- 1二次元好きの匿名さん24/05/15(水) 10:59:10
先発ドラートが大量失点、打線も勢いを見せず惨敗だった
城に響く選手のため息、どこからか聞こえる「今年は100敗だな」の声
無言で帰り始める魔族達の中、昨年の首位打者アウラは独りベンチで泣いていた
ゼーリエ戦で手にした栄冠、喜び、感動、そして何より信頼できるチームメイト・・・
それを今の魔王軍で得ることは殆ど不可能と言ってよかった
「どうすりゃいいんだ・・・」アウラは悔し涙を流し続けた
どれくらい経ったろうか、アウラははっと目覚めた
どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たいベンチの感覚が現実に引き戻した
「やれやれ、帰ってトレーニングをしなくちゃね」アウラは苦笑しながら呟いた
立ち上がって伸びをした時、アウラはふと気付いた
「あれ・・・?お客さんがいる・・・?」
ベンチから飛び出したアウラが目にしたのは、外野席まで埋めつくさんばかりの観客だった
千切れそうなほどに旗が振られ、地鳴りのように魔王軍の応援歌が響いていた
どういうことか分からずに呆然とするアウラの背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた
「アウラ、守備練習だ、早く行くぞ」声の方に振り返ったアウラは目を疑った
「し・・・シュラハト様?」 「なんだアウラ、居眠りでもしてたのか?」
「ぐ・・・グラオザーム?」 「なんだアウラ、かってにグラオザームを引退させやがって」
「リヴァーレ・・・」 アウラは半分パニックになりながらスコアボードを見上げた
1番:ソリテール 2番:シュラハト 3番:リヴァーレ 4番:クヴァール 5番:トート 6番:アウラ 7番:グラオザーム 8番:マハト 9番:ベーゼ
暫時、唖然としていたアウラだったが、全てを理解した時、もはや彼女の心には雲ひとつ無かった
「勝てる・・・勝てるじゃない!」
リュグナーから天秤を受け取り、グラウンドへ全力疾走するアウラ、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった・・・
翌日、ベンチで灰になっているアウラが発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った