- 1二次元好きの匿名さん24/11/12(火) 20:52:35
狼(?)の五条さんと、小学生のすぐるくんのお話。
【注意】
画像は使いまわしです。話の内容とは関係ありません。
獣の五条さんと人間の夏油さんとは言いましたが正直言って詐欺です(自分で言うな)。そういうのを期待してみると肩透かしだと思います。
性的な描写、もしくは残酷な描写、あるいは倫理観を著しく欠くような描写を含む可能性があるかもしれませんし、ないかもしれません。
安価やダイスを使用し、それに応じた情報を公開する形で進みます。
エンディングは一つです。
五夏です。
転生、だと思います、多分。
絵スレにしたかったのですが、私には絵が描けません。ご容赦ください。どうして私には絵の才能がないんだ……!
喧嘩や攻撃的な言い方はお控えください。
このスレのキャラクターたちは、あくまでも私の解釈です。これが正しいわけでも、あなたの解釈が絶対だというわけでもありません。互いの考えを尊重し合いましょう。
私には過去作を含む全ての作品の作中に登場する一切の犯罪行為を許容する意図はありません。 - 2スレ主24/11/12(火) 20:54:28
こんばんわ。地雷の注意喚起は大事だと思うけどネタバレが嫌でどこまで言っていいのか分からないスレ主です。
■■■■の五条さんと、小学生のすぐるくんのお話です。
閲覧は自己責任です。
閲覧は自己責任です(大事なことなので二回言いました)。
モラルを守って楽しみましょう。……え、私が言うな?それはそう。
とりあえず今日はスレ立てだけです。
今日は忙しいんだ……。 - 3二次元好きの匿名さん24/11/12(火) 20:55:02
獣人とか狼男とかそういうタイプの奴?
- 4二次元好きの匿名さん24/11/12(火) 20:58:19
地雷の注意喚起は大事だと思うけどネタバレが嫌…ってことなら外部サイトに注意書き置くのは?読みたい人は読めてネタバレ回避したい人は回避できる!
- 5スレ主24/11/12(火) 21:12:34
- 6二次元好きの匿名さん24/11/12(火) 22:02:55
古の腐女子って感じの文体いいね
- 7二次元好きの匿名さん24/11/12(火) 22:46:10
ほ
- 8二次元好きの匿名さん24/11/12(火) 22:57:20
青い春をもう一度の人!!!!あなたのストーリー好きだ……!!こってり過ぎて読み返せないけど…1回で心に刻まれすぎるぜ……今回もめちゃんこ楽しみ
- 9二次元好きの匿名さん24/11/12(火) 22:58:10
とりあえず10まで!!
今回は安価参加するぞ…!! - 10二次元好きの匿名さん24/11/12(火) 22:58:26
+(0゚・ω・) + wktk!!
- 11二次元好きの匿名さん24/11/13(水) 07:53:02
ほ
- 12スレ主24/11/13(水) 10:33:09
おはようございます。最近のお気に入りの本は江戸川乱歩のスレ主です。人間椅子いいぞ、人間椅子。
今回のスレを作るにあたって民俗学の資料を大量に読み漁りました。またストーリーが壮大になりそうな予感がします。このおバカ……!
みなさん合わないな~と思ったらブラウザバックお願いします。私は喧嘩は苦手ですので……(ガチ)
更新は夜です。しばらくお待ちください……。 - 13スレ主24/11/13(水) 19:18:27
ただいまです。もうちょっと待っててね……。
- 14二次元好きの匿名さん24/11/13(水) 19:33:27
前作も大好きだったので全力で待機します!
- 15Terre24/11/13(水) 19:40:50
銀の体毛で覆われた巨体に、すぐるは目を瞬かせた。この山には、猿や鹿、猪が生息しているが、狼がいるとは聞いたことがなかった。
幼さゆえに、すぐるは怖いもの知らずであった。肉食獣相手に、興味深々といった様子でじいっと見入っていた。
「……。」
瑠璃のような、青い瞳がすぐるを見据える。しばらくそうして見つめ合っていたが、やがて狼はのそりと動くと、すぐるの傍へ寄って、ごろりと寝転がった。
「……さわっていいの?」
ふすんっ、と鼻を鳴らし、その獣は得意げにすぐるを見上げた。すぐるがおそるおそるその身体を撫ぜると、狼は気持ちよさげに目を細め、すぐるにすり寄った。
「……いいこだねえ。」
ふっくらとした愛らしい顏が、ふにゃりと崩れる。狼がその顔を舐めあげると、擽ったそうに笑った。
桜草の花が一斉に開花する、穏やかな春のことである。 - 16スレ主24/11/13(水) 19:42:08
早速ですが次安価です。8時頃投稿予定です。
- 17二次元好きの匿名さん24/11/13(水) 19:45:03
かわいい
- 18Terre24/11/13(水) 20:01:17
「またくるからね!」
小さな身体を目いっぱい動かして、すぐるは大きく手を振った。狼は寂しげであったが、また来る、という言葉に一応は納得したのか、絶対また来いよ、というような目を向け、すぐるを見送ってくれた。
すぐるは小さな道をかき分けて、山を下る。
「……?」
確かに音がした。すぐるはふと音の鳴った方へ視線を向けた。
何があった?
1.甘い匂いがした。
2.きれいな蝶々が飛んでいた。
3.やっぱり何もなかった。
安価>>21
今回は安価によって物語の結末が大きく変わることはありませんが、与えられる情報が変わります。
- 19二次元好きの匿名さん24/11/13(水) 20:02:12
1
- 20二次元好きの匿名さん24/11/13(水) 20:02:50
2
- 21二次元好きの匿名さん24/11/13(水) 20:03:59
- 22スレ主24/11/13(水) 20:05:16
蝶々!きれいですよね。
- 23二次元好きの匿名さん24/11/13(水) 20:08:07
1っぽいけどなぁ……わからん
- 24Terre24/11/13(水) 21:36:56
はらり、と蝶が舞い、すぐるの視界を掠めた。見たこともないくらい、美しい蝶であった。
「ちょうちょ!!」
薄く透けるような、淡い色合いの蝶が、ひらひらと藪の中へと消えていく。
「まって!!」
草を掻き分け、奥へ奥へと進んでいく。そうしてすぐるは開けた場所に出た。そこには、
「……お前、何故、ここに……?」
いかつい男が立っていた。 - 25二次元好きの匿名さん24/11/13(水) 21:46:03
いかつい男て夜蛾学長しか思いつかん
- 26Terre24/11/13(水) 22:05:08
「……おじさんだあれ?」
すぐるはこてんと首を傾け、ふしぎそうに男を見上げる。すると男は安心したように、息をついた。
「覚えて、いないのか。」
「???」
男はすぐるを優しく抱き上げた。突如高くなった視界に、すぐるは怯えるでもなく、むしろ足をばたつかせて、歓声を上げるくらいだった。
「暴れるな、あぶないぞ。」
すぐるはそれを聞いて、はあい、と返事をすると、くふくふと笑って、頭を男の胸に擦り付けた。ぐしゃぐしゃと、黒く、女の子のように長い髪がわだかまる。
「これは……。」
男は、すぐるの髪に触れた。すぐるの髪につけられた、桃の髪留めを指でつついた。
「……あいつか。」
さびしそうな顔をする男に、すぐるはまた、ふしぎそうな顔をした。 - 27二次元好きの匿名さん24/11/13(水) 22:07:34
- 28Terre24/11/13(水) 22:13:59
「……大事にしなさい。なくさないようにな。……ところで、お前、」
お前、と言った男にすぐるは重ねるように言葉を紡いだ。
「わたし、おまえじゃなくて……」
すると男は慌てたように、すぐるの口を塞いだ。
「分かっている、だが、ここでは自ずから“マナ”を明かすのは良くない。……特に、あいつの前ではな。」
「あいつ?」
「さとるだ。この山に棲む、……狼だ。」
「しろくて、あおい?」
「……会ったのか。」
「うん!」
すぐるが頷くと、男は渋い顏をした。
「名前、名乗ったのか?」 - 29二次元好きの匿名さん24/11/13(水) 22:18:40
マナ………
真名、かな? - 30Terre24/11/13(水) 22:26:14
「おしえてないよ。きかれてないもん。」
そう答えたすぐるに、男はあからさまに安堵した。
「……なら、今後も教えないように。いいか、絶対にだ。」
「……?うん。」
良く分からなかったがとりあえず、すぐるは肯いておいた。そんなすぐるに、男は苦笑する。
「……安易に約束事を取り付けるのも、感心しないな。」
大きな手が、すぐるの頭をなでる、とても、気持ちが良かった。
「もう、今日は帰りなさい。日が暮れる。」
男はすぐるを抱えて歩き出した。
「……再びここへ来るなら、気をつけろ。……この山は、」
その後の言葉は、幼いすぐるには、よく分からなかった。 - 31二次元好きの匿名さん24/11/13(水) 22:31:05
なんだ!?一体なにを…
- 32スレ主24/11/13(水) 22:42:06
今日はここまで。振り返りいきましょ。
さあ、五条さん以上に夜蛾センが出張っておりますが……ちゃんとこの後五条さんも出てくるのでご安心ください。
男=夜蛾セン、マナ=真名であってます。真名なんて言葉日常生活じゃ聞かないのでね……。多分すぐるくんは「マナ……誰だろ?」くらいに思ってるんじゃないでしょうかね。
前回は構造上最初に展開をほとんど決められなくて滅茶苦茶苦労したので今回はその反省を生かしてストーリーを組み立ててます。いやあ、大変でした。今回のエンディングは一つだけです。
今回はエログロ倫欠描写がメインではないので、前回よりはとっつきやすい、筈。そういう描写が必要だと判断すれば容赦なくいれますが……。いやあほんと前回はどうしてあんなことに……。
ところで前作のスレにあったコメント見て思ったんですが、私ってレイ〇ものが好きなのでしょうか?自分の好みのこと良く分かってない部分も多いんですが、そういうジャンルが好きなのかって言われると「……???」ってなるというか、しっくりこないというか……。なんか変な気持ちになります。何なんだろうね……?美しいものが見たいって気持ちはあるんですが……。うーん……?
続きはまた明日です。おやすみなさい。
追記
ヒント……最初の注意書き……(ささやき女将)
- 33二次元好きの匿名さん24/11/13(水) 22:46:12
- 34二次元好きの匿名さん24/11/14(木) 08:11:34
.
- 35二次元好きの匿名さん24/11/14(木) 08:55:41
- 36スレ主24/11/14(木) 16:41:23
こんにちは。ささやき女将事件から今年で16年ってことに時の流れを感じてるスレ主です。2008年って私未就学児なんですが……。いつもは朝に挨拶出してるんですが今日は訳あってお昼です。
それにしても、ちびっ子の頃に同級生に怖い本見せられてパニックになってギャン泣きしたり高校生になっても赤ちゃんがどうやってできるのかを大真面目に考えてた子供が今こんな話書いてるって、時の流れって怖いですねーたはー。今じゃ死体描写ががっつり入ってる文学を普通に読んでますよ。小学生の私が読んだらひっくり返るんじゃないかな……。
今回このスレを書くための情報収集で、古事記やギリシャ神話、民俗学の書籍や古典文学なんかを調べたんですが、その時の話を少し。
ヤマトタケルのクマソ討伐なんですが、私この話がすごく好きで……。今回のスレにこのクマソ討伐の要素を他の話を織り交ぜながら取り入れています。
他にも様々な神話や伝承を取り入れています。そういうの探してみると面白いかもしれないですね。
このすぐるくんですが、髪は伸ばしてるし髪飾りつけてるし、小学校低学年の身体なので、性別があんまり分かりません。絵が描けたら良かったんだけどなぁ~!!!
次から本文です。 - 37スレ主24/11/14(木) 16:42:17
訂正、お昼ってか夕方だな……。
- 38Lune24/11/14(木) 19:23:31
「……悟。あいつと会ったんだろう。」
ピンク色の絨毯で覆われた草原に、銀の狼が伏している。狼は、薄っすらと青い瞳をのぞかせ、いかついその男を見上げた。
艶やかな蝶が舞う。華奢な蝶は、如何せんその男には不釣り合いであったが、狼はそれを朝嗤うようなことはしなかった。
「……分かるだろう。あいつを隠したら、悲しむ者がいる。現にお前は、あいつに手を“出せなかった”。」
男は諫めるように言った。狼は不機嫌そうにスンと鼻を鳴らす。
「……。」
これ以上は無理か、男は深くため息をついた。“彼女”がいるうちは、この狼はあの子供に手を出せない。事を急く必要もないだろう。
「(しかし、あれも難儀だな。今もまだ、普通にはなれないのか。)」
男は彼女を哀れんだ。しかしなんだかそれすらも傲慢である気がして、男は緩く瞼を閉じた。 - 39二次元好きの匿名さん24/11/14(木) 19:59:16
月と地球ってこの世界線の五条って
ワーウルフ? - 40Terre24/11/14(木) 20:26:10
次の日から、すぐるは学校が終わると、毎日こっそりと山を訪れていた。学校が終わったら速やかに施設に帰らないと怒られてしまうが、すぐるは大人の言うことを素直に聞くような殊勝な性格はしていない。
「さとる!!きたよ!!」
すぐるが飛びつくと、狼はぱっと身体を起こし、しっぽを振ってすぐるにじゃれついてきた。さとるの愛撫に、すぐるは肩を竦ませ、むずがった。
「さとる、くすぐったいよぉ。」
すぐるが楽しそうに笑うと、さとるもまた目を細め、穏やかな顔をした。 - 41Terre24/11/14(木) 21:17:38
ふとさとるが地面に鼻先を近づける。すぐるが目を向けた先には、黄色い果実が転がっていた。
「なにこれ?」
悟はぐいぐいと鼻先で果実を押し付ける。それを拾って、すぐるはこてんと首を傾げた。
「くれるの?」
さとるは首を縦に振った。すぐるはまじまじと果実を見つめる。すぐるには見覚えのない果物だった。甘い香りがほんのりと漂う
「たべれるの?」
また、さとるは肯いた。さとるの青い目が、すぐるをじいっと見つめている。すぐるがその果実を食すことを、待ち望んでいるようだった。
すぐるは甘い匂いに吸い寄せられるように果実を口元へ運んだ。あんぐりと口をまあるく開ける。
白く小さな歯が、果実に突き立てられようとした、その時、
「食べるな。」
なめらかな女の手が、すぐるの口を抑えた。
あまい匂いが、より強く、すぐるの鼻を擽った。 - 42スレ主24/11/14(木) 21:31:40
今日はここまでで振り返りです。
ハンドルネームがばれるの意外と早かったな~と思います。そうですね。フランス語で地球と月を指す単語です。フランス語読める人がいたとは……。ただそのままの意味では使ってなくて、すごい比喩的な意味で用いています。竹取物語についての書籍や資料を読んでいて、こういう表現を思いつきました。ワーウルフ、ではないですね。……初めて聞いたよその言葉( ๑´•ω•)まあそんなに重大な情報ではないので気にしなくても大丈夫です。視点変更みたいなものです。それぞれの視点で前提となる情報が違うってだけです。
さて、最後の女の人は……誰なのかは明日ちゃんと言いますので少々お待ちください。
今日は安価なくてごめんね……多分だけど明日もないです……。ダイスはありますが……。
明日は早めに始めて早めに切り上げます。そして土曜日はお休みします。用事あるので。私が帰ってくるまでの間保守お願いしますね。
おやすみなさい。 - 43二次元好きの匿名さん24/11/14(木) 21:40:50
硝子かな?
- 44二次元好きの匿名さん24/11/14(木) 21:44:45
- 45二次元好きの匿名さん24/11/15(金) 08:03:38
誰だろう(硝子さんかな?)
- 46スレ主24/11/15(金) 09:25:16
おはようございます。ワーウルフをwarwolfと変換してしまい、『戦争……銃火器持ってヒャッハー!してる狼……てこと!!?』てなってたスレ主です。werewolfのことか!!って>>44見て思い至りました。そりゃあ聞き覚えない筈ですわ、そんな言葉存在しないんですから。馬鹿だろこいつ。変なとこで抜けてやがる……。
昨日言いましたが、明日は終日用事なのでお休みです。日曜日戻って来れると良いな……。私がいない間の保守お願いします。
- 47Terre24/11/15(金) 09:27:53
「……やっぱりか。お前はいい加減にしろよ。屑。」
「……。」
恨めし気に女を見上げる狼に、彼女は悪態をついた。
「……夜蛾センに聞いた。おまえ信用されてないぞ。」
まあ、私やあの人も、お前のこととやかく言えるような身じゃあないが。長い髪を風にたなびかせ、女は意地悪く笑った。
「……?」
「ああ、すまんかったな、ちび。ここで採れたもんは食うな。戻れなくなるぞ。」
すぐるの頭を撫で、女は微笑した。良く分からなかったが、何故か女のことは信じてもいいと思えて、こくんと一つ頷いた。 - 48二次元好きの匿名さん24/11/15(金) 12:00:26
まさか夜蛾と硝子、五条で世界が違うのか?千と千尋的な
違う世界の食べ物を食べるとその世界の住人となってしまう、みたいな - 49Terre24/11/15(金) 12:30:40
「……おい、ちび、」
「んぅ?」
「その腕、どうした。」
女が指したのは、袖に隠れていた、包帯だった。すぐるの腕を覆うように巻かれている。
「……」
これ何?
1.喧嘩した(本当)
2.喧嘩した(大嘘)
3.自分で転んだ()
dice1d3=1 (1)
- 50Terre24/11/15(金) 13:22:31
すぐるは孤児であった。自分をこの世に産み出した両親の顔も名も知らない。そのためすぐるはそういう施設で育った。
そして、幼い子供というのは、思慮分別に欠け、無垢であるがゆえに、残酷な存在である。
すぐるの同級生たちは、親のないすぐるのことをいじめた。それはもう純朴で、穢れのない顏で。悪意もなく、ただそれが当たり前のことであるとばかりに。
幸か不幸か、すぐるはそのような同級生たちの所業には、ほとんど興味を示さなかった。悪口は無視したし、ものを破壊されれば即先生に報告していた。
幼い子供が思いつくいじめなんて、せいぜいその程度で、怪我をさせる度胸は無いし、いわれのない罪を押し付けるような知性は存在しない。
すぐるはそんな幼稚な行為にのめりこむ同級生たちを、相手にはしなかった。
大人たちは、すぐるをいじめる子供たちを戒めるーーーーーーーーーーなんてことはしなかった。
むしろいじめられても涙一つ見せないすぐるを、不気味がって遠巻きにする始末。
それでもすぐるは周囲にはほとんど興味を示さなかった。悲しむこともないし、恨むこともない。
しかし、彼らが今日、すぐるに言った言葉だけはどうしても許せなかった。すぐるは生まれて初めて激昂し、いじめっ子たちと取っ組み合いの喧嘩をした。
「……。」
言いたいことは山ほどあったが、幼いすぐるにはすべてを伝えることは難しかった。
「……やまもとくんとまつおかくんとけんかしたの。」
すぐるの言葉は、そのような曖昧で、短いものになった。 - 51二次元好きの匿名さん24/11/15(金) 15:49:39
そんなに怒るほどなんて一体なんて言われたんだ….?
- 52Terre24/11/15(金) 16:12:37
「……そうか、見せてみな。」
女はすぐるの包帯をほどいた。白い包帯の下から、青黒い痣で一面覆われた、腕が現れる。
「……こりゃひでえな……、痛かったろ。」
「やまもとくんとまつおかくんのほうがいたいよ?」
それは正しかった。いじめっ子たちはすぐるの打撃をもろに顔面で受け止めてしまい、顔中腫れ上がるわ、鼻を骨折するわの大惨事だった。それを聞いた女は、きょとんとした後、大口を開けて笑う。
「あっはっはっは!!!!!お前相変わらずいい性格してんな!!!!!あ~~~~~~腹いてえwww」
女は爆笑しながらすぐるの腕に触れた。瞬きした次の瞬間には、怪我はきれいさっぱり治っていた。 - 53Terre24/11/15(金) 16:12:52
「……すごい!おねえちゃん、すごいねぇ!まほうみたい!!」
歓声を上げるすぐるに、女は言った。
「……しょうこだ。しょうこって呼べ。」
「しょーこ?」
「そうだ、そっちの方がしっくりくる。」
「しょーこけがなおしてくれてありがと!」
にぱっとすぐるが笑う。その瞬間、夕方のサイレンが鳴りだした。
「あ、もんげん!!しょーこ、さとる、もうかえるね!」
すぐるはあわててランドセルを背負うと、走り出した。
「気を付けて帰れよ!!転ぶなよーーーー!!」
「うん!ばいばーーーーい!!!」
目いっぱい手を振って、すぐるは山道を駆け下りた。
女も、いつまでも優しい表情で手を振っていた。 - 54Lune24/11/15(金) 16:14:39
「……悪手だったな五条。よりにもよって、それを選んだ。」
女はにやりと笑って、地面に転がる果実ーー枇杷を顎で示した。白衣が風邪に巻き上げられ、裾が翻った。
「私は確かに自由には動けんが、それを介してなら、案外行動範囲は広がるんだ。……人間ってのは都合のいい生き物だからね。責任からは逃れたがる癖に、恩恵だけはいっちょ前に欲しがる。」
女は見下すような口調でそう言った。思えば、かつての彼は、こういう気持ちだったのかもしれない。今となってはもう知る術はないが……。
弱者ゆえの醜さ。それに直面する機会の多かった彼は、眩暈のするような残酷な光景を見せられて、一体何を思ったのだろうか。
「私はな、五条、あいつが作り笑いなんてしなくて済むなら、なんだっていいんだ。今さら理がどうのとか言う気はない。」
もはや人ではなくなった女らにとって、そんなものは意味のないことだ。そして人間への慈愛なんてものは、彼女にはこれっぽっちもない。人間が今まで女と、狼にしてきたことを思えば、まあ妥当な感情であった。
「ただ……あいつの意思を無視するのは、もうやめることだな。……ペルセポネみたく隠すなんて、あいつは嫌がるだろう。嫌われるぞ。」
一度してしまったことは取り消せない。それでも彼女に、同じ轍を踏む気は欠片もないのだ。
納得していない様子の狼に、女はくつりと笑う。
「……しかし、やってくれたな。無知は罪、ってやつか。」
いっそ心穏やかに生きてくれたらよかったのに。奇しくも平穏を崩したのは、かつてと同じ、見えない人間であった。どうして彼らは、見えないものに怯え、被害妄想を膨らませ、挙句の果てには事をかき乱すのか。何もしないでいてくれたらよかったのに。どうして弱者は、強者の優しさに甘え、逆鱗に触れるようなことしかしないのか。女には、馬鹿としか思えなかった。
「まあ、今さらだ。私たちには関係ないことだな。」
あいつが泣くから、見捨てないだけだ。どうか、思いあがってくれるなよ。命が惜しいならば、どうか、これ以上は。
女は祈るように、茜色の空を見上げた。 - 55スレ主24/11/15(金) 17:24:47
今日はここまでです。
すぐるくん意外とバイオレンスですね。結構強かな子です。まあ親もいないし周りの大人がこれじゃあね。仕方ないとこはあります。
すぐるくんが激おこだった理由はまた後日出ますので……。今は解答は控えます。
さて、千と千尋の神隠しについて言及してる方がいますが、それは所謂よもつへぐいってやつですね。調べてみたらいろいろ出てきますが、まあざっくりいうと、死者の国の食べ物食ったら戻れなくなるから駄目だよ~みたいなことです。まあここでは異界くらいの認識で結構です。さとるはすぐるくんとずうっと一緒にいたいみたいですね。
明日は既に言ってた通りお休みです。申し訳ありませんが、私がいない間の保守お願いします。 - 56二次元好きの匿名さん24/11/15(金) 17:40:02
転生って原作からのことだと思ってたけどスレ主の前作と繋がってるってことか?
だとしたら五条がオオカミ()なのもそういう意味? - 57二次元好きの匿名さん24/11/15(金) 17:47:32
さす元特級
- 58二次元好きの匿名さん24/11/16(土) 01:43:07
早保守
- 59二次元好きの匿名さん24/11/16(土) 11:56:05
ほし
- 60二次元好きの匿名さん24/11/16(土) 19:48:50
早めの保守
- 61二次元好きの匿名さん24/11/17(日) 03:42:06
一応保守
- 62二次元好きの匿名さん24/11/17(日) 11:12:30
保守
- 63二次元好きの匿名さん24/11/17(日) 18:03:22
今日は来るかな
- 64スレ主24/11/17(日) 18:43:27
おはようございます。怪談話を調べるのが大好きなスレ主です。
小泉八雲とか結構好きです。雨月物語も良いですよ。おすすめは『青頭巾』です。
怪談噺は夏油さんと相性が良いので、いつか夏油さんの任務の話とかも書いてみたいですね。
大変遅くはなりましたが、帰ってきましたので再開します。保守ありがとうございました。
次から本文です。 - 65二次元好きの匿名さん24/11/17(日) 18:48:35
西洋系のジャンルはどうなんだろスレ主
妖精とかその辺 - 66スレ主24/11/17(日) 18:53:20
(いやだ、挨拶がおはようになってますわ、お恥ずかしい……。)
- 67Lune&Terre24/11/17(日) 18:54:55
すぐるの髪を、黒い漆塗りの櫛の歯が通る。白く嫋やかな女の手が、すぐるの頭にそっとそえられた。
すぐるはよく、この屋敷を訪れていた。施設の職員はすぐるを咎め、厳しくしかりつけたが、すぐるはどうしてもここへ来ることをやめたくなかった。
すぐるを可愛がってくれる女が、大好きなのだ。
「お前、喧嘩したの。珍しいこともあるのね。」
アマドコロの白い花が、わずかな風を感じて、ゆらゆらと揺れる。新芽は山菜になるのだと、女の付き人が教えてくれた。
「……。」
すぐるはむう、と口をとがらせる。女は口元へと指をそえ、ころころと鈴が鳴るような声で笑った。
「……何をされたの。」
女は、何をしたの、ではなく、何をされたの、と聞いた。すぐるは堅く噤んでいた唇を緩めた。 - 68Lune&Terre24/11/17(日) 20:18:09
「……わるぐち、いわれた。」
「お前の?」
「おねえちゃんの。」
あそこのおやしきのおんな、ゆうれいみたい。人を馬鹿にするような、浅ましい声が、すぐるの耳にこびりついている。
すぐるをいじめていた子らは、反応の薄いすぐるに焦れ、すぐるが懐いている女の悪口を口走ったのだ。
すぐるはそれが何よりも許せなかった。自分がいじめられるよりも、ずっと。結果、殴り合いの大事に発展した。
話を聞いていた女は、それでも穏やかな顔を崩さない。 - 69Lune&Terre24/11/17(日) 20:18:32
「私はそんなこと、気にしないのに。それにしても……お前は、いつも誰かのために怒るのね。」
自分のためには怒ってくれないくせに。少し恨めしそうに、女は言った。
「……人の感情まで、背負う必要はないの。赤の他人の感情なんて、人の子一人で、抱えきれるものではないのだから。」
女は桃の髪飾りで、すぐるの髪を留めた。女児が好みそうな、可愛らしいその髪留めは、女が贈ったものだ。
「お前はもう少し、自分に目を向けることね。……それから、自分に向けられる、感情も。」
特に、愛情の類は、執着と紙一重であり、より厄介であるから、なおさら。女は、小さな縮緬の小袋に紐を括り付け、すぐるの首にかけた。きょとんとする、すぐるに、女は微笑み返す。それから目線を少し上に上げ、庭のど真ん中に鎮座する、見事な桃の木を目線で示した。夏には甘い果実をたわわに実らせるであろう木が、風にざわざわと揺れる。
「お守り。桃の種が、入ってるわ。」
女はすぐるの髪を撫で、微笑む。
「■■■■にはね、あなたたちの常識なんて、通用しないのよ。」
三つ編みに結われた、黒髪が、ゆらりと揺れた。
「隠されないようにね。」
その笑顔は、狡猾な老女のようにも、あどけない生娘のようにも見えて、なんだか不思議な気持ちになった。 - 70スレ主24/11/17(日) 22:23:04
次安価です。
- 71二次元好きの匿名さん24/11/17(日) 22:33:08
黒髪の三つ編みで夏油の知り合いって誰だ?まさか理子ちゃん…?口調とかは全然違うけど
もし理子ちゃんなら付き人は黒井さんかな - 72Terre24/11/17(日) 22:45:50
すぐるは山道を登っていた。シレネの花が点々と咲く道を、小さな足を懸命に動かし、歩いていた。
葉を踏みしめる度に、瑞々しい香りが立ち、すぐるの鼻を掠める。
「……?」
ふと、ガサガサと上の方から葉が擦れる音がする。すぐるは顔をあげた。
何があった?
1.蝙蝠が飛んできた。
2.猿が果物を食べているのが見えた。
3.やっぱり何もなかった。
安価>>
- 73Terre24/11/17(日) 22:46:58
安価やり直し
- 74二次元好きの匿名さん24/11/17(日) 22:48:07
1
- 75二次元好きの匿名さん24/11/17(日) 22:53:52
2
- 76二次元好きの匿名さん24/11/17(日) 22:55:08
- 77スレ主24/11/17(日) 23:05:58
昼間に外で蝙蝠見かけるとびっくりするよね。
- 78スレ主24/11/17(日) 23:26:52
今日はここまでです。
今回理子ちゃんが初登場しました。理子ちゃんは今回の登場人物の中ではぶっちぎりで難しいキャラです。
この理子ちゃんは18歳くらいを想定してるんですが、原作理子ちゃんの享年は14歳(下手したら13歳)なのでね……性格とか口調とか考えるのが一番難しい……。
早生まれの小学校低学年の子と18歳女子なのでそれを考慮して会話考えないといけないですし、この理子ちゃんの置かれてる立場とかも考えなきゃだし……もう難しいのなんのって……!!今回はのじゃ口調じゃない素の理子ちゃんの口調をもとに、少し大人っぽい口調に直しました。
このスレ登場人物が多いんですよね……。今数えてきたら現時点で設定を詳細に考えてるキャラだけで14人いました。多いよ……!名前だけのモブキャラとかもいるし、まあ、すごい大所帯です。((((;゚Д゚))))
童話とか呼んでたら想像上の生物(魔女とかエルフとか人魚とか)は出るので多少は文献とか見ますが……って感じです。この話にもギリシャ神話をはじめとした外国の神話を取り入れてますし……。そういうの見たいですか?
昨日と今日は保守ありがとうございました。出先だとホスト規制食らうのでね……。ありがたいです。
明日はちゃんと続きだしますのでよろしくお願いします。おやすみなさい。
- 79二次元好きの匿名さん24/11/18(月) 03:21:27
大人っぽい理子ちゃんいいな…
- 80二次元好きの匿名さん24/11/18(月) 03:50:00
- 81スレ主24/11/18(月) 11:00:15
- 82Terre24/11/18(月) 18:53:21
空から大量の蝙蝠が一斉にすぐるに向かってきた。キーキーと甲高い声と、バサバサと羽根を羽ばたかせる音とが混じり合う。
「!?いや!!」
すぐるはぎゅっと目を瞑り、その場に蹲った。耳障りな高温が、あたりに、響き渡る。脳がぐらぐらと揺れる。
何故かすぐるの脳裏に、醜悪な猿の顔が思い浮かんだ。 - 83二次元好きの匿名さん24/11/18(月) 20:02:13
おわーーー!!!!!
- 84Terre24/11/18(月) 21:03:56
「おい、お前。」
突然、男の低い声がして、すぐるははじかれたように顏をあげた。あれだけ沢山いた蝙蝠はもうどこにもいなくて、目の前には顔色の悪い男が立っていた。
鼻のあたりに、黒い文様が刻まれている。
「お前、■■か?」
男は険しい顏で、すぐるを見下ろしていた。
「……。」
すぐるはぽかんとした顔で、目の前の男を見つめた。男はもう一度口を開いた。
「お前、名前は?」
「……すぐる。」
「……俺のことが誰か分かるか。」
「しら、な、い……?」
「……何故疑問形なんだ。はぁ……、なるほど。あれが言う、オリジナルの方だったか。」
男はガシガシと頭をかきむしった。 - 85二次元好きの匿名さん24/11/18(月) 21:07:01
お兄ちゃん!!!!!!
- 86二次元好きの匿名さん24/11/18(月) 21:30:30
危ねぇ!クソ親疑惑かけられてた!!
早々に誤解が解けて良かった… - 87Terre24/11/18(月) 21:31:30
「立てるか。」
「うん。」
すぐるはゆっくりと立ち上がった。そうしてあたりをきょろきょろと見回す。
「……こうもりは?どこいっちゃったの?」
「……お、れが、追い払った。だからもういない。」
男の言葉にすぐるは目をぱあと輝かせた。
「助けてくれたの!?おにいちゃん、すごいねぇ!かっこいい!」
すると男はぱちくりと目を瞬かせ、それから少しバツが悪そうな顔で頬を掻いた。
「あー……まあ、そうだな、……次は気をつけろ。」
「うん!おにいちゃん、ありがと!!」
すぐるが男に手を伸ばすと、男は驚いたように身を引いた。
「?どーしたの?」
「いや、俺に素手で触れたがる人間はいないから、びっくりしただけだ。それよりどうした。」
「わたしおにいちゃんとあそびたい!!いっしょにいこ!!さとるのとこ、つれてってあげる!!」
「あ、おい、急に走ると危ないz……」
「あぅっ!!!」
盛大に顏から地面に突っ込んだすぐるに、男は深いため息をついた。 - 88二次元好きの匿名さん24/11/18(月) 21:40:52
このレスは削除されています
- 89Terre24/11/18(月) 21:44:08
涙でびちょびちょの顔を男の胸に押し付けて、えぐえぐと泣き声を漏らす子供を見て、ため息がこぼれた。
「……全く……何をしてるんだお前は。」
「おぅぁあああああああああああ……!!」
「すごい泣きっぷりだな、声が嗄れるぞ……。」
男は子供の背を撫でた。すぐるが男にしがみつくと、癖のある黒髪が引き攣れたのか、男はいたいいたい、と顏を歪めた。
「(……にしても、あの男にそっくりでなんか妙な気分になるな。まあこっちがオリジナルなのだから当たり前か。)」
男にとって、■■は蛇蝎の如く忌み嫌っていた存在だった。同じ顔をした目の前の子供に対しても複雑な思いはあった。あったのだ。だが、
「(よく考えたら、あいつのしたことはこいつとは関係ないし、今は何も知らないただの子供……なら別に嫌う必要はない。……それに、)」
あどけない笑みをたたえ、男に手を伸ばす、この子供の顔を思い出す。男は■■■の■■■■であった。そのため素手で触ることを、人間は本能的に嫌がる。長い生涯の中で、何度人間たちに殺意を向けられたか分からない。それを、この子供は、
「(……少しくらいは優しくしてやってもいいか。)」
決して絆されたわけではないと、心のうちで意味のない言い訳を重ね、男は子供を抱えたまま奥へ奥へと進んでいった。 - 90スレ主24/11/18(月) 23:01:42
今日はここまで。振り返りです。
お前はいったい何度書き損じをすれば気が済むんだ。
高温→高音
本日の新キャラクターは、お兄ちゃんです。やっぱお兄ちゃんなので無垢な子供にはほだされやすいんですね~あら~(⌒∇⌒)
このお兄ちゃんは■■■の■■■■です。なので滅茶苦茶人間に嫌われます。かわいそ、お兄ちゃんが一体何をしたっていうんだ……。
今回安価少なくてごめんね……。続きはまた明日です。お休みなさい。
- 91スレ主24/11/18(月) 23:43:14
- 92二次元好きの匿名さん24/11/19(火) 08:01:47
スレ主さんお疲れ様です…!
- 93スレ主24/11/19(火) 08:11:18
おはようございます。昨日みた五条さんと夏油さんが付き合ってるスレのあまりの惨状にオットセイみたいな声で咽び泣いてるスレ主です。なんなんだよぉ……(´;ω;`)
最近寒いですね。温かくしてください。
今日も夜に更新です。少々お待ちください。 - 94二次元好きの匿名さん24/11/19(火) 08:15:59
- 95二次元好きの匿名さん24/11/19(火) 19:08:43
保
- 96Terre24/11/19(火) 20:02:56
「さとる!!きたよ~!」
「おい、急に暴れるな落ちるぞ!!」
元々悪い顔色をさらに青くして、男はすぐるを抱えなおす。さとるは男の足元でうろうろするとふすんと鼻を鳴らした。鋭い視線に、男は気まずそうに目を反らす。
「……少し悪いことをしてしまったから詫びとして送っただけだ。変な気を起こしたわけじゃない。それにこいつはおまえの■だろう。そんな奴を横から掠めとるようなことはしない。」
男がそういうと、さとるは上機嫌で尾を振り、その場にすとんと座った。すぐるは男の腕から降ろされると、小さな手をさとるへのばす。
まるで大きな飼い犬とその飼い主みたいだな、と男はぼんやりと考えた。
「(■■としての威厳が形無しだな……。)」
男は自然と笑みを浮かべていた。 - 97二次元好きの匿名さん24/11/19(火) 21:28:01
◾️は友と最強かな?
- 98Terre24/11/19(火) 21:38:16
「ほーん、硝子さんから聞いて来てみたが……まさか本当にあの男がこんな姿になってやがるとはな!」
笑いを含んだ女の声が聞こえた。すぐるたちが振り返ると、そこにはにやにやと笑う、気の強そうな女がいた。女は木の上に座って、こちらを見下ろしている。
「……お前、珍しいな。こっちに顔をみせるとは。」
「さっき硝子さんのとこ行って枇杷もらってきたんだが、そん時にそいつの話を聞いてな。見物しに来たってわけよ。しかしまあ、あの憎たらしい男がこんな可愛らしいちびすけになっちまってなあ!」
背の高い女はすぐるを真上から覗き込み、にやりと歯を見せて笑った。すぐるはびくりと身体を跳ねさせると、さっと顔色の悪い男の背へ隠れてしまった。
「ははっ、いい顏すんじゃねえか。しかしお前、えらい懐かれたな?お前的にはどうなんだ?複雑じゃねえのか?」
「こいつと■■は別人だ。それにこいつは何も覚えちゃいない。今は普通の子供だろう。」
「ふーん、そんなもんか。」
女はどうでもよさそうに、軽く返事を返す。わしわしと傑の髪をかき混ぜると、すぐるは悲鳴を上げた。
「やめてぇ、やめてよぉ!」
「うるせえ餓鬼、昔の恨みだ!大人しく撫でられてろ!」
困惑したように抵抗を示すすぐるを滅茶苦茶に撫でまわして、心底楽しそうに笑う女に、さとるは満足そうに微笑んだ。 - 99スレ主24/11/19(火) 22:00:15
今日はここまで。振り返りです。
前スレの供養SSを別スレにあげていたのですがそちらを消したのでこちらに再投稿します。
Writeningwritening.netパスワードは1234です。前上げた時も言いましたが一体何してんだろうなって思います。
このスレはボヤッとした結末部分だけ決めた状態で進めていて、どう着地させようかと思ってたんですが、大まかな流れはほぼ決まりました。倫欠描写入ります。ごめんね(´;ω;`)ちゃんとwritening挟むから……!
最近寒いので、風邪ひかないようにご自愛ください。おやすみなさい。
- 100二次元好きの匿名さん24/11/19(火) 23:12:37
真希さんかな?ピィピィ泣かされる傑ちゃん可愛いね
- 101二次元好きの匿名さん24/11/20(水) 09:08:25
⭐️
- 102スレ主24/11/20(水) 18:18:48
こんばんわ。倫欠描写が決定してどう表現しようか悩んでるスレ主です。未成年の方が読めないのはちょっとねえ。
ネタバレになるので内容は細かく言えませんが、現代の法律や道徳観を思いっきり逸脱するような内容です。そのまま載せたらバンされるでしょうね。読まなくても話の内容は理解できるようにはしたいですが……。
続きは次からです。少々お待ちを。 - 103Terre24/11/20(水) 19:10:39
「……真希さん、楽しそうだね。」
「おう、乙骨か。」
声を掛けたのは、ひ弱そうな男だった。何故かその髪や衣服はしっとりと濡れていたが、身体が冷えて震えている様子はない。女は気安く返事を返した。
「見ろよこいつ、こんなちびになっちまってんだぜ。おもしれえ。」
「うーっ!」
ほっぺたをぐりぐりと指で押し込まれ、すぐるは顏を歪めてむずがった。
「……良いの?」
「良いも何も、こいつはなんも覚えちゃいねえ餓鬼だろ。仕方ねえからこれで許してやらぁ。」
すぐるを良いようにもてあそび、豪快に笑う女を見て、男は表情を緩めた。
「……真希さんがそういうなら、僕は何も言わないよ。」
男がすぐるの頭を撫でた。すぐるはぽかんとした顔で、男を見上げた。
「おにいちゃん、ぬれてる。さむくないの?」
ぺちぺちと男の服を叩くすぐるに、男はふっと噴き出すように笑った。
「寒くないよ。そういうものだからね。」
木漏れ日のような、穏やかな笑顔だった。 - 104スレ主24/11/20(水) 20:35:14
ちょっと重大な誤字発見したので修正です。
「おう、乙骨か。」→「おう、憂太か。」です。
ごめんなさい乙骨くんと真希さんのファンの方、あっ、ちょ、待って、殴らないで、あっ。 - 105Lune24/11/20(水) 22:05:15
「……あの人が来てたんですか。」
「伏黒くん。」
空が茜色に染まる頃、木々の間から、あちこちがはねたような髪の男が顏を出した。足元には白や黒の兎がふんふんと鼻を鳴らしていた。
「どうでしたか。」
「普通の男の子だったよ。何にも覚えてなかったし、元気そうだったよ。」
「それならよかった。」
「そっか、伏黒くんは、あの人に育ててもらったことがあるんだっけ。」
「二回目ですけどね。一回目は面識すらないです。」
狼が、仏頂面の男の足元へ近寄る。男は狼をうざったそうに押し返した。
「貴方に育ててもらったことにも感謝してますが、二回目にあの人にしたことは許してませんよ。今回は大人しくしててください。」
「……。」
「聞いてるんですか。」
狼はふいと顏を反らした。男はため息を漏らした。
「……全く、この人は。」
「まあ、大丈夫だと思うよ。少なくともあの人が生きてるうちは、手は出せないみたいだから。」
ひ弱そうな男は少し眉を下げて笑った。この狼には恩があるし幸せになってほしいとは思うけど、幼子相手に強引なことはしたくない。
「今度は何事もなく生きられると良いね。」
少なくとも、以前のように狂うことにはならなければいいと、男はそう思った。かつてのことは許すつもりはないけれど、あれが悩み苦しんだ果ての選択だったのなら、そのような選択をせざるを得ない状況にはならないでほしい。……ひいてはそれが自分の大切な者の平穏につながるはずなのだから。 - 106二次元好きの匿名さん24/11/20(水) 22:22:13
ん?夏油は3回目の転生なのか…、んで2回目で伏黒を育てた…?
- 107二次元好きの匿名さん24/11/20(水) 22:29:09
これおそらく前回のスレ主のスレも関係してるな…
- 108二次元好きの匿名さん24/11/20(水) 22:32:12
- 109二次元好きの匿名さん24/11/20(水) 22:33:15
あ、見逃してたヤツだ!ありがとう!!
- 110Lune&Terre24/11/20(水) 23:52:14
遠くで雷が閃く。ゴロゴロという重い音に、雨が地面をたたきつける音が重なる。黒髪の少女はただ何をするでもなく一人外を眺めていた。
「……随分と機嫌が悪いのね。」
たった一日用事で来なかっただけでこの荒れよう。それも事前に理由とともに説明していたというのに。随分な執着である。
ガラス戸を雨粒と強風が殴りつける。女は薄く唇を釣り上げた。
「どれだけ強くても……■■には抗えないのね。可哀そうな人。」
もはや人とは言えない彼を思い、彼女はガラス戸に指を滑らせた。
「悪いけど……あの子を■■■■にはさせないわ。」
あの子はまだ、人なのだから。女は決意をその目に迸らせた。桃の芳香がわずかに匂う。
「……私はあと、どれくらいあの子の傍にいられるのかしら。」
彼女に時間はあまり残されていない。それでも次へつなげるまでに、出来得ることはしておきたい。
何度でも、戻ってきて、それでも彼を見守っていたいのだ。障害はあまりにも多い。
「……どうか、今度こそ、上手くいきますように。」
次こそは、彼が笑って生きられる世界を。彼だって、少女のためにもがいてくれたのだから、それに応えたい。
少女はうっそりと微笑み、柱へもたれかかった。 - 111スレ主24/11/21(木) 00:04:22
今回はここまで。
乙骨くんびしょぬれなのにスルーされてて笑いました。誰か心配してあげてよぉ……。
そしてさとるが急に不穏になってきました。こいつ開幕から一言もしゃべってないのに……。理子ちゃんも理子ちゃんでなんか意味深なこと言ってます。
理子ちゃんもさとるも、ある意味被害者ではあるんですよ……。特に理子ちゃんは本当に救いがない設定してます。自分で言っててなんだけど何でこんな設定にしたん?理子ちゃんが何したって言うんだ……。
さて今日は遅いのでもう寝ましょう。おやすみなさいー。 - 112二次元好きの匿名さん24/11/21(木) 08:22:52
ほ
- 113スレ主24/11/21(木) 12:03:08
こんにちは。理子ちゃんの口調に違和感が拭えないスレ主です。さすがに口調変えすぎたかな……。でも原作通りの口調だとそれはそれでなんか違うし……。
今まではほのぼの回続きでしたが、そろそろ物語が動きます。さてどうなることやら。
今日も夜から再開します。しばらくお待ちください。 - 114Terre24/11/21(木) 19:17:22
「ねえ見て七海!!■■さんだ!!■■さんだよ!!ゴジョウさんたちから聞いてはいたけど実際に会うのは初めてだよ!!わあ、ちっさい!!可愛いよ!!ねえ七海!!」
「やめなさい灰原、■■さんが驚いてるでしょう。」
「??」
ふっくらとしたすぐるのほほに自分のほほをこすりつけて、ニコニコ笑う男に、すぐるはただ困惑していた。
傍に立つ金髪の男はため息をついて優しくすぐるを取り上げた。その身体は少し湿っていて、ほのかに磯の香がした。
「貴方、こんなところに一人で、一体どうしたんです。」
「しせつのひとといっしょにきたの。つまんなくて、ぬけだしてきちゃった。」
「……施設。養護施設ですか?親はいないのですか。」
「おとうさんいなくなって、おかあさんといっしょだったんだけど、おかあさん“あるこおるいぞんしょう”だからってつれてかれちゃった。おとうさんとおかあさんのかおもうおぼえてないの。なまえもしらない。」
「……そうですか。」
男はすぐるの髪を優しく撫でた。それが気持ちよくて、すぐるは猫の様にその手にすり寄った。 - 115Lune24/11/21(木) 20:00:50
「……何故貴方がここに。」
金髪の男がその大柄な男を見て顔をしかめた。男は複雑な顔で目を反らした。
「そこの餓鬼をうちの施設で面倒見ているからだ。」
「……貴方に養護施設の経営なんてできたんですね。」
「成り行きだ。あの忌々しい男が押し付けてきたから仕方なく経営しているだけだ。……おい何を嗤っている。」
「……いいえなんでも。」
少なくともすぐるはこの男を慕っているようであるから、悪いようにはされていないのだろうと、金髪の男は結論付けた。
それならば無理に引き離すつもりはない。かつては呪いの王とまで言われた男の現状に、自然と頬が緩むのを感じた。かつての彼の行いは許されることではない。それは彼を慕う幼子にしても同じことである。けれど、
「彼は、私たちの大事な人です。丁重に扱ってくださいね。」
それでもこの子供が大切だから。こんどは何事もなく、平穏に生きてほしい。生まれ変わったこの世界でそれを願うくらいは許されるだろう。
男はすぐるを見つめ、眩しそうに目を細めた。 - 116二次元好きの匿名さん24/11/21(木) 20:14:16
宿儺が養護施設を運営してるのか
- 117Lune24/11/21(木) 20:55:08
「夏油さん可愛かったね、七海!!」
「そうですね、少々訳アリみたいでしたが、健康そうで良かったです。全く味方がいないわけでもなさそうですし。」
いじめを受けていることや施設の職員をはじめとした大人たちに冷たくされていることが気にかかる部分ではあるが、それを聞いていた隣の男の顔を見る限り、近々何とかしてくれるだろう。それにしてもかつては呪いの王なんて言われた男が、随分と丸くなったものだ。
「そういえば七海、そろそろ五条さんが限界みたいなんだよね。みんな頑張ってくれてるし、本人も何とか抗ってるんだけど、■■が危ういんじゃね……。大丈夫かなぁ。」
「……人間たちも厄介なことしてくれますね。」
100年以上も彼は耐えてきた。どれだけ大変だったのだろう。しかしそれももう限界に近い。
「……もしも彼がおちたら、大惨事でしょうね。彼は■■の■■です。■■の■■は■■の中でもトップクラスに強い。正直規格外です。彼に並びたてるのは……家入さんくらいでしょうが……、彼女はその分行動できる範囲が狭い。今は桃の屋敷の彼女がいますが、彼女だけに頼ったままでは……。」
「……こればっかりは僕らにはどうにもできないよね……。」
海の向こうを二人して眺める、暗雲が立ち込め、雷がゴロゴロとなっている。
いくら二人が■■■■であっても、こればかりはどうしようもなかった。 - 118Terre24/11/21(木) 21:22:57
夢をみた。
薄暗い闇の中、すぐるは独り立ち竦んでいる。
「……おじさん?」
素直じゃない、けれどなんだかんだで優しい、あの男を呼んでみる。けれど返事は返らなかった。
「……?」
おかしい。すぐるは施設の自室で床に就いたはずである。ここはどこだろうか。きょろきょろとあたりを見回すが、何もない。
「おい。」
はちみつがとろけるような、優しい声がする。振り返ると、そこには、白髪に青い瞳の、美しい男がいた。男はしゃがみこんですぐると目線を合わせると、優しく微笑んだ。
「おまえ、自分の名前、言えるか。」
口を開き、しかしすぐに両手で押さえつけた。かつていかついあの男に、名を名乗ってはいけないと言われたのが、やけに記憶に残っていた。 - 119Terre24/11/21(木) 21:23:22
「……ありゃ、残念。ダメか。」
男は笑った。すぐるはあ、と声をあげた。
「さとる?」
「……うん、そうだ、さとるだ。さとるだよ。」
さとるは感じ入るように何度も言葉を繰り返すと、愛おしそうにすぐるの頬を撫でた。頬を薔薇色に染めたそのさとるは、あどけなく笑った。
「ねえ、お前、僕のこと、好き?」
すぐるは迷いなくうなずいた。
「うん!すき!」
「じゃあ、離れないでいてくれる?」
「うん、いいよ!」
「そっかあ。」
男はにんまりと笑った。そしてすぐるの方に、片手を置く。
「じゃあ、さ……」
さとるはすぐるの背にそっともう片方の手を添えると、ゆっくりと、焦らす様にその身体を寝かせた。黒い髪が散らばる。すぐるはきょとんと目の前の男を見上げた。
「僕の■■■■になろっか。」
さとるが、わらった。 - 120二次元好きの匿名さん24/11/21(木) 21:25:57
あかん!!!!!!
- 121スレ主24/11/21(木) 21:37:40
- 122二次元好きの匿名さん24/11/22(金) 03:13:52
R18展開…ドキドキするね
- 123二次元好きの匿名さん24/11/22(金) 10:10:43
- 124スレ主24/11/22(金) 12:17:38
こんにちは。とりあえず呪術の8,9巻と0の小説を買ったスレ主です。やっぱ原作ないとね……。
何気にさとるは初めてですねセリフ喋ったの。初のセリフがこれかぁ……。
今週にはおわるかなーって感じです。最後まで是非お付き合いください。
再開は夜からです。
追記
そうなのかなー……。でもなんかしっくりこないんですよね……なんでだろ……。
- 125二次元好きの匿名さん24/11/22(金) 12:23:30
ミミナナ人質に取られて泣きじゃくるミミナナを宥めながら二人の目の前で五条さんに無理やり〇される夏油さんの話とか…読みたく(書きたく)ないです?スレ主さんが好きそうだなと思いました
- 126スレ主24/11/22(金) 12:26:52
- 127二次元好きの匿名さん24/11/22(金) 12:28:50
横からだけどリクスレで見かけて絶対そうだと思ってました
- 128二次元好きの匿名さん24/11/22(金) 12:30:19
何かのスレでミミナナの前でモブに…なら見た事あるな
イラストもあって非常に良いものだった - 129二次元好きの匿名さん24/11/22(金) 12:45:00
そうだろうなと思いました!
- 130Terre24/11/22(金) 19:35:39
- 131Terre24/11/22(金) 19:36:54
鳥のさえずる声が聞こえる。すぐるはもぞもぞと蒲団の中で蠢くと、むくりと起き上がった。
「……。」
寝ぼけ眼をこすり、ベッドから降りる。ぺたぺたと音を立てながら歩いて、そうしてふと立ち止まった。
「……?」
何か、夢を見ていたような気がする。忘れてはいけないような重大な夢であったような気がする。けれどそれがどんな夢なのか、すぐるには全く思い出せなかった。
「おい、すぐる、寝坊か?珍しいな。」
「おじさん!おきてるよ。」
廊下から、あの人の声がする。すぐるは声のする方へ走っていった。 - 132二次元好きの匿名さん24/11/22(金) 22:02:40
- 133二次元好きの匿名さん24/11/22(金) 22:03:27
- 134二次元好きの匿名さん24/11/22(金) 22:06:16
このレスは削除されています
- 135Lune&Terre24/11/22(金) 22:11:09
口の中で鉄の味が広がる。ごぷ、と血が咽喉をせりあがった。身体を折り曲げ、せき込む。白い胸元を、赤が浸食した。
虚ろな眼で目の前の男を見上げる。女は口を釣り上げた。今際の際にアドレナリンが大量に放出されているのか、ふしぎと痛みはない。ただ、身体が次第に冷えていくのを感じた。
「……っ、ぁ。」
声が閊える。口からこぼれるのは、赤い血だけ。女は眦を下げた。
「(……こうなったか。厄介なことになったものね。)」
女は乾いた笑いを零した。しかしその声ももはや風前の灯である。女の命がもはや長くはないことは、明白であった。
「……ぉ、めんっ、ねぇっ……。」
女は薄れていく意識の中で、呟いた。また、彼の呪いになってしまうことが、心残りだった。しかし時間はあまりにも無情に過ぎていく。
あの時女を殺したのは、金に目のくらんだ中年の男。そして目の前の男もまた、同じ属性を持っていた。皮肉なものである。
女は死して、生まれ、老いて、また死ぬことを幾度となく繰り返してきた。他者に殺されたことは何度かある。しかしそのいずれも、“■■■■”を憎み、命を奪った者は誰一人としていなかった。女を無慈悲に殺しておいて、そのくせ女そのものを見てくれたものなんて、いなかった。
「(黒井は無事かしら……。)」
せめて、彼女だけでもいいから、生きてくれと願う。
「(……今は、来ないで。お願いだから。)」
彼は今、非力な小学生である。この強盗と鉢合わせては、無事では済まないのだから。
女は笑う。……もはや何も見えない、何も聞き取れない。意識が朦朧とする。
「……。」
女は微睡むように、ゆっくりと瞼をおろす。華奢な身体から力が抜け、糸が切れた操り人形のように、項垂れた。 - 136Terre24/11/22(金) 23:57:37
手にマリーゴールドの花と、クッキーの入った袋を持って、すぐるは三つ編みの少女の屋敷へ向かっていた。
クッキーは、施設ですぐるが手作りしたものである。
今までは職員に叱られるので人目を忍んで会いに行っていたが、施設を経営している男のおかげで、最近では目に見えてすぐるに冷たくする者はいない。経営者の男にも、事前に言ってくれさえすれば、屋敷へ通っても構わないと言われたので、すぐるはこうして堂々と外出できるのだ。
鼻歌を歌いながら、道を歩く。夏であるにも関わらず服を着こみ、帽子を目深にかぶって、マスクをした男とすれ違った。
すぐるはしばし振り返ってその男を見つめていたが、特に気にするでもなく、再び歩き出した。 - 137Terre24/11/23(土) 00:27:36
意気揚々と敷地へ入る。呼び鈴を鳴らしてみたが、返事はなかった。少女は屋敷から出ることは滅多にない。すぐるは不思議に思って、もう一度ボタンを押してみた。しかしやはり、返事は返らない。
「……?」
何も入っていない、青いバケツが風に吹かれて、庭の方から転がってきた。車道に飛び出しそうなそれを、すぐるは反射的に追いかけて、拾い上げた。
「……、」 - 138Terre24/11/23(土) 00:32:33
すぐるは、ふとバケツが転がってきた方を見た。そこにいたのは、
「……あ、」
土の上で、血だまりの中にうつ伏せに倒れこんだ、お団子頭の付き人と、
「……お、ねえ、ちゃん?」
柱にもたれて、項垂れている、三つ編みの少女だった。 - 139スレ主24/11/23(土) 00:47:52
今日はここまで。振り返りいきます。
大事なシーンで脱字ですよこの野郎!!
「(……今は、来ないで。お願いだから。)」→「(……すぐる、今は、来ないで。お願いだから。)」
すごいばれてる……そんな分かりやすいですか?
ところで誰か書いてくれてもいいのよ(鉛筆おしつけ)
……実はね、あったんですよ。思いっきり伏字でしたけど。少なくともさとるがすぐるをどう見ていたかはそこで言及されてました。伏字だけど。
ボウゲンハヤメテー!!
唐突に空気変わりましたね。幼児への性的虐待からの強盗事件です。一度にお出しするもんじゃないんだよ……。
自分でこんな展開と設定にしておいてあまりにも理子ちゃんがかわいそうすぎて憂鬱になってます。ほんとに何でこんな設定にしたん?ねえ何で?
ちなみにですがこの強盗はモブです。
私漫画は持ってなかったし未読なんですよね。全体の大まかなあらすじなら聞いたよって感じです。
アニメは0と懐玉玉折だけ見ました。『素晴らしい、素晴らしいよ!!』のとこ夏油さんすごい顏してんなーって思いながら見てました。子供が見たらギャン泣きしそう……。
明日にでも終わりそうですね。今回は一スレでおさまりそうで良かったです。
続きは明日です。おやすみなさい。
- 140二次元好きの匿名さん24/11/23(土) 11:57:57
ほしゅ
- 141二次元好きの匿名さん24/11/23(土) 12:02:01
やっぱりここの隠れてる一文字って番だったのかな
- 142スレ主24/11/23(土) 12:05:54
こんにちは。ミミナナの目の前で~のSSを今か今かと正座で待機してるスレ主です。カイテクレテモイイノヨ…|д゚)
今日か、長引いたら明日あたりに終わります。おわるかな……。
今起きましたので再開までちょっと時間かかります。お待ちください。 - 143二次元好きの匿名さん24/11/23(土) 13:19:01
お待ちしてます!
- 144Lune24/11/23(土) 13:42:18
「学長。」
ぶっきらぼうな女の声がする。学長と呼ばれた男は女の方を振り返った。艶やかな蝶が舞う。男は表情を変えず、口を開いた。
「硝子か。」
「……死にましたか。」
「ああ、しかもよりにもよって殺された。」
「……では。」
「ああ……。」
男は諦めたように、目を伏せた。女も寂しげに目を伏せる。
「……あいつは、逃げられるでしょうか。」
「……分からん。」
枇杷の芳香がほのかに香る。女は街の方へ視線をやった。今日も変わらず、人間たちが何も知らずに生活を営んでいるのが見える。
「……。」
女はふと指を伸ばした。バチンと音がして、指先がはじかれる。
「……ははっ。」
乾いた笑いが漏れた。自分がもっと、自由でいられる■■■■だったらよかった。女はいつまでも笑っていた。 - 145Terre24/11/23(土) 14:33:48
すぐるは自室のベッドの上で、膝を抱えて座り込んでいた。慕っていた女とその付き人の亡骸を、その目で見てしまった傷は深かった。
あの後犯人はすぐに捕まった。あとは法の裁きを待つのみである。
……葬式には行けなかった。血縁でもない子供が、葬式に呼ばれるはずもない。すぐるが最後に見た女は、血まみれの、残酷な死に顔のまま固定されてしまった。
「……ごめんなさい。」
小さくつぶやいた。だれもいない部屋で、すぐるの懺悔の声だけが木霊していた。 - 146Terre24/11/23(土) 14:47:09
「すぐる、お前を引き取りたいと希望している者がいる。他県から来た夫婦で、調査はしたが、財産に余裕はあるし、子供好きの、いい人たちだ。」
「……。」
「嫌ならば強いるつもりはない。断っても構わない。だが、お前はこの街にとどまるのが、辛いのではないか。」
「……。」
「別に引き取られても、俺は定期的に会いに行ける。よく考えてくれ。」
「……はい。」
この街の人間は軒並みすぐるには冷たかった。すぐるに優しくしてくれたのは、目の前の男と、今は亡き、三つ編みの少女とその付き人くらいのもので、その二人が亡くなってしまった今、この街に留まるのはつらかった。この街での思い出は、ほとんどがあの少女との記憶だったからだ。
悩みはしたが、結局すぐるはこの話を受け入れた。
それからは引き取りの手続きやらなんやらで忙しなかった。
そうしてすぐるはそのどさくさで、さとるにお別れの一言も言えないまま、初めて、生まれ育った街を出た。 - 147Terre24/11/23(土) 17:35:51
✕年後 傑20歳
「久しぶりだな……。」
バスから降り立った傑は、帽子を押さえ、眩しそうに眼を細めた。
傑を引き取った夫婦は、とても良い人達だった。傑に惜しみなく愛情を注いでくれたし、傑を理不尽に𠮟りつけるようなこともしなかった。長らく子に恵まれなかった夫婦に、実子が生まれた後も、実の子と傑を分け隔てなく可愛がってくれた。
傑はそんな両親のもとで健やかに成長し、双子の義妹を、溺愛した。妹たちも傑を兄としてこれ以上なく慕っていた。傑は大学進学を機に家を出て、一人暮らしをしているが、実家との交流は途絶えていない。本当に、両親には感謝してもしきれない。 - 148Terre24/11/23(土) 18:14:55
「おじさんが、元気そうでよかった。」
傑は生まれ育った街に、バスや電車を乗り継いで、帰ってきていた。
久しぶりに会った、施設経営者の男は、傑を見ると、ぶっきらぼうに言葉を吐いた。
「傑か、最後に会ったのは中学生の時だったか。大きくなったな。」
粗雑な言い方だったが、おじさんの言葉には、傑の無事を心から喜ぶような、暖かさが滲んでいた。
「ここは、随分と様変わりしましたね。知らない建物が沢山立ってる。」
するとおじさんは仏頂面のまま、応えた。
「傑が街を出た2年後にな、川が氾濫して、川の西側は甚大な被害が出た。こちらは東側だから比較的マシだったが……。西側の方では死者が出た。確か、112人くらいだったか……。お前の同級生からも死者が出ている。それで建物も大量に流されて、土地開発が進んだんだ。」
「……。」
「それを皮切りに、ここ数年は災害が頻発している。ここら一帯は災害とは無縁の土地だったからか、毎度のように死者が出ている。気候変動の影響だろうが……。」
おじさんは複雑そうな顔をしていた。