- 1二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 22:53:12
- 2二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 22:53:23
「また盛大に散らかしたッスねー」
栗毛のウマ娘はしみじみ呟いた。
愛用の不良マスクも三角巾がセットでは家政婦スタイルにしか見えない。
金色の暴君と呼ばれた三冠ウマ娘オルフェーヴルは、現在ikzeトレーナーの部屋ではたきをかけていた。
「パパってばまた靴下かたっぽ無くして!ニガニガ野菜ジュースで懲らしめてやるんだから!」
隣で洗濯物の地層を掘り返しているウマ娘はスイープトウショウ。
トゥインクルシリーズで底知れない実力を見せつつある才媛にしてikzeの実の娘である。
今日は二人して毎週恒例となりつつあるikzeの部屋の掃除に来たのだった。 - 3二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 22:53:43
「あらかた片付いたッスね。しかし教え子に働かせて当のikzeはどこ行ったんスかね?」
「どーせ競輪でしょ。ギャンブルしてカレンチャンのウマスタ見て鼻の下伸ばして
本当だめパパなんだから」
スイープはまだぷんすこしている。
おおかたせっかく休みなのにパパと遊べなくて不機嫌なのだろう。
ツンツンしているけれど実はかなりのファザコンであることはikzeチームの誰もが知っている。
「そっすか。……じゃあ失礼して、先輩の遺影周りアタシが掃除するッス」
「あ……」
オルフェは先輩――デュランダルの遺影に近づいた。 - 4二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 22:56:49
先輩というのは彼女デュランダルがikzeの担当した初めてのウマ娘だからだ。
そしてikzeの最愛の妻であり、スイープにとっては亡くなったお母さん。
家族の大事な空間だから部外者の自分が触るのは気が引けたのだが。
「あ、でも掃除するまでもないみたいッス。ここんとこだけ凄く綺麗にしてあるッス」
愛を感じるッスねと感心すると、スイープの顔もぱぁっと明るくなった。
「そうでしょ!パパはママにメロメロなんだから。この前もね――」
途端にご機嫌になったスイープの話を聞きながら、
オルフェはデュランダルが健在だった頃を思い出していた。 - 5二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 22:57:03
期待
- 6二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 22:57:22
『名ウマ娘に癖あり』
とは言うものの、癖が強すぎては勝てるレースも勝てなくなる。
デュランダルとはそんなウマ娘だった。
なかなか理解者に巡り会えなかった彼女に「自分なら君を勝たせられる」と大風呂敷広げ、
お互いにとって初のG1タイトルに導いたのが新米トレーナーのikzeだった。
それにしても短距離で直線追込やろうなんて言い出すバカによく着いていったものだと思う。 - 7二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 22:57:38
さらに思いを巡らす。
自分が入学したとき、ikzeとデュランダル先輩はとっくに結婚していた。
幸せそうだった。
苦しいときも嬉しいときも二人で乗り越えてきた絆が二人を結んでいた。
何も言わなくても何もかも通じているような夫婦だった。
だからこそ―― - 8二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 22:58:07
「くぅ~疲れたッス!あとはikzeにやらせてお開きにするッス」
「そうね。グランマ直伝の魔法でぱぱっと片付けてもいいけど
娘をほったらかす悪いパパは手伝ってあげないもん」
なんだかいてもたってもいられなくなり、残りはまた来週ということで掃除を切り上げる。
スイープと別れた後になって言葉にすべきじゃない言葉が口からこぼれた。 - 9二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 22:58:26
「……アタシの初めてはikzeだけど、ikzeにとっては初めてじゃない。
勝利の喜びも敗北の悔しさも。それ以外も」
仕方ないじゃないか。横恋慕しているのは自分なんだから。
デュランダル先輩を一途に想い続ける彼だからこそ、その幸せを願ってしまうのだから。
だから永遠に片思いでいいんだ。 - 10二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 22:59:21
「お?奇遇だなオルフェ」
「ヒエッ!?」
柄にもなく感傷に浸っていたときに思いも寄らない声が聞こえたものだから死ぬほど驚いた。
「ikze何やってんすか!?スイープががっかりしてたッスよ」
「いや~~~悪い悪い😓今日の競艇激アツでさ😆」
「で回収率は」
「……😭」
敏腕トレーナーとして鳴らしていても私生活は相変わらずの駄目人間である。
さっきの独り言は聞かれていなかったようで安心したのだが……
「でな、オルフェ。俺はお前に会ったのが今で良かったと思ってるんだよ」
心臓が跳ね上がった。
聞かれてしまった。墓場までもっていくつもりだった秘めた心の内を。 - 11二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 23:00:28
「なんでかっていうとな。デュランダルやジャーニーと戦ってきた経験がお前に活かされてるからだ。
経験を積む前のヒヨコの俺じゃお前のポテンシャルを引き出せなかった。
あの子たちがお前を三冠ウマ娘にしてくれたようなもんだ」
「……」
「かといってお前を他のトレーナーに渡したくもない。だから今出会ってよかった」
と、目の前の男はそう言った。
「……よくそんなこっ恥ずかしいことを堂々と言えるッスね」
「伊達に恥の多い人生を送ってないからな」
「kmiッス……」 - 12二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 23:01:26
ああもう駄目だ。このkmiナルシスト野郎に自分の脳はぐちゃぐちゃにされてしまった。
「あんまりそういうこと担当の子たちに言うもんじゃないッスよ。kmiから」
「😭」
今出会ってよかった。この夕焼けが顔にさす瞬間で。
赤らんだ頬が目立たなくなるから。
栗毛のウマ娘は日に透けて金色に輝く髪をなびかせ、帰路についたのだった。 - 13二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 23:02:12
- 14二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 23:03:11
- 15二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 23:03:30
乙
- 16二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 23:03:43
満足感が高いとコメントが出せない…
とてもよかった… - 17二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 23:04:05
imgにいつもいる奴来たな...
- 18二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 23:04:40
ある種の取り返しのつかなさと甘酸っぱさの往復で脳細胞が と と の う
- 19二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 23:05:45
ちょっとしっとりとしたikze×オルフェもいいね
- 20二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 23:06:13
うまく言葉が出てこないが素晴らしいものを見たことだけはわかる
- 21二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 23:07:02
- 22二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 23:10:28
オルフェ通い妻概念は積極的に広めていけ
- 23二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 23:26:11
面白かったです
- 24二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 00:07:15
切ないようなあたたかいような
すき - 25二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 00:11:07
めっちゃ良かったから終わらないで♡
- 26二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 00:15:28
これだけ言い忘れた。
読んでいただき大変ありがとうございました。 - 27二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 00:16:06
- 28二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 01:05:30
続き書いてお兄ちゃん❤️
- 29二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 01:09:40
チームで一番新顔のエールちゃんあたりが、過去の事情を知らない頃に「お似合いですねぇ」とかコメントしてそう
- 30二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 01:14:48
胸が苦しくなるいい作品だった
- 31二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 07:43:15
寝起きにこれは元気でるわ
- 32二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 08:16:14
文字だけでわかる名画……
- 33二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 08:17:04
いい作品だった
- 34二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 08:18:24
一日で生活感を出す男
- 35二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 08:20:21
良いものを見た…
しかしなぜちゃっかり⚔が故人になっている…? - 36二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 18:46:22
シングルファザーikzeに通い妻する😷概念が某所で生まれたから
- 37二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 19:04:36
善き哉…
- 38二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 22:18:31
ありがとうございます……いいものが見れました……🙏
- 39二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 23:28:03
オルフェ家事出来る概念は広めたい
- 40二次元好きの匿名さん22/02/02(水) 10:39:51
最光だった