短編SS 宿儺おじさんとホワイトデー

  • 1二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 17:31:07

    冬にしては、いやに暖かい1月の終わりごろ。呪いの王・両面宿儺は縁側に寝転び塀の上で丸くなっている猫を眺めていた。
    「まさかこの姿のまま転生するとはな・・・」
    千年の旅路を経て敗北を以てその生を終えた両面宿儺。その呪わしい生涯はいわば自身をはねつけ迫害した世界そのものに対する復讐でもあった。
    宿儺は恐れた。腹の底に蠢く憎悪の炎がいずれは己が身を焼き焦がすという確信が彼を人間から呪いへと変じさせていったのである。
    そうして千年前、呪術全盛の時代。平安とは名ばかりの修羅の巷にて最強の名をほしいままにした羅刹が誕生するに至った。しかしそんな彼も長い戦いの果て、敗北という境地へと達したことで新たなステージへと昇る。

    「次があったら、違う生き方をしてみよう」
    そう決意する宿儺であったが、当然、来世などというものの存在は信じてはいなかった。というよりは、魂の大元が同じだけで記憶も肉体も別物となった宿儺とは違う何かになるのだろうと思っていた。
    そのはずが、ほぼほぼそのままの状態でとある田舎街に顕現したのである。本人としても驚愕のことだが、田舎街の住人たちもまた驚きを隠せない。なにしろ突然全裸で四本腕の大男が真昼の役所に現れたのだから。

  • 2二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 17:31:54

    明らかな異端、一目見て分かる異形。
    迫害の日々が再び始まるのかと身構える宿儺だったが、役所の長である町長の老人は一言。
    「多様性の時代だからねぇ。」
    こうして呪いの王・両面宿儺はこの田舎街にて第三の生を歩むこととなった。その後、東屋に住む宿儺の元を訪ねる一人の幼女。役所の女に手を引かれやってきたその娘は千年の旅路をともに歩んだ従僕。
    「お久しゅうございます、宿儺様」
    「裏梅か!」

    「・・・・なぜわらべの姿に?」
    「それがわたしもさっぱり・・・」
    裏梅の姿は6歳か7歳か、少なくとも8歳は超えていないだろう幼女のものへと化していた。そのうえ、肉体年齢に引っ張られたのか、精神にも幼さが表れ、前世での受肉体・氷見汐梨の記憶すら多くが失われている。大人としての知識や経験を失ったいまの裏梅はまさに平安の頃の童子そのものに近い。
    それはひとえに、宿儺を慕い、宿儺の下に居たいという被保護欲求が彼を、いや彼女をこのような状態にしたのかもしれないが、すべてを暴くのは少々野暮がすぎるだろうか。なにしろ過去はともかく、今の彼女はレディなのだから。

  • 3二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 17:32:19

    そんな裏梅を東屋に迎え第3の生を歩み始めた両面宿儺。今生では以前とは違うような穏やかな生き方をしようと工夫を凝らす。そのうちに近隣の子供たちからは「腕のおじさん」と呼び慕われ、いつしか「腕おじ」と略されるようにもなった、存外宿儺はこの気安さが嫌いではなかった。裏梅の方は男児たちが自分には毛虫を投げつけ宿儺には不遜なあだ名をつけて呼ぶことを、こめかみに青筋を立てて怒っていたが、ほかならぬ宿儺が許しているため、霜凪の餌食するまでは至っていない・・・今のところは。

    そうして過ごすうちに、東京高専の面々に存在を把握され、会談を経て和解し、金品や食料をせびることに成功する。そして冒頭のシーンに至るのだが、このところ宿儺の脳裏にとある悩みがこびりついていた。
    「“腕おじ祭り”か・・・」
    老齢の町長が先日宿儺に持ってきた企画書の表紙には「“腕おじ祭り(仮称)”開催および運営委員会発足について」と書かれている。

    「・・・・・正気か・・・?」

  • 4二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 17:33:04

    開催日時も開催会場も未定。しかし開催すること自体にはなぜか強い意志を感じる。宿儺としては新嘗祭のひと悶着を思い出し苦笑するしかない。一体何が町民をここまで駆り立てるのか、祭りは本当にその仮称でいくのか、良識の鎧をまとった両面宿儺は、そら恐ろしい何かを感じ取るばかりであった。

    後日、宿儺の姿は東京郊外のとある町の喫茶店にあった。田舎町からは少々遠出になるも、宿儺がとある筋からの接触依頼を受けそれに乗ってのものである。宿儺の傍らにはマグカップを両手で持ち、中のコーヒーを一口飲んでは苦みで表情をゆがめ角砂糖を一つ投入し、味を確かめては再度顔をしかめて砂糖を加える・・・そんな百面相をくりかえす裏梅の姿がある。

    呪いの王の背中にはいやに生暖かいじっとりとした汗が滲んでいる。それもそのはず、宿儺の対面には女子が4人。東京高専より真希と釘崎、そしてゲストとして来栖華と小沢優子の四名が最強の呪術師との会談に臨む奇怪な画が繰り広げられていた。

    裏梅は必死にコーヒーの苦みと格闘している。

  • 5二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 17:33:50

    「正気か・・・?」

    「おうおう、私ら花のJKだぞ?ヒデエ言い草だな、ケケケ」
    「私は優子の付き添いだし」
    「虎杖くんについてはあなたが一番詳しいって聞きまして・・・」
    「恵についても詳しいって・・・」

    「宿儺さまは全てにお詳しい」
    付け足すように述べる裏梅。若干誇らしげなのは主人が頼られていることに対する満足感からか。

    「かといって、俺に・・・殺し合った相手に、恋愛相談を・・・?正気か?」
    (俺は恋愛相談されるとここまで困惑するものなのか)

    千年の人生の中で宿儺は女子に詰め寄られた経験など皆無・・・ではなかったが、さすがにこのような状況には覚えがない。とはいえ、宿儺のことをまるで絶対的強者のように慕う裏梅の手前、分からないから何もできない、などとは言えない。

  • 6二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 17:34:19

    「・・・・・・そもそもなぜ今「あ、それはですね!ちょうどバレンタインあるし恵の好みとか分かったらいいなって!」「男子共に恩売っとくのも悪くないでしょ」「うちのなんざパンダとおにぎりだぞ?」「あ~真希さん、なんで乙骨先輩だけ外すんですか~?」きゃっきゃっ

    「・・・・・・・・・・・俺に何を求めている「虎杖くんの好みが知れたらいいなと!」「恵の好みとか!シチュエーションの演出とか!」「確かに演出は重要だね、華」「おいおい放課後の教室でナニするつもりだ~?ヒヒ」「真希さんこそ何か理想のシチュでもあるんですか~?ケヒッ」きゃっきゃっ

    きゃっきゃっ

    「・・・・・・・・・・裏梅、これも食え」
    宿儺そっちのけで盛り上がり始めた女性陣を目の前にして、宿儺は自身のレモンケーキを裏梅の方に寄せる。受け取った裏梅は一口食べる度ににこにこと宿儺に笑顔を向けて感謝を伝えるばかりであった。

  • 7二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 17:35:01

    婦女子の集いともなれば、女三人の字のごとく、かしましくなるのも自然の摂理。性に合わないと切り捨てて無碍に帰るのもまた無粋として、宿儺は頬杖をついて、大人しく女子陣が落ち着くのを待つことにした。

    「さて、本題といくか」
    女子陣がそれぞれの飲料に手をつけた瞬間を見逃す宿儺ではない。東京郊外のこの町、都心ではないとはいってもそれなりに賑わいもあるこの町で、喫茶店であまり長居するのも気が引ける。
    裏梅の目の前では二杯目のメロンソーダが優雅な気泡を踊らせていた。

  • 8二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 17:35:57

    宿おじ!宿おじじゃないか!!
    新規SSありがとうスレ主だいすきだよ

  • 9二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 17:36:02

    「菓子のひとつ二つを贈るとして、何が懸念なのだ。」
    「これだから平安人は!分かってないわね、優子は乙女なのよ!私も、まあ、それなりに?」

    「恵は私のものなんです。骨抜きにしたいんです」
    「最近隠さなくなってきているよ、華」

    「まあ私らも別に呪いの王サマとチョコ談義に興じようってわけじゃねえ。脈があんのかどうなのか、それだけでも知りたいんだろうよ」
    「そんなところだろうとは思っていたが・・・」
    「そもそも無理だろ?チョコ作りとか」

    その話を聞いていた裏梅が口を挟んだ。

  • 10二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 17:36:25

    「貴様・・・宿儺さまが”出来ない”だと?チョコレートごとき、宿儺さまの敵ではないわ」
    「裏梅?」
    「え?両面さんって、お菓子作りもなさるんですか?」
    「ははっマジかよ」
    「堕天・・・・」
    「結局恵の癖は?」
    「指チョコってことね、20本作って配りましょ」

  • 11二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 17:36:25

    おわあーー!!宿儺おじさんと裏梅だ!!!!
    お久しぶりです!!!!大ファンですまた見れて嬉しい!!

  • 12二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 17:43:07

    もちちろん冗談の範疇である。史上最強の呪術師・呪いの王・腕のおじさん、数々の異名のどれとも嚙み合わないないバレンタインデーという響き。
    宿儺に製菓技術などない、そんなことは全員百も承知である。当然、裏梅とてむべなるもの。
    しかし、とうの宿儺はもの思うところがあったのか、アゴに手を当てて考え込む。

    女性陣はもはや相談に来たはずの身分など忘れに忘れて、ただただ語る。茶菓子はあっという間に皿の底を見せ、追加で注文するも数分ともたず。
    挙句には店を出て二件目に行こうという始末。付き合いきれぬとため息を漏らす宿儺の傍らで裏梅は、アイスクリームをメロンソーダに溶かし込み、さわやかさと甘さの両立を試みようと集中していた。

  • 13二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 17:51:29

    後日、宿儺は裏梅を伴って街へと出かける。
    近隣の者に聞けばどうやら有名な喫茶店の支店が進出してきたとのこと。
    多少は並ぶことを覚悟していたものの、ちょうど客の入れ替わり時期に当たったのか、混雑の割に並ぶこともなくすんなりと入店した呪いの王。

    冷や汗と動揺をかみ殺した表情の店員に案内されるまま、テーブル席へと座りつき注文を行う。裏梅はシロノワール、宿儺はミニサンドと名付けられたメニューを注文する。
    ”ミニ”を頼んだのは、今回の来店が観察や視察の意味を持っているからであろう。しかし、数分後宿儺のもとにやってきたのは”ミニ”とは名ばかりの圧力。

    「・・・正気か?」

    圧倒的呪力量による蹂躙、それこそが彼が最強の術師たるゆえんであったが、今、宿儺の目の前にあるものはまさしく圧倒的物量。
    喫茶店界の両面宿儺の姿がそこにはあった。

    そして数瞬遅れて気づく。
    「”ミニ”でこれということは・・・・しまった、裏梅!」

    隣を向くとそこには巨大な甘未に食らいついて満悦の笑みを浮かべる裏梅が、口の周りを汚していた。

  • 14二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 17:57:42

    そして数日。

    「宿儺さま、夕餉の準備が整いましてございます」
    「む・・・」

    縁側に座り、慣れないスマホと格闘していた宿儺の背に声をかける裏梅。
    「これは・・・鰆か」
    「はっ、よいものが手に入りましたので、隠し包丁はそこそこにとどめ、炭火でわずかに表面をあぶっております。」

    何を言われずとも、こと料理に関しては裏梅に全幅の信頼を寄せる宿儺である。大口を開けて鰆の身をかじることにいささかの躊躇もない。
    やはり、思った通りの歯ざわり。
    時には予想を裏切る演出も必要だが、裏梅はこういうときに外さない感性を持っている。
    宿儺が期待したものを、宿儺が期待した通りに届ける。それこそが裏梅の調理技術の神髄であった。

  • 15二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 18:06:17

    宿儺が鰆の身を半分ほど食べ進めた辺りで裏梅は一度厨房に退き、小鉢を二つ持って再び戻ってきた。遅れて出てきたのは焼いた銀杏が六つほどの小鉢と、白子に大根おろしとたまり醤油を和えたものの小鉢。

    口に含まずともすでに香るかぐわしい銀杏の身。多少季節からは外れているが、何といっても裏梅の目利きにかなったものである。味は推して知るべし。

    多少熱めに作ってあるのか、口にこもった熱を白子が冷ます。絶妙な温度感までも使いこなす裏梅の、珠玉の逸品たちによって宿儺は瞬く間に至極の悦に浸ることになった。
    しかし、裏梅の計算はまだ終わらない。

    白子の量は銀杏の数に比べて少なかった。必然的に、熱を持った銀杏が二つほど余ることになる。
    そこに狙いをすました一撃を持ってきた裏梅。

    「宿儺さま、ささ・・・」
    冬場に、汗をかくほどの暖房をつけ、口を熱してからの一撃、それは・・・

    「冷酒か」
    もはや笑みがこぼれるのを抑える気すら湧かない宿儺であった。

  • 16二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 18:11:16

    「お布団はすでに温めております」

    久方ぶりにほろ酔いを享受しながら、夢見心地で眠っていく宿儺。その手のスマホにはとあるHPが開かれていた。
    そこにはこうある。

    ホワイトデー、手作りチョコの作り方

    と。

  • 17二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 19:16:20

    数週間の後、裏梅は宿儺の正面に座し、息をのんで目の前の箱を見つめていた。

    「・・・・!」
    「多少見てくれは悪いが、気にするな。とく食え」

    呪いの王、両面宿儺の手作りチョコレートである。
    従者たる裏梅は全身の血が沸き立つような、皮膚が泡立つような、天地が揺らぐような衝撃を感じていた。

    「・・・・・!」
    もはや言葉を発することもできない。
    それほどの喜びが具象化し、裏梅のみぞおちに深く刺さっているようですらあった。

    「簡単なものだがな」
    宿儺はそっぽを向いて、おそらく生涯で指折る程度にしかない、謙遜をしてみせている。
    確かにその内容物は、市販のチョコレートを砕いて、生クリームを混ぜ込んだだけのいわゆる生チョコレートであり、豪華絢爛とまでは言い難い。

    「・・・・・!」
    それでも裏梅の言葉を消し飛ばすには十分すぎる威力があった。
    そして裏梅はその喜びに飲み込まれ・・・、


    心臓の動きを止めるのであった。


    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  • 18二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 19:24:08

    し、死んでる

  • 19二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 20:30:10

    うらうめぇ!!

  • 20二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 21:12:20

    ひさしぶりに見に来たら、今度は裏梅がトリップしてやがる

  • 21二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 23:14:34

    相変わらず美味しそう

  • 22二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 08:05:36

    宿おじかわいいよ宿おじ

  • 23二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 10:58:32

    「ここは・・・」
    裏梅が目を覚ましたとき、彼女の姿は見知らぬ空間にあった。白とも黒ともつかず、明るいとも暗いとも言えぬ、形容しがたい空間に独り立つ。そこはかとない不安が足元から上ってくるが、それを表すほど心弱くはない。
    そんな彼女に声をかける者が一人。

    「あら・・・来たのね」

    平安の頃の痴人、もとい知人・万であった。

  • 24二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 11:01:45

    「あなたも来たのね・・・って、なによそのちんちくりん」
    「万か!いったいここはどこだ?いや、何なんだ?」

    「「・・・・」」

    「「質問に質問をぶつけるな!(ぶつけるんじゃないわよ)!」」

    「「・・・・・」」

    「「私が先だ!(先よ!)」」

    多少いがみ合いのような雰囲気でありながら、その実、息はぴったりと合っている。

  • 25二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 11:05:31

    「宿儺の婚約者としては、がきんちょとはいえ、女の姿で宿儺の周りをちょろちょろされるのは愉快じゃないわね!」
    「・・・・ふっ・・・」

    万の嘆息に対し、鼻で嗤う素振りを見せる裏梅。
    (何?今の顔・・・まさか!?)

    「裏梅!あんたまさか!」
    「そのまさかだ、痴れ者め!宿儺さまの懐はたいそう暖かかったぞ?」


    「ああああああああああああああああ!!!!!」
    頭を抱えて苦しむ万。勝ち誇る裏梅。

  • 26二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 11:08:07

    「あんた!そんなナリになってまで!」
    「この姿だからこそだ!宿儺さまの娘として寵愛を受けられる日々に勝る価値などあるものか!」

    「えっ?」
    「ん?」

    「娘?」
    「娘」

    「・・・・・・・・・・・・・・・・・・私をお母さんと呼んでみなさい裏梅!!!」
    「痴れ者!!!」

  • 27二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 11:13:21

    「何よ!もう!結局あの人に愛を教えるのは私ってことね!妻は私!結婚するのは私!」
    「何が妻だ!紙切れ一枚で成り立つ関係に意味などあるものか!」

    「私が作った呪具はさぞ大事にされたんでしょうねえ!」
    「私が凍らせて宿儺さまにお渡ししたがな!氷まみれで!」

    「神武解の威力は素晴らしかったでしょう!?」
    「わりとすぐに没収されたそうだぞ?残念だったな?」

    「没収!?誰がそんな嫌がらせすんのよ!?」
    「弁護士だそうだ。全裸の不審者にはお似合いの裁定者だな!」

  • 28二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 11:17:26

    喧々諤々の言い合いが続いた後、裏梅の心臓は再び動きを取り戻し、目を覚ませばそこには裏梅を膝に抱く宿儺の姿が、起き抜けの目に飛び込んできた。

    たいそうな心配をしていた宿儺だが、その様子はおくびにも見せない。
    ただし、その首元には至近距離の裏梅だからこそ視認できる程度の、小さな冷や汗の粒が浮かんでいた。

    「む、無事か裏梅」
    「はっ、お手を煩わせまして申し訳ございません」

    田舎町の東屋にて、呪いの王と従者の幼女は今日も暖かく食卓を囲むのであった。

  • 29二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 14:02:53

    うわーお久しぶりです腕のおじさん&裏梅さま!
    相変わらず尊く可愛い二人をありがとう!!大好きです!!
    万との言い合いが見てるこっちは楽しすぎる

  • 30二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 21:05:09

    >>25

    宿儺さまの懐というワードで想像してる光景が裏梅と万で健全度がすごく違ってそうで草

  • 31二次元好きの匿名さん25/03/10(月) 00:43:14

    万さん脳破壊されてて草

  • 32二次元好きの匿名さん25/03/10(月) 07:58:45

    ほし

  • 33二次元好きの匿名さん25/03/10(月) 13:21:16

    >>13

    コメダのシロノワール美味しいよね…いっぱいお食べ…

  • 34二次元好きの匿名さん25/03/10(月) 21:32:03

    保守

  • 35二次元好きの匿名さん25/03/10(月) 22:18:35

    前半の姦しい女子たちに囲まれてる少しおいたわしい腕おじすこ

  • 36二次元好きの匿名さん25/03/11(火) 07:24:54

    万と裏梅の会話好きww

  • 37二次元好きの匿名さん25/03/11(火) 15:10:04

    >>3

    腕おじ祭りの企画書絶対役所の同人作家お姉さんが書いてる

  • 38二次元好きの匿名さん25/03/11(火) 22:41:25

  • 39二次元好きの匿名さん25/03/12(水) 07:48:29

    >>9

    腕おじと裏梅がかわいいのは言うまでもなく

    いつも女子達の押しが強すぎて個人的に助かる

    押せ押せな女子はいいぞ…

  • 40二次元好きの匿名さん25/03/12(水) 16:39:47

    >>39

    分かる…分かる…!!!

  • 41二次元好きの匿名さん25/03/12(水) 21:46:43

    ホワイトデーまで秒読み
    今頃すっくんはどんなチョコにしようか考えてる頃だろうか

  • 42二次元好きの匿名さん25/03/13(木) 00:15:07

    女子達に囲まれるすっくん…いい…

  • 43二次元好きの匿名さん25/03/13(木) 08:25:18

    両面宿儺は平安の人である。

    平安といえば甘味はとぼしく砂糖漬けか干し柿程度のもの。今世の宿儺の甘味についての知識は多くのところを受肉体の頃の記憶、つまりは虎杖・伏黒両名の記憶に頼っている。
    しかし問題は新たな生に伴って、受肉体であることを脱した影響からか、件の二人の記憶の大部分を失っているという部分にあった。

    「・・・くっ・・・小僧っ・・・」

    歯噛みする宿儺。それもそのはず。
    いくら自身が知り得ぬこととはいえ、あの憎たらしい小僧に教えを乞うなど考えたくもないこと。
    あくまで自力で挑む。そう心に決めた宿儺の手元、普段使わないスマートフォンの画面にひっそりと通知が映るのを、彼の複眼は見逃さなかった。

  • 44二次元好きの匿名さん25/03/13(木) 09:04:40

    「乙骨優太か」
    「はい、お願いがあります」

    かつては命をかけて呪いあった敵同士でありながら、一度は討伐を成した上に田舎町に転生した宿儺が人間社会に害意を持っていない以上、乙骨は宿儺と対立する理由がないとして、時折任務を依頼する協力関係を築くことに成功していた。

    「製菓作業中だ。手短に話せ」
    「僕もです。オペラがまったく固まりません。それはそうと、呪霊です。術式持ちで分裂個体がすでに活動開始していますが、本体位置は不明。おそらくはバレンタインや卒業などの感情の昂りからのものでしょう」

    「貴様の手には負えんのか。めれんげとやらを泡立てているところなんだが」
    「僕もです。温度が高いと全然泡立ちませんね、これ。呪霊の強さはともかく厄介さは相当です。すでに高専職員が何人か攫われました。」

    「是非もない・・・。ところで味付けは砂糖でいいのか」
    「ありがとうございます。味付けは砂糖ベースでココアとか入れるといいらしいですよ」

  • 45二次元好きの匿名さん25/03/13(木) 09:15:26

    お菓子作りながら真面目に呪霊の話もしてる先輩とすっくんwww

  • 46二次元好きの匿名さん25/03/13(木) 09:17:35

    >>44

    真面目な報告とお菓子の報告しながら会話するの、はたから見たらめちゃくちゃトンチキだな

  • 47二次元好きの匿名さん25/03/13(木) 09:26:49

    バレンタインデーとは本来西洋の聖人を寿ぐ祭祀である。その過ごし方は家族での穏やかなものだそうだが、この国においては製菓会社のたゆまぬ努力の結果、菓子と恋模様の一体化に成功し、今では万感の思いをこめた菓子を送りあう奇祭へと変じている。

    そして、女子から男子への儀式であるバレンタインデーは年月を経て、一種の先行投資のような性格を帯びるにいたる。
    高価なチョコレートを贈られたのなら、より高価なものを贈るべきであるという暗黙の了解。いかなる豪傑であろうと逃れること叶わないこの戒めは、今回は呪いの王と現代の異能を縛り付けて離さない。

    宿儺は裏梅に対して。
    乙骨は高専職員たちや後輩たち、そして同級生や教師たちに対して。もちろん居所すらつかめない先輩には無しである。

    手作りである必要は全くなのだが、どこか生真面目な彼らが手作りを選んだのは何の因果によるものか。

  • 48二次元好きの匿名さん25/03/13(木) 09:36:18

    この奇祭は本来の姿とは完全に離れ、今や色恋沙汰を旨とするようになっている。
    それはつまり、この催しがいわゆる”選ばれた者”のための催しであることを意味する。
    そして、それは転じて、選ばれなかった者たちがいることをも指す。

    ”自分たちも生まれ落ちたからには、友情を交わし、愛を与え、正義を語り、世界のために役に立ちたかった”
    そんな思いは人知れず、集まり、織り編まれて形を成していく。

    2月14日から3月14日までのひと月もの間、延々と溜まりこんでいく”選ばれなかった者たち”の負の感情の矛先は自然と”選ばれた者”たちに向くことになる。いわば、見目の美しい者たちである。
    この呪霊の被害者たちの共通点はそこにあった。

    しかし、これだけならただの呪霊事件で済むところ、宿儺が出張れば広範囲高威力の一撃で早々に片が付く。乙骨は撃破でなく救出にのみ専念すればいい。しかし、これまでとは違う要素が一つ。

    それは、昨日から裏梅が帰って来ていないこと、そのものであった。

  • 49二次元好きの匿名さん25/03/13(木) 19:16:30

    裏梅が心配

  • 50二次元好きの匿名さん25/03/13(木) 20:46:18

    呪いの王たる両面宿儺が出張れば呪霊ごとき、ものの数ではない。
    それは揺らぎようもない事実。

    その点、乙骨は信頼に似た感情を抱いていた。
    確かに、手を焼いた呪霊であったが、自身を超えるような高度な戦力がもうひとつ盤面に存在すれば、もはや解決できない状況など想像すら難しい。
    乙骨の自信は決して過信ではなかった。

    おそらくは特級であろう呪霊による大規模な失踪事件。
    事件の原因そのものの排除はあっという間であった。

    しかし、乙骨だけでなく宿儺も忘れていたことがある。
    バレンタインデーもホワイトデーも色恋を端に発する行事である。
    そして、色恋において最も恐怖されるのは離別や破局ではない。愛する者を別の者に奪われることである。

    救出された裏梅を前にした宿儺の脳裏には感動の再開のようなBGMが流れていたが、裏梅が発した言葉は予想を裏切るものであった。
    「あ、・・・ども・・・」

    刹那、呪いの王は自身の脳が大きく揺さぶられるのを自覚する。

  • 51二次元好きの匿名さん25/03/13(木) 22:26:47

    「裏・・・梅・・・?」
    「あっ宿儺さま、どうも・・・」

    ぺこりと他人行儀に頭を下げる裏梅。明らかに宿儺に対する慕情の念が消失しているのが見て取れる。
    反抗期や仲たがいのそれは完全に別のニュアンスを持ったその振る舞いは宿儺をして嘔吐寸前にまで追い込まれるには十分すぎるものであった。

    その様を見ていた乙骨。
    瞬時にその症状に気づく。

    「これは・・・」

    おそらくは呪霊の残した一時的な悪あがきのようなものなのだろう。好意の簒奪による関係性の変化である。
    有り体に言えば”モテない者たち”と言ったところか、彼らの負の感情はすでに愛を得ていた者たちの”愛”そのものに作用したのだろう。

    結果的に、同衾もせずに他人の恋人を寝取るようなものである。そしてその術式の効果は裏梅にも及び、両面宿儺は千年の魂の旅路の中で初めて脳を破壊される感覚を味わうことになった。

  • 52二次元好きの匿名さん25/03/13(木) 22:30:10

    もちろん一時的である。
    おそらく、呪霊の術式の効果が完全に切れた辺りで裏梅の宿儺に対する好意は復活し、それまでの非礼を詫びながら、誠心誠意を込めて宿儺の機嫌を取ろうと励むのだろうが、問題は宿儺がすでにこと切れていることにある。

    魂は肉体を離れ、数瞬の光の途を通り、とある空港施設のような場所へと至っていた。

    「・・・は?」
    「・・・む?」

    史上最強と現代最強、魂の世界での再会。
    両者は困惑の気持ちを込めて、互いに見やるのであった。

  • 53二次元好きの匿名さん25/03/13(木) 23:07:49

    NTR脳破壊コンボからの空港送りにされる呪いの王お労しすぎるのに笑いが止まらない
    ごめんよすっくん

  • 54二次元好きの匿名さん25/03/14(金) 07:50:27

    すっくんの脳はもうボロボロ

  • 55二次元好きの匿名さん25/03/14(金) 12:25:29

    空港で楽しくやってた五条もびっくりだろこれ

  • 56二次元好きの匿名さん25/03/14(金) 13:04:17

    「・・・旨い・・・」

    困惑する宿儺を、同じく困惑する五条が案内し、二人は空港内の飲食店にてラーメンを喫していた。
    どういう仕組みで提供されてくるのか全くの不明ではあるが、ごくシンプルな醬油ラーメンが湯気を立てて差し出される。

    「裏梅・・・」

    食事をするというだけで否応なく結びつけられた記憶が呼び起こされる。宿儺の声が上ずっていたのか震えていたのか、それは誰にもわからない。少なくとも、対面に座る五条悟は困惑を隠せず、何も語らないままであった。

  • 57二次元好きの匿名さん25/03/14(金) 13:11:37

    麺を啜る音がしばらく響く。

    少々塩味の強い醬油ベースのスープ、ふわりと乗せられたなると、少し大きめの海苔。
    これが焼き海苔であったなら強い香りがラーメンの味わいを邪魔しているかもしれないが、今回は通常の海苔であるために、その懸念は無用。

    量産を前提にした簡素なつくりのラーメンであるが、傷心の宿儺にはちょうどいい塩梅であった。
    食事の間、五条悟が何か”花”だとか”生物”だとか”南”だとか言っていたが、宿儺には聞き取るだけの気力がなかった。

    空港は広く、遠くにはこちらを伺うような人影も見える。といっても、当の宿儺本人にもはや気力がない以上、彼らの正体についてはわからないまま。

    多少、羂索を見たような気がしたものの、追及するだけの意思は今の宿儺にはない。
    五条の「いったいどうした」という問いかけは、至極まっとうなものであったが、宿儺の返答は「愛が・・・・」のみ。

    しかし宿儺は変わった。なにしろ、”愛などくだらん”とは言わなかったのだから。

  • 58二次元好きの匿名さん25/03/14(金) 13:16:57

    空港の売店にて白い恋人を購入している際、突然のめまいに襲われた両面宿儺。
    目を覚ますとそこには反転術式をかけている家入の姿が。おそらく、緊急搬送されたのだろう、彼は今東京高専の敷地に来ていた。

    窓の外を見やると、蟻の列を観察している裏梅の姿が見えたが、どうも声をかける気になれない。

    「明日には戻ると思うよ」
    何を問わずとも家入は宿儺に教える。その報は宿儺にとっては救いの福音であった。
    明日になれば、明日になりさえすれば、チョコレートを渡して、裏梅の酌で晩酌を喫し、熱燗で温めた身体を布団の中に横たえることができる。

    そこまで考えた時点で、宿儺は気づいた。
    ”チョコレートが完成していない”ということに。

  • 59二次元好きの匿名さん25/03/14(金) 15:42:51

    心情と塩味強めラーメンの味がリンクしてるの見事だし腹が減るし僕らの腕おじはかわいそかわいい

  • 60二次元好きの匿名さん25/03/14(金) 20:44:02

    すっくん大丈夫そ?チョコ間に合う?

  • 61二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 00:50:09

  • 62二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 08:36:26

    >>57

    色々話してるのに宿儺上の空でほぼ伝わってない五条悟もちょっとお労しい

    新宿決戦中はあんなに煽り倒してた相手でも元気なかったら心配する五条に根っこの善性が感じられて好き

  • 63二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 12:10:15

    「 宿 儺 さ ま - - - !!」

    両手両足でがっしりと抱き着いてぴーぴーと泣きつく裏梅。日が明けて呪霊の術式効果が切れたため、宿儺に対する好意が復活したのだが、それは同時に自身が宿儺にどれほど素っ気ない態度を取っていたのかを自覚することにもつながり、結果として彼女は巨木に身を寄せるセミのように宿儺の足に張り付いて必死で謝り、必死ですがりつくことになった。

    もちろん、宿儺としては許す許さないの俎上に上らない話であり、4つの腕を全力で展開しで裏梅を撫でまわすも、裏梅は変わらずぴーぴーと泣きつくのみ。

    しかし、宿儺の中にはとある焦りがあった。
    その焦りは厨房にある、木端微塵になったホワイトチョコレートに関与するものであった。

  • 64二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 16:01:59

    4本腕全力展開ナデナデされる裏梅キャワ

  • 65二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 21:21:47

    空港で白い恋人買ってたのもホワイトチョコ作ろうとしてたからなのかな

  • 66二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 01:31:42

    4本腕でわしゃわしゃしてるの見たい
    生前に示さなかった愛を"次"の生で与えられ、与えようとしているのがとても良い

  • 67二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 09:29:32

    ぴーぴーw

  • 68二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 12:03:49

    宿儺の不幸はホワイトチョコレートの作成に失敗したことではない。
    失敗など検証の一過程でしかないことを宿儺は知っている。
    ならばこそ、彼の不幸とは何か。

    それは、その粉々になったホワイトチョコレートを裏梅が発見し、自らへの宿儺からの贈り物であるとして喜んでいるという事実そのものであった。
    本当はもっとしっかりと作りこんだ逸品を授けたかった。
    子供特有の高い体温に反応して、舌の上でほろりと溶けるホワイトチョコレート。製法はすでにわかっていた。試作も終え、いざという段になっての呪霊の騒ぎとそれに伴う脳の破壊・・・

    結果として、宿儺は不本意な形で己の贈り物が裏梅の手に渡っていくのを見ていることしかできなかった。
    裏梅が、このチョコレートは宿儺のものだと気づかず出来栄えの悪さを嘲笑したならば、まだごまかしようもあったが、天使のような笑顔で礼を言い、跳んで跳ね回る裏梅を前にしてはもはや並行せざるを得ない。

    そんな調子で数日が過ぎていった。

  • 69二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 12:13:11

    宿儺や裏梅はその日、田舎町の大広場に来ていた。囃子の太鼓と笛が鳴り、辺りには奇妙な飾りの付いた提灯がぶら下がっている。

    中央に備え付けられた舞台には町の若者たち、子供たち、また老人たちが四本腕の仮装をして厳かな踊りを踊っている。

    出店が並べた椅子の一角に腰かけてそれを見やる宿儺の胸中は実に複雑であったが、裏梅が喜んでいる以上、何とも言えない。
    「宿儺さま!宿儺さまでございます!どこもかしこも宿儺さまでございます!!」
    きゃっきゃと跳ねる裏梅の手を握り、頭をやさしく撫でる宿儺こと腕おじ。

    「小遣いをやる。少し散策してこい」
    そう告げて裏梅に8万円ほど握らせるや、好きに行動させる宿儺。かなりの大金であることにもはや本人は気づいていない。

    そんな折、腕おじ祭り開催の報を聞きつけた虎杖・伏黒ら2年生と乙骨・狗巻そしてパンダら3年生。両手に飲料と屋台の軽食を持ち、宿儺に声をかけてきた。

    曰く、ホワイトデーのお返しをすっぽかしたため、女性陣からの激怒を受けたとのこと。

  • 70二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 12:22:17

    「俺に何を聞こうと言うのだ「まーなんつーかさー!任務だったんだし、しょうがなくね!?」「虎杖、人が話してるのを遮るのは「すじこすじこめんたいこ!」「狗巻くん、脈絡ない下ネタはさすがに怒られるよ」「とげー自重しろー」

    「・・・・・」

    「さっさと菓子でも持っていけば良かろ「つってもさ!安いのだとそれはそれでブチ切れられそうだしさ!なんか小沢もいつの間にか釘崎と結託してるし!」「まあ釘崎のことだしゴディバでも持ってきゃいいだろ」「おかか!」「狗巻くんの言う通り、来栖さんには伏黒くんからしっかりフォローしないとね」「俺ら真希に殴られたもんなw」

    「・・・・・」

    遠くで囃子が鳴っている。腕おじ祭りはまだまだ盛り上がりを見せるだろう。
    眼前で己をそっちのけにして盛り上がるかつての敵勢を呪いの王は・・・

    「くはっ」

    と破顔して穏やかに笑うのだった。

    宿儺おじさんとホワイトデー ~完~

  • 71二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 13:25:05

    これからの男性陣を考えると面白…いや大変そうだけどほのぼのエンドに感謝
    でもお小遣い8万円はちょっと多すぎるよ腕おじ!!

  • 72二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 20:00:45

    また祭り上げられてるすっくん草
    この町そのうちふるさと納税返礼品が「等身大腕おじ抱き枕(腕枕用四本腕搭載)」になってそう

  • 73二次元好きの匿名さん25/03/17(月) 00:39:31

    毎回楽しませてもらってます乙でした
    裏梅かわいい

  • 74二次元好きの匿名さん25/03/17(月) 08:01:32

    おつ!!!今回もすごく良かった…

  • 75二次元好きの匿名さん25/03/17(月) 13:21:45

    エピローグ ~腕おじ祭り開催委員会議事録~

    「だ~か~ら!お祭りやれば外部からも人が来るから財政的にはプラスになるって言ってるでしょうが!」
    とある日、町役場の会議室は紛糾していた。片や革新的な催し物によって外部の来客を呼び込み、財政を黒字にもっていこうとする者あり。片や旧態依然といっても長年赤字財政の中でもやり繰りしてきた自負を持つ者あり。

    催し物を起こすとなれば当然予算をつける必要があるが、ちゃちな額ではできることも限られる。財政黒字を求めるならばそれなりの予算が見込まれるが、そうなると費用対効果の分析は極めて重要。

    問題は祭りの由来が土地に縁もゆかりもない一個人であるということと、実績が全くないというところにあった。
    議論は踊る、されど進まず。

    「はあ、もう分かりました。すでにお金を払って買ってくれている人がいる以上あまりこういう手は使いたくなかったですけど・・・」
    役所の職員の一人である女はおもむろにバッグを開き、取り出したのは数十冊の本。厚さは薄めだが装丁は少々凝っている。女は一言。

    「冬の新刊です」

    数十分後、満場一致で可決した本件。会議室を後にする者たちの表情にはどこか確信に満ちた晴れやかさが溢れていた。
    ~了~

  • 76二次元好きの匿名さん25/03/17(月) 13:32:43

    エピローグ ~~

    「華、以前も言ったが彼はすでに君の気持ちは分かっていると思「いやそうは言っても!そうは言っても!ほら!こういうイベントは楽しまないと、ね?」
    もはや関係値の強化など必要もないほどに信頼関係を積み上げた仲ではあるが、来栖華は迷っていた。片腕になるとまで告げられた想い人に対して、どうすれば自然体で接することができるのか、彼女には経験がない。

    通常の一般的な男女間のコミュニケーションによって関係性を構築できればこうはならなかっただろうが、あまりにもハイペースにことが進んだ挙句、もはや人生を捧げると言わんばかりの覚悟を持った想い人。もちろんここに恋愛の色合いは含まれていないことは重々承知ではあるが、それでも思い返すたびに、だらしなくにやけてしまうのも乙女心というもの。

    「しかし華、かと言って媚薬混入はさすがに・・・「いや!媚薬とかじゃなくて!これは!えと、ね?羅漢果とかは漢方とかでも使うものだし?隠し味的な?」
    「華、そもそもホワイトデーは男性から「恵がくれると思う?」「・・・・いや、すまない。私は君の力になれないようだ」

    そんなやり取りも楽しいと思っていた彼女らだが、ふいうち的に伏黒が高級パティスリーブランドの袋を提げてやってきたときは、「華!これはイケるのでは!?」「ちょっと待って!?心の準備が!?」と騒ぎあうのであった。

    ~了~

  • 77二次元好きの匿名さん25/03/17(月) 19:14:25

    エピローグキター!!
    役所のお姉さんその新刊全部一冊ずつください
    華ちゃん乙女でカワイイと思ってたら隠し味で真顔になった
    メインの宿儺裏梅がかわいいのは言うまでもなく
    甘酸っぱい青春好きとしては所々に差し込まれる若者達のやりとりがたまらなく好きです
    毎度素敵な物語をありがとうございます!

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