- 1124/08/12(月) 15:13:17
- 2124/08/12(月) 15:16:57
- 3124/08/12(月) 15:17:45
- 4124/08/12(月) 15:18:17
- 5124/08/12(月) 15:18:43
- 6124/08/12(月) 15:24:08
- 7124/08/12(月) 15:24:40
- 8124/08/12(月) 15:25:00
- 9124/08/12(月) 15:25:23
- 10124/08/12(月) 15:25:49
現在追加された総則その1
《総則9》泳者の人数が三人以下になった場合その結界は消滅し泳者達は別の結界へ強制移動する。ただし、結界が残り一つとなった場合はその限りではない。
追加者:剣薫子
《総則10》全泳者は自身の点100点を消費することで別の結界に転移することができる。
追加者:卜部光
《総則11》火野燻は自身の在留する結界内にいる泳者の数と場所を把握することができる。
追加者:火野燻
《総則12》禪院直投は得点の消費なく自由に結界の出入りが可能となる。
追加者:禪院直投 - 11124/08/12(月) 15:26:24
- 12124/08/12(月) 15:28:11
現在追加された総則その3
《総則17》泳者は身代わりとして新規泳者を結界内に招き、100点を消費することで死滅回游から離脱できる。
追加者:伏黒恵
《総則18》泳者は結界を自由に出入りすることができる。
追加者:万(伏黒津美紀)
《総則19》現在存在するすべての結界の範囲を3倍に拡張する。範囲内にいたすべての人間及び呪霊は強制的に泳者となり、術式を保持するものの未だ非術師である者は強制的に脳改造を経て術式を取得する。
追加者:深亡
《総則20》死滅回游への参加を現時点2018年11月X日をもって打ち切る。
追加者:羂索(夏油傑)
《総則21》夏油傑、虎杖悠仁、氷見汐梨、剣薫子を除く全泳者の死亡をもって死滅回游を終了する。
追加者:羂索(夏油傑)
《総則22》泳者は身代わりとして新規泳者を用意し100点を消費することで任意の泳者を死滅回游から離脱させることができる。
追加者:剣薫子
- 13124/08/12(月) 15:34:05
現在の各所持得点
・鹿紫雲一 6点(100点譲渡済)
・柘植全登 61点(100点使用済)
・紫藤炬 100点
・紫藤カザリ 22点(100点使用済)
・剣薫子 9点(600点使用済、300点譲渡済)
・五条杏凪 71点
・佐藤錦羅紗 78点
・躑躅小路泰造 27点(200点使用済)
・三上渡 87点
・渋谷区長 70点
・七毒 16点(50点譲渡済)
・無有 85点
(・乙骨憂太 40点
・加茂辰巳 53点
・塚原正宗 27点
・石流龍 62点
・万 39点(100点使用済))
→仙台編終結時点
・五条戒規 49点
・日宮美夜 30点
・禪院直投 47点(100点使用済)
・御厨庵治 26点
・級津四郎 38点
・剣玄子 3点
・疾苦 43点
・霧藤馬壱弥 27点
・南天燭 84点
・三影真澄 17点 - 14124/08/12(月) 15:43:54
現在の炬・カザリコンビ dice1d4=1 (1)
1、高専で状況確認中
2、東京の呪霊退治
3、他結界の平定中
4、羂索に関係していると思われる組織へのガサ入れ
現在の区長組 dice1d4=4 (4)
1、渋谷の再建に向けて作業中
2、東京の呪霊退治
3、避難民の保護と治療
4、炬経由で高専と接触
- 15二次元好きの匿名さん24/08/12(月) 15:56:36
40スレおめでとうございます🎉
京都組の設定もありがとうございます! - 16124/08/12(月) 17:20:44
まさか40スレも続くとは…。ひとえに協力してくださる皆さんのお陰です!
- 17二次元好きの匿名さん24/08/12(月) 17:48:24
このレスは削除されています
- 18124/08/12(月) 18:04:06
エピソード31
「剣…玄子?なんだオマエ、他に姉妹でもいたのか?」
「し、知らないぞ!僕の姉妹はおね…薫子だけのはず…だ」
新吾郎の問いかけに対し霧子は首を振って否定する。その表情からは困惑の色が見て取れる。恐らく一番驚いているのは彼女自身だろう。
「剣玄子、得点3点…ついさっき追加されてもう3人殺してやがる」
「《総則22》の追加者が剣薫子である以上、2人は同陣営と考えるのが正しいかな?」
「それにしても…剣薫子はなんでこんな総則を追加したんすかね?このために200点使ったんすよね?」
『それは多分…霧ちゃんのためだと思う』
新吾郎の頬に口が浮き上がり、鹿紫雲が話し出す。霧子は目を伏せ、唇を噛み締めた。
『薫子は霧ちゃんを特別扱いしてた。妹だし当然だと思うけど…。きっと、霧ちゃんを死滅回游から解放してあげたかったんだよ』
「なるほど…俺もできるなら杏凪に同じことをするかもなぁ。まして霧子さんは覚醒組で強制参加だろう?なんとなく、共感はできるよ。そのために1人生贄にしてるわけだけどね」
「…お姉ちゃん…」
霧子は小さく肩を震わせる。一瞬の沈黙の後に、柘植が話を切り出した。
「それで、今後はどう動くんだ?疾苦ってのもまだ野放しだし…」
「そうだね…日宮も復活、霧子さんも快方に向かっているわけだし、そろそろ次に向けて動き出した方がいいかもね。一応目星はつけてある」
「へぇ、流石戒規はん。仕事が早いわぁ」
「でも…ふぁぁ、もう夜っすよ?」
「うん。今日はもう遅いし詳しい話は明日することにしようか。全員休息をとって英気を養ってくれ」 - 19124/08/12(月) 18:20:26
皆が話す中、新吾郎はそそくさと部屋から退出しようとする。それを見咎めたのは柘植だった。
「おい、新吾郎。お前どこ行くつもりだ?」
「あ?んなの俺の勝手だろ」
『一応私の体だからね!?』
「今は俺の体だ。あー…散歩だよ、散歩。せっかく久々に自由になったんだ、外の空気くらい吸ってもいいだろ?どうせ日付が変われば主導権はコイツに戻るわけだしよ」
「普段娑婆の空気吸えんのは可哀想やなぁ…」
「…はぁ。朝までには戻って来いよ」
「おう」
柘植からの許可が降りるや否や、新吾郎は早足で出て行ってしまった。柘植は深く溜息を吐き、頭を掻く。
「良かったんすか?自由にさせて」
「まぁな。今更鹿紫雲をどうこうしようって奴じゃねぇし、約束は守る奴だからな。ガス抜きは必要だろ」
「本当に散歩なんやろか?」
「…散歩であって欲しいが…」
グギュルルル…
大きな腹の音に皆霧子の方に注目する。布団に寝かされた霧子がゆっくりと起き上がった。顔色は悪いが動けるレベルには回復したようだ。柘植は彼女に近寄り目線を合わせる。
「腹、減ったか?」
「うん…。お腹…空いた…」
「何食いたい?」
「肉…たくさん…」
柘植はそれを聞き優しく微笑んだ。周囲の皆にも笑顔が浮かぶ。どうやら食欲も出始めたらしい。柘植は霧子の夕食を用意するために厨房に向かった。それに続いて美夜、直投も同行した。2人も手伝ってくれるのだそうだ。お見舞い組では戒規だけが取り残される形になった。
- 20124/08/12(月) 18:38:43
「…いい友達を持ったね」
「はい…柘植さんも、鹿紫雲さんも、僕の大事な友達です。戒規さん達も、同じです」
戒規の呟きに、霧子は嬉しそうに答えた。少なくとも、これまで自分を心配してくれたのは姉の薫子だけだった。他はみな自分を蔑み、酷使し、欲の捌け口として利用するだけだった。しかし今は違う。自分の周りにはこんなにも温かい人がいる…その事実が霧子にとっては堪らなく嬉しかった。
「ところで、君のお姉さんの件だが…」
「分かってます。きっとあれは鹿紫雲さんの言う通り、僕のためのルール…姉はそういうことをする人です」
「…愛されてるんだね」
「…そう、ですね」
霧子は布団に置いた手を握りしめ、震える声で答えた。困ったような、怒ったような、複雑な表情を浮かべる。
「…時々分からなくなるんです。自分にとって『姉』がどういう存在なのか。世間では呪詛師として扱われて、実際たくさんの人を殺していて…それでも、僕の中では彼女は『優しいお姉ちゃん』なんです。あの家の中で唯一、僕に優しくしてくれた人なんです」
「…」
「姉は…剣薫子は倒さなければならない『敵』です。それは分かっています。それでも…僕は…」
そう言いかけると、唇をぎゅっと噛み締めた。それ以上の言葉は言い出すことができなかった。割り切ることのできない自分が不甲斐なかった。
「別に、君がそう思うならそれでいいんじゃない?」
「え?」
「だから、お姉さんを倒したくないんだろ?それでもいいんじゃないの?ってこと」
予想だにしなかった返答に空いた口が塞がらなかった。
- 21124/08/12(月) 19:58:52
「そりゃ剣薫子は有名な呪詛師だし即時死刑の命令もでている。俺も彼女をなんとかしないといけないとは思っているが…それと君の感情は別問題だろ?」
「それは…そうだが…」
「死滅回游は良くも悪くもカオスな場…もしかしたら彼女を倒さない道もあるかもしれない。それが君の選択なら皆止めはしないだろう。今すぐ割り切る必要はない。というかすぐには割り切れないことばかりだよ、呪術師ってのは。でもいつかは決断しなきゃいけない時は来る。その時、後悔の無いようにね」
「…優しいんですね。そんなことを言ってくれるなんて」
「ま、俺が兄弟姉妹の人情話に弱いだけなんだけどね。そりゃ血の繋がった姉と戦いたくないよね。分かるよ、その気持ち」
戒規は苦笑しながら頭をポリポリと掻いた。霧子は不思議そうな顔でそれを眺め、一息ついて口角を上げた。
「ありがとう…。姉とどう決着をつけるべきなのか…もう少し考えてみる」
「うんうん、迷った末に見つけた答えに意味があるからね。自分が納得できる結論を見出せるまで、諦めちゃ駄目だよ」
「うん。…なんか戒規さん、先生みたいだ」
「一応俺教師だからね?」
「あ…そうだった、忘れてた」
- 22124/08/12(月) 20:29:29
『ねぇ〜!しんちゃん!!どこ行くつもり〜!?』
新吾郎、もとい鹿紫雲はこっそりとアジトから抜け出し夜の京都結界を散策していた。結界内に電気は通っているとはいえ、民間人がいるはずもなく街の明かりは街灯だけだった。辺りは静まり返り、スニーカーの靴音だけが響いている。
『ねぇってば!散歩にしては遠出しすぎじゃないの?』
「るせぇなぁ…」
『絶対散歩じゃないでしょ!』
「ったり前だろ。せっかくの自由だ、どうせなら強い泳者と戦わねぇとな」
『勝手なことしないでよ〜!!』
「『縛り』結んだテメェの責任だろうが。…あと3時間くらいか。クソッ、早く戦らねぇと…お?」
『?しんちゃん?』
何かに気づいた様子の新吾郎は屋根の上に一跳びすると、周囲をキョロキョロと見回した。真っ黒な絨毯に疎らに光の粒を散らしたような景色はどこを見ても同じように映る。少なくとも鹿紫雲にはそう見えた。ふと、とある一点を見つめて新吾郎の目が止まる。
『?なんかあったの?』
「ああ…面白そうなもんを見つけた!!」
言い終わらぬ内に新吾郎は駆け出し、屋根を伝って目的地へと一直線に進んで行った。一飛びで3〜4軒を跨ぎ、その軌跡には紫苑の電光を残す。ものの数秒で新吾郎はそこに辿り着いた。
『速っ…!てか、何見つけたの?』
「よく意識を凝らしてみろ。感じるだろ?」
『あ…なんか、変な感じ…。人…というより、呪霊の気配…?って、うわっ!何この臭い…』
「…死臭、ってやつだ。発生源はあれだな」
屋根から見下ろした道路には、十数人から成る奇妙な集団が彷徨いていた。新吾郎からすれば雑魚同然だが、確かに呪力を感じる。傍目からは人に見えるが、何かおかしい。鹿紫雲も最初は変な人程度に思っていたが、その異常さにすぐに気づくことになる。 - 23124/08/12(月) 20:57:59
『…なんか、動きおかしくない?』
彼らの異常、それは動きのぎこちなさだった。個体差はあるもののどれも動きが硬い。関節が強張っているようで、酷いものは足首しか動かないようでピョンピョンと飛び跳ねて移動している。
『これ…まるで死後硬直みたい…。それにこの腐敗臭…もしかしてゾンビ!?』
「ぞ…まぁ、そんなとこだろうな。皆一律同じような呪力で印付けされてる。大方死体を操る術式ってとこか」
『や、ヤバくない?こんなの大量発生したら…』
「な?だから今のうちに大元叩いちまおうぜ」
『…戦う大義名分欲しいだけでしょ?ま、いいけどさ』
「よし、じゃあまずはコイツらからだな!」
意気揚々と屋根から飛び降りる新吾郎。彼の気配を感じ取り、屍人達はジリジリと距離を詰め始める。硬い関節のせいか普通に人が歩くより若干スピードは遅い。
『ゾンビは大体噛まれたりすると感染するの!近づかれないようにして!!』
「へぇ…じゃ、まずは挨拶代わりに…っ!!」
勢いよく如意を振り上げ、帯電させる。一瞬の煌めきと共に、屍人の1人の腹に大穴が空いた。…しかし。
「ゔゔゔ…」
「あ?」
『効いてない…というより、死んでるからダメージを感じないんだ!!』
「餓者髑髏みたいなもんか」
「ゔゔゔ…」
「あ゛あ゛…」
気づけば新吾郎の周囲を取り囲むように屍人が群がってきていた。上を見れば屋根の上にも数人が登ってきている。
『か、囲まれてるよ!?』
「…急に統率の取れた動きをしだした…指揮者が近くにいるな」
- 24124/08/12(月) 21:28:00
『しんちゃん後ろっ!!』
「分かってる!!」
次々に襲い来る屍人を薙ぎ倒す新吾郎。しかし、腕を飛ばされようと、首の骨が折れようと、構わず動き続けている。何体かは動き出す気配がないが、活動している個体の方が遥かに多い。
(何体かは倒せてるんだよな…。何か弱点があるはずだ)
『しんちゃん!しんちゃん!!』
「うるせぇ!今考えてんだよ!!」
『しんちゃん!倒した個体、全員頭飛ばしてたよね!?』
「!…なるほど」
パリッ…!迸る電光。次の瞬間、屍人の頭部は爆裂四散し、地面に倒れ込む。そして、二度と動き出すことはなかった。
『やっぱり!ゾンビにはヘッドショットなんだよ!!』
「へっ…?まぁいい、頭飛ばすだけでいいんなら楽で結構だ!!」
仲間の死に動揺する素振りもなく襲いかかる屍人達。しかし、弱点を掴んだ新吾郎にとって敵では無かった。夜の闇に走る稲妻、遅れて吹き上がる血潮。1分も経たぬうちに辺りは再び静まり返っていた。街灯に照らされる夥しい数の死体の山。その中心には返り血を浴びた新吾郎が佇んでいた。これだけの数を相手にしながら息切れ一つしていない。
「チッ。タネが割れれば大したことねぇな。そもそも期待しちゃいなかったが…」
『…この人達、元は泳者なのかな?殺されて、ゾンビにされたのかな…?』
「大元はもう少し楽しませてくれるといいんだが…」
- 25124/08/12(月) 22:06:44
「あ〜らあら、もう倒しちゃったのぉ?強いわねぇ、貴女」
『誰!?』
「…この呪力、オマエが術者か」
見上げると、電柱の上に女が立っていた。チャイナドレスだろうか、中華風の服を見に纏い、髪は黒く、長い。不敵に微笑むその唇は艶のある紅色をしているが、その肌は気味が悪いほどに青白かった。
「いかにも。私は南天燭…貴女達が倒した僵尸(キョンシー)は私が作ったの」
『この人達は…』
「お察しの通り、私が殺した泳者よぉ。非術師だから大して強くはならないけど…捨てておくのも勿体からねぇ」
クスクスと愉快そうに笑う。そんな彼女を尻目に新吾郎を鼻をヒクヒクと動かし、顔を顰めた。鹿紫雲にも新吾郎の感じたものが伝わったようで、同じく苦い顔をする。
「おい、オマエ…臭えぞ。死臭がこっちまで来てやがる。オマエも僵尸ってわけか」
「あらぁ、もう臭ってきてる?エチケットには気をつけてるつもりなんだけどねぇ。ごめんなさいねぇ、自分の匂いには鈍感になりがちで…」
そう言うと南天燭は懐から香水を取り出し自身に塗し始めた。ふわりと桃の香りがする。その隙に新吾郎は跳び上がり南天燭の頭部に狙いを定める。
「桃のパルファム…お気に入りなの。あぁ、あと私が僵尸なのかって話だけど…」
「オマエも頭飛ばせば終いだろ?」
「そうなんだけどねぇ」
新吾郎の如意が南天燭の脳天目掛けて突き出される。…が、それが命中することはなかった。南天燭はふわりと宙に浮き上がったのだ。驚愕する新吾郎を見下ろしながら、南天燭は口を開いた。次の瞬間、彼女の口からは強烈な火炎が噴射され、新吾郎を地面に叩き落とした。
「熱っつ…!!」
『と、飛ぶのは反則でしょうがぁ!!』
「ふふ、ごめんなさいねぇ。私、ただの僵尸じゃないのよぉ」
- 26124/08/12(月) 22:58:25
『ただの僵尸じゃない…?』
「飛んだり火ぃ吹いたりすんのかよ…!」
「うふふ…驚いたかしらぁ?」
「だが…避けるってことはやっぱり頭が弱点なんだな!!」
再び跳び上がろうとする新吾郎。しかし、背後に気配を感じ即座に迎撃体制に移行した。背後にいたのはdice1d3=3 (3) 体の僵尸。しかし、先程までの僵尸とは雰囲気が異なる。刹那、僵尸の拳が新吾郎に襲いかかった。
「っ!?コイツ…動きが…」
『関節が固まってない!?そういえば、南天燭も…』
「私が作った僵尸は時間が経って呪力が屍体に馴染むほど動きが滑らかになっていくのぉ。術式持ちならそれも行使できるようになるしぃ、複雑な命令もできるようになるのぉ…。私、ちょ〜っと用事があるからその子達に相手してもらうわねぇ。貴女の死体も欲しいけどぉ…今はこっちが優先だからぁ。ばいば〜い!!」
「あっ…!待てオラ!!」
新吾郎の叫びに聞く耳を持たず、南天燭はどこかに向かって飛び去ってしまった。暗い街路に残されたのは新吾郎と僵尸だけ。
「明らかに戦い慣れた動き…さっきのとは違うってわけか。面白い…!」
- 27124/08/12(月) 23:00:43
- 28二次元好きの匿名さん24/08/12(月) 23:03:30
坐殺博徒
- 29二次元好きの匿名さん24/08/12(月) 23:05:29
構築術式
- 30二次元好きの匿名さん24/08/12(月) 23:06:30
未明の理
無明の理によく似た術式、あり得る可能性をランダムで引き寄せる効果を持っている - 31二次元好きの匿名さん24/08/12(月) 23:07:26
御厨子
- 32二次元好きの匿名さん24/08/12(月) 23:12:54
分身
- 33二次元好きの匿名さん24/08/12(月) 23:15:01
- 34124/08/12(月) 23:18:25
- 35二次元好きの匿名さん24/08/12(月) 23:19:13
幻獣琥珀×2と構築術式…
うん!完全にハズレ術式だな!! - 36124/08/12(月) 23:19:37
- 37二次元好きの匿名さん24/08/12(月) 23:20:09
電気
- 38二次元好きの匿名さん24/08/12(月) 23:20:22
石
- 39二次元好きの匿名さん24/08/12(月) 23:21:06
鋭い呪力
- 40二次元好きの匿名さん24/08/12(月) 23:21:34
爆破
- 41二次元好きの匿名さん24/08/12(月) 23:24:07
- 42124/08/12(月) 23:27:24
- 43124/08/12(月) 23:27:58
1人新吾郎が紛れてるな…
- 44二次元好きの匿名さん24/08/12(月) 23:28:27
偽新吾郎キョンシー
- 45二次元好きの匿名さん24/08/12(月) 23:29:13
よくもまぁこんなそっくりさんが
南天燭の過去のコレクションかな?
ある意味しんちゃん的にはおもしれー相手か - 46二次元好きの匿名さん24/08/12(月) 23:32:10
- 47二次元好きの匿名さん24/08/12(月) 23:34:04
わからないのか?スーパー関西人の誕生だよ
- 48124/08/12(月) 23:54:45
僵尸の作り方 dice1d4=3 (3)
1、死体の額にマーキングする
2、死体に術者の血を取り込ませる
3、死体に噛みつき血を術者が摂取する
4、儀式をする
僵尸になると身体の腐敗は…dice1d3=3 (3)
1、止まる(その時点の腐食度で止まる)
2、止まらない
3、止まらないが呪力により遅らせることは可能
僵尸に噛まれると…dice1d3=3 (3)
1、その人間も即座に僵尸になる
2、噛まれた後死亡すると僵尸になる
3、猛毒でダメージを受ける
- 49二次元好きの匿名さん24/08/13(火) 09:24:34
新吾郎vs偽新吾郎僵尸
うーんこの偽物の属性過多感 - 50124/08/13(火) 10:24:12
南天燭の僵尸の分類
僵尸は周囲の呪力を吸うことでどんどん進化するぞ!
一般僵尸
・一番数が多く主に非術師がなる。関節が硬く動きもぎこちない。爪や牙に猛毒があり喰らうとかなり苦しむ。色々と治療法はあるものの、毒状態で死亡するとその人も僵尸になる。この状態でも常人より膂力がある。
上級僵尸 現在dice1d200=161 (161) 体
・一般僵尸から成長した個体。戦闘慣れした屍体や術師がなる。屍体に呪力が馴染むことで動きが滑らかになり、肉体に刻まれた術式の行使も可能。また、一般僵尸より複雑な命令もできる。
飛僵(ひきょう) 現在dice1d50=40 (40) 体
・上級僵尸が周囲の呪力を吸い続けることで進化した状態。飛行能力がプラスされ自在に空を飛ぶことができる。
犼(こう) 現在dice1d10=5 (5) 体
・飛僵が更に進化した状態。南天燭はこの段階。飛行能力に加え口から炎を吹く。また、肉体強度も飛躍的に上昇している。
屍尢(しおう)
・現在未確認。この状態になると肉体が永久不滅のものになるらしい。
- 51二次元好きの匿名さん24/08/13(火) 11:34:23
クリッカーなの?ラストオブアスなの?
- 52124/08/13(火) 11:40:04
ちなみに南天燭が死んだ場合僵尸は…dice1d2=1 (1)
1、ただの死体に戻る
2、南天燭のコントロールを外れて動き続ける
南天燭の存在は高専には…dice1d2=2 (2)
1、知られている
2、知られていない
南天燭→羂索の印象 dice1d3=1 (1)
1、同じ死体仲間として好感を持っている
2、腐ってないので羨ましい
3、綺麗な状態の死体はあまり好きじゃない
- 53二次元好きの匿名さん24/08/13(火) 12:11:13
屍友というトンデモ関係
- 54二次元好きの匿名さん24/08/13(火) 13:29:16
術式使える僵尸200体もいるのか…
- 55二次元好きの匿名さん24/08/13(火) 13:49:31
高専に把握されてないってことは裏でコソコソ勢力増やしてたのかな?
- 56二次元好きの匿名さん24/08/13(火) 16:26:22
頭が弱点とはいえ下手すりゃパンデミック起きないか?危険度は特級クラスだな…
- 57二次元好きの匿名さん24/08/13(火) 16:29:10
呪霊操術使いと同じく手数を持ち自身の持っていないスキルも補える
厄介だ…
放っておけば日本でバイオハザードになりかねん - 58二次元好きの匿名さん24/08/13(火) 18:39:14
これを1人で捌いてる霧藤馬、ハッキリ言っておかしいだろ
しかも戦えない泳者の保護もしてるし
こいつヤバくね? - 59124/08/13(火) 19:38:37
敵に会った時の霧藤馬の基本行動 dice1d3=3 (3)
1、逃走
2、迎撃
3、一応対話、その後dice1d2=2 (2)
南天燭、真澄によって霧藤馬の保護した泳者はdice1d10=6 (6) 人殺された。
霧藤馬の現在 dice1d3=3 (3)
1、新吾郎の様子を伺っている
2、民家に息を潜めている
3、真澄と交戦中
- 60124/08/13(火) 19:42:07
- 61二次元好きの匿名さん24/08/13(火) 22:50:19
- 62124/08/13(火) 23:18:49
「ゔゔぅ…!!」
僵尸の一体が呻き声を上げ掌を突き出した。パキパキという音を立て日本刀が掌から現れる。作り出した刀を素早く構えると達人のような動きで切り掛かってきた。鋭い切先を如意で逸らし、新吾郎は僵尸達と距離を取る。
「これは…構築術式か」
『構築術式?』
「自身の呪力からあらゆる物質を生成できる術式だ。まぁ、呪力消費が激しいからそう何度も生成はできないはず…それより、問題他2体の術式だ」
新吾郎が背後に目を向けると案の定、他の僵尸達も術式を発動していた。一体は全身が赤く発光し、もう一体は電光が迸る。電光の僵尸が右手を新吾郎に向けてかざす。新吾郎の目の色が変わる。彼が跳び上がったのとほぼ同時だった。一瞬の閃光と共に地面は大きく抉られていた。
「これは…!へぇ、奇遇だな」
『しんちゃん、今度は赤いの!!』
「口出すなっての!!」
赤い僵尸から数発の光弾が放たれる。新吾郎が電撃で撃ち落とすと同時に大爆発を起こし彼を吹き飛ばした。その隙を見逃さず刀の僵尸が襲いかかる。新吾郎は空中で体勢を整えると紙一重で斬撃をかわし、お返しとばかりに刀の側面を蹴り飛ばし叩き折った。僵尸が怯んだ一瞬、如意で殴打し地面にはたき落とした。
バチッ…!!
青い稲妻が走る。2体の僵尸が介入する間も無く、刀の僵尸の頭部は花火のように弾け飛んだ。力無く倒れる僵尸に目もくれず、新吾郎は次の獲物に飛びかかった。
- 63124/08/14(水) 07:55:09
「 あ゛!! 」
電光の僵尸の口から爆音が放たれた。新吾郎含め周囲の物質にヒビが入る。すかさず赤い僵尸は掌から爆炎を吹き出し辺りを火の海に変える。なんとか抜け出した新吾郎は屋根の上に退避する。傷は鹿紫雲由来の反転術式で治せるが服はそうも行かない。黒焦げになった上着を脱ぎ捨て軽く屈伸をする。
「チッ…2体同時だと面倒だな」
『電気自体は効かないけど、ああいう攻撃されると弱いんだよなぁ…。勝てる?』
「あ?誰に言ってんだ?勝てるに決まってんだろ」
『でもさっき面倒だって…』
「それとこれとは話が別だ。…よし、行くか」
再び僵尸の前に飛び降りる新吾郎。紫電を纏い、踏み込んだ瞬間姿が消える。赤い僵尸は獲物を見失い動揺する。対して電光の僵尸は新吾郎の動きを捉えていた。新吾郎の蹴りを拳で受け止めると、空いた手を再びかざした。
バチュッ…!
電磁波が放たれるよりも速く新吾郎の電撃が僵尸の腕を吹き飛ばす。だが僵尸故に痛みは感じないし退きもしない。口を開けて音波放射をしようとした。しかし…
「遅えよっ!!」
強烈な踵落としが決まる。ボグッ…と鈍い音が響き、僵尸の頭は潰れ砕けた。倒れ伏すと同時に肉体が砂のように崩れていく。
「…やっぱりか」
『やっぱりって?』
「コイツ、俺と同じ術式を…って、その話は後だ!最後片付けるぞ!!」
- 64124/08/14(水) 13:24:25
赤い僵尸の全身から光弾が振り撒かれ、次々に炸裂する。飛び散る熱と光、音が新吾郎を近づけさせない。僵尸の目が光ったと思った瞬間、新吾郎のいた位置に向かって熱線が放たれた。間一髪でそれを避け、新吾郎は物陰に隠れる。至近距離で高熱を浴び続け全身汗だくだ。
「はぁ、はぁ…熱ぃ…」
『あんなに弾幕張られちゃ近づけないよ…!』
「別に近づけなくてもやりようはある。それより喉乾いたな…」
『呑気だなぁ…』
「オマエほどじゃねぇさ。…っし。行くぞ」
再び僵尸の目の前に身を躍らせる。熱線が放たれると同時に新吾郎は如意を振り上げ投擲した。矢のように直進するそれは、熱線を掠め僵尸の頭めがけて突き進んでいく。
「くっ…!」
「ゔゔ…っ」
僵尸は如意を、新吾郎は熱線を、それぞれ紙一重で回避した。新吾郎の頬に一本、赤い筋が浮かぶ。相手は武器を失った…これを好機と捉え、僵尸は大技の準備に入る。右の掌に爆発性の呪力を凝縮し一気に放出する算段だ。だが、一つ思い違いをしていた。それは、武器を失ったのが新吾郎であるということ。元々彼にとって如意は補助に過ぎず、それを失うことは弱体化には一切繋がらない。垂れる血を舐め取り、新吾郎はニヤリと笑う。未だ「溜め」の状態の僵尸に向かい、ゆっくりと手をかざした。
パリッ…
自身の感じた「好機」が用意されたものだと気付いた瞬間、脳内に電流が走った。比喩ではなく、本当に。そこで彼の思考は脳ごと焼き切れた。
- 65124/08/14(水) 13:53:34
帰還電流。新吾郎が投擲した如意には既に呪力(でんき)が蓄積されていた。飛ばされた如意は僵尸の背後に着地、新吾郎の合図一つで溜めた電流を放出、如意から新吾郎に向けての稲妻が形成される。新吾郎の「溜め」は既に終了していたのである。
ブスブスと焼けこげた匂いがする。無頭の僵尸はバタリと倒れ、これまた塵のように肉体が崩れた。それを見つめる新吾郎の目はどこか悲しげに見えた。
「…コイツもか」
『しんちゃん、こいつらの術式知ってるの?てか、しんちゃんの術式って…』
「…『幻獣琥珀』。自らの呪力特性に合わせて肉体を作り変え、その呪力で可能な事象全てを実現可能にする術式だ。さっきの奴は俺と同じ電気、コイツは爆発性の呪力特性だったみたいだな」
『へぇ、じゃあ私達ならさっきの僵尸みたいなことができるってこと?』
「ああ、オマエが考えた技なんかもより効率よく発動できるように体が変わるだろうな」
『すっごい便利じゃん!!なんで使わないの?』
「…この術式が使えるのは一生に一度だ。肉体が変化に耐えきれず術式終了後は体が崩壊して絶命する。コイツらも塵になっただろ?」
『そんな…。デメリット大きすぎるよ!』
「そうだな。でもコイツら程度の呪力でもあそこまでできるんだ。俺ならもっとやれる。ま、使うのは宿儺と戦る時だけって決めてるんだがな」
『ちょっ…!それ私の体無くなっちゃうじゃん!』
「…ああ、そうだな」
『そうだな、じゃな〜い!!』
怒る鹿紫雲を尻目に新吾郎は大きく伸びをする。僵尸を倒し道路はしんと静まり返る。汗も乾いてきた。流石に11月の夜中の空気ははだけた上半身には寒すぎる。新吾郎は大きなくしゃみをした。
「えっっきし!!」
『か、風邪引いちゃうよ!!早く上着て!!』
「上着ろったって燃えちまったしな…。まぁいい、コイツの拝借するか」
仕方がなく刀の僵尸のコートを羽織る。僵尸達の服の中で無事だったのはこれくらいだったのだ。
「うえ…死臭が染み付いてやがる。早いとこ別の探さねぇとな…」
- 66124/08/14(水) 14:25:25
「さて…南天燭(アイツ)はどこ行ったかな」
『え、追うの…?これってみんな呼んだ方がいいんじゃ…』
「そりゃ逃げだろうがよ。…残穢を消すのが上手いな。匂いもさっきの爆発で飛んじまってるし…」
『はぁ…。私に主導権戻ったら絶対みんな呼ぶからね!!』
「その前に俺がアイツを殺すだけだ。…ん?」
『…悲鳴?』
南天燭の気配を探る新吾郎の耳に飛び込んできたのは甲高い女性の叫び声だった。助けを求めているようだ。
『行こう!しんちゃん!』
「チッ…人助けはガラじゃねぇが…。南天燭(アイツ)がいるかもしれねぇしな」
屋根に飛び乗り、声のした方へ駆けていく。案の定、声に近づくほど僵尸の数は増えていく。動きからどうやら下級のようだ。通りすがりざまに頭を潰し、戦闘不能にしていく。新吾郎の通った跡はまさに死屍累々、頭を無くした死体のカーペットのようになっていた。
『こんなに僵尸がいるなんて…!アジト付近に出没するのも時間の問題かな…』
「術式持ちじゃねぇなら雑魚も雑魚、狙いやすい的なんだがな。…あれか」
見ると、女性が数人、僵尸に取り囲まれていた。背後にはブロック塀があり逃げ道はない。どうやら戦闘能力は無いようで、涙を浮かべながらブルブルと震えている。僵尸の一体が牙を剥き襲いかかった。
「ゔゔ…ぁぁ!!」
「ひっ…た、助け…」
「オラァッ!!」
駆けつけた新吾郎が如意で頭を飛ばす。それを見た他の僵尸が動揺した隙を見逃さず、次の一撃。瞬きする間に新吾郎は女性達を囲んでいた僵尸を全滅させていた。顔についた返り血を拭い振り返る。女性達は怯えの表情を見せた。
- 67124/08/14(水) 14:42:33
「あー…大丈夫か?安心しろ、非泳者…あと非術師を襲うつもりは無ぇよ」
「あ、ありがとう、ございます…」
ようやく女性に安堵の表情が浮かんだ。それでもまだ警戒はしているようだ。泳者、術師は襲うような言い方をしているのだから当然だろう。鹿紫雲も頭を抱えていたが、とりあえず話を進めるため自分が話すと新吾郎を下がらせた。
『えーと、お姉さん方は、こんな夜中になんで外に…?』
「わ、私達は、その、薬と包帯を探しに来てて…」
そう言うと1人がビニール袋の中に入った大量の医療用具を見せた。よく見れば彼女達は擦り傷だらけで相当慌てていたことが分かる。
『もしかして、緊急の怪我人が出たとか?』
「そ、そうなんです。私達、あるグループに属してるんですけど、リーダーが戦闘で怪我をしてしまって…」
『!!その…色々聞きたいことはあるんですけど、私、怪我治せるんです。きっと役に立てると思いますよ。…簡単には信じてもらえないでしょうけど』
「ほ、本当ですか!?彼、酷い怪我で…!治していただけるんでしたら、是非…!!」
『勿論です!行こう、しんちゃん!!』
「ケッ…お人好しがよ」
『それで、そのリーダーって人は…』
「…この辺りで戦えない人達を集めて一緒に死滅回游から脱出しようとしているんです。私達も彼に助けられました」
「で、ソイツの名前は?」
「…霧藤馬壱弥、といいます。いつも無茶ばかりして…心配になるんですよ」
- 68124/08/14(水) 21:10:14
女性達に連れられ新吾郎は裏路地を進む。途中何度か僵尸の追撃を受けたが、悉く撃破していった。どうやら僵尸はこの辺り一帯に放たれているようで特に明るい街頭がある大通りに屯していた。
「オマエらのグループ、戦える奴いねぇのか?」
「それが…ほとんどがここに取り残された人達で、術式?っていうのは持ってないんです」
「術式があってもみんな死ぬのに怯えてて…逃げることしかできないんです」
「ケッ、情け無ぇ連中だな」
『ちょっと、しんちゃん!!』
「事実だろうが。それで、リーダーってのは強いのか?」
「ええ、私達よりずっと。でも怪我することも多くて…」
「あ、そろそろ着きますよ」
女性の1人が路地の先の廃ビルを指差す。幸いここまで僵尸は来ていないようだった。新吾郎は警戒しながら中に入る。ビルの中には男女数人が身を潜めていた。その立ち振る舞いから明らかに戦闘の素人…弱小泳者だと分かる。皆一様に不安げな表情を浮かべ、来訪者に疑いの目を向けている。
「みんな、安心して!この人は私達を助けてくれたの。それに、霧藤馬さんを手当てしてくれるって!」
女性の呼びかけで彼らは落ち着きを取り戻したようだ。女性の1人が持っていた袋には食糧が詰められていたようで、一人一人に缶詰や缶ジュースを手渡していた。
「俺が本当に『いい人』かどうか分からねぇのにここまで案内しやがって…本当、頭がめでたい連中だぜ。警戒心ってのが無ぇのか?だからカモにされんだよ」
『そういうこと言わないの!』
「新吾郎さん…でしたよね。こちらです」
奥からやってきた男に案内され新吾郎は一室に入った。部屋にはベッドが一台。そこには血塗れの青年が横たわっていた。
- 69124/08/14(水) 21:32:04
青年は全身傷だらけで至る所に包帯や絆創膏が巻かれ貼られている。荒く息を吐き、苦しそうに起き上がると側に置かれた水を一口飲んだ。片腕は折れているのかだらりと力無く垂れ、足も恐らく歩くことはできないのだろう。側から見ても虫の息、放っておけば死んでしまうと分かる。
「…オマエが霧藤馬か」
「ああ。初めまして、新吾郎さん。僕の仲間が助けられたそうで…礼を言うよ」
「気にすんな。鹿紫雲(コイツ)が五月蝿ぇから仕方がなく割り込んだまでだ」
『またまた〜そうやって照れちゃっむぐぐ!!』
「…ここまで案内してもらったわけだが、俺が素直にテメェを治療すると思うか?」
「ここで僕を殺すような人間ならわざわざそんなこと言わないだろ?…まあ、タダで死ぬつもりも無いが…」
「…へっ」
新吾郎はニヤリと笑うと霧藤馬に手をかざし、反転術式を施した。元々新吾郎は反転術式を使えなかった。しかし、器である鹿紫雲が反転術式、そしてそのアウトプットを習得したことで新吾郎も学習、会得していたのである。少し時間はかかったが、霧藤馬の傷は塞がり、荒い息は少しずつ落ち着きを取り戻した。
「…こんなもんだろ」
「ありがとうございます。非力なもので、毎度傷だらけになってしまうので…」
「戦えねぇ奴ら集めて結界から脱出するって聞いた。その調子じゃ出る前にテメェが死んじまうぞ」
「はは、ご忠告ありがとうございます。でも、大丈夫なんです。僕、死なないですから。いや、死.ねないって言った方がいいかな?」
「?」
『それって…不死身ってこと?』
- 70124/08/14(水) 21:48:16
霧藤馬は乾いた笑い声を吐き出す。彼に促され新吾郎は側の椅子に腰掛けた。霧藤馬から水のペットボトルを渡され、一気に飲み干す。霧藤馬は低いトーンで話し始める。
「僕の術式…最初は気づかなかったんです。手から雷みたいなの出せるんですけど、これは呪力特性ってやつみたいで…。戦闘は専らこれでやってます。で、術式の話なんですけど…初めて発動したのは結界に入って数日経った頃…泳者の戦闘に巻き込まれて瓦礫に押し潰された時のことです。全身ぐしゃぐしゃになって…それでも」
「死.ねなかった…ってか?」
「はい。確かに体は壊れていました。でも、死ななかった。意識ははっきりとしていて…段々と体も動くようになりました。どうやらある程度肉体が破損するとリセットされるようです。それでも痛いものは痛いですし、片腕無くなった程度じゃリセットは起きないんですけどね」
『つ、辛くない…?』
「そりゃあね…。それから何度か死に目に遭いましたよ。でも死なない。想像を絶する痛み、苦しみ、それを味わいながら意識だけははっきりしてるんです。…地獄ですよ。何度自害しようとしたことか…。失敗しましたけど。どうやら自動発動みたいです」
クックックと苦笑する。しかし、霧藤馬の目は笑っていない。新吾郎は何も言わずにじっと話を聞いていた。
「…何度も問いかけました。何故こんな目に遭わなきゃいけないのかと。望んで手にした力じゃないんです。何も僕は不死身になりたかったわけじゃない。なのに、殺し合いの場に放り込まれて…」
「…」
「問いかけても誰も答えてくれない。だから、自分で答えを出すことにしたんです。これは、誰かを助けるための力なんだと。誰か死にそうな人の代わりに僕が死ぬ。そうすることで誰かが救えるなら、それでいいじゃないかってね」
『それは…自分を粗末に扱い過ぎだよ!!いくら死なないからって、そんな…』
「いいんです。いくら粗末に使っても完全には壊れませんからね。…そう割り切らないと、やってられませんよ」
- 71二次元好きの匿名さん24/08/14(水) 22:57:22
自暴自棄でもそれが『守る』方に向くならアンタいい奴だよ
新たな不死の術者…甚爾の因果の崩壊が影響したのか
はたまた覚醒してないだけで星漿体みたいに実は複数存在してたのか… - 72124/08/14(水) 23:53:45
「…なるほど、要は体良く自殺したいってわけか」
『ちょっ…!!』
「…まぁ、そうですね。こうやって誰かの為に戦い続ければ、いずれ僕を殺せる泳者が現れるんじゃないかってね。…未だに、死にかけはするけど死にはしないんですけどね」
『でも、死にたいだなんて…』
「…僕にとっては生も死も等価なんですよ。ずっと生き続けているし、ずっと死んでいるような気もする。…終わらせたいんですよ」
「オマエが連れてるアイツらはそのための手段か?」
霧藤馬は一瞬言葉に詰まった。しかし、目を伏せ苦笑いしながら続けた。
「…ある意味では、そうです。しかし、彼らを助けたいという気持ちも本当です。その為にこの命を使いたい」
「あんな連中のためにか?頭も力も弱い連中だ」
「だからこそですよ。…彼らの命は僕と違って一つです。死んだらそこまで…だから守りたいんです」
「…守る…」
『いい人だぁ…!どっかのお爺ちゃんとは大違い!』
「…とにかく、それがオマエの関わり方、か…。悪くない。だが、さっきもボロボロだったじゃねぇか。こんなんじゃ全員脱出なんて夢のまた夢だぜ」
「恥ずかしながら…僕には戦闘センスというものがなくて。…何人か、逃げる中で失った仲間もいました。今回も泳者に襲われ敗走しまして…」
「!!どんな泳者だ?」
「…1人は式神使い、もう1人はゾンビ使いでした。2人とも僕を狙って…」
『霧藤馬くん、狙われてるの?』
「はい…。理由は僕の『不死身』にあると思うのですが…僕自身が彼らの危険になり始めているんです」
『!じゃあ南天燭が言ってた「用事」って…』
「コイツのことだろうな」
新吾郎が目を細めニヤリと笑う。鹿紫雲は嫌な予感を覚えた。霧藤馬はきょとんとした顔で新吾郎を見つめている。
「なるほど…つまり、オマエを餌にすれば…」
- 73124/08/15(木) 08:30:41
『え、餌って…まさか、霧藤馬くん狙いで襲ってくる泳者と戦うつもり!?』
「おう。そうすりゃ俺は強ぇ奴と戦れて満足、コイツらは障害が消えて満足、どっちにも利がある話だ。それにオマエもコイツ助けたいだろ?」
『それは…そうだけど…』
「申し出はありがたいですが…知り合ったばかりの貴女方に無茶はさせられませんよ」
「心配すんなよ。オマエよりずっと強ぇからよ」
『泳者の保護だったらやっぱりみんなを呼んだ方が…』
「外への誘導ならそれでもいいかもしれねぇが、泳者潰すなら早い方がいいだろ」
『むぅ…聞く耳持たないなぁ。それにそう都合よく敵が来るとは…』
ガシャーン!!
「!!」
ガラスの割れる音が響いた。どうやら入り口の方らしい。新吾郎と霧藤馬は急いで音のした方へ向かう。現場には逃げ惑う人々と暴れる僵尸。血の気を失ったその顔に、鹿紫雲は見覚えがあった。
『あれって…さっきしんちゃんが助けた女の人!?』
「既に僵尸だったってことか…?」
「…残念ですが、彼女は『感染』してしまったようです。やむを得ませんが、ここで倒します…!」
『か、感染!?やっぱり感染るもんなの!?』
「はい、あれに噛まれたり引っ掻かれたりすると体内に毒素が入ります。そのまま放っておけば彼女のように…。僕のために外に出たばっかりに、こんなことに…っ!!」
暴れる僵尸は倒れ込んだ女性を取り押さえ、首筋に噛みつこうとする。彼女は僵尸になった女性の友達らしく必死に元に戻るよう呼びかけている…しかし、それが届くことはなかった。鋭い牙が襲い掛かろうとした瞬間、雷光が走り僵尸の頭が蒸発した。発生源は新吾郎ではない。霧藤馬の掌だった。唇を血が出るほどに噛み締め、絞り出すように呟く。
「…ごめんなさい、僕のせいで…」
- 74124/08/15(木) 13:14:44
霧藤馬は周囲の人々の安否を確認する。物資はめちゃくちゃにされているが、噛みつかれたり、引っ掻かれたりした人はいないようだ。友人が僵尸になったことにショックを受けたのか、女性は泣きじゃくっている。
「…死滅回游が始まってからもうすぐ1ヶ月…一体何人もの人が、理不尽に命を…」
「…仕方がねぇだろ。力が無いなら蹂躙される、それが真理だ」
「それはそうですが…」
「…それでも、オマエはこれだけの人数助けてんだ。勿論、救えなかった奴もいるが…オマエがいなければ全員死んでただろうな。オマエはできることをやってる…あまり気に病むな」
「…ありがとうございます」
「それにしても、だ…」
『?』
違和感。新吾郎は違和感を覚えていた。あの時僵尸に襲われていたのは確か3〜4人、まとまって行動していた。全員に擦り傷が見られたが、僵尸化したのは1人だけ。新吾郎は遺体を確認する。他のメンバーには無い引っ掻き跡が腕に見られた。
「これは…まさか…」
「き、僵尸だぁぁぁ!!」
「!!」
入り口を見張っていた男の叫び声がこだまする。見ると、ビルに向かい大量の僵尸達が押し寄せて来ていた。霧藤馬は仲間達に奥へ逃げるよう指示する。恐怖と絶望のパニックの中で、新吾郎は冷静に如意を構えていた。
「おい、オマエも下がってていいぞ」
「いえ…微力ながら僕も戦います。お陰様で傷は回復しましたからね」
「足引っ張るなよ」
「…善処します」
- 75124/08/15(木) 14:08:14
新吾郎と霧藤馬はビルの外に出る。その動きぶりから恐らく大半は下級僵尸だろう。見上げると、向かいのビルの屋上には南天燭が立っていた。
「さっき振りねぇ、霧藤馬くん♡それに電気ガール…上級僵尸3体をあっという間に倒しちゃうなんてぇ、やるじゃない」
「ケッ、歯応えの無い連中だったぜ」
「言うわねぇ…」
「どうしてここが…!」
「貴方の所に女の子、いたでしょう?あの子に僵尸の毒を取り込ませてぇ、その気配を追ったのぉ。時間差で僵尸化させることもできるのよぉ」
「やっぱりか…」
『なんで霧藤馬くんを狙うの?』
「ん〜、こう言うと気持ち悪がられちゃうんだけどぉ…。私、死体愛好家なのよねぇ。最近だとネクロフィリア?って言うらしいけどぉ…。気に入った子は僵尸にして手元に置きたくなっちゃうのよねぇ。死.ねない霧藤馬くんの死体は一体どんなものになるかしらぁ?命の灯が消えた瞳、血の気を失い美しく染まる肌の色…気になって夜も眠れないわぁ!!」
興奮気味に語る南天燭。下の僵尸達はジリジリと距離を詰めてくる。戦闘が始まろうとしたその瞬間、新吾郎は奇妙なものを見た。一番前の僵尸、その足元の影から何者かが這い出て来たのだ。
「…相変わらずキッショい性癖やわぁ…。脳味噌まで腐っとんのか?」
「…貴女、尾けて来てたのねぇ」
「獲物は一緒やからなぁ…先越されへんためには仕方があらへんやろ」
- 76124/08/15(木) 15:14:28
影から現れたのは黒髪の少女。見た目は幼く見えるが、その雰囲気はどこか威厳を感じさせる。周りの僵尸達が戦闘体制に入る。どうやら南天燭とは協力関係に無いようだ。側の僵尸が唸り声を上げ彼女に襲い掛かろうとする。その瞬間、足元の影から更に何かが飛び出し、周囲の僵尸達の頭を切り落とした。
「!邪魔しないでよぉ…」
「アンタの僵尸、えらく元気がええからなぁ。ちょいと遊んでやったんや」
少女を寄り添うように大きな犬の式神が姿を見せる。少女は犬を一撫ですると自身の影の中に戻した。
「…オマエは?」
「ウチは三影真澄…っちゅーのはこの器ん名前か。禪院真墨や」
『この人が霧藤馬くんの言ってた式神使い?』
「はい…最初この人に襲われたんです。複数の式神を使ってきます、気をつけて!」
「オマエも霧藤馬(コイツ)狙いか」
「そうやね。知り合いから頼まれてなぁ、アンタが生きとると色々都合が悪いらしいんや。可哀想やけど、堪忍なぁ」
「…だってよ。モテモテじゃねぇの」
「殺しに来られてるんですよ、喜べませんよ…」
「冗談だ。オマエは死なせねぇよ」
「う〜ん…霧藤馬だけやと思ったんやけど、アンタも相当な手練れやねぇ…。先にアンタを消した方が早そうや。おーい腐れ女ァ、霧藤馬は一旦預けとくわぁ」
「あらぁ、いいのぉ?返すつもりは無いけどぉ、その子片付けてくれるのは助かるわぁ」
「じゃ早速…始めよか」
「!!霧藤馬、下が…」
「『貫牛』」
新吾郎の目の前が真っ暗になる。彼が意識を取り戻したのは空中、物凄い速度で空に投げ出されている最中だった。全員に激痛が走り、骨がミシミシと音を立てる。周囲に飛び散るコンクリートとガラスの破片。新吾郎はビルを数軒ぶち抜き吹き飛ばされていたのだ。血塗れの頭を必死に動かす。
『み、見えなかった…!!しんちゃん、無事!?』
「げほっ…一応ガードはしたが内臓も潰された…!!なんだ今のは…!?」
「!!…へぇ、これ食らってミンチになっとらんのか。ええね、久々に楽しめそうや」
- 77二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 15:33:18
そういえば真墨って今まで一つも式神破壊されてないの?(破壊されても引き継ぎできるだろうけど)
- 78124/08/15(木) 15:41:45
- 79二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 16:04:49
あるっちゃあるけど受肉で綺麗にリセットされた感じか
- 80二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 16:21:52
てかよく考えたら新吾郎と真澄って何気に同じ時代(江戸)の人間だな
- 81二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 16:36:52
御前試合が慶長、江戸時代初期だとして新吾郎が約400年前だと近い時期の可能性があるね
石流といい江戸時代も猛者揃いだ - 82124/08/15(木) 17:26:19
新吾郎→禪院真墨 dice1d3=3 (3)
1、会ったことがある
2、噂で聞いたことがある
3、全然知らない
真澄→新吾郎 dice1d3=2 (2)
1、会ったことがある
2、噂で聞いたことがある
3、全然知らない
- 83二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 17:44:08
噂で耳には入ってたのか…凄いな新吾郎
- 84二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 17:47:06
流石雷神
- 85二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 17:51:38
二人共直接会ったことはないが、真墨の方は噂に聞いてたって感じか
結構な有名人だったんだなぁ新吾郎 - 86二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 18:35:02
けどこれって新吾郎の方は何も知らないのに対して向こうには手の内バレてるって見方もできませんか…?
いやあくまで噂だからそこまで詳細は知らないか… - 87二次元好きの匿名さん24/08/15(木) 19:02:20
三つ巴、ラウンド2
雷×電揃い済みで流れが変わるかと思いきや
真澄の的確な判断力
あの新吾郎が反応しきれないとは…
初速から凄まじい威力の貫牛…!
口調から漂う風格と自負
良い… - 88124/08/15(木) 19:51:18
吹き飛ばされた勢いそのままに、新吾郎は更に2棟のビルを貫通、その次のビルに突っ込んだ際に床に如意を突き刺すことでなんとかブレーキを掛けた。荒い息と共に膝から崩れ落ちる。口の中に鉄の味が滲む。全身がギシギシと軋み悲鳴を上げている。なんとか反転術式を回し回復を図るが、頭部の出血も酷く時間がかかってしまう。
『だ、大丈夫!?めちゃくちゃ吹っ飛ばされちゃったけど…。血も凄いし…』
「はぁ、はぁ…げほっ!こんくらい…平気だ。ちょっと油断しただけだ。ははっ」
『?な、なんで笑ってるの?』
「ようやく骨のある奴と会えて嬉しいぜ…!あんまワクワクさせんなよ…」
埃と血を払うと新吾郎はゆっくり立ち上がり、ビルの屋上に向かった。空を見れば、真墨は悠々と鳥の式神に跨ってこちらに向かって来ている。
「なんやぁ、アンタ反転使えんのか。なんぼでも遊べてお得やね」
「さっきの式神…中々の威力だったぜ。召喚から攻撃までの間も最小限…相当の使い手だな」
「ふふ…褒められて嬉しいわぁ。お礼に…冥土にタダで送ったる!!『玉犬』!!」
真墨の印に合わせて先程の犬の式神が襲いかかる。黒い疾風のようなそれはあっという間に距離を詰め、腹を抉ろうと鋭い爪を突き出す。新吾郎はその手を踏み越え背後を取ると如意で足を払い重たい蹴りを一発決めた。軽々と蹴飛ばされた玉犬だがすぐに体勢を立て直し再度駆け出す。今度は新吾郎を囲うように、多角的に飛び跳ね徐々に距離を詰めていく。だが、それは新吾郎を相手にするには徒労に過ぎない。既に先程の蹴りで玉犬に「電荷」は付与されている。
パリッ…!
必中の雷撃が迸り、苦しげな叫びが響き渡る。電気を溜め込みやすい玉犬へのダメージは大きく、全身に大きなダメージを負った。玉犬を形を保てなくなり、完全に破壊される前に影へと溶け出した。
「!!なぁるほど…『雷神』、やね…」
- 89124/08/15(木) 22:33:03
「行くで、『鵺』」
鵺に跨った真墨は新吾郎めがけて急降下、その手には短刀が握られている。
(呪具…ではないな)「真正面から突っ込むたぁいい度胸だ!!」
「コソコソ戦うんは性に合わへんからなぁ!!」
「同感だ!!」
短刀と如意が火花を立ててぶつかる。鵺の勢いに押され新吾郎は数歩後退りする…が、すぐに持ち直し押し返した。力勝負では新吾郎には勝てない。数秒間の鍔迫り合いの後、真墨は一度距離を取り相手の出方を伺うことを選択する。新吾郎はその隙を見逃さず、電撃を放った。…しかし。
「!?効いてねぇ!?」
「…アンタの噂は聞いたことあるで。武蔵国の辺りに『雷神』がおるってな。一度戦ってみたかったんやが、丁度忙しくてなぁ…」
「俺のこと知ってるのか…!」
「確か…電気の呪力特性やったか。それなら効かんで。ウチには『鵺』がおるからなぁ」
『鵺』は新吾郎と同質、電気に近い呪力特性を持っている。故に電撃に対して高い耐性がある。新吾郎の放った攻撃は鵺の羽毛で散らされ真墨に届くことはなかった。真墨は次々に印を結び代わる代わる式神を召喚していく。
「『大蛇』『満象』『蝦蟇』、頼むで」
「式神の複数召喚…!?」
驚いたのも束の間、あっという間に大蛇が新吾郎を取り囲み巻きつく。万力のような力で締め付けられながらも放電で反撃しようとしたその時、真上から大量の水が浴びせられた。新吾郎の呪力が水を伝い外に漏れ出る。
「体がびしょ濡れになれば、得意の電気は使えへんよなぁ?」
「クソッ…!!呪力を一度閉じねぇと…」
間一髪で大蛇から抜け出した新吾郎。満象の水を浴び呪力が使えないため一旦距離を取ろうとするが、素早く伸ばされた蝦蟇の舌により四肢が縛り付けられてしまう。舌を引きちぎろうとするが思いの外強靭で身動きが取れない。新吾郎の顔に焦りが見え始める。真墨は「貫牛」を召喚し十分な距離を取らせる。
「『貫牛』はなぁ、まっすぐしか進めへんけど、距離を取れば取るほど威力が増すんや。さっきは1〜2mやったけど…今度は10mや。内臓ぶち撒けんようになぁ〜。…いてこましたれ」
- 90124/08/15(木) 23:34:52
コンクリートの床面が抉れるほどの踏み込み。蹴り上げられた石片が地面に着地するよりも速く貫牛は「10m」を駆け抜ける。「10m」、たったの「10m」である。しかし、真墨の技量と貫牛の性能開示により「10m」の距離でも絶大な破壊力を実現させている。
…低く、鈍い破裂音。新吾郎は蝦蟇により固定されているため吹き飛ばされず、貫牛の一撃の威力を全てを受け止めることになった。白目を剥き、がくりと項垂れる。全身から血が吹き出し、ピクリとも動かない。
「…あら、もう終わり?なんや、期待しとったんやけどなぁ」
真墨は溜息を吐き肩をすくめる。全ての式神を影に戻すが新吾郎は何の反応も示さない。真墨は彼に近づくこともせず顎に手を当て考え込んでいた。
「…内部はめちゃくちゃやろうけど…外は割と綺麗やね。反転回しとんのかな?ま、ええわ。もう一発ぶち込みゃバラバラになるやろしな」
もう一度貫牛を呼び出し距離を取らせる。鼻歌混じりに短刀をクルクルと回し、月の下でステップを踏む。鈴のような声が明朗に響く。
「まるたけえびすにおしおいけ♪あねさんろっかくたこにしき♫」
貫牛は主人の号令を今か今かと待ち続け荒々しく息を吐き続けている。力強く踏み込まれた地面はひび割れ、これから起きる一撃の大きさを予感させる。真墨は短刀を新吾郎に向け、目を細めて舌舐めずりをした。
「ウチも早く霧藤馬んとこへ行かんとなぁ。それじゃあ、トドメと行こか」
「…勝手に…終わらせようと…してんじゃ、ねぇ…!」
「!!へぇ、まだ立つん?しぶといなぁ」
「貫牛(それ)、また突っ込ませるつもりか?来いよ…次は当たらねぇぞ」
「…ふふ、なら精々気張りやぁ。ウチは加減できひんで!!」
- 91二次元好きの匿名さん24/08/16(金) 00:04:21
- 92二次元好きの匿名さん24/08/16(金) 00:27:58
ただ単騎でかち合っちゃったからかなりピンチなんだよな…なんとか新吾郎に気張ってほしいぜ…
- 93二次元好きの匿名さん24/08/16(金) 08:33:44
電撃無効からの水被りと割と新吾郎メタ張れるんだな十種影法術
- 94二次元好きの匿名さん24/08/16(金) 10:57:30
主導権渡してなかったら霧藤馬もあっさりやられていたかもと思うと…
- 95二次元好きの匿名さん24/08/16(金) 11:41:04
鵺は電磁砲で迎撃できるかな。雷、物理属性だし。あとは水対策の技が何か欲しいところ。
- 96二次元好きの匿名さん24/08/16(金) 15:57:51
実際カッシーと新吾郎の弱点の水ってどう対策すればいいんだろうな。電熱で蒸発させるにも膨大な呪力が必要だろうし、濡れた時点で漏出始まっちゃうし
- 97124/08/16(金) 17:56:44
再び貫牛が突進を始める。踏み込む度に地面にヒビが入り突撃の威力を増していく。先程と同様、目にも止まらぬほどの速度である。しかし、前と違うのは新吾郎の状態。彼は今自由であり、呪力も使用可能になっている。そして、更に威力を上げるために貫牛の助走距離は以前の倍に伸びていた。僅かながら着弾までに猶予がある。
全身に走る鈍痛の中で、新吾郎の頭は不思議なほどに澄んでいた。大きく息を吸い、吐く。全身に電気(じゅりょく)を纏い、目を見開いた。瞬間、飛び上がった新吾郎は貫牛を紙一重で回避、貫牛の尻を蹴り真墨に向かって突き進む。
「真正面から避けるか!?」
「こちとら2回も喰らってんだ!牛の速度にはもう慣れた!」
「くっ…『満しょ…」
式神を召喚されるよりも速く、新吾郎の如意が真墨の顔面を捉えた。電光と共に真墨の軽々と飛ばされ向かいのビルに激突する。真墨の小さな体は瓦礫に埋もれ、細い足だけが見えていた。新吾郎は顔面の血を拭い、血混じりの痰を吐いた。
「ぺっ…。いいの貰っちまった…こんなの何度も喰らってられねぇぞ…」
『ま、負けちゃう…?』
「んなわけねぇだろ」
「ん、あ゛あー…痛ったぁ…」
瓦礫を跳ね除け、ゆっくりと真墨が立ち上がる。目を抑えた手にべったりと血がこびりつく。どうやら片目を潰されているようだ。ふらつきながらも印を結ぶ。潰れかけた喉がカヒュッ、カヒュッと音を立てる。
「…『円鹿』」
影から大きな鹿が姿を現し、患部に口付けをする。淡い光と共に真墨の傷は癒え、潰れた瞳も輝きを取り戻す。ハンカチで血を拭き取ると、新吾郎を鋭く睨んだ。ペロリ、と舌舐めずりをし低い声で呟いた。
「…ウチのご尊顔を、ようもぐちゃぐちゃにしてくれたなぁ…。少ぉし、本気出そか。アンタの顔面も砕いたるさかい、覚悟しいやぁ」
真墨の本気 dice1d2=1 (1)
1、牛頭・多邇具久解禁
2、領域展開
- 98124/08/16(金) 17:59:22
- 99二次元好きの匿名さん24/08/16(金) 18:06:31
鵺、虎葬を素材に使った
とても高い身体能力と飛行能力、電気の操作を自由自在に使いこなして戦う - 100二次元好きの匿名さん24/08/16(金) 18:10:35
万象、虎葬、鵺が素材
電気の呪力と水流で新吾郎対策しつつ、圧倒的パワーとタフネスで捩じ伏せる。 - 101二次元好きの匿名さん24/08/16(金) 18:16:07
- 102二次元好きの匿名さん24/08/16(金) 18:22:06
玉犬、円鹿、満象、脱兎が素材
大量に分身して反転術式で術者や式神を回復したり、水を操って他の式神をサポートしたりする - 103二次元好きの匿名さん24/08/16(金) 18:25:25
満象、円鹿
巨体ながら高い機動力、跳躍力を持つ
術者を含めカメレオンの様に透明にできる
出す水を自在に操り
反転アウトプットを応用した『蝦蟇の油』は傷を癒すだけでなく相手の過剰再生による細胞破壊を起こす
引火も可能 - 104二次元好きの匿名さん24/08/16(金) 19:50:57
- 105124/08/16(金) 20:05:06
- 106124/08/16(金) 20:26:06
万象被ってるな…dice1d3=3 (3)
1、混ぜるだけなので複数体に合成できる
2、能力使用はどちらか一種のみ
3、同時使用するときはdice1d2=2 (2) (1、牛頭 2、多邇具久)を優先して融合
- 107二次元好きの匿名さん24/08/16(金) 21:33:54
そういえば霧藤馬の呪力特性は雷だけど、やっぱりカッシーの電気より威力が高いのかな
不死だし磨けば強い原石的な存在なのかな霧藤馬 - 108124/08/16(金) 21:37:59
霧藤馬の呪力特性は新吾郎のと比べると威力全振りのイメージです。掌から放射するのが基本スタイルで応用は苦手な感じ。一撃の威力は新吾郎の通常パリッより上です。
- 109二次元好きの匿名さん24/08/16(金) 22:39:04
直投「念能力でいうとこの変化系と放出系みたいな感じやね」
- 110二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 02:25:21
- 111二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 02:50:51
- 112二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 08:33:29
なんとか真墨倒せてもこの後南天燭&彊尸軍団が控えてるんだよなぁ…
- 113124/08/17(土) 11:22:05
「これはな、ウチのとっておきなんや。この時代で見せるんはアンタが初めてやで」
呪力出力を上げ、次々に印を組んでいく。真墨の影からは異形の黒いモヤが立ち昇っては溶け合い、混ざり合っていく。
「『貫牛』+『虎葬』+『鵺』、『蝦蟇』+『満象』+『円鹿』…」
「術式の拡張…!式神同士の混合合体か!!」
「ご名答や。…生まれ落ちや、『牛頭』、『多邇具久』」
真墨の背後に2体の大型の式神が現れる。牛の頭を持つ筋骨隆々とした人型の式神、牛頭。そして鹿の角を持つ大蝦蟇の式神、多邇具久。真墨の合図に合わせ、牛頭が新吾郎に襲いかかる。拳と如意がぶつかり合い、雷鳴が轟く。踏みしめた足が地面にめり込み、悲鳴を上げる。
牛頭には「距離を取るほど威力が増す」貫牛の性質と虎葬のパワー、そして鵺の翼がある。ベースとなった貫牛よりも速く、力も強い。単純なパワー勝負では新吾郎に勝ち目は無い。
「ぐっ…!!コイツ…!!」
『さっきの鳥も混ざってる…電気が通じないよ!!』
「分かってる!!だが耐性にも上限がある。最大火力をぶつけりゃ…」
牛頭と新吾郎の間に激しい攻防が繰り広げられる。互いに電気耐性があるためシンプルな殴り合いとなり、パワーのある牛頭が一見有利に見える。しかし、技術と経験は新吾郎の方が上だ。直線的な動きが目立つ牛頭の連撃を最小限の動きで躱し、カウンターを叩き込んでいく。拳を受け流し、足払いで体勢を崩す。よろけた隙を突き、顎に一撃を…
「…ウチもおるんやで」
「!!」
腹に鋭い痛みが走り、服に血が滲む。どろり、と景色が溶けるように剥がれ落ち、真墨が姿を現した。手には短刀が握られ新吾郎に深々と刺されている。真墨に注意が逸れた刹那、新吾郎に水が浴びせられる。
「しまっ…」
「牛頭、思いっきりや。顔面狙いやで」
派手な破砕音、一息置いて建物の倒壊音が響き渡った。
- 114124/08/17(土) 12:17:13
新吾郎はビルの屋上から1階まで叩き落とされ、倒れ伏していた。両腕は砕け、血塗れの肉塊と化している。屋上に空いた大穴から覗き込み、真墨は満足気に目を細める。
「なんや、顔面狙ったんやけど咄嗟にガードしたみたいやね。やるやん、やっぱり『雷神』は一味ちゃうねぇ」
新吾郎はゆっくり目を開き、不敵に微笑む。腕はまだ治り切っていないが、十分に動かすことはできる。
『死にかけてるのにまだ笑うの…?』
「死にかけてるから笑ってんだよ。前世じゃあここまで命の危機ってやつを感じたことは終ぞ無かった…だから嬉しいんだ」
『よく分かんないよ…』
「…オマエはそうだろうな。それでいい、オマエはそれで…」
ゆっくりと立ち上がり、埃を払う。濡れた上着を捨て去り、パキパキと指を鳴らす。見上げれば、真墨が月を背に立っている。指の動きから、「来いよ」と挑発しているのが分かる。
「いいぜ、乗ってやるよ」
『しんちゃん!真正面からなんて危険だよ!!』
「五月蝿ぇな…邪魔すんなよ。これは俺の戦いだ。こんな楽しい時間に割り込むな」
『この戦闘狂!バカ!!』
「…かもな」
思い切り跳び上がり、屋上に戻る。待ち構えていた牛頭の拳を躱し、頭を蹴り背後にいた真墨に如意を振るう。真墨は微笑みながら多邇具久の背に触れる。じわりと滲みでた油が真墨と多邇具久を覆うと、彼女らの姿は景色に溶け込むように消えた。如意は虚空を切り、新吾郎は真墨を見失う。
『透明化?…ってよりは光学迷彩に近い感じかな?』
「呪力も感じない…厄介な能力だぜ。だがどんな術式にも穴はある。問題は穴を見つける前に牛頭(コイツ)にやられそうな点だが…」
『何回も反転使ったせいで呪力量も大分減ってるし出力も落ちてる…本当に「最大火力」出せるの?』
「勝負に重要なのは自信と確信…弱気な思考は実力を鈍らせるぜ」
『答えになってない!』
「答える必要は無ぇ…出すからな!!」
- 115二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 15:48:29
- 116二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 17:00:15
- 117二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 17:07:46
- 118二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 17:38:01
そういえば直投って禪院家のことどう思ってるんだろう
- 119二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 18:09:50
一応自分の扱いに不満感じて家出したらしいけど…
- 120二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 18:13:31
真墨もどう思ってたのか気になるな
当主ではあるけど女性への扱いが良くない家だからなぁ - 121124/08/17(土) 19:00:22
- 122124/08/17(土) 19:01:45
- 123二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 19:05:43
偶然にもその時期の禪院家にはドブカスが少なかったから
- 124二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 19:49:19
相伝への恩義(自分が術式を使いこなして戦う以上実家へ完全に見切りをつけられなかった)
- 125二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 19:56:18
- 126二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 20:01:31
力を示し、強者と戦えて、実力で成り上がれる
こんな最高の場所ないやろ? - 127二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 20:07:24
散々嘲られ、不当な扱いを受けたが当主になるとまるで今まで自分を馬鹿にしていた連中が神罰に怯え慄く様な態度にがらりと変わったのがとても快感だった
その後当主として実家を自分の好きなように、思いのまま作り変えていったためにとてつもない満足感と愛着があった - 128二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 20:18:17
- 129124/08/17(土) 20:22:50
- 130124/08/17(土) 20:27:20
- 131124/08/17(土) 20:33:45
真墨と当時の五条家当主の関係 dice1d5=5 (5)
1、幼馴染
2、一応友人
3、夫婦(見染めた術師が五条家当主、政略結婚的な意味もあった)
4、バチバチのライバル
5、敵対関係
当時の五条家当主の強さ dice1d5=2 (2) 条悟クラス
当時の五条家当主(男)の名前 >>135からダイスで決定
- 132二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 20:34:18
真墨、当主になってからは全能感というか半ば神様気分で実家を好きなように作り変えてたのかもなぁ
- 133二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 20:39:43
- 134二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 20:42:22
- 135二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 20:43:08
- 136二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 20:46:54
虎勝(とらまさ)
- 137124/08/17(土) 20:52:05
- 138二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 20:53:11
- 139二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 20:55:51
- 140二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 20:58:07
まこーら調伏は宿儺が初だから牛頭とかの拡張術式、領域習得で評価爆上がりみたいな?
- 141124/08/17(土) 21:11:18
- 142二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 21:14:40
大方予想してた事ではあるけどやっぱり暴君で草
- 143二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 21:29:37
真墨ちゃん、結構性格歪んでそうだなぁ…
- 144二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 22:51:02
叩き上げの女傑、真墨
あの新吾郎をここまで押すとはマジで強いな…
しかしまぁ楽しいそうにしちゃって
「答える必要は無ぇ…出すからな!!」
困った、しかしてカッコいい爺様だぜ - 145124/08/17(土) 23:13:00
『出すって…根拠は!?』
「さぁな!!」
『えぇ…』
新吾郎の自信に確かに根拠は無い。しかし、彼には不思議な確信があった。振り下ろされる牛頭の拳をいなし、如意を投げつける。牛頭の注意が呪力の溜まった如意に逸れ、新吾郎自身の呪力の「溜め」に気づかない。真墨はこれから起こる出来事を察し、止めに入るが雷速には及ばない。如意を払いのけガラ空きになった牛頭の腹に打ち込む神速の一撃。煌めく1/1000000の黒い稲妻。
「 『 黒 閃 』 !!」
残光に遅れて訪れる衝撃。全身に黒雷が迸り、反応する間も無く牛頭は爆発霧散した。飛び散る黒い塵を浴び、新吾郎の目は輝きを増す。
「ああ…!来た、来たぜ…!!」
『この感覚…前にもあったような…』
全神経が冴え渡り、五臓六腑に漲る呪力。新吾郎の出力は最大値に達し、操作性は更に向上する。戦場の全てを把握したかのような全能感に新吾郎のボルテージは上昇していく。
「この局面で黒閃出すか…!なんちゅう勝負運…!!」
透明化した真墨は多邇具久と共に新吾郎を挟み撃ちにし、短刀と水流が彼を襲う。真墨は背後から新吾郎を狙っていた。呪力も遮断する透明化だ、絶対に気づかれない自信があった。しかし…新吾郎と目が合った。まさか自分に気付き振り返った?驚愕する真墨。紫電を残し新吾郎の姿が消える。真墨が吹き飛ばされていたのは、それを認識したのと同時だった。打撃に遅れて鳴り響く爆音。そして建物の倒壊する音。
「ははっ…!最高の気分だぜ…!」
- 146124/08/17(土) 23:56:36
「うっ…!お゛え゛ぇぇっ!!げほっ、げほっ…!!」
新吾郎の拳をモロに喰らった真墨は血混じりの吐瀉物を吐き出す。回復をするため多邇具久を解除し円鹿を呼び出す。
「けほっ…!黒閃でアイツの潜在能力は極限まで引き出されとる…。ウチの居場所が分かったんは電気の呪力の応用か?」
見れば、新吾郎はビルの上で恍惚とした表情で真墨を見下ろしていた。先程真墨がしたのと全く同じように指で挑発する。
「…ふっ。今度はウチの番ってか。本来の目的は霧藤馬の捕獲やけど…こっちの方が楽しいわぁ。ま、アイツは腐れ女に任しとるしもうちょっと遊んでも罰は当たらんよね」
鵺に乗り新吾郎の上空を飛ぶ。しかし今の新吾郎には距離は意味を為さない。再び新吾郎が姿を消し、真墨の目の前にいきなり現れた。振り下ろされる如意を咄嗟に短刀で受け止める。紫電が迸り、真墨の体表に痛みが走った。
「速い…!!それに出力も上がっとる。鵺でも軽減し切れんほどの電撃…っ!!」
「まだこんなもんじゃねぇだろ…もっと楽しもうぜ!!」
「…せやね。『脱兎』」
無数の兎型の式神が新吾郎の視界を覆う。何度も払いのけるが真墨には辿り着かない。突如、脱兎の中から貫牛が飛び出し新吾郎に突撃する…が、彼はそれを如意で受け止め踵落としで地面に叩き伏せた。
「アイツは…!!」
「…認めるで。アンタは強い。『雷神』の異名に偽り無しやね」
真墨は脱兎から抜け出し新吾郎の背後にいた。既に手は印を組んでいる。影が面積を増やし周囲に広がっていく。
「でも、勝つのはウチや。『雷神』の首、貰い受けるで!!」
「領域、展開!!」
- 147124/08/17(土) 23:57:33
- 148二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 00:02:41
深影黒沼
あたり一面影で覆われた領域
底のない影に堕ちてゆき、無数の式神にフルボッコにされる - 149二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 07:59:13
- 150二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 08:37:22
- 151二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 10:14:24
- 152124/08/18(日) 10:57:29
- 153二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 15:15:04
領域勝負は真墨が勝ったのか…押し合いにも強そう
- 154二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 15:16:00
- 155二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 15:51:11
19で子供産んでるのは当時的には普通なのか?真墨の性格的に子供への愛情もなんか所有物としての感情な気もする…
- 156二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 19:08:51
少なくとも領域後の焼き切れ状態乗り切ってるからな…。無下限だけの男では無さそうだ
- 157124/08/18(日) 19:41:01
- 158二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 19:53:21
- 159二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 20:31:03
羂索としては天元の同化以外で積極的に五条と敵対する理由はない
しかしこれは五条側から敵意を示されたら話は別
魔虚羅使用の件は『後の世での復活』が条件なら或いは…?
羂索は人の心は無いがその機敏を利用するのは得意だからな…
少し筋書きが見えたような
まぁこれは個人的妄想なのであしからず
- 160124/08/18(日) 21:55:27
魔虚羅使用を命じた「上」とは…dice1d4=3 (3)
1、将軍
2、とある大名
3、当時の総監部的な組織
4、禪院家前当主
「上」と羂索の関係は…dice1d3=1 (1)
1、ガッツリ手を組んでる
2、脳味噌乗っ取り済み
3、関係ない
魔虚羅使用を命じた理由 dice1d3=3 (3)
1、六眼&無下限を消すため
2、興味本位(虎の子見せてよ〜)
3、全力でやれよ(パワハラ)
- 161124/08/18(日) 23:48:04
「領域展開、『深影黒沼(しんえいこくしょう)』」
真墨から溢れ出した影がみるみるうちに広がり、周囲を黒く満たす。新吾郎はすかさず彌虚葛籠を展開するが、足元に違和感を覚えた。
『な、何これ…足が沈む!?』
「底無し沼みたいなもんか…領域の環境効果だから彌虚葛籠でも無効化できねぇ…!」
地面の影はドロドロとした黒いタールのようになっており、ただそこに立っているだけでも少しずつ沈んでいく。足を上げようにも影がへばりつき上手く動かすことができない。真墨は満足そうに微笑み、ゆっくりと歩み寄る。一歩踏み出す毎に影から無数の式神が溢れ出してくる。
「ふふ…逃げ場はあらへんよ。彌虚葛籠は使えるみたいやけど…式神の仕様を切り替えた。これなら問題なく当たる」
真墨の合図と共に式神が一斉に襲いかかる。新吾郎も必死に反撃するが、影に足を取られて対応し切れない。捌き切れなかった分のダメージが蓄積し、段々と身体が影に沈んでいく。
『や、ヤバいよ!!このままだと…!!』
「クソッ…!沈むだけで抵抗が無い、沈み切ったら戻ってこれるか…!!」
「もう胸まで浸かったなぁ。一度沈めば出る術は無いで。永遠に闇の中を沈み続けるとええ」
「このっ…!!がぼぼっ…」
真墨に向かい如意を投げようとするが式神に阻まれ影の中に落としてしまう。必死に足掻くが暖簾に腕押しで影が身体に纏わりつくばかりだ。式神に押し込まれるように、ついに新吾郎は影の中に姿を消した。真墨は満面の笑みでその様子を見届ける。
「ふふっ…あははっ!!何度見ても飽きひんなぁ…。強者が顔を歪ませながら闇に沈んで行く様…病みつきになってまうわぁ…」
蕩けた表情で闇の中に佇む。もう誰もいない領域の中で、真墨は高らかに笑い声を響かせていた。
- 162124/08/19(月) 00:40:06
影の中に沈んだ新吾郎。全身に張り付いた黒が底へ底へと引き込んでいく。空気もない、光もない、温度も、抵抗もない。だが、感覚的に底に「何か」が堆積していることに気づいた。視覚に頼らずに脳内で像が結ばれていく。手、足、頭部…夥しい数の死体が影の底に積もっていたのだ。
(…!!一体何人の人がこの領域で…)
(このままだと俺達もコイツらの仲間入りだ…!!どうやって浮き上がれば…)
酸素が足りなくなり段々と意識が薄れ始める。影は底に向かうほど粘度を増し、体の動きも鈍くなる。身体に影が染み込むような感覚さえ覚え、少しずつ体が冷え切っていく。新吾郎の脳裏に「敗北」の二文字が浮かぶ。
(ここまでなのか…?)
『バカ!!勝手に諦めるな!!』
「!!」
頬を叩かれる感覚で生得領域で目を覚ます。きょとんとする新吾郎を鹿紫雲が睨みつけ肩を揺する。
「勝手に人の体使って負けるつもり!?勝つって言ったんだから最後まで足掻きなさいよ!!」
「だが…」
「色々めちゃくちゃだし理解できないこともいっぱいあるけど…しんちゃんが負ける所は見たくないよ。勝利に対する想いだけは、ずっと尊敬してるから」
「『だけ』ってオマエ…」
「分かる?近くに如意があるの。私も強力する。まだ負けてない!!」
「…!」
「このまま諦めて負けるつもり?」
「…馬鹿野郎、勝つに決まってんだろ。ちょっとだけ、力貸せよ」
「うん。勝とう、2人で」
必死に腕を伸ばし、近くに漂う如意を掴む。残った呪力を振り絞り、一気に放出する。
「…行くぜ鹿紫雲」
『うん、しんちゃん!』
「『領域展開!!』」
- 163二次元好きの匿名さん24/08/19(月) 06:52:41
深影黒沼、伏黒のとは若干領域の環境が異なるっぽい?影の粘度の問題なんだろうけど底があるっぽいし。
「底」まで行ってたら本当に身動き取れなくなってたんだろうな… - 164二次元好きの匿名さん24/08/19(月) 07:15:59
今週の本編で伏黒が宿儺の片足を影で沈ませて妨害してたし十種って単なる式神術式とはやっぱりちょっと違うよね
影+式神を使役する術式というか - 165二次元好きの匿名さん24/08/19(月) 08:12:24
通常の新吾郎の攻撃に2.5乗+ゾーンに入ることでステータスアップ、やっぱり黒閃のバフ効果異常だな
- 166二次元好きの匿名さん24/08/19(月) 12:25:26
伏黒のは水っぽいけど真墨のは泥みたいに纏わりついてくるみたいね。前者は呪力で吸い込まれるの防止できるけど後者は問答無用で沈めてくる。性格の違いかな?
- 167124/08/19(月) 17:02:16
「神閃威光」は本来鹿紫雲の領域であり、新吾郎が展開することはできない。しかし、黒閃による覚醒状態にあること、「死」が意識されたことで2つの魂がより深く結びついたこと、「縛り」の期限が近づいたことで鹿紫雲の主導権が戻りつつあること、何より鹿紫雲自身の協力…様々な要因が絡み合い、新吾郎は領域展開に成功する。
「何や…?ウチの領域が…!?」
術式効果も、環境効果も持たない特異な「空」の領域は相手を害することは一切無い。故に「神閃威光」は押し合いに対して無類の強さを誇り、格上の領域であろうと容易に書き換えることが可能。また、電気の呪力を瞬間的に放出するため展開速度も速く、相手からすれば刹那の内に領域が塗り替えられたような錯覚に陥る。影から抜け出した新吾郎はその勢いのまま如意を振り抜く。神速の一撃は真墨の腹を正確に捉え、大きく後方に吹き飛ばした。思ってもいない反撃に真墨は対応できず、腑を直接殴られたような苦痛を味わう。
「げぼっ、あ、ぐぅ…っ!!あ、ありえへん…ありえへんやろ!!なんで生きとんねん!?どんだけしぶといねん!?黙ってウチに殺されときぃや!!」
「悪いな。宿儺と戦るまでは死.ねねぇし負けられねぇんだ。それに、借りもんの身体で負けたとあっちゃ格好がつかねぇしな」
「宿儺と…?アンタ、頭湧いとんのか?史上最強の術師やぞ?」
「ああ…だから、オマエ程度に負けてられねぇって言ってんだよ。鹿紫雲(コイツ)の力借りるのはちょっとばかり気に食わねぇが」
「…調子に乗ってペラペラペラペラと…っ!!」
短刀を振りかざし切り掛かる真墨。術式は使えないが通常の呪力操作は可能、相手の呪力総量から強力な電撃は放てず、また領域に必中効果は無い…これらを直感的に理解し、体術による決着に臨む。真墨の勘は正しい。黒閃による出力の上昇は見られても呪力量は回復しない。度重なる反転術式と今回の領域展開、既に新吾郎の呪力量は限界に近く、事実領域内を満たせるほど呪力を放出することはできなかった。ここからは術式なしの純粋な肉弾戦になる。
「なんでや…なんでウチの思い通りにならんの!?お前も…お前もアイツと同じや!!ウチの邪魔をする…ウチの敵!!絶対に…絶対に殺す!!」
「想定通りにならなくて癇癪か…まるでガキだな」
「黙れぇぇぇぇっ!!!」
- 168124/08/19(月) 17:54:20
…今から400年ほど前、安土桃山時代末期。京の禪院家に1人の少女が誕生した。名は禪院真墨、禪院家の中でも位の低い術師の娘であった。辛うじて家督の継承権は持っていたものの、上には何人もの兄姉がおり、当主など夢のまた夢であった。
時代の風潮もあり、当時の禪院家は現在よりも男尊女卑の気風が強く、真墨もその被害者であった。幼い頃は臆病で蠅頭に対しても泣き喚くほどであり、また相伝である十種影法術も十全に使いこなすことはできなかった。そのため家からの評価は低く、相伝を次代に残すための孕み袋として何としてでも十種持ちを妻にしようと家内で争いが起こり、何人もの男に言い寄られ、あるいは襲われることさえあった。女だから、弱いからと軽んじられ虐げられる生活に耐えかね、真墨の性格は豹変する。
血の滲むような努力により徐々に頭角を表し始め、弱冠10+dice1d8=8 (8) 歳で魔虚羅を除く九つの式神を調伏、更には領域を習得した。大物呪霊の討伐も行い、名声は高まっていく。少しずつ、彼女を軽んじる者は減っていった。
当主の病死に端を発する家督争いでは「影」や式神を用い次々とライバルである兄姉を暗殺、実力と功績を背景に反対勢力を黙らせ新当主の座を手に入れた。
当主となった真墨は「暴君」であったと当時の記録に残されている。横暴で傲慢、そして冷徹。何事も自分中心でなければ気が済まず、反対意見を言えばその場で式神の餌となったという。次々に禪院家のシステムを作り変え、超実力主義の世界を築き上げた。今まで自分を嘲り虐げてきた連中が、今度は自分を畏れ、這いつくばって機嫌を伺う。そんな光景が真墨にとって何よりの至福だった。かつて自分を辱めようとした相手を嬲り、影の中に引き摺り込んだ時は絶頂さえ覚えた。自分を恐れる目線が何よりの快感であり、許しを乞う言葉は忘我であった。
程なくして彼女は、自分の見染めた術師を他家から婿として迎え、子供を設けた。夫との関係について詳しい記述は無いが、子供への溺愛振りは多く残されている。普段は恐ろしい彼女も子供にだけは甘く、乳母に抱かせることを許さず、片時も側を離れようとしなかったという。
順風満帆、全ては彼女の思い通りに見えたが、唯一思い通りにならなかった者がいた。当時の五条家当主、五条巧である。
- 169124/08/19(月) 18:19:12
五条巧との因縁は真墨が当主として就任した際に遡る。六眼と無下限を併せ持つ若き五条家当主は、白髪に碧眼、およそこの世ならざる美貌を誇っていたという。就任祝いの挨拶に訪れた巧を真墨は気に入り、自らの婿に迎えようと声をかけた。当然両家から反対の声が上がったが、真墨は気にしなかった。その美しい蒼い瞳が、無下限呪術という絶大な力が、ただ欲しかったのだ。しかし、巧は真墨の申し出を丁寧に断った。両家の衝突を避ける狙いもあったが、何より真墨の中に渦巻くどろどろとした黒い支配欲を感じ取っていたのだ。この出来事は真墨にとって大きな屈辱だった。力も、地位も、何もかもある自分に靡かない人間などいるはずがない。手に入れられないものなどあるはずがない。そうした自信が打ち砕かれた瞬間であった。それ以来、真墨は巧を手に入れることに執心するようになる。
彼女が見染めた術師、即ち真墨の夫は五条家の遠い親戚の術師であり、その顔立ちは巧に似ていたという。また生まれた子供も父親似であり、他人に触れさせようとしない様子は、さながら自らの所有物であると主張するかのようであったとも。
その後5年余りに渡り真墨は巧へ極秘に手紙を送っている。自分の功績、自分の強さ、公家との関わり…故に自分のものになれ云々。巧からの返事は一切無かったという。いつまで経っても自分の思い通りに事は動かず、プライドは粉々に砕かれ、真墨の執着は憎悪に変わる。いつしか、手に入れることから打ち倒すことへと目標が変化していた。
そして、運命の日…御前試合が始まったのである。
- 170124/08/19(月) 22:28:25
御前試合開催の経緯は五条・禪院両家により秘匿されているが、当時の呪術総監部にあたる陰陽寮が関与していたとの説がある。
試合の経過はほぼ互角、まさに当時の最強を決する戦いと言えた。領域戦、格闘戦でも決着はつかず、膠着状態に陥ったその時だった。試合を観覧していた上層部の1人が、魔虚羅の使用を命じたのだ。
(確かに巧(アイツ)を殺せるんならとウチはあの時魔虚羅を使った。だが、あれはウチの勝ちやない。あの時アイツは『茈』で魔虚羅ごとウチを殺れたはずや。なのに、アイツは…)
如意と短刀がぶつかり合い火花を散らす。不敵に笑う新吾郎に対して真墨の顔には焦りの色が浮かび、少しずつ動きに粗が見え始める。
「どうした?さっきまでの薄ら笑いはどこ行ったよ」
「黙れ黙れ黙れ黙れっ!!こうなったらぁ…。『布留辺…っ!?」
既に真墨の術式は回復している。しかし、術式が機能しない。動揺した隙を突かれ、真墨は新吾郎の連撃をまともに喰らうことになる。短刀が折られ、血反吐を吐きながらも目だけは未だに闘志を燃やしている。
「ウチは…ウチはまだぁ…っ!!」
折れた短刀を振りかざし、雄叫びを上げて襲いかかる。新吾郎は如意でそれを叩き落とすと、すかさず真墨の顔面に手をかざす。刹那の閃光が走り、真墨の左眼が弾け飛んだ。そこで新吾郎の呪力が尽き、領域が崩壊する。新吾郎はなんとか屋上に着地したが、力を失った真墨は真っ逆さまに落下していく。薄れ行く意識の中で真墨は自身を見下ろす新吾郎を見据えていた。
(クソッ!ウチが、ウチが負けるはずがあらへん…!見下すなや…!お前も、アイツと同じ…!!そんな目で…ウチを…)
- 171124/08/19(月) 23:31:20
…初めて会った時からそうやった。心底見下したような目で見てきたことだけ覚えている。
「アンタ、ウチの夫になりぃや。ウチは禪院家の当主、アンタにとっても悪い話やないやろ?」
「…結構です。お断りします」
ありえへん。何で断るねん。ウチは禪院家当主で、相伝持ちで、公家からも認められてて…みんなウチに従うんや。欲しいものはなんでも手に入る。なのに…なんでお前は手に入らない?
「なんでや!五条の坊が調子に乗ってぇ…!!仮にもアンタ歳下やろが!!ウチはなぁ…!!」
「…寂しい人ですね、貴女は」
「なんやとぉ…?」
ウチが寂しい?そんなのありえへん。何もかも思い通り、まるで神様みたい。どこが寂しいんや?ああ…お前さえウチの手中におれば。
御前試合の時もそうやった。ウチのことなんか歯牙にも掛けない。スカした態度で愛想ばっか振り撒いて、それでも周りに人は多い。癪に障る。ウチのものにならんなら、せめてこの手で…!!
…今でも分からん。何でアイツは魔虚羅に…?仮死状態で薄らと見えた光景、魔虚羅と相対する巧。あの時アイツは確かに…こちらを見て笑っていた。何故?あれではまるで自殺…何を考えていた?分からない。400年間、どれだけ考えても分からない。ウチはアイツの心中を知ることさえできんかった。ああ、欲しい。アイツの全てが欲しい。全てを手にしたのにどこまでも乾く。巧さえいればきっと。なのに…
あれだけ焦がれた巧の顔が、思い出せない。
- 172二次元好きの匿名さん24/08/19(月) 23:34:50
霧藤馬が巧の転生体ってことはないよな
絶対にないだろうけど、何故かそんな考えが頭に過った - 173二次元好きの匿名さん24/08/19(月) 23:46:50
このレスは削除されています
- 174二次元好きの匿名さん24/08/19(月) 23:56:59
そう簡単に転生なんて起きないだろうけど…もしそうなら因縁深い2人だな
- 175二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 00:11:40
このレスは削除されています
- 176二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 00:12:47
両家の衝突避けるためって考えたり真墨の内にあるドロドロとした支配欲とかを一発で見抜いたり巧さんってかなり聡明な人だったっぽいな…
- 177124/08/20(火) 08:19:44
- 178124/08/20(火) 08:36:39
- 179124/08/20(火) 08:53:30
- 180二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 10:41:41
流石かつての当主というべきか…
タフだね
真墨のお子さんは試合後の混乱のあおりを受けた様だねぇ
夫婦関係がまた興味深い
少〜し真希と乙骨みたいな雰囲気だったのかな
まぁ全ての関係を明確にするのも野暮というものか - 181二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 12:19:01
5歳で母親失ってそこから冷遇って結構ハードモードな人生よな
- 182二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 13:11:53
- 183二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 16:12:06
- 184二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 16:17:56
この冷たい反応も自分が作った実力主義社会のせいだと考えると皮肉やね
- 185二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 20:03:51
- 186二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 22:02:06
実際結婚の経緯考えると夫婦仲高いの異常だよな。
- 187二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 23:38:44
このレスは削除されています
- 188124/08/20(火) 23:40:45
ビルから転落した真墨は、夜の闇に吸い込まれるように消えた。新吾郎はなおも警戒を続けるが一向に現れる気配が無い。
『…やったの?』
「いや、コガネのアナウンスが無え。トドメを刺しに…」
『それよりもまずは霧藤馬くんでしょ!早く助けに行かないと!!』
「チッ…それもそ…っ!?」
視界が歪み、身体の力が抜ける。魂が後ろに引き戻されるような感覚。
「クソッ…時間切れか…!!」
『日付が変わる…「縛り」の期限が来たってことね。主導権、返して貰うよ』
『…今度は考えて「縛り」かけろよ。次は本当に貰っちまうからな』
「了解!…っていうか、しんちゃん私の体の扱い雑くない?なんか凄く体軋むんだけど…」
『テメェの体がヒョロっちいだけだ。ほら、早く行くぞ』
「うん。霧藤馬くん、今行くよ!!」
新吾郎の呪力は尽きているが鹿紫雲の呪力はほとんど減っていない。稲妻を纏いながら屋根を蹴り、霧藤馬のいるビルに向かい道を急いだ。
「うふふ…♡随分粘るわねぇ…。これで下級僵尸dice1d40=34 (34) 体目、上級もdice1d10=5 (5) 体。荒削りとはいえ『雷』は僵尸の弱点だものねぇ…」
「はぁ、はぁ…。これだけやっても、キリが無い…!」
ビルを取り囲む僵尸の大群と地面を埋め尽くす焼け焦げた死体の山。掌から雷光を迸らせ、ボロボロになりながらも霧藤馬は1人でビルを守っていた。術式を持つ上級僵尸による傷や感染した毒の浄化のためにこの戦闘で常人ならdice1d5=5 (5) 回は死んでいる。
「威力は高いけど操作も効率もお粗末…その戦い方じゃ呪力が保たないわよぉ?いくら死なないっていっても術式効果、呪力が尽きれば死んじゃうんじゃないのぉ?」
「さぁ…本当に死んだことは無いから分からないですね…」
「ふふ、だから私が殺してあげるのぉ。見方によってはいい話よぉ?屍体なら痛みも感じない、悲しみも感じない、死の恐怖も無い。そんなに怯えて敵に立ち向かう必要も無くなるわよぉ?」
「…たとえ不死身の化け物になっても、僕はゾンビにまで堕ちるつもりはないので」
「…そ。残念ねぇ。ならその身で体感して貰うしか、無いわねぇ」
- 189二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 23:52:53
- 190二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 00:13:04
16でこれって相当可哀想じゃないか?
- 191二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 07:45:59
このレスは削除されています
- 192124/08/21(水) 07:48:22
襲いかかる僵尸達の頭部に向かい閃光が走る。轟音と共に一気に数体の僵尸の頭が弾け飛んだ。吹き上がる血潮を浴びながら次々と後続の僵尸が進み出る。疲労が溜まり肩で息をする霧藤馬に対し、南天燭は電柱の上で余裕そうに微笑んでいる。
「もう諦めちゃいなさいよぉ。頑張ったって苦しいだけでしょう?」
「余計なお世話です…!生き続けるのと死に続けるの、前者の方が圧倒的にマシですよ」
「…あらら、頑なねぇ。それじゃ、仕方がないわねぇ…」
パチン、と指を鳴らす。南天燭の背後からdice1d10=3 (3) 体の僵尸が飛び出し、霧藤馬の仲間達が避難している階の窓を取り囲んだ。上級僵尸が呪力を吸収し進化した形態、空を自在に飛ぶことができる飛僵である。
「や、やめろ!!彼らは関係ないだろ!!」
「大アリよぉ?貴方が頑張るのって、あの子達のためでしょう?ならぁ…あの子達もみぃんな仲良く僵尸にしてあげればいいじゃない。そうすれば貴方も寂しくないでしょう?」
「人質を取るなんて、卑怯な真似を…!!狙いは僕だけのはずだろ!!」
「貴方が選べる道は2つ。私の物になって僵尸になるかぁ、僵尸化したあの子達と戦って貴方も僵尸になるか。まぁ、どちらにしろ貴方には屍体になってはもらうけどぉ…」
口に手を当て、クスクスも笑う。飛僵達は今にもガラス窓を突き破り中に突入しそうだ。パニックを起こした霧藤馬の仲間達の悲鳴が聞こえる。南天燭は目を細め、悪戯っぽく舌をペロリと出す。
「私、待つの苦手なのぉ。さぁ、どうするのぉ?」
- 193124/08/21(水) 07:51:49
- 194二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 12:01:32
偶然にも見た目だけ同世代
- 195二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 12:42:09
677歳って随分年m…いや旧人っすね…
そりゃあキョンシーの数があんだけ多いわけだわ - 196124/08/21(水) 14:46:16
「ほらほらぁ、早く決断しないと合図出しちゃうわよぉ?」
(ここは一か八か全呪力を放出するか?いや、そんなことしたら皆も巻き込んでしまう…!)
「貴方が私のものになるなら他の子達は見逃してあげてもいいわぁ。私の目的はあくまで貴方だものぉ」
「…」
霧藤馬は脳内で何度も思考を巡らす。ここで自分が僵尸になれば間違いなく南天燭は次に彼らを襲うだろう。口では逃すとは言っているが嘘の可能性が高い。かといってここで申し出を断れば飛僵によって仲間が襲われる。呪力の扱いの素人である自分ではあそこまで高く跳ぶことも、下の僵尸を捌きつつ飛僵を相手取ることも難しい。頼みの綱の新吾郎は恐らく単体の強さは南天燭以上の真墨の相手をしているから加勢は期待できない。仲間達が生き残る確率が高いのは…
「… 本当に、彼らを逃してくれるんですか?」
「うんうん、私は見逃してあげるわぁ。正直闘争心のない子を僵尸にしても成長の可能性無いしあまり役立たないからねぇ」
「嘘じゃないですね?」
「ええ。なんなら『縛り』にしてあげてもいいわよぉ?」
(…ここで全滅するくらいなら、僕1人が犠牲になった方が…。でも、僕無しで彼らがこの先生き残れる保証も…)
「ん〜。熟考しすぎぃ。あと3つ数えるから早く決めてよねぇ。0になったら突入させるから。さ〜ん、にぃ〜…」
どちらを選んでも良い結果にはならないことは分かっている。無理を通すか、諦めるか。自分の命はどうなってもいい、とにかく仲間の命を守らなければ。必死に考える霧藤馬の焦りの表情を見て、南天燭はますます好奇の笑みを浮かべる。数秒後にはこの男…自分と対極に位置し、何度も衝突した男がようやくこの手に納まる。永遠の生を永遠の死に塗り替える瞬間。今後訪れることのないだろう一瞬を思い浮かべ、脳を蕩けさせる。
(早くその目の光を奪いたい!早くその肌を白く染め上げたい!早く貴方の冷ややかさを全身で感じたいぃぃぃ!!あぁぁぁ…屍体になった貴方と早く交わりたくて、たまらなぁい…♡)「いぃ〜ち…、ぜ…」
「…分かった。僕以外を襲わないのなら、僵尸にしてくれて構わない。…僕1人の命で済むなら」
「〜♡ あぁ…とっても素敵なプロポーズ!!えぇ、えぇ!私は彼らに一切手は出さないわぁ。約束よぉ」
- 197124/08/21(水) 15:07:23
嬉しさに身を捩らせ、跳ねるように電柱から降り立った南天燭は、僵尸達の開けた道を通り霧藤馬の方へと歩み出る。霧藤馬は覚悟を決めた面持ちでそれに臨む。微かに動いた指先を南天燭は見逃さなかった。
「…呪力はしっかり切りなさぁい。攻撃してきたらそこで約束はパァ、飛僵達にあの子達を襲わせるからぁ」
「…分かってますよ」
「いい子ねぇ。大丈夫、苦しいのは一瞬だからぁ…。全身に私の呪力が回ればぁ、貴方も立派な僵尸の仲間入りよぉ♡」
「…まずは彼らを逃してから」
「んーん、順番は変えられないわぁ。貴方が僵尸になったら、逃がしてあげる。これは絶対よぉ」
「…」
「んふふ…年甲斐もなく興奮してきちゃったぁ…♡それじゃ、目を閉じて…」
ガッチリと、逃げられないように肩を抑える。細い腕に似合わない怪力で、霧藤馬は身動きが取れなくなる。近づかれて初めて分かるが、南天燭の身体はそのものが冷気を放っていて、触れられると体の芯から凍てつくような感覚を覚える。
「ふふ、驚いたぁ?僵尸になるとねぇ、人間よりも力がずっと強くなるのぉ。全身に呪力が回ってるからかなぁ?」
「知りませんよ、そんなこと」
「私の友達によるとねぇ、脳に私の呪力が浸透することで何か変化が起きてるんじゃないかって。改造人間?っていうのと同じジャンルみたいねぇ」
「…貴女のお喋りに付き合うつもりは無いですよ」
「もう、冷たいんだからぁ。ま、すぐに身体も冷たくなるけどねぇ…」
むせ返るような桃の花の香り、そして僅かに混じる腐臭。吐き出しそうになるのを抑えながら、霧藤馬は目を閉じた。首筋に南天燭の唇が近づくが、吐息は感じられない。粘ついた音と共に、鋭い牙が顕になる。はやる気持ちを抑えながら、少しずつ、少しずつ距離を縮めていく。溢れた涎が、一滴、二滴と滴り落ちる。そしてついに、切先が彼の肌に…
- 198二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 15:10:43
- 199124/08/21(水) 15:11:30
ありがとうございます😭
- 200二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 15:22:38
梅