- 1124/09/01(日) 18:52:01
- 2124/09/01(日) 18:52:50
ここだけ天元様が羂索に対して独占(束縛)型ヤンデレなスレ
- 3124/09/01(日) 19:09:19
「羂索、何処に行っていたんだ」
帰宅すると、天元が仁王立ちして待っていた。決して豊かではない表情筋が、今は不機嫌を全面に押し出している。他の者が相手では現れないものだ。それは羂索に優越感を与えたが、同時にうんざりとしてしまう。
腕時計に目を遣って溜め息を吐く。まだ17時、なんて健全だろう。
「何処だっていいでしょ」
「良くない」
「子どもじゃないんだから」
「ああ、そうだな。私は君を子ども扱いなんてしていないよ」
羂索はむすりとしながら靴を脱いで、それから、天元を押し退けてリビングへと足を向けた。天元はピタリとすぐ背後を着いてくる。
「子ども扱いじゃないならなんなのさ」
呆れたように言う羂索の腕を引いて。
「恋人扱い、だな」
ちょっぴり驚いた顔の羂索に唇を重ね、その背に手を回す。差し込まれた舌に翻弄されて力の抜ける羂索を、強く、強く、抱き締めた。誰にも渡すまいとするかのように。 - 4二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 19:25:44
ヤンデレ天元様?
……良い - 5124/09/01(日) 19:47:09
すっかりその身を預けてしまった羂索を、天元は微笑みながらソファに座らせた。勿論体を隙間なくくっ付けて。
赤く染まった頬の柔らかさを楽しみながら、そっぽを向く羂索に問う。
「それで?何処に行っていたのかな」
「……別に」
「別に?」
答えるまで解放しないとばかりに顔を覗き込んでくる天元。こうなったら何時間だろうと言うまでこのまま、ご飯もお風呂も取り上げになることは目に見えている。観念した羂索は白状した。
「図書館に行ってただけ」
「図書館か。君は読書も好きだったな、今ハマっているシリーズはあるか?」
「今日は勉強だよ。宿題してたの」
「そうか。それで?」
一旦は引き下がるかと思われたが、しかし追及をやめる気のない天元に、羂索は思わず眉を顰めた。
「は?なに?答えたじゃん」
自然声は低くなる。猫の威嚇のように。
「いいや、まだ不充分だ。肝心なところが抜けているよ」
「肝心?」
「そう。誰と、行ったのかな」
傾げられた羂索の首につつ、と指先を這わし、耳許で囁く。ぞわりと総毛立った腕を擦った羂索は、心の内で心配性め、と吐き捨てつつも仕方なく正直に告げた。
「宿儺と裏梅だよ。いつものメンバー」
ほら、答えたでしょ!そう言って腕を振り解き、漸く力が入るようになった体を起き上がらせた。ご飯を求めてキッチンへ向かう羂索の背に、ぽつりと。
「……だからって、絶対的に浮気しないとは言い切れないだろう」 - 6二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 19:56:11
一人への執着とかまったくしなさそうな天元様がなってるのがいいよね……凄く良い
でも羂索は囲おうとすればするほど逃げそうだから心配 - 7二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 19:57:19
独占型か、良いの引いたね
個人的には孤立誘導型も見てみたかったけど… - 8二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 19:59:46
前世で千年超えの自己犠牲を経て、転生後にそれまで抑えてた色々が全て羂索個人に向かっちゃった世界?
- 9二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 20:04:03
流れるように深い方のキスする天元様アダルティで好き
- 10二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 20:06:53
図書館に勉強…ここの羂索はまだ学生か?天元は年上かな、同い年かな?
- 11二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 20:07:34
前世では日本人全体のために身を捧げた人だからな、次の人生で自分にとっての愛しい子に好きなだけ情を注いでも文句なんて言われませんよ。羂索の気持ち?んー…天元様と一緒にいれるのは嬉しいだろうし監禁もされてないしせーふせーふ
- 12124/09/01(日) 20:59:06
夜ご飯を食べ終えた頃、羂索のスマホが着信を知らせた。当然羂索は出ようとするが、待ったを掛けられ指が止まる。
「誰から?」
「万だよ」
「私といるのに?」
「いいでしょ電話くらい」
恐らく今日の勉強会に呼ばなかったことについてだろうなと見当をつけながら、天元の方も見ないで答え、今度こそ通話ボタンを押そうとした。けれどその手からするりと抜き取られ、あっと振り向いた時には拒否ボタンが押されてしまっていた。
「ちょっと!」
羂索の抗議など何処吹く風で、スマホはぽいとソファへ放られてしまった。画面に万からの通知がぽんぽん表示されている。
「ただの友だちじゃん」
「友、か……しかし今は私といるんだ。どうして他の者と話す必要が?」
悪びれもせず言う天元に、深い、それはもう深い溜め息を吐き出した。恋人だからって友だちとの電話まで制限するか?出かかった言葉は喉奥で堰き止めて、代わりにつんとそっぽを向いた。
「お風呂入ってくる!」
「今日は一緒に入らないのか?」
すかさず返された言葉に、入る前から茹で蛸にされた羂索は叫んだ。
「明日学校だから!!ナシ!!」 - 13二次元好きの匿名さん24/09/01(日) 22:11:57
羂索と天元一緒にお風呂入ってるんですか??
一緒にお風呂入ると翌日の学校に支障が出るような展開になるんですか??? - 14二次元好きの匿名さん24/09/02(月) 07:34:49
ここの天元の性別はどっちだ…?転生ものなら男の可能性もあるぞ、女学生羂索を囲う成人男性天元とか良いね…
- 15二次元好きの匿名さん24/09/02(月) 08:03:48
あーーーたまらんたまらん
本当に最高ですありがとうございます - 16124/09/02(月) 12:52:05
目覚ましのアラームが鳴るより先に、羂索は天元の声で夢から引き上げられる。と、いうより、天元が明らかに羂索より遅く寝ているのにも関わらず絶対に早く起きているものだから、アラームのセットは万が一のために一応しているだけで、本命は天元の声掛けなのである。
何時に寝て何時に起きているのか気になって、遅くまで起きていようとしたり、逆に早く起きようとしたこともあったが、如何せん天元に"寝かしつけ"られて天元より先に眠ってしまい朝まで熟睡。結局わからないまま。そんなに早寝早起きじゃおばあちゃんだよ、と揶揄った羂索に、天元は笑うだけだった。
「羂索、朝だ。起きなさい」
優しい声とともにゆさゆさ体を揺さぶられ、羂索はゆっくりと瞼を開けた。カーテンの開け放たれた窓から日射しが降り注いでいて、眩しさに目をきゅっと瞑る。それを眠いという意思表示だと勘違いしたのか、仕方のない子だ、という呟きが降ってきた。
そのうち体を揺さぶっていた手は輪郭をなぞりはじめ、左の耳朶を摘んだ。何をしているのだろうかと、寝起きのぽやぽやした頭で考えようとした羂索の、右の耳朶をかぷり。
「このままだと食べてしまうよ」
「っ!?!?」
がばり、と勢いよく飛び起きた羂索は、信じらんないという顔で天元を見た。が、天元はあっけらかんと言う。
「おはよう、羂索。寝癖が付いているな。顔を洗ってきなさい。朝ご飯できているよ」
「て、てて、てんげ、」
「それとも……」
食べられる方が良かったかな。羂索はぴゃっと跳ねて転げ落ちるようにベッドから降り立つと、顔洗ってくる!と大慌てで出て行ったのだった。 - 17二次元好きの匿名さん24/09/02(月) 12:53:27
ドスケベが隠れてないの正直助かるな…
- 18二次元好きの匿名さん24/09/02(月) 21:44:02
天元は女性だったか…羂索の性別がどっちにせよ女性攻めは良いね、おねロリかな?おねショタかな??
- 19124/09/03(火) 06:39:34
絶対に早起きだから朝食は天元だし、在宅ワークで一日のほとんどを家で過ごしているらしく、その他の家事もだいたいが天元だ。少しは手伝うと申し出ても、君はまだ学生だからな、と断られるので諦めた。せめてもと皿洗いや洗濯なんかはするようにしているが、なんだか日に日に駄目人間へと向かっているような気がする羂索である。
今日も今日とて天元お手製の朝食を平らげ、制服に身を包む。ふわ、と零れた欠伸を笑われてむすっとしてしまう。
「忘れ物はないか?」
「うん。大丈夫」
「気を付けて行くんだよ。知らない人には着いて行かないこと、危ない所には近付かないこと」
「ハイハイ、わかってるってば」
「羂索」
いつもの過保護に母親かよと思いながら適当な返事をすれば、やけに真面目な声音で呼ばれて顔を向ける。目の前に立っていた天元が、頬を包み込んで顔を近付けた。
「本当は君を外に出したくはないんだよ。君はすぐ自分の好奇心に任せた行動をするし、面白いことのためなら誰にでも声を掛けるから」
じっと目を見詰めながら言うが、しかし羂索には心当たりがなかった。確かに好奇心が人一倍強いのは自覚しているが、それで今まで天元に迷惑をかけたことはなかったはずだし、知らない人に声を掛けるなんてこともない。あくまで仲間内ーー宿儺や裏梅を巻き込んでのこと。
困惑を前面に出す羂索に気が付いたのか、天元はふっと笑って唇を奪った。そしてそのまま、吐息が触れ合う距離で囁く。
「宿儺たちと言えど、あまり話してくれるな。約束、できるね」
「てん、」
「あまり私を妬かせないでくれ」
結局指切りげんまんさせられて、羂索はよく分からないまま家を出たのだった。 - 20二次元好きの匿名さん24/09/03(火) 07:08:54
天元様だけ記憶あるやつだぁ!!
- 21二次元好きの匿名さん24/09/03(火) 15:14:21
これ宿儺たちは記憶あるんだろうか
- 22二次元好きの匿名さん24/09/03(火) 18:10:10
これ宿儺達も記憶あったら現状の天羂(主に天元)見て「マジか…前世の反動か?いやでも、元からその気配も無くはなかった…か?う~ん、マジかぁ…」みたいな、うわぁ…感出しててほしい
- 23二次元好きの匿名さん24/09/03(火) 23:06:11
これ今のところ羂索も困惑はするけどお互いギリ合意くらいなのか?
独占型ヤンデレの天元様には是非裏でシャレにならない監視しててほしい
表では何処行ってたんだ?とか聞くけど羂索にはGPSも盗聴器も付けてるから誰とどこ行ったかはわかってる的な
もしかしたら今後そういう事になるのかもしれないけど - 24二次元好きの匿名さん24/09/04(水) 01:45:16
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- 25124/09/04(水) 01:52:47
「ーーってことがあってさ」
どう思う?と、お昼を囲むいつものメンバーに問えば、皆一様になんとも言えない顔をするので、羂索は藪蛇とわかっていながら突っついた。すると宿儺が稀に見る大きな溜め息を吐いて、
「貴様の自業自得だろう」
「はあ???私が何したって言うの」
全くもって心当たりのない、完全潔白を自負する羂索はすかさず反発した。しかし裏梅も、何かと裏梅に突っかかりがちな万も、うんうんと頷くばかり。終いには身から出た錆、とまで言われてしまって、羂索は膨れっ面のまま天元の作った甘い卵焼きを頬張るのだった。
ーー羂索と万が連れ立って花摘みへ向かった時。どうしてこうも女は共に行きたがるのか、否、女に限ったことではないか、そんなことを思いながら宿儺は羂索のスマホへと手を伸ばした。
慣れた手付きでロックを解除し、なんら変哲のないアプリが並ぶ中から、ひとつを選び出す。不思議そうな顔をする裏梅を後目に皮肉な笑みと共に呼び掛ける。
「全く……随分な過保護だな?天元」
返答はない。当然だ、これは一方的にスマホの所持者の声を聴くためのもの。漸く事の意味に気が付いた裏梅が眉を顰めた。
「しかし貴様も分かっているだろう。あれは囲えば囲うほどに外へと興味を惹かれる。宛ら気紛れな猫のようにな」
かつてほど自由気ままに生きているわけではない。秩序も揃わぬ遠い昔に生まれた記憶を持たず、呪力の存在しないこの世界で、健全な現代っ子としての感性を培ってきた。しかしそれでも、時折その片鱗は垣間見える。魂が同じである以上、根っこが変わるわけではないのだから。
「程々にしておけよ。あれの幸福を想うなら」
それは羂索の友として紡ぐ宿儺最大の優しさであった。
『……』
沈黙。 - 26二次元好きの匿名さん24/09/04(水) 05:08:42
天羂百合確定!!!
- 27二次元好きの匿名さん24/09/04(水) 07:49:56
優しい宿儺様…!!
- 28二次元好きの匿名さん24/09/04(水) 18:44:24
羂索甘い卵焼き派なの可愛いね……
天元様は在宅ワークだから家でパソコンだったりをいじってても違和感ないのか……羂索の動向調べ放題だね
当たり前のように羂索のSNSアカウント鍵垢まで全て知ってそう - 29二次元好きの匿名さん24/09/04(水) 18:49:42
水泳の授業の前の夜はそりゃあもう激しそう
痕もガッツリ残すし足腰使い物にならないしで、毎回見学になる羂索
文句を言っても、天元は天元で「私以外に無闇矢鱈と肌を見せないでくれ」とか言っちゃうんだ - 30二次元好きの匿名さん24/09/04(水) 23:06:00
天羂の出会い知りたすぎる……
- 31124/09/05(木) 02:10:08
おじいちゃん先生の子守唄のような歴史の授業に船を漕ぐ者が多発する午後。教科書に隠してスマホを弄っていた羂索は、ぽんぽんぽんと立て続けに届いたメッセージに苦笑いした。「君が好きそうだと思って新作のゲームを買ってきた」「週末にふたりでやろう」「授業はちゃんと受けなさい」……まるで見ていたかのような言葉である。
羂索は「新作のってもしかしてあれ?」「いいね、やろうやろう」「ちゃんと受けてるもーん」と丁寧に返し、「スマホ弄ってるじゃないか」の言葉と共に送られてきた「こら」のスタンプに小さく笑った。
さて、新作のゲームである。お昼ご飯を食べ終えた頃、そういえばと、買ったらプレイしようと宿儺たちを誘っていたのだ。週末にでも買おうと思っていたので、全くグッドタイミングが過ぎる。
天元が常に羂索の思うことを察して動くので、欲しいなと思ったものは大抵が近いうちに家に存在している。ーー万ときゃっきゃしながら美味しそうと呟いた高級プリンも、裏梅と真剣な眼差しを注ぎながら欲しいなとボヤいた便利家電も、宿儺と遊びたくて誘ったゲームも。
羂索としては、家電はともかく、プリンなんかは皆で味わいたいものだが、天元が買ってくるのは二人分だけであり、羂索のお小遣いで買えるものでもないので、結果家でまったりふたりきりで楽しむに留まっている。
バイトができたらもう少し皆と共有できるかな。そう考えるが、過保護天元は全面禁止にしているので卒業するまでは難しそうだ。……というかそもそも校則からして禁止だった。
なんにせよゲームなら皆を誘える。週末にふたりでやってみて、来週末とか、来月にはテスト期間だから最終日の午後にでも皆でやろう。
羂索は、わざわざ「ふたりで」と告げた天元の心を知らぬまま。眠気漂う教室でひとり、わくわくと心躍らせるのだった。 - 32二次元好きの匿名さん24/09/05(木) 08:00:33
うーん好き
- 33二次元好きの匿名さん24/09/05(木) 13:17:58
お仕置きが待ってるのかな…?宿儺さん巻き込まれそうなの面白い
- 34二次元好きの匿名さん24/09/05(木) 22:07:26
苦笑いで流してますけど天元様盗撮もしてません……?
ナチュラルに天元様が「悪いなこのゲーム2人用なんだ」してて草 牽制がわかりやすすぎる - 35二次元好きの匿名さん24/09/05(木) 22:14:52
- 36二次元好きの匿名さん24/09/06(金) 07:17:59
ほ
- 37=3524/09/06(金) 07:54:03
あ、ごめん盗撮か
盗聴と見間違えた
盗撮は明言されてないね
でもしてそうだよなあ - 38二次元好きの匿名さん24/09/06(金) 19:47:13
天元の執着具合を分かってる宿儺は逆に誘われてくれるだろうか…?
- 39二次元好きの匿名さん24/09/06(金) 20:18:16
「面倒クセェ、関わりたくねぇ」と言う本音と「でも放って置いたら絶対アレだよな…まぁ、知らんけど後味悪いから適度に見とくか…」みたいなツンデレも同時に発揮してくれる可能性はあるよね
- 40二次元好きの匿名さん24/09/06(金) 21:56:11
ド攻め様天元様良すぎる
命助かってますありがとうございます - 41124/09/06(金) 22:46:13
筆遅くてすみません……
- 42124/09/06(金) 22:49:26
迎えた週末。羂索は早速新作ゲームのパッケージに指を掛けた。が、
「宿題はやったのか?」
無慈悲な天元の問いかけに、しおしおと自身の机へ戻っていく。少しくらい良いじゃないか、天元のケチ。ぶつくさ呟いていると、宿題のお供にカルピスを持ってきた天元が揶揄うように言った。
「明日は宿題を片付ける体力なんてないだろう」
「なっ……!!そそそそんなこと!!」
明らかに動揺を隠せない羂索に更なる追い討ち。
「いつも用事のない日曜日は私に介抱されているからな」
「それは君がっ!!」
「私が?」
「〜〜〜〜っ!!」
顔を真っ赤に染め上げてとうとう声も出せない有り様となり、机に突っ伏した羂索。天元はカルピスを置くと、その頭を優しく撫でた。さらさらの髪は天元が拘り抜いたケア用品のおかげで枝毛ひとつなく、更には天使の輪さえも冠している。
「すまないな。少し、意地悪をしてしまった」
ふふふと笑うその声は全く悪いとは思っていなさげである。むくりと顔を上げた羂索は、顔をさくらんぼのように赤くしたままその可憐な唇を尖らせた。
「天元のいじわる」
「うん」
「全然少しじゃないし!」
「そうかな」
「そうだよ」
「夜の方が意地悪だと思うが」
「そんっ……!!もう!!全然反省してないでしょ!!」
ポカポカ叩いてくる羂索に、珍しく口を開けてはははと笑う天元。よっぽど反応をお気に召したらしい。気が済むまでポカポカした後、漸く宿題へと手を伸ばした羂索は、今日はしないからね!と宣言してから取り掛かったのだった。
……結果がどうであったのかは、天元のみぞ知るところである。 - 43二次元好きの匿名さん24/09/06(金) 22:57:10
大丈夫ですよ!!!!
更新のたびに楽しませていただいてます - 44124/09/06(金) 23:13:18
ありがとうございます!
- 45二次元好きの匿名さん24/09/07(土) 06:38:25
日曜一日動けなくなる程…そこまで羂索を外に出したくないのか、天元…いいぞもっとやれ
- 46二次元好きの匿名さん24/09/07(土) 12:58:53
こんなにがっつり羂索に手を出してる天元様珍しいからめっちゃ嬉しい
口角が上がりっぱなし - 47124/09/07(土) 13:49:52
あっという間にテスト期間。宿題は手を付けたり付けなかったりで天元にせっつかれる事も儘ある羂索だが、テストとなると話は別である。なんせ地頭は良いし回転も早く、記憶力も申し分ないので。これで生活態度が良ければ絵に描いたような優等生だったのだが。
宿儺たちーー彼らの学力が下位であるわけではなく寧ろ上位連中であるーーとつるんでいる時点で教師陣は諦めの境地である。然もありなん。
テスト期間にも関わらず休み時間に教科書やらノートやらを開くでもなく、羂索は気怠そうにしながら宿儺に絡んでいた。宿儺は宿儺で小説を読んでいる。見たところ折り返しを超えた辺りだろうか。
「ね、最終日の午後空いてる?」
机上で伸ばした腕の上に顎を置いて、羂索は真顔で読む宿儺を見上げた。表情からはその本がおもしろいのか分かりかねるが、おもしろくないと思ったら即刻捨てるような男であるので、半ばまで読み進めている時点でその小説のおもしろさは証明されたようなものである。
閑話休題。
羂索の言葉にちらと視線を遣った宿儺だったが、それは一瞬のことですぐに文字列へ戻されてしまった。
「ほら、買ったら一緒にやろって言ってたゲームあるでしょ。あの日の午後に天元から買ってきたって連絡があってさ。ほんと天元って私のこと大好きだよね、私のことなんでも知ってる感じ。っと、それはさておき、天元と遊んだら思ってた以上に楽しくって。宿儺たちも絶対楽しめると思うよ」
わくわく、うきうき、という擬音が聞こえてきそうな様子で捲し立てる羂索。大好き、大好き、な……まあ間違ってはおらんが。なんでも知ってはいるだろうな。そんなことを思う宿儺である。
さて、宿儺としては誘いに乗ろうと乗るまいと支障はない。確かに例のゲームは楽しめそうだという印象だし、羂索や裏梅と過ごす時間は悪くはない。しかし自ら買おうとするまで食指が動かされたわけではないし、羂索のことだから十中八九あの女も誘うだろうと思うと面倒なことこの上ない。結果プラマイゼロなのである。
宿儺は寸の間目を閉じ、それから、すっかり見慣れてしまった少女を見下ろした。
「天元の許可は取ったのか」
翌日、膨れ面のまま登校した羂索に、宿儺は矢張りかと全てを察しーー少し、ほんの少しだけ、同情するのであった。 - 48二次元好きの匿名さん24/09/07(土) 23:13:15
- 49二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 07:17:27
宿儺達は天元と羂索の住む家に遊びに行った事は過去にあるんかな?皆顔見知りっぽいけど、転生後はいつ合ったんだろ?
- 50二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 12:50:29
顔合わせた事くらいはありそうだけど家はどうかな……
独占型のヤンデレ天元様は2人の家に他人を入れたがらなそう - 51124/09/08(日) 18:30:18
寄り道せず帰ってくるように。まるで子どもを相手しているような言い付けで、羂索はちょっと嫌だった。確かに成人女性にとって高校生は子どもかもしれないが、恋人として対等でありたいと思うのは我儘だろうか?そんな思考こそ天元に言わせれば子どもっぽいのかもしれない。そんな風に考えながら、結局真っ直ぐ家路に就くのである。
寄り道したり休日に遊びに行くのは宿儺たちとつるんでのことで、最近はその誘いもめっきりだった。誘ってもなんのかんのと断られ、誘われることはもっとない。皆高校に上がって忙しいのかな、と楽観的に見ている羂索であった。
帰宅したとて、テスト期間中は宿題がないため軽く復習するくらいしかやることはないし、あとは頗る暇だ。ゲームは皆でやる予定だし、小説、それとも漫画でも読もうかな。全国の悩める学生を敵に回しそうな発想だった。
クッキーを齧りながらソファでダラダラとする羂索に、天元が微笑みながら迫った。
「なに?」
「言うことがあるだろう?」
手の甲を撫で、囲い込むようにソファの肘掛けへもう一方の手を置く。すっかり逃げ場をなくしてしまった羂索は、一瞬オド、としたものの、すぐにああ!と声を上げた。
「テスト最終日……明後日だけど」
「うん?」
「宿儺たち呼んでいい?あのゲーム一緒にやろって約束してたんだ」
そうだそうだ、宿儺に許可を取ってこいと言われたんだった。友人を家に呼ぶくらいで、と思わなくもないが、あの口ぶりからすると許可さえ貰っていれば宿儺は来るだろうし、宿儺が来るなら裏梅、それに万もきっと来る。はじめて友だちを招くことも相俟って楽しみだなあと心躍らせる羂索に、しかし天元は微笑みを消して告げた。 - 52124/09/08(日) 18:30:30
「駄目だ」
まさか断られるとは思ってもみなかった羂索は、は?と声を漏らした。真顔で見下ろす天元に少しだけ怯みそうになったが、意地を張って負けじと見上げる。
「なんでさ」
「あれは君と私とでプレイするために買ったんだよ」
「別にいいじゃないか。宿儺と裏梅と万だよ?小学校の時から遊んでるし、君だって知らない仲じゃないでしょ」
「駄目なものは駄目だ。どうして君は彼らと遊びたがるんだ」
「遊びたがる、って……幼馴染みの友だちだからだよ。当たり前じゃん」
「幼馴染み?友だち?それが免罪符になるとでも思っているのか?」
「免罪符ってなにさ。まさかとは思うけど浮気を疑ってるの?彼らと?ありえないね」
「疑ってはいないよ。だが、そうだな……」
君の思考のほんの片隅を掠める存在すら憎らしいと思うんだ。
目を伏せ自嘲気味に零す天元に羂索はとうとう業を煮やし、無理やり押し退けて立ち上がった。
「意味わかんない!」
ーー結局、天元の許可が下りることはなかった。 - 53二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 21:22:35
子供の頃は良かったのか…成長してかつての姿に近付くに連れて危機感が出てきたのか、それともここ数年で前世の記憶を取り戻して本格的に囲い始めたのか
- 54二次元好きの匿名さん24/09/08(日) 22:58:47
なんか嫌な予感がしないでもない…
羂索の心が離れる前になんとか和解してほしい
天元様もどこかで妥協点を見つけられるんだろうか 天羂を末長く応援したい身としては衝突は避けてほしい - 55124/09/09(月) 00:28:11
羂索は天元のことが好きだし、他の人間、まして宿儺たちに気移りするなんてありえないと思っている。そもそも、宿儺は恋愛諸々に全くの興味を持っていないし、裏梅は齢16にして宿儺をサポートするのが生き甲斐のようになっているし、万は宿儺にゾッコンだし、仮に目移りしたとしても十中八九相手にされないこと確定である。
それなのに、である。天元ときたら、口では否定していたが、あれでは浮気を疑っていると言っているようなものだ。羂索は結構真面目に怒っていたし、拗ねていた。
「そんなに私って不誠実な奴に見えるかな」
意趣返しとばかりに寄り道する羂索と、珍しく付き合ってくれた万は、店横の椅子に座ってアイスを堪能していた。ふたりとも定番を選ぶ素直な性格ではないので、期間限定の変わり種である。普通に美味しい。
羂索のぼやきに、垂れてきたアイスを舐め取りながらウーンと考える万。そのまま静かに食べ進めて、コーンまで辿り着いたところで漸く、そうねえと羂索の方へ目を遣った。
「あんたが誠実か不誠実かなんて大した問題じゃないんじゃない?」
「大した問題でしょ。信用されてるかされてないかってことなんだから」
「そうじゃないわよ」
あんたって賢いのに変に鈍感よねえ。呆れたように言う万に、羂索はむっとして残りのコーンを一気に頬張った。
「愛しているから不安になるのよ。相手がどうとかじゃなくて、自分の心がどうって話」
「自分の心、」
「自分の知らない顔があるかもしれない、一緒にいられない時に自分の知らない奴と仲良くなっているかもしれない……愛しているから、そんなことまで想像してしまう。私だって、宿儺がどこぞの女に寝盗られやしないかって気が気じゃないんだから」
「君たちは付き合ってないんだから寝盗りもなにもないだろ」
「黙らっしゃい」
スルーできず突っ込んだ羂索の頭を叩いて、万はそのまま頬をぷにと突ついた。それからにこっと笑って。
「いいじゃない!不安になってぶつかって向き合って、それが愛ってものでしょ!」
ドヤ顔で語る万に、君人生何回目だよと呟きながら、羂索は連られて笑みを零すのだった。 - 56二次元好きの匿名さん24/09/09(月) 00:34:08
このレスは削除されています
- 57二次元好きの匿名さん24/09/09(月) 00:34:14
万は相変わらず良い女やな…
- 58二次元好きの匿名さん24/09/09(月) 01:14:44
荒らしはスルー&報告
- 59124/09/09(月) 01:43:18
荒らし……ってことでいいんですかね……?
こういうのは判断難しいな……もっと分かりやすかったら躊躇もないんですけど
一応お答えすると、元々平安組が好き(最推しは宿儺様)で、そんな中で天元様と羂索の謎に包まれながらも確実に激重感情の感じられる関係に萌えに萌えまくった結果、になります
バックボーンが明かされていないのは百も承知ですが、二次創作ですからね、妄想の塊ですよ
なるべくキャラ崩壊は招かないように心掛けていますが、ここだけスレの性質上、全くの原作通りとはなりませんのでご承知おきください - 60二次元好きの匿名さん24/09/09(月) 05:48:55
○○のスレ建てすぎじゃね荒らしは最近よく見るからあんま相手しなくて大丈夫だと思いますよ
- 61二次元好きの匿名さん24/09/09(月) 08:04:15
良…
- 62二次元好きの匿名さん24/09/09(月) 18:13:03
取り返しがつくうちにどんどんぶつかっていいと思うよ羂索
目指せ健全なお付き合い! - 63二次元好きの匿名さん24/09/09(月) 18:41:05
宿儺は男前だし、万は美人で裏梅はクールビューティー…そりゃ天元様も気が気じゃないよね、分かるよ…
- 64二次元好きの匿名さん24/09/09(月) 21:45:22
羂索が他に心惹かれるかとかじゃないんだよね天元様は……
羂索が自分以外に意識を向けてること自体が許せなくて気持ちの大小とかは関係ないんだろな
まあそれだと解決策は監禁になってしまうので天元様には落ち着いていてほしいけど
夜のプレイの一環で軽い拘束か目隠しかして「私以外見ないでね…♡」とかならやってもいいかもだけど - 65124/09/10(火) 01:34:33
- 66124/09/10(火) 02:12:44
【閑話】
「てんげん!てんげん!」
陽射しを反射し艶々としたランドセルを背負った童女が、セーラー服を纏った気怠げな少女ーー天元に笑顔で駆け寄った。視線を合わせるために天元が屈むと、童女は満面の笑みで背後に隠していた両の手を突き出してみせた。
「てんげんにあげる!ちいさいひまわりだよ!」
「これは……」
受け取りしげしげと見詰めると、ふっと微笑んだ。
「向日葵によく似ているけれど、向日葵ではないな」
「えっ」
「サンビタリアと言う花だ」
「さんびたりあ……」
きゅっと寄せられた眉。天元はそっと小さな頭を撫でた。向日葵を渡すつもりで来たものだから、向日葵ではないと分かってショックを受けてしまったらしい。次第にその瞳に涙が溜まっていく。
「羂索、羂索、泣くことはない」
「だって……」
「私はサンビタリアだって嬉しい。いや……君がくれるものなら、なんだって嬉しいさ」
その声にはどこか恍惚とした、およそ小学生に向けるものではない色が乗っていたが、今にも泣きそうなほど落ち込んでいた羂索は、否、平時であってもきっと気付きはしなかったろう。
「ほんとう?」
「ああ、本当だ。私が君に嘘を吐いたことがあったか?」
即座にふるふると横に振られた頭。
「そうだろう。……ほら、今日も暑いからアイスをあげよう」
「いいの?やった!」
まだ小学校に上がったばかりの、小さな小さな手を引いて。片手には小さなひまわりを握り、天元は愛し子の舌をもてなす為にと帰路を行くのであった。 - 67二次元好きの匿名さん24/09/10(火) 08:10:21
はぁ〜…好き…
- 68二次元好きの匿名さん24/09/10(火) 08:11:19
- 69二次元好きの匿名さん24/09/10(火) 08:33:42
- 70二次元好きの匿名さん24/09/10(火) 10:57:49
この天元様は本編のような達観よりも個人的な感情を優先しそうなの推せる。
- 71二次元好きの匿名さん24/09/10(火) 19:16:10
この他者への慈しみよりも自身の欲望や願望に忠実な天元はかつての羂索が何より望んでそうな天元の姿な気がするけど、転生後で記憶無しのJK羂索からしたら過保護な恋人くらいなんかな?でも内心、優越感を感じてる辺りに記憶は無くとも羂索にも根底にある天元への執着が垣間見える気がする…
- 72二次元好きの匿名さん24/09/10(火) 22:11:13
- 73二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 08:01:26
ほし
- 74二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 18:46:56
天元、今後サンビタリア見るたびにこのこと思い出してそう
羂索がそばに居る時はその話して「いつまでその話してんの!?」って照れギレされてそう - 75二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 21:33:06
幼い羂索が花言葉知らないだろうことくらい分かりきってるのに都合よく解釈して囲い込む天元様ガチヤンデレっぽくていいね…
- 76124/09/11(水) 23:32:34
【閑話】
「……なにこれ?」
羂索は差し出されたものに首を傾げた。鮮やかな黄色に彩られた花束。1、2、3、と数える羂索に、天元はなんでもない顔で告げる。
「蕾も合わせて99本だ」
「多いね。……いや、花束用のものなら普通か?」
生憎と花についての知識が浅く、画面越しや額縁の中に見る花畑の向日葵で連想してしまったが、こうして手元にあるように、花束にするための小さめの向日葵も存在しているらしい。元からこういう品種なのか、それともわざわざこのために改良されたのか。そんなことを考えながら、目の高さまで持ち上げては上から下からじっくり眺める羂索。
「本当は999本にしたかったんだが。流石に重いかと思ってな」
突然投下された爆弾にずるっと転けかけた。
「いや重いなんてもんじゃないでしょ。店員さん困っちゃうよ」
正気か?という目を向けられてううむと考える天元は、名案を思いついたとばかりに顔を上げた。
「蕾ばかりにすれば」
「それでも無理だよ。馬鹿なの?」
即座に返された辛辣な言葉に苦笑いした天元は、花びらに触れたり顔を寄せたりして楽しむ羂索の横顔を見詰める。そうして、横髪を掛けてやりながら、耳を食む。
「何時ぞやのお礼だ」
「ひゃっ……ちょ、っと……」
腰をしっかりと抱き留めながら、裾から指を侵入させる。不埒にも脇腹をなぞり上げ、下着の縁をわざとらしく引っ掻いた。
「何時ぞ、や、って……んっ……なに、」
まだ発達途上にあるそこに下着の上からやわやわと触れて、くすりと笑った。たったこれだけで息を上げる羂索がかわいらしくて仕方がない。そして、もっといじめてやりたくなる。
「ふふ、サンビタリアの方が良かったか?」
「も、いつま、でっん、あ……その、はなし、」
「何時までだってするさ。君に貰った大切な気持ちだ」
栞にして持ち歩いていると教えたら、君はどんな顔をするかな。そんなことを考えながら、涼しい顔して容赦なく布越しに引っ掻いて、与えられる快楽に仰け反って喘ぐしかない羂索の体を支えながら、寝室へと連れ去っていった。
机上に置かれた花束は、尚も色鮮やかに咲き誇っている。 - 77二次元好きの匿名さん24/09/12(木) 08:03:49
最高〜〜
天元様の言う重いと羂索が考えてる重いは違う意味なんだろうな
でも天元様は既にかなり重いと思うよ…… - 78二次元好きの匿名さん24/09/12(木) 13:27:52
知ってたけどやっぱりガッツリ手ぇ出してるのな天元様ww
ここの羂索は割りと恥じらい持ってそうだから宿儺達には秘密にしてそうだけど、宿儺は普通に察してるのかな…?現代育ちの宿儺的に「知らん、興味無い」なのか「俺が倫理を語るのも変だが…流石にどうなんだ?」なのかはちょっと気になる - 79二次元好きの匿名さん24/09/12(木) 22:43:28
これは…そのうちwriting(本番描写)も期待していいって…こと…?!
- 80二次元好きの匿名さん24/09/13(金) 08:00:42
えっちだ……
- 81二次元好きの匿名さん24/09/13(金) 18:46:20
99本のひまわりの花言葉「永遠の愛を誓う」「ずっと一緒にいてください」
999本のひまわりの花言葉「何度生まれ変わっても君を愛している」
重いね……天元様…… - 82二次元好きの匿名さん24/09/13(金) 21:30:32
- 83124/09/14(土) 01:29:01
(えっちなのは書けないんだ……でも頑張るんだ……そのうちね……よろしくおねがいします……)
- 84124/09/14(土) 01:30:33
ひたすらに宿儺宿儺と追い掛けているだけに見えた万から、まさか人生の先輩のような言葉を送られるとは。驚きつつも、まあ愛に生きているような女だしな、と納得。他の分野はともかく、こと恋愛に関して周囲の誰より良き相談相手であるのは間違いない。
「不安になってぶつかって向き合って、それが愛、か……」
天元も、愛してくれているからこその不安なのか。そう考えれば、宿儺たちと遊ぶことに難色を示すようになったのも、やたらとふたりきりを強調するようになったのも、嬉しいと思ってしまう羂索であった。
玄関の前に立ち、深呼吸。天元の方は今朝には何事も無かったように接してくれていたが、羂索は口を効かないまま出てきてしまっていた。だから仲直りしなくては。開けたら、まず、大きな声でただいまを。それから天元に、分かろうとしなくてごめん、そう言ってハグをしよう。
意を決してドアノブに手を掛けた、瞬間。
「おかえり、羂索」
「うわぁ!!」
ひとりでに開いたドアから天元が顔を出した。心を固めていざ、というところでの予想外に、羂索はきゅうりを前にした猫のように飛び退いた。
「おや。大丈夫か?」
「う、うん。大丈夫。……ただいま」
「おかえり」
決めていた順序が全てすっ飛んでしまった上、情けなく声を上げて飛び上がった恥ずかしさも相俟って、羂索は天元の顔が見れなくなってしまった。
不自然に視線を下げる羂索を後目に、天元は羂索の手から鞄を掻っ攫って笑う。
「君の好きなケーキを買ってきたんだ」
一緒に食べよう。と、言いながら一方の手で羂索の手を握る。
「君は不誠実な奴などではないよ。悩ませてしまってすまないな」
「え……」
なんでそれを。言いかけた羂索の口は唇で塞がれて、あとはもう、なし崩し的に溶かされるのみであった。 - 85二次元好きの匿名さん24/09/14(土) 09:40:19
天元が全部聞いてるの知っても許しちゃいそうな羂索だ…
- 86124/09/14(土) 14:59:23
気怠い体を引き摺って、羂索はどうにかこうにか登校した。テスト最終日だというのに天元め、と昨日のことを思い出しひとり赤面する。
帰宅し一息つく間さえなく、あれよあれよと一糸纏わぬ姿にされてしまい、意識が曖昧になるほどとろとろにされて、それだけでも羂索にとっては大変なことなのに、更に天元はケーキを持ち出してケーキプレイなどというアブノーマルな行為を始めたのである。
君の好きなケーキと宣っておきながら、蓋を開けてみれば美味しく味わったのは天元だけ。羂索の口には、天元から口移しされたものと、舐め取るようにと差し出された天元の指先に付いていたクリームくらいしか入っていない。クラクラの脳では、どちらも味なんてわかったものではなかった。
幾度かやったことのある生クリームプレイならば兎も角、……いやそれも大概ではあるが。と、脳内で悶々としながら自問自答する羂索の背に掛かる声。
「随分と辛そうだな」
振り向けば、そこにいたのは無表情で見下ろす宿儺。全くの無の顔をしているが、別に怒っているわけではなく、これが彼のデフォルトなのである。
羂索は理由を聞かれたらと思うと気恥ずかしくて、わざとらしくとぼけてみせた。
「えーそう見える?」
「俺の目にはな。……仲がいいのは結構なことだが、翌日のことを考えてしろよ」
かあっと熱を持つ頬。宿儺は全てわかっていて、だから誤魔化そうとした羂索の思考などお見通しなのだった。
ちなみにこの日の科目は過去最低点を取る事になった。然もありなん。
ーーあの一瞬、天元に抱いた疑念など、すっかり忘れ去っている。それは天元のみぞ知ることで、誰に指摘されることもないまま、今日も羂索の全ては彼女に把握されているのだ。 - 87二次元好きの匿名さん24/09/14(土) 23:30:41
天元様マジで囲い込んで好き勝手やってるな……
ケーキプレイとか同人誌くらいでしか見ないんですけどと思ったら生クリームプレイも幾度かやったことあるんかい 猛者すぎ
この天羂の出会いどんな感じなんだ……馴れ初めも……
天元様が息をするようにアブノーマルな行為をしてくるから羂索の常識がちょっとだけ歪んでそう - 88二次元好きの匿名さん24/09/14(土) 23:41:34
えっっっち…!
とろとろにされてからもたっぷり愛されたんだろうな…終盤はもう天元しか覚えてなさそうで想像が膨らむ… - 89二次元好きの匿名さん24/09/14(土) 23:45:23
この天元、羂索の事が好き過ぎてもう腹に収めたいレベルまで来てるんじゃないか…?でもそんな事したら羂索を失ってしまうから生クリームやケーキプレイで羂索を咀嚼して腹に収める疑似行為をしてるとか…いや、流石に考え過ぎかな…
- 90二次元好きの匿名さん24/09/15(日) 07:54:40
羂索以外紀保有りなら他の平安組はここまで吹っ切れた天元の事どう思ってるんだろう?
「いつかやると思ってた」なのか「アイツ一体どうした?」なのか… - 91二次元好きの匿名さん24/09/15(日) 07:56:14
むしろよく前世では抑えられてたな………
- 92124/09/15(日) 11:03:31
テスト期間が終わり、体育が水泳へと移行する。着替えが面倒だとは思いながらも、夏といえばやっぱりプールだよね、と羂索の心は浮き足立つ。勿論授業なので自由に泳ぎ回れるわけではないけれども。
フンフンと鼻歌混じりにスクール水着の準備をしていた羂索に、ふと影が差した。見上げれば天元が眉を寄せながら見下ろしていたので、不思議そうな顔で首を傾げる。そんな羂索の顎を優しく掴み、キスをひとつ。それから、これは何かな?と至近距離で問うた。
これ、と示されたのは水泳の用意。だから羂索は、嘘をつく理由もなく、素直にそう答えた。
「水泳の授業なんて、許した覚えはないが」
耳許から首筋にかけてを撫でる手の優しさとは裏腹に、声は低く、瞳は仄暗く見えた。ぞくりと背筋を駆け上がるものに気付いていながら、羂索はなんとか平気なフリをする。果たして駆け上がったものは恐怖なのか、快楽なのか、それは本人にすらわからない。
「授業だよ?天元の許可なんて要らないでしょ」
「授業だろうとプライベートだろうと関係なく、君の柔肌を飢えたケダモノたちの前に見す見す晒せと?」
今度は羂索が眉を寄せる番だった。
「プール如きでそんな大袈裟な……」
「わかっていないな」
がしりと腕を掴まれ、その細い体のどこにそんな力があるのかと思うくらい易々と抱え上げられる。膝の上で綺麗に整頓しあとは袋に入れるだけ、という状態だった水着類が床に散乱した。咄嗟に上がった抗議の声など聞く耳を持たず、そのままベッドに放られる。 - 93124/09/15(日) 11:04:14
「ちょっと!?っん、あっ、は、」
文句を言おうと開かれた口へ舌を差し込まれ、蹂躙される。歯列をなぞり舌先を吸い上げられてしまえば、漏れる吐息は喘ぎが混じらざるを得ない。逃げようと藻掻く体は天元に伸し掛かられて身動きが取れず、後頭部に回された手によって顔を離すこともできない。せめてもと天元の服を掴んでいた手は、やがて縋り付くためのものに変わっていった。
いったいどれほど奪われていたか、漸く解放された羂索は肩で息をしながらとろんとした目で精一杯天元を睨んだ。逆効果であるのは明白であったが。
「君はこんなにもかわいらしく、か弱く、耽美で、淫乱で、馨しいほどに蜜を溜め込んだ、甘美な華なんだ」
ギシリ、とベッドが軋む。天元の指先が羂索の唇から顎へ、顎から首筋へ、そうして胸元へ辿り着き、ブラウスのボタンに掛けられる。
「どうやら今までの行為だけでは足りなかったようだ」
その言葉にびくりと体を揺らした羂索の耳許へ、脳を直接犯.すように囁きを注ぎ込む。
「一からちゃんと教えてあげようね」 - 94二次元好きの匿名さん24/09/15(日) 21:59:20
えっちぃ……
- 95二次元好きの匿名さん24/09/15(日) 22:08:46
もしかして今まではB止まりで、今回の件でがっつり最後まで手を出された感じだったりする…?
- 96124/09/16(月) 03:51:23
- 97二次元好きの匿名さん24/09/16(月) 06:41:47
- 98二次元好きの匿名さん24/09/16(月) 07:27:13
ど、どえっち……ありがてぇ……
- 99二次元好きの匿名さん24/09/16(月) 17:38:40
.
- 100二次元好きの匿名さん24/09/16(月) 20:05:43
素晴らしくえちぃ…!!!ありがとうございます、ありがとうございます!!
- 101124/09/17(火) 00:26:44
暑いな、と羂索は髪を掻き上げた。それから後ろ髪に手を伸ばして、随分伸びたとしみじみする。こんな猛暑だし、結ぶのもいいけれど、折角だからバッサリ切ってしまおう。そう考えてスマホで美容院を検索する。
「切ってしまうのか」
背後から覗き込んできた天元が残念そうに言う。ちらと天元を、正確には天元の長い白髪を見遣り、はーっと息を吐いた。
「暑苦しいでしょ。天元も切ったら?この機会に」
「……いや、私は遠慮しておこう。君が好きだと言ってくれたものだからな」
「?何時の話なのそれ」
「ずっと昔だよ」
ずっと昔、そう言って懐かしむような目で遠くを見る天元に、時々"こう"なんだよねと心の内で独りごちる。時折、羂索の記憶にない思い出を語る天元。目の前にいるのに、どこか遠くへ想いを馳せているような天元。……尤も、幼い頃の出来事なせいで羂索が憶えていないだけ、なのかもしれないが。
美容検索サイトをスクロールし、近場で手頃な値段のお店を探す。頼んでなくとも天元が拘り抜いてケアしてくれるので、そういうオプションは要らない。
レビューまでしっかり読んで、よしここにしよう、そう決めた矢先、ひょいとスマホを奪われてしまった。
「こんな店に行かずとも、私が切ってあげるよ」
微笑む天元に思わずジト目を向ける。
「他人の髪なんて切ったことあるの」
「ない」
「不安しかないよそれ……」
ある、なんて言われても、きっと妬いてしまったに違いないのだけれども。羂索の内心を知ってか知らずか、天元は囁いた。
「君の髪さえ、何処の馬の骨とも知れぬ輩に触れられたくないんだ」
分かってくれ。そんな風に言われては断れない。羂索は渋々といった様子を装って頷いた。
「……ああそうだ、この機に下も剃ってしまおうか」
「し!?ッ変態!」
結局、天元の手によって腰まであった髪はばっさりショートになり、下はツルツルにされた羂索であった。 - 102二次元好きの匿名さん24/09/17(火) 08:08:32
ショートヘア羂索だ かわいい
香織さんみたいなかんじになったのかな?
あとこれは推測ですが天元様は羂索の毛を全て保管しているんだろうな…… - 103二次元好きの匿名さん24/09/17(火) 17:39:06
ここまで天元に育てられた(意味深)羂索なら無意識に外で色気振り撒いてそう…ストーカーとか不審者とか大丈夫??登下校時に不埒な輩に狙われてない??
- 104二次元好きの匿名さん24/09/17(火) 23:54:08
天元様は学校時の羂索を宿儺によろしく頼んでるんだろうか
あの子に何かあったらよろしく頼む って宿儺に言いつけてる天元様も解釈一致だしあの子を守るのは私だが?ってなってるクソ強天元様も解釈一致 - 105二次元好きの匿名さん24/09/18(水) 00:20:33
ここの羂索は女性である天元としか関係持った事ないだろうし、身近な異性である宿儺達も保護者枠っぽいから『男』に対する免疫がめちゃくちゃ低そう、一人でいる時に突然露出狂に見せ付けられて恐怖とパニックで頭真っ白になって動けなくなっちゃう弱々羂ちゃんはいますか…?
- 106二次元好きの匿名さん24/09/18(水) 07:50:25
良い………
- 107二次元好きの匿名さん24/09/18(水) 19:22:39
しっかり下もつるつるにされちゃってるの好き
- 108二次元好きの匿名さん24/09/18(水) 19:22:50
不審者はその場は逃げられても結果的に髪の毛1本この世に残らなさそう…
- 109124/09/18(水) 22:35:23
【閑話】
下校中のことである。暖かくなると現れるモノ、不審者。それがどうやら最近近辺に出没しているらしいという注意喚起がホームルームでされた日だった。
今日は特に約束もしていないし、と、終わった瞬間にそそくさと帰ろうとする羂索の行く手を阻む影。
「や、どうしたの」
そんな顔で見下ろしたら小さい子に泣かれるよ、なんていう茶化しはギリギリで飲み込んだ。たぶん既に泣かれたことがある。
「ひとりか?」
「え?うん」
「帰るぞ」
「ええ?」
言い終わるや否や踵を返し教室を出ていく宿儺。意図を汲み取れないけれどもとりあえずその背を追うように遅れて退出した羂索は、次の瞬間腕に絡み付いてきた存在にわっと声を上げた。
「そんなに驚くことないでしょ」
「驚きもするよ、いきなりなんだから」
言葉とは裏腹に悪戯に成功した子どものような笑顔の万が、それから飛び跳ねて宿儺の腕に移る。鬱陶しそうな横顔が見えたと思ったら、今度は白髪がさらりと揺れて、万の体を引き剥がした。裏梅である。
キャンキャンと文句を言って噛み付く万と、青筋を立てながら怒りの言葉を並べる裏梅。いつもの図である。そんなふたりを追い越して、宿儺と並ぶ。裏梅が現れた瞬間あからさまに機嫌が良くなったことに吹き出して、すかさずぎろりと睨まれてしまった。
下駄箱で靴を履き替えながら、羂索は宿儺に訊ねた。
「約束なんてしてなかったじゃん。どうしたの?」
すると肺中の空気を全て吐き出すかの如く大きな溜め息を吐いた宿儺が、がしがしと頭を掻いて。
「不審者の出没情報が出ただろう。貴様は耐性がないからな」
「耐性の問題かなあ。ま、心配はありがたく受け取るけど。ていうか、それなら万のことも守ってあげなよ。女の子だよ」
「あれは……どうせ平気だろう」
その言葉にちょっと宿儺!?と声が飛ぶ。口論しながらも追いついた万が心外ですと言いたげに頬を膨らませていた。
「そりゃあ宿儺の……♡なら全然平気!寧ろ見せなさい!って感じだけど!」
前言撤回、確かに万なら平気そうだ。と苦笑いする羂索だった。
四人で連れ立って歩くといろいろな意味でそれはもう目立つのだが、宿儺が睨みを利かせるため視線が集まることはない。 - 110124/09/18(水) 22:35:37
今日の授業はここがおもしろかった、あれは詰まらなかった、こんな噂話が転がってきた、そんな他愛のない話で盛り上がる羂索と万。時折相槌を返す裏梅とほとんど聞き手に徹する宿儺。
幾らか歩いた頃、ふとスマホを見た宿儺が羂索の手を取り引っ張った。いきなりの挙動にきょとんとしながらも着いていく羂索。
「こっちに回るぞ」
「え、なんで」
「なんとなくだ」
「なんとなくかあ」
それなら仕方ない、と笑う羂索。裏梅は粛々と着いてくるし、万は反対側の腕に抱き着こうとして避けられていた。
そうしていつもより遠回りをしながら帰宅した羂索なのだった。
「……天元め、前世気取りか」
そんな宿儺の呟きは、羂索の耳に届くことはなく。
「宿儺様のお手を煩わせるとは天元め」
「全く、相変わらずよねえ」
三人もまた、各々の家へと足を向けるのである。 - 111二次元好きの匿名さん24/09/19(木) 08:07:38
宿儺が保護者してるのいいな……宿儺がいるところに裏梅も万も集まるから結果ワイワイ帰ってるの微笑ましい
宿儺は天元に頼まれてるし見た感じルート指示とかもされてる?羂索の位置以外にもわかるのマジでどうやってるんだ…? - 112二次元好きの匿名さん24/09/19(木) 12:23:45
「前世気取りか」って言うほどだから呪力無しでも住んでる範囲の状況とかは把握してるんかな?
在宅ワークってあったし、もしかしてスーパーハッカー的な仕事してる…? - 113二次元好きの匿名さん24/09/19(木) 20:50:07
不審者との遭遇イベントを事前にキャンセル出来るの流石だな天元!
何だかんだで宿儺も面倒見良くて優しい…呪力も術式も無い世界で古い友人が好奇心旺盛据え置きで非力で騙されやすい小娘になってしまったから心配してくれてるのかな - 114124/09/19(木) 23:11:50
【閑話】
不審者情報は、学校側が把握するより先に掴んでいた。
羂索に、絶対に入らないようにと言い付けている仕事部屋、その壁一面に設置された何十ものモニター。天元は、かつて自身の張った結界で行っていたことをテクノロジーによって模している。皮肉なものだ、と天元は画面に映る少女を指でなぞり自嘲した。かつて旧きままに生きた私が、最先端技術で擬似的に再現しているとは。君に記憶があったなら嘲笑は不可避であったろう。しかし記憶はないしーー戻る気配もない。
羂索を含めたいつもの面子が校舎から出てくる。彼らと言えどあまり仲良くはしてほしくないというのが本音だが、こういうときは彼らの存在が有り難い。
万、あまりべたべたとくっ付くんじゃない。宿儺、もう少し距離を空けなさい。スマホに仕込んだ盗聴アプリが拾う会話を聴きながら、天元は机をトントンと叩く。言いたいことは数多にあるが、今はまだ、飲み込んだ。
四人の行く道、その次の曲がり角。
「全く、身の程知らずの愚か者だな」
あの子にこんな穢らわしいものを見せるわけにはいかない、すぐさま宿儺のスマホへ短くメッセージを送る。そうすれば少ない言葉でも瞬時に判断してそれを避けた迂回ルートへと入っていった。
次に発信する先は当然然るべき機関、である。どこで自身の性癖に従った行動をしていようと構わないが、あの子の住むこの街で行うことだけは看過できない。一台のパトカーがそこへ向かう姿を見送り、天元は退出した。
「おかえり、羂索。何事もなく帰ってこれたな」
そうして何食わぬ顔で羂索を出迎えるのである。 - 115二次元好きの匿名さん24/09/20(金) 08:01:53
保守
- 116二次元好きの匿名さん24/09/20(金) 14:23:47
ついに天元の動きもわかってきてておぉってなりました。
- 117二次元好きの匿名さん24/09/20(金) 18:37:43
☆
- 118二次元好きの匿名さん24/09/20(金) 22:08:01
ヤンデレでもあるし過保護でもある天元様めちゃ良い
2人で歩いててトラブルがあっても羂索を守れるように天元様自身も強いんだろうな…… - 119二次元好きの匿名さん24/09/21(土) 07:54:09
ほし
- 120二次元好きの匿名さん24/09/21(土) 11:48:24
ここの羂索って平安組以外に友達とかいるのかな?宿儺達が怖くて遠巻きにしてる感じなのか、華奢で小さめなイメージだから数人の男子からはちょっと良いな…って思われてそう
- 121二次元好きの匿名さん24/09/21(土) 13:13:09
☆
- 122二次元好きの匿名さん24/09/21(土) 17:09:29
ここの羂索同性のナンパ平気で受けそう(尚、無意識の模様)
- 123124/09/21(土) 18:05:45
【閑話】
羂索は告白という青春イベントを経験したことがない。小中全てで、である。
万でさえ数回はされたことがあるらしいのに。いやまあ黙っていればモテるのかもしれないが。宿儺は言わずもがな、裏梅も男女問わず。そんな中で羂索だけが、何故か誰にも告白されない。
「そんなに私って魅力ないかなー?」
机にべったり頬をくっ付けて愚痴る。チクチクとなにやら縫い物をしている裏梅がちらりと視線を寄越した。
「されたいのか?告白を」
「んー……いや、されたいわけじゃないけど」
「ならばいいだろう」
教室で縫い物とはまた随分と珍しい姿であるが、ここにそれを指摘する者はない。放課後の教室で宿儺を待つ、互いをよく知るふたりの男女。何を作っているのかは知らないけれども、どうせ宿儺に渡すものだろうと思っているのでツッコまない。
羂索は頭を持ち上げて頬杖に切り替えた。机に押し付けていた箇所がほんのり赤くなっている。
「でもさ、そんなに魅力ないんなら、ちょっと自信なくなっちゃうよ」
「自信?貴様が?」
鼻で笑った裏梅に相変わらず冷たいやと思いつつ、机に向かって溜め息を吐いた。あんまり魅力がないようなら、少し、考えた方がいいかもしれない。何故なら。
「……天元のことなら心配は要らんだろう」
心を読んだかの如き言葉に目を瞬かせる。裏梅は手元から視線を上げないまま、淡々と告げる。
「他者からどう見られ、どう思われていようと、天元が貴様を見る目は変わらん」
良くも悪くも、な。空気を含んだ最後の呟きは、羂索の耳には届かなかった。 - 124124/09/21(土) 18:06:24
ーー実際のところ、羂索に好意を持ちあわよくばを狙った者は数多にいる。小中、全てで、である。
古風なやり方で下駄箱にラブレターが入っていたこともあったし、校門で待ち伏せしようとした勇者もいた。中庭や人通りの少ない教室へ呼び出そうと企んだ者も、LINEを交換し遣り取りを重ねようとした者も。
しかしそれらは全て、羂索に認識される前に潰えている。
下駄箱のラブレターは宿儺がビリビリに裂いてゴミ箱行きとし、送り主には本人に代わって丁重にお断りをしておいた。校門での待ち伏せは代わりに裏梅が赴き、これまた丁重にお断りを突き付けた。呼び出そうとした者には万が突撃し落とした後にこっ酷く振ってトラウマを植え付けることを楽しんでいた。LINEの方は天元が丁寧にお断りを入れてブロックの後履歴を削除。こうして羂索には一切届かないまま、彼らの淡い恋心はなかったことにされてきたのである。
全ては天元からの依頼。それとほんの少しの友情と、五人の中で唯ひとり記憶を持たぬことへの僅かばかりの同情と心配故。
唇を尖らせる羂索に、裏梅こそ溜め息を吐きたい気分だった。高校に上がってから半年も経っておらず、だいたい四人が固まって動くためにまだ発生していないが、そのうち同じようなことは起こるだろうし、その度にこれまで同様の処置が続くのだろう。
全く、与り知らぬは当人ばかり。 - 125二次元好きの匿名さん24/09/21(土) 22:29:44
保守
- 126二次元好きの匿名さん24/09/22(日) 08:08:10
羂索宛のラブレターをビリビリに破ってる宿儺想像したら面白過ぎたww
- 127二次元好きの匿名さん24/09/22(日) 19:21:24
万ぅ…ww
- 128二次元好きの匿名さん24/09/22(日) 21:32:25
小学校も一緒か…一体何歳くらいから天元抜いた平安組は幼馴染みしてるんだろう?
- 129二次元好きの匿名さん24/09/23(月) 07:59:04
これ羂索の代わりにお断りしてる宿儺たちを見て「宿儺たちってモテるんだな〜」ってなってる可能性もある?
もちろん宿儺たちにも告白は来てるけどそれ+羂索の分だから機会も多く感じるかも - 130124/09/23(月) 17:18:00
【閑話】
夢を見ていた。
幼い自分が泣いている。病室だろうか、ベッド脇には今より随分と幼いーーとは言ってもそこで泣いている自分よりかは遥かに大人っぽいーー天元が座っていて、慰めようとしているのか、ひたすらに小さな背を摩っていた。
「ずっとのこるの、きえないっていわれたの」
ぐずぐずの声が紡いだ言葉に、ああ、と羂索は思い至った。
小学校にも上がる前、羂索は額に大怪我を負った。幸いにも脳みそは無事で命にも別状はなかったのだが、その時の手術で縫った痕は、もしかしたら一生残るかもしれないと医者に告げられたのだ。勿論あくまで"もしかしたら"であり、綺麗にとまではいかずとも、言わなければ分からない程度、メイクをしてしまえば誤魔化せる程度まで消える可能性の方が高かった。けれど、当時の羂索は幼かったから、絶対に消えないのだと思い込んでしまったのである。
はて、何が原因でこんな大怪我をしたのだったか。憶えていないほど今の羂索にとっては些末なことだ。実際縫合痕は歳を追うごとに薄くなっていたし、何より。
「たとえどんな傷痕が残っていたって君は君だ、羂索」
「てんげん……」
「私はね、羂索。君を構成するならば、傷痕さえ愛おしいよ」
ーー今でも天元は、ふとした瞬間に羂索の額を撫でて、愛おしそうに唇を落とすのだ。 - 131二次元好きの匿名さん24/09/23(月) 18:52:00
この世界の羂索には額に傷があるのか…
もしも記憶有りな五条や乙骨達とエンカウントしたら面倒な事になりそう - 132124/09/23(月) 21:02:58
珍しく天元が隣にいなかった。重たい瞼をなんとかこじ開けて、伸ばした手が冷えきったシーツを掴んだことで一気に頭が冴えた。
「てんげん?」
寝起きの舌足らずな呼び掛けに、常ならすぐさま「おはよう羂索、よく眠れたかな」と返ってくる声もない。がばりと起き上がってーー急激な動きにくらりとしてしまって逆戻り。ぼふりと枕に頭を埋めて、天井を見詰める。
天元がいない。それに気付いた瞬間、早鐘を打った心臓。置いていかれたと焦る脳みそ。単に起きたらいなかった、それだけのことで何故こんなにも尚早に駆られているのか、羂索は自分のことだというのに全く理解できなかった。確かに今まではなかったが、天元だって水を飲みに行ったりお手洗いだったり、先に軽く食べたりすることくらいあるだろう。
呼吸を整えて、今度こそ立ち上がる。のろのろとネグリジェを脱ぎ捨て私服に着替える。畳む前に持ち上げて、改めて露出が多い服だなあと思う。辛うじて大切な箇所を守っている程度で、他は透け透けの生地。当然の事ながら天元からのプレゼントである。
とてとてと寝室から出て、顔を洗い、キッチンを覗いた。いない。お手洗いにもいなかったし、朝からどこへ行ってしまったのだろう。羂索は首を傾げた。
そういえば、と思い至る。あの部屋には入ったことがない。絶対に入るなと言い含められているーー天元の仕事部屋。入ってはいけないと言われれば入りたくなるのが人の性、人より好奇心の強い羂索ならば尚のこと。それでも今まで入ろうとしなかったのは、単にそこまでの余裕がなかったからである。常に天元が傍にいたので。
けれども今は傍にいない。だから、好奇を抑えられない。少しだけ、ちょっと覗いて、いないか確かめる、ただそれだけ。鍵が掛かっていたらそれ以上は諦める。本当に。
天元はいないというのに、駄目と言われたことをしようとしているからか、無意識に忍び足で廊下を進む。一番奥、この家で最も重厚な扉の向こう。ドアノブを捻ると、音もなく開いた。鍵は掛かっていなかった。もはや羂索を止める手立てはない。 - 133124/09/23(月) 21:03:27
天元のいない部屋、壁一面に設置されたモニターに圧巻され、わあと感嘆の声を上げる。ざっと見たところこの街の至る所がこれらに映されているようだ。なんの仕事をしているのか語ろうとしなかったが、ハッカーだとかそういう関係のことをしているのだろうかと羂索は考える。
それから両側の壁に置かれた本棚へと目が移る。数えきれないほどの蔵書。左側は国内外問わず小説や歴史書の類いのようで、食指が動いた。右側に目を向けると、どうやらアルバムのようだ。あまり写真は好んで撮っている印象がなかったが、意外や意外、本棚のほとんどが埋まるほどの量だ。
そしてそのほとんどの背表紙にーー○年羂索、と。自分の写真が挟んであるようだと思えば手に取りたくもなるというもの。成長アルバムみたいなものかな、と気楽に考えて最新らしきものを開く。
「な……に、これ……」
絶句した。そこにあったのは、明らかに盗撮と思しき角度の写真。制服だったり私服だったりで、教室、立ち寄ったコンビニ、道端のものさえある。それはまだいい、あのモニターを使って撮っていたのかもしれないと、倫理観はともかくとして納得はできた。その後ろ、である。
あられもない姿の羂索が何枚もあった。だらしなく脚を広げ秘部から蜜を垂れ流している姿や、涎を垂らして善がる姿などなど。恐らくはとろとろにされきった後の記憶が飛んでいるあたり。こんな、こんな写真……パラパラと捲り、最後のページーー大切に包まれ閉じられた毛。ご丁寧に日付が記載されているふたつ。長さからして髪、それと……。
羂索は慌てて閉じて本棚へ戻した。何も見なかった、私は何も見てない。そう言い聞かせ、入室したときとは打って変わってバタバタ足音を立てながら寝室へ戻って行った。 - 134二次元好きの匿名さん24/09/23(月) 21:06:21
あの天元が部屋に鍵をしてなかった?妙だな…(コナンポーズ)
- 135二次元好きの匿名さん24/09/23(月) 21:11:06
あっ…………
- 136124/09/24(火) 00:13:34
天元は五分もしないうちに帰ってきた。ベッドに背を預けて小説を読む羂索に微笑む。
「ただいま、羂索。良い子にしていたかな」
ごくりと唾を飲み込んだ。カラカラに渇いた口内からどうにか絞り出す。どうか震えないでくれと祈りながら。
「してたよ。ていうかどこ行ってたのさ、こんな時間から」
「こんな時間と言うがもう昼だよ」
「……書き置きとかLINE入れるとかくらいしてくれてもいいでしょ」
時計を見れば確かに正午を回っている。着替えやらの時間を差し引いても起きたのは恐らく11時頃だろう。とても"こんな時間"と非難できる時間帯ではないし、寧ろ言われるのは羂索の方である。
気不味くなってふいっと、オダマキとハツユキソウを活けた花瓶の置いてある方へ向いた羂索に、天元は手に持っていた紙袋を持ち上げてみせた。中の物が動いて擦れたのか、かさりと音がする。
「パンを買ってきたんだ。食べよう」
テーブルに並べられたパンの数々。焼きそばパンやピザパン、コロッケパン、ソーセージパンといった昼食にぴったりのものから、チョコパンやクリームパン、フルーツサンドにスコーンといったデザート系まで、実に豊富である。
「ほら、最近新しくできただろう。開店セールをしていてな、ついたくさん買ってしまった」
「さすがに買いすぎじゃない?食べきれないよこれ」
所狭しといった有様に呆れる羂索。
「残った分はラップに包んで冷蔵庫に入れておこう。なに、ふたりでこの量なら明日にはなくなっているよ」
カランコロンと氷を奏でて、天元は羂索の前にアイスココアを置く。自身の前にはアイスティー。
ふたりは手を合わせる。声を揃えて、いただきます。
実質朝食な羂索はデザート系を、外を歩いたりしてお腹を空かせていたらしい天元はがっつり系を、それぞれ食べ進め、羂索の懸念とは裏腹に案外たくさん胃の中へ消えていった。このパン屋、非常に美味しい。
通学路だし、今度帰りに皆で買い食いでもしようかな。そんな風に思考を"目の前"から逸らさなければ、羂索は体の震えでがたがたと机を揺らしてしまいそうだった。他のことを考えていなければ、さっき見た光景が脳裏を過ぎってしまいそうだった。脳内に浮かびそうになる情景を押し潰すように、植木鉢で花を咲かせるツルバキアに水を遣らないとな、そんなことを考える。 - 137124/09/24(火) 00:13:50
食べ終わり、歯を磨いて、ソファでひと息つく。大丈夫、バレてない。羂索はそっと安堵の息を吐いて庭先に咲くオオムラサキシキブを眺めた。
ああ、そうだ、羂索。隣に腰かけた天元が、変わらぬ声音で言う。
「言い付けを破ったね」
ひゅっと喉が鳴る音。天元は目を細め、努めてにこやかに言葉を紡ぐ。
「悪い子だ」 - 138二次元好きの匿名さん24/09/24(火) 00:17:50
キタキタキタァ!!!
- 139二次元好きの匿名さん24/09/24(火) 07:50:02
ほし
- 140二次元好きの匿名さん24/09/24(火) 11:27:33
保守保守保守!!
- 141二次元好きの匿名さん24/09/24(火) 12:28:35
お?遂に本職(羂索ストーカー)の開示か?卒業まで待つと思ったけど、そろそろガチで囲い込み(家から出さない系)の段階に入った?
- 142二次元好きの匿名さん24/09/24(火) 12:45:08
今の世話焼き宿儺なら「せめて卒業までは自由にしてやれ」くらいは言ってくれそう…と言うか、言ってくれてたから義務教育終了後も普通に宿儺達と同じ高校通えてた可能性あったりする?
- 143二次元好きの匿名さん24/09/24(火) 12:47:10
この世界の羂索の親はどうしたんだろ?天元に全幅の信頼を置いて愛娘を預けてるのか、ネグレクトで完全放置の毒親なのか、既に両親共に死別で天元に引き取られてるのか…
- 144二次元好きの匿名さん24/09/24(火) 15:22:47
宿儺から言われた所でこの天元は聞いてくれなさそうだな…
- 145二次元好きの匿名さん24/09/24(火) 21:21:51
オダマキ「愚か」「必ず手に入れる」「心配・気がかり」
ハツユキソウ「祝福」「穏やかな生活」「好奇心」
ツルバキア「小さな背信」「残り香」
オオムラサキシキブ「上品」「聡明」「愛され上手」
天元様の「良い子にしてたかな」が言いつけを破って「悪い子だ」になるのなんか良い - 146二次元好きの匿名さん24/09/25(水) 07:25:43
当然のように天元様セレクトドスケベネグリジェを着させられていることに誰も突っ込まない…えっちですね!
- 147二次元好きの匿名さん24/09/25(水) 15:41:48
どうなってしまうのか…(((o(*゚▽゚*)o)))
- 148二次元好きの匿名さん24/09/25(水) 17:44:54
監禁パート!来るか!?
- 149124/09/25(水) 23:15:11
走っていた。とにかく遠くへ、逃げなければ。その一心で、足裏の痛みも無視して、脇目も振らず。
だからがしりと腕を掴まれた瞬間、相手も確認せず全力で藻掻いた。離して!と叫んだ。恐怖と混乱で取り乱している羂索の肩が、容赦のない力で掴まれ顔を向き合わされる。
「……あ、」
「なにしてる、羂索」
途端にぼろぼろと涙を零すので、然しもの宿儺もぎょっとして周りをきょろきょろしてしまった。それは周りの目が気になったと言うより、羂索がこんな風になっている原因がいるのではと思ったからだ。しかし見える範囲にはなさそうで、結局原因はわからない。
仕方ないので天元を呼ぶかとスマホを取り出す。あれならばお得意の監視で既に気付いているだろうが、とLINEを立ち上げた宿儺に、羂索が涙に濡れた声で拒絶を示した。
「やだ、やめて……てんげんよばないで……」
やだやだ、と泣きながら首を横に振る。宿儺はスマホと、羂索と、それから視認できる監視カメラとを順に見て、大きな溜め息を吐いた。スマホを仕舞い羂索の手を取る。
「店に入るぞ」 - 150124/09/25(水) 23:16:29
レトロな音楽の流れる落ち着いた店内。店員は裸足の羂索を訝しげに見たが、泣き腫らした様子と大人しく宿儺に手を引かれている姿を見て、指摘してくることはなかった。お昼時を過ぎた頃だからか、好都合にも奥の席が空いていて、ふたりはそこに座った。壁にはマリーゴールドが描かれた絵が掛けられている。
ぐずぐずと鼻を鳴らしながら、お水を置いた店員が去っていくと同時におしぼりを瞼に押し当てた。
宿儺としては、腹は減っていなかったし見られて困るようなものもないし、自分の家でも構わなかったのだが、連れ込んだとなると天元が後々うるさいだろうと思ったのだった。いや後々と言わず今すぐにでもスマホの通知がうるさいことになりそうであるが。
「落ち着いたか?」
「う"……ん……」
鼻声のままだが、錯乱状態からは回復したようだ。目元と鼻頭を赤く染めながら、不格好に笑ってみせた。
「ハァ……無理に取り繕おうとするな。不愉快だ」
容赦のない言葉に思わず自然な笑みが零れる。それでこそ宿儺。ぶっきらぼうな中に不器用な優しさを勝手に感じ取って、羂索は少しだけ心が浮上した。
お喋りな羂索にしては何も言おうとしない。宿儺はメニュー表を寄越し、食いたいものがあるなら頼め、と。珍しい好意に、しかし羂索は静かに首を振った。
「いらない。……ああでも、なんにも注文しないのは良くないよね。飲み物だけ頼もうかな」
ソフトドリンクのページを開き視線が泳ぐ。既に見終えているだろうにその視線はずっと行ったり来たりしていて、羂索らしくない。いつもなら即決即断でぱっとメニュー表を閉じてしまうのに。ましてここははじめて入ったわけでもない。
果たして羂索は、メニュー表を眺めているが、その実目が滑ってしまって全く内容が入ってこない。アイスココアの箇所だけ避けていることには、自分でも気付いてなかった。
そのうち見ようとすることさえ億劫になって、宿儺のオススメでいいや、などと言う。
「俺のオススメだと?」
「うん」
「貴様には飲めん」
「わかんないでしょ」
「ブラックコーヒー」
「ごめんなさい」
テンポよく続いた会話にほっとしたことの自覚を持たない宿儺は、冗談はさておくとして、自身にはブラックコーヒーを、羂索にはホットミルクを頼んでやった。 - 151124/09/25(水) 23:18:18
またしても沈黙。どうやら何があったのかを話す気はないらしい。もしくは相当に口を重くするほどのことなのか。どちらにせよ、話したくないのなら無理に聞き出そうというつもりは宿儺にはなかった。そこまでの興味はない。
飲み物だけだからか随分と早く届いたそれを掻き混ぜて、ひとくち。
「……あのね」
弱々しい声だ。普段のーーそしてかつての羂索からは想像もつかないほどに。宿儺は過ぎった思考に小さく頭を振った。目の前の此奴は記憶を持たない、比較してどうする。
切り出したはいいものの、次がなかなか出てこない。口を開いては閉じ、ミルクを含んで、飲み込んだらまた開きかけて、を繰り返す。言い淀む羂索に、宿儺がずばり指摘する。
「天元だな」
「!う、うん……」
それ以外には考えられなかった。前世含めても、此奴の心をここまで掻き乱すのは、あれしかいない。全くなにを仕出かしたんだか。呆れ気味の宿儺に、とうとう意を決したらしい羂索が、それまでの言い淀みが嘘のように話しだす。
「天元が、写真を撮ってたんだ。私の写真を。たくさんあってね、明らかに、その、盗撮って感じのばかりだったんだけど」
だろうな、と思ったが口には出さない。口振り的にそこではないのだろう、こうなった原因は。
「それはまあ、いいの。いや良くないんだけど、まあいいの。問題はその後。あの……えっと……」
潜められた声。ぎりぎりまで近付こうとしているので、仕方なく顔を寄せてやる。
「えっちな、写真……が、いっぱい、あって……」
「……貴様の?」
「うん……」
想像できる。激しい行為に意識を飛ばした羂索の姿をパシャパシャと何枚も撮るあれの姿が。それと同時に、そういう意図があってのことではないが、羂索のあられもない姿を浮かべてしまったことに若干の気不味さを覚えつつ、羂索の次の言葉を待った。まさかその写真たちだけであそこまでの錯乱には陥るまい。宿儺の予想は当たっていた。 - 152124/09/25(水) 23:19:33
「それから……その……毛が、」
「け?」
「ほら、この間髪を切ったでしょ。天元にやってもらったんだよ」
「……ああ、そういえばそうだな。なんだ、あれが切ったのか」
「うん。それで、その時……下、も……剃られて……」
「……、……そうか」
万を呼ぶべきだったかもしれないと珍しく後悔する宿儺。行為中あるいは後の写真の時点で思うべきだった。
「その毛も、髪も……アルバムの最後のページに、挟んであった、の」
「……それから」
促せば、お見通しなんだ、と無理やりに口角を上げようとして失敗する。
「……見なかったことに、しようとしたんだ。私は何も見てないって。それで、そのあとすぐ、天元が、帰ってきたんだけど。……知ってたんだ、言い付けを破ったね、悪い子だ、って。それで、だから、私、」
いつもならば、どれだけ喋っていようと苦にならないし口内がカラカラに渇くなんてこともないのに。
「怖くなって、押し退けて、縁側から飛び出してきちゃった……」
恐怖によって発揮された、火事場の馬鹿力、のようなものだろう。だから裸足だったのかと宿儺は納得する。
憶えのない日常の写真たちと知らぬ間に撮られていた痴態、髪だけならばともかくーーいや充分変態的なのだがーー大切に保管された陰毛。それだけでも羂索でなければ泣きじゃくっていておかしくない。そこにトドメの、あたかも監視していますと言わんばかりの言葉。実際家の中だろうとしているのだろうけれども。
全て状況を飲み込んだ宿儺に、羂索は訴える。
「天元、おかしくなっちゃったのかな。最近束縛も激しくなってたし。宿儺たちとも遊ぶななんて言って……どうしよう」
宿儺は羂索を少なからず友と思っていて、前世とは違って気遣う心も持ち合わせている。しかし、オブラートに包めるかはまた別なのである。
「そもそも、だ。中学に上がったばかりのガキに手を出す時点で、マトモとは言えんだろう」
「……え、」
ーー羂索の中で、何かが砕ける音がした。 - 153二次元好きの匿名さん24/09/25(水) 23:27:40
そんなに早い段階で手ぇ出してたのか天元!!
そんでなんでそれを知ってるんだ宿儺…羂索の挙動があからさまだったりしたのか、天元からの牽制が来たのか… - 154二次元好きの匿名さん24/09/25(水) 23:33:27
小学生の時点でディープキスくらいは仕込まれてそう
- 155二次元好きの匿名さん24/09/26(木) 08:02:41
あわわわ……
- 156二次元好きの匿名さん24/09/26(木) 19:06:30
どうなっちゃうんだ…
- 157124/09/26(木) 21:34:54
数瞬の間。突如かひゅっというおかしな呼吸音がした。見れば頬を紅潮させ冷や汗を掻いている。熱か?宿儺は羂索の額に手を伸ばし、触れーー
「ひゃあっ……ぇ?」
「あ"?」
擽ったい、だけではない色の乗った声。暫し呆然と目を合わせ、宿儺は、盛大に溜め息を吐いた。此奴、盛られているな。
宿儺の推察通り、羂索はココアに遅効性の媚薬を入れられていた。天元にとっても逃げられたのは予想外のことで、そのまま事に及び、とろとろになってきたあたりで薬が効いてくる、その手筈だったのである。
自身の額に手を置いた宿儺は、一先ず店を出ることにした。この状態のこれをいつまでも公共の場にいさせるわけにはいかない。
どうにかこうにか店を後にして、さてどうするか。どうせ天元はこの状況も見ているのだろう、さっさと迎えに……いや、それは悪手、か。宿儺はLINEを立ち上げ、気は進まないが、とひとりの女のトーク画面を開く。羂索の手をなるべく刺激しないよう掴み裏路地へ引っ張りながら、彼女を呼び出した。数分もしないうちに来るだろう、と返信を確認することなくスマホを仕舞う。
「羂索」
「んっ、なに、」
「……まだ歩けそうだな」
効力が如何程のものかわからないが、歩くことさえ儘ならないほど効いてくる前に室内へ運んでおきたいところ。
読み通り五分と経たず軽快な足音が聞こえくる。面倒だ、と思う心と、この状態の羂索を放置あるいは自分の家に連れていくことの方が面倒になるだろう、と思う心があり、宿儺は後者を回避することを選んだ。 - 158124/09/26(木) 21:35:11
「宿儺ぁ〜!来たわよ〜!宿儺からデートのお誘いだなんて♡どこ行く、の、……羂索?」
現れて早々に抱き着きを試みた万をひょいと避ければ、その奥で辛そうに息をする羂索に気付いた。不思議そうな顔で無遠慮に近付き手を伸ばす。
「あんた風邪?熱ある?」
「やっんっ!」
「え……え!?」
「姦しい」
「だってこれ、ええ!?」
混乱する万へ簡単に事の次第を説明する。勿論写真や毛のことは伏せたが、天元と喧嘩擬きをして家を飛び出したところどうやら遅効性の媚薬が盛られていたらしい、と。するとなるほどねえと訳知り顔で頷く万。
「だから私を呼んだってわけ」
「ああ。俺と裏梅は男だからな、万が一など起きるわけはないが、」
「解毒薬持ってるものね」
「そう解毒薬を、……ハ?」
「いつか宿儺に盛ろうと思って、でも一応解毒薬も用意してたのよね」
「ハ?」
思わぬ告白に語彙が吹き飛ぶ宿儺であった。 - 159二次元好きの匿名さん24/09/26(木) 21:41:57
万……
- 160二次元好きの匿名さん24/09/26(木) 21:51:23
猫ミーム化しちゃった宿儺
- 161124/09/27(金) 06:29:13
とんでもない暴露は一先ず置いておくとして(勿論後程しっかりと問い詰めるし没収する)今はとにかく羂索を万の家に連れて行き、解毒することが最優先だ。
とうとう腰砕けとなり崩れ落ちた羂索をおんぶして、宿儺は来たくなかったと顔を顰めつつ万の家へと上がる。熱っぽい吐息が首筋に当たり、歩く度その振動にさえ感じてしまうのか小さな喘ぎを耳が拾う。
性別として女であることは認識していても、羂索をそういう対象として見たことのない宿儺である。というより、かつての世でそれはもう気色の悪いことオンパレードを仕出かしていた奴なので、据え膳状態に置かれても全く理性は揺れ動かなかった。
道中、頼んでもいないのに事の経緯をぺらぺらと話す万曰く、天元のことだから詳しいだろうと思い相談したところ案の定オススメを教えられたので所持しているのだと言う。他人にオススメするくらいなので自分でも使っている可能性は高いし、そうなれば解毒薬も万の持っているものが効くだろう、と。
そんなくだらんことを相談するなと言いたかった宿儺だが、助かったことは事実なので口を噤んだ。あと単純に相手するのが面倒くさい。
「下ろすぞ」
一声かけてベッドに下ろす。返事をする余裕もない羂索は、されるがままに寝かせられる。
宿儺が私の部屋に……!と感激して何故か廊下から覗き込んでいる万へ、さっさと解毒薬を持ってこいと指示を飛ばす。そわそわと常以上に落ち着かない様子で入ってきた万は、机横の引き出しの一番下を開けた。見るからに妖しげな色をした液体が入った小瓶の横、無色透明な液体入りの小瓶が鎮座している。
「このまま飲ませちゃえばいいわ」
「全てか?」
「そう。……たぶん」
曖昧な答えに宿儺は眉を寄せた。肝の小さい者ならそれだけで悲鳴を上げて立ち去ろうとするだろう。
「たぶんだと?」
しかし万は慣れたもので、肩を竦め、ちょんちょんと媚薬の方を突つく。
「どのくらい飲まされたのかわからないんだもの」
これひと瓶ならそっちもひと瓶だけど。その言葉に媚薬と解毒薬とを交互に見遣り、何度目か分からない溜め息を吐いた。
「副作用は」
「ないわ。依存性もない」
少ないよりはマシか。そう判断した宿儺は寝かせた羂索の体を起こし、小瓶の蓋を開け口元に押し付ける。思いの外無臭だった。 - 162124/09/27(金) 06:29:30
「飲め」
一声かけると容赦なく傾け流し込む。鼻を摘まれてしまえば飲むより他なく、こくこくと喉が上下する様を見届け漸く小瓶が離される。良薬口に苦しと言うべきか、飲み干した羂索はそれはもう顔を歪めて嘔吐いた。
空の小瓶と液体の入った小瓶をひょいと摘み上げ、宿儺は部屋を出る。
「あ、ちょっと!!それは持ってかないでー!!」
そんな万の抗議など何処吹く風である。 - 163二次元好きの匿名さん24/09/27(金) 17:22:08
保守
- 164二次元好きの匿名さん24/09/27(金) 20:29:58
羂索の心配してたら我が身にも危機が迫ってた宿儺に悲しき現在ww
- 165二次元好きの匿名さん24/09/28(土) 07:33:41
ほ
- 166二次元好きの匿名さん24/09/28(土) 14:07:48
この世界での天元様の天敵ってやっぱり羂索と魂の共鳴した実績のある髙羽なのかな?
天元ネットワークで居所を把握して2人をエンカウントさせないようにしてそう…
前世でしっかり(羂索が)ヘイト貯めた五条も警戒対象かな?前世での夏油ボディの重宝具合からワンチャン夏油も…?大変だ天元様、ライバルいっぱいだ!! - 167124/09/28(土) 21:59:14
裏梅を呼び出そうと取り出したスマホの通知を見て舌を打つ。何百という数のメッセージと何度か掛かってきていたらしい電話。全て天元からである。万でもここまではないぞ、そう思いながらLINEを立ち上げると、見計らったかのように電話が入った。
出るか出ないか、寸の間迷ったものの、どうせここにいることはバレている。突撃してこないのは、ひとえに力では宿儺には勝てないからである。呪術のない世界であっても、恵まれた体格と運動能力の高さは健在であった。
「……なんだ」
『なんだとは随分な言葉だな』
苛立っている。声を聞いた瞬間にわかった。明らかに低く、焦燥のためか早口になっている。記憶にある限りでは聞いたことのない声音だ、少なくとも宿儺は。
かつてでもこうして内を曝け出してしまえば良かったものを。然すれば拗れることなく永遠を共にできたろうに。そう思うと同時に、これもまた生まれ変わりの果てに只の人と成ったのだと感慨深くさえある。
「俺は言ったはずだ。程々にしておけと。縛り付け囲い込めば、その分だけ逃げ出そうとするぞ、と」
『そうだな、今回のことは私の失策だ。少々事を急いてしまったし、あの子の土壇場での力を見誤っていた。もっとじっくり、時間をかけて、抵抗の余地さえないほどに、まるで自ら差し出すかの如くになるまで待ってから、羽を捥いでやるべきだった』
思わずスマホを耳から遠ざけた。此奴、全く話を聞いていない。俺の周りの奴らはどうしてこうも……と関係のないことへ思考が飛びそうになった宿儺へ、天元の鋭い声が飛ぶ。
『私はな、君があの子を路地裏へ連れ込む様を見ている。映像も残っているんだ』
「ハッ!俺を脅す気か?」
『そうだと言ったら?』
「随分と偉くなったものだなァ?」
ケヒッケヒケヒ、廊下に不気味な笑い声が響く。ーー沈黙。
「……この先はあれが決めること。貴様はそこで指を咥えて待っていろ」
ぶつりと断ち切る。
あれが逃げたいと言うなら手を貸してやらんでもなし。真正面からぶつかって思いの丈を洗いざらい知りたいと望むならそれもまた良し。どう転ぼうと、今の宿儺は友人として何かしらはしてやろうと思っている。
今度こそ裏梅とのトーク画面を開き、呼び出しのメッセージを打ち込むのであった。 - 168二次元好きの匿名さん24/09/29(日) 09:07:10
宿儺さん頼りになる〜〜
えこれって羂索は今現在中学生?
もしそうなら一番最初の「子供扱いしないでよ」に子供だろ!って言わずに「恋人扱いしてるんだよ」って言ってのける天元様すごすぎ - 169二次元好きの匿名さん24/09/29(日) 11:20:45
高羽とあったらやばそ
- 170二次元好きの匿名さん24/09/29(日) 11:46:59
今は確か高校生じゃなかったっけ?入学してまだ半年経って無いってあったよ
- 171二次元好きの匿名さん24/09/29(日) 13:19:47
中学生に手を出す天元様っていったい
- 172二次元好きの匿名さん24/09/29(日) 19:34:41
保守
- 173二次元好きの匿名さん24/09/29(日) 20:13:36
天元様って羂索にどの程度手ぇ出してたんだろ?自分が施すならペニバンとかディルドは許容範囲?それとも擬似的でも男は知らなくて良い派?
- 174124/09/29(日) 21:42:30
小瓶の中身を流しへ捨て、解毒薬の入っていた瓶と共に空き瓶が固められている場所へ置く。そろそろ効いてきた頃か、と階段へ足を掛ける。と、インターホンが鳴り響いた。ちらりと見たスマホには裏梅からの通知が表示されていて、相変わらずの忠臣ぶりに自然頬が緩んだ。
足音を立てて階段を降りてきた万を手で制し、自ら玄関へ赴く。天元だったらどうするの、珍しく真っ当に心配しているらしい万の言葉を無視して鍵を開けた。
「宿儺様。お待たせを致しました」
「良い」
我が家の如く宿儺が招き入れた相手を見て万は不満そうに頬を膨らませた。
「手短に話す」
そう前置きして簡潔に事情を話せば、裏梅の麗しい顔が険しいものへ変わっていく。階段を上り、部屋の前。
「解毒薬は効いてきたか?」
「効いてるわ。今は寝てるはずよ」
「解毒薬?何故万が」
「俺に盛ろうと考えていたらしい」
途端青筋を立てた裏梅が背後の万へ振り被る。さっと避けた万は今そんなことしてる場合じゃないでしょ!と珍しく正論を言った。二回も珍しくが続くので、明日は雪でも降るやもしれんなと宿儺は思った。 - 175二次元好きの匿名さん24/09/30(月) 07:37:06
ラブラブ天羂が好きな身としてはすれ違い解消してイチャラブが見たいですね…
天元も羂索もこれを機に言いたいこと全部言ってほしい でも元通り仲良くはしてほしい 頼む - 176二次元好きの匿名さん24/09/30(月) 13:44:59
本誌最終回のおかげで転生後ちょっと丸くなった宿儺が公式になってくれて嬉しい…
- 177二次元好きの匿名さん24/09/30(月) 13:46:33
ちょっとメリバを期待している自分がいる
- 178二次元好きの匿名さん24/09/30(月) 16:44:58
ちゃんと話し合ってぶつかり合って和解するんだ…たまには横から髙羽にカッ浚われない幸せ♡百合ENDを迎えてくれ!!
- 179二次元好きの匿名さん24/09/30(月) 22:17:52
保守
- 180124/09/30(月) 22:18:04
ずっと、呪術のない世界に強大な力も異形な肉体も持たず転生して普通の人として育ったらたとえ呪いの王として生きた記憶を持っていたとしても近しい人間を友と認め気遣えるくらい柔らかくなるんじゃないかと思ってずっと書いていたので、最終話で公式様から肯定されたような気がしてもう感無量です
私の解釈は間違ってなかったんだな、って……
裏梅はあの感じ見ると女の子だったみたいで外してしまったけどそこは転生で性別が変わったんだなと広い心で読んでもらえると嬉しいです
自語りすみません - 181二次元好きの匿名さん24/10/01(火) 07:52:01
スレ主さんの書く宿儺好きなんだ…
裏梅は今もどちありと思ってるよ - 182二次元好きの匿名さん24/10/01(火) 12:35:02
スレ主の世話焼き宿儺好きだよ!裏梅もまだ性別確定してないし、カッシー案件よ
- 183二次元好きの匿名さん24/10/01(火) 20:48:48
想像の余地残しといてもいいじゃないですか
- 184二次元好きの匿名さん24/10/01(火) 21:30:15
よきスレ
- 185124/10/02(水) 01:59:20
ありがとうございます……!!!
大筋の流れと結末は決まっているので、遅筆ではありますがもう暫くお付き合いくださいませ。 - 186124/10/02(水) 02:18:35
知らない天井だった。ぼやけた視界の向こう、クリーム色が広がっている。天元の家は古き良き木造建築であるため、瞼を開けば木目が飛び込んでくるはずだった。
気怠い体を起こして見回せば、なるほど、誰の部屋か簡単に推察できた。そこから眠りに就く前の記憶を遡る。そうだ、媚薬を盛られていて、宿儺が万の家まで連れて来てくれたんだ。宿儺にも万にもお礼をしないとな。未だぼんやりと居座る靄を振り払うように首を振る。
やがてがちゃりと音を立てて扉が開く。顔を覗かせたのは宿儺で、随分と顔を顰めている。今回は完全に巻き込まれた被害者であるので当然の表情である。
「起きているではないか」
「さっきまでは寝てたのよ」
続いて宿儺が呼んだのか裏梅が、更に頬を膨らませた万が入ってくる。声をかける間もなく宿儺の大きな掌が迫り、ぴとりと額に張り付いた。
「熱はないな。触れても問題ない。解毒薬がしっかり効いたようだな」
その言葉で宿儺と万に晒した痴態を鮮明に思い出し、ぶわりと顔が火を吹いた。そんな反応に怖い顔をしていた宿儺がふっと表情を緩めてクツクツと喉で笑う。そこに性的な色はなく、ただ幼馴染みを揶揄うだけの響きがあった。それでもやっぱり言葉で揶揄われた方がマシだ、そう思いながら助けられた身であるためなんにも言えない羂索である。
万が謎にメルヘンなクッションを持ち出して二人に渡す。三人が腰を下ろし、ふっと満ちる沈黙。口火を切ったのは、羂索だった。
「……宿儺、万、それに裏梅も。心配かけたよね、ごめん。ありがとう」
へにゃりと眉尻を下げて心底申し訳なさそうにするので、三人は思わず顔を見合わせた。今世でもまた長い付き合いにはなるし、謝られることも感謝されることもあった。しかしここまでしおらしい態度は初めてかもしれない。あの羂索が、そう思いながら、やはり記憶がない以上は魂が、根本が、かつてと同じであっても、その上に形成されたものは違うのだと改めて実感する。
「貴様の責ではないだろう」
「そうよ。天元のせいじゃないの!」
「全くだ」
三人の言葉に羂索は一瞬頬を緩ませたが、すぐにきゅっと引き締まった。言い難そうに口をもごもごとさせた後、意を決したようにすっと息を吸う。
「その、天元のことなんだけど、」 - 187124/10/02(水) 02:19:23
ーー翌夕。羂索は、人通りのない隣街の公園に来ていた。サシで天元と話すためである。
家は完全に天元の領域であるし、それは街も同じ。宿儺曰く、"まだ"街の外までは範囲を広めてはいないはずだとのことなので、対等でいるためにここまで呼び出したのである。
なんだかんだで心配してくれていた三人は近くのカフェで待っていてもらっている。走れば女子高生の足でも二、三分程度の店だ。なにかあればそこに駆け込むつもりだった。三人は渋っていたが、これは私と天元の問題だから、と押し切った。
宿儺に持たされた彼のスマホを握り締めて待つ。自身のスマホには盗聴アプリが仕込まれていたことを、羂索は宿儺に教えられていた。そのおかげで理解できた、今まで良すぎるほどに察しが良かった理由が。
鴉が鳴いている。沈みゆく日が辺りを橙に染め上げて、白い花を咲かせているクレマチスさえ今やオレンジの花と化していた。
やがて見覚えのある車が公園横の空き地へ入る。開かれたドアから、白髪の少し草臥れた、しかしそれさえ頽廃的な美しさに拍車を掛けるばかりの女が降り立った。一切の迷いなく公園の入口へ向かってくる。
ごくりと唾を飲み込んだ羂索の前で、女は立ち止まった。そうして、菩薩を思わせる笑みを浮かべて差し出される掌。
「帰ろうか、羂索」 - 188二次元好きの匿名さん24/10/02(水) 07:13:32
あの...全然反省してないんですけどこの人...
- 189二次元好きの匿名さん24/10/02(水) 17:04:42
この人のSS花がよく出てきててすごい好き
- 190二次元好きの匿名さん24/10/02(水) 23:37:19
どうなるかな…仲直り出来るかな?一旦、ちょっとお互いに距離を置くのかな
- 191二次元好きの匿名さん24/10/03(木) 03:52:06
保守
- 192二次元好きの匿名さん24/10/03(木) 08:10:16
どうなるんだ…(((;゚Д゚)))ドキドキ
- 193二次元好きの匿名さん24/10/03(木) 19:59:55
ほしゅ
- 194二次元好きの匿名さん24/10/03(木) 21:09:52
クレマチス…「精神の美」「旅の喜び」「策略」か、羂索の一人立ちENDか天元の策略勝ちENDか、二人とも精神的成長ENDか…どうなるか分からんな
- 195124/10/03(木) 22:22:45