【SS】エリカッチュXと夢幻の決闘者(カモさん)【閲覧注意】

  • 1二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 17:49:43

    全ての始まりは、人気ストリーマー「珊瑚妖精キユリ」が自信の持ち番組で発信した内容だった。

    「こんにちゆりゆり~!今日のビッグニュースはあの人気アイドル「ハラグロX」が新メンバーを探してるんだって!」

    ハラグロXとは、正式名称「腹の色真っ黒ーバーX」、幾度となくメンバーの入れ替えが繰り返され、ファンに気のあるフリをしてファンをカモのように扱う腹黒さにより人気を博した…と、キユリはwikiを丸パクリでもしたように説明した。俺は一言、「なんじゃそりゃ」

    ただ、興味本位で、ハラグロXが次にライブを行う場所がたまたま自宅から近かったので、行ってみる事にした。

    しかし、この時はまさかあんな事が起こるなんて、想像すらしていなかったんだ。

  • 2二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 17:50:14

    ライブ当日。俺は今こうやってハラグロXのライブ会場にいる。さっきから聞けば聞くほど腹黒さが伝わってくる楽曲と、それで熱狂する周囲のファンの姿は、先日の番組での紹介に嘘偽りのない事を示していた。しかもこのライブ、チケットに加えてファンクラブへの加入が必須とかで、入る時に入会費まで取られる始末だ。二度とこないからなこんなライブ。会員証の「カモナンバー23578」を見るだけで腹が立ってくる、帰ったら退会してやるからな。

    …そうこうしている内に、ライブは終わりを迎えるらしい。のだが、何やら重大発表があるとか。センターの「龍后妖精エリカッチュX」がこう告げる。

    「今からランダムで決めるカモナンバーのカモさーん!ご用があるのでこの後、楽屋まで来てねー!」

    そうなんだ。帰ろ。

    「それではー!気になるカモナンバーは〜!23578!カモナンバー23578のカモさんは楽屋まで来てねー!」

    そうなんだ、帰ろ。

  • 3二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 17:50:39

    俺は帰ろうとしたのだが、ご丁寧に出口で会員証をチェックされ、楽屋まで案内されてしまった。本当に帰ったら退会してやるから覚悟しとけよ?楽屋に入ると、エリカッチュXに加え、他のメンバーの「完璧妖精サエポヨX」、「完璧妖精マリニャンX」、「完璧妖精オチャッピィX」の姿もあった。そして、入るや否やエリカッチュXが俺に。

    「お願い!ハラグロXのマネージャーになって!」

    …と頼むのだった。何で???

    話を聞くとこうだ。ハラグロXはメンバーの入れ替わりはもはや珍しい話ではないが、先日ついにマネージャーにも逃げられてしまったという。そりゃそう。加えて新メンバーを迎え入れないといけない事態になり、マネージャー不在の状況に頭を悩ませていたそうだ。

    「そういう訳だからマネージャーになって新メンバーを探してきて!この絶好のタイミングでファンクラブに入った絶好のカモさん♡」

    断りたくて仕方がないが、人気アイドル直々の頼みを蹴ったら今度は社会的に◯されそうなので、しぶしぶ承諾する事にするのだった。

  • 4二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 17:51:04

    かくして、ハラグロXの新メンバーを探す為、まだ見ぬスノーフェアリーに会いに行く冒険が始まった。俺に加えてエリカッチュXも付いてきている。まぁメンバー探しなんだからセンターも同行するのも納得だが、それ以上に俺が帰りたそうにしているのを察して監視しているのだろう。俺が権力者なら一発くらいビンタしているところだ。

    「とはいえ、ハラグロXの新メンバーに相応しいまだ見ぬスノーフェアリーなんてどこにいるのかな?」

    よりにもよって全くのノープランときたものだ。せめて何らかの目星くらいつけて欲しい。これは困った。昨日のキユリの番組によると、これまでのメンバーには近年だけでもエール、ビスカといった中々のメンツが加入していた。それを上回る話題性となると…いや待て?昨日の番組?

    そうだ、この状況を解決してくれそうなのがいるじゃないか。

  • 5二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 17:51:45

    エリカッチュXの根回しにより、俺は「彼女」とコンタクトを取る事に成功した。それは…

    「こんにちゆりゆり〜!君がキユリに会いたいっていうカモさん?」

    不名誉極まりないファーストコンタクトだ。何はともあれ、既にストリーマーとして人気大絶頂の「珊瑚妖精キユリ」、彼女ならメンバーになり得るスノーフェアリーを知っているかもしれない。

    「ハラグロXの新メンバー候補?えぇー!勿論教えてあげるよ!ただし、新メンバーの発表はキユリにやらせてね。激バズ狙うから!」

    思ってたよりも快く承諾してくれた。多少の交渉材料は用意していたが、必要無かったようだ。

    「任せて、まだ見ぬスノーフェアリーがたくさんいる場所、知ってるよ!」

  • 6二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 17:54:12

    キユリの紹介により訪れたのは、ゴルファンタジスタが率いるジャイアントの国だ。ここにはジャイアント・スノーフェアリーと呼ばれる数多くのスノーフェアリーが暮らしているという。ただ、気になる噂も聞いた。

    「キユリが言ってた、さすらいのギタリストって誰なんだろうね?」

    そう、今このジャイアントの国には「謎のさすらいギタリスト」か来訪しているらしい。来訪というからには、ソイツはスノーフェアリーでもなければ多分スノーフェアリーですらないだろうが、まぁ一応頭にくらいは入れておこう。

    「貴方がハラグロXのエリカッチュと、カモのマネージャーね」

    俺たちを迎え入れたのは、ゴルファンタジスタを応援するチアリーダーのセンターであるアカネ。彼女には様々な姿があるらしいが、今日は「森翠月アカネ」と呼ばれる姿でのご登場だ。ていうか誰がカモだよ。

    「話は聞いてるわ。私をハラグロXに迎え入れてくれるんでしょう?勿論いいわよ、ただし…」

  • 7二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 17:54:39

    アカネが提示する条件は衝撃的な物だった。

    「センターは私にしてくれる?」

    「はぁ〜?」

    エリカッチュXがキッツい声を出して反発する。化けの皮剥がれるの早すぎるだろ。

    「ねぇ、ハラグロXのセンターは私なんだけどぉ?新入りが調子に乗らないでくれる?」

    「あら、私だってこの国の長であるゴルファンタジスタに仕えるチアリーダーのセンター、ハラグロXのセンターになるには十分な逸材じゃないかしら?」

    「あなたにはゴルファンタジスタとかいうでっかいワニさんがいるでしょ?ソイツにでもお尻振ってたら?」

    「貴方こそ、いい歳なんだからその辺のドラゴンの花嫁にでもなってきたら?」

    2人の間に火花が散る。これは困った、せっかくメンバーが見つかったのに、早速仲間割れの危機だ。だからメンバーがすぐに入れ替わるんじゃねぇの?

    このままじゃ埒があかない。俺はひとまず「センターの話はメンバーが揃ってから決めよう」と問題を先延ばしにする提案をして、何とか場を納める事に成功した。

  • 8二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 17:55:08

    アカネの案内により、ジャイアントの国を見て回る。ここにはチア以外にもたくさんのスノーフェアリーがいる。必ず優秀な逸材がいるはずだ。そんな中で、俺が真っ先に目をつけたのは…

    「ハイ!ハイ!」

    水上での一糸乱れぬ正確なシンクロナイズド、思わず見入ってしまった。戦場で敵を見渡す時、きっと真っ先に彼女を選んでしまうだろう。

    「彼女達が気になるのね、お目が高いわ。彼女達は同期の妖精、ジャイアントを支える優秀なスノーフェアリーよ」

    「同期の妖精(シンクロ・フェアリー)」、それが彼女達の名前だそうだ。思わず目に入ってしまう正確なシンクロ、アイドルにはピッタリじゃないか。

    その時、俺の前に一つのコマが飛び出し、コマは進路を阻むように爆転する。

    「待って!ハラグロXの新メンバー、私も立候補する!」

    俺の前に現れたのは「爆転の妖精(ベーゴマ・フェアリー)」。コマ一つで相手の動きをコントロールする華麗なテクニック、なるほど…確かに必要だ。

  • 9二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 17:55:32

    シンクロフェアリーにベーゴマフェアリーといった優秀な逸材が見つかっていく中で、前方から巨大な大玉が迫り来る!大玉が俺にぶつかり、勢い良く吹き飛ばされる。痛ぇ…

    「大丈夫!?」

    エリカッチュXは俺に駆け寄る。さっきの大玉は何だ?

    「あっ、ごめんなさい!前が見えなくて…」

    「その子は大玉の妖精、ジャイアント期待の新星よ」

    彼女達は「大玉の妖精(ボールロール・フェアリー)」。巨大な大玉を扱うパワフルさは魅力だが、多分真価はそこじゃない。

    「わぁー!大玉転がしなんてすごーい!ワタシにもやらせて!」

    エリカッチュも加わって大玉転がしを続行する。そう、彼女の真髄は大玉転がしをパワーを味方にも与える事。大玉を前へ前へと押し進めるパワーをメンバー全員が持てば、よりパワフルなパフォーマンスが期待できるんじゃないか?

  • 10二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 17:56:07

    「同期や大玉ばっかりズルい!」

    「私もメンバーになるわ!」

    それ以外のスノーフェアリーも次々と押し寄せる。一人一人の名前すら把握できないくらいに、たくさんのスノーフェアリーが押し寄せる。おいおい、そんなに一気に来られると選考できないだろうが…

    「テメェら邪魔だぁ!!」

    その怒号と共に、凄まじい大きさのギター音が辺りに響き渡り、スノーフェアリー達を吹き飛ばした!何だ!?このギター音は…

    「あなたは誰?」

    エリカッチュXはギターの音のする方向へと振り向く。そこにいたのは、ギターを構える青いドラゴン…ドラゴンで良いんだよな?

    「俺か?俺はかつて友の為にこのギターを振るった、ただの無法者よぉ」

    「彼は…飛翔龍5000VT!噂に聞いていたさすらいのギタリストは彼の事だったのね!」

    飛翔龍 (フライングブイ)5000VT、アカネはあのドラゴンをそう呼んだ。かつてはとある目的の為にバンドチーム「RAGE CRYSTAL」のギタリストとして一世一代の大演奏を行なったと聞くが、ギター音ひとつでスノーフェアリー達を吹き飛ばすなんて、とんでもないヤツだ…

    「あん?誰かと思えば、巷でウワサのハラグロXのマネージャーのカモ野郎じゃねぇか」

    何でお前まで知ってんの?

    「あぁ、さっきキユリがラジオで言ってたわね」

    アイツふざけんな。

  • 11二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 17:56:26

    「ヘッ、そんな事より、俺の魂のギターの力はまだまだこんなモンじゃねぇぞ!」

    VTはギターでロックな音楽を演奏する。その音色はとても力強く、半端な力ではこの場に踏み入る事すら許されない、まさに無法…アウトレイジの名に相応しい。そんな中、ただ一人エリカッチュXはギターの音をもろともせずにVTの元へと駆け寄る。

    「すごいわ!アナタ、ハラグロXのギタリストにならない?」

    正気?

    「あぁん?ハラグロXだぁ?」

    「えぇ、私たちとアイドルやりましょう!」

    おいおい、確かにVTはハラグロXの楽曲に更なる力を与えるのは間違いない。でも、そんなイカつい奴に「アイドルになろう」って言って頷く訳が…

    「いいぜ」

    いいのかよ。

  • 12二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 17:57:22

    そして数日後、キユリは動画配信チャンネルで特大ニュースを発信する。

    「こんにちゆりゆり〜!今日はビッグニュースをお届けするよ!なんとー、あのハラグロXな新たに5人の新メンバーを迎え入れたんだって!その驚きのメンバーは〜?」

    「誰もが真っ先に目に映る一糸乱れぬドキドキなスパイラル!同期の妖精!」

    「ジャイアントの回転競技「剛流振」をコマに応用し戦場にゴーシュート!爆転の妖精!」

    「パワフルなボールロールで進撃するその姿はまさに剛流振!大玉の妖精!」

    「ジャイアントのスノーフェアリーといえばチアリーダー、チアリーダーといえばこんな女!森翠月アカネ!」

    「半端者を全てを吹き飛ばし、出る事すら許さない魂のギタリスト!飛翔龍5000VT!アウトレイジがまさかの電撃参戦だぁー!」

    「そして、記念すべき初ライブは1週間後!武家類武士目ステージュラの上で盛大に行うよぉー!ドラゴンの上で行うライブなんて、ド派手だね!」

    この日、キユリのチャンネルは登録者数500億人を突破した。ていうか、今考えればキユリも誘えばよかった気がする。何故か彼女は選べない気がして…

  • 13二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 17:57:47

    新メンバーを迎え入れたハラグロXのお披露目ライブは、当然の如く会場を満席にした。

    「みんなー!今日は私達のライブに来てくれて、ありがとー!」

    「新しいメンバーと一緒に、歌っちゃいまーす!」

    「それじゃあ、せーの!」

    「「「「「「「「「ハラグロX☆行っくよー!」」」」」」」」」

    ライブは勿論大盛況。従来のファンに加えて、ジャイアントのチアリーダーのファンやRAGE CRYSTALのファン、キユリのチャンネル登録者まで押し寄せての特大ライブはハラグロXの歴史に刻まれるだろう。

    ところで、この大盛況を見て一つ気づいた事がある。嫌々ながらも結局メンバー探しを成功させて、このライブの開催に貢献してしまった時点で、結局は俺もハラグロXの「カモ」でしかなかったのだ。

  • 14二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 17:58:08

    …そこで俺は目を覚ました、机の上で突っ伏して眠っていたようだ。記憶を辿らせて何をしていたのか思い出す…そうだ、デュエマのファンイベントに持ち込むためのデッキを組んでいたんだ。

    目を覚ました俺の前に置かれたデッキケース、その中にはファンタジーBESTで登場したカードを採用した3色スノーフェアリーデッキが組まれていた。

    そういえば、さっき見た夢はこのデッキに入っているクリーチャーが出ていた気がする。聞いた事がある、「プレイヤーが己の相棒として共に戦うデッキを選ぶとき、そこには物語がある」と。誰かがデッキを組んだその時、そのデッキの中には背景ストーリーの枠を超えた新たな物語が生まれているのかもしれない。

    俺はそんな青臭いポエムを吐き散らしながら、デッキを手にカードショップに向かうのだった。ちなみに試合はゼニスデッキに黙示録撃たれて負けた。



    〜 完 〜

  • 15二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 17:58:45

    以上、先日組んだシータスノーフェアリーデッキを元に、「組んだデッキの背景をSSにするスレ」でした。シータスノフェ期待の新星のカサブランカやザノウハウが待ち遠しい一方で、多分トリーヴァとか青緑の方が強そうで泣いちゃいそうです。

  • 16二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 19:15:11

    良文あざっす!

  • 17二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 20:54:35

    >>16

    あざます。


    このスレはSSの皮を被ったデッキ紹介スレなので、ぜひ各々のシータエリカッチュだったり、新規カードを加えた光入り4cエリカッチュだったりを教えてくれ。

  • 18二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 01:01:28

    各クリーチャーの効果を描写に反映させてるのが面白かった
    個人的に好きなのはギターの音で雑魚を吹き飛ばして領域を作るVTとオチのキユリ

  • 19二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 10:04:30

    スレタイでエッッッなのを期待してたけどこれはこれで面白かった

オススメ

このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています