【独自設定・SS】荒野の名無し

  • 1二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 20:25:31

    謎の訪問者 街を救い姿を消す
    そう見出しに書かれた新聞が砂塵に巻き上げれれ荒野の空を舞う。


    ここはサンダージャンクション、約1年前領界路が開かれた時から、ファイレクシアにより傷ついた多元宇宙が未来を掴むために目指した新天地。

    そこに馬に乗ったマントをつけた男が放浪していた
    男は腰に剣の鞘とサンダー・ブラスターが下がっている
    砂漠と荒野、サボテンがひたすら広がりゆくなか、男はもう3日は食糧を口にしてない フラフラになりながら終わりないように見えた砂漠を見据えると……大きな岩山が見える

    目をこらすと2つの大きな岩山に囲まれその砂を受けない場所に小さな街があった
    馬に鞭をうち、必死に街に向かう
    水だ!食糧だ!

  • 2二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 20:29:18

    村のゲートにはCity of Cabralin(カブレランの街)と刻まれており、武装した開拓者が槍を構えて馬を止める
    門番は言う
    「お前、見ない顔だな」
    「……旅の途中だ、水と食料を分けてくれないか このままでは野垂れ死にしてしまう」
    「金はあるのか」
    「あぁ」そういってスターリング社発行の銀貨を見せる
    「よし」「いや待て お前出身と名前は」
    「……名乗るほどのものではない、このままじゃ馬が死んでしまう」
    「怪しいな」「この辺りで最近地獄拍車団がうろついてるのは知ってるな、悪いが身元もわからん余所者を入れることはできない」
    「そこをなんとかできないか」
    「なら名前と出身次元くらい言え!言えない理由でもあるのか」

    そんなやり取りをしていると……新聞を握った髭を蓄えた老人が怪訝な顔で新聞と馬に乗った男を見比べる
    「まさか……!?そんな
    おーい!あんた、名をあかせないといったな」
    「町長、どうされたんです」「今追い返すところで…」
    「なんだ爺さん、あぁ言いたくない」
    「そしてサンダー・ブラスターと剣を腰に下げた、正体不明の謎の訪問者!
    いい、ワシが許す存分に街で寛ぐといい!水も食料も出す!」
    門番たちは狼狽える
    「そんなこんな馬の骨ともわからないやつを入れるなんて!」
    「いいんだ、後で説明する」

  • 3二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 20:30:17

    「……かたじけない」
    男は町長と呼ばれた男の誘導でおそるおそると街に入っていく
    街は人が少ない、また恐ろしい"完成化"により腕や脚などの体の一部が硬い機械に侵食されてるものもいた
    「中心を変えられたものは、生き残れなかったのだろうな」

    そして、町長が持っていたのと同じ新聞を持った少年が目を輝かせながら男を見つめていたが男には意味がわからない
    そして酒場に通されると……
    「来た」「あいつが……」「ヒューッ」
    訳も分からぬまま酒場でテキーラと、表にとめてる馬に与える水と葉っぱを頼むと……テキーラが横のカウンターを滑って男の前に置かれる
    「俺の奢りだ!頼むぞ!」
    「……あぁ」
    男はテキーラを飲む、雑味の多い粗悪な味だ、しかし数日ぶりの冷たい飲み物には違いない
    「おい、その剣見せてくれよ」
    そう後ろから別の客に言われると、腰につけた拳のマークが刻まれた剣をみて焦った様子で振り返る
    「なぜ刃が見たい」
    「い、いや……どんなもの持ってるのかなって」
    「見世物では無い、構うな」
    そういってテキーラを再び煽る

    「この反応、やっぱり」「あぁ"謎の訪問者"だ……」
    少年「かっこいい……!」

  • 4二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 20:33:51

    暫くして酒場で水袋に水をたっぷりと詰めると、男は保存食を買おうとする
    しかし街の人達は食糧なら渡すから街に残ってくれと頼み込む
    「何故だ?どうして俺にそこまで親切にする」
    「何故って……貴方様が"謎の訪問者"だからですよ!?」
    そういって新聞をみせる

    "謎の訪問者 街を救い姿を消す"
    そこにはサンダー・ブラスターと魔法の剣を振るい、強盗団を倒し各地の村を救うも名前も告げずに去っていった英雄がいるというニュースが載っている
    そして記載されてる写真が目の前の男と似たような格好だ

    「隠しても無駄です、英雄よどうかこの街を地獄拍車団の魔の手から守ってください!報酬なら街にある有り金を集めてでも工面します!」
    「……地獄拍車団か 奴らに何かしたのか」
    「いえ何も!だが彼らが一方的にこの街を気に入って……」
    「数は如何程だ」
    「14人、1人はヴィーアシーノで彼らの集団のボスのようです」
    「……そうか、水や食糧は有難い」
    「いえいえ、助けてもらうならこんなもの容易いですよ」
    「だがこの話は受けられない」
    男は表情を崩さずいった
    町長が縋り付く
    「どうしてです!?この街には戦えるものが少ない……あなたの助けが必要なのです!」
    「なら逃げればいい、他の町を作って」

    そういうと皆沈んだ表情をうかべる
    「もう逃げる力も残ってないよ……」
    「見ればわかると思うけど、俺たちの次元は、カブレランはあの忌々しいファイレクシア戦争で掌握されたんだ
    自然豊かで平和な次元だったのにあっという間に機械に侵食されて……やつらは停止した、でも次元はもう手遅れだった」
    「すべての自然が無くなった!友や家族だったものも動かない人形になった、俺の腕だって…」
    「やっとのことで生き残ってももうカブレランでは暮らせない、そう思って開いた領界路を通ってこの次元に流れ着いたんです、街の名前を故郷の名前にして」
    「もう故郷を失いたくない!頼む!」

  • 5二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 20:38:45

    そこまで言われ、動けなくなる男
    「……わかった、やつらはいつやって来る?」
    「ありがとう、ありがとうございます……!おそらく周期的に3日後にはもう」
    「俺だけでは勝てない、仲間を連れてくる
    今すぐ俺の馬に荷物を載せてくれないか
    仲間の分もいるからなるべく多く頼む」
    「新聞では仲間なんていないなんて書いてあったような」
    「1人で強盗団倒せるわけないだろう?あいつらはシャイなんだ
    揃えば無敵だよ」

    そう聞くと町民たちは喜ぶ
    「これで助かるぞ!」「ありがとう"訪問者"様!」
    「…………明日の朝にはたつが、もう荷物は準備しててくれ
    俺は早めに寝る」
    町長「おやすい御用です!」
    そして男は街唯一の宿屋で眠りにつき、住民たちも安堵して帰路に着く

    ____深夜
    宿屋の前の厩戸に男がたっている、町民は約束通り数人分の食糧や水を用意してくれたようだ
    「……正直な奴らだ」
    そして馬に跨り、静かに街を出ていこうとする
    「兄ちゃん俺も連れて行ってくれよ!」
    ゲートの横の声に驚くと、そこには昼間に見た少年がいる
    「静かにしろ ……連れて行けるわけないだろ、にげ、いや今から仲間を連れてくるんだ 信じて待ってろ」
    「やだ!俺もついていく!」そのまま飛び上がって男にしがみつく
    「こら、離れろ!」そしてそのまま鞘に触ると……思ったより軽いことに気づく
    「あれ、これって……おかしいぞ!?この剣、柄しかない」
    「!!」
    男は咄嗟に手刀を繰り出す、少年は気絶し、そのまま重い荷物と大人と子供の重さに悲鳴をあげながら馬は街を出ていく。

  • 6二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 20:47:56

    ____朝 鋸歯の痩せ地
    少年は目が覚めると、体にロープを巻かれて動けないようにされている
    「何するんだよ兄ちゃん!あんた正義の訪問者なんだろ!?」
    「……まだ気づかないのか
    いいか、この写真は、俺じゃない
    こんな格好の旅のものは数え切れない程いるんだぞ」
    「俺たちを騙したのか!?」
    「勝手に勘違いして、勝手に恩を売られて地獄拍車団と戦わされそうになったんだぞ こっちが被害者だよ」
    「名前が言えないってのはなんだったんだ」
    「故郷も自分の名前も嫌いなんだ、だから次元を出て自分を知らないものがいる新天地を探していた……それがこうなるとは もう罪は犯さないと決めてたんだが」
    そう向き合うと、冷たく睨みつける

    「何を、するつもりなんだ」
    「このままお前に村に帰られると連れ戻されて巻き込まれかねない……お前はこのままここに置いていく
    安心しろ、縄を手だけ切って食糧は置いていく
    俺が去った後に脱出して、お前は街には帰らず新たな街を目指せ」
    「街の皆を置いていけないよ」
    そういうと男は深くため息をつく
    「地獄拍車団には勝てない、アクルの居る本隊でなくともだ、皆で死ぬよりは1人でも生き残れ」
    「それでも……!」

    その時、岩場の影で何かが動く
    「!!」とっさに少年を抱えて飛び退く男
    先程まで少年がいた場所に高速でコヨーテが突っ込んでくる

  • 7二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 20:55:07

    「ずっと獲物の様子を伺ってたのか……気づかなかった」
    男の脚にかじりつこうとするが、そのまま蹴りをくらい鳴き声を上げながらよろめく
    そしてそのまま馬に狙いを定めるコヨーテ
    「させるか」腰のブラスターを引き抜く
    「偽物でどうやって」
    「誰がこっちもハッタリだと言ったよ」引き金を引くと銃身に自然の魔法……サンダーが渦巻き打ち出されてコヨーテの脇腹を撃ち抜くと焼け焦げた匂いが立ち込めて獣は息絶える。

    「……こんな猛獣がうろうろしてる荒野で次の街まで行けない、カブレランに連れて帰って!そして兄ちゃんどうか街を救って
    剣が飾りでも、ブラスターの方は本物なら……!」
    「……弾は今ので残り1発
    サンダーは貴重なんだ それに考えてみろ、1人で14人の無法者に勝てるわけないだろ だから俺はここで」
    「サンダーならある!」
    その言葉にピタッと足を止める

  • 8二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 21:08:10

    「街の両脇の、あの大きな岩山みたよね、あれの中には野生の魔法が渦巻いてるって町長の爺ちゃんが言ってた」
    「騙されたから騙し返そうって魂胆か」
    「嘘じゃない!俺のポケットを見てみろ」
    男は少年のポケットを探ると……石が入ってる
    軽く叩くとサンダー特有の光が発せられる
    「爺ちゃんが言ってた、もしかすると地獄拍車団もそれを狙ってるのかもって
    ……いざとなればサンダーを炸裂させて街ごと奴らを返り討ちにするって」
    「それじゃあ自爆じゃないか」
    「話はわかっただが弾と報酬があっても1人じゃ無理だ 「そんな」
    「……だから、お前たちも戦え」 「えっ」
    「莫大なサンダーがあるなら話は別だ 籠城すればまだ勝ち目はある……」
    「でも俺たち、力なんて」
    「お前たちの街だろ、人を巻き込んで起きながら人任せなんて虫が良すぎる……何より、あぁくそ!」頭を掻き毟る
    「死ぬかもしれないって分かってても、あそこまで頼まれて人を見殺しにするなんてやっぱり胸糞悪い
    最後はすべて爆発する羽目になるかもしれないが、こうなれば"謎の訪問者"を演じきってやる」

    ____昼 カブレランの街
    居なくなった少年と"謎の訪問者"を探していた村人は、荒野の向こうから走ってくる馬を発見した「英雄が帰ってきたぞ」「ガキも一緒だ」「でも仲間が居ない」
    「すまない、夜中に早く仲間と合流しようとしたらこの子に乗せてけと言われてな
    連れていったが仲間はもう去ってしまっていた」
    「それじゃあ…どうするんですか」
    「町長、話がある 勝算について聞いた」
    町長はなんのことか気づき、町民を去らせて町長の家で話をすることになった

    「いいか、2日後までに街の前に濠をつくる、そしてバリケードを設置して投石器でサンダー入りの岩石をぶつけて攻撃する、近づいてくるやつは木の棒で押し出して濠に落とす
    濠には水を張っておき……残酷ではあるが、そこに高濃度のサンダーを流し込む」

    町長たちは驚きながらも妙案だと言い合う
    「攻め込む戦いでは無理だ、いいか守る戦いをとるんだ
    それを乗り越えてくる相手は俺が倒す」その間、少年は黙りこくっている

  • 9二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 21:11:00

    ____夕方 岩山で
    男と少年は暮れる夕陽ともう工事に着手した町長たちを高台からみながら話す
    「…兄ちゃんごめん、巻き込んでしまって」
    「今更だな ここまで来たらしょうがない」
    「うん 今度こそ故郷を絶対守りたいんだ でも兄ちゃんは自分の故郷が嫌いなんだっけ」

    そう言われると、男は少しずつ語り始める
    「…俺の故郷はな、9つのギルドを中心に回ってる都市の次元なんだ」
    「じゃあ兄ちゃんもギルドに?」
    「いや俺は門なし…ギルドに入ってない人間だった
    いや、それよりもっと酷い落伍者だ」
    「俺は第10地区で共にすごした友人達とボロス軍という治安維持を任されたギルドに入った
    俺は腕っ節に自信があった、しかし魔法の方は得意ではなく、なにより今思えば驕りがあった」
    「魔法使いだったの?」
    「俺の次元では魔法は割とポピュラーなものなんだ、だが俺はその中でもボロス軍で重要な呪文も唱えられない…半分だけはできるんだがな
    片方のマナ1つを練るのはできる、2つのマナを練ろうとすると集中が切れてしまう」
    「……そして俺は大切なところで呪文を打てなかった、軍務規定違反で軍から降格させられた
    ギルドの在り方に合わないと追い出されたんだ。この刃の無い剣はそうして突き返されたものだよ」
    「それで、故郷を出たの」

  • 10二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 21:18:56

    「いやそのあと友人もボロスをやめた、勝手に俺は自分と同じだと思って友人に会いにあった……だがアイツは俺とは違った」
    「どういうこと?」
    「門なしが主体になってラヴニカの治安を守る探偵社という団体に所属して変わらず人々を守り続けたんだ
    ドラゴンやファイレクシアンが襲ってきても酒場で呑んだくれてた俺とは全く違ったんだよ
    あいつは門なし時代も、ボロスだったときも、探偵になってからだって変わらず第10地区のために戦い続けてた。
    俺の名なんて付き合い長い酒場仲間ですら覚えてない
    なのにあいつは"ミレヴァ"と名を呼ばれる、"第10地区の英雄"と呼ばれて語り継がれてる……勝手にコンプレックスを感じて、逃げるように故郷の次元から去った。
    だから次元の名前も、覚える価値もない俺の名前も言いたくなかったんだ。それが勘違いされる原因になるとは思わなかったがな……」

  • 11二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 21:26:34

    少年は話を聞いて応える
    「正直ぼくは兄ちゃんの気持ち分からない、だけど兄ちゃんはボクをコヨーテから助けてくれた、見捨てて逃げても良かったのに」
    「それは、見殺しにするのが嫌で」
    「きっとその正義の心というのは兄ちゃんの中にもあるんだ」
    「……そうだといいな」

    そしてあっという間に3日の時が過ぎ去った
    街の正門と裏手には立派な濠とバリケードが作られ、体が動く住民たちは木の棒での押し出しを
    動きづらい住民は投石器を使う準備を
    戦えない女子供は裏手からすぐ逃げれるようにしていた。
    そして町長は……岩山に繋がった導火線と爆裂箱の前でそれらの様子を見ている
    「英雄殿、3日じゃこれしか準備できなかった」
    1ダース分、12発のサンダー・ブラスターの弾だ
    そして、燃える拳のマークが刻まれた剣も。
    「……いざとなれば街と運命を共にするつもりか」
    「なぁに、あんたと他の町民は巻き込まん ワシと悪党だけが砂塵に消えるようにするわ」
    「……安心しろ、俺がついている」
    嘘でも、慰めの言葉を掛けないとと思ったようだ
    「そういってもらえて嬉しいよ、さて……来たようじゃ」

  • 12二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 21:35:39

    鋸歯の痩せ地の方から3台の馬車がこちらに向かってくる
    そして、村の濠の前に止まるとナイフやブラスターで武装した傭兵達やならずものが
    そして身なりのいい服をきたヴィーアシーノの男が現れた
    首には鈍い色をした琥珀のペンダントを掛けている。
    街に向かって叫ぶ

    「この街は俺たち地獄拍車団の縄張りとなる!そういったはずだよな……下手な抵抗しようとしやがって、田舎者に何が出来る、いけ!」
    まず傭兵たちが5人次々に濠に腰まで水に浸かりながらよじ登ろうとする
    すると何処からか隠れていた町民が木の棒をバリケードの隙間から突き出して傭兵を突き落とす
    登りきった相手には酒場の常連がテキーラの酒瓶を思い切りたたきつけ、流血しながら濠に真っ逆さま
    そして常連がサンダーを帯びた石を水に放り投げると……5人は自然の魔法に感電して動かなくなる。

    うろたえる残りの傭兵たち
    しかしヴィーアシーノは冷静に最後尾の馬車に声をかける
    「あいつを出せ」
    「いいんですか!?」
    「こんなバリケード、さっさと壊してしまえ」
    そういうと傭兵が最後尾の馬車の鍵を開けると……馬車が弾け飛んで中から牛のような頭と筋骨隆々としたものが現れる
    サンダーが溶岩のように吹き出した斧を握り込んでいる
    「さっさとあの目障りな壁を壊せ」
    そういうとミノタウロスは走り出し、濠を跨いでバリケードに突っ込み、斧を振るい町民たちを吹き飛ばしていく
    「今だ!街に乗り込め!」
    ヴィーアシーノは馬車に乗り込み、2台の荷馬車が無法者たちをのせて瓦礫を踏み越えて街に侵入していく。

  • 13二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 21:42:54

    その時、ミノタウロス目掛けて赤くオーラを放つ岩が飛んでくると爆発して怯む
    町民「アイツらの仇だ!!」
    しかし、煙が晴れると顔の肌がただれながらも怒りの感情を浮かべて投石器に向かうと……町民ごと踏み潰す
    「……お前たちの犠牲、無駄にしない」
    そこに屋根の上からサンダー・ブラスターを構えた男が現れ、岩が命中したところ目掛けて射抜くと頭部が弾けてミノタウロスは地響きを立てて倒れ伏す。

    「第2弾、放て」「俺たちの街を守れ!!」
    投石器を思い切り押して動かし、街に入ってきた二台の馬車に何個も岩が飛んでいくと……そのうちの1つが馬車に炸裂し、炎上しながらひっくり返る
    「当たった」「これであと1台だ!」

    もう1台の馬車の張り付いている傭兵がサンダー・ライフルを構えながら仲間がもう助からないことを悟ると、馬を操作している頭領に意見を聞く
    「ボス、どうしますこいつら手強い」
    すると後ろに座っていた仮面をつけた仲間が提言する
    「やっぱりこの場所のことをアクル様に伝えてないのは不味かったですよ、戻って仲間を連れて復讐を……」
    「外のやつ、そのライフルを貸せ」
    「え?はい」
    サンダー・ライフルを受け取ると躊躇いなくヴィーアシーノは後ろの仮面の仲間を一瞥することなく撃ち抜いた
    「うわあぁぁ!!あんた何を」
    「ここまで舐められて引き返すなんて冗談じゃねぇ 石投げるしか脳のないやつなんて敵じゃない」
    素早くサンダーをライフルに込め直すと片手に手網を、片手にライフルのまま引き金を引いて的確に投石器を操作していた町民を黙らせる。
    馬を旋回させながら最後の1台の投石器に近づくと莫大な量の赤マナを練り、呪文を唱える
    「【爆発的な脱線】ッ!」
    投石器が粉々に砕け、周りにいた町民達も炎によって燃え上がる
    「すげぇ……さすが頭領!あとは屋根の上のやつだけでッ!?」
    馬車にしがみついてたやつの捕まっていた腕が撃ち抜かれ、そのまま落車して転がっていく
    「あぁ、俺とアイツの一騎打ちだな」

  • 14二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 21:44:23

    ヴィーアシーノは馬車を乗り捨て、街のメインストリートに降り立つ
    同時に男も屋根からメインストリートに降りてくる
    「我が名はダンデス!!地獄拍車団、頭領なり!」
    「俺に名乗る名はない……しかしおかしいな、地獄拍車団のボスはアクルというドラゴンではなかったのか?」
    「我は団の分隊の頭領……今は
    しかしこの街を掌握し、隠されている莫大な宝(サンダー)を手にし……我はアクルをも越える!」

    そういうと首にかけた琥珀を掲げる
    「これはドミナリアの商人から"譲り受けた"宝物だ 曰く、この世に高名悪名問わず名を轟かしたものが身につけると力を引き出すという
    我は名を残したいんだ、地獄拍車団の真の頭領に……!いくら悪行を成してもまだこの宝石は光らない、だがこの街を掌握すれば我もきっと【伝説】になれる!」

  • 15二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 21:45:35

    「そのために、この街を、いや仲間すら犠牲にしてでも力を求めているのか
    ……しかしそれを聞いて安心した、この街のことはアクル達には伝わってないんだな お前たちがここに来たことも」
    一瞬ダンデスは焦ったような顔をするが
    「あぁ、あの強欲な蠍に教えたらすべて横取りにされるからな この街のことはすべて内々に終わらせる
    そしてここは俺の新たな門出のための前線基地になるのだ!
    お前もこの街の人間なら俺の手足となって働いてもらう、投降しろ」

    そう言われると男は答えた
    「俺は、この街の人間じゃない」
    「なら保安官か?」「いいや、ただの通りすがりさ」
    そういうとダンデスの鱗が真っ赤になっていく
    「まさか……お前、あの"謎の訪問者"……!」
    「その名を知っているのか」
    「当たり前だ、名乗るほどでもないとキザったらしく去る嫌味なやつ……我の嫌いなタイプだ!!お前を殺し、その名声をそっくりそのまま頂く!」
    そういってサンダー・ライフルを引き抜き、素早く打ち込んでくる

    「ふっ!」
    それを屈んで交わし……ブラスターの銃口を向け、引き金を引く
    「【ショック】」
    ダンデスの片方の腕から電撃が迸り、ブラスターと相殺された。
    すぐさまサンダーを補充し合う2人
    「(あいつ、大言壮語かと思いきや明らかに魔法の使い方が上手い、ブラスターだけじゃ……!)」
    「おらおら、踊れよ」今度は足を狙って打ってくると足に直撃し激痛が走る

  • 16二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 21:46:55

    高台で見ていた町長は、終わりかと思った……しかし違う
    「【治癒の、軟膏】……」
    痛みを堪えながら力いっぱい拳を握り、白のマナを練り上げると足の傷が治っていく
    肩で息をしながらダンデス目掛けて撃つが……後ろに飛ばれて回避される

    「ハハハ!!なんだそれ
    治癒の軟膏ひとつ唱えるのに息切らして
    お前、魔法唱えるの下手くそだろ」
    サンダー・ライフルを構えたままダンデスは仁王立ちで男の前に出る
    「ほら、打てよ」

    「バカに、しやがって」
    ブラスターを打ち、弾を込め、また打つ
    しかし
    「【ショック】」弾は空中でぶつかり合い相殺される
    「【偏向はたき】」サンダーの動きが途中で変わり、次に放たれた弾とかち合って消える
    こうして町長にもらった弾は打ち尽くし残り、最初に持っていた1発のみ

    「これでわかったぜ、お前"謎の訪問者"じゃないだろ その名を騙った偽物だ」
    「……ッ!」
    「気持ちはよくわかる、名声が欲しい、自分に力があると思いたい……だが我とお前の違いは本当に実力があるか否かだ
    あばよ」
    サンダー・ライフルを早撃ちし、男はその弾をダンデスがやったように相殺しようとするが
    「【削剥】」
    手元のブラスターが"削り取られ"、サンダーが零れ落ちる
    肩をライフルの弾が撃ち抜き血がとめどなく溢れる

  • 17二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 21:49:02

    「これで終わりだ、偽物の英雄
    サンダー・ライフルの弾も勿体ないわ お前には俺の最大火力のぶつけて葬る」
    そういうと岩山から多数の赤マナがダンデスの手元に集められていく
    薄れゆく意識の中、男は考えをめぐらせる
    「(治癒の軟膏……いや時間しのぎにすらならない、攻撃を……赤マナを練る時間が……)」
    その時、手が削られたブラスターの残骸に触れる、いや「サンダー」に触れる
    「!!!」

    「終わりだ!!【乱動の噴火】」
    ダンデスの腕にゼンディカーの乱動のような地を揺るがすほどの火炎が収束していく
    そこに男は呪文を"積み重ねた"
    左手には先程の【治癒の軟膏】
    右手にはサンダーからの赤マナ、それを合わせて……呪文を練る ボロス時代唱えられなかった、あの魔法を
    「【稲妻のらせん】」

  • 18二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 21:51:13

    赤と白の2つの稲妻が螺旋を描きながら【乱動の噴火】が放たれるよりも先にダンデスの体に命中、えぐり込むように撃ち込まれた稲妻の痛みによって集中が途切れて乱動の力が途絶える
    そして男の肩の傷が癒え……チャンスを逃さなかった!
    「うおおぉぉぉ!!」腰の剣を引き抜くと、真っ直ぐな刃が現れそのままダンデスを袈裟斬りにする!
    首の紐が切れ、宙に琥珀が舞う
    相も変わらずそれは光を持つことなく、ただの琥珀として地面に落ち……血に染まった。

    すべての地獄拍車団を倒し、ついに戦いは終わった
    カブレランの街に起きた被害は大きい、だが男は言う
    「信頼出来る会社と提携してサンダー採掘事業をやるといい、そうすれば街は盛り上がり保護される
    ただ絶対にスターリング社はやめとけ、あそこはデカいだけで責任は持たない。」
    町長「そうじゃな……ありがとう」
    町民たちは口々に言う「ありがとう英雄!」「お前の功績は忘れない」
    「そのことだが……どうか俺のことは新聞社に言わないで欲しいんだ、散々撮られて迷惑しててね」
    そして少年に目を向け、言う
    「俺は荒野の名無しで居たいんだ」
    そうして謝礼の金貨は半分だけ受け取り、食料と水を積んで早々に街を出ていこうとする

  • 19二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 21:52:09

    すると少年が布に包んだ何かを持ってくる
    「これ、あのボスがつけてた宝石……ちゃんと拭いたよ」
    「なんでそんなものを俺に?」
    「だって、英雄に相応しいものなんでしょ!兄ちゃんが持ってるべきだよ」
    そういうと困ったように笑う
    「言っただろ、人違いなんだ
    俺は英雄じゃない……それはお前達が持ってろ、この戦いにおいて英雄だったのはお前たちだ」
    そういって男は結局最後まで名前を告げずに街を去る……
    「ボクは忘れないよ、絶対に!」

    後日、カブレランの街は自然の魔法の採掘場として大いに栄えた
    スターリング社の横入れもなく、平和に進むことだろう
    そして街には宝ができた
    「【モックス・アンバー】」と「壊れたブラスターの破片」だ
    新聞記事にはならなかったが、男の英雄譚は確かに街の人達に広まり、働きに来た労働者に広まり……語り継がれることとなった
    しかし"謎の訪問者"は同時刻に別の町を救っていたことが新聞記事でわかった、あの時の男は誰だったのか……しかし今もカブレランの町はその時の男
    "荒野の名無し"に感謝し続けている。

    〜完〜

  • 20二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 21:53:14

    本SSはファンコンテンツ・ポリシーに違反する……ところはないと思いたいですが、準じて作成してるつもりです
    かなり長くなってしまいましたが、良ければ呼んでもらえると嬉しいです!

  • 21二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 22:07:06

    面白かったし主人公の正体も気になった
    途中まで第一管区の勇士が主役なのかと思ってたよ

  • 22二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 22:10:07

    少し語ると、本作は伝説じゃないものにも物語はあるというところから話が始まってて
    そこで速報版【流刑への道】と【地獄拍車団の頭領】から着想を得て西部劇的な話を書こうとしたけど最終的に少しテイストが変わりました
    しかし書きたいものは書けたとおもいます!
    質問、感想などあればいただけるととても嬉しいです

  • 23二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 22:12:17

    >>21

    ありがとうございます!

    嬉しいです、序盤でボロスの仄めかしがありつつ正体が本当に名無しの門無しというのは受け入れてもらえるか不安でしたがしっかり描けてたなら良かったです!

  • 24二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 23:00:30

    統領(統領ではない)をそう活かしてきたか
    面白かったよ!!

  • 25二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 23:28:06

    >>24

    ありがとうございました!

    オリジナル設定ですが、上手くかけたなら嬉しいです

  • 26二次元好きの匿名さん24/10/10(木) 23:52:17

    今気づいたけど伝説でもないのに偏向はたき使ってることから頭領トカゲのこじらせ具合が凄い

スレッドは10/11 11:52頃に落ちます

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