- 1スレ主24/09/11(水) 19:03:13
- 2スレ主24/09/11(水) 19:04:22
- 3スレ主24/09/11(水) 19:05:03
- 4スレ主24/09/11(水) 19:06:00
- 5スレ主24/09/11(水) 19:06:37
- 6スレ主24/09/11(水) 19:07:09
- 7スレ主24/09/11(水) 19:33:49
https://bbs.animanch.com/storage/img/3746516/943
https://bbs.animanch.com/storage/img/3746516/944
ウィル・ピラタ
13歳
162㎝
ナチュラル
本スレの主人公。
ビルドダイバーズ系の世界からC.E.に転移してきた後ヤマト家の居候になり、戦争に巻き込まれる。
自由のシュラよりも高い操縦技術と、ガロード並みの精神力でC.E.を逞しく生き抜いている。
愛機はガンダムAGE-2マグナムに、[スターフォックス]シリーズの
主役戦闘機アーウィンの機能を持たせたAGE-2アーウィン。
現在三人のヒロインと関係を持っており、纏めて潰れたカエルにできる絶倫&ベッドヤクザ。
股間のアグニのサイズは20+dice1d20=2 (2)
まだ成長dice1d2
1.する
2.しない
- 8二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 19:35:09
このレスは削除されています
- 9スレ主24/09/11(水) 19:36:17
- 10スレ主24/09/11(水) 19:42:14
https://bbs.animanch.com/storage/img/3746516/949
キラ・ヤマト
16歳
165㎝
コーディネーター
最初にウィルと関係を持ったヒロイン。
C.E.にやってきて路頭に迷っていたウィルを放っておけず自宅に連れてきたのが切っ掛けで義姉として仲を深める。
ウィルが精神安定剤になっており、抱き着いて匂いを嗅いだり、抱き枕にして一緒に寝ている。
バストサイズはD。まだ成長dice1d2=1 (1)
1.する
2.しない
- 11スレ主24/09/11(水) 19:50:00
- 12スレ主24/09/11(水) 19:57:44
- 13スレ主24/09/11(水) 20:03:57
- 14スレ主24/09/11(水) 20:08:46
- 15スレ主24/09/11(水) 20:15:03
- 16スレ主24/09/11(水) 20:21:05
- 17二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 20:30:28
このレスは削除されています
- 18二次元好きの匿名さん24/09/11(水) 22:23:39
保守
- 19二次元好きの匿名さん24/09/12(木) 05:07:52
このレスは削除されています
- 20スレ主24/09/12(木) 10:17:16
キラはラクスとバルドフェルドと共に乗り込んだ車で、過ぎ行くプラントの景色を眺めていた。
一体、自分たちはどこに向かっているのだろうか。ラクスが言うには、
キラに損はさせないという話であったがーー確証が得られないキラはやきもきした気持ちのままで。
そんなキラを乗せた一行の車は、とあるビルの一角で緩やかに停止する。ふと外を見れば、
何人かのザフト兵士の姿が見えて、キラは咄嗟に窓から身を伏せて隠れるような仕草をした。
そんなキラにお構いなく、ラクスは扉を開け放って笑顔を向ける。
ラクス「こんにちは。さぁ、どうぞ」
ラクスに導かれるまま、乗り込んできたザフト兵士。呆気に取られたが、
その兵士の顔を見た途端、キラは目を見開いた。
キラ「ウィル!?」
ウィル「キラねぇ、元気だったか?」
キラ「元気だったかって……」
まるでついこないだ会ったような態度を見せるウィルに困惑していると、
隣に座っていたバルドフェルドが意地悪そうな笑みを浮かべてウィルに話しかけた。
バルトフェルド「たしかに、君にもらったものは大いに役だったよ。
いけ好かない奴だったが、お前さんを匿うとは大した奴だ」
ウィル「政治ごとは興味がないから、あとの尻拭いはまかせる、だそうだ」
そう言って肩をすくめるウィルに、バルドフェルドは愉快そうに笑い声を上げた。
バルトフェルド「はっはっは!こりゃあ手厳しいな」
そう会話が盛り上がったところで、ラクスは真剣な表情をしたまま、口元に人差し指を当てた。
ラクス「静かに。今はこちらに集中を」 - 21スレ主24/09/12(木) 10:17:45
ラクスたちが到着したのはーーザフトの設計局だ。
ザフト兵に連れられるまま、敷地内から施設の中へと入っていく。
エレベーターで深く、深く降りていく。そしてたどり着いた場所は、モビルスーツを格納するハンガーだった。
キラ「これはーーアーウィンとガンダム…?」
ラクス「ちょっと違いますわね。これはZGMF-X10A、コードネームはフリーダム。
でも、ガンダムの方が強そうでいいですわね。
アーウィンは研究名目で運び込まれましたが、プロテクトが強すぎてお手上げだそうですわ」
キラは機体を見上げたまま、ラクスの言葉を聞いていく。
フリーダムと呼ばれた方は、どこかストライクを彷彿とさせるシルエットと、大きな背中の翼が特徴的で、
まるで機械仕掛けの天使の様な印象を感じられた。 - 22スレ主24/09/12(木) 10:18:17
ラクス「奪取した地球軍のモビルスーツの性能を取り込み、
ザラ新議長の下、開発されたザフト軍の最新鋭の機体だそうですわ」
そう説明するラクスに、キラは振り返って視線を向ける。
キラ「これを、何故私達に?」
ラクス「今の貴方達には、必要な力と思いましたの」
即答するラクスが、今度はフリーダムとアーウィンを見上げた。
ラクス「想いだけでも…力だけでも駄目なのです。
だから…お二人の願いに、行きたい場所に、望む場所に、これは不要ですか?」
想いだけでも。
戦いなんて嫌だ。けれど戦わなければ大切なものは守れない。
力だけでも。
守るために手に入れた強大な力。けれど、その力で多くの人を傷つけ、悲しませる。
だから、どちらかだけではダメだし、両方を持っていてもまだ足りない。
その先にある、もっと大切なものを、自分たちは見つけなければならないーー。 - 23スレ主24/09/12(木) 10:18:53
ウィル「キラねぇ」
ハッとして、キラはラリーを見た。彼の目はいつもと変わらないままで、
迷いもなく、淀みもない。ウィルはいつもキラを守り、行く道を真っ直ぐに指し示してくれた。
だからーー。
ウィル「行こう。俺たちの使命を果たすために」
生き残る。生きて、使命を果たす。
この戦争を、地球とプラントを、ナチュラルとコーディネーターを、
お互いを滅ぼし切る前に止める。この戦争を終わらせるためーー。
そのときだった。ダ扉が蹴破られ、そこから不躾な足音が響き渡ったのは。
全員がさっと音の目を向け、驚きに跳ね上がる。
そこから洗練された動きで一気に駆け寄ってきたのは、武装した数名の男達だった。
見慣れない黒色のノーマルスーツを着用し、暗視ゴーグルまで着用した大仰な装備。
男達はステージまで一気ににじり寄ると、ウィル達を包囲するようにしてその動きを止めた。
男達が構えている銃口は、ラクスへと向けられている。
暗殺用に仕向けられた迷彩装備、訓練が徹底されたであろう無駄のない動き
──それらから判断するに、現れた者共は明確に素人ではない。
その男と面識があるのか、ラクスはその面妖を認めた途端
──彼女にしては極めて珍しく──たしかな嫌悪をその表情に滲ませていた。
それは時間にしてほんの一瞬、瞬きする程の時間も無かった。ラクスの方もすぐに
取り繕って表情を隠してしまったが、極めて少女らしい人間的で生理的な拒否感に違いなかった。 - 24スレ主24/09/12(木) 10:19:48
アッシュグレーの短い髪、顔には宗教的にも思える動物模様のタトゥーが彫られ、
野太い眉毛はコブラのような蜷局を巻いている。少年向けの漫画作品に登場する
陳腐な悪役そのままと云った風な風貌は、率直に云って気味が悪いと云えた。
ラクス「ザフト軍特務隊〝FAITHフェイス〟所属、アッシュ・グレイさんですね」
アッシュ「憶えてらっしゃるとは、光栄ですなぁ。国家反逆罪の凶悪犯、ラクス・クラインさんよう」
ラクスは心中、この男にだけは凶悪犯と呼ばれたくないと思った。
目の前にいる男は、そういう男だったのだ。誰何するウィルとキラに、ラクスが密かに耳を打つ。
ラクス「ザフト特殊部隊の長。『合法的に殺人ができる』──たったそれだけの理由から
パイロットに志願した危険人物です。生粋の殺人快楽主義者……とでも云うのでしょうか」
酷い云われようだが、大方事実である。
そこから火蓋が切って落とされ、無遠慮な銃声がパーティホールを激震させた。
ザラの配下とクラインの配下、二分化された〝プラント〟の派閥が激しく対立し銃撃戦を交わす。
ウィルもまたラクスの護衛達の援護に回るが、彼女が援護するまでもなく、
地理的不利を被っていたアッシュの部下達はほとんど一方的に打ち斃されていった。 - 25スレ主24/09/12(木) 10:20:08
しばらくすると、その場は静寂に包み込まれた。パトリックの配下で、
その場に立っている者はいなくなっていたのだ。クライン派の兵士達は安堵し、
構えた銃をおもむろに取り下げ始める。その中のひとり、
赤髪の青年マーチン・ダコスタが、安堵のため息を漏らした。
ダコスタ「よし、終わったな」
ダコスタは銃を下ろし、退避していたラクスの許まで向かい始める。
ウィル「……!?」
けれどウィルは、そのとき、やけに妙──というより、嫌な胸騒ぎを感じていた。
──なんだ……?電撃のような刺激が頭の中を駆ける。ウィル自身の立っている、
あるいは見ている場所ではない〝どこか・・・〟──別の空間を空から俯瞰しているような、
気配を通じて把握したような感覚に囚われたのだ。
ウィル「アイツ、は──?」
不可思議な感覚に裏付けるように、ウィルはパーティホールを見回した。
そして、射殺された敵兵の数があまりに少ないことを理解したとき、
彼は先の感覚が、紛いものの類ではないと確信する。 - 26スレ主24/09/12(木) 12:06:09
次の瞬間、凄まじい爆発音が轟き渡った。
大量の火薬が詰め込まれた噴進弾が撃ち込まれたのだろう。
ウィル「モビルスーツまで用意してたのかよ」
聞き捨てならない予見に、ラクスは愕然とするしかない。彼にはこうなることが判っていたのか?
撃ち倒した男達はあれで全員ではなく、外にも別動隊がいることを──?
──そう云えば、アッシュの姿を見なかった……。
今になって、ラクスは思い知る。歯噛みしながら、悔いたような表情を浮かべる彼女に、しかし、
ウィルはそっと手を差し伸べた。この場にあっては何よりも頼もしいその手に気付いて、
ラクスはハッと顔を上げる。
ウィル「何をするつもりかは知らないがな、お前を死なせたくねぇ」
気が付くと煙幕が立ち込める。だが火気を含んだ黒煙とは違う。
視覚や嗅覚、強烈なまでに五感を刺激してくるその煙は──催涙ガスだ。
ウィル「キラねぇ!フリーダムに!」
キラ「分かった」
ウィルは小慣れたようにシート後方の収納スペースからパイロットスーツを掴み取り、
ぐいとそれとラクスに手渡す。
ウィル「シートの後ろに」
ラクス「……!わかりました」 - 27スレ主24/09/12(木) 12:09:11
- 28スレ主24/09/12(木) 12:14:47
アッシュ・グレイは銃撃戦には参戦せず、思わぬ伏兵がいると判った時点で
屋内の部下達を見捨て、そそくさと退散していた。彼は賢明にして狡猾な男でもあり、
あらかじめ外で待機させていた軍用ジープに乗り込んでいたのだ。
補助席には彼の身長ほどある無反動砲が準備され、
彼はにやりと笑ったのち、その大きく重い砲身を肩に抱え上げた。
まずは圧倒的な砲撃を撃ち込んでみせる。ピュウと高い音を鳴らした後、豪快な爆発が巻き起こり、
辺りは一気に火の海と化した。ラクスが用意した伏兵達を、これにて一網打尽にすることができただろう。
アッシュ「うっひゃー!たまんねェなァ、オイィ!」
破壊衝動を満たしたことで満悦するアッシュは、ついで部下達に指示を出す。
アッシュ「催涙弾を投げ込め!生意気な小娘共を、屋敷の中から炙り出せ!」
確実に目標を仕留めることができるなら、手段は問わない。
催涙弾を屋敷の中に投げ込んだ後、アッシュはやがて、待機させていた部隊からの報告を耳にする。
どうやら中にあったモビルスーツで脱出したようだと。
アッシュ「モビルスーツ隊を前に出せ! 外に待機中の奴らにも打電しろ!」
──もう容赦はしない!絶対に抹殺してやる!
そのときのアッシュの眼は、まるで餓えた野獣のようだった。 - 29スレ主24/09/12(木) 19:31:29
闇色の空へ飛翔したフリーダムとアーウィンは、展開するザフトの新型モビルスーツ部隊と対峙した。
ZGMF-600〝ゲイツ〟──
ビームライフルとビームサーベルを携行する〝ジン〟の後継主力機だ。
地球軍から奪取した技術をフィードバックした高性能汎用機。
これに乗り込むのはザフトの特殊部隊だが、モビルスーツが舞い上がるのを認めていた。
『ラクス・クラインは間違いなく〝あそこ〟にいる!仕留めるぞ!』
通信にて心を通わせた特殊部隊員は、そこからビームライフルの照準を固定した。
しかしそんな兵達の中にも、相手の機種の圧倒的な威容を前に、云い知れぬプレッシャーを憶える者もいた。
ウィル「コロニー内で撃つんじゃねぇ!」
ザフトの量産機は、これまでは実銃と実剣しか持ってこなかったはずだが、目下の〝ゲイツ〟
という機種はまるで新しい玩具でも手に入れたかのようにビームライフルを嬉々として連射していた。
その怒りをぶつけるように、アーウィンはスラッシュハーケンを、フリーダムはビームサーベルを正確に
コックピットに当てていく。
ラクス「……!宇宙へ出ましょう。やはり、このような場所での戦闘は望ましくありませんわ」
ノーマルスーツに身を包み、シートに傍らに身を折っていたラクスが助言する。
ウィルは頷き、そこから機体を反転させた。抜き打ちにフットペダルを強く踏み込み、
展開する敵部隊を振り切るようにプラントの天頂──はるか高々度へ飛び去って行く。 - 30スレ主24/09/12(木) 22:05:39
『目標を逃がすな、撃ち落とせ!』
機動性でも強化されたゲイツも、慌てて後を追った。だがやはり新型のフリーダムと速度特化型の
アーウィンに追いつけるはずもなく、ザフト兵達は連携しつつ三機分のビームライフルを苦し紛れに斉射し続けた。
空中を通り過ぎたビームは、これを避けた二機を横切って最果てにあるプラントの内壁、
分厚い自己修復ガラスへ着弾する。そのガラスは、ある程度の熱量にも耐久できるよう設計されているが、
ビームの連射を受け切るほどのものではない。溶け落ちてしまえば空気が漏れ、
そこは大きな宇宙空間への入り口になるだろう。それを見たキラの顔色が変わった。
──プラントの全てを壊す気か、こいつらは!?
かつてのトラウマが刺激され、素早く機体を反転させていた。
急に回頭し、こちらに向かって来る二機を認め、男達は会心の笑みを浮かべる。
狙い通りだ、と云わんばかりの下衆な笑みを。
『両脇から挟み込む!散開しろ!』
『了解!』
──隙だらけだ!
確信と共に、二機のゲイツが挟撃してかかる。
しかしアーウィンの両腕から伸びた長大なビーム刃がゲイツを両断した。 - 31スレ主24/09/12(木) 22:06:57
──これで、終わりではない……!
安心している暇はなかった。襲ってきた連中は、もっと大勢いた。
何かしらの増援が来ることを予感したウィル達は、そのまま機体ごと宇宙への脱出を図った。
燦然と輝く星屑の〝海〟が、彼女達を歓迎する。
だが、殆ど同時にその瞬間、遠方にきらりと何かが反射したように映った。ウィルは反射的に対応し、
機体を半身にして急速上昇させた。すると案の定、下方より迫っていた〝何か〟が、それまで
アーウィンが浮かんでいた空間をひと凪ぎにした。
ウィル「なんだ!?」
ラクス「あれは……!?」
黒く、そして禍々しい機体──
地球軍から奪取した〝イージス〟とそっくりの形状をしたモビルアーマーが、
突き抜けるような高速で宇宙を駆け巡っている。ダークブラックに塗装された四本の鋭利な鉤爪
──それらを自在に操り、巧みな重心移動によって方向転換を繰り返しながら、
そいつは瞬く間にまたもアーウィンとフリーダムを強襲する。
その見慣れない風貌を認めた途端、ウィルは歯噛みする。
ウィル「新型か──!」 - 32スレ主24/09/13(金) 06:53:16
形状は〝イージス〟とそっくりと云った。だが違う。少なくとも、その全長は〝イージス〟の三倍近くある。
ダークブラックとバイオレットのツートーン。純粋なる闇から醸成されたような暗憺たるカラーリングは、
それ自体が宇宙空間では迷彩のように機能して、深淵的な黒い背景に溶け込んで
輪郭や全貌を捉え切ることすら難しく感じさせる。その大きすぎる、規格のサイズ感も相まって。
アッシュ「いいな、いいな!見苦しくあがいてみせろォ!」
ZGMF-X11A〝リジェネレイト〟──
パイロットはアッシュ・グレイ。パトリック・ザラが開発を命じたファーストステージシリーズのうち
三機目に相当する機体であり、大西洋連邦から奪取した〝イージス〟の形状を参考に開発が進められた。
様々な特殊機構を実験的に搭載したことにより、機体の規格が已むを得ず大型化した経緯を持つ。
見ると、巨大な〝リジェネイレイト〟の後方、増援であろう複数のジン・ハイマニューバやゲイツ
の混成部隊が確認できた。おおかた退避した後、そそくさとモビルスーツに乗り込んだMS小隊と見える。
敵部隊はアーウィンとフリーダムを一斉包囲し、ひとえにビームライフルを構え出した。
多勢に無勢とはこのことであるが、そんな部下達をアッシュは高らかに手で制した。
アッシュ「こいつらはぁオレが殺戮する!お前達は手ェ出すな!」
アッシュは、自機の長大な両腕と両脚の先端からロングビームサーベルを出力し、迎撃の構えを取ってみせた。
そうして宇宙空間に同時に描かれる、四本の鋭利な〝光の弧〟──
その想定以上の雄大さ、迅速さに、ウィルは直感的な戦慄を憶えた。彼は咄嗟に機体に制動を掛けさせ、
結果的にその判断……いや直感は賢明なものと云えた。そうしていなければ、
今頃は鋭利な斬撃の餌食となっていたからだ。目の前の敵は、ただ図体が巨大なだけなのではない──
キラ「疾い……!?そんなっ、あんなにも大きいのに!」 - 33スレ主24/09/13(金) 18:00:13
元より宇宙空間・無重力下での運用を想定しているリジェネレイトは、
全身各所に配備されたスラスターによって高度な姿勢制御を可能としており、
その巨体と重量を補って余りある機動性を獲得していたのだ。
機体の特性自体も、砲撃戦よりは白兵戦に主軸を置いているのだろうか? なんにせよ、
機体の運動性だけをみれば、そいつはそいつと比べて二回りも小柄なフリーダムにも劣らない
──いや、変形機構を有する分、あるいはフリーダム以上に高い機動性を有しているかも知れない。
ラクス「大きい機種の方が、素早いなどと──?そんな話があるのですか!?」
ラクスは驚くが、なるほど、核エンジンを搭載するモビルスーツであり、
在来機種よりも遥かに画期的な機体性能を持っているということか。
ウィル(性能差は、ほぼ無いだろうな)
ウィルそのままドッツライフルを構え、リジェネレイトにビームを掃射する。
対するリジェネレイトもまた、咄嗟に掲げたロングビームライフルで反撃する。
宙域で衝突した光条同士が、真空中に真白い閃光を走らせた。 - 34スレ主24/09/13(金) 20:33:58
アーウィンとフリーダムは容赦のない射撃をリジェネレイトに浴びせかけながら、
どうにかして距離を詰めて来ようとする大型敵機の巨大な影をいなし続けた。
その判断は、正しかった。圧倒的巨体に裏付けられたリジェネレイトの長大な四肢──
イージスのように四肢そのものを刃として叩きつけに来るロングビームサーベルは、
じつに広範囲をカバーしていた。
ウィル(──アレに近づくのは、自殺行為だ)
見る限り、リジェネレイトは格闘戦を得意とする一方、腰部備え付けのロング・ビームライフル以上に
射撃系の武装を持っていない。つまり、中・遠距離からの反撃能力に圧倒的に乏しいと云えた。
どのみち格闘戦で勝てる相手ではないのだから、ここは距離を開いて、射撃に徹するだけでいいのではないか。
アーウィンもフリーダムも射撃戦を得意とするなら、なおのこと。
フリーダムが全身の火器を一斉発射するハイマッハバーストを行うが、リジェネレイトは難なく躱す。
しかしその隙を付いて、アーウィンはスマートボムを眼前で爆発させる。
アッシュ「な、なんだとォ!?」
PS装甲で覆われたリジェネレイトに爆風そのものは通用しない。
しかし衝撃を防ぐことはできず、動きが止まる。
その隙を付いて、アーウィンとフリーダムはライフルで撃ち抜いた。
アッシュ「ぐぅおあああっ!?」
断末魔と共に、次の瞬間──リジェネレイトが爆散した。
奇妙──そう奇妙な、背部のバックパックだけを残して。
ラクスはそのとき、勝利を確信したが── - 35スレ主24/09/14(土) 04:22:20
アッシュからの通信は、そこで途切れたりはしなかった。
驚きに目を開くフレイの頭上、通信機には男の哄笑が響き続け、
それは、かの男がまだ生きている証拠だ。しかし、なぜ──?
──リジェネレイトは、跡形もなく爆散したはずなのに!
訝しむウィル達の前に、そのときジンの増援部隊が現れる。そのMSは数機がかりで見慣れない〝卵〟を
──いや、正確にはMS格納用のカプセルを運んでいた。大気圏突入の際に用いられる、
MS用の降下ポッドに酷似しているが……?
その瞬間、宇宙に放り投げられたカプセルが押し開き、その内部から〝四本脚の黒獣〟が産み落とされた。
それはさながら獣の孵化の瞬間だった。見届けたウィル達がそれぞれ露骨に微妙な顔になったが、
よく見れば、卵の中から現れたのは全く新しいリジェネレイトの本体パーツだ。
アッシュ「ハッハーッ!何度でも再生・・してみせろ!リジェネレイトォーーッ!!」
アッシュは爆散したリジェネレイトの背部バックパックを操縦し、これをたった今〝卵〟から
孵った新たなボディにドッキングさせた。
つまりリジェネレイトのコクピットは、一見すると本体のように思えるリジェネレイトの本体にはない。
所在しているのは、あくまでもそのバックパック──コア・ユニット内に秘匿されているのだ。
やっとの思いで爆散させたボディだが、これは何度でも交換可能なパーツのひとつに過ぎない。
増援部隊が運んできた〝卵〟から産み落とされる予備パーツが残っている限り、
本体をどれほど破壊しようが、アッシュ本人には文字通り痛くも痒くもないのである。
ウィル「在庫がある限り復活できるわけね」
ラクス「ゆえにリジェネレイト(再生)ですか」 - 36スレ主24/09/14(土) 13:12:59
ZGMF-X11Aリジェネレイト──
大西洋連邦から奪取したイージスと、ほぼ同一の構造をしたモビルスーツ。
実用化された可変機構をザフトにおいて初めて搭載した機種であり、独自のフレームをして、
実に三つ──高速巡航形態、強襲形態、人型機動形態──もの形態へと変態を遂げることが可能。
また、パイロットが搭乗するコクピッドは本体ではなく、単独航行能力を有する
コア・ユニットの内部に存在している。実際にウィルが騙されたように、
他に例を見ないこの画期的な機体構造は、初見の人間に対しまず間違いなく
急所──すなわちコクピッド──の所在を誤魔化す効果を持っているのだ。
あらゆる常識やコストを度外視した機体──リジェネレイトに関しては、四肢を持った人型部分などは
交換可能なパーツに過ぎず、この機体は、
そうして予備パーツの在庫がある限りは、何度だって再生を繰り返すことができる。
アッシュ「なかなかしぶといッ」
本当にその言葉を云いたいのはウィルであろうに、アッシュはさらに言葉を続けた。
アッシュ「──ラクス・クラインは戦況を攪乱させ、戦争を長引かせる!
その女は死人・・を増やそうとしているのだ!それをなぜ守ろうとする!?」
通信機から、呪うような叫びが聞こえる。
しかし、それよりも先にラクス当人が、彼女の中の信念を持って応答していた。
ラクス「死人を増やそうなどとは思っていません。
わたくしは──わたくし達は、この戦争を一日でも早く終わらせようと志しているのです!」 - 37スレ主24/09/14(土) 16:08:41
アッシュ「だったらザフトに就けば良い!アンタもコーディネイターなら、
コーディネイターのためになることをやれや!それもプラントの歌姫なら、
なおのことプラントのために活動するのが当然だろうがぁ!」
ナチュラルを殺戮すれば、それで戦争は終わる。
確信を叫びながら、アッシュはロングビームライフルを放つ。
アーウィンは、ローリングシールドでこれを弾き飛ばした。
急回転するコクピッド内で、それでもラクスは、凛とした真っ直ぐな声色を貫いた。
ラクス「国の間にも、人の間にも制約というものが存在します。
それは各々の平和を維持する上で必要なことです。
ですが、それはときに人を銘々の都合に縛り付け、人の内なる自由な意志と行動を阻害します」
人類が人類として辿り着くべき未来のためにやるべきことは、
決して、ナチュラルの殲滅などではない。彼女は力強く説いた。
ラクス「本来ならば阻止できることも、人は弱く、己の立場ゆえに見過ごしてしまうことだってある
……ですからどこにも属さぬわたくし達が必要となってくるのです。
わたくし達ならば、世界が間違った方向に進むことを止めることもできます!」 - 38スレ主24/09/14(土) 18:17:01
すかさずアーウィンとフリーダムが反撃に出る。流星のようにリジェネレイトへと飛び込み、
駆け抜けざま、尖鋭な肩先の装甲を切りつけた。アッシュは慌てて機体を振り返らせ、反転させた。
アッシュ「──結構!だが、自分で自分を崇高だと勘違いした無法者共が、
連中の信念とやらのために政治に武力を持ち込む! 世間じゃそれを、テロイズムっていうんだぜ!」
ラクス「今のプラントのためにも、必要なことなのです!」
アッシュ「立場を弁えなさいよ!アンタが奪ったフリーダムのせいで奪われた命に泣く連中が
プラントにあるのに、共に嘆きもしない、癒しを与えもしないアンタが
プラントの歌姫ぶるんじゃないの!?そんな自己陶酔で戦争が終わるなら世話ないわ!」
鮮やかにMA形態へ移行後、鉤爪でアーウィンへと襲い掛かる。
巧みな重心移動、そして目を見張る高速飛行による突貫を、アーウィンはすれすれのところで回避した。
ラクス「あなた自身の快楽のため、戦争や軍隊を手段に
しているあなたには、理解してはもらえないのでしょう……!?」
アッシュ「オレの殺しの趣味は、あくまで個人的なものだ。
手前らの利益のため戦争を引き起こす連中に比べれば、なまぬるいもんさ」
アッシュ・グレイが戦争に求めるものはひとつだ。それは「より多くを殺戮する」こと
──戦時下において、ザフトはプラントの技術が結集する場所であり、
次々と強力な武器が開発される組織でもある。
だからこそ、彼はプラントでパイロットをやっているのだ。
より強力な兵器を以て、より大勢の殺戮を行う──ただそれだけのために。
モニター越しに映るアッシュは、ラクスから視線を外した。餓えたような視線は、
彼女の傍らに坐す対戦者当人、ウィルとキラへと向けられた。 - 39スレ主24/09/14(土) 21:25:37
アッシュ「そんな女を『守る』価値が本当にあるのか?
いたずらに武力をかざし、お前達の戦争を引っ掻き回そうとする、そんな女を?」
問われ、キラは言葉を噤む。
──もしかしたら、ラクスだって間違っているのかもしれない。
──いや、間違うことだってあるのだろう。
どれだけ聖女のように思えても、ラクスだってひとりの人間だ。どこまでいっても、
どれだけ高度な遺伝子調整を重ねても、人間が神になることはあり得ない。
だからウィルとキラは、自分で正しいと思えたことをするだけだ。誰かに心中するのではなく、
共感を憶えた者の志に自分の力を貸す。今はそれしかできなくても──きっと、いつかは。
アッシュ「ナチュラル共を滅ぼせば、とりあえず戦争は終わったんだぜ?」
キラ「ナチュラルもコーディネイターも同じ人間だ……!
みんな泣いて、みんな笑う──違いなんてないから、きっと分かり合える」
アッシュ「他に道があるか、ええ?その他に道があるって思う考え方
──そんな無責任な理想論が戦争を長引かす元凶なんだって、わかるんだよ!」
それは意図せず両陣営の人間と係わってきたからわかる。
地球軍でもザフトでも、そこにいるのは同じ人間だった。
地球でも宇宙でも、そこで暮らしているのはみんな同じ人間だったのだ。
しかし、アッシュはこれを高らかに笑い飛ばす。──ナチュラルもコーディネイターも同じ……?
アッシュ「違うな──!違うから、戦争ドンパチやってんだ!」
ナチュラルとコーディネイター。かつて異なる人種との融和の道を
模索する中で、いつか生まれた軋轢こそが戦争に発展した。
思想、宗教、人種──異なる立場に置かれた者同士が相容れることは、人の世において絶対にあり得ない。 - 40スレ主24/09/14(土) 21:26:39
アッシュ「パトリック・ザラの云う通り、コーディネイターは進化した種なのだ!
俺達のような選ばれた人間コーディネイターには、
過去の繁栄と地球上に取り残されたナチュラル共を間引く権利がある!」
ウィル「権利?何が!お前がコーディネイターなのは、お前が偉いからじゃない!」
アッシュ「うッ……!?」
それは本当に当たり前のことで、それゆえにアッシュは反論することができなかったという。
心の動きが、機体の動きにも反映されたらしい。アッシュが言葉を失うと同時に、僅かにリジェネレイト
の動きが鈍った。その一瞬を見逃さず、ウィルはドッツライフルで敵機の右脚を腿口から吹き飛ばした。
ウィル「ただ恵まれただけとも気付かずに、つけ上がった男は!」
アッシュ「うるせぇぇぇぇっ!!」
激高したリジェネレイトがロングビームライフルを応射する。
アーウィンとフリーダムは機体を回頭させ、光条を掻い潜った。
アッシュ「あの男は知らないのです。真のコーディネイターとは、
人と人、そして地球と宇宙を紡ぐ〝調停者〟であることを」
真のコーディネイター。それは調整された者ではなく、調停する者。
──現在と未来を紡ぐ、時代の紡ぎ手のことを指す。
遺伝子操作による様々な希望を見込まれ、実際に宇宙へと上がって来たコーディネイターたる
先駆者達には、本来は人類の〝祈り〟や〝願い〟が託されていた。……託されていた筈だった。 - 41スレ主24/09/14(土) 21:27:18
- 42スレ主24/09/15(日) 04:18:02
ハイマッハバーストとギロチンバーストをリジェネレイトへ────ではなく、
それまで観衆のようにウィル達を俯瞰し、その撃墜を待っていたであろうジンやゲイツ
──ザフトのモビルスーツ部隊へと浴びせかけ殲滅あいた。これを目撃したアッシュの顔色が変わる。
アッシュ「て、てめぇらぁ!?」
ウィル「さっきから、邪魔……!」
強かな逆撃を被った彼らとて、コーディネイターの中の特殊精鋭部隊である。
しかし、そのような肩書も何の価値もない。彼らは為す術もなく、自身の部下達はおろか、
彼らが大切そうに保管していたリジェネレイトの予備パーツすら破壊し尽くしてゆく。
アッシュは激怒と共に何とか食い止めようとした。しかし巧みな連携を前になす術が無い。
激しく動揺する彼であったが、その間に彼の注意から逸れていたアーウィン本体の急接近を許していた。
両手に光刃を抜き放ちながら、視界の外からアッシュへと突撃する!
アッシュ「──ちぃっ!」
斬撃をかわし、大きく後退したリジェネレイトの機体は次の瞬間、ふいに陽炎のように揺らいで宇宙へ消えた。
──ミラージュコロイドステルス……!?
その迷彩効果は、ニコルのブリッツでも確認された現象だ。なるほど、ザフトはやはり地球軍から奪取した
ブリッツの特性を、ファーストステージシリーズの中ではリジェネレイトに反映させたということか。
──正攻法では勝てない。そういう判断か。 - 43スレ主24/09/15(日) 14:29:24
アッシュ「ハッハー!無尽蔵に再生するだけが、この機体の取り柄だと思ったかよ!?」
一方的に部下達がやられている。
──ならば、こちらもまた一方的に攻撃してみせるまでだ!
アッシュは意図どおり、自身の姿を完全に闇に溶け込ませながら、ほとんど一方的に射撃を浴びせ続けた。
しかし物体が移動する事で影響を受ける宇宙塵の動きを観測する事で間接的に敵を捉えるシステムを
搭載したアーウィンならば、正確に位置を確認することなど容易。
おまけに半ば一方的に掃射される火線に対し、その発射角から敵の予測空間を割り出すのは
ウィルとキラにとって造作も無いこと。
アーウィンがスマートボムを、フリーダムがクスィフィアス・レール砲を放つ。
現在のリジェネレイトでは防ぐことは不可能だ。なぜならフェイズシフトと
ミラージュコロイドステルスは性質上、同時併用することが叶わず、
実弾を防ぎたい場合には必ずステルス機能をオフにしなければならない。
アッシュ「──何ッ!?」
思ったとおり、射線上にいたであろうリジェネレイトは即座にステルスを解除してフェイズシフトを展開、
その巨大すぎる黒い機影を現わした。両腕で全身を抱え、放たれた質量弾頭を全て弾き飛ばすことに専念した。 - 44スレ主24/09/15(日) 19:18:17
予備パーツが撃滅され、再生力という最大のカードを封じられたアッシュには、
もう二度と迂闊な被弾や損傷は許されない。
巨大すぎる規格の機体。たしかにそれは素早さでカバーされ、巨大ゆえに敵に圧迫感を
与えもするが、体積の広さから云えば、被弾率とて在来機の比ではないのだ。
ウィル「種が分かれば大したことないな」
動きが止まったことで、アーウィンに本体のバックパックを撃ち抜かれ、
リジェネレイトは爆散するのだった。 - 45二次元好きの匿名さん24/09/15(日) 21:04:58
保守
- 46二次元好きの匿名さん24/09/16(月) 09:00:47
保守
- 47スレ主24/09/16(月) 09:41:13
リジェネレイトを撃退することに成功したウィル達は、ラクスが控えさせていたクライン派の友人ら、
マーチン・ダコスタらの無事を確認するため、用意されていた新造艦[エターナル]に向かった。
ウィル達はそこで、ダコスタと合流することができた。彼らの中では殆どの人員が無事だったようだが、
特殊部隊に用いられた催涙ガスや重火器等の手痛い逆撃を被り、重症の者も中にはいた。
ダコスタもまた負傷者のひとりであり、バズーカの衝撃に吹き飛ばされたのち、
右腕を大きく火傷しているようだった。
ダコスタ「ラクス様!?本当に良かった!」
だが、みずから怪我などどこ吹く風と云った様子で、赤髪の彼はラクスへと真っ先に駆け寄ってきた。
頭を地に付けるような勢いで、その頭をラクスに下げる。
ダコスタ「申し訳ありませんでした!我々がついていながら、このようなことに……!」
深々と謝られたラクスであるが、彼女もまた迂闊だったと反省を口にし、彼らには労いと
相応の感謝を述べて返していた。元より、無理を承知で彼らを連れ出したのは彼女の方だったようでもある。 - 48スレ主24/09/16(月) 09:41:53
そうしてラクスとひと通りの会釈を済ませた後、ダコスタはその足をウィルとキラに向けた。
先にラクスに見せたものと同様、心からの謝意を以て深々と頭を下げてくる。
ダコスタ「本当に面目次第もなかった。君達には、感謝の念でいっぱいだ」
キラ「えっと…」
謝られたキラの方は困惑を露わにしたが、ラクスと違って、
ウィルはこういうときに優しくなかった。
ウィル「護衛なら、護衛の仕事くらいちゃんとしろ。なんで嗅ぎつけられたんだよ?」
可愛げのない物言いであったが、ウィルとしては云わずにはいられなかった。下手すればラクスは殺されていた
──それを恩着せがましい物言いだと云わせない程度には、護衛を務めたダコスタ達は役に立たなかったからだ。
男である以上、一度抱いた女には情が湧く。故に腹立たしかった。
今、エターナルの医務室で、思い思いに傷を癒しているラクスの護衛達。俗に云うクライン派とやらが
全体でどれほどの規模なのか、ステラは知らない。知らないが、仮にも正規軍を敵に回すのに
モビルスーツ程度も用意できないのなら──ラクスにどれだけ可愛い顔で無茶なお願いをせがまれたとしても
──そもそも彼女を外出させるべきではなかったし、それでラクスが止まらないなら
羽交い締めにしてでも止めさせるのが、本来の護衛の役割であるはずなのだ。
ダコスタ「耳が痛いな」
ウィル「次は防諜ぐらいはちゃんとしろよ」
ダコスタ「次なんて、ない方がいいさ」
キラ「それは、そうですね」 - 49スレ主24/09/16(月) 09:42:37
ダコスタから視線を外し、ウィルは真っ直ぐに、ラクスの方を見据えた。
ウィル「……これから、どうする?」
委ねるように、ラクスへと訊ねた。
プラントの最高権力者の娘でありながら、敵対組織の人間を匿い、軍の新兵器を与えた。
明確な背信行為としてザフトに一報されることになるだろう。
ラクス「わたくし達はふたたび地下に潜って、多くの人に呼びかけます。
この無益な戦争を止める術は、他にないのかと──」
そうなのだ──ラクス・クラインは結局、直接的に戦う力など持たない。
平和の歌姫として、彼女がやることはいつだって種を撒くことだ。思考の種──と云ってもいい。
──戦争において、何が善で、何が悪なのか?
これを考えることを放棄した人間は、妄信に憑りつかれるままに、
己と異なる信念を持つ者を滅ぼす道を選ぶだろう。それは実に一方的で、排他的な武断思想。
ブルーコスモスやプラント過激派を見ていればよく分かるものでもある。 - 50スレ主24/09/16(月) 09:43:10
ラクス「今のプラントは最早、完全にパトリック・ザラの手の内にあります。──政策も、思想も」
保守派のトップであったシーゲル・クラインが失脚した今、
ザラ派のトップであるパトリックは必然的にプラントの独裁者となった。
そうして彼の叫んだ『ナチュラル殲滅』の煽り文句のまま、アスランを筆頭とするザフトの義勇兵達
──ひいてはプラント国民すべてが思考放棄に陥れば、このさきプラントは破滅の道を突き進むことになるだろう。
ラクス「あの人の言葉には、多大なる影響力があります。求心力があります。多くの兵は民は、
盲目的に彼を信じ──彼の思想こそが己の思想と同じなのだと……楽な在り方を望みます。
ですが、それではいけません。ひとりひとりが正義を考え、迷い、そうして歩んでゆかねばなりません」
ラクスは、彼らに疑問を投げかける気でいる。本当にナチュラルを滅ぼすことだけが正義なのか
──人々が考えることを止めてしまう前に、世の中に訴えかけて行こうとしているのだ。しかし── - 51スレ主24/09/16(月) 09:47:09
ウィル「馬鹿かテメー」
ウィルはラクスdice1d3=2 (2)
1.の両頬を思いっきり引っ張った
2.の頭をハリセンで叩いた
3の両のこめかみを拳で挟んでグリグリした
- 52スレ主24/09/16(月) 17:17:14
スパーン!と小気味よい音が響く。
ラクス「痛いですわ」
キラ「何処に持ってたのそのハリセン」
クスがこれからやろうとしていることは、確かに良いことなのかもしれない。正しいことなのかも知れない。
──でも、それはあんまりにも遠すぎるお話だ。
ウィル「何が間違ってて、何が正しいかなんて、分かる奴なっていない。
……だから、他人の言葉を聞く。他人に頼ろうとする。
明かりも道標も無い中で歩き続けられるほど人は強くないからな。
だからこそ、他の道を示してやらないといけない」
だからこそ民衆は、パトリック・ザラの言葉を信じる。あるいは穏健派のトップであった、
シーゲル・クラインの言葉を信じた。そして、その中には
ラクス・クラインの言葉を借りる者も現われるはずだ。
ただ批判するだけの虚しさを、人は知らなければならない。間違いを指摘するだけの愚かさを。
──間違いを喚き立てるのではなく、間違いに答えを示すこと。
たとえそれが、正解でなくても良い。しかし、それを行うには、曲がりなりにも資格が必要だ。
確固たる発言力を持った人間が発信しなければ、たとえどんなに正しい意見も意味を持たない。 - 53スレ主24/09/16(月) 17:34:34
ウィル「それがお前の役割なんじゃないのか?」
ラクス「わたくしがシーゲル・クラインの娘である以上、わたくしの答えを口にすれば、
それが正解だとおっしゃる方も現れます。それではきっと、意味がないのです」
ラクスは、渋ったように続けた。
ラクス「ですからわたくしは、誘導はいたしません。ただ種を蒔くだけです、
後はひとりひとりが芽吹き、葉を育て、花を開かせる」
ウィル「責任放棄だろ、最初ぐらいは誘導しろよ」
ラクス「それは人身御供です。そういうものではありませんか?」
ラクスは渋面で返す。
彼女は、たとえ自分が居なくても人々が自発的に立ち上がる世界を見据えている。
それは先を見据えたものであることは確かだが、しかし、同時にいささか遠すぎる話だ。
ウィル「夢見すぎだバーカ。種は蒔くだけじゃ都合よく咲いちゃくれねぇよ。後は知らぬ存ぜぬなんざ──」
ラクス「──残酷、と?」
ウィル「成長に必要なものを与えることも、種を蒔いた奴の責任だからな」
ラクス「……」
ウィル「人を迷わせるだけの存在なんて、ただの疫病神だぞ」
傍らのダコスタは、唖然としたという。あのラクス・クラインが、
このときばかりは返す言葉を失っていたというのだから。
ラクス「ではすこしだけ、貴方方に指示を出すことにしましょう」
ラクスは、決して誘導はしない。他者に対して求めることをしない。
だがウィルに云われ、初めて彼女は、みずからの意志を口に出すのだった。 - 54スレ主24/09/16(月) 19:46:21
地球軍。
アラスカ地上本部。
本部から僅か数キロ離れた海上沖ーー。
マリュー「ウォンバット、てぇ!」
「ミサイル、来ます!」
「弾幕!回避!」
アークエンジェルを筆頭とした守備隊は、迫り来るザフトの軍勢に対して、
その数では大幅に劣りながらも何とか防衛網を構築し、迎え撃っていた。
だがーー。
「右舷フライトデッキ、被弾!オレーグ、轟沈!」
マリュー「取り舵!オレーグの抜けた穴を埋める!ゴットフリート、てぇ!」
「尚もディン接近!数6!」
状況は悪くなる一方だ。マリューは奥歯を噛み締めながら、
真綿で首を絞められていくような予感を振り払って指揮を続ける。
だが、現実は非道だ。押し寄せるザフトの大群は数を増やすばかりで、こちらの援軍は姿すら現してくれない。 - 55スレ主24/09/16(月) 19:46:37
マリュー「グレーフレームは!?」
「孤立した守備部隊の援護に!しかし、この陣容じゃ対抗し切れませんよ!」
出撃したトールは、航行不能になった友軍艦や、
戦闘継続困難となった船の護衛、そして孤立しつつある味方の援護に飛び回っている。
ほかの戦闘機部隊も数を減らしつつあり、友軍艦の穴や綻びも目立ち始めていた。
「くっそー!やられたもんだぜ司令部も!」
そう毒づくオペレーターに、サイは震える声をなんとか押さえつけて、唯一の希望である援軍のことを聞いた。
サイ「主力部隊は全部パナマなんですか!?」
「ああ、そう言うことだね!こっちが全滅する前に、来てくれりゃぁいいけどな!」
パナマが襲われると想定して、主力はすべて向こうだ。こちらの異変に気付き、戻ってきてくれればいいがーー。
その僅かな希望に縋って、守備隊は決死の防衛戦を展開していたが、
マリューは言い様のない不安と不信を募らせつつあった。 - 56スレ主24/09/17(火) 05:39:28
キラ「ウィル……」
キラはフリーダムでアーウィンに掴まりながら、ウィルに問いかけた。
ウィル「何?」
キラ「さっきラクスと二人きりになってたよね、したの?」
ウィル「時間なかったからdice1d10=9 (9) 発付き合ってもらった」
不機嫌さを隠さないキラに、ウィルはサラッと答えた。
ウィル「そもそも何で惚れられたのか分かんないんだよな。
アイツの好みは[黙って俺に付いて来い]なリーダー気質のはずだ。
俺みたいに[知るか、勝手にやってろ]みたいなのじゃなくてな」
落ち着いたら自分もしてもらおうと思うキラであった。
- 57スレ主24/09/17(火) 08:38:57
「バリアント、1番2番沈黙!艦の損害率、30%を超えます!」
「イエルマーク、ヤノスラフ、轟沈!」
いよいよもって不味くなってきた。補給と整備すらままならないままのアークエンジェルは、
対抗手段を徐々に失いつつあり、友軍艦のSOSも引っ切り無しに通信に流れてきている。
マリュー「司令部とのコンタクトは?!」
「取れません!どのチャンネルもずっと同じ電文が返って来るだけですよ
!各自防衛線を維持しつつ、臨機応変に応戦せよ、って…」
これほど粘っているというのにーーマリューは刻々と自分の嫌な予感に近づきつつある状況に、
内心で舌打ちをしながら、どうするべきか打開策を頭の中で考えていく。
ローエングリンで敵を薙ぎ払う?しかし、撃てばこちらにも負荷はかかる。
そうなった時に攻め切れなかった敵に撃たれたらアウトだ。
しかし、このまま防戦一方では結果は分かりきっている。
ノイマン「既に、指揮系統が分断されています!艦長…これでは…」
ノイマンからの苦しい声が響く。とにかく今は自艦を守り、
防衛網を死守することしかできない。そんな中で、最悪の情報が飛び込んできた。
「後方より敵機接近!敵の増援です!」 - 58スレ主24/09/17(火) 08:39:17
マリュー「ヘルダートをーー」
マリューがミサイルでの応戦を指示しようとした時だった。
アークエンジェルと敵機の間を、一機のモビルスーツが横切る。
トール「うおおおあ!!やらせるかよぉおお!!」
何とか友軍を安全域まで護衛したトールは、間一髪のところでアークエンジェルに戻ってくることができた。
傷付いた友軍艦に、まるでアリのように群がるディンやグゥルに乗ったジン。
それらをトールはたった一人で蹴散らし、追い払ったのだ。
照準はディンならば羽、ジンならばグゥルに定める。コクピットを狙うよりも、空を飛ぶ手段さえ奪ってしまえば、
相手は海に落ちるしかなくなるわけで。トールが撃ち抜いた敵のほとんどは海に落ちた。
友軍艦が離脱したのを見送った時、上空で旋回するトールは、
落ちた敵のモビルスーツに浮き輪を投げる地球軍兵士を見た。
彼らもまた、こんなくだらない戦いを終わらせたいと願う仲間だ。
背後から撃たれたとは言え、まだ地球軍には道徳心を忘れていない人たちがいる。
それがわかれば、トールは味方を救う力が湧いてきた。
トール「アークエンジェルはやらせない!!」
トールは機体を立て直しては、ミサイルハッチを開けて再び突っ込んでいく。
トール「このぉおお!!」 - 59スレ主24/09/17(火) 16:26:05
ボロボロになったジョシュアの格納庫で見つけたスピアヘッドに乗り込んだムウとナタルは、
海上沖で戦闘を繰り広げるアークエンジェルを何とか捕捉することができた。
ムウ「よっしゃぁ!まだ粘ってたな!こちらフラガ、
アークエンジェル応答せよ!アークエンジェル応答せよ!くっそー!」
ナタル「少佐!右翼から火が!」
ナタルが怯えたように複座から叫び声を上げる。
もともと被弾していたものを無理やり飛ばしているのだ。エンジンの調子もすこぶる悪い。
ムウ「見りゃわかるよ!!」
ムウは怒声を上げて返事をすると、不安的な出力に揺れるスピアヘッドを傾けて、
アークエンジェルに近づいていく。
サイ「友軍機接近!被弾している模様!」
いち早く察知したサイが報告する。マリューもブリッジから外を見たが、
今にも落ちそうなふらふらした飛行で飛んでくるスピアヘッドが見える。
マリュー「着艦しようとしているの!?そんな無茶な…!」
しかし、見捨てるわけにはいかない。マリューはすぐさまハンガーにいるマードックへ通信を回した。
マリュー「整備班!どこかのバカが一機、突っ込んで来ようとしているわ!退避!」 - 60スレ主24/09/17(火) 18:17:48
わかってますよ!!とマードックは手動でアークエンジェルの格納庫を開けていく。
ゲートを開け切った鼻先には、もうスピアヘッドが墜落しそうな勢いでこちらに突っ込んでくるのが見た。
ムウ「どいててくれよ!皆さん!うおらぁ!」
ナタル「しょ、少佐!!?む、無茶だあああああああああ!!?」
いや、もはや墜落といっても差し支えのない強引な不時着。ナタルの甲高い悲鳴がコクピットに響き渡り、
強靭なワイヤーで受け止められたスピアヘッドは、バブルキャノピーを割りながらも、何とか止まることができた。
すぐにフレイがハシゴをかけてパイロットの様子を見に行ったがーー。
フレイ「フ、フラガ少佐!?バジルール中尉も!!」
驚くフレイが見たのは、しこたまコンソールに頭を打ち付けたムウと、
気絶しそうになっているバジルールの姿があった。
ムウはふらつくナタルをフレイと共に何とか下ろしてから、そのままブリッジへと直行する。時は一刻を争うのだ。
ムウ「艦長!」
マリュー「少佐!?バジルール中尉も!?あ、貴方たち一体何を!?転属は…?」
突然入ってきたムウたちに、マリューは最近はあまり見せなくなった、心底驚いた顔を向けた。
ムウ「そんなことはどうだっていい!それより、すぐに撤退だ!
くそったれ!こいつはとんだ作戦だぜ!守備軍は、一体どういう命令受けてんだ!」
ムウは怒りに満ちた声で、自分の見てきたものをマリューたちに伝える。
ムウ「いいか!よく聞けよ!本部の地下に、サイクロプスが仕掛けられている!データを取ってきたが、
こいつが作動したら、基地から半径10kmは溶鉱炉になるってサイズの代物だ!!」
それは、マリューの想像を上回ったーー最低最悪な事態の始まりだった。 - 61スレ主24/09/17(火) 21:34:03
ムウ「この戦力では、防衛は不可能だ!パナマからの救援は間に合わない!やがて守備軍は全滅し、
ゲートは突破され、本部は施設の破棄を兼ねて、サイクロプスを作動させる!」
マリューは、ムウから聞いた内容に衝撃を受けたが、
考えれば考えるほど、この無茶苦茶な戦闘状況と辻褄があうのだ。
まるで当てにされてもいない。各員が臨機応変に防衛せよという、まるで他人事のような命令。
それもそうだ。
すでにアラスカを脱出した軍の高官からしたら、自分たちの戦いなど他人事に他ならないのだから。
ムウ「それで、ザフトの戦力の大半を奪う気なんだよ!それがお偉いさんの書いた、この戦闘のシナリオだ!」
くそったれが!命を何だと思ってやがる!!そうムウが吐き捨てた姿に、マリューは悲痛な目を向ける。
ムウ「俺はこの目で見てきたんだ。司令本部は、もう蛻けの殻さ。残って戦ってるのは、
ユーラシアの部隊と、アークエンジェルのように、あっちの都合で切り捨てられた奴等ばかりさ!」
その言葉に、マリューは最後まで堰き止めていた何かが外れたような気がした。
信用、軍としての機能、そして戦争を終わらせるために戦っている者達。
アラスカを早々に逃げ出した彼らはーー軍に、必死に戦う若者達に、
戦争を憂う軍人に向かって、唾を吐きかけ、捨て駒になれと言ったのだ。
マリュー「どこまで…どこまで腐っているというの…!!」
バン!!と艦長席の肘掛に拳を落とすマリュー。
怒りを露わにするマリューに続くように、アークエンジェルの士官達も驚愕の声を上げた。 - 62スレ主24/09/17(火) 21:35:38
「俺達はここで捨て石になれと!?」
ミリアリア「こ、こういうのが作戦なの…?戦争だから…私達が軍人だから
…そう言われたら…そうやって終わらなきゃいけないの…?」
サイ「ミリィ…」
このままでは、自分たちは囮になって、ザフトを道連れにしてサイクロプスの火に焼かれるのを待つだけだ。
果たして、それでいいのか?
ハルバートン提督に託されて、ここまで戦ってきた自分たちの終わりが、そんな呆気ないものでいいのか?
軍人としてーー利用されてーー殺されていいのか?
トール『諦めるな!』
暗い空気に苛まれていたアークエンジェルのブリッジに、トールの大きな声が響き渡った。
ミリアリア「トール…!」
ミリアリアがモニターを見ると、トールはまだ空中戦を繰り広げていた。
ハイG旋回の負荷に歯を食いしばりながら、トールはアークエンジェルに向かって叫んだ。
トール『ーーくっ!!キラや、ウィル……ボルドマン大尉は諦めなかった!!
だから、俺は最後まで足掻く!!生きて!使命を果たすんだ!!』
ジャック『そうですね、私達は軍人でありませんから命令に従う義務はありません。
いえ、たとえ軍人であっても、こんな命令になど従えませんよ』 - 63スレ主24/09/17(火) 21:36:07
トールとジャックの言葉を聞いて、マリューは思い出した。
そうだ。自分たちは託されたのだ。
多くの者から何かを預けられて戦っている。
使命を引き継いで、それを果たすために。
ならば、今ここで自分ができる最善の行動とは?マリューは目を閉じると、
傍に置いていた帽子を深くかぶって、大きく息を吸った。
マリュー「ーーザフト軍を誘い込むのが、この戦闘の目的だと言うのなら、
本艦は既に、その任を果たしたものと判断する!!」
勇ましくそう言うマリューの姿に、ムウもナタルも、胡散臭い船長の姿がダブって見えた。
マリュー「アークエンジェル艦長、マリュー・ラミアスの独断であり、乗員には、一切この判断に責任はない!!」
彼女は覚悟したのだ。
船を預かる者として。1軍人として。そして、戦争を終わらせることを願う者としての覚悟を。
ナタル「ラミアス艦長…」
声をかけたナタルに、マリューは振り返って笑みを向けた。
マリュー「付いてきてくれるわよね?」
その言葉に、ナタルもムウも、アークエンジェルクルー全員が敬礼で答えた。
ナタル「当然」
マリュー「では、本艦はこれより、現戦闘海域を放棄、離脱します!
僚艦に打電!我ニ続ケ。機関全速、取り舵!!」 - 64スレ主24/09/18(水) 05:18:11
「キラねぇ!アークエンジェルの位置は!!」
地球圏に到着したウィル達は、自分たちが降りるための適正コースを模索していた。
アーウィンは単独で大気圏突入が可能だが、闇雲に大気圏に突っ込んでも、
肝心のアークエンジェルがいない場所に行ってしまってはなんの意味もないのだ。
キラ「位置アラスカ!適正コース!このままーーえ!?この反応は…!!」
キラの驚いた声に、ウィルはどうしたと返事をすると、
しばらくの沈黙のあとに、キラは焦った様子で計測した反応の正体を伝えた。
キラ「戦闘中よ!!それも大部隊相手に!」
その言葉を聞いて、ウィルの操縦桿を握る手に力が篭る。ド派手な帰還になりそうだ。
ウィル「どうやら鉄火場に突っ込んでいくことになりそうだな!!」
青く光る地球に向かって降りていくフリーダムとアーウィン。
その途中で一機のシャトルとすれ違ったが、キラはそんなことも気づかずに通信先のラリーに頷いた。
キラ「もとより覚悟の上よ!!」
キラ「上等!!しっかり掴まってろ!!」
その言葉を皮切りに、フリーダムを乗せたアーウィンは大気圏に突入し始め、
機体を包むエネルギーフィールドが赤く染まり始めるのだった。 - 65スレ主24/09/18(水) 11:16:36
アークエンジェルを旗艦にした守備隊の脱出劇は困難を極めていた。
持ち場を放棄したとはいえ、引き返せばザフトの追撃と、サイクロプスの熱が待っている。
そのため、守備隊に残された脱出経路は、ザフト軍を正面突破し、安全圏に逃れることだ。
だが、敵もそこまで甘く通してくれるはずもない。
「10時の方向にモビルスーツ群!」
「クーリク、自走不能!ドロ、轟沈!64から72ブロック閉鎖!艦稼働率、43%に低下!」
揺れが収まらないアークエンジェルは、まさに風前の灯だった。
アルコンガラ隊も必死で援護してくれているが多勢に無勢。
守備隊も次々とザフトに襲われていく中で、
エンジンに損傷を受けたアークエンジェルもまた、その翼を折られつつあった。
カズィ「ううわぁぁもう駄目だぁぁ!!」
「落ち着け!バカやろう!」
あまりの恐怖に頭を抱えるカズイを、背中越しに座るオペレーターが一喝する。 - 66スレ主24/09/18(水) 11:17:05
ナタル「ウォンバット!てぇ!機関最大!振り切れぇ!!」
トール『このぉおお!!』
敵陣突破。その言葉しかない。トールもディンを筆頭とした攻撃隊と激戦を繰り広げながら、
アークエンジェルの周辺から離れないように飛び回っている。
しかし、限界は近づきつつあった。
ノイマン「推力低下…艦の姿勢、維持できません!」
ノイマンが必死に舵を操ろうとした時だった。
一機のジンが、弾幕をくぐり抜けてアークエンジェルのブリッジに迫ったのだ。
黒光りする銃口が向けられて、マリューは目を見開く。
ナタルが何かを叫んで、ムウがインカムを外してこちらに駆けてくるのが見える。
逃げ出そうとする者。
死を覚悟する者。
そして、それでもーーー
こんなところでやられるわけには……!!
マリューの中にその言葉が波紋のように広がったとき。
空から閃光が走ってきた。 - 67スレ主24/09/18(水) 11:17:41