- 1二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 11:17:02
- 2二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 11:18:27
- 3二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 11:24:17
- 4二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 11:27:00
(ss)ひっ…ぐすっ……ぅ
泣き止まないモモイ概念if
(先に元スレを読み切ることを強く推奨します。そして愉悦しろ)
持前の機転を利かして拘束から抜け出したモモイ。階下からは仲間割れだろうか怒鳴り声が木霊している。連中の目が離れている今のうちに逃げ出さないと。
一階まで降りたところで激しい戦闘音まで聞こえてきた。どうやら派手に仲間割れを起こしているみたいだった。
静かに扉を開けようとドアノブに手を伸ばそうとして、違和感を覚え動きが止まる。銃声の数が明らかに多いのだ。一人や二人ではない、大勢と分かるほど。
これには困った。四人だけの犯行だと思っていたが違ったのか。
そういえばゲーセンで争ってた時はもっと人いたなー、と脱出難易度が上がり現実逃避。あのなにも今戻ってこなくてもいいのに、と相変わらず自身の運の無さを嘆くモモイは今度お祓いに行くことに決めた。
それはさておき。争っている横から逃げ出そうとしていたのにこれだけ人が増えてしまったら見つかってしまうかもしれない。なにせ、今のモモイは片足を負傷しているのだ。一人でも見つかってしまえば逃げ切ることは困難だろう。一か八かに賭けるのは最後の手段にしよう。
1階は事実上通行不可、2階は高所にある窓が開いているがそれだけだ。道具も無しにモモイの背丈では届かない。となると…。
(上に昇るしかないよねー)
屋上にいけばヴェリタスのドローンが見つけてくれるかもしれない。もしくは市井をパトロールしている警備ロボでもいい。助けてくれるなら誰でも良かった。
痛む片足に顔を顰めながら僅かな可能性に縋ってモモイはその場から逃げ出した。
逃げ出して、しまったのだ。 - 5二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 11:29:31
10まで保守
- 6二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 11:40:20
ほ
- 7二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 11:41:21
(詰んだ…)
無機質な階段が無残にも破壊されている前でモモイは途方に暮れていた。屋外に出れば、と思っていたがこれでは屋上にいけない。ご丁寧にエレベーターまで破壊されて上階に昇る手段が完全に封じられている。
もしかしたら連中を見誤っていたのかもしれない。拉致しておいて見張りも残さないなんて、と呆れていた印象が裏返る。なるほど、確かに万に一つも脱出できないのなら多少気が緩むのかもしれない。ここまで徹底的に脱出経路が潰されているのだから。性格や常識を犠牲に能力が秀でたタイプなのかもしれない。
八方塞がりなこの状況を打破できないことで徐々に内心に焦りが積もる。
3階の窓から外を覗いても近くに飛んでいるドローンはいない。それもそうだ。この辺りは人の少ない廃区域なのだから。そのまま視線を下に落とすも映るのは遠く離れた地面のみ。
いくらキヴォトス人といえどこの高さから落ちるのは不味い。命に別状はないにしても動けなくなってしまっては意味がないのだ。
(どうしよう。これじゃ何も……あれっ?)
ふと、向かいのビルが目に入った。
恐らく元は複数の事務所が入居していたテナントビルだったのだろう。工場ラインもあるこの建物よりも隣の廃ビルはやや小さい。
その2階にある窓が開かれていることに気づいたモモイはそこに希望を感じた。 - 8二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 11:42:40
し
- 9二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 11:44:08
保守
- 10二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 11:44:47
ゅ
- 11二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 11:51:22
(あそこだけ開いてる)
昨日アスナ達が侵入に使った際に開けられた窓だ。C&Cがこのビルに潜入しようとしてそのまま開けられたままになっていたのだ。そうとは露知らず、モモイは身を乗り出して注視する。
距離は凡そ2mと少し。
普段ならまず届くことのない距離だが、生憎と此方は3階だ。高さ関係性もあって容易に届くだろう。
ネル先輩ならこのくらい余裕なんだろうなー、などとミレニアムの誇るエージェントの先輩達を想いながら窓枠に足掛ける。
(たっか…)
隙間風が剥き出しの素肌を撫で、足元の先にはコンクリートの地面が広がっている。もし落ちたら大怪我間違いないだろう。実際には地面よりも遥かに近い隣のビルに飛び込むだけだから怪我の心配をする必要はないのだが。強いて言えば着地の際に左足の怪我が悪化するかもしれないぐらいか。
高所が苦手な人ならこの景色だけで足が竦むだろうが、モモイは特になにも感じなかった。むしろ幼い頃から高い所に昇っては周囲を困らせたことがあるぐらいには好きだったこともある。
こういうのは思い切りが大事なのだと今まで培ってきたサブカル知識で己を奮い立たせ、いざ。
先程まで鳴り響いていた銃声がいつの間にか止んでいる。同時に慌ただしく階段を駆け上がる足音から察するにモモイがいなくなったことに気づいた連中が探しにきたのだろう。もう悩んでいる時間は無い。
大きく深呼吸を一つして……まるで細かいカミソリを吸い込んでしまったかの如く喉元に鋭い痛みが走り中断する。喉奥から僅かに感じる鉄の味。
なんとも締まらない。ガスを直吸いさせられたから変な影響でも出てるのかも?でも、もう一度捕まってしまえばこの痛みを再び味わうことになる。それだけは嫌だった。
そうなるぐらいなら足の一本やそこらの痛みなんて構うもんか。あのガスの辛さを二度と味わいたくない想いがモモイの決意を固くさせる。
やるしか、ない…!
脚に力を溜め、モモイは思い切って空に身を投げ出した。 - 12二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 11:52:25
(息切れしない為にも一旦ここまで。続きは夕方か夜にでも)
EDまで書いたとか言っておきながら実はあと3シーン+後日談だけ仕上がってないので…
保守ありです。後はご自由にどうぞ - 13二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 12:14:29
ifに繋げるとすると、モモイが追われてるor捕まりそうな時に誰かが乱入して救助(前スレだとライティング中のシロコ)とか
モモイ鹵獲後、ミレニアム突入前にたまたま依頼で来てた便利屋68と鉢合わせとか
携帯電話捜索中にミネ団長がモモイの身を案じて救護とか
ここまで書いてて思ったけどけっこう派生できるな - 14二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 12:20:21
あのSS良かった。個人的にはあの疑心暗鬼ガスの方使われたモモイ見たい
IFルートも楽しみに待ってます - 15二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 12:46:14
- 16二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 17:06:44
(あっっっ、ぶな〜〜〜!!!なんとか届いた!)
ウェーブキャットのように窓枠にぶら下がる姿でモモイは九死に一生を得たことを実感した。
勢いよく踏み込んだ瞬間、怪我をしていた左足がズキリと痛んだのだ。そのせいで想定よりも随分飛距離が短くなってしまったが、なんとか窓枠に右腕を差し込むように引っ掛けたことでビルから転落する事態は防げた。
四苦八苦としながらも隣のビルの室内に転げ落ち、当面の危機は去った。
その際に外壁に身体を擦らせたからシャツやスカートの裾がボロボロになってしまった。加えてどこかに掠めたのか靴も片足脱げ落ちてしまっている。が、そんなことがどうでもよく事態がモモイを襲っていた。
(やば……もしかしなくてもこれ、脱臼してるかも)
激しい痛みを訴える右肩。力を入れようとしても一切動かない。
間違いなく一番の大怪我だった。上階から飛び降りた衝撃を一気に支えたのだから当然か。ミレニアムの誇る医療機関治療を受けたとしても恐らく完治に一週間は掛かってしまうだろう。当分右肩は動かせそうにない。
「……ぁー…、ハぁ゛ー……ぅぷっ」
これには流石にヒヤっとした。落ち着かせようと自意識にそぐわない荒い呼吸が痛む喉を酷使し、その度に咳き込んでしまう。そして咳き込めば更に喉が痛くなる最悪の悪循環。気持ちわるい。
あ、まずい。喉奥から込み上げてくる何かを察し片手で口元を抑える。
モモイが隣のビルにいることはなにがなんでも気づかれてはいけない。証拠を残さない為に咄嗟に窓に駆け込み外に吐き出す。
血の塊が地面に飛び散り、赤い飛沫が一面に広がった。 - 17二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 17:21:22
モモイの靴と血溜まりが外に…
先生、これは…! - 18二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 17:22:16
大惨事の予感しかしねぇ…!
- 19二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 17:23:13
大丈夫!? これ下手しなくてもモモイが高所から落とされたって誤解しない!?
- 20二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 17:23:52
下手したら飛び降りじさt…
- 21二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 17:26:03
先生(“まさか、待ち伏せされて落とされた!?“)
こうなっても不思議やないな - 22二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 17:41:12
(なんだか火曜サスペンスにありそうな事件現場みたいになっちゃってる…次回作のシナリオに使えるかな…?)
思っていた以上の血が出てドン引きする。モモイ的にはちょっと大きい痰ぐらいかな?程度のつもりだったのに。よく見れば咳に当てていた手のひらにも血がべっとりだった。
少なくない量を吐き出したとはいえ、高所から着弾したことでかなり広範囲に撒き散らされている。吐血量に見合っていないプチ事件規模となっていた。
眼下に広がる光景を一瞥し、自身が起こした行動だということを棚に上げながら窓を閉める。これで3階から隣のビルに飛び移ったとは気づかれないだろう。
なんにせよ、これで連中には暫く見つからなくなった。いなくなったモモイを探しにきた連中が多少混乱して時間を稼げれば御の字か。その間にこの場から離れよう。
買い替えが必須になったボロボロなシャツの裾で汚れた口元を乱雑に拭い取り、歩き出す。喉元に詰まっていた物がなくなり、数回咳き込んだ頃には随分と呼吸が楽になったのは幸いか。依然として未だに喋ることはできないし、右腕が動かなくなったことを除けば先程よりも動きやすいぐらいだった。
(ミドリ…今頃どうしてるかな。まだ寝てるといいんだけど)
次回作を脱出ゲームかホラーゲームのどちらにするか悩みながら、今も眠りについているであろう双子の妹のことを想う。
既にモモイは帰ったら今回の騒動の一部をイラストにしてもらおうと考えていた。勿論、心配させる訳にはいかないので事実だと伏せた上で。注射器男とか敵役としてあまりにもぴったりすぎたし。
転んでもただでは起きない女、それがモモイだった。
未だに痛む注射痕を擦る。現実ではやり返せなかった代わりにゲームの中で仕返そうと、既に脱出した気満々になったモモイは今後のことを考えながらビルから抜け出した。
滲む右の視界でうっかり階段を踏み外さないよう、ゆっくりと。 - 23二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 18:12:46
喉と右目はガスにやられ、左手は注射のせいで薬指と小指が動かず、右肩は脱臼し左足も負傷してて痛むと…
無事な箇所の方が少ないですね… - 24二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 18:22:29
確か本スレだと後者の精神作用系のガスが使われた形跡(モモイには使ってない)があったよね、その後に>>16のような血痕とモモイの片靴も見つけてしまったら・・・
- 25二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 18:31:37
スカートとかもボロボロになってるから見た人の血の気が引く状態になってそう
- 26二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 18:34:38
団長〜!来てくれ団長〜!!
- 27二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 18:36:48
誘拐犯たちに身に覚えのない罪が増えていく
- 28二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 19:00:06
これモモイが脱出したぶん時間がずれこんで先生到着しない?
- 29二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 19:21:38
一方、2階に先行したミドリ達と合流したユウカとノアはその部屋に残された惨状に言葉を失っていた。
空になった精神作用ガス弾に、床に落ちていた注射器、そしてモモイの血痕。破壊された携帯。
どれも気が暗くなるものばかりだ。いったいこの場で何があったのか、無意識に"その先"を考えそうになる思考を因数分解して無心でモモイを探す。
しかし、ユウカとノア。そしてゲーム開発部で捜索するも件の姿は何処にもない。
「モモイーーッ!!何処にいるのーー!!」
「お姉ちゃーーん!!」
ユウカやミドリの声が虚しく反響する。時間が経つごとにその呼びかけは大きくなっていく。僅かな痕跡すら逃さず注視しているノアもその表情は青褪めている。
科学と合理の学園に所属する生徒が誰一人として、普段の冷静さを保っていなかった。
「アリス、ただいま戻りました!飛び降ります。えいっ!」
「あ、アリスちゃん。どう…だった…?」
「4階にモモイはいませんでした。窓もなかったので脱出できません!モモイはどこに行ったのでしょうか?」
「そっか…ありがとう」
上階の探索を終えたアリスが崩れた階段の先から飛び降りてきた。橋渡しにしていた光の剣を拾うも、その報告は芳しくなかった。
勇者として全ての箱を開けてきました!と普段と変わらない様子で元気良く話すが、どことなくぎこちない笑みだ。時折無表情になる仕草が映るも、誰も気にしない。気にする余裕が、誰にも無かった。 - 30二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 19:45:14
このままじゃ、駄目だ。
全員が冷静じゃない。
ユズは今にも不安で押しつぶされそうな心を冷静じゃいられないと分かった上で、今一度冷静に一から現状を把握することから始めた。
1階にはC&Cやウタハ先輩、それに先生がいる。そもそも出入口にウタハ先輩によって封鎖されている。過剰に配置されたあのドローン達の包囲網を一切悟られずに掻い潜るのはネル先輩でも不可能だと言わしめたぐらいだ。
3階から4階に続く階段は壊されている。話しによるとこれはC&Cの仕業らしい。少なくともモモイがここに連れてこられる前には既に破壊したとこのこと。だとするとこれよりも上の階にはいけない筈…。
下にはいない。上にもいけない。だとしたら…。
要素を一つ一つ潰していき、やがてユズは一つの階段に目を向けた。階段の踊り場にある、開かれた窓。何故だかとても嫌な予感がした。
吸い寄せられるようにその窓に近づく。……僅かに窓枠が凹んでいる。経年劣化、ではなさそうだ。
まさか、と思う考えと外れて欲しいと願う心で埋め尽くされながら、恐る恐る窓の外を見下ろす。
そして、"それ"を見たことをユズは後悔した。 - 31二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 20:12:31
内気なユズでもこの場で自分まで取り乱してしまったらどうなるか。少なくとも碌でもないことになるだろうことは想像つく。
だからこそ血の気が引いた表情でも己を奮い立たせ、後悔しないようにできることを必死にやるのだ。ここで何もできなかったら、それこそ一生後悔するような気がしていたから。
ひゅっ、と息を飲む音が聞こえた。自身の物だけじゃなく、周囲からもだ。
「なによ、これ…」
「……」
「そんな……」
いつの間にか周りに皆が集まってたことに、ようやく気づいた。
振り返らなくてもわかる。恐らく、いや間違いなく皆が今の自分と全く同じ表情を浮かべているのだろう。
「…遠隔照合を開始します。椅子付近の血痕との整合率、99.797%。……モモイの、血です」
路地裏に広がる赤い血の華。2階に落ちていた血痕とはまるで桁が違う量の血液。
誰もがそれを見て口を噤んだ。周囲の空気が重く、寒く感じる。ユズの口内が渇き、鼓動の音が加速する。
様々な想像が否応なく掻き立てられ、そのどれもが当たらずとも遠からずなのだろうと叩きつけられる。
(まさか……飛び降…。う、ううん…嘘だよね、モモイ……?)
未だ姿を現すことのないモモイ。ほんの二日前までは「シナリオがなんにも思いつかないよー!」と悲鳴を上げていたモモイ。
あまりの日常との差異に現実味が感じられず、未だに何かの間違いなのではないかと疑いたくなる。
だが、それもアリスの一言で覆された。これは間違いなんかではない、現実なのだと。
今まで痕跡からでしか推測することができなかったモモイの現状が、如何に危機的状況なのかが決定的な形となって表れていた。 - 32二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 20:17:34
アカン(アカン)
- 33二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 20:20:29
なるほど、組織が問題にならないように杜撰な○体処理したとか思われるやつですね地獄ですね
- 34二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 20:33:06
元スレより束縛が激しくなってそう
- 35二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 20:39:03
どう見たって飛び降りor犯人に突き落とされた(誤解)です、本当にありがとうございませんでした
- 36二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 20:45:47
感想として犯人グループのどうしょうもないどん詰まり感とか無軌道さとかそういうのが実は好きだった……
- 37二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 20:51:04
ミレミアムに帰ってきたモモイ「私の葬式が開かれている!?」
- 38二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 21:03:33
もーー!あなたたちのせいだよー!!
- 39二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 21:18:12
「――ッ!!」
「ミドリちゃん!?」
足が鉛になったかのように誰も動けないでいた中、事態を動かしたのはミドリだった。
無言で駆けだしたミドリに驚きを露わにするも、ユウカ、ノアに続いて一足遅くユズとアリスがその後を追いかけた。
普段以上の速さで階段を駆け下りていくミドリに、半階層差の距離は空けられつつも決して離さないよう追従する。
踊り階段で交差する度にチラ見えするミドリの横顔に感情の色は無い。
1階を鎮圧が早々に終え、C&Cによる"事情聴取"はネルが上手く手綱を握っているので先生はその場を任せることにして。
拘束されているモモイを助けにいった面子が未だに戻ってこないことを心配した先生が階段を昇ろうとしたところで、その横を目もくれずミドリが駆け抜けていく。いや、もしかすると途中で先生とすれ違ったことにすら気づいていないのか。
一目で尋常じゃない様子のミドリに先生が声を掛ける暇もなく、更にその後ろからユウカ達が慌てて階段を駆け下りてきた。
「どうした?上で何かあったのか」
「モモイがいないんですッ!どこにも!」
「なに…?おいッ、何処に」
「ごめんなさいネル先輩!話しは後でします!ああ、もう邪魔よこのドローン!!どきなさい!」
「ユウカ、どいてください! ――光よ!」
目を丸くする二人にすれ違いざまにユウカは謝りながら先を急ぐ。
小柄で軽装なミドリだからこそ出入口を塞ぐドローンの隙間を潜り抜けることができたが、ユウカでは真似ができず後ろがつっかえてしまった。
今回の作戦にあたってエンジニア部選りすぐりのドローンを物ともせず鉄屑にして一行はミドリの後を追う。
その最後尾でユズは先程から感じる嫌な予感がドンドン強くなっているような気がしていた。最後に見たミドリの顔が脳裏から離れてくれないのだ。
(ミドリ……)
ただ光の宿っていない瞳に、ユズはこれまで以上に危機感を覚えた。 - 40二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 21:34:15
このレスは削除されています
- 41二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 21:35:05
ひとまず2シーン仕上げたんで、残りの1シーン+後日談は明日か来週末にでも書くとします。
想像以上にボリュームが膨れ上がってしまいましたが、ままええやろ!2スレか3スレ分ぐらいか付き合ってくださいな。
続きは反応みてボチボチ投下していきます。
もっと煮込みたいけど技量が追い付かない…… - 42二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 21:37:58
どうなるか全然予想つかなくて楽しみにしてます
- 43二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 21:38:54
おつおつ
この温度感の違いだいすき - 44二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 22:10:32
温度差わかりみ。
個人的には元スレ主の伏線回収の仕方が一番感動しましたね。あと分かりやすい表現方法も尊敬ポインツ。
技量というのでしょうか。いざ自分がやってみて難しさを実感しました。
このifSSで一番意識したところでもあります。 - 45二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 23:29:08
(おっ、とと……ぐへっ。い、ったたぁ~…この建物ボロボロすぎるよ~)
突然の眩暈に倒れそうになる身体を咄嗟に手摺に捕まって……老朽化が進んだ手摺が音を立てて外れ落ちる。敢えなくモモイの身体も一緒に地面に落ちることになってしまう。顔が汚れ、砂利が口に入るのも既に三度目だった。
恐らく過去に銃撃戦が行われたのかこのビルは至る所が崩れ落ちていたり、そこかしこに瓦礫が転げ落ちていた。穴が開いていた床に足を取られ転びそうになるのも数知れず。
正直、モモイの身体は体力の限界を迎えていた。既に脱出した(つもり)から緊張の糸が切れてしまったのである。
昨日の泣き疲れに続き、病み上がりから怒涛の誘拐、ガス、怪我。最後に決死の大ジャンプによる右肩の脱臼。というか思いっきり壁にぶつかったから軽い脳震盪も起こしているのかもしれない。この眩暈はそういうことなのか?
これらがほぼ絶え間なく連鎖したのだから限界を迎えたのも当然だろう。脱臼を除いて一つ一つの怪我は大したことないにしても無理をしていることに変わりはない。
気力だけで動いていた身体が、気が抜けたことで限界を迎えたのだ。今ベッドで横になってしまえば忽ち熟睡することだろう。
一昨日の自分に聞かせれば面白い冗談だと笑われてしまいそうな変化だ。まさか学校サボってゲーセンに行っただけでこんなことになるなんて夢にも思っていなかった。 - 46二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 23:37:50
元ネタからして重症だったのに更に悪化してる
- 47二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 23:39:19
このまま眠ってる時に見つかったら不味過ぎるな
- 48二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 23:55:54
(こんな姿、ミドリやユズ達には見せられないなぁ…)
普段の姿からかけ離れ、満足に歩くこともできやしない現在の姿をまじまじと俯瞰してなんともまあボロボロだと笑う。いったいどんな激戦を繰り広げてきたのだと。襲撃された時に負った怪我以外は自分の行いによって招いたものなのに。
とはいえ、皆には余計な心配は掛けたくない。見せる必要もないものを見せることはない。
結局携帯も壊されたからミドリへの返信もまだできていないままだし、早く無事だと知らせてやりたかった。きっと、皆すごく心配してるだろうし。朝早くから行動したからまだ昼にもなっていない。
ヴェリタスが異変に気づいて助けにきてくれるにはまだまだ時間が掛かるだろう。
それよりも自分で戻った方が早いか!ならとっとと帰ろっと。なによりソシャゲのデイリー更新は正午なのだ。それまでには帰らねば。まずは着替えて、誰にも見つからないように今の服を捨てて。シャワーでも浴びれば、ほら元通り。怪我についてはまあ、なんかそれっぽく適当に誤魔化せばなんとかなるだろう。きっと。
それに、なんだか今は無性にミドリの顔が恋しかった。
(最後のひと踏ん張り、がんばれー私~!) - 49二次元好きの匿名さん24/06/29(土) 23:57:55
モモイのこの鋼メンタル、何なの?
- 50二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 00:12:39
捨て...捨て!?どこに捨てた!?おいモモイ!まさかそんな離れてないところのそこら辺に捨てたのではないだろうな!?まずいぞこれみんなに見つかったら...!!
- 51二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 00:18:58
- 52二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 00:24:51
…これもしかして、一番まずいのはシャワールームで捨てた事では?
- 53二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 00:27:56
おちたモモイ遺体をシャワーで綺麗にして肉体だけを運び出したと勘違いするのか、何とか生きてたモモイが体を洗っていたところを誰かに襲われて連れ去られたと思うのか...
- 54二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 00:30:12
でもシャツとスカートを着替えてるから...服は買ったのかな、買ったらお店の近くのゴミ箱か裏路地に捨ててそうな
- 55二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 02:25:48
(どうやら描写が足りなかったようなので加筆修正します)
そうと決まれば早速シャワールームだ。
どうやら使われなくなって随分と時間の経った、という点さえ除けば至ってキヴォトスによくある「戦場跡地になったテナントビル」だ。
幸いにもシンプルな屋内構造だったのでお目当ての部屋は簡単に見つかった。
(汚っっっっっ、たなッ!!!)
ところで最後に使用されてから時間の経った水道設備を使ったことはあるだろうか?
水が出るのか確認の為に蛇口を捻ってみれば、シャワーヘッドから出てくるのは透き通った水とは程遠い、赤錆塗れの黄色く濁った汚水だった。
いくらなんでもこれで洗うのは無理だ。
せめて頭、あわよくばうがいや右眼を洗いたかったのだが…いやいや、こんなの綺麗にするどころか逆に汚くなってしまうだろう。口に含むなんて以ての外だ。
頭っから被らなくじゃなくて良かった…モモイは心底考え無しに行動しなかった自分を褒め称えた。
(お…?お、おぉ~~~!!出るじゃん、綺麗なの出てくれるじゃん!お湯は…出ないか。まぁそうだよね)
しかし、これでは身を清めるのは無理そうだな…、と諦めかけていたら黄ばんだ水が徐々に透明になっていくのをみてモモイの眼もキラキラと輝いた。
散々待ちかねていたシャワーを前にして女の子の行動は素早い。あっという間にすっぽんぽんになる。嘘だ。右腕を刺激しないように左手だけで服を脱ごうとしても指が上手く動いてくれなくて割と苦難した。
無事な下着類と靴下だけは濡れないようにして、もはや使い道のない血塗れ&超ボロボロなシャツとスカートはそのまま片隅に投げ捨てて水浴びする。
お湯が出ないのはこの際仕方ない、めっちゃ冷たいけども。血や土埃さえ落ちればこの際それでいい。
(……飲める、のかな…この水。できればうがいもしたいんだけど…) - 56二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 02:32:50
飲むのは、おすすめせんよ
- 57二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 02:40:13
衛生面的に傷がある状態の体を洗うのもやめた方が良いような気はする…
キヴォトスの住人ならある程度ならまあ大丈夫か…? - 58二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 08:18:32
逃走しようと飛び降りたけど捕まって酷い目(エ駄死)にあった可能性が高い下着姿のぼろぼろモモイを見つけたらもう皆大変な事になってしまうよ…
- 59二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 08:33:08
工場の敷地内とか、飲用ではないが手洗いうがいあたりなら使っていい水道とかあった気がする
- 60二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 08:36:51
飲用のみ水道管から引いて、それ以外は地下水を汲み上げているってパターンもある
- 61二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 08:44:44
シャワー室に赤茶色い跡が!!
- 62二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 10:38:39
これこの後下着姿でウロウロするの? さすがにモモイも女の子だから下着姿で行動するのは恥ずかしがるだろうけど、肝心の代わりの服や素肌を隠せそうな物が見つかるかどうか
- 63二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 10:55:36
大きなボロ布羽織って放浪者見たいな格好になりそうな
- 64二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 12:17:31
(…やめとこ。汚水が出てきたばっかだし、ちゃんと清潔な水でうがいをしよっと。汚そうだし…)
散々悩んだ挙句、最後には理性が勝って素直に汚れを落とそうとした瞬間、カラカラ…、と急速に水の勢いが失い遂には僅かな水滴しか恵まなくなった。
(はっ!?えっ、ちょっとなんで!?なんで急に水が止まったの!?まだ髪も半分しか洗えてないのにぃー!!)
あまりにも短いシャワータイム。それもその筈。
繰り返して説明するが、この建物は老朽化が進むほど寂れたものである。既に人は引き払い、利用者もいない廃区画にインフラを保つ必要はないのだ。至って合理的な話しだ。
せめて衣類を脱ぐ間はキチンと水道を止めていたらもう少し満足に洗えていたのかもしれない。
扉は開けっ放し、水は出しっぱなし、お菓子は食べカスを放置して服は脱ぎ散らかしたまんま。そんな日頃のズボラな精神が仇となってしまった瞬間である。
辛うじて目立つ汚れや口元の血は洗い落とせたが…依然として髪はパサついたまま、眼も腫れたままだ。そして先程よりも比べ物にならないほど全身びしょ濡れだ。タオルのこと忘れてた。
差し引きするとなんとかプラスに傾くぐらいか?と言えなくもない有様だ。 - 65二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 12:25:21
(う、ぅ~~…さ、寒い…)
水浸しで冷えきった下着姿のまま室内を荒らし、替えとなる衣服を探す。ついでに水気を取れる清潔なタオルもあれば僥倖。
このぐらい広ければ一着ぐらいあるだろう、そう思ってのシャワー決行だったのだが思いの外見当たらない。
退去前にしっかりと道具を撤去したのか中身の無い、スカスカなデスクが殆どだった。
(ちょっと…いや、かなりブカブカだけど仕方ないか…大きめのワンピースだと思えば…)
結局、モモイの背丈よりも遥かにオーバーサイズの男性モノTシャツを上から羽織るだけにした。実をいえば他にも衣類はあったのだが、どれも作業着といった感じでモモイの腰回りとは全くといっていいほどサイズが合わなかったのだ。常にズボンを握る訳にはいかない、それに激しい動きをしなけりゃ問題ないし。
(……透けてないよね?)
開放感に身を包まれ謎の高揚に襲われそうになった寸前でモモイは探索を打ち切った。
(ん…?待って、肩が上がらないのに袖ってどうやって通すの…?無理じゃない?)
右腕を袖に通すのは諦めて服の中に隠す。ひらひらと使い道を失った右袖が虚しく靡く。
まあいいや、となけなしの小銭は唯一存在する胸ポケットに入れて、丈のあっていない襟ぐりも銃を背負うことで肩紐に締め付けられる。
改めて完成。モモイver.私服の誕生だ。
最低限を若干下回る程度には見た目を整えられたので良しとしよう。不満はあれどもうどうしようもない。
これで誰とすれ違っても問題なく…不審に思われるだけだろう。しかし一目で騒ぎになるほどではない。だからヨシッ!
(それじゃあ、帰ろっと!)
ただ、廃ビルでシャワーを浴びて着替えただけ。モモイ視点ではそれだけのこと。
第三者視点ではそこに「水の出ないシャワー室で」が付け加えられるがモモイ視点では誤差の範疇だった。 - 66二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 12:27:25
アウトォ!!
ただの事後現場ァ!! - 67二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 12:28:53
濡れ場(意味違)
- 68二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 12:29:11
地獄の道を突き進む…
- 69二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 12:30:08
誰よそのシャツ着せた男!!(殺意)
- 70二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 13:09:06
- 71二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 13:10:39
- 72二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 13:16:03
右肩は上がらないけど右腕自体は動かせるからたぶん大丈夫……なはず
- 73二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 13:20:00
まさしく監禁されてましたみたいな格好じゃん…
お労しすぎるよモモイ… - 74二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 13:20:12
男物でボタン逆だし余計にボタン留められてなさそう
……その方が見た目の悲壮感ありそうだな? - 75二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 13:23:02
サプライズ団長が来て見つけて救護してくれないかなぁ(儚い希望)
- 76二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 13:26:00
いや読み直したら右腕動かなくなったって書いてあったわすまん
- 77二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 13:27:18
全てが終わった後、お外出歩くの許してもらえる?
- 78二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 13:31:39
- 79二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 13:32:48
- 80二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 13:36:58
- 81二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 13:40:26
- 82二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 13:42:10
しかし、たとえ何ともならないとしても今はそのメンタルで先に進まないといけないのだからね…
- 83二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 13:44:59
たとえ本当に「何もなかった」と言っても、
本当にそうだという証拠が無い限り
(1) 防衛本能として「何かされた」ことを忘れている
(2) 皆を気遣って「何もなかった」フリをしている
のどちらかとしか受け取られなそう… - 84二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 13:46:01
- 85二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 13:48:37
やめなよ>>84!
いくらなんでも……あんな所を確認されるのはすっごい恥ずかしいんだよ!?///
- 86二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 13:51:02
服装の応急措置も済んだことで心機一転。廃ビルから出た直後。
「っ…!?」
曲がり角の先に男の姿、自分を拉致してきた連中の一人を目撃してモモイは咄嗟に声が出ないように口を抑えた。いつもの癖で動かない右腕も無意識に動かそうとしてしまい、痛みに呻き声が漏れ出てしまい焦ったが幸いにも男が気づいた様子はない。
静かに音を立てないよう壁に背を預けて様子を伺う。視界の滲んでいない左眼だけを角から出すように覗き込む。
すぐ近くにいる男は煙草を吹かせてボーっと空を眺めている。どうやらモモイの脱走に気づいて追いかけてきた訳じゃない、ただのサボりのようだ。
それが分かりモモイは安堵した。
気づかれていないのなら幸いだ。このまま煙草を吸い終わるのを待って男が立ち去るまで隠れていればいいだけのこと。突如齎されたプレッシャーが抜けていく。
疲れているのだから驚かさないでほしい。内心で軽く愚痴るも隙あらばチャンスを逃さない為にも男の一挙一動を観察する。
モモイを拉致してきたビル、というよりもあの横暴な主犯格から見えないところで煙草を吸っていることにこの男の魂胆が垣間見える。
まるでシナリオの為!とか言いながらゲーセンでサボっていた自分に通ずるところがあってたまらず自己嫌悪。他人から見た自分の姿を見せつけられているような気分だった。今回はたまたまそれがモモイの逃走先に重なってしまい、自身のツキの悪さを実感する。
これからはもう少し真面目に生きよう…、と三日で忘れそうな決意をしながら男が煙草を吸い終わるまでモモイはそのまま身を隠すことにした。 - 87二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 13:54:21
※二次創作、もとい三次創作なので極力元スレと矛盾がないようにしたいのですが、どうしてもサボり男の煮込み方が難しかったので元スレからサボり地点を変更しています。
あと一部キャラ崩壊的なサムシングがあります。寛大な覚悟でゆるしてわっぴー - 88二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 13:59:34
今回もコイツ(サボり)がミレニアム視点でモモイに酷い事()したクソ野郎に思われるのかしら……
- 89二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 14:09:14
先程までは(比較的)軽傷の積み重ねだった為、それとなく心のどこかに余裕があったのだが、右肩を脱臼するという人生で経験したことない大怪我をしたことでその余裕は既に消え去っている。いくら気分は明るくとももうモモイに余力は残されていないのだ。
頼むからもうこれ以上面倒事は起きないでよ…、と辟易としているとモモイの背後の通路から人影が見えた。滲む右眼に加え距離もだいぶ離れているせいでよく見えないが…まずい、複数人だ。恐らく周辺を探しているのだろう。そしてそれは運悪く……モモイと男のいる方へと歩いてきた。
(勘弁してよー!もうーー!!)
モモイは絶叫した。
後はもう帰るだけだというのに最後の最後に面倒なことになってしまった。このまま今のビルにとんぼ返りしても万が一虱潰しに探されてしまったら見つかるのも時間の問題だろう。ヴェリタスを待つにしては多分、いや間違いなく間に合わない。
ならば、と曲がり角の先の男に視線を戻す。
男が口に加えてる煙草はもう殆ど先が残っていない。だったら直に吸い終わるはずだ。その可能性に賭けてモモイは男が立ち去るのを今か今かと待った。 - 90二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 14:13:57
- 91二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 14:27:16
一番のサボりが組織のリーダーだったりして
- 92二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 14:36:58
- 93二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 15:30:51
科学技術に特化した学校なんだから他所よりも医療技術頭一つ抜けてそうなのにね。モモイ意識不明の時も確かシャーレの医務室に運ばれたし。その辺は基本ロボット任せなのかな。
- 94二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 15:37:23
- 95二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 16:04:17
(うぇっ!?嘘…、に、二本目ぇ~~!?!?)
モモイは絶望した。
あろうことか男はその場で新しい煙草に火をつけて加え始めたのだった。よくよく見ると足元には五本や六本じゃきかない吸い殻が落ちていた。いったいこの男はどれだけの間煙草を消費していたのだろうか。
後ろの喧騒が大きくなる。振り返ると誰かが此方に指を向けている…ように見える。あちゃあ…もう見つかっちゃった。どうやら日和るのはここまでらしい。
ぼんやりと見える視界から男達の背丈が随分小さいことから恐らくまだ距離が離れているようだ。逃げるなら、今しかない。
複数犯に追いかけ回され、それを振り切ることがどんなに難しいことか早朝に痛感したばかりだ。
背後の複数犯に追いかけ回されるぐらいなら、なんとしてでも目の前のサボり野郎一人を相手に振り切った方が勝算は高い。
モモイはここが正念場だと確信して勝負に出た。 - 96二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 16:07:47
あっ
- 97二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 16:09:49
- 98二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 16:12:51
向かっててきてるのはおそらくミドリ達なんだろうけど、呼びかけながら向かってきてるはずなのに聞こえてないってことは耳も異常きたしてない?
- 99二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 16:58:11
ありがとうございます!読み返すのすんごい楽になります!
- 100二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 17:49:44
「……ぁ?………はあっ!?ちょ、おい待てガキ!!止まれッ!!」
曲がり角から飛び出してサボっている男の前を横切る。当然のことだがバレてしまった。
左足から激痛を訴えるのを無理矢理無視して今出せる限りの全力で走り抜ける。
男からするとモモイを拘束した時点で今日のタスクは完了していた。だからこそこうしてサボっていたのだが、そのモモイが突然に目の前に現れたのである。動揺するのも仕方ないだろう。故に、反応に遅れてしまった。
それでも足や肩……機動力に直結する部位を負傷しているモモイの動きは遅い。どういう訳かシャツの中に腕を隠しているのは気になるが…肩を押さえ片足を引き摺るようにして走る姿はいっその事憐れみを誘う。どうやら向こうの連中は随分とこのガキで"遊んだ"みたいだ。これならすぐ追いつける。
あっという間にモモイの背後に追随した男は押さえてる右肩を"あえて"掴もうとして、考えを改めた。このまますぐに捕まえたら勿体無いことに気づいたのだ。 - 101二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 17:51:26
オイオイオイ、もう原型すら留めない事確定したわコイツ
- 102二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 18:09:22
- 103二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 18:14:28
どうしましょうね?
- 104二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 18:16:21
え えらいことや……せ、戦争じゃ………
- 105二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 18:23:36
これで普通に捕まえてたなら同情の一片もあったのになぁ…
あっそれ!ミーンチ!!ミーンチ!! - 106二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 18:40:14
これミレニアムの皆さん感情抑えられます?
- 107二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 18:43:39
(待てよ…。これは、むしろ好機じゃないか?)
何があったのかは知らないが、こいつは拘束されてた筈だ。こんなのに逃げられるぐらいよっぽどのヘマを仲間がしたのか、それともこいつはこの状態でもあいつらを出し抜けるぐらいの機転の利くのか。
どちらにしてもこいつが脱走しているのは事実だ。つまり、あいつらのミスだ。
このままこいつを捕まえて、どうなる?他人のミスを俺が尻拭いしてやったのだと手柄を主張して、それでおしまいか?
そうしてまたこいつに逃げられたらどうする。こんなボロボロの状態でも逃げ出そうとする奴だ。絶対にまた抜け出そうと画策するに違いない。手口が分からない以上逃げられないとは限らない。
やっぱりお前も同じ失敗をしたじゃないか、と嗤われ折角のチャンスをフイにする訳にはいかない。
パニックから落ち着きを取り戻した男の表情に徐々に嗜虐的な笑みが浮かぶ。
そうだ。逃げられることはない、捕まえようと思えばいつでも捕まえられるんだ。だったら万全を期するべきだ。
捕まえた後に二度と逃げられないよう着実に体力を削って、それから捕まえよう。完全なガス欠を狙って、それから念入りに心をへし折って、それでチェックメイトだ。
そう判断した男はモモイとの一定の距離を保って追いかけ続けることにした。 - 108二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 18:46:27
- 109二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 18:49:54
- 110二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 18:51:45
ああ覚悟のうえだ
- 111二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 18:52:32
(…………安価1段ミスってた)
- 112二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 18:52:43
なるほど、だから激辛麻婆豆腐の匂いがするのか
- 113二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 18:52:51
- 114二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 18:55:52
- 115二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 18:59:17
(例の一護の画像)
- 116二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 19:15:39
俺はあの馬鹿共と違って頭が良いんだ。あらゆるパターンを考えて万が一すらも逃走は許さない。態々弱った獲物がノコノコと狩人の前に姿を現したらどうなるか教えてやろうじゃないか。
加虐心に満ちた考えをしていた男の接近に今更気づいたモモイが後ろ手で何かを投げつけてきた。
(ふん、やはり隠し玉を持っていたか。浅い考えだな)
咄嗟に遮蔽物に隠れ、投擲物から身を守る。キヴォトスで生きる上で染みついた習性だ。予想通り無策で現れた訳じゃないらしい。しかし、いつまで経っても爆発する気配がない。
すぐに身を隠せるよう投げられた投擲物を慎重に確認する。地面に落ちていたのは手榴弾などではない。ただの数百クレジット。モモイのポケットに入っていたゲーセンで両替したお金だ。自販機で銃弾を買うのも断念し、今この場で逃げ切るというモモイの決意の表れである。
ピキッ、と男の額に青筋が浮かび上がる。
「……ッンのガキがぁ!!ビビらせやがってェ…!」
男が警戒している間にモモイの姿は遠くなっていた。だが、それでも十分に追いつける範囲内だ。髪から水滴も滴っているので万が一姿を見失っても追跡は容易だろう、焦る必要はどこにもない。
弱りきった弱者なんかにコケにされた苛立ちと舌打ちを同時に、追いついたら一発顔面にぶちかますことに決めた、その時。
銃声。
そう認識したと同時に男の後頭部に途轍もない衝撃が襲う。何が起きたのかすら理解する間もなくもんどりかえる。あまりに強力な一撃に身体が何回転も宙返りして吹き飛び。
だが、男にとってはこれで良かったのだろう。壁に沈み込むより前には既に気を失っていたのだから。
「――ねえ」
男はこれ以上の地獄を知ることは無かったのだから。
「お姉ちゃんをあんな風にしたの、お前?答えてよ。答えろ」 - 117二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 19:17:39
- 118二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 19:19:52
男の来世に期待してください!
- 119二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 19:24:55
アカン、ミドリが怒りのあまり○人をしてしまう!
- 120二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 19:27:15
これ事が済んだらモモイ監禁ルート待ったなしやん
- 121二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 19:54:53
女の子の笑顔以外からしか摂取できない栄養素がある
- 122二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 21:13:26
走る。無我夢中に、全力を超えた全力疾走で。
後ろからビルを飛び出した私を呼び止める声が聞こえるが、それを無視する形で先を走る。血を分けた家族、大切な姉の元へ。
始まりはユウカから送られてきたたった一つのメールだった。
たかが一通。されどそれだけでいつもの『日常』が呆気なく崩されてしまった。
体調不良で休む。至ってよくある話だが、それを起こしたのが体調不良とは無縁なあの姉なのだ。風邪を引いても少し目を離した隙には布団の中でこっそりゲームをする、そんな人なのだ。
だからこそ珍しいと思った。お姉ちゃんでもそんなことあるんだな、って。でもきっとすぐに元気になって朝起きたら人の気も知らないで平然とゲームしてるんだって。
どうせいつものパターン。そうして自分を納得させて寝ようとしてるのに、いつまで経っても眠気が訪れない。瞼を閉じるだけの寝たとはいえない浅い睡眠。 - 123二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 21:27:12
いっその事、こうなったら起きていよう。寝てるフリをして帰ってきたら驚かしてやるんだ。たまにはこっちからやり返そう!って思ったのに、それでも部屋の扉が開かれる気配は無くて。気がついたら朝になってて。なのに誰も帰ってこなくて。
いつもなら熟睡しているような早朝も早朝。突然鳴り響いたメールの着信音。
《ミドリ、ごめんね》
なんで、こんなことになっているんだろう。どうして、お姉ちゃんが。
目の前に広がる惨劇の跡にして立ち尽くす。
致死量とは程遠い血量。それにこの場にも、ここにも来る道中にも姉はいなかった。だから、まだ何処かにいるんだろう。
…キヴォトスでは滅多に起こりえない、これほどの出血をするような大怪我のまま、何処かに。
感じたことのない程の激情が渦巻いていることに、自分の中にいる別の自分が冷静に驚いている。『ああ、私ってこんなに怒れるんだな』って。怒り?いや、なんかちょっと違う気がする。勿論怒っているのはそうなんだけどそれだけじゃないっていうか。なんだろう。初めて持て余す感情だから上手く言い表せれない。
…まあ根底にあるお姉ちゃんが大事だったって気持ちに違いないからどうでもいっか。 - 124二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 21:33:09
内なるドスミドリが覚醒してしまったか
- 125二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 21:37:26
殺意の波動に寝覚めたミドリ
- 126二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 21:39:19
- 127二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 23:02:21
周りでユウカ達が何か言ってるけど頭に入ってこない。耳を通じてそのまま頭の中を通り過ぎていってるみたい。音を言葉として認識できない。ただ煩いから少し黙っててほしい。
………すると今度は驚くほど辺りが静かになった。
不思議だ。まだ何も言ってないのに。喋らなくても伝わるなんて、まるでゲームみたいだ。
どうでもいっか。そんなの。それよりもお姉ちゃんの痕跡を探すのに集中しやすくなったからそれで十分だ。
ぴちゃり。歩く度に粘ついた水音だけが周囲に木霊する。靴が汚れるのも構わず私は手掛かりがないか探し続けた。
そして、それを見つけた。
「―――ぁ」
震える膝を動かし、それに近づく。たったの数歩の距離なのに、やけに遠く感じる。
辿り着いた時には膝だけじゃなく全身が震えていて。カタカタと奥歯の金切り声が煩わしい。
血塗れの空間。壁際と電柱の陰に隠れるようにして血の池に落ちていた靴。
トレードマークのピンク色の可愛らしい靴。見間違える筈がない。お姉ちゃんの物だ。
拾おうとして身体に力が入らずそのままへたり込んでしまう。服が汚れてしまうけど最早どうでもいい。震える手でそっと拾い、抱きかかえる。
「――ぁあ……ぁ、ぅ…」
ポタポタと透明な雫が赤い血に落ちて混ざっていく。
分かっているのに。お姉ちゃんは無事だって頭では分かっているのに。
何故か。涙が止まらない。 - 128二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 23:20:03
血の池って…そんなに吐いたのかモモイ…
- 129二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 23:20:34
モモイーーー!早く来てくれぇ!じゃないと貴方の大切な妹の心が完全に壊れちまう!
- 130二次元好きの匿名さん24/06/30(日) 23:34:01
- 131二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 00:20:22
- 132二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 01:27:02
逃げたモモイが直ぐ見つかって捕まるか、ミドリ達を撒いて例のシャワールームが先に見つかるか、オラワクワクすっぞ!
- 133二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 07:47:39
自分よりキレてる人がいたら自分は落ち着く理論でミドリ以外が冷静になれれば……
- 134二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 11:14:09
それか先生かネル先輩に止めてもらうかやね…>>39を見る感じ、何かを察してユウカ達と行動してそうだし
- 135二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 12:53:12
レス♡の付き具合でやっぱり皆激辛麻婆豆腐が好きなんだなぁ…ふへへ
平日はちょっと更新頻度落ちますので展開予測や悲鳴など適当にあげててください
くっそ細かい伏線に気づいてそうな視聴者全知もいてビビってますが、仕事中スマホ片手にコメ欄阿鼻叫喚さを見て愉悦ってます - 136二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 13:45:29
これ日常に戻れてもミドリが過保護になっちゃうやつ…
でもモモイは止まんねぇからよ…
じゃあ外に出さなきゃいいじゃんね☆ - 137二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 14:32:49
- 138二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 14:57:21
やっと追いつけた 今回も地獄みたいな勘違い起こってるけど前よりも深刻で今後のモモイどうなるか楽しみすぎる
- 139二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 15:24:47
温泉開発部部長までいて草
- 140二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 17:45:11
片足靴下だけだから逃げるときガラス片とか踏んで悲惨なことになりそう
- 141二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 19:41:41
視界も悪いもんね
- 142二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 19:43:46
終わったら全力で甘やかすぞ!
- 143二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 19:51:31
甘やかすで終わりますかね…
- 144二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 19:59:35
モモイが近場のコンビニに行くだけで何かスイッチ入ったかのごとく取り乱すミドリか…
なんかそそります - 145二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 20:03:22
どれだけゲームに熱中してて「もう少しー」と言っていてもモモイが出かけると言った瞬間すぐにゲームをやめてモモイに着いていくミドリだって?
- 146二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 20:09:59
実際(ゲームのシナリオ作成に煮詰まったからサボりだったとはいえ)ちょっとゲーセンに遊びに行っただけが始まりだったからね、ちょっとお菓子買ってくる、ちょっとジュース買ってくる、ちょっとゲーセン行ってくるってだけでも不安になって追いかけるミドアリは居る
- 147二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 20:28:49
- 148二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 20:35:23
「ちょっとシャーレに行ってくるね」とメッセージだけ残して一人で向かった日には……
- 149二次元好きの匿名さん24/07/01(月) 21:00:38
金のガチョウか何か?
- 150二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 01:06:18
落ちそう
- 151二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 01:17:42
なんかifルートが生まれてる!熟成された香り立つ地獄だぁ…
- 152二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 01:19:25
ヴェリタスは各地の防犯カメラをハッキングした
エンジニア部は稼働出来る限りのドローンを飛ばした
セミナーは学園内の協力できる部活に頭を下げた
C&Cも各自モモイが行きそうな遊び場を見て回った
モモイは新店舗のゲーセンで台パンしていた
その後ミドリが見つけて盛大に泣いた
- 153二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 07:37:05
保守
- 154二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 07:58:40
うわーん!規制ほんまいい加減にしろよな花岡ァ!
アリス、ミドリを泣かせます! - 155二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 08:02:25
(うおおおようやく解除されました!折角なので>>154は残しておきます…偉いぞ、花岡ァ…)
赤い空間に一人、緑の少女が座り込んでいた。
普段の様子とはかけ離れた深い悲しみを宿した瞳は呆然と虚空を見つめ、瞼を閉じることもできずただ涙を零す彼女の心境は計り知れない。
そんなミドリを前にしてユウカ達は何もすることができなかった。微動だにしないミドリに掛ける言葉が見つからなかったのだ。
辺り一面に飛び散った血が一層事態の深刻さを表している。
3階から飛び降りるなんて正気じゃない。キヴォトス人でもそんなことすると無事では済まないなんて分かる筈。いくら切羽詰まっていたとしても、だ。
…それとも。その逆なのか。そこまで正しく理解しての行動だったとしたら。それほどなまでにモモイは追い詰められていたのか。
生還を目的としたのではない"飛び降り"。もしそうなら…ユウカとしても我慢できそうになかった。
『後者のガスが使用済みで見つかった』
後者のガス。精神作用のガス。禁じられた劇薬。あろうことか奴らはそれを更に改良しようとしてモモイに使っていた。
2階に転がっていた血痕や水痕を始めとした様々な形跡が脳裏に過る。例え本人ですら抱かない僅かなストレスであろうと過剰に増幅させるというのに、害意も以って悪用なんてされた時にはいったいどれほどのストレスになるのだろうか。間違いなく正気ではいられないだろう。
そして負荷をかけられた結果が、"これ"だ。
- 156二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 08:04:35
何故モモイがこんな目にあっているのか。一方的に事件に巻き込まれただけのモモイがなんで騒動の中心にいるのか。
ぐつぐつと腹の底から怒りが煮え滾ってくる。こんなことならあの犯人共を一発殴っておくべきだった。あいつらのせいで、モモイが…ッ!
(違うでしょう…!)
ユウカにしては珍しい攻撃的な感情を抱きながら、そうじゃないとかぶりを振る。なにもこんなことになった責任の一端は自分にもあるのだ。
昨日のモモイの様子が普通じゃなかったなんてこと分かりきっていたのに。
もしあの時ユウカが寝ていなかったら。起きたモモイに気づいていれば。モモイから一目も離さずにしていたらこんなことにはなっていなかった。
現実的に不可能だと分かっているのに、IFの可能性を考える度にそう感じて止まなかった。
それでも、と。怒りの矛先が自分にも向いていたとしても、血の気が引いて青褪めたとしても。
今はそれよりもやるべきことがある。考えなくてはいけないことがある。
これほどの出血量なのだ。急がないと本当に不味いことになってしまう。"そう"なってしまった時、ユウカは本当に自分の事を許せなくなってしまうだろう。 - 157二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 08:11:07
なんとか冷静に頭を回すんだ
まだ乾ききってないなら近場にいるはずとか、気づけることもあるはずだ - 158二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 08:42:17
一つでも命を失ったら、私達はもう後戻りできなくなる…
- 159二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 12:01:42
本√でもユウカってよく病まなかったなと思ったけどこれはさすがに病む。
- 160二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 16:15:39
保守
- 161二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 16:17:39
俺はそれを望んでいない
- 162二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 16:21:10
モモイは楽観的な物事の考え方を今すぐ捨てろ
- 163二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 16:25:12
「まだ近くにいるかもしれないわ。手分けして探しましょう!……ミドリ」
モモイの行方を探そうと各自が動き始めようとする。それでも未だ動く気配がない彼女にユウカはある決断をした。
モモイのことが心配なのは当然だが、目の前で心が傷つけられているミドリのことも放っておける訳がない。姉の靴を抱いて俯くミドリになるべく優しい声色で話しかける。
「なに…?」
「あなたはここで休んでおきなさい。気づいていないだろうけど隈、すごいことになってるわよ。…その様子だと寝てないんでしょ?」
事実だった。
ユウカからのメールに続き今朝に至るまでミドリは一睡もしていなかった。それに加えてモモイ救出作戦の間も常に身体は長時間の緊張状態に支配されていた。
寝不足に加えて心因性ストレスの過負荷によってミドリの体調は著しく悪かった。良い訳がなかった。 - 164二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 16:45:44
ユウカだってちょっと寝たとはいえあまり眠れてないだろうに…ええ子や…
まぁミドリはこの後暴走する訳だけども - 165二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 17:07:34
なによりもユウカ達の想像を遥かに上回るほどモモイの状態が不味いことが確定したのだ。
このままモモイに何かあった時、きっと一番傷つくのはミドリだ。そしてこれまでの状況証拠的にその"何か"が起こってもおかしくない。もしそうなった時、ミドリは今以上に傷つくことになるだろう。…きっと二度と癒えないぐらいに。
そう思っての発言だった。直接"何か"を見ないで済むようにしたユウカの配慮だ。
だがそれは間違いだったのだと思い知らされた。
「モモイのことは私達が見つけるわ。だからミドリは――っ。 …いえ、なんでもない。今のは忘れて」
「うん」
「………」
ミドリが愛銃を手放し、再び虚空を眺める。その瞳に一瞬だけ見せた激情はない。
常軌を逸した振る舞いに場が静まり返る。沈黙が肌を刺す。
その対象となったユウカは自身に向けられた銃口と同じほど昏い眼を思い返してぶるりと身を震わせる。…どうやらモモイを急いで探す理由がまた一つ増えてしまったようだ。
敵意。ミドリがあのような目をすることも、ましてやそれを自分に向けてくるなんて思いもしなかったユウカは口を噤んだ。
邪魔する者は誰であれ関係ない、今のミドリにはそう思わせるだけのものがあった。
今度こそ本当に掛ける言葉の無くなったユウカが、このまま何もせずに立ち去るべきかどうか悩んでいるとアリスの一報が届いた。
「見てください!モモイがいました!」 - 166二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 17:24:03
ミドリに少し暁のホルスの心がインストールされるか?
- 167二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 17:58:12
これアリス見てくださいて言ってるから多分モモイが脱いだ服だよね
終わった…… - 168二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 18:02:27
もし脱いだ服だったらシャワー室か
なるほどね - 169二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 18:06:51
- 170二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 18:14:34
- 171二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 18:15:10
本√でもそうだがモモイ本人と周りの認識の差がエグい
- 172二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 18:17:02
- 173二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 18:18:33
- 174二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 18:36:28
- 175二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 18:38:02
あーあどないせいってんねんこれ
- 176二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 22:19:39
まだだ・・・まだワッピーエンドにだって持っていけるはずなんだ・・・
- 177二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 23:23:09
- 178二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 23:36:53
- 179二次元好きの匿名さん24/07/02(火) 23:52:44
- 180二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 00:43:07
出血とか疲労とかで軽い障害を起こして敵味方判別つけなくなりそう
- 181二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 06:09:31
- 182二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 08:55:35
- 183二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 12:05:36
その吉報にユウカが振り返り、ミドリは大きく肩を揺らす。全員が反応せずにはいられなかった。
アリスの指差す先には遠目からでも分かる満身創痍のモモイの姿が。それを見て全員が息を飲んだ。
普段とはまるで違う恰好、それはいい。保健室にはモモイのジャケットやヘッドセットといった特徴を示す物だけが置き去りになっていたのだから。
だが、全身を水浸しにして髪留めのリボンも半分失って髪も荒れ、右肩を押さえているのは何事か。右肩を押さえる手はカタカタと小刻みに震え、至る所がびしょ濡れなのに額だけはそれと異なる冷や汗が滝のように流れている。昨日の風邪がぶり返してきているのか息も荒く頬も蒸気して。目元も泣き腫れていたのに今では右瞼が不自然に腫れ上がっていた。
傍目から見ても正常とは程遠い、重症としか言いようがない有様だった。
アリスがモモイのことを呼びながら駆けだすのを尻目に、唯一ユウカだけは前日のモモイを見ていたので違和感を覚える。
制服ではない?昨日と服装は変わらない筈なのに何故、モモイの服装が変わっているのだろうか。趣向やサイズという二側面でも明らかにモモイに合っていない薄汚れたTシャツに。
事前に部屋に戻って着替えた?否、それは違う。もし寮に帰っていたらミドリが黙っていない。彼女は一晩中寝ずに待っていたのだから。
だとすると、部屋ではない場所で着替えたのか。それには一度脱ぐ必要があって――え。
伸びる思考は予想外の出来事によって中断された。 - 184二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 12:10:35
- 185二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 12:11:22
- 186二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 12:14:21
- 187二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 12:15:06
なお当のモモイさんは「あーあサボった天罰だなこりゃ」くらいにしか思ってない模様
- 188二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 12:15:48
男の命を心配した方がいい?
- 189二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 12:19:54
特に身に覚えのない余罪が増えたところで問題なかろう
- 190二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 12:26:34
ただ元スレでも度々言われてるけど
ここで救出班の誰かが怒りのまま殺しをするなんて事態になったら
「サボった結果巡り巡って友達を人殺しにしてしまった」という業をモモイが背負ってしまうことになるので…… - 191二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 12:30:39
されたんだ!
こいつレされたんだ! - 192二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 12:34:07
すぐ人を殺したがるのはあにまん民の悪癖よ
ロボットだったら修理できるから手足もぐだけにしとけ - 193二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 12:42:38
冷静に考えれば全身ずぶ濡れになったから服だけでも着替えたって判断できるかもしれないけど無理だよなぁ
- 194二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 12:45:44
- 195二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 12:53:27
- 196二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 12:54:22
- 197二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 12:55:32
かぶっちゃって草ァ!その優しい心遣い、これからも大事にしてね
- 198二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 12:57:03
規制かなと思ったけどやっぱそうじゃったか
- 199二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 13:00:53
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- 200二次元好きの匿名さん24/07/03(水) 13:01:05
このレスは削除されています