- 1二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 20:21:44
- 2二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 20:22:04
眠い目をこすりながら、彼女に訪ねる。
自主トレをしようとしていたのか、体操服にブルマ姿。
……違和感。
「それどころじゃないのよ! アタシのツインテールが!」
「ツインテールが?」
スカーレットの後頭部に目を向けて、違和感の原因に気付く。
彼女のトレードマークでもある、長く美しいツインテールが根元からない。
「……切ったの?」
おそるおそる、聞いてみる。
昨日は、そんな素振りは微塵も見せていなかったが。
首を振るスカーレット。
「違うわ。朝起きたら、ツインテールに足が生えて走ってったの!」
「は?」 - 3二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 20:22:25
困惑する。
そんなことがあるはずはない。
……そんなに、彼女に無理をさせてしまっていたのか。
無意識に、スカーレットを抱き締める。
「ごめん。スカーレットが疲れているのに気が付かなくて。なんでもしてあげるから、今日はゆっくり休んで」
胸の中で、赤面する彼女。
「それは、それで……。じゃないの! ちょっと来て!」
「うわっ! ちょっと待って!」
スカーレットに手を引かれるままに、駆け出す。
ずっと早いその速度についていけず、身体が宙に浮いた。 - 4二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 20:22:55
着いたのは、いつもトレーニングに使用しているグラウンド。
「……なにあれ」
そこにいたのは。
スカーレットのツインテールに足の生えた、名状しがたきものだった。
赤いリボンがないところを見ると、多分右側のツインテール。
「ちきしょー! 全然勝てねえ!」
「くっ、スカーレットさん強すぎですわー!」
「ま、まさかアタシが全く追いつけないなんて……」
死屍累々。
まだ、目に火が灯っているのは、ウオッカにカワカミプリンセスにスイープトウショウ。
だが、遠目に見ても連戦連敗を重ねている。
10馬身以上の大差で。
「ど、どうしたんだ!」
スカーレットを連れてグラウンドに降りると。
「おや、スカーレットのトレーナーさん」
アストンマーチャンが声を掛けてくれた。 - 5二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 20:23:19
「あれ、どうなってるの!?」
指差しながら聞いてみると。
「あれですか? 朝練にスカーレットが乱入してきまして。東京2,000mや京都2,000m、阪神2,200m等の設定で勝負しているのですが、みなさん全然歯が立たないんです」
「いや、あれスカーレットじゃないだろ」
そう言うと、首を傾げて不思議そうな瞳をこちらに向けるアストンマーチャン。
「あのツインテール、どこからどこを見てもスカーレットだと思うのですが……」
そこで、初めて俺の後ろのスカーレットに気が付く。
だが、まるで他人のようなよそよそしい視線。
「ふむふむ、そういうことですか。新しい担当さんを見つけたのですね。だからスカーレットがあんなふうに荒れていると。初めまして、トレセンのマスコット予定のアストンマーチャンをよろしくお願いします」
彼女の対応に、顔面蒼白のスカーレット。
代わって、アストンマーチャンに言い募る。
「いや、こっちが本物のスカーレットだって! いつも一緒にいただろ!」
「はて、おかしいですね。スカーレットならツインテールがあるはずです。そちらの方にはないではありませんか」
「そうだけど!」 - 6二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 20:23:41
これ以上、話しても無駄と判断して、コースを走っているツインテールに目を向ける。
スカーレットそっくりの良い脚だ。
ちらり、と隣のスカーレットを見る。
……この脚は、本当にスカーレットの脚だろうか。
「きゃっ!」
感情の赴くままに、その脚に手を這わせて揉む。
……本物だ!
「なにすんのよ!」
……蹴られる!
受け身を取ろうとしたところに、横から衝撃が来て、そのまま土手に叩き付けられる。
「……いててて」
打った腰をさすりながら立ち上がって、そちらを見ると。
蹴ったのは、さっきまで走っていたツインテール(右側)だった。
そのまま、どこかへ走り去っていくそれ。
「追わないと!」
慌てて2人で追いかけるものの、見失ってしまう。 - 7二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 20:24:04
「……なかなか、しぶといわね」
「そりゃあ、スカーレットの脚に、上半身がないんだもんな。早いよ」
カフェテリアで作戦会議。
クリームソーダを飲みながら、打開策を話し合う。
気分転換に、と周りに目を向けると、スイーツを山盛りにして悦に浸っているメジロマックイーン。
「……あー、その量はやめたほうが良いんじゃないかな」
スカーレットのライバルではあるが、思わず声をかけてしまう。
友人でもあるマックイーンのトレーナーが、いかに減量に心を砕いているか知っているから。
だが。
「美味しいですわ~、最高ですわ~」
彼女の耳には全く届かないらしく。
幸せそうな顔で、次々とスイーツを平らげていく。
そこに、手を引かれて現れたマックイーンのトレーナー。 - 8二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 20:24:26
「あ、あれ!」
「わかってる」
マックイーンのトレーナーを連れて来たのは、スカーレットのツインテール(左側)だった。
赤いリボンがついているから間違いない。
しかしながら、殺気が洩れていたのだろう。
こちらを認めると、一目散に逃げてしまうスカーレットのツインテール(左側)。
「くっ、早いわね」
飛びついたものの、一瞬で躱されたスカーレットが悔しそうな声を上げる。
「許してくださいまし」と情けない声を上げながら、ズルズルと引き摺られていくマックイーン。
本当に、手立てはないものか。
溜息を、つく。
すると。
「なんだい? あんたたち、スカーレットちゃんを捕まえたいのかい?」
救世主となってくれたのは、食堂のおばちゃんだった。 - 9二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 20:24:48
「……本当に、上手くいくのかしら」
「さあな、でもやってみるしかないだろう?」
トレーナー室のテーブルの上に置いてあるのは、「そこ一番屋」のポスター。
2人で手に持っているのは、昔ながらのトリモチ。
罠を張り、待ち伏せをしている。
食堂のおばちゃんに話を聞くと、スカーレットのツインテールたちは、今度食堂でコラボする「そこ一番屋」のカレーのポスターを、軒並み持って行ってしまったとのこと。
だから、それを罠にすれば寄ってくるに違いないとのことだった。
予備のポスターを預かって激励されたので、ミスをするわけにはいかない。
「きたわね」
「ああ」
そして、本当に来た。
しかも、右側と左側、2体一緒に。
テーブルの上のポスターに、スカーレットのツインテールが飛びついたところを。
「えいっ!」
「やあっ!」 - 10二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 20:25:08
ソファの影から躍り出て、手に持ったトリモチを一閃させる。
「やったわ!」
「やったな!」
2人とも、それぞれツインテールをゲット。
所詮、ツインテールと脚の分の重さしかないので、強力なトリモチにくっつかれて、中空に浮かせられると、足をジタバタさせるだけでなにもできない。
その、2体の足を、スカーレットがむんずと掴んだ。
「ふんっ!」
そして、そのまま後頭部にめり込むように吸い込まれていくツインテールの足の部分。
……夢でも、みているのだろうか。
腰までずぶずぶと入りきると、そこにいたのは、いつものツインテール装備のスカーレット。
「ありがとう、トレーナー」
満面の笑み。
だが、自分は今の光景が信じられなくて。
――意識を、手放した。 - 11二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 20:25:29
――目が、覚めた。
視界に入ってくるのは、いつもの何の変哲もない天井。
仰向けに寝ている背中に感じるのは、昨日と同じベッドの感触。
ドンドン ドンドン
ドアを何度も叩く騒がしい音。
インターホンが連打されている。
スマホはさっきからひっきりなしに呼び出し音を鳴らしている。
……To Be Continued? - 12二次元好きの匿名さん24/05/07(火) 20:25:48
これで終わりです。
ありがとうございました。
至らない点もあると思いますが、よろしくお願いいたします。 - 13二次元好きの匿名さん24/05/08(水) 06:53:59
スレタイどういうことかと思ったら、たくましいなwか
- 14二次元好きの匿名さん24/05/08(水) 07:07:08
- 15二次元好きの匿名さん24/05/08(水) 07:15:20
- 16二次元好きの匿名さん24/05/08(水) 17:58:24