- 1スレ主24/11/18(月) 20:32:28
https://bbs.animanch.com/board/3993243/?res=196
上記の続き。
うつ病や諸々が片付いたので再開します。
オリ主のイラストは頂き物、皆さまの感想やイラストをぜひ送ってください。
- 2スレ主24/11/18(月) 20:34:46
- 3スレ主24/11/18(月) 20:35:25
- 4スレ主24/11/18(月) 20:36:11
- 5スレ主24/11/18(月) 20:36:52
- 6スレ主24/11/18(月) 20:37:42
- 7スレ主24/11/18(月) 20:38:27
- 8スレ主24/11/18(月) 20:39:23
- 9スレ主24/11/18(月) 20:51:50
- 10スレ主24/11/18(月) 20:53:19
- 11スレ主24/11/18(月) 20:55:27
- 12スレ主24/11/18(月) 20:59:26
- 13スレ主24/11/18(月) 21:02:10
- 14スレ主24/11/18(月) 21:03:28
- 15スレ主24/11/18(月) 21:22:18
- 16スレ主24/11/18(月) 21:25:03
- 17スレ主24/11/18(月) 21:27:16
アルマ・アルティ
18歳
185㎝
ナチュラル
アルコンガラのメカニック担当。リアルでは工業系大学生。
GBNではメカニック系のスキルと情報分析系のスキルを習得している。
時折グレートフォックスの設備で機体を勝手に改造するマッドメカニック。
スクラップ同然のMSを1d10= 時間あれば、新品同然に修理できる。
いつの間にかフレイ・アルスターと師弟兼恋人関係になっている。
- 18スレ主24/11/18(月) 21:27:58
dice1d10=3 (3) 時間
- 19スレ主24/11/18(月) 21:29:17
ガンファルコン
MSΖ-013GF
頭頂高26.5m
全備重量41.8t
装甲材質A.Wルナチタニウム合金
ジェネレーター総出力11,200kw
総推力測定不能
センサー有効半径32,400m
アルマが搭乗する可変MA。
Gファルコンをベースに他機との合体機構を廃し、MSへの変形機構を備える。
クランの他機と比べると大型で、スピード・旋回性能で劣る。
しかし分厚い装甲と最大出力を誇るエネルギーシールド発生装置を持つため、防御面では鉄壁。
更に大型ビーム砲やマイクロミサイル等高火力な武装を多数備えている。
他にも高度な索敵機能を備え、チームの司令塔として活躍する。
MS時の頭部はセンサー機能を重視し、唯一ゴーグルタイプを採用している。
- 20スレ主24/11/18(月) 21:32:18
- 21スレ主24/11/18(月) 21:34:07
- 22スレ主24/11/18(月) 21:39:15
- 23スレ主24/11/18(月) 21:41:27
- 24スレ主24/11/18(月) 21:42:33
- 25スレ主24/11/18(月) 21:49:12
- 26スレ主24/11/18(月) 21:51:01
- 27スレ主24/11/18(月) 22:13:52
- 28スレ主24/11/18(月) 22:26:09
- 29スレ主24/11/18(月) 22:26:29
ムウ「何だここは?」
先に行ったウィルについて行く形となったムウとキラは、
軍事訓練で培ったクリアリングと周辺警戒を怠らずに施設内を進んでいく。
外側の廃墟は酷いものであったが、中はほぼ手付かずのまま放置されているという、なんとも不気味な空間だ。
ジャリ、とムウが何かを踏みつける。足元を見ると、何か濁った液体が入った試験管が、
自分が踏んだことによって、どろりとその液体を地面へ染み渡らせていた。
そのまま奥へたどり着く。そこは通路とは違っていて、何かをモニタリングするための施設のようだった。
その奥側に耐圧仕様のノーマルスーツを脱いだクルーゼが、逃げも隠れもせずに悠然と立ちはだかる。
クルーゼ「懐かしいかね?キラ・ヤマト君。君はここを知っているはずだ」
クルーゼの穏やかな声が、人気のない施設ないに響き渡る。その言葉を理解したキラが、
戸惑ったように思考を鈍らせる。なんだ?何を言ってるんだーー?
キラ「知っている?私が…」
その瞬間、クルーゼは片手に持っていた銃を真上に上げて、何の脈絡もなく一発の弾丸を頭上へと放った。
条件反射で咄嗟に物陰に身を隠すムウとキラだったが、先に到着していた
ウィルは逃げる様子も見せずにクルーゼを見つめていた。
ムウ「ちぃい!」
キラ「ムウさん!大丈夫ですか!?」
天井に当たった弾丸は跳弾し、クルーゼのすぐそこを掠めて音を響かせる。その様子を見て、
クルーゼは残念そうに真上に向けた銃口を下げた。ここで終わらなかったのだ。ならばーーと彼は口を開く。
クルーゼ「殺しはしないさ。せっかくここまでたどり着いたのだから。
ーーこの場所で生まれたすべての者たちと、切っても切れない因縁を持つ君たちに、
全てを知ってもらうまではね」 - 30二次元好きの匿名さん24/11/18(月) 22:27:36
このレスは削除されています
- 31スレ主24/11/18(月) 22:28:56
そうして、クルーゼはもう片方の手に持っていた写真立てを、ムウが隠れている物陰の裏に投げ込む。
手榴弾かーーと身構えたムウは、ちょうど表が向く形で落ちた写真を見つけて驚愕する。
ムウ「ーー親父!?」
キラ「ムウさんの…お父さん?」
そこに写っていたのは、若かりし頃の父親の写真だ。何故こんなものが宇宙の、
それも廃棄され、廃墟となったこの施設にあるんだ?そんな疑問がムウの中で沸き起こって行く。
クルーゼ「ムウ・ラ・フラガ。君も知りたいだろう?人の飽くなき欲望の果て、
進歩の名の下に狂気の夢を追った、愚か者達の話を。君もまた、その息子なのだからな」
そこにとどめを刺すように言葉を紡いだクルーゼに、ムウもキラも、彼の語る言葉を聞くしか無くなった。
クルーゼ「ここは禁断の聖域。神を気取った愚か者達の夢の跡」
銃を机に置いたクルーゼは、寂れた机を指先でなぞる。埃は溜まらない。
コロニーの管理はまだ行われているからだ。
こんな偽りの世界で、偽りの箱の中で、彼はーー本物を目指したのか。
クルーゼ「キラ・ヤマト君。君は知っているのかな?今の御両親が、君の本当の親でないということを」
キラ「えっ…?」
ムウ「貴様!何を…」
ムウが立ち上がろうとした瞬間、置いていた銃を素早く取って、再びムウたちとは
違う明後日の方向へ銃弾を放つ。それはウィルの横を掠めて、施設の奥底へと反響していった。
再び物影に隠れたムウを見て、クルーゼはそれでいいと微笑む。 - 32スレ主24/11/18(月) 22:30:25
クルーゼ「ーーだろうな。知っていればそんな風に育つはずもない。何の影も持たぬ、
そんな普通の子供に。アスランから名を聞いた時は、想いもしなかったのだがな。君が生きていたとは…」
アスランから聞いたストライクのパイロットの話。
あの時はウィルに夢中で、さして興味も止めなかったが、まさか彼がそうだったとは。
ウィルと言い、キラと言い、つくづく自分の運命というものは神に嫌われているようだ。
叶うなら、今すぐにでも頭に銃を突きつけて、死んでしまいたいほど惨めな気持ちにもなる。
クルーゼ「ああ。てっきり、このメンデルが破壊された時に死んだものだと思っていたよ。
特に君はね。その生みの親であるヒビキ博士と共に、当時のブルーコスモスの最大の標的だったのだからな」
キラ「な、何を…言って…」
クルーゼ「だが君は生き延び、成長し、なんの因果か
戦火に身を投じてからも、尚存在し続けている。何故かな?」
戸惑うキラの声など知ったことかと言わんばかりに、クルーゼは言葉を続ける。
それに向き合うウィルは何も言わなかった。 - 33スレ主24/11/19(火) 05:51:34
何も言わない。そうだとも。ウィルは何かを感じて何も言わないと決めていた。
クルーゼには、その資格があると、独断と偏見ではあるが、ウィルはそう思ったからだ。
その心中に抱え込んでいた物を、ここで吐き出す権利はクルーゼにはある。
キラ自身も、ムウ自身も、それを知る義務と責任もある。
知らなければいい。そんなものを知っても二人を苦しめるだけだとも思う。
だが、二人は奇しくも、この場にきた。
そしてクルーゼがここにいる。
それだけでも、二人には知る義務があるはずだ。
黙っているウィルを見て狂気に満ちた笑みを浮かべながら、クルーゼは声を発した。
クルーゼ「それでは私の様な者でも、つい信じたくなってしまうじゃないか。彼らの見た狂気の夢をね!」
キラ「私が…私が何だって言うんですか!?」
ムウ「キラ!!」
銃をまるで祈るように抱えて、キラは叫んだ。
何を言ってる?何を知っている?この男はーー自分の何をーー一体何をーー!!
キラ「貴方は……私の何を知ってるんですか!!」
クルーゼ「ーー知っているさ。何もかも、すべてを」
キラの慟哭に似た叫びに、クルーゼは笑みを収めて、
水を打ったような静けさを孕んだ音色で言葉を綴る。 - 34スレ主24/11/19(火) 07:53:45
クルーゼ「君は人類の夢、最高のコーディネイター。人間種が想像できる最高峰の生命体」
あるいは人の夢。
あるいは科学の叡智。
あるいは神を超えた存在。
あるいはーーー人の業。
クルーゼ「そんな願いの下に開発され、ヒビキ博士の人工子宮によって
生み出された唯一の成功体だ。数多の兄弟の犠牲の果てにね」
見たまえ。そう言ったクルーゼが照らした先。そこにはおびただしい数の培養槽と、
何かが液の中に沈んでいる。照らされたモニターには人のような何かが映し出されており、
そして…それが生きていることを証明する情報がモニターに表示されていてーー。
キラは突如として嘔吐感に見舞われて口元を手で覆い、その場に崩れ落ちた。
ムウ「キラ!キラ!おい!しっかりしろバカ!奴の与太話に飲まれてどうする!」
ムウの声も、キラには届かなかった。
ずっと思っていた。ずっと疑問だった。ずっと感じていた。
孤独。疎外感。違和感。何かが外れてしまっている感覚。何かがズレている感覚。
なぜ両親は自分を月へ、ヘリオポリスへ送り出したのか。
なぜ、両親と会う気が起きないのか。なぜ私はーーーストライクに乗ったのか。
培養槽に浮かぶアレを見て、キラの中で何かが繋がった気がした。
今まで目を向けなかった自身の根源と、何かがーーー繋がったような気がした。 - 35スレ主24/11/19(火) 18:32:40
アスラン「キラまで…遅すぎる。ラクス!」
ジャスティスのコクピットの中で落ち着きがない様子で言うアスランは、急かすように
エターナルに戻ってきたラクスへ声を投げた。だが、帰ってきたのは自分の望むものとは異なるものだった。
ラクス『認めません。アスランは指示があるまで待機していて下さい』
アスラン「しかし…!フラガ少佐を含めて、全員が戻ってこないと言うのは…」
ラクス『ならば尚のこと迂闊に戦力は割けません。潜伏場所が見つかったであろう状態では
攻撃もいつ再開されるか…分からないのです』
そう淡々というラクスに、アスランは冷たさを感じた。キラに…フリーダムに何かあったら…
そうやって逸るアスランの心がある。この心に従うべきなのか?そんなことを思った時、
モニターに映るラクスの手の様子に気がついた。
赤い。肘掛けに赤い何かが伝っているのが見える。ラクスは爪が皮膚に食い込むほど、握りしめていた。
ラクス『例え…例え、ウィル達が戻らなくても、私達は戦わねばならないのですから』
そう言って前を見据えるラクス。彼女は忍耐強い。耐え忍ぶ力が一人よりも少し強いだけで、
心は少女となんら変わりない。必死に、自分の心を律しているのだ。
今にも探しに行きたい心を押し殺して、ウィルが戻ってくるのを信じている。たとえ帰ってこなくとも、
ウィルやみんなが望んだ明日を手に入れるために戦う覚悟を持っているのだ。
アスラン「ラクス…」
キラは言った。アスランはここに残ってみんなを守ってほしいと。
ならば、それに従おう。
アスランはそれ以上、何も言わずにただじっと目の前に広がるモニターの映像を見据えるのだった。 - 36スレ主24/11/19(火) 21:05:17
クルーゼ「ウィル・ピラタ。私は、私の秘密を今、君に明かそう」
クルーゼはそういうと、顔を覆い隠していたマスクをなんの
躊躇いもなく脱ぎ捨てる。その姿を見たムウは驚愕した。
青い瞳。顔つきは自分よりも年上のように見えるが、あまりにも似ている。
自分にーーそれに若かりし頃の父に。
クルーゼ「私は人の自然そのままに、ナチュラルに生まれた者ではない。
受精卵の段階で人為的な遺伝子操作を受けて生まれた者だ」
淡々と自分の生い立ちを話し始めるクルーゼに、ウィルは動ずることなく
彼が発する言葉の全てを受け止めている。マスクを机に置いたクルーゼは、
コツコツと足音を奏でながら、培養槽が浮かぶ部屋を一望できる窓際へと歩んだ。
クルーゼ「ファーストコーディネーター、ジョージ・グレン。
どんな願いを込めて自身の出生を公表したのか、最早確かめる術は無い。
だが、どんな希望を込めたとしても、どんな未来を願ったとしても、
受け取る側が引き継いでくれなければ何の意味も無い。
もたらされた混乱は、その後どこまでその闇を広げたと思う?」
ガラスに手を当てて、クルーゼはまるで多くの人へ問いかけるような声で。
クルーゼ「あれから人は、一体何を始めてしまったか知っているのか?」
静かにそれを口にした。 - 37スレ主24/11/20(水) 05:29:13
目はブルーがいいな、髪はブロンドで…
子供には才能を受け継がせたいんだ…
優れた能力は子供への未来の贈り物ですよ
流産しただと!?何をやってたんだ!せっかく高い金をかけて遺伝子操作したものを!
妊娠中の栄養摂取は特に気を付けて下さい。日々の過ごし方もこの指示通りに…
完全な保証など出来ませんよ。母胎は生身なんですし、それは当然胎児の生育状況にも影響します
目の色が違うわ!
なんだ!才能なんてないじゃないか!! - 38スレ主24/11/20(水) 10:42:57
ウィル「で、失敗作として捨てられるコーディネーターも多いんだったな」
クルーゼ「そうだとも。生まれてくる命に高い金を出して手を入れて、
買った夢だ。誰だって叶えたい。誰だって壊したくはなかろう?」
自分で言葉にするだけでも反吐が出そうだ。
クルーゼはガラス面に接する手を握り拳にしていき、その表情をしかめさせて行く。
クルーゼ「そしてここの主、ユーレン・ヒビキはこう考えた。
最大の不安要素は母体、ならば完璧な母体を用意すればいいとね」
そしてユーレンは機械式の人工子宮で胎児を成長させる研究を開始した。
しかし、それは失敗の連続だった。
3号機、エマージェンシーです!
くそ…っ!濾過装置のパワーを上げろ!
心拍数上昇、血圧200を超えます。これ以上は胎児が危険です!
クルーゼ「見たまえあれを、研究課程の失敗作。
産声を上げる事すらできずに死んでいった憐れな子等だ」 - 39スレ主24/11/20(水) 13:48:42
数える気が失せるほど大量に並べられた胎児の標本。
ウィル達は顔を顰める事しかできなかった。
クルーゼ「全ては〝完璧な人間〟を造り出すため。──では、完璧な人間とはなんだね?」
──完璧になれば、人は幸せになれるのか?
母親の温かな胎内ではなく、無機質な冷却槽から生み出された者が、みずからの出自を幸福と感じるだろうか?
屍の山から生まれた命が、失われて逝った無数の命と引き合うものか?
飽くなく続いた臨床実験──この恐慌的な倫理観を疑問視する者も、当然のように現われた。
その内のひとりが、ヴィア・ヒビキ──ユーレンの妻にして、キラの血縁上の母親。
元になった受精卵が宿った子宮の提供者。
──もうやめましょう!?わたしたちが駄目にしているのは物じゃない、命なのよ……
──わかっている!だからこそ、完成させなければならないんだ!たとえ、どれだけの犠牲を払おうと……
──命は産まれ出るものよ!創り出すものではないわ!!
個より公──何時の世も研究者という人種は、将来あるべき公共の利益のために、
個を犠牲とした実験と開発を推進した。
クルーゼ「人は何を手に入れた?その手に、その夢の果てに、人は何をやったんだ⁉」
全てが手に入る。全て。命も魂もあり方もーーー人という全てを手に入れ、
好きに作り替えられると勘違いした愚か者たちが辿った末路。 - 40スレ主24/11/20(水) 21:03:03
──嘘つき!嘘つき嘘つき嘘つき!!!!
──あの子を返して!もうひとりの、わたしの……
──わたしの子だ!最高の技術で、最高のコーディネイターとするんだ……
──それは誰のため!?あなたのためでしょう……
そして銃声は鳴り響く。人が人であらんとするために。
それを盾にして、人を縛る愚かな思想を引き下げて。
青き清浄なる世界の為に!
青き清浄なる世界の為に!
青き清浄なる世界の為に!
青き清浄なる世界の為に!
青き清浄なる世界の為に!
青き清浄なる世界の為に!
青き清浄なる世界の為に!!!
アオキセイジョウナルセカイノタメニ!!!!
コーディネーターヲホロボセ!!!!!
異教徒ヲ弾圧セヨ!!!!!!!! - 41スレ主24/11/21(木) 07:49:09
クルーゼ「ーー知りたがり、欲しがり、欲という泉を掘り進めることによって、
人は、やがてそれが何の為だったかも忘れ、命を大事と言いながら弄び殺し合う」
そうしてこの聖域は終わりを迎えた。人が人の枠を越えようとした結果。人が断罪したのだ。
その愚か者たちを。まるで数百、数千年前に起こった異教徒の断罪をするかのように。
偶像的な神という愚かで矮小な存在を信仰するが故にーーー。
クルーゼ「まったくもって最高だな!最低で!最悪で!命を弄ぶ底辺のゴミ屑ども!何を知ったとて!
何を手にしたとて変わらない!何百年も前から、人は、何も学ばず、前にも進めず!!
私も、世界も、人と言う存在は度し難い!!」
そう言って地獄の釜の底から響き渡る笑い声を上げるクルーゼは、
その青い目を物陰から立ち上がり、こちらを茫然と見つめているムウへと向ける。 - 42スレ主24/11/21(木) 11:39:40
クルーゼ「さて、この顔を覚えてないかな?ムウ」
そう。まるで遠い昔に分かれた友に語りかけるように言うクルーゼに、
ムウは息を飲んだ。誰だコイツはーーー俺は、コイツを知っているのか。
クルーゼ「私と君は遠い過去、まだ戦場で出会う前、一度だけ会ったことがある」
ムウ「ーー!?」
その言葉に、既に捨てたと思っていた幼い頃の記憶がムウの思考を駆け巡る。
ほんとにこれが私かね?まあいい。兎も角あとはこれに継がせる。
あんな女の子供になど…しっかり管理して教育しろ。あのバカの二の舞にはするなよ
旦那様と奥様がまだ中に!
父さん、母さん…!!
燃え盛る家。助けることもままならなかった両親。自分を人としても見てなかった父親。
そして向かい合った。同じ顔をした自分ーーー。
クルーゼ「ふふふ…はっはっはっ!!私はね、ムウ。己の死すら、金で買えると思い上がった
愚か者である貴様の父ーーーアル・ダ・フラガの出来損ないのクローンだ」
カラン、とムウの手から銃が滑り落ちた。 - 43スレ主24/11/21(木) 22:58:32
ムウ「親父のクローンだと!?そんなおとぎ話、誰が信じるか!」
クルーゼ「私も信じたくはないがな。だが残念なことに事実でね」
声を荒げて反論するムウの言葉を、クルーゼは真っ向から否定した。
クローン──それはつまり、ラウがアル・ダ・フラガの遺伝子から造られた、
同一の遺伝子を持った人間だということだ。
そもそも、人間に対するクローニングは、ことコズミック・イラにおいても倫理観から禁じられた開発事業だ。
クルーゼ「小耳にくらいは挟んだことがあるだろう?フラガ家一族は、代々投資や商売に不思議な
[勘]を持っていたこと──フラガ家に就いた者に、損はない、と云われるほどの伝説となっていたこと」
冷静になれば、可笑しな話ではあった。
人間の勘ほど、不確定にして曖昧なものはない。こと投資や商売において、
絶対を確約させるほどの能力が人間にあるはずがない。それこそ未来が見える者でない限りは。
しかし不思議なことに、フラガの家系にそれがあった。 - 44スレ主24/11/22(金) 07:22:38
クルーゼ「そうしてフラガ家に受け継がれて来た莫大な資産──だが、
アルはこれを託す者に、ムウ──君が相応しくないと断じていた」
ムウ「なっ……」
クルーゼ「失望していたアルは、今後の財産を託す者に[自分]以外に
相応しい存在はないという結論を出した。あの傲慢の化身の様な男らしいだろう。
だからユーレンに資金提供を条件として私を作らせたのだよ」
だがクローニングといっても、一寸違わずアル・ダ・フラガその人を複製できるわけではない。
クルーゼ「ひとつ目的のために生み出されたクローンとは、もはや人権が無いに等しいものさ。
アル・ダ・フラガとして生み出され、アル・ダ・フラガとして育てられ、アル・ダ・フラガとして弄ばれた。
──しかし、私はラウだ、そうだろう?」
クローニングによって生み出された生体は、生まれた当時は勿論赤子の状態であって、
これより後の人格形成や心身発達に至っては、もろに後天的な影響を受ける。そのため複製元である
アル・ダ・フラガとは全く別の人生経験を足踏みすることになり、この事実こそが、
オリジナルとクローンの間に明確な『差(違い)』を形成する原因になってゆく。
無論、それを承知していたアルは、ラウに対して厳格な教育を徹底した。彼に人間としての自由を許さず、
みずからが認められる理想的な跡取りに育て上げるべく、徹底的に躾けたのだ。
クルーゼ「しかしそれも長くは続かなかった。ユーレンは優秀な科学者だったが、
テロメアの問題を解決できなかったのだからね」
キラ「テロメア?」
ウィル「簡単に言うと、遺伝子の要らない部分。
遺伝子は細胞分裂を繰り返す度に、端から欠けていくんだ。
だから重要な部分を守るために、切り離してもいい余白がテロメアだ。
これが無くなると老化していくから、寿命の長さに直結すると言ってもいいな」 - 45スレ主24/11/22(金) 11:39:28
クルーゼ「そう、私を生み出した時アルは既に初老と言ってもいい年齢だった。
私は生まれながらにして、奴と同じ寿命しか与えられなかった。
故に奴は私を失敗作として捨てた。憎しみを憶えるのに、そう時間は必要なかったよ」
生まれながらの奴隷を作ってしまう──これが、クローニングに伴う人権問題のひとつとされていた。
ムウ「じゃあ、オマエが親父を……!」
クルーゼ「『未来を見通せる男』?──ハッ!伝説のように
持て囃はやされた男が、己の死期すら見通せぬとは、いい笑い話じゃないか」
────放火事件が、あったのだ。
真夜中の出来事であったが、ムウが暮らしていた屋敷は全焼し、フラガ家の莫大な財産も一夜にして消失した。
そして火事によってムウの母親も、父アル・ダ・フラガも焼死した。
沖の暗いのに白帆が見える──それは資産家として莫大な栄華を築いた男の、あまりに呆気ない最期だ。
そのあと、ムウは親戚の家に引き取られたが、以降、ラウが何処で何をしていたのかは想像が付かない。
しかし、出生だけを見ればナチュラルに過ぎない彼が、ザフトの中でコーディネイター然として振る舞うまでには、
壮絶な人生があったはずだ。
そういう意味では、彼がその壮絶な人生の中で培った『努力』たらんものは、
コーディネイターに施された遺伝子操作より優れた能力に結び付く、ということの証明にならないだろうか?
人間の能力を決めるのは決して遺伝子の優劣ではなく、その者の努力であるのだと──彼の経歴そのものが、
昨今に広まった遺伝子操作へのアンチテーゼであるというのに、
そのことに、当の本人は気付けなかったのだろうか? - 46スレ主24/11/22(金) 17:09:14
クルーゼ「まったく、愚かだよ。君も私も。あの男の幻影に惑わされ続けた結果がこのザマだ」
プラントに流れ着き、復讐のためにこの醜い罪の証のような体を引きずって戦って、
戦って、戦ってきた。何度憎んだことか。何度憎悪に飲まれたことか。
クルーゼ「この果てしのない欲望にまみれた世界で生まれた私にはーーーー」
ウィル「そんなこと、どうでもいい」
クルーゼの言葉を、切って捨てたのはウィルだった。
ウィル「そんなこと、どうでもいいんだよ。クルーゼ」
重ねて、まるで言い聞かせるような、論するような口調で、ウィルはクルーゼの言葉に、言葉を重ねて行く。
キラ「ウィル…?」
ウィルの澄んだ声に吐き気がおさまったキラは、
弱々しい目で悠然と立ち、クルーゼを見据えるウィルを見つめる。
ウィル「お前は、ラウ・ル・クルーゼ。こいつはキラ・ヤマトだ。それ以上でもそれ以下でもない。
大体キラねぇが最高のコーディネーター?プログラミングに集中すればカリダ母さんに
風呂にぶち込まれるまで辞めないわ、俺が部屋の掃除するときに邪魔なのに退かなくて
俺に掃除機で吸われるわ、ベルトをジャラジャラ付けた趣味の悪い私服を好む困ったちゃんが?
笑えない冗談だな」
キラ「ちょっと⁉」
ウィル「クローン?最高のコーディネーター?それがどうした。それがなんだ。
そんなもん、俺にとってクソほどの興味もないし、お前に対する感覚も感情も何も変わらん」
そう言ってウィルは銃を投げ捨ててクルーゼに向かって歩み出して行く。 - 47スレ主24/11/22(金) 18:50:17
ウィル「たしかに過程はクソだ。だが、すでにお前はお前で、キラねぇはキラねぇだ。
そこで生まれた思想も、考えも、気持ちも、感情も、人間性も、すべてはここで決めたお前たち二人のものだ」
グローブを外して、バイザーにヒビが入ったヘルメットも床に投げ捨てて、ウィルは声を絶やさずに歩む。
ウィル「生まれ?出生?そんなものどうでもいい。心底どうでもいい。鼻糞程度の興味も湧かん。
お前がお前である限り、ラウ・ル・クルーゼが、ラウ・ル・クルーゼである限り、そんなこと些細なこと以下だ」
クルーゼ「ーーそうだな。私もそう思う」
そんなウィルに呼応するように、クルーゼも銃を床に放り投げて歩み寄るウィルに向かうように足を進め始めた。
クルーゼ「私は憎んだ。こんな世界を。欲望に思い上がり、命を大事にと言いながら命を弄ぶ、
嘘に塗れたこの世界が、憎くて憎くて仕方がなかった。それでも自殺を選ばなかったのは、
未練や生きる理由を欲していたからだろうな」
憎しみに突き動かされ、憎しみに育てられ、そして憎しみに浸かりきった心。それを引きずり続けてきた。
クルーゼ「故に思っていた。私には唯一、この世界を裁く権利があると」
そうして、ウィルとクルーゼは互いに目の前に立ち尽くす。もう一歩歩けば相手に触れるような距離だ。
クルーゼ「だが、今はそんなこと!どうでもいい!どうでもいいのだよ!!」 - 48スレ主24/11/22(金) 21:57:32
クルーゼの咆哮とともに、二人はまるで息を合わせたように握った拳を振り上げ、
振りかざし、振り子のように体をバネにしてーーー互いの頬を殴打で撃ち抜いた。
ウィル「ぶっーーーぐっ…!!見たまえ、キラ・ヤマト君!人の夢を超える存在を!
ヒビキ博士が抱いた夢など、所詮は人の想像力の限界でしかない!!」
落ち着いた老を刻む顔つきからは想像できないような水々しい若さ。それに満ち溢れた顔つきで、
クルーゼは口や鼻から鮮血を撒き散らしながらキラに向かって叫んだ。
クルーゼ「そんなもの本物ではない!紛い物だ!それが限界だと感じていた私の絶望も!
スーパーコーディネーターなんていう夢も!!人が本物たる存在を夢見た幻想だ!!
それを超えずして何が最高の存在か!!」
もう一度、振りかぶって拳を打ち、振り抜く。ガゴン、
と鈍い音が鳴り響き、二人の顔は首振りおもちゃのように跳ね上がる。
クルーゼ「がっーーーー!!…っ!!私はここにいる!!ラウ・ル・クルーゼという一人の人間として!!」
殴る。殴る。殴って叫ぶ。クルーゼの様子はまるで
おもちゃで遊んでいるかのような、純粋に戦いに興じる目をしていた。 - 49スレ主24/11/23(土) 08:04:04
クルーゼ「アル・ダ・フラガのクローン?そんなものではない!断じて!!私は私だ!!
私だ!!そうだろう?!ウィル!貴様を倒す人間として、私はここにいる!!」
ウィル「そうだ!俺が貴様を倒す!俺しかお前を殺せないのなら!!」
クルーゼと同じほど、鼻や口、切れた頭から血を流しながら、ウィルもクルーゼとの拳の
応酬を止めようとしなかった。同時だったものは、順序がつき始め、ウィル、クルーゼ、
ウィル、クルーゼ、殴って殴られてを繰り返して行く。
二人の立っている床には鮮血がばらまかれて行く。
クルーゼ「ああ!私も君を倒す!!私以外が倒すなんて認めん!!認めてたまるものか!!」
そう叫んで、クルーゼはウィルのノーマルスーツの襟首へ指を滑らせ掴み上げる。
ウィル「ああ!そうだ!!そして!!ここで満足して終われ!ラウ・ル・クルーゼェエ!!」
ウィルも負けじと鮮血で染まったクルーゼの襟首を引っ掴んで、互いに握り拳を掲げる。
クルーゼ「君こそ、ここで終わらせてやろう!!私のこの手で!!ウィル・ピラタァアーー!!」
二人の拳が交差し、互いの顔に拳が叩き込まれたタイミング。
キラたちの頭上で、その鈍い音を打ち消すほどの轟音が轟いたーーー。 - 50スレ主24/11/23(土) 18:26:02
爆音が響く。
鉄が打たれたように響く。
鉄と錆で覆われていたコロニーが激しく揺さぶられ、茶色い粒子と化した残留物が
辺りに舞い上がり、その上を飛ぶトールの視界を酷く遮っていた。
トール「ムウさん!ウィル!キラ!くっそー!!コロニー内では通信はダメか!」
爆音は壁面内で轟いているが、あきらかにこちらに向かって近づいていていることを、
トールは直感で察知していた。最初はウィルとクルーゼの戦いで破壊された箇所が崩落したかと思ったが、
その破砕音は規則的に響き続け、移動している。 - 51スレ主24/11/24(日) 06:21:20
施設に入ったまま連絡が取れなくなったキラたちに伝えようと、
トールは何度か通信を試みたものの、結果は音信不通。
舞い上がった残留物が、Nジャマーに加えて高精度レーザー通信すら
阻害するチャフのような働きをしてしまっていた。
ただでさえ錆が反響して、コロニー外にいる艦船との通信すらままならないというのにーー。
トール「アークエンジェルにも繋がらない…くぅっ!!」
突如として外壁から走ったビームの閃光を、トールは鋭く機体を旋回させて躱した。
外壁から空気が抜けることによってできた人工的な気流を見極め、宇宙用に調整した
グレーフレームを難なく気流へ乗せて、ふわりとした挙動で機体を操る。
『ほう、今のを避けるか。面白い…行くぞ!』
その無動力で舞い上がったトールのグレーフレームを、突き破った外壁の淵から見上げる機体。
数合わせのための簡易量産型のストライクダガーではなく、ストライクの性能をできる限り維持した
正式型。dice1d3=1 (1) ストライカーパックを取り付けた、黒い105ダガー。
1.二本の斬艦刀を装備した格闘用の
2.二門の大口径ビーム砲を装備した砲撃用の
3.四本の腕を備えた異形の
- 52スレ主24/11/24(日) 13:57:32
トール「ちぃい!!こんなところに!!」
まさかコロニーの外壁部に空いた穴から侵入してくるとはーー!!
トールは装備したビームサーベルにエネルギーを供給しする。
一眼でわかる敵の近接戦闘武装。
ここは閉鎖的なコロニー内部だ。近接戦闘を行う向こうからしたら格好のフィールド。
加えて、こちらがビーム兵器をバカスカ使えばコロニーに深刻な被害を出すことを、トールはよく理解している。
迂闊に攻撃をすれば、施設からまだ出ていていないキラたちが無事で済まない。
そんなトールの心配を汲み取ったのか105ダガーは突入用に使っていたビームライフルを下ろして、
シュベルトゲベールを振りかざしながら突貫していくのだった。 - 53スレ主24/11/25(月) 00:04:08
「艦長!!前方より熱源多数!これはーーモビルスーツです!!」
マリュー「総員、第一戦闘態勢!キラさんたちは?!」
「まだ連絡も…コロニー内の磁気嵐では…!」
観測する微細なデータからでも、コロニー内で何かしらの戦闘が行われているのは明白だった。
微細な振動ではあるが、コロニー内壁から港にまで伝わってくる振動だ。
内部では苛烈な戦闘が継続しているはずだ。
ミリアリア「トール!返事をして!キラ!ウィル!少佐!」
ナタル「呼びかけ続けろ!他部隊は迎撃!パイロットは出撃だ!」
CICの指令座席に座ったナタルも指示を出すと、待機していたアスランが向かってくるダガー隊に向けて発進し、
第三同盟のメンバーも補給を終えた者たちから出撃していくのが見える。
ジャック『ラミアス艦長、ここはグレートフォックスが引き受けます』
マリュー「頼みます!」
出撃していく勇士部隊の前方。ドミニオンの後方から増援らしき艦隊が迫りつつある。
アルマ「クララ!艦隊を頼む!」
クララ「了解!」
数で不利な以上、母艦に損害を与えて撤退してもらうのが最善だ。
クララは変形し、単身で増援艦隊に向かって行った - 54二次元好きの匿名さん24/11/25(月) 07:45:42
保守