錠前サオリの裏バイト奇譚7【SS、微ホラー】

  • 1◆yQm0Ydhu/2pS24/08/17(土) 19:26:43

    自分探しのために色んなアルバイトをして各地を放浪する錠前サオリ。だがその中には恐ろしいものが隠されている危険なアルバイトもあった。これはそんな危険なアルバイトにうっかり勤めることとなったサオリのお話。
    スレ画像はバ先で怪異に遭遇し「そんな!どうしてこんなことに!?」と思ってる錠前サオリ。

    錠前サオリを主人公とした漫画『裏バイト:逃亡禁止』風SSを上げていきます。気楽に読んでいただけますと幸いです。よろしくお願いします。

  • 2◆yQm0Ydhu/2pS24/08/17(土) 19:27:41
  • 3◆yQm0Ydhu/2pS24/08/17(土) 19:30:04

    前回のあらすじ
    セミナーの早瀬ユウカ、生塩ノアから兎狩りの依頼を受けた錠前サオリ。白兎こと黒崎コユキの確保に成功したが、彼女が落札した呪物『ホープクローバーの押し花』を巡ってギャングや裏社会のVIP達が襲いかかってくる。
    果たしてサオリとコユキは、この危機を乗り越えることができるのか………

  • 4◆yQm0Ydhu/2pS24/08/17(土) 19:31:32

    スレ立てといてあれですがまだ続き出来上がってませんごめんなさい……!とりあえずご飯とお風呂と日課のリングフィットだけさせて下さい……!!終わったら急ぐので……!!

  • 5二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 19:47:33

    ほ(ーぷ)

  • 6二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 19:50:19

    保守しておくのでゆっくりしてくださいね~

  • 7二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 19:54:58

    縺サ縺励e

  • 8二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 19:55:33

    ほしゅ

  • 9◆yQm0Ydhu/2pS24/08/17(土) 20:05:22

    ありがとうございますゆっくり頑張ります……!

  • 10◆yQm0Ydhu/2pS24/08/17(土) 20:05:34

    とりあえず10まで

  • 11二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 20:21:01

    このレスは削除されています

  • 12二次元好きの匿名さん24/08/17(土) 20:24:00

    ミレニアムの後はどこで仕事するんだろう、山海経とか気になるけど裏の仕事は何故か生徒会が担ってるんだよねw
    百鬼夜行はヒダル神みたいなのが居そうだし赤冬は…デモをするサオリは面白いかも…

  • 13◆yQm0Ydhu/2pS24/08/18(日) 01:08:33

    (23階、高級レストラン)

    「顔を出したぞ!撃て撃てェ!!」
    ギャング達の連携のない乱射。私は右隣にあったテーブルに素早く隠れる。直後、アサルトライフルの鋭い弾丸がテーブルを襲った。
    先ほどまでいた遮蔽……そこに隠れているコユキを見やる。あちらに攻撃が行ってないのを確認してホッとする。あえて姿を晒すことで敵の狙いを私に集中させようと言う目論見は達成した。これでコユキは大丈夫、後は私が頑張るだけだ。
    さてどうするか。適当に撃ち返しながら改めて敵の様子を見る。しっかり数えたところ21名のギャングと、最奥にはボスが指示を飛ばしている。ボスを狙い撃ちできたら楽なのだが、人数が圧倒的に不利で狙撃なんて出来そうにない。仕方がないから少しずつ削って行こう。手始めに1番邪魔なのは………、
    「………ハイヒールだな」
    「うおおおおおおおおグフゥッ!?」
    痺れを切らし、こちらに突進してきたギャングの顔面に蹴りを入れる。ハイヒールが鼻先に直撃し、悲鳴と鼻血を出してそのまま意識を失った。私はそいつが倒れる前に抱き寄せ、首を掴んで盾のよう構える。アサルトライフルを背負い直し、ハンドガンに切り替える。次に近いのは……あそこだ。

  • 14◆yQm0Ydhu/2pS24/08/18(日) 01:09:22

    「テメェ!仲間を返しやがれ!」
    「いいだろう、持ってってやる」
    最寄りのギャングががなり立てた。発砲もして来たのでギャング盾でそれを防ぎ、一気に接近する。靴擦れは相変わらず痛いが我慢して踏み込んだ。
    「うわっ!?」
    ギャング盾によるタックルが綺麗に入り、敵を吹っ飛ばすことに成功する。崩れた体に即座に追撃。ハンドガン3発で意識を奪った。そしてリロードをしている他のギャングを睨む。もうすぐ終わりそうだが残念、私の方が早い。
    「はあっ!」
    持っていたギャング盾を力任せに投げ飛ばし、そのギャングにぶち当てた。結局リロードは終わることなく、そいつは投げ飛ばされたギャングと添い寝をする。あと18人、ギアを上げて行こう。

    (銃声)

    アサルトライフルに持ち変え、天井に向かって1発だけ撃つ。そこには大きなシャンデリアがあり、ちょうど真下にギャング達が固まっていた。果たして弾丸によって留め具が破壊されたシャンデリアは落下し、ギャング達を襲った。
    「危ねえ!避けろ!」
    「うぎゃああ!!」

  • 15◆yQm0Ydhu/2pS24/08/18(日) 01:10:09

    1人のギャングが哀れにも下敷きになって気絶する。だが他の奴らは無事逃げおおせ、その場でホッとして汗を拭った。馬鹿だなぁ。
    「ちゃんとその後も考えろ」
    「いで!」
    「ぎゃ!」
    「ゔっ!」
    呑気に突っ立っていたギャング3人を撃ち抜く。無力化を確認した私はすぐにシャンデリアの残骸に突進し、飛び越え、その先にいた別のギャングに襲いかかった。
    「くたばれぇ!!」
    そいつは私を迎え撃とうとアサルトライフルを向けてきた。私は発砲される前に手のひらで銃身をずらし、その懐に潜り込む。
    「遅い!!」
    「ぐはっ!?」
    ギャングの腹部にアサルトライフルの接射を叩き込む。4発の弾丸によるボディブローがこいつの意識を奪う。しかしその瞬間、アサルトライフルのスライドがホールドオープンの状態になった。
    「なっ!?もう弾切れか……?」
    そう言えばさっき乱射してしまった。その時に想定より弾を消費してしまったのだろう。いつも弾数を頭の中で数えながら撃っているのだが、感情的になったせいでそれが抜け落ちたらしい。反省しなくてはな。
    私はすぐに近くの遮蔽に隠れてリロードをしようとした。瞬間、
    「近くに来やがった!おい兄弟!突っ込むぞ!」
    「おう!このクソガキがぁ!!」
    1番近いギャング2人が発砲しながら突っ込んできた。リロードは……間に合わない!

  • 16◆yQm0Ydhu/2pS24/08/18(日) 01:10:46

    私はすぐにアサルトライフルを手放した。そしてハンドガンを取り出そうとしたが、すぐにその手を引っ込める。先頭の奴がアサルトライフルを逆さに持って、棍棒のように振り上げているのを目の当たりにしたのだ。
    (スライドは……空いていない。まだ弾が残っている)
    「使えるな………フッ!!」
    こちらに辿り着き、振り下ろされるアサルトライフル。それを私は片手で受け止め、もう片方の手でギャングの手首を掴んだ。
    「はああああっ!!」
    「おわっ!?」
    ギャングの突進の勢いを活かして背負い投げ。そいつは目論見通りアサルトライフルを手放してくれ、壁まで飛んで激突し動かなくなる。綺麗に決まったな。
    「兄弟!?テメェ!!」
    おっと、もう1人いたな。そいつも対処しなくては。だが今の私は背負い投げの時に体勢が変わって、奴に背を向けた状態になっている。今から振り返って反撃……は間に合いそうにない。だが想定内だ。
    私はさっきのギャングから奪ったアサルトライフルを脇に挟み、銃口を真後ろに向けた。二の腕と胸で銃身を支える。エイムは経験と勘……そして残弾を信じろ。

    (連射音)

    「ぐおおおっ!」
    思っていたより弾は残っていたようで、それを全部吐き出し、突進するギャングを倒す。痛みで意識を失ったそのギャングは勢い余ってレストランの床を滑っていった。それを一瞥した後に遮蔽へ戻り、手早く自分のアサルトライフルのリロードを終えた。

  • 17◆yQm0Ydhu/2pS24/08/18(日) 01:11:22

    さて、あと11人とボスだけだ。奪った方のアサルトライフルをそこらに投げ捨てつつ、残りのギャング達の様子を伺う。すると顔を真っ赤にしたボスが吠えた。
    「クソ!埒が空かねえ!おい、お前ら全員でだ!全員で突っ込め突っ込め!!」
    「うおおおおおおおおおお!!!」
    とても戦術とは呼べない、安直な突撃。だが数の暴力とは恐ろしいもの、11対1の戦力差では対処が難しい。
    「舐めやがってくそガキ共が!2匹とも捕まえて、この世で1番の苦しみを味合わせてやる!!」
    「っ……、言わせておけば……!」
    遮蔽に当たる銃弾の衝撃を背中で感じつつ、私は頭を回転させた。どうする?このままでは袋叩きだ、何か方法は……?

    (何かが床に落ちる音)

    「……?」
    見ると、先ほどコユキから貰った爆弾が懐からこぼれ落ちていた。私はそれを手に取る。
    「そうだった、これがあったな………一発逆転という奴を狙ってみるか」
    深く息を吸い、意を決して遮蔽から体を出す。ギャング達はここぞとばかりに私の体を狙い撃つが、多少の被弾は歯を食い縛って耐える。頬に弾が当たり口元が切れた。それでも視線を外さず意識を維持した。
    ……しっかり構えろ、1人でも多く爆破範囲に入るよう、狙う場所を見極めろ………!
    「________そこだ!」
    爆弾を放り投げ、すぐに遮蔽に隠れる。爆弾は狙い通りの放物線を描き、ギャング達の頭上で爆散。青白い電流を撒き散らした。

  • 18◆yQm0Ydhu/2pS24/08/18(日) 01:12:10

    「アバババババババババー!!!!!」
    電撃はしっかり全員を包み込んでくれたようで、絶叫の後に11人分の倒れる音が聞こえた。
    「そ、そんな!?全滅だと!?嘘だろ……嘘だろおおおおおおお!?」
    「結局、この世で1番の苦しみとは何だったんだ?」
    「はっ……!?げふっ!!」
    錯乱したボスに素早く近づき、その頬を殴り飛ばす。ボスはみっともなく床に転がり、金切り声を上げながら後退った。
    「ヒィィィ!!あっああいやあアハハハ!アレは言葉の文って奴だよ……いやですよ!やだなあ本気にしないで下せえ!この世で1番の苦しみなんて知りやせんから……だからね?ね!?暴力反対!平和に行きましょうや!!」
    「何だ、知らなかったのか。なら教えてやろう、この世で1番の苦しみとは……」
    「ヒッ、ヒィィィィィィィ!!!」
    また金切り声を上げ、ボスはこの場から逃げ出そうとする。だが立ち上がる前に私はボスの頬を蹴り飛ばした。
    「グエッ!!?」
    「……ハイヒールで階段を降りることだ」
    ボスは吹っ飛んでテーブルに激突し破壊する。上にあったカトラリーや皿が盛大に撒き散らされる中、テーブルの破片に寝転がって意識を失った。

  • 19◆yQm0Ydhu/2pS24/08/18(日) 01:13:11

    「________ふぅ、よし。コユキ!終わったぞ!」
    ギャング達を全員倒すことができたので、私はその場でコユキを呼んだ。遮蔽からバニーの耳が少しずつ伸び、まだ警戒した様子のコユキが顔を出す。
    「フフッ……怖くなかったか?」
    「っ!サオリ先輩すごいです!!ギャングに圧勝じゃないですか!!」
    努めて笑顔を作り、手を振ってやる。すると安心したようでコユキにも笑顔が戻り、遮蔽を飛び越えてこちらに駆け寄ってきた。
    ……よかった。VIP達は逃げたしギャングは全滅。これで私達を追う輩はいないだろう。あとはミレニアムに帰ってコユキと一緒に説教を受けてやれば任務完了だ。
    そう思い、緊張も解けて緩み切った状態で私はコユキを待った。手を広げ、飛びつかれてもいいように構えた。
    ………瞬間、コユキの顔が歪んだ。
    「サオリ先輩!!後ろ!!」
    「え?」
    「バーン」

    (銃声)

    背中に鋭い衝撃が走り、思わず膝を突く。ライフル弾の銃声と痛みだ、誰だ?もうVIPもギャングもいないはず……!?
    「あっ……!司会者さん!?」
    「何……!?」
    コユキの答え合わせに驚き、顔だけを後ろに向ける。そこには見覚えのあるロボット……闇オークションの司会者がアサルトライフルを持って立っていた。
    「フフフ、先程ぶりですね。突然ですがホープクローバーの押し花を奪いに来ました」

  • 20◆yQm0Ydhu/2pS24/08/18(日) 01:14:46

    (連射音)

    「ゔあっ!!あああっ!!」
    「サオリ先輩!!」
    「本来ならオークションはお客様同士の交流には関わらないのですが、漁夫の利を放っておくのもアレかなと思いまして」

    (リロード、その後乱射音)

    「ホープクローバーの押し花、取り返してまたオークションに出品させて頂きます。そうしたらフフフ、またエキサイティングな競り合いが楽しめる!ああ、か弱い兎のお嬢さんが持ってくれてよかった!簡単に奪えますからねぇ!!」
    司会者は倒錯した笑顔を浮かべ、私に弾丸の雨を降らせた。銃弾を弾く体もこの量は致命傷になりうる。意識が朦朧とし、私は床に倒れた。
    「サオリ先輩!大丈夫ですか!?……し、死なないでください!!」
    「安心して下さい、お嬢さん。次はあなたですから」
    「ヒッ……!や、やめてください!何でこんなことするんですか!?」
    「フフフ……そんなの、最高のオークションのために決まってるじゃないですか!!だから兎のお嬢さん、代金はお返しできませんが……クーリングオフってことで♪」
    そう言って司会者はコユキに銃口を向けた。何のためらいもなく引き金に当てた指を折り曲げようとしている。
    「させ……るか……ああああああっ!!」
    「おっと!」
    私は最後の力を振り、司会者の背中に飛びついた。そのまま羽交い締めにしようとするが、いつもなら出せる力が出せず抵抗される。

  • 21◆yQm0Ydhu/2pS24/08/18(日) 01:15:14

    「コユキ!逃げろ!」
    「えっ、あ、え……でもサオリ先輩!!」
    「いいから行け!早く!!」
    「うっ、ゔゔっ……!」
    ……何とか分かってくれたようで、コユキは非常階段へと逃げてくれた。このまま下へ降りればきっと助かるだろう。
    「おや、ホープクローバーの押し花は持ってっちゃいましたか」
    安堵した瞬間振り解かれ、地面に投げ飛ばされる。もう一度立ち上がり、抵抗しよう……ダメだ、体に力が入らない……立てない……!
    「仕方ありません。あなたには人質にでもなって貰いましょうか」
    「くっ……!」
    首根っこを掴まれて無理矢理立たされる。それでも抵抗できず、私は司会者に身を任せる他なかった。そんな司会者はアサルトライフルを投げ捨て、懐からハンドガンを取り出して私の頬に銃口を貼り付けた。
    「これもまた闘争ですかね?何だか楽しくなってきました♪」
    顔面のディスプレイに笑顔を貼り付け、鼻歌まで歌ってみせる司会者。そして私を引きずってエレベーターまで移動し、静かになったレストランを後にするのだった。

  • 22◆yQm0Ydhu/2pS24/08/18(日) 01:15:38

    一旦ここまで。遅くなってすみません。

  • 23二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 01:22:44

    更新乙

    シンプルに頭おかしい奴じゃねぇかオークションサイド
    デスゲームでも開いてろよ…

  • 24二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 01:24:33

    サオリは流石の強さだけど、ドレスで防弾が薄いのと連戦の疲れが効いたね
    裏でオークションを開催する奴らなんてろくでもないに決まってるとは思ったがこことまでは…
    血を見るのが好きなら他所でやってくれ~!ここは学園都市なんだ~!

  • 25◆yQm0Ydhu/2pS24/08/18(日) 01:28:07

    >>12

    頭ストライキになったゲリラとか恐ろしすぎる……


    >>23

    >>24

    でもデスゲームってオークションしないじゃないですか。だから彼らはデスゲーム運営はしないと思います。

    それに血とか野蛮じゃないですか。オークションしましょうよオークション。

  • 26◆yQm0Ydhu/2pS24/08/18(日) 01:51:16

    明日も遅くなると思います、よろしくお願いします。

  • 27二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 08:49:13

    乱闘になった時の司会者の手慣れっぷりからしてマッチポンプじゃね?って思ったら案の定だったか

  • 28二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 13:09:07

    もう出会わせた敵にクローバー見せつければ勝手に自滅してくれるのでは?
    トラウマになるからダメか…

  • 29二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 16:54:01

    それはそれとして、ヨシミに続いてコユキもサオリに脳を灼かれてそうな気が…

  • 30◆yQm0Ydhu/2pS24/08/18(日) 20:38:10

    >>27

    全てはエキサイティングなオークションのため、彼らは毎日頑張って素晴らしい品物を集めています。チャンスがあれば客を襲撃だってします。プロですね。


    >>28

    有効ですが果たしてコユキにできるのか……


    >>29

    バニタスを植え付けられてはいたけど本質的にはスクワッドとアズサのお姉ちゃんですからね、年下の面倒を見るのは得意なのでしょう。サオリもきっと可愛いと思っています。

  • 31二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 21:03:13

    今のコユキのメンタルではクローバーを利用するのは厳しい
    サオリだって先生を撃った事を吹っ切れてる訳じゃないし故意にやるのは無理だろうね

  • 32◆yQm0Ydhu/2pS24/08/18(日) 23:17:10

    (16階、非常階段)

    息せき切り、しゃっくりあげながら階段を降りるコユキ。足がまた痛み出し、さっき塗った軟膏の効能でも抑えられなくなっていた。
    ちょうど16階の扉の前に辿り着いたところで足を止め、扉にもたれかかって膝をつく。乱雑にハイヒールを脱いで患部を手で擦る。綺麗に巻かれた包帯が歪んでいる。直そうと試みるが余計歪んでしまい、コユキは酷く後悔した。
    「ああ……また余計なことしちゃった………」
    落ち着いていた涙腺が再び水かさを増し、水滴が落ちた。コユキは感情の起伏が大きく、それ故にすぐ気持ちを切り替えることができる。だが今回は今回は自己嫌悪と情けなさが胸に深く突き刺さり、切り替えなんてできなかった。
    不意にずっと握っていた、ヴェールに覆われた額縁が目に入る。思い返せば全ての始まりはこれを……ホープクローバーの押し花を求めたことだった。
    (お説教ばっかりだし、嫌な仕事を押し付けてくるし、シンプルに怖いけど大好きな先輩達。お礼にクローバーあげたいなって、それだけだったのに……)

  • 33二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 23:18:00

    このレスは削除されています

  • 34◆yQm0Ydhu/2pS24/08/18(日) 23:18:50

    コユキは少し前の日のことを思い出す。ユウカとノアにあげるクローバーを探したが見つからず、仕方なく葉っぱをくっつけたものをプレゼントしようとしたこと。そしたら2人は一緒に探すのを手伝ってくれ、暗くなるまで一緒に公園にいたのだ。


    x.comx.com
  • 35◆yQm0Ydhu/2pS24/08/18(日) 23:20:03

    (……結局見つからないし、寮の門限を過ぎちゃって怒られるし、散々だったなぁ……。でもクローバーを探すのも、みんなで怒られるのも楽しかった……)
    だからコユキはあの後もクローバー探しをしていた。どうしても贈りたかったのだ。あの時先生がくれたクローバーがとても嬉しくて、問題児故に誰かと関わる経験が乏しいコユキにとって何かを贈り贈られる経験がほとんどなく、だからこそその経験が忘れられない。『クローバーを贈る』と言う行為にこだわりと特別さを感じているのだろう。
    「……でも、やっぱりこんなところに来ちゃうのはダメでしたよね。先輩達を心配させちゃうし、サオリ先輩も怪我させちゃって………」
    ……たまたま聞いたホープクローバーの伝説と、たまたま見かけた闇オークションの情報。舞い上がって、自分は大丈夫だと思い上がって、結果危険な目にあって先輩達に迷惑をかけた。目先の四葉に目を奪われて、足元にあった大切なものを荒らし回った。
    「コユキのバカ、悪い子だ……何であの時思い直さなかったの?クローバーを探し続けたらよかったのに、こっちの方が簡単だなんて思っちゃって、こんなことを………」
    やってしまったことの後悔と恐怖で膝が震え、それを抑えるように抱き寄せて顔を埋めた。非常階段の上で座り込んだ小さな背中が絞り出した泣き声が、閉鎖された縦長の空間に反響した。

  • 36◆yQm0Ydhu/2pS24/08/18(日) 23:20:47

    ……瞬間、

    (ノイズ音、その後にチャイムの音)

    『あ〜、声入ってますかね?兎のお嬢さん、まだホテルの中にいますよねぇ?』
    よく通る声、闇オークションの司会者だ。先ほどサオリの背中に2弾倉分のライフル弾を浴びせた奴……コユキは声のする方を見た。館内放送用のスピーカーがそこにあり、それを怯えた様子で見やった。
    『我らオークションの目的は、あなたが持って行っちゃったホープクローバーの押し花だけです。他には興味はありません。だから今なら許してあげますから、それを返して下さい。でないと、あなたの先輩さんを殺さなきゃいけなくなります』
    喉からヒュッと細い音が出る。人が死ぬ……話がそこまで拗れてしまったのか。いや、さっきも目の前で階段から落ちた人がいたじゃないか、あのご婦人もきっと……!そんな風に最悪を考えだして止まらなくなり、コユキは絶望と自責の念で頭を抱えた。
    しかしそんな彼女を慮ることもなく放送は続く。
    『そうだ、先輩さんの声も聞きたいですよね!安心して下さいまだ無事ですから。だから早く来て下さいね!ほら、先輩さん。あなたの後輩に言ってやって下さい。早くホープクローバーの押し花を持ってきてって!』
    『………コユキ』

  • 37◆yQm0Ydhu/2pS24/08/18(日) 23:21:22

    絞り出すような声。無事なわけがない。自分が逃げた後に酷い目にあったのだろう。まだ会ったばかりだけど強い人だとは思ってた。そんな人がやられてしまって、その上自分を連れ戻しに来たせいでこんなことになったとコユキは改めて思い知らされた。
    「サオリ先輩……!」
    思わず届くはずのない呼びかけをしてしまう。何と言って欲しいのかは自分でも分からないが、とにかく安心したくて、コユキはスピーカーをじっと見つめた。
    ……サオリの返答はすぐに来た。
    『……ホープクローバーを持って逃げろ』
    「………え?」
    思いもよらない言葉にコユキは耳を疑った。それはつまり、サオリを置いて逃げろと言いたいのか?どうして?そんな疑問の回答がコユキには思い浮かばない。
    『それに幸運を呼ぶ力があるのかは分からないが、もし本当ならそんなものを悪人が持ってはいけない。だから持ち帰って捨てて欲しい』
    『先輩さん?何を言ってるのですか?』
    『無理ならいいんだ。お前の安全が最優先だから、そこらに捨てても構わない。だからコユキ、ここには来るな。ミレニアムに帰るんだ……!』
    ホープクローバーの押し花についてはコユキも同じ意見だった。しかしそんなことよりもサオリは大丈夫なのか?それしか気にならないし心配でしかない。どうしようかとコユキが考えていると、次の瞬間スピーカーが鋭く大きな音を放った。

    (銃声)

  • 38◆yQm0Ydhu/2pS24/08/18(日) 23:22:15

    『ダメですよ。持ってきてってちゃんと言って下さい。ほら、もう1回』
    『ゔっ……ぺっ。コユキ、お前「何もしない方が先輩達のためになるのかも」って言ってたな。私は……そんなことないと思うぞ』

    (銃声)

    『……っ!はぁ、確かにやり方は間違えたな。でも、ユウカとノアにお礼がしたい、幸せになって欲しいと思ったのだろう?それが間違いなわけあるものか。コユキ、お前は問題児かも知れないが、とてもいい子だ……』

    (銃声)

    『クソ……!はあ、コユキ、昔やらかして反省部屋にぶち込まれたんだってな。でも先生に色々教えてもらったり、ユウカとノアと一緒に仕事を頑張ってたそうだな。ようやっと、それが楽しいと思えるようになったと言ってたな。偉いじゃないか、ちゃんと更生を……やり直すことができてる。お前はすごいよ』

    (銃声)

    『………私は、私もそうなんだ。前に悪いことをして、たくさんの人を傷つけた。到底許されないことをした。でも人生はこれからも続くと、やり直せると先生から教えてもらったんだ。だから今も足掻いている……』

    (銃声)

    『立場も境遇も違う、そもそも私は部外者で、お前とは会ったばかりだ。それでも、きっとコユキなら本物のクローバーを見つけられると思う。これからも頑張ればきっと上手くいくさ。だからミレニアムに帰って、ユウカとノアにちゃんと謝るんだ。反省して、もう1度頑張れ。コユキならきっとできるから』

    (銃声)

    『はぁ……はぁ……はぁ…………私のことは、いいから……気をつけて帰れよ………』

    (殴打音)

  • 39◆yQm0Ydhu/2pS24/08/18(日) 23:22:58

    『はあ、何で言った通りに喋ることもできないんですか?どう言う教育を受けたんだか………まあいいです』
    司会者の呆れた様子の声が響き、その後ろでサオリの呼吸の音がかすかに聞こえる。コユキが呆然としている中、司会者は次の句を話し始めた。
    『今からヴァルキューレやミレニアム本校に連絡しても無駄ですからね。奴らが辿り着く前に先輩さんを殺して撤収することができます。オークションをなめない方がいいです。兎のお嬢さん………私達は屋上にいます。またお会いできるのを、楽しみにして待ってますね♪』
    その警告を最後に放送は止まり、非常階段に静寂が舞い戻る。コユキはホープクローバーの押し花を手に取り、視線を向ける。真っ黒なヴェールに、まだ目元に残っていた涙の粒が落ちる。
    「に、にっはっはっ………褒められちゃった。私はすごいんだって。ね?コユキ……」
    言い聞かせるように囁く。鼻を啜って、もう一度スピーカーを見上げた。

  • 40◆yQm0Ydhu/2pS24/08/18(日) 23:23:22

    「でも……でもサオリ先輩だってすごいじゃないですか。こんなところまで来て、命懸けで戦ってくれて……ぐずっ、サオリ先輩もやり直してる真っ最中なら、こんなところで終わっちゃダメじゃないですか……!」
    手すりを掴み、全身の筋肉に鞭打ってなんとか立ち上がる。靴擦れの痛みを気合いで堪え、腫れぼったい目元を拭い、視界を確保する。ホープクローバーの押し花を握り締める。
    そしてコユキは16階の扉を開き、歩き始めた。
    「頑張れコユキ、あと少しだけ……!私ならきっとできるって言ってもらえたもんね。だからサオリ先輩を助けるよ、頑張るよ私!」
    無人のホテルをゆっくりと、だが歩みを止めずに進む。そんなコユキの目にはまだ後悔も自責も残っていた。しかしそれ以上に、やってやろうと言う強い意志の光が咲き誇っていた。
    「一発逆転、見せてやりますよ………!」

  • 41◆yQm0Ydhu/2pS24/08/18(日) 23:24:42

    一旦ここまで。次回最終決戦、闇オークションvsコユキです。よろしくお願いします。

  • 42二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 23:42:53

    コユキ頑張れ!諦めない事を知ったコユキならきっと大丈夫だから!
    幸運の四つ葉だと言うなら力を貸してくれ…

  • 43二次元好きの匿名さん24/08/18(日) 23:44:46

    四葉のクローバーは1枚1枚それぞれに、幸せな意味があるそうな
    日本では「希望、幸福、愛情、健康」だとか

    不正な手段でクローバーを掴んだコユキは今度こそ本物の希望を掴むことができるか、期待

  • 44◆yQm0Ydhu/2pS24/08/18(日) 23:54:50

    >>42

    果たして幸運はコユキに微笑むのか、コユキは幸運をつかみ取れるのか。応援してあげてください。


    >>43

    希望幸福愛情健康、前に進む子供ならきっと掴めますね。コユキとサオリならきっと……

  • 45◆yQm0Ydhu/2pS24/08/19(月) 00:08:12

    (Xのブルアカ漫画のURLの貼り方、あんな感じでよかったですかね……)

  • 46二次元好きの匿名さん24/08/19(月) 00:13:44

    コユキ+自己肯定感+ラッキーアイテム(本物)ってもうそれ最強では……


    >>45

    ポストのリンクを貼る時にアドレスの「x.com」の部分を「twitter.com」にしとくとサムネ表示されるみたいに聞いたけどどうなんだろ

  • 47二次元好きの匿名さん24/08/19(月) 00:15:12

    >>46

    できたわ

  • 48◆yQm0Ydhu/2pS24/08/19(月) 00:27:07

    >>47

    教えていただきありがとうございます……!

  • 49二次元好きの匿名さん24/08/19(月) 09:05:41

    サオリが誰かを肯定する側に回ったの胸熱だ……

  • 50二次元好きの匿名さん24/08/19(月) 17:35:02

    これって敵は司会者だけなのか
    それによって結構難易度変わりそう

  • 51◆yQm0Ydhu/2pS24/08/20(火) 01:10:13

    ちょっとごめんなさい眠い過ぎる間に合わない、明日投稿でよろしくお願いします……すみません………

  • 52二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 01:12:21

    お疲れ様ですおやすみなさい

  • 53二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 08:21:38

    そんなこともある……

  • 54二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 10:21:42

    眠すぎるじゃなくて眠いすぎるになってるあたりマジで眠いんだろうな
    おやすみなさーい

  • 55二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 13:10:10

  • 56二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 18:12:18

    次の新イベのトモエのスキルがチラシ付与するスキルで草
    チラシバイトの時に居てくれれば・・・

  • 57二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 21:02:47

    ほしゅ

  • 58二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 21:05:48

    >>56

    怪異側にバフがかかっちゃう…

  • 59◆yQm0Ydhu/2pS24/08/20(火) 21:39:08

    (屋上、ヘリポート)

    地上50階、約150メートルの場所に吹く風は生暖かく、殴られた衝撃で片方の留め具が外れたマスクを揺らしている。口に溜まった血を吐く。それを司会者は「行儀が悪い」と言ってケラケラと笑った。
    「本当に躾がなってないですねぇ、まともな教育を受けてないんですか?」
    「………まあな。碌な学校じゃなかった」
    「それはそれは、大変だったんですねぇ………錠前サオリさん」
    思わず顔を上げる。司会者は人の良さそうな笑顔を貼り付けている。掴まれた首根っこが持ち上げられ、私は顔を覗かれた。
    「裏社会でもあなたの名前は有名ですよ。トリニティとゲヘナに大きな被害を与えたテロリスト。とんでもないことをしたんですから、世界が忘れるはずないでしょう。今更真面目に人助けなんかしても、贖罪にはならないと思いますが?」
    「……そんなこと分かっている。だが、だからと言って開き直っていいわけがない。それに私がやりたいからやるんだ。絶対にコユキをミレニアムに帰す」
    「フフフ……捕まってるのによく言いますよ」
    首根っこを掴む司会者の手がきつく絞まった。私は何もできずに呻き声を上げる。そもそもダメージが蓄積してて体を動かせそうにない。そんな私の様子を司会者は見つめ続けた。
    「ホテルの1階と外には既にオークションの手の者が控えています。ホープクローバーの押し花を持ち出して逃げることなどできません」
    「なら、今すぐにでもお前を倒して……!」
    そう言ってまたもがこうと試みたが司会者にまた殴られた。痛みで力が抜けて倒れそうになるが、首を掴まれているせいで倒れることはできなかった。

  • 60◆yQm0Ydhu/2pS24/08/20(火) 21:40:43

    「もうボロボロなんですから、動かない方がいいと思いますよ。兎のお嬢さんが助けに来るのを待ちましょう」
    「ゔっ……!」
    司会者を睨む。こんなところまで助けに来る奴などいないと分かってて言ってるのだろう、腹立たしい。……いや、仮に助けが来るのならどうかコユキを助けてくれ欲しい。私は放っておいて構わない。だからコユキを、今1人で不安だろうあの子を。
    自分の命を諦めたわけじゃない、何なら今もチャンスを伺っているのだが、それでも逃げ続けているコユキの無事を私は願い続けていた。
    「どうして兎のお嬢さんをそこまで気にかけるんですか?妹か何かで?ああ、もしかして………!」
    ロボット市民特有の普遍的な笑顔、しかしその奥に隠された下衆な考察に吐き気がした。言葉の表現はまともそうに見えるが、暗にそういう中なのかと聞いてきている。気色悪い奴だ、私はうんざりしつつも答えた。
    「……依頼を受けただけだ」
    「依頼ねぇ。加害者の私が言うのも何ですが、ひどい目に遭ってまで遂行するものですか?あなたこそ逃げるべきでは?」
    「危険は承知の上だ。それに……助けたいじゃないか。やり直して頑張っている子は」
    「やり直しねぇ……意味あります?」
    「……何だと?」
    「やっちゃったもんは仕方ないと思うんですよ」
    気怠げにそう言い、司会者は白手袋の赤いシミを眺めた。真新しい血が風で乾き黒ずんでいく。その汚れはもう2度と落ちることはないだろう。
    「何したって過去は変わりませんし、仕方ないですよ。それに幸運のクローバーを手に入れるには、どうしたって今そこで生えているクローバーを摘み取らなくちゃならない。傷つけなきゃ幸せになれない残酷な世の中なんですから、気にしたら負けでは?」
    「……開き直れとでも?」
    「もう手は汚れましたから。1度やったのなら、2度も3度も変わりませんよ。やっちまったことは仕方ないですから、気にせずクローバーを摘み続けたらいいんじゃないですか?」
    不意に首の拘束が緩んだ。司会者の笑顔がこちらを品定めするものに変わった。私を引き込むつもりだろうか?それとも哀れみでも感じたか?どちらにせよ、私の回答は決まっている。

  • 61◆yQm0Ydhu/2pS24/08/20(火) 21:41:41

    「……たとえ贖罪なんてできなくても、残酷な世の中で、クローバーを摘まなきゃならなくても、それが開き直っていい理由にはならない。やり直そう、良くあろうと思わなくていい理由にはならない。悪いことをしていい理由に、悪い大人になっていい理由に、なるわけないだろ……!」
    司会者の腕を掴み、自分の顔を力任せに持ち上げる。ずっと私を見下していた司会者と視線を合わせた。
    「お前を軽蔑する。大人なのに、そんなことも分からないお前なんて……」
    「おやまぁ、酷いことをおっしゃる」
    また首を掴む力が強くなり、痛みが背筋を走って力が抜けた。私の視界に映るものは奴のディスプレイから硬いアスファルトの地面に変わった。しまった、もう動けそうにない。大人しく隙を伺うべきだったのに、言い返したくなって無駄な体力を使ってしまった。ああ、どうするか………。



    「________にっはっはっは!」
    瞬間、聞き覚えのある……しかしここで聞くとは思わなかった、聞きたくなかった笑い声が響いた。慌てて屋上の入り口に顔を向けた。司会者もそこを見たようで、嬉しそうに含み笑いを漏らしている。
    「ようやっと来ましたか、兎のお嬢さん」
    「サオリ先輩!助けに来ましたよ!これと交換でいいんですよね!?」
    そう言ってコユキがホープクローバーの押し花を掲げた。風に揺れるヴェールを必死に押さえながらコユキは笑って見せた。
    「コユキ……!何で来た!?逃げろと言ったはずだ!」
    「だって、私1人で逃げたら私だけ怒られちゃうじゃないですか!!サオリ先輩知らないんですか!?ユウカ先輩とノア先輩、怒ると本当に怖いんですよ!!」
    「え、はぁ……!?」
    「だから一緒に怒られてください!一緒に謝ってくれるって言ってましたよね!約束守ってください!」

  • 62◆yQm0Ydhu/2pS24/08/20(火) 21:42:39

    こ、この期に及んでそんなことで……?そんなことが理由で屋上まで来たのか?リスクに見合わなさ過ぎるだろう、怒られた方がマシなはずだ。
    しかし呆れてそう思っていると、コユキの瞳が潤んでいることに気がついた。何度も鼻を啜って堪えているが泣きそうになっている。さらに良く見ると髪は乱れ、小刻みに震え、ハイヒールには赤いシミがこびり付いていた。だがそれを悟られまいと、必死に笑顔を作っていた。
    「サオリ先輩も昔は悪い子供だったんですよね?でも今頑張ってるって言ってましたよね?だったらこんな所で止まっちゃダメですよ!悪い子供のままで終わっちゃ!……だから一緒に帰りますよ。今度は……今度は私が助けてあげますから!」
    「コユキ……」
    精一杯背伸びして強がって、それでも真っ直ぐ私を見て言い切ってくれた。……何て強くて優しい子なのだろう。本当は年上として、任務で守らなければならない身として、いいから逃げろと言うべきなのに。私はその言葉を聞いて何も言えなくなった。ただひたすらコユキが頼もしく見えた。
    「おお……!素晴らしい友情ですね!では早速取引と致しましょう!兎さん、クローバーを持ってこちらに来てください。私もそちらに向かいます。ヘリポートの真ん中で交換しましょうか」
    「分かりました!待っててね、サオリ先輩!」
    コユキはホープクローバーの押し花を抱き締め、1歩ずつ前に進んだ。対する司会者は私にハンドガンを突きつけ、同じように1歩ずつ前に進む。私はそれに引きずられるように足を進めた。
    屋上に緊張が走る。動悸が早くなる。コユキも同じようで、運動もしていないのに息が上がっているように見える。しかし司会者だけはそれを感じていないように見えた。顔面のディスプレイには笑顔だけが映っていた。
    不審に思った瞬間、私の目に微かな光が差し込む。コユキの後ろ、屋上の入り口が少しだけ空いている……銃のスコープの反射!
    (オークションの私兵か……!コユキを襲うつもりで潜んでいるのか!?)

  • 63◆yQm0Ydhu/2pS24/08/20(火) 21:43:56

    「おっと!暴れちゃダメですよ!もう取引は始まってるのですから」
    銃口が頬に当たる。クソ、気づいたことに気づかれたか。今騒いだら逆に危険だ!何とかしないと……!
    「あ、サオリ先輩もやっぱり怖いですよね……!大丈夫ですよ!すぐに私が助けてあげますからね!もう少しもう少し、ね?」
    ああそう言うことじゃないんだコユキ。変な勘違いでものすごく優しく、それこそ子供に向けたような口調で宥められた。確かに怖いと思ってるが、それはお前の後ろにも悪い大人がいるからなんだ!やはり無理にでも言って聞かせて、ここから逃げさせればよかったか……?そもそも私があの時司会者の不意打ちに気づいてさえ入れば……!クソ……!
    過去の自分に悪態を吐いていると、私たちの距離はどんどん縮まっていく。ヘリポートの中心まであと数歩、コユキの顔の涙の後もくっきり見える距離まで来た。怖かったろうに、それなのにこんなことをさせてしまった申し訳なさが強くなる。後悔を滲ませながらコユキを見ていると目が合った。その瞬間、コユキは私にウインクをして見せた。
    「サオリ先輩!教えてくれましたよね!悪い子供になってはいけない、悪い子供は悪い大人に騙されてしまうからって!」
    「え?………ああ、言ったな」
    「じゃあ、悪い子供になってはいけない理由を知ってるなら!悪い大人になってはいけない理由も知ってますか!?」
    「……どう言うことだ?」

  • 64◆yQm0Ydhu/2pS24/08/20(火) 21:44:47

    急にどうしたんだ?意図が分からず戸惑っていると、司会者が酷く面白そうにケタケタと笑い出した。
    「おやおや兎さん、私にお説教ですか?悪いことはやめろとでも!?さっきもあなたの先輩から似たことを言われましたよ!」
    「あ、そうなんですか?なのにこんなことしてるんですね!じゃあ教えてあげます!!悪い大人になってはいけない理由は……


    ________悪い子供に騙されちゃうからです!!」
    高らかに言い切り、コユキはヴェールの先を掴む。
    「っ!?」
    「なっ、しまった!!」
    「目を閉じて!」
    そう言いながらコユキはヴェールを引っ剥がした。私と司会者は慌てて目を閉じ、顔を逸らした。
    見た者に死を、持つ者に幸運をもたらす不思議な不思議なホープクローバー。真偽はわからないがそれを見て階段から落ちた人を私もコユキも知っている。それを引っ剥がすなんて正気か!?あっぶない視界には入らなかった!
    「はっちゃー!!!!」
    「なっ、ぐわああっ!?」

    (ディスプレイが割れる音)

    瞬間、首を掴まれた感覚がなくなり体が自由になる。私は重力に引っ張られて倒れ込むと、後ろから誰かが倒れる音が聞こえた。何だ?どうなっている?司会者が倒されたのか?
    「コユキ?」
    「もう大丈夫ですよ、サオリ先輩。目を開けていいですよ〜」
    誰かが駆け寄ってきた。目の前に……コユキか。司会者を倒すためにヴェールを剥がしたのか。全くとんでもないことをする奴だ。
    「あ、ああ……もうクローバーは晒してないよな?」
    「大丈夫ですってば!にはははは!」
    私は恐る恐る目を開けた。視界に光が戻る。風に靡く桃色の髪、夜の闇に負けない笑顔のコユキが映。おや、何か手に持って見せてきているな。額縁に飾られた、雑な手描きのクローバー………。

  • 65◆yQm0Ydhu/2pS24/08/20(火) 21:46:02

    「クローバー!?」
    「にははははは!そんな驚かなくてもいいじゃないですか!」
    思わず声を上げて飛び退き、足をもつれさせて尻餅をつく。その様子にコユキは大笑い、腹を抱えて指を刺してきた。
    「おま、クローバーまだ出てるじゃないか!私見てしまっ……!え!?おまっ、だ、大丈夫なのか!?」
    「大丈夫ですってば!これ私が描いたものですから!……悪いことして手に入れたクローバーなんて持っちゃダメですし、悪い奴に使われるくらいならない方がいいです。だから本物はダストシュートに突っ込みました!今頃灰になってますよ!にっはっはっは!!」
    「……そ、そうか………」
    「あれ〜?もしかしてサオリ先輩ビビっちゃいました〜?見たら大変なことになるって?ただの絵ですよ〜よかったですね〜よちよち♪」
    「…………」
    「あっちょっほっぺはやめて!!」
    私は無言でコユキに手を伸ばす。お仕置きをされると思い込んだコユキがすぐに飛び退こうとしたが、それよりも早く彼女の肩を掴んだ。そしてコユキを胸に抱き寄せた。
    「わっ!サオリ先輩!?」
    「助けに来てくれてありがとう……」
    「……に、にはは!まあこれくらい余裕ですよ!私でっかい機械とも戦ったことありますし!こんなんでもセミナーですし!だから私……私も、ちょっとだけ怖かったですけど……!」
    「ああ、怖い思いをさせたな。すまない」
    頭を撫でてやると、コユキはすっかり忘れていた恐怖と緊張がぶり返したらしい。体を震わせて涙を堪えている。それを誤魔化すようにコユキは私の胸に顔を擦り付けた。もう大丈夫だからな………あっおいやめろ鼻水をつけるな。

  • 66◆yQm0Ydhu/2pS24/08/20(火) 21:46:54

    (ドアが乱暴に開かれる音)

    屋上の入り口から複数の足音。オークションの私兵達が雪崩れ込み、銃口をこちらに向けた。そう言えばこいつらもいたな。私はコユキを庇うように抱き寄せ、隠し持っていたナイフを構える。
    「え!?まだ敵がいたんですか!?」
    「さっきからお前の後ろにいたぞ。待ち伏せだったんだ」
    「そんなー!?結局これで終わりですか!?嫌だー!!」
    大丈夫だと言いたいが、さすがにこれは……。万事休すかと思った瞬間、頭上から強い風が吹き始めた。

    (ヘリコプターの羽音)

    「っ!?オークションの増援か!?」
    「へ、ヘリまで来たら本当に勝てないですって!」
    一瞬慌てたが、オークションの私兵達も困惑しているようだ。じゃあ誰だ?そう思った矢先にヘリのドアが開き、サブマシンガンとハンドガンの乱射がヘリポートを……オークションの私兵達を薙いだ。
    「あ、あれ!ユウカ先輩とノア先輩です!」
    「何だと!?コユキ、呼んだのか!?」
    「いえ呼んでません!こっそりここに来るためにスマホ置いてきましたから!」
    「お前なぁ……」
    呆れていると、ヘリコプターのドアが開きユウカとノアが顔を出す。こっちに向かって手を振ると、縄ばしごを垂らしてくれた。
    「急げ!乗るぞ!」
    「はい!」
    コユキを急かして縄ばしごに向かう。しかし私の方が足を引きずっていて進みが遅く、コユキに肩を借りてゆっくりと移動する羽目になる。
    「クソ!ヘリを落とせ!」
    もたついてると、オークションの私兵達がヘリに銃を構えた。まずい、撃ち落とされたらユウカとノアが……!
    「何やってるんですかあなた達!」
    焦っていると顔面がひび割れた司会者が私兵達の元へ駆け寄っていった。
    「しかし、あいつらが!」
    「彼女らはもうホープクローバーの押し花を持っていません!本物はダストシュートです!急ぎますよ!回収しないと!」
    「なっ!撤収!!急げ急げ!!」

  • 67◆yQm0Ydhu/2pS24/08/20(火) 21:47:30

    嘘だろ……?慌てて私兵達は銃を下ろし、司会者と一緒に下へ降りてしまった。本当にオークション最優先なんだな……。
    「も、もう灰になってると思いますけど……」
    「もはや狂気だな……まあいい、ヘリに乗ろう」
    邪魔者がいなくなったのでゆっくりと進み、縄ばしごを掴む。上の方でユウカとノアが引っ張り上げてくれ、そのままヘリに乗り込んだ。そしてヘリは旋回し、ミレニアムの夜空へ飛び立った。
    「ユウカ、ノア。どうしてお前達がここに?」
    「フフッ、サオリさんが出発した後、ユウカちゃんが「やっぱり自分達も何かしないと!」と言ってヘリを手配してくれたんです」
    「本当に運良く1機だけ残ってて、何かに使えるかなって思って飛ばして来たのよ。そしたらちょうどヘリポートの上でサオリさんとコユキが何かやってるのが見えて……。2人共大丈夫だった?」
    「に、にはは……。ちょうど逃げようってタイミングでしたから、完璧でしたね〜……!」
    「ああ………運が良かった」
    もしヘリが来なかったら、司会者が止めに入る前に私達は一斉掃射を浴びていただろう。幸運としか言いようがない。ようやっと緊張が解け、私は座席に身を預けた。
    眼下に広がるミレニアムの夜景。その中の1つのホテルは先ほどの騒ぎが嘘のように沈黙している。今頃オークションの奴らは焼却炉へ向かっているのだろうか。クローバーを積むために、階段でも駆け降りてるのだろうか。
    不意に思い出した靴擦れの痛みに顔を顰めながら、私は窓から目を離した。

  • 68◆yQm0Ydhu/2pS24/08/20(火) 21:49:40

    ________その後、私達はセミナーの部室に帰還し、そこで適切な治療を受けた。コユキは靴擦れ程度だが私は散々撃たれたため保健室送りとなった。
    翌日、私はコユキの説教に怒られる側として参加し、コユキと一緒にユウカとノアに謝った。
    「ちょっと!何でサオリさんも怒らなきゃいけないんですか!?」
    「そう言ってくれるな、コユキと約束したんだ。それにほら……」
    そう言って私とユウカはコユキを……ノアに抱き付いてびーびー泣いているコユキを見やる。
    「……あの子もちゃんと反省しているさ。だからユウカも抱き締めてやってくれ。本当に怖がっていたし、2人に謝りたいとも言っていたからな」
    「……もう、お説教は後でちゃんとしますからね」
    ユウカが駆け寄り、コユキとノアを抱き締める。3人でくっついている姿を微笑ましく思いながら見守り続けた。
    ……そして闇オークションだが、運営は結局雲隠れしてしまいセミナーの捜査は失敗に終わってしまう。だが参加したVIPのほとんどを逮捕することができたそうだ。それだけでも闇オークションは痛手だろう。
    もちろんギャング達も逮捕。それと私達の目の前で落ちたご婦人は奇跡的に助かったらしい。あちこちで階段の手すりに引っかかったおかげで落ちる勢いが殺され、重傷で済んだそうだ。医者は奇跡的だと言っていた。あのままだと本当にコユキのトラウマになっていただろうから、その奇跡が起きて本当によかった。だがご婦人の幸運と言うより、人殺しになったとトラウマにならなくて済んだコユキの幸運だと私は思う。あの時すでにコユキの手にはホープクローバーの押し花があったのだから。もしなかったら……。
    ホープクローバーの押し花は焼失したと思われる。だがあの後のホテルへの調査の結果、焼却炉の灰が全て持ち去られていたらしい。きっと闇オークションが持ち帰ったのだろう。そうまでしてオークションがしたいのか。今度は聖なる灰とでも言って売り出しそうだな。

  • 69◆yQm0Ydhu/2pS24/08/20(火) 21:51:53

    結局クローバーについては何も分からず終いだったが、あんなものとは関わり合いにならない方がいいんだ。これ以上は考えないでおく。それよりも今は、普通のクローバーを見つけなくては。
    「________サオリ先輩、見つかりましたか?」
    「いや、ないな……」
    温かな昼下がり。私とコユキは公園でクローバーを探していた。今のところ見つかってない。
    「うわあああー!ない!何で!?やっぱり私じゃ見つけられないんですかね……?」
    「大丈夫、コユキなら見つけられるさ」
    「……そうですよね!ありがとうございます!サオリ先輩も見つけられるといいですね!」
    そう言って気合いを入れ直したコユキを見て微笑み、私もクローバー探しを再開した。








    ここだけサオリが裏バイトで働いていて、ひどい目にあったりあわなかったりする世界

  • 70◆yQm0Ydhu/2pS24/08/20(火) 21:52:50

    セミナー案件・兎狩り編終幕です。お付き合いいただきありがとうございました。昨日はありがとうございますぐっすり眠れました……!

  • 71二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 21:54:21

    乙、今回も良かった…ユウカ達がちょうど来たのも、婦人が助かったのも「幸運」か

  • 72◆yQm0Ydhu/2pS24/08/20(火) 22:05:30

    >>71

    サオリ視点でははっきりとは分からず終いでしたがガチモンのアーティファクトです。コユキにとって都合のいいことが幸運にも起き、都合が悪いことが幸運にも退けられます。ご婦人の幸運を貪ったのでストックもいっぱいあり、大盤振る舞いしてくれたのでしょう。まあ灰になりましたが。

  • 73二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 22:06:41

    コユキ~!立派になって!でもオークションに行ったのはお説教ね!
    あの時ミカがサオリを赦したように、救いがあって欲しいから守る
    曖昧な幸運なんかじゃなくユウカとノアという明確な救いがあったし、無駄じゃあない

  • 74二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 22:07:51

    >>72

    使った分よそから奪うタイプか……

  • 75二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 22:10:22

    Fortune favours the bold「幸運は勇者を好む」
    どっかで聞いて耳に残ってた言葉だけど、
    今のサオリとコユキには相応しい言葉

    婦人はともかくヘリポートでの幸運はコユキの頑張りが引き寄せたものだと思う

  • 76二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 22:10:26

    お疲れ様です

    四葉のクローバーの多くは踏まれたことによる後天的なものが多いんだとか
    試練がなければ四葉にはなれないし
    踏み躙られれば枯れてしまう

    …良縁に恵まれた2人ならきっと見つかりますよ

  • 77◆yQm0Ydhu/2pS24/08/20(火) 22:30:29

    >>73

    きっと立派になったコユキなら自分だけの幸運を見つけられるでしょう。その前に説教だけどな


    >>75

    2人とも勇気を振り絞って掴み取りましたね、確かに今のコユキとサオリにふさわしい言葉です。


    >>76

    悪い大人に踏みつけられても跳ね除けた、きっと立派なクローバーになれるでしょう

  • 78◆yQm0Ydhu/2pS24/08/20(火) 23:38:54

    錠前サオリの裏バイト奇譚14

    業務内容:セミナー案件・兎狩り
    注意事項: 『潜入任務だからスマートに行くこと。間違っても建物の破壊や大暴れなんてしないこと』
    勤務期間:2時間
    給与額:300000円

    コメント:そう言えばホテルの中で盛大に撃ち合ってしまった。そのことをユウカに謝罪した。



    「________いや、あれくらいならもう騒ぎにもならないわ。わざわざありがとうサオリさん」
    「そうか?かなり大きな騒ぎになったと思うが……」
    「ここキヴォトスよ?」
    「そう、だな………」
    「とにかく、隠密とは行かなかったけどこちらの想定以上の騒ぎにはならなかった。闇オークションを取り逃したけどVIPとホテルの一斉検挙もできた。収穫は上々だから、十分スマートだと判断させてもらうわ。さすがね!」
    「ああ、役立てて何よりだ」

  • 79◆yQm0Ydhu/2pS24/08/20(火) 23:39:40

    (通信機の通知音)

    「あら、C&Cからですね」
    『ノア、こちらカリン。任務完了、これより帰還する』
    「お疲れ様です。皆さん怪我はありませんか?」
    『ああ、それが……』
    「ちょっとカリン?もしかして……」
    『あ、ユウカ……その、ごめん。ネル先輩とトキがやりすぎちゃって……』
    『おい後輩!さすがだな!これならC&Cも安泰だ!』
    『ありがとうございます。私もアビ・エシェフ大盤振る舞いの許可をいただけて気分が高揚しました』
    『いや〜更地になっちまったな〜、ビル街』
    『スッキリしましたね、ピースピース』
    『2人とも黙ってて!……あ、ユウカ、ノア。違うんだこれには深いわけが』
    「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアオ!!!!!!!!!!」
    「吼えた!?」
    「うわああああー!ユウカ先輩がカチキレたぁ!!」
    「………………ネル先輩、トキちゃん。帰還後にちょっとお時間いただけますか?」
    「ノア先輩も怒ってる!サオリ先輩ぃ!サオリ先輩ぃぃ!!怖いよぉおお!!」
    「コユキこっちだ!逃げるぞ!!」

  • 80二次元好きの匿名さん24/08/20(火) 23:40:44

    よ"か"っ"た"ーふ"し"に"お"わ"っ"た"

  • 81◆yQm0Ydhu/2pS24/08/20(火) 23:43:44

    >>80

    無事生還です!2人で幸運を勝ち取りました……

  • 82二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 00:47:54

    ビル街が更地はあかんよ…
    どーやったらそーなるんだ?

  • 83◆yQm0Ydhu/2pS24/08/21(水) 00:58:55

    >>82

    「アンウェルカムスクールがコマンドーでダイハードだった」などと供述しており……

  • 84二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 02:14:11

    このレスは削除されています

  • 85二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 02:21:58

    よかったぁ!
    悪い大人になっちゃいけない理由をそう返したかコユキ!
    なにはともあれ良かった良かった!!
    でもこれ、四葉よりもやっぱ怖いの人間の欲望では?塩撒いとくか

  • 86二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 07:55:56

    本来ならC&C対応案件だったとすると早速効果あったじゃん聖なる灰

    よかったなオークション
    街ごと灰にされずに済んで

  • 87◆yQm0Ydhu/2pS24/08/21(水) 09:39:35

    >>85

    子供だと舐めてかかったら一矢報いられます、だってここはキヴォトス。生徒達の世界ですから……

    あくまでクローバーは他人の幸運を全て吸って持ち主に還元するだけですからね。それをどう使うかは持ち主次第。悪人の手に渡ったら碌なことにならないのです……


    >>86

    危うく生前葬でしたね……くわばらくわばら

  • 88◆yQm0Ydhu/2pS24/08/21(水) 09:46:05

    おはようございます、唐突ですみませんが本日お休みで明日新しいバイト投稿します。よろしくお願いします。

  • 89二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 13:50:45

    >>88

    ゆっくりで構いませんからね〜保守して待ってます

  • 90二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 17:59:06

    新バイトそろそろゲヘナあたり来るかなあ

    木の葉を隠すなら森の中
    テロリストを隠すならテロリストの中

  • 91◆yQm0Ydhu/2pS24/08/21(水) 18:06:27

    >>90

    まるでゲヘナがテロリスト塾とでも言ってるようなものじゃないですか……!

    そんなこと……そんなっ………くっ、うう………!!(脳裏に浮かぶ悪ガキ達の笑顔)

  • 92二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 18:16:00

    >>91

    なんなら便利屋漫画でテロリスト塾があったからな…そらハイランダーも発狂するわ

  • 93二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 20:36:18

    >>90

    美食研究会はまずいですよ!

    彼女らなら普通にヒダルソウもココナッツジュースも食いかねない

  • 94◆yQm0Ydhu/2pS24/08/21(水) 21:29:49

    >>93

    美食の子らに関しては何だか心配にならないですね……何だかんだ生還して終わりそう……

  • 95二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 21:55:28

    >>93

    イズミに貪られ発芽できなくなったヒダルソウは沈黙した

    絶滅したのだ

  • 96二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 22:07:53

    >>95

    Happy End!!!

  • 97◆yQm0Ydhu/2pS24/08/21(水) 22:56:34

    揺れる電車。それと共に揺れる髪を整えつつ、私は遠ざかる近未来的な都市……ミレニアム自治区中心部を名残り惜しんだ。
    データ入力と兎狩り、ちょっと大変だった2つのバイトを通してたくさんの人と出会い、色んなことを知ることができた。短い間だが濃密な時間で、その中で私はすっかりミレニアムという場所が好きになっていた。
    だがそれでも私の中にずっとある「自分は何がしたいのか?何になりたいのか?どうやって自分の人生の責任を全うするのか?」と言う問いに答えは出せなかった。まだ私は旅を続けなければならないらしい。
    ミレニアムで知り合った友人達は『幸運を祈っている、いつでも遊びにおいで』と見送ってくれた。少し涙腺に来るものがあったな。胸が暖かくなって、とても嬉しかったな。

    『探してる
    何を求めている
    何か分からないまま
    ただ意味を欲しがる』

    広告ディスプレイから流れる歌の歌詞につい感情移入してしまう。ああそうなんだ。それが何か分からないけど、それでも欲しいんだ。それを手に入れるために、私は探し続けなければならない。応援してくれる、見守ってくれる、幸運を祈ってくれる人達のためにも。

  • 98◆yQm0Ydhu/2pS24/08/21(水) 22:57:31

    「……早く次のバイトを決めないとな」
    歌に耳を傾けながら、私はスマホを操作し次のバイトを探す。このキヴォトスに無数に存在するアルバイトの中から、ああでもないこうでもないと吟味する。そうして1つ、興味深いものを見つけた。
    「何!?時給3万円の結婚式場スタッフだと!?」
    すぐに応募した。今日中には結果が来るだろう。結婚式は見たことがないが、だからこそ興味がある。このバイトを通して勉強させて貰うとしよう。もしかしたらここに、私の探す何かがあるかも知れないしな。

    (電車のブレーキ音)

    「着いたか」
    今日の潜伏先の廃墟の最寄駅に到着。私は席を立ち、夕陽が差し込む駅のホームに足を踏み入れる。

    『Honey don't stop
    Baby don't stop
    Honey don't stop
    No.You don't stop』

    電車の中から微かに歌の続きが聞こえてくる。ああ、分かってる。立ち止まらず歩き続けよう。応援してくれる、見守ってくれる、幸運を祈ってくれる人達のためにも。
    「そして何より、私のために」
    荷物を背負い直し、気合いを入れ直し、私は駅のホームを後にした。


    錠前サオリの裏バイト奇譚・結婚式場スタッフ編
    明日夜登校します、よろしくお願いします。

  • 99二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 23:00:14

    式場スタッフか~忙しいらしいっすねあれ

  • 100◆yQm0Ydhu/2pS24/08/21(水) 23:03:36

    >>99

    身内が実際にバイトしたことがあるのですが、「みんな舞い上がってるし酔っ払ってる人もいるから巻き込まれて大変なことになることもある。何でか知らないけど胴上げされた」と言っていました。大変そうですよね、でも楽しそうだ。

  • 101二次元好きの匿名さん24/08/21(水) 23:14:44

    昔式場に勤めてたけどサオリ、悪いことは言わないからやめとけ
    まあバイトなら……うーん……

  • 102二次元好きの匿名さん24/08/22(木) 00:20:19

    このスレの元ネタ的にかーなーりヤバい気がする…

  • 103二次元好きの匿名さん24/08/22(木) 01:02:47

    >>88

    スレ主なんで嘘ついたんだよ

    更新されないことへのショックを返してくれ

  • 104◆yQm0Ydhu/2pS24/08/22(木) 01:16:49

    >>101

    みんなして止めるの余程やばいんですね……


    >>102

    冥婚おばさんやばかったですよね……


    >>103

    あ、こちらは簡単な次回予告みたいなものなので本編は予定通り明日からになります。前スレの兎狩り編前に書いたコユキの独り言と同じ、お通しですお通し。混乱させてすみません……

  • 105二次元好きの匿名さん24/08/22(木) 10:10:28

    保守
    結婚は人生の墓場って言うから物理的に墓穴に入ることになってもおかしくない

  • 106◆yQm0Ydhu/2pS24/08/22(木) 12:01:13

    >>105

    ウェディングドレスも白装束もあんまり変わりありませんよね……

  • 107◆yQm0Ydhu/2pS24/08/22(木) 17:22:32

    幕間
    電車で流れていたのはMiChiの『something missing』という歌です。歌詞が何となくサオリっぽいなと思い、書いてる時もよく聞いてます。

  • 108◆yQm0Ydhu/2pS24/08/22(木) 17:25:52

    あの電車に音楽を流す設備なんてありません。

  • 109二次元好きの匿名さん24/08/22(木) 17:26:47

    >>108

    追加の文言で一気にホラーになったな……

  • 110◆yQm0Ydhu/2pS24/08/22(木) 17:29:15

    >>109

    でも悪い奴では無いのでしょうね……背中を押してくれるから。

    ああでも駅のホームの奴は悪い子ですね……背中を押してくるから。

  • 111◆yQm0Ydhu/2pS24/08/22(木) 18:39:19

    結婚式場スタッフのバイトを始めた錠前サオリだ。ホテルの式場……ではなく結婚式をやるためだけの施設と運営業者があり、私はそこに雇われることとなった。場所は町外れの小高い丘の上。都市から離れているためとても静かで、教会に披露宴会場、そして広い庭園がある。大人数での結婚式をするには申し分ない場所だろう。
    私の仕事は結婚式場スタッフ……この式場に関わることは何でもやらねばならないらしい。掃除や給仕や設営や草むしりにその他諸々、本当に何でもやって貰うと事前に聞かされている。中々ハードになりそうだが、その分時給は3万円と高く、また式場内にある社員寮と3食おやつが支給されるとのこと。気前がいいな、張り切って行こう。
    なになに、注意事項として『新郎の話は信じないこと』だそうだ。なるほどな…………は?
    新郎とはここで挙式をする男性で、つまり客だろ?どうして信じてはならないのだろう?過去1番に意味が分からないが、まあ頑張ってみよう。

  • 112◆yQm0Ydhu/2pS24/08/22(木) 18:39:56

    (結婚式1週間前)

    最初の仕事は庭園の草むしりだ。芝生に紛れた雑草を引き抜き、芝刈り機で芝生の高さを整える。披露宴ではこの芝生を使ったガーデンパーティを行うこともあるらしい。その日をより良いものにするためにも手は抜けないな。
    刈った草を集めてゴミ袋にまとめる。それを持って上司に報告に行くと、驚いた顔で出迎えられた。
    「もう終わったの!?予定より早いわ……いや、いいのよ。バイトちゃんは優秀ね!」
    「役に立ててるなら何よりだ。次はどうする?」
    「そうね……そしたらこうしましょう。もうすぐお客様との打ち合わせがあるの。そのお客様は1週間後にここで結婚式をするカップルよ。バイトちゃんにはスタッフとして参加して貰う予定だから、ちょうどいいから私と一緒に今日の打ち合わせに参加してちょうだい。お客様のお顔を覚えて貰うわ」
    「了解、では着替えた方がよさそうだな」
    「ええ、ついでにシャワーも浴びて来なさい。それくらいの時間はあるわ」
    「そうさせて貰おう」
    お言葉に甘えてシャワーを浴び、作業着からパンツスーツに着替える。髪はポニーテールにし、簡単にだが化粧もした。これで客を出迎える準備は万端だ。

  • 113◆yQm0Ydhu/2pS24/08/22(木) 18:40:52

    「あら〜!カッコいいじゃないの!」
    「まるで俳優さん……いいえ王子様ねぇ」
    「おばちゃんがもうちょっと若かったらバイトちゃんと結婚してたわ〜!」
    ……スタッフの女性陣にえらく気に入られてしまい、こんな調子でひたすら褒めちぎられた。私は照れることしかできず、むず痒い心境のまま客の到着を待ったのだった。
    ________10分後、件の客が式場にやって来た。獣人(オシドリ)のカップルで、腕を組み仲睦まじい様子で、本当に幸せそうに笑っている。
    「ようこそおいで下さいました。早速打ち合わせを致しましょう。会議室にご案内します」
    「よろしくお願いします……あら?後ろの方は?」
    「ああ。新しく雇ったバイトちゃんです。式にもスタッフとして参加して貰います」
    「バイトの者だ、よろしく頼む。結婚式が成功するよう、精一杯頑張らせてもらう」
    「ああ、よろしく頼むよ!せっかくの結婚式だ、最高のものにしたいからな!ね、ハニー?」
    「フフフ、そうねダーリン♪」
    お、おお……。ハニーとダーリンで呼び合う人は本当にいるんだな。2人は本当に仲良しで眩しく、何だかハートがこっちにも飛んで来てるようにも思える。見てるこっちが恥ずかしくなるくらいだ。
    その後、カップルと上司の打ち合わせは滞りなく行われた。当日の日程と演目の再確認だけなので当然と言えば当然だろう。私は上司の隣で座ってそれを眺めていたのだが、その間も幸せそうに話しているカップルを見て思わず口が動いてしまった。
    「……いいな、結婚というのは」

  • 114◆yQm0Ydhu/2pS24/08/22(木) 18:41:33

    「あら?バイトちゃん?」
    「っ!すまない!つい………」
    「……バイトさん、もしかして結婚式は初めてですか?」
    「……ああ、そうなんだ。ここにも来たばかりだし、今まで結婚式とは無縁の生活だったんだ。だから、その……幸せそうでいいなと思って、つい口を滑らせてしまった。打ち合わせを邪魔してすまない」
    「いや、いいんだよ!君の初めての結婚式が俺達の結婚式で嬉しいよ!」
    「そうね、せっかくだから楽しんで下さいね♪」
    そう言ってくれたカップル達に私は肩をすくめる。照れ臭さもあるが、それ以上にこの人達のために頑張ろうと言う気持ちが強くなった。
    「フフッ、バイトちゃん。楽しむのはいいけど、ちゃんと働いて貰うわよ?」
    「ああ、もちろんだ。最善を尽くそう」
    最高の結婚式にして見せる……私は高らかに宣言して見せた。
    そして和気藹々とした様子で打ち合わせが終わり、カップルが帰る時間となる。
    「あ、すみません。お手洗いを借りてもいいですか?」
    「ええもちろん!ご案内いたしますわ。バイトちゃんは新郎さんとここで待っててちょうだい」
    「了解した」
    トイレに行く新婦と上司を見送る。だがどうしよう、待っている間何か話をした方がいいだろうか?それとも話しかけない方がいいか?少し気不味く感じて迷っていると、急に新郎が口を開いた。
    「……うっ、うわああああああああああ!!!」
    いや、泣き出した!?
    「なっ、どうしたんだ!?」
    「た、助けて下さい!違うんです……違うんですぅうううう!!!」
    「何が違うんだ!?」

  • 115◆yQm0Ydhu/2pS24/08/22(木) 18:42:20

    何とか宥めようとするが新郎は泣き止まず、私に縋り付いてくる。どうにかして落ち着かせ、理由を聞き出すことができたのだが……私は耳を疑った。
    「俺……結婚するつもりなんて無いんです!!あの女も俺の彼女でも妻でも無い、それどころか見覚えすら無いんです!なのに急に結婚の話になって、あいつの家に攫われて……!た、助けて下さい!このままだと、俺……!」

    (足音)

    「ヒィッ!く、来る!!」
    衝撃で何も言えずにいると、新婦と上司が戻ったようで足音が近づいてくる。新郎は慌てて元の席に戻り、ハンカチを取り出す。涙と恐怖を顔から拭い、先ほどと同じ幸せそうな笑顔を作って見せた。
    「戻りました。さ、帰りましょうダーリン」
    「待ちくたびれたよハニー!帰ったらハニーの手料理が食べたいな!」
    「フフフ、今日もあなたの好きなものを作ってあげる♪」
    何事もなかったかのように愛を語り合う2人。私の困惑は加速した。さっきの新郎の言葉は何だったのか?今は仲良さそうだが、本当は新郎は脅されているのか?どうなっている?この結婚……何が起こっているんだ?
    「どうしたのバイトちゃん?早く見送りに行くわよ?」
    「あ、ああ……」
    疑問に答えは出ないまま、私はカップルを見送った。2人は楽しそうに会話しながらタクシーに乗り、式場を去った。車体が見えなくなった瞬間、私は上司に顔を向けた。
    「あら、どうしたの?そんな怖い顔をして」
    「大変だ、さっき新郎と2人きりになった時に……!」
    「何か言われたの?」
    「そうなんだ……!新郎はこの結婚に」
    「忘れたの?注意事項」

  • 116◆yQm0Ydhu/2pS24/08/22(木) 18:42:49

    上司はぴしゃりと言い切り、私を真顔で見つめる。思わず後退った。そこには新婦と楽しそうに話していた上司がいない、私に笑顔で仕事を教えてくれた上司がいない。冷たく無機質で恐ろしい、私の知らない上司がそこにはいたのだ。
    「……言ってみて、注意事項」
    「………『新郎の話は信じないこと』」
    「よかった、覚えているのね。それなら……大丈夫よね?」
    唾を呑み込み、ゆっくりと頷く。肯定しなければ私が大変なことになる気がした。それを見届けた上司は温和な笑顔を戻し、私の頭を撫でてくる。
    「ごめんね〜!怖い思いをさせちゃって!でも私達プロだから、そう言う線引きはしっかりしないといけないのよ。だからバイトちゃんも、ね?」
    「……ああ。大、丈夫だ」
    「うんうん、ならいいわ。じゃ、仕事に戻りましょうか。まだまだやることはたくさんあるわよ!」
    ……その後、私は仕事に追われて式場を駆け回った。本当にやることが多く、その間は必死になっていたため新郎のことも忘れていた。業務を終え、社員寮に戻る頃には暗くなっており、夕飯を食べてすぐに横になる。その時にようやっと新郎のことを……あの泣きじゃくる姿を思い出した。
    ……確かに注意事項で新郎の話は信じるなと言われている。だがもし本当だったら?新郎は脅されて結婚させられようとしていることになる。一体どちらを信じれば……私はどうしたらいいのだろう?
    悶々と考え続けていたら当然寝付くことなんてできず、翌日私は睡眠不足に苦しむことになったのだった。

  • 117◆yQm0Ydhu/2pS24/08/22(木) 18:43:47

    一旦ここまで、少し早いですが投稿しました。
    結婚式場スタッフ編開幕です。果たしてサオリは無事に結婚式を成功に導けるのでしょうか……?

  • 118二次元好きの匿名さん24/08/22(木) 18:47:07

    いいね、面白そう

    だがしかしそもそも無事に成功に導いていいのか…?

  • 119二次元好きの匿名さん24/08/22(木) 18:51:53

    更新きたー!!
    式場スタッフか…元ネタでは激ヤバでしたがここもヤバそう
    サオリ以外にどの人が生き残るかな…

  • 120◆yQm0Ydhu/2pS24/08/22(木) 19:00:22

    >>118

    どうなるかは分かりませんが結婚式をしないとサオリはお給料を貰えません……頑張れサオリ………!


    >>119

    棺桶用意しとかなきゃですね……

  • 121二次元好きの匿名さん24/08/22(木) 19:12:18

    >>120

    「棺桶用意しとかなきゃ」

    冠婚葬祭だけにってかやかましいわ😇

  • 122二次元好きの匿名さん24/08/22(木) 19:51:22

    冥婚と似た雰囲気を感じる…やっぱり人生の墓場っすね

  • 123◆yQm0Ydhu/2pS24/08/22(木) 20:04:45

    >>122

    まだ死んでません……!まだ死んでませんから……!

  • 124二次元好きの匿名さん24/08/22(木) 21:04:29

    これは……どっちだ?
    いや素直に見れば新郎が被害者側だろうが……でもこれは……いやどっちだ!?

  • 125二次元好きの匿名さん24/08/22(木) 21:55:05

    >>124

    怯えるような仕草もせずにスッて戻ってるんだよなぁ……

  • 126◆yQm0Ydhu/2pS24/08/23(金) 00:38:07

    >>124

    >>125

    どっちやろなぁ……でも信じることは大切だ、そうですよね先生?

  • 127◆yQm0Ydhu/2pS24/08/23(金) 00:40:07

    保守ついでに。前にファンアートを描いてくださった方はまだ読んでくれてますでしょうか?
    気が早いですが次スレのスレ画にあの絵を使わせていただきたいです、ご検討お願いします。

  • 128二次元好きの匿名さん24/08/23(金) 08:01:24

    地味にオシドリのカップルとは良いチョイスだ
    その実態と合わせて、ね

  • 129二次元好きの匿名さん24/08/23(金) 10:10:10

    >>128

    その実、毎年つがいとなる相手は違う。毎年毎年(死んでなければ)同じ相手と巣を作るペンギンの方がずっとオシドリ夫婦なのである

  • 130二次元好きの匿名さん24/08/23(金) 10:20:41

    新郎さん大丈夫かこれ?
    今回はアレだな、バイト側がヤバい感じかな?

  • 131二次元好きの匿名さん24/08/23(金) 10:44:00

    いままで段階的にヤバさが分かってくる話が多かったけど、今回は初手からヤバさがアクセル全開だな
    前回はほぼ生きた人間の暴力が相手だったし前々回は相手に害意はなかったし、久々にホラーな話きちゃったか?
    というかやはり冥界の住人達なのか、今回の相手は

  • 132二次元好きの匿名さん24/08/23(金) 12:30:05

    >>128

    >>129

    自分の都合のいいように解釈するのは人の質なんでしょうね……本当のところはどうなのか、サオリはそれをどう見るのか……


    >>130

    どうしましょうね、サオリは誰を信じるのか……


    >>131

    思っクソアクセルふかしました。減速しないよう頑張ります……。

  • 133二次元好きの匿名さん24/08/23(金) 15:23:16

    タイムリーな話題なので便乗して申し上げます。


    先日ふと例のファンアート( https://bbs.animanch.com/board/3580326/?res=38 )を見返して気付いたんですけど、似顔絵先生が描かれた何かとペロロジラぬいぐるみの他に「 ᓀ‸ᓂ 」が描かれた何かと「Vanitas」と書かれた何かも棚に陳列されてますよね?

  • 134◆yQm0Ydhu/2pS24/08/23(金) 16:17:28

    >>133

    教えてくれてありがとうございます、これは分かりませんでした。本当に噛めば噛むほど味がしますねあのファンアート……!

    こんな素敵なものを描いていただけて本当に幸せです……

  • 135二次元好きの匿名さん24/08/23(金) 21:21:42

    この裏バイトSS読んでると
    脳内ではブルアカの絵で
    コマ割りとか演出とかが元ネタの漫画風で想像されてとてもいい

  • 136◆yQm0Ydhu/2pS24/08/24(土) 00:39:49

    >>135

    元ネタ漫画大好きなのでとても嬉しいです……!裏バイトの空気を少しでも再現できているのなら何よりです。

  • 137◆yQm0Ydhu/2pS24/08/24(土) 00:40:01

    (結婚式5日前)

    結婚式場スタッフの朝は、たとえその日結婚式がなくても早い。準備が山ほどあるし、綺麗な施設を維持するために毎日掃除をしなければならない。そうして当日をより良いものとするために頑張るのだ。
    今日も朝早くから起き、朝食を食べたらすぐに仕事に取り掛かる。朝日を浴びながら草刈り機を駆る。もう完全に草刈り担当と化していた私だが手慣れたもので、初日よりも早く作業を終えることができた。
    用具を片付けながら次の仕事は何かと考えていると、後ろから足音が聞こえてくる。振り返るよりも早く、その足音の主は私に声をかけて来た。
    「朝から大変ですね、バイトさん」
    「お前は、前に来た新婦さん……?」
    「フフッ、お久しぶりです」
    気品があり、どことなくほんわかした雰囲気の獣人(オシドリ)の女性。もうすぐここで結婚式を挙げる新婦だ。来ていたのか、だが今日は打ち合わせなんてなかったはず……。
    「……1人か?どうしてここに?」
    「見学に来たんです。私、この結婚式が本当に楽しみなんです♪」
    「そうか。綺麗な場所だからな」

  • 138◆yQm0Ydhu/2pS24/08/24(土) 00:41:29

    お淑やかに笑う彼女に微笑み返し、手に持っていた草刈り用具を地べたに置く。彼女から視線を逸さぬように立ち上がり、首を動かして『少し歩いて話そう』とジェスチャーをする。
    そうして庭園の端、人目につきにくい用具入れから離れて、人目につきやすい開けた場所に移動する。並んで歩くが1歩分離れ、いつでも逃げられるよう構えつつ歩いた。両手は開き、いつでもアサルトライフルとハンドガンを握れるようにする。自然体でいるよう振る舞いながら私は新婦に最大限の警戒を向けた。

    『俺……結婚するつもりなんて無いんです!!あの女も俺の彼女でも妻でも無い、それどころか見覚えすら無いんです!なのに急に結婚の話になって、あいつの家に攫われて……!た、助けて下さい!このままだと、俺……!』

    あの時の新郎の慟哭と錯乱を思い出す。『新郎の話は信じないこと』が注意事項で、もしかしたら新郎はとんでもない嘘吐きなのかも知れない。だが私にはあの新郎の様子が嘘とは思えなかった。もし本当に新郎の言った通りなら、やっていることは誘拐の上望まない結婚を新郎に強いることになる。そんなことしていいはずがない。
    (________客や雇い主の事情には首を突っ込まないようにしているが、今回はそうもいかない。情報を引き出して、見極めさせて貰う。その後どうするか考えよう。最悪の場合は……戦うことも覚悟しようか)

  • 139◆yQm0Ydhu/2pS24/08/24(土) 00:42:10

    昨晩考えた末にそう決心し、今日からスタッフに探りを入れるつもりだった。今新婦と2人きりになれたのはある意味ちょうどいいのかも知れない。1番の当事者と言える人物だ。少しでも何か聞き出してやる……!
    「1人でも見学に来るだなんて、本当に楽しみなんだな。ところで、どうしてこの結婚式場を選んだんだ?」
    猜疑心を笑顔の画面で隠して問いかける。ミカ曰く対話の初めはアイスブレイク、世間話をすることで話しやすい空気感を作ることが大事らしい。私はそれっぽい話題を振ってみることにした。
    「そうですね……結婚式専用の会場というだけあって、設備もサービスも充実しているのがいいと思ったんです。スタッフさん達もとても良くしてくれて……すっかり気に入っちゃって。でも1番気に入ったのは……この庭園ですね」
    「庭園?」
    ちょうど芝生の中心で私は立ち止まり、庭園を見回す。一緒に歩いていたら新婦はニコニコとして私の様子を見守っていた。
    教会と披露宴会場に囲まれた庭園は、とは言っても広い芝生とささやかな花壇スペースがある場所だ。この芝生でのパーティや花壇前で記念写真を撮るために使われると聞いている。私含めスタッフが手入れしているため、とても綺麗な場所だと思う。
    「そう言えば打ち合わせの時、この庭園を使うと言っていたな」
    「ええ。私、ガーデンウェディングと言うものをやろうと思っているんですよ」
    「ガーデンウェディング……確か夫婦の誓いや披露宴までを全て屋外で行うウェディングスタイルのことだな」
    先日の打ち合わせで彼女達がそのような式を挙げることは把握している。だからこそ毎日芝生の手入れをしているし、その他の準備もガーデンウェディングに合わせたものだ。
    「教会を使う、一般的なものもいいなと思ったけど……私にはこれが1番だと思ったんです。ここはどこよりも自由にやらせてくれるから、私らしい式ができる……ここに依頼して良かったと思ってます」

  • 140◆yQm0Ydhu/2pS24/08/24(土) 00:42:50

    なるほど、確かにかなり広い芝生だから何十人規模の披露宴もできるだろう。それにここは客の要望にはできるだけ答えるようにしていると上司も言っていた。なるほど新婦はかなりオプションを入れたのだな。
    「まだ何もない庭園ですけど、当日は私の要望通りに設営されるんですよね?今からそれが楽しみで、ついつい何度も見学しに来てるんです。本当に素敵な庭園ね、とっても都合がいいです♪」
    肩をすくめつつ、はにかんだ笑顔で新婦はそう答えた。そう言えば打ち合わせを聞いた限りでは、結婚式では余興やパーティに比重を置いていたな。具体的な内容はもう打ち合わせ済みらしく、私はどんなことをするかは分かっていない。だが新郎新婦、参列者で色々なことをして楽しむのだろう。
    「……本当に結婚式が楽しみなんだな」
    「はい、私の1番の願いのためですから!」
    ……う〜む、新婦の結婚式が楽しみと言う言葉には嘘がないように思える。だが少し引っかかるところがあった。

    『ええ。私、ガーデンウェディングと言うものをやろうと思っているんですよ』
    『教会を使う、一般的なものもいいなと思ったけど……私にはこれが1番だと思ったんです。ここはどこよりも自由にやらせてくれるから、私らしい式ができる……ここに依頼して良かったと思ってます』
    『まだ何もない庭園ですけど、当日は私の要望通りに設営されるんですよね?今からそれが楽しみで、ついつい何度も見学しに来てるんです。本当に素敵な庭園ね、とっても都合がいいです♪』

    ……私、私には、私らしい、私の。全ての発言の一人称が「私」だけで、発言の中に新郎の姿が見えない。まるで自分1人のための結婚式と言っているように聞こえる。プランを全て新婦が決めたのなら分かるが、あんなに仲がいいカップルならどこかしらで『私達の』と表現しないだろうか?自分本位ではなく、生涯のパートナーと共に楽しみにしていると言わないだろうか?そんな些細な疑問が強い違和感となって、私の首を傾げさせた。

  • 141◆yQm0Ydhu/2pS24/08/24(土) 00:43:56

    「あら?どうしたんですか?バイトさん」
    「ああ、いや。何でもない」
    顔と態度に出ていたようで新婦に心配されてしまった。首を大きく振って気持ちを切り替える。
    (アイスブレイクのつもりが興味深いことが聞けたな。……この人が新郎をどう思っているか気になる。次はそれを聞いてみよう)
    「あ、ごめんなさい!仕事の途中でしたのに話しかけて迷惑でしたよね?」
    「問題ない。むしろ私が質問をした側なんだ、答えてくれてありがとう。……とても優しい人だな。こんな人がお嫁さんになるなんて、きっと新郎さんも幸せだろう」
    「…………フフッ、そうかも知れませんね」
    ……何だ今の含み笑いは?訝しみつつも話し続ける。
    「よければ後学のためにもう少し聞かせて貰えないだろうか?その……新郎とだな……馴れ初めという奴だ!新郎のどこが好きになって、結婚することになったんだ?」
    ちょっと強引だったか?不自然に思われなかっただろうか?一瞬の思考の間に不安を募らせていると、新婦は私の質問に即答した。
    「どこが好きになったか、ですか。










    ………どこも」

  • 142◆yQm0Ydhu/2pS24/08/24(土) 00:44:52

    「……は?」
    「フフッ、私、あの人大嫌いです♪」
    今日1番の笑顔と共に暴力的なまでの衝撃が飛んできて私を困惑させた。しかしそんな私を置いて新婦は話を続ける。
    「ええと、馴れ初めでしたっけ?初めて会ったのは、1ヶ月前ですね」
    「1ヶ月前!?それで、もう結婚を?早すぎないか?」
    「ええ、そうですね。でも、ヒラサカ十字路であの人を見た瞬間、絶対に結婚式をしなくちゃって思ったんです。だから義実家の人達とお話しして、すぐにでも結婚することにして……ああ、そう言う意味ではこの結婚式場には本当に感謝しているんですよ。予定が空いていたとは言え、たった1ヶ月で準備を進めてくれて!」
    「そ、そうなのか……い、急ぎ過ぎではないのか?」
    目を爛々と輝かせて語ってくれた新婦に恐る恐る尋ねる。すると新婦は急に詰め寄って私の肩を掴んだ。
    「ダメです!1秒でも早く結婚式がしたいんです!あの人と結婚式ができれば、私の願いは叶う……!だからすぐにでも!」
    「………っ!?」
    強烈な剣幕に押されて何も言えなくなる。新婦の荒い息を顔で浴び、視線を逸らすことができずにいた。
    ……新婦は、彼女は大嫌いな新郎と何としてでも結婚をしようとしている。いや、『結婚式』だな。結婚式であることを強調していた。結婚ではなく結婚式が本来の目的なのか?

    『はい、私の1番の願いのためですから!』
    『ダメです!1秒でも早く結婚式がしたいんです!あの人と結婚式ができれば、私の願いは叶う……!だからすぐにでも!』

    ……いや、それも違うな。彼女には結婚式の先に1番の願いとやらがあるらしい。それは一体何だ?新婦は何を企んでいる?

  • 143◆yQm0Ydhu/2pS24/08/24(土) 00:45:50

    「……愛の無い結婚式の、お前の願いとやらのためだけに、新郎を利用しようとしているのか?お前は一体何をしようとしている?」
    「………スタッフさん達は何も聞かないで従ってくれましたよ?バイトさん」
    そう言って新婦は私の肩を離す。互いに乱れた服と呼吸を無言で整える。少しの沈黙。風が吹いて私の髪を揺らした。
    「……そろそろ失礼しますね。当日はよろしくお願いします」
    またお淑やかな笑顔でそう言って、新婦は庭園を、結婚式場を去って行った。私は新婦を睨みつけて見送り、姿が見えなくなった瞬間力が抜けてその場に座り込んだ。

    『新郎の話は信じないこと』

    ……いや新婦の方が怪しすぎないか?何がどうなってるんだこの結婚式は?
    「……とにかく、もう少し情報を集めないとな」
    まだまだ仕事は山積みだ。本当に山積みだから、とてもバックれるタイミングなんてない。だが一緒に働くスタッフへの聞き込みくらいならできるはずだ。……そのスタッフもいまいち信用ならないのだが。
    何にせよ動くためには情報が足りない。しっかり見極めるために、結婚式の全貌を把握しなければ……!
    改めて首を突っ込む意思を固め、私は上司に草刈りの報告をしに行くのだった。

  • 144◆yQm0Ydhu/2pS24/08/24(土) 00:47:24

    一旦ここまで、次もこれくらいの時間になると思います。
    今回いつも以上に即興で書いてるので、変なところがあったらお申し付けください。

  • 145二次元好きの匿名さん24/08/24(土) 00:49:44

    どういう事だ……新郎の情緒不安定だとか親に話し通してるあたり洗脳とかあるのか……?

  • 146◆yQm0Ydhu/2pS24/08/24(土) 01:08:21

    >>145

    どうして義実家は話を聞いたのでしょう、言うことを聞いて、逆らえないのでしょうね………?

  • 147二次元好きの匿名さん24/08/24(土) 01:12:01

    十字路…四辻か…どちらが、どこまでかはわからんがご愁傷様としか言えんな
    正直もうここでバイト辞めたいくらいの案件

  • 148二次元好きの匿名さん24/08/24(土) 03:05:00

    十字路では昔から悪魔やこの世ならざるものと出会えると言うけど、この新婦が向こう側から来た存在とかじゃないよね
    というかサオリやばいな、裏バイターの鉄則を破りまくり、まあサオリ自身には裏バイターの自覚はないんだろうけど

  • 149◆yQm0Ydhu/2pS24/08/24(土) 08:37:22

    >>147

    果たして十字路には何が隠されているのか……


    >>148

    困ってるかも知れない人のためとは言え、自らの意思で首を突っ込んでしまいました。引き際を見極められるといいのですが……

  • 150二次元好きの匿名さん24/08/24(土) 14:54:00

    新婦が怪しすぎて逆に怪しくない説

  • 151二次元好きの匿名さん24/08/24(土) 16:55:39

    サオリって推理力あるのかな?
    ゲリラ戦得意だから相手の行動を読むのは得意そうだけど……
    この裏バイトの真相を暴ききれるのかな?

  • 152二次元好きの匿名さん24/08/24(土) 17:37:13

    新婦が異相の存在で天啓的サムシングで結婚を決めたとして、新郎のことは普通に嫌ってるのは結構なレアケースに感じる
    大望成就という真目標があるとは言え、そういうのの被害者に選ばれる人って大体精神的相性が(不幸にも)良かったりするし
    「願いを叶える為のパートナーが嫌いな相手で良いのか?」みたいなのでワンチャン……は無いんだろうなぁ

  • 153二次元好きの匿名さん24/08/24(土) 17:50:33

    このレスは削除されています

  • 154二次元好きの匿名さん24/08/24(土) 22:44:27

    新婦と話した後、私は仕事をこなしながら他スタッフへの聞き込みを行った。
    「新郎新婦がどんな人か?」
    「ああ。結婚式の手伝いをするのはいいが、私は新入りだから新郎新婦について何も知らない。他のスタッフ達と同じくらいの理解はあった方が色々といいだろうから、教えて欲しいんだ」
    「真面目ねぇバイトちゃん」
    「でも確かに、お客様を理解することでサービスの質が上がるかも知れないね」
    「俺達が知ってる範囲でよければ教えてやるよ!」
    スタッフ達は快く私の質問に答えてくれた。無論話をしながらも仕事をこなしていたのだが、さすがプロと言ったところか、その作業スピードは一切遅くならない。これがベテランスタッフかと感心せざるを得ない。
    さて肝心の情報だが、まず新婦は元々別の人と結婚していたらしい。だが1ヶ月前に夫に先立たれ、失意の中新郎と出会い、結婚することにしたそうだ。そして新郎は隣町の神社の息子で、素行の悪さで地元では有名だったらしい。
    「結婚の神様で有名な神社よ。祀っている神様が神様だからあの神社も結婚式をやれるけど、今回はうちでやってくれることになったのよ!」
    「なるほど。それはどうしてだか分かるか?」
    「さあ?それって結婚式に関係あるかしら?」
    「…………」
    ……次の情報だが、この結婚で新郎は実家と縁を切り、新婦の家系の人間となるらしい。
    「家系って言っても、新婦さんは天涯孤独の身だからそんなに大それたものじゃないね。新婦が新郎の家の人になるんじゃなくて、新郎が新婦の家の人になる。ただそれだけさ」
    「そうか。それは、どうしてそんなことを?」
    「さあ?それは結婚式に関係あるかい?」
    「…………」

  • 155二次元好きの匿名さん24/08/24(土) 22:45:18

    ……最後に、新郎は新婦がその場から離れるとすぐに泣き出して、近くのスタッフに助けを求めるそうだ。
    「自分はこんな結婚望んでない!あの女に攫われたんだ!ってよぉ、本当にびっくりしたぜ。まあ新婦さんが来たらすぐにイチャイチャしだすけどな」
    「……どうして新郎がそんなことをするのか知っているか?」
    「さあ?結婚式には関係ないだろ?」
    「…………いや、これはさすがにあるだろ!?新郎が無理矢理結婚させられてるかも知れないんだぞ!?」
    思わず手を止め絶叫する。そんな私に対し、スタッフ達は一斉に首を傾げた。
    「確かにそうかも知れないけど、新郎と新婦の問題じゃない。私達スタッフの考えることじゃないわ」
    「疑問にも思わないのか!?」
    「思わないかなぁ。この結婚式は新郎新婦のためのものだけど、契約者は新婦さんなんだよ。新婦さんは大丈夫だから気にするなと言っていたから、我々スタッフは何も気にしなくていいと思うよ。注意事項だって、新婦さんが指定したものだしね」
    「俺達スタッフは契約者のために最高の結婚式を演出すればいい。いやむしろそれ以外のことなんて考えちゃいけねぇ、専念するんだ。それがプロって奴だぜ」
    「契約者の新婦さんの希望は全力で叶える、それ以外のことや新婦さんに不都合なことは無視でいいのよ!」
    「全ては最高の結婚式のために」
    「ああそうだ、最高の結婚式のためだぜ」
    「………そうか」
    話は聞けた。だが話にならなかった。
    どうやらここのスタッフは皆結婚式そのものに執着しているらしい。結婚式なら、契約者の要望なら何でもやる。それ以外のことには目もくれず、契約者が望むなら悪いことも無視してしまう妄信ぶりだ。気味が悪い。
    そしてそんなスタッフ達から聞けた情報が新婦への不信感を募らせた。前の夫が死んですぐに新郎と結婚しようとしていること、わざわざ新郎に実家との縁を切らせて新婦側の家の人間にすること……何らかの目的があってやっているのだろう。それこそが新婦の1番の願い……。一体新婦は何がしたいんだ?

  • 156二次元好きの匿名さん24/08/24(土) 22:46:18

    婿入りなのか

  • 157二次元好きの匿名さん24/08/24(土) 22:47:13

    ………この後、スタッフ達に新婦の1番の願いについて聞いてみたが、知っているものは誰もいなかった。1番新婦を知っていそうな上司に聞いてみるも、どうやら知らない様子。
    (1番重要なことだと思うが、そこは分からず終いか。う〜む、これからどう調査したものか……)
    「バイトちゃ〜ん、今日のお仕事は終わりよ〜。……バイトちゃん?」
    「……はっ!すまない、考えごとをしていた」
    「あら、それならいいんだけど。大丈夫?無理してないかしら?」
    「も、問題ない……」
    上司は心配そうに私の顔を覗いてくる。私は作り笑いを浮かべて対応した。いつの間にか業務終了の時間で、他のスタッフ達も後片付けをして寮に帰ろうとしている。操作もお開きだな。私も寮に戻ろうとしたら、上司にまた話しかけられた。
    「あ、バイトちゃん。車の運転ってできるかしら?」
    「運転?可能だ。免許も持っている」
    アリウスにいた頃に車の運転を覚えており、アリウス印の偽造運転免許証も常備している。あ、でも旅を始めてからは触ってないな……まあ問題はないだろう。
    「なら、明日は結婚式で使う備品を受け取りに、新郎さんの実家に行って欲しいの」
    「新郎の実家……!?」
    僥倖だ……!結婚式場での捜査は手詰まりに感じていたから、実家の神社とやらに行き、また新郎と話が出来れば何か分かるかも知れない。私は喜びを胸に押し留め、事務的に聞こえるよう返事をする。
    「了解、任せてくれ」
    「ありがとう!場所はカーナビに登録してあるわ。ちょっと遠いから、行って帰ってきて、備品を下ろしたら明日の仕事は終わりになると思うわ」
    「そうか、ちなみに備品とは何だ?」
    「披露宴で行われるキャンプファイヤー用の薪と丸太とガソリンよ。軽トラで運んでもらうわ」
    キャンプファイヤー……キャンプだったり屋外での催し事で行われるあの……大きな焚き火を囲んで何かをする奴か。よく分からないが、この結婚式もガーデンウェディングだからやるんだな。にしてもガソリンを使うなんて、私が想像していたよりも派手なものなんだな、キャンプファイヤーとはそう言うものなのか。

  • 158二次元好きの匿名さん24/08/24(土) 22:47:25

    トリップついてないけど
    流石に本物っスよね?

  • 159◆yQm0Ydhu/2pS24/08/24(土) 22:48:26

    「把握した、明日は任せてくれ。では失礼する」
    「ええ、今日もお疲れ様!明日もよろしくねバイトちゃん!」
    上司に見送られて私は寮に戻る。その後は晩ご飯(パーティで出されるものと全く同じご馳走。専属シェフの修行の一環として作ってくれた)に舌鼓を打ち、明日に備えてすぐにベッドに入った。
    「食事と寝床は最高なんだが、きな臭過ぎるのがな……結婚式が終わったら辞めるか。ああそうだ……明日の目的地の神社……今のうちに………調べて…………ダメだ、起きてられな…………すぅ、すぅ………」
    精神的にも肉体的にも疲れてたせいか、眠気に耐えられず私は意識を手放す。それはいいのだが、調べ物をするためにスマホを握り締めたままだったので、朝起きたらスマホは充電切れになっていた。らしくない凡ミスをかまして翌朝の私は絶望したのだった……。
















    『じゅのじんじゃ どんなとk

    入力予測
    ・授臨神社 息子 死亡事故
    ・授臨神社 ヒラサカ十字路 地縛霊
    ・授臨神社 結婚 孔雀の神』

  • 160◆yQm0Ydhu/2pS24/08/24(土) 22:49:50

    一旦ここまで、明日は突撃新郎実家の神社です。よろしくお願いします。


    >>158

    別スレにお邪魔してた時にコテハン消してたのをすっかり忘れていました。ご指摘ありがとうございます。責任はヒヨリが取ります。

  • 161二次元好きの匿名さん24/08/24(土) 22:57:36

    おいおいおいおい待て待て待て待て

    これ両方とも厄ネタじゃねえかもしかして!?

  • 162二次元好きの匿名さん24/08/24(土) 23:03:16

    このレスは削除されています

  • 163◆yQm0Ydhu/2pS24/08/24(土) 23:08:28

    >>161

    みんなの結婚を見守る孔雀の神様ですよ、怖くない怖くない……

  • 164二次元好きの匿名さん24/08/24(土) 23:09:13

    >>157

    キャンプファイヤーねえ…さぞかし高々と炎が立ち昇るんだろうな「あちら側」に届くくらい


    サオリに普通の結婚式の知識がほぼ無いのがこれまた……

  • 165二次元好きの匿名さん24/08/24(土) 23:10:22

    やはり四辻で逢うモノに関わるべきではない
    サオリだけでも離脱できればいいけれど…新婦たちも助けないと縁が切れそうにないな

  • 166二次元好きの匿名さん24/08/24(土) 23:10:59
  • 167◆yQm0Ydhu/2pS24/08/24(土) 23:16:53

    >>164

    油断したなァ!結婚式とはこういうイベントだ!(違う)

    ガソリンですからね、そりゃあもう派手ですよ。


    >>165

    軽トラ盗んで走り出しても逃げられるかどうか……


    >>166

    ヒヨリ!俺だ!全ての責任を丸投げさせてくれ!!

  • 168二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 01:04:34

    サオリ、悪い事は言わないから怪しいと思ったらアツコか先生に相談しよう
    アツコの知識や先生のツテがあれば大抵の事は調べられる、先生がヴェリタスを動かしてくれればスタッフ達の秘密だって分かる

    まあそれやるとお話しにならないから無理だろうけど

  • 169◆yQm0Ydhu/2pS24/08/25(日) 01:25:57

    >>168

    原作でもバイト外の人間に相談する回があったので、サオリから能動的にスクワッドやミカ、先生に相談する回もチャレンジしてみたいですね。何ならこれまでにこのシリーズ内で出会ったサヤ、放課後スイーツ部、ミレニアムの面々にヘルプを頼んでも面白いかも知れない。ただその場合は弩級の化け物を用意することになると思いますが……

  • 170二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 08:01:03

    誰やろ?

  • 171二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 09:09:09

    >>157

    あなた運転出来たのかよ?!

    しかも、偽造?!?!

  • 172◆yQm0Ydhu/2pS24/08/25(日) 11:36:08

    >>171

    アリ夏PVでもミサキが運転していましたからね、サオリも習得しているのでしょう。ちなみに2人ともゴールドですね。まあ偽造運転免許証なので金メッキもいいとこですがねガハハ

  • 173二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 18:38:27

    洗脳程度の生優しいものじゃねえわこれ
    そもそも新郎に洗脳される脳が残ってなささささ

  • 174二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 18:41:47

    なんてことだ、もう助からないゾ♡

  • 175◆yQm0Ydhu/2pS24/08/25(日) 20:21:01

    >>173

    新郎……いい奴だった……!


    >>174

    せめてサオリだけは助かって欲しいものです。

  • 176◆yQm0Ydhu/2pS24/08/25(日) 22:07:45

    (結婚式4日前)

    「事故なんて起こしちゃダメよ?安全運転!いいわね?」
    「ああ、安全運転で行ってくる」
    昨日のように上司に見送られて、私は軽トラを走らせた。
    カーナビには確かに新郎の実家、授臨神社のルートが設定されている。どれどれ……確かに遠いな。隣町とは言っても端の方にある上に、そもそも今いる都市も隣町も面積が広い。途中でどこかで昼食と休憩を取るとして、その時間と到着後の荷物の詰め込み、そして渋滞に捕まった時のことを想定したら、日が暮れる頃に結婚式場に帰ることになりそうだ。長旅だな。
    カーナビの指示に従って軽トラを走らせる。道中にトラブルはなく、しかし案の定渋滞や赤信号に何度も捕まって、座りっぱなしの私は尻の肉が取れそうになった。
    そんなこんなで昼頃に隣町の神社周辺の地域に辿り着く。どこにでもあるような普通の街並みだが、小高い丘の上にある授臨神社が、まるで街を治めるかのように鎮座している。さらに街並みをよく見ると、どの家の扉にも大きな鳥の羽が飾られていた。
    「ここ独自の文化……信仰だろうか?あの神社はずっとこの街の人々を見守っているんだな……」
    見知らぬ街並みに垣間見得た独自の文化に感心していると、また信号に捕まった。信号を待っていた人々が動き出し、私の軽トラの前を通り過ぎる。

  • 177◆yQm0Ydhu/2pS24/08/25(日) 22:09:22

    「……ん?ここは」
    不意にカーナビの文字が目に入る。今私がいるこの十字路に『ヒラサカ十字路』と名前が付いていた。どこかで聞いたことがあるような……、

    『ええ、そうですね。でも、ヒラサカ十字路であの人を見た瞬間、絶対に結婚式をしなくちゃって思ったんです。だから義実家の人達とお話しして、すぐにでも結婚することにして……ああ、そう言う意味ではこの結婚式場には本当に感謝しているんですよ。予定が空いていたとは言え、たった1ヶ月で準備を進めてくれて!』

    ………ああ、そうだ。新婦が言っていた。彼女はここで新郎と出会い、結婚すると決めたらしい。ちょうど赤信号で軽トラは動けない。私は試しに周囲を見回した。もしかしたら新郎と新婦がいるのかも?いや、まさかな。すぐに馬鹿らしくなり顔を正面に戻そうとした瞬間、私はその姿を目に捉えた。
    「新郎、本当にいた……!」
    自分から探し始めたが見つかるとは一切期待していなかったその姿、歩道の人々の中に新郎の姿を見つけた。電柱の隣に突っ立って、俯いて……花束?花束だ、電柱の真下に置かれている花束をじっと見つめている。何をしているのか不思議だがまあ、見つかって良かった。この結婚式について、助けを求めた理由について聞くことができる。
    しかし喜んだのも束の間、信号が青に変わった。ああ、色々聞きたかったのに……!
    (まあいい、今から奴の実家に行くんだ。家族に話を聞いたり、奴が帰ってくるのを待つのもいいだろう。今は安全運転だ)
    溜め息を1つ車内に投げ捨て、私はアクセルを踏んだ。車はあるが混んではいない十字路、スムーズに進むことができ、ヒラサカ十字路を通過した。瞬間、
    「助けてええええええええええ!!嫌だ!!結婚したくなあああああああい!!!!」
    「っ!?」

  • 178◆yQm0Ydhu/2pS24/08/25(日) 22:10:52

    思わずブレーキを踏み、振り返る。約5メートル後方のヒラサカ十字路の歩道、さっきまで新郎がいた場所を睨む。そこから新郎の悲鳴が確かに聞こえた!だが新郎の姿が見当たらない。何なら他の歩行者は何事もなかったかのように通過して行ってる……。
    「な、何だったんだ今のは……?」

    (クラクションの音)

    「っ!ああもう……」
    真後ろの車から急かされ、私は困惑する脳を無理矢理切り替えて運転を再開した。今すぐにでも引き返してヒラサカ十字路を見たいが……Uターンは難しそうだ。仕方ない、予定通り神社に行って、帰りにヒラサカ十字路を調べよう。
    私は後ろ髪を引かれる思いで、何なら強く視線を感じる気がするほどに惜しみながら軽トラを走らせたのだった。



    「________ようやっと着いた……だが駐車場が満員だな。どうしたものか」
    あれから20分ほどで授臨神社に到着。隣接している駐車場に入った。しかし満席なようで、どうしようかと考えながら駐車場内をぐるぐる走らせていた。
    こんなに客が来る神社なのか……。敷地も広いし、きっと霊験あらたかな場所なんだな。感心しつつも困っていると、神社から獣人(ペンギン)の集団が出てきて駐車場に入ってきた。皆笑顔で和気藹々とした様子で、それぞれの車に乗ってエンジンをかけ始める。ちょうど帰る集団か、これなら軽トラを止められそうだ。
    ホッとしていると、1人の男性が軽トラに近づいてきた。笑顔でこちらに手を振り、敵意を感じなかったので窓を開けて応対する。
    「悪いねお嬢ちゃん、駐車場いっぱい使っちゃって!俺達もう帰るから、すぐに空くと思うよ!」
    「構わない、感謝する。お前達は観光か?」
    「観光?いいや、結婚式だよ!ここは結婚の神様じゅのお様が祀られてる神社だからね、この辺りの人間はみんなここで結婚式をするのさ!あ、ほら見て!」

  • 179◆yQm0Ydhu/2pS24/08/25(日) 22:13:30

    そう言って男性は神社の方に羽根を向けた。そこにはちょうど神社から出てくる2人の獣人。片方は白無垢を着た女性で、もう片方は羽織り袴を着た男性……あの2人が結婚式を挙げた夫婦だな。寄り添って、とても幸せそうにしている。
    「おめでとう!お幸せに!」
    「お似合いだよ!2人ともずっと仲良しだったから、結婚できてよかったね!」
    周囲を取り囲んで祝福の声を上げる参加者達。それを浴びてはにかみながら2人は車に乗り込み、去って行った。他の車達もそれに続く。きっと2次会か何かを別の場所で行うのだろう。しかし、そこにいた全員が大きな鳥の羽を持っているのが印象的だった。やはりあれはこの神社の神由来のアイテムなのか。
    「……めでたい席だったんだな」
    「きっと孔雀の神……じゅのお様も喜んでるよ!そう言えばお嬢ちゃんは観光かい?」
    「いや、仕事だ。この神社の息子の結婚式の件で訪ねて来たんだ」
    「あっ、あ〜……なるほど………。じゃ、じゃあね!お仕事頑張って!」
    途端に歯切れが悪くなり、男性はペタペタと駆けて自分の車に乗り込み、走り去ってしまった。何か思うところがあったのだろうか?訝しみつつ軽トラを駐車した。
    境内に入り様子を伺う。本殿では宮司の服や巫女服を着た獣人(オシドリ)達がせっせと後片付けをしている。ちょうど1人の巫女が近くを通りかかったので声をかけ、新郎一家に取り次いで貰った。しばらく待っていると奥の方から初老の宮司がやってくる。そいつは新郎の父親を名乗り、私に恭しく一礼して見せた。
    「わざわざ遠いところからようこそおいで下さいました」
    「構わない、仕事だからな。それで備品は?」
    「社務所に置いてあります。申し訳ありません、車をここまで寄せることができないので往復してもらうことになりますが……」
    「問題ない、持って行こう」
    「お手伝いいたします」
    お言葉に甘えて、新郎の父親と共に備品を運び出した。大量の薪と丸太、そしてガソリンが入ったポリタンク。2人がかりでも何往復もする必要があったが、その間に父親から話を聞くことができそうだ。私はポリタンクを持ちながら父親に問いかけた。
    「新郎はいないのか?」
    「いえ、もうこの家にはおりませんよ」
    ん?ニュアンスが気になるな。「出かけている」とは捉えにくい言い方だ。

  • 180◆yQm0Ydhu/2pS24/08/25(日) 22:14:18

    「………出かけているのか?」
    一応の確認と認識のすり合わせのため、あえてそのように聞いてみた。すると父親は嫌そうに顔を歪めた。
    「……何故お聞きになるのですか?」
    「ああ、すまない……!気になっただけだ……」
    そう言った瞬間、父親の顔に描かれた猜疑心がより濃くなった気がした。何故聞いただけでこんなに怒るんだ?自分の息子だろう……。
    とにかく適当に誤魔化そう、でないと話を聞くどころか、追い出されかねない。
    「じ、実はヒラサカ十字路で新郎を見たんだ。それで何でそんなところにいるのか気になって、つい聞いてしまった。気を悪くさせたのなら謝る……すまない」
    「ああ、そう言うことでしたか」
    納得してくれたようで、私への警戒が緩くなった。ホッと胸を撫で下ろしつつ、父親の話の続きに耳を傾ける。
    「てっきりあの女がどこかに連れて行ったのかと思っていたが、そうかあのバカ息子は今もあの四辻におるのか。いや……息子と呼ぶのも反吐が出る」
    「そ、そんなに仲が悪いのか……」
    「仲が悪かった、ですな。あやつはもう死んでおりますから」
    「そうか…………ん?」
    は?待て?死んだ?新郎が?死んだ?何故?何が?どうなっている?は?はぁ?意味が分からず、思わず立ち止まって父親を見やった。
    「え、だが……私は、見たぞ?結婚式場に来てたし、十字路にもいたぞ……!?」
    「ええ、ですが死んどります。1ヶ月前に交通事故で。ですが浅ましくも地縛霊となって、あの四辻に居座っておりました。しかしそれを見つけたあの女が、今は首根っこを掴んでおるようで………」

  • 181◆yQm0Ydhu/2pS24/08/25(日) 22:15:04

    「死んで……地縛霊?四辻?首根っこ…………は?」
    一気に情報を処理できない情報を垂れ流されて混乱が加速する。頭の中でクエスチョンマークが踊っている。しかし父親はそれに気がついてないようで、持っていたポリタンクを下ろし、しみじみとした様子で腕を組んだ。
    「いやぁ、しかしまあ驚いたものです。あの女、















    ________自分の旦那を殺した男と結婚しようとしておりますから……」

  • 182◆yQm0Ydhu/2pS24/08/25(日) 22:16:56

    一旦ここまで。本当はもうちょい進めたかったのですが今日バカ忙しかったのでここで切ります。次回は新郎のパパへの聞き取りです。薪と丸太とガソリン運ぶのも忘れちゃダメだよサオリ!

  • 183二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:18:01

    なるほどそういうことか
    これは炎上不可避(物理)ですわ

  • 184二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:22:48

    そっちか…であれば抵抗はしない方がいいな…巻き込まれたら溜まったもんじゃない
    とはいえ、新婦のしようとしている事は…ミサキの事もあるし見て見ぬ振りは出来そうにないか

  • 185二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 22:28:25
  • 186◆yQm0Ydhu/2pS24/08/25(日) 22:39:31

    >>183

    狂った炎ですねぇ……怖いですねぇ……


    >>184

    流石に止めざるを得ない……でも巻き込まれるのも怖いですよね……


    >>185

    これが彼岸島ちゃんですかぁ……

  • 187◆yQm0Ydhu/2pS24/08/25(日) 22:50:14

    えへへ……いつの間にか200が見えてきましたね、先生。毎日更新は吐くほど辛くて苦しいですけど、たくさんの先生達が読んでくれてとても嬉しいです……!

    と言うわけで次スレ用意しておきました。続きはここに投下しますね………!

    錠前サオリの裏バイト奇譚8【SS、微ホラー】|あにまん掲示板自分探しのために色んなアルバイトをして各地を放浪する錠前サオリ。だがその中には恐ろしいものが隠されている危険なアルバイトもあった。これはそんな危険なアルバイトにうっかり勤めることとなったサオリのお話。…bbs.animanch.com
  • 188二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 23:28:28

    たておつ

  • 189二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 23:35:29

    >>187

    おつ

    今回も面白くなってきた

  • 190二次元好きの匿名さん24/08/25(日) 23:44:07

    父親の態度見るに新郎は救えない奴だったっぽいがある意味被害者の新婦をあの女呼ばわりってまだなんかあるんか…?

  • 191◆yQm0Ydhu/2pS24/08/25(日) 23:44:07

    >>189

    ありがとうございます、頑張って書きますので次スレでもよろしくお願いします……!

  • 192◆yQm0Ydhu/2pS24/08/25(日) 23:44:58

    >>190

    父親からもそこはかとなくどうしようもない臭いが……

  • 193二次元好きの匿名さん24/08/26(月) 00:43:20

    スレ主に質問なんだけど

    https://bbs.animanch.com/board/2420417/

    とか

    https://bbs.animanch.com/board/2787446/

    とかの祖父母の介護をしてるヒヨリと同じ人?

  • 194二次元好きの匿名さん24/08/26(月) 00:44:20

    このレスは削除されています

  • 195二次元好きの匿名さん24/08/26(月) 00:53:15

    やっぱり冥婚じゃないか

  • 196◆yQm0Ydhu/2pS24/08/26(月) 01:08:13

    >>193

    違います。でも怪異収集シリーズもブルアカホラーSSやりたいなって思ったきっかけの一つで大好きです。


    >>195

    くたばってる側は新郎でしたね……

  • 197二次元好きの匿名さん24/08/26(月) 07:11:27

    や、や、や、や、やっべぇよ

    想像以上にやっべえ事態になってきてるやんけ((((;゜Д゜))))ガクブル

  • 198二次元好きの匿名さん24/08/26(月) 07:47:12

    埋め

  • 199二次元好きの匿名さん24/08/26(月) 07:50:10

    「アウトローらしくスレを埋めるわ!」

    「社長、ホストが規制されてる」

    「なななな、なっ、何ですってーーーーーーー!!!???」

  • 200二次元好きの匿名さん24/08/26(月) 07:51:01

    200なら新郎新婦は結婚

オススメ

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