何度も言わせるな 傑が呪霊に負けて非術師になった

  • 1二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 21:20:17

    任務でかなり厄介な呪霊にやられたらしい
    傑の高専入学後の記憶・術式・呪力、一切をその呪霊に奪われたようだ
    今の傑は、中学を卒業しただけの非術師同然だ

    その呪霊を祓おうとすると、奪った傑の術式と呪力を一方的に消費しながら戦ってくるらしくてな
    呪術総監部は、取り急ぎ呪霊の生息地を封印してこの呪霊からは手を引くことにした

    上層部の方々は「高専を中退させて人生をやり直させたらどうか」と言っている
    俺からは反論は難しい情勢だ

  • 2二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 21:30:49

    ある意味傑にはマシな結論なのかな

  • 3二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 21:40:35

    半端な術師を派遣する→負けて色々奪われそう
    五条を派遣する→呪霊ごと奪われたものを消し飛ばしそう

    詰んでるな

  • 4二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 22:06:04

    羂索には狙われなくなる?

  • 5二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 22:06:48

    それこそ別の呪霊操術持ちならなんとかできたかもと思っちゃった

  • 6二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 22:11:19

    >>5

    夏油より強い呪霊操術使いって作中の世界にいるのかな?

  • 7二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 22:13:07

    全員の言ってることが正しくて悲しいな
    やり直させたほうがいい気がする

  • 8二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 22:13:24

    >>6

    夏油ありきだけど羂索…?

  • 9二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 22:17:00

    術式と呪力だけじゃなくて高専3年分の記憶喪失してるのか
    この夏油

  • 10二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 22:26:07

    >>8

    あー

    羂索なら夏油の身体を乗っ取ってなくても呪霊を調伏できそうだね

    夏油の代わりに呪霊操術を使用できるこの呪霊を狙うことになるのかな

  • 11二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 22:34:30

    >>7

    呪力が完全に無くなってるなら呪霊は視認できないし窓もできないもんね

  • 12二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 22:59:41

    夏油(この人は親友だったのか…)

    五条(傑! 俺のことやっぱり忘れているんだな…)

  • 13二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 23:32:36

    五条は呪霊を調伏する系の呪具とか探しまくりそうな気がする

  • 14二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 09:53:35

    >>12

    切ない

  • 15二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 11:02:20

    >>3

    渋谷事変の五条見たらそんな力任せだけの事もしないと思う

  • 16二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 13:00:06

    >>13

    都合のいい呪具があるといいね

  • 17二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 13:03:04

    呪力を一切……呪力0?

  • 18二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 13:05:48

    >>17

    たぶんそう

  • 19二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 13:07:37

    でも天与呪縛による呪力0ではない上に呪術師のこと忘れてるわけだから特に呪力0で役立つこともなさそう

  • 20二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 13:14:21

    記憶も持って行って貰えて本当に良かったな

  • 21二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 13:17:51

    中卒までの呪霊が見えていた・術式を使えてた記憶はあるのかな

    高専にスカウトされた記憶とか


    >>1の書き方が微妙だけど

  • 22二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 13:23:29

    >>21

    それもないとほぼ全記憶喪失じゃないかと思うがどうなんだろう

    別作品で幼少より魔法使いの人から魔法に関する記憶を奪ったら自分が誰かも忘れてしまったみたいなのあったんだよね


    記憶あったらあったで見えてた化け物と使えてた力はどこに…って結局なるし

  • 23二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 13:49:59

    中学3年で進路をまだ決めていなかった時期に、呪術高専東京校の補助監督を名乗る人物が私を訪ねてきたんです
    呪霊のこと、術式のこと、呪術高専という組織のこと、……自分の力がかなり珍しいものだと明言されて、すぐに入学を決めました

    高専に入学する前の日、ワクワクしながら家で最後の晩を過ごしたんです
    どんな人と一緒になるのか、どんな任務を経験するのか、入学しないと全く分からないでしょう?


    …………。
    寝て目が覚めたら医務室のベッドの上で、身体も大きくなっていて、……どうやら2年5か月分の記憶が無くなっているらしくって、視える「眼」も「力」も完全に無くなっていて。

    結局はその任務で、良い思い出も、そうでない思い出も、丸ごと根こそぎ持っていかれてしまったんですね?
    周りの人は覚えている事だけど、私だけが全部忘れている。私だけが。
    そういうこと、……なんですね?

  • 24二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 14:52:13

    >>23

    悲しいけど納得して中退できるね

  • 25二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 15:01:06

    アニオリ太郎かな

  • 26二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 15:07:00

    >>25

    アニオリ太郎は記憶は奪えなかった気がするが

  • 27二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 15:08:13

    しっかり読んだらアニオリ太郎の術式より優秀だ

  • 28二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 18:33:25

    まあまだ若いし呪術と関係ない場所でやり直させようという意見は間違っちゃいないんだが

  • 29二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 18:36:23

    アニオリ太郎で毎回笑っちゃって駄目

  • 30二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 18:52:20

    「お前、傑の即時中退措置に納得していないと聞いたが……」

    夜蛾の質問に悟はうなづいた

    「傑を辞めさせるにしてもできるだけ引き延ばしてぇんだよ 俺がまだ呑み込めてねぇんだ」

    「そうか だがいつまでも傑を高専に置いておくわけにはいかないぞ」

    「……分かってる いつか区切りをつけねえといけねえってのは」

    悟がごねたのもあって「即」退学という決定にはならなかった
    3年生の夏での転校処分は本人も困るだろう(一般の高校では卒業間近の時期だから)とかいう大義名分が付いて、年度末までは傑の在学を認めるということになった

    傑の高専入学後に身に着けた知識は、一般の学業知識も含めてその全てが失われている
    これまで受けてきた約2年半分の一般科目を、年度末までの残りの時期で詰め込み取り戻すという特別カリキュラムの上で、傑は3年生修了と同時に高専を中退することになったのだった


    これまでの特級術師の活躍に報いるという意味では妥当だと思われた
    夏油傑という青年は、一般社会の学生と全く同じ進学ルートに戻ることになるのだ

  • 31二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 18:55:50

    >>27

    こんなところでまで負ける太郎好き

  • 32二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 19:02:02

    朧絶って打ち込むのもめんどくさいから・・・w

  • 33二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 19:22:53

    >>30

    時期的に区切りいいし妥当な措置なのか?

    時間を置けば五条も納得はできるだろうし

  • 34二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 19:37:19

    >>20

    記憶そのままだったら思い詰めて自殺してそうだもんな

  • 35二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 20:00:03

    特に今の夏油みたいな非術師の負の感情から呪霊が生まれることを忘れちゃってよかったね

  • 36二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 21:01:02

    必死に呪霊を降伏させるための呪具を探して探して何とか見つけ出して現場にやって来た五条

    先に術式目当ての羂索に呪霊を横取りされていたら余計にお労しい

  • 37二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 21:25:14

    このレスは削除されています

  • 38二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 22:57:30

    >>7

    上層部が腐ってようがなかろうが呪術界ではこの夏油は役立たずだもんな…

  • 39二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 23:08:08

    窓未満じゃん……

  • 40二次元好きの匿名さん25/01/08(水) 10:59:11

    五条が兄貴面で呪術界の事を教える…必要もないな
    夏油は非術師だもん

  • 411/225/01/08(水) 14:57:05

    一般家庭出身の傑は、高専入学まで他の術師との接点がなかった
    入学後に学んだ常識も呪霊に奪われてしまっているので、そのような知識等は何もかも改めて教わらなければ分からない

    一般科目を再教授している補助監督だか窓だかに「非術師になったのならば前線の術師を敬意を払うべし」とかいう考え方を教わったらしい
    悟にも硝子にも、さん付け・ですます調で会話するようになりかかったけれど、とりあえず悟も硝子もそれだけは止めさせた
    敬意を払うのはまあ分かるが、同期2人に対してそうなるのは何か、……違う気がした

    当然、後輩達との出会いやふれあいや、最近発生した灰原の殉職についても、その記憶が一切失われている
    このことは特に七海の精神を抉ったようで、七海の方も高専を3年修了で中退する決意を固めたらしかった

  • 422/225/01/08(水) 14:59:16

    悟が最強であるという常識も、当然、傑の中から奪われてしまっている

    「俺の強さ見せてやるよ」
    「え?」

    カリキュラムは別物でも、夜蛾の配慮で昼食の時間は努めて同じになるよう配慮されていた
    食後の一時、悟は思いついたように傑の手を取った

    傑を背負って転移した先は、埼玉の鉱山、高専の第四修練場になっている場所
    無下限の力で宙に浮いているという事実に、おんぶされた姿勢の傑は軽く驚嘆の声を出す
    傑を負ったまま悟は掌印を組んだ
    術式の順転と反転、それぞれの無限を衝突させることで仮想の質量を押し出す五条家の秘伝、――虚式”茈”

    非術師に呪力は視えずとも、呪力による破壊のかたちそのものは視認可能だ
    修練場の石山ひとつ綺麗に吹っ飛ばした力に、傑は、悟の背中で、更に呆けたような讃えるような声を上げた

    「すごい……」
    「……すごかったのは俺だけじゃなくお前もだったさ」

    悟は本心から言葉を続けた

    「お前は俺の横に並び立つ奴だった 間違いなくそういう術師だったんだ
     お前は力も記憶も奪われたけれど ……お前以外は きっと ……ずっと覚えてる」

    ――少なくとも、俺は、絶対、隣に立っていた時期のお前のことを忘れない

  • 43二次元好きの匿名さん25/01/08(水) 16:35:58

    死んだり離反したりするよりマシっちゃマシだけどこれはこれでキツい

  • 44二次元好きの匿名さん25/01/08(水) 21:10:42

    記憶はまだしも、術式と呪力を奪う呪霊とかどの術師にとっても恐怖でしかないわなー…

  • 45二次元好きの匿名さん25/01/08(水) 21:21:41

    記憶もやだよ……

  • 46二次元好きの匿名さん25/01/08(水) 21:40:31

    傑が抱えていた悩みとか気づかないままだろうし、悟にとって永遠に「2人で最強だった術師」なんだろうなあ

  • 47二次元好きの匿名さん25/01/08(水) 21:43:48

    本編とはちょっと違う色合いの青が棲んでますね…

  • 48二次元好きの匿名さん25/01/09(木) 00:57:22

    夏油の中にはあるかなあ

  • 49二次元好きの匿名さん25/01/09(木) 10:48:56

    >>48

    なんでそんな非道いこと言うんだ……

  • 50二次元好きの匿名さん25/01/09(木) 13:29:28

    問題の呪霊を降伏して「奪ったものを全て元に戻せ」と命令すれば事態は解決するのではないか
    悟はすぐにそう思いついたが、残念ながら悟本人の術式には呪霊を降伏させる機能は無い
    とすると、呪霊を降伏させるための呪具に頼るしかない、という発想に至る
    しかしその呪具探しは、呪術総監部だけではなく五条家からも高専からも反対された

    悟が術師の中で最強の実力者なのは誰も否定しないが、問題の呪霊を圧倒できるのかどうかはまた別の話だ
    万が一のことがあって悟の術式や呪力が奪われた場合、誰も手が出せない呪霊が爆誕してしまう恐れがある
    誰にとっても喜ばしくない事態を恐れる限り、呪具探しに大反対の声が上がるのも仕方がない話だった
    それでも、種々の妨害と説得に折れることなく、悟は「自分がそうしたかった」から呪具を探した

    何とかして狙い通りの呪具を探し出して、いざ呪霊の封印地に向かうとき
    その段階で、説得を諦めた夜蛾が「せめて俺も連れていけ」と言い出したのだった
    「戦いの結果を見届けてすぐに報告する必要があるから」という言葉には悟は従って、2人連れで呪霊が封印された場所に赴いたのだった

    そこで悟と夜蛾は見た
    覚えのない残穢が封印を破り問題の土地に入ったらしい痕跡
    問題の呪霊が綺麗さっぱり居なくなった土地

    呪術総監部の把握していない呪術師だか呪詛師だかが2人よりも先に侵入し、呪霊を「何とかした」としか判断できなかった
    これはこれでかなり波紋を生じたが、どこの誰が何をどうしたのか不明瞭なまま、この事態はこのまま幕を下ろすしかないという結論「しか」生まれない
    どうしようもないモヤモヤを抱えて、悟は、結局は3年修了で高専を中退していく親友を見送るしかない事態となる


    呪霊を「何とかした」存在が明らかになるのは、それから何年も経ってからのことだ
    呪霊操術目当ての羂索が、悟達よりも先に呪霊を降伏させていた、……要は、そういうことだった

  • 51二次元好きの匿名さん25/01/09(木) 13:35:43

    こんなに嬉しくない「そういうことか!」があっていいのだろうか

  • 52二次元好きの匿名さん25/01/09(木) 14:20:28

    五条も夜蛾も報告受けた上層部も「!?」としか言えないやつだな

    でも羂索なら間違いなくこう動く(断言)

  • 53二次元好きの匿名さん25/01/09(木) 17:35:32

    あ、これもしかして高専中退後に夏油死んでる…?
    獄門疆に五条を封印するため

  • 54二次元好きの匿名さん25/01/09(木) 20:13:48

    >>53

    羂索がそれで五条のメンタルに攻撃できそうって思ったらそうなるかもね

    原作では五条自身が殺したはずの相手が生きてるっていう衝撃もあったけど、この世界線ではどうだろう

  • 55二次元好きの匿名さん25/01/09(木) 20:21:14

    てか普通に祓えば良くない?
    少なくとも大人五条ならそう決断すると思うな

  • 56二次元好きの匿名さん25/01/09(木) 20:22:27

    >>55

    それはこの世界線で夏油の遺体を乗っ取った羂索に対して?

    夏油の術式を奪った呪霊に対して?

  • 57二次元好きの匿名さん25/01/09(木) 22:21:01

    天与呪縛ではないとはいえ完全に呪力0ってことは、この夏油の状態って九十九さん的には興味深かったりするのかな?
    呪霊の仕業だってはっきりしてるからそうでもないのかな

  • 58二次元好きの匿名さん25/01/09(木) 22:25:14

    後天的に完全呪力0にする方法があるってわかっただけでも結構な収穫かもしれない

  • 59二次元好きの匿名さん25/01/09(木) 22:26:26

    >>58

    > 今の傑は、中学を卒業しただけの非術師同然だ

    非術師同然らしいからフィジギフ並みの完全0ではないんじゃない?

  • 60二次元好きの匿名さん25/01/09(木) 22:29:52

    何のメリットもない完全呪力0でも不思議じゃない気がするけどね

  • 61二次元好きの匿名さん25/01/10(金) 10:21:04

    非術師の定義って呪力を扱えるか扱えないかでいいんだっけ…?フィジギフって非術師なんだっけ?うろ覚えだ
    呪力の一切がどの程度なのか、この夏油から呪霊は生まれるのか否か、なんか気になってきた

  • 62二次元好きの匿名さん25/01/10(金) 10:36:06

    非術師から呪霊が生まれるのは呪力をコントロールできないからだしこの夏油が脳の構造まで変えられてなきゃ非術師並には呪力が残ってたとしても呪霊は生まれないんじゃないかな
    なんなら呪霊が見える力は残っててもおかしくなさそう

  • 63二次元好きの匿名さん25/01/10(金) 14:50:43

    呪具探しに反対していた上層部の中に羂索の手下がいたんだろうな
    羂索が呪霊をゲットするまでの時間稼ぎのために五条を妨害していそう

  • 64二次元好きの匿名さん25/01/10(金) 20:54:26

    九十九さんが関わったら面白い事にならないかなあ
    夏油は九十九さんが研究している内容と目的を聞いたら協力を拒みはしないだろうし意外と元の夏油が望む世界に近づくハッピールートである可能性

    夏油の記憶・術式・呪力を持った呪霊を手に入れた羂索のことは五条や夜蛾センに頑張ってもろて……
    まあこの羂索に特級ゴリラボディはないからきっとなんとかなるさ!多分!!

  • 651/225/01/10(金) 21:07:51

    「今のきみにとっては『はじめまして』かな夏油くん 今のきみはどんな女がタイプかい?」
    「……どちら様ですか?」

    食堂で悟と昼食を摂っている時に、その女性術師は不意に来た

    「特級術師九十九由基 ……きみが記憶を失う前に一度会っていた人間さ」
    「今の傑に何の用だよアンタ」

    悟の目線はどこか冷ややかな節があった
    『任務をまともに受けないロクデナシ』という評判が影響したらしい……と、傑は後で思い至るのだけど

    「今のきみの状況を伺ってね? 今のきみの身体を調べさせてくれないかなあって」「帰れよアンタ」

    食い気味に言ったのは悟だ、断じて傑ではなく

    「えーっと ……学長に相談させてください 九十九術師」

    この時点でもう、悟も唯我独尊な性格も、学長が常識人であることも把握はできていたから、傑はそう答えた


    相談を受けた学長も、九十九の普段の任務の受け方に思うところあったのか、積極的に協力させるというわけではなかった
    とはいえ『特級術師の依頼を断る』という面で生じる傑への影響を心配したのもあったのか、全面NGという結論にもならない
    ……何しろ、傑が今高専に在学してる事実にさえ、陰口叩いている奴がいなくもない情勢だったから

    傑が何もかも無くした時、通り一遍の検査は行っていたが、その検査データの提供に加えて、一般的な体力テストの実施(ただし学長立ち会い必須)という結論に落ち着いた
    まあ至極穏当だろう

  • 662/225/01/10(金) 21:09:21

    体力テストを終えたとき、九十九は実に不思議そうに語った

    「不思議なことだね 術式・呪力・呪霊を見える眼さえ奪い取る呪霊だったということか
     ……天与呪縛で呪力ゼロになるパターンはあるけれど 今のきみは同じように完全に呪力ゼロになってる」
    「……テンヨ、……?」
    「ああごめん 生まれながらに魂に『縛り』がある状況のヒトのことさ
     そういうヒトの中には 呪力が無い代償として超人的な体力を持つパターンがあるんだけどね でも君はそれとも違う
     君はその呪霊に奪われただけで何も得てはいない 身体が特に丈夫になった訳でもなくって ただ持っていたものを無くしただけだ ……残念ながら」

    椅子に座った特級の女術師は、心から案じるように傑を見つめて続ける

    「でもね 気をつけなければいけないよ
     いっとき『呪霊操術の術師』を生んだ血筋だけは今もきみの身体に残ってる とも解釈はできるからね ……その呪霊に血筋まで奪われたとも解釈できるけど
     ……特に破れかぶれになった没落家系辺り きみの親やきみ自身に対して 半分博打で血筋目当ての縁談とか考えてハメてくるかもしれない」
    「えー……」
    「そんなこと俺がさせねーよ」

    いつの間にか傑の椅子の後ろに立っていた悟がそう言った

    「そうか ……夏油君は無くしているとしても 五条君にとっては守る価値のある高専生活だったということかな?」

    九十九は得心したように言い、悟ははっきりとうなづいた


    この頃、傑の高専中退後の進路として「予備校生になる」ことがほぼ固まり切っていた
    大学に進学するにしてもどこに進学するか決めきれず、そもそも再教授の授業では受験に必要な程度の学力までは伸ばしきれなかったから

    来春から予備校に通いながらアルバイトをする、呪術界が関わるのはアルバイト先の紹介まで
    その後、夏油傑がアルバイターになろうが大学生になろうが呪術界はノータッチ、というのが確定しかかっていたのだけど
    ――これからずっと、五条家の権力に陰ながら守られて生きるのかもしれないな、……と、漠然と傑は思ったのだった

  • 67二次元好きの匿名さん25/01/10(金) 21:09:53

    このレスは削除されています

  • 68二次元好きの匿名さん25/01/10(金) 21:28:56

    ※スレ主より

     ここまで当スレに投下されたSSは、全てスレ主による同一世界線のものと明言させて頂きます

     >>1の記述に沿う限り、別設定・別世界線でのSSは歓迎いたします

  • 69二次元好きの匿名さん25/01/11(土) 01:05:38

    窓未満じゃんマジで(絶望)

  • 70二次元好きの匿名さん25/01/11(土) 09:31:25

    ちゃんと予備校生やれるのか?
    なんだかんだ呪術界の陰謀とかに巻き込まれそうな気がする
    夏油は五条の弱味になりそうだもん

  • 71二次元好きの匿名さん25/01/11(土) 12:54:39

    非術師と最強術師のバディものもないことはなさそうだけれどなんか舞台が不穏過ぎるんだよなあ

  • 72二次元好きの匿名さん25/01/11(土) 13:19:47

    精神年齢も中3に戻っちゃったんだよな……
    と思ったけど五条もクソガキっぽいしそこは大丈夫か

  • 73二次元好きの匿名さん25/01/11(土) 19:52:55

    このレスは削除されています

  • 741/225/01/11(土) 19:53:37

    才能が8割を占める呪術の世界では、たった一人の最強を除く全術師が「才能ある若手に追い抜かれる」ことを経験している
    構造的に必然の、しかし表立っては語り難い「才能ある若手への潜在的な恐怖」
    ……その呪霊はそうした感情から生まれた
    ただし非術師の感情ではなく、術師の感情から


    「彼」は老齢の式神使いだった、業界の重鎮だった、総監部の人間だった、夏油傑という青年が台頭する前までは「式神系の術師の中では最強」だと言われていた
    そんな、術師家系生まれの式神使いだった

    夏油が高専に入学して名を馳せる頃、まだ才能ある若手を笑って眺める余裕はあった
    自分がかつて積み重ねてきた苦労を彼も同様に重ね、一級術師として名を売っていくのだろうと思えた
    一般家庭出身と術師家系の違いとか、付き合い方とか、摩擦とか、死ぬかもしれない苦労を重ねながら識っていくのだろうと考えた

    夏油が何の苦労もなく「五条家の若」と親友になり、一級ではなく特級の術師になり、そして老齢の「彼」が病気で余命宣告を受けて
    ……それでついに余裕が無くなった

    術師家系として「五条の若」に追い抜かれるのはまだ我慢できた
    ただ、一般家系出身の「夏油傑」に追い抜かれるのは我慢ならなかった
    「最強の式神使い」と言われるのは自分でいてほしかった、……寿命が尽きる寸前になって、その評判に執着していた自分自身を自覚した

    寿命が僅かだったからタガが外れたのかもしれない
    自身の呪力と引き換えに、呪霊を生み出す禁忌の術に手を出した
    「彼」にとって呪術界は全てだったから、「呪術界から居場所を無くす」その目的一点の呪霊が産まれた

    夏油そっくりの姿をした、術式を奪い・呪力を奪い・呪霊を視える眼さえ奪う、そんな呪霊

  • 752/225/01/11(土) 19:55:00

    特級術師 夏油傑が、地図に載ってさえないようなド田舎の村に行く途中での任務のこと

    「それ」は密かに悩みを抱える傑には一瞬自分自身の幻覚に見えたろう
    けしかけられた呪霊は傑を包んで一瞬で領域を展開した

    呪霊は殺さなかった、夏油傑は殺されなかった
    生きたまま「呪術界からの居場所を無くすこと」を主目的にした呪霊であったから、殺されなかったのは道理である
    補助監督は早期に襲撃に気付いた、特異すぎる呪霊の性質を推測するのも早かった

    ただの「術式を奪う呪霊」だと思われたから、総監部はその性能を恐れた
    「現場から動かさないこと」を主目的にした強力な封印が早急に施された
    羂索の手が入った者もそうでない者も、その方向で封印を施すことに賛同した、……「夏油傑の呪力の才を奪う呪霊」だと誰も気づくことなく


    そこまで見届けて老齢の式神使いは死んだ
    夏油の中退措置が遡上に上がった頃だったから、そこそこ満足して死んでいった
    余命宣告を受けて死病で死んでいく老人が、死の直前に急激に呪力を失った、――誰だって「ただ寿命でそうなった」と思ったような、そんな死に方だった

  • 76二次元好きの匿名さん25/01/11(土) 20:35:42

    ※スレ主より
     ストーリー未定の状態でSS投下を行っております
     皆様のレスから大いにインスピレーションを頂いて書き進めております
     ありがとうございます&今後も何卒よろしくお願いします

  • 77二次元好きの匿名さん25/01/11(土) 22:41:47

    この世界の羂索って香織さんの体に後付けで呪霊操術を付与した状態なのか?
    だとしたら香織さんの更に前の体の術式も使えるのか

  • 78二次元好きの匿名さん25/01/11(土) 22:44:36

    この呪霊を退治したのが仮に『報酬とか関係なく危険な呪霊を退治するぜ!』っていう一般善人寄り術式使いだったとしても五条とか納得できなさそう。

  • 79二次元好きの匿名さん25/01/11(土) 23:01:54

    旧■■村の任務には行ってないんだよね
    書き方的に夏油が村に行く直前の別任務でやられた?

    ミミナナはどうなったんだろう

  • 80二次元好きの匿名さん25/01/12(日) 10:53:06

    保守

  • 81二次元好きの匿名さん25/01/12(日) 10:57:49

    ミミナナ前に事件が起きたのは不幸中の幸い
    ミミナナは他の術師が任務に行って助けたと思いたい

  • 82二次元好きの匿名さん25/01/12(日) 16:15:48

    このレスは削除されています

  • 83二次元好きの匿名さん25/01/12(日) 19:40:31

    年度いっぱいで辞めるってわかってるからこの程度ですんでた感
    もっと在学させたら余計にヘイトかってたんかなー…

  • 84二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 01:39:45

    このレスは削除されています

  • 85二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 13:34:12

    保守

  • 86二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 13:56:44

    ※スレ主より

     自宅環境のホスト規制が解除されました

     今から昨日1月12日更新分のSSを再掲→本日分のSS掲載の流れで投下させて頂きます

     公衆Wifiからの書き込みは急に消えることがありますので、念のためです

     ご承知おきください


     >>82に載せたWriteningのページそのものは残しておきますね

     今後またホスト規制が起きた時には、必要に応じてこのページに掲載するつもりです

  • 871月12日掲載分再掲 1/225/01/13(月) 13:57:31

    九十九はおそらくただの雑談のつもりで傑達に言った

    「実は私もね 問題の呪霊に興味があったんだ 従属させる系統の呪具とか探してた
     ……あぁ もしも見つけたら五条くんに相談するつもりだったよ?
     きみが同じような呪具を探し回ってたのも知ってたからね 『呪霊を横取りした・された』で揉めたくはなかったさ」
    「へぇー」

    傑の後ろから、悟が半ば信じていないような声を向ける

    「いったい誰だったんだろうね? 現地の封印を解いたのは
     言っておくけどね 私じゃないし心当たりはないよ 現地で残穢は確認したけど見たことないものだ 『縛り』を結んで明言したっていい
     私だって高専OBだし 呪力の残穢自体は呪術総監部に登録されてるんだ 私が横取りしたらすぐにバレてるよ」

    これまでのやり取りを黙って聞いていた夜蛾が、口を開いた

    「呪術総監部が未把握の残穢だった 術師家系の術師・高専所属の術師・フリーの術師・呪霊・呪詛師 ……把握済のどれとも違う全くの『未知』 それが今のところの結論だな
     内部的にはかなり騒動になってるぞ 傑が及ばなかった呪霊を『何とかした』実力者かもしれんが 一切の正体が不明なのだからな
     はっきり言って 俺も何が何だか分からんのだ」

    「そっか それはそれで謎を生むし陰口も叩かれそうだね 今のきみは大丈夫かな? 夏油くん」
    「え?」

    「『滅茶苦茶強い呪霊に不運にも遭遇してやられた』とは解釈できるけれどもね ……でも どんな物事だってそうだけど 極限まで悪く捉えればいくらでも悪いようには言えてしまうんだよ
     『大して強くない呪霊に油断してやられたんじゃないか』とか 『そもそも呪霊よりも強くなかった術師が悪い』とか
     とはいえ 底意地の悪い相手に沿って わざわざ折れてやる義務はないよね?
     過去に起きてしまったことを きみがどう捉えるか これからきみ自身が決めることなんだよ 気をつけて」

    夜蛾と悟の両方とも、多少しかめっ面をしたが反論はしなかった
    2人にとって九十九の言はリアリティのあるものだったらしい

  • 881月12日掲載分再掲 2/225/01/13(月) 13:58:11

    傑に一般科目を再教授している面子は補助監督か窓のどちらかだが、彼等にしても色々な性格の人がいる

    特に『呪霊が現地から消えた』ことが周知されて以来、態度が多少おざなりになった者もいた
    『仕事だから仕方なくやってるけれど、本当は非術師相手のマンツーマン授業なんて本業じゃねえ』と口や態度に出るタイプだ
    ……仕事で授業をやってくれるだけでもありがたいことだから、傑は表向き感謝して内心受け流しつつ真面目に年度末まで過ごすことに決めている
    こういう性格の人達に反発してもどうしようもないということを、約15年の人生経験から察していた

    多少冷めた視線で物事を評する人もいた

    「呪術界って『恵まれた術式』の『戦闘狂』の『男』が一番生きやすいようにできているんです
     『強い者の発言権は強い』みたいな世界ですからね 五条術師が望んだから 貴方は親友として振る舞うことが許されてるし望まれてる そのことを忘れちゃだめですよ
     今じゃ分からないでしょうが 貴方達が築き上げた大体2年半は 貴方にとっては覚えのない人望の貯金みたいなもんでしょう そこであぐらをかけば一瞬でなくなりますからね?」

    『強い者の発言権は強い』ということが真実ならば、反面として『弱い者の発言権は弱い』のも真実に違いない
    ましてや今の傑は弱いどころではなく完全な無力だ


    『呪霊よりも強くなかった夏油が悪い』

    九十九が挙げた陰口の例だが、その言葉は傑の心を害することなく綺麗にハマった
    強さが物差しになっている業界で、呪霊より弱かったから無力になって業界を出るしかなくなる
    シンプルで分かりやすい結論に違いない

  • 89二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 13:58:50

    『呪術師の術式を奪う呪霊』と聞いた時、活動歴の長い術師は朧絶(ろうぜつ)という特級呪霊を連想する
    過去に九州地方で甚大な被害を出した厄介な奴で、何人もの術師を犠牲にしつつ何とか祓われた、……ことになっていた特級呪霊である

    老いた式神使いが呪霊を生み出すに当たって、過去の朧絶の一件を参考にした面はある
    ただし『夏油傑を呪術界から追い出すこと』を主な目的にした呪霊だから、全く同じ朧絶という呪霊を創り出す意図もなかった

    『夏油が呪術界に属する根拠を奪うこと』と『奪ったものを消費すること』が、その呪霊の術式の本質だった
    一般的に呪霊は負の感情から産まれて負の感情を吸収することで強力になるが、この呪霊に限っては『夏油から奪ったもの』以上には強くはならない
    また、術師を攻撃することは可能だが、術師を殺すことに関しては縛りで封じられていた、……非術師は遠慮なく殺せる呪霊ではあったけれど

    式神使いの思惑は、以下のようなものだった
    1.呪霊が、夏油の高専入学後の記憶・呪力・術式・呪霊を視える眼を奪う
    2.呪霊が、奪った力を消費しながら大暴れする
    3.他の術師は、夏油そのものの呪力と術式に大いに手を焼く
    4.呪霊が奪った力を消費し尽くして消滅する、もしくは五条に吹き飛ばされる形で祓われる
    5.ただの非術師になった夏油が残される

    しかし思惑は早々に外れる
    まず、朧絶の前例から、他の術師の被害を恐れた呪術総監部が本格的に対処し、迅速に呪霊の居る土地に封印を施したこと
    次いで、呪霊操術目当ての羂索が、五条達よりも前に呪霊を降伏させたこと、……結局、呪霊はロクに力を振るえないままに訳も分からず降伏されたのだ


    呪霊にははっきりした自我があり、生みの親の存在も自らの存在意義も明瞭に自覚していた
    羂索は呪霊から誕生経緯を聞き取って涙が出るほど大爆笑するのだが、そのことは些末な事実だろう

    朧絶は『術師が命を落としたとき、その術師から奪った術式が使えなくなる』呪霊であったが、派生したこの呪霊は『夏油が命を落としたとき、存在ごと消失する』呪霊でもあった

    「そういう性質なんだね、君」

    夏油そっくりの呪霊の傍らで、羂索は、……額に縫い目のある女は、ニヤニヤしながら策謀を巡らせるのだった

  • 90二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 14:04:25

    夏油乗っ取っても呪霊操術は使えないし殺したらこの呪霊が消えるって考えると羂索的にはなるべく夏油に生きててもらったほうが良くなるのか
    だからって守ったりもしないだろうけど

  • 91二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 15:38:54

    >>90

    メロンパン入り夏油の形での乗っ取りは無くなったね

  • 92二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 15:45:00

    でも呪霊躁術自体は結構いるみたいだし、それらをストックして情報だけその呪霊から回収して夏油の肉体奪って、
    『悟!行方不明になってしまってすまない。少し怪我をしたけど術式を取り戻したんだ』
    とか言って不意打ちする方向もありでは?

  • 93二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 15:47:22

    >>92

    えげつないけど羂索ならやりそう

  • 94二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 21:05:21

    夏油への負の感情から生まれた夏油の力を奪う呪霊か
    夏油特攻でめちゃ強だったりしたのかな

  • 95二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 07:38:19

    ⭐︎

  • 961/225/01/14(火) 13:17:34

    年度末まであと数日くらいになっていた日の、昼食時のこと

    「お前が中退した後 お前を何とかしようと近付いてくるヤツ出るかもしれねぇと思うんだよね
     『術式を復活させるすべに心当たりがある』とか 『ウチの家の再興のために婿入りしないのは失礼だ』とか ……その手の怪しいのとかおかしいのとか
     そういう時は『呪術関係の事柄は五条悟に一任してます そっちに話し通して下さい』って言って良いからな?
     ……それでも話を聞かないやつなら俺の携帯にすぐ電話してくれ 俺が何とかする」

    「そんなこと ……私が言っていいのかい? ……悟」

    「ああ」

    強い者の発言権は強い、とすると強い者の厚意が強いのもまた必然のことか

    「ありがとう ……一方的に守られるだけの私からは何もできることはないのに」

    「俺がそうしたいんだ だからそういうピンチの時はそう言ってくれ」


    このやり取りは、人目につく食堂でのやり取りであることに意味があった
    『これからも、夏油傑にちょっかいを掛けると五条悟に睨まれる』、呪術界で情報は急速に広まった

  • 972/225/01/14(火) 13:19:22

    学長室で、傑は高専3年の修了証を受け取った
    呪術高専は表向き宗教系の私立高校ということになっているから、その校名での卒業証書も

    形式ばった式典でもないささやかなものだ
    元より卒業式を派手に開くわけでもない学校であったし

    「9月からよく分からず戸惑うこともあったろう そう大した力にもなれず申し訳ない
     俺達の手で事態が早期に解決できていたなら 失ったものを取り戻せたなら こんな辞め方にはならなかっただろうからな」
    「いえ 仕方がないことですし ……学長にはずっと良くして頂きましたから」

    取り繕った訳でもない本音だった
    何もかも無くした非術師相手としては精一杯のフォローを向けられてきたのだと思う、受けてきた待遇に反発心はない

    ただ学長室で2人きり、この機会でしか聞けないことがあった
    たぶん授業を再教授してきた面々には質問するべきでない、と、傑が直感的に感じた事柄

    「夜蛾学長 1つだけ質問よろしいでしょうか」
    「?」
    「非術師と特級術師の間に 対等な友情はこれからも成り立つでしょうか? 学長はどう思われますか?」

    学長は少しだけ考え込んで言った

    「……お互いの感性が それが無理のない関係だと感じ続けられるなら そう思える間は続くのではないだろうか
     高専に入った時の悟はな 無意識だろうが 家柄も実力も関係なく向かい合える相手に飢えていた
     これからも そんな関係が自然と無理なく続けられるなら ……きっと友情として続くんだろうと俺は思うぞ」

  • 98二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 21:39:04

    さすがに夜蛾は無条件で成り立つとは言わんか

  • 99二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 09:07:40

  • 1001/225/01/15(水) 13:01:30

    高専から紹介されたアルバイト先は、ビジネス街ど真ん中の飲食店だった
    傑が通う予備校から近いことを重視したらそうなったと聞いていた

    傑は、普段の仕事で疲れ切っている客をしょっちゅう見た
    そうした客を癒してみたい・支えてみたいという願望が生まれた、マッサージ的な何かで癒している自分の姿を想像した

    予備校に通いつつ色々調べてから、翌春、理学療法の学科への進学を選んだ
    大学で順当に資格を取って、順当に就職した
    就職先はスポーツジム、理学療法士の進路としてはマイナーだが、なくはない就職先だ


    悟との付き合いは続いていた
    年に1・2回一緒に食事するような関係性で、友情は続いていた


    就職先を決める時期に悟から言われたことがある

    「理学療法士として俺のお抱えにならねえか? それなりの待遇で雇えるぞ」

    「……ありがたいけど気持ちだけ頂いておくよ、悟
     そこまでお膳立てされたら、親友じゃなくて従者だと思うんだ」

    悟は一瞬ポカンとしてから笑った、実に嬉しそうな笑顔だった

    「そっか、……そうだな」

  • 1012/225/01/15(水) 13:03:33

    悟の方も自らの意思で進路を歩んでいた

    傑の一件から、自分が強いだけでは叶わないものがあることを学んだ
    また、謎の残穢の正体を追うに当たって、立場や役職が多いに越したことはないという思考もあった
    だから『五条家当主』と『高専教師』の二足の草鞋を履くことにした


    「毎年恒例ー!! GLG(グッドルッキングガイ)五条先生の特別授業だよー!!
     テンション上げてこー!! みんなー」

    姉妹校交流会は、各校の1年生まで招いて開催される催しに変わった
    2・3年生が団体戦前のミーティングを行っている時、1年生は悟から姉妹校合同での授業を受けることになる

    その年、1年生は各校3名いた
    京都は新田新・枷場美々子・枷場菜々子、東京は虎杖悠仁・釘崎野薔薇、伏黒恵
    比較的ノリのいい新田と虎杖がパチパチと拍手して、他の面々はしれっとした顔をしている
    ……生徒によって性格は色々だと悟はつくづく思う、苦笑して小箱を掲げる

    「みんな これ見てねー 壊れた封印だね 残穢がついてるのが分かるかな?
     これは『残穢を固定化する術式』で劣化を防止してるけど 実は僕が高専3年の頃 つまり10年くらい前の残穢です」

    毎年、毎年、この合同授業で五条悟は語るのだ
    特級術師『だった』夏油傑という同期のこと、彼の力を奪った厄介な呪霊のこと、封印を破ってその呪霊を何とかしたらしい『何者か』のこと、夜蛾と自分が残穢『だけ』を発見したこと
    夏油は非術師として進学して職を得ていること

    「……どこの誰が何したんだかマジで未だに謎なんだけどね
     特級呪霊と思われる奴を何とかしたヤローがこの業界のどこかに居る 今でも僕は考えてるよ
     君たちも覚えていてね? もしこの残穢に関わることがあったとしたら 正体はそういう実力者かもしれないって想定しておくんだよ?」

    例年通り、高専の1年生たちは、その残穢をこうした形で覚えることとなる

  • 102二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 13:23:20

    ※スレ主より

     >>101に脱字がありました

     誤:特級呪霊と思われる奴を何とかしたヤローがこの業界のどこかに居る 今でも僕は考えてるよ

     正:特級呪霊と思われる奴を何とかしたヤローがこの業界のどこかに居るって 今でも僕は考えてるよ


     上記以外にもこれまで誤変換や表記ブレが結構あるSSですが、御容赦いただけると幸いです

  • 103策謀(1/8)25/01/15(水) 14:20:35

    FA投下です。最強の式神使いさんに名前つけさせてもらってます。

    鬼道 龍弥は、式神系の術師の中では最強だと言われていた
    そういう家柄の中で、天才と言われ、真っ当に努力を重ねてそこに至った
    総監部でもあった彼は、有望と言われる新たな式神使いの入学を歓迎した

    ある日、仕事を一緒にする事になった
    違う。先達として、一般出身として苦労しているだろう夏油に、アドバイスでもしてやろうと思ってそのように取り計らったのだ

    学校で顔を合わせた男は、学生だから当たり前とはいえ、若かった
    そして、整った顔立ちをしていた

    「初めまして、鬼道特別一級術師」
    「夏油二級術師、今日はよろしくお願いする」
    「よろしく、龍弥さん」

     そこで、鬼道は戸惑いの声を上げた
     この生意気な青年から、さんづけを得るのはとても難しい
     ようやく認められたのは何年前だったか
     彼程の家柄、彼程の実力でなければ許されない暴挙
     鬼道の知る呪術界の小さな王子様は警戒心が強く、なかなか心を許さない
     さん付けを得られても、親しくなれたわけではなく、距離を置かれていたのだが
     
    「五条くんか。 今日はどうしたんだい?」

     五条は夏油に抱きつき主張した

    「俺も! 行くから!!」

     随分と懐かれたものだ。自分ですら五条の関心を買うことは難しいのに

  • 104策謀(2/8)25/01/15(水) 14:21:40

    まるで五条の若君の保護者であるかのように夏油は頭を下げる

    「すみません、悟がわがままを。……ダメですか? 見学させておきますから」
    「今日は夏油君の為に、少しステップアップをと思ったのだが」
    「聞いています。便利な術式の呪霊を探してくださったんですよね。ありがとうございます」
    「そうなの?」
    「一級で少し手強いが、役立つと思ってね」
    「やるじゃん、龍弥さん!」
    「……お褒めに預かり光栄だよ」

     道中、ずっと夏油と五条は2人で話していた
     楽しそうな会話
     まさしく学生。それを微笑ましく見守りつつも、胸がずきんと痛む
     
    ーー鬼道は、学校に通う事を許されなかった。術師の家柄である鬼道には必要ないと。それよりもなすべき義務があるのだと

     キャラキャラと笑う2人に、鬼道の心は何故かもやりとした

     どのみち、この調子では薫陶を与えるなど無理だろう
     ……必要はないのかもしれないな。既に五条家の若と仲がいいようだし
     その辺りは抜かりなくやるのではないか
     ……仮に抜かりなくやれてなくても、いいじゃないか。そんな投げやりの心が、なかったとは言えない

     現場に着くと、あっさりしたものだった

  • 105策謀(3/8)25/01/15(水) 14:23:24

    五条の若が弱らせて、夏油術師が取り込む
     褒めろ褒めろという様は、まるで犬のようで。まるで誰にも懐かぬような、猫のようなお方だと思っていたのだが

     とにかく、自分が夏油術師に言えることは何もなかった。言える隙も、機会も、驚くべき事に、その為に来たのに、自分にはもうその気すらなかった

     それから、一念発起して何度か依頼を共にしたが、その度毎に五条がついてきた
     ようやく、五条がついてこなくなった時。夏油は特級術師となり、自分が教材として見つけてきた呪霊を戦闘すらなく取り込んで見せた

     ……もはや、自分が教えられる事など何もなかった。教えてやる気も失せていた
     
     忙しいから。仕方ないから。自分に言い訳しながら、こっそり増やした危険な依頼を、夏油特級術師はそれと気づかず全て傷ひとつつかずにこなして見せた

  • 106策謀(4/8)25/01/15(水) 14:24:26

    「余命半年、ですか」


     余命宣告。既に老齢だというのに、術師としては呆れるほど長生きしたというのに、これほどまでにショックを受けた自分に驚いた
     1番に思い浮かんだのが、夏油の顔だというのにもだ
     
    自分でも戸惑う程に、夏油への憎しみと羨望が、まるで発掘された温泉か何かのように噴き出してくる。それはあまりにも熱く、昏く、どろりとして、圧倒的だった

    「最強の式神使い」の座は死ぬまで譲りたくない。血反吐を吐くほどに思う

     そうだ
     五条の若に負けるのはまだいい
     だが、一般の、ぽっと出の、なのになんの苦労も知らないような、思い上がった生意気そうな男に負けるのは。今まで好ましく思っていたその秀麗な顔を引っ叩いてやりたいと心から思う。イケメン死すべき。それを理屈でなく魂で理解する

     そうだ
     そうだ
     私は、夏油傑に嫉妬していたのだ

     自覚してからはあっという間だった

     死ぬまでの時間はたったの半年。ならば時間はない、一瞬たりとも無駄にはできない
     
     私の呪力を全て捨てたって、いや、それは困る。だが九割捨ててもいいから、夏油を倒したい。信じろ、私ならできるはずだ

  • 107策謀(5/8)25/01/15(水) 14:25:51

    私は毎日のように資料を漁った

     秀麗な顔。恵まれた体格
     小さい頃に憧れた、キラキラとした学生生活の記憶
     最高に素晴らしい術式
     莫大な呪力
     呪霊を見える眼さえ
     呪力に関わる全てを。全てを、夏油から奪いたかった。いや違う

     夏油には、自分の世界そのものである呪術界とは一切関わりを経って欲しかったのだ
     ここは私の縄張りなのである。ただただどこか別の場所で幸せになってほしい

  • 108策謀(6/8)25/01/15(水) 14:26:57

     そうして、生まれた呪霊は夏油そっくりの顔をしていた

    「良いか、孫よ」
    【孫】

     微妙そうな顔をしている呪霊は、それでも聞く姿勢を見せていた

    「なんとしても夏油から全てを、全てを!!! 奪うのだ!!!」
    【はいはい、わかったよ。私の親……おじいちゃんはあなただからね】

     実際、呪霊の胸には激しい渇望があり、これは夏油から奪わぬ限りは埋まらないとわかっていた

    【奪った後は?】
    「健やかに自由に生きろ。盛大に暴れてやれ。ただし、人は害すな。できるだけ生きて暴れてほしいが、五条の若には倒されろ」
    【ええ……】

     呪霊はしょっぱい顔をした
     なんという矛盾を孕みまくった丸投げ指示

    「いいか、特に死者は出すな。私から生まれたお前が人を死なせたら、私は呪詛師になる」
    【そうかな?】
    「そうなのだ。私は最後まで完璧で最強の式神使いの術師でありたい」
    【ええ……】

     今更何をいうのだ。呪霊はしょっぱい顔をした

  • 109策謀(7/8)25/01/15(水) 14:27:39

    「だから、絶対に人は死なせるな。縛りだ。夏油は襲え。だが、死なせてはならん。目的を忘れるな。私が最強の式神使いの呪術師でいる。その為にお前は生まれたのだ。まとめるぞ。1.呪霊が、夏油の高専入学後の記憶・呪力・術式・呪霊を視える眼を奪う。2.呪霊が、奪った力を消費しながらできるだけ長い間大暴れする。3.呪霊が奪った力を消費し尽くして消滅する、もしくは五条に吹き飛ばされる形で祓われる.4.人は死なせない。以上だ」
    【わかった】

     縛りを結ぶと、呪霊は一層強くなる
     ただ夏油に対してだけ呪術に関する全てを奪う。人は決して死なせない。限定に限定を重ね、鬼道の命と呪力を捧げられた呪霊は特級術師に通ずるほど強くなった

     対夏油に特化した呪霊はそれこそあっさりと夏油を下した
     残穢対策をしつつも、式神を使い、遠目に観測していた鬼道は、歓声を上げた

    なお、夏油の記憶を取り込んだ事と、もとより鬼道が非術師を人扱いしてなかった事により、非術師は猿なので人間には当てはまらないというルールが追加されてしまい、術師は死なせられないが、非術師の生命を奪うことはできるようになるのだが、この時の鬼道の預かり知ることではなかった。

  • 110策謀(8/8)25/01/15(水) 14:28:19

    「夏油術師」
    「あなたは?」
    「私は鬼道特別一級術師だ。君とも依頼をいくつかこなしていたんだよ。今回のことを聞いて、心配で駆けつけたんだ」
    「そう、なんですか。そんなに具合の悪そうなのに、私の為に駆けつけてくれたんですか? すみません、何も覚えてなくて」
    「本当に? これも見えない?」
    「ええ。だから、私のことは夏油術師ではなく、夏油と呼んでください」
    「ああ、夏油くん。今回のことは、残念だった、ね……」
    「わあっ 大丈夫ですか? 誰か!」

     夏油は倒れた鬼道を慌てて介抱し、人を呼んだ
     呪力も寿命も捧げ、病で体もボロボロ
     鬼道はそれでも笑いたかった。大笑いしたかった

     そうして、病床の中、中退になりそうだという話をお聞いて、満足して逝ったのだった

  • 111二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 21:37:47

    ※スレ主より


     >>103から>>110まで投下頂いたSSは、掲示板外で事前許諾済の知人の方から御寄稿頂いたSSになります

     掲載方法・注意書きの文言その他一切につき、スレ主の事前の指定と了解を得た上で御掲載頂いたものです


     なお、その他のスレ民の方の三次創作もスレ主として大歓迎致します


     念のため

     御寄稿頂いた方とスレ主のやり取りは全てクローズ環境で行われており、今後外部に公開する予定はありません

     作者を推測した上でのいわゆる凸行為はお控え下さい

  • 112二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 08:05:02

    楽しみ

  • 1131/225/01/16(木) 12:44:35

    現時点で羂索は、3つの術式を使用できる
    1つ目は『身体を渡る術式』、2つ目は虎杖香織の『反重力機構』、3つ目は前の身体の生得術式で、都合よく『自らを隠匿する術式』だった
    五条悟が長期に渡って虎杖香織の残穢の正体を負う一方、羂索はこの隠匿術式を最大限活用して身を潜めていた
    五条の追及が本気でキツい状況なら、自らの残穢を変える目的で香織ではない別人を乗っ取っていたかもしれない
    しかし羂索にとっては幸いなことに、呪霊を降伏させてから10年、そういう事態にはまだ陥ってはいなかった

    羂索が一億人の呪力を孕んだ呪霊を生み出すにあたって、絶対必須と言えるものも3つある
    天元を操るのに必要な練度の『呪霊操術』、これは夏油そのものとも言える呪霊が手元にある内は問題ないと言えた
    邪魔な五条悟を封印するための『獄門疆』、これも呪霊を入手してから数年後に海外で手に入れた
    最後に、日本本土を呪力で満たす、つまり死滅回游を起こすために必要な『人の魂をもてあそべる特級呪霊』、……これが生まれる時を、羂索は年数を掛けて待ち望んだ

    都合の良い特級呪霊が生まれるまで、非術師の夏油傑には平穏に生きてもらう必要があった
    夏油が死んだ場合、夏油そっくりの呪霊も消失し、高練度の呪霊操術も完全に失われてしまう、……かくして、羂索が夏油の生命を奪うという選択は消えた
    五条の密かな監視と、総監部の一部の面々の裏に居た羂索の意向も相まって、非術師の理学療法士夏油傑は平和な日々を過ごせたのだ


    なお、羂索は自らの術式としては呪霊操術を持ってはいない
    夏油そのものの呪霊を降伏させるにあたっては、かつての五条と同じ発想で、呪具を活用して不意打ちで従えさせている
    元より完全な降伏が出来る呪具ではなく、『呪霊の在り方に反する指令はできない』という制限があった
    そういう指令を仮に下してしまった場合、呪霊は支配下から外れてしまい、指令を下した術者の方も報いを受ける

    これを羂索は『夏油傑から力を奪う呪霊であるから、例えば夏油傑に力を戻すような指令はできない』と解釈した
    夏油傑を強い呪霊操術使いに戻すという発想は完全に消えた、余計に本人を乗っ取る意味が無くなり、夏油傑の平穏を維持する方向に思考が向いた

    ……ひとつ、盲点があった
    肝心の時になるまで羂索が気付かず、とんでもない時に足を掬われることになった見落としだった

  • 1142/225/01/16(木) 12:47:27

    2018年10月のある日

    ――五条悟を獄門疆に封じるには、4m以内に1分間留めおく必要がある
    漏瑚はその言葉に激昂した

    「おい 焼かれたいのか香織! よもやその難題を押し付けるために手を組んだのではあるまいな!!」

    香織という名の羂索は笑った

    「熱いよ漏瑚 大丈夫 1分と言ってもね 五条悟の脳内時間で1分だから
     ……時間を稼げる案があるんだ この子を使えばいい」

    夏油そっくりの特級呪霊に視線を向ける
    いまだに五条が探し求めているものを『この子』は持っている、だから、その時に五条悟を足止めできるという確信があった

  • 115二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 12:54:23

    ※スレ主より
    独自設定多めのSSですが、そういうSSとして御容赦下さい
    後のストーリー展開に必要な伏線はおそらく全部出したと思います
    考察頂けますと嬉しいです

    なお、伏線には関係ない裏設定ですが、この世界線では百鬼夜行は起きていません
    秤・星は面倒見のいい高専生として在学中、姉妹校交流会での団体戦は普通に両校の2・3年生達が戦っています

  • 116二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 19:46:45

    このレスは削除されています

  • 117二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 19:47:24

    このレスは削除されています

  • 118二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 19:50:41

    このレスは削除されています

  • 119鉄壁の平穏(1/3)25/01/16(木) 19:58:09

    三次創作です。応援してる。


    夏油 傑は非術師になった
    狭い業界だ。それは一気に広まった
    当然、五条 悟がいまだに夏油を気にしているという噂も同時に広まった
    羂索の意向を受けた総監部の意向もあり、夏油傑はアンタッチャブルと化していた
    だが。どこにもバカはいるものである

    「ふははははははは! 夏油傑を人質にすれば、五条悟も思いの儘よ!」
    「夏油くんが非術師になったって事は、私にもワンチャンあるよね!」

     馬鹿2人は、ひとまず夏油の所属するスポーツジムに電話で予約を入れた
     もちろん、夏油傑を指名して、である
     混んでいるからという事で、指名された時間はお昼

     意気揚々と飛び込んだ2人を待ち受けていたのは、五条悟だった

    「ごめんねー♡ 傑はお昼に入ってるので、代わりに俺が対応してやるよ♡ 腕にする? 足にする? それとも、く・び?♡」

    「な、なんで……」
    「マッサージ店じゃねーんだから、いきなり傑を指名して理学療法受けたいなんて怪しすぎんだろ。スポーツジムだぞ、システム違うわ。せめてスポーツ選手になってから来い」

     こうして、今日も夏油傑の平穏は守られているのである

  • 120鉄壁の平穏(2/3)25/01/16(木) 19:59:54

    お昼から夏油が戻ってきて五条に話しかける。
    忙しい合間を縫って、たまに五条は顔を見にきてくれる。

    「悟。今日も来てたんだ?」
    「ああ、最近忙しくてさ。ちょっと疲れたかなって。傑、マッサージも出来たろ」
    「ごめん、これから予約客が来るんだけど、その後でも大丈夫?」
    「予約客?」
    「うん、飛天堕さん。ちょうど今来たところ」
    「……飛天堕さんね」
    「今日もよろしくお願いします! 夏油さん! ひっ この怖い人誰です?」
    「あー、傑、飛天堕さん俺が対応するわ」
    「えっ でも飛天堕さんはサッカー選手だよ?」
    「サッカーねぇ。確かに、運動能力じゃ誰にも負けないだろうな、うん。それにその術式じゃねぇ? ちょっとお話ししようか」
    「ちょ、ちょっとな、なんなんですか」
    「伊地知。サッカーの飛天堕選手の今までの記録ちょっと取り寄せてくれるー?」

     夏油の平穏の代わりに、スポーツ界でこっそり活躍してた術師の平和はたまに破られたりするのはご愛嬌である

  • 121鉄壁の平穏(3/3)25/01/16(木) 20:00:37

    2人が消えた後、さらにスポーツジムに客が訪れた

    「俺の彼女を奪いやがってぇぇぇぇ!」
    「ええ!? 私、誰とも付き合ってないのに!?」

     とん、と店員に首裏を叩かれ気絶する

    「か、彼も術師ですか?」
    「いえ、非術師ですね。警察に届けておきます」
    「すみません、ご迷惑をお掛けして……」
    「思わせぶりな行動はしないように」

     なお、彼は羂索経由総監部経由の術師の名家の戦闘部隊だったりする
     五条と羂索は鉄壁のガードを敷いているのだった

  • 122二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 21:13:54

    >>114

    >いまだに五条が探し求めているものを『この子』は持っている、だから、その時に五条悟を足止めできるという確信があった


    どういうこと?

  • 123二次元好きの匿名さん25/01/17(金) 07:42:06

    保守

  • 1241/225/01/17(金) 09:33:17

    2018年10月31日 19:00
    東急百貨店 東急東横店を中心に、半径およそ400mの“帳”が降ろされる

    呪術総監部は被害を最小限に抑えるため、五条悟単独での渋谷平定を決定

    20:31 五条悟 現着

    20:40 五条悟 東京メトロ渋谷駅 B5F 副都心線ホームにて呪詛師・呪霊の一派と交戦開始


    花御という特級呪霊を祓った直後、改造人間が満載された電車がホームに突入してくる
    改造人間の襲撃と、一般人の多数の落下によりホームはパニック状態となる、――これを、五条悟は一か八か0.2秒の無量空処にて対応
    現代最強の呪術師は、改造人間およそ1000体を領域解除後299秒で全撃破した

    刹那、目の前の床に小箱形の不審な呪具があることを視認し……


    「獄門疆 開門」「領域展開」


    背後からの呪詛師と呪霊の声、振り返る余地なく不審な呪具ごと領域に包まれた

  • 1252/225/01/17(金) 09:36:56

    その呪霊の術式の本質は、『夏油が呪術界に属する根拠を奪うこと』と『奪ったものを消費すること』
    このため、領域の必中効果は、中に誰を閉じ込めたかによって全自動で切り替わる

    夏油傑を閉じ込めた場合、呪霊は『高専在学中の記憶』『呪術に関係する一切の才能』を一方的に奪い取る
    その他の者を閉じ込めた場合、呪霊は『夏油から奪い取ったもの』を相手に一方的に叩き付ける
    ……この時、『何』を相手にぶつけるかは呪霊が任意で決定でき、領域展開時の押し合いの強さ・速さはその内容によって変わる

    ――悟 弱い者イジメはよくないよ
     ――呪術は非術師を守るためにある
    ――一人称「俺」はやめた方がいい
     ――いいのかい? 天元様と戦うことになるかもしれないよ?
    ――いい 意味がない

     ――悟は“最強”に成った
    ――猿め…
     ――術師というマラソンゲーム その果ての映像があまりに曖昧で 何が本音か分からない
    ――今はとにかく休め七海 任務は悟が引き継いだ

    領域の必中効果でぶつけられた『それ』を、五条悟の術式が有害だと判断するはずがなかった
    何なら未だに五条悟が探し求めていたものでもあった、望んでいたものだからなおのこと『有害なもの』であるはずなかった

    秤の坐殺博徒に並ぶ強さ・速さで五条悟の脳裏に流し込まれたのは、言い方を変えればただの『情報』だ
    純度100%の『ただの記憶』
    夏油傑『本人の記憶』、高専入学から呪霊に奪われるまでの、2年5ヶ月間の青い春

    刹那、彼の脳内では1分などとうに――

    ザフッ ドキュドキュドキュドキュ!!

    「――っ!!」

  • 126二次元好きの匿名さん25/01/17(金) 15:46:05

    これで封印されちゃうの?

  • 127二次元好きの匿名さん25/01/17(金) 21:34:37

    このレスは削除されています

  • 128二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 07:40:13

    なんだすげぇな

  • 1291/225/01/18(土) 16:55:10

    ――やられた!!

    領域が解かれ、悟の視界が元のホームに戻る
    呪力が感じられず、身体に力も入らない、――詰みだ……!!

    完全に動きを封じられた五条悟の目の前に、学生服姿の呪霊と、女がいた
    呪霊の方は、10年前の傑と瓜二つの見た目、あの頃の傑と全く同じ呪力と、おそらく呪力の流れからして傑とまったく同一の術式持ちだろう
    女の方は悟には覚えがない、……額に縫い目がある女だ、これ見よがしに呪力を放出し空間に残穢をまき散らしている
    あの日から悟が一時たりとも忘れるはずのない、まさしく『例の』残穢の、――この女!!

    「……!! お前は!! お前が傑から色々盗(と)ってったのか!! さっさと答えろ!! お前は誰だ!!」

    悟の頭に血が上り、考えるよりも先に怒りの声が出る
    対照的に女はニヨニヨと笑っていた、横に従えた無表情の『傑のすがたの呪霊』の肩に手を添えて、軽く咎めるような声色で語る

    「人聞きの悪いことを言わないでおくれ
     『この子』は人造でね 何と『夏油傑の高専入学後の記憶と呪術の才を全部奪う』ためだけの特級呪霊さ あの時は変に誤認されたけど
     創り出したのも 夏油傑にけしかけて全部奪うように仕向けたのも 余命僅かで勝手に嫉妬に走った誰かさんがやったこと
     当時あの場所で『この子』を君達より先に降伏させた術者は 紛れもなく私だけどね」

    「……!! そういうことかよ……!!」

    命懸けで呪霊を生み出すくらいの悪意は、呪術界の暗部にいくらでも転がっている
    代償は軽くなく当然に禁忌でもある、しかしその禁忌を産み出す素地はおそらく永遠に消えることはないだろう、……現代呪術界は、結局はその程度の倫理のそんな業界だ

    「君も夜蛾正道も どっちも私より甘ちゃんだったね
     何も知らない君達が必死で残穢の主を探してた10年間 君達が手を伸ばさなかった業界重鎮の面々の真後ろで 当の残穢の私はずっと大爆笑していたんだよ?
     特に君がわざわざ派閥やら秩序やらに気を使っていた分だけ 結構楽に潜伏できていたよ
     たとえ仮に君達がその辺りをあれこれ踏み躙っていたとしても 逃げ切れるだけの自信はあったけれど」

  • 1302/225/01/18(土) 16:57:42

    この頃、0.2秒の無量空処でフリーズさせられていた呪霊・受肉体達が我に返り始めた、……誰もそんなことに気を留めはしないが
    女は挑発するように得意げにしゃべり続ける、悟の表情を嬲るように見つめて、本当に面白がるようにしゃべりやがる

    「最初のプランではね 夏油傑の術式が殺してでも欲しかったんだ 私の目的に必要だからね
     だから10年前のあの状況は 鴨が葱をしょってるようなものだった 本人を殺して奪わなくとも『この子』を降伏させたなら 私自身が呪霊操術を使えるのと同じだ
     ……面白い事にね 夏油傑本人が生命を落とせば『この子』は消えちゃうの
     君がここの帳に入った頃合いで 夏油本人の身柄も別に確保させてもらってるよ 総監部を動かした ……本人は訳も分からず昏睡してるはず 目的を遂げるまで彼は生かすさ」

    ここまで言われてようやく冷静になりきれたらしい、五条悟は動きを封じられたままに煽る、目の前のその女に

    「どんだけ用意周到で手が長いんだよテメェは
     ……いい加減名乗れや名無し野郎 永遠に『ビチクソ野郎』とでも呼ばれたいのかよ? 殺せば術式奪えるみたいな言い方しやがって そういうタイプの術式持ちかぁ?」

    「ハハハ 有頂天になってしゃべり過ぎたかな? そうだねえ? この見た目である内は『虎杖香織』とでも呼んでくれ
     よくいる憐れな女の名さ 死んだ後に私に使い倒されてるだけの女の名前だ
     ……昔ね 退屈しのぎで私はこのなりで子を産んだんだ
     産まれた子は期待外れでずっと放っていたけれど ひょんなことから最近になって別口で君の関心をよんで 私はちょっとビックリしたんだよ?」

    「ッ――!! テメェ悠仁の母親かっ……!!」

    「そうだよ? ……おっと しゃべりすぎたようだ 下手に歳取るといけないな
     おやすみ五条悟 解放するのは1000年後かな? 新しい世界でまた会おう ――獄門疆 閉門」

  • 131二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 16:59:00

    ※スレ主より


     >>119から>>121まで投下頂いたSSも、以前と同じ知人の方から御寄稿頂いたSSになります

     なお、スレ主の意向により、モブの名を実在の方とはまず被らないものに設定して頂きました

     その他一切についても、スレ主の事前の了解を得たものであることを重ねて断言させて頂きます



     また、>>82の書き込みが消えたので再度書きますが、筆が乗っている内は1日1更新の予定です

     たまに自宅環境がホスト規制で投下できないことがありますが、適宜、下記writeningページにその日の投下分を掲載します

     
    何度も言わせるな 傑が呪霊に負けて非術師になった 更新分 | Writening※1月12日更新分 1/2 九十九はおそらくただの雑談のつもりで傑達に言った 「実は私もね 問題の呪霊に興味があったんだ 従属させる系統の呪具とか探してた  ……あぁ もしも見つけたら五条くんに相談…writening.net

     皆様の感想と♡が執筆の原動力になっています

     今後ともよろしくお願いします

  • 132二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 22:06:48

    このレスは削除されています

  • 133二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 09:49:23

    保守

  • 134二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 09:49:39

    保守

  • 1351/325/01/19(日) 16:41:42

    いつものように退勤して車で帰宅しようとしたら、駐車場のあるべき場所に自分の車が無い
    ……2018年10月31日夕刻、スポーツジム勤務の理学療法士 夏油傑がまず気付いた異変である

    傑は即座に『車を盗まれた』という一大事件を連想した
    駐車場は勤務先名義での契約だったので、退勤したジムにとんぼ返りして店長に報告、すぐ110番通報しようとした、が、……通報直前にジムの窓口に人が来た
    スーツ姿の3人の男だった、揃って刑事を自称して警察手帳を持ち、『夏油傑』というスタッフに用があるという男達だ

    彼らは言った

    「夏油傑さん名義の自動車が路上で人をはねました 運転者は自称『車泥棒』で『車を盗んで逃走する途中だった』と供述しています
     夏油さんから事情をお伺いしなければいけません 署に御同行頂けませんか? 覆面パトカーで署にお連れします」

    傑も店長も話を信じた、話に疑う余地が無かったから、信じたのは当然のことだ
    傑は一も二もなく誘導されるまま、その『覆面パトカー』の後部座席に座った、窓のスモークが濃いワゴン車だった

    ワゴン車が走り出すなり、傑の意識は急速に落ちる
    『刑事達』は、実在の刑事を装った『総監部の術師達』で、非術師の夏油傑を眠らせるのは赤子の手を捻るより簡単なことだった


    ジムの店長は五条家と繋がりのある人間で、傑を狙った呪術絡みの誘拐等を防ぐ役目を負っていた
    店長だって、当初は呪術と全く関係ない『車泥棒が起こした交通事故』だと思い込んでいた
    ……事件は事件なので、全くの善意から、同じく五条家と繋がりのある弁護士を傑に紹介しようとした

    話を聞いた弁護士が調べて、『夏油名義の車が人をはねた事故など、そもそも発生していない』という事実に気が付いた

    ――『何者か』が車を盗んでから、実在する刑事になりすまして夏油傑を連れ去った
      正規でも通用するような警察のバッチと警察手帳を持った『男達』の、計画的な誘拐

    手の込んだ拉致を把握した五条家の家人が騒ぎ始めたとき、五条家の当主は既に渋谷の帳の中で封印されていた

  • 1362/325/01/19(日) 16:43:10

    「……くそ!!」

    人骨まみれの空間で、五条悟は憤った
    あの香織と名乗った呪詛師の女にも、自分自身にも

    あの女の言っていた通り、呪術総監部のお偉い方の相当な範囲で癒着があったのだろう
    封印された今頃になって気がついた程度のことだが、東京校の学生の現在位置からして『特に面倒な実力者(秤金次・乙骨憂太)はすぐ東京に戻れない距離に置いておく』という思惑が透けている

    3年の金次と綺羅羅は、今月に入って2人して福岡出張に出ていた、『術師の術式を奪う呪霊』とやらの対処で呼ばれたのだ
    割と早期に呪霊の件は解決したが、かなりどうでもいい経緯で今日まで福岡に足止めされていた
    今頃は東京に戻る飛行機だか新幹線だかに乗っているはずで、鉄火場になるであろう渋谷には出動できまい

    2年は憂太のみ北海道に出張中、『赤子限定で死者蘇生を請け負う呪詛師』の対処のため、呪術総監部直々で名指しの指定を受けたことによる
    真希とパンダは1級術師への昇格を掛けて渋谷にいる、姉妹校交流会で乱入してきた特級呪霊に対処した実績により1級推薦が出るよう、悟自身が動いたからだ
    棘は高専に待機中のはず、……指令を受ければ渋谷への出動はあり得るか

    1年は悠仁・野薔薇・恵3名全員が渋谷にいる、これも1級術師への昇格を掛けたものだ
    八十八橋で特級呪物の受肉体を祓った・宿儺の指で強化された呪霊を祓ったことを実績にして、何より悟自身の意向で1級への推薦を冥冥と日下部に出してもらっていた

    振り返って考えてみるに、あの女は『悠仁にたまたま五条が関心を持った』様な言い方をしていたが、――それが実際に真実その通りであったかは疑わしい、と、悟は思う

    悠仁自身の人となりを疑うつもりは無い、しかし一方で彼の持つ『器』としての素質は有り得ないほど稀有なものだ
    悠仁を強い術師にしたかったのは悟自身の意思だが、用意周到なあの女は、その悟の意思を利用し織り込む形で、悠仁をもてあそぶような計画を練っていてもおかしくはないだろう
    金次や憂太と異なり、悠仁は東京から排除はされていない、少なくともあの女にとって『邪魔な存在』とは見なされていないことは確かだ

  • 1373/325/01/19(日) 16:44:18

    更に今頃気づかされた憤るべき後悔として、傑のことがある

    あの時、特級呪霊の領域で悟にぶつけられたのは間違いなく『夏油傑本人の記憶そのもの』だ
    悟の六眼も魂も、ぶつけられた『あれ』が、『無加工の記憶』だと訴えている

    ……そもそもあの『情報』が悪意ある改変を受けていたとすれば、必然的に、呪霊側の押し合いは、より遅く・弱くなっていただろう
    その場合には対抗策としての簡易領域の展開が間に合っていたはずで、悟が情報を押し付けられることは無くなっていただろうし、今のこのような封印もなかった


    あらゆる意味で、見せつけられたあの記憶は『本物』で間違いない
    当時、特級術師の3年生 夏油傑は、密やかに苦しみ抜いて憔悴していたのだ
    ――五条悟が“最強”に成った自分自身に無神経にはしゃいでいた、あの時期に

    人格破綻寸前にまで苦しんでいた時、あのドッペルゲンガーのような瓜二つの特級呪霊に丸ごと奪われて、傑は何もかもを忘れてしまったのだ
    奪った側の特級呪霊だけが傑の記憶を抱え込み、傑が抱え込んでいた苦悩は、誰も知りようのない情報になった

    今になって脳に押し付けられるまで、何も気づいてはいなかった
    傑が何もかも失う前にも、後にも、ずっと、悟にとっての『あの頃』はただただ『輝かしい青春の日々』でしかなかった
    ……押し付けられて認識の違いを悟らされる、今の今まで


    「俺の眼って呪力の流れがよく見えるだけの節穴じゃねえかよ 今まで何視てたんだ俺は」

  • 138二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 23:46:42

    偽刑事とか気づくかこんなん

  • 139二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 11:02:11

    保守

  • 140二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 13:06:21

    このレスは削除されています

  • 141番外 1/225/01/20(月) 15:53:36

    結論から言うと、五条悟が獄門疆の中で予想した通り、秤金次と星綺羅羅の2名は、この渋谷事変においては徹頭徹尾蚊帳の外だった


    発端は10月上旬、『福岡で不審な呪霊群が出現しているので高専所属の術師の応援を頼みたい』という、高専福岡分校の奈木野学長からの要請だったらしい
    総監部は、東京校からの派遣については『金次と綺羅羅の福岡出張で事足りるだろう』と夜蛾に言い添えたらしく、言われた方はその通り2名に出張を命令した
    金次・綺羅羅とも、要請のため上京してきた奈木野と会ってそれなりにウマが合いそうだとは感じた、渋々の出張という訳でもなかった
    現地では順調に分校の1年生2名、同じく派遣されてきた京都校の2・3年生達と合流した

    フタを開けてみたら、昔祓い切れていなかった、朧絶(ろうぜつ)という特級呪霊のロクでもない策謀を暴く事態になった
    その上、ウマが合うと思っていた奈木野学長が、当の朧絶に騙されて内通していた
    他の術師の応援を望めない状況で、金次達現地の学生陣は大いに奮戦した

    夜蛾は過去の重い因縁から九州に来たがったものの、総監部が差し止めた
    総監部のお歴々には、過去に朧絶の『術師の術式を奪う術式』で犠牲者を続出させたトラウマがある、『戦力の逐次追加は絶対不可』という判断だった
    だから、本当に学生達だけの奮戦で何とかして事態を収束させた

    ギリギリ犠牲者ゼロだった、奈木野は生け捕りにして総監部に突き出したし、朧絶は完全に祓った、……ここまでが、10月半ばまでのこと


    奈木野の裏切りの一件で総監部から調査の術師達が福岡に来た
    揃いも揃って保守派で、良い家柄の、頭の堅そうな術師の集団だった
    その中で五条悟を特に嫌っている者がいた、彼は戦いの経緯を根掘り葉掘り両校の学生(特に3年生達)から聞きたがり、面倒になった金次はその場全員の了解を得て、戦いの再現として領域展開を実演した
    領域を受けた保守派のその術師はマジで大泣きしながら激怒しやがった、怒りの勢いのまま金次の顔面を思い切りブン殴ったので、金次はその顔面を思い切り殴り返した

    殴り返された術師は、即座に『五条を慕う学生の暴行沙汰』を総監部に御注進して、予想外におおごとになった

  • 142番外 2/225/01/20(月) 15:55:25

    京都の3年生3名(西宮・東堂・加茂)が一部始終居合わせた揉め事である
    彼らは正確に見たものを証言してくれたが、金次を気の毒がりつつ京都の2年生を連れて先に帰京するしかなかった

    電話で報告を受けた夜蛾は金次を労りつつ軽く諫めた、日下部は呆れた、五条は大爆笑した
    彼ら東京校教員達の総意は「良い勉強だと思って総監部の査問を最後まで受けて来い」「理不尽な処分が下ったら何とかしてやるから」だった

    そして福岡で金次の査問が始まった
    奈木野を捕えたり朧絶を祓ったりするよりも時間が掛かった、保守派だの五条派だの高専だの術師家系だの、上で面倒な駆け引きがあるらしく本当に本当に遅々として進まなかった

    この間、金次は、投獄までは無かったが福岡分校の敷地から出ることは禁止された、
    (奈木野の一件でもうすぐ廃止されるはずの)福岡分校の1年生2人とはかなり仲良くはなれた、綺羅羅は金次置き去りの帰京を拒否して付き合った
    ……彼ら彼女らが共に居たから金次は何とか耐えられた、本気でひたすら忍耐力『だけ』が試されるだけの時期を過ごした


    ――『両者とも喧嘩両成敗扱いで口頭注意』
    取り立てて重くもない結論がやっと出たのは、10月31日の昼のこと

    一連のことに同情した比較的柔軟な術師が、東京行の新幹線のグリーン車のチケットを2席分自腹で買って金次と綺羅羅に譲ってくれた
    「とても疲れたでしょう? 半日でも福岡を楽しまれたらいかがですか?」なんて言いながら
    19:00に博多駅を発ち、ギリギリ31日中に東京駅に着くはずの最終便のチケットだった

    2人ともその厚意に礼を言って甘えさせてもらった
    東京校に一報を入れてから、新幹線に乗る前に分校の1年生達と食事に行った
    全額金次の奢りで全員大いに食べた、そうしてからありがたく見送られつつ金次と綺羅羅は博多駅を発った

    ……そんな経緯でチケット代を出してくれた術師が『実は羂索の手駒である』と、その時、どうして気づけただろう


    渋谷での大規模なテロを受けて『緊急の安全確認が必要になった』とかの名目で、新幹線は動きはしたが本来のダイヤより遅延した
    金次達が東京に戻れた頃はとうに日付が変わり、渋谷では何もかもが終わっていた

  • 143二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 15:56:57

    ※スレ主より
     話の本筋が進んでいないので、本日中に本筋のSSを書けた場合はまた投下させて頂きます

  • 1441/225/01/20(月) 22:17:15

    バチィッ フッ トッ……

    獄門疆の閉門は叶った
    五条悟を封印して元の大きさの呪具へと戻り、香織の手のひらへと収まる


    「ねえ香織 さっき言ってた虎杖(アイツ)がオマエの息子って情報 マジなわけ?」

    「本当のことだよ真人 こんなことで嘘は吐かないよ 私はね ……まぁ あんなビックリ顔を狙って フカしてやった面はあるけど」

    「へー」

    真人は心の底から愉快そうに笑っている、香織は同じように笑んでから一同を見回した

    ――さてと 裏梅・脹相・漏瑚・陀艮・真人 みな無量空処の影響から脱したかな?

    「全員起きたね さて今後の――」

    言いかけたところで、握っていた獄門疆が震え出した

    ズンッ ゴンッ シュウウウ……

    ――獄門疆が、五条悟という情報を処理しきれてないのか!!

    「なっ ――ッ なんて奴!!」

    こうして床にめり込んだ獄門疆は、しばらくその場から動かせなくなった

    そう間を置かず、真人が天井を見て『何か』に気付いて即『それ』を破壊した、――先日香織達が始末したはずの、メカ丸の小型傀儡だ
    『この場で起きた事態が高専の術師達に筒抜けになった』と、瞬時に香織達は直感した

  • 1452/225/01/20(月) 22:18:21

    「おわっ!??」

    耳に突如『何か』が貼り付いたので、虎杖悠仁は声を上げた
    同じ班の冥冥と憂憂が、その時は悠仁と一緒に居た

    「どうしました」「いや何か耳に」

    貼り付いたメカメカしい『それ』は喋った

    「聞こえるカ? 虎杖悠仁 良く聞ッ ……待て待て待テ!! 味方だバカ!! 京都校のメカ丸だ!!
     時間がなイ 一度で聞き分けロ」

    『それ』からは、信じられない言葉が続いた

    「――五条悟が封印されタ
     主犯は呪詛師デ 風姿は額に縫い目のある中年の女 五条の封印時ニ 虎杖 お前の母親を自称しタ 香織という名をナ
     オマケにソイツ 姉妹校交流会の時 合同授業で習ったはずの残穢の主ダ 昔 夏油傑の能力を丸ごと奪っタ 特級の呪霊ヲ 従えていル」

    「……はぁ!?」

  • 146二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 22:23:03

    ※スレ主より

     このときの裏梅が(原作と違って)羂索の傍にいるのは意図的な改変です
     今後、原作と同じような展開・台詞になる部分については、あえてSS上での記述を端折る事が増えると思います

  • 147二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 08:35:10

    ほしゅ

  • 1481/425/01/21(火) 14:07:41

    メカ丸の小型傀儡は、自分の本体が『既に死んでいる』という事情と共に、香織の自白内容を正確にそのまま悠仁達に伝えることを選んだ
    この手の情報について下手に伏せたり隠したりすると、結果的に散々なことにしか繋がらないことを、自らの勘が告げていた


    「――俺以外 誰がどう敵と内通していたか 俺には分かりもしなイ だが 今はお前達はシロだと俺は考えル
     冥 お前を始末するための呪詛師が ここに向かっているからダ」

    「!! 1… 2… 2人かな… 虎杖君 コイツらと君が戦った呪霊どっちが強い?」「……たぶん さっきのバッタより強い」

    「そういうことダ ……あと 香織の口振りから 東京校の夜蛾学長は確定でシロ あの人は五条側の人間だろウ
     俺が傀儡ヲ忍ばせるのは 不発リスク軽減のため3箇所まデ 1箇所は五条が封印されている場所に隠れていル ……もう1箇所は俺の私情絡みでかなり遠い場所にあル 都内ですらない場所ニ
     最後の1個がお前達ダ ギリギリまで お前達につけるべきか 夜蛾学長につけるべきか 俺は迷っタ
     事態の進展と目的を踏まえると お前達一択しか無いと決断したガ」

    「そう考えた理由は?」

    「五条が封印された今 術師達の共通目的として『五条奪還』を据えなければならなイ
     相手は卓越した結界術の使い手ダ 今渋谷には4枚の帳が降りていて 術師達は内側に閉じ込められていル 携帯が使うような電波類は 一切遮断されているんダ
     夜蛾学長は 今まだ渋谷(ここ)にはおられなイ 帳の外側から術師達に情報を伝えるとすれば 補助監督の口伝いになってしまウ それでは遅いんダ 間に合わなくなル」

    冥冥はスマホを取り出してみる、確かに誰ともつながらない現状を手早く確かめてから問いかけた

    「なるほど 彼が封印された事実を 私達にアナウンスしてほしいんだね?」

  • 1492/425/01/21(火) 14:08:19

    「そうダ あと事態がどう転ぶか分からン 呪詛師を倒した後も 可能ならこの線路は継続して押さえていて欲しイ
     頼む 俺の指示に従ってくレ 五条悟が消えれば 呪術界も人間社会もひっくり返ル
     それから 虎杖 ……俺の立場で我ながら酷いことを言うが お前 自分の親と命懸けでやり合う覚悟はあるカ」

    「心配あんがと 大丈夫だメカ丸先輩
     ――俺の家族は死んだ爺ちゃんだけだから 親だろうが関係ねえよ ……全力でぶっ飛ばしてやる」

    その時、冥を始末したいらしいという相手が遂に見えた、――呪霊連れの呪詛師だ、冥は斧を構える

    「分担しよう 私達がここで隙を作ってあげるから その時君は地上に出ること いいね虎杖君?」「押忍!!」

  • 1503/425/01/21(火) 14:11:10

    「いやー バレちゃったねぇ? こちらの情報 術師が総力挙げてここに来るよ ……私はここに残るけど みんなはどうする?」

    香織は苦笑して腕組みしつつ一同にたずねた、……真っ先に答えたのは脹相だ、香織の顔をチラチラ見ながら言った

    「俺は弟の仇 虎杖悠仁と釘崎野薔薇の生命を狙いに行く 気性の合わんヤツに思うところはあるが 今は弟の仇が最優先だからな その後は高専に保管されている他の弟達を回収する」

    ――自分が産んだ子を『期待外れで放っていた』と言った辺りで、私がお気に召さないのかなぁ?
    内心でアタリをつけた香織は苦笑して流した
    当たり前のことだが、裏梅と漏瑚が猛反発している

    「……!! 釘崎とやらは知らんが虎杖はやめろ!! 今死なれたら困る!! 宿儺様の器だぞ!!」「そうだ! 儂らは宿儺を復活させるために「そんなこと知らん」」
    「「はあ!?」」

    一級上位相当の受肉体2名と特級呪霊1体の険悪な睨み合いになったところで、真人が割って入る

    「落ち着きなよ? 裏梅も漏瑚も脹相も ……やっぱり俺も 虎杖悠仁を殺(や)りたいもん」「真人!! 何を!!」

    「誤解しないでほしいんだけどさ まず 漏瑚や裏梅と争う気は無いんだ
     裏梅は自分の主を復活させたいんだよね? でも俺達呪霊は 呪霊の世の中が始まりさえすればいいんだよ
     五条を封印した今 俺達は優勢だし 宿儺が俺達サイドにいたら超優勢になるってことでしょ? 今は 宿儺を復活させなくても 俺達呪霊は勝てる立ち位置なんだよね
     殺意の欲求があれば ブレようが一貫性があろうが 欲求のままに行動する それが俺達呪いだと思ってるからさ ……だから 復活させるかどうか ゲームで決めればいい」

    「は? 宿儺様の復活でか? お前達の娯楽にされてたまるか!?」

    「そうカッカしないで裏梅 要は探し回って 虎杖に最初に遭ったヤツの早い者勝ちにしたらどうかって提案なんだからさあ? ……虎杖は渋谷のどっかにいるんだろ? 香織」

    「そうだね 渋谷には来てるよ わざわざ探さなくても じきにココに来るだろうけど
     まあ君たちの好きにすればいいんじゃないか でも この場での命懸けの仲間割れは止めておくれよ? 特に裏梅 冷気と一緒に殺気が漏れてる」

    「チッ」

  • 1514/425/01/21(火) 14:13:23

    「俺や脹相が先に虎杖に遭遇したら 思った通り虎杖の生命を狙えば良い 漏瑚や裏梅が先なら 指を献上して復活してもらう それでいいじゃんか?」
    「……俺はそれでいい」「ぶぶーっ」「OK脹相 陀艮も参加するんだね? 香織は?」

    「私はここで獄門疆を見て役目がある 不参加で」

    「……私は 獄門疆が動かせるようになったら自分で持っておきたいなぁ 香織さんいいかい?」

     知能はあってもかなり無口な『夏油のすがたの呪霊』が普通にそう言ったので、みな意外そうな顔をした

    「お? きみが喋るの珍しいねぇ まあいいや それじゃ ――よーい ドン!!」「「待て!!」」

    裏梅と漏瑚が、階段を駆け上がっていく真人と脹相ついでに陀艮を止めようとしたが、真人の置き土産のような防壁が追及の動きを遮った


    「……っ 漏瑚 提案がある お互いにとって損はないはずだが」「何だっ!?」

    何やらひそひそと協議しだした裏梅と漏瑚を関心から外して、香織は単純な興味から自らの呪霊にきいてみた

    「きみ 何で獄門疆を持っていたいのさ?」

    「夏油傑本人にとって 五条悟の存在は 無意識だけど『唯一自分のものであってほしい』願望の対象だったからさ
     私が五条悟自身である『これ』を持っている限り 夏油傑本人の手元には 絶対に『これ』は渡らない ……そういうことにならないかい?」

    香織は吹き出した

    「ハハッ ……なるほどね!! 君は『夏油傑のものを奪い取る呪霊』だもんねぇ? いいだろう 持ち運び可能になったら持っておくといい
     ただし所有権は私だし 開門権限も私にある そのことを忘れないでおくれよ?」

    ――後になって
      計画に関する、ある盲点に足を掬われた時、香織である羂索はこの許可を大いに後悔することになる

  • 152二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 14:24:51

    ※スレ主より
     香織の盲点については現時点のSS内の記述と原作のストーリーを加味すれば既に考察可能なように執筆してると思います
     お手すきの時にでも考えて頂けますと大変嬉しいです

  • 153二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 14:27:10

    『夏油傑のものを奪い取る呪霊』
    シンプルに思い出に対する感情とかも奪っていて持っているから、五条に対して友情を感じているとか?

  • 154二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 14:41:10

    ※スレ主より


     >>151に脱字がありました

     誤:私はここで獄門疆を見て役目がある 不参加で

     正:私はここで獄門疆を見ておく役目がある 不参加で


     従前より感想・考察レスに個別のレスポンスは行っていませんが、♡は押させて頂いています(このため♡の有無は記載内容の正解・不正解を意味するものではありません)

     そういうスタイルのSSスレということで、何卒よろしくお願いいたします

  • 155二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 23:40:48

    保守

オススメ

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