- 1二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 14:34:38
- 2二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 14:37:00
会場は、呪術の領域展開さながらの喧騒であった。
虎杖悠仁のフィギュアに群がる少年、伏黒恵の呪霊ジオラマに涙する乙女、狗巻棘の「おにぎり」マグカップを奪い合う行列――。
余は真依ちゃんのパネルを探し、死滅回游コーナーを彷徨った。
すると、運命の邂逅が訪れた。否、運命のレスバが。 - 3二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 14:42:59
「日車寛見こそ至高の男! その義裁鎚、弁護士の魂、正義の顎線――完璧だ!」と叫ぶ青年がいた。
推定25歳、メガネに日車Tシャツ、名を名乗らずとも「日車オタク」と呼ぶにふさわしい。
彼は日車の等身大模型に頬ずりし、こう続けた。
「そして、日車×真依のカップリング! 真依の反骨と日車の包容力、嗚呼、完璧な化学反応!」 - 4二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 14:43:39
余は心臓を撃ち抜かれた。
真依ちゃんがカップリング!? しかも日車と!?
確かに、日車のクールな魅力と真依ちゃんの鋭さが交錯する二次創作は、pixivの片隅で見たことがある。
だが、真依ちゃんは我の推し、独占せねばならぬ!
余は咳払いし、割って入った。
「ふむ、君、日車は認める。だが真依ちゃんは単体で輝く星だ! カップリングなど、真依ちゃんの孤高を損なう!」と、余は滾るオタク魂を解き放った。 - 5二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 14:44:29
日車オタクはメガネを光らせ、反撃した。
「孤高だと? 真依の孤独を癒すのは日車の法廷魂だ! 事務所AUで真依が日車に刀を預けるシーン、読んだか? pixiv、タグ『ひぐまい』、10件の至宝だ!」
「10件!? マイナーにも程がある!」と、余が叫ぶと、新たな声が響いた。 - 6二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 14:45:19
「ふざけるな! 三輪霞こそ至高の推し! 真依も日車も霞の前では色褪せる!」
と、別の青年が乱入した。
推定20歳、赤いマフラーを巻き、三輪の缶バッジをジャラジャラつけた「三輪オタク」だ。
「三輪の純粋さ、刀の構え、乙骨先輩への淡い想い――それが呪術の真髄だ!」
「三輪だと!? 真依ちゃんの不良美に比べれば、霞などただの優等生!」余は吠えた。
「黙れ! 日車×真依の法廷ロマンスに、霞の凡庸さは不要!」日車オタクも吠えた。
かくして、死滅回游コーナーはレスバの戦場と化した。
真依ちゃんの尊さを訴える余、日車×真依の二次創作を滔々と語る日車オタク、三輪の純朴さを讃える三輪オタク――我々の声は展示ケースを震わせ、義裁鎚の模型すら揺れた。
観客が遠巻きに見守る中、事態は急転した。 - 7二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 14:46:49
- 8二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 14:51:47
ってあにまん民じゃねえか
せめて外では行儀良くしろ - 9二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 14:53:52
「チィィィズゥゥゥラーーー!」
獣のような咆哮が会場を貫いた。
見よ、グランフロント大阪の天井から、黒いマントを翻す集団が降り立った。
20名ほどの若者たち、額に「針」のタトゥー、首に「千鈞」のネックレス。
針千鈞愛好家、蔑称「チヅラー」である。
針千鈞、死滅回游の脇役、ピンク髪の術師(第174話~)。
そのマイナーな魅力に取り憑かれた彼らは、Xで「チヅラー連合」を名乗り、過激な推し活で悪名高い。 - 10二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 14:58:05
「我々はチヅラー連合! 針千鈞の栄光を讃え、呪術廻戦展をジャックする!」リーダー格のチヅラーが叫んだ。
「真依も日車も三輪も、千鈞のピンク髪に跪け!」
会場はパニックに陥った。
チヅラーたちは千鈞の等身大パネルを掲げ、展示ケースを占拠。
グッズ売り場に「千鈞ステッカー」を貼りまくり、スピーカーから「千鈞のテーマ(自作)」を流し始めた。 - 11二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 15:10:15
余は呆然とした。真依ちゃんのパネルが、千鈞のステッカーで汚される!
「許さん!」
余は叫び、日車オタクと三輪オタクを見やった。
「諸君、推しの違いはあれど、この危機は共闘せねば!」
「同意!」
日車オタクがメガネを押し上げた。
「日車なら、チヅラーを法廷で裁く!」
「三輪の刀で、千鈞を斬る!」
三輪オタクも拳を握った。 - 12二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 15:13:20
もう全員出禁でいいよ
- 13二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 16:06:23
我々はチヅラーに突進した。
余は真依ちゃんの缶バッジを握り、「萌え~!」と気合を入れ、日車オタクは日車Tシャツを翻し、三輪オタクはマフラーを振り回した。
だが、チヅラーは強かった。彼らは千鈞のピンク髪ウィッグを投げつけ、会場をピンクの嵐に変えた。
余の視界はピンクに染まり、意識が遠のいた。 - 14二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 16:21:15
気がつけば、グランフロント大阪の屋上だった。
チヅラーは消え、会場は静寂に包まれていた。
余の手に、真依ちゃんの缶バッジ。
日車オタクの肩に、日車のキーホルダー。
三輪オタクの首に、三輪のマフラー。
我々は顔を見合わせ、哄笑した。
「チヅラー、なんだったんだ…」三輪オタクが呟いた。
「千鈞の呪力か、芥見先生の悪戯か」日車オタクが笑った。
「だが、真依ちゃんは守った!」余は缶バッジを掲げた。
夜の大阪、グランフロントのネオンが瞬いた。
我々の推しは、それぞれの心に輝き、チヅラーの残影は鴨川の彼方へ消えた。
呪術廻戦展の夜は、かくも狂おしく、愛おしかった。
完 - 15二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 16:30:41
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- 16二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 16:31:11
チィィィズゥゥゥラーーー!で駄目だった
- 17二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 16:49:15
チヅラー登場からマジで事態が急転してて笑う
- 18二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 18:14:55
「千鈞のテーマ(自作)」誰か作ってくれ
- 19二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 22:41:07
このレスは削除されています
- 20二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 23:17:46
後日談
鴨川の残響、推しの残影
我が名は中村某、大学四年、かくも孤高なるオタクの徒である。
推しは鹿紫雲一、死滅回游の雷神、片目覆う前髪と雷鳴の術式に魂を奪われた男だ。
2025年夏、グランフロント大阪の呪術廻戦展にて、余は真依推しの佐藤君、日車×真依の狂信徒、三輪霞の信奉者、そして針千鈞愛好家(蔑称:チヅラー)の狂騒を、氷のごとき冷ややかな目で見つめていた。
あの騒乱――レスバの叫び声、千鈞のピンク髪ウィッグが舞う地獄絵図――は、我が推し、鹿紫雲の荘厳な雷鳴に比べれば、児戯に等しい。 - 21二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 23:20:01
数日後の大阪、鴨川ならぬ淀川の河川敷にて、余は彼女と再会した。
大野さん、推しは西宮桃、京都校の箒乗り魔女、眼鏡の奥に宿る芯の強さに心酔する乙女である。
彼女は呪術廻戦展の片隅で、チヅラーの暴走を「ふん」と鼻で笑い、西宮のパネルにそっと手を添えていた。
あの瞬間、余は確信した。
大野さんは同志、推しの尊さを理解する稀有な存在だと。 - 22二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 23:24:37
「中村君、まったく、なんだったんだろうね、あの展覧会」
大野さんは河川敷のベンチに腰かけ、缶コーヒーを傾けながら言った。
彼女の眼鏡は夕陽を反射し、西宮桃の知的な微笑を思わせた。
「真依だの三輪だの、挙げ句に千鈞? 推しの選択が凡庸すぎるよ」
「まったくだ、大野さん」
余は隣に座り、鹿紫雲の缶バッジを弄びながら応じた。
「あんな喧騒、鹿紫雲一の雷鳴が一撃すれば霧散したろう。あの男の孤高、片目の奥に宿る悲哀――嗚呼、チヅラーなど塵芥だ」 - 23二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 23:26:11
大野さんはくすりと笑い、髪を掻き上げた。
「鹿紫雲、かっこいいよね。死滅回游でのあの戦い(第176話)、痺れたよ。でもさ、西宮桃の魅力には敵わない。箒で空を舞う姿、仲間を守る健気さ、京都校の裏番長って感じ? ああ、推せる!」
「西宮も悪くない」
余は渋々認めた。
「あの箒術式、確かに華がある。だが、鹿紫雲の雷神たる威厳! 宿儺すら凌駕する瞬間(第177話)、pixivの『かしうん』タグで見たあのイラスト――魂が震えた!」 - 24二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 23:28:05
鹿紫雲(かしうん)
- 25二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 23:35:22
「pixivねえ」
大野さんは缶を置き、目を細めた。
「西宮のタグ『にしみや』、20件くらいかな? 少ないけど、どれも愛に溢れてるよ。鹿紫雲もマイナーだけど、熱いファンがいるよね。…チヅラーみたいに暴走しない、ちゃんとしたファン」
「チヅラー!」
余は思わず声を上げ、淀川の水面に波紋が広がった。
「あの連中、千鈞のピンク髪を神と崇め、グランフロントをジャックした罪は重い。鹿紫雲なら雷で裁き、西宮なら箒で一掃したろう!」 - 26二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 23:37:09
大野さんは笑い、ベンチから立ち上がった。
「ねえ、中村君、あの騒動、冷たく見てたけど、ちょっと羨ましかったんじゃない? 佐藤君たちの情熱、レスバの熱量。あんなふうに推しを叫べるの、ちょっと眩しいよね」
余は言葉に詰まった。
確かに、佐藤君の「真依ちゃん、萌え~!」、日車オタクの「ひぐまい」への滾る魂、三輪オタクのマフラー振り回し――
あの愚直なオタク魂は、余の心のどこかを揺さぶっていた。
鹿紫雲の孤高を愛する余は、叫ぶことを忘れていたのかもしれぬ。 - 27二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 23:40:48
「大野さん、君は叫ばなかったのか?」
余は尋ねた。
「西宮の魅力を、チヅラーに叩きつけたかったのでは?」
「うーん、叫ぶより、守りたかったかな」
大野さんは淀川を見やり、呟いた。
「西宮のパネル、千鈞ステッカーで汚されそうだったけど、私が睨んだらチヅラー逃げたよ。西宮の眼鏡パワー、侮れないね」
「はは、さすがだ!」
余は笑い、缶バッジを握り直した。
「余も、鹿紫雲のパネルにウィッグが投げられた時、雷のごとく睨みつけた。あのチヅラー、泡を食って退散したぞ」
我々は哄笑し、淀川の夕陽に誓った。 - 28二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 23:42:31
推しは叫ぶものにあらず、守るものなり。
鹿紫雲の雷鳴、西宮の箒――それぞれの領域は、チヅラーの嵐にも侵されぬ。我々は缶コーヒーを掲げ、ささやかな乾杯を交わした。
「次は、京都で呪術展だね」
大野さんが微笑んだ。
「西宮の聖地巡礼、付き合う?」
「鹿紫雲の雷を追い、京都を彷徨うか」
余は頷いた。
「だが、チヅラーが現れたら、共闘だぞ」
淀川の風が、我々の推し魂を運んだ。
呪術廻戦展の残響は、かくも静かに、愛おしく響き合った。
完 - 29二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 23:48:36
んだぁ?この青春…