SS 宿儺おじさんと夏休み

  • 1二次元好きの匿名さん24/10/05(土) 18:04:32

    宿儺おじさんと夏休み

    青い夏 目覚まし代わり 蝉時雨 


    呪いの王、両面宿儺は縁側に寝転んで、庭を歩く雀の戯れをなにとなしに眺めていた。血を吸おうと近づく蚊を八つに割いては吹いて飛ばす。


    (まさかこの体のまま生まれ変わるとはな…)

    二面四臂の怪人として平安の世を生きた最強の呪術士も予想外のことに少々困惑している。魂が転生の旅に出て自我も解けて新たな存在へと変わるのだろうと思っていたが、魂や記憶どころか肉体までほぼそのまま放り出されるとは思ってもいなかった。


    なにしろ腕四本の大男が全裸で急に出現したので田舎町の役所は騒然となった。結局のところ記憶喪失の身元不明人という扱いになり、役所が身元引受人として彼の生活を保障することとなった。

  • 2二次元好きの匿名さん24/10/05(土) 18:05:33

    「犯罪の被害者とかかもしれないよね。それにほら、多様性の時代じゃない?」
    老齢の町長はそう言って四本腕の大男を受け入れることにした。


    ちょうど農繫期であったため手持ち無沙汰であった彼は戯れに伸びきった草むらに腕を振るってみたところ、広範囲に背丈ほどまで伸びていた草むらが一瞬にして刈られていった。どうやら術式すらそのままのようだが、今の彼には呪いを振りまくほど腹の底に呪詛がたまっていなかった。

    一瞬の草刈りを町人に目撃されて以来、耕運機など比較にもならないような一瞬の仕事に魅了された町人たちの依頼に、しぶしぶながら付いていく呪いの王であった。


    報酬として新米を捧げられるようになってから、自らの身の変わりぶりに独り嗤う。「腕おじ」と子供たちに呼ばれるようになったが、存外気をよくしている自分に気づかないフリをするのもそう長くは続かないだろう。


    そんな折、豊穣神扱いされつつある両面宿儺の住む東屋のインターホンを鳴らす者がいた。


    「誰だ」
    「お久しゅうございます」

  • 3二次元好きの匿名さん24/10/05(土) 18:06:20

    「裏梅か!」
    平安の世を生き、時を超えて現代でも共に戦った忠実な従者の裏梅。しかし、宿儺は驚く。

    「なぜ童の姿に・・・?」「私も何が何だか・・・・」
    役所の者に連れて来られた裏梅の姿は童そのもの。7~8歳といったところであった。


    老齢の町長は裏梅もまた記憶喪失の子供であり、宿儺の関係者であると踏んだがそれは正解であった。触れると凍傷になりかねない冷気を発することに関しては

    「ほら多様性の時代だし、ね?」と語っている。


    こうして田舎町の一角で大男と幼女が一つ屋根の下で再び暮らすこととなった。

  • 4二次元好きの匿名さん24/10/05(土) 18:08:24

    丸くなってやがる!

  • 5二次元好きの匿名さん24/10/05(土) 18:08:51

    老齢の町長グッジョブ

  • 6二次元好きの匿名さん24/10/05(土) 18:09:45

    「ただいま戻りましてございます、宿儺様」

    裏梅は年恰好に合わせ、また現代の知識を得るために学校を通うことになった。
    受肉体であった時に現代知識は確保したものの、魂の回廊を歩き再度現世の地を踏む際に幾らか抜け落ちてしまったようで、それを補うためにも学業に専念した方がいいと言ったのは、意外にもかつて暴虐の限りを尽くした呪いの王その人であった。


    「うむ。聞こう。」'腕おじ'こと両面宿儺は優しさすら感じられる温かな目で従者の幼女を見つめた。

  • 7二次元好きの匿名さん24/10/05(土) 18:10:42

    「はっ、まず"さっちゃん"とやらが名家の娘だ何かと噛みついて来るので明日には霜凪を打ち込む所存でございます」「やめろ」

    「また、"けんちゃん"とやらが毛虫を投げて来ましたので、不覚にも悲鳴を上げてしまいました。よって次こそは霜凪を打ち込もうと思っております」「やめろ」

    「加えて、一度家に帰りランドセルを置いて再び公園に集まるよう通達を受けました。童らしく集団遊戯に興じるのだろうと思われます。つきましては・・・」「良い。俺のことはかまわん。行ってこい。夕餉は役所の女が持ってきた魚を焼いてやる。暗くなる前に戻って来い。」

  • 8二次元好きの匿名さん24/10/05(土) 18:16:22

    腕おじは草

  • 9二次元好きの匿名さん24/10/05(土) 18:22:57

    多様性わろた

  • 10二次元好きの匿名さん24/10/05(土) 19:09:57

    「っ!・・・御意!」

    らんらんと顔を輝かせ家を走り出ていく裏梅。肉体の状況に精神が引っ張られているのか、どうも幼子のような振舞いが印象的になっている。

    主人であった宿儺はいまや庇護者のようになっている。力いっぱいに走り去っていく裏梅を腕を組んで見守る。その口角がゆるく持ち上がっていることに本人も気づいていたが、抑えることはなかった。


    「さて、魚を・・・む、ガスがつかん・・・竈」

  • 11二次元好きの匿名さん24/10/05(土) 19:11:59

    腕おじが楽しそうに生きててよかった

  • 12二次元好きの匿名さん24/10/05(土) 19:13:03

    竈は魚消し炭になるやろ

  • 13二次元好きの匿名さん24/10/05(土) 19:37:37

    裏梅が年相応な生き方してるだけで幸せだよ俺

  • 14二次元好きの匿名さん24/10/05(土) 20:01:19

    ・・・・・・

    「ご報告いたします。"みっちゃん"とやらが飼っているスローロリスなる小猿が子を産んだとのこと。ことによっては猿脳が手に入るやもしれません」「やめろ」

    「クラスで動物を飼っていないのはうちだけだと嘲笑されました。その場で霜凪してやろうと思いましたが、踏みとどまりました」「偉い」「明日やります」「やめろ」

    農作業を終えた呪いの王。家に帰るなり学校から帰宅したばかりの裏梅に報告を受ける。このところ裏梅はその日の出来事をすべて報告している。

  • 15二次元好きの匿名さん24/10/05(土) 20:02:25

    ちゃんと教育ができてる宿儺様笑う

  • 16二次元好きの匿名さん24/10/05(土) 20:25:59

    「動物か。次第によっては飼ってやらんことはない。希望はあるか」「それについてはあてがございます。少々ご足労いただくことになりますが・・・」「相変わらず痒いところに手が届く」

    殺して奪うばかりが自らの存在意義ですらあった両面宿儺であったが、思うところあって裏梅の案内するまま村はずれの森奥深く、小さな廃屋までやってきていた。

    「で、こいつか」「はっ」「あ”あ”%あ”#あ”~」

    「世話はもちろん私が致します。宿儺さまのお手を煩わせることはございません」「呪霊だぞ」「猫です」「・・・・そうか」

    「よかったな、ミチナガ。宿儺様のお許しを頂いたぞ。」「あ”あ”%あ”#あ”~」「・・・・」
    昔聞いたような名付け。どこか腑に落ちない宿儺であったが、ミチナガを大切に抱いて帰る裏梅の後ろ姿を見て一応は沈黙する。

    「やはりそいつは・・・」「猫でございます」

    「・・・・そうか」

                  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

  • 17二次元好きの匿名さん24/10/05(土) 20:31:32

    押し切ったな

  • 18二次元好きの匿名さん24/10/05(土) 20:53:54

    多様性に理解のありすぎる町長草

  • 19二次元好きの匿名さん24/10/05(土) 21:04:53

    普通に文が上手いな・・・

  • 20二次元好きの匿名さん24/10/05(土) 21:22:52

    「あ”あ”%あ”#あ”~」
    (こいつ、何を食うんだ?いや、そもそも飯は食うのか?どうみても呪霊だが猫なのか?・・・・・・なぜ俺はイラついている?)

    裏梅が学校に行っている間、閑農期に入り畳の上で暇を持て余す両面宿儺。従者の幼女が拾ってきた猫もどきは縁側の日向で丸くなっている。

    庭の烏骨鶏が短く、それでいて小気味よく鳴く中秋の昼下がり。秋風は涼やかに呪いの王の頬を撫ぜる。

  • 21二次元好きの匿名さん24/10/05(土) 21:35:35

    「ただいま戻りましてございます」
    多少日が西に傾き始めたあたり、裏梅が学校から帰ってきた。

    「あ”あ”%あ”#あ”~」
    「いい子にしていたか、ミチナガ。宿儺様のお手を煩わせてはいないな?」

    愛玩動物を撫でまわす裏梅を微笑ましく見守る宿儺だったが、刹那、違和感に気づく。

    「裏梅・・・皮背嚢のその泥はどうした・・・誰にやられた・・・・?」
    呪いの王に数か月ぶりの緊張が走る。

  • 22二次元好きの匿名さん24/10/05(土) 21:38:22

    そこそこのスパンで緊張走ってんな

  • 23二次元好きの匿名さん24/10/05(土) 21:44:13

    これ高専術士との戦いからちょっとしか経ってないのか

  • 24二次元好きの匿名さん24/10/05(土) 22:09:59

    このレスは削除されています

  • 25二次元好きの匿名さん24/10/05(土) 22:10:26

    「申し訳ございません。"ケンちゃん"とやらが毛虫では飽き足らず、今度は卑劣にも泥団子を浴びせかけてきまして・・・氷入りの泥玉を投擲することで応戦したのですが、被弾に気づいておりませんでした・・・」
    「その小僧を八つ裂きにしてやろうかと思ったが、まあいい。どうとでもなる。」

    自らの快不快を行動基準にしてきた宿儺にとって、本来ならば従者である彼女が傷つけられたことは些事である。しかし、呪いの王は明確に憤っていた。腹の底に憤怒の怒りが溶岩となって煮えたぎっている。

    その怒りが、終生得ること叶わなかった父性によるものだと、彼は気づていない。いや、自分自身に気づいていないフリをし続けている。
    生前は呪いの炎で自らを焼いた。その呪わしい生涯に父性が芽生えたなどと喜劇にもならない。

    その前世を茶番劇としないため、両面宿儺は自らを騙し続けるのであった。

  • 26二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 09:33:36

    いいねいいね

  • 27二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 19:09:37

    ケンちゃん気になる子にいじわるしちゃうタイプの男子か?
    呪術世界だとそういう奴は多分何も得られず終わるぞ

  • 28二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 19:12:44

    ええ~これすき

  • 29二次元好きの匿名さん24/10/06(日) 20:45:09

    大丈夫?これそのうち耐えられなくなった裏梅が人に術式使っちゃって孤立するとかじゃないよね?

  • 30二次元好きの匿名さん24/10/07(月) 06:55:50

    ほしゅ

  • 31二次元好きの匿名さん24/10/07(月) 07:09:34

    この世界であれ

  • 32二次元好きの匿名さん24/10/07(月) 07:52:50

    さてはケンちゃん純粋に嫌がらせ楽しむ方のケンちゃんじゃないか?

  • 33二次元好きの匿名さん24/10/07(月) 10:37:09

    「ただいま・・・戻りました・・・」

    裏梅は蘇って以来、忠実なる従者であろうと努めると同時に、己の肉体の内から沸き立つ童心のような躍動感に突き動かされ、日々溌剌と過ごしていた。
    そして、史上最強の呪術師、呪いの王両面宿儺は今世では別の生き方を求めて前世までとは別の関係性を築こうとしていた。

    平安の世から前世までは従者と主人の関係でいた。

    しかし、彼は気づいてもいたのである。そこにこそ、彼の人生の岐路はあったのだということに。
    こうして、宿儺は今世では自らと裏梅の関係を一新し、保護者としてふるまうことに決めていた。

    そんな折、問題が起きた。

    「どうした。なにがあった」今までにないほど、穏やかに、閑かに声をかける宿儺。

    それもそのはず。裏梅の目に明らかな動揺が見えたのである。

  • 34二次元好きの匿名さん24/10/07(月) 10:47:13

    「いえ・・・宿儺様のお手を煩わせるわけには」
    「気にするな。言え。何があった。」

    有無言わせぬ圧力。しかしそれでいて息苦しさなど感じさせない。
    恐怖のない強さ、それすなわち、圧倒的な安心感に他ならない。

    「・・・学校から帰る途中・・・」
    とつとつと語りはじめる裏梅。猫もどきのミチナガも鳴き声を止めている。

    「長丈の外套を羽織、帽子を目深にかぶった男でした・・・。辺りには何もなく私は"みっちゃん"と"ケンちゃん"と飛蝗を追いかけていたのですが・・・あ、"ポンちゃん"もいました」
    (全員わからん)

    「田んぼ道が分かれた辺りで解散し、帰路に着いたところ・・・その男が目の前にやってきまして・・・・外套を開き・・・・」
    「かまわん。もういい。休め。もう分かった。それ以上はいらん。今日は役所の女と爺が栗を持ってきた。焼いてあるから焦げてないのを食え。そして早めに寝ろ」
    宿儺は下二対の腕で裏梅を持ち上げ、上二対の内の一本で頭を撫でる。

  • 35二次元好きの匿名さん24/10/07(月) 10:57:02

    前世までであれば何のことはない。これが平安の世であったなら、なおさら問題はない。裏梅本人は不本意であろうが。

    しかし、蘇ってからの裏梅は女児の肉体であり、その精神は明らかに童のものに引っ張られている。当然、不審者との遭遇は彼女の心に爪痕を残しただろう。

    裏梅を寝かしつけた後、宿儺は一人玄関に立つ。
    「ミチナガ」
    小さな声でありながら、圧力がこもっている。猫もどきのミチナガも明らかな意力をたぎらせ主人とともに玄関を後にした。

    ・・・・

    「不審者ですか・・・・見逃していい多様性じゃないねえ」
    老齢の町長は地元警察からの報告を受け、安物の番茶をすすり、窓の外の暗くなった田舎町を見下ろす。

    「今日は月も出てないから、暗くて事故が起こるかもねえ、危ない危ない」
    そう独りごちる老齢の町長。町長室に音はなく、壁時計が刻む秒針の音だけがちくたくと響いていた。

  • 36二次元好きの匿名さん24/10/07(月) 10:59:09

    >>34

    >全員わからんwww


    確かに子供の話の登場人物ってわかんねえよなw

  • 37二次元好きの匿名さん24/10/07(月) 17:28:27

    >>35

    なんか町長がかっこいいぞ

  • 38二次元好きの匿名さん24/10/07(月) 17:49:45

    ミチナガ意思疎通出来るの!?

  • 39二次元好きの匿名さん24/10/07(月) 18:07:25

    >>38

    宿儺様は万能であらせられる……

  • 40二次元好きの匿名さん24/10/07(月) 18:08:35

    露出狂か……裏梅ちゃんに見せつけたのか……

  • 41二次元好きの匿名さん24/10/07(月) 18:25:00

    この呪いの王は愛らしいね。

  • 42二次元好きの匿名さん24/10/07(月) 21:32:50

    描写がきれい

  • 43二次元好きの匿名さん24/10/08(火) 00:35:07

    ☆彡

  • 44二次元好きの匿名さん24/10/08(火) 08:31:30

    ほしゅ

  • 45二次元好きの匿名さん24/10/08(火) 16:59:15

    「はあっ・・はあっ・・・なんだよ、あいつ!?」
    薄い臙脂のコートに身を包んだ男。件の不審者であるが、彼の息は荒い。それもそのはず、別の女児に対して犯行に及んでいたところを、意味不明な猫もどきに追いかけられているのだから。

    「俺にしか見えてねえのか!?なんであんなのが・・・」
    裏梅に対して下半身を露出した時刻から数えて、ほんの数刻。塾帰りの女児を狙って別の犯行に及んだところを猫もどきに襲われた。

    猫もどきは付かず離れずで追い立ててくる。
    所によっては人家もまばらな小さい町である。拠り所もなく走り続けていればあっという間に町のはずれまで来てしまう。

    振り向けば朽ちた神社と煤けた鳥居。
    その奥から閑かに、しかし力強い足音が聞こえてくる。

    ざく・・・・ざく・・・・・

  • 46二次元好きの匿名さん24/10/08(火) 17:05:26

    暗闇は足音の主の顔を隠す。
    しかし、その巨躯と四本の腕は顔よりも確かな身分証明である。

    「・・・」
    呪いの王は何も語らなかった。下郎の耳に届ける声などなかったのだろう。

    ・ ・ ・ ・ ・ ・


    「ミチナガ、帰るぞ」

    雲もない闇夜の中、両面宿儺と一匹の呪霊は裏梅の待つ自宅へと帰っていくのであった。

  • 47二次元好きの匿名さん24/10/08(火) 17:13:42

    「宿儺様、PTAより便りが届いてございます」
    「・・・・・裏梅。保護者宛ての文書はその日に出せ。これは期日が明日だ。」「はっ、申し訳ございません」

    田舎町の学校。とはいえ、町に学校が少ないためか生徒の数自体は少なくない。そのため学校行事は省略などなく万事滞りなく行われる。

    「授業参観か・・・」
    「はい。少々ご足労いただくことになりますが・・・」

    もはや呪いを振りまく腹の中の憎悪もない以上、宿儺は別の生き方を模索している。別にこうべを垂れて生きようという訳ではないが、多少穏やかに生きるだけの心の余白はある。

    「行ってみるか・・・」
    「っ!!」

    裏梅の顔に光が差したように見えたのは宿儺の見間違いではないだろう。

  • 48二次元好きの匿名さん24/10/08(火) 17:15:29

    模範的小学生な裏梅すき

  • 49二次元好きの匿名さん24/10/08(火) 17:21:06

    >>46

    行間を読むと……なんだが、これが今後の宿儺たちにどう影響するのかねぇ……

  • 50二次元好きの匿名さん24/10/08(火) 19:31:24

    「はい、それじゃあ、この問題分かる人~」

    教室で他の保護者たちと並ぶ呪いの王。その目が見守るは忠実なる従者。
    「どうした裏梅。なぜ手を挙げない?」
    裏梅に発破をかけるも当の裏梅本人はなかなか手を挙げない。しかしその表情には明らかな策略があるように見えた。

    「みんな分かんないかな~?それじゃあ裏梅さん!」
    「ふっ、この程度の算術も解けないとは全く仕方がない。」
    そう言い捨てて意気揚々と黒板に向かい、小気味よくチョークを鳴らす。

    「いや~さすがね!はい、みんな拍手!」
    教室の人間みなに賞賛される従者。誇らしげな裏梅を見つめ、呪いの王は微笑んで一言。

    「いや、絶景絶景」

  • 51二次元好きの匿名さん24/10/08(火) 21:33:20

    娘の成績に喜ぶお父さんで草

  • 52二次元好きの匿名さん24/10/08(火) 23:53:34

    教室にいる腕4本の大男イメージして吹いた

  • 53二次元好きの匿名さん24/10/09(水) 10:50:43

    保守

  • 54二次元好きの匿名さん24/10/09(水) 11:07:22

    「では宿儺様、この次は運動場にて童の催しがございます。運動場まで少々ご足労いただくことになりますが・・・」

    他の児童の保護者父兄との歓談を切り上げ、裏梅に手を引かれて教室を出る呪いの王。多少走り気味の裏梅だが、歩幅の関係で宿儺の足が逸ることはことはない。

    運動場まで出てきた児童たちとその保護者たち。みな一様に手を引いている。どうやらこのあとの催しとは、児童と保護者が一体となって行う祭りのようである。

    祭りのようなものを行うと認識した両面宿儺の脳裏には、平安の頃、裏梅とともに参加した新嘗祭の記憶が浮かび上がっていた。
    「あのときは厄介なものだったな・・・・」
    「?」
    「いや、こっちの話だ」

    半裸の不審者に襲撃されたあの頃の記憶が両面宿儺に警戒を促す。さすがにこの場には居ないようだが、自分たちが蘇っている以上、奴も蘇っていないとは限らない。

  • 55二次元好きの匿名さん24/10/09(水) 11:19:46

    保護者同伴小運動会。
    農家が住民の中核をなすこの小さな田舎町。児童の父親たちは多くが30代後半から40代前半といったところであったが、そのほとんどが日常的に体を動かしているためか、運動会そのものは特に滞りなく進んでいった。

    そして父親たちにとっての晴れ舞台がやって来る。

    父としての威厳を見せつける様々な競技が用意されていたのである。教職員たちに促されるままスタートラインに立つ呪いの王。
    最初の競技は至極単純な徒競走であった。純粋な走力がものを言うこの競技、児童たちの目線は当然自らの父親に注がれる。それは裏梅もまた然り。

    「速えっ!!」隣を走る男がそう呟いたかと思うと、両面宿儺は圧倒的な速力をもって他を蹂躙していった。当然首位である。
    そんな宿儺を見て裏梅は級友たちに告げる。

    「宿儺様はまだ本気を出していない」

  • 56二次元好きの匿名さん24/10/09(水) 11:24:54

    次の競技は児童を背中に乗せての背負い競争および帽子取りの騎馬戦もどき。
    四本の腕による守備は完璧であり、裏梅は攻撃に専念できる。

    「霜凪を」「やめろ」

    あくまで肉体のみの勝負。宿儺にとっては余興ですらない難易度だが、別の生き方とはこういったものも含むのだろう。存外、おとなしくルールに従う呪いの王であった。

    そしていつの間にか相手の親子チームはひとつまで減っており、一騎打ちの様相をとっている。
    そんな中で裏梅は一言。

    「我々の勝ちだ」

  • 57二次元好きの匿名さん24/10/09(水) 12:22:43

    たった!フラグが立った!

  • 58二次元好きの匿名さん24/10/09(水) 23:18:38

    保守

  • 59二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 08:06:00

    裏梅…むふー!ってしながら言ってそうで可愛い

  • 60二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 16:18:50

    続き待機

  • 61二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 21:24:46

    宿儺の身長ならそうそう手が届かないだろうから有利だな

  • 62二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 21:43:07

    「宿儺様のお力を見たか!」

    年甲斐もなくはしゃぎまわる裏梅。久しく感じていなかった恥を思い出す呪いの王。どこか居たたまれない心持ちで裏梅の頭をそっと撫でる。父親に褒められた幼子のようにくしゃりと破願して笑う氷の美少女。

    実に微笑ましい光景に、近傍の者たちもまた拍手と笑顔に包まれていく。それこそ両面宿儺が終生手に入れることのなかった「祝福」そのものであった。

    呪いの王改め、祝いの王と化した両面宿儺。
    呪詛を振りまいて生ける災厄として駆け抜けた前世に後悔などは微塵もない。それでもこの多幸感を知らずにいたことに関しては、少々惜しかったと、苦笑するしかない宿儺であった。

    「?」

    主人の顔色の変化に気づく裏梅だったが、その意味を知るにはまだ幼い。

  • 63二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 21:43:45

    ・ ・ ・ ・ ・

    蘇って数か月。もうじき一年が経つ頃か。
    秋の勢いは盛りを過ぎ去り、いよいよ冬の気配が感じられるようになってきた。

    両面宿儺は上裸で庭に立ち、七輪に火をつけんとして集中力を発揮している。もはや振りまく呪詛もなくなったとはいえ、そこはやはり史上最強の呪術師。尋常ならざる集中は雀一匹とて近寄らせない。

    見事、小さなオレンジ色の炎がともり、熱と煙がゆっくりと宿儺の顔を撫ぜ始めた。その刹那、無駄のない動きでクーラーボックスを開き、秋刀魚を一尾二尾と並べていく宿儺。見る者がいれば恐らくは賞賛せざるを得ない見事な手際である。

    辺りに立ち込めるは炭火の香りと秋刀魚の脂の匂い。呪霊のミチナガに煮干しを与えることも忘れない手抜かりのなさも特筆すべきだろう。

  • 64二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 21:44:10

    四本の腕を巧みに操り、火加減の調整、煙の排気、秋刀魚の状態の観察までも同時に行う。
    そして最後の一本でクーラーボックスを再度開き、奥底から栓をしたとっくりを引き出した。

    「裏梅は童どもの所・・・もったいないことだ」

    裏梅の不在を確認し、秋刀魚を器に移す最強の呪術師。いつの間にかシソの葉と大根おろしまで完備している。
    適度に冷えた日本酒、老齢の町長が差し入れてきた地元の逸品だという。まだ過分に熱をもった秋刀魚の身を冷えた日本酒で冷ます。

    天を仰ぐ。

    息をもらす。

    秋空はどこまでも高く澄み渡っていた。

  • 65二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 21:44:34

    七輪の処理まで完全に終えた両面宿儺。秋刀魚の骨は呪霊ミチナガの担当である。

    そこに裏梅が帰ってきた。
    「ただいま・・・戻りましてございます・・・」
    件のごとく、どこか力のない様子であったが、不審者のときのようにショックを受けている様子ではない。
    訝しんでいる宿儺の目に飛び込んできたのは裏梅の後ろにいるもう一人の童。

    宿儺は名前すら憶えていない裏梅の級友の男子。

    女子の家までついて来るその厚顔無恥に宿儺は領域展開のための掌印を組み始めたが、よくよく考えればまだ7,8歳。平安の世でもいまだ童である。裏梅に懸想するなど遠い未来のことだと思い直す。

    改めて少年の話を聞けば裏梅と自分に贈り物をしたいとのこと。
    拙い出来の落雁、いや、現代の言葉ならクッキーだろうか。手渡すやあっという間に走り去っていく少年の後ろ姿を見て、父性が警戒信号を発するのを自覚する宿儺であった。

    無論、忠義の人を地で行く裏梅には童を相手にする腹づもりなど微塵もないが、それに気づくほど宿儺は恋達者ではなかったようである。

  • 66二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 22:16:55

    パパめっちゃ過保護
    領域は過剰防衛が過ぎる

  • 67二次元好きの匿名さん24/10/11(金) 08:08:27

    続けて

  • 68二次元好きの匿名さん24/10/11(金) 18:44:56

    少年可愛いな……

  • 69二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 06:09:55

    ほし

  • 70二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 13:02:35

    パァァァ✨ってめちゃくちゃ嬉しそうに笑っているであろう裏梅(おそらく小学1、2年生)がものすごく可愛い

    芽生える父性に気づいてる上でこのまま生きてみようとする保護者宿儺も好き

    頑張れ、少年

  • 71二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 13:12:46

    季節感がいい…
    秋刀魚食べたくなってきたな

  • 72二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 14:01:03

    初冬は寂しい季節である。

    絢爛豪華な秋は去り、万物がひた眠る雪の季節。人の装いにも野暮ったさが表れてくる。
    雪こそしばらく降る予定はないようだが、それでも冬の乾いた空気感は人々の心に寂寥と忍耐をもたらす。

    田舎町の東屋に住む両面宿儺。
    いまや怨嗟を捨て新しい生き方を模索する彼だが、いま現在彼を悩ましているのは、冬をどう乗り切るかの悩みであった。

    全裸で突然放り出された彼は文字通りの無一文。前後の記憶すらあいまいなため行政の厄介となって僅かな寝食をつなぎながら始まったこの今生だが、今では農業の補助や害獣の駆除に加え、ときには弓道の指南など実に多岐に及ぶ職を持っている。

    「手に職」という言葉があるが、四本腕の彼が他より多くの職を得るのは言い得て妙といったところか。

  • 73二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 14:09:51

    人口減少にあえぐ小さな田舎町である。住まわせる家などいくらでもある。
    両面宿儺は農地が近い一軒家を借り暮らしを営んでいた。借りるといっても家賃すら発生していないためもはや譲渡に近い形だろう。

    その日、宿儺は自らのあごをなぞりながら、悩んでいた。先日老齢の町長との酒宴の際、この田舎町の冬の厳しさの話となった。そこで話が及んだのは、『こたつ』であった。

    平安の世でも温石を衣に仕込むことは一般的であったが、さすがにこたつなどはない。
    現代に受肉した時も経験がなかった。

    未知の快感をもたらすというその温具に期待をはせる宿儺であった。

  • 74二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 14:23:01

    居間にて思いをめぐらす宿儺の傍に小さく座る裏梅。
    大男の宿儺との対比でどうしても実寸以上に小さく見えてしまう。音をつけるとしたら『ちょこん』だろう。

    宿儺が手ずから作った葛根湯にはちみつを多めに混ぜたものを両手で持って飲んでいる。
    顔がほのかに赤くなっていることから体温保持の効果はてきめんであること間違いなしである。

    何気なく頭を撫でる宿儺。
    「?」
    撫でられた理由は分からないが、悪い気がするはずもない。
    そのまま上機嫌で外出の準備をする裏梅。
    宿儺に連れられて、人生初のイオンモールへと臨む。

  • 75二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 14:30:08

    圧倒的物量。

    それこそが万事を良好に回す唯一絶対の法則である。
    呪術師として、宿儺自身も圧倒的な呪力量と出力で無数の勝利を収めてきた。

    その意味で言えば、イオンモールとは、まさに物販界における両面宿儺そのものである。

    「……っ」
    「……っ」

    裏梅も宿儺もその圧倒的な規模感に一瞬気圧されたが、そこはやはり史上最強。
    即座に気を持ち直し、巨大なイオンモールに対して、一言。

    「お前は、俺だ」

  • 76二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 14:41:18

    領域展開で包み込める大きさかどうか、少々試しの余地があるほどの規模感であったが、中心地からの閉じない領域で包めるだろうことを確認する宿儺。
    もしこの場に「イオンモールの呪霊」が現れたとしても難なく下せるだろう。

    今回の目的は「こたつの購入」である。

    とはいえ、樹林のごとき人海と謎の着ぐるみに目線を惑わされ、なかなか目的地にたどり着くことができない。
    以前、視線を強制的に誘導する術式の持ち主とも戦ったが、あの戦いを思い出すにはさすがに力不足か。

    裏梅は宿儺の手を強く握りながらも所々に立つ謎の着ぐるみを注視していた。

  • 77二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 14:48:39

    まさに悪戦苦闘の一言ではあったが、どうにかこたつを購入し駐車場で待つ呪霊のミチナガに持たせた上で、車のように上に乗る一行。裏梅が猫だと主張して捕えてきたこの猫もどき、当然サイズや膂力に問題があるはずだが、宿儺の呪力による強化で大抵の問題は解決できるようであった。

    ちなみに呪術の素養のない町民たちには呪霊のミチナガは見えないため、四本の腕の大男と幼女とこたつが空中浮遊しているわけだが、これに関し老齢の町長は、
    「ほら、多様性の時代だし、ね?」
    と朗らかに笑うのみであった。

    そんな彼の人格が伝播したのか、町民たちの中でこの光景に異を唱える者はいない・・・









    はずがなかった。

  • 78二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 14:49:37

    宿儺と裏梅がイオンモールに来る話!?
    分からん!分からねば!

  • 79二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 14:55:21

    裏梅が肉体年齢に引っ張られてまっとうな小学生してるの好き。でも台詞見る限り本人は一生懸命どうにか従者やろうとしてるっぽいな。

  • 80二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 15:02:09

    呪術高専東京校。その職員用執務室の片隅で書類の山に埋もれる伊地知の元に、一通のメールが届いた。


    『○○県××市△△町ニテ、"二面四臂ノ大男"ノ長期的ナ目撃証言アリ。
     犠牲者数不明。但シ、行方不明者アリ。コノ件トノ関連ハ不明。』


    「っ」
    PCの画面を見ながら、伊地知は短く息を呑む。

    窓の外には月が鋭い鎌首を見せていた。

  • 81二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 15:10:36

    おっ高専側の描写もあるんですか!!?!非常に助かる

  • 82二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 15:41:08

    呪い以外の道を選んで生きているこの宿儺だけど記憶も能力も引き継いでるから戦闘向けの思考が染み付いてるの好き

  • 83二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 16:11:23

    お前は俺だで草生えた
    真人=虎杖=宿儺=イオンモール

  • 84二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 18:40:31

    物販界の両面宿儺……??????

  • 85二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 19:53:57

    文章力高すぎてこっちまで日本酒と秋刀魚食べたくなってきたわ

  • 86二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 20:47:11

    イオンモールに行きたくなった
    浮遊する大男と幼女(と見えない猫)見たすぎる

  • 87二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 20:50:15

    冬は深まり年の暮れ。

    役所も閉まる12月31日の夕方になって、裏梅はうんと背伸びをしつつ台所に立つ。夏の頃は包丁を握って魚をさばく宿儺の手元が見えなかった彼女だったが、今はまな板をどうにか見下ろすことができている。その頃を思えば随分と背が伸びた。

    宿儺は居間に置いたこたつに半身を埋めて、裏梅の様子を眺めている。

    今宵は裏梅が年越しにふさわしい逸品をこしらえるとのこと。どう考えても年越しそばなのだが、どうやら何か工夫を凝らすようであった。
    裏梅の料理の腕前について、宿儺は全幅の信頼を置いている。今生への黄泉がえりの際に多少肉体年齢が巻き戻り、記憶も断片的にぼやけているようだが、料理の腕まで消えてなくなったわけではない。若干のなまりこそあれど、達人の域から外れはしていない。

  • 88二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 21:10:42

    「宿儺様。夕餉の用意が済みましてございます・・・」

    やけに仰々しい物言いだが、それだけ裏梅の渾身の作ということなのだろう。

    「そばの前にこちらを・・・・太刀魚の白焼きでございます。蒸しの技法を取り入れつつ、若干の焼き目がつくよう火加減を整えました。」

    いつの間にか父性に満たされていた両面宿儺は何が出てこようと賞賛の嵐を起こすつもりでいたが、自身の付き人であった料理人の腕前を再度見せつけられ、むしろ言葉を失ってしまった。

    箸を当てるとふくよかな手ごたえが指先を楽しませる。脂の匂いはすでに宿儺の腹と心を掴んで放さない。
    「梅肉を叩いて鰹節と和えたものを乗せてあります。ご堪能ください。」

    宿儺が太刀魚の身をかみしめるや溢れて出る旨味と程よい塩味。おそらくは炭火で焼く過程で解け出た脂を掬い取り繰り返し、繰り返し、肉にかけてその風味を閉じ込めたのだろう。そして、梅肉和えの鮮烈な爽やかさはもはや論じることすら無意味と化す。

    老齢の町長からもらったとっておきを一献。何を言わずとも裏梅は酌をする。

    史上最強の呪術師、呪いの王・両面宿儺はいま、至高の幸福に包まれている。

  • 89二次元好きの匿名さん24/10/12(土) 22:30:06

    本気で旨そうなんだが

  • 90二次元好きの匿名さん24/10/13(日) 06:56:42

    すっくん飯食ってて草

  • 91二次元好きの匿名さん24/10/13(日) 15:34:09

    ほろ酔い気分の両面宿儺が田舎町に響く除夜の鐘に耳を傾けているその頃、同時刻東京の呪術高専職員室では伊地知が独り作業をしていた。
    その額には大粒ながら冷たい汗が滲む。口元は真一文字に引き結ばれ、両目は眼前のPCに釘づけられている。

    「両面宿儺・・・もしあの脅威が復活したとしたら・・・もう五条さんがいない以上、残った呪術師が総力を挙げてももう一度打ち取れるとは限らない・・・いやしかし今はまだ回復中ということもあり得る・・・その場合は一刻も早く戦力を集めて叩くべきだが・・・」

    伊地知の独り言は続く。

    「目撃例が長期に渡っている・・・つまりこの・・・仮称宿儺はトラブルを起こしていない?・・・いや洗脳の術式ということも・・・・いや、それならなぜ通報があった・・・情報が少なすぎる・・・まずは高専職員を派遣して実状の確認が先決か」

    そう呟いて、数日前に買った硬くなったあんパンをがぶりとかじり、温くなったブラックコーヒーで流し込む。年越しの寒さは室内でも彼の芯を冷やすに足りた。

    同時刻、両面宿儺はこたつに半身を埋め、寝つぶれた裏梅を撫でつつ辛めの一献を喫し、人の世の福を極めていた。

  • 92二次元好きの匿名さん24/10/13(日) 22:48:04

    なんだこの多幸感
    文章が穏やかな幸せを振り撒いてる

  • 93二次元好きの匿名さん24/10/13(日) 23:19:06

    宿儺との対比で伊地知さんがとてもかわいそうになれる名文

  • 94二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 09:12:33

    伊地知さんが何をしたっていうんだ

  • 95二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 13:57:24

    宿儺に対しては特に何も…
    あ、違うわ
    そういや少し前に五条の攻撃威力を宿儺に見誤らせる結界張ってましわこの人

  • 96二次元好きの匿名さん24/10/14(月) 19:59:13

    高専側に存在がバレたか、

  • 97二次元好きの匿名さん24/10/15(火) 01:13:15

    食べ物の描写がほんと良いな…

  • 98二次元好きの匿名さん24/10/15(火) 07:48:11

    誰が派遣されるんだろう

  • 99二次元好きの匿名さん24/10/15(火) 17:02:17

    新年の寿ぎもだいぶ落ち着いた睦月の暮れ。

    裏梅は東屋の台所に立ち、ふだんの料理とは毛色の違う試みに悪戦苦闘していた。
    「裏梅」
    「あっ、宿儺様」

    男子厨房に入らず、などどこ吹く風である。そもそも宿儺は自分で料理をすることもあるし、今生においては裏梅に料理を振舞うことすらあった。意外にもその腕前は悪くなく、裏梅にとっては値千金の至福であったが、宿儺自身としてはどうも満足していない様子。

    とはいえ、彼は自身の凝り性な性格を理解していたためか、料理の世界にあまり深入りはすまいと努めていた。そこは裏梅の世界なのだと言わんばかりに。

    それはそうと、この日の台所には甘い匂いが立ち込めていた。

  • 100二次元好きの匿名さん24/10/15(火) 17:10:46

    宿儺は別段甘いものが苦手というわけではなく、ときたま裏梅とイオンモールに出かけてはさつま芋のソフトクリームに舌鼓を打っていることは、近隣の者なら知らない者はいない。

    裏梅としては前世ではそこまで甘党というわけではなかったはずだが、肉体年齢に引っ張られたか、今生ではやたらと甘い菓子に心が惹かれるのをどうにか律していたが、宿儺には筒抜けであった。
    実際、宿儺は害獣駆除などの依頼の礼として食品をもらうときはできるだけ甘味を含めてもらうよう、取り計らってもらっている。近隣のものはクマにはちみつをあげるかのごとく、面白がって宿儺に菓子を渡しているが、そのすべては裏梅の胃袋に収まっていることを、宿儺は近隣の者たちには言っていない。

    この日の裏梅の挑戦は「チョコレート」である。
    湯煎して型に流し込むことから始まり、凝り始めるともはや一種の「道」の類ですらある。
    裏梅の表情は真剣そのものであった。なにしろ彼女は製菓技術習得の期限を定めているのである。

    今は1月の終わり。
    裏梅は2週間以内に、満足のいく出来のものを作れるように練習を重ねていた。

  • 101二次元好きの匿名さん24/10/15(火) 17:17:14

    色合いから内容物まで、あらゆる組み合わせを模索する裏梅。
    宿儺は知っていた。女子がチョコレートの作成技術を高めようというのが何を意味しているのかを。

    「伏黒恵の記憶か・・・」

    自身が知るはずもない情報を知識して持っている違和感について、宿儺は心当たりがあった。
    今はもう完全に別物とはいえ、一度自らの肉体として脳を共有したことから、断片的にではあるものの、宿儺には前世での受肉の際の記憶がある程度残っていた。

    寂寥感。
    己が寂しいと感じていることに、別段驚きはない。

    緊迫感。
    裏梅がチョコレートを渡そうとする相手・・・そもそもそんな相手がいること自体早いのではないか。

    焦燥感。
    まだ7,8歳の女児をたぶらかした者はいったい・・・・百分に刻んで・・・いやいや・・・・いやしかし・・・。


    史上最強の呪術師・両面宿儺はいま、天を仰ぎ見て息を漏らすしかなかった。

  • 102二次元好きの匿名さん24/10/15(火) 18:13:11

    誰にチョコ渡すとか…そんな相手決まってんじゃん…
    それにしても描写が上手い
    スッと頭に入ってくる

  • 103二次元好きの匿名さん24/10/15(火) 18:37:43

    すっかりお父さんじゃん

  • 104二次元好きの匿名さん24/10/15(火) 18:38:24

    チョコ貰った時の反応楽しみすぎ

  • 105二次元好きの匿名さん24/10/15(火) 19:24:44

    両面宿儺が声にならない沈痛な面持ちで空を見つめたその日から2週間。

    「すじこ」
    「うん、まあ確かにせっかくのバレンタインに任務は気が重くなるよね」
    「もらう相手がいねーだろ、野郎ども。私がトッポ買ってやるから我慢しろ。おい、パンダ、売店探すぞ」
    「もうちょい大事に扱ってー」

    呪術高専東京校の呪術師たち。その中でも相当な手練れである乙骨優太を筆頭にその同級生たちである。
    高専職員たちの報告を受けた伊地知は事態は流動的であると捉え、調査をメインとしつつ、必要ならば戦闘も辞さない腕っぷしをもった者たちを派遣することを上層部に掛け合い。

    呪術高専の生徒たちであった。

  • 106二次元好きの匿名さん24/10/15(火) 19:37:50

    「釘崎ー。売店行くぞー。」
    「あっ、待ってくださいよ、真希さん」

    「イオンモールって田舎ならどこでもあんのな」
    「そもそも、そういう商売だろ」

    乙骨たちの1年下の後輩たちも参じている。現在の最高戦力といってもいい猛者たちの集合である。
    彼らは若者らしく和気藹々と戯れつつも、付近に散らばる様々な気配の残滓を一つたりとも逃さない。

    死闘を超えた若者たちは今までにない強者へと変じ、常在戦場を体現している。


    田舎町の駅に彼らが着いたその同時刻、東屋の今には裏梅に呼ばれた宿儺が内心の緊張を隠しつつ、どっしりと構えて座っていた。
    (女児が保護者に改まって話をする・・・・・まさか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なぜ俺はイラついている?)

  • 107二次元好きの匿名さん24/10/15(火) 19:47:59

    娘を嫁に出す父親みたいになってるw

  • 108二次元好きの匿名さん24/10/15(火) 21:06:34

    読んでるこっちは宿儺達が高専生徒達とエンカウントしたらどうなるかとハラハラしてるんだが
    当の宿儺おじさんは別の意味で緊張してて草

  • 109二次元好きの匿名さん24/10/15(火) 21:11:26

    エンカウント楽しみだけど穏便にすんでくれ頼む…!

  • 110二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 07:45:30

    すっくんww
    すっかりお父さんだなぁ(*´ω`*)

  • 111二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 09:16:06

    「あっ、さつま芋ソフトだって。虎杖、アンタちょっと付き合いなさい」
    「へーへー、伏黒も行こうぜ」

    「おかか」
    「そうだね。僕らも土地勘つけなきゃだし、休憩しようか。ほら、真希さんも行こう?」
    「お前ら、さっきトッポ食ったろ。一個奢れよ?」

    町はバレンタイン一色・・・というわけではなかった。そもそもこの小さな田舎町に商いを促すほどの催しをする旨味は少ない。住人たち各々が思い思いに催しを飾る。ハロウィンやクリスマスもそれは同じであった。

    田舎町の者にとっては年中行事に数えるには少々歴史が足りないのだろう。

    普段から、四本腕で腹にも口があり見えない斬撃を飛ばしたまに空中浮遊する不愛想なおじさんを見ている彼らからすれば、非日常感を演出するのも一苦労であった。

  • 112二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 09:23:24

    「宿儺さま」
    「うむ。改まっているな。どうした」

    努めて優しい声を出そうとする宿儺。若干上ずっているが裏梅に気づかれてはいないようである。
    真剣な面持ちで正座する裏梅。
    その顔立ちは童子そのものである。ほんのりと赤い頬は、児童特有の高い体温によって火照っているのか、それともこの後話そうとする内容によって火照らされているのか、宿儺には全くもって分からない。

    「こちらを・・・」

    桐の箱を差し出す。普通なら子供が容易に手に入れることができるものではないが、ここは田舎町である。木工所などいくらでもあれば、端材をもらってくることも容易いだろう。
    実際、面取りや接着など少々拙いところが見える。おそらく箱からして手作り。

    「・・・・・・・っ!」

  • 113二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 09:33:20

    おもむろに手に取り、ゆっくりと箱を開けるや、中から解き放たれる香りの一撃。

    桐の箱に入れられていたのは、「チョコレート」であった。
    形は大小さまざまであり、色合いもまた華やかかと思えば、いぶし銀を感じさせる武骨な雰囲気のものまである。

    正真正銘、裏梅から宿儺への贈り物であった。

    恐る恐る手に取る。
    ふるりと揺れる柔らかな手触りに内心慌てる宿儺。
    不意に形が崩れてしまわないように呪力強化を施す。平安の頃より金品財宝を浴びるほどに捧げられたが、目の前の茶褐色の固形物はどんな宝石にも優る美しさを放っている。

    宿儺の脳はすでに「如何にしてこのチョコレートを永久保存するか」に向いていた。

    「どうか、ご賞味ください」
    「・・・?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ、うむ」

    最初は何を言っているのか分からなかった。この宝石を食べろという裏梅に対して無茶だとすら感じてしまった。
    これが食物であることを数瞬忘れた呪いの王を責めるのは酷だろうか。

    同時刻、イオンモールでは高専生徒たちがさつま芋ソフトに舌鼓を打っていた。

  • 114二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 09:42:41

    ゆっくりと惜しむようにチョコレートを口の中へと入れる宿儺。
    舌の上で蕩け、香りはさらに増し、隠し味の洋酒が沸き立つように、躍るように・・・。


    突然の衝撃。


    両面宿儺の脳裏に浮かぶ千年の旅路。口内より広がった多幸感は瞬時に宿儺の全身を満たし、魂すらをも掌握して彼の意識を彼方の世界へと飛ばす。


    「やっ」
    「!?」

    一瞬意識をどこかに飛ばされ羂索の顔が見えた気がしたが、気のせいであることを祈る宿儺であった。
    もの言わず、そっと裏梅を抱きしめ、頭を撫でる。

    「宿儺様っ!?///」

    驚きと嬉しさを隠せない裏梅をゆっくりと放し、少し出てくると言って裏山の林に入る。
    走る、奔る、飛ぶ、跳ぶ・・・


    叫ぶ。


    爆裂な呪力の奔流が空へと昇る。
    見える者が見たならばそれは昇り龍のように見えただろう。

  • 115二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 09:43:22

    腕おじが今日も幸せそうに生きててよかった

  • 116二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 09:46:57

    すっくん?!

  • 117二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 09:47:27

    ぶち上がりすぎで笑ったよかったね裏梅
    カットインしてくる羂索はなんなんだ

  • 118二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 09:52:47

    「おい!」
    「ああ!」

    「走るぞ!」
    「先に行って真希さん!」

    強烈な呪力の奔流に気づかないほど鈍感な彼らではない。
    その呪力の性質は文字通り身に刻みこまれている。
    忘れるはずなどない。

    「宿儺っ!!!」

    呪いの王・両面宿儺。その復活の実感が高専生徒たちの魂を強く叩く。

    一方で、林から帰ってきた宿儺は口角が上がるのを抑えきれるかどうか、本気で悩んでいたが、腹部の口にそれを肩代わりさせることで、顔面の威厳を保つことに成功していた。

  • 119二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 09:56:38

    顔面は取り繕えても腹の口は正直だな

  • 120二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 10:47:31

    高専の皆はキレていいよ

  • 121二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 10:58:57

    満面の笑みの腹の口

  • 122二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 12:51:40

    友情出演 羂索

  • 123二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 18:10:34

    このレスは削除されています

  • 124二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 18:17:38

    この呪いの王は凄いのよね。

  • 125二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 19:44:24

    疾風という言葉がある。文字通り、迅い風を表す言葉だが、暴威の化身となった鬼人・真希の走行はまさしく疾風のごとしという言葉がしっくりと来るものであった。

    目指すは前方に見える小高い山。

    人間の眼に映らないほど速い・・・というわけでは流石にないが、少なくとも常人の視力で捉えられる速力ははるかに凌駕している。
    口内にあるさつま芋ソフトの香りが消える前に、真希は目的の山の麓に到着した。ものの一分といったところか。
    その肌には汗ひとつ浮かんでいない。

    いや、いなかった。

    そう。過去形である。それも当然。
    なにしろ、山の麓の東屋、呪力あふれるその小さな家屋の玄関口には・・・



    「両面宿儺様と裏梅の家」と拙い文字で書かれた表札がぶら下がっていたのだから。

  • 126二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 19:46:45

    改札の名前に様をつけるな裏梅

  • 127二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 19:50:50

    「めんたいこ」
    「えっ?あ、ほんとだ携帯鳴ってる、ありがと狗巻くん。・・・真希さんだ」

    「優太。全員全力で呪力抑えて潜伏して来い」
    「っ!分かったよ。真希さんも僕らが行くまで無理しないで」

    「隠れんなら伏黒の影に入って行けね?」
    「呪力隠せっつったろ。それにこんなにぞろぞろ入ったら行動できなくなる」

    隠密行動とはいえ、彼らも超人の域にいる者たちである。
    音もなく凄まじい速度で動く彼らを目視で確認できる者など宿儺と裏梅を除けば、この町にはいない。

  • 128二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 19:56:02

    不穏な空気

  • 129二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 20:06:08

    「真希さん」
    「来たか、あれ見ろ」

    身を隠しつつ、東屋の表札を肉眼を確認する生徒たち。
    当然、息を呑むばかり。それこそ虎杖と伏黒は少々身が強張るのを感じざるを得ない。

    「何よあの表札・・・!あの宿儺がこんなことするかしら!?どうなのよ虎杖」
    「いや明らかにおかしいけどよ・・・でもさ・・・伏黒はどう思う?」
    「ああ、確かに違和感がある。両面宿儺自体はある程度名前の通った存在だから、あやかって名乗るアホがいてもおかしくない。だが、"裏梅"を知ってるのはあの戦いを知ってるヤツだけだろ」

    「ねぎとろ」
    「そうだね。つまりは、”あの戦いを知っている者”が両面宿儺を名乗ってるってことだから・・・」

    「ああ、乗り込むぞ」
    真希は意気をたぎらせつつも気配を消して家屋へと近づいていった。

  • 130二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 21:32:28

    今家ん中行ってもすっくんいないぞ!

  • 131二次元好きの匿名さん24/10/17(木) 07:29:12

    すくおじはちょっと嬉しすぎてスキップしただけなのに
    真希さん達が一触即発シリアスモードになってるの面白すぎる

  • 132二次元好きの匿名さん24/10/17(木) 10:07:27

    音を立てないように玄関の戸を開ける真希。続いて乙骨ら高専生たちが入り込む。
    当然のように上下左右のクリアリングを済ませていく手際にはさすがの一言。

    「いくら」
    「了解」

    鴬張り、というわけではないが自然と軋むはずの廊下を踏んでいるのに音がしないのは、彼ら高専呪術師の技量を端的に物語っている。
    東屋はそう極端に広いわけではない。
    それぞれが最大限に警戒しつつ進んだとしても居間までたどり着くのに、一呼吸分もいらなかった。

    そこで彼らが見たものは、



    宿儺を模したお手製の人形の手を持って、自らの頭を撫でさせている裏梅の姿であった。

  • 133二次元好きの匿名さん24/10/17(木) 10:37:27

    「っ!!!????」

    困惑しながらも瞬時に緊急事態を察知し居間から庭へと飛び出す裏梅。
    当然追う真希ら高専生。

    庭に出たところで、虎杖ら3名の呪術師に逃走を阻まれ、結果的に呪術高専3年2年の全員に包囲される状況に陥ったが、その目はまだ諦めてはいない。

    「なっ、なにものだ・・・っ!!?」

    裏梅も気づいた。
    いま目の前に立っている者たちは前世で戦った者たちである。現在の肉体では身体能力は極端に落ちている上、呪力も前ほど旺盛には練れない。もちろん多少の呪霊や凡百の呪詛師などは相手にならないが、この者たちは手練れである。
    自分の命の保証などない。

    「何してたんだよ」真希は問う。この小さな田舎町で何をたくらみ、何を進めていたのかを。
    「い、言うものか!」裏梅は断る。言えるはずがない。宿儺人形を自作し頭を撫でさせて悦に入っていたなど。

  • 134二次元好きの匿名さん24/10/17(木) 11:02:43

    「言わねえのか」
    「言えよ」
    「言いなさいよ」
    「おかか!しゃけ!」
    「言わねえんだ?」
    「言った方が君のためだよ」

    「っ・・・」
    畳み掛けられる裏梅。

    「なんだ?戦う気か?そのちんちくりんで?呪力も練れねえのに?」
    真希が言ったか、野薔薇が言ったか。女の声であったが、裏梅には判然としない。
    宿儺のために奉じたいと心から思っているが、いまの自分ではどうすることもできない。

    「・・・・・・っ」
    じわりと視界がゆがむ。両眼が涙でいっぱいになっていることに裏梅自身は気づいていなかった。

    幼女を取り囲んで泣かせているこの状況に、虎杖らは居たたまれない気分になっているが、当の裏梅本人はひっくひっくと呼吸が裏返るばかり。両手で必死に眼をこするもあふれ出る涙を止める術を彼女は知らなかった。

  • 135二次元好きの匿名さん24/10/17(木) 11:10:07

    >宿儺を模したお手製の人形の手を持って、自らの頭を撫でさせている裏梅の姿であった。

    あまりにも可愛すぎる

  • 136二次元好きの匿名さん24/10/17(木) 18:57:47

    この状況で腕おじ帰ってきたら一触即発では…?どきどきするな

  • 137二次元好きの匿名さん24/10/17(木) 19:06:16

    あのガラ悪い連中が幼女を囲んでるとこ想像してしまったw

  • 138二次元好きの匿名さん24/10/17(木) 20:59:39

    腕おじ!裏山で叫んでる場合じゃないぞ!

  • 139二次元好きの匿名さん24/10/17(木) 22:35:36

    保守

  • 140二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 00:34:12

    裏梅かわいそうだけど高専生からすれば一瞬で全員の動き止められるレベルの術師でしかないからな…

  • 141二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 08:19:51

    保守

  • 142二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 08:38:12

    裏梅の今がちんちくりんでも以前実際に出力最大霜凪喰らった事がある真希さんが一切容赦しないのはすごくよくわかる
    わかるけど…もう少し手心というか…腕おじそろそろ帰ってきそうだし…

  • 143二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 09:13:07

    「なにごとだ」

    誰も反応できなかった。
    獣よりも鋭い感覚を持つ真希ですら、その接近を察知できず裏山の土を踏んで砂利混じりになった足音が背後で響くまで、その存在をつかむことができたものはいなかった。

    刹那、虎杖・伏黒両名は気づく。

    ((受肉体じゃねえ!!))

    全員が振り向く前に瞬間移動じみた速度で裏梅の傍まで移動する宿儺。膝を折って目線の高さを裏梅に合わせる。
    裏梅の方もどうにか心を落ち着けつつ、現状を報告しようと努めた。
    現在包囲されていること、こちらからは攻撃していないこと、敵対者であろうこと、自分が肉体的にも呪力的にも制限がかかっていることを看破されていること・・・・
    あらゆる情報を端的に伝える一言を裏梅は模索した。そしてたどり着いた一つのは結論。


    「っ・・・っ、なにも・・・してないのに・・・・奴らにっ・・・・いじめられました・・・っ・・!」

  • 144二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 09:16:16

    腕おじ来ちゃった

  • 145二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 09:25:53

    愛娘がガラの悪い高校生から何もしてないのにいじめられてたらそりゃ腕おじ激怒よな

  • 146二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 09:26:40

    宿儺はここで人間になるかバケモノのままか真価が問われるな

  • 147二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 10:51:30

    「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

    ”いじめられた”という一言は事態を端的に伝えるための裏梅なりの工夫であったが、正確な語彙を用いる以上に宿儺の心をやすりで撫でつけ、感情を掻き立てた。
    途端にこめかみから走る青筋は一気に全身へと広がり、誰がどうみても激憤に駆られていることは間違いなく分かる。もはや”怒り”の一言では形容しきれないほどに宿儺の怒気は極まっていた。

    力強く脈打つ心臓と強張りを増し続ける筋肉は、全身をめぐる血管を皮膚表面に浮かび上がらせ、そのうちのいくつかの血管は急上昇した負荷に耐え切れず出血へとつながった。当然体表のみならず体内の血管も内出血を起こし、一瞬にして血まみれになった両面宿儺。

    しかしむしろその傷の痛みが功を奏したのか、宿儺は反転術式のために多少冷静になる必要があった。その結果、この場で怒りに任せて領域展開し今まで裏梅や近隣の者たちと築き上げてきたあらゆるものを塵埃へと変じさせるのを避けることができたのである。

    ことの経緯を含めて、改めて話をするに繋がったのは前世までの彼ならばあり得ない事態であろう。

  • 148二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 11:06:51

    居間に置かれたちゃぶ台は決して大きくない。宿儺の対面に座れるのは代表者の乙骨と反射神経に優れた真希、宿儺についての理解が深い虎杖の3名。ほかの者たちは後ろに立って話をすることにした。

    「てか、このお茶うまっ!」
    「当然だ!私が宿儺様のために淹れたお茶だ!宿儺様は美食家であられる!貴様のような貧乏舌とは器が違うのだ!」

    「ねえ伏黒、なんか猫みたいな呪霊いるんだけど・・・」
    「なんだアレ・・・猫か・・・?」

    「茶菓子もうめえな」
    「あっあっ、それは宿儺様の!貴様ら食べ過ぎるな!宿儺様の分が減る!」

    「構わん、裏梅。また作れ。・・・・・・・して、貴様らの要件を聞こう」
    「調査です。両面宿儺の名をかたる者が現れれば調べるのは当然でしょう。まさか本人がそのまま復活してるとは思いませんでしたが・・・・」

    外野は賑やかであったが、ちゃぶ台の4名は虎杖を除いて全員が張り詰めたような緊張感の中で話している。だが、乙骨は早い段階で宿儺に交戦の意志がないことを感じ取り、事前の調査で近隣の住民と交流すらしていることを突き止めていたため、警戒は解かないが緊張は徐々に緩和していった。それは真希も同様である。

    宿儺の方は、みな裏梅の料理を口々に誉めるので上機嫌になっていたが、顔面の上ではあくまで緊張感を保ち続けていた。

  • 149二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 11:47:46

    意外なほどに会談は早く終わった。宿儺に害意がもはやないこと、公的な身分証明があることなどがその理由だが、実際には受肉体ですらない両面宿儺を捕らえ、閉じ込め、罰することができる機関などこの世界のどこにもありはしないというのが実情である。
    もちろんそれを口にはしないし、宿儺の方もだからといって以前のような振舞いをするわけでもない。人格の芯を変えるほどに前世の敗北は重かったのだろう。

    もはや両面宿儺に危険性はないと断じ、宿儺亭を後にしようとした乙骨らであったが、山の空気は移ろいやすい。台風19号が直撃したとの報をTVのアナウンサーがしている。

    数分後、ぶんすかと怒気を上げながら東屋の二階に布団を敷く裏梅の姿があったが、呪霊のミチナガを除いてそれを見る者はいない。東屋の二階は普段使っておらず多少誇りっぽくなっていたが、あっという間の掃除の技は見事なものであった。

    台風が過ぎ次第帰れと剣幕を立てる裏梅をあしらいながら、高専生らは呪いの王の居宅に泊まることになった。

  • 150二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 11:57:42

    平和…!

  • 151二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 13:17:44

    成り行きとはいえ腕おじハウスで修学旅行みたいになってる高専メンバー
    なんかみんなかわいいなw

  • 152二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 16:46:47

    虎杖は本当に嬉しいだろうなあ

  • 153二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 19:41:24

    「ちょうどいい、女どもに風呂に入れてもらえ」
    「私の方がだいぶ年上です!宿儺さま!宿儺さまー!」

    「おらっ、大人しくしやがれ」
    「てめー凍らせてきたの忘れてねえからな、おら来い」

    「しゃけ」
    「うん、完全に悪漢だね」

    てんやわんやの乱痴気騒ぎ・・・とまではいかないまでも、そこそこに賑やかに一日を過ごし、夜を迎えて皆が寝静まった頃、虎杖はふと目を覚まし階下へと降りていった。寝静まったといっても正しくは皆若干の警戒を残している。女子二人におもちゃにされていた裏梅だけは怒り疲れて真希と野薔薇の間ですっかり寝入ってしまっているが、他はわずかに起きているあたり、さすがというべきか。
    台風は雨雲を全て持って行ったのだろう。「台風一過」という言葉をそのまま具現化したような明るい月夜が冬の空に広がっている。

    バレンタインデーは14日。その夜は当然15日。実際には満月より少しばかり楕円みがかかっていたが、十分に明るい。冴えわたる月光を受けながら、縁側には両面宿儺が座して月見に興じていた。

  • 154二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 20:03:18

    「裏梅は眠ったか」
    「ああ」
    「そうか」

    「・・・・なんも言わねえの?」
    「必要か」
    「・・・・いや、いい」

    宿儺は意外だと感じていた。あれほど疎み続けた小僧を前にすればもう一度憤懣が満ち溢れてくるかと思ったが、今こうして隣に座っていても心にさざ波すら立たない。己の変心をこそ、最も意外なものだと内心で嗤う。

    虎杖もまた、不思議な意外性を感じていた。
    日中のやり取りからすでに交戦の意志はなく、すでに呪いではない別の生き方を模索しているとはいえ、前世の宿儺を殺した張本人である自分には何かしらの思うところがあるのでは、と。

    しかし、両者の間に会話は多くなかった。端的な言葉をほんの少し交わすのみ。それでも不思議と満ち足りるような感覚があったのはきっと虎杖だけではないだろう。
    宿儺の日本酒を猪口で呑む。この場には未成年飲酒を咎めるものはいない。

    一部始終を見ていた乙骨は柔らかく微笑み、刀を納めて布団へと戻っていくのだった。

  • 155二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 20:04:39

    虎杖と宿儺の対話来るか

  • 156二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 20:07:30

    静かな描写にしんみりしてたところで普通に抜刀してた乙骨に笑ってしまった

  • 157二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 20:17:01

    前世では同じ体にいながらも今世の方が心の距離は近そう

  • 158二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 20:31:23

    隣に座って何も言わずに月見酒とか、これもうズッ友じゃん・・・

  • 159二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 21:36:56

    そうだよな、"宿儺おじさんと"だもんな
    おじさんって事になるのは虎杖だけだもんな...

  • 160二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 22:56:55

    ナチュラルな未成年飲酒と抜刀乙骨でちょっとじわじわ来る

  • 161二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 00:57:18

    本当に文章力高いのと食べ物に関する描写が上手すぎる
    支援

  • 162二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 02:07:12

    早々に警戒レベル下げてた描写があったのにカジュアルに抜刀してる乙骨物騒で草

  • 163二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 09:43:36

    女子ズにおもちゃにされて怒り疲れて寝ちゃう裏梅かわいい

  • 164二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 10:15:23

    「小僧」
    「ん?」
    「俺は呪いだ」

    その言葉を虎杖はよく覚えている。忘れるはずもないあの戦いの最後を締める両面宿儺の末期の台詞。
    ともに生きる道はないかと問う虎杖の、その無辺の優しさから差し出された手を払いのける呪いの王の気高さを、虎杖はある種の敬意すら持って思い出す。

    「呪いは呪い。人の負の澱だ。」

    そうつぶやく宿儺の眼は月から些かも逸れていない。史上最強の呪術師の様を端的に物語る雄弁な視線であった。
    しかし、同時に宿儺は気づいてもいる。虎杖はまだ気づいていない”それ”をゆっくりと語り始める。

    「負は羨望を産み、やがて呪力を得て呪いへと変ずる。だが、そもの根本にあるのは、かくあれかしとする望み。願いだ。
    呪いは願いでもある。俺は呪いだ。

    小僧、お前の呪いだ。

    強くあれよ、虎杖悠仁」

    そう告げる両面宿儺の表情は正負のどちらとも形容しがたい深みを携えていた。

  • 165二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 11:07:29

    宿儺の人物像とはかけ離れている。
    キャラが違うといえばそれまでだが、虎杖はもっと深い次元でことを捉えていた。

    もし次があったなら別の生き方をしてみる。
    両面宿儺は宣言通りにその生き様を変えてみせている。
    無論、その宣言を虎杖は知る由もないが、不思議と宿儺自身が囚われていた何かから、解放されたことを嬉しく思う自分も自覚していた。

    飲酒による高揚感なのだろう。敵地でくつろぐ非日常感がそう感じさせたのだろう。
    そうでなければどれほど幸福な夢であろうか。

    命と未来を奪い合った敵と酒席を共にするなど・・・。

  • 166二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 11:27:42

    おじさん…

  • 167二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 12:39:02

    最終回読むまでこの2人がこんなに穏やかに話せるところ中々想像できなかったな
    宿儺への理解度が高いからこそちゃぶ台会談で真っ先に緊張投げ捨ててたぽい虎杖の描写良い

  • 168二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 14:58:24

    「本当にもう行くのか?あと2~3泊くらいなら宿儺様もお許しになると思うぞ?」

    翌朝、東屋の前には真希と野薔薇の袖を引きつつ延泊の提案をする裏梅の姿があった。
    大きな流れはひと段落したとはいえ、人が生きている以上は呪いははびこり、呪霊も生まれれば呪詛も飛び交う。
    高専呪術師である彼らが休まる日などない。

    呪術師である以上、悔いのない死など来ないと言ったのは誰だったか。
    だからこそその生き様にこそ輝くものがあるのだろう。

    この小さな田舎町は、史上最強の呪術師・両面宿儺が居る限り不届き者に侵されることはないだろう。
    であれば、高専呪術師たちがこの町に長居する理由はない。ほかにも守るべき者だちはいるのだから。

    「困ったら呼べ。お前が手こずるなら多少は楽しめるだろう。」
    「ええ、そのときはお願いします」

    立ち去っていく彼らを見送る裏梅は気丈に見えてどこか寂し気であった。

  • 169二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 15:04:48

    裏梅が懐いとる…

  • 170二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 15:06:23

    「小僧」
    多少距離が開いたところで、宿儺は虎杖を呼び止めた。

    「?」
    振り返る虎杖。
    呼ばれたのはあくまで虎杖だけだが、他の高専生らも同様に振り返る。

    「次は夏休みに来い」
    「っ!宿儺様!」
    宿儺の言葉を聞いて顔を明るくしたのはむしろ裏梅の方であったが、その理由を暴き立てるのは野暮がすぎる。

    「・・・!っ、ああ!!」

    冬は終わり、沈丁花の花が大きく咲き始める。木蘭もつぼみをこしらえて春の気配に備えている。
    季節は巡る。
    春を経て、ふたたび賑やかな夏がやって来る。

    宿儺と過ごす夏がふたたび・・・。


    ~宿儺おじさんと夏休み 完~

  • 171二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 15:12:00

    わああああ!!!
    終わり方が美しい…!!お疲れ様でした!!!

  • 172二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 15:15:26

    ~エピローグ~
    「乙骨優太」
    「来てくれましたか」

    「標的は?」
    「複数います。特級呪霊なのは間違いですが、術式までは分かりません。生存者が体内にいるのか、それとも別空間にさらわれたか、いずれにしても僕一人だと力攻めになるんで。里香ちゃんも含めて3人いれば犠牲者なしでいけるかなと」

    「さっさと仕留めるぞ、裏梅を高専に預けている。悪い影響をもらいかねん」
    「はは・・・心強いですね」

    現代の異能と史上最強。二つの巨星が共に照らし合えば、有象無象などひとたまりもない。それからしばらくして東京の若者たちの間で「刀のお兄さん」と「腕のおじさん」の噂が流れたが、真偽のほどは定かではない。

  • 173二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 15:21:22

    ~エピローグ2~
    title : 小僧
    本文:裏梅がこのあいだの漫画の続きを求めている。用意しておけ。

    ・・・・・

    title : 小僧
    本文:裏梅が玉打ちがしたいと言っている。教えてやれ。

    ・・・・・

    title : 小僧
    本文:裏梅が女どもと会いたがっている。今度連れて行くから伝えておけ。


    「いや、なんでアンタらそんな慣れ慣れしいのよ」
    「いや~・・・いやホントなんで?伏黒もメールくんの?」
    「来るわけねえだろ。むしろなんであの両面宿儺が携帯持ってんだよ」

  • 174二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 15:22:37

    最初から最後まで終始裏梅がかわいいSSだった・・・!

  • 175二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 15:23:23

    裏梅ちゃんめっちゃ懐いとるw親戚かよw

  • 176二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 15:24:26

    うーん平和…美しい世界…

  • 177二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 15:26:54

    空欄でも良いのに律儀にタイトル入れるところ妙に真面目で草

  • 178二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 15:34:55

    脳内で映画化決定のテロップが流れた
    世にも美しいものを見せていただいた心地がする
    毎日続きが待ち遠しかったです
    ありがとうございました

  • 179二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 15:36:33

    ~エピローグ3~
    「ん」
    「?」

    呪術高専東京校。だいぶ人が減ったとはそこはやはり総本山。教室からも運動場からも人の声が聞こえてくるこの施設。
    乙骨に呼ばれた宿儺はもう何度目になるかも分からないこの場所を訪れている。

    その廊下ですれ違ったのは家入であった。
    宿儺は伏黒の記憶から家入を知っていたが、こうして直接会うのは初めてのこと。当然、向こうから話しかけられるのは思わなかった。それが脈絡もない煙草の誘いともなれば言わずもがな。

    「復活のきっかけか・・・」

    宿儺が語るのは前世の戦いの直後の記憶。魂の巡る回廊にてした一体の呪霊との会話の内容。
    家入が知りたかったのは級友であった五条や夏油が、この宿儺と同じように復活する可能性があるのかどうか。

    本来死者の蘇生はあり得ないが、呪術の頂点を極めた者なら・・・という期待があったのかもしれない。

  • 180二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 15:44:40

    「あのとき、俺と裏梅は確かに魂の巡りを感知した。そして”次”があるなら、と望みもした。自分自身では”望み”というほど強い感情ではなかったと思っているが、こうして結果を見る限りはそうなのだろう。もし、五条悟が”次”を望んだとしたら、あり得なくはないだろうな」

    それを聞いて家入は笑う。
    学生の頃のように朗らかに、子供のように歯を見せて。

    「ありえないね!ふふ」

    五条も夏油も命を燃やし尽くして散っていったのだろう。
    今更になってもう一度生を欲しがるような五条を、夏油を、家入は想像できなかった。

    「礼を言うよ。残りは全部吸っていい」
    そう言って煙草の箱を投げ渡す家入。宿儺は本来煙草を吸わないため、全力でむせるのを抑えていたが、腹部の口は盛大に噴き出すばかりである。

    もはや居室となっている医務室へと戻っていく家入の足取りは、不思議と軽やかなものであった。

  • 181二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 15:45:14

    なんかスタッフロール見てるみたいだ

  • 182二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 16:02:54

    上の口で吸って下の口で煙吐き出す宿儺そういうオモチャみたいでおもろい

  • 183二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 17:00:43

    ちょっと解剖したくなる体の構造してんな

  • 184二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 17:05:13

    裏梅かわいいし宿儺はいいおじさんしてるし平和な世界だった
    終わるのが寂しいな

  • 185二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 18:03:22

    ~エピローグ4~

    「宿儺様!」

    妙に明るい裏梅の顔。本来なら心安らぐはずのこの光景だが、本能的に何かを察知した呪いの王に緊張が走る。
    「宿儺様!駅前に遊戯場ができたとのことです!」

    おかしい。
    宿儺は違和感を覚えていた。裏梅がにこにこと笑っていることはもちろん喜ばしいことであるし、報告の内容も別段問題のあるものではない。にもかかわらず、宿儺の背には冷たい汗がにじんでいる。いや、実際には汗などかいていないのだが、少なくとも宿儺自身は極めて不可解な不安感に襲われていた。

    遊戯場ときけば、以前東京見物の際に裏梅を連れて行った”ゲームセンター”が頭に浮かぶ。UFOキャッチャーに夢中になり、せいぜい700~800円程度の小さな人形を8,000円近くかけて粘りに粘って手に入れた達成感は悪くないものであったが、今回はどうやら違うようである。

    とはいえ、裏梅が喜ぶのであれば連れていくのは悪くない。
    なにがあろうと最強の呪術師がいれば安全は保障されているのだから。

  • 186二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 18:11:04

    ジュンアイレッシャ!
    イキナサイ、シンジクン!
    シンウミモノガアタリ!

    遊戯場までやってきた宿儺と裏梅を迎えたのは明らかに人相の中年や老壮の客たちとけばけばしい音を立てる玉打ち台の数々であった。
    問題はその見た目がキラキラとしていることにある。

    洋の東西を問わず、子供は光物に引き付けられるもの。
    「宿儺様!あれは確か!」
    「やめろ、思い出すな。見てもいいから。思い出すな。」

  • 187二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 18:49:18

    >>186

    前世の記憶が...

  • 188二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 19:22:04

    すくおじ、裏梅のパチンカス化を恐れてて草

  • 189二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 19:24:01

    >>173を見る限りダメだったみたいですね

  • 190二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 19:30:37

    >>189

    ま、まだメンコとかの可能性もあるから・・・

  • 191二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 21:44:26

    まじで好きなSSスレ
    "次"があるならばまた読みたい

  • 192二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 21:51:06

    「宿儺おじさんと」の『と』は裏梅にかかってると思ってたけど、虎杖にもかかってたんだな

  • 193二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 22:57:30

    洋画みたいなラストで好き

  • 194二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 23:00:51

    毎日の楽しみが終わってしまった

  • 195二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 23:42:03

    冬休みも春休みもゴールデンウィークもやってくれ、必要だろ

  • 196二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 23:43:47

    ロリ梅を想像するのは思っていたより気持ちがいいぞ

  • 197二次元好きの匿名さん24/10/20(日) 00:10:15

    このスレの裏梅が日々の癒しだった……まじで終わってしまうのか……

  • 198二次元好きの匿名さん24/10/20(日) 00:43:16

    夏休み終わっちゃったな…でもこのスレの世界には来年の夏休みもあるんだ

  • 199二次元好きの匿名さん24/10/20(日) 04:52:24

    ありがとう楽しかった

  • 200二次元好きの匿名さん24/10/20(日) 07:24:45

    フォーエバーおじさん

オススメ

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