- 1二次元好きの匿名さん22/03/31(木) 06:13:00
「……ごめん、その気持ちには答えられない」
心が痛む。だが、俺にはこう答えることしか出来ない。
「……理由を聞いてもいい?」
「…………」
言うしかない。ウララを傷つけることになったとしても。
ウララに悲しい思いをさせることになったとしても。
避けては通れない道なのだから。
「……ウララのことを、異性として見られないからだ」
トレーナーとウマ娘の関係だからという、ありきたりな正論でもない。
ウララの可能性を潰したくないという、ウララの気持ちに目を向けない答えでもない。
ただ、どうしても無理だったのだ。ウララは俺にとって、可愛い愛バ以上の目では見られなかった。
「……そっか。ありがとう、トレーナー」
「どうして、礼を言うんだよ……」
「ちゃんと、わたしの気持ちに……向き合ってくれたから。簡単な言い訳に逃げずに、ちゃんと答えてくれたから」
「……っ」
やめてくれ。俺はウララを傷つけたんだぞ。君の気持ちを踏みにじったんだぞ。
どうして、そんな笑顔になれるんだよ……どうして、泣きながら、微笑んでくれるんだよ……
「……今までありがとう、トレーナー。わたしはもう、現役じゃなくなるけど、まだまだ頑張るからね!」
「……ああ」
「もしかしたら、お勉強でつまづいちゃうかもしれないけど……わたし、頑張るから!」
「……ああ」
もう限界だった。俺はウララの顔を直視することが出来ず、視線を逸らしてしまった。
情けないことこの上ないが、ウララの純真さは……成長してもなお、変わらない純真さは、俺には眩し過ぎたんだ。
「それじゃあね、トレーナー……うっ、うぅっ……!」
「……っ」
耐えろ、俺。トレーナーを続ける以上、こういうことだってあり得るのだから。
どんなに辛くても、苦しくても……元愛バの気持ちを否定してでも、前に進まなければならない。
何より自惚れじゃなければ、ウララの方が俺よりも辛いんだ。その罪悪感を、俺の胸に刻み付けろ。
(……ごめん、ウララ) - 2二次元好きの匿名さん22/03/31(木) 06:13:29
(ふぅー、今日のお仕事も疲れたなぁ……学生時代の体力が懐かしいよぉ……)
卒業式の日。トレーナーに告白して、フラれちゃった日。
あれからもう、10年が経った。幼かったわたしはもう、今ではOLだ。
現に今も、私は残業を終えて一人暮らしの家に寝に帰るところだから。
(今だったら、あんな激しいトレーニング……出来ないかも……)
あんなに仲の良かったキングちゃん達とは、すっかり疎遠になっちゃった。
もちろん友人としてのお付き合いは続いているけれど、一緒に会う機会は激減した。
でも、私は友達に会えないことよりも……もっと引きずっていることがあった。
(トレーナー……今、何してるのかな……)
私は結局、失恋から立ち直ることが出来なかった。フラれて以来、10年間も初恋に未練を抱き続けている。
だって、トレーナーほど私のことを考えてくれる人はいなかったから。
トレーナーほど、優しくてカッコいい人はいなかったから。
トレーナーのせいで、私の男性観は粉々になっちゃった。理想が、ハードルが、凄く高くなっちゃった。
(責任、取ってほしい……いや、そんな我儘を言うのは――――)
「はぁ……」
「――――!?」
そんな昔の人を忘れられない私に、久々に勝利の女神が舞い降りた。
目の前のベンチで座っているのは、忘れるはずもない。一時も忘れたことなんて、ない。
「そろそろ、体にガタがきたか……あるいは、若い頃の無理が祟ったか……」
「と、トレーナー……?」
「……え?」
「トレーナーだよね……?」
夢かと思った。あるいは、時間が戻っちゃったのかと思った。
でも、これは紛れもない現実。だって、久々に見たトレーナーの顔は少し老けて……
ううん、老けたんじゃなくて、貫禄があると言った方がいいかな?
「その声と髪……ウララか……?」
「そうだよ!ウララだよ!久しぶり!」 - 3二次元好きの匿名さん22/03/31(木) 06:14:00
「そっか……今でもトレーナーを続けてるんだね」
「ああ。そのお陰で、未だに独身だけどな……」
「えぇっ!?」
「愛バに時間を使ってばかりだから、彼女を作る暇なんてないさ……その結果がこれだ。笑っちゃうだろ?」
「そんなこと……」
トレーナーが独身だと聞いた私は、内心飛び上がるほど嬉しかった。
これで既婚者だったり、付き合っている人がいるなら、家に帰った後でまた枕を濡らしていただろうけど。
「……ねぇ、トレーナー」
「……ん?」
「私じゃ、ダメ……?」
「……!」
独身ということなら……私にも、まだチャンスがあるということだよね?
あの日は叶わなかった恋に、もう一度……チャレンジしてもいいってことだよね?
「私、もう大人だよ……?背も胸も、大きくなったよ……?」
「……年齢差が」
「関係ないよ!私は今でもトレーナーのことが好きだもん!ずっと好きだったもん!」
嘘偽りのない、私の本心だった。伊達に10年間失恋を引きずっていない。
私は20代で、トレーナーが30代?10歳差のカップルなんて、お互いが成人しているなら、それほど珍しくもないはず。
「…………」
「それとも、やっぱり私のことは……」
「……いや、そんなことはない」
「あ……」
「本当に綺麗になったよ、ウララ……さっき、一瞬だけ見惚れてしまった」
「それじゃあ……!」
「でも、ダメだ」
「えっ……どうして……?」
「いくら異性として見られるようになったからって、それで"はい付き合おう"と言う訳にもいかないだろう」
「私は全然」
「俺が気にする。10年前、君の告白を正面から拒絶した俺が……そんなあっさり付き合おうだなんて、許されるはずがない」
「…………」 - 4二次元好きの匿名さん22/03/31(木) 06:14:50
「だから、その……友人から……」
「え……?」
「元トレーナーと元愛バではなく、今まさに知り合った友人……そこから改めて、やり直してみないか?」
「……!」
嬉しかった。どんな形であれ、トレーナーが私の気持ちを受け入れようとしてくれているのが。
懐かしかった。トレーナーから、優しい言葉をかけて貰えたのが。
「うんっ!じゃあ今日から私とトレーナーはお友達ってことだよね?」
「ああ。でも、本当にいいのか?」
「え?何が?」
「ウララはまだまだ若いが、俺はもうおっさんだぞ……?」
「だから関係ないってば!トレーナーが何歳になっても、私の気持ちは変わらないもん!」
「ウララ……」
10年!10年だよ?ずっと、ずぅっと、引きずってたんだよ?
それなのに、トレーナーがおじさんだからという理由で気持ちが冷めると思う?
むしろ逆だよ!今まで抱えてきた想いが爆発しそうになってるもん!
「……ごめんな」
「え?」
「俺は、10年も……ウララに辛い思いをさせて……」
「トレーナーのせいじゃないよ。私が勝手にトレーナーを好きになっちゃっただけだもん」
「でも……」
「それなら、これから10年分の時間を取り戻すつもりで一緒にいてくれる?」
「……!」
「私、トレーナーとデートしたい。お酒だって飲みたい。今まで出来なかったこと、いっぱいしたい!」
「……分かった。立場上、仕事を疎かには出来ないが、極力ウララとの時間を優先することを約束する」
「えへへ……ありがとう」
うん、今はこれでいい。再会出来た嬉しさで焦りたくなっちゃったけど、ここは辛抱しなくちゃ。
トレーナーだって忙しいだろうし、いきなり私の都合に合わせてもらうのは申し訳ないもん。
これからゆっくりと、空白だった時間を取り戻していけばいいんだから。
(……でも、出来るだけ早く"その気"になってね?トレーナー♡)
――――その後、トレーナーとウララが1年も経たない内に恋仲になり、翌年結婚することになるが、それはまた別のお話。 - 5二次元好きの匿名さん22/03/31(木) 06:17:15
眠れないもので没にしようと思ってたss書きました
お目汚しすいません - 6二次元好きの匿名さん22/03/31(木) 06:18:26
良きかな......
- 7二次元好きの匿名さん22/03/31(木) 06:22:08
うおおおお…ぉぉ…
- 8122/03/31(木) 06:24:59
よければ過去作も見ていってください
ss自体はスレ後半から始まる(前半は俺の気持ち悪い長文妄想なので読み飛ばして)
あんまり明るい話じゃないから苦手な人はごめんなさい
俺の気持ち悪い妄想を聞いてくれ|あにまん掲示板トレーナーはウララを勝たせようと全身全霊でトレーニングするしウララも最初はのほほんとしてたけどトレーナーの本気を感じ取って途中から今まで以上に全力で頑張るんだけどどのレースにも勝てず理事長とたづなさん…bbs.animanch.comこっちの二つは最初から普通に書いたss
トレーナー、わたしのこと…好き?|あにまん掲示板「…あぁ」「ほんとに!?」「もちろん」「やったー!わたしもトレーナーのこと大好きだよ!」「ありがとう…嬉しいよ」「えへへっ!それじゃ、先に行ってるね!」「あぁ。俺もすぐ行くから」「うっらら~!」「…」…bbs.animanch.comいろいろなことがあったよね|あにまん掲示板「そうだな…」「○○さんと結婚して、もう10年以上…長いようで、短かったような…」「…今でも、時々思うんだ」「何を?」「俺がこうして、ウララと一緒に人生を歩めているのが…夢なんじゃないかって」「あはは…bbs.animanch.com - 9122/03/31(木) 06:25:48
- 10二次元好きの匿名さん22/03/31(木) 06:43:25
時を超えても変わらない想い…良いよね…
良いものを見せてもらった、ありがとう… - 11二次元好きの匿名さん22/03/31(木) 06:54:54
良SSを発見
ageさせてもらう - 12二次元好きの匿名さん22/03/31(木) 07:23:13
朝から尊みを感じられた
これで今日も頑張れる - 13二次元好きの匿名さん22/03/31(木) 07:32:24
雨が降るから花は美しく咲き
冬があるから春は輝くんだね - 14二次元好きの匿名さん22/03/31(木) 07:43:22
ハルウララの春麗かですわ…
- 15二次元好きの匿名さん22/03/31(木) 07:57:59
トレウラの純愛SSはワクチンの副反応も速やかに治療できる
朝から尊いSSをありがとう - 16二次元好きの匿名さん22/03/31(木) 18:13:18
保守
- 17二次元好きの匿名さん22/03/31(木) 18:14:12
このレスは削除されています
- 18二次元好きの匿名さん22/03/31(木) 18:16:07
素晴らしい…
- 19二次元好きの匿名さん22/03/31(木) 18:17:25
このレスは削除されています
- 20二次元好きの匿名さん22/04/01(金) 00:25:29
ほ