- 1二次元好きの匿名さん22/04/08(金) 21:32:40
- 2二次元好きの匿名さん22/04/08(金) 21:34:55
今日のお出かけは、これまでのお出かけとは少し違っている。
蹄鉄を見るついでとか、レース研究のついでとか、何か目的があるときに一緒に来ないかと誘われることはあった。
そのときは制服やジャージのままということが多くて、着飾るなんてことはほとんどなかった。
けれど、今回は“お出かけすること”そのものが目的。
なんだかデートみたいだなって思ってしまったから、それなりに気合いを入れて備えたくなった。
「スズカさん! とってもかわいいです!!」
スペちゃんは興奮した様子で、何度も同じことばかり言っている。
つい、楽しくなって、繰り返し姿見を確認してしまう。
左へくるりとターンしてみると、揺れるしっぽがふわりと広がる。
面倒を見てくれたエアグルーヴには、感謝してもしきれない。
お化粧なんてあまりしないから、朝ごはんを食べているときに、勝手がわからないとこぼしたら。
「おとなしくしていろ」
って、問答無用で鏡の前に座らされて、あれよあれよのうちにずいぶんと華やかな表情になっていた。
数少ない私服から、お気に入りの白のブラウスとグリーンのスカートを選んで、首にはペンダントを。
普段からもっとおしゃれにも気を使っておくべきだったかな、なんて思いつつ。
髪飾りもしっかり留めて、毛が跳ねていないかもチェックして。
忙しく動く耳は、もうどうしようもない。
「いってくるね、スペちゃん」
お土産待ってます! との声を背に、玄関へと下りる。
靴も今日は文字通り“背伸び”して、ヒールなんて履いてみたり。 - 3二次元好きの匿名さん22/04/08(金) 21:35:59
寮を出て、少し歩けば待ち合わせ場所。
正門前には既に人の姿があって、こちらに気がつくと手を振ってくる。
「トレーナーさん。お待たせしてすみません」
「いや、いま来たところだよ」
使い古された定型句みたいなやりとりが自然と口に出て、お互いに笑みが漏れてくる。
「なんというか…… いつにもまして美人に見えるね」
「かわいい、って言ってくれないんですか?」
「それは気恥ずかしいから勘弁してくれないかな……」
トレーナーさんを見上げてちょっとだけ頬を膨らませてみると、彼は困ったように眉を傾ける。
でも、その顔はほころんだまま。
行こうか、という声で、二人並んで繰り出した。
慣れない足元のせいでゆっくりになる歩みにも、トレーナーさんは合わせてくれる。
ほんの少しの違いのはずなのに、何度も見たはずの街並みがなんだか目新しく感じる。
私が見ている景色は、いつもより5センチだけ高くて。
いつもあなたが見ている景色に、5センチだけ、近い。 - 4二次元好きの匿名さん22/04/08(金) 22:00:02
- 5二次元好きの匿名さん22/04/08(金) 22:01:22
お始物書終感謝
- 6二次元好きの匿名さん22/04/08(金) 22:01:28
お前が始め…てる!
- 7二次元好きの匿名さん22/04/08(金) 22:12:36
うーん、好き
- 8二次元好きの匿名さん22/04/08(金) 23:15:38
ありがとう.....