

  • 40二次元好きの匿名さん24/05/12(日) 00:00:40

    >>39

    (あらまー!心優しい人、教えてくれてありがとうございますわね!)

  • 41二次元好きの匿名さん24/05/12(日) 08:58:45

  • 42二次元好きの匿名さん24/05/12(日) 14:58:48

    age

    ボールガイがいるのシュールでジワジワ来る

  • 43二次元好きの匿名さん24/05/12(日) 21:38:25

    イッチの規制対策に保守

  • 44二次元好きの匿名さん24/05/13(月) 08:21:08

    保守

  • 45二次元好きの匿名さん24/05/13(月) 15:15:00

    >>36

    「そうだったわ。グルーシャさんは初めてのガラル地方だったわよね」

    ジャンパーの袖をめくったルリナは、右腕の甲をグルーシャへ見せた。

    「……こ、これは一体!」

    「だ、ダイマックスバンドって言うの。今さらだけど、グルーシャさんって反応が濃いわね……」オープンフィンガーのグローブがはまった褐色手元を凝視し、大げさに身構える隊長。思わず困り笑いしたルリナが続ける。

    「このダイマックスバンドには、あなたが持ってる『ねがいぼし』が組み込まれていて、勝負で使えば、自分のポケモンをますます大きく強くできるの。その現象がダイマックス!」

    「……ダイマックスすれば、ボクのチルタリスの力も、32ビット級から64ビット級になれるのか……?」

    「ま、まあ、そんな感じ……の解釈で構わないわ。ただし、このバンドを持ってる人しかダイマックスは出来ないの」

    グルーシャの目先へと、誇らしげにバンドを近寄せるルリナ。モンスターボールを模した赤い光が、ディスプレイにチカチカと明滅している。

    「それに、いつでもどこでもダイマックスできる訳じゃない。ガラル粒子が存在するパワースポットに限る。以上、ソニアや博士からの受け売りおわり!」

    「……強さが大きくなって、武運が長久に……?」迷彩服の腕を組み、首を左右にかしげるグルーシャ。

    「……はあ。わたしにソニアなみのプレゼン力があればなあ……」

    眉をへの字にしかめた彼の頭上には、大きな?が浮かんでいるようだ。

    「……よし!口で言うより、見てもらった方が早いかもね!」

    ゲンナリした溜め息から一転。キッとグルーシャを見すえ、一行から距離をおいたルリナは、ジャンパーとズボンを脱ぎ落として公式戦のユニフォーム姿に戻った。

    「習うより慣れろって言うでしょ?腹ごなしに、ガラル地方の戦い方を教えてあげる!」

    「……まさか、勝負か!」

    「そういう事!」

    意図を理解し、喜色満面のグルーシャ。彼の少年のような笑顔に、ルリナもいたずらっぽく目を細めた。

    「分かった!チルタリス、戻ってくるんだ!」

    「ぴぃぃ♪」

    「カジリガメ、グルーシャさんと勝負よ!」

    「ガウ!」

    遊んでいた原っぱから、鷹匠のごとく主の腕の上に舞い戻るチルタリス。かざされたダイブボールに吸い込まれたカジリガメ。

    勝負スタイルも十人十色ならば、相棒の戻し方も人それぞれだ。

  • 46二次元好きの匿名さん24/05/13(月) 15:27:13

    「あなた、こおりタイプの使い手なんですってね!でもどうしてその子なの?」
    「ハッハッハ!それこそ、習うより何とやらさ!ボクもパルデア流でお相手するよ!」
    フワリと地に降りたチルタリスを合図に、ねがいぼしをボールガイに預けたグルーシャは、湖のほとりでストレッチしているルリナと相対した。
    「……なるほど。それ、ユニフォームだったのね……!」
    脱ぎはらわれた迷彩服の下からは、パルデアリーグの白いマークが右胸に入った青の柔道着。
    「いかにも!エキシビションとはいえ、勝負は勝負!この地のリーグで禄を食んでいるにふさわしいか、魂に問わせてもらおう!」
    リングマの威嚇を思わせる「大」の構えをとるグルーシャ。と同時に、主の腕から舞い降りたチルタリスが、顔を怒らせながら威勢よく鳴いた。
    「魂ね……。カジリガメ!出番よ!」
    不動のグルーシャに対して、ルリナの脚が高らかと上がった。美しく振りかぶったジムリーダーに、2人の横で観戦するサワコとボールガイが、ワクワクと胸の前で両手を握っている。
    今まさにダイブボールが放たれんと、振りかぶるルリナが静止した……その時。
    「あああああっ……!」
    遠くからこだまする悲鳴。
    「な、何かあったの!?」
    「分からん。だが、かなり苦しんでいたようだな……!」
    ルリナの脚が地に落とされ、グルーシャも柔道の構えをといた。勝負が中断した一行。そして、彼らのかたわらで遊んでいた手持ちたちも、何事かと辺りをキョロキョロと見回している。
    「あれって……まさか、サイトウちゃん!?」
    「あの子が、ボクを呼んだサイトウくんか!?」
    ふためく一同から、ルリナの双眼鏡とグルーシャの敬礼ポーズが同時に構えられた。
    「そう!……まさか、あのポケモンに襲われたの!?」
    「なんだとッ!?人命救助!!」
    「え、は、はっや!!」
    双眼鏡から目を外したルリナが、思わず声を上げる。
    「一体どう鍛えたら、あの領域に……」
    「サワコちゃん、ボーッとしてるヒマはないわよ!」
    「ぼ、僕たちも追いかけなきゃボル!」
    続いて走り出した3人を待たず、弾丸の速度のグルーシャは、あれよあれよと少女たちの元に近づいていった。

  • 47二次元好きの匿名さん24/05/13(月) 15:31:19

    げきりんの湖から真北――ナックルシティへ至るゲートの前では、1人の少女――サイトウが腹を押さえて横たわっていた。
    そして、彼女の目の前には、黒いポンチョに身を包んだ小柄な人物。そして!ポンチョの手持ちらしいヨノワールが繰り出されている。
    「こ、こんなの……真の強さじゃ、ない……!」「……るさい……大人しく……わたして……」
    ゆらり、ゆらりと揺れながら、少女の頭に歩み寄るポンチョ姿。暗くよどんではいるものの、中性的な声色から、どうやら子供らしい。
    だが、目深くかぶられたフードとマスクのせいで、素顔は全くうかがえない。
    一瞥もせずに手持ちを通り過ぎるポンチョ姿。突き出されたままのヨノワールの拳からは、うっすらと黒いモヤが上がっている。
    どうやら、生身の少女相手にシャドーパンチを浴びせたらしい。
    「今なら、まだ引き返せます……!目を……覚まして……くださいっ……!」
    「ローズさんと……オリーヴさんに渡さなくちゃ……ソレさえ集めれば、ぼくは強くなれる……ジムリーダーにも、ダンデさんにも負けないくらい……!」
    サイトウからの涙を浮かべた説得も効果はない。うわ言のようにブツブツと呟くポンチョ姿は、彼女の手の平に乗っている石ころへとかがみ込んだ。その瞬間。
    「……ぉぉおおおお!!」
    ドドドドド……という足音ともに、とつぜん響いてきた雄々しい叫び。かたや石に手を伸ばしたまま、かたや横たわったまま。爆速で近づくグルーシャへと、ポンチョとサイトウ、そしてヨノワールまでもが一斉に目を丸くした。
    「おおおりゃっ!!!」
    「ゲフ!!」
    2.2mの身体を真横に吹き飛ばす、加速しきった鋭い飛び蹴り。
    弾かれたボーリングのピンのごとく地面をしたたかにきりもんだヨノワールは、遠くの原っぱに目を回して気絶した。

  • 48二次元好きの匿名さん24/05/13(月) 22:53:31

    強いなあ……

  • 49二次元好きの匿名さん24/05/14(火) 01:04:20

    香ばしくなってきましたね

  • 50二次元好きの匿名さん24/05/14(火) 09:16:25

    保守

  • 51二次元好きの匿名さん24/05/14(火) 15:43:35

    >>47

    「アンタがサイトウくんだな!立てるか!?」

    「これしき、どうという事は……あ、アナタは……!」

    グルーシャに肩を組まれ、呻きながら立ち上がったサイトウ。

    「……!ま、まさか」

    「いやあ、ルリナくんの言った通りだ!ワイルドエリアのポケモンは凶暴きわまりないな!!」

    そして、鼻から下をピッタリ覆う黒マスクごしに、瞳孔を小さくしたポンチョ。2人はいっせいに息を飲んだ。

    「本当に、来てもらえるなんて……!」

    「何を言うんだサイトウくん!困っている者がいれば、いつ何時でも駆けつける!それがボクのポリシーだ!」

    間に割って入り、サイトウとポンチョの肩を交互に掴むグルーシャ。

    「ハッハッハッ!それにしても良かったよ!2人とも大事には至らなかったみたいだな!」

    「……っ」


    「ああ、すまん!傷にさわったな!」

    喜んだ時のクセで2人の背すじをパシパシと叩いてしまったグルーシャは、横腹を押さえて顔をしかめるサイトウの背すじから、素早く手を離して詫びた。

    そして、グルーシャから遅れること30秒ほど。

    「ぴゅいい♪」

    「グ、グルーシャさん!!魂を吸い取られたら、どうするつもりなのよ!?」

    「ヨ、ヨノワールに生身で飛びかかる人なんて、初めて見ました……」

    「はああ、無茶苦茶すぎる……!この人なんなの本当に……!見てる方がショックで倒れちゃいそう……!」

    「ハッハッハ!鍛え方が違うからなあ!」

    「……グルーシャさん。きっとだけど、ルリナさんとサワコちゃんは褒めてないボル……」

    さすが主人♪と笑顔のチルタリスに導かれる形で、ルリナたちも彼の元へと追いついた。愕然と刮目しながら頭を抱えるルリナ、自分の両肩を抱き寄せて震えるサワコ。猫背のボールガイ。

    思い思いに慄く3人は、頼もしさを超えた薄ら寒さを覚えているようだ。

  • 52二次元好きの匿名さん24/05/14(火) 15:51:43

    「そうだ!サイトウくんの怪我を見てあげた方がいい!見た所、腹をケガしている!」
    「なっ!?急いで治療しないと!」
    「お気遣いは、無用です……ぐっ……!」
    額に脂汗をかいたサイトウが、隣合うルリナの胸元に力なくもたれかかった。
    「大丈夫じゃないでしょ!……とりあえず、ナックルジムの医務室を借りに行きましょう!サイトウちゃん、しっかりして!」
    「ポンチョくんの方は無事ボルか!?」
    ボールガイからの問いに、肩を落としたまま黙り込んでいるポンチョ。
    「きっと、野生に襲われたショックで呆然としているんだボル……」
    と解釈したボールガイは、無言でポンチョに頷いたきり、それ以上の詮索は避けた。彼や、抱きとめたサイトウへ必死に呼びかけているルリナ。応急処置のため、湖まで戻りタオルを絞っているサワコ。3人とも。そしてグルーシャも、「サイトウとポンチョは、野生のヨノワールに襲われた」と考えていた。
    「……さて。サイトウくんの手当ては任せるとして……」
    治療しようと、ふたたびサイトウを横たえた女性陣。ユニフォームを脱がせるらしい彼女たちへ顔を背けたグルーシャは、ボールガイとともにポンチョの手を引くと、気絶するヨノワールへと駆け寄った。
    「グルーシャさん、この子はどうするんだボル?」
    「そうだなあ、ポンチョくんはどう思う?」
    「あっ……いや、その」
    「……そうだ!せっかくなら、グルーシャさんが面倒みてあげれば?ボル!」
    「そいつはいい!さっそくガラル土産ができたな!ボクの手持ちに加えて、立派なポケモンに叩き直してやろう!」
    そう言ったグルーシャの目はニッコリと細まっている。が、声のトーンは笑っていない。
    「……や、やめてください」
    「む?何故なんだ」
    「あの……そのヨノワールは……」
    「……そうか。君は優しいんだな!」
    何故かモジモジと言い淀むポンチョ。しゃがみ込んだグルーシャが、紫の瞳をのぞき込んだ。
    「なーに、手荒なマネはしないよ!手持ちとは、すなわち家族と同じだ!肉親となったからには、ジックリみっちりと絆を深め合うつもりさ!」
    ポンチョの白い両手を握りしめ、勢いよくシェイクするウィンターヒート。ポンチョの控えめな物言いも重なり、彼の早合点は止まらない。

  • 53二次元好きの匿名さん24/05/14(火) 15:58:51

    「では早速!」
    しゃがんだ姿勢のまま、かたわらのヨノワールへ向き直ったグルーシャは、懐からモンスターボールを取り出した。
    「アンタに決めたよ!遠慮なく収まれ!」
    ゆるく下手に投げられ、軽く弧を描いたボール。だが、ヨノワールに当たったボールは、光を放つことなく、そのままコン!と落下した。地面に転がるボールを見つめ、眉をひそめて訝しがるグルーシャ。
    「ん?」という彼の唸りに、「うぅ……」と鳴いたポンチョが、バツが悪そうに顔をそむけている。と、すかさず、ボールから強い口調の電子音声が流れ出した。
    『ひとのものを とったら どろぼう !』
    「何だと!?」
    グルーシャの叫び声に、サイトウを介抱する女性たちもヨノワールを見やった。
    「防犯ブザーなんて久しぶりに聞いたわ。わたしも小さい頃に、野生だと思って誰かのヒンバスにやらかした記憶が……って、ちょっと待って」
    自分たちは、大きな事実を見落としているのかもしれない。嫌な「まさか」が頭をよぎり、口元に手を当てたルリナ。
    「……このヨノワールは、野生じゃないって事ボルね」
    落ち込んだ口ぶりで独りごちるボールガイ。ようやく合点がいったサワコも、大きな目を瞬かせ、ハッと息を飲んだ。
    「……そういう事か」
    神妙に足元を見つめるグルーシャも、一同と同じ結論に達したらしい。
    「……つまり、このヨノワールを所有する何者かが、サイトウくんを襲った事になるな」
    何者か、の部分を強調したグルーシャ。カミソリのような彼の眼光に射抜かれ、ポンチョ姿の全身が震えだした。
    「……なんて……なんてひどい事を!!」
    立ちすくむポンチョに詰め寄ろうと、弾かれたように立ち上がるサワコ。だが、ルリナの腕が彼女の肩を引き止めた。
    「サワコちゃん、落ち着いて。
    ……ねえ、怒らないから正直に教えて。サイトウちゃんを怪我させたのは、あなた?」
    ジムトレーナーに代わり、ポンチョのフードをのぞき込むルリナ。自身の両腕をつつみ込む、褐色の手。その暖かさに、黒いフードが少しだけ頷いた。
    「……ぼくは……弱い……から……」
    「……だから?」
    相手を刺激しないよう、つとめて柔らかい口調で問いかけるルリナ。しかし、ポンチョの細い声に、彼女の胸はチクリと痛んだ。何故だろう。他人とは思えない。

  • 54二次元好きの匿名さん24/05/14(火) 15:59:41

    このレスは削除されています

  • 55二次元好きの匿名さん24/05/14(火) 16:02:03

    光ひとつない、この子の濁った瞳。

    何かを――きっと強さや力のたぐいを渇望しているのが、ひと目で分かる。この眼差しには見覚えがあった。まるで、もう1人の己に見られているような感覚。
    一歩間違えば、自分もこうなってしまうかもしれない。

    「くっ……!」
    「あっ、待って!!」

    ルリナが物思いにふけった隙を見逃さず、

    「ヨノワール、かなしばり」

    褐色の両手を弾くや、目を覚ましたヨノワールへ指示を飛ばしたポンチョ。

    「ボル……!ま、まさか僕たちに……!」
    「ぐっ……卑怯者……堂々と勝負しなさい……!」
    「お願い……素直に話して……!」
    「……アゼル……」

    2人は棒立ち。ルリナは重力に抗うような四つん這い。
    肩の上のチルタリスともども固まったグルーシャは、何をやろうと考えたのか、片足立ちで謎の舞いを決めたまま。

    「ノルマ失敗……ビートくんに怒られちゃう」

    硬直した一同を放置したまま、ヨノワールをボールに収めたポンチョは、フラフラとした独特のフォームでゲートの中へと走り去っていった。

  • 56二次元好きの匿名さん24/05/14(火) 16:25:35

    以上part1になります。


    ↓まとめ

    パルデアの核弾頭 in ガラル part1 | Writening瑠璃色にたゆたう大海原。 夜明け前の月あかりに照らされた西パルデア海の沖を、 1匹と1人が、サメハダーも顔負けの猛スピードで進んでいた。 「待っていろおおお!あと5時間で着くからなああ!!」 ザザザ…writening.net

    書き溜めなしだと、あれもこれもと書きたくなって、お話がまとまらない……


    ↓はグルーシャさん謎の舞いポーズ

    龍神に舞をささげ、精神統一がmaxになった瞬間だけ、一瞬だけ分身したり軽いバリアを張れたりする

  • 57二次元好きの匿名さん24/05/14(火) 22:11:53

    闇堕ちオニオンくん!!?

  • 58二次元好きの匿名さん24/05/15(水) 07:52:44

    保守

  • 59二次元好きの匿名さん24/05/15(水) 17:45:47

    マサラ人みたいなグルーシャだ

  • 60二次元好きの匿名さん24/05/15(水) 17:45:52

    ナックルジムの医務室。運良くロビーにいたキバナに出迎えられ、サイトウを運び込んだ一行は、「詳細が分かるまで、この件は他言無用」と誓わせたサワコとボールガイを、キャンプセットや支給ジャンパーとともにバウタウンへ帰した。
    サイトウの治療を終え、廊下に出てきた医師や看護士いわく、完治には時間がかかるが、臓器や骨に別状はないという。ホッとユニフォームの胸を押さえたルリナは、リュックサックを背負ったグルーシャとともに軽く会釈すると、先頭のキバナに続き、医師と入れ替わりで医務室に入った。

    「……あの黒ずくめが……本当に、オニオンくんなの……?」
    白いベッドで上体を起こしているサイトウは、ルリナの問いかけに、力なく頷いた。
    「どうして……」
    あの大人しかったはずの彼が?だけど、サイトウちゃんは絶対に嘘などつかないはず。
    「嘆かわしい……!一体なぜ!親しい人を傷つけるようなマネを!!」
    脇から下を、包帯や厚いテープでグルグル巻きにされた、痛々しいサイトウの姿。呆然と壁を見つめるルリナと横ならび、ベッドの横から患者を見下ろすグルーシャが、柔道着の拳をワナワナと震わせた。
    「……ねがいぼしです。わたしが肌身離さず持っている『お守り』を見てみたいと……。オニオンくんからワイルドエリアに誘われました」
    「ねがいぼし……まさか……!?」
    大きなリュックサックを床に置き、いそいそと中身をかき分けるグルーシャ。そして、10秒と経たないうちに。
    「これを狙っているのか!?」

  • 61二次元好きの匿名さん24/05/15(水) 19:51:38

    彼の両手のひらには、先ほどの探検で見つけた、神秘的な輝きの石ころが2つ乗っていた。

    「グルーシャさん、何度おわびしても足りません。無理やりお呼びしたばかりに、大きな面倒に巻き込んでしまって……」

    「そんな事、天地が返っても思うんじゃないぞ!
    ボクは、自分の意思でアンタやオニオンくんを助けに来たんだ!」

    顔を怒らせたグルーシャの、荒々しくも心優しい返答。彼の両手にある「ねがいぼし」を見つめながら、眉間をよせ、サイトウは瞳に露をためた。

    「どうか……。どうか、彼を責めないであげてください。この事は内密に……!」
    ルリナとグルーシャを見上げ、哀願するサイトウ。その頬を一筋の涙が走った。

    「サイトウちゃん……。オニオンくんを――信じたくないけど、犯人をかばいたい気持ちは分かるわ。だけど……ずっと隠し通すなんて出来ないわよ」
    「ボクも同感だ……。
    アンタ達のトップなり委員長なりに、せめて何者かに襲われた事だけは報告すべきだと思う……」

    どうやらオニオンは、「ねがいぼし」を求めて蛮行に走ったらしい。という事実だけは把握できた。しかし、その他にも疑問が尽きないせいで、これ以上サイトウにかける言葉が見当たらない。
    ――いったい何のために集めているのか?
    ――単独での行動なのか。はたまた共犯者がいるのか。
    ――あのオニオンが?
    何故・なに?の大波が頭の中を荒れくるい、苦虫を噛み潰したように顔を見合わせたきり、ルリナとグルーシャは沈黙した。

  • 62二次元好きの匿名さん24/05/16(木) 00:02:57

    ドキドキ

  • 63二次元好きの匿名さん24/05/16(木) 08:13:08

    保守

  • 64二次元好きの匿名さん24/05/16(木) 15:53:31

    >>61

    「……なあ、サイトウ。知ってるかもしれないが、『ねがいぼし』を後生大事に持ってんのは、オマエや……そこのグルーシャさんだけじゃない」

    3人のやりとりを無言で見守っていたキバナが、パイプ椅子の上から横槍を入れた。

    「トレーナーの中には、オマエみたいに願掛けで持ってるヤツも居れば、他のジムリーダーみたいに、万が一ダイマックスバンドがぶっ壊れた時にそなえて、厳重に保管してる連中もいる。オレさまも、その1人だ」

    前後が逆さまに置かれたパイプ椅子。ベッドの離れ――ルリナとグルーシャの背後で、背もたれにしなだれたキバナ。ドラゴンストームへと顔を向きやった3人は、一様に聞き入っている。

    「だからさ、サイトウ。たとえ、今日のところは内緒で済んでもだ。同じように第2第3の被害者が生まれちまったら、ダンデや委員長に、オマエは何て言い訳するんだ?たまたま似たタイプの野生に襲われて、偶然『ねがいぼし』を奪われました、ってか?」

    ルリナとサイトウは知っている。心から相手を案じて忠告する時。キバナは、こうして寂しげな笑みを浮かべ、粛々と語りかける。

    「……そうよ。キバナさんの言う通り。オニオンくんが『ねがいぼし』を狙ってるなら、こうしてる間にも、他の場所が襲われてるかもしれない」

    「かも、じゃないぜ。マジだ」

    微笑んだまま、キバナが有無を言わせぬ語気でルリナに付け足した。

    「分かって、います」

    ぐうの音も出ない正論で諭され、顔を正面に戻したサイトウ。先ほどより、一層うつむく彼女だが、シーツごしの太ももに置かれた両手は、ギリっと音を立てて握りしめられた。

    「ですが、この件をハッキリと打ち明けてしまえば、オニオンくんの帰る場所がなくなってしまいます……っ!!」

    ひと息に吐き出した大声が、傷に響いたらしい。痛みに表情を歪め、「わたしが、こらえれば良いんですから……!」と漏らしたサイトウは、ルリナとグルーシャに手を添えられながら、ゆっくりと仰向けになった。

  • 65二次元好きの匿名さん24/05/16(木) 16:19:48

    「ハァァ……」
    逆さまに置かれたパイプ椅子の背もたれに、盛大なため息をついて前のめるキバナ。
    ジムやリーグを無断で抜け出したオニオンだが、本人不在のまま下された処分は、失踪する直前の連敗によるマイナーリーグ落ちのみ。寛大にも、ジムリーダーやジムトレーナー、そしてチャレンジャーとしての資格は剥奪されていない。
    ひとつには、彼の返り咲きや復帰を望むファンが少なからずいる事。
    そして、彼とサイトウとの浅からざる仲を知るダンデが、上の理由を盾に、ローズとオリーヴを懸命に説得したらしいからだ。だが、サイトウが案じるように。
    彼女の怪我が、オニオンの仕業だと明るみにでたらどうなる。あらゆる資格の剥奪や、リーグの登録抹消で済めば御の字。最悪、司法の裁きやファンからの誹謗中傷、報復まで受けかねない。
    さりとて。どんな理由があれど、隠し事やウソをつくのは己の――人としての信条に反する。それに、再犯の可能性がある以上、いつまでも隠す事など不可能。

  • 66二次元好きの匿名さん24/05/16(木) 16:24:19

    このレスは削除されています

  • 67二次元好きの匿名さん24/05/16(木) 16:54:15

    背もたれの銀の縁で頬づえをつき、仏頂面で考え込むこと数分。
    口の端を少し引きつらせながらも、普段の明るさを取りもどしたドラゴンストームが、一同へ切り出した。
    「……分かった。オレさまに任せとけ!
    なーに!ダンデと委員長には上手く言っといてやるよ!」

    パイプ椅子から勢いよく立ち上がり、自分のアゴを親指で示したキバナ。

    「あ、あっさり伝えちゃっていいの?」
    「ああ。グルーシャさんも言ってたろ?襲われた事『だけでも』伝えるつもりさ!」

    不安げに瞳を震わせるルリナとサイトウに、スマホを浮かべたキバナが、イタズラっぽく歯を見せた。

    朱色のスマホの画面には、ダンデの連絡先。
    「発信」をタッチしようと、キバナが指を伸ばした瞬間。

    「キバナくん、ちょっと待ってくれ」

    サイトウを見下ろしたまま、腕を組んで押し黙っていたグルーシャが、にわかに声を上げた。

    青い柔道着に、一同の視線がキョトンと向く。

    「……ふふっ。なあ、サイトウ。ルリナ。さっきから思ってたんだが、グルーシャさんってカブさんみたいな喋り方だよな」

    先ほどまでの沈んだムードを払おうと、明るく微笑むキバナ。

    「……どうした?」

    「ボクに良い提案がある!」

    パチクリと目を合わせたドラゴンストームに、グルーシャの目尻も、ニッコリと力強く細まった。

  • 68二次元好きの匿名さん24/05/16(木) 16:55:28

    このレスは削除されています

  • 69二次元好きの匿名さん24/05/16(木) 16:55:55

    このレスは削除されています

  • 70二次元好きの匿名さん24/05/16(木) 17:24:29

    ↑気にすんなー
    言われてみればカブさんっぽいね
    性格的にも近いかも?

  • 71二次元好きの匿名さん24/05/16(木) 19:32:48

    >>70

    主です。大丈夫っす!


    わざわざ上げてくれるなんて、お人好しだなあと笑


    まあ通報はしましたけどw

  • 72二次元好きの匿名さん24/05/16(木) 22:57:02

    ほしゅあげ
    トレーナーの性格はA世界そのままだけど逆グルーシャの介入で他の要素が変わる剣盾時空?

  • 73二次元好きの匿名さん24/05/17(金) 07:39:19

    保守

  • 74二次元好きの匿名さん24/05/17(金) 19:03:45

    あぶね保守

  • 75二次元好きの匿名さん24/05/17(金) 22:29:48

    ポケマス花江ボイスのせいで炭●郎みがあるグルーシャだな

  • 76二次元好きの匿名さん24/05/18(土) 06:34:17

    保守

  • 77二次元好きの匿名さん24/05/18(土) 16:32:04

    保守

  • 78二次元好きの匿名さん24/05/18(土) 16:44:29

    >>67

    ジムチャレンジの開会式はもちろん。緊急時の集合場所にもエンジンシティが選ばれているのは、この街がガラルのほぼ中心に位置しており、トレーナーたちが各地から速やかに行き来しやすいからである。エンジンジムの会議室には、サイトウ以外のジムリーダー7人。チャンピオン・ダンデ。そして、委員長のローズと秘書・オリーヴまでもが一同に介している。壇上に並んだキバナとルリナから、「サイトウ襲撃事件」の詳細が語られるにつれ、一同は徐々にどよめき、互いに顔を合わせだした。

    「なんて事だ……ポケモンくんに人を襲わせるなんて!」

    「欲しい物のためなら何でもやる……。平和なガラル地方にも、おっそろしい輩がいたもんじゃ……!」

    居ならぶメンバーのど真ん中から、真っ先に立ち上がったカブ。その隣で太ましい腕を組んだヤローも、額に冷や汗を浮かべながらゴクリと喉を鳴らしている。

    「それでサイトウちゃんは!どうなったんだい!?」

    「命に別状はありませんか!?」

    「ああ。怪我はしてるさ。だが、医者の手当てを受けて大丈夫だ。多少は動けるし意識もある。今は、オレさまのジムで寝かせてるところさ」

    ほのお・くさタイプの右隣では、同時に身を乗り出したキルクスの親子――安堵したメロンとマクワが、これまた同時に、ホッと息をついて腰かけなおした。

    「犯人のツラは割れているんですか?」

    「……いいえ」

    窓ぎわの最後列――カブとヤローの左のテーブルから飛ばされたネズの質問に、ルリナは一瞬だけ詰まりながらも平静を装った。

    「犯人は顔を隠してたわ。黒いポンチョを深くかぶって、大きめのマスクを付けてた。だから、ハッキリとした人相までは分からなかったのよ。


    それに、協力者が……先に行って追い払ってくれたおかげで、わたし達が駆けつけた頃には、犯人は背中を見せて逃げる最中だったから」

  • 79二次元好きの匿名さん24/05/18(土) 16:55:47

    「まあハッキリしてんのは、黒ずくめで背が小せえって事ぐらいだな」
    慣れないハッタリに、少しだけ声をうわずらせたルリナを、落ち着きはらったキバナが補足する。サイトウが懇願したように、2人とも犯人が何者なのかは知らない。故に、その名前など分かりようがない。だが、特徴だけは正確に伝えておく。サイトウの気持ちは痛いほど分かる。しかし、オニオンの行為を庇いだてする訳にもいかない。
    ナックルジムの医務室で第一報をダンデへ告げた際。キバナは、あえて「誰のしわざか」をぼかし、他のメンバーの推理力や洞察力に託したのだ。
    「……そうですか」
    2人の言葉に、じっとりとした目線を天井に向けたネズは、それきり沈黙を決め込んだ。
    「彼女を襲ったポケモンは?」
    ネズと隣り合い、目を閉じて清聴しているポプラからも問いが飛ぶ。
    「えっと……」
    答えて良いものか。一瞬キバナを見やったルリナは、軽い頷きを受けてから、途切れとぎれに切り出した。
    「……ヨノワール、でした」
    「なるほどねえ」
    杖を支えに目を閉じたままのポプラが、ルリナに二の句を告げる。
    「……誰がやったかなんて、あたしには検討もつかないよ。だけど……」
    呼吸がおかれるや、最長老の瞑想が解かれた。
    「吊し上げるだけなら、誰にだって出来るさ。でも、あたしらの役目は「裁くこと」じゃない。導くことだ。違うかい?
    子供の不始末は、それを導いた大人たちの責任でもある。リーグに携わる以上、その事、ゆめゆめ忘れちゃいけないよ」
    ジムテストに劣らない目力で、一同を見回すポプラの言葉。要領を得ず、キョトンとする一同。しかし。それとは裏腹に、ルリナとキバナは思わず目を剥いた。自分たちは、一言も「子供」とは口にしていないはず。
    『あの子を苦しみから救ってやっておやり』
    全てを見透かされ、そう投げかけられたような心地がした2人は、壇上からぎこちなく首を縦に振るしかなかった。そして。
    「……ポプラさんの金言、毎度の事ながら耳が痛みますね」
    天を仰いだまま漏らしたネズも、自分に笑いかけてくる妹の顔、そして、ポプラほどの確信には至っていないものの、
    仮面から涙をあふれさせながら、バトルコートで膝をつく1人の少年を思い浮かべ、かすかに眉間を寄せた。
    「……どうしますか委員長」
    最前列。ガラルリーグのトップ2人、そして秘書が横並んだ1台の机から、ダンデが隣のローズに仰いだ。

  • 80二次元好きの匿名さん24/05/18(土) 17:05:28

    「ジムチャレンジの開幕まで、あと10日!
    ルリナやキバナが言った通り、皆が保管する『ねがいぼし』を手に入れるために、犯人は必ずジムを狙ってくると思います!」

    「それだけじゃないよ。『ねがいぼし』は、ガラルの色んな場所に落っこちてる。何も知らないチャレンジャー達が出くわして、そいつに絡まれでもしたら……!」

    「しかも、犯人が複数である場合……各地で未曾有の混乱が起きるでしょうね……。最悪……延期や中止も……」

    「そんなの良くないよ!ジムチャレンジもチャンピオンカップも、延期や中止なんて絶対ダメ!!」

    「委員長!落ち着いてください!」

    ダンデに続いたメロン。そして、マクワの不吉な言葉に、滅多に見せない怒りの形相で立ち上がったローズ。背広に両手を添えたオリーヴが、彼を懸命になだめている。

    「……わたくしとした事が。ごめんね。気持ちが高ぶっちゃって、つい」
    秘書に両肩を押さえられたローズは、数秒の深呼吸の後、背後の一同へと苦笑いで会釈し席についた。

    「いいえ。委員長、気持ちはオレも同じです。
    大勢のファンが待ちに待っているジムチャレンジ!それを、指をくわえて台無しにされる訳には行きませんから!」

    獅子を思わせる雄々しい面持ちで、ローズへと握り拳をかざすダンデ。しかし。

    「ならどうしろと?ジムチャレンジの準備に、手持ちの最終調整。そのうえ、おれのようにトレーナー以外の仕事まで普段通りこなす者までいます。まさか、この忙しい時期に皆さんでパトロールにでも出かけるおつもりですか?」

    「うーむ。悩ましい……!ネズくんにも一理ある。だけど!ダンデくんの言う通り、何も手を打たずに、犯人が暴れるのを見ているだけなんて、僕には耐えられないよ……!」

    ぼやくネズに続いて、カブが歯がゆげに頭を抱えた。
    怪しい動きがないか各地を巡回しようにも、それぞれの多忙が許さない。
    さりとて。サイトウを襲った犯人が、またいつ現れるか分からない。
    あっちが立てば、こっちが立たず。ジムリーダーたちの結束は、すぐに一枚岩とはいかないようだ。

  • 81二次元好きの匿名さん24/05/18(土) 17:06:11

    「なあ、みんな!聞いてくれ!」

    各々独りごち、ざわめきだした一同。
    だが、キバナの一声で、会議室はピタリと静寂を取り戻した。

    「みんなの悩み、ごもっともだ!

    だから、とてつもなく頼りになりそうな!
    そして、カブさんにも負けないほど熱い助っ人を連れてきたぜ!」

    「頼りになるっていうか、見ててハラハラするっていうか……お待たせ、いいわよ!」

    「やっとか!」

    キバナの前置きが終わり、会議室のドアから顔をだしたルリナ。彼女の合図を受けて、廊下から凛々しい声が響いてきた。

  • 82二次元好きの匿名さん24/05/19(日) 00:16:48

    カブさんとの対面が楽しみ

  • 83二次元好きの匿名さん24/05/19(日) 08:39:14

    保守

  • 84二次元好きの匿名さん24/05/19(日) 12:31:02

    ガラルでのグルーシャの知名度はどんなもんかな
    ブルーベリーでは本人曰くちょっと知られてる、らしいけど

  • 85二次元好きの匿名さん24/05/19(日) 14:08:33

    主です。


    >>82

    かっとび具合は違えど、お互いに挫折を糧にした組なので(この世界のグルーシャさんなら特に)絶対不仲にはなりようがない!笑


    >>84

    そうなんすね!特別会話ばっかり楽しんでて、ランダムは盲点だったなあ


    (我が推しリップさんは「この場所じゃトーシロー」みたいな事言ってた記憶あるので、その人の職種によるんでしょうけど)


    アスリートなら(それこそカブさんあたりに)知られてない訳はないだろうと解釈してます

  • 86二次元好きの匿名さん24/05/19(日) 14:10:50

    あとカブさん、何故かダンデは呼び捨てだった記憶を投下してから思い出してしまい……

    まとめでは修正しときます

  • 87二次元好きの匿名さん24/05/19(日) 23:41:03

    ほしゅー

スレッドは5/20 11:41頃に落ちます

オススメ

レス投稿

1.アンカーはレス番号をクリックで自動入力できます。
2.誹謗中傷・暴言・煽り・スレッドと無関係な投稿は削除・規制対象です。
 他サイト・特定個人への中傷・暴言は禁止です。
※規約違反は各レスの『報告』からお知らせください。削除依頼は『お問い合わせ』からお願いします。
3.二次創作画像は、作者本人でない場合は必ずURLで貼ってください。サムネとリンク先が表示されます。
4.巻き添え規制を受けている方や荒らしを反省した方はお問い合わせから連絡をください。