(ss)ひっ…ぐすっ……ぅ(if√&感想スレⅥ)

  • 1二次元好きの匿名さん24/08/27(火) 12:34:43

    泣き止まないモモイ概念の感想スレ&IF√妄想SSです
    あまりに素晴らしいSSだったのに感想スレがなかったので立ててみました。
    元スレ主とは別人ですのでご注意を。

    一度は完結した元スレを煮込み、IF√エンディングへ。以降は後日談です。
    愉悦を求めたのになんか違うのが出来上がったような…?

    ただいま。そしてお待たせ。
    蛇足で増え続けている後日談にようやく終わりが見えてきました。

    腕よりも脚の方が美を感じさせたスレ画

  • 2二次元好きの匿名さん24/08/27(火) 12:35:32

    それがスレ画でほんとにいいのか!?

  • 3二次元好きの匿名さん24/08/27(火) 12:38:33

    前スレのインターネット老人会が不意打ちすぎてダメージ入ってました ここホントに令和?

    それでも( ◇)ネタが分かってくれる老人がいないことで更に大ダメージ倍率ドンッ


    以下リンクまとめ


    元スレ

    ひっ…ぐすっ……ぅ|あにまん掲示板モモイ(どうしよう、ゲーセン近くの銃撃戦に巻き込まれて変なガス吸ってから涙止まんない…)グスッモモイ(目も痛いし、喉乾くし……泣くのって異常に疲れるし……ちょっとこの辺りで座って休もう…)グスッ……bbs.animanch.com

    (ss)ひっ…ぐすっ……ぅ(if√&感想スレ)|あにまん掲示板泣き止まないモモイ概念の感想スレ&IF√妄想SSですあまりに素晴らしいSSだったのに感想スレがなかったので立ててみました。元スレ主とは別人ですのでご注意を。一度は完結した元スレ、まだまだ煮込め…bbs.animanch.com

    (ss)ひっ…ぐすっ……ぅ(if√&感想スレⅡ)|あにまん掲示板泣き止まないモモイ概念の感想スレ&IF√妄想SSですあまりに素晴らしいSSだったのに感想スレがなかったので立ててみました。元スレ主とは別人ですのでご注意を。一度は完結した元スレ、まだまだ煮込め…bbs.animanch.com

    (ss)ひっ…ぐすっ……ぅ(if√&感想スレⅢ)|あにまん掲示板泣き止まないモモイ概念の感想スレ&IF√妄想SSですあまりに素晴らしいSSだったのに感想スレがなかったので立ててみました。元スレ主とは別人ですのでご注意を。一度は完結した元スレ、まだまだ煮込め…bbs.animanch.com

    (ss)ひっ…ぐすっ……ぅ(if√&感想スレⅣ)|あにまん掲示板泣き止まないモモイ概念の感想スレ&IF√妄想SSですあまりに素晴らしいSSだったのに感想スレがなかったので立ててみました。元スレ主とは別人ですのでご注意を。一度は完結した元スレ、まだまだ煮込め…bbs.animanch.com

    5(再)

    (ss)ひっ…ぐすっ……ぅ(if√&感想スレⅤ再)|あにまん掲示板bbs.animanch.com

    テレグラフ

    x.gd
  • 4二次元好きの匿名さん24/08/27(火) 13:23:42

    待ってたぜ…

  • 5二次元好きの匿名さん24/08/27(火) 13:57:04

    たておつ

  • 6二次元好きの匿名さん24/08/27(火) 14:00:39

    おかえりんご

  • 7二次元好きの匿名さん24/08/27(火) 14:18:28

    たておつです

  • 8二次元好きの匿名さん24/08/27(火) 14:46:05

    ほしゅ

  • 9二次元好きの匿名さん24/08/27(火) 14:46:05

    ***

    『それでさこの間ったらミドリがね。私がトイレしてる時でも入ってこようとしたんだよ!いくら心配でも流石に恥ずかしいって!先生からもなんとか言ってやってよー!』
    「"あはは…そうだねぇ。うーん…"」
    「…………」

    「"もう怪我は治ったの?"」
    『とっくに完治してるよ!「こんな風に喋っても問題ないしさ。ただ気管って傷が塞がっても柔らかいから開きやすいんだって。おっきな声出したら案外簡単に喀血するしさ。だからいつまで経ってもこれ外させてくれないんだよ」
    「"とりあえず生声で話すのはやめようか"」

    それは完治とは言わない。
    以前それなりの強度で造られた発声機を勝手に外されたことで、プライドを傷つけられたエンジニア部がミドリの合鍵無しでは外せない仕様にした発声機をガチャガチャ引っ張って渋るモモイを嗜める。

    相変わらず自分を軽視している子だ。どれだけ自分が心配されたのか、きっと未だに理解しきれていないに違いない。
    先生の返答を期待して待っている少女に、なんて返すか悩む…フリをしながら脳裏では別の思考に没頭する。

    そう。現状、今回の件に置いて最も正確に事態を把握しているのは先生だった。
    ヴェリタスとの情報共有、モモイからの事情聴取、ユウカの証言。C&Cの尋問となにより先生自身から聞き出した犯人からの情報。
    もっとも、煙草男にはモモイが誘拐された時点の情報しか持っていなかったが……それ以前の事のあらましは凡そ把握することができた。吐き出させた手段が手段なのでこの情報に間違いは一切無いと断言できる。

    当時、唯一先生だけがいち早く真相に辿り着き、モモイに使用されたガスが精神作用のものではなくただの催涙ガスだと知った。
    だが、それを当人に伝えることはなかった。それは何故か。

  • 10二次元好きの匿名さん24/08/27(火) 14:50:28

    やはり先生は分かってるんだな、話せないのはウタハの件か、今言うとさらに混乱するからか、はたまたまだ明かされていない新しい情報があるのか

  • 11二次元好きの匿名さん24/08/27(火) 14:53:09

    スレ画のせいで話が入ってこない

  • 12二次元好きの匿名さん24/08/27(火) 17:21:16

    決め手はモモイ本人からの証言によるものだった。

    変なガスを浴びてユウカに介抱してもらい、その後一人で携帯の回収に向かい拉致被害。
    なんとか拘束から脱出できたものの救援に来たユウカ達を犯行グループの増援だと勘違いして隣の建物に飛び移る暴挙。脱臼はその時によるものだと。
    身嗜みを整えて帰還しようとしたらサボっていた犯人とバッティング。追っ手を振り切って後はユウカ達の知る通りの顛末。

    不慣れなボイスメッセンジャーを装着した頃にモモイから事の経緯を伺った時の内容だ。
    たどたどしい単語で彼女が会話を試みる度に先生は思わず頭を押さえた。


    ――拠点で何してたかは知らねェよ。俺ァ日向ぼっこしてたからな
    ――肩の怪我なんか知るかよ。少なくとも連れ去る時はあそこまで悲惨な恰好じゃなかったぜ。向こうの連中は随分とあの餓鬼で遊んだみてェだな
    ――その時に使われたガス?さぁな。

    先生の持ち合わせている情報と照らし合わせ、モモイの証言と食い違う点は皆無。
    唯一不明瞭だった肩の脱臼や誘拐後の下りを確認していると先生の考えは徐々に傾いていった。

    (あれ。これ何割かモモイも悪くない…?)

    勿論、あの犯行グループが愚劣の極みでありモモイはそれの被害者でしかないことは間違いない。
    だがその後のモモイの対応には悪手と呼べる過誤がいくつも感じられた。

    まず正体不明のガスを受けたら速やかに病院に向かうべきだし、急いで携帯を回収することよりも自分の身を案じて体調を整えるべきだった。他にも血を吐くのは十分やばい。まず吐血した時点で危機感を覚えるべきだろう。
    それ以前に隣の建物に飛び移るなんて以ての外だ。ギリギリ届いたから結果オーライ? そんな訳ない。万が一落下したら目も当てられないでしょうが!ネル先輩達はよくやってる? おばか!そういうのは日々特殊訓練を積んでるからできることであって普通は真似したら危ないことなんだよ。

  • 13二次元好きの匿名さん24/08/27(火) 17:21:30

    重篤状態にも関わらず単独行動及び危機感の無さ。優しさが却って誤解を招くこともあるけど余計な遠慮は禁物だよ。もっと自分の身体を大事にして皆を頼って。
    モモイはどれだけ自分が皆から愛されているかまるで分かっていない。
    目覚めたばかりの体調の慮ってついそう言いたくなる気持ちをぐっと堪え、かなりオブラートに包んだ表現で軽く言及した結果、返ってきたのは薄い反応。

    あまりにも自己を軽視した考え。
    一貫してこれに尽きる思考回路。事件の尾を引き摺っていないか気を悪くされないよう慎重に言葉を選んでいたが、当人のまるで気にしていない様子に先生は方針を改めることにした。


    これは、重症だ。
    以前から他者が絡んでいない場合だと自分を軽く見る節があったが、今回はそれが悪く出てしまったのだろう。
    長所も短所もまとめて生徒の個性であるため、性格を矯正するような真似はしないようにしていたが流石に今回ばかりは見過ごせない。先生は多少強引にでも荒療治を行うことに決めた。
    こういうのはもっと直接分からせないと理解してくれないタイプだ、と。

  • 14二次元好きの匿名さん24/08/27(火) 17:37:06

    ほう…わからせとな?

  • 15二次元好きの匿名さん24/08/27(火) 19:35:57

    待ってたぜ…この時をよぉ!

  • 16二次元好きの匿名さん24/08/27(火) 19:40:52

    ここまで大勢に二次被害与えてて全くの無自覚じゃそりゃ先生もわからせに走る

  • 17二次元好きの匿名さん24/08/27(火) 19:45:46

    モモイとかは明るい性格だからこそ曇らせ甲斐がある

  • 18二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 05:24:06

    ウタハの件は把握しているのだろうか、流石に自らガス食らうのは止めそうだけど

  • 19二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 08:12:58

    「"んー…皆には心配掛けたんだし、暫くはそのままでいいんじゃないかな?"」
    『そんなー!?先生の裏切り者ー!』
    「…………」

    敢えて情報を秘匿することで愛されていることの自覚が芽生えてくれることを祈って。
    大切な生徒を利用しているようで悪いが、これで少しでも当人の自覚を促せればと考えてのことだった。
    願わくばこれで自分を大事にしてくれると信じて。

    情報閉鎖したのはモモイの身近な人物、ゲーム開発部と一際気に掛けていたユウカに限定した。
    それでも大ごとに発展しないように各所属の生徒にも協力を持ち掛けてある。
    セミナーにはノア、C&Cにはネル、エンジニア部にはウタハといった手綱を握れる生徒には事情を伝え、あとは各々の判断に委ねることにした。
    あくまで本人とその身近な生徒には秘匿する方向で動き、これで混乱を招くことはないだろう。

    あれからユウカの病院ワンフロア丸ごと貸し切りや簡易エリドゥ建設の一件以来、目立った話しは聞かないから順調に進んでいるんだろう。徐々に沈静化して後は時間が解決することを祈り、折を見てモモイ達に催涙ガスだったことを打ち明けよう。

    『それじゃそろそろ帰るよ!忙しいのにあんまり長居するのも申し訳ないしね!』
    「"あれ、もう帰るの?三十分も掛かっていないけど、なにか相談したいことがあったんじゃないの?"」
    『……相談ならもうしたじゃん!でも先生が味方してくれないからこの話しはこれでおしまい!暫くは甘んじて受け入れることにするよ』
    「"私は生徒の味方だからね。それじゃあ気をつけてね"」
    『先生バイバーイ!またねー!』
    「…………」

    ***

  • 20二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 08:14:25

    ……。

    スゥーー………。

    無理無理無理無理!!なにあれ、あんな空気で話せるわけがないよぉ!?これじゃあただでさえ忙しい先生の仕事を邪魔しにきただけみたいになっちゃったよ!?


    二人の間に流れる空気、というより背後から漂わせるミドリの態度が固すぎてすぐ尻尾を巻いて帰ってしまった。

    新部室に先生が訪れた時は静かに距離を離すだけで済んでいたミドリだが、今日はそんなものの比じゃない。背中にいる引っ付き虫からの重圧が桁違いになってとてもじゃないが長居なんてできなかった。

    ずっと私の背中に顔を押し付けて顔を合わせないどころか一言も喋ることなく、帰るまで私の心臓は緊張でバックバクだった。
    シャーレを出てすぐ、あまりの実りの無さに頭を抱えてしゃがみ込む。

    時間は短いけれども、折角久々に先生とゆっくり話せそうだったのに。
    新部室だと先生と会話しようとする度に何故かネル先輩が間に割り込んできたり、妙にピリつくから落ち着けないのだ。いったい何があったというのだ。もう訳が分からない。

    (先生には頼れなかったし……他に精神作用ガスについて詳しそうな人といえば…。病院の主治医さんとか?)

    ミドリがいたら話しが拗れそうだと今回の件でなんとなく察したので、次こそはなんとか一人で向かおうとモモイは決心した。

    ***

  • 21二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 12:23:20

    「――もう一度確認するが、モモイとあの男が廃ビルの近くにいたところを目撃したんだな?」
    「え、えぇ…ネル先輩、それがどうかしたんですか?」
    「………いや、なんでもねぇよ。気にすんな」

    思わせぶりな態度にユウカが詰め寄るもネルが口を割ることはなかった。
    意志が固いとみるや早々に追及を諦め、次の仕事に取り掛かる為にユウカはC&Cの部室から退室する。最近動きに精彩を欠いているノアが心配になり、ユウカが体調不良として無理矢理休ませたのだ。
    そのためノアの分の仕事もしなければならないので今日は特にユウカに時間が無いのだ。ネルの反応が引っ掛かるが一々気にしていられる暇がなく。増してや本人が言いたくないのであれば尚更。

    ユウカがC&Cに訪れたのはその肩代わりしたノアの案件の一つ、セミナーからC&Cに申請していた"らしい"とある発破工事のことを思い出したからだった。
    "らしい"というのはそんな依頼を出した覚えがユウカにはないからだ。
    報告書には確かに生塩ノアの署名と共にセミナーの承認印が捺されている。どうやらノアの独断で進めた案件なようだ。

    モモイが入院している間に完了報告まで進められていたミレニアム廃区画の発破工事。
    使われなくなった廃区画を掃除して次のリソースへと充てる。その地域には例の廃ビルや廃工場も含まれていて。
    件の事件を経て老朽化の進んだ建物は既に崩壊寸前まで至り、そのまま放置するのは危険ということでセミナーからC&Cへと依頼があった"らしい"のだ。

    確かにC&Cにはアカネといった爆発物のスペシャリストがいる。周辺地域の治安改善も兼ねた案件に不備は無く、ノアの裁量で済む良策と呼べる内容だった。

  • 22二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 12:23:38

    合理性と説得力のある案件に違和感を持つ余地はない。しかし、それでもユウカは違和感を感じざる負えないのだ。

    偶々ノアが休んだからこうしてユウカが知ることとなったが。もしノアがいつも通りだったらユウカはこんな案件があったことすら知らなかっただろう。
    別にこの程度のことを態々言う必要も無いと考えてのことかもしれない。それでも存在すら認知させたくないような徹底ぶりに違和感を感じさせられた。これではまるでユウカに隠そうとしていたみたいではないか。

    (ノアは、これを私に知られたくなかった?)

    だが、違和感はあるものの書類そのものに怪しい箇所はない。そもそも既に完了報告書までまとめられているのだ。済んだ事にこれ以上口を挟めることはできなかった。
    なんというか、ノアらしくない。そんな疑念が心中に燻りながらもC&Cの部室を後にした。

     【舞台裏】

    「良かったんですか~リーダー? ユウカちゃんに本当のこと言わなくて」
    「必要無いだろ。大体こんな話し迂闊に広めるもんでもねぇよ」

    ユウカが立ち去ってから暫く、奥のソファで寝転がっていたアスナがお菓子を摘まみながらそう呈した。軽い口調に反して僅かに寄せられた眉間の縦皺が不満を物語っている。

    それを一蹴して、アスナが「なんか人目に付かないとこに置いた方が良い気がする」とユウカが訪れる直前に隠した小箱を受け取る。
    箱の中身は先日の発破工事の際にとある廃ビルから回収した押収品だ。
    それは現在C&Cで最も対応に困ってる物であり、ここ数日ネルの頭を悩ませている正しく"厄ネタ"だった。取り扱いに困ってるが、中身が中身なのでそうおいそれと他人に相談することもできず、事情を知る者以外には極力箱のことは伏せるようにしていた。

  • 23二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 18:00:14

    あれ?
    ノアって「男の人相手に大丈夫でしょうかモモイちゃん…」とか言ってなかった…?

    催涙ガスだったことは知ってるけど乱暴されたとは思ってるってことなのかな…

  • 24二次元好きの匿名さん24/08/28(水) 19:25:22

    このレスは削除されています

  • 25二次元好きの匿名さん24/08/29(木) 06:12:31

    保守

  • 26二次元好きの匿名さん24/08/29(木) 13:45:33

    ちからつきました

    プラナちゃん関係のイベント一式丸ごと没ネタにして後日談を引っ張る意味も無くなったんで、明日残りのストック分と下書き分全投下して後日談をさっさと〆ます
    一応IF本編は完走したのでまぁいいかなと。燃え尽き症候群によるモチベ低下もありますし

    未完部分のシーンは全スキップされるので各自脳内で補完してください。
    それよりも今は予知夢の大天使に告げられたアルティメットファウスト様(勘違い)概念SSが書きたくて仕方ないんです

  • 27二次元好きの匿名さん24/08/29(木) 17:25:43

    「あいつまで巻き込んで正解だったようだな」
    「私らだけじゃユウカちゃんの目は誤魔化せそうにないもんね~。今のもノアちゃんの署名があったから見逃してくれたようなもんだし」


    ボロボロになったモモイの制服。
    それが解体された廃ビルから掘り出されたものだった。

    爆破には緻密な計算を要する他、無人チェックや重要品の回収など綿密な事前調査が行われる。その最終確認で建物内を徘徊していたところ、シャワールームの片隅に投げ捨てられていたボロ布をネルが発見したのだ。

    見るも無惨な姿となったそれを回収したと同時に、ネルは即座に緘口令を敷いた。
    憶測で物事を決めつけるのは早計だ、まずはモモイ本人から話しを伺うのが先決だ。そう言い包めて、誰しもが僅かに脳裏に過った下世話な勘繰りをネルは冷静に纏め上げた。


    「ご主人様にも内緒なの?」
    「ったり前だろ、先生は男だぞ。事実かそうじゃないかなんて関係無ぇ。『襲われたかもしれない』なんて他人の口から勝手に言える訳ないだろうがよ」

    それに、生徒が自分で人体実験を行ったなんてあの先生が知ったらどうなることやら…。なんとしてでも事情を話す訳にはいかなかった。

    先生がモモイに行った事情聴取の内容はネルにも共有されている。
    隣のビルでシャワーを浴びて着替えた、と本人は発言していたようだが……不穏な気配を漂わせる現場にはそれだけじゃないような気がした。
    これ以上は不味い、そんな予知染みた直感は容易に的中することになってしまった。

  • 28二次元好きの匿名さん24/08/29(木) 17:25:58

    注意深く捜索を始めた結果、モモイの発言に矛盾が生じているとわかった。
    『シャワーを浴びた』というからには水道が生きていた筈だ。だがインフラが機能しなくなって久しい廃区画は既に水道など通っていない。確かに僅かなりとも排水溝に水が流れた形跡はあったが…。
    念のため貯水タンクも確認してみると案の定、中身は空。水も無いのにどうやってシャワーを浴びたというのか。

    実際には貯水タンクに残っていた水を使い果たしただけなのだが、状況証拠から推測することしかできないネル達には少量の水で『何か』を洗い流したようにしか見えなくなっていた。


    …それでも。それでもまだ分からない。確定した訳じゃない。
    そこで最初のユウカとの問答に至る。
    廃ビルの傍にモモイと犯行グループの一人がいて、その男からモモイは逃げていた、と。
    これで周辺に人が居なかったのならまだ希望はあった。勘違いであってほしいと願った。だが現実はそうはいかなかった。

    ユズとの会話で漏れ出たモモイの本心、ユウカの証言に発見された制服を誤魔化そうとする嘘。そしてなによりもウタハの用意した"新たな証拠"。
    ウタハの主張する精神作用ガス派を裏付ける証拠がこれだけあって、対するネルの主張は本人が否定している点と先生が齎した催涙ガスという情報のみ。
    本人の証言だけを頼りに「まだ決まった訳じゃない」と反論するネル自身が己の劣勢を感じ始めていた。
    着々と証拠が出揃い、反論の芽が摘まれていく。


    稚拙に覆い隠していた嘘を暴いてしまった罪悪感。
    あの日。ウタハの"個人的な頼み"を受け、共犯者になった瞬間から。モモイが虚飾を貫き通そうとする度に、隣でネル達の心は悲鳴を上げる日々が始まってしまったのだ。

  • 29二次元好きの匿名さん24/08/29(木) 17:26:22

    「潜入だぁ?」

    時は大きく遡り、数週間前。
    モモイが目覚め、特製ボイスメッセンジャーが贈呈された日まで戻る。
    ネルは事件の最中にあったウタハの個人的な頼みという件でエンジニア部に訪れていた。日頃騒動を起こしている他の部員の姿は無く、彼女が念入りに人払いを済ませていることが伺える。

    「そうだ。例の犯人グループが使用したとみられる精神作用ガスを秘密裏に回収、それを君にお願いしたい。
    ヴァルキューレが今日中に廃工場区域の捜査を始める筈だ。彼女らがガス弾を押収する前に可能な限り数を回収したい。頼めるかい?」

    「……可能かどうかってんなら、可能だ。だがその前に一つ聞かせろ。なんでそんなことをしようとする?目的を教えろ。
    チビに使われたガスが精神作用じゃないただの催涙ガスだと判明した今、もうあの件について触れる必要は無い。大体バレたらどうするつもりだ?お前にもあれがどんだけヤバい代物か知ってるだろ」

    事件収拾目前に先生から齎された、使用されたのは催涙ガスだったという情報は正しく吉報だった。その報告を受けたネル達の表情に明るさが戻り、その内心を穏やかに宥めた。
    笑顔で主犯を再び尋問したところ同様の証言が得られたことで、複雑に絡み合っていた誤解はこれにて解かれた。

    晴れて心配事がなくなり、今回の一件が「モモイを拉致暴行した胸糞悪い事件」として片付けられそうになっていた時に、不穏な頼み事をしてくるウタハに眼光が鋭くなる。

  • 30二次元好きの匿名さん24/08/29(木) 17:26:37

    「……モモイが受けたガスは、本当に催涙ガスだと思うかい?」
    「なに…?」

    ネルの指摘にもっともだと頷き、ウタハは自身の持ち得るの手札を一つ切ることにした。
    モモイ救出作戦の当初から繰り返されていた問答。モモイに使われたのは精神作用ではない催涙ガスだったと判明したのは間違いなく事件収拾を後押しした情報だった。
    その大前提を揺るがす発言を聞き流すことなんて到底できる筈がなかった。

    「どういうことだ。先生が間違った情報を掴まされたってか?あの糞野郎共も催涙ガスだと言い張っていたが……あの様子で嘘をついたと?ンな腹芸ができるタマにゃ見えなかったぞ」

    「それについては私の方でも裏を取ってみた。案の定、黒だ。……いや、もしかすると当人達からすると本当に白のつもりで白状してたのかもしれないね」
    「……まだるっこしい。もうちょい詳しく話せ」

    これを見たまえ。そうネルに手渡されたのは台本形式にまとめられた報告書。
    とある囚人との会話を文字起こしした、面会記録のようだ。

    視線だけで「こいつは?」と問い掛けると、ウタハは机の上に置かれていた空になった二種類のガス缶を眼前で振るってみせた。
    僅かな色の濃淡でしか差異の無いそれらは一見して同一の品物にしか見えない。


    「ヴァルキューレ拘置所に収監された犯人と私との会話記録だ。
    この危機管理意識も技術者の誇りも皆無なコレを、実際にモモイにガスを吸引させた輩に差し出してこう尋ねたんだ。『このガスは催涙ガスか、精神作用ガスか』とね。
    …まともな答えが返ってこなかったよ。使用した当人ですら区別がついていなかった。受け答えの時点で言動は怪しかったし、気が触れているとしか思えなかったよ」

    世も末だね、ハハハ。
    普段のノリの良さで軽く笑っているが、その目は一向に笑っていなかった。くしゃりと空き缶を握り潰すウタハは校章を騙られた時か、あるいはその時以上にブチ切れていた。

  • 31二次元好きの匿名さん24/08/29(木) 17:26:58

    頭に血が昇り詰めていることを自覚したウタハが、ソファに腰を下ろして大きく深呼吸をする。そうして冷静になった後、組んだ指に額を乗せてネルからは見えない角度で顔を俯かせて静かに口を開いた。


    「……だから、真に度し難いのは奴らではなく私の方だったと知った時は脱帽したよ」

    ただ純粋な戦闘技術を詰め込んだロマンのない"ゆりかご八式"。
    予算の都合上自爆機能すら搭載できず機能性だけを追求した、「なにも面白くない」ということで"失敗作"認定された試作品。

    宇宙空間での運用を目的にした数少ない開発理由すら捻じ曲げ、その戦闘能力だけに目を付けて犯行グループへの復讐へと利用。
    怒りに任せた末に得られたのは犯人への過剰攻撃……はキヴォトスではよくあることなので良いとして、建物を倒壊させ重篤状態のモモイやミドリに危害を加えたことだった。
    あの時、先生がいなければどうなっていたことやら…、そう想像するだけで背筋が凍る思いだ。


    幾多の管に繋がれたモモイとすっかり窶れきった様子のミドリ。この光景を生み出したのは自分なのだと。
    モモイの眠る病室で行われたミドリとユズの会話を、扉の前で密かに聞いていたウタハは自己の叱責に苛まれた。

  • 32二次元好きの匿名さん24/08/29(木) 17:27:17

    ――技術者としての誇りが欠片もない、あんな物で私の学友に害を成した。
    ――本来の想定とは異なる運用をしてしまったことは技術者として恥ずべき行いだ。

    嘗ての自分の発言が今になって自身に深く突き刺さる。
    結果だけを見たら今回ウタハが行ったことはただ暴走し、闇雲に周囲の足を引っ張っただけだった。

    それだけでなく、技術者としてのプライドすら唾棄すべき連中と同じレベルにまで貶めてしまっていたことに。
    自身に激しい憤慨を抱くと同時に、どこかで贖罪の機会を探すようになるのはそう遅くはなかった。

    「………話しが逸れてしまったね。つまり、依然としてモモイに使用されたガスがどちらなのか分からないままだが、精神作用ガスだった場合に備えて可能な限りデータを揃えたいんだ。
    先日アスナ達が確保してきた分では心許ない、だとしたらたっぷりと放置されている保存庫から入手するしかないだろう? なに、万が一発覚してしまったら全部私の責任にしてくれて構わないさ。発明品の誤作動と有耶無耶にして君達に迷惑は掛からないようにする」

    「…。データを集めるってことは使用すると同義だ。製造するだけで一生刑務所暮らしなモンを勝手に使ったとバレたらどうする気だ?」
    「ふむ、そうだね……」


    「まぁ。その時はミレニアムから追放されるとしようか」


    「………いいぜ。手伝ってやる」
    「本当かい?助かるよ」
    「だが、その前にもう一人共犯者を増やすとするか」
    「ネル?いったいなにを……」

    不意に立ち上がったネルに疑問を投げかけるも返事が返されることはない。
    ツカツカと部室の扉まで近づき、その前で止まる。
    直後、小柄な身体から大きく振り上げられた脚がエンジニア部の扉を強引に蹴り開け、その勢いで白い長髪がはらりと靡く。

    「――よう。内緒話を盗み聞きたぁ良い趣味してんじゃねぇかセミナー書記さんよ」

  • 33二次元好きの匿名さん24/08/29(木) 21:54:43

    保守

  • 34二次元好きの匿名さん24/08/30(金) 04:42:50

    >>32

    ノ…ノア先輩!

  • 35二次元好きの匿名さん24/08/30(金) 14:57:06

    「いつから聞き耳立てていたんだい?」
    「……ほぼ最初からです。誓って言いますが、偶々会話が聞こえたから足を止めただけであって意図して盗み聞こうとした訳ではありません」
    「だろうな。一度部屋の前を通り過ぎてからずっと気配がまるで隠せていなかったからな」
    「普通の人は気配なんて感じ取れないですからね?」

    「それで、どうする?」
    「……」

    廊下にいたノアの背後を位置取り、ネルが選択を迫る。
    ここでノアがネル達の会話を握り潰さなければセミナーとして正しい判断を取るだろう。即ち、連邦法違反者予備軍の摘発だ。
    自治区の運営として必ずしも清廉潔白である必要はないが、抱えて不都合でしかない密談を保持する必要も無い。

    ミレニアムを率いる所属であるノアが抵抗したら、その瞬間からネルとウタハ相手に抗戦が始まる。聞かなかったことにして見逃すにしても、ウタハの計画が完了するまで暫くの間は身柄を拘束させてもらうことになるだろう。
    "約束された勝利の象徴"相手にノア独りで敵う筈がない、それは本人が一番理解していることだろう。
    そして、協力する道を選んだ場合。失敗したらネルやウタハの比ではないバッシングが彼女の身に降りかかるだろう。恐らく、それはきっとノアだけに限らず他のセミナー生にまで被害が被る。ユウカと親しい間柄であるノアがその道を選べるだろうか?

    「答えは決まってます。私も協力しますよ」
    「へぇ…臆病風に吹かれたって訳じゃなさそうだな。にしては随分と物分かりの良い。あたしらにしちゃ助かるが……どういう風の吹き回しだ?」

    剣呑な雰囲気を放つ二人に挟まれたノアに焦りは無い。
    とりあえず部屋に入れてください、と先程までウタハと会話してたソファに座ると「此方を」とタブレットの画面を見せてきた。

    「最近のユウカちゃんの検索履歴と購入履歴です」

    勿論、ユウカの許諾は無い。
    え…こいつそんなことしてんのかよ…こわ……、と他人の履歴を当然のように漁るノアにネルは慄いた。

  • 36二次元好きの匿名さん24/08/30(金) 14:57:24

    「ユウカちゃんが意味もなくこんなことを調べません。そこにはきっと理由がある筈です」

    事件の最中、突然ユウカの様子がおかしくなった場面を思い返す。
    完全記憶保持者であるノアにとって当時の場面を振り返ることなんて造作もない。寸分の違い違わず想起することができる。
    あれは、そう。モモイちゃんを保護した時のことだった。
    彼女の容態を確認していた時、モモイがお腹をぽんぽんと叩いたその時からユウカの態度がおかしくなりだしたのだ。

    そして、タブレットに表示された『友達 妊娠』『学生 出産』『堕胎 リスク』といったキーワード。不穏な検索履歴が並んでいるのを前に、ノアの思考が冷たく研ぎ澄まされていくのを感じた。
    恐ろしい勢いで仮説が組み立てられていく。もし、そうだとしたら。
    もしかして自分はとんでもない思い違いをしていたのではないか。当時のユウカの不可解な態度がようやく理解できた気がした。

    「……なるほど。君の言いたいことが分かったよ」
    「そもそも前提から違和感があるんだ。連中は確かに「ガスの改良」と証言していた。だというのに使用したのは催涙ガス……おかしいと思わないかい?
    これ以上催涙ガスを改良したところでどうなる。いくら強力といってもこれより強力な催涙性能なんて探せばいくらでも存在する。改良するならガスではなくこの杜撰な造りを改良しろと言いたいね。
    だから本当に改良したかったのは催涙ガスではなく、此方の精神作用のモノとみるべきだろう。
    ……そして、女性に手っ取り早く精神に負担を強いる方法としてこれらの可能性をユウカは懸念している、といったところかな?」

    ノアが頷く。

    「……まだそうと決まった訳じゃねぇだろ。野暮な詮索は止せ」
    「私だってモモイちゃんが酷い目にあったなんて考えたくもありません。
    ですので、私から『セミナー』として正式に依頼します。事件現場を徹底捜索し、そのような事実は無かったと証明してください。
    例の犯人グループの自白・モモイちゃんの証言が揃い、且つ現場証拠も無く、精神作用ガスではなく催涙ガスが使用された、と…。そこまで判明したらユウカちゃんも安心するでしょう」

  • 37二次元好きの匿名さん24/08/30(金) 14:57:35

    「名目上では…そうですね、放置された崩落寸前の建物の潜在的危険性の除去としますか。発破工事としてアカネさんを駆り出すという建前でC&Cの協力を申し出て、ウタハさんはその補助としましょう。
    セミナーから正式な依頼として通せばヴァルキューレの再捜査よりも自治区の判断が優先されるのでウタハさんの目的も達成できるかと思います。…私だってモモイちゃんのことが心配ですからね」

    ノアがスラスラと建前を述べ、最後にウィンクと共にそう締めくくった。
    権力の私的利用という限りなくグレーなことに目を瞑ればこれ以上とないほどの申し出だった。

    なら、話は決まりだと笑みを浮かべ立ち上がる。座っている長身のウタハよりも視点が高くなり、見上げられる形になった彼女に手を差し出す。

    「これより、あたしらは"共犯者"だ。ダチに責任を押し付けてのうのうと暮らせるほど、あたしは落ちぶれちゃいねぇ」
    「………感謝するよ。君達という友人を持てて私は幸せ者だね」

    「時間が惜しい。やるならさっさと取り掛かるぜ。セミナーが協力してくれるのなら書類は事後承認でも通せる筈だ。それで当分の間は会計さんの目を誤魔化して、感づかれる前に終わらせるぞ」

    ネルから差し出された手を握り、応えるかのように力強く握り返される。
    こうして秘密裏に、セミナー・C&C・エンジニア部という異なる所属でありながら運命を共にすることになった"共犯者同盟"が結成されたのであった。

  • 38二次元好きの匿名さん24/08/30(金) 14:57:51

    ネルがウタハの信頼にキッチリ応え、内密に精神作用ガスを充分量確保でき。
    三名の顔色を青褪めさせたモモイの制服が発見される、等とあった問題の発破工事が完了して数日が経った。

    残念なことに『水の出ないシャワールームで水浴びをした』という矛盾と発見された制服によりモモイが隠し事をしている、引いては精神作用ガス説が濃厚となってから一同の行動は素早かった。


    正体不明の素材の取り扱いに関しては新素材開発部の右に出る者はいない。ということで、エンジニア部と馴染みの深い新素材開発部の部長にも早速協力を仰ぐことにした。
    勿論、部長には極めて危険性の高い未知のオーパーツを手に入れた、といってこれ以上巻き込まないよう事情を伏せてある。

    そのお陰もあって、無事精神作用ガスの解析結果を入手することはできた。
    このデータを元に然るべき所に渡せば精神作用ガスへの特効薬も創れるだろう、少なくともその一助になると考えてのことだった。

    「――治療ができないとはどういうことだい!?」
    「お、落ち着いてください…。これは仕方のないことなんです」

    だが現実に返されたのは真逆。
    モモイの主治医に掴みかからんとばかりの勢いでウタハは詰め寄った。声を荒げられた先はミレニアム屈指の名医であり、この病院の院長だった。

  • 39二次元好きの匿名さん24/08/30(金) 14:58:07

    「成分解析だけでここまで精密なデータを用意されたことは称賛に値しますが…生憎とこれだけでは特効薬を作ることはできません」

    あまりの剣幕に狼狽え、顔面液晶パネルに冷や汗を表示させながら機械族の医者は処置不可と診断した理由を述べる。

    「人の身体というのは不思議の塊といっても過言ではなくてですね。必ずしも過程と結果が結びつかないことが往々にしてあるんですよ。精神に由来するなら特に。プラシーボ効果とかが有名ですね。
    一般的な毒物なら物理的に身体に悪影響を与えるので原因物質が体内に残留するのですが…肉体への作用が微々たるものとあれば既に排尿などで体外に排出されているのでしょう。
    精神検査の数値は至って健康そのものですし、これでは精神よりも肉体面の方が遥かに重症と言えます」

    「モモイさん本人に自覚症状も無ければ、後遺症らしき問題も見受けられない。…いえ、医師の注意を無視するのは問題ですが…あれは生来のものでしょうし良しとします。
    ともかく、精神面に関しては非常に安定しているんですよ彼女は。正常としか言い様がありません。
    皆さんから上げられた報告書を読まなかったら異変があると気付かないほどに」

    言い返す余地もない正論。頭に血が昇ったウタハにも理解が及ぶような説明のお陰で少しずつ冷静さを取り戻していく。

  • 40二次元好きの匿名さん24/08/30(金) 14:58:23

    「つまり、本人にも数値にも異常が無いのにいくらデータを用意されても、問題箇所が分からない以上手の施しようがないんですよ。せめて症状が現れた状態じゃないと此方としても困ります」

    考えすぎでは?と暗に催涙ガスの主張をしてくる主治医の疑問は、これまでウタハが幾度も繰り返して考えてきたものだった。
    しかし、一度モモイの発言を疑ってしまえば他の証言にも違和感を感じられるようになってしまったのだ。

    偶々目が見えなかったから犯人と仲間を見間違えた? 小柄なゲーム開発部と大柄な男と?
    アリスに攻撃された時でさえ気にも留めなかったモモイが怪我を理由に触れることを拒む? 
    水道の止まったシャワールームで水浴び?
    建物から出たら自分を追いかけてる犯人が偶然すぐ傍にいた?
    屋上の端に向かっていた事とミドリへのメッセージに関連性は無い?偶然携帯が壊された?
    林檎の皮を向こうとしたら手が滑っただけ? 手首が切れたのは偶然?

    冗談も程々にしてくれ。そんな偶然の連発が重なるなんて奇跡が起こるような確率だ。
    不自然極まるモモイの態度は平常そのものであるのだが、如何せん行動が全く噛み合っていないのだ。ウタハの疑念は晴れるどころか日に日に増していく始末だった。

    まあ、実際そんな奇跡があった訳なのだが。

    「仮に内心を取り繕っているのだとしても私達には彼女の本心を理解する術はありません。我々は他人なのですから。
    過去の事例から具体的な症状を類推しようにもなにぶん禁薬ですから…。人体に使用されたケースが少ないんです。比較となるサンプルデータも無ければ話になりません」

    「……比較対象がいれば良いんだね?」
    「はい?」

    ***
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    以降下書き分。未完部分は全スキップ
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  • 41二次元好きの匿名さん24/08/30(金) 14:58:46

    「モモイー、入るわよー。……寝てる」
    「zzz…」

    今日のモモイの付き添いであるユウカが私室に訪れると、そこには気持ち良さそうに眠るモモイがいた。

    「あぁもう…また涎垂らして…お菓子もベッドの上に残して…食べかけじゃないこれ…全く…」
    「気持ち良さそうに寝ちゃって。人の気も知らないでこの、このっ」

    最近は問題児らしい行為もなくなり、すっかり落ち着いている。ようやくユウカも安心して今まで通りの距離感を保てるようになってきた。

    「……もう、これも必要ないのかもね。良い機会だし片付けようかしら。ちょうど寝てるし」

    室内壁に隠された超小型のカメラを取り外し、手元で弄る。プライバシーの侵害する行為に元々設置するか悩んでいたのだ。仕方ないとはいえ良い気はしないだろう。

    ミレニアムの全景を見晴らせる大型窓に張らせたモモイ専用接触センサーなどはそのままに、ミドリ達の目で済むような監視カメラは全て回収していく。テキパキと効率的に全てのカメラを取り外し、ついでに片付けられていない洗濯物を畳み、お菓子のゴミを捨て部屋の掃除も行っていく。

    たしか…『桃鬼』だったかしら?昨日は随分と遅くまでゲーム開発していたようだし、この分だと半日はぐっすり寝ているだろう。
    また昼に様子を見に来たらいいか。

    「それじゃあね、モモイ。夜更かしも程々にしなさいよ」

    返事は無いと分かっていながらそう声を掛けてユウカはセミナー室に戻っていく。
    足音がしなくなってから数分後、モモイの眠る布団がもぞりと動いた。

    「……行ったかな?よしっ、それじゃあユウカが帰ってくるまでに早く行こっと!」

  • 42二次元好きの匿名さん24/08/30(金) 15:00:28

    このレスは削除されています

  • 43二次元好きの匿名さん24/08/30(金) 15:01:55

    「検診と追加処方んね。お待ちくださいー」

    『えっと…?前のお医者さんに会いたいんだけど…』

    「院長は只今手が離せないのでー当分は別の患者に掛かり切りなんです」

    『そっかぁー。うーん…どうしよう』

    検診は建前でミドリのことを相談しにきたが当てが外れた。


    『ダイエット的なのない?なんかこう…運動もせずに飲むだけですっごい痩せるようなの、って流石にある筈ないか』

    「ありますよ」

    『あるんだ!?』

    「貴方ぐらいの年頃の子によくある悩みですからねぇ。山海経がその要望に応えたダイエットドリンクを開発したみたいで今凄い売れ行きでっせ。

    あまりに効果が強いので一人一本までしか渡せませんが……まいどありーっ」


    ぐいーっ、とその場で飲み干してぺちぺちと服の上からお腹を擦る。何の変化も訪れない。


    「流石に飲んですぐには効果は出ませんて。半日もしない内にぽっこりお腹がスッキリになりますから安心しなされ」

    「それはそれで不安になるような…」


    病院でマル秘ドリンクを飲んだモモイが瞬く間に痩せたお腹に両手を挙げて喜んだ。

    後日そのお腹を皆に見せつけ、邪推したネル達が寝込んだことをモモイが気づく筈もなく。


    『これからどうしよっかなー?』


    今日の予定が丸潰れになったことで時間を持て余すことになってしまった。


    『そうだ!昨日配信した桃鬼のエゴサでもしてみよっと!どれどれ…?』


    シナリオの方向性(低い程青春、高いほど鬱ゲーライターモモイ)

    dice1d100=74 (74)

    ゲームの評判(高いほど好評)

    dice1d100=28 (28)

  • 44二次元好きの匿名さん24/08/30(金) 15:04:24

    ***
    『一呼吸分を1000倍希釈とはいえ原液の直接吸入……わかってるんですか?計算上では通常のガス被爆の100倍相当の症状が現れる筈です。とても正気の沙汰とは思えません』
    『だが、彼女はそれを一缶丸ごと噴射されたんだ。100倍なんて比べ物に症状に襲われている筈だ』
    『それはそうですけど…。ねぇ、本当にこれって必要なんです?』
    『もしかしたら不要かもしれないね』
    『ええっ!?』
    『皆が笑顔になる発明をするのが私のロマンの原点だ。失うかもしれない笑顔を自己満足であるこの実験で取り戻せるなら、私は喜んで挑むさ。
    なに、これでも一部活の長だ。ストレスへの耐性だって相応にあるから気にしなくていい』

    『これは医療行為…これは医療行為……。い、いきますよ…本当にいいんですね?』
    『ああ、構わない。データの採取は任せたよ』
    『こんなこと任されたくなかったです…それじゃあ、えいっ!!』


    ――才羽モモイに服用されたガスの症状及び推定後遺症期間

    ヒマリに送られてきた機密文書。
    責任の一端を感じたウタハの狂気ともいえる実験によって得られた成果は閲覧した者から言葉を失わせるに十分な威力を秘めていた。

    夥しい種類の精神汚染症状、その中には自他問わずの殺傷癖まで含まれていた。
    狂気は辛うじて抑え込み耐えられることはできるものの、不定期に訪れることで疾患者の精神を限りなく疲弊させるものだった。

    数日に渡り続いた不定的狂気は一週間後には快復傾向に向かったようだが、これはウタハの執念と精神が異様にタフだったからだと診られている。

    決死の覚悟で挑まれた実験により算出されたデータでは、凡そ一般人が件の禁薬を原液で一缶直接吸引させた場合の推定後遺症期間は"約1000日"。
    つまり、モモイの卒業までずっと続く。報告書の最後はそう締めくくられていた。

    「ネルの報告にも目を通したよ。正直、この目でみても信じられない。本来のモモイにしか見えなかったからね。
    根性で抑えている彼女の精神力は尋常じゃない。だからこそモモイの努力を無駄にしないためにも君達にお願いする。
    その内心は想像を絶するものが未だに続いている今、目を離した隙に何をしでかすか…絶対に油断しないでくれたまえ」

  • 45二次元好きの匿名さん24/08/30(金) 17:19:38

    ***

    なにこれぇ!?ボロクソに叩かれてるじゃん!?なんでぇ!!

    桃鬼のレビュー欄には『おっも』『曇らせすぎてよく分からん』『主人公が強すぎてTrueENDいけない』『うへ~ 人が死ぬのは駄目だろ』『人心無?』などと散々な言われようだった。
    主にシナリオ面とゲーム難易度についての不満が多いみたいだが、中にはただの愚痴みたいなものまである。

    確かに心当たりが無い訳ではないんだけど……皆で頑張って制作したゲームがこんな風にこき下ろされちゃカチンと来るものがある。

    『……あ。この人の名前、この間ゲーセンで対戦したPNと一緒だ』

    余程気に食わなかったのか、荒らしのように粘着して回ってるアカウント名に見覚えがある。少し遠いところにあるゲーセンによく出没するプレイヤーだ。

    『こうなったら…!』

    一言文句言いにいってやる!銃を握りしめて走り出す。

    その後、病院を飛び出したモモイは荒らしプレイヤーを一日掛けて捜しまわった。その間、昼休憩に入ったユウカがモモイの様子を見に来たことやモモトークに大量の不在着信が来ていることも忘れ、再びミレニアムが阿鼻叫喚に陥ったことはまた別のお話(~Fin~)

    ***

  • 46二次元好きの匿名さん24/08/30(金) 17:24:38

    雑殴り書きですがこれにて後日談終了です。
    下書き込みで11万字超も読んで頂きありがとうございました。
    以降、私からのスレ立ても無いので保守不要です。ご自由にどうぞ

  • 47二次元好きの匿名さん24/08/30(金) 17:47:09

    また普通に鬱ゲー作ってて草

  • 48二次元好きの匿名さん24/08/30(金) 19:23:25

    このレスは削除されています

  • 49二次元好きの匿名さん24/08/30(金) 19:36:22

    スレ完遂お疲れ様でした!約2ヶ月、これだけを喜びに生きれました!

  • 50二次元好きの匿名さん24/08/30(金) 21:43:21

    面白かったです!

  • 51二次元好きの匿名さん24/08/31(土) 08:30:33

    ここでも鬱ゲーモモイ爆誕してて笑う
    完結お疲れ様

  • 52二次元好きの匿名さん24/08/31(土) 11:29:38

    このレスは削除されています

  • 53二次元好きの匿名さん24/08/31(土) 21:52:11

    完走おつ

    モモイ視点「催涙ガスは辛かったけど、喉も肩も全部完治したんだからみんな心配することないのに。そんなことより精神作用ガスを食らったミドリをなんとかしなきゃ!!」
    ミレニアム視点「精神作用ガスの影響を未だに受けてるモモイが無理して平静を装ってる……えっ!?モモイが病室から消えた!?モモトークも既読が付かない!?ヤバい!!!!!」
    先生視点「精神作用ガスの方じゃなくてよかった……頼むから……!!もっと自分を大切にしてくれ………!!!!!」

    完結後もウタハ実験バレイベ、ミドリカウンセリングイベ、モモイわからせイベ、等々あらゆるイベントの可能性が残されてるの妄想が捗るね

  • 54二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 09:03:30

    あの時マジで精神作用ガス吸わされていたらどうなっていたことか

  • 55二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 10:00:39

    勝手ながらまとめました

    x.gd
  • 56二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 13:02:48

    >>53

    そう言えば最後まで勘違いしたままミレニアム生徒は終わったのか…

  • 57二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 23:58:35

    保守

  • 58二次元好きの匿名さん24/09/02(月) 00:01:11

    一応先生は真実知ってるだけまだ救いはあるか
    サクラコ様とは別方面で勘違いキャラになったモモイはその……頑張れ!

  • 59二次元好きの匿名さん24/09/02(月) 07:13:14

    ミレニアム生が真相を知って「え、そうだったの?」って混乱してほしいな

オススメ

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