【閲注🎲TRPG】狩人四人の呪印感染〜第二話「藤屋敷の怪」〜【ホラー】

[1 GM 25/01/11(土) 10:20:25]

虎杖悠仁・脹相・乙骨憂太・禪院直哉の〝狩人四人〟が呪術×呪印感染の世界でわちゃわちゃしながら怪奇事件に立ち向かう予定のセッション

注意事項&特記事項
・スレ主はスレ立て初心者、至らないところがあると思うよ
・呪印感染の世界観を下敷きにした呪術世界なので、呪術本編とは設定が異なるところがあるよ
・【閲覧注意】は、あるかもしれないグロテスクな表現、発狂やロストの危険、キャラ崩壊の可能性に掛かっているよ
エッチな表現、展開は無しで健全で行こうと思ってるのでコメントもそういう方向に過激なのは禁止だよ
・その他スレ主の判断でコメントを削除させてもらうことがあるかもしれないよ
・このセッションでは呪術キャラクター＝PCだよ
・PC自身に生死に関わる重大な選択をしてもらうために、ゲーム上のルールや要素（ダイスや能力値など）の一部をPCに可視化させて把握させてるよ（死滅回游みたいなものだよ）
・スレの参加者へ『アンケート』をお願いすることがあると思う
選択肢を用意して「選択肢の中からこれだと思うもの安価11〜16」と安価で範囲指定して投票してもらって、多いものを採用するよ
同率1位が出たらダイスで決めるよ
他にも「◯◯の××は何？」などのお題に自由に書いてもらって、スレ主がいいと思ったものを採用したりダイスを振ったりすることがあるかもしれないよ
・本シナリオにはシナリオの都合によりNPC＝オリジナルキャラクターが多数出てくるよ

[2 二次元好きの匿名さん 25/01/11(土) 10:20:54]

スレ主！続き待ってました！！

[3 GM 25/01/11(土) 10:21:16]

キャラメイク回

【閲注🎲TRPG】狩人四人の呪印感染〜キャラメイク〜【ホラー】｜あにまん掲示板

キャンペーン第一話「彼方の島に囚われて」①

【閲注🎲TRPG】狩人四人の呪印感染〜彼方の島に囚われて①〜【ホラー】｜あにまん掲示板

キャンペーンスレまとめ

キャンペーンスレまとめ | Writening

セッション進行外ダイスまとめ

セッション進行外ダイスまとめ | Writening

[4 二次元好きの匿名さん 25/01/11(土) 10:21:25]

やった～狩人だ！

[5 GM 25/01/11(土) 10:22:07]

この世界は色々分岐点で変化があって、
生きてると影響が大きすぎる恵ママと倭助じいちゃんと里香ちゃん以外はみんなだいたい生きてて元気にやってる世界だよ

詳しくは第一話の１スレ目で

[6 GM 25/01/11(土) 10:23:36]

前回セッション後に主にダイスで決まったこと

・禪院家はみんな仲良しで開放的な家になった（真希が帰りたいと思うような家で、真依は家族との仲が最高に良い、姉妹は多分普通に自立の一歩として家を出てる）

・ただし直哉はその仲良しな空気に馴染めていない（が、扇以外それを察してくれない）

・悠仁の体内にある宿儺の指は現在１４本（最初からある1本含む）

・悠仁が「けいかつ」を「かいかつ（俺のこと？）」と聞き間違えたまま縛りを結んでいる

・宿儺は悠仁の中から見える世界を楽しんでいて、あと５年は飽きないし今のところそんなに出て行く気がない

・悠仁は宿儺がおやつを取るので宿儺への好感度が低く、ひと月のうち半分は宿儺におやつを取られていて、これまで取られたおやつの数は４５２個

・宿儺は羂索と親友（好感度1d100=95）で、親友と話したい、なのに羂索は自分ではなく悠仁目当てで遠くから（香織ボディで）ちらちら姿を見せている、そのせいで宿儺は悠仁を嫌っている

・羂索は悠仁と血塗から焼相までに親としての情があり、特にすでに亡骸になっている焼相達には深い（dice1d100=97）情を持っている

・呪物化もだいたい（dice1d100=79）宿儺のために思いついた

・このことからこの世界の羂索は、面白さを追求しつつ、他人のためを思い情を理由に動いて世界に混沌をもたらす、原作よりも面倒な存在になっていると思われる

・五条悟は夏油傑と「俺達最強！」のまま大人になり、学生気分で教師をしている

・生徒達とは教師と生徒というより先輩後輩、友達の関係

・脹相は野薔薇に非常に高い好感を持たれ（驚異のdice1d100×2=200）人として好かれている一方、日下部からは特級呪物として強く警戒（人間として受け入れ度＋好感度dice1d100×2=7）されている

[7 GM 25/01/11(土) 10:24:39]

そんな世界で、呪印に呪われた４人が（多分）ホラーな事件に立ち向かって行くよ

今回はタイトルの通りある屋敷が主な舞台になるよ

[8 GM 25/01/11(土) 10:25:48]

では始める前に
用語解説は今回も載せておこうかな
ルルブを持ってるか前回でもう覚えた人は飛ばしてね

・【命運】：いわゆるHP
物語の結末を迎える時これがマイナスだとロストする

・【希望】：いわゆるMP
これを消費して【命運】を回復したり振れるダイスを増やしたりできる

・呪印：PCの利き手に刻まれる巴の形の青い痣のようなもの
１０画で完成し、最初は０画→１画
怪事件発生後、端から赤く染まり始め、生還確定で黒、死亡確定で刻印全体が赤になる

・呪印者：呪印を刻まれた者
降りかる〈十の災い〉をすべて退けるまで死の運命に襲われる

・呪印感染：呪印やそれにまつわる呪い、負の要素が他に感染する現象
呪印者が他の呪印者のマイナスを引き受けることも指す

・十の災い：呪印者を襲う１０の死の運命、怪事件
それを起こしている〈なにか〉は怪異のこともあれば、人間のこともあり、怪事件ごとに別の〈なにか〉が襲ってくる
この〈十の災い〉をすべて退けると、『アカ◻︎◻︎◻︎レイ』が呪印者の願いを一つ叶えてくれるのだという

・願い：PCの胸に秘めた強い願い
呪印はこれを持つ者に寄ってくる
本人も自覚のない潜在的な願いの場合もあるかもしれない

[9 GM 25/01/11(土) 10:27:00]

・大切な人：PCの大切な人、心から信頼する人、頼れる存在として、呪印の影響を受け始めている相手（本人の意志に関係なく〈呪印者〉や［呪印］と関わってしまった存在ともある）
死者、行方不明者、行動不能な者、大切だが頼れない相手、他のPC、を除いた中で、PCが一番信用している相手
すべての中で一番大切な相手とは限らない（たとえば恵にとって一番大切なのが津美紀でも意識不明なら呪印は［大切な人］に津美紀を選ばないだろうし、目覚めていても恵が津美紀に怪事件のことで頼ろうとしないならゲーム的には後述の理由で除外される）
PCが調査協力を依頼することもある相手であり、PCが死亡した場合次のPCになる（PCから呪印が感染して画数を継いだ呪印者になる）存在
そのためシステム的には調査に協力できてかつ、次のPCとして動ける状態の者しか［大切な人］になりえない（協力してもらう要素と次のPCになる要素を排した特殊ルールのある卓なら赤ん坊でもなれるかもしれないが、通常卓ではできない多分）
たとえ既に呪印の影響を受けて逃れられないと知っていても、巻き込みたくない相手に、自分が命の危険と恐怖を感じているような出来事への調査協力など頼めないだろう
［大切な人］とはつまり、大切であると同時に巻き込んで頼ってもいい相手だ
大切でこんな状況で頼りたい、そこには相手への甘えがあるか、相手を「この人はこんなことに少し関わったくらいでどうにもならない」と強く信頼しているかのどちらかだと思われる
PCが子供の場合頼りになる大人がなりやすいかもしれない（大人は頼れない同じ子供しか信用できないようなPCでなければ）

[10 GM 25/01/11(土) 10:27:40]

・《過去と秘密》：PCが持つ《過去》と《秘密》
怪事件を起こしている〈なにか〉と繋がるような特別な因果
PCが呪印者になった原因だが、PCを助けてくれるものでもある
スキルでもあり、指定のコストを払って特定の場面で効果を発揮できる

【能力値】
・【体力】:肉体の頑丈さや体力
・【敏捷】機敏さ、器用さ
・【知性】頭脳と知識
・【精神】精神の強さや魅力
・【幸運】運の良さ

・職業:現実世界での立場
任意の職業のデータを別の職業に使うことができる
職業によって【能力値】、経済力、所持アイテム、【最大命運】【初期希望】が決まる

・アイテム:PCが所持しているアイテム
PCを有利にする様々な効果を持つ
各アイテムは１シナリオ１回使用可能
［道具］［乗用車］［防具］［お祓い］［闇医者］［専門家］の６種類

[11 GM 25/01/11(土) 10:28:17]

・イベント:PC達が死の運命を退けるために奔走する行為の総称
イベントをクリアするためにはイベントの【命運】を０以下にする必要があり、クリアすると特典がもらえる
事件解決のためには［★イベント］をクリアする必要があり、［★イベント］がクリアできないままタイムアップになると全員ロストする

・効果算出:PCがイベントの【命運】を減らすため、GMがPCの【命運】を減らすために行う判定、その出目の総計を算出する行為、アタック（攻撃、挑戦）

・効果軽減:PCが受けた［効果算出］によるダメージを軽減させる判定、ガード（防御）

・【狂気チェック】:【命運】が一度に１０以上現状した際に発生、狂気表を振る
各PC１シナリオに最大３回まで

・宿命:変化していくPC達の運勢、１が最も悪く、６が最も良い
４dのダイスで表現される

・宿命干渉:［効果算出（攻め）］と［効果軽減（守り）］を行った際、PCは判定の出目の中から１d〜4dの範囲で［宿命］の出目と入れ替えなければならない
同じ出目は入れ替えられない
【命運】や【希望】を＋ndする判定では宿命干渉は起こらない

・正体:〈なにか〉の正体
〈なにか〉が正体を現すために必要なコストと、［宿命］の出目が一致した時、対応する［宿命］を消費して、PCに不利な効果を発生させてくる

[12 GM 25/01/11(土) 10:28:59]

シナリオの進行の流れ
１:［準備フェイズ］
　A:［クリンナップ］
　B:［行動順の決定］
　C:［物語展開シート］の準備
　D:［宿命］の準備

２:［事件フェイズ］
　A:［日常表］を振る
　B:［導入］の演出
　C:［呪印］の追加
　D:［制限時間］の確認

３:［解決フェイズ］メインのフェイズ、PCの人数に応じた数、周回する
　A［シーン:邂逅］
　B［シーン:状況］
　C［シーン:判明］
　D:［シーン:恐怖］
　◇［シーン:GM］

４:［結末フェイズ］
　A:【命運】の上昇
　B:★の［クリア］を確認
　C:［エンディング］の演出

[13 二次元好きの匿名さん 25/01/11(土) 10:29:10]

今回は和ホラーかな
楽しみ

[14 GM 25/01/11(土) 10:30:05]

それじゃあセッションを始めよう
まずは［準備フェイズ］の［クリンナップ］からやっていくよ

やることは
・［大切な人］欄の◻︎チェックを消去
・［感情］欄を全て消去
・［アイテム］欄の◻︎チェックを全て消去
・【命運】の値を【最大命運】の値に変更
・【狂気チェック】欄の◻︎チェックを全て消去
・【希望】の値を【初期希望】＋［人数による修正］の値に変更
過去と秘密》欄の◻︎チェックを全て消去

◻︎チェックを消去は前回使用済みになったものを未使用に戻す作業だね

[15 GM 25/01/11(土) 10:31:34]

全員の【命運】を【最大命運】の数値へ
前回シナリオクリアしたことで成長してるから
悠仁【最大命運】１７
脹相【最大命運】１６
憂太【最大命運】１４
直哉【最大命運】１５
だね
一回でこの成長だと最終的にはすごい数になってるんだろうな

[16 GM 25/01/11(土) 10:32:35]

【希望】を【初期希望】＋人数による修正へ変更
４人だと修正値は＋PC全員の呪印の平均値
全員１だから＋１で

悠仁【希望】３
脹相【希望】４
憂太【希望】４
直哉【希望】４
だね

[17 GM 25/01/11(土) 10:33:17]

こうしてキャンペーンが進むと【命運】も【希望】も増えていくよ（イベントの【命運】や恐怖の効果算出も強化されていくけど）

[18 GM 25/01/11(土) 10:33:46]

［クリンナップ］が終わったので行動順を決めよう

今回はPC①から④まで全部ダイスで決めるよ

PC①は

dice1d4=2 (2)

１・悠仁

２・脹相

３・憂太

４・直哉

[19 GM 25/01/11(土) 10:35:09]

今回最初に行動するPC①は脹相だね

次に行動するPC②は

dice1d3=3 (3)

１・悠仁

２・憂太

３・直哉

[20 GM 25/01/11(土) 10:36:02]

PC②は直哉だね

PC③は

dice1d2=1 (1)

１・悠仁

２・憂太

[21 GM 25/01/11(土) 10:37:30]

今回は脹相→直哉→悠仁→憂太の順番に行動するよ

[22 GM 25/01/11(土) 10:39:02]

次は［物語展開シート］の公開
今回のシートの初期状態はこうなってるよ

[23 GM 25/01/11(土) 10:41:19]

次は［宿命］の準備

いい出目だといいな

［宿命］

dice4d6=3 6 2 2 (13)

[24 GM 25/01/11(土) 10:44:51]

うーん、低めかな
では［準備フェイズ］は終わって次は［事件フェイズ］
今回は日常の内容を予め決めてきたので日常表は振らないよ

最初は脹相の日常から
前回のダイスで補正なしでも高好感度を出した三人
同じく夜蛾を保護者とするミミナナとパンダとのシーンだよ

[25 GM 25/01/11(土) 10:50:23]

　脹相はその日、菜々子、美々子、パンダと一緒にいた。
菜々子「で、ちょーさんはさ」
脹相「その『ちょーさん』とは俺のことか？」
菜々子「そうだけど？」
パンダ「前と呼び方変わってないか？」
菜々子「だってさー、なんかなかなかしっくり来るあだ名が思いつかないんだって」
美々子「あだ名とは違うかもしれないけど、『脹お兄ちゃん』じゃだめかな」
菜々子「『脹お兄ちゃん』……『脹兄ぃ』いいかもそれ」
脹相「俺はお前たちの兄ではないぞ？」
菜々子「そりゃ血は繋がってないし、出会ってそんなに経ってないけど、家族じゃん」
脹相「家族、なのか？」
美々子「えっ、違うの？」
脹相「いや……」
　美々子の悲しそうな顔に、脹相は『家族』について考えてみる。
　脹相にとって家族とは、血の繋がった存在のことだ。
　しかし、それだけでないのかもしれない。
　実の姉妹である美々子と菜々子。二人と血は繋がっていないパンダ。その関係に差はある、あるが、『家族』であることは変わりがないように思う。そう見える。
　夜蛾も、実の息子らしいパンダと、後から娘同然になった美々子と菜々子、そこに加わった脹相に対し、分け隔てなく『家族』として接している。
　家族の形は一つではない。『血の繋がり』でできた家族。血は繋がっていなくとも、『想いの繋がり』でできた家族。
　そうだ、脹相達兄弟も『血の繋がり』だけでできてはいない、『想いの繋がり』もあっての兄弟だ。
　考えてみる、想像してみる。ありえないことだが。もしも、脹相と弟達に血の繋がりなどないという事実があってそれが今になって明かされたとしたら？　それまでの絆は絶たれ家族ではなくなるのか？
　そんなことはない。『血の繋がり』は消えても、互いを思い遣って過ごした時間は、『想いの繋がり』は消えはしない。俺達は兄弟だ。家族だと断言できる。
　だから——
脹相「考えてみたんだが。俺たちは『家族』だと思う」
　美々子達の顔がパッと明るくなる。
菜々子「だ、だよね！　あー、ドキドキした」
美々子「じゃあ、『脹お兄ちゃん』って呼んでもいい？」
脹相「ん、それは。考えさせてくれ。まだ戸惑いがある」
パンダ「いいんじゃないか？　『お兄ちゃん』呼びじゃなくても。俺も美々子と菜々子のことお姉ちゃんだと思ってるけど『お姉ちゃん』って呼んだことないしな。呼び方より大事なものがあるだろ」

[26 GM 25/01/11(土) 10:51:47]

美々子「そう思ってるなら呼んでよ！」
菜々子「初耳なんだけどパンダ！」
　パンダを挟んで「お姉ちゃんって呼べー」とはしゃぐ二人。
脹相「そういえば、美々子と菜々子は互いを名前で呼び合っているが、どちらが姉なんだ？」
菜々子「それは双子だし、だけど」
美々子「どっちが姉だと思う？」
脹相「えっ。そうだな……み、いや、な」
　これは間違えてはいけないのではと慎重にこれまでのことを思い返す脹相。
　菜々子がリードしているように見えるから菜々子か？　いやそう見えて美々子が？
　脹相がうーんと悩んでいると、美々子と菜々子はぷっと吹き出し、あははと笑う。
菜々子「そんな真剣に悩まなくても」
美々子「ほとんど一緒に産まれたんだから、気にしてないよ、どっちが姉かなんて」
菜々子「そうそう、だから名前で呼んでるんだし」
脹相「そうか。ならいいんだが（双子とはそういうものなのか？）」
菜々子「えーっと、そんでさ、家族のお兄ちゃんって意味じゃなくてもさ、近所の仲良しの人でも『お兄ちゃん』って呼ぶんだよ。だからそういう意味でのあだ名ってことなら、呼んでもいいかな『脹兄ぃ』って」
美々子「うん。あだ名で『お兄ちゃん』」
脹相「あだ名……いや、家族という意味でもいい、好きに呼んでくれ」
菜々子「いい？　やった。よろしく脹兄ぃ！」
美々子「よろしくね、脹お兄ちゃん」
パンダ「よろしくなお兄ちゃん」
脹相「パンダもか？　いやいいんだが、呼びたいなら」
パンダ「いや普段はこれまで通り脹相って呼ぶけどな。気が向いたら呼ぶぞお兄ちゃんって」
脹相「そうか。（俺からも言うべきだろう）これからもよろしく」
　次に忌庫に行った時弟達に報告することが増えた脹相だった。

[27 二次元好きの匿名さん 25/01/11(土) 10:52:53]

おっ今気づいたけど待ってた！
楽しみです

[28 GM 25/01/11(土) 10:53:33]

次は直哉の日常
変わりすぎた禪院家にて

[29 GM 25/01/11(土) 10:55:27]

　直哉はその日、実家にいた。

　実家にいれば身の回りのことを使用人に好きなだけ頼めるため楽ではある。だが、直哉は実家の空気が苦手だった。この昔と違う、ぬるーく甘っちょろい空気が。

　甚爾の実力を禪院家として正式に認めるようになったのはいいことではあるが。

　わかってはいたのだ、禪院の人間達が本当は変わりたがっていて、そのきっかけを待っていたことは。

　そのきっかけを与えたのが甚爾なのも喜ばしく誇らしいことである。

　しかしなんなのだろう、なぜこうなったのか。いや皮を剥けば元からこうだったのか。

　一言で言えば今の禪院家は『仲良し』だ。実力のあるなし術式のあるなしに関わらず。

　直哉がどんな嫌味や皮肉を言っても真意を読み取ってはくれない。そのくせ気まぐれに遠回しに気を遣ったときは必ず汲み取る。

　直哉の真意、「この家のやつらが仲良しなんてキショいわ」を察して直哉に冷ややかな目を向けるのは叔父の扇くらいなものだ。

直毘人「おう、直哉。いい酒が手に入ったぞ、これでも飲みながらアニメでも見んか」

　父親の直毘人が酒瓶とアニメDVDを持ってやってきた。

直哉「もう飲んでるやん。アニメなぁ……」

直哉は直毘人の趣味であるアニメが

dice1d6=3 (3)

１・大好き

２・好き

３・普通

４・嫌い

５・大嫌い

６・アニメは好きだが直毘人とは趣味が合わない

[30 GM 25/01/11(土) 10:57:34]

おっと、今回は悠仁達に見えてるダイスだけSSパートに載せる仕様にしようと思ってたのに
直哉のアニメ好き度は普通だね
付き合いでなら見てくれるかな

[31 二次元好きの匿名さん 25/01/11(土) 11:00:17]

アニメは普通だからこそ直毘人ほどのこだわりや偏見無しなのかもな
勉強にはなるとか思ってるのかも？

[32 GM 25/01/11(土) 11:00:42]

直哉「まあええけど」
　直哉は直毘人の持ってきたアニメを一緒に見た。映画だったので二時間もせずに終わった。
　直毘人は観終わると立ち上がり自室に戻ろうとして振り返る。
直毘人「ああ、忘れるところだった」
　と言って直毘人が直哉に渡したのは、手紙だ。
直哉「なんやこれ？」
直毘人「遠い親戚から送られてきた。直哉、お前が行ってきてくれ」
　直哉は手紙の内容を確かめる。
直哉「ええけど。使えるもんやといいけどな」
直毘人「行くなら他にも誰か連れて行け。ほら、お前と仲の良いあの三人あたりでどうだ」
　直哉は顔をしかめる。
直哉「別に仲ええわけちゃうわ。こんなん俺一人でええやろ」
直毘人「そうか？　まあ高専にはもう話をしてあるから向こう次第だな」
直哉「は？　なに勝手なことしてん」
直毘人「ははは、いやあすまん、先にお前に話すの忘れとったわ」
　直毘人は酒に酔った赤い顔をくしゃっとさせ、大声で笑いながら部屋を出て行った。
　直哉は膝に置いた手紙を睨む。
直哉「厄介なもんよこしおって」
　嫌な予感しかしない直哉である。

[33 GM 25/01/11(土) 11:02:34]

なにやら起こる模様

次は悠仁の日常
ある日高専にて

[34 GM 25/01/11(土) 11:03:43]

　七海と出会った頃、こんな話をした。
七海「ひとつ、教えておくことがあります虎杖君。五条さん——あの人は学生時代の延長の感覚で教師をやっているということです。一人称こそ変わりましたが中身はあの頃のまま、クソガキです。まともな教師であることは期待できません」
悠仁「んー、俺にとっては恩人だし先生だよ。まあ先生ってより先輩みたいな距離感だけど。友達みたいな先生も楽しいじゃん」
七海「……君はうまくやっていけそうですね」

　五条と二人きりになったある日、悠仁は七海との会話を思い出してたずねた。
悠仁「先生はなんで先生になったの？」
五条「んー？　傑と硝子が高専で働くって言うから、なら僕も教師になってここに残ろうかと思って」
悠仁「友達と同じ職場にしたってこと？」
五条「いやあなんていうか、学生として通ってた校舎にそのままいられるしいっかーみたいな？」
悠仁「えーと、『学生時代の延長』ってこと？」
五条「そうそんな感じ」
悠仁「強い後進を育てよう、みたいなのは」
五条「人手不足ではあるからある程度育った人材はほしいけど、僕と傑がいればたいていなんとかなるし、そこまでかな。上の奴らだっていざとなればボコればいいいんだし。ほら前やったみたいにさ」
悠仁「いつもああなの？」
五条「実際に殴り込んだのはあれが初めて。上は僕らがこわいからね。普段は睨みきかせてるだけでＯＫさ。特級の条件って知ってる？　『単独での国家転覆が可能なこと』それが二人で組んで向かってこられたら、って想像してみて？　どう？」
悠仁「逆らおうとは思わない……？」
五条「だよねー。上はまだまだいろいろ腐ってるけどさ、僕らが生きてる間に跡形残さず変えてやるつもり」
悠仁「夏油先生と二人で？　革命みたいなことすんの？」
五条「革命か、そうだねー、傑と二人きりでもできるけど、前にみんなと殴り込みに行ったの面白かったしみんなでやるのもいいかな」
悠仁「そうだなぁ、面白かったかはわかんねえけど、なんか高揚感っていうの？　勢いに乗ってノリまくった感じはあったな」
五条「うん、修学旅行みたいだったよねー」
悠仁「修学旅行？」
五条「いやあ学べたでしょ「こんな腐った大人になってはいけません！」ってのを」

[35 GM 25/01/11(土) 11:06:26]

悠仁「あ、そういうことか」
五条「うんうん。木刀買っちゃうときってあんな感じのテンションなんだろうねぇ。みんなで騒ぐのも楽しかったし、またやろうね〜」
悠仁「それは、うーん、考えとく。修学旅行テンションの殴り込みもいいけどさ、本当の旅行したいなぁ」
五条「みんなの忙しくないときが合えばやろうか、一年全員旅行」
悠仁「それっていつ？」
五条「来年の交流戦前後かな」
悠仁「は〜、呪術師もっと暇になんねーかなー」
五条「ほんとにね。じゃ、僕これから仕事だから！　まったねー！」
　そう言うなり五条は姿を消した。
　それと入れ替わりで野薔薇と恵がやってきた。
野薔薇「こんなところで一人で何してんの？」
恵「虚空を見上げてどうした？」
悠仁「いや今この瞬間まで五条先生がいたんだよ」
野薔薇「ふーん、仕事か」
悠仁「そ、これから仕事なんだってさ。そんなに忙しいのに教師もやってて大変だよな」
恵「虎杖、あの人は慣れ親しんだ学舎で学生気分継続したいがために教師をやってる人だぞ」
悠仁「知ってる」
野薔薇「マジ？」
悠仁「マジ」
野薔薇「どうりで。絡んでくるノリが教師ってより先輩みたいなわけね」
恵「俺が出会った時、教師になる前から変わってない、いやむしろ年々調子に乗ってきてる気がする」
悠仁「学生のときの親友とずっと一緒だとそうなんのかな」
野薔薇「担任じゃないからそこまで知らないけど、夏油先生もああ見えていまでも悪ガキなところあるのかしら」
恵「さあな。来年になればわかるんじゃないか」
悠仁「来年。そうだ、来年みんなで旅行行かね？」
野薔薇「旅行！　どこよ？！」
悠仁「いやまだなんにも決まってないんだけど、どこにしよっかなー」
恵「みんなって誰だ？」
悠仁「先生含めた一年全員」

[36 GM 25/01/11(土) 11:07:36]

恵「七人でか。結構な人数だな」
野薔薇「貸切バス！には少ないわね……、よし、先輩達も誘うわよ！」
恵「閑散期でもその全員が数日空いてる日があるかだな」
悠仁「日帰りなら？　でもどうせなら泊まりがいいよなー」
野薔薇「くっ、なんで呪霊ってわくのかしら、どうにか閑散期を増やす方法はないわけ？」
恵「災害や事件ができるだけ起きず、人々の心が安定した状態になればいいんだがな」
悠仁「難しいよな。だったら」
野薔薇「だったら？」
悠仁「強い人を増やそう！　順番にまとまった休暇取れるくらいに！」
恵・野薔薇「「……それができれば苦労ない」わ」
恵「呪術師はなりてが少ない。夏油先生の手持ちの呪霊を増やすことに貢献して、先生の呪霊だけで全自動に呪霊狩りができるシステムを構築するほうが現実味がある」
野薔薇「そうほいほいいるもんじゃないのよね、呪術を扱える人間」
悠仁「そうだよなー、なんとかなんねーかなー」
　そんな三人の会話を盗み聴く者が一人いた。
？？「……なるほどね」

[37 GM 25/01/11(土) 11:08:37]

とてもあやしいけどこれから起きる今回のシナリオには関係ないよ

最後は憂太の日常
とある日の任務

[38 GM 25/01/11(土) 11:10:47]

　その日憂太は任務だった。相手は一級から二級が多数。
憂太「ふう、もういないかな」
　憂太は刀を鞘に収めた。あの島での経験以降、刀の振るい方が変わったような気がする。
憂太「前より軽いかもしれない」
　リカの動きにもあの日以来変化があった。ダンスが気に入ったのだろう、戦闘にもそれらしい動きを取り入れるようになった。
憂太「ありがとうリカちゃん、もう休んで」
リカ「うん、憂太も」
憂太「ちゃんと休むよ」
　リカを引っ込ませて、憂太はその場に座る。
　右手を見ると小さな黒い刻印がある。
憂太「（五条先生にも見えないこの印、呪術じゃない、呪いじゃない、こちら側のものじゃない？）」
　憂太が呪印に対する考察を始めようとしたとき電話が鳴った。
　妹からだった。
憂太「もしもし？　うん、元気だよ」
　妹と互いの近況を伝え合う。といっても妹に呪術師の仕事のことは秘密にしてあるため、学校で起きたことで話せることだけだが。
憂太「それじゃあ、うん、平気だよ、またね」
　電話を切った後、スマホを操作してブラウザを開く。
　あの島では見られなかった、呪印に感染したという人達の最新の情報。
憂太「（こんなにいるのに、呪術師の中でそんな話は聞いたことがない。普通は非術師が呪印に選ばれる？　呪術師で感染したのはもしかしたら僕達四人が初めてなのかもしれない）」
　呪印に関する情報。その中でも気になるのは。
憂太「『呪印者の死後、大切に思う人、親しい人に、呪印が感染する。感染する相手は呪印が選ぶため、最も大切な相手に感染するとは限らず、誰が選ばれるかは呪印者にはわからない』、か」
　呪印者と深い繋がりのない、呪印者が一方的に慕っていただけのネット配信主に呪印が感染した（その配信主が生前の呪印者の悩み相談に乗っていたことから発覚した）こともあるらしい。
憂太「（僕の場合誰がなるんだろう。感染するのは人だけ、ならリカちゃんはどうだろう、呪印には感染しない？　いや、もしかしたらもう僕と一緒に感染してる扱いになってるかもしれない）」

[39 GM 25/01/11(土) 11:11:39]

　誰に呪印が感染するのか、今話した妹の顔が浮かぶ。もしも妹に感染してしまったら。妹には自分の力のためにつらい思いをさせた。もう巻き込みたくない。連絡を取らないほうがいいのだろうか。
　誰がなるかはわからない。同級生の誰かかもしれない。パンダの手に呪印を刻めるのか？　不可能ならいいが。誰でもないといい。
憂太「夏油先生ってこともあるかな」
　夏油がつけてくれた呪霊を見る。術式を通して今も夏油がそばにいると言える。これも危険なのか？
　いいや、付き合いが深ければ強ければ感染するというものでもないようだ。だから無駄だ、繋がりを薄めようとしても、多分意味はない。
　人を遠ざけようとするのはやめよう。巻き込んでいるならきっともう遅い。遠ざけたって相手が悲しむだけだ。
憂太「よし、明日はお休みだから、みんなと遊ぼう」
　昔のようにはもうならない。独りになろうとしない。死なない。〈十の災い〉をすべて退ければ、誰にも呪印を感染させなくて済むのだから。
　必ずできる。憂太は自身を鼓舞して立ち上がり、遊びの予定を立てようとグループチャットを開いた。

[40 GM 25/01/11(土) 11:13:17]

事件前の日常が終わったので
ここから事件の導入だよ

さて今回は何が起きるのか

[41 GM 25/01/11(土) 11:15:22]

　窓を雨が流れていた。
直哉「禪院家はな、才ある呪術師を広く血ぃに取り込んで発展してきた一族や。せやからな、あちらこちらに遠縁の親戚がおるんや」
　車中にて、これから行く場所との繋がりを、改めて悠仁達に聞かせる直哉。
直哉「そん中にはまあ地主もおるわな。これから行く藤屋敷家もそういう家や。そんでその家でこれから行われるのが、代替わりに伴う財産の継承式なんや」
悠仁「そこも呪術師の家系？」
直哉「いいや呪いが見えるもんがちょいちょい出て、昔にどえらい優秀な術師を一人輩出しただけの普通の田舎の地主や。今向こうてる村で生まれたその術師は、呪霊祓いに来てた禪院の人間にたまたま見出されてな。その術師が禪院家に入った繋がりで、藤屋敷家はうちの親戚になったわけや。まあ親戚いうても遠縁の遠縁、薄っすい繋がりやけどな」
憂太「そこの家から手紙が来たんですよね」
直哉「ああ、手紙が来た経緯やけどな、先月先代のご当主様が病気で亡くなられて、その孫の海介ゆう人が遺言で跡を継いだんやけど、その海介はんの叔父伯母はまだ生きとってな、自分ら飛ばして甥が当主になったことになんや不満があるらしいで。そんな中、これまた遺言に「蔵は丸ごと海介のものとする」と書かれててな、海介はんはそれにびびりよった、「この通りにしたら叔父さん達からの風当たりがどんなものになるか」ってな。そんでほしがる人がいたらその人にあげてしまおと蔵を開けて中のもん外に出してみたらや」
脹相「呪物らしきものがあった、というわけか」
直哉「そや、そんで祖父から禪院家のことを聞いてた海介はんは、うちを頼って「これが本当に呪物なるものかの鑑定と、真に呪物であれば引き取りをお願いしたい」と書いて寄越したわけや」
悠仁「村では人がなにもないところで怪我する事件が起きてて、それが蔵を開けたときからなんだっけ」
直哉「そうや。で、君ら、ほんまについてくるん？」
　直哉は助手席から三人を振り返る。

[42 GM 25/01/11(土) 11:16:21]

悠仁「え？　その事件、呪物に引き寄せられた呪霊の仕業かもしれないし」
脹相「呪物が特級の可能性もあるだろう。もしそうならお前一人では手に余るんじゃないか？」
憂太「それに、次の〈災い〉がいつ始まるかわかりませんし」
悠仁「そのとき直哉さん一人だけそんな遠くの村にいたら危ないだろ？」
直哉「はあ……君らが来やんでも俺一人でなんとかしたるわ」
悠仁「あのー、前から気になってたんだけど」
直哉「なんや」
悠仁「『コヤン』ってなんて意味？　直哉さん以外から聞いたことないかも」
直哉「『来ない』の『来』に『やん』や、元は和歌山あたりの言葉らしいけど、近頃は大阪やらの若者も使うとるんやて。俺も大阪の知り合いが使うとるの聞いて使うようになってな、まあ普通に『来（き）いひん』も使うけどって、別にええやろそないなこと。他にないんか聞きたいこと」
悠仁「んー、これから行く村の名前ってなんだっけ」
直哉「『風』が『和』むと書いて風和村（ふうわむら）や」
　と、直哉は窓の外に目をやる。村に近づくほど雨風が強まりつつある。村は名に相応しくない有り様になっていることだろう。

[43 二次元好きの匿名さん 25/01/11(土) 11:18:03]

日常も面白いなあ
この世界本当に独特だなって毎回思ってる気がする
そこがいい

[44 GM 25/01/11(土) 11:19:37]

　村に着くと、車は四人を置いて引き返していった。遺産分配式でピリピリしてる中、できるだけ家に村の外の人間を入れたくないとのことだ。四人を送ってきた補助監督には隣の町で待機しててもらう。
　村に入ったところには藤屋敷家からの迎えが待っており、四人は車から車へ乗り継いだ。その僅かな間でびしょ濡れになるほど風雨は激しく傘など無意味だ。
　藤屋敷家の屋敷はそのまま藤屋敷と呼ばれている。季節になると名の通り見事な藤の花を咲かせるらしいが今は時期はずれの上この嵐だ。雨で霞む景色の中どこに肝心の木があるかもわからず、屋敷の輪郭もぼんやりしている。かろうじて、純和風の装いの二階建てであることがわかった。
　屋敷の玄関の中には、一人の青年が待っていた。彼が海介だろう。
海介「このような天気の中ご足労いただきありがとうございます。僕が藤屋敷海介です。先月祖父から跡を継ぎまして、藤屋敷家の当主を務めております」

[45 GM 25/01/11(土) 11:20:52]

今回名ありNPCが２０人以上登場して誰が誰かわからなくなるだろうから
顔つき紹介カードを作ってみたよ
多すぎるから全員覚えなくてもいいよ

[46 GM 25/01/11(土) 11:22:17]

　当主としての挨拶に慣れてなさそうな青年・海介は、話の前にと四人に風呂と着替えを勧めた。
　住人が多いからか、屋敷には二つの大浴場があり、四人はその男湯のほうへ案内された。
海介「着替えを用意させますね。今着ている服は洗濯して乾かしておいてよろしいでしょうか？　うちには着物専用の洗濯係もおりますよ」
　四人は頷き、風呂へ向かった。
　入浴中、脱衣場で人の気配がした、服の交換をしにきたのだろう。
　四人並んで体を洗い湯船に浸かる。
悠仁「はー、あったまるうー」
　悠仁は思い切り足を伸ばし、冷えた体を温める。
直哉「脹相、君うっかり血ぃ垂らさんといてや」
　直哉は万が一を考え脹相と距離をとりつつ言う。
脹相「む……、気を抜かないよう気をつける」
　赤血操術で体温を保てていても風呂は心地良いのだろう、脹相はややぼんやりと答えた。
憂太「外、すごい嵐だね」
　憂太は風呂場の窓を見上げた。そばに生えてる木の枝が風呂場の壁に当たる音がしている。
憂太「これは危ないかな……」
　憂太の言葉に顔を見合わせ、四人は（いつもの、おきまりの）嫌な予感を抱いた。

[47 GM 25/01/11(土) 11:24:47]

　着替えは、下着と浴衣に、湯冷めしないようにだろう、どてらが用意されていた。
　脱衣場を出ると使用人が待機していた。客間へ案内される。
　客間に海介が待っていて、海介の対面に四人分の座布団が敷かれている。四人が座ると、女中の手で机に温かいお茶とお茶菓子が並べられていく。並べ終わると女中は一礼して部屋を出ていった。
海介「では、改めて、藤屋敷海介です」
　海介はまだ二十三歳、今年の春、山三つ向こうの隣町の大学を卒業したばかりだという。
　四人もそれぞれ名を名乗る。
直哉「そんで、その呪物らしきもの言うんは？」
　早速切り出す直哉。
海介「今は蔵にあります。本日の正午より分配式が始まりますので、その後で見ていただきたくて」
直哉「なんや今見たらあかんのか」
海介「分配式が終われば正式に僕の物になるので、それからがいいかと」
　海介は話し始める、分配式とは、先代当主寅介の遺言にあったものである。確実な相続のため、遺言預かり役であり見届け人である藤屋敷家の弁護士立ち会いのもと、藤屋敷家のすべての財産がひとりひとりに渡される。
　遺言には「蔵のものはすべて蔵ごと海介の物とする」と書かれてあった。蔵を開けずともそのまま蔵ごと受け取ればよかったのだが、ただでさえ一世代飛ばしての当主就任に海介の父の弟からは不満が漏れているのだ。当主のみが立ち入れる蔵の中、値打ち物があるかもしれないそれらすべて一切合切海介の物になるとなれば、今後の風当たりがどれだけ強くなることか。
　そのために海介は分配式の前に蔵を開け、中の物を一つ一つ一度外に出して確かめたのだ。海介が要らず家族が欲しい物があれば譲ろうと。
直哉「君の両親はもうおらんのやな？」
海介「はい、五年前に事故で」

[48 GM 25/01/11(土) 11:25:36]

　そこで、悠仁は襖の隙間から覗く目に気づいた。誰だろうか。敵意は感じない。悠仁はさっと立ち上がり襖を開けた。
？？「きゃっ」
　驚いた顔で悠仁を見上げるのは幼い少女だ。まだ小学校にも上がっていないだろう。
海介「那海？　どうしたんだい？」
那海「……あのね、お兄ちゃん、いなかったから」
　那海と呼ばれた少女は海介に駆け寄り隣に座る。
海介「ああ、すみません、この子は那海、僕の妹です」
悠仁「妹？」
直哉「ずいぶん歳の離れた兄妹やな」
　その反応に海介は苦笑気味に笑い、
海介「ですよね。那海、今お話ししてるから遊ぶなら」
那海「おにいちゃんたちは？　だあれ？」
　四人を見て小首を傾げる那海。
海介「この人達は僕のお客さんだよ」
那海「おきゃくさん？」

[49 GM 25/01/11(土) 11:27:42]

ここで【精神】の高い誰かにこの子が懐くんだけど

脹相、悠仁、悠太が同値なのでダイスを振って高い目が出た人に

脹相

dice1d6=5 (5)

悠仁

dice1d6=6 (6)

憂太

dice1d6=3 (3)

[50 二次元好きの匿名さん 25/01/11(土) 11:31:00]

なみ？ちゃんかわいい

[51 GM 25/01/11(土) 11:39:56]

　那海は机を回って悠仁達に近づき、にっこり笑う。
那海「あのね、なみです、五さい」
悠仁「俺は悠仁、よろしくな」
憂太「憂太だよ」
脹相「脹相だ」
直哉「直哉や」
那海「ねえ、みんなのお写真とってもいい？」
　那海は首から下げたプラスチック製の小さなカメラを見せる。
悠仁「いいよ。みんなもいいよな？」
　直哉以外は快く頷く。直哉も快くはないが「別にええわ」と頷いた。
那海「ありがとう！」
　那海は何回かシャッターを押した。
悠仁「それデジカメ？」
那海「そうだよ、いんさつしてもらうの」
悠仁「写真撮るの好きなのか？」
那海「うん、お兄ちゃんがいないときにとって、お兄ちゃんが帰ったら見せてたの」
悠仁「そっか、お兄ちゃんは学校に行ってたもんな」
那海「うんでもね、お兄ちゃんがいなくても、そんなにさみしくなかったよ。おうちのなかにお友だちがいるから」
悠仁「そっかよかったなー」
　那海は特に悠仁に懐いたようだ。悠仁の手を握って引っ張る。
那海「ゆうじおにいちゃん、ねえ、あそぼ」
海介「那海、ええと、すみません」
　海介は立ち上がり、那海の手を引いて廊下へ向かう。
海介「分配式が終わるまでここでお待ちください。それまでに何かありましたら、隣の部屋の使用人にお申し付けください」
　那海は名残惜しそうだったがおとなしく海介についていく。
　海介と那海の姿は閉ざされる襖の向こうに消えた。

[52 GM 25/01/11(土) 11:48:10]

　海介と那海が去ったあと、４人は客間でくつろいでいた。
悠仁「このお菓子美味いな」
憂太「こっちのも美味しいよ」
悠仁「あー、美味い！　いつもは宿儺が出てきて勝手に食うからさ、なんか知らんが今日はおとなしくてよかった〜」
直哉「アカン、茶ぁ冷めてしもてる」
脹相「温めるか？　人肌よりは温かくなるぞ」
　赤燐躍動で体温を上げた両手を差し出す脹相。
直哉「まあ毒が入らんならええわ」
　脹相に自分の湯呑みを渡す直哉。
　冷めたお茶が熱されほのかに湯気が立ち出す。
悠仁「おお、すげー、この急須も温めてくれるか？」
脹相「ああ」
　脹相は急須を両手で包む。熱されたのを確かめて悠仁に手渡す。
悠仁「ありがとな。お茶菓子にはお茶だよなー」
　悠仁は空になった湯呑みにお茶を注ぐとまた菓子をほうばる。
直哉「しっかし暇やな」
憂太「そうですか？　楽しいですよお茶会」
直哉「君らはそうやろな」
　と言いつつ菓子を手に取る直哉。
脹相「菓子もそろそろなくなるな」
悠仁「そうだなー、なんかして遊ぶ？」
憂太「トランプとかないか聞いてみる？」
直哉「それやったら俺はパス。寝るわ」
　この面子で仲良しこよし遊ぶくらいなら寝たほうがマシと横になる直哉。
脹相「食べてすぐ横になると牛になるらしいぞ」
直哉「ならんわ」
脹相「そうなのか？　もし牛になられたら連れ帰るのが大変なんだが」
直哉「ほんまになるわけないやろボケ。どんな超常現象や。呪霊が生まれるより百倍不思議やろが」
　直哉はごろりと姿勢を変えて顔を背けた。

[53 GM 25/01/11(土) 11:51:04]

悠仁「じゃあなんか話でもするか。あー、なんか、気になってることの話とかする？」
憂太「気になってることか、うーん」
直哉「それやったら気になることあんで」
　と、寝そべったまま話に加わる直哉。
直哉「君の器になった呪詛師の術式」
脹相「俺の器の術式か、そうだな。……相手をびっくりさせることで発動する術式のようだ」
悠仁「びっくりさせる？」
脹相「ああ、びっくりさせればさせるほど、相手の状態に強く干渉できるものだ。その呪詛師はネットのページを開いたら時間差でふわっと出てくる広告をうっかり踏んだ相手に、大音量でぴかぴか光るブラクラ？映像を見せて驚いた相手を呪殺していたようだ」
悠仁「うっ、ふわっと出てくる広告にブラクラ映像……」
憂太「それはひどいね……」
脹相「そんなにひどいのか、ふわっとした広告とブラクラ映像とやらは」
直哉「最悪やね。最期に味わうもんがふわっと出てくる広告踏んでもうたイライラとブラクラなんて最低や。そんな呪詛師は死んだらええねん」
脹相「たしかに俺の器にならなければ死刑になるはずだったが、そんなに恐ろしい呪詛師だったのか……」
直哉「で、使えるん？　その術式」
脹相「いや使えない。その呪詛師は呪力と術式はあっても特級呪物への耐性はない人間だったから、その肉体は俺の情報で完全に上書きされている。使えても使う気はないが」
悠仁「使えんならよかった。そんでさ、えーと、そうだ伏黒の父ちゃん」
直哉「甚爾君がどないした」
　直哉はガバッと起き上がった。
悠仁「いやこの間パ」
　そのとき、悲鳴が聞こえた。
悠仁「え、いまの」
　今度は別の人物の悲鳴。
　四人は立ち上がり部屋を飛び出した。
　悲鳴が聞こえた方角へ走ると、同じくそこへ向かっているらしき人達がいた。その先には人だかり、その向こうにあるのは、血溜まり。

[54 GM 25/01/11(土) 11:53:31]

憂太「通してください！」
　憂太は血を流し倒れている人物のもとへ走り、生死を確かめる。
憂太「生きてる！　これなら！」
　しかし周囲には呪術のことなど知らぬ人々がいる。
　悠仁と脹相も前へ出る。
直哉「こん人は若いけど医者や、どこか運べる部屋ないか？」
　周りの不審な者を見る目を察し、面倒なことに巻き込まれたくない直哉は嘘を吐くことにした。
使用人「それなら、こちらに！」
　悠仁と脹相が怪我人を抱え上げ、憂太が傷口に手を当てながら移動する。部屋へ入り、襖を閉める。
　血まみれの人物を床に寝かせ、憂太は集中して反転術式をかける。ここまで来る途中もかけていたため傷口は塞がりつつある。問題は失血だ。呪力を血液に変換し補い、命を繋ぎ止める。
憂太「ふうっ、もう大丈夫」
直哉「傷残したか？　完全に消えてたら変やで」
憂太「はい、血が出てこないくらいには。これで包帯を巻けばわからないかな。虎杖君、使用人さんに包帯もらってきてくれる？」
悠仁「わかった！」
　悠仁は部屋を飛び出し、すぐに戻ってきた。
悠仁「この家のお医者さんがいたからもらってきた！　その人こっちに来る！」
　憂太は急いで血まみれの首に包帯を巻いた。
憂太「これでいいかな」
　襖が開かれる。
医者「患者はどちらに？」
　部屋へ入ってきた医者は脈や血圧、体温を測り、胸に聴診器を当て、まぶたをめくる。
医者「かなりの出血があったようですが、それにしては落ち着いている。急変する可能性があるので油断はできませんが、いまのところ命に別状はないようだ。処置はあなたが？」
　医者は、手を血で濡らした憂太を見る。
憂太「はい。あの、こう見えて医者なので」
　直哉の嘘に憂太は合わせることにした。
医者「そうですか。手早い処置のおかげでしょうな。縫合なども？」
憂太「はい。緊急だったので。適切な処置ができたと思います」
　平静そうに自信ありげに語っているが、心の中では冷や汗をかいている憂太だった。
医者「この短時間で、すごいですな、都会の方で？」
憂太「はい東京から」

[55 GM 25/01/11(土) 11:57:47]

悠仁「（あやしまれてる？）」
脹相「（この時間で縫えるものなのか？）」
直哉「（呪術で治したとか夢にも思わんやろ平気や平気）」
医者「あなたがたは、海介様のお客様で？」
　四人はこくこく頷く。
医者「では患者は私に任せて海介様のところへ」
憂太「お願いします」
　四人はそっと部屋を出た。部屋を出ると遠巻きに使用人達がこちらを見ていた。
悠仁「先輩、とりあえず手、洗お。すみませーん、手、洗えるところ案内してください」
　声をかけると一人やってきた。
使用人「は、はい。あの、旭照様は」
悠仁「あきてる？　あ、あの人か、あの人なら命に別状はないってこの家のお医者さんが言ってました」
　使用人達から一斉に安堵の息が漏れる。
使用人「よかった……。ああ、こちらです手洗い場は」
　止血をしていた憂太と、抱え上げるとき頭側を持っていた悠仁が手を洗い終えたとき、どこかで戸が開く音と大きな声がした。
使用人「大変です！　トンネルが土砂で！！」
　その声を掻き消すような、更なる大声、
？？「ああっ！？　海介さまっ！？！？」

[56 GM 25/01/11(土) 11:59:02]

　海介に何かあったらしい。
　四人が方向を探り当て駆けつけると、開け放たれた大きな扉の前で海介が倒れていた。呻いている、生きている。そばには使用人の姿。
憂太「しっかり！　どこが痛みますか？」
　憂太は海介のほうへ、悠仁と脹相と直哉は使用人のほうへ。
脹相「なにがあったんだ？」
使用人「いえ、わたしがきたときには海介様が倒れていて、なにがあったのか」
直哉「これが蔵か？」
使用人「ええ、そうです、ご当主様しか開けられない……」
悠仁「開けたところで襲われたってことか？」
海介「う、うう……」
　海介が起き上がる。
悠仁「海介さん！　起き上がっていいの？」
憂太「大丈夫そうだよ」
海介「あ、ああ、匣……」
　海介はふらりと蔵の中へ入ると一点を見つめ叫ぶ。
海介「ああ無い！　匣が無い！！」
悠仁「箱？」
　それが例の呪物なのか。それがなくなっている、盗まれた？
　海介は四人に振り返る。
海介「みなさん、例の物が、あの匣が盗まれたんです……！！」
　その言葉を聞いた四人の手に、覚えのある痛みが走る。毒虫に刺されたような痛みと共に刻まれる青い巴の刻印。二画目の呪印。
　二度目の〈災い〉の始まりだった。

[57 GM 25/01/11(土) 12:01:24]

導入終了
呪印を全員に一画追加して

今回のキャラクターシート
PC①脹相

[58 GM 25/01/11(土) 12:01:59]

PC②直哉

[59 GM 25/01/11(土) 12:02:42]

PC③悠仁

[60 GM 25/01/11(土) 12:03:19]

PC④憂太

[61 GM 25/01/11(土) 12:06:22]

制限時間は４人なので今回も解決フェイズ３周がリミットだよ

ここから［解決フェイズ］をやっていくけど自由に行動できるようになる前に［シーン：GM］があるよ

[62 二次元好きの匿名さん 25/01/11(土) 12:13:31]

その内菓子取りに来る宿儺がでてこなかった時点でまさか災い…？ってなりそうで面白い

[63 GM 25/01/11(土) 12:47:31]

　刻まれた呪印に四人が災いの始まりを感じていると、一人の男性が廊下をドタドタと走ってきた。
？？「海介、どうしたんだ！　お前も襲われたのか！？」
　男性は四人に疑惑と怒りの表情を向ける。男性が口を大きく開き、何事か叫ぶ前に、海介が男性と四人の間に割って入った。
海介「樹介叔父さん、この方達は僕のお客さんです、怪しい者ではありません」
樹介「お前の客？　何者だ？　旭照を襲った者ではないというのか？！」
海介「旭照さんが？　なにがあったんですか？」
樹介「旭照は首を切られて、命に大事はないとのことだが……」
　涙ぐむ樹介。樹介はどうやら襲われた旭照の父親のようだ。犯人を捜して屋敷内を駆け回り、使用人の悲鳴でここに来たのだろう。
海介「皆、集まりましょう、無事を確かめないと」

[64 GM 25/01/11(土) 12:49:49]

　海介の号令により大広間に、屋敷にいる一族の者が集められた。
　海介は四人のそばに座る。
海介「旭照さん以外は無事みたいです」
悠仁「海介さんは？」
憂太「殴られたんですよね」
海介「後ろから肩を強く殴られてね、でももう平気ですよ」
　海介は広間に集まった人々を順に四人に紹介し始める。
海介「さっきの人が父の弟の樹介叔父さん。旭照さんの父親です」
　樹介は息子が殺されかけ酷く動揺しているようだ。膝を強く握りしめている。
海介「その隣にいるのが叔父さんの妻の美楽さん」
　美楽は自分も涙を堪えながら、夫を慰めている。

[65 GM 25/01/11(土) 12:50:59]

海介「その隣が樹介叔父さんと美楽さんの娘で、旭照さんの妹の朱夕夏さん。……朱夕夏さんの隣が夫の勲さん。二人は九月に結婚したばかりなんです」
　朱夕夏は口元を抑え震えている。勲はそんな妻の肩を抱いている。

[66 GM 25/01/11(土) 12:52:10]

海介「旭照さんは小学校の先生で、朱夕夏さんは中学校の先生なんです」
　海介は紙に名前を書いていく。
憂太「旭照さんの容体は？」
海介「呼吸も脈も安定してるけど、意識はまだ戻ってないみたいです。せめて村の病院に運べれば。この嵐ですから、連れていくには体に負担をかけないための準備が必要です」

[67 GM 25/01/11(土) 12:53:40]

海介「あの人は父の姉の蓮菜伯母さんです。体が弱い人なので心配だな……」
　蓮菜は青ざめ今にも気を失いそうに見える。
海介「伯母さんを支えてるのが夫の正雲さん。村長の弟さんです」
　正雲は妻を抱え、励ましているようだ。

[68 GM 25/01/11(土) 12:54:27]

海介「二人の娘の遥予さんと、夫の蔵馬さん」
　遥予は母を心配した様子で見ながら、子供二人を抱きしめている。
　蔵馬は娘二人に何事か言い聞かせている。

[69 GM 25/01/11(土) 12:55:23]

海介「あの子達は愛咲ちゃんと紗鳥ちゃん。双子の姉妹です」
　愛咲と紗鳥はなにがあったか聞かされていないのだろう。皆の様子を少し不安そうに不思議そうにきょろきょろと見ている。

[70 GM 25/01/11(土) 12:56:11]

海介「弁護士の庭田先生、藤屋敷と三火牧と石星、三つの家を担当してます」
　庭田はハンカチでしきりに汗を拭っている。
海介「いま旭照さんについてくれてる九島先生は村の病院の元院長先生なんです」

[71 GM 25/01/11(土) 12:57:21]

　海介はそばに立つ二人の男女を指し、
海介「家令の村野さんと、女中頭の田川さん。家のことで聞きたいことやわからないことがあったら、この二人に頼ってください」
　村野と田川は四人に向けて一礼した。

[72 二次元好きの匿名さん 25/01/11(土) 13:11:38]

追いついた
登場人物いっぱい！
全員の紹介カードあるのすごい
描くの大変だったんじゃ

[73 GM 25/01/11(土) 13:30:10]

　海介が広間にいる全員を紹介し終わった頃、使用人達から親族への現状説明も終わったらしく、それぞれ固まって個室へ移ることになった。
　客間に入ると海介は言いにくそうに四人に話し出した。
海介「それで、ですね、皆さんは僕のお客様ですが、余所から来た方々なので、今回の旭照さんのことと僕のこと、蔵のことで、良い印象を持たれていないと言いますか、……疑いを持っている人もいると思います。なので、しばらくは屋敷の中から出ないでください。できれば一室にとどまって、移動する際は使用人の誰かを伴っていただきたいんです」
直哉「容疑者ちゅうわけか」
海介「すみません……」
悠仁「まあこんな状況だし仕方ないッスよ」
憂太「そうですよ。そんな顔しないでください」
脹相「よくあることだ。気にするな」
海介「はい。ありがとうございます」
　脹相の言葉は単なる気遣いだと思ったのだろう。海介は追及してこなかった。実際四人は慣れっこなのだが。
悠仁「それでトンネルは？」
海介「反対側の、村から見たら出口のほうが土砂で埋まってしまって通行できなくなっています。通れるようになるのはいつになるか。こんなことになってしまって……」
憂太「いえ、よくあることですから」
脹相「山では定番と言ってもいい」
悠仁「俺たち慣れてるんで！」
海介「そ、そうですか？　この村では初めてのことなのですが、よくあることなんですね」
直哉「そんで、町の消防や警察には連絡したん？」
海介「いえ、電話がどれも通じなくなっていて、インターネットのほうも使えず、どうしたものか。バスも運休なので、そこから気づいてもらうことは難しくて、たまたまこちらに向かう車があればいいのですが」
憂太「僕たちを送ってきてくれた人が町で待ってるので、連絡がつかなかったら様子を見にきて気づいてくれると思います」
海介「そうなのですね」
　海介は少し安心したようだ。
海介「けれど、旭照さんや僕を襲い、匣を盗んだ人物はいまも必ずこの村の中にいます。人物、いえ、蔵を開けてから出ていた怪我人のことを考えると、人ではない……？」