たまには母親らしいこともしないとね

  • 1二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 15:20:15

    むかしむかし、あるところに……

    ……えっ、今日はママのトンチキ童話の気分じゃない?別の本を児童館で借りてきたから読んでほしい?

    やれやれ反抗期かい悠仁?しょうがないなあ……


    ※今回は配役ほぼ固定の予定です あんまり安価取らないと思います

  • 2二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 15:20:53

    やったー!トンチキ童話d…トンチキ童話じゃない!?

  • 3二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 15:25:59

    前言ってた五条と夏油の配役固定のやつか!
    楽しみに待ってたんや

  • 4二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 15:32:09

    悠仁いくつなんだ…

  • 5二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 15:32:25

    がたんごとん……がたんごとん……


    五条「……あ゛?」


    五条悟が目を覚ますと、そこは列車の中でした


    五条(どこだここ)

    五条(寝てたの、か?)

    五条(……??)

    しかしいくら頭を捻っても、眠たい目を擦ってみても、目覚める前のことは一向に思い出せないのでした



    「おはよう」

  • 6二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 15:34:40

    ジョバンニ!

  • 7二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 15:35:09

    (元ネタ見て)
    あっ(察し)

  • 8二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 15:35:25

    銀河鉄道の夜か

  • 9二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 15:51:32

    試しに元ネタ見に行こうと思ったら音読動画で2時間あったわ

  • 10二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 15:54:41

    このレスは削除されています

  • 11二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 15:59:18

    五条が聞き覚えのある声に顔を上げると、そこには同じく見覚えのある顔がありました


    夏油「ずいぶん気持ちよさそうにアホ面晒してたけど、寝不足だったのかい」

    五条「一言多いんだよ」


    五条(──そうだ、俺は傑と出掛けてたんだった)

    五条(何かまだ頭がぼんやりしてっけど……コイツも居るなら大丈夫か)


    そう結論づけると同時に、五条は車内を見渡します

    どうやら乗客は自分と夏油の二人だけのようでした


    夏油「終着駅はまだ先らしいよ」

    五条「終着駅……」

    五条「俺達、どこに向かってるんだっけ?」

    夏油「……ね、見てよ」


    夏油は五条の問いには答えず、そっと車窓を指差しました

  • 12二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 16:08:02
  • 13二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 16:18:45

    生きとったかワレ!

  • 14二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 16:33:29

    五条「……!」


    窓の外に目をやると、そこにはどこまでも広がる夜空がありました 恐ろしいまでに真っ暗な空を、無数の星の粒が飾り立てています

    無限に膨張する銀河を線路に、列車はゆったりと天を翔けているのでした


    五条「すっげえ〜……」

    五条「……いや何で!?何で飛んでんの!?」

    夏油「銀河鉄道だからねえ」


    驚く五条をよそに、夏油は至って平然とした様子です

    まるでこれが当然のことのように


    夏油「そうだ悟、いくら綺麗だからって窓を開けてはいけないよ」

    五条「何で?」

    夏油「空気が無いから死ぬ」

    五条「こんなファンタジー空間なのにそこだけリアルなのかよ」

  • 15二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 16:37:41

    絵も相待って本当に絵本みたいで綺麗やね

  • 16二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 16:42:32

    おそろしく速い青のすみか オレでなきゃ見逃しちゃうね

  • 17二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 16:54:29

    >>16

    って事は歌的にも元ネタ的にもこれから取りこぼ…

  • 18二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 17:07:34

    銀河鉄道の夜、綺麗で良い話だよね

  • 19二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 17:22:35

    五条「マジでどういう原理で動いてんだ……」

    夏油「どうせ考えても答えは出ないし、難しく考え過ぎない方がいいよ」

    五条「それ、オマエが言っちゃう?」

    夏油「なにその顔」


    五条「──綺麗だな」

    夏油「ああ」


    それからしばらくの間、二人は黙って窓の外を眺めていたのでした

  • 20二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 17:26:55

    五条の楽しげな横顔と夏油の優しげな顔がとてもいい…

  • 21二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 17:52:49

    五条「車内販売とかねえの」

    夏油「多分無いんじゃないかな……あっ」


    ふと、のんびりと運行を続けていた列車が停止します 窓の外に目をやると、無人のプラットフォームが見えました 規則正しく並んだ電燈が、辺りをほんのり白く照らしています

    ホームにぶら下がった時計の針はきっかり11時を記しており、その下には【二十分停車】と記されているのでした


    五条「ここが終点?」

    夏油「いいや」

    首を振る夏油が駅の看板を指差します しかし、そこに記されているはずの駅名はすっかり掠れてしまって、五条の眼には読み取れないのでした 夏油には分かっているのでしょうか?


    五条(俺達はどこに向かっているんだろう)


    五条の中で、ひとまず仕舞い込んだはずの疑念が再び浮かび上がります あるいはそれは不安と呼ぶのかもしれません


    夏油「悟」

    夏油「少し降りてみないか?」

  • 22二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 18:05:14

    諸々やることがあるので次の投稿まで時間空きます

    呪術廻戦展落ちました 殺したければ〜のネームをこの目で確認したい人生でした

  • 23二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 18:05:52

    >>22

    ドンマイです…

    気長に待っときます

  • 24二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 18:09:26

    おつおつ
    共に図録通販を待とうぜ!

  • 25二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 19:27:01

    >>1

    羂ママっていつも読んでる本がトンチキだって自覚はあったのか…

  • 26二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 20:17:50

    待ってました!!続き楽しみ!!

  • 27二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 22:20:10

    夏油「君の終点はここじゃないが、少しくらいは寄り道したって構わないだろう?」


    五条「でもオマエ、さっき外は空気無いから死ぬって」


    夏油「駅周辺はセーフらしい」


    五条「設定ガッバガバじゃねえか」


    夏油「まあ最悪悟は無下限あるから大丈夫だよ」



    やいのやいのと言葉を交わしながら、五条達はホームに降り立ち、改札口へ向かいます


    やっぱり駅は無人のようで、道中では他の乗客どころか駅員ともすれ違いませんでした



    五条「……ん?」


    夏油「どうかした?」


    五条「あれ」



    駅を出た二人が見つけたのは、一人分の影と──



    周囲の様子

    >>30

  • 28二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 22:26:36

    空中にクラゲや魚のようなものがふよふよ泳いでいる

  • 29二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 22:29:51

    めんそーれー!!!

  • 30二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 22:30:18

    青い海白い砂浜

  • 31二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 22:30:27

    黒井さんや理子ちゃんの両親らしき人がいる

  • 32二次元好きの匿名さん24/07/07(日) 23:25:24

    駅を出てすぐの小さな広場からは、広々とした海岸が見えました

    心地の良い波音も、澄んだ青い水面も、いつかの南の海を思い起こさせます あの時と違うのは、頭上を満天の星が彩っていることでしょうか


    五条「ほら、あそこ」


    しかし何より五条の気を引いたのは、白い砂浜にぽつんと佇む人影でした

    夏油も同様のようで、彼の細い目は常より大きく見開かれています


    夏油「行ってみよう」

    五条「応」


    まっさらな砂浜に二人分の足跡を残しながら、五条達は人影に歩み寄ります

    朧げだった姿は、近づくにつれてはっきりと輪郭を表して──潮風に揺れる三つ編みと、セーラー服の彼女は、どこからどう見ても


    五条「天内?」

  • 33二次元好きの匿名さん24/07/08(月) 00:14:28

    天内「あ〜っ!?お主らは!」

    彼女──天内理子は五条達に気付くと、急いで駆け寄ってきました さくさくと静かな砂浜に足音が響きます

    天内「久しぶりなのじゃ!でもどうしてここに?」

    五条「それはこっちの台詞だっての ガキンチョが夜中にほっつき歩いてんじゃねえよ」

    天内「誰がガキンチョじゃ!!」

    夏油「いいや理子ちゃん、珍しく悟の言う通りだよ」 

    夏油「……君は、ここに一人で?」

    天内「ううん」

    天内「ここには黒井も居るのじゃ 多分そろそろ迎えに来るはずぞ」

    天内「だから、私は大丈夫だよ」

    夏油「……そっか」

    夏油「なら、よかった」

    五条(……?コイツらこんな感じだったっけ)

    二人のやりとりにほんの少し違和感を覚える五条でしたが、何となく口を挟むのも違う気がしたので黙っていました 五条悟だって多少は空気を読むことが出来るのです


    今日はここまでだよ 真面目なの(※当社比)書いてるとボケたくてたまらなくなってきて困っちゃうね

  • 34二次元好きの匿名さん24/07/08(月) 00:23:38


    シリアス描いてるとギャグ描きたくなるし
    ギャグ描いてるとシリアス描きたくなるよね

  • 35二次元好きの匿名さん24/07/08(月) 00:25:28

    おつおつ続き待ってます
    好きなだけボケてええんやで…

  • 36二次元好きの匿名さん24/07/08(月) 01:42:39

    理子ちゃんがのじゃ口調とるところ、夏油の返事に溜めがあるところ
    この辺じんわり切なさを感じる…きっと今回は悠仁も聞き入ってるぞ

  • 37二次元好きの匿名さん24/07/08(月) 07:47:01

    なんだかんだ銀河鉄道の夜は読んだ事ないんだよな……ここからどうなるのか楽しみで仕方ない

  • 38二次元好きの匿名さん24/07/08(月) 17:28:42

    色が全体的に青いからか爽やかなようで切なく見える…

  • 39二次元好きの匿名さん24/07/08(月) 22:24:19

    「……様……お嬢様!」

    天内「お、噂をすれば!」 
     

    近付く足音と声に気付いた天内は、声の主の方へ振り向き手を振ります


    天内「おーい!黒井ー!」

    黒井「またお一人で浜辺に……あら」


    メイド服に身を包んだ女性─黒井美里は、敬愛する主の傍に立つ二人に気付くと、ぱちくりと瞬きを繰り返しました

    五条「どもども」

    夏油「お久しぶりです」

    黒井「ええ、本当に」

  • 40二次元好きの匿名さん24/07/08(月) 22:26:01

    更新きちゃ
    黒井さんキター

  • 41二次元好きの匿名さん24/07/08(月) 22:36:46

    これ終点が空港で大円団end説ない?

  • 42二次元好きの匿名さん24/07/08(月) 22:54:12

    天内「あの岩陰にクソデカいナマコがわんさか居るのじゃ 一狩りしに行くぞ!」

    夏油「悟じゃなくて私とかい?」

    天内「……あのグラサンの顔面にナマコ汁ぶっかけてやりたくないか?」

    夏油「……乗った」

    天内「そうこなくってはのう!」


    黒井「なるほど、夏油様と旅を」

    五条「電車乗ってるだけでも結構楽しいよ……そうだ、黒井さん達も一緒に来ません?」

    五条「ここは静かでいい海だけどさ もっと暖かくて賑やかなとこの方が、天内も楽しいんじゃねえかな」

    黒井「お気持ちは嬉しいですが……この先をご一緒することは叶いません」

    黒井「私とお嬢様の終着駅はここなのです」


    黒井「──五条様は」

    黒井「どこまで行かれるのですか?」

  • 43二次元好きの匿名さん24/07/08(月) 22:56:42

    >>41

    そう…なるといいなあ…(元ネタを見ながら)

  • 44二次元好きの匿名さん24/07/08(月) 22:56:50

    >>42

    五条の終着点は空港で確定だけど夏油はどうなるんだろう..

    .ミミナナが居る所で別れるのかな

  • 45二次元好きの匿名さん24/07/08(月) 22:58:46

    >>44

    原作的にどうだろうそれは…

  • 46二次元好きの匿名さん24/07/08(月) 23:21:20

    >>44

    ミミナナ出るなら彼女達の方から電車降りそう

  • 47二次元好きの匿名さん24/07/08(月) 23:41:10

    五条(どこまで、か)

    五条(そんなの俺だって聞きたいよ)


    いつの間にか始まっていたこの旅の終点はどこなのか

    そのことについて考える度に、五条の胸中にはざわざわとらしくない感情が渦巻くのでした

    夏油は知っているのかもしれません そう思って五条は少し先の岩陰に佇む親友に視線を向けました


    天内「ギャーッ汁!!キモい汁が!!」

    夏油「あはは、大丈夫かい理子ちゃん!」

    天内「わ、笑ってないで何とかせよ〜!」


    五条「……ははっ」

    黒井「五条様?」


    五条「どこまでも」

    五条「細けえことはよく分かんねえけど アイツが一緒に居てくれるなら」

    五条「きっと俺達 どこまでだって行けるんだ」

  • 48二次元好きの匿名さん24/07/08(月) 23:42:32

    途中で別れないといいね

  • 49二次元好きの匿名さん24/07/08(月) 23:47:10

    今日はここまでです
    先日気になってた漫画を大人買いしたのですがこのスレを終わらせるまで読まないというセルフ縛りを結んでいます はよ読みてえ 狂う

  • 50二次元好きの匿名さん24/07/08(月) 23:59:00

    乙です
    早くも不穏でいいね
    元ネタ大好きだから楽しみにしてます

  • 51二次元好きの匿名さん24/07/09(火) 08:14:26

    ほしゅ

  • 52二次元好きの匿名さん24/07/09(火) 18:16:03

  • 53二次元好きの匿名さん24/07/09(火) 20:05:14

    元ネタ(好き)+過去編メンバー(好き)+このシリーズ(好き)=神(神)
    …これってファンアートとか描かせて頂いても大丈夫ですかね?好きすぎて

  • 54二次元好きの匿名さん24/07/09(火) 20:18:44

    五条の左眼に夏油、右眼には何も映ってないの不穏…

  • 55二次元好きの匿名さん24/07/09(火) 22:28:37

    夏油「悟、そろそろ戻ろう」


    夏油が携帯片手に五条を急かします デジタル表記の現在時刻は、確かに列車の発車が近いことを示していました

    天内「行っちゃうの」

    夏油「ごめんね」

    黒井「大丈夫です これからもずっと、お嬢様のお側には私が居ます」

    黒井「家族ですから」

    夏油「……それは、頼もしいな」


    こうして五条達はもと来た道を戻り、改札口を通り抜け、列車の中へ滑り込んだのでした

    五条「じゃあな天内 これ終わったら歯ァ磨いてさっさと寝ろよ」

    天内「此奴最後の最後までガキ扱いしよってからに!!」

    天内「……ありがと!ばいばい!」

    黒井「良い旅を」


    発車のベルが鳴り、列車が動き出します

    ゆっくりとプラットフォームは遠ざかっていき、直に二人の姿も見えなくなったのでした

  • 56二次元好きの匿名さん24/07/09(火) 22:30:13

    >>53

    いいよ!!!!!!!!(爆音)

    私は人様からファンアートを頂く瞬間が一番“生”を実感出来るので 大歓迎です

  • 57二次元好きの匿名さん24/07/09(火) 22:33:35

    次は荻原とナナミンかな?

  • 58二次元好きの匿名さん24/07/09(火) 23:56:10

    夏油「あの子は、私をゆるしてくれるだろうか」


    夏油がぽつりと呟いたのは、天内達の居る駅を発ってしばらくしてからのことでした


    夏油「幸せになってほしかった」

    夏油「そのためならどんなことでもするし、誰のことでも敵に回すつもりでいた」

    夏油「何だって出来るって思ってたんだ」


    夏油「あの子だけじゃない、私は、私の大切な人たちに幸せでいてほしくて、だから、だけど……」

    五条「傑?」

    夏油「……すまない、少し疲れてるのかも」


    それきり夏油は黙ってしまいました

  • 59二次元好きの匿名さん24/07/09(火) 23:57:27

    悲しいなぁ…

  • 60二次元好きの匿名さん24/07/09(火) 23:57:29

    少ないんですけど今日はここまでです
    ハアッ時間がない 労働が恨めしい

  • 61二次元好きの匿名さん24/07/10(水) 00:07:11

    理子ちゃんはきっと夏油との最後のやり取りで救われたよ…

  • 62二次元好きの匿名さん24/07/10(水) 08:05:17

    >>56

    うぉっやった!

    描くぞぉ〜!(本編の不穏さから目を逸らしつつ)

  • 63二次元好きの匿名さん24/07/10(水) 13:54:37

    はわわ
    どうなっちゃうんだろ

  • 64二次元好きの匿名さん24/07/10(水) 22:33:30

    保守

  • 65二次元好きの匿名さん24/07/11(木) 07:46:04

    おはようございます 労働疲弊9時間爆睡ちゃんしてました
    今日は更新したいすね……

  • 66好きなスレを保守する呪霊24/07/11(木) 11:25:58

    保守

  • 67二次元好きの匿名さん24/07/11(木) 21:02:02

    星の怒り

  • 68二次元好きの匿名さん24/07/11(木) 22:21:21

    今日もちょっと無理かもです……週末でドカッと更新するから待ってておくれ……

  • 69二次元好きの匿名さん24/07/11(木) 22:23:03

    >>68

    ゆっくり休んでくれ〜

    いつもありがとう

  • 70二次元好きの匿名さん24/07/11(木) 22:27:59

    >>68

    ちみ傑と寝てる夏油かわいい

  • 71二次元好きの匿名さん24/07/12(金) 08:00:05

    このスレが癒しなので今日も一日がんばる
    いつも読み聞かせありがとうママ…

  • 72二次元好きの匿名さん24/07/12(金) 17:55:51

    ほしゅほしゅ

  • 73二次元好きの匿名さん24/07/12(金) 22:28:26

    保守

  • 74二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 00:03:21

    五条「幸せ、ね」


    夏油が何を考えているのかは知りませんが、先ほど出会った二人は仲睦まじく、かつてと変わらない様子でした 彼が気に病むようなことは何もないはずです


    五条「……」


    ですがそう思うのと同じくらい、何か大事なことを忘れている気もして、五条は言葉を詰まらせてしまうのでした




    がたんごとん……がたん……列車がゆっくりと速度を落としていきます 五条が窓の外に目をやると、どうやら次の駅に停車しようとしているようでした


    五条「終点?」

    夏油「いいや?」

    夏油「君の旅はまだ続くとも」


    やがて列車は完全に停車し、扉が音を立てて開きます


    「隣、座ってもいいですか?」

  • 75二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 00:10:03

    灰原か七海ぽい…?

  • 76二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 00:58:52

    灰原「いや〜、まさか夏油さん達と会えるとは!」

    夏油「隣なら空いてるよ」

    灰原「はい!お邪魔します!」

    車内に乗り込んだ青年──灰原雄は、夏油達を見かけるや否や、ぱあっと笑みを浮かべました 嬉しそうに夏油の隣に腰掛ける後輩の姿に、五条の脳裏でぶんぶんと尻尾を振る柴犬の映像が再生されます


    灰原「お二人はどこまで行かれるんですか?」

    五条「どこまでも!」

    夏油「はは、何だそれ」

    五条「だってオマエ具体的なこと教えてくんねえじゃん!」

    灰原「あはは、良いと思いますよ!この電車はホントにどこまでだって行けそうですし」

    五条「灰原も来る?」

    灰原「うーんステキなお誘いだけど……僕は次の駅で降りなくちゃ」

    灰原「待ち合わせ……ではないな、別に約束してた訳じゃなくて……僕がただそうしたいだけで……」


    灰原はしばし逡巡した後、こう答えました


    灰原「会いに行くんです」

  • 77二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 01:00:29

    一旦ここまでです やっと更新できたょ……!!

  • 78二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 01:02:54

    乙~灰原かわいい

  • 79二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 09:31:16

    噛み合ってるような噛み合ってないような重いような軽いようなこの会話の雰囲気がいいね…

  • 80二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 13:24:36

    灰原「彼はしっかり者だけど、もし道に迷っていたら大変だから」

    五条「彼?」

    灰原「あ、そうそう駅で551の豚まん売ってたんですよ!夏油さんもお一つどうぞ!」

    夏油「ありがとう、はふっ無重力空間でも変わらぬ美味しはふはふっ」

    五条「一口でっか……灰原、俺にもちょーだい」

    灰原「五条さんの分はないです!」

    五条「灰原!?」


    突然の理不尽に五条が席を立ち上がりかけたその時です


    五条「わっ」


    ゴオッという音を合図に、列車の中は帳が降ろされたように薄暗くなったのでした

  • 81二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 13:32:09

    楽しみ

  • 82二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 14:00:51

    目だけでわかるキャラの特徴

  • 83二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 14:05:47

    食べ物……五条の分はない、か……
    先が楽しみです

  • 84二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 14:19:14

    死後の世界の食べ物は食べちゃダメって話だっけ…?

  • 85二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 17:26:39

    夏油「どうやらトンネルに入ったようだね」

    灰原「一瞬停電かと思ってびっくりしちゃいました」

    五条「宇宙空間……トンネル効果……ワームホール……?」

    灰原「深く考えたら負けですよ!!」

    夏油「ワアいい笑顔」


    五条「…………」


    五条悟の眼は特別製です きらきら光る青い双眸は、暗闇でも何の問題もなく機能していて、眼前の光景を映し出しているのでした


    夏油「悟」

    夏油「そんなに見られたら穴が空いてしまいそうだよ」

    五条「…………いや」

    五条「傑が居るなあって」



    五条「あと頬に食いカスついてる」

    夏油「もっと早く言えよ」

  • 86二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 17:30:47

    (夏油のピアス描き忘れたので心の眼で見てください)(此奴本当に)

  • 87二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 17:31:01

    目オンリーになってる三人かわいい
    夏油からも五条が見えてるんだな

  • 88二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 18:21:20

    夏油「るるぶトラベル」

    灰原「ルール!」

    五条「ルイ・パスツール」ソッ…

    灰原「あ〜っ五条さんどさくさに紛れて僕らの豚まん取ろうとしないでください!!」

    五条「オマエらの豚まんは俺の豚まんでもあるべきだろうが!!」

    夏油「でも君、豚まんよりあんまんの方が好──」


    「切符を拝見いたします」

    温度のない声に振り向くと、ちょうど三人の座席の隣には、片手にランプを掲げた男が立っていました


    五条「……車内販売?」

    夏油「ワゴン引いてないだろ 彼はこの列車の車掌だ」

    灰原「こんばんは!」

    「切符を拝見いたします」

    五条「…………」


    男──車掌は深々と帽子を被っていました 薄ぼんやりとした暗闇も相まって、どれだけ覗き込んでも彼の容貌は伺いしれないのでした

  • 89二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 20:53:53

    夏油「お願いします」

    灰原「えーと確かこん中に……あった!」

    夏油は小さな切符を取り出し、車掌に渡してみせます 灰原もしばしポケットの中をまさぐった後それに続きました

    二人の切符は青い空の色をしていました

    「ふふ、さあそちらのお客さんも」 

    五条「……ちょっと待ってろ」

    落とされた笑い声は無性に五条の神経を逆撫でました 乱暴に制服のポケットへと手を突っ込むと、ちょうど紙切れに当たったので、そのまま車掌へと突き出します

    車掌「おや」

    五条が持っていた紙切れ──見覚えのない紫色の切符に、車掌の声色が変わります

    「これはまた珍しい!天上だろうがどこにでも好き勝手行ける通行券だ、大したものだねえ」

    「ま、君なら持っててもおかしくないか」

    五条「……アンタ、どっかで会った?」

    車掌は問いには答えず、検分を終えた切符を五条へ返します 口元には愉快そうな笑みを浮かべていました


    「南十字へ着きますは次の三時頃となります」

    「それまでおやすみ よい夢を」

  • 90二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 20:57:14

    >>89

    おは羂索縫い目見えてんぞ

  • 91二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 20:58:21

    こんな車掌さんは嫌だ

  • 92二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 20:58:56

    ナナミンに会いに行こうとする灰原…長髪の車掌…
    まさかな…

  • 93二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 21:04:02

    >>92

    七海に後輩を呪わせるのは気持ちがいいです!

  • 94二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 21:32:01

    五条「通行券ねえ」

    光沢を帯びた紫色の切符は、買った覚えも貰った覚えもなく、そういえばこの旅は分からないことだらけだと再び五条に思い出させました


    灰原「これがあればどこにでも行けるとか言ってましたね すごいなあ」

    夏油「良かったじゃないか悟」

    夏油「君は、どこまでも行きたいんだろ?」

    五条「おう」


    五条(そうだけど、そうじゃない)


    この際自分の切符はどうでもよいのです 五条が気になるのは、夏油や灰原が持っていた切符のことでした

    青い切符 自分とは異なる色の切符


    五条(なあ、傑)

    五条(俺達 一緒に行けるんだよな?)


    じりじり

    車掌との邂逅以来、五条は時折頭にちりつくような痛みを覚えるようになっていました

  • 95二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 21:35:18

    飯食うので一旦休憩です
    呪術廻戦展のチケット取れました!一般販売しか勝たん!東京いっぞ!

  • 96二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 21:36:23

    >>95

    おーおめでとうございます!

  • 97二次元好きの匿名さん24/07/13(土) 23:28:50

    >>94

    五条の気持ちが切ない…

  • 98二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 00:30:15

    トンネルを抜けてしばらく経った頃 列車は再び速度を緩め、プラットホームへ向かいます 同時に灰原が座席から立ち上がりました

    灰原「お別れですね」

    夏油「そっか 短い間だったが、また話せて良かったよ」

    灰原「僕もです!」


    五条「なあ」

    灰原「五条さんに食わせる豚まんはありませんよ?」

    五条「いやそれはもういいって」

    五条「……ここがオマエの終着駅?」

    五条の問いに灰原は数度まばたきをした後、静かに首を振りました

    灰原「僕の終点はここよりもう少し前です」

    五条「じゃあ、何で」

    灰原「やだなあ、さっきも言ったじゃないですか!」

    灰原「僕は──」


    彼が口を開くのと同時に、列車が完全に停止します 開いたドアの先に、立っていたのは

  • 99二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 00:37:39

    今日(もう日付変わってますが)はここまでです
    これはいつもより自我抑えめで鬱憤が溜まっているママ

  • 100二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 00:39:24

    乙です
    ママもゆうじもかわいいねえ

  • 101二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 00:40:50

    >>99

    乙です

    絵も文もとても良かった

    更新楽しみにしてます

  • 102二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 09:14:19

    どこにでも好き勝手行ける通行券なら青い切符と同じところへも行けるはず、と考えていいはずなのに何となく不安の影がある雰囲気 好き

  • 103二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 10:27:05

    >>99

    トンチキ童話聞かされまくったのに感性がまともに育ってる悠仁カワイイ

  • 104二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 13:43:18

    >>95

    おめでとうございます

    よければ観終わったあとに感想聞きたい

  • 105二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 21:09:05

    七海「灰原……」

    灰原「七海!七海七海七海〜!」

    七海「ふっ、そんな何度も言わなくても聞こえて──」

    旧友との再会に僅かばかり頬を緩ませていた青年──七海建人は突然ぎくりと固まります その視線の先は、灰原でも、夏油でもなく


    七海「何故、五条さんまでここに」


      じりじり

    五条(何故って……七海こそ)

          じりじり

      違和感

    天内達や灰原と出会った時には一切感じなかった感覚

    今まで忘れていた、あるいは気付かない振りをしていたこと

    夏油「……悟?どうかした?」

            じりじり


    五条「オマエはまだこっち側だったろ……?」

  • 106二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 21:23:13

    保守

  • 107二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 21:31:19

    これ時間軸、獄門疆に封印されてる時かなぁ…

  • 108二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 21:37:43

    これ多分封印時に五条の意識が一時的に空港側に繋がってるって事なんだろうけどじゃあなんで羂索が運転手やってんだよキッショ....

  • 109二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 21:44:27

    >>108

    プロだからね

  • 110二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 21:48:07

    灰原がないはずの尻尾をブンブン振ってるのが見えるな…
    と和んでたら会うはずのない人達が会っちゃって薄氷の上の優しい時間が…いやまだ完全には理解してないか…

  • 111二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 22:23:22

    じくじく

       じくじく

    五条(あ、ヤバい)

    五条(落ち──) 

    夏油「悟!?しっかりしろ!」


    ぷつん

    灰原「──五条さん、大丈夫なんですか?」

    夏油「あくまで一時的なものだと思う 心配しないでくれ」

    夏油「彼には然るべき時まで私が着いているから」

    七海「……頼みますよ 本当に」

    七海「この人までこちらへ来てしまったらこの国はおしまいだ」

    灰原「そんなに!?」

    七海「そんなにです」

    七海「……それとも、アナタとしてはそちらの方が本望ですか」

    夏油「手厳しいなあ」

  • 112二次元好きの匿名さん24/07/14(日) 22:46:56

    なんか3人のセリフがすごくCVで再生されて没入感がある

  • 113二次元好きの匿名さん24/07/15(月) 00:05:16

    五条「……ぁ」


    気が付くと五条は、相も変わらず列車の座席に腰掛けていました 窓の外の銀河も引き続き膨張と収縮を繰り返していることでしょう

    五条が体を起こそうとした瞬間、彼の視界は再び暗闇に覆われました


    夏油「もう少し休んでな」


    暗闇をもたらしたのが節くれ立った手のひらであることに思い至ると同時に、頭痛が少しばかり和らぐのを感じます サーモグラフィーのように映る呪力は忘れもしない夏油のものでした


    五条「……七海は」

    夏油「灰原と一緒にいったよ」

    夏油「灰原がちゃんとさよならを言えなかったとしょげてたけど……それはまた今度でいい 私も彼も待つのは苦じゃないタイプなんだ」

    夏油の声を聞いている内に、五条の意識はゆっくりと溶けていきます 無理やり強制終了させられたような先程の気絶と異なり、随分と良い心地がしました

    それでも、今意識を手放すのは嫌だなと五条は思いました すると五条の心を読み取ったように、夏油がくつくつと笑います


    夏油「大丈夫 悟が眠ってる間に消えたりしないから」

    夏油「……聡い君のことだ、もう気付き始めているんだろうけれど」

    夏油「今はおやすみ 目が覚めたら二人で話をしよう」

  • 114二次元好きの匿名さん24/07/15(月) 00:12:12

    今日はここまでです
    ぜってえ今週中に終わらせる 一週間前に届いた漫画がセルフ縛りで未だ段ボール箱に封印されてるの可哀想だから(私が)

  • 115二次元好きの匿名さん24/07/15(月) 00:45:57

  • 116二次元好きの匿名さん24/07/15(月) 00:48:08

    乙です毎回絵がかわいいのに不穏で好き


    >七海「……それとも、アナタとしてはそちらの方が本望ですか」

    ここの台詞辛辣だけどナナミンらしくていい…

  • 117二次元好きの匿名さん24/07/15(月) 11:29:44

    理子ちゃん黒井さんの時はちゃんとお別れできたのもあるけど七海と灰原が行っちゃったの聞かされるのなんかすごく寂しくなっちゃった…

  • 118二次元好きの匿名さん24/07/15(月) 22:32:49

    続き待機保守

  • 119二次元好きの匿名さん24/07/15(月) 23:02:26

    五条「…………」スヤスヤ

    夏油「……すまない 必ず戻るから」


    ざわざわ……

    長いこと五条たちの貸し切り状態だった車内は、今や多くの客達で賑わっていました

    連れとの会話を楽しむ者、うつらうつらと船を漕ぐ者、そして車窓に映る星空へ歓声を上げる者……

    乗客達は、思い思いに目的地までの旅路を過ごしているようでした 今の夏油にとっては心底どうでもいいことでしたが

    人の波を足早に駆け抜け、隣の車両に繋がる扉へ手を掛けます


    夏油「──ああ」


    そこは車両の一番奥の座席 近くの座席に乗客の姿はなく、まるで除け者にされているかのようで

    それでもへっちゃらだと言いたげに、双子はぎゅっと手を絡めあっていたのでした

  • 120二次元好きの匿名さん24/07/15(月) 23:03:59

    時系列的にそっかあ…
    迎えに行ってあげてたんだね…

  • 121二次元好きの匿名さん24/07/15(月) 23:06:42

    ミミナナも乗ってた!

    ナナミンがいるってことはそういうことですもんね…

  • 122二次元好きの匿名さん24/07/15(月) 23:51:31

    夏油「美々子、菜々子」

    美々子「んう……ぇ……?」

    菜々子「げと、さま?」

    「「……夏油さま!?」」


    寝ぼけ眼の少女達──美々子と菜々子は、お互いの顔を見合わせた後、ワンテンポ遅れて目の前の大好きな人を認識すると……きゃあっ!と可愛らしい声を上げました


    美々子「ねえ夏油さま ここはどこ?」

    美々子「ここに来る前のこと、思い出せないの 菜々子もよく分かんないって」

    菜々子「うん……でもすっごいこわかったことだけおぼえてるんだ」

    菜々子「こわくて、さみしくて、かなしくて……だから、夏油さまに会えてうれしい!」

    菜々子「ぅ、うれしいっ、すっごくすっごくうれしいのにねぇ」

    菜々子「どうしてかなぁ……とっ、とまんないよぉ……」

    夏油「…………」


    ぽたぽたと大粒の涙をこぼす少女達を、夏油は黙って抱き締めます 久しぶりの抱擁に、幼い少女達はわんわんと声を上げて泣きだしたのでした

  • 123二次元好きの匿名さん24/07/15(月) 23:55:38

    今日はここまでです
    許せなかった……月曜から残業だなんて……!

  • 124二次元好きの匿名さん24/07/16(火) 07:59:03

    く、くるしい……スレ主さんお疲れ様です

  • 125二次元好きの匿名さん24/07/16(火) 13:29:34

    >>122

    泣いてるミミナナ可愛い…

    思い出せないのは幸いか…

  • 126二次元好きの匿名さん24/07/16(火) 21:59:06

    待ってます

  • 127二次元好きの匿名さん24/07/16(火) 22:05:39

    絵が素敵で……読んでいられる……

  • 128二次元好きの匿名さん24/07/16(火) 22:31:20

    このレスは削除されています

  • 129二次元好きの匿名さん24/07/16(火) 22:33:24

    夏油「切符は持った?はぐれないよう、しっかり手を繋いでゆくんだよ」

    美々子「いっしょに来てくれないの?」

    夏油「……私に、君たちと同じ場所へ行く資格はないかな」

    夏油「ごめんね 幸せにしてやれなくて」

    菜々子「……夏油さまっ!」



    菜々子「幸せだったよ」

    菜々子「みんなは私たちを可哀想だとか馬鹿な子だとか言うかもしれないけど、そんなのどうだっていいよ」

    菜々子「夏油様に会えてよかった 夏油様に貰った命を、夏油様の為に使えてよかった……失敗しちゃったけど、それでも」

    菜々子「私達、ほんとうに幸せだったんだよ」

    夏油「菜々子」

    美々子「……夏油様は」

    美々子「夏油様は、幸せだった?」

    夏油「美々子……」


    夏油「私は──」

  • 130二次元好きの匿名さん24/07/16(火) 22:33:25

    ミミナナは成長してるけど
    夏油は高専のままなんだな

  • 131二次元好きの匿名さん24/07/16(火) 23:15:17

    五条「なーにが消えたりしないだよクッソ堂々と嘘つくじゃんアイツ」


    目を覚ました五条がまず最初にしたことは、周囲を見渡してからの盛大な舌打ちでした


    五条「……呪力は感じるからマジでどっか行った訳じゃねえんだろうけどさァ……だとしてもさァ……」


    がしがしと頭を掻く五条 酷かった頭痛はいつの間にか治まっていました


    五条「──ね、酷いと思いません?」


    混乱した思考もすっかり落ち着いていたので、五条は目の前の乗客に声を掛けることにしました
     
     
    「……驚かないのか?」

    五条「何を」

    「ここに俺が居ることに」

    五条「まあ」 

    五条「そりゃあ“僕”が消えたら、上のお爺ちゃん方は真っ先にアンタへちょっかい掛けるでしょうよ 残念だけど予想は容易い」
     

    五条「……本当に残念ですけどね、先生」

  • 132二次元好きの匿名さん24/07/16(火) 23:24:59

    ああヤガセン…五条の一人称も戻って…もう現状を思い出してしまったんだな
    「クッソ堂々と嘘つくじゃん」が沁みる

  • 133二次元好きの匿名さん24/07/16(火) 23:47:47

    学長まで…はわわ

  • 134二次元好きの匿名さん24/07/17(水) 00:23:42

    五条「幸せってなんだろね」


    長いような短いような沈黙の後、その問いは五条の口からするりと落ちました


    夜蛾「突然どうした?」

    五条「何か傑がごちゃごちゃ言ってたから」

    五条「僕は今の自分が不幸だとは思わない」

    五条「特に人には恵まれてる 生徒も他の術師もみんな大好きさ、勿論先生もね」

    五条「だけど」 


    ふと胸元に手を当てると、硬いボタンの感触がします 袖を通さなくなって何年も経つはずの、呪術高専の制服

    これから先、どれだけ高性能な戦闘服を身に纏っても、この制服を着ていた頃の青臭い万能感に酔うことは出来ないのでしょう


    五条「“俺”の幸せはあの時無くなっちゃったまんま」

    五条「ハハ、何で忘れてたかな……あーぁ」


    五条「ふたりでどこまでもなんて行けないのにね」

  • 135二次元好きの匿名さん24/07/17(水) 00:28:53

    今日はここまでです 
    そろそろ終盤かな…?

  • 136スレ主24/07/17(水) 00:29:19

    >>134

    うぉ…しんどいなぁ…好き

  • 137二次元好きの匿名さん24/07/17(水) 08:00:29

    保守

  • 138二次元好きの匿名さん24/07/17(水) 14:33:16

    良い

  • 139二次元好きの匿名さん24/07/17(水) 21:25:04

    五条「……やっぱ頭ヘンになってんのかな すげえガキみたいなこと言ってる」

    夜蛾「今も十分ガキだろう」

    五条「その生暖かい目やめてくれません?」


    がたん、ごとん……やがて列車は駅へと辿り着き、完全に停止しました ぎい、と音を立てホームへの扉が開くと、乗客達も切符を片手に動き出します


    五条「どうせ先生もここが終点なんでしょ」

    五条「みんなそう言うんだよ だーれも着いて来てくんねえの」

    夜蛾「悟」


    夜蛾は席を立つと、五条の白髪をわしゃわしゃと掻き混ぜました 拳骨を落とされたことは数え切れない程あれど、撫でられたのは初めてかもしれません 五条は何だかくすぐったい気持ちになりました


    夜蛾「オマエは愁傷にも置いていかれただなんて思っているかもしれんが、それは違うぞ」

    夜蛾「俺達が置いていかれるんだ」

    夜蛾「数多の駅を通り過ぎながら、列車は進み続ける 切符を使い果たした者に出来るのは、見送ることだけだ」

    夜蛾「いつか終着駅に至った時、オマエに残る悔いが少ないことを祈っている」

  • 140二次元好きの匿名さん24/07/17(水) 22:00:35

    や、ヤガセン…!
    このヤガセンからの言葉があったから五条も悔いなく終われたんだといいなあ…

  • 141二次元好きの匿名さん24/07/17(水) 22:39:28

    パンダ回を思い出して涙腺が
    どうせ先生も、って五条の物言いがガキっぽいし事実ヤガセンから見たら十分ガキなんだろうなっていう…
    頭を撫でてくれる仕草がじんわりくる…

  • 142二次元好きの匿名さん24/07/18(木) 00:03:03

    がたん、ごとん……ベルの音と共に列車は星の海を進み始め、プラットフォームから遠ざかってゆきます

    そこに立つ夜蛾の姿も、みるみるうちに砂粒より小さくなり、やがて見えなくなってしまうのでした


    五条(置いていくんだな)

    五条(先生、天内に黒井さん、灰原や七海達)


    他の乗客達もみんな先程の駅で降りてしまったので、列車の中は貸し切り状態に逆戻りしていました

    がらっ

    車両と車両を繋ぐ扉の開閉音は、静かな車内にやけに大きく響きました


    五条「よう嘘吐き」

    夏油「……すまなかった 返す言葉も無いよ」

    五条「別に怒ってねえし」



    五条「──また俺達ふたりきりになっちまったな」

  • 143二次元好きの匿名さん24/07/18(木) 00:08:42

    今日はここまでです 頑張れば金曜には終われる気がしてきた
    五条と夜蛾センいいよね 数少ない理解者ですってよ

  • 144二次元好きの匿名さん24/07/18(木) 07:20:20


    夜蛾センのことは無下限解くくらい信頼してるの良いよね

  • 145二次元好きの匿名さん24/07/18(木) 09:01:52

    >>142

    ああ…

    五条のこの台詞…

  • 146二次元好きの匿名さん24/07/18(木) 18:36:27

    保守

  • 147二次元好きの匿名さん24/07/18(木) 22:22:43

    五条「傑」


    五条は目の前に座る夏油を見つめました 夏油は何も言いません ただ真っ直ぐに五条の瞳を見つめ返します
     

    五条「……今になって思うよ」


    黒い瞳は星のない夜空とおなじ色

    それは五条にとって、どんな恒星よりも眩しい道しるべでした


    五条「何にも怖くなかった」

    五条「何にも迷わなかった」

    五条「何だって出来る」

    五条「どこまでも、どこまでも行ける」


    五条「オマエと一緒なら」


    五条「そう信じていられたことが、俺のほんとうのさいわいだったんだろうな」

  • 148二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 00:11:19

    五条「俺の青春も、僕の夢も 」

    五条「傑と出会わなければ手に入らなかった」

    五条「傑から貰ったんだ」

    五条「貰った、のに」


    『君になら出来るだろ 悟』

    『ただこの世界では私は心の底から笑えなかった』


    五条「──オマエから貰ったものと同等の何かを、俺はちゃんと返せてたのかな」

    五条「オマエのほんとうのさいわいの為に、僕は何かしてやれたのかな」

  • 149二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 00:12:59

    今日はここまでです
    これはバカの検索履歴

  • 150二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 06:34:26

    >>149

    いや草

  • 151二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 08:16:45

    美しいなあ…

  • 152二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 15:20:55

    涙で前が見えない

  • 153二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 20:03:22

    主のセンスが良過ぎる

  • 154二次元好きの匿名さん24/07/19(金) 20:47:53

    スレ主さん夏油猫スレの人ですよね

  • 155二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 00:28:27

    30分仮眠のつもりがこの時間 頑張れば金曜には終わるとか言ったの誰?土曜中には終わらせます 無理だったら樹の下に埋めて貰っても構わない

    これは没絵

  • 156二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 00:36:55

    >>148

    恨み言のターンくるか?と身構えたけど全然そんなことなかった

    原作でも呪いの言葉を吐かなかった男だったな

    スレ主のスレ絵も文も好き

  • 157二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 01:02:42

    元ネタの美しさを優しく落とし込んで再構築できるスレ主さんの感性がすごく好き

  • 158二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 10:27:25

    ほしほし

  • 159二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 15:07:56

    夏油「ついさっき似たようなことを聞かれたばかりだよ」

    夏油「幸せだったかと……あの子達が気にすることじゃないのにね」

    夏油「……ほんとうのさいわい、か」


    夏油「幸せになってほしかったんだ」

    夏油「救えなかったあの娘に、慕ってくれる家族達に、今も搾取され続ける同胞達に」

    夏油「彼らのさいわいの為なら、私のからだなんか百篇灼かれたって構わなかった」

    夏油「私自身のさいわいなんて、ほんとうにどうでもよかったんだよ」

    夏油「在りし日のすべてを火に焚べて、闇の中を進み続ける」

    夏油「そういう道を選んだのだから」



    夏油「──って、思ってたんだけどなあ」

  • 160二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 15:39:54

    自分が幸せになろうとは思わないから周りの人に幸せになって欲しかった
    は夏油も思ってそうだよね

    ただ虎杖と言い伏黒と言い自分の幸せを願えないキャラは結局大切な人の幸せも
    上手くいってくれないの悲しい

  • 161二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 16:43:45

    夏油「さいごに見た青があんまり澄んでいたから」

    夏油「あの瞬間 私は」

    夏油「──ああ、ほんとうにそんなつもりはなかったのにな」



    夏油「救われた気がしてしまったんだ」

  • 162二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 16:47:46

    うあ゛あ゛……………

  • 163二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 20:09:34

    青が澄んでいる…

  • 164二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 21:45:02

    五条「……っ、救いなもんかよ」

    五条「オマエの身体 僕がもっと上手くやってたらあんなことには」

    夏油「本人の前で偽物なんかの話するなよ……別に悟のせいじゃないし」
     

    一瞬不服そうに眉を顰める夏油でしたが、すぐに元の穏やかな表情に戻り、そっと五条の頬に触れました


    夏油「私に終わりをもたらしたのが悟で良かった」

    夏油「こうして君の前に現れたことが何よりの証明だろう?」


    夏油の言葉に、五条は頷かざるを得ませんでした こんな邂逅があり得るはずはないのに、彼の六眼に映るのは、魂に触れているのは、間違いなく夏油傑その人だったのです


    夏油「──いつか、君にも列車を降りる日が訪れるのだろう」

    夏油「その時は私が一番に出迎えるよ」

    夏油「君が何を思い、どんな結末に至ろうと、私だけは肯定してあげる」

    夏油「君が私にそうしてくれたように」


    夏油「……ははっ」

    夏油「悟の泣き顔、初めて見たかも」

  • 165二次元好きの匿名さん24/07/20(土) 22:38:12

    夏油「またね、悟」

    夏油「終着駅で待ってる」





    五条「……泣いてねえし」


    ひとりきりの車内で、五条は目を閉じました


    やがて、ごぽごぽと水音がして

    そして

  • 166二次元好きの匿名さん24/07/21(日) 00:00:26

    五条「──へんなゆめ」


    五条悟が目を開くと、そこは箱の中

    時間の流れすら曖昧な空間では、頭上を見上げたところで星のひとつも見えやしないのでした


    五条「感傷的にも程があるでしょ……流石の僕もこの状況には結構堪えてるのかね」


    他人事のように独りごちるも、当然返事はありません 他にすることもないので、五条は再び瞼を下ろしました


    『またね、悟』

    『終着駅で待ってる』


    五条「傑」

    五条「またな」


    彼のしるべの星は、今でも青くひかっているのでした


  • 167二次元好きの匿名さん24/07/21(日) 00:07:29

    ただただ美しかった
    素敵なものを読ませてくれてありがとう

  • 168二次元好きの匿名さん24/07/21(日) 00:10:29

    五条悟
    夏油傑
    天内理子
    黒井美里
    灰原雄
    七海建人
    枷場美々子
    枷場菜々子
    夜蛾正道

    車掌…羂索

    以上の10名でお送りしました
    二週間も掛かってしまった ずっとやりたいと思ってた元ネタなので無事終わらせることが出来て安堵しています
    安価もあと2.3個は取るつもりだったんでしたが全然でしたね、申し訳ない……
    長々とお付き合いいただきありがとうございました

  • 169二次元好きの匿名さん24/07/21(日) 00:14:34

    次回は通常営業トンチキ童話です さくっと読める話にしたい
    それじゃあ私は漫画の封印解いてくるので……ノシ

  • 170二次元好きの匿名さん24/07/21(日) 01:01:46

    完走お疲れさまでした

  • 171二次元好きの匿名さん24/07/21(日) 06:50:18

    完走お疲れ様でした!
    このシリーズをリアタイするの初めてだったから楽しかった
    漫画楽しんできてくだせぇ

  • 172二次元好きの匿名さん24/07/21(日) 07:32:56

    良かった乙でした

  • 173二次元好きの匿名さん24/07/21(日) 07:46:45

    とても素敵でキラキラした美しい物語を
    読ませていただきありがとうございます
    完走お疲れ様でした

  • 174二次元好きの匿名さん24/07/21(日) 08:42:43

    これは良スレ
    ありがとうスレ主

  • 175二次元好きの匿名さん24/07/21(日) 10:02:20

    誇張でなく泣けたありがとう

  • 176二次元好きの匿名さん24/07/21(日) 11:22:03

    五条は箱から出た後そら南行き思考になってしまうわ・・・と納得してしまった

  • 177二次元好きの匿名さん24/07/21(日) 11:27:44

    ありがとうございました!
    二人はほんとうのさいわいに出会えたんだね…!

  • 178二次元好きの匿名さん24/07/21(日) 19:04:08

    おまけ

    南十字は日本だと沖縄辺りでしか見れないそうですね

  • 179二次元好きの匿名さん24/07/22(月) 01:51:40

    スゲー感動しました
    ありがとうございました!

    あと海外の方が星を買ってさしすの名前をつけてくれたのは有名な話…

  • 180二次元好きの匿名さん24/07/22(月) 07:29:55

    >>179

    えなにそれ…

    絵本みたいなキレイな話で感動した

    乙でした!

  • 181二次元好きの匿名さん24/07/22(月) 13:17:57

    >>178

    おまけも可愛い!

    ありがとうございました!

  • 182二次元好きの匿名さん24/07/23(火) 00:43:17

    >>178

    かわいい〜

    かわいい〜

    (とても大事なことなので二回言いました)

  • 183二次元好きの匿名さん24/07/23(火) 11:24:26

    >>53です

    FA(動画)作ってたけどまにあわなかった

    ごめんなさい…

  • 184二次元好きの匿名さん24/07/23(火) 12:42:56

    >>183

    動画!?すごい!

    今後も読み聞かせスレ立てると思うのでいつか完成なさったらそこで見せてくれると嬉しいです……とってもとっても大歓迎です……

  • 185二次元好きの匿名さん24/07/23(火) 22:59:03

    >>184

    ヤター

    頑張ります…(遅い)

  • 186二次元好きの匿名さん24/07/24(水) 04:04:10

    スレ主が封印していた漫画って何なんだ?こんなに素晴らしいものが書ける人が読んでいる漫画が気になる

  • 187二次元好きの匿名さん24/07/24(水) 07:57:02

    >>186

    TRIGUNです

    アニメ見て双子で情緒ぐちゃぐちゃになったので……

  • 188二次元好きの匿名さん24/07/24(水) 19:17:07

    >>187

    TRIGUN、旧アニメで見てました

    感動するシーン多いですよね…

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