【SS】あの世で再会するてんつくちょ

  • 1二次元好きの匿名さん25/02/09(日) 18:07:56

    スレタイ通り、天元・九十九・脹相の3人が再会する話。
    CPなし。
    単行本加筆部分の謎空間が舞台の妄想SS。

  • 2125/02/09(日) 18:12:15

    「そういえば兄さん、金髪で背の高い女性に兄さんのこと聞かれたけど、彼女?」
    末弟の悠仁達の勝利を見届けた後、次男の壊相が長男の脹相に問いかけた。脹相の脳裏に一人の女性の姿が過ぎる。
    「九十九か……!いや、九十九とはそういう関係ではなくてだな」
    真面目に訂正しようとする長兄に、二人の弟が揃って吹き出す。
    「分かってるよ兄さん!私たちずっと見てたから知ってる」
    「ちょっとからかいたくなったんだぞぉ」
    カラカラと屈託なく笑う二人の弟を目の当たりにして、また涙腺が緩みかけた。

  • 3125/02/09(日) 19:10:06

    「また、オマエたちと一緒にいられるんだな」
    涙は堪えたが、声は少し震えていた。
    「そうだよ。時間はいくらでもある。だから……」
    「まずはその人に会いに行ってあげてくれぇ」
    二人にぐいぐいと背中を押され、名残惜しそうに弟たちを振り返りながら脹相は駆け出す。
    「すまない!すぐ戻る!」
    手を振りながら見送る、笑顔の弟たちが見える。
    「兄さん、また謝ってる」
    「ゆっくりでいいぞぉ!」
    あっちだよ、と壊相が指差す方へ、脹相は足を早めた。

  • 4二次元好きの匿名さん25/02/09(日) 19:36:30

    既に楽しみ

  • 5125/02/09(日) 20:13:56

    「九十九!!」
    少し走ると、見覚えのある空間が突然現れた。
    羂索と戦った、天元の創り出した結界。九十九が最期にいたあの場所。あの時と変わらない後ろ姿。それを見つけて思わず声を発していた。
    「待ってたよ、お兄ちゃん」
    長い鮮やかな金髪を靡かせながら颯爽と振り返る、晴れやかな笑顔。
    「つくも……その……」
    少し切れた息を整えながら、言うべき言葉を選ぶ。

  • 6125/02/09(日) 21:16:32

    「オマエに、謝らないといけない」
    「謝るぅ?」
    九十九は顔を顰めて大袈裟に首を傾げてみせる。まるで、何を言っているんだと言いたげな顔だ。
    「せっかくオマエに助けてもらったのに……俺は……」
    少し気まずさを覚え、思わず視線を逸らしてしまった。が、その逸らした視線に彼女の手が割り込んできた。
    「むぃ」
    両の頬を引っ張られた拍子に変な声が出た。その手にあまり力は込められておらず、痛みは無い。

  • 7二次元好きの匿名さん25/02/09(日) 21:41:20

    応援

  • 8125/02/09(日) 22:20:26

    何をする、と視線で訴えると、存外柔らかい微笑みが返ってきた。
    「違うだろう?こういう時なんて言うか、君はもう分かってるはずだよ」
    ……ああ、そうだった。さっき弟たちに言われたばかりだったな。
    頬を摘む両手を己の手で包んで下ろすと、そのまま真っ直ぐにその目を見つめる。
    「俺を、助けてくれて本当にありがとう。生きろと言ってくれてありがとう。おかげで悠仁を守ることができた」

  • 9125/02/09(日) 22:41:26

    短い間ではあったが、弟やその仲間たちと『人』として生きることができた。本当にかけがえのない時間だった。
    それを得られたのも、彼女が命を賭して俺を救ってくれたおかげだ。感謝してもしきれない。握ったままの両手を一際強く握り、改めて告げる。
    「本当に、ありがとう」
    謝罪ではなく、最大の感謝を。

  • 10二次元好きの匿名さん25/02/09(日) 22:54:39

    素敵です♥♥✨👏👏☆

  • 11125/02/09(日) 23:00:56

    明日落ちてなければ仕事終わりに続き上げたい

  • 12二次元好きの匿名さん25/02/10(月) 03:34:28

  • 13二次元好きの匿名さん25/02/10(月) 10:01:48

    ほしゅ

  • 14二次元好きの匿名さん25/02/10(月) 15:04:01

    >>6

    ほっぺむぃお兄ちゃんかわいい

  • 15125/02/10(月) 19:06:45

    「Good!……よく頑張ったね」
    頭にぽんぽんと当てられる手の温かさに、目頭が熱くなった。堪えようとしたが、それは呆気なく決壊した。
    「……ぅぐ……っうぅ……」
    「泣いちゃった!お兄ちゃん結構泣き虫だよね~」
    今度はわしゃわしゃと頭を撫でられる。なんだかむず痒いけど、心地好い。嬉しいような気恥ずかしいような複雑な気持ちだ。
    悠仁が反転術式を覚えた時、同じことをしたのを思い出す。あの時の悠仁もこんな気持ちだったのだろうか。

  • 16125/02/10(月) 20:04:11

    「お、俺は……お兄ちゃんなのに……」
    色々な感情が綯い交ぜになって押し寄せ、涙を止められない。
    「私からしたら君は赤ちゃんみたいなもんだよ。ねえ、人間1年生」
    次々零れる大粒の涙。ぐしぐしと雑に涙を拭うその仕草も小さな子どものようであることに、脹相は気付かない。

  • 17125/02/10(月) 20:58:03

    「そんなことよりさ!祝勝会しようぜお兄ちゃん!」
    九十九も高専の面々の勝利を見届けていたらしく、彼らの勝利を祝おうということらしい。
    「会場を用意してもらわなくっちゃね。───天元!」
    そう九十九が虚空に呼びかけると、突如周囲が鱗状になり崩れ出した。この様子には見覚えがある。
    「はいはい。居酒屋・天元の開店だよ」
    和風の居酒屋のような内装。さほど広くはない店内に少し不釣り合いな大きめのモニターには、更地となった新宿と思われる映像が流れている。おそらく『あちら』の現在の様子なのだろう。
    そしてカウンターに佇む声の主は───

  • 18二次元好きの匿名さん25/02/10(月) 22:42:37

    念願の再会だーーー!!!

  • 19二次元好きの匿名さん25/02/10(月) 22:43:03

    CPかと思ったらCPじゃないのね

  • 20125/02/10(月) 23:06:41

    「……今、天元と言ったか?」
    視線の先にいるのは、和装に割烹着姿の白銀の髪を持つ女性。
    脹相の知る天元は、かつて「喋る親指」と例えた外見をしていたはずだ。
    「久しぶりだね、受胎九相図」
    言いながら柔らかく微笑む目は一対。紛れもなく普通の人間である。
    「本来のオマエの姿……なのか?」
    「そういうことだ。自分でもなんだか懐かしいよ」
    姿かたちは似ても似つかないが、纏う神秘的な雰囲気は変わらないように感じる。声色も間違いなく覚えがあるものだった。
    まさか彼、いや彼女もこちらに来ていたとは。

  • 21125/02/10(月) 23:09:57

    >>19

    CPも好きだけど、自分で書くならCPなしだなと

    母(祖母?)=天元、娘=九十九、弟=脹相みたいなイメージ

  • 22二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 03:36:12

    親指じゃない天元様だ


    >>21

    家族っぽい3人わかりみが強い

    続き楽しみです

  • 23125/02/11(火) 11:31:06

    「積もる話もあるが、まずは弟たちも呼んでくるといい。おもてなしさせてもらうよ」
    「丁度いい。弟達にも命の恩人たちを紹介させてくれ」
    「『恩人』はちょっと大袈裟じゃない?」
    ねえ?と九十九が天元に同意を求めると、天元は肩を竦めて苦笑を浮かべた。
    「私は何もしていないよ」
    我関せずといった様子ではあるが、脹相をあの場から退避させたのは天元だ。当人の心持ちはどうか分からないが、命を救われたことには変わりない。
    「俺は助けてもらったと思っているから、それで良いんだ」
    あの時は、自分が救われた意味が分からなかった。生き残ってしまった罪悪感すらあった。しかし、今となっては永らえさせてもらったことに感謝しかない。
    二人とも、自分にとって大切な命の恩人だ。

  • 24125/02/11(火) 15:55:38

    「そんなんじゃなくてさぁ、もっとフランクに友達とか言ってよ」
    「ともだち……」
    九十九の口から発せられたあまり馴染みのないその言葉を、脹相はじっくり味わう様に呟いた。
    定義としては知っているが、自分には縁遠く、あまり考えたこともなかったものだった。
    およそ150年間、自分を取り巻く存在というものは、大切な弟達と、親とも認め難い忌むべき母の仇しか居なかった。

  • 25125/02/11(火) 19:54:30

    それ以外の他者との関わりなど、あの暗くて狭い瓶の中では考えられなかったし、望むことも無かった。弟たちさえいればそれだけで良かった。
    そんな自分に、共に戦う仲間や、他愛ない会話ができる友人という存在が出来るなんて。
    「良い。それがいい」
    「なんか嬉しそーじゃん?」
    どうやら頬が弛んでいたらしい。目の前の九十九も、その後ろに佇む天元も微笑ましげにこちらを見ている。

  • 26125/02/11(火) 21:53:16

    「ああ、嬉しい。『友達』は初めてだ」
    「素直でよろしい!」
    バシバシと叩かれた二の腕が少し痛い。この豪快さがいかにも九十九らしい。
    「早速弟たちを呼んでこよう。少し待っていてくれ」
    そう声をかけると、脹相は踵を返して出入口へ向かった。引き戸を開けて閉める前に、もう一度二人を振り返る。
    「また二人に会えて、本当に良かった」
    こちらこそ、と言う九十九と、手を振る天元を見て戸を閉める。
    ああ、なんだか胸が温かいな。
    足取りも軽く、元来た道を走り出す。
    その表情はどこまでも晴れやかだった。

    おしまい

  • 27二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 21:56:22

    これ読んで泣いちゃったよ…

  • 28125/02/11(火) 21:56:30

    終わりなんだけど、オマケが2つあるのでもうちょっと続けるよ
    (本編と同じくらいの長さのが1つ、サクッと終わるのが1つの予定)
    読んでくれてる人本当にありがとう
    また明日

  • 29二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 22:01:32

    お兄ちゃんと大切な人たちの、こんなほのぼのとしたお話が読みたかった
    感謝!

  • 30二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 23:13:09

    心があったまったよ
    素敵なやりとり見せてくれてありがとう
    おまけがある聞いて大歓喜

  • 31二次元好きの匿名さん25/02/12(水) 07:25:40

    てんつくちょでいるとお兄ちゃんが末っ子みたいになるのがなんとも良い

  • 32二次元好きの匿名さん25/02/12(水) 14:19:12

    良いものを読ませていただきました…本当にありがとう…
    おまけも楽しみにしてます!

  • 33125/02/12(水) 21:35:47

    感想ありがとうめっちゃくちゃ嬉しい
    オマケひとつ目は、薨星宮でこんな話してたらなって話

  • 34125/02/12(水) 21:38:57

    薨星宮生活?日目

    九十九「ねえお兄ちゃーん、おにいちゃーーーん?」
    脹相「Zzzz……」
    天元「寝てるよ」
    九十九「コタツには勝てなかったかー」
    天元「それ以前に呑ませすぎだ」
    九十九「お兄ちゃんお酒初めてだって言うからつい」
    天元「まったく……」

  • 35125/02/12(水) 22:33:08

    九十九「……なあ、脹相のあの話、どう思った?」コソコソ
    天元「これ以上弟とは生きられないって話?」
    九十九「ああ。正直、そこまで思い詰めてるとは思ってなかったって言うか、弟想いにも程があるって言うか」
    天元「……受胎九相図という存在は、かなり特殊だからね。生まれも、その後封印されていたことも」

  • 36125/02/12(水) 23:16:19

    天元「あの昏い忌庫の中で約150年もの間、互いの存在だけを頼りに生命を繋いでいたんだ。彼らにとって『兄弟』という存在が如何に大切か、私達の想像を遥かに超えるものだろう」
    九十九「だったら、兄弟のために死ぬよりは生きた方がいいんじゃないかって思うんだけど、違うのかなあ」
    天元「兄としての矜恃がそうさせるのかもね」
    九十九「私ひとりっ子だからわかんなーい」
    天元「私にも分からないよ」

  • 37二次元好きの匿名さん25/02/13(木) 07:44:54

    ほしゅ!

  • 38二次元好きの匿名さん25/02/13(木) 12:14:18

  • 39125/02/13(木) 19:47:46

    九十九「……少なくとも、虎杖悠仁にはお兄ちゃんが必要そうに見えたけどね」
    天元「そうかい?」
    九十九「渋谷で彼らと別れた時と比べて、高専で再会した時の弟くんの落ち着き様見たらそう思うよ。憔悴し切ってたし、もっと自暴自棄になってるんじゃないかって思ってたけど杞憂だった」
    九十九「あの後ずっと二人きりだったらしいし、脹相のおかげな部分はかなりあったと思うんだけど」
    天元「なるほど?」

  • 40125/02/13(木) 20:33:42

    九十九「ま、本当のところなんて赤の他人の私には分かるわけないし、死ぬななんて言える立場でもないんだけどさ」
    九十九「……あのさぁ、もしも、なんだけど」
    天元「なんだい」
    九十九「羂索と戦うことになって、私が『最後の手段』を使うことになったらなんだけど」
    天元「……急にどうした」

  • 41125/02/13(木) 22:22:13

    九十九「その時は、脹相を逃がしてくれ。もちろん、その時まで生きていれば、の話だけど」
    天元「君も酔っているのか?」
    九十九「この程度で酔ってたまるか。こういうことは事前に話し合っておかなきゃでしょ。言わなくても伝わるほど仲良しこよししてないんだから」
    天元「一理ある」
    九十九「最後の手段を使う段階で私は絶対に助からない。むしろ助からない状況で一か八かで使うことになると思う」
    天元「ああ」
    九十九「範囲は出来るだけ絞る。オマエの結界もあるし、なんとかなると思うけど……正直そこまで上手いこと抑えられるかは分からない」
    天元「私の本体が巻き込まれなければ、まあいいんじゃないかな」
    九十九「ムカつくからワザと巻き込んじゃうかも」
    天元「それは少し困る」
    九十九「脹相まで巻き込むのは筋違いでしょ。いくら生き残る気が無いって言っても、私の勝手に付き合わせるのはイヤだし」
    天元「……」

  • 42125/02/13(木) 23:08:57

    九十九「それから、これ」
    天元「ノート?」
    九十九「私のこれまでの研究の成果がまとめてある。その時はこれを脹相に渡してくれ」
    天元「……君、彼のこと言えないじゃないか」
    九十九「もしもの話をしてんだよ!私だって死にたいわけじゃないし命を捨てる気も無いよ。でも相手は羂索だ。何があってもおかしくないだろ」
    天元「そうだな。しかし、この手を使わずに済むことを祈るよ」

  • 43125/02/13(木) 23:10:26

    また明日

  • 44二次元好きの匿名さん25/02/14(金) 07:54:56

    ほしゅ

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