【ダイススレ】自分の分身のオリキャラをC.E.に放り込んでみた5.5

  • 1スレ主24/10/13(日) 22:44:19

    https://bbs.animanch.com/board/3858544/?res=184


    上記の続き。

    うつ病や諸々が片付いたので再開します。

    オリ主のイラストは頂き物、皆さまの感想やイラストをぜひ送ってください。

  • 2スレ主24/10/13(日) 22:45:15
  • 3スレ主24/10/13(日) 22:46:00
  • 4スレ主24/10/13(日) 22:47:03
  • 5スレ主24/10/13(日) 22:47:48
  • 6スレ主24/10/13(日) 22:48:30
  • 7スレ主24/10/13(日) 22:49:18
  • 8二次元好きの匿名さん24/10/13(日) 22:55:45

    鬱って片付くのか

  • 9スレ主24/10/13(日) 22:58:05




    ウィル・ピラタ

    13歳

    162㎝

    ナチュラル

    本スレの主人公。


    ビルドダイバーズ系の世界からC.E.に転移してきた後ヤマト家の居候になり、戦争に巻き込まれる。

    自由のシュラよりも高い操縦技術と、ガロード並みの精神力でC.E.を逞しく生き抜いている。

    現在三人のヒロインと関係を持っており、纏めて潰れたカエルにできる絶倫&ベッドヤクザ。

    股間のアグニのサイズは22㎝、まだまだ身長と共に成長中。

  • 10スレ主24/10/13(日) 22:59:03

    >>8

    そこは表現の仕方の問題という事で

  • 11スレ主24/10/13(日) 23:06:44


    ガンダムAGE-2アーウィン


    型式番号AGE-2AW

    全高18.3m

    重量28.7t

    装甲材質A.W(ガンダムXの世界)式ルナチタニウム合金

    ジェネレーター総出力7,510kw

    総推力測定不能

    センサー有効半径18,800m


    ストラーダ形態


    最高速度 M4.2(大気圏内)

    最小旋回半径 17sm


    ガンダムAGE-2マグナムに、[スターフォックス]シリーズの主役戦闘機アーウィンの機能を持たせたMS。

    RG並みに作りこまれたガンプラがベースになっているためかC.E.ではオーパーツ級の高性能機。

    ブラックナイツスコードも余裕で破壊できる武装を多数装備している。

  • 12スレ主24/10/13(日) 23:11:31


    キラ・ヤマト(♀)

    16歳

    165㎝

    コーディネーター


    最初にウィルと関係を持ったヒロイン。

    C.E.にやってきて路頭に迷っていたウィルを放っておけず、

    自宅に連れてきたのが切っ掛けで義姉として仲を深める。

    ウィルが精神安定剤になっており、肉体関係を持つ前から抱き着いて匂いを嗅いだり、

    抱き枕にして一緒に寝ていた。

    バストサイズはD、まだ成長中。

  • 13スレ主24/10/13(日) 23:14:14


    ジェームズ・ピラタ

    28歳

    191㎝

    ナチュラル


    ウィルの叔父で元の世界では書類上の保護者。

    ジェームズの愛称はジム、ジミーになるはずだが、皆は何故かジャックと呼んでいる。

    元自衛官で柔軟な思考を持つクラン[アルコンガラ]の指揮官。

    超弩級万能戦艦グレートフォックスの船長(軍人では無いので艦長と呼ぶと怒る)

    将来は喫茶店経営をするのが夢。

  • 14スレ主24/10/13(日) 23:23:58


    グレートフォックス


    全長890m

    全幅205m

    推進機関 プラズマエンジンBTD-GX参型

    兵装

    連装メガ粒子主砲×8

    単装式レールガン×10

    迎撃用レーザー機銃×40

    多目的ミサイル発射管×16

    対艦用大型ミサイル発射管×10

    ハイパーメガ粒子砲×2

    艦首ビームシールド兼ビームラム

    エネルギーシールド発生装置


    ジャックが144/1サイズで作り上げたプラモが元になっているアルコンガラの母艦。

    ほぼ完全にオートメーションシステムにより、指揮者一人いれば運用できる。

    実は整備工場と居住性を重視した艦内構造の為、艦載数はアークエンジェルと大差無い。

  • 15スレ主24/10/13(日) 23:27:28


    ラクス・クライン

    17歳

    158㎝

    コーディネーター


    ウィルと関係を持っているヒロインその2にしてプラントの歌姫。

    宇宙で遭難していたところをウィルに救助され、一目惚れ(?)したらしい。

    現在はウィルとキラを同志として、戦争を終わらせるための活動をする決意をした。

    バストサイズはD、まだdice1d2=2 (2)


    1.する

    2.しない

  • 16スレ主24/10/13(日) 23:30:41


    クララ・ソシオ

    14歳

    160㎝

    ナチュラル


    ウィルと関係を持つヒロインその3。

    ウィルと同じ世界出身で、初めてGBNにログインしたウィルに声をかけたのが切っ掛けで、

    共に高難易度ミッションをクリアしてきた相棒。

    その後同じ学校の先輩・後輩だという事が分かり、リアルでも付き合いを持つ。

    お互いに好意を持つも進展がなかったが、C.E.に来てから一気に進む。

    バストサイズはGとマリューやミーアに匹敵するレベル。

    まだdice1d2=2 (2)


    1.する

    2.しない

  • 17スレ主24/10/13(日) 23:42:43


    リンドブルム

    MSZ-009RS

    頭頂高20.22m

    全備重量38.8t

    装甲材質A.Wルナチタニウム合金

    ジェネレーター総出力7,300kw

    総推力測定不能

    センサー有効半径19,800m


    クララが乗るファーブニルの改造機。

    変形時は飛行翼の付いたギャプランに近いMA形態になる。

    ハイパービームサーベルや頭部バルカンが一対になっているなど

    原型機から武装数を若干減らし、その分を機動性に当てている。

    スピードでアーウィンに勝り、旋回性で劣る直線番長的な機体。

  • 18スレ主24/10/13(日) 23:45:48


    アルマ・アルティ

    18歳

    185㎝

    ナチュラル


    アルコンガラのメカニック担当。リアルでは工業系大学生。

    GBNではメカニック系のスキルと情報分析系のスキルを習得している。

    時折グレートフォックスの設備で機体を勝手に改造するマッドメカニック。

    いつの間にかフレイ・アルスターと師弟兼恋人関係になっている。

  • 19スレ主24/10/13(日) 23:56:20


    ガンファルコン

    MSΖ-013GF

    頭頂高26.5m

    全備重量41.8t

    装甲材質A.Wルナチタニウム合金

    ジェネレーター総出力11,200kw

    総推力測定不能

    センサー有効半径32,400m


    アルマが搭乗する可変MA。

    Gファルコンをベースに他機との合体機構を廃し、MSへの変形機構を備える。

    クランの他機と比べると大型で、スピード・旋回性能で劣る。

    しかし分厚い装甲と最大出力を誇るエネルギーシールド発生装置を持つため、防御面では鉄壁。

    更に大型ビーム砲やマイクロミサイル等高火力な武装を多数備えている。

    他にも高度な索敵機能を備え、チームの司令塔として活躍する。

    MS時の頭部はセンサー機能を重視し、ゴーグルタイプを採用している。

  • 20スレ主24/10/13(日) 23:58:29


    フレイ・アルスター

    15歳

    162cm

    ナチュラル


    正史から外れた運命を辿る少女。

    最初は父親の影響でコーディネーターに差別的な思想を持っていたが、

    アークエンジェルでの経験で思想を改めた。

    現在はアルマにメカニックとしての手ほどきを受けつつ、戦闘時は

    ドラグーンとして運用できるようにしたスカイグラスパーを操作してサポートを行う。

    いつの間にかアルマに恋愛感情を抱いた。

  • 21スレ主24/10/14(月) 00:01:42


    ラドル・ダガ

    15歳

    155㎝

    ナチュラル


    アルコンガラの新参者で、高い空間認識能力と並列思考能力を持つ。

    その能力を生かしてオールレンジ攻撃や、長距離狙撃を得意とする。

    いわゆるマルチロックが必要な戦いが得意なタイプ。

    医療スキルも高水準で持っているが、今のところ固定砲台としての役回りが多いため、影が薄い。

  • 22スレ主24/10/14(月) 00:08:31


    ヘッジホッグジェネラル

    MSZ-009HJ

    頭頂高22.22m

    全備重量35.1t

    装甲材質A.Wルナチタニウム合金

    ジェネレーター総出力8,200kw

    総推力測定不能

    センサー有効半径21,200m


    ZZの系列機[ヘッジホッグ]の改造機。

    分離機構を廃し、単体でGフォートレス形態に変形できる。

    全身に搭載されたビーム砲はビームサーベル発振器を兼ねたファンネル。

    更にファンネルミサイルを搭載している。

    Gフォートレス時のスピード・旋回性能はガンファルコンより上で、

    防御力では劣る対的な機体。

  • 23スレ主24/10/14(月) 00:16:18


    トール・ケーニヒ

    16歳

    163㎝

    ナチュラル


    フレイと同じく正史から外れた運命を辿る少年。

    ヘリオポリス脱出時に発見されたプロトアストレイグレーフレームの専属パイロット。

    様々人物からの指導や、戦争という過酷な環境に晒されたことにより令和三馬鹿級の実力を持つようになる。

  • 24スレ主24/10/14(月) 00:28:43


    プロトアストレイグレーフレーム(アルコンガラ仕様)

    MBFーP05

    18.00m

    62.0t

    装甲材質発泡金属装甲


    アルマが調子に乗って作ったフライトユニットを装備したグレーフレーム。

    大容量バッテリーとプラズマエンジンスラスターにより、破格の起動性能を誇る。

    コックピットを含めた操縦インターフェイスにも手が加えられているので、

    パイロットの負担は意外と少なかったりする。

  • 25スレ主24/10/14(月) 00:48:01


    ストライク(ムウ機)

    GAT-X105

    17.72m

    69.2t

    装甲材質フェイズシフト装甲


    もう一機あったストライクにアルマが作ったオリジナルストライカーパック、

    [ガルーダストライカー]を装備させた機体。

    MA乗りだったムウに合わせ、戦闘機に近い機動性とAMBAC稼動肢として機能する

    ウィングバインダーにより変則的な動きが可能な運動性を持つ。

    コックピットも手が加えられ、自由時代でも通用する性能を誇る。

    ちなみに正史でムウが乗るはずだったキラのストライクは、本スレオリジナルの

    AAクルー、トーリャ・アリスタルフ准尉が大破した鹵獲ジン(アルコンガラ仕様)の

    代わりとして乗り込むことになった。

  • 26スレ主24/10/14(月) 08:46:30

    ムウ「なに黄昏れてんの?艦長さん」

    アークエンジェルのブリッジで、着々と進む出航準備の様子を眺めていたマリューに、
    ブリッジに上がってきたムウが話しかけてきた。
    ムウも今は指令を待つ身ーーというより、自分で考えを持って、この場に留まっている人員の一人だ。

    ムウ「結局、アークエンジェルからの退艦は11名。
    ユーラシア連邦の艦隊のほとんどが残ってるし、ザフトの動ける奴らも迎撃に参加するんだって?」

    あたりを見渡せば、地球軍の侵攻を食い止めるために出発準備と出撃準備をする船が多くあり、
    眼下ではオーブ軍と地球軍、さらにザフト軍の制服を着た兵士や技術者たちが忙しなくひしめいていて、
    それぞれが協力して準備に取り掛かっている様子が見える。

    ムウ「みんな凄いじゃないの。ジョシュアとパナマがよっぽど頭に来たのかねぇ」

    アラスカとパナマの悲劇ーーいや、惨劇を見て心を動かされた人々が多かったということだろうか。
    逃げようと思えば逃げられるというのに……それでも歯を食いしばって立ち止まり、
    自分たちが正しいことを為すために奔走している人々。
    マリューは、こんな自分に付いてきてくれる下士官たちへの責任感や、
    これから為す自分自身の行いを見つめながらも、アラスカからずっと気になっていたことに想いを馳せていた。
    好都合なことに、ここには誰もいない。マリューは意を決して、ムウの方へと振り返って問いかけた。

    マリュー「…少佐は、なんで戻ってらしたんですか?その…ジョシュアで」

    その問いかけに、ムウは今まで見たこともない間の抜けた表情をすると、困ったような顔をして頬をかいた。

    ムウ「今更…聞かれるとは…思わなかったぜ」

    なにを…とマリューが声を発しようとした瞬間、ムウは数歩マリューの方へ歩み寄ると、
    そっと優しくマリューの腰へ腕を回した。

  • 27スレ主24/10/14(月) 08:47:06

    これはーーと問うまでもなく、マリューは吸い込まれるようにムウの瞳を見つめた。ああ、
    こんな眼をした人を、自分は知っている。
    そんな考えが頭をかすめて、マリューはすこし悲しそうに眼を細めた。

    マリュー「……私は…モビルアーマー乗りは嫌いです」

    過去に、そんな瞳を向けてくれた人は、戦争で死んでいる。それもモビルアーマーに乗って。
    マリューの中には、いつも失う恐怖が付きまとっていた。ムウの気持ちに気付いていながら、
    そんな自分が答えることを邪魔している。すると、マリューの顎先へ指を添えながら、ムウは優しく微笑んだ。

    ムウ「俺今、モビルスーツのパイロット」

    その言葉の後、ムウはマリューへと吸い寄せられていく。
    影が一つになって、マリューは戸惑っていた手を、そっとムウの背中へと回していく。
    その光景は二人だけのものーーーーだと思っていたが、管制システムを見ていたナタルが、
    その一部始終をバッチリ目撃してしまっていたことを二人が知ったのは、オーブ戦のあとだった。

  • 28スレ主24/10/14(月) 13:58:03

    オーブ守備隊への参加を表明したイザークたちは、
    キサカの案内の下、第六工廠へと足を踏み入れることになった。
    理由は簡単で、キサカが志願したパイロットのデータを整理していた時に、
    イザークたちがG兵器に乗っていた経歴を見たことだった。

    ディアッカ「マジで?これを俺たちに?」
    キサカ「まさか君たちがGのパイロットだったとはな。驚いたが、君たちが扱っていたものだ。
    元鞘、というのはおかしいが、君たちが乗った方が戦力になるはずだ」

    キサカの返答の後、改めてディアッカは改修されたバスターの姿を見上げる。
    それもただ直された訳ではない。稼働時間の問題を解決するため、
    動力源も最新型のバッテリーに交換されており、
    関節の駆動軸も互換性のある上位機種へ変更されているという。
    カタログスペックだけでも、1.5倍ほどは機動力が増しているのがわかった。

    ディアッカ「切って貼って直してたバスターが、新品同様とはなぁ」
    キサカ「ブリッツの片腕は新造し、ストライクと同等のシールドとビームライフル、
    ビームサーベルを装備してある。うまく使ってくれ」
    二コル「了解しました」

    次にデュエルの元に案内されたイザークだったが、その姿に驚く。
    同じなのは頭部だけで、他は完全に別物だったからだ。

    キサカ「デュエルは特に損傷が酷くてね。修理が間に合わず大部分はM1アストレイの
    パーツで補っている状態だ。そこで試作品の中で良好な物を増設装備として取り付けてある。
    かなり勝手が違うだろうが、上手いこと使ってくれ」
    イザーク「分かった」

  • 29スレ主24/10/14(月) 17:45:16

    新たなデュエルを見ながらイザークは思う。
    相手を殺さなければ、そいつはまた新しい機体に乗ってやってくる。元を断たねば、終わらない。
    ザフトの軍事学校で教わったことだ。でなければ、敵は傷を癒して新しい兵器に乗ってやってくる。
    それで同胞が傷ついたらどうなる?それで戦友が殺されたら?あるいはーーー自分自身が殺されたら?

    その思想に従い、衛星軌道上でシャトルに銃を向けた。
    しかしそのシャトルに乗っていたのは自分たちの戦いで巻き添えになっただけの、
    何の罪もない避難民だった。それを知って、自分を止めたクララに心のどこかで感謝していた。

    そしてアークエンジェルでの日々、オーブやアラスカで仲間ごと葬ろうとした地球軍、
    武器を持たない兵士に銃を放ったザフト軍。そして、そんな惨状の中でも
    手を互いに握ることができた両軍の兵士を見て、イザークは思ったのだ。

    自分は、なんのために戦っているのだ、と。

    兵隊をやって、教えられたことを守り、敵を殺して殺されて、
    役目を果たして勲章をもらって……そこに意味を見出せなくなっている。

    だからこそ、次はオーブを守るために戦うのだ。
    自分自身の中の、答えを見つけるために。

  • 30スレ主24/10/14(月) 20:39:18

    戦うと決めた以上、その為の準備を進めなければならない。
    ジャック、マリューにオーブ軍将校、参戦を決めた連合及びザフトの各隊長格が会議室に集まていた。

    この会議に呼ばれているモルゲンレーテ社の主任技術者が話し出す。

    「具体的な戦力として、モルゲンレーテ社の防衛設備はそんなにヤワではありません。
    地対艦ミサイル、地対空ミサイルは充分な数があります。気をつけるべきは機動戦力、
    つまりMSだけといっていいでしょう。連合がパナマ基地に独自開発のMSストライクダガーの
    先行量産型を置いていたということからすると、今頃はもう本格的量産が始まっています。
    だからこそオーブを狙う気になったのでしょうが」
    ジャック「なるほど。MSは厄介ですね」
    「それに対し、わが社で用意できるM1アストレイは生産ラインの構築に成功しました。
    オーブ軍及び義勇兵全員が搭乗できる数は生産済みであり、エース・ベテラン用の
    高性能上位機種も複数容易に成功しました。ザフトの皆様からの報告書を見れば
    総合的な質ではこちらが上とみていいでしょう」

    次にハインズが口を開く。

    ハインズ「しかし残念ながら数では向こう側が圧倒的に上だ。
    アークエンジェルが持ち込んだストライクにグレーフレーム、鹵獲ジンのデータも渡っている。
    ならばより高性能な新型G兵器も用意されているだろう。そういう噂も聞いたしな。
    真っ向勝負では遅かれ早かれ磨り潰されるのは確実だ」
    PJ「かと言ってザフトからの援軍は間に合わず、間に合ったとしても
    後でナチュラルが排除されるか連合相手の鉄砲玉となるのが見えている。
    つまり我々単独で防衛に成功しなければならない」

    ハッキリ言って不可能、重苦しい空気が支配する。

  • 31スレ主24/10/14(月) 22:11:15

    ここでジャックが再び口を開く。

    ジャック「確かに真っ向勝負では勝算は無いでしょう。
    しかし、戦術を駆使すれば不可能ではありません。
    まず寡兵で大群に勝利する条件は二つ、分かりますか?」
    ハインズ「総大将を討ち取る、あるいは敵の補給を断つだな」
    ジャック「正解です。そして、その二つを達成できる条件が我々には揃っているのですよ」

    一同が目を見開く、確実に勝てると断言されたに等しいのだ。

    ジャック「勿論相応の浪費や犠牲を前提にしなければなりません。
    だからこそ、私の説明を聞いて乗るか乗らないか、その判断はご自由に」

    ここで一度会議を終わり、作戦の考案にかかる。
    しかしこの時、洋上では連合の悪意がオーブに迫ってきていた。

  • 32スレ主24/10/15(火) 06:21:21

    ダーレス「アズラエル理事、オーブからまた交渉要求が来ていますが」
    アズラエル「無駄無駄、無視しちゃって下さい。オーブなんかちゃっちゃと潰しちゃいましょう。
    ちゃっちゃと。早く戦って、ストライクダガーの戦闘データを取れればそれでいいんです。
    むしろ素直に降伏してこなくて助かりましたよ」
    ダーレス「……」

    連合のオーブ攻撃艦隊の旗艦に軍人ではない者がいる。その姿も水色のスーツ姿であり、軍服を着ていない。
    コーディネイター排斥主義者からなる結社ブルーコスモスの理事、ムルタ・アズラエルだ。

    通常ならばそのような者が作戦行動中の艦に乗るなど考えられないし、ましてや作戦に指示を出すことはない。
    それをやっているからには、如何にブルーコスモスが連合に深く根を張っているか分かる。

    今の連合はその傀儡に成り下がっている。

    治安を守るべき連合軍は変質し、コーディネイター根絶のために動く力に変わってしまった。
    この艦隊の指揮官は連合のダーレス少将である。不満はあるものの、ブルーコスモスの
    命令に逆らうことは許されず、今も事前の命令によりアズラエルに従うようにされている。

  • 33スレ主24/10/15(火) 11:00:18

    アズラエル「それから、戦いが始まってからあれを投入するタイミングは
    こっちで決めますから。しっかり従って下さいよ、ダーレス少将」
    ダーレス「それは……あのパイロットたちでしょうか。
    今回の作戦で旗艦をイージス艦ではなくこのパウエルにしたのもそれが理由と拝察しますが」
    アズラエル「そうそう、あいつらは戦闘時間の調整が一番難しいですからねえ」

    そのムルタ・アズラエルは今、演習気分でいる。
    やっと配下の生体CPU三人を実戦で試す機会を得たのだ。

    生体CPUとは脳を薬漬けにされ、強制的に力を出させられる者たちで、ブーステッドマンとも呼ばれる。
    代わりに寿命は極度に短くなる。こうして人間を機械部品のように扱い、戦争に投入し、壊れたら捨てられる。

    そういう恐るべき手段さえ用いてブルーコスモスはコーディネイターを追い詰めようとしているのだ。

    むろん連合の一般兵には生体CPUの存在も知らされていない。わずかにそれを知る上層部は心の中で忌避する。
    ダーレス少将もそうであり、危うく気の触れたパイロットという言葉を呑み込んでいる。

    ついでながら今の旗艦はタラワ級の強襲揚陸艦パウエルだが、
    それはアズラエルが連れてきた不気味な三人のパイロットを使うためだ。

  • 34スレ主24/10/15(火) 16:50:01

    オーブ、オノゴロ島南西部。


    そこにあるモルゲンレーテのモビルスーツ格納庫では、ムウが乗るストライクを始め、

    ウィルの訓練を受けたアサギたちが乗るアストレイS型が発進準備に入っていた。

    アストレイS型はM1アストレイをベースにグレーフレームのデータで強化した上位モデルである。


    ムウ「嬢ちゃんたち!エレメントを組んで、しっかり付いて来いよ!」


    彼女らのリーダーとして、ムウが隊長らしく声をかける。

    だが、彼女たちは軍人ではない。あくまでモルゲンレーテのテストパイロットだ。故にーー。


    アサギ『うう、タイプSの慣熟訓練は終わったとは言え』

    ユリ『不安が残るなぁ』


    会話も非常にラフだ。M1アストレイよりも遥かに鋭い

    レスポンスを持つS型に乗り込みながら、三人はこれから出ていくことへ不安を露わにしている。


    ムウ「戦場に出たらそんな言い訳通用しないぞ?しゃんとしろよぉー」

    『『『了解ー』』』


    気の抜けた返事だぜ…とムウが小さく呟くと、

    思い出したようにコクピットモジュールの空いたところへ一枚の写真を貼り付けた。

    そこには、マリューとナタルを両肩に寄せたムウという、苦労を共にした三人の姿が映っていた。


     


    守ってみせるさーー今度こそな。


    『進路クリアー。フラガ機!どうぞ!ご武運を!』

    ムウ「よっしゃあ!ムウ・ラ・フラガ、ガルーダトライク、出るぞ!!」

  • 35スレ主24/10/15(火) 20:30:19

    オノゴロ島の中腹部の格納庫でも、同じように発進準備が進められている。

    誘導員に従ってモビルスーツ用のエレベーターに乗るのは、

    M1アストレイを駆るPJと、同じ機体に乗る彼の長年の部下たちだ。


    「M1アストレイ…ザフトの機体よりも、かなりデリケートな操作感覚ですね」

    PJ「マニュアルは読んだんだ。慣熟訓練も終わっている。あとは実践あるのみだな」


    そう言って肩を回してからベルトを装着するPJ。

    そんな彼に、長年付き従ってきた部下がとぼけたように笑ってみせる。


    「あまり無理はしないでくださいよ、隊長」

    PJ「帰って娘に会うまではな」


    そういう彼も、コクピットに故郷にいる娘の写真を貼り付けていた。



    そうだとも。こんなくだらない戦争で犠牲にたまるものか。

    そして見つけなければならない。この戦いの中で、

    自分たちーー地球もプラントも真にやらなければならない、戦わなければならないことを。


    それを後の世に伝えるためにーー。


    『進路クリア!キャンベル隊!発進、どうぞ!』

    PJ「了解した。キャンベル隊、パトリック・J・キャンベル、M1アストレイ、出るぞ!!」

  • 36二次元好きの匿名さん24/10/15(火) 21:51:28

    そういや初代三馬鹿の機体実装されてないだよなあ

  • 37二次元好きの匿名さん24/10/16(水) 06:26:22

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  • 38スレ主24/10/16(水) 09:50:23

    イザーク「守備隊は東側に配置だ!他の奴らも抜かるなよ!」

    モルゲンレーテ本社から出撃することになったイザークたちは、展開する迎撃部隊に指示を出していく。
    おそらく相手も地球軍製のモビルスーツでくるはずだ。
    ならば、敵が嫌がるところに迎撃部隊を配置すればいい。
    ジュール隊では、事細かな指令系統もイザークの指揮に噛み合っている。
    陸戦のミサイル部隊だというのによく動くものだと感心しながら、
    イザークもヤサカニデュエルの発進準備を進めていく。

    ディアッカ「まさかこの機体で、しかも足つきの味方で出ることになるなんてなぁ」
    二コル「人生とはわからないものですね」

    両隣にいるバスター、ブリッツから二人の戦友の声が聞こえる。

    イザーク「ふん、ナチュラルどもはモビルスーツに乗ったばかりだ。経験の差という物を見せつけてやる!」
    ディアッカ「はりきってるねぇ、イザーク」
    二コル「無茶はしないでくださいね!」
    ディアッカ「ちぃ!わかってる!」

    そもそも心配というなら、一度落とされているお前たちの方がなぁ
    ーーーといいかけたところで、管制官からの合図が入った。

    『進路確認!ジュール隊、発進してください!ハウメアの加護があらんことを!』
    イザーク「ジュール隊、イザーク・ジュール、ヤサカニデュエル、出るぞ!!」

  • 39スレ主24/10/16(水) 12:46:05

    マードック「いいな!各作業員はさっさと配置につけよ!!」

    マードック指揮の元、アークエンジェルでも忙しなく発艦準備が進められていく。
    ノーマルスーツに着替えたトールは、やや形が変わったグレーフレームのコクピットに搭乗する。

    フレイ「トール、スーパースカイグラスパーの調子はどう?」
    トール「いい感じだ、フレイ。レスポンスはバッチリだ」

    そうトールがにこやかに答えると、彼女は得意気に胸を張ってみせる。
    今作戦、一人前と認められたフレイがアルマから貰ったデータと、トールの戦闘記録を基に
    改良を施したのが、今トールが乗るグレーフレームだ。
    ハッキリ言ってじゃじゃ馬どころではないが、トールは難なく完熟運転をこなして見せた。

    フレイ「当然!なんたってオーブから新品を貰ったもんね!ガツンとやっつけてきてよ!」
    トール「了解!」
    ミリアリア『進路クリアー、グレーフレーム、発進どうぞ!トール、気をつけてね!』
    トール「まかせて!トール・ケーニヒ、グレーフレーム、行きます!!」

    続いて運び込まれてきたのは、ウィルのアーウィンだ。
    防衛線の保険として、今回はツインサテライトキャノンを装備したウェアを装備している。

    キラ『その状態だと遅いんでしょ、無理はしないで』
    ウィル「それでもフリーダムより上だ、大丈夫さ」

    ウィルもコクピットの中で発進準備を整え、操縦桿を強く握りしめた。

    ウィル「ウィル・ピラタ!AGE-2アーウィンアルテミス!出るぞ!」

  • 40スレ主24/10/16(水) 15:14:42

    ガシュゥッと射出スライドにのって飛び出していくアーウィンは、
    空に飛び出すと畳んでいた翼を展開して、トールのグレーフレームの後へと続く。

    マードック「次はフリーダムだ!さっさと動けよ!!」
    サイ『キラ、気をつけろよ。絶対、無理はするなよ!』

    ハンガーから射出位置へ運ばれるフリーダム。そんなキラへサイが通信を繋ぐ。サイの表情はとても心配そうで、
    一度キラを失ったと思ったから余計に不安なんだろう。そんな彼に、キラは優しく微笑んだ。

    キラ「了解、サイ。無理はしないわ。大丈夫」
    フレイ「キラ!」

    発進シークエンス間際に、フレイがキラのフリーダムを見上げて叫ぶ。

    キラ「フレイ」
    フレイ「今度も、守ってね」

    そう言ったフレイに、キラは力強く頷いた。
    今度こそ守る。自分の大切なものを、大切だと思えた全てをーー!!

    キラ「キラ・ヤマト、フリーダム、行きます!!」

  • 41スレ主24/10/16(水) 18:35:28

    「連合の艦隊、オーブ領海に侵入!空母一、アーカンソー級大型イージス艦四、
    パウエル級強襲揚陸艦が十二!フレーザ級駆逐艦その他を合わせて総数四十隻!」
    マリュー「その編成からMS戦力を予測して!」
    「概算で最大百から百十機と思われます!」
    マリュー「それは……思ったより大きい戦力ね」

    戦いはあっさり始まる。
    連合の艦隊は警告を無視し、スピードを落とさずオーブの領海に入り、そして戦闘準備をしている。
    要求を蹴られたのだから戦争状態に入っていると見なして当然だと思っているのだろう。
    その艦隊の進路はオーブの島々の中でも明らかにオノゴロ島を目指している。
    そこにあるモルゲンレーテ社が最も頑強であると判断しているのだ。それは当然であり、予測の通りだ。

    既に戦いの火蓋は切られた。

    連合の艦隊から中射程対地ミサイルが次々と放たれる。
    雨のようにモルゲンレーテ社周辺の堡塁に注がれるが、これは迎撃ミサイルとバルカン砲によって
    ほぼ完全に防がれる。さすがに毎分四千発もの機関砲たちはとりあえず防御に成功した。
    連合の艦隊から撃ってきたことを確認すると、今度はオーブからの反撃だ。
    盛大に対艦ミサイルが放たれ、連合の艦隊を狙う。だが、これもまた防がれてしまう。
    優秀な迎撃システムを持つイージス艦が含まれていれば当然そうなる。

    これでお互いに攻撃が手詰まりになってしまう。
    いや、連合の艦隊にやや有利か。
    このまま航行すれば、間もなくオノゴロ島の居住区を含めた主要部分がイージス艦の
    高速弾道ミサイル射程内に入り、それを完全に防ぐことはできない。

  • 42スレ主24/10/16(水) 19:37:56

    しかし連合はそういう撃ち合いよりも、機動兵器の侵攻で決着を付けることを望んでいるようだ。
    確かにミサイルで地上施設ばかり叩いても仕方がない。
    しっかり地下施設まで叩き切ることを考えればそれも妥当である。

    強襲揚陸艦から連合の量産型MSストライクダガーが出撃準備をしているのが分かる。

    それに向こうの目的はマスドライバーとモルゲンレーテの工場だ。
    今までの様にモルガンで吹き飛ばすなどと本末転倒なことはしたくないのだろう。

    マリュー『MSが出て来るわ。ジャック船長……そろそろかしら』
    ジャック「慌てなくていいのですラミアス艦長。
    向こうのMSの動きに囚われることなく、予定通り揚陸艦を叩けばこちらの勝ちです』

    そう、ジャックの狙いは戦艦でもなく、MSでもない。
    MSの母艦だ。それさえ叩いてしまえば、大量のMSといえども立ち往生である。
    整備や補給のできないMSなど戦力ではない。
    ただでさえバッテリー駆動で継戦時間が短いC.E.のMSならなおのことだ。

    要するにブレることなくただ一点、敵の弱点を狙い続けるのが肝要なのである。
    それが寡兵で大軍に勝つ鉄則だ。

    ジャック「よし、頃合いですね。フラガ隊とキャンベル隊に連絡を」

  • 43スレ主24/10/16(水) 20:21:55

    戦場に変化が訪れた。

    ムウのガルーダストライク、オーブとキャンベル隊の
    アストレイ七機、合わせて八機のMSが初めから高空にいる。
    むろんそれらは連合の艦隊からも見えている。しかしこの数が絶妙なのだ。
    少な過ぎず、多過ぎない。たかが少数のMSと侮り、主要攻撃目標と思われない数である。
    連合は陸上へ大量MSの投入を開始した時点で、ついでにうるさいハエを追っ払おうとでも思ったのだろうか、
    ようやくMSを上空にも上げて向かってきている。
    ちなみに最初から無駄だと分かっている攻撃ヘリなどは出しもしていない。
    それらの高度を上げてくる連合MSには長距離砲を装備したジュール隊、トーリャ隊、
    オーブの改良型スカイグラスパー隊とスピアヘッド隊が牽制を掛ける。

    まあ、これは一瞬の足止めだけで構わないのだが。

    ここで突如としてストライクたちが急降下を始める。
    ぐんぐん速度を増し、連合の強襲揚陸艦へ向かって突き進む。

    ジャック「ミサイルの長所は言うまでも無く自動誘導です。しかし砲撃のような速度もなく、
    機動性もないことが短所です。だからジェット機やMSが主力となった現代では途中で撃ち落とされます。
    しかしミサイルを目標の近くまでMSが運んだら?これほど命中率が高くなる攻撃方法もないでしょう」
    マリュー『ジャック船長……恐ろしい方法ね』

  • 44スレ主24/10/17(木) 08:17:31

    ストライクたちは一発で強襲揚陸艦を大破できる大型ミサイルを運んでいるのだ。
    ミサイルを保護しつつ、MSならではの高機動と防御性能で連合艦からの弾幕を難なくいなしていく。
    予知した距離まで来ればミサイルを思いっきり揚陸艦に向かって投げつける。ここまで近づき、
    しかも高い初速では、これらのミサイルに対処するのは難しい。

    確かに宇宙戦でMSをミサイルランチャーに使う戦術は珍しくないが、それでもビーム攻撃の方が普通だ。
    まして水上艦ではそういうMSからの大型ミサイル攻撃は想定の範囲外だろう。
    投げ下ろされたミサイルたちは一発しか迎撃されず、残りは全て強襲揚陸艦に吸い込まれる。
    しかも防御の弱い上部甲板にだ。
    轟音と共に装甲が破壊され、たちまち使用不能の大破となる。

    幸先よく、それら十二隻のうち実に五隻も仕留めることができた。

    ここからはオーブ側の守勢に移る。
    吐き出されていく大量の連合MSストライクダガーがオノゴロ島に取り付き始めた。
    これらを一旦は止めなくてはならない。

    まず地球軍が足がかりにせんとして侵攻したのが、フラガ隊がたどり着いたエリア、ダフだ。
    オノゴロ島の南西部に位置するダフエリアには、地球軍の上陸部隊が展開し、
    敵防衛網を突破するための爆撃が苛烈さを増していた。

  • 45スレ主24/10/17(木) 10:47:49

    ムウ「とりゃああああ!!」

    そんな爆撃の中をムウのストライクが先行し、上陸しようとしている先遣隊を各個撃破していく。

    ユリ「アサギ!」
    アサギ「任せて!」

    敵の船から降りてくる戦車や装甲車を、海岸に釘付けにするように配置された迎撃砲と連携して、
    アサギたちもムウに続いて上陸しようとする船をビームライフルで撃ち抜き、撃破していく。
    この船を大量に上陸させてしまえば、物量で負けているオーブ軍の目と鼻の先に、
    地球軍の即席拠点が展開されてしまう。そうなれば、沿岸部を占拠されたと同義だ。
    ムウたちの任務は何としても沿岸部を死守し、地球軍をオノゴロ島に踏み入れさせないことだった。

    アサギ「マユラ!左!」

    ハッとマユラが横へ目を動かすと、そこには輸送船から出た
    数台の戦車が起動を終えて、マユラのアストレイに照準を向けている光景が見えた。
    すると、背後から頭上を飛び去ったムウのストライクが、
    上空からビームライフルで戦車部隊と輸送船を一掃していく。

    ムウ「ボサッとするな!地球軍のモビルスーツ部隊が来るぞ!」
    マユラ「りょ、了解!」

    先遣隊の生き残りはまだ沖合にウヨウヨとひしめいている。今まで秘匿されていたオーブ軍の
    モビルスーツの性能を目の当たりにした彼らだ。
    すぐに地球軍のモビルスーツ隊へ援護の要請をしているに違いない。

    歴史に名を残すことになろう、壮絶なモビルスーツ同士の戦いがすぐそこまで迫っていた。

  • 46スレ主24/10/17(木) 16:03:35

    モビルスーツを乗せた巡洋艦から、いくつもの影がオノゴロ島へ向かって進行していくる。

    その光景を見つめながら、M1アストレイを駆るPJは回線越しに各部隊へ指示を出していく。


    PJ「キャンベル隊は東に展開する!!各機、敵の足を止めろ!ここを通すな!!」

    「了解!!」


    飛行能力が乏しいモビルスーツにとって、海上での戦闘は困難だ。先に迎え撃つために、

    PJたちの頭上を地球軍とオーブ軍のパイロットで構成されたオーブ軍のカラーリングをした

    スピアヘッドとスカイグラスパー改の編隊が飛び抜けて行く。


    「戦闘機隊も攻撃開始だ!」

    「雁首揃えて来やがったな!」


    沿岸部を抜けた彼らは、そのままオノゴロ島へ向かってくる輸送船へ攻撃を仕掛け、

    輸送船を守る護衛艦とも交戦を開始する。

    こちらも、沿岸部から届く特科射撃隊からの援護射撃をして行くが、物量で言えば地球軍が圧倒的に有利だ。


    「キャンベル隊、遅くなったが我々も攻撃に参加する!」


    その通信が届いたと同時に、別方向から上がってきた

    ザフト軍パイロットが操る攻撃ヘリ部隊も合流し、戦闘は一気に激しさを増していった。


     


    「やっと軍隊らしくなってきたな!」


    誰かの通信が聞こえる。戦闘機部隊の攻撃を抜けた輸送船から飛び立った地球軍のモビルスーツが見えると、

    PJたちも沿岸部へ前進し、モビルスーツ同士の戦闘が苛烈さを増していった。

  • 47スレ主24/10/17(木) 17:04:55

    イザーク「ジュール隊は南側からくる敵艦とモビルスーツの相手だ!!各個に迎撃せよ!!」

    イザーク指揮のジュール隊は、オノゴロ島の沿岸都市部から
    モルゲンレーテの工廠エリアの防衛を任されていた。
    オノゴロ島の防衛施設としても、このエリアが1番堅牢だった。その理由としては、
    このエリア自体が、地球軍が目標とするモルゲンレーテ社に最も近いエリアの一つだからだ。
    イザークを中心に、モビルスーツを操る部隊も手練れが多く、防衛部隊の守りも固く構築されている。

    「アラスカとパナマではやられっぱなしだったが、ここからはペイバックタイムだ!!」

    ジンを操っていた古強者のパイロットたちは、乗り換えたアストレイを難なく乗りこなして、
    上陸しようとしてくるモビルスーツや敵艦を迎撃して行く。
    その先頭に立つのは、ディアッカのバスターと装いを新たにしたニコルのブリッツだった。

    二コル「このぉ!!」
    ディアッカ「数だけ揃えたってねぇ!!」

    右腕損失が攻撃手段損失に繋がる弱点を克服したブリッツ。ニコル自身の経験値も相まって、
    圧倒的な機動力と反応性を見せながら地球軍のモビルスーツを蹴散らしていく。
    バスターに乗るディアッカも、両腰に備わる砲塔でモビルスーツをなぎ払い、
    離れた場所にいる護衛艦を連結したビーム砲で撃ち抜く。撃破した船の残骸を踏みつけながら、
    ジュール隊を率いるイザークは次の目標を倒すためにデュエルを飛翔させた。

  • 48スレ主24/10/17(木) 17:46:26


    ヤサカニデュエル

    GAT-X102YM

    全高17.5m

    総重量53.5t

    装甲材質チタン合金セラミック複合材(頭部含め一部フェイズシフト装甲)

    動力源バッテリー(パワーエクステンダー搭載)


    アークエンジェルに回収された後モルゲンレーテに運び込まれたが、

    ストライクとグレーフレームを優先等の事情で放置されていたデュエルを、

    M1アストレイの部品と評価が高かった試験装備で損傷部を補った機体。

    フレームの一部をより強固で柔軟性の高い物に置き換え、材質の多くに

    対ビームコーティングを施したチタン合金セラミック複合材を使用。

    両肩部と腰部に追加された高推力スラスターにより、正史で使われた

    アサルトシュラウド装備型を大きく上回る機動性と運動性、防御力を誇る。

    バックパック両脇にアーム可動式実体シールド、シールド裏側には小型レールガンと

    ビーム砲を備えることによって、火力も強化されている。


    ヤサカニは三種の神器の一つ[八尺瓊勾玉]に由来し、本来はシールドをドラグーンとして

    運用する予定だったが、テストは宇宙でしかできない、適性があるテストパイロットが

    居なかったために、可動アームでの接続に変更された。

  • 49スレ主24/10/17(木) 21:16:13

    交戦開始から変化はすぐにあった。

    「敵モビルスーツ部隊、イザナギ海岸に上陸!フラガ隊とキャンベル隊、交戦開始!」

    最初に来た上陸部隊はまるで小手調べと言わんばかりに、
    今度はモビルスーツの大部隊がオーブへと押し寄せてきていた。

    「第8機甲大隊をジュール隊の援護に回せ!」
    「オノゴロ上空に大型機接近!」

    司令室にいるカガリが不安げに隣にいるウズミを見上げる。
    海、そして空からも降下してくる地球軍のモビルスーツ。
    地球軍とザフト軍の援軍が加わってるとは言え、オーブの人員は限られている。
    そのわずかな戦力で、地球軍が展開する圧倒的な物量戦にどこまで耐えられるか。

    ここからが苦しい戦いになる。
    しかし、ここを耐えれば勝算はある。

    ウズミは動いて行く戦況を見極めながら、この先に自分がとるべき道を見定めようとしていた。

  • 50スレ主24/10/17(木) 21:26:27

    アサギ「物量が……!」
    ユリ「これが実戦なの…!?」

    海から。そして空からも敵がやってくる。倒しても倒してもキリがない。
    そんな絶望感すら感じる地球軍の物量戦に、アサギたちは驚愕していた。
    こちらが四機いるのに対して、向こうは10機は優に超える量を投入してくる。
    そこまでして、オーブの技術とマスドライバーが欲しいのか!そんな思いが頭をよぎった時、
    空から大きな翼を広げた二つの影が舞い降りてきた。

    あっという間の出来事だった。

    ほんの僅かの閃光が迸った瞬間、周りにいた地球軍のモビルスーツの四肢や頭部が両断され、
    いくつものビームが他の敵を穿って行く。

    トール「キラ!次行くぞ!」
    キラ「分かった!!」

    嵐のように現れたグレーフレームとフリーダムは、
    そのまま何事もなかったかのように飛び去って、別のエリアへと進んでいった。

    マユラ「凄…」
    ムウ「おーおー、かっこいいねぇ。ボーっとしてると次が来るぞ!お嬢ちゃん達!」

    ただ……そこに最悪の増援が現れた。
    明らかにGシリーズ、それもヘリオポリスで開発された5機に比べ、凶悪な外見を
    持つ三機が、アサギ達に迫ってきた。

  • 51スレ主24/10/17(木) 21:30:40

    イザーク「こぉのぉぉ!!」

    イザークたちが戦うエリアは、まさに孤軍奮闘と言えた。

    押し寄せるはモビルスーツの波、波、波。
    海と空からやってくる敵の数は減るどころか、まるで
    バケツで投入される水のごとく押し寄せる量を増やしていく。
    まだアストレイ隊での防衛網は維持しているが、奮戦していた陸上部隊や、
    新兵が駆るM1アストレイでも撃破されていく者が現れ、少しずつジュール隊の首は締まりつつあった。

    イザーク「各機へ!戦線を押し戻せ!!物量は多いが敵の動きは大したことはない!!」

    そんな中、敵の攻めを押し返す勢いで戦うイザークが怒声に似た声で隊員を奮い立たせていく。
    実際ストライクダガーの動きはアストレイと比べてぎこちなく、
    まだ全員の戦意は落ちていない。ここが勝負どころだった。

    二コル「イザーク!新型Gです!」

    ニコルの叫びに視線を彷徨わせると、アサギたちのアストレイが囲まれつつあった。

    イザーク「俺とディアッカで援護する!ニコルは沿岸部のフォローだ!!」

  • 52二次元好きの匿名さん24/10/18(金) 06:44:55

    保守

  • 53スレ主24/10/18(金) 13:36:52

    三機の新型Gは強く、オーブの装甲車両を蹴散らし、堡塁を破壊し、どんどん進んで行く。
    通常戦力ではとうてい相手にならない。

    クロト「必殺ゥ!邪魔するなァ!」
    オルガ「ちッ、うるせえなクロトは。しょうがねえ」

    この様子を見て危険だと思ったのか、そこへフラガ隊のアストレイ三機が駆けつけてきたのだが……

    シャニ「はァン? 何なの、敵のMS? なら死になよ」
    クロト「シャニ、そいつらは僕がやる!」
    シャニ「命令なんか……しないでくれるかなあ!」

    動きがまるで違う。常識外なほど戦意に溢れた連合のGがオーブのアストレイに襲い掛かる。
    立ち向かおうとしたアストレイたちはその速さと火力に戸惑うばかりだ。
    ついにジュリのアストレイがビームを肩に受け、動きを止めてしまったところ、
    更に脚を撃たれる。もはや倒れるしかない。
    コックピット直撃でなかったのは幸いだ。そのはずだったのだが……
    大破したアストレイに対し、連合のGは何と止めを刺しに来ている。

    たまらずもうマユラが間に入り、阻止に動いた。
    だが、それもまた斬り払われて直ぐに大破だ。

    そこで応援が来た!
    イザークの駆るデュエルだ。

  • 54スレ主24/10/18(金) 14:30:58

    クロト「こいつ滅殺ゥ!旧型のくせに!たった一機で!」

    多少の援護があるとはいえ、新型G三機を相手にできる余裕があるのはデュエルだけ。

    しかしながらデュエルは退かない。

    一機だけで相手取るのだから損傷は避けられないが、それでもアストレイたちを庇いつつ、
    攻撃をいなし続ける。歴戦の赤服パイロットという肩書は伊達では無いようだ。
    しかしやはり限界が来た。死神を思わせる大鎌と二枚の稼働シールドを装備すフォビドゥンの背後から、
    影のように現れた黒い可変機レイダーが放つ鉄球を、イザークは拾ったストライクダガーの
    シールドをぶつけることで逸らすが、隙ができてしまった。

    イザーク(不味い!)

    目の前に迫るフォビドゥンが、ビーム砲へエネルギーを収縮させていくのがわかった。
    C.E.ではフェイズシフト装甲に次ぐ強度と対ビーム処理がされている装甲とはいえ、
    この距離で高出力砲の直撃を受ければ致命傷だ。

    その瞬間、上空から紅い閃光が飛来し、デュエルの前へと割って入ってきた。
    その影はフォビドゥンから放たれたビームを受け止め、
    シールドで弾かれたビームの閃光は大空の中へと飛散していく。

    クロト「なにぃ!?」

    驚くクロトが目にしたのは、紅い…新たなモビルスーツだった。

  • 55スレ主24/10/18(金) 14:32:27

    イザーク(な、なんだ……このモビルスーツは……!)

    一番驚愕しているイザークへ、現れたモビルスーツは
    デュアルアイでデュエルを一瞥すると、すぐさま戦闘態勢へと入る。

    クロト「このぉ…なんだてめぇは!」
    シャニ「へぇー、まだ居たんだ、変なモビルスーツ」

    驚いていたのか、二機の動きもわずかに単調になっていたものの、
    思考を切り替えてすぐに三機によるフォーメーションへと戻り、再び激しい空中戦が始まった。

    アスラン『こちら、ザフト軍特務隊…アスラン・ザラだ。聞こえるか、乗っているのは誰だ?』

    そんな空中戦の中、現れた機体ーージャスティスは、デュエルを援護しながら
    通信チャンネルへアクセスをしてきた。相手は、アスラン・ザラだ。

  • 56スレ主24/10/18(金) 14:34:45

    イザーク「アスラン…!?」
    クロト「はぁぁぁぁぁぁ!!」

    イザークの驚きを、レイダーの鉄球が引き裂く。

    イザーク「どういうつもりだ!ザフトがこの戦闘に介入するのか!?」
    アスラン『俺は…軍からはこの戦闘に対して、何の命令も受けていない!!』

    レイダーを翻弄したジャスティスの傍から、今度は多数の火器を
    装備した重砲撃型のはカラミティが迫る。目まぐるしく戦う相手が入れ替わっていた。

    クロト「うらぁぁ!!」
    オルガ「ちぃい!しつこいんだよ、お前らぁ!!」
    アスラン『この介入は…俺個人の意志だ!』

    カラミティのビームを弾いて、アスランはイザークに向かって大声で伝えた。従った自分の心の答えを。

    アスラン『俺は…キラやお前達を助けたい!!友達と仲間を助けに来たんだ!!』

  • 57スレ主24/10/18(金) 16:35:50

    オノゴロ島の陸上戦は佳境に入った。
    連合のMSは数にものを言わせて戦いを優位に進めている。
    逆に言えば、揚陸艦からMSが出尽くしたということでもある。

    この時、もはや勝負はついたのだ。ジャックの戦術は連合の艦隊を破る。それが確定した。

    ジャック「ラミアス艦長、二手目です」
    マリュー『分かりましたジャック船長。オーブ国防軍第一護衛艦隊に連絡!出撃を!』

    すると島陰からオーブの護衛艦が六隻ほど姿を現した。
    今まで地形を利用して隠れていたのだ。そして全速をもって真っすぐに連合の艦隊へ突進していく。
    これには連合の方も一瞬驚いたようだが、別に不思議な魔術というものではない。
    いつかはオーブだって水上戦力を出してくる、ホームならではの
    奇襲といえども予想外ということには値しない。
    連合は直ちに艦対艦ミサイルにより迎撃を始める。加えて砲撃や雷撃が続く。
    ある意味MSが無い前時代の水上戦そのものだ。

    むしろ連合の艦隊にとっては本懐ともいうべき戦い方なのだろう。
    これに対し、オーブの護衛艦は沈黙を保っている。そのまま速力を緩めることなく突進だけを続けているのだ。

    だが、連合の熾烈な攻撃の前に一隻また一隻と足が止まり、やがて轟沈していく。

  • 58スレ主24/10/18(金) 18:30:20

    ハインズ「連合からすれば無謀な特攻に見えるだろうな。破れかぶれの自殺志願だと」

    その様子を見ていたハインズは呟く。彼はオーブがMS用母艦の一種として建造した
    新型潜水艦で指揮を執っていたのだ。

    「そうですね艦長。無人艦ですが……」
    ハインズ「正直思うところはあるが、MSが主役となった今の戦場で旧来設計の艦はたいして役に立たん。
    それは我々も含めた連合が身をもって思い知ったことだ。ならば別の手段で役立てるしかない。
    それにこの撃沈で海中は何も探査が効かなくなっただろう。目くらましには十分だ」

    そう、これだけの激しい攻撃と撃沈なのだ。海は泡立ち、ソナーも何も使いようがない。
    そこでジャックの決め手が牙を剥く。あの胡散臭い船長が味方でよかったとハインズは思った。

  • 59スレ主24/10/18(金) 19:30:13

    海中に潜んでいたアルコンガラのMS隊と、水中用装備を取り付けたアストレイ隊が飛び出した。
    アルコンガラのMSは水中でも活動できるし、C.E.のMSも程度の差はあれ水中活動はできる。
    元より宇宙戦闘機として作られたMSならばパイロットが溺れる心配は無いし、
    オーブの浅い海では水圧も大したことはないので改修も簡単で済む。

    アストレイ隊の内半数が対艦魚雷でスクリューをもう半数はハープーンランチャー(銛撃ち機)で
    センサー類やMSの発艦・帰艦に関連する場所を攻撃する。
    戦術を考える上での基本は、どうすれば相手が不利になるか、
    極論すれば、相手が一番されたら嫌なことをする、だ。

    今回は母艦である揚陸艦を使えなくすることだ。
    そうすればストライクダガーは補給どころか撤退すらできなくなる。
    結果、電池切れで木偶の坊となり、投降するしかなくなるわけだ。

    ジャック「これで縦軸戦術の完成。連合艦隊はMSを置き去りにして撤退するしかありません」
    マリュー『本当に恐ろしいですジャック船長。高空からの攻撃と海底からのコンビネーションなんて』
    ジャック「戦術とは思い付きを実行可能か考える事ですラミアス艦長、バジルール中佐。
    これからゆっくりと学べばいいのですよ」

  • 60スレ主24/10/18(金) 19:43:38

    連合の強襲揚陸艦は行動不能で文字道理の全滅。
    更に水中アストレイ隊は行きがけの駄賃と、護衛についていた駆逐艦隊にも襲い掛かる。
    これには連合の方も大慌てだ。

    アズラエル「ダーレス少将、何を無様な!」
    ダーレス「これはMSの攻撃……アズラエル理事、オーブがこんな手を」
    アズラエル「いいから早く反撃を!駆逐艦がいるんだから爆雷でも何でもあるでしょう!」

    そして連合は海中へ反撃を試みるが……全く無駄だった。

    充分な防御と戦艦のような火力、このコンセプトで生まれたのがMSなのだ。
    爆雷では直撃でもしない限り問題ない。
    ましてやミサイルよりはるかに鈍足な魚雷など何の脅威にもならない。

    アズラエル「全然ダメ!ならば砲撃です!」
    ダーレス「アズラエル理事、斜め方向から撃つのでは、砲弾が海面で弾かれますが」
    アズラエル「もっと頭使ったらどうなの!ビームで撃てば届くはず、早く!」

    連合の方は思い切ったことをしてきた。本来対空用のビームを海中に撃ち込んでくるとは。
    アルコンガラ隊は空中に居る上、浅い海ではMSの場所もうっすら分かるから、それもまた良い手だろう。
    しかし、それもジャックの想定内だった。

  • 61スレ主24/10/18(金) 20:03:46

    連合が雨霰と撃つビームは、圧倒的な機動性を持つアルコンガラ隊はもちろん、
    水中のアストレイ隊にも掠りすらしない。

    「艦長、どうなってんですかアレ?」
    ハインズ「屈折だ。ビームは光だから海面で曲がる。しかもMSが目で見えていればなおさら厄介だ。
    見える光とビームでは屈折の形が違うから余計に当たらなくなる。おまけにビームの威力は熱エネルギーだ。
    水中では冷えて使い物にならない。つまりMSを何とかするにはやはりMSしかなく、
    連合が今更それに気が付いても揚陸艦は全て失われている。後はこちらにとって消化試合だ」

    連合側に残された選択肢はせっかく量産したMSを置き去りにして撤退か、
    敗北を認めずに翼を生やした狐が率いる隼達に狩られるかの二択。雌雄は決したのだ。

  • 62スレ主24/10/18(金) 20:38:27

    1.帰艦

    2.捕虜

    3.戦死


    オルガdice1d3=2 (2)

    クロトdice1d3=2 (2)

    シャニdice1d3=2 (2)

  • 63スレ主24/10/18(金) 21:05:20

    一方で連合は敗北を認められず、未だ艦隊をジグザク航行させている。
    しかしそれで逃れられる状況はとうに過ぎていた。
    護衛の駆逐艦達は水中アストレイ隊にスクリューやブリッジを潰されて航行不能になり。
    アルコンガラ隊はオーバースペックな武装を用いて多数の艦を撃沈させていく。
    更に恐ろしいにはアーウィンが放つツインサテライトキャノンだ。
    二割程度の出力で撃ったにもかかわらず、射線上の艦艇を根こそぎ大穴をあけて撃沈して見せる。

    アズラエル「オーブは揚陸艦ばかりか駆逐艦までも……
    旗艦も危ない!空母に移らせて頂く。あの三人も空母へ」
    ダーレス「アズラエル理事、あのMSたちを空母へ!?
    しかし航空機用の空母にMSを収容する設備はないはず」

    このダーレス少将の言葉にムルタ・アズラエルは苛立ちを隠せない。
    アズラエルは軍人ではないが決して馬鹿ではなく、決断力もある。
    どれだけ天才的な経営戦略を立てたところで、儲からない時は儲からない。
    だから全体の機微を感じ取り、多額の前金を使っていたとしても引き下がり、
    最終的な損失を抑える必要がある。そういった引き際をも極めることに関して、
    アズラエルは天才的なビジネスマンであった。

  • 64スレ主24/10/18(金) 21:07:20

    アズラエル「だからそういう思い込みをするから軍人さんはダメなんです!
    とりあえず載せて運べればいいでしょう。邪魔な飛行機なんか蹴り落とさせます。
    どうせ使いようもないんだから。ああ、空母の医療設備にあの三人用の
    グリフェプタンがあることだけ確認しといて下さい」

    連合は後期Gだけを先に空母へ帰艦命令を出すが、オーブに加勢したジャスティスとジュール隊、
    キャンベル隊の巧みな連携攻撃を前に全機が捕獲され、無事な強襲揚陸艦はなくなり、
    ストライクダガーどころか戦闘機すらどこにも戻る場所をなくしてしまう。
    それでもしばらく陸上戦で戦っていたが、どのみち無駄なのだ。
    オーブ側が弾薬を消耗させる持久戦に切り替えたら、もはや降伏は時間の問題ということが誰にでも分かる。
    むろんMSという攻め手を欠くことになった連合の艦隊もどうしようもない。
    ようやく負けを認め、順次ストライクダガーを海中のオーブ側MSの牽制に使っては、
    無事な駆逐艦で乗員だけ救助して使い捨てる。それでようやく艦隊も撤退する。

    しかし収容の限界から見捨てられた者も多く、彼らも大人しくオーブに投降した。
    こうしてオーブ防衛戦は終わった。

  • 65二次元好きの匿名さん24/10/19(土) 08:00:28

    保守

  • 66スレ主24/10/19(土) 15:53:00

    後方戦要員達が帰還してくる者たちを出迎える。
    むろんそこには激闘を終え、高揚したウィル君たちがいる。

    他にも……面白い光景があった。

    アサギ「ほら、お礼言いなさいよ、マユラ」
    マユラ「分かったわよアサギ。あんたもでしょ」

    フラガ隊の少女三人が、遅れて帰還してくるデュエルを出迎える。
    そしてデュエルから出てきたイザークに言うのだ。

    ジュリ「あの、助けてくれて、ありがとうございます!」
    アサギ「凄く強いんですね!私も守ってもらいました!」

    すると、それを見たイザークは一瞬きょとんとしたが、
    心当たりがある為すぐに持ち直す。

    イザーク「俺が守った?あ、ああ、あの時のアストレイ…無事だったか」

    少女たちが顔を赤らめ、それぞれ礼を言った後に走り去る。
    イザーク立ち止ったままだ。

  • 67スレ主24/10/19(土) 16:02:38

    イザーク「俺が守った……俺が」

    それを見ていたジャックが声をかける。

    ジャック「君は確か、イザーク君でしたね。何故不思議そうな顔を?。
    誰かを守って戦ったことはなかったのですか?」
    イザーク「…………」
    ジャック「素晴らしい戦いぶりでした。間違いなく君が彼女達を救ったのです」
    イザーク「いや、俺はただ……しかし途中から力が湧いてきて」
    ジャック「君は本来、そうして戦いがしたかったのではないですか?
    避難シャトルを撃たずに済んで安堵していたと聞きましたし、
    パナマでも無益な殺戮を止めようとしたそうではないですか。
    守って戦うのは重い責任が付きまといますが、良い物でしょう?」

    あとは戦いつつ、自分で答えを見出しないさいと言って、ジャックは立ち去る。
    偉大なパイロットというのはそうやって成長していくものだ。

  • 68スレ主24/10/19(土) 18:59:30

    オノゴロ島におけるオーブと連合との死闘は、むろんザフトも重大な関心を持って見ている。
    なぜならオーブを連合が取ってしまえばその意義は計り知れない。特にマス・ドライバーが戦略上の焦点だ。
    ザフトは今、地球表面をやみくもに侵攻することはなくなった。既にそれが無理だと悟り、
    途中から連合のマス・ドライバーを奪う戦略に切り替えている。
    連合の物量をもってしても輸送ができなければどうしようもないからだ。

    しかしここでオーブのマス・ドライバーを奪ってしまえば……
    ザフトの方は必然的に戦略の修正を余儀なくされてしまう。
    だから戦いの様子を宇宙からしっかり監視していたのだ。

    そしてその戦いに、オーブは見事勝利した。
    連合は再度侵攻しようにも、失った戦力が大きすぎて直ぐには攻められない。
    艦艇は半分以上、MSとそのパイロットにいったては文字道理全てだ。
    戦略的に見れば、もはやザフトの勝利は確実と言えた。

    あくまで[戦争目線における戦略]では……の話だが。

  • 69スレ主24/10/19(土) 19:26:24

    モルゲンレーテ社の研究施設に、達磨にされた
    カラミティ、フォビドゥン、レイダーの新型G三機が運び込まれていた。
    デュエルとの戦いで少なからずエネルギーや弾薬を消耗していたうえ、
    運悪く撤退途中でアルコンガラ隊と遭遇。
    圧倒的な格上四機を相手に手も足も出ず四肢とバックパックを潰されて、
    パイロット共々鹵獲されたわけだ。

    三機は今、エリカ・シモンズ主任とアルマによって解析作業が行われている。

    アルマ「最初の五機と違い、表面に衝撃センサーを仕込んだ通常装甲を被せ、
    衝撃を感知した瞬間だけ通電するようにしてますね。
    フェイズシフト装甲の改良案の一つとしてはありかと」
    エリカ「でもフェイズシフト装甲はかなりの重量よ。
    そんなことをすれば余計に重くなって運動性が低下するわ」
    アルマ「ええ、なのでバイタルパート(重要部分)が集中する胴部にだけ使ってますね。
    残りは通常装甲で作って重量を軽くしています」

    するとアルマが持っていた通信機に連絡が入る。

    アルマ「ラドルか、どうした?」
    ラドル『捕虜にした三人がものすごく苦しんでたから調べたんだけどさ、
    コーディネーターを超える能力を与えるために薬物投与されてたんだ』
    アルマ「遺伝子じゃなければいいって?酷い話だな」
    ラドル『おまけに使われた薬の中毒性が酷くてさ、今も地獄の苦しみだろうね。
    一応血液採取で成分が取れたから中和剤が作れないか試してみてるけど、それでも長生きは難しいかも』

    つまり戦争の狂気の被害者というわけだ。
    何とも言えなくなり、後味が悪かった。

  • 70二次元好きの匿名さん24/10/20(日) 07:08:20

    保守

  • 71スレ主24/10/20(日) 09:44:11

    イザーク「しかし、お前がオーブに加わるなんてな」

    イザークたちの機体は、前回の交戦で少なからずの損傷を受けていた。
    とくに、デュエルとバスターの損傷は酷く、
    ブリッツと共に第六工廠に運び込まれ、より実践的な改修を兼ねて修理を受けていた。

    デュエルは全身を本来のパーツに置き換え、それに合わせたヤサカニを装備させる。
    バスターはストライクのアーマーシュナイダーとバッテリー式のビームサーベルを追加。
    ブリッツはランサーダートを廃してワイヤーアンカーに変更したトリケロスを両腕に装備し、
    リアスカートにビームライフル、サイドスカートにビームサーベルを追加して継戦能力の向上。

    アスラン「俺も驚いたよ、イザーク」
    二コル「パナマの一件があって、僕らもこちらに加わったんです」

    フリーダムに乗るキラを探しに来たアスランも、訪れたイザークたちと予想外の再会を果たすことになった。
    パナマ攻略作戦に参加していたとは聞いてはいたが、
    まさかザフトから離れオーブに身を寄せていたとは思いもしなかった。
    ニコルの言葉に頷きながら、アスランはジャスティスの横に並ぶG兵器群を見上げた。

    イザーク「オーブの戦いに参加してるのは成り行きだけどな」

    不機嫌そうにいうイザークは、重量バランスが変わったデュエルを調整していた。

    イザーク「俺はパナマでの借りを返してるだけだ。事が済めば俺は…」
    ディアッカ「ザフトに戻って、また言うこと聞く兵隊さんに戻るか?」

    そうディアッカが言うと、イザークの手は止まり口も閉ざした。

    アスラン「今は、俺の父に…イザークの母にも、俺たちの声は届かない」

  • 72スレ主24/10/20(日) 09:45:11

    まるでトドメを刺すように言うアスランに、イザークは
    「そんなこと、言われなくてもわかっている!」と打ち込んでいた端末を閉じてアスランを睨みつけた。
    母や、アスランの父の在り方はイザークもよくわかっている。
    コーディネーターより劣るナチュラルと見下している以上、自分たちの行動を親が理解するわけがない。
    間違いなく裏切り者として扱うだろう。

    ディアッカ「本当に…俺たちの親はナチュラルを滅ぼしたいのかねぇ」
    二コル「滅ぼして…その先に何があるんですかね」

    それはディアッカもニコルも同じだった。ザフトに入ったのも親の影響があったからとはいえ
    ーー戦場で傷ついた仲間たちと、それを命を投げ打ってまで助けに来てくれた、敵だった地球軍の兵士。
    親が言う価値観の一言で片付けられる問題じゃない。

    ディアッカ「いっそ聞いてみるかぁ?コーディネーターが統治する素晴らしい世界とか?」
    アスラン「俺たちだけになっても、また戦争は起こるさ」

    ディアッカの皮肉げな予想を、アスランはバッサリと切り捨てた。

    ディアッカ「ナチュラルを破滅させた急進派と、ただ平和に暮らしたい穏健派との小競り合いとか?」

    そんな簡単なものじゃないさ。とアスランは物憂げな顔つきで言う。もしナチュラルを滅ぼしてしまえば、
    後はコーディネーターだけで仲良く暮らして世界は良くなる?答えはノーだ。
    きっと生まれた軋轢は形と概念を変えて自分たちを縛り、戦いを強制し続けるだろう。
    ジャックから居住地・所属国家・人種、何かしろの違いを理由に人間は戦い続けていると聞いた。
     
    アスラン「ここで止まらなければ、きっと繰り返しになる」

    同じことの繰り返しだ。滅ぼそうとして、滅ぼされて、また繰り返す。そうやって人は
    進化してきたとも言われるが、そうして流された血の量は計り知れず、如何にしても拭いさることはできない。

  • 73スレ主24/10/20(日) 09:47:08

    イザーク「ふん、貴様がどう思おうが勝手だ」
    アスラン「イザーク」

    そう言ってイザークは立ち上がると、デュエルを見上げた。

    イザーク「俺はただ、手を取ってくれた相手の敬意に答えるだけだ。
    それに、俺を信じて付いてきてくれる奴らに、コーディネーターだの、
    ナチュラルだのと言って足踏みなどしてみろ。それこそ顔向けできんだろうが」

    そう言うイザークを、アスランは驚いた顔で見つめていた。
    ニコルとディアッカは、それを聞いて小さく笑っている。
    ここに来てーーいや、地球軍との共闘を目にしてから、
    イザークの在り方は少しずつ、しかし決定的なまでに変わってきている。

    イザーク「今はとにかく世界がどう動くか見極め、備えるしかあるまい。
    アスラン、貴様にも働いてもらうぞ。その新型とやらでな」

    隊長として貫禄がついてきたイザークを見て、アスランは困ったように笑ってからイザークへ手を差し伸べた。

    アスラン「わかってるよ、イザーク隊長」

    差し出されたアスランの手を、イザークは顔と交互に見比べてから手早く握り返してすぐに振りほどく。

    イザーク「ふんっ」

    鼻を鳴らして、彼は「データをシモンズ女史に見てもらう」と言って急ぎ足でアスランの元を離れた。

    二コル「そもそもアスランがジュール隊に来るかどうかも…」
    ディアッカ「待てよーイザークー」

  • 74スレ主24/10/20(日) 09:47:58

    その後をニコルとディアッカも追いかけていく。変わらないなぁ、あいつらはーーそんな安心感に似た感覚を、
    アスランはゆっくりと噛み締めてから、後ろでじっとこちらを見てくる人物へ振り返った。

    アスラン「で、お前はなんでずっとくっついている?」

    物陰からのぞいていたカガリは、バレたと言った風に一旦隠れたが、
    すぐに咳払いをしながら堂々とアスランの前へと姿を現した。

    カガリ「気にするな。見張ってるだけだ」
    アスラン「……そうか」

    そう答えると、アスランもジャスティスの戦闘データを元に調整を施していく。
    専用機としてOSの改修はしたが、実戦データ不足でレスポンスを合わせる必要がある。
    そんなアスランの元に近づいたカガリは、少し離れた場所にあるフリーダムを見ながら呟いた。

    カガリ「キラが生きてて、良かったな」
    アスラン「え?あぁ…あの時、俺は礼も言わなかったな」

    アスランもオーブに救助された時のことを思い出していた。恥ずかしくも、
    カガリの前で大泣きしてしまった身だ。礼の一言も言えなかったと今になって恥ずかしい気持ちになる。
    そんなアスランにカガリは柔らかい笑みを浮かべて答えた。

    カガリ「言ったさ、ちゃんと。一応な」
    アスラン「そうか?」
    カガリ「ボケてたからなぁ。覚えてないんだろ?」
    アスラン「ふ…ああ」

    すると、フリーダムのコクピットが開いてキラが降りてくるのが見えた。
    足元ではマードックやウィル、フレイと円を作ってなにかの打ち合わせを真剣な眼差しで行なっている。

  • 75スレ主24/10/20(日) 09:48:42

    カガリ「キラ、変わったろ」
    アスラン「…いや」

    そう言うカガリに、アスランは遠くを見る目で答える。

    アスラン「……いや、やっぱりあいつはあいつだよ」

    月で別れた時から変わってない。分からず屋で、優しそうに見えて頑固で、
    けれど手を抜くどこか間抜けな頃のキラ。今でもその本質は変わっていない。
    そんなことを思っているアスランに、カガリは少し言い淀んだ声で問いかけた。

    カガリ「お前…どうするんだ…これから?」

    その言葉の意味を、アスランはよく考えた。きっと彼女としても、
    自分がキラと共に戦うことを望んでいる。そして、自分も──。

  • 76スレ主24/10/20(日) 09:50:26

    アスラン「俺は、俺の心に従うよ」
    カガリ「なんだよ、それ」

    そう問い返したカガリを見て、アスランは笑った。たしかに答えにはなっていない。

    アスラン「さぁな。だが…もう答えは出ているのかも知れない」

    そう言ってアスランは遠くにいるキラを見つめた。
    いつのまにか現れたクララとジャックに揉みくちゃにされている姿を見て。

    そして、自分の父のことを思い返した。

    父はーーこの心になんと言うだろうか。そんなことを思うと、心が苦しくなる。
    あの熱のない機械のような目を思い返して、手が震えそうになる。
    そんなアスランのとなりにカガリは腰を下ろした。

    カガリ「苦しいな」

    そう言ってカガリはそっとアスランの震える手に、自分の手を重ねてやるのだった。

  • 77スレ主24/10/20(日) 18:05:35

    オーブを巡る攻防戦に勝ち、ひとまず連合を撃退することに成功した。
    これからオーブは少なくない被害を受けたモルゲンレーテ社の施設再建に注力することになる。
    M1アストレイと運用母艦の量産を始めなければ、これからのオーブ防衛ができないからだ。

    しかし、オーブは勝利したのだが、結局のところ目指した非戦中立はかなわなかった。

    少なくとも非戦の夢は破れたのだ。連合とは決定的に手切れになり、ついに実力を行使されてしまい、
    防衛にせざるを得なくなった。かといってオーブは別にザフト側に立ったわけでもなく、
    その意味でとても中途半端になっている。そしてオーブが堂々と自立した第三極になるのは
    ……国力戦力的にとても難しいことだ。まさに綱渡りともいえる。

    ただし戦局が難しいのはオーブだけではない。
    連合はマス・ドライバーを未だ一つも手に入れられていない。
    そこで、ようやく他からの奪取を諦め、新たに建設する方に踏み切った。
    むろん連合の持つ物量からすればそれも不可能ではない。
    ちょうど今、ザフトが地上戦力の減少に伴い占領地の縮小に転じ、インド洋基地や黒海基地を放棄しつつある。
    そのため妨害を受ける恐れのないままマス・ドライバーの建設ができる。
    それでも、どんなに急いでも新規建設に時間がかかるのは間違いない。とすればただ一つ、まずいことがある。

    それは宇宙基地への補給だ。

  • 78スレ主24/10/20(日) 19:40:49

    食料だけでも一日に数トン、いや数十トン単位で必要である。それほど宇宙基地の維持というものは
    多くの物資を要するもので、今までは大量に効率的に打ち上げられるマス・ドライバーに頼り切っていた。
    それが使えないとなっても、ロケットやシャトルなどで賄えるはずがない。

    この非常事態に、連合は再建途上のアルテミス基地の放棄を命じた。月面のローレンツ基地なども同様である。

    そして連合最大の宇宙拠点である月面プトレマイオス基地へ人員・物資の集約をさせ、節約を重ねても、そ
    れほど長くは持たない。もちろん人員を順次帰還させてはいるが、旅客用シャトルも足らず、
    このペースでは基地の物資が底をつく方が早い。

    このためプトレマイオス基地は悲鳴を上げる。文字通り死活問題なのだから。

    だが連合首脳部は冷酷だった。

    見捨てる判断をしたのだ!

    連合がザフト根絶のため本格反撃をするのは、マス・ドライバーの建設が終わってから一気に行う。
    もったいないが、今の基地を絶対に保存する必要を認めてはいない。

  • 79スレ主24/10/20(日) 22:35:06

    ウズミ「オーブも苦しいことは変わりない、だが直ちに生きる死ぬではなくなった。
    それもここに居る皆が命を賭けて戦ってくれたのおかげだろう。国を代表して感謝する」

    オーブの首長ウズミ・ナラ・アスハがそんなことを言う。

    今、オーブ防衛線に参加した主要メンバーが会議室に呼ばれているのだ。
    むろん、これからの方向性を決めるための重要な会議だ。

    ウズミ「だが今、正に生きるか死ぬかに直面している者たちがいる。月面のプトレマイオス基地の連合兵だ。
    いや、悪いことに民間人も多数含まれ、数としては兵より多いくらいだろう。
    食料の枯渇を目前にしてどんな思いか。もしかすると暴動や粛清も始まっているかもしれない
    ……話が伝わってこないだけで。そうなれば地獄だな」

    ここまで聞けばウズミ首長が何を言いたいのか、この場の全員が分かっている。

    ウズミ「だからこそオーブのマス・ドライバーを使い、食料だけでも運び、人道的な支援をしたい」
    カガリ「父上の言う通りだ!人道による支援は大事だ!
    今、連合側の月面基地を支援すれば、中立非戦のオーブの理念がみんなに分かってもらえる!」

    ウズミの考えに対しカガリが即座にそう答える。
    この親子は……なぜかよく似ているところがある。
    政治家としてはあまりに考えが理想的で、純粋過ぎて、いっそ美しいくらいだ。

  • 80スレ主24/10/21(月) 07:56:03

    カガリ「おまけにオーブの理念が実を結んだら、それを見た連合もザフトも
    戦争を見直すかもしれないじゃないか!そうだろ!なあ船長も、キラも、そう言ってくれ!」

    カガリ少女が同意を求めるように視線を動かすが、そこに返事はない。
    真剣な声が空回りし、会議室は静まり返る。
    一つは、ザフトも、連合も、そんなことくらいで戦争を見直すわけがないという政治的なことだ。
    どちらも相手を皆殺しにすることしか考えてない過激派が主導権を握っているのだ。

    ウィル「流石にそれで止まってくれるならとっくに終わってるさ。
    主導権握ってる勢力が変わらないと結果は変わらない」

    ただし、とその後ウィルが付け加える。

    ウィル「和平交渉する時の仲介役としての発言力は……強くなるだろうな」

    その言葉に、支援に前向きな空気にはなるがもっと大きい問題がある。
    呼吸を三回も置いたのち、ようやくマリューが皆を代表し、沈痛な表情で言う。

    ウズミ「……しかしウズミ首長、それが可能でしょうか」

    むろん可能でないと言いたいのだ。その輸送が素直にいくはずがない。

    唯一にして絶対的な懸念はザフトの襲撃だ。

  • 81スレ主24/10/21(月) 07:57:30

    プトレマイオス基地だって背に腹は代えられず、連合を見限ってザフトにすり寄ることも検討しただろう。
    しかしそれは却下せざるを得ない。なぜならナチュラルを憎むザフトとどんな協定も結んでも意味がなく、
    必ずやナチュラルを虐殺にかかるはずだ。この懸念がある以上、
    ザフトに物資を求めることは有り得ない。虐殺と餓死、どちらがいいかなど悪夢だ。

    逆にザフトにとっては何も手を出す必要もなく連合の宇宙勢力を根絶できる。
    これは来たるべき連合の反撃を迎え撃つ上で願ってもないことだ。
    だからオーブから人道支援を名目に物資を積んだ輸送船を飛ばそうものなら、
    ザフトは決して見逃さず妨害してくる。当然のことだろう。

    そしてザフトの襲撃から輸送物資を守り切るのは無理である。戦力が余りにも足りなすぎる。

    マリュー「もちろんウズミ首長、分かってほしいのですが、
    人道的な作戦なら協力するのにやぶさかではないと言いたいのです。しかし現実的ではなく……残念です」
    「そうか、やはりそうかもしれない。アメノミハシラにいるイズモ級戦闘艦の
    イズモとクサナギを加えたところでたった五隻だ。ザフトの宇宙戦力を防げはしない、か」

    マリューも決してドライに割り切っているはずがない。
    どちらかというと艦長というには情が多過ぎ、甘く、打算的な判断ができないタイプである。
    今も餓死に直面しているプトレマイオス基地の人々を思いやり、どうにかしてやりたい気持ちでいるんだ。
    そういう判断を口にしたのも苦渋の末のことだと分かる。

    この中で最も優れた軍師であるジャックも「可能です」と
    言ってやりたいのは山々なのだが……無理なものは無理、仕方がない。

    物資を運び、避難民を連れ帰るだけの輸送船はある。
    だが護衛に回せる戦力は戦闘艦五隻と、それに艦載できる最大50機のMS。 

    戦力も先の攻防戦以上に大差がある。

  • 82スレ主24/10/21(月) 07:58:52

    それ以前の問題で、長距離輸送の護衛というものは想像よりずっと難しい。
    航路の全てに神経を使い、しかも襲撃を受けてから何かを守りつつ戦うのは大変である。
    どんなに優れた戦術家にとってもその困難さは変わりがない。
    だからこそ軍において補給線の守備と確保が生命線だと言われるのである。

    アーウィンのサテライトキャノンや、グレートフォックスのハイパーメガ粒子砲。
    アークエンジェルのローエングリンを連射すればできなくは無いだろうが、
    消費エネルギーと冷却時間を考えれば現実的ではない。 

    ジャック「宇宙航路図を見せてください」

    アルコンガラの面々も少しは検討をしてみる。
    行くとすれば、輸送船団の航路図は地球の赤道近くから、S字のカーブを描きつつ、月表面に到達するものだ。
    もちろん護衛するアーク・エンジェルも同様のコースになる。
    これにオーブの宇宙ステーションアメノミハシラからの戦力が途中で合流する算段だ。

    ジャックは一つのことに気付いた。航路は地球と月を結ぶ、とあるポイントを掠めることになる。
    そのポイントはラグランジュポイントと呼ばれる場所だ。地球と月の重力が釣り合う場所であり、
    一番安定的に存在できる場所のことをいう。それはいくつもあるが、ここもその一つなのである。

    その名は、ルウム。初代ガンダムで激戦区となった場所の一つだ。

    ジャック「なるほど。物資護衛に回せる手勢はわずか。少なくない犠牲を払う必要はあります。
    ですが、戦術を組み立てられる状況です。けして不可能ではありません」

    そう言ってジャックは、いつも道理胡散臭い笑みを浮かべた。

  • 83スレ主24/10/21(月) 17:56:15

    カガリ「これが私の機体か」



    支援の準備が着々と進む中、同行することになったカガリがモルゲンレーテを訪れ、

    自信の専用機として用意された機体を見上げた。


    エリカ「MBF-02ストライクルージュ。基本はストライクのコピー品ですが、

    スラスターをプラズマエンジンにしたことで推進剤を積み込む必要が無くなったため、

    空いたスペースにより大容量のバッテリーを搭載できました。

    フラガ少佐のとケーニヒ准尉の戦闘データを基にした戦闘補助AIで操縦性も格段に上がり、

    序にアルマ君が作ってくれた統合兵装ストライカーパック[EW454Fオオトリ]を装備しています。

    エール・ソード・ランチャーそれぞれの特徴を併せ持ち、かつ使い易さと消費エネルギーといった

    信頼性や整備性もしっかり考慮しておりますので、原型機より性能は上回っております」

    カガリ「そうか……これで私もアスランやキラ達と一緒に戦えるな」


    実際カガリの操縦技術は悪くなく、トーリャと同等程度になっている。


    エリカ「パーソナルデザインはどういたしますか?」

    カガリ「そっちは任せる、オーブの代表として目立たなくてはならないは分かっているが、

    私に御大層な目印は思いつかない」

  • 84スレ主24/10/21(月) 19:10:24

    エリカ「ふふ、カガリ様ならそう言うと思っていましたわ。それともう一つ、
    これはウズミ様からの依頼なんですが、防御力に特化して絶対的にレーザーを通さない、
    アカツキという特殊MSの製作にも着手しています。やはりウズミ様はカガリ様のことが心配なんですのね」
    カガリ「父上は心配性過ぎるんだ。少しはアスランとキサカを見習ってほしい」

    キサカ一佐はカガリの世話役のようになっているが、実のところはウズミから
    厳命されたカガリの護衛だ。アフリカに連れて行ったり、カガリを見かけ上奔放にさせているようだが、
    キサカは常にカガリを守る立場にいる。

    アスランもウズミから「娘を頼むと」言われている。
    それも、息子に対する父親の様な顔で。どうやら二人の関係に気付いているらしく、
    事が落ち着き次第何か企んでいるらしい。

    そしてついに、多くの人の思いと運命を乗せて、オーブの救援隊が飛び立つ。
    漆黒の宇宙へと向かって。

    今からどれほどの戦いが待っているだろう。その全てに勝たなくては人類の未来はない。

  • 85二次元好きの匿名さん24/10/22(火) 05:55:56

    保守

  • 86スレ主24/10/22(火) 11:48:09

    宇宙は闇だ。むろん空気は存在せず、代わりに危険な放射線があり、当たり前だが人間に決して優しくない。
    それでも懐かしいと感じるウィルは、自分が現代日本人ではなくなってるのだと感じた。

    現在ウィルはアーク・エンジェルの食堂でコーヒーを飲んでいる。
    ジャックから淹れ方を教わって以来、すっかりはまり込んでいるのだ。
    グレートフォックスに居ればいいのではと思わなくは無いが、
    キラと共にアークエンジェルに居る方がいいと感じている。

    カガリ「キラ、私は政治家に向いてると思うか?
    この前も思い知った。理想論では誰も何も動かすことができなかった」
    キラ「この前の会議のことを言ってるの?カガリ。でもいいんじゃない。
    会議では結局プトレマイオス基地の救援をすることになったし」
    カガリ「そんなことを言ってるんじゃない!分かってるだろ!」

    いつになくカガリが難しい顔をしてキラと話している。
    聞こえてきた会話の内容も……政治家としての資質とはなかなか厄介な問題だ。
    しかしこうしてみていると、何だか姉妹のようだ。
     
    キラ「あはは、なら今度は私がカガリに大丈夫だと言ってあげる。
    いつもいつもカガリに私の方がそう言われてるから、今度はお返し」
    カガリ「何だそれは……根拠もないくせに」
    キラ「その方がなんだか妹みたいでいいな」
    カガリ「バカにするな!だいたいキラと私は、たしか同い年だったはずじゃないか!」

    見ていると言い争いさえ微笑ましいと思う。
    この少年少女はザフトと連合の戦争さえなければ、こうやって楽しく会話を続けられたのだろう。
    しかし、このカガリの言う事に対し、ウィルも口を出す。

  • 87スレ主24/10/22(火) 15:06:29

    ウィル「カガリ」
    カガリ「ウィル?」
    ウィル「さっきの会話を聞いていたが、理想主義と政治家の問題か?」
    カガリ「そ、そうだ。私は全然皆を動かせず、ジャック船長の戦術という
    具体的なものがなければ、今回の救出作戦も始められなかった」
    ウィル「政治家は必要なら冷酷にならないといけない、なんせ国と民を背負ってるんだからな。
    だからといって理想の無い政治家はいてはならない。そしたら人を数字でしか見ず、
    簡単に切り捨てる機械か悪魔になっちまう」

    現実は不条理不公平で理不尽だ。どうしてこんな目に合うと言いたくなるような不幸を押し付けてくる。 
    だからこそ理想は大事だ。決して時局がそぐわないからといって投げ捨てるものではない。
    困難な道だとわかっていても理想を捨てない者こそ政治家たるべきだ。

    ウィル「カガリ、理想主義、大いに結構。政治家としての第一関門は突破だな。
    後は勉強して視野を広げた方がいい、そうすれば理想を実現する道も見つかるさ」
    ウィル「そうか!それを聞けてなんだか嬉しいな。よし、勉強をしよう。じゃあな」

    焦るなというのに動きの早い、話が終わるともう駆けていった。
    ウィルはもう一杯用意していたコーヒーをどうするかと思案して、キラを見る。

    ウィル「飲むか?」
    キラ「砂糖とミルク、マシマシで」

  • 88スレ主24/10/22(火) 18:36:23

    透き通った少女の呼びかけが、街角のスクリーンから流れている。
    通行人達はその声に足を止め、困惑と同情──人によっては怨嗟──の混じった目で、その少女の姿を見遣った。

    ラクス『──わたくし達は、どこへ行きたかったのでしょう?何が欲しかったのでしょうか……?』

    非戦を訴える、ラクス・クラインである。
    彼女の声は透き通るように人々の胸を透過しては打ち、人心に影響を与え、多くの者の心を揺さぶった。

    『戦場で、今日もまた多くの血が流れ、多くの命が散って行きます。犠牲の上に成り立つ今、
    わたくし私達はいつまで、こんな悲しみの中で生きてゆかねばならないのでしょう?』

    平和の歌姫の姿は、ゲリラ放送を通じて〝プラント〟全域に発信されることになった。
    かくした放送に後押しされるような形で、国内では、厭戦気分の機運が高まっていた。

    ラクス『わたくし達が欲したものは、本当にこのような未来だったのでしょうか?
    撃っては撃たれ、撃たれては撃ち返す──けれどどうか、
    この果てない憎しみの連鎖を断ち切り、争いの日々を終わらせる道を探しましょう』

    しかしパトリック・ザラは、決してラクスの訴求を認めることはなかった。

    そもそも、かくして〝プラント〟市民の厭戦気分が高まり始めたのは、
    数週間前の〝オペレーション・スピッドブレイク〟失敗、ならびに〝フリーダム〟などの
    フラッグシップ機の喪失など、ザラ政権の度重なる失態に起因するものである。
    地上では多くの若人の命が喪われ、遺族の多くは耐え難い悲しみに暮れた。

  • 89スレ主24/10/22(火) 21:01:12

    地球軍がMSの開発と運用に成功したことで今までの戦局の優位性も崩壊し、
    戦況的な劣勢は、火を見るより明らかだ。

    人の口に戸が立てられない以上、厭戦の機運は、高まる一方であった。
    ──だが、それを云うなら〝スピッドブレイク〟の情報を地球軍に漏洩リークしたのは誰だ?
    ──最重要機密である〝フリーダム〟を、敵国に売り渡したのは誰だ?
    パトリックは、一連の責任がすべてラクス・クラインにあると唱え、
    巧みな情報操作を行い、国民達の厭戦気分を反転させるよう奔った。彼は断固として、こう云い張る。

    パトリック『ラクス・クラインの言葉に惑わされてはなりません!
    彼女は地球軍と通じ、軍の最重要機密を明け渡した叛逆者なのです!』

    一国の頂点に立つ者として、小娘ひとりの戯言のために、地位を脅かされるわけには行かないのだから。

    パトリック『戦いなど、誰も望みません!だが、それではなぜ、このような事態となったのでしょう!
    思い出していただきたい!みずからが生み出したものでありながら、進化した我々の才能を妬んだナチュラルが、
    コーディネイターに対して行って来た、迫害と弾圧の数々を!』

    パトリックは、さらに言い募った。

    パトリック『そこからの独立を願い、自治領を求めた我らに、
    答えとして行われた──〝ユニウス・セブン〟への核攻撃を!』

    合計、24万3721名もの人々が犠牲になった。
    聖バレンタイン、最悪のカタストロフ。

    パトリック『憎しみの連鎖を断ち切る──素晴らしい理想です!ですが、それを実現するために
    どうすればいいのだと、彼女は仰るでしょう? 敵を憎まず、許しなさいと?
    憎しみは憎しみしか呼ばぬから──敵を憎まず、愛しなさいと?それも大切なことでしょう──』

  • 90スレ主24/10/23(水) 00:06:44

    しかし、パトリックのその言葉は、反語だった。
    否定の意味を強めるための、いっときの肯定──政治家の話術。

    パトリック『──ですが、それが誰に云えますか!?無念の果てに散って行った英霊達
    ──その墓標の前で、遺族達の前で、面と向かって云えるのですか!?』

    愛する家族を殺された者がいる。
    だが敵を、微笑んで許しなさい。
    だが敵を、微笑んで慈しみなさい。
    だが敵を、微笑んで愛しなさい。
    生きとし生けるもののために、憎しみを、優しく包み込みなさい。

    聖女のように──?

    パトリック『そんなもの、誰に出来る生き方でもありません!この戦争、
    我々は何としても勝利せねばならぬのです!敗北すれば、なお暗い未来しか待っていないのだから!』

    理想と現実は、違う。
    声高に叫ぶパトリックに対して、ラクスはしかし、柔らかな声の中に凛とした色を含み、明かす。

    ラクス『地球の人々とわたくし達は同胞です。コーディネイターは、決して進化した種などではないのです。
    第三世代コーディネイターの出生率は、年々低下するばかり……わたくし達の存在を
    定義づける遺伝子操作そのものが、他ならぬ、わたくし達の未来を摘み取っているのです』

    民衆に、動揺が奔る。だが、気付いていた者は気付いていたようだ。

    ラクス『既に未来を作れぬわたくし達の、どこが進化した種と云うのでしょう?』

  • 91スレ主24/10/23(水) 06:24:15

    パトリックは、嘲笑と憤慨を交えて返す。

    パトリック『そのための婚姻制度!そういう彼女こそ、わたしの息子──アスラン・ザラと
    子を成す立場にあったことを忘れてはなりません! 我々の希望を一身に請け負っていながら、
    それを裏切った彼女の言葉に、決して惑わされてはなりません!』

    対の遺伝子を持つ者同士が、比翼連理の契りを結び、
    次世代の子を産む──その大役を期待されていた最初の希望が、他ならぬラクス・クラインだ。
    聖クリスマス・イヴの夜、大々的に開かれた婚約発表にて、ザラとクライン、互いの家族が一同に会した
    あのとき──アスランとラクスの存在が大きく報道されるほど、ふたりの婚約はコーディネイター達に
    とって大いなる未来への希望として謳われ、そして注目された。遺伝子の相性によって弾かれ、
    子を残せないと分かった途端に引き裂かれた男女は大勢いた。そのような者達を納得させるために、
    アスランとラクスはいち早く婚姻し、子を成さねばならなかった──そんなアスランの許から
    勝手に離れていったラクスに対して、酷い裏切りだ、と声高に叫ぶ者も多いのは厳然たる事実なのだ。

    コーディネイターが受けた遺伝子操作によって、受精の成立しない遺伝子同士の配合は数多くあった。
    世代が進むにつれ、コーディネイターの遺伝子の型は複雑になり、実際に〝プラント〟は、
    第三世代コーディネイターの出生率の低下を抑止することが出来ていない。

    これを誤魔化す『象徴』としての、アスランとラクスの婚約──

    だが、結局のところ、ラクスはこれを信じていなかったのだろう。
    仮にアスランと自分が子を成せたとしても、他の者達は──?と。

  • 92スレ主24/10/23(水) 09:52:31

    ラクス『惑わすつもりなどありません。ただわたくし達の未来とは、
    わたくし達自身の、自由な意志が築くべきものと説くだけです』

    半世紀後、自分達の子が担う未来において──
    ──そもそも望まぬ者同士の間に生まれた子ども達が、
    いったい、どれだけの愛を受けて育っていけるだろう?
    たしかにラクスは、アスラン・ザラに対しては個人的な好感を寄せていた。優しくて、
    誠実そうな人であると。ラクス自身、彼に対して寄せていた好意的な感情を否定しているわけではないのだ。
    しかし、結ばれるにしても、そこに制度が絡むのと、自由意思に基づいた結末であるのとでは、
    意味合いが違い過ぎるのではないか?結局、婚姻統制を敷いて改善できる程度など、たかが知れているのだ。

    ラクス『人の未来を創るのは、運命であってはならぬのです!』

    婚姻統制をはじめとした未来に待っているのは、個人の自由が約束されない世界だ。
    自由恋愛を、決して許さない──人々の意志を度外視し、
    絶対的な法案によって塗り固められた確定的な未来に、どれだけの幸福がある?

    ラクス『いくら婚姻統制を敷いたとしても、コーディネイターのみの未来が永続することは、
    決してあり得ません。自然ナチュラルへの回帰もまた、わたくし達には必要なことなのです』
    パトリック『よしんば問題があったとしても、いずれは我々の叡智が、必ずや解決する!』
    ラクス『争いをやめ、融和の道を捜しましょう──求めたものは何だったのでしょうか?
    幸福とは何なのでしょうか?愛する人々を失ってなお、戦い続けるこの日々の未来に、
    それは間違いなく待つものなのでしょうか?』

  • 93スレ主24/10/23(水) 15:18:24

    ────そんなある日、パトリックの執務室に一報が入った。
    派遣していた特殊部隊が、遂に潜伏していたシーゲル・クラインを発見し、これを射殺したと──という。
    パトリックは、ある折から常々疎ましく思いながらも、好悪反する感情を寄せていた男の死を
    悼むように瞼を閉じる。彼等は第一世代コーディネイターとして、輝かしい時代と、
    それでいて、苦渋の時代を共に乗り越えて来た盟友だったから。

    アスランやラクス──第二世代のコーディネイター達は、みずからの才能と能力に無頓着だ。
    子どもの頃から周りは皆コーディネイターで、誰かひとりが格別に優れているわけではない
    環境に身を置いて育ったことから、自分達がどれほどに優れた種であるかを自覚し、自負しきれていない。
    だが、第一世代のパトリック達は違う。彼らはナチュラルの中に生まれ、その嫉妬と羨望を
    一身に浴びながら生き長らえた。そのため自分達の優位性を確固として自覚しており、
    ナチュラルから迫害を受けてなお、みずからを優れた種として自負し、一方で、
    ナチュラルを愚かで劣った種として蔑視することにより、真に排斥されるべき者がどちらであるのか
    ──決して見失うことなく、ここまでやってこれたのだ。

    だが、シーゲルとパトリックの袂を分かったのは、まさに今、ラクス・クラインが唱えたことが原因にある。

    優れたコーディネイターですら、完璧な一個の種族として永続することはあり得ない。
    その可能性──いや危険性が発覚した途端に、シーゲルはナチュラルへの回帰を唱え、
    パトリックはこれを断固として拒絶した。

    『よしんば問題があったとしても、いずれは我々の叡智が、必ずや解決する──』

    と、そう云い張って。

  • 94スレ主24/10/23(水) 21:02:39

    パトリック「まだ、娘の方が残っている──」

    なんとしても、ラクス・クラインを闇に葬らなければ──。
    パトリックは胸の奥に、そう静かに誓っていた。

    ラクスが放送を終える。

    彼女達が拠点としているのは、アプリリウス郊外に位置する、云ってしまえばみすぼらしい廃屋の中だった。
    中にはクライン派の随伴者と、マーチン・ダコスタの姿がある。
    今の放送に思うところがあったのか、彼は不意に、声を漏らした。

    ダコスタ「──『未来を創るのは、運命であってはならない』か」

    それは、先の放送でラクスが発した言葉であった。
    ラクスは、きょろりとして怪訝そうな顔を浮かべる。

    ラクス「はい?」
    ダコスタ「いえ、恐悦なのですが……ラクス様が、ああしてご自分の意見を呈されるのは、
    すこし、珍しいことのように思いまして」

    ラクスには、自覚がないのだろう。
    わたくしは、そういう人間でしたでしょうか? と云いたげな表情を浮かべている。
    ダコスタは頬をかく。

    ダコスタ「その、なんといいますか──ラクス様は常々、
    民衆に対して、今ある現実への疑問を投げかけてばかりで」

    ご自分の意見を、きちんと述べられたことが少ないように感じていたのです。
    付け足されたその言葉に、ラクスは、驚いた顔をした。

  • 95スレ主24/10/24(木) 03:50:30

    ラクス「そう、でしょうか」

    確かに彼女は、民衆に対して指導者を妄信するのではなく、自分自身で苦悩するように呼び掛けて来た。
    ──それで本当に道は正しいのか?他に道はないのか?考えなさい、と
    ──確かにそれは、彼女が行って来た訴求活動であろう。
    ──だが、悪く云えば、それは民衆を迷子にさせる行為だった。
    民衆をこれまで信じて来た道から隔離させ、彼等を路頭に迷わせるに等しい行為だった。
    何が正しいのか改めて考えなさい、と云われても、道に迷った民衆はおそらく、口を揃えてこう云うだろう。

    ──では、どうすれば良いのだ? と。

    ダコスタは少し不安に思っていたらしいが、しかし、ラクスはたった今、はっきりと婚姻統制による
    未来制度を否定した。自分の意見を伝え、その言葉で民衆の心を変えようと演説した。
    ──こういう道はどうですか? この道を進むべきではありませんか? と。

    確かにそれは、曲がりなりにもラクスの中に生まれた変化だった。

  • 96スレ主24/10/24(木) 03:51:15

    ラクス「……自覚がありませんでしたわ……」

    ラクスは、素直に驚いたようであった。
    あらあら、と云って頬に両手を当てている。

    ダコスタ「間違いなく、あの少年の影響ですね」

    今ある現実に対して、疑問を投げかけるだけでは、民衆は決して動かない。
    民もまた、迷える人間達であるからだ。

    ──何が間違っていて、何が正しいかなんて、分かる奴なんていない。
    ──だから、人の言葉を聞く。人に頼ろうとする。

    それは、良い悪い、と云う問題ではなかった。
    それが、人の世の在り方なのだ。今までも、そして、これからも──
    民衆の上には指導者が在って、指導者が指した方向に、民衆は盲目になって進んでゆく。それは先日、
    地球軍を退けたオーブの政治体制にも云えたことであるが、現〝プラント〟にも同様に云えたことであろう。

    ラクスはそこに、疑問の種を植え付けて回った。──本当にそれで良いのか? と。

    が、種が育つには、これを育てる者が必要で、そこにはラクス自身が位置づかねばならないのだろう。
    何も与えず「勝手に花開け」など云ったとて、そんなことは不可能なのだから。

    ダコスタ「手酷い喩え方なのでしょうがね──民衆ってのは、植物と同じなんですよ。種を植えたって、
    指導者が水を与えるまで、決して育たない──花開かない。懇切丁寧に世話してやらないと、
    描いた通りに育たなかったり、枯れてしまうことだってある……」

    ダコスタが感慨深げに云った。
    それもまた、種を撒いた者の責任なのだろう。ラクスは自分の変化を自覚しながらも、前を向むかうのだった。

  • 97スレ主24/10/24(木) 09:26:24

    オーブによるプトレマイオス救援作戦が発動された。

    それは幾つかの段階に分けられて順次行われる。
    最も早い行動として、オーブの宇宙ステーションアメノミハシラから戦艦イズモとクサナギが進発している。
    なぜなら地球から見れば、アメノミハシラは月と反対側に位置し、距離的に最も遠くなるため、
    今回の作戦に使う艦は早く出発させておく必要があるからだ。
    それら二隻の艦はオーブの各首長家の中でも、特に宇宙軍事を担当しているサハク家の管轄下にある。
    しかし今回、ウズミ・ナラ・アスハの要請に対し素直に従っている。サハク家の当主である
    ロンド・ミナ・サハクはオーブ本国から距離を置いている不思議な人物だが、
    元々アスハ家との仲は悪くなく、人道的支援にも理解があった。

    次に頃合いを見て地球表面からアーク・エンジェルとグレートフォックスが出発した。
    二隻と予定宙域で合流し、この時点でカガリとアスラン、キサカはアーク・エンジェルを離れ、
    その中の一隻、クサナギの方へ移動することになる。

    カガリ「キラ、死ぬんじゃないぞ」
    キラ「カガリも……」

    キラとカガリは最後にそういう挨拶を交わしている。
    もちろんカガリの方がよほど無鉄砲で危なっかしいのだが、
    どうやら自分ではなくキラの方を心配しているらしい。
    キラは、いつも自分のことを後回しにするカガリらしさに苦笑するしかない。

    キラ「やっぱり妹みたい。カガリは」
    カガリ「ん?何か言ったか。また妙なことを考えたんだろう、キラ」

  • 98スレ主24/10/24(木) 15:54:41

    最後にオーブのマス・ドライバーから輸送船団が続々と上げられてくる。

    むろん積み荷は月面の連合プトレマイオス基地を救援するための食糧である。

    しかしその他に、M1アストレイたちがざっと十機ほども載せられているのだが、先に上がった
    アーク・エンジェルに搭載し切れないのでそうなったのだ。アーク・エンジェルは
    MSを数機程度運用するように造られていて、最大収容でも全部を詰め込むことはできない。

    むろん、それらのアストレイはイズモとクサナギに分けられ、収容される。
    ちなみにアーク・エンジェルで運んできたブリッツ、デュエル、バスターも同様に移動する。
    志願するものは元連合・ザフト問わず居たが、流石に母艦をどうにかしない限り全員は連れて行けず、
    オーブ本国の防衛も必要なので腕の良いパイロットを少人数が限界だった。

    肝心の輸送船の数は合計十五隻だ。
    宇宙で編隊を組み直し、護衛役であるアーク・エンジェル、グレートフォックス、
    クサナギ、イズモに囲まれながら月への航行を始める。

    マリュー「ジャック船長、それで輸送船団をどうやって護衛するのですか?
    ザフトは必ず途中で襲ってきます。さすがに十五隻の輸送船をたった四隻で守るのは……無理ですね」
    ジャック『当然ですね、ラミアス艦長』

    マリューが嘆息している。
    予め分かっていたことではあるが、改めて見るといかにも心もとない。
    いくらオーバーテクノロジー産物故に、圧倒的な性能を持つグレートフォックスと
    その艦載機があるとはいえ、たった四隻の護衛ではどこから見ても隙だらけで、
    襲撃されても守れるようには思えない。

  • 99スレ主24/10/24(木) 18:41:30

    ジャック『ラミアス艦長、なかなか難しいことですが、だからこそ戦術を駆使しなくてはなりません。
    今からアーク・エンジェルを一気に先行させてほしい。グレートフォックスは防衛に回したいので』
    マリュー「え!?ただでさえ護衛が四隻しかいないのに、一隻が抜けては……」

    イズモとクサナギの指揮官達も驚く。
    ただでさえ少数戦力を更に削るなど、普通に考えれば愚策以下だ。

    ジャック『ラミアス艦長、なぜ護衛が難しい任務なのか分かりますか?それは襲撃側が
    好きなタイミングで好きな方向から攻められるだけではありません。もっとも重要なことは、
    護衛の戦力を見て、それを翻弄するために必要充分な戦力を推測し、
    準備できるところにある。つまり絶対有利な後出しができる事です』

    これは実に基礎的な戦術論である。
    残念なことにこのC.E.ではあまり戦術を重視していないらしいので、
    ジャックはまずそこから話を始めなくてはならない。

    ジャック『その上で狙いすました襲撃など受けたら守り切れません。
    だったらラミアス艦長、それを待つのではなく、積極作戦を行う。これしかありません』
    マリュー「積極作戦……」
    ジャック『アーク・エンジェルは早いうちに離れ、隠れておき、ザフトが輸送船団を
    襲撃すると同時に背後から叩く。ザフトは予定にない戦力の出現に慌てるでしょう。
    アーウィンとフリーダムといった機動性と火力を兼ね備えた戦力があるならなおのこと』
    ナタル「な!?ジャック船長、そのやり方!まさか逆襲撃……」

  • 100スレ主24/10/24(木) 18:42:13

    これにはナタルも他の指揮官達もも驚いただろうな。
    護衛が襲撃側を騙し、逆に襲うというものだから。

    ジャック『ラミアス艦長、このまま囲んで守るのは下策。月までたどり着けても
    多くの輸送船を失っているでしょう。そこで罠をかけ、先手を取るのです』
    マリュー「それが理想的に行けば……ザフトの不意を突いて、しかも挟み撃ちの態勢にできるわね。
    しかしごめんなさい船長、うまくいくかしら。離れていったアーク・エンジェルが先にザフトに捕捉されたら、
    護衛どころか単艦で戦うことになってしまいます」

    しかしこれを行おうとした場合、当然存在する欠点にマリューが気付く。
    ここまで黙っていたムウも、それに補足してくる。

    ムウ「その懸念がある。おそらく月に近付くほどザフトの哨戒は多くなるはずだ。輸送船団を
    叩きに行くザフト艦隊が出てくるタイミングが分からないのに、
    それまでアーク・エンジェルが見つからない保証はない」

    それを聞いたジャックは何時もの胡散臭い笑みを浮かべ、
    二人に向かって拍手を送る。

  • 101スレ主24/10/24(木) 19:40:50

    ジャック『二人ともいいところに気付きましたね。このやり方は実のところ普通なら失敗します。
    しかし今回に限っては可能です。月の手前に絶好の隠れ場所があるのですから」
    マリュー「隠れ場所が!?月の手前のどこに!」
    ジャック『ラグランジュポイントが存在するデブリベルトです。そこに漂流してきたガラクタはもう
    月にも地球にも落ちることはなく、ラグランジュポイントの周辺を回り続けるだけ。
    その場所を仮にルウムと名付けましょう。アークエンジェルはルウムの漂流物に潜み、
    ザフトの襲撃艦隊の通過を確認し、一気に出る。まさか襲う方が追いかけられているとは
    夢にも思わないでしょう」

    細かいことを言えばラグランジュポイントというものは幾つもあるが、それぞれ安定性に差がある。
    プラントの存在するラグランジュポイントはこのルウムより安定的なのだ。だからこそこの
    ルウムの場所はプラントに無視され、何にも使われていない。

    宇宙世紀の世界と比べ、コロニーやその集まりであるサイドが少ないのだ。
    だからこそデブリベルトが問題視されていないという面がある。
    アーク・エンジェルが行動する。月に向かって先行し、ラグランジュポイントに入ると、
    果たして本当にガラクタの山があった。
    ザフトと連合が宇宙において幾度も激しく戦ったのだから、破壊された艦の残骸が大量に出たのは当然である。
    むろん艦もMSも建設資材も補給物資も、壊され、打ち捨てられたものが際限なくある。
    それらの中にはここに流れ着いたものも少なくない。

  • 102スレ主24/10/25(金) 06:46:01

    アーク・エンジェルは素早くデブリベルトに突入し、身を隠した。
    ただ紛れたのではなく、比較的大きな塊を連結し籠のようにしてからその中に入ったのだ。
    これならエンジンを止めて慣性航行をしている限り、決してザフトに気付かれることはない。

    それからウィルとマードック達は廃棄されていたジンを拾い、推進部だけを修理する。
    それを使ってキラを索敵任務に就かせる。コーディネイターしかザフトのMSは操縦できないからだ。

    ウィル「予備酸素と食料は詰めるだけ詰んだし、動くのは保障するけど、無理はするなよ」
    キラ「わかってる、これで戦うなんて無茶はしないわ」

    オーブの輸送船団を襲うために派遣されたザフト艦隊を見つけられなければ、
    その後を追うこともできず、作戦は破綻する。だから偵察役が必要なのだが、
    アークエンジェルに元々あるモビルスーツは、一見で敵だとばれるので使えない。
    たまたま漂うザフトMSに見えなくてはいけないので、ジャンクのジンを使うしかないのだ。

  • 103スレ主24/10/25(金) 12:36:51

    そして……しばらく我慢して待つ時間が続いた。
    ついにキラ君がそれを発見した。定期的に散布していった索敵ポッドに反応があり、
    そこに向かうと果たしてザフト艦隊がいた。割り出された進路から狙いは間違いなくオーブの輸送船団だ。
    その情報を得て、アーク・エンジェルがゆっくり発進していく。
    キラが撮影してきた映像から、さっそくザフト側の戦力が分析され、皆に告げられる。

    マリュー「今回ザフトが動員してきた戦力は映像からみてローラシア級小型艦八隻、
    ナスカ級大型艦四隻、合計十二隻…… ローラシア級はともかくナスカ級がこの数、
    かなりの戦力ね。これは輸送船団を全滅させる気だわ」

    マリューは嘆息せざるを得ない。
    かなり厄介なことなったのは間違いない。ザフトはオーブ輸送船団の
    戦略的意義を十分に理解し、これを叩くため出し惜しみはしていないのだ。
    問題となるザフトのナスカ級は大きさだけを見たらアーク・エンジェルよりも小さいくらいだ。
    しかしアーク・エンジェルは元々強襲揚陸艦に分類され、艦体の大半は格納庫が占める。
    ナスカ級はその点で逆であり、戦闘艦に最小限のMS搭載機能を持たせているようなものだ。
    そのため艦自体の戦闘力で見ればアーク・エンジェルと遜色ない。
    その内容を比較すれば、アーク・エンジェルは実験艦の趣があるため多彩な砲を載せているが、
    ナスカ級は逆に兵装はシンプル、しかし強力なエンジンにより連射能力に優れている。
    ついでに言うと艦隊戦において重要になる航行速度ではナスカ級の方が速い。

    ただしそれでも作戦を決行する。

  • 104スレ主24/10/25(金) 18:45:32

    アーク・エンジェルはとにかく敵ザフト艦隊に見つかってはならない。
    離れすぎてもダメなのだが、向こうの索敵範囲に入ったらその時点でアウトだ。
    だが追尾自体は決して無理ではない。
    ザフト艦隊が航行した後に残るエネルギー粒子の拡散状況で、だいたいの距離を掴みつつ進めばいい。
    どうせ目的地は分かっているのだ。
    ザフト艦隊とこちらの輸送船団の予定航路との位置をモニターで逐一チェックし、その交点を見定める。

    ついにその時が来る!
    ザフト艦隊がオーブ輸送船団を襲うため、戦闘速度へ加速を始めたのを確認する。
    これでかくれんぼは終わりだ。

    ナタル「第一級戦闘配備!推力最大!アンチビーム爆雷用意!
    ミサイル発射管第一から第六まで対艦ミサイルスレッジハマー装填!」
    マリュー「只今をもって通信封鎖解除! 俯角10度に修正!ゲートオープン!ローエングリン回路起動!
    その発射後格納して冷却中にMSを出すわ。パイロットは待機」

    少数が仕掛ける戦術は一撃離脱が基本となる。面倒なことは考えず、敵陣に突入し、突っ切ればいい。
    ジャックから教わったことだ。

  • 105スレ主24/10/25(金) 22:41:15

    ザフト側は護衛側よりも戦力上かなりの優位にある。それを自覚していれば、
    固まって襲撃をかける必要はない。三方向に分かれ、突入する隙を窺っている。
    つまり護衛側の手が回らなくなったところから効率よく攻め立てる気だ。
    このやり方は相手を逃さず全滅させるのに適している。
    対する護衛のグレートフォックスとクサナギ、イズモは既にMSを出している。
    機動性で戦力不足を補うということだ。
    ほんの小さく、デュエルやバスター、ブリッツとジャスティスの姿が見えている。

    そしてアーク・エンジェルの到着前から戦端が開かれてしまった。
    MSたちの放つビーム、ひとまず迎撃するための弾幕、ミサイルが花火のように見えている。

    生と死と、人の思いの輝きだ。

    そのうちにひときわ大きい光が生まれた。これはザフトローラシア級の
    一隻が爆散したものだ。続けてもう一度光が輝く。
    しかし、そこから爆散の光が生じることはなかった。
    ザフト側は護衛側のMS機の中に強敵が混ざっていることを知り、
    輸送船団に向けて放ったザフトMS隊をいったん呼び戻した。それで直掩を強化させる。

    MS同士の格闘戦が同時にいくつも繰り広げられる。
    むろん、数で数倍にも及ぶザフト側が押す展開になる。

  • 106スレ主24/10/26(土) 07:00:34

    ジュリ「きゃあッ、後ろに付かれた!右にも別の一機が!」
    アサギ「待ってて、助けるわ、ジュリ頑張って!」

    このMS戦の中、オーブ三人娘のアストレイたちは動きが良くない。ただでさえ練度が低い上に、
    無重力の戦いは初めての経験である。これではザフトに対して分の悪い戦いを強いられるのも当然だろう。
    アストレイはオーブ製新型フレームと軽量なチタン合金セラミック複合材装甲のため、
    本来は機動性が良く、パイロットの技量不足をある程度補ってくれてはいるが……これではいずれ墜とされる。

    しかし、この時。

    イザーク「いったん俺の後ろに下がっていろ!ここのザフト機は、俺のデュエルが薙ぎ払ってやる!!」
    ジュリ「あ、ありがとうございますイザークさん!」

    デュエルがその窮地を救い、意気込み通りにザフト機を叩いていく。

    ディアッカ「ありゃりゃ、イザーク何張り切ってんだ。ザフト機相手に容赦なしかよ」
    イザーク「相手が何かは関係ない!俺は、自分の思いに従い、守るために戦うと決めた!
    だったらあの連中を守ってやりたい。ディアッカこそ何で戦う!」
    ディアッカ「さあてね。俺の方はそこまで面倒なことを考えちゃいない。
    ただ事実だけ言っとくが、こういう戦いならバスターの方が役に立つぜ!」

    その通り、瞬間火力の高いバスターガンダムがザフトMSを一撃で葬っていく。

    ディアッカ「口より行動で示せってなあ!俺に負けてんじゃねえよ、イザーク!」

  • 107スレ主24/10/26(土) 14:18:09

    マリュー「ローエングリン、撃てーー!」

    戦場にようやく突入を果たしたアークエンジェルはのっけから最大火力を叩きつける。

    「着弾しました!ナスカ級の艦尾付近、大破以上確定です!」
    マリュー「次はゴッドフリート用意!同時にMSを順次射出!」

    指示に従い、ウィルのアーウィン、キラのフリーダム、トールのグレーフレーム、
    ムウとトーリャのストライク、トーリャ隊のS型アストレイが発艦する。

    わずかな局地戦ではあるが、既に勝利は確定している。
    敵ザフト艦隊を背後から襲ったのだ。
    混乱を引き起こすのは当然、しかも砲撃が当たれば……それは艦尾のエンジン部になる。
    むろん艦における最大の弱点である。一発で航行不能、あるいは爆散に持っていける。
    だから後背からの急襲は絶対有利の態勢なのだ。

    続けてアーク・エンジェルのMS隊が攻撃を開始する。
    なおも戦意を持ちアークエンジェルに取り付こうとするザフトMSを排除しなくてはならない。

    やがてザフトの分かれていた三手のうち、一つを壊滅に追い込むことができた。

  • 108スレ主24/10/26(土) 17:45:09

    アーク・エンジェルは敵の戦意を刈り取ると、掃討戦に入らず、続けて近隣の戦場に向かって動く。
    そこではオーブのイズモが苦闘していた。

    ザフトのナスカ級だけでも大変なのに、他のローラシア級何隻かに翻弄されて防戦一方である。
    今はかろうじて蛇行回避とアンチビーム爆雷で凌ぎ、致命傷を避けているだけだ。
    砲撃戦はそんな四苦八苦の有様、頼みのMSアストレイ隊はMS戦で更に苦戦している。
    その場所へアーク・エンジェルが参戦する。
    しかしザフトも馬鹿ではなかった。
    既に待ち受けて、ナスカ級が砲撃のチャンスを狙っている。
    アークエンジェルといえどもさすがにナスカ級と正面から撃ち合うのは危険が伴う。

    マリュー「ジグザグ航行に入り、同時に対艦ミサイルスレッジハマー発射!
    向こうからもミサイルが来るわよ。防空イーゲルシュテルン、惜しみなく撃って!」

    先ずはお互いに砲撃の射線上を回避する操艦を続ける。
    同時にミサイルで牽制するが、これは決定打にならない。
    こうなれば操艦ミスを待つ我慢比べになるかと思われた。

    しかし、意外なところから転機が訪れる。

    ニコル「僕のブリッツはね、ナスカ級でも防げないよ」

    ニコル・アマルフィだ!
    ブリッツガンダムがクサナギの戦場から長駆し、ここに来てくれていた。
    今、ナスカ級はアーク・エンジェルに注視していたおかげで弾幕が薄く、
    そこへミラージュコロイドを張ったブリッツガンダムが忍び寄る。
    むろん、よく知ったナスカ級の弱点へビームを叩き込んでいく。
    操舵不能までナスカ級を追い込めば、後はアーク・エンジェルが砲撃で片付けるのは容易い。

    これで短くも激しかった戦闘は終わった。

  • 109二次元好きの匿名さん24/10/26(土) 19:15:21

    これは…何?小説…であってるのかな?

  • 110スレ主24/10/26(土) 19:18:47

    おそらくそのナスカ級がこのザフト艦隊の総旗艦だったのだろう。
    ザフト艦隊は混乱を立て直すことができなくなり、やがて散り散りに離脱していった。
    指揮系統が失われ、損害が累積すれば撤退するのは軍事上の常識である。
    ただし、それでも任務を果たそうという気概があったらしい。
    最後にザフト艦隊はこちらの護衛艦隊を無視し、射程外から輸送船団へ向けて斉射を放った!
    むろんほとんどは外れたが、輸送船の三隻だけは轟沈に追い込んだのだ。これを成果にしてザフトは退いた。
    戦闘の結果、ザフト側の損失はナスカ級三隻大破、一隻小破、
    ローラシア級四隻撃沈、二隻大破だ。むろんこれでは成果に対し余りにも割に合わない。
    対する護衛側はイズモが応急修理可能な中破で、クサナギとアーク・エンジェルは稼働に差し支えない小破だ。

    この戦いは快勝である。

    マリュー「逆襲撃、見事に成功したわね……これで物資をプトレマイオス基地に運べるわ。
    これで多くの人が飢えないで済むでしょう」
    ハインズ「ああ、そうだな。物資は全て無事だった。死傷者は無しで損傷も軽微だ」
    マリュー「ジャック船長の作戦通り、アストレイを運んできて
    空になった解体予定の旧型輸送船ばかり前にならべておいたから、沈んだのはそれだけだったわ」

    とにかく輸送船団の護衛は成功し、あとはプトレマイオス基地の領空に急ぐだけである。
    ついでながらそれ以外にも収穫がある。
    今回アーク・エンジェルとグレートフォックスイズモ、クサナギが共闘した。
    共に敵に立ち向かえば、言葉にできない絆が結ばれるものだ。背中を預ける信頼というのに近い。
    ここで後に第三同盟、あるいは平和監視機構コンパスの前身ともいうべきが出来上がってくる。

  • 111スレ主24/10/26(土) 19:21:20

    >>109

    元はダイスで作ったオリキャラがC.E.に来るというスレでしたが、

    この小説形式のSSが公表みたいなので、この形で続けています。

  • 112スレ主24/10/27(日) 02:50:36

    だがしかし、快勝の陰でわずかな懸念があった。

    ディアッカ「なあイザーク、少し意外だったな」
    イザーク「ああ、ディアッカが言いたいのはあのことか。
    まさかジンが既に主力じゃなかったとはな。シグーの方が多い」
    ディアッカ「それだけじゃない。変わった機体が何機か交ざってた……かなりすばしっこい」
    アスラン「あれはZGMF-600ゲイツ。奪ったGのデータを基にした次期主力機だ。
    もう量産化されてるとは、いくらなんでも早過ぎる」

    そう、その通り、ザフトのMS開発は加速している。
    これまでザフトの快進撃を支えてきた傑作機ジンが旧式扱いされつつある。
    その後継機であるシグーが主役になろうとしていた。
    それだけではない。更にその次のゲイツまでもが実戦投入されているとは。
    つまり連合がストライクダガーを大量に製造し、いずれは地表のみならず宇宙でも物量で圧倒しようと図っている。
    連合の考えとしてはMSは簡易で、性能はほどほどでいい。量産性と整備性にとにかく注力する。
    つまり数と稼働率によって問答無用の戦力を作り上げればいいのだ。

    ザフトがそれと同じような真似ができようはずもない。
    そこで数の競争ではなく、質のリードを広げることで対抗しようとしている。

    イザーク「だが何であろうと、俺はデュエルで戦うだけだ」
    ディアッカ「おいおい、何かの騎士のつもりかよ。
    ま、イザーク、そういうの嫌いじゃないぜ。俺たちはザフトを抜けても赤服の誇りは捨てちゃいない」

  • 113スレ主24/10/27(日) 07:36:50

    やっとオーブからの輸送船団がプトレマイオス基地宙域に入った。直ちに降下し、救援物資を降ろしていく。
    今、地球表面は全般的に飢餓状態にある。そしてオーブはお世辞にも国土が広いとはいえない島国だ。
    しかし幸いなことに気候的には亜熱帯に属し、気温も雨量も一年を通して農業に申し分ない。
    そのためオーブに限って言えば飢饉に無縁で、余剰すらあった。だからこうして支援ができる。

    一方の連合プトレマイオス基地は表向き平穏に見えた。

    その意味で言えば、ウズミ・ナラ・アスハが食料不足による暴動や混乱を心配していたのに、
    その予想が外れたことになる。だがしかし、内容は……悪い方向で外れていたのだ。
    食料不足が明らかなのに不穏にならないはずがない。逃げ場がないのに暴発しないはずはない。
    それを何と軍事力という力で抑え込んでいたのだ。
    やはり軍事力を握っている者が強く、階級の高い軍人には潤沢に、
    末端兵士でも飢えない程度には食料が与えられている。
    だが民間人には既に滞っていた。しかしそれらの者が不満を口にすれば問答無用で治安維持という名の
    処罰が待っている。いや、口減らしのため、積極的にそこへ追い込んでいるといっても過言ではない。
    声も上げられない地獄だったのである。

    最初は救援隊にそういう事情は分からなかった。
    プトレマイオス基地はオーブからの支援を大歓迎し、式典まで開いてくれたからだ。
    高官たちがカガリやマリューとにこやかに握手を交わす。
    つい先日オーブと連合が戦火を交えたことなどまるっと無視されている。
    おまけにアークエンジェルが脱走艦であることに触れることもない。
    ハインズ達脱走兵にすら不自然なほどにへりくだられている、
    艦を出て基地内を歩くことについて当初渋られていたのだが、
    ようやく許可を得て歩き回ったおかげで本当の実態が分かったのだ。
    生気のない民間人の群れがそこにはあった。

  • 114スレ主24/10/27(日) 17:09:05

    ハインズ「酷い様だな、武力を盾に民間人を脅すとは」
    ムウ「まったく!胸糞悪い!」

    ハインズとムウが、代表の様に救援隊の心中を吐き捨てる。

    カガリ「本当にひどい状況だ……でもこれが現実なんだ。しっかり受け止めなきゃいけない。
    そしてどうすればいい。政治で何とかできるのか?」

    カガリは今自分がオーブの代表としてきたことを思い出し、解決策は無いかと考え始める。
    するとジャックが横に来てアドバイスをした。

    ジャック「ここは民間人を基地から連れ出すのが最善です。幸いなことに、輸送船は物資を降ろして
    空になりました、少し改造すれば避難船にできます。武装がないのもこの場合好都合、
    非武装避難船ということでオーブへ行けるでしょう」
    PJ「なるほど、あれだけの損害を受けた以上、ザフトも途中襲撃してくる余裕はないだろう。
    むしろ連合が宇宙に上がって来ることに備えなければいけないからな」

    その手があったかと、カガリは顔を明るくする。
    ただし、この場合にも問題がある。それは軍事や技術のことではなく、政治的なことだ。

    ジャック「問題は連合軍高官を宥めすかすことです。簡単には認めず、
    必ず自分たちを優先して避難させろと要求するでしょう。そこで輸送船の
    国籍とオーブの主導権を強く主張し、強気な態度で突っぱねるのです。
    そうすれば、少なくとも口減らしができるので、最後は折れざるを得ないでしょう」
    カガリ「船長は本当に政治家向きだな、オーブに戻ったら私の秘書官になってくれないか?」
    ジャック「私は喫茶店経営が老後の夢です、それよりできそうですか?」
    カガリ「もちろんだ!任せてくれ!」

  • 115スレ主24/10/27(日) 19:18:47

    その後ろで、ウィルは指揮官達に話しかける。

    ウィル「交渉が上手くいけば万々歳だが、基地の軍部が輸送船を奪おうとするかもしれねぇ。
    警備を厳重にしとくべきだ、俺はアーウィンで警護に付く」
    マリュー「分かってるわ、第二種戦闘配備のままにして、基地にゴッドフリートを向けておくわ」
    PJ「MS隊も半数は警護に回して、陸戦隊も準備しておこう。
    流石にそれで強奪に動くことは無いだろう、向こうはまだ余裕はあるからな」

    キラ達ティーン組がその様子に青ざめる。
    だが上に立つ立場の人間は最悪に備えなければならないと理解してるし、
    ここの民間人圧迫をみているので、何も言えなかった。

    その後カガリの強硬姿勢と、向けられた艦砲に軍部は折れるしかなく、
    きっちり主張を通し、民間人だけ避難する話を通した。
    勿論強奪しようとすることはなかった。

  • 116スレ主24/10/28(月) 00:55:15

    イズモとグレートフォックスが十二隻の改造避難船と共にオーブへ向けて旅立った。
    予定通り避難民たちは初めにオーブへ降り立ち、そこからそれぞれの故郷へと散っていく。
    むろん中にはオーブに留まる人たちもいるはずだ。これらの措置についてカガリは父であるウズミも
    同意してくれる確信があったが、通信でその通りであることを知り安堵している。
    ほどなくしてクサナギもまたプトレマイオス基地を去る。こちらの方はアメノミハシラへ向かう。
    先の戦いで無傷というわけではない以上、いったん修理と整備をそこで行うためだ。
    それら三隻と異なり、アーク・エンジェルは直ぐにプトレマイオス基地を動かず、密かに修理を受けている。
    やはり連合艦は連合基地の方が都合がいい。そしてプトレマイオス基地の方では連合から見捨てられたという
    意識が強く、その反発もあってアーク・エンジェルの修理には協力的だった。
    いずれアークエンジェルはグレートフォックス、イズモ、クサナギと再び合流し、宇宙から
    ザフトと連合の動きを監視する予定だ。しかし次の作戦行動が差し迫っているわけではない。
    そのため四隻は一端バラバラになったのである。

  • 117スレ主24/10/28(月) 10:16:22

    地球軍、ビクトリア基地。

    旧国家体制だった頃にケニア、タンザニア、ウガンダに囲まれた、アフリカ最大のビクトリア湖。
    その付近に建造された地球連合軍の基地だ。
    地上の要所に建造されたマスドライバー施設の一つ、「ハビリス」が設置されている基地で、
    月面プトレマイオス基地に対する補給路の一つであり、プラントとの戦争の際は度重なる攻撃の対象になった。
    元々はユーラシア連邦と南アフリカ統一機構の共同国家プロジェクトで、
    C.E.21年にビクトリア湖の一部を干拓して建設されたため、広大な敷地を有している。
    宇宙へと繋がるために、人々の希望と祈りを込められて作られたマスドライバーは、
    いつしか地球と宇宙との争いの象徴になった。

    C.E.70年3月8日。

    ザフト最初の地上侵攻である第一次ビクトリア攻防戦。
    それは、プラント側の地上戦の経験不足と、降下作戦のみで地上支援を考慮しなかったことから失敗に終わった。
    ザフトは作戦の失敗を踏まえて、Nジャマーの散布と、建造したジブラルタル基地を中心とした
    戦力によるアフリカ戦線を構築する事で、盤石の態勢を整えることになる。

    C.E.71年2月13日。第二次ビクトリア攻防戦。

    民間人の被害も厭わずに展開されたその作戦では、地球連合軍がザフトの攻勢を抑えきれずに基地は陥落。
    地球連合軍は地上に順応したモビルスーツの脅威の前に為す術なく敗走した。

    逃げ遅れた地球連合軍兵士の多くがザフトにより射殺され、両陣営の憎しみは一層深いものとなる。

  • 118スレ主24/10/28(月) 14:12:51

    そしてーーーC.E.71年6月18日。第三次ビクトリア攻防戦。
    アフリカを手中に収める立役者となったアンドリュー・バルドフェルド本国招集、
    そして紅海の鯱と恐れられたマルコ・モラシム隊の全滅。
    アラスカ・パナマ攻略戦でアフリカ戦線を縮小したため、大きく弱体化したザフト軍。
    それに対してモビルスーツを一斉投入した大西洋連邦と、ユーラシア連邦を中心とする地球連合軍の攻撃により、
    戦闘は地球連合軍有利に動いた。

    ザフトは[ハビリス]を自爆させようとするが、地球連合軍特殊部隊の突入で失敗。
    暫定オーブ政府が停戦協定に応じた僅か6日後。6月25日に基地は奪還された。

    そんな時だ。オーブを通してアークエンジェルに重大な情報が入ってきた。

    「艦長、オーブ本国から秘匿回線を使って入電!」
    マリュー「何?どんな内容なの?この艦のクルーは
    連合を脱走した仲間のようなものだわ。そのまま読み上げて構わない」
    「で、では……まさか、そんな!」

    その内容に驚く他ない。何と、ザフトの最新鋭戦艦エターナルが脱走したという話だった
    更にエターナルの指揮官は軍人ではなく、プラントの穏健派トップであるシーゲル・クラインの娘であり、
    プラント一番の人気歌姫でもあるラクス・クラインだ。
    艦長はあの砂漠の虎のアンドリュー・バルトフェルドである。
    何もかも驚きの連続で、どうしてそうなったのか想像もできない。
    おまけにエターナルはザフトの新型MSの運用のために造られた艦であり、
    今もそのMSを一機載せているとのことである。

    マリュー「信じられない……自分たちが連合を脱しておいて言うのもなんだけど、
    今度はザフトから脱走艦が出るなんて、何があったの。でも、いいことかも知れないわね」

    マリュー艦長の言う通り、これは吉報なのだろう。
    やはりザフトはザフトで戦争に疑問を持っている者が少なからずいたのだ。それが図らずも証明された。

  • 119スレ主24/10/28(月) 19:06:20

    入電には続きがある。単なるニュースではなく、その次が大事なことだった。
    そのエターナルが、中立国オーブとの提携を申し入れている。
    また、第三同盟と共闘したいということだ。
    この申し入れの方が重要なのだろう。しかしエターナルにとって第三同盟とのパイプが無い以上、
    通信を取るためにはオーブを経由しなくてはならなかった。
    第三同盟の方としては願ったりかなったり、むろん歓迎したい。
    これからの方向性を考える上で、共闘できる味方は一隻でも多い方がいい。
    これまで同様ひたすらオーブを防衛したり、人道的な支援をするのも意味があるとはいえ、
    限界がある。抜本的な解決を目指すにはやはり戦争をどうにかしなくてはならない。
    こうして味方が増えていけば、やがては連合にもザフトにも影響を与えられる第三勢力になれる。

    ちなみにエターナルへの信頼については問題ない。
    船の指揮をしているのはラクス・クラインとアンドリュー・バルトフェルドだ。
    二人の人となりを知ってる側からすれば、信頼に値する人物たちだ。

    通信文ではエターナルが第三同盟となるべく早く合流を望むということで締めくくられていた。
    また、エターナルの方は既に一つの場所に向かっているということだ。
    もうザフトから補給を受けられないので、それができる地点へ。

  • 120スレ主24/10/28(月) 20:49:18

    マリュー「L4のコロニー群?」

    キサカがポインタで示した場所を見つめて、マリューは首をかしげる。

    キサカ「クサナギ、ヒメラギーーそしてアークエンジェルグレートフォックスも、オーブからの補給があるから
    当面物資に不安はないが、無限ではない。特に水は、すぐに問題となる」

    顎に手を添えながら、目先の問題である項目をキサカは表にまとめてモニターに出した。
    やはり宇宙に出てきた以上、水というものはどこにでも付いてくる問題となる。
    場合によっては長期間宇宙にとどまらなければならないのだかから、なおのこと。
    すると、閉まっていたブリッジの扉が開き、キラとアスラン、ウィルとトールに続いて、
    オーブのジャンパーに腕を通したカガリがブリッジに現れた。

    キサカ「カガリ、大丈夫なのか?」

    なれない政治狸に一歩も引かぬ態度を崩さないのは、大きな精神負担だ。
    それを心配したキサカの問いかけに、カガリは小さく頷く。

    カガリ「ああ、心配かけたな…大丈夫だ」
    ムウ「キラ」

    確認するようにムウに問いかけられたキラは、困ったように笑った。

    キラ「側についてたんで、大丈夫だと思います」
    カガリ「おい、ウィル。私ってそんなに信用ないのかぁ?」

    そんなやりとりを見て不満を覚えたのか、カガリは隣に立っているウィルの小脇を肘で突く。
    カガリを横目で見ながら、ウィルはわざとらしくため息をついた。

  • 121スレ主24/10/29(火) 06:15:40

    ウィル「ああ、ぎゃーぎゃーうるさい上に、重火器でドンパチするお転婆姫君だもんな」
    カガリ「なんだと!?」

    お返しと言わんばかりに言うウィルにカガリはさらに突っかかる。
    その光景を見ていたイザークがワナワナと腕を震わせて声を荒げた。

    イザーク「うるさいぞ貴様ら!ブリーフィング中くらい静かにできんのか!」
    トール「はいはいストップストップ」

    イザークとトールの仲裁を受けて、ヒートアップしそうになっていたカガリとウィルは
    ようやく全員から視線を集めていることに気がついて肩をすくめ、閉口する。

    キサカ「はぁ、続けるぞ?合流地点のL4のコロニー群は、
    開戦の頃から破損し、次々と放棄されて今では無人だが、水庭としては使えよう」

    その内容を聞いてマリューは少し懐かしそうな顔をした。

    マリュー「なんだか思い出しちゃうわね」
    ムウ「大丈夫さ。ユニウスセブンの時とは違う」

    そう言ったムウの言葉を聞いて、ディアッカはうげぇと驚いた様子で「ユニウスセブンから水を取ってたのかよ、
    そりゃあ見つかんないわけだ」と呟いた。あの時はデブリ群をくまなく探してはいたが、
    まさかユニウスセブンで水を取っているとは夢にも思わなかった。

  • 122スレ主24/10/29(火) 09:34:13

    イザーク「貴様ら、いつか祟られるぞ…」
    二コル「イザークって割とそういうの信じますよね?」

    青い顔をしながら呟くイザークに隣にいるニコルが思わず口にする。

    イザーク「こ、怖がってなんかない!!何事にも礼節があると言ってるだけだっ」

    変に強がってみるが、顔色が悪いのは一目瞭然のイザーク。
    そんな彼を見て、ニコルとディアッカはやれやれといった様子だった。

    ウィル「まぁ、コロニーなら非常貯水施設とかもあるはずだから、それさえ押さえれれば…」
    アスラン「待ってくれ」

    ウィルの言葉を遮ったのはアスランだった。

    アスラン「L4にはまだ、稼働しているコロニーもいくつかある」
    ディアッカ「マジかよ、初耳だぜ?」

    ディアッカの言葉に、アスランは頷きながら宙域図を更に拡大して、
    とあるコロニーの場所をいくつかマーキングしていく。

    アスラン「極秘任務だったからな。俺たちがヘリオポリスに乗り込む前の話だ。
    不審な一団がここを根城にしているという情報があって、当時パトロール隊に研修配属していた俺は、
    調査したことがあるんだ。住人は既に居ないが、設備の生きているコロニーもまだ数基あるはずだ」

    なぜ電力が供給されているかは謎だが、おそらくコロニー再利用計画の一環だったんだろうと
    アスランが結論づけたところで、ひとまず今後の方針というものが決まった。

  • 123スレ主24/10/29(火) 14:44:26

    キラ「じゃあ決まりですね」

    そういうキラに、ムウは少しだけ真剣な眼差しでキラの隣にいたアスランを見つめた。

    ムウ「しかし、本当にいいのか?アスラン」
    アスラン「え?」

    ムウの突然の言葉に戸惑うアスラン。そんな彼とムウを交互に見て、キラは戸惑ったように声を上げる。

    キラ「ムウさん!」
    ムウ「聞いておきたいとは思っていた。イザークたちはとにかくとしても、
    君はフリーダムの奪還を命じられているんだろ?」

    キラの声を遮って、ムウは言葉を続ける。
    それを聞いて、アスランがどんな反応をするのかがムウには気になっていた。

    ムウ「オーブでの戦闘は俺だって見てるし、状況が状況だ。だから着ている軍服に拘る気はない。
    だが…俺達はこの先、この前みたいにザフトと戦闘になることだってあるんだぜ?オーブの時とは違う。
    そこまでの覚悟はあるのか?君はーー言いたくはないが、パトリック・ザラの息子なんだろ?」
    カガリ「だ、誰の子だって関係ないじゃないか!アスランは…」

    ムウの言葉に、カガリが俯くアスランを庇うように声を返したが、
    ウィルもその点で言えばムウに同感でもあった。

    ウィル「カガリ。軍人が自軍を抜けるってのは、お前が思ってるより、
    ずっと大変なことなんだ。ましてやそのトップに居るのが、自分の父親じゃ尚更だ」

  • 124スレ主24/10/29(火) 20:48:44

    自分の陣営を抜けること。それがなにを意味するのか、この場にいる爪弾き者たちはよく理解していた。
    ウィルは無重力の中でわずかに浮く体を地に着かせて、言葉を紡ぐ。

    ウィル「確かに、ここに居る面子は自軍の大義を信じられなくなった。だから探しているんだ。
    大義を見失った戦争なんて碌なもんじゃない。今まで自分が戦っていた意味そのものがひっくり返るんだ」

    大量虐殺、大量破壊兵器、味方の命をなんとも思わない命令。戦争末期になればなるほど、
    兵士が思考停止しなければ従事できないような命令が平然と下されるようになる。
    その歪みに気がついたから、自分たちはここにいる。

    だがアスランは?

    その歪みを前にしても、それでもと言って戦う覚悟があるのだろうか?ムウが危惧をしているのはその点だった。

    ムウ「ひとりの隊長として、俺は一緒に戦うんなら、君を当てにしたい。どうなんだ?」

    ムウの言葉に、その場にいる全員の視線がアスランへ集まる。
    しばらくの沈黙の後、彼はゆっくりと自分の思いを話した。

    アスラン「俺はオーブでーーいや、プラントでも地球でも、見て聞いて、思ったことは沢山あります。
    それが間違ってるのか正しいのか、何が解ったのか解っていないのか、俺が探すべきものは何か、
    果たすべき使命も……それすら、今の俺にはよく分かりません」

  • 125スレ主24/10/30(水) 06:30:43

    ただ、漠然としか見えていなかった未来。ただ、妄信的に付き従ってきた自分の中の憎しみ。
    それが消えているかと聞かれたらNOだ。まだ母を殺された痛みはある。それは父も同じだとアスランは信じたい。

    だからこそだ。

    アスラン「ただ、俺は俺の心に従ってます」

    真っ直ぐとした目でムウに答えるアスラン。その憑き物が落ちたような様子を見てイザークは小さく笑った。

    アスラン「俺はもうキラを撃ちたくない。撃たれたくも…殺し合うのも。
    だから、自分が願っている世界は、あなた方と同じだと、今はそう感じています」
    ムウ「ふっ、しっかりしてるねぇ君は。キラとは大違いだ」

    嬉しそうにいうムウに、キラも笑顔で頷いた。

    キラ「昔からね、アスランはしっかりものだから」
    カガリ「どこかボケてるけどな」
    キラ「あ、それわかるかも」
    二コル「アスランはそそっかしいから」

    カガリのツッコミに思わずキラもニコルも同意する。
    そんなアスランの前にイザークは組んでいた腕を解いて向き合った。

    イザーク「甘っちょろい戯言だと、昔なら切り捨てていたがーーーそれを見つけないとダメなんだな、俺たちは」
    ディアッカ「違いないな」

    ディアッカも肩をすくめながら息をつく。ザフトから離れて、地球軍とオーブ軍と共に、
    自分たちは探さなきゃならない。この世界が、本当は何と戦い、どこに向かうべきなのかを見定めるために。

  • 126スレ主24/10/30(水) 12:46:57

    クルーゼ「何?エターナルが?」

    カーペンタリアから宇宙へと戻ってきていたクルーゼは、
    ヴェサリウスの艦長、アデスからの報告に興味深そうに息をついた。

    アデス「追撃命令が出ていますが…」
    クルーゼ「ーーこのヴェサリウスでも、今から追ってあの速度に追い付けるものか」

    なにせ核搭載モビルスーツ用の船だ。いくら高速艦とは言え、
    ヴェサリウスでもここからエターナルを捕捉することは不可能と言える。

    クルーゼ(しかし傑作だな。ザラ議長殿)

    愛するものを失ったからこその狂気か。はたまたコーディネーターという矜持から溢れた魔物か。
    どちらにしろ、まんまと出し抜かれたパトリックの姿を想像して、クルーゼは心の中で冷笑する。
    彼ではない。世界を変える力を持つ者は、少なくともパトリックではない。
    かの凶鳥の様に、過去に縛られず今と未来を変えようと羽ばたき続ける者こそ相応しいのだ。
    そして、エターナルの行く先には必ずそれが待っているのだ。

  • 127スレ主24/10/30(水) 17:04:51

    クルーゼは立ち上がると、目の前にいるアデスへ声をかけた。


    クルーゼ「アデスーーープロヴィデンスは、出せるか?」


    カーペンタリアに下ろしたのは、機体の最終調整のため。

    宇宙に上がった以上、クルーゼ専用に宛がわれたあの機体は、いつでも臨戦態勢となっている。

    シグー、シグー・ハイマニューバ、ディン・ハイマニューバ・フルジャケット。クルーゼとアデスは、

    ことごとく凶鳥と白鷲に煮え湯を飲まされてきた。しかし今度はーープロヴィデンスはそうはいかない。


    凶鳥に太刀打ちできるのは自分だけ。それを証明してみせよう。


    アデス「いつでもですよ、クルーゼ隊長」


    指揮官から一人のパイロットへと変わるクルーゼの姿をアデスは好んでいた。

    いつも何を考えているのかわからない仮面の男よりも、

    たった一人のライバルを倒すために必死になるラウ・ル・クルーゼのほうがよっぽどわかりやすい。

    そんなアデスに、クルーゼはニヤリと笑みを浮かべると、ブリッジの床を蹴って

    モビルスーツハンガーへと向かうのだった。



    このプロヴィデンスはdice1d3=2 (2)


    1.原作道理

    2.スラスター増し増しの高機動型

    3.アーウィンに対抗するための可変機

  • 128スレ主24/10/30(水) 23:03:07

    宇宙に二つの閃光が走る。

    一つは多重装甲を身に纏いながら、背面に設けられたスラスターを噴かせて。
    もう一つは機体の推力器を後ろに集約させた飛行形態で。

    ウィル「その機体…!クルーゼか!!」

    幾度も交差した瞬間に切り結ぶ二機に、他の機体は身動きが取れず、ただ二人の死闘に見守るばかりだ。

    クルーゼ『君の為に特別に用意した機体だ!もはや遅れは取らんさ!』

    ウィルの返答に答えたクルーゼは、高速機動を繰り出す機体を操りながら、
    ストラーダ形態のアーウィンに容易く追いすがる。
    正史では遠隔操作するビーム砲[ドラグーン]を主体とした機体だが、
    今アーウィンと激戦を繰り広げるプロヴィデンスは、全身にこれでもかと言わんばかりに
    可動式のスラスターを取り付け、四肢が生えたロケットと言った外見になっている。
    その無茶苦茶としか言いようのない機体を、クルーゼは巧みに操っていた。

    正直、人間が乗っている気がしない。
    ウィルは心中で悪態をつきながら、通信から聞こえるクルーゼの笑い声に顔を顰めた。

  • 129スレ主24/10/31(木) 05:25:46

    時はエターナル発進後まで遡る。

    会談の為に、エターナルはL4の廃コロニーに向かっていた時だった。

    ダコスタ「隊長!挨拶は後にしてください!前方にモビルスーツ部隊!数50!!」
    バルトフェルド「艦長だぞ、ダコスタ。やれやれ、ヤキンの部隊だな。
    ま、出てくるだろう。主砲発射準備!対モビルスーツ戦闘用意!」

    ここはプラントのお膝元。ヤキンドゥーエを護衛していた部隊が、プラントからの連絡を受けて前にも立ち塞がる。
    やれやれ勤勉なことだ。バルドフェルドは困ったような顔をしながら、迫ってくる敵部隊を見据えた。
    不味いことに、この船はフリーダムとジャスティスの専用母艦として建造された船だ。
    故に、艦載しているモビルスーツは一機も無い。

    しかしラクスは慌てることなく、優しげな声で言葉を紡ぐ。

    ラクス「バルドフェルド艦長、全チャンネルで通信回線を開いて下さい」

    アイ、マム。バルドフェルドがそういう時、オペレーターもすぐに全チャンネルに向けて周波数を合わせた。

    ラクス『私はラクス・クラインです』

    毅然としたラクスの声が、ザフトのパイロットたちへ響き渡る。

    ラクス『願う未来の違いから、私達はザラ議長と敵対する者と
    なってしまいましたが、私はあなた方との戦闘を望みません』

    ほんの僅かであったが、進行していたザフトのモビルスーツ隊が止まったように見えた。

  • 130スレ主24/10/31(木) 13:17:44

    ラクス『どうか船を行かせて下さい。そして皆さんももう一度、
    私達が本当に戦わなければならないものは何なのか、考えてみて下さい』

    凛とした声が響く。その場でエターナル捕縛を命じられていた誰もが困惑していた。

    『た、隊長!』
    『ええい!惑わされるな。我々は攻撃命令を受けているのだぞ!』

    戸惑うザフト兵に隊長機が叱責する。その声で時が動き出したように、
    ほかの機体もエターナルに向かって進み出す。今は戦場、自分たちが兵士である以上、命令は絶対だ。

    たとえそれが歪んでいたとしてもーー。

    バルトフェルド「難しいよなぁ、いきなりそう言われたって。んー…迎撃開始!」
    ラクス「コックピットは避けて下さいね」
    アイシャ「ラクスさまのオーダーは難しいものですわね。主砲、てぇ!」

    ラクスの要望通り、コクピットを避けた迎撃がアイシャの指揮のもと行われていく。
    だが、いくら高速船とは言え、モビルスーツ単騎の速度にはどうにもならない。
    それにヤキンドゥーエを護衛するパイロットたちもベテラン揃いだ。
    迂闊に手を出せばこちらがやられかねなかった。

    「ブルーアルファ5、及びチャーリー7より、ジン6!」
    バルトフェルド「来るぞ!弾幕!」

    ジンから放たれるミサイルを何とか迎撃するが包囲網は徐々に厚くなり、エターナルの行く手が遮られていく。

  • 131スレ主24/10/31(木) 20:15:54

    「ブルーデルタ12に、尚もジン4!ミサイル、来ます!迎撃、追いつきません!」
    ダコスタ「ええい!数ばかり揃えて!!」

    迫るジンから放たれた大型ミサイル。その幾つもの刃がエターナルの鼻先を捉えようとした瞬間、
    向かってきていたミサイルを閃光が穿った。

    ウィル『お迎えに上がりましたよプリンセス……と言えば満足か?』
    ラクス「ウィル!」

    変形状態のアルコンガラ隊とフリーダムが駆け付けたのだ。

    ウィル「各機!姫様からのオーダーだ、コックピットは外せ!」
    クララ「あらら、難しい注文だこと」
    アルマ「やれやれ、来て正解だったな」

    高速艦とは言え、艦載機が一機だけでは厳しいと思ったウィル達は護衛役として駆け付けたのだが、
    それが功を奏したようだ。

    ダコスタ「艦長!凶鳥達ですです!!」
    バルトフェルド「わかっている!攻撃中止!彼らに任せればいい!」

    編隊を組んだままエターナルの前を横切ってからアルコンガラ隊はそれぞれに分かれて、
    50機いるザフトのモビルスーツ隊へ攻撃を仕掛ける。

  • 132スレ主24/11/01(金) 06:44:32

    『凶鳥⁉』
    『宇宙に上がっているっていう噂は本当だったのか!?』
    『各機!慎重に対応を…』
    『すでにホワキンとジュリアの機体がやられてます!!うわぁっ!!』
    『なんだと!?ええい!バケモノどもめ!!ぐわっ!?』

    会話を交わす間もなく、動揺を隠せないザフトのモビルスーツたちは、フリーダムの
    マルチロックにより次々と機体の主要部品が撃ち抜かれたり、武装を破壊されたりし、行動不能となっていく。

    『隊長!!』
    「よそ見!!」

    周りで穿たれていく仲間に気を取られたジンを、ラドルのヘッジホッグがブレードモードのファンネルを
    展開して切断する。ファンネルを格納すると、次は両翼に備わる四門のビーム砲で迫ってくるジンを圧倒し、
    武装を破壊していった。

    『は、速すぎる…!!』

    ヘッジホッグの挙動についていけないジン。その傍からまるで陽炎のように現れたアーウィンが、
    翼から展開したプラズマブレードでジンの半身を切裂くように吹き飛ばした。

    バルトフェルド「ほぉー壮観だな。また腕を上げたようだ」

    まさに千切っては投げ、千切っては投げと、
    トラウマ必至な蹂躙のされ方を見つめながらバルトフェルドが感心したように呟く。
    自分は過去にあんなのを相手していたのかと、改めて見せつけられるアイシャは呆然と見つめ、
    ラクスはニコニコと笑い、ダコスタはトラウマを刻まれたであろう
    ヤキンドゥーエのパイロットたちに向けて胸で十字を切った。

  • 133スレ主24/11/01(金) 15:32:39

    キラ『こちらフリーダム。キラ・ヤマト。貴艦は…』

    あっという間に片付けられてしまったモビルスーツ隊の死屍累々の中で、フリーダムがエターナルと
    並走して通信を入れる。モニターに映ったキラに、ラクスが少女らしい笑みを向けて答えた。

    ラクス「キラ!」
    キラ『ラクス…!?』
    ラクス「はい!」

    嬉しそうに頷くラクスに、通信に加わったウィルもクララも安心したように笑みを送った。

    クララ『元気そうでよかったわ。お姫様』
    ラクス「お久しぶりですね、クララも!」
    バルトフェルド「よおー少年達。助かったぞ」
    キラ『バルトフェルドさん!アイシャさんも!!』
    アイシャ「久しぶりね、お嬢ちゃん」

  • 134二次元好きの匿名さん24/11/01(金) 20:45:17

  • 135スレ主24/11/01(金) 20:58:37

    それぞれが思い思いに再会を喜び合う。
    そんな中、オペレーターの一人が警戒を怠らず周囲の索敵を行なっているとーー。

    「周囲に敵反応なしーーいえ、待ってください!!後方に熱源!!数1!!凄い速さで追いかけてきます!!」

    モニターに出します!とオペレーターが叫ぶと、たしかに一つの熱源がプラント方面から
    こちらに向かって高速で接近してきているのがわかった。明らかに巡航ミサイルのそれだ。

    バルトフェルド「艦船用ミサイルか!?迎撃!!」
    「間に合いません!!こ、これはーーモビルスーツ!?
    そんな、こんな速度で巡航できるモビルスーツなんて…!!」

    ウィルはすぐにエターナルの後方に回って望遠カメラで迫り来るものを見つめた。
    高速で迫るそれは、摩擦熱で機体を赤く染めながらブースターを緩めずにこちらに近づいてくる。
    あの形は、明らかにミサイルではない。しかし、ウィルが見てきたどのモビルスーツにも該当しない姿をしていた。
    その物体はエターナルとヤキンドゥーエのパイロットたちの真上を通り抜けて、彼らの前に立ちふさがる。

    クルーゼ『待っていたぞ、凶鳥。宇宙に上がってくるのをな……!!!』

    そこには、ひとりの閃光がいた。

  • 136スレ主24/11/02(土) 08:14:23

    ZGMF-X13Aプロヴィデンスガンダム(本SS仕様)
    全高18.16m
    重量90.68t
    装甲材質フェイズシフト装甲
    動力源 核エンジン(MHD発電)

    ザフト統合設計局がアーウィンを始めとするアルコンガラ隊との戦闘データを基に、
    対抗手段として開発したNJC搭載型モビルスーツ。
    バックパック、両肩部、胸部、腰部、両脚部、に稼働するスラスターノズルを装備した、
    全身が推進部となっていると言っても過言では無い機体構造となっている。
    これによりアーウィンやリンドブルムに匹敵する機動性・運動性を手に入れたが、
    半面パイロットに掛かる負担は命の危険があるほど重く、
    シナンジュやトールギスの同類、[人間]が乗る機体とは到底言えない代物になっている。

    武装は現在のところ、銃身下部にビームサーベル発振器があるビームライフル二丁。

  • 137スレ主24/11/02(土) 15:33:17

    ウィル「でやぁああああ!!」
    クルーゼ『はぁあああああ!!』

    二人にしか聞こえない、耳に入らない咆哮を上げながら、二つの光は宇宙に絡み合うような
    線を描いて交差を繰り返し、火花を散らし、閃光を放ち、刃を翻し、装甲に覆われ巨大な城壁と化した体を翻す。

    ウィル「ーーっがぁっ!!この野郎!!」

    幾度めなのか、それすら数えることをやめた中で、ラリーは精神を擦り減らしながら目の前にいる
    クルーゼを睨みつけた。パイロットスーツの中は、流れた汗で水溜りになりつつある。

    クルーゼ『アーハッハッハッ!!どうだ、ウィル!!私は!!君と同じ場所にいるぞ!!この私を見ろ!!』

    対するクルーゼも、手足の感覚がすでに無いものになっていた。
    プロヴィデンスを操るために特注で作られた対高圧ノーマルスーツを着用し、しっかり着膨れしてしまっている
    クルーゼだが、レスポンスの一歩先を行くアーウィンに追いすがるために負ったダメージは計り知れない。
    その殺人的な加速力に内臓は圧迫され、末端には血液が行き渡らず、交差を繰り返すたびに手足は痺れ、
    今では感覚すらない。込み上げてくる痛みと吐き気。視界がわずかにブレる。

    まさに命を削る操縦。

    だが、クルーゼにとってはそれがちょうどよかった。
    どうせ短い命だ。座して待つ死ならば、その間に充足した生を謳歌しようではないか。
    アデスやクルーから再三忠告されたプロヴィデンスのスペックを十二分に理解した上で、
    クルーゼは前人未到の脅威のモビルスーツをスペック限界まで振り回している。

  • 138スレ主24/11/02(土) 19:13:54

    ウィル「しっつこいんだよ!貴様はぁあ!!ーーーぐっ…はぁ!!いつもいつも、俺の前に現れやがってぇ!!」
    クルーゼ『本物だからだよ!!私も!!君も!!それ以外何もいらない!!』

    ラリーのビームバルカンの隙間を最短距離でカットし、
    アーウィンに肉薄しながらクルーゼは恍惚とした笑みを浮かべながら叫んだ。

    クルーゼ『理由⁉主義⁉そんな生ぬるい幻想など、我々には必要ないのだよ!!
    我々の戦いには、そんなものは不必要だ!!』

    そんなくだらないものなんて、もう必要はない。私は見つけたのだ。私を充足させる芽を。息吹を。
    それが芽吹き、花をつけて私の前にいる。まだ蕾ではあるが、刈り取るには充分なほど育った。

    あとは、それを自分が狩れるかどうか。

  • 139スレ主24/11/02(土) 21:37:09

    ウィル「ああ!それは同感だ!!」

    ウィルもクルーゼの言い分に同感だった。この機体を渡したクルーゼは、
    なにも戦争を止めるために自分を救ったわけでも、なんでもない。

    ただ、単純明快に。

    アーウィン。

    プロヴィデンス。

    ウィル・ピラタ。

    ラウ・ル・クルーゼ。

    ただ、どちらが強いのか。

    まったく同じ力、能力、性能を持つ二人が競い、殺しあった先にある結論。
    クルーゼはそれを欲している。そして同時にウィル自身も。

    クルーゼ『私と君、どちらが強いか!!どちらが本物か!!』
    ウィル「ああ、はっきりさせようじゃないか!!この野郎!!」

  • 140スレ主24/11/03(日) 06:43:45

    そんな二人の攻防をヤキンドゥーエから離れた場所から観測するエターナルの周辺では、
    あの戦いに加わるか、加わるまいかでキラ達が言葉を交わしていた。

    アルマ「キラ!!援護は出来ないのか!?」
    キラ「あんな機動で交戦されたら、狙いが定まらない!!」
    ラドル「ファンネルもだめだな、巻き添えで潰される」
    クララ「ウィル……何時の間にあんなに強く……」
     
    動きが異質。戦いが異質。誰もまだ見たことない壮絶な戦いがそこには繰り広げられていた。
    二機が肉薄し、交差するたびに凄まじい量の光量の閃光が発生し、ビーム同士で起こる稲妻が辺りに轟く。

    「バルトフェルド艦長!!エターナルで援護はーー」

    ブリッジにいるクルーも、なんとかウィルの援護をできないかと手をこまねいているとーー。

    ラクス「手出しは無用です」

    凛とした声で、ラクスが動揺するキラやクララ、そしてその場に居る全員に対してそう言葉を紡いだ。

    キラ「ラクス!?」
    バルトフェルド「そういう約束なのだよ」

    驚いた皆の疑問に答えたのは、艦長席に座って二人の戦いを見守っていたバルトフェルドだった。

    バルトフェルド「ラウ・ル・クルーゼ。彼が我々にフリーダムの譲渡とアーウィンの奪還に協力してくれた
    見返りとして、ウィル・ピラタとの一騎打ちには決して介入しない。
    それを条件として、彼は我々と交渉しに来たのだ」

  • 141スレ主24/11/03(日) 09:27:26

    なにもただで、ザフトの最高機密であるフリーダムと、ザフトを滅ぼせる魔獣を手に入れた訳ではない。
    特にアーウィンは、データ取りが終わった後は万が一を考えて破壊される予定だったものだ。
    あれをクライン派が押さえられた理由としては、クルーゼの協力があった故だろう。

    バルトフェルド「クルーゼ。何を考えてるか分からん
    胡散臭い奴だと思っていたが…存外、単純な奴かもしれんな」

    バルトフェルドはモニターから二人の死闘を見つめながら、
    クルーゼがこちらに交渉しに来たときの言葉を思い返した。

    〝主義も主張も憎しみもない。私はただ、彼と戦いたいのだよ。ひとりの兵士として、人間として。
    それをわかってほしいとは言わんよ、バルトフェルド隊長。だが、凶鳥と私。どちらが本物で、
    どちらが強いか。私にとっての興味はそれ以外、ありえないのだよ〟

    ただ単純。それがクルーゼが動いた理由だ。
    腹黒さも裏も表もない、純粋な闘争心と自分に従った行動だと言える。

  • 142スレ主24/11/03(日) 13:28:57

    ラクス「あのとき、まるで新品のおもちゃを前にした子供のような純情さがありましたよね」

    その場に共にいたラクスも可笑しそうに眼を細める。その様子を見てアルマが呆れたように息をついた。

    アルマ「そんな楽観的な…」
    バルトフェルド「けど、実際にあそこまでやられてしまうと、こちらとしても任せるしかないのだよ」

    そうバルトフェルドに言われて、アルコンガラ隊もなにも言えなかった。仮に、
    あの激闘に横から入ったとしても、戦って勝てるビジョンがまったくイメージできないのだ。
    良くて流れ弾が突き刺さって大破。最悪、気付かぬ合間に流れ弾に当たって戦死になりかねない。

    バルトフェルド「地球の凶鳥とザフトの閃光。果たして強いのはどちらか…か」

    すっかり静かになったエターナルの中で、
    バルトフェルドは感慨深そうに因縁深い二人の戦いの行く先を見守っていた。

  • 143スレ主24/11/03(日) 19:42:57

    『た、隊長…』

    アルコンガラ隊にこっぴどくやられたヤキンドゥーエのパイロットたちは、
    偶発的にも奇怪な場面を目撃することになった。
    突如として現れた凶鳥の忌名で呼ばれる可変モビルスーツと、どこからやってきたのか
    ーー全身に大型スラスターに備えたモビルスーツが目にも留まらぬ速さで激戦を繰り広げている。

    『ああ、見えているよ』

    若手の部下の言葉に、宇宙を漂うしかなくなった隊長はモニターに
    映る二人の戦いを見つめながら、気のない返事を返すだけだった。

    『頭部をやられたパイロットは不運よね。記録は?』

    真っ先にやられたジンに乗るジュリアは、
    二人の戦いに感銘を受けたように息を吐きながら食い入るように見入っている。

    『撮ってる。けど、凄いやつだな…あの二機』
    『私じゃ10秒も持たないよ』

    ジュリアの言葉に、誰もが頷いた。よくもまぁ、
    あんな動きをするバケモノと戦って、生き延びて戦場を漂えるものだ。

    『凶鳥…まさか、ここまでとは…しかし相手をしているあの機体は一体…』
    『先発隊!第二部隊の出撃準備が終わった!これより向かう!』

    隊長のつぶやきをかき消すように、ヤキンドゥーエの司令部から通信が入る。
    どうやら手配していたシグーとゲイツの第二部隊が出撃するらしい。
    そんな言葉を通信機越しに聴きながら、隊長はふと思っていた。
    果たして止められるのだろうか。我々の力だけで。

  • 144スレ主24/11/03(日) 21:43:33

    片腕でビームサーベルを振りかざし、クルーゼのビームバヨネットにヒットアンドアウェイで
    切り結んでいくウィルはは、既に膝下まで溜まっている汗も
    気にせずに眼を血走らせて再びプロヴィデンスへと突っ込む。

    ウィル「このぉおおお!!」
    クルーゼ『はぁああああ!!』

    ウィルのアーウィンが、クルーゼのプロヴィデンスが、
    それぞれにビーム刃の突きを放ち、その一閃は互いのモビルスーツの頭部の横を掠めて交差する。

    クルーゼ『くそっ!!うまく避ける!!』

    すれ違ってから振り向くクルーゼは、同じく振り返ったアーウィンへ
    ビームライフルとヘッドバルカンの咆哮を浴びせる。

    その迫り来る暴風雨を、充血したウィルの眼はしっかりと捉えていた。
    同時に、世界がスローモーションに見え、クルーゼやキラ達の存在を、息使いを、
    気配を、命の光がはっきりと見えた。

    ウィル「見えた…!!」

    暴風雨の隙間を完全に通りに通り抜けてーーークルーゼの眼前に迫った。

  • 145スレ主24/11/04(月) 07:49:03

    クルーゼは戦慄した。

    さっきは自分も、ウィルのビームバルカンを掻い潜って迫ったが、今の動きはそれを遥かに上回る動きだった。
    まるで飛んでくるものがどこを通るのか、その全てを察知しているかのように、
    ウィルは驚くほど直線的に、真上と真正面からの挟撃を避けて来たのだ。

    クルーゼ『なにぃ!?だがーー読んでいたよ!!』

    それくらいできなければなーー!!戦慄がさらにクルーゼの熱に拍車をかける。
    剣戟というよりは殴り合いに近い攻撃を互いに繰り出し、両手でもつれ合った機体を大きくのけぞらせて、
    ウィルはプロヴィデンス・セラフの頭部へエネルギーシールドを集中させたアーウィンの頭部を、
    まるで頭突きをするように叩きつける。プロヴィデンスの頭部のカメラアイは大きくひしゃげ、
    特徴的だったブレードアンテナも大きくへし折れる。

    そしてクルーゼも、受けた衝撃のお返しと言わんばかりに、
    半壊したプロヴィデンスの頭部で逆に頭突きし返し、ウィルの機体と額をガリガリとぶつけ合った。

    クルーゼ『ウィルゥウウウーー!!!』
    ウィル「クルゥゼエェーー!!!」

    両手を互いに掴みながらスラスターを噴かして押し相撲になっていく両者。
    そんな二人の通信回線に、ノイズが走りながら声が響く。

    『そこの二機!!』

    ふと、ウィルがその声に耳を傾けた。さっきまで見ていなかったサブモニターを見れば、
    ヤキンドゥーエ方面から更なる部隊がこちらに向かって飛んできているのが遠くに見える。

    『こちらはヤキンドゥーエ所属部隊である!速やかに停戦し、武装を放棄せよ!さもなくば撃墜する!!』

  • 146スレ主24/11/04(月) 13:12:42

    エターナルとフリーダムたちは先に退避したのだろう。
    機体が破損しているとはいえ、今から逃げれば充分ウィルも逃げ切れる距離にいる。

    クルーゼ『ーーどうやら邪魔が入ったようだな』

    クルーゼも同じように迫るザフトの軍勢に眼を向けたのだろう。
    鍔競り合っていた二機は徐々に出力を落としていっている。

    ウィル「どうした、来ないのか?」
    クルーゼ『やめだ。邪魔が入っては楽しみが無くなる』

    そういうクルーゼの声には敵意は感じられなかった。
    彼は音声通信越しに、ヘルメットの中でニヤリと笑みを浮かべる。

    クルーゼ『君との戦いは私だけのものだ。横槍は認めない。
    ここで出てきた奴らを落とすのも後々に面倒だからな』
    ウィル「そうかい…!!」

    そう返したウィルは、反動をつけるようにプロヴィデンスの機体を跳ね返して変形しつつ、
    その反動を利用して大急ぎでヤキンドゥーエの防衛圏内から離脱していった。

  • 147スレ主24/11/04(月) 14:57:11

    こっ酷くやられたものだ、とクルーゼは疲れ切った体を脱力させて機体のチェックを行う。
    メインスラスターの大部分が異常加熱、補助スラスター破損、機動力が40%も落ちており、
    各部アクチュエータにも大きな負荷が掛かっているようだった。
    おまけにエネルギーがレッドゾーンに突入し、申し越しでPS装甲が使えなくなっていた。

    クルーゼ『フフフ……アーーハッハッハッ!!!』

    ボロボロになったプロヴィデンスの中で誰にも聞こえない笑い声をあげるクルーゼは、遠くなり、
    宇宙に瞬く一つの星のようになったウィルのアーウィンを見つめながら、口元を歪め、笑みを作った。

    クルーゼ『最高だ。最高だよ…ウィル。やはり君を殺せるのも…私を殺せるのも…!!』

    私と、君しかいない。

    この戦いで自分の体がどうなっているかなんて、知ったことではない。生きて戦い、そして生き残った。
    またあの戦いをすることができる。体の筋が動かなくなるまで、息が止まるまで、心臓が止まるまで、
    自分はあの戦いに身を投じられるならーーー

    もはやクルーゼに、迷いはなかった。

  • 148スレ主24/11/04(月) 21:23:01

    バルトフェルド「久しぶり、と言うのは変かな。エターナル艦長のアンドリュー・バルトフェルドだ」

    L4コロニー群に向かう航路の中、アークエンジェルとグレートフォックス、クサナギとヒメラギの艦隊に
    合流したエターナルの中で、ランチで乗艦してきたマリューとキサカ、ジャックとハインズにバルトフェルドは
    気さくな雰囲気の中、敬礼をした。

    マリュー「しかし驚きました。貴方があの船で飛び出してくるとは」

    バルトフェルドの後ろにはアフリカ時代からの副官であるダコスタや、
    相変わらず綺麗なアイシャが控えており、その様子を見てマリューも笑みを浮かべる。

    バルトフェルド「そちらも色々あったようだし、お互い様さ。まさか、
    ザフトの赤服くんたちもこちらにいるとは…凶鳥と仲間達もよく守ってくれたな。ありがとう」

    そんな中、エターナルに移ったアスランは、カガリと共にフリーダムとジャスティスの
    整備状況を眺めていた。

    カガリ「妙な縁だな、お前が私達と共に戦う道を選ぶとは」
    アスラン「この石の導きかもな」
    カガリ「そっか…しかし、あんなもんで飛び出してくるとはね。すごいな、あの子」
    アスラン「ああ…」

    そう言ってハンガーから眼下を見下ろすと、そこではラクスと再会を喜ぶキラたちがいる。
    あとでアークエンジェルにも乗船するらしい。

    カガリ「いいのか?お前の婚約者だろ?」

    ラクスと親しげに話すキラやウィルを見つめながら、カガリは少し微妙な顔つきでアスランにそう言った。
    というか、経験が無いカガリから見てもラクスがウィルに向ける想いが理解できてしまう。

  • 149スレ主24/11/05(火) 06:15:04

    そんな様子を見つめながら、アスランもまた困ったような、
    自分自身に呆れているような顔をしながらカガリを見つめる。

    アスラン「……元、婚約者ね」
    カガリ「え?」
    アスラン「ほら、俺はバカだから…」

    そう言ってアスランは視線を彷徨わせた。

    理由はどうであれ、自分は彼女を疑い、銃口を向けた。好意を抱いていたかと聞かれれば、
    イエスと答えられるが、父と、ラクスの父であるシーゲルの思惑もあって築いた関係だ。

    ユニウスセブンで彼女を探していた時も、駆り立てられるような焦りや不安もなかったし、
    彼女を探すことよりも兵士として戦うことを優先したこともある。

    そんな自分が、今さら彼女の婚約者だと言い張るのは、ちゃんちゃらおかしいものだと思えた。
    そんなアスランの様子を見て、カガリはさっきまでの微妙な顔つきを引っ込めて安心したように笑みを浮かべる。

    カガリ「ま、今気付いただけ、いいじゃないか。でも、キラもバカだと思うぞ。
    うん。やっぱコーディネイターでもバカはバカだ。しょうがないよ、それは」
    アスラン「そうか。そうだな」

    快活に笑うカガリを見つめながら、アスランも同じように思う。そしてどこか、
    カガリのような考え方をできたらもっとマシな人間になれていたのではと、感じる思いもあった。

  • 150スレ主24/11/05(火) 09:13:18

    クルーゼ「はぁーー」

    ヤキンドゥーエ宙域から帰還したクルーゼは、研究施設に併設された個室に漂うようにたどり着くと、
    今まで聞いたことない呻き声のような声で息を吐き、普段使っているものよりも
    一回り大きい耐圧ヘルメットを脱ぎ捨てた。

    デュランダル「疲れてるようだね、ラウ」

    その部屋で待っていた白衣姿のギルバート・デュランダルに、
    目の下のクマを濃くしたクルーゼは疲れながらも笑みを浮かべる。

    ラウ「私とて生身の人間さ。あの機体性能は中々堪える」
    デュランダル「それほどの機体ということなのか。プロヴィデンス・セラフと言う機体は」

    そう言ってデュランダルは、最寄りの窓から見えるドッグに佇むプロヴィデンスを見つめた。
    すでに各部ハッチが解放された機体は、プロヴィデンスを設計した主任設計士の指示のもと、
    手際よく点検作業を施されていく。

    デュランダル「それでも、戦いたいのだろう?凶鳥と」
    クルーゼ「当然だよ」

    デュランダルの問いかけに、クルーゼは疲れ切った体から耐圧スーツを脱ぎ捨てながら答えた。
    指先は青く滲んでいて、体の至る所にも壮絶な負荷を物語る傷跡が
    まだら模様になって、クルーゼの肉体を蝕んでいた。

  • 151スレ主24/11/05(火) 12:29:04

    プロヴィデンスへの搭乗は間違いなくクルーゼの寿命を削る。

    幾十にも備えた新型の耐圧スーツでも、これほどの負荷をクルーゼに与える代物。
    ただでさえ肉体的にハンデを抱えるクルーゼにとっては、
    乗り込んで扱うだけでも血反吐が出るほどの苦痛を味わうことになる。

    それでも、とクルーゼはプロヴィデンスに乗ることを諦めなかった。

    クルーゼ「私の命は彼と共にある。彼が私を殺せば、私はこの絶望した世界に、
    自分の生まれた意味を抱きながら死ぬことができるだろう。だが、
    彼を殺してしまったとき。私は君と出会った頃の自分に立ち戻ってしまうかもしれん」
    デュランダル「…ラウ」

    わかっている。自分の生まれた意味の証明など、答えはないことくらい。
    しかし、クルーゼは見つけてしまったのだ。自分が、この人間の業にまみれた肉体が作られた意味を。
    偽りの肉体で閃光ともてはやされた紛い物でしかない自分。その鬱屈さと恨みを晴らすために
    生きてきた過去がどうでもいいと思えるほどの力を、本物を、クルーゼは見つけたのだ。

    故に戦う。故に殺しあう。闘争の赴くまま。

    自身の気持ちの赴くまま。自分の望む夢の果てへ。

  • 152二次元好きの匿名さん24/11/05(火) 20:01:45

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  • 153スレ主24/11/05(火) 21:01:24

    クルーゼ「その為に手にしたプロヴィデンスだ。だが、このままではギル、
    君が言うウィルのSEEDの扉はまだ開かんな。早く開けてやりたいものだがね」

    その扉を開いてからこそ見えるのだ。

    クルーゼが求めた世界が。

    その狂気とも言える渇望を欲して貪欲に歩む友を見て、
    ギルバートもまた、その狂気に同調し、取り込まれていくのだった。

    もう止まらない。もう誰にも止められない。

    この命を取れるのは寿命でも過去の怨念でもない。

    この命を取れるのも、命を奪えるのも、この世界でたった2人だけ。

    そう思うだけで、クルーゼは自身の体の遺恨などに死ぬ気などさらさら起きなかった。

  • 154スレ主24/11/06(水) 05:47:21

    バルトフェルド「ーーーコロニーメンデル。こいつは開戦前にバイオハザードを起こして破棄されたコロニーだ」

    L4コロニー群も目と鼻の先に迫ったところで、アークエンジェル、グレートフォックス、
    クサナギ、ヒメラギに合流したエターナルに乗るバルトフェルドは、自分たちの行く先を開示した。

    ムウ「このメンデルの事故はオレも記憶にある。けっこうな騒ぎだった。
    でもま、そのおかげか一番損傷は少ないし、とりあえず陣取るにはいいんじゃないの?」

    そもそもL4コロニーは開戦前のバイオハザードに加えて、開戦後にアジア共和国が管理下に置く
    資源衛星「新星」ーー後のボアズを巡って苛烈な攻防戦が繰り広げられ、
    その影響はL4コロニー群に致命的な損害を与えた。

    いわば宇宙の戦場跡。活動拠点を作るにはうってつけの場所だろう。

    PJ「当面の問題はやはり月でしょうか?現在、
    地球軍は奪還したビクトリアから次々と部隊を送ってきていると聞いています」

    そう呟くPJにマリューも不安そうに頷く。

    マリュー「プラント総攻撃というつもりなのかしらね?」
    ハインズ『虎の子のモビルスーツの量産と、ナチュラルでも扱えるOSが手に入ったんだ。当然だろうな』

    ヒメラギの艦長の任に就くハインズも、マリューの抱く不安と同じことを考えていた。
    付け加えるようにハインズの部下たちも怒りの声をあらわにする。

    『元々それがやりたくて仕方ない連中がいっぱい居るようだからな。青き清浄なる世界の為にってな』
    『味方を焼き殺そうとしてまで、なにが青き清浄なる世界だ。そんなもの糞食らえだ』

    アラスカ、そしてパナマ。同胞の命すら省みらずに殺戮兵器を投じた地球軍、
    戦えぬ無力な者に銃を突きつけて虐殺するザフト軍。その凄惨たる現状を眺めながら、

  • 155スレ主24/11/06(水) 15:06:02

    ラクスは暗い影を落としながら溢れるように呟いた。

    ラクス「皆さまも、とてもお辛い目に遭われたのですね」

    そういうラクスに、それでもとPJは笑顔を見せた。

    PJ「それで探すきっかけができたんだ。俺たちが信じる、俺たちの信じた明日を」

    何が正しいか、間違っているかじゃない。自分たちは何のために戦い、何を求めて戦っているのか。
    その先の答えを見つけるために地球軍やザフトを離れ、自分たちはここにいる。
    その想いにハインズや仲間たちも頷いた。

    バルトフェルド「それにコーディネイターを討つことのどこが、青き清浄なる世界の為なんだかな。
    そもそも、その青き清浄なる世界ってのが何なんだか知らんが、プラントとしちゃあ、
    そんな訳の分からん理由で討たれるのは堪らんさ」
    ハインズ『互いの憎しみが、連動して動く歯車になってるようにも思えるな。この戦争そのものが』

    バルトフェルドの呟きにハインズも同じように言葉を紡いだ。

  • 156スレ主24/11/06(水) 21:12:51

    バルトフェルド「プラントもナチュラルなんか既に邪魔者だっていう風潮だしな、パトリック議長は。
    当然防戦し、反撃に出る。二度とそんなことのないようにってね。それがどこまで続くんだか」
    マリュー「酷い時代よね」
    ラクス「でも、そうしてしまうのも、また止めるのも私達、人なのです。
    いつの時代も、私達と同じ想いの人も沢山居るのです」

    誰もが目を覆いたくなる世界の惨状を前に、ラクスは毅然とした言葉で自身の行く先とあり方を示す。

    ハインズ『憎しみを原動力にするなら、誰かがその連鎖を歯を食いしばって
    断ち切らなければならない。それが我々、大人の役目だと自負しているよ』

    それが、このどうしようもない戦いを始めてしまった俺たちの世代のケジメだと、
    ハインズは呟く。そうしなければ、この連鎖は延々と続くだろう。

    ラクス「創りたいと思いますわね、憎しみのない時代を」

    ラクスの小さな呟きに、その場にいる誰もが望む未来の姿を思い描いて、
    彼らは向かう先であるL4コロニーを見つめた。

  • 157スレ主24/11/07(木) 08:45:30

    分かり合える可能性が、人にはある。ナチュラルもコーディネイターも関係ない。
    互いに手を取り合い、同じ場所に向かって進むだけの足が、自分達はあるのだ。
    少しずつ、自分達の志に賛同してくれる者が増えている。
    同じ地平の上に立ち、これから共に戦場を駆けてゆく。
    少しずつであっても、段々と自分達が望み、目指した場所へ近づいて行っている気がした。

    そんな中、コックピット内で調整をしていたウィルは、
    気配を感じて顔を上げると、そこにはラクスが居た。

    ウィル「どうした?」
    ラクス「……入っていいですか?」
    ウィル「いいぞ」

    ラクスの表情に深い陰りが見えたウィルは、彼女を招き入れてハッチを閉じる。
    するとラクスはウィルに抱き着き、胸に顔を埋める。

    ラクス「父が、死にました……」

    ゆっくりと、ラクスは心中を吐き出す。

    ラクス「プラントの市民は知りません……誰も……。わたくしたちも、どうやって死んだのかさえ」

    ラクスはウィルの胸で泣きじゃくり、したたかに震えていた。
    それは聖女などではない──たったひとりの、まわりと何も変わらない──儚い少女の弱さだった。
    きっと今まで、斃れた父に代わって、みんなを率いて来たに違いない。
    そんな彼女の涙だから、ウィルは黙って受け止めた。

  • 158スレ主24/11/07(木) 14:44:48

    ラクス「父は……ずっと悔いていました」

    ラクスの父シーゲル・クラインは、プラント最高評議会の元議長であり、
    穏健派の中心人物であり、専門は宇宙生命学と天文学だった。
    C.E.68年にザフトの最高意思決定機関であるプラント最高評議会議長に選出。
    彼の議長任期は3年。その3年は激動の時代に大きな遺恨をもたらすものになった。

    C.E.70年2月18日。
    血のバレンタイン事件。

    農業プラントであるユニウスセブンに打ち込まれた核は、世界を大きく変えてしまった。
    シーゲルの議長任期が残り一年となった時の出来事であり、この事件を境に、
    地球圏のうちプラント利権を得ていた理事国と、その経済格差から軋轢を生んでいた非プラント理事国との
    断絶を利用し、友好や中立の姿勢を持つ地球圏の国家に対しては優先的製品輸出を行い、
    プラント独立の橋頭保を作る根回しも怠らなかった。

    そして、パトリック・ザラを中心にした過激派の発言力が増していくことも、一種の必然であった。

    核を撃ったナチュラルへの報復をという憎しみに扇動された声に、歯止めが効かなくなったプラント。
    ついにシーゲルは紛争の早期終結のため、赤道封鎖作戦[オペレーション・ウロボロス]を可決。
    これによりNジャマー投下による地球圏の徹底的な経済制裁を敢行することになりーーー

    その結果は、シーゲルの予想を大きく裏切り、地球圏へ癒えることのない傷を残すことになった。

    シーゲルは元より、早期の和平を求めており、地球連合の親書を持参したマルキオ導師を入国させるなど、
    いち早く殲滅戦へ転がり落ちていく地球とプラントの関係を良好なものにするために、
    お互いが交渉のテーブルに付けるように外交努力を重ねていた。
    彼は友好的な姿勢を示した国家には優先的にエネルギー供給をする事で、一気にプラント優位の情勢を
    確定させるエネルギー外交を推進し、プラントの要求を実現させる可能性を高めつつ、
    相手を妥協に追い込む交渉を行う手腕を持ち合わせていた。

  • 159スレ主24/11/07(木) 19:20:57

    だが、後任のパトリックが政権を握ってからは、彼は議長退任後、評議会議員そのものも辞することになり、
    自由条約黄道同盟を離党、組織の制服である青服も紫服も着なくなった。
    パトリック・ザラとは公私に密接な間柄であり、地球で生まれ育った第一世代であるがゆえに
    ナチュラルからの謂れのない差別を受け、時に命を狙われることすらあったという共通点があった。
    その経験から二人でザフト創設の中心となったが、コーディネイター同士の出生率低下を目の当たりにし、
    その優生思想に疑問を持つようになった。

    そして、自然交配による出生率が低下しているコーディネイターは安定した新たな種などではなく、
    今後ナチュラルと交雑を続けることでナチュラルへの回帰を迎えるべきという結論に至った。

  • 160スレ主24/11/07(木) 20:18:41

    命は生まれるものであり、造り出す物ではない。

    そんな主張も、過激派へと傾倒したパトリックから
    「そんな概念、価値観こそが、もはや時代遅れ」と一蹴される。

    自分達は間違えてしまった。ウロボロスで地球を縛ってからーーずっと。
    その軛を打ち込む事が何をもたらすか。わからなかった訳ではなかった。ただ、少しでも早く、
    地球との戦争が終わるのならーーそう信じて、誰もが口を揃えて言った言葉に流されて、
    シーゲルもまた、時代の波に流されてしまった。

    自分が始めたことだ。受けるべき罰もあろう、背負うべき罪もあろう。
    その責任が少しでも取れるなら、それを償えるなら、それに尽くしたい。
    たとえそれが、絞首台に登ることになるとしても、この戦いを始めてしまい、
    互いの種族を討ち亡ぼすまで戦争を加速させるスイッチに手をかけたのは、
    まぎれもないシーゲル自身なのだから。
    今更というのもわかる…その間違いを正さなければならない。
    コーディネーターが生まれて半世紀以上…進化を急ぎ過ぎた増長した傲りを、誰かが留めなければならない。
    コーディネーター、ナチュラル、そんな区別も関係ない。互いができることを懸命にこなし、
    生き抜くために使命を果たす姿。それこそが、シーゲルが望んだ共に生き、共に新しい場所へと歩む人々の姿だ。
     
    「技術によるコーディネイター存続」を標榜し、強硬になっていくパトリックを諌めたが、それも叶わなかった。

    地球連合軍との徹底継戦を主張するパトリックからは政敵と見なされるようになり、
    評議会の強硬世論を十分抑えきれないまま、シーゲルはパトリックに評議会議長の座を明け渡すことになった。

    そして娘であるラクスが起こしたフリーダムとアーウィン、エターナル強奪事件の際には、
    状況証拠から政敵の謀略と断定したパトリックの指示により指名手配され、暗殺された。

  • 161スレ主24/11/08(金) 06:18:44

    エターナルの後部にある展望ルームで、アスランは1人、流れていく星空の大海を眺める。
    その視線は不安に揺れ動いていて、アスラン自身の顔色も良いものではなかった。

    カガリ「こんなとこに居たのかよ」

    そんなアスランを見つけたのは、カガリだった。オーブの赤いジャンパーを袖に通した彼女は、
    ふわりと無重力に体を浮かべてアスランの隣へと降り立った。

    カガリ「お前、頭ハツカネズミになってないか?」

    しばらく、沈黙するアスランの横顔を眺めていたカガリは怪訝な表情を浮かべて思わず呟いた。

  • 162スレ主24/11/08(金) 15:46:43

    アスラン「は、ハツカネズミ?」
    カガリ「こう、一人でグルグル考えてたって同じってことさ。
    だからみんなで話すんだろ?だから、自分で抱えずにちゃんと来いよ」

    これからエターナルのブリッジで行われている作戦会議。この五隻の今後を決める大事な話し合いの場だ。
    そんな中で、自分の考えを抱え込んで黙られてると、気にしたがりのカガリにとっては心配のタネとも言えた。

    アスラン「…すまない」

    悲しげな顔をしてアスランを気遣った。

    カガリ「…苦しいのか?」
    アスラン「大丈夫だ」

    そう即答するアスランに、カガリは呆れたように息をついて「あのなぁ」と口を開く。

    カガリ「それ。やせ我慢っていうんだぞ?」

    カガリは手すりを持っていた手を離して、優しくアスランの肩から腕にかけて撫でる。
    その手からはたしかに、暖かさがアスランへ流れ込んできた。

  • 163スレ主24/11/08(金) 20:26:10

    それは凝り固まったアスランの心を優しく解し、
    彼自身の中で繰り返していた言葉のダムをいとも容易く決壊させた。

    アスラン「俺は…父を止められもしなかった。今更ながらに思い知る。
    俺は何も出来ない。何も解ってなかったと…」

    思い出すのは憎悪に塗れた父の顔。長年の友やその娘に向けるとは思えない冷たい父の瞳。
    まるで物を見るような心のない視線。それをつぶさに思い出すたびに、アスランの心は酷く磨り減っていく。

    カガリ「そんなの、みんな同じさ!解った気になってる方がおかしい!」

    そんなアスランのネガティブさを吹き飛ばすように、
    カガリは無重力の中へ浮かぶと、大げさなジェスチャーをしてアスランの前に立った。

    アスラン「カガリ?」
    カガリ「お父さんのことだって諦めるのは早いさ!
    まだこれから、ちゃんと話し出来るかもしれないじゃないか!」

    彼女の言葉に、アスランは目を見開く。
    そうだ。何を勝手に諦めている。
    何を勝手に失望している。
    まだだ。まだ真面に会話もないじゃないか。

  • 164スレ主24/11/09(土) 07:18:40

    父と息子。心で会話すると言えど、長年互いに心を知ろうともしなかった関係だ。
    そんな相手に簡単にわかり合おうとするなんて、無理な話だ。

    だから、話さなければならない。もっと多くを。もっと時間をかけて。
    そう思えば、アスランの中にあった暗い影のような気持ちは、すっかり無くなってしまっていた。

    カガリ「だからこんなところで一人ウジウジしてないでな…ってうわっちょ……!」

    そう言葉を続けていたカガリを、アスランは何も言わずにただ抱きしめる。
    無重力の中で、行き場を見失ったカガリの手が宙を彷徨う。
    そんな中で、アスランは優しげな声でカガリに言葉を繋いだ。

    アスラン「ごめん。カガリ…ありがとう。元気、出たよ」

    その一言で、カガリの戸惑っていた様子は消える。彼女は優しげに微笑むと、
    アスランの背中に手を回して、強く抱きしめてくれるアスランの頭をゆっくりと撫でた。

    カガリ「そうか…よかった」

  • 165スレ主24/11/09(土) 14:46:00

    バルトフェルド『弾薬や物資はエターナルに突っ込めるだけ持ってきてはある。
    その後の補給ルートも、プラントに残ってる連中が繋げてくれる手はずになってるからな』

    L4コロニー群、メンデルの港に入港した五隻は、まだ出たばかりの翼の調整をするエターナルと、
    アストレイのOSを宇宙用に調整するオーブ軍、無人作業機を使って廃棄コロニーを拠点に改装する
    グレートフォックス、そして周辺警戒と偵察を担うアークエンジェルにと役割が別れることになった。

    「偵察隊が出たぞ!敵が来るとしたら港の正面だ!各員、いつでも出れるようにスタンバっておけよ!!」

    偵察を任せられた機体がアークエンジェルから宇宙へと飛び立っていく。
    彼らはコロニーメンデルの港の反対側に展開して、死角になりやすいエリアを
    カバーする役目を負うことになっている。

    ラクス「艦の最終調整はあとどのくらいかかりますか?」

    そんな喧騒に紛れる中、エターナルへやってきたフレイ率いる整備班に、
    ラクスが無重力に髪を遊ばせながら降り立ってきた。

    ラクス「ウチのクルーでも最低でも5時間ってところね」

    エアロックの中で、作業用ツナギの上を脱いで袖を腰に巻きつけ、
    タンクトップ姿というワイルドさを出しているフレイは、引き連れてきたクルーを見渡して簡潔に答えた。

    フレイ「そうですか、しかし驚きました。フレイさんが整備員をしてらっしゃるなんて」

    地球、オーブ、ザフトの混成整備班がそれぞれの持ち場に飛んでいくのを見つめるフレイに、
    ラクスが驚いた様子で問いかけると、フレイは照れ臭そうに困ったように笑った。

  • 166スレ主24/11/09(土) 19:07:51

    フレイ「パパが知ったら卒倒しちゃうかもね」

    たしかに、ラクスと別れた頃はまだ高官の娘、いわゆるご令嬢という側面が強かったが、
    低軌道から地球に降りて、フレイもすっかり快活になったものだ。
    点検項目で質問してくる作業員へ的確に指示を出すフレイの姿は、もはやプロの整備員と言えた。

    ラクス「ーーお元気そうでよかったです」
    フレイ「ラクスも。大変だったみたいだけど、またこうやって会えて私も嬉しいわ」

    そう言って、フレイは持っていた工具を腰に巻いてあるベルトへ、矢継ぎ早に差し込んでいく。

    ラクス「ねえ、フレイさん」
    フレイ「んー?」
    ラクス「私たち、お友達、ですよね?」

    そう弱々しく呟いたラクスを、フレイは目を見開いて見つめる。
    しばらくの沈黙の後、フレイは真剣な眼差しでラクスを見つめて、手を差し伸ばした。

    フレイ「そこに置いてある工具セットを取ってくれたら、だけどね?」

    そう言ってウインクを飛ばすフレイにラクスは呆気に取られてから、
    可笑しそうに目尻に涙を貯めるほど笑ってしまう。

    ラクス「ふふ、そういうところ私は好きですわ」

    ひとしきり落ち着いたラクスへ、世界の歌姫にお褒め預かり恐悦至極でございます、
    とフレイは腰から垂れる作業着の上着をスカートのようにたくし上げて、令嬢らしく頭を下げると、
    それが面白かったのかラクスはまた堪らずに吹き出して、少女らしく鈴をコロコロと鳴らすように笑うのだった。

  • 167スレ主24/11/10(日) 04:31:21

    ムウ『はあ、凄いもんだね。ピンクのお姫様』

    そう言ってムウ率いるモビルスーツ部隊は、エターナルからクサナギ、ヒメラギへ、
    そして港から少し離れたアークエンジェルとグレートフォックスに向かって運び出した物資を輸送している。

    アサギ「少佐!そんなことは私達がやります!」

    宇宙用の調整を終えて出てきたアサギが駆るアストレイが、そんな作業に従事している
    ムウたちを見てギョッと目を剥いた。そんなアサギにムウは大丈夫大丈夫と手を振る。

    ムウ『いいんだよ。これも訓練の一つでね』

    そう言うムウの後ろには、ナチュラル用に書き換えたOSが搭載された
    アストレイに乗る、地球軍のパイロットたちがいた。

    『そうそう、機体も動かさないとデータも取れないからさ』
    『君達だって宇宙でのシミュレーション経験あるんだろ?子供にばっかデカい顔させとけるかってね』

    そう言って親指を立てて笑うパイロットたちは、アサギたちを横目に慎重に
    物資を各艦へと運び込みながら、自らのパイロットとしての技量を高めていくため、訓練に励んでいくーー。

  • 168スレ主24/11/10(日) 07:28:18

    「ラミアス艦長、前方宙域に艦影あり!」
    マリュー「敵!? 早く解析して!」
    「ザフトのナスカ級が三隻です!急速に接近しつつあり!
    あ、一隻の艦影照合出ました、ザフトのヴェサリウス!あれはクルーゼ隊です!」
    マリュー「偶然……ということは有り得ない。
    アーク・エンジェルかエターナルを追ってきていたんだわ。クルーゼ隊なら強敵ね」

    こんなところでクルーゼ隊と戦うのは想定外だ。
    アーウィンと同等以上に戦える新型機も用意されている上に、ナスカ級が三隻。
    いくら向こうの主力だった赤服とGがこちらの味方になっているとはいえ、油断ならない相手だ。

    『ラミアス艦長』
    マリュー「そちらの状況は?」

    繋がった残りの艦艇の艦長たちに、マリューは今の状況を問いかけるが、
    クサナギとグレートフォックス以外は良くない反応を示していた。

    『ヒメラギは物資搬入中だが、クサナギは出られる。大丈夫だ』
    バルトフェルド『エターナルはまだ最終調整が完了していない!』
    ジャック『こちらは直ぐに駆け付けられます』
    マリュー「分かりました。でヒメラギとエターナルは港の中で待機を。
    クサナギは二隻の直衛をお願いします」
    『解った!すまん!』

    通信を終えるとマリューも軍帽を被って思いを固めた。今動けるのは自分の船とグレートフォックスだけだ。
    ここを抜けられれば、こちらの戦力と今後の補給についても後手に回ることになる。
    消耗戦になると勝ち目はないのは明確にわかっていた。

  • 169スレ主24/11/10(日) 18:33:55

    ジャック『ラミアス艦長、敵の三隻は絶妙な隊形をとっています。
    戦術家というものはたったそれだけでレベルを推し量れるものです。
    優れた音楽家は一秒の演奏で分かると聞きますが、同じことです」
    マリュー「で、でもジャック船長、クルーゼ隊は脅威ではあったけれど、
    今までそんなに難しい戦術を仕掛けてきたことはなかったし、いつもMSを繰り出すくらいしか……」
    ジャック『本気で潰しに来た、という事でしょうね』

    ジャックが浮かべる表情は普段の胡散臭いアルカイックスマイルではなく、
    真剣そのものな真顔だ、それだけ今回の戦いは厳しいと確信できた。

    ジャック『見れば敵はMS戦で引けを取らないことを確信している隊形にあります。
    だったら何かあると思わなければならなりません。仮に敵がMSを警戒するなら
    対空砲火が重ならない距離まで三隻が離れているはずがないですからね』
    ナタル「……それは確かにおかしいですね……」

    センサーで捉えた相手の隊形から、ジャックは砲撃戦になると確信していた。
    たとえモビルスーツ隊を出したとしても、だ。

    ジャック『つまり敵はMS戦で少なくとも負ける気はなく、その上で艦同士の砲撃戦を仕掛け、
    こっちを仕留める気でいるということです』
    マリュー「それなら、厳しいでしょうね」

  • 170スレ主24/11/10(日) 19:38:50

    ジャック『いえラミアス艦長、厳しいどころか確実に敗けです。敵は戦術の上でも三隻である利点を活かし、
    凹形陣をとっています。むろん内部に取り込んで多方向から集中砲火をかけるのを意図したものです。
    そして三隻の距離はギリギリまで広くしてありますが、もしあれ以上広げれば急進されて
    一隻ずつ各個撃破されてしまう。それを防ぐ絶妙な距離に置いてあるのです。
    やはりクルーゼという男は恐るべき相手です」

    ジャックの言葉により、マリューは頭に戦いの図形を思い描いている。敵の上手い戦術も。

    なたる「し、しかしジャック船長、それが分かっているのなら、
    わざわざ三隻の包囲の中に飛び込む必要はありません。脇から逃げればいいだけでは?」
    ジャック『それこそが敵の思うつぼです。こちらが迂回するコースを辿ろうとする瞬間、
    敵艦隊はまとめて回転運動をしてくるでしょう。するとどうなるか。向こうからすれば絶対有利な
    横撃の態勢に持ち込める。ついでにいえば最大火力ローエングリンも
    ハイパーメガ粒子砲も前にしか撃てない。残りの砲ではどうあがいても火力不足、
    撃ち負けて沈められるのがおちですね』

  • 171スレ主24/11/10(日) 21:08:01

    つまりこういうことなのだ。

    敵の三隻の包囲陣に立ち向かうとすると、砲火を集中され、確実にこっちの二隻のうち一隻は沈められる。

    たぶんその標的はアーク・エンジェルなのだろうと想像できる。

    かといって最初から逃げを図っても無駄なのだ。

    敵の艦隊運動により余計不利になってしまう。

    敵はこれまでの戦闘記録からアーク・エンジェルの足がナスカ級に劣るのを知っている。

    グレートフォックスはともかく、アーク・エンジェルは圧倒的に不利な砲撃戦から逃れられない。


    そして、こちらが最初から腹を決めてかかれば、アーク・エンジェルは失われてもナスカ級を一隻、

    あるいは二隻葬ることはできるだろう。逆にいえば敵の指揮官は最大で味方の二隻を犠牲にしても構わない、

    それでもお釣りがくると踏んでいる。


    そして憎らしいことにその判断は戦略的に正しい。


    宇宙をちょろちょろする第三同盟の主力艦の片方を片付け、ザフトが完全に制宙権を

    確保するのは重要なことだろうな。そのために必要な犠牲を割り切って考えている。


    この戦いにドミニオンは介入dice1d2=1 (1)


    1.する

    2.しない

  • 172スレ主24/11/11(月) 06:47:16

    クルーゼ「どうやら読まれているな。白鷲の指揮官は本当に優れた軍師らしい」

    ふむ、と顎に指を添えるクルーゼは、モニターに映るアークエンジェルとグレートフォックスを
    眺めながら、顔につけた仮面の奥で思考を巡らせていた。

    アデス「エターナルの他に4隻。一つは足つき、それから白鷲、残りはオーブ軍のものです」

    ヴェサリウスの艦長であるアデスも、考えをこまねいている様子だった。議長閣下のオーダーは、
    エターナルとそれに関わる艦船の捕捉、可能であるなら鹵獲もしくは撃破といった、
    なんという横着さと無茶振りであった。
    しかし、彼のクルーゼに対する信頼は厚い。このヴェサリウスやクルーゼに
    オーダーが来たのも、議長の意思と信頼があってこそなのだろう。

    「更に新たな艦影を確認!形状からして足つきの同型艦です!」
    クルーゼ「ということは連合も介入してきたという事か、作戦の練り直しが必要だなーー
    こうも状況が解らぬのでは手の打ちようがない。私ともう一人で潜入し、まずは情報収集にあたる」
    アデス「隊長、自らですか?」

    クルーゼの言葉に、アデスは「あ、これはダメなやつだ」と直感的に理解しながらも、
    形式的と化した問いをクルーゼに投げかける。すると、彼はいつもと同じような笑みを浮かべて答えた。

    クルーゼ「ああそうだ。それに戦闘となればプロヴィデンスの新装備のテストにもある。
    アデス、ヘルダーリンとホイジンガーはここを動くなと伝えろ。
    場合によっては作戦変更どころか撤退も考えねばならない」

    そう言って、ブリッジの床を蹴って通路へと飛んでいくクルーゼ。彼の笑顔。
    ヘリオポリスの時、クライン嬢捜索の時、低軌道会戦、そしてアフリカ、オーブ、と。
    その全てに凶鳥が絡んでいるときに見せる笑顔だ。きっとあれが、
    本来の彼の笑顔であり素顔なのだろう。ああなると自分の言葉程度では止まらない。

  • 173スレ主24/11/11(月) 09:08:51

    そんなアデスの憂鬱をどこへやら、クルーゼは耐圧服に着替えるために更衣室に向かいながら、
    自分の宿命の場所であるメンデルのことに思いを馳せ、ゆるかな笑みを浮かべた。

    クルーゼ「コロニーメンデル。やはり忌むべき遺恨は断ち切れぬ、か。
    しかし、上手く立ち回ればこの遺恨にも片が付く…」
    アデス『隊長のプロヴィデンスが出るぞ!随伴機は、ハーネンフースを!』

    更衣室の前にたどり着いたあたりで響いたアデスの艦内放送を聴きながら、
    クルーゼは「わかってきたじゃないか、アデス」とニヤリと笑みを浮かべながら、
    その扉をくぐっていくのだった。

  • 174スレ主24/11/11(月) 19:29:32

    サイ「新たな艦影を確認!アークエンジェルの同型艦です!」
    マリュー「あれも私達が用済みと判断された理由でしょうね。
    アンチビーム爆雷、艦前面にどんどん投下して!敵の砲撃を充分に防げるまで!」

    アンチビーム爆雷が次々とアークエンジェルの艦尾部から前面に向けて投げられていく。
    それらは直ぐに爆発し、雲状の霧を発生させる。
    単なる煙幕とは違う。霧には重金属の粒子が含まれており、レーザーなら乱反射させる。
    ビームなら磁場を発生してビーム粒子を捻じ曲げ吸収する。そうやって砲撃から艦を守る働きをするのだ。

    だがそれほど長くは保たない。

    砲撃のエネルギーによって加熱されると拡散してしまうからである。
    しかし今、通常よりはるかに分厚く使ったので、数発、いや十発程度の直撃までは対処できそうだ。
    ただし、これには一つ弱点があり、砲弾や対艦ミサイルなどの実体弾には効果がない。

    バルトフェルド『ラミアス艦長、ジャスティスとイザーク隊の準備が完了した。
    直ちにそちらの直衛に回す』
    ナタル「了解!ヘルダート1から8まで用意!こちらもモビルスーツを発艦させる!」

    向こうが実体弾を使ってくれば、短距離ミサイルで対処し、それでも迎撃し損ねた分は
    モビルスーツで対処してもらう。これで暫くは問題無い。

  • 175スレ主24/11/11(月) 22:00:47

    一方ドミニオンは思うように動けなかった。
    艦事態はこの戦争以前からの船乗りの為問題無いが、
    モビルスーツのパイロット達は即席栽培の新兵同然なうえに、
    彼らが乗るストライクダガーのOSは第三同盟やオーブ軍の物と比べて
    洗練されておらず、動きがぎこちない。
    浮遊するデブリのケーブルに絡みつかれてる者まで出てくるありさまだ。
    オーブ防衛戦で新型Gとブーステッドマン達を失ったのは大きな痛手となっていた。

    更に追い打ちをかける様に、グレートフォックスがデブリに紛れさせたミサイルや爆雷が
    起動し、ストライクダガーが次々と撃破されていく。

    ジャック「あの黒い艦はアルマとラドルで対処できそうですね。
    ローエングリンは脅威ですが、クララも付ければ対処できるでしょう」

    電子撹乱を起動させたジャックは、武装を半手動(セミオート)で動かしながらそう判断した。
    戦艦一隻とモビルスーツ四機で宇宙要塞攻略ミッションを成功させたアルコンガラからすれば、
    この程度相手にもなりはしないのだ。

    ジャック(やはり問題はザフト側ですね、
    クルーゼが来たらウィルをぶつけるしかないのが歯がゆいですが)

  • 176スレ主24/11/12(火) 07:58:59

    今度はザフトの三隻から放たれるビーム砲撃をアンチビームの霧が受け止める。
    むろん、敵の方でもその様子は見えている。
    ビームの効果が薄いのを見ると、やはり対艦ミサイルを織り交ぜて攻撃してくるが何とか迎撃する。

    敵はこの持久戦のような恰好は予想していなかったらしい。

    しかしながら、それならそれでゆっくり構えればいいと思ったようだ。どうせアークエンジェルと
    グレートフォックスに援軍はない。クサナギはデブリを避けながら進まなければならないため、
    思うように動けないからだ。沈めるのが早いか遅いかだけの差で、いずれ結果は同じことになると。

    マリュー『……ジャック船長、信用していないわけじゃないですけど……』
    ジャック「ん、ラミアス艦長、言いたいことは分かります」

    マリューがおずおずと言ってくる。ひたすら守りに徹している現状に疑問があるのだろう。

    マリュー『これでは戦況が変わらない。いいえ、悪くなったのかもしれません。
    確かにアンチビーム爆雷は防御にいいものだけれど、こちらから撃つことはできなくなった。
    攻撃できなければいっそう距離を詰められて、益々逃げられない……』

    そう、アンチビーム爆雷は諸刃の剣だ。
    防御にはいいが、こちらからも攻撃できなくなってしまう。
    アークエンジェルの主要な攻撃手段であるローエングリンもゴッドフリートも使えないのだ。
    どちらもビームの一種であり、それこそ目の前の霧に吸収されて終わる。
    グレートフォックスも条件は大差無い。
    一応実体弾として副砲のバリアントがあるものの、威力はあまりに心もとない。撃ち合いにもならないだろう。
    その上、アンチビーム爆雷の霧を有効に使うためには艦の速度を変えられない。
    今も微速程度だ。つまり機動力も失ったことになる。

  • 177スレ主24/11/12(火) 17:38:02

    マリュー『ひょっとして一気に加速して霧を突き破り、攻勢に転じる?いいえそれは無理だと思います。
    加速のためのエンジン噴射を気取られたら、霧を抜ける瞬間のタイミングで砲火を浴びせられてしまうだけです』
    ジャック「いえラミアス艦長、そんなことはしません」
    マリュー『じゃあいったい……何のための時間稼ぎを』
    ジャック「焦る必要はありません。相手は距離を詰めてくるでしょう。
    一撃必中の距離になったところからが勝負なのです」

    こちらがアンチビーム爆雷の霧の中に身を潜め、動いてこないのを知った敵は当然近くに寄ってくる。
    確実に包囲に取り込み、アンチビーム爆雷で守れていない側方を狙うためだ。
    マリューはじわじわと追い込まれるのを感じ、汗を滲ませ、顔色を悪くしている。
    しかしそれ以上言葉を出さず、危機を切り抜けたジャックを信じた。

    ジャック「頃合いです。スレッジハマー1から6まで装填!」
    ナタル『え!?ミサイルで今から攻撃を?でもそれが有効になるとは……』
    ジャック「別にミサイルを攻撃だけに使うという決まりは無いでしょう」
    マリューどういうこと……まさかアンチビーム爆雷の霧へミサイルを!』

    そう、これがジャックの戦術の核心部分だ。大型ミサイルで艦前面の霧を吹き飛ばし、
    その瞬間にローエングリンとハイパーメガ粒子砲を撃つ。

  • 178スレ主24/11/12(火) 20:24:41

    クルーゼ「いいかな、ハーネンフース。あくまで偵察だ。無理について来なくていい」
    シホ「はっ!」

    そういうクルーゼに、青く染め上げられた最新型量産機ゲイツに乗るザフトの
    赤服の一人、シホ・ハーネンフースが規律正しい返事を返した。
    ゲイツは、ザフトの主力モビルスーツであるジンの後継主力機として開発された機体で、
    クルーゼ隊が地球連合軍から鹵獲したGAT-Xシリーズによって、連合の本格的なMS配備を
    想定する必要性に迫られ、奪取した技術も導入し、量産化されようとしているモビルスーツだ。
    だが、その技術導入と地球軍が製造したダガー系のモビルスーツに対応するために、
    設計局から急遽スペックの見直しが入り、量産機の配備は遅れる一方で、シホが乗るゲイツもまた、
    先行して開発されたゲイツの試験運用機を急拵えで彼女用に調整したものだった。
    この偵察は、改良型ゲイツの運用データ取りも含め、
    クルーゼの操るプロヴィデンスのオプション装備のテストも兼ねている。

    クルーゼ「ラウ・ル・クルーゼ、プロヴィデンス・セラフ、発進するぞ」

    補助スラスターユニットを取り外し、特殊な大型翼を追加したプロヴィデンス・セラフは、
    電磁射出機内で圧力を上げて大海へと飛び立っていく。
    そう、あくまでこれは偵察。無用な戦闘は行うべきではない。そう口ずさみながらも、
    クルーゼの目は鋭い光を帯びて、交差し合う閃光の彼方を見据えていた。

    そしてその感覚は思わぬ相手にも届くことになる。

    ムウ「この感じ!?まさか!?」

  • 179スレ主24/11/12(火) 21:43:33

    ランチャーを追加したガルーダストライクを操るムウも、
    この戦場に近づいてくる親しくありながら不愉快な感覚を、鋭敏に感じ取っていた。
    アークエンジェルからオーブ軍に狙いを変えたドミニオンからの対空ミサイルを払いのけながら、
    デブリを処理していたムウは、同じく防衛していたイザークとディアッカを尻目に、
    役立たずなレーダーを捨て置き、あさっての方向へ飛翔した。

    ディアッカ「な…おい!おっさん!」

    思わずディアッカが呼び止めると、ムウは振り向きもしないで怒号のような声を上げた。

    ムウ「おっさんじゃない!クルーゼが居る!」
    ディアッカ「え!?」

    その言葉は確かか?そんなことを問う以前の問題だ。
    ここチャフが撒き散らされており、レーダー網なんて既に無いものと同義だった。
    そんな状況下でザフトのモビルスーツを感じられるのか?ディアッカの疑問を、
    隣からムウを追うように飛び立ったイザークが吹き飛ばした。

    イザーク「ディアッカ!」

    イザークの声には焦りがある。
    理由はどうあれ、ここでザフトに見つかれば不味いことになるのは間違いない。
    エターナルはまだ調整中、ヒメラギもまた物資の搬入で動けない。
    クサナギは不慣れなデブリ滞のせいで身動きが取れない。
    アークエンジェルの後ろ側からザフトに撃たれればアウトだ。

    ディアッカ「くっそー!あの人まで来たらマジでヤバイぜ!」

    そう言ってアークエンジェルへ通信を入れると、
    ディアッカは一人アークエンジェルの側に残り、補佐に集中していくのだった。

  • 180二次元好きの匿名さん24/11/13(水) 05:53:48

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  • 181スレ主24/11/13(水) 13:00:38

    ムウ『ぐわあああぁーーー!!!』

    ウィルがギロチンバーストで敵弾を薙ぎ払った時だった。
    通信機越しに聞こえたのは、ムウの苦しげな声だ。高速でやってきた光が押し出すように連れてきたのは、
    片足と腕を吹き飛ばされたガルーダストライクだ。

    ウィル「ムウさん!?」
    アスラン『ストライク!?被弾してる…!はっ!』

    誰もが戸惑う中、ボロボロになったランチャーストライクの頭部をアイアンクローのように持ちながら、
    一機のモビルスーツが星空の海を背に、ウィルのアーウィンを見下ろしている。

    その輪郭はまるで悪魔のような翼を広げたバケモノのように、その場にいる誰の目にも見えた。

    クルーゼ『やぁ、会いたかったぞ、ウィル…!!』
    ウィル「げぇ!!クルーゼ!!!」

    そう言ってプロヴィデンス・セラフのコクピットの中で、クルーゼはニヤリと笑みを浮かべた。

    さて、前菜は終わった。ここからがお楽しみだ…!!!

  • 182スレ主24/11/13(水) 16:15:01

    シホ『貴様っ!よくも…よくも!ジュール様の機体でっ!』

    苦しむような、呻くような声を発しながら、自制心を失ったシホ・ハーネンフースは、
    目の前にいるヤサカニデュエルへと飛びかかっていた。
    二連装ビームクローを閃光と化して、デュエルの装甲を食い破らんと蒼いゲイツは何度も何度も
    その腕を振るうが、デュエルを操るイザークは巧みにその刃をひらりと避ける。

    イザーク「青い機体…鳳仙花!?ハーネンフースか!?」

    シホ・ハーネンフース。

    ザフトの赤服の一人であり、訓練学校時代では、イザークが彼女の戦闘技術と
    蒼い機体を好んでいることについて、彼女の特徴を鳳仙花の種に例えたことがあった。
    その後、イザークは赤服として数々の任務に従事することになり、ソロモン海峡の戦いを経て、
    デュエルを再受領した際に、運んできたメンバーの中にシホの姿があり、
    それっきり連絡も取れずにオーブへと渡ることになったのだった。
    もともと実験機であるシグー・ディープアームズを与えられていた彼女の腕前は本物であり、
    新型であるゲイツの攻撃を避けることにイザークは全神経を総動員しなければならないほどの技量であった。

  • 183スレ主24/11/13(水) 19:40:42

    ディアッカ「イザーク!!」

    気がつけばシホとイザークも、突貫していったクルーゼのプロヴィデン・セラフと同じように
    港口へと流れ込んでしまい、ヒメラギを護衛するディアッカの言葉で、
    背後から漆黒のダガー隊が近づいてきているのがわかった。
    ドミニオンから来たようだが、明らかに他と動きが違う。
    おそらく失った新型Gの埋め合わせとして編入された精鋭だろう。 

    シホ『こんのぉおおおーー!!』
    イザーク「ちぃい!こんなところでぇ!!」

    シホの咆哮と共に振り下ろされたビームクローをシールドでいなしたイザークは、
    そのままシホを傷つけないようにシールドバッシュで弾き飛ばすと、
    後ろから迫るダガー隊へビームライフルを放った。

    ウィル(くそ!完全に追い付かれてやがる!)

    クルーゼのプロヴィデン・セラフは、バックパックを連合のMAを参考した
    戦闘機に近い形状の物に変更したことで、簡易的だが変形能力を得ている。
    おかげでアーウィンのストラーダ形態に追い付けるようになり、
    360度回転するユニバーサルブースターによってより変則的な動きを可能とした。
    更に両前腕部にビーム砲とビームサーベルの機能を兼ね備えた小型実体盾[セラフ]を装備し、
    手数でアーウィンを大きく上回っていた。

  • 184スレ主24/11/14(木) 06:45:05

    シホ『はぁああ!!』
    イザーク「くっそー!!ハーネンフースならよせ!!」

    ゲイツから放たれるビームライフル、背後のダガー隊からくるビームの嵐。
    その中でディアッカのバスターと背中合わせをしながら、イザークは思考を高速で回していた。

    ディアッカ「イザーク!こうも敵が多いと!」

    わかっていると、ディアッカの泣き言のような声を黙らせる。
    こうも混戦状態では、シホに気を使いながら戦闘をするなんて不可能だ。
    しかし、ここで彼女を撃ってしまうことになるのは、イザークにとってはどうしても許せないことだった。
    敵だからと、知らぬから撃ててしまうことを考え直さなければならない。
    その答えを探すためにここにいるというのに、ここでシホを撃ってしまったら、
    ここに残った意味が消えて無くなってしまいそうな気がした。

    彼は知っている。彼女の女性らしい笑顔を。それを敵だからと言って撃つのはーーー。

    「ボサッとすんなよ!!」

    二人の回線に声を割り込ませながら現れたのは、ラドルのジェネラルだった。
    全身のビーム砲をファンネルモードで射出し、ゲイツの四肢とバックパックを的確に破壊する。

    シホ『きゃあああー!!』

  • 185スレ主24/11/14(木) 15:50:37

    最後に頭部を正確に撃ち抜き、ゲイツは行動不能になった。

    ラドル「殺したくなかったんでしょ」

    ガンファルコンに次いで情報収集能力が高いジェネラルだ。
    シホのゲイツに困惑しているイザークの姿を目撃したからイザークに加勢したのだ。
    その姿を見つめて、イザークはアラスカやパナマで見た、ナチュラルもコーディネーターも
    関係ない、人の善意による心の通じ合った瞬間を思い出した。

    ーーきっと、彼も善意で動いたのだろう。

    そう思いながら、イザークはディアッカと共にダガーをあしらい、
    中破したシホのゲイツを回収するべく動き始めた。

  • 186スレ主24/11/15(金) 00:11:45

    キラ「引いていく…ウィルは!?」

    これ以上は無駄だと判断して撤退していくダガー部隊を、
    疲れた体をコクピットシートに埋めながら見送るキラは、思い出したかのように辺りを見渡す。
    メンデルの外周部付近。そこでは、ダガー隊との戦闘が終わった各機から見守られるような形で、
    二つの光が交差し、閃光を瞬かせていた、

    ウィル「でやぁああああ!!」
    クルーゼ『はぁあああああ!!』

    通信機越しに、ウィルとクルーゼの咆哮が宇宙に響き渡る。セラフユニットから放たれる
    幾十の弾幕を掻い潜ってビームサーベルを叩きつけるアーウィンに、
    クルーゼは笑みを浮かべながら、他連装ビームブレードを翻して対峙する。

    クルーゼ『邪魔は無くなったな!!…はぁ!!ウィル!!君のために作った装備だ!堪能したまえ!!』

    数度、シールドとビームサーベルを用いた斬り合いを繰り返し、距離を置くと容赦無く弾幕を叩きつける。
    そんなクルーゼの猛攻を驚異的な機動力で避けながら、ウィルもプロヴィデンス・セラフにシィイイと
    歯を剥き出し、殺意を込めた目つきで睨みつけながら叫ぶ。

    ウィル「バカスカと打ち込みやがって!!嬉しくねぇーんだよこのやろぉおおお!!」

  • 187スレ主24/11/15(金) 06:25:41

    そのやり取りを何度も繰り返しながら円弧を描いて激突する二機を見つめ
    ーーーオーブ軍も地球軍もザフト軍も、はっきり言って引いていた。
    その異様な戦闘風景に呆気に取られた様子で、シホのゲイツを支えるイザークやディアッカも、
    戦闘を終えたトールやニコルも、PJやハインズ、アークエンジェルやヒメラギの艦長たちも、
    それを眺めるドミニオンもーーー最早その場にいる誰もが、その戦闘に口出しできずにいた。

    キラ「アスラン、私達も一旦退こう」

    モビルスーツが出してはいけない凄まじい音をたててぶつかり合う二機を遠い目で見つめながら、
    キラはフリーダムを反転させてコロニーメンデルの港へと撤退していく。
    そんなキラの反応に、僚機であるアスランは驚いたように目を剥いた。

    アスラン「お、おい!キラ!いいのか!?」
    キラ「うん、落ち着いたら戻ってくると思うし」

    そんな、まるでテンションが上がりすぎて言うことを聞かなくなった飼い犬に対する
    対応でいいのか…とアスランが半ば呆れた様子でキラを見つめていると、
    クララが通信機越しに手を叩いて呆けるメンバーに声をかけた。

    クララ「はぁい!撤退だよ!撤退!あの部隊、まだ諦めて無さそうだし」

    ドミニオンもモビルスーツを収容しただけで、まだ撤退したわけではない。
    ジャックは何時ウィルが戻ってきてもいいように、ウィルが好きなブレンドコーヒーを準備しだした。 

  • 188スレ主24/11/15(金) 15:56:29

    コロニーメンデル外周で激闘を繰り広げていたウィルとクルーゼは、
    爆破により空いた穴からコロニーの外壁内部へ突入し、狭い通路内でビームの閃光を瞬かせる。
    幾十にも重なり、せめぎ合い、交差する閃光の末に、ウィルの駆るアーウィンの髑髏を思わせる胸部装甲を
    ビームサーベルで抉ったクルーゼは、そのまま脚部で蹴りを撃ち込み、ウィルを壁へと叩きつける。

    ウィル「ぐっは!…クルゥーゼェ!!!」

    瓦礫と壊落していく外壁。吹き飛ばされた衝撃により、アーウィンは劣化した壁面を突き破り、
    錆と鉄に覆われたコロニー内部へと落下していく。
    ウィルは落下しながらも機体を立て直し、手に持ったビームサーベルを起動させたまま、
    見下ろしているプロヴィデンへと投げつける。
    ビームサーベルはプロヴィデンの背負うセラフユニットの片翼へ深く突き刺さると、
    そのまま溶断し、近くにあったスラスターを爆発させる。

    クルーゼ『ぐぅう…ウィルゥー!!!』

    誘爆したセラフユニットをパージしたクルーゼもまた、ウィルと同じようにコロニー内部へと落ちていく。

  • 189スレ主24/11/15(金) 18:22:30

    ウィル「ちぃ!!コロニー内部か!!この野郎!!」

    着地したと同時に、破損して使い物にならなくなったドッツライフルを投げ捨て、
    ウィルは残っているビームサーベルを引き抜くと、着地したばかりのセラフへ容赦なく斬りかかった。

    クルーゼ『ーーここで果てるならまた運命とも思ったがな!!だが、
    まだだ!!まだ足りん!!私を滅ぼすにはまだまだ足りないぞ!!ウィル!!』

    ウィル「ほざけ!!貴様を殺すのは俺だ!!ここで引導を渡してやる!!」

    何度か切り結び、互いの装甲が剥がれ、プロヴィデンの武装が吹き飛び、
    アーウィンはビームサーベルを蹴り飛ばされ、最早子供の喧嘩の様に互いを殴り合う。

    クルーゼ『アーッハッハッ!!ならば付いて来るがいい!!来たまえ!!私も貴様に引導を渡してやろう!!』

    カメラの半分が殴打によって機能しなくなる中、クルーゼは盛大な笑い声を上げて
    スラスターを吹かし、コロニーの中を滑るように飛んでいく。

    ウィル「上等だ!!ベ〇ットみたいにしてやる!!」

    ウィルもまた、飛んでいくプロヴィデンスを追うようにコロニーの奥へ
    ーーー聖域と呼ばれたメンデルの奥へと足を踏み入れていくのだった。

  • 190スレ主24/11/16(土) 04:08:04

    キラ「ウィルがまだ戻らない?」

    ブリッジにいるミリアリアから通信を受けたキラは、モニターがある壁面を見つめながらそう言葉を返した。

    ミリアリア『うん。コロニーにもつれて突入したのは観測できたんだけど…』

    コロニー内は経年劣化による錆と鉄に覆われ、加えてNジャマーの影響で電波状況が最悪を突き抜けている。
    ウィルが、あの新型ーークルーゼと戦い、コロニー内に突入した以上、
    放っておけば帰ってくるなんて悠長なことは言ってられないだろう。

  • 191スレ主24/11/16(土) 04:08:26

    ムウ「トール、俺と一緒に来てくれ。アイツとは因縁がある」
    トール「了解」

    ストライクは絶賛修理中であるムウは、ノーマルスーツのままで、帰還したトールのグレーフレーム
    に無理やり同乗して向かうつもりらしい。居住性は最悪らしいが、中腰で戦闘をしないなら問題はないだろう。

    キラ「私も行きます。みんなは今のうちに、補給と整備を」

    そう言ってキラも脱いでいたヘルメットを被ると、ジャスティスから降りてきたアスランも声を上げる。

    アスラン「ジャスティスも問題ない。オレも行く」
    キラ「いや、敵はまだ完全に引き揚げた訳じゃないから、
    アスランはこっちに残って。大丈夫、無茶はしないから」

    そう言うキラに、アスランは心配そうな目を向ける。そんな中で、クサナギから通信が入る。

    『各艦は、補給、整備を急いで下さい。事態は再び切迫します』

    そうだ。あの謎の新型機部隊が完全に引き上げたわけではない。それにクルーゼや、
    イザークたちが保護したザフト兵がいるということは、母艦も近くに身を潜めていると言うことだろう。

    その放送を聞いてから、全員が各持ち場へと向かうために無重力の中へと体を浮かせていく。

  • 192スレ主24/11/16(土) 11:07:01

    ヒメラギのモビルスーツハンガーでは、回収されたゲイツから降りたシホが、
    イザークやディアッカ、パナマで戦死したと報じられていたパイロットの面々と再会を果たしていた。

    シホ「そんな…ジュール様…」

    イザークを筆頭に、シホはザフトの面々を見渡すと、絶望したような表情で言葉を切り出す。

    シホ「皆さんは、プラントを裏切ったのですか?私たちの…敵に…」
    イザーク「ここにいる誰もが、お前の敵になった覚えはない。プラントを裏切ったつもりもな」
    シホ「ですが!」
    ディアッカ「けど、ただナチュラルを…黙って軍の命令に従って、
    ただナチュラルを全滅させる為に戦う気も、もうないってだけだ」

    そう言うディアッカの言葉に、その場にいる誰もが肯き、
    否定しなかった。シホの前へと歩み出たイザークは、真剣な表情のままシホの目を見つめる。

  • 193スレ主24/11/16(土) 19:30:15

    イザーク「多くを見てきた。アラスカ、パナマ、そしてオーブ。
    もはやこれは戦争じゃない。こんなの…戦争なんて言わん!」
    シホ「ジュール様…」

    そう言い切ったイザークは、胴体だけになった蒼のゲイツを見上げる。

    イザーク「回収したジャンクパーツがあるから貴様のゲイツは直ぐに修理できる。
    データも取っていないし、誰も近寄っていない」

    中破したから撤退したと言えば、体裁も取り繕えるだろう?
    というイザークに、シホは視線を下げたまま何も言えなかった。

    イザーク「ハーネンフース。貴様が戻るというなら誰も止めん。
    そのまま軍に従って戦うというのも、また正しい道なのだろう」

    プラントを守りたい。その思いはここにいる誰もが同じだ。だが、
    そのためにナチュラルを滅ぼすのは間違っていると思えるから、イザークたちはザフトを離れ、ここにいる。

    イザーク「考えてくれ。何のために戦っているのか」

    そう静かに言うイザークの言葉に、シホは何度か声を発そうと喉を震わせたが、
    彼女はザフトの兵士という役割しか担っていない。多くの命が理不尽に、
    憎悪に突き動かされるままに失われていく惨劇を目の当たりにしたイザークたちとは、
    悲しいほどに価値観が違っていて。

    結局、シホは何も言えぬまま、その場に立ち尽くすしかなかった。

  • 194スレ主24/11/17(日) 06:53:52

    コロニーメンデル。

    L4宙域において、他のコロニーと共にC.E.30年に建造が開始されたコロニーであり、
    完成後は「禁断の聖域」、「遺伝子研究のメッカ」と呼ばれ、コーディネイター作成を
    一大産業とする遺伝子企業「G.A.R.M. R&D」所有の研究所施設も所在していた。

    先進的なコーディネイターを生み出す研究。呼び名の通り、
    まさにサンクチュアリ(聖域)という名称に相応しい場所だ。

    この戦争が開戦される前。C.E.68年に発生したバイオハザードにより、多数の死者を出し放棄された。
    プラントによるX線照射により全域が消毒されたため、コロニー内環境は無害となったが、
    その爪痕は至る所に残ることになり、同時にナチュラルとコーディネーターの軋轢をより一層強めることとなった。

    クルーゼ「ここが何をしていた場所か知っているかね?」

    遺伝子企業「G.A.R.M. R&D」所有の研究所施設の廃墟の前に降りたクルーゼは、
    同じくアーウィンから降りて銃口を向けるウィルに穏やかな声で問いかける。

    ウィル「詳しいことは知らねぇ、だがこういう場所が
    やってることはロクでもないって相場で決まってるだろ」

  • 195スレ主24/11/17(日) 16:23:46

    クルーゼ「そう、人の業そのものだった場所だ。
    そして私も、彼女にとっても縁深い場所だ」

    そう小さくクルーゼが呟くと、頭上から轟音が降りてきた。見上げると、
    フリーダムとガルーダストライク、グレーフレームが緩やかにこちらに降りてきているのが見える。

    キラ「ウィル!」

    キラがコクピットモニターから見た光景は、ボロボロになったプロヴィデンスとアーウィンの下で、
    クルーゼとウィルが銃を突き付けあっている様子だった。

    クルーゼ「ーー君たちまで来てくれるとは嬉しい限りだ」

    降下したフリーダムとストライクから、キラとムウが降りてくるのを見て、クルーゼは感慨深そうに呟く。

    ウィル「キラねぇ!?何で来たんだ!」

    アーウィンが武器をすべて失くし、最後の悪あがきでクルーゼのプロヴィデンスに取り付いて、
    もみあいながら施設に墜落したウィルは、バイザーが割れたヘルメットを後ろにかけながら、
    降りてきたキラに思わず声を上げる。

    キラ「反応が無くなったから見にきの」
    ムウ「トールは周辺警戒を!何かあれば連絡する!」

    そうムウがトールに指示を出すと、グレーフレームは緩やかに上昇していき、
    コロニー内に残存兵力がいないか索敵へと飛び立っていく。

  • 196スレ主24/11/17(日) 21:31:04

    ムウ「クルーゼ!」

    ウィルと共に、アーウィンの影から銃を構えて身を乗り出そうとしたムウのすぐそこを、
    クルーゼが放った弾丸が掠める。乗り出そうとしていた身を一気に屈めるムウたちに、
    クルーゼは笑い声を上げて、愉快な様子で言葉を紡いだ。

    クルーゼ「さぁ遠慮せず来たまえ。始まりの場所へ!ムウ、
    それにーーキラ君。君にとっては、ここは生まれ故郷だろ?」

    生まれ故郷…?クルーゼの言葉にキラが戸惑っていると、当の本人は、
    遊園地に出掛けるかのような足取りで、研究施設の廃墟へと入っていく。

    ムウ「引っかかるんじゃない!奴の言うことなんか、一々気にすんな!あ、おい!ウィル!」

    ムウとキラの返答を待たずに、ウィルは銃を下げたまま廃墟に消えていったクルーゼの後を追う。
    一人で進んでいってしまったウィルの後ろ姿を見たキラとムウは、お互いの顔を見合わせると、
    立ち上がってウィルの後を追うのだった。

  • 197二次元好きの匿名さん24/11/18(月) 06:44:23

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