SS 宿儺おじさんと夏の思ひ出

  • 1二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 11:44:15

    寛延二年皐月の十日余りの一日、藤原家の末座に縁を有する中堅貴族・蘆原家長(あしわらのいえなが)は書台に肘をついて庭先の池に浮かぶ蓮を眺めていた。蓮の傍らには波紋と戯れる亀の姿も見て取れる。

    蘆原はここ数日、公務もおぼつかないほどに心が乱れていた。

    「四本腕の怪人、とな・・・。すでに数多の手練れぞ返り討たれける・・・。名も知れぬとは、なんともはや・・・」
    無論、悩みの種とは後の呪術界最強の男・両面宿儺の存在であるが、蘆原の心を怪しく揺らめかせる仕儀は他にあり。

  • 2二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 11:45:38

    「四本・・・」

    千年の時を超えても未だ流行性癖とは言えぬ四本腕愛好癖。その先駆けとなる特徴な性向がこの独身の若貴族にあったことを、このときは誰一人知る由もない。

    これより四年の年月を経て両家から妻を娶る蘆原だが、その妻は閨に入る前に着物を重ね着て四本の腕を再現していたとの顛末、女房たちの手記に記されたがその手記も壇ノ浦の戦火の中で焼失して久しい。

  • 3二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 11:46:48
  • 4二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 11:47:52

    蘆原が悩まし気な溜息を吐いてからちょうど千年後、両面宿儺はとある田舎町の東屋にて縁側に寝転び大きなあくびを見せていた。

    例年に比べて雨が少なく太陽の照りが強い夏。

    裏梅が切って並べた傍らのスイカも、瞬く間にぬるくなり爽やかさを幾分失ってしまっていた。
    蚊すら飛ばない猛暑の中、もはや池の水は湯へと変じ、蛙も跳ばず水の音はしない。セミの声すら岩にしみ入らず暑さの異常さを際立てている。

  • 5二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 11:48:02

    宿儺おじさん!!懐かしい!

  • 6二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 11:50:19

    宿儺の手元には家電量販店の特価セールを知らせる一枚のチラシ。その中の一角にある大きな文字。

    「日立、東芝、ぱなそ・・・?まあいい、いずれにせよ氷室が安く手に入るのならそれに越したことはない。」

    即断即決。両面宿儺は迷わない。

  • 7二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 11:52:01

    数刻後には巨大な冷蔵庫を一人で持ち上げて帰宅してきた宿儺。そんな彼の姿を出迎えたのは誰より忠実な従者・裏梅であったが、その表情は驚きと何かに満ちていた。

    「すく・・・な・・・さま・・・?」
    「む、裏梅。見ろ、たいそうな氷室だ。」

    「・・・・・・そ、そのようですね」
    「なんでも、野菜室とやらに入れておけば野菜の味を保ちつつ日持ちを延ばせるらしい」

  • 8二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 11:53:16

    「・・・ギリッ・・・」
    「夜間の節電や最適な温度の自動設定、人間の欲というのはバカにはできん。ケヒッ」

    上機嫌で冷蔵庫を配置する宿儺。試しに晩酌に使っていた酒を冷やす。
    「ほう、もう冷え始めたか。殊勝なことだ。ケヒヒッ」
    「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・さようで・・・ございますか」

    少し寝るといって自室に戻っていった宿儺の後ろで裏梅は冷蔵庫を強く睨みつけていた。

    「おのれ・・・・・・お の れ 日 立 !!」

  • 9二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 11:54:18

    裏梅にライバル登場か

  • 10二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 12:00:56

    翌日、宿儺の朝食はどこかぬるさを感じさせるものであった。キンと冷えていてほしいものがどこか冷たさが足りないようなものばかり。宿儺はすでにその意図に気づいていた。

    「む、この酢の物はもっと冷えておらねばな・・・。裏梅」
    「はい、宿儺さま」
    もはや何を言わずとも要求にこたえる裏梅。

    「氷室ではこうも手軽にその場で冷やすなどできん。相変わらず痒い所に手が届く。こと冷却に関してはお前に勝るものなど存在しないだろうな」
    「恐悦至極にございます」

  • 11二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 12:02:12

    当然、料理の達人たる裏梅が食材の温度に気が回らないはずもない。これは主に褒めてもらいたいがために裏梅ができる精一杯のアピールである。味は完璧に整えてからの好みの分かれる一手。宿儺が“より冷たいもの”を望むことを切に願っての仕掛け。

    いわゆる呪術的マッチポンプ。

    宿儺にはもちろんお見通しであったが、付き合ってやるだけの度量を持ち合わせるのが呪いの王たる所以だろう。

  • 12二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 15:42:51

    「日本の夏は、いやもう、ホントに」
    「フフフ、何を言っているんだい、花?私は砂漠の国の生まれだよ?灼熱はむしろ懐かしいくらいさ。それに平安の頃に日本の夏は経験しているからね」

    両面宿儺が田舎町で暑さに辟易しているそのころ、東京の呪術高専では来栖花が天使となにやら会話していた。

    「いやなに、私としてもこれからこの時代を生きるのだから、夏を迎えるのは当然のことさ。むしろ花はこのところ冷房の中にばかり居るね。少し運動した方がいい。なに、熱いと言っても砂漠の故郷に比べればそよ風の中に居るようなものさ。さあ、外出といこう」

  • 13二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 22:05:21

    天使?天使?!流石に洒落にならない気温だからやめたげて…
    そして新作凄く嬉しい、このシリーズ好きなんだ…

  • 14二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 22:31:51

    腕おじお久しぶりです!!
    冷蔵庫に嫉妬する裏梅かわいい
    華ちゃん&天使の動向も気になる

  • 15二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 03:40:39

    実際平安時代と今って相当気温違うだろうな

  • 16二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 09:10:29

    「あっつ・・・・・・」
    「だから言ったのに・・・」

    「いやどうなっているんだい、花?これはもう人が住めるような温度じゃないよ?猛暑の呪霊が生まれてもおかしくないくらいに・・・いやホントに・・・あっつ・・・
    故郷より暑い・・・なんだこれ・・・あっつ・・・あっつい・・・・」

    ぐだりと溶けるようにうなだれる来栖と天使。
    とはいえ、いくら猛暑への呪詛を吐いても気温が下がるはずもなく。

    「水辺に行きたい・・・」
    「プール行きたい・・・」

    二人の意思が合致するのは当然の成り行きであった。

  • 17二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 09:18:09

    そこはやはり年頃の少女である。
    来栖の次の一手は友人である野薔薇と真希に声をかけてのレジャー計画であった。野薔薇を通して小沢優子にも声がかかり一同の海浜公園行きは決定事項となった。

    幸いにして、先の大戦以来、呪霊の発生は落ち着き、ある程度の周期や対策を見込むこともできるようになっている。
    若者たちから青春を奪うものは何もなかった。

    そして、そこは再び年頃の少女たち。
    自らの青春に華を添えるべく、男子たちを数名強制招集するのも当然の流れであった。

    もちろん虎杖・伏黒両名の都合などお構いなしである。

  • 18二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 18:29:09

    水着回の予感……!!
    どうしようあの子やあの方のキュートだったりセクシーだったりする水着を期待してもいいんですか!?

  • 19二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 22:37:38

    天使即落ち2コマで草

  • 20二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 08:27:28

    保守

  • 21二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 13:48:26

    「おら、なんか言うことあんだろ男子ども。女子の水着だぞ?分かってんだろ?コラ」
    「「・・・・・」」

    半ば強制連行に近い形で連れてこられた虎杖・伏黒両名だが、さすがに女子が水着まで見せているのに正面きって不平を言うわけにはいかない。とはいえ、釘崎野薔薇の堂々たる肢体の魅力をかき消さんばかりの気迫は男子二人をして閉口させるばかりであった。

    「釘崎さんってスタイルすご・・・」
    「頑張ってんのよ。優子もいいじゃない!」
    小沢優子の弁はあくまで率直なものである。白のビキニをまとった釘崎。その溌溂としたプロポーションは同性である小沢からしても極めて魅力的に映る。些か布面積が少ない気もするがそれも彼女らしいといえばそれまでか。

    対する小沢優子。青を基調としたタンキニはいかにも涼やかな印象を与える。筋肉質とまでは言わないまでもある程度絞られた肉体。本来彼女は病的な痩身を経験した身だが、少なくともこの姿からはそんな印象は受けない。虎杖の視線を気にして頬を赤らめるその様はまさに青春の具現であった。

  • 22二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 13:57:49

    「どう・・・かな」
    質問なのか分からないほどに上がらない語尾。そこには彼女のどことない自信のなさが表れているようであり、また虎杖に答えを求める自身を自嘲するような色合いも含まれている。

    「なんかわかんねーけどさ!小沢、めっちゃ明るくなったよな!水着、似合ってるぜ!」
    両手を頭の後ろに組んで朗らかに笑う虎杖。背後で腕を組んで頷く伏黒と釘崎。

    飾らないその言葉はそのまま虎杖の人格の表象である。だからこそ、小沢優子はいっそう頬を赤く染めるのであった。

    「花?ちょっと攻めすぎじゃないかな?」
    「いや一応パレオで隠してるし・・・」

    天使のその言はもっともなものであった。パレオとビキニの合わせ技とはいえ、上半身はただのビキニである。それも装飾こそ多めだが、なかなかに際どい布配置のデザイン。スタイルの引き締まった彼女の魅力を十分に解き放ってくれるものだが、当の本人もいっぱいいっぱいといったところか。

    「どう・・・ですか?」
    「ん・・・・・えっと・・・・ニ、ニアッテマス」

    ぎこちない返答を見せた伏黒に、来栖はあくまで口角を上げて喜ぶのだった。

  • 23二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 14:03:39

    「真希さんは?」
    「ちょっと遅れて来るって」
    「乙骨先輩来るんだろ?」
    「狗巻先輩は任務終わって直接来るらしいわ」

    先輩勢の都合を早々と共有する虎杖ら一行。
    そんな一行の背後から近づいてくる二つの人影。

    乙骨とは違う強烈な気配に思わず振り向く面々。小沢優子は何のことだか分かっていないが、何かが起きたことは理解できたのか、彼らと同じように振り向いた。
    高専術師らの視線の先にあったのは・・・。


    大ぶりの麦わら帽子を浅くかぶり、サングラスをかけ焼きとうもろこしをほおばる両面宿儺と裏梅の姿であった。

  • 24二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 14:12:52

    醤油の焼ける香ばしい匂い。

    米食民族の魂の根源を揺さぶるようなその香りはやはり米やキビなどの穀物との相性が抜群に良い。
    多少の焦げ目を適度につけつつ、炭火で遠間からまんべんなく熱を届けた後、近間で一気に焼き上げた逸品。
    夏の海でしか出会えない珠玉の焼きもろこしである。

    がぶりとくらいつけば一気に広がる醤油の香り。一瞬遅れてやってくるもろこし特有の甘味。
    高級なもろこしであれば甘味が強く、むしろ手頃な値段のものであれば淡白な味わいとなる。
    宿儺がかぶりついているのは手ごろな価格のものである。そのため焦がし醤油の中に溶け込んだニンニクと八角の香りがより直接的に鼻腔を抜ける。

    すでに裏梅は二本目に入り、口の周りが汚れているが、この日ばかりは宿儺も好きにさせているようである。実のところ、裏梅は宿儺に口元を拭いてもらう一瞬を従者の身にあるまじきことながら何よりも幸せな瞬間として、意図的に口元を汚していたのだが、今回ばかりが当てが外れていた。

    「・・・・・・・・・・・・」
    「・・・・・・・・・・・・」

    高専術師らと遭遇したものの、宿儺も裏梅も何も語らない。
    焼きもろこしとは、黙ってかぶりつくのが最適解なのである。

  • 25二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 15:11:20

    女子たちの水着にいいねいいねしてたら麦わらグラサンすっくん&うらーめに持ってかれた
    とうもろこし超美味しそう

  • 26二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 19:19:52

    相変わらず旨そうな表現で書かれるから本当にお腹すいてくる…

  • 27二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 02:20:11

    口を拭いてもらおうと画策する裏梅ちゃんかわヨ

  • 28二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 08:53:40

    読んでるだけでお腹すいてくるな…

  • 29二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 13:14:53

    裏梅の水着は装飾こそ少なめながらどこか愛らしさを思わせる女児用水着。完全にそのままの姿で現れた宿儺とは違い転生の際に幼児の肉体で生まれ変わってしまった彼女にはちょうどいいものだろう。

    対する宿儺は四本腕の異形である上半身を隠しもしない大胆な上裸に男性用短パン水着のオーソドックススタイル。沸き立つような色気が四本腕と腹部の口からあふれ出ている。必然、砂浜の美女たちの視線も色めきだつといういうもの。

    湧き程から数人の美女に声をかけられてはすげなく返す宿儺の姿を見た虎杖は、
    「納得いかねえ・・・」
    と、ひとりごちるも隣にいた小沢優子の方は頬を染めて、

    「い、虎杖くんだってカッコイイよ・・・」
    と勇気を出したが、小さすぎた声が虎杖の耳に届くことはなかった。

  • 30二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 13:39:02

    「・・・・・・そろいもそろって・・・・」
    なにか苦言を呈そうとした宿儺であったが、もはや因縁も何も解消した状態で小言を投げるなど狭量な姑を思い起こしてしまい、結局は虎杖に対して多少の嫌味を言うにとどめることにした。

    「いいご身分だな、小僧。自分は部品だのなんだのとほざいておきながら半裸の美女を両脇に侍らせるとは・・・」
    「なんだよ!別にいいだろ!てか小沢はともかく釘崎は美女とかじゃ・・・!」
    「おいコラ」
    (虎杖くん!私のこと美女だと思ってる!?)

    一方、来栖は膝をたたんで裏梅と視線を合わしにこにこと会話に興じている。
    その隣で伏黒は来栖と自分の分のブルーハワイを両手に持ち、最低限の警戒はしきつつ一幕を眺めていた。

    グラスの中のブルーハワイは物言わず優雅な炭酸を立ち昇らせている。美食とはほど遠い人工的な甘みだが、若さと青春を彩る装飾の一隅として、十分すぎる機能を果たしているといえよう。

  • 31二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 13:51:26

    人間の畏怖の念とはやはり原初的には自然への恐怖から始まる。
    アニミズムの国でなくとも突き詰めていけば、恐怖こそが神を生む。その意味でいえば自然災害の多いこの国で呪霊が多く発生するのは自明の理と言えよう。

    虎杖ら呪術師たちが戦った自然呪霊たちもその流れの一部であるのは間違いない。

    いつの世も晴れやかな空は恵みを与える。しかし過ぎた晴れ空は潤いを追い散らし、渇きを押し付け、果ては命を奪うことも珍しくない。その年の夏も極端な夏日が続き、猛暑が人々の暮らしを脅かしていた。

    一般の人々ももはやはっきりと「猛暑」というものへの恐怖を自覚し始めていた。行き場のなかった負の感情が一つの表象を得たともなれば、呪いが形を成すのも時間の問題。

    宿儺たちが戯れる海水浴場から充分離れた街の上空で、一体の呪霊が誕生するも、その事実に気づいた者は一人としていなかった。

  • 32二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 14:03:17

    海水浴場では、いつの間にかほぼ合流状態になっていた宿儺らと虎杖らが水遊びに興じていた。
    といっても、宿儺自身は海には入らず遠い目をして面々を眺めている。

    ばしゃばしゃと海面を叩いてはしゃぎ回る裏梅を眺めているのは至福の気分であったが、表情は硬く結んでおく宿儺。呪いの王は微笑んだりはしないのだ。代わりににこりと口角を上げる腹部の口。目は口ほどにものを言うが、腹は目よりも心を表すといったところか。

    傍らにはビールと枝豆に唐揚げが山となっている。
    裏梅は唐揚げを仕込んで持っていこうと宿儺に提案したが、現地で買えるものをわざわざ持っていくこともないとして、裏梅の提案を退けていた。

    砂浜の海の家で揚げたばかりの唐揚げ。若鳥の柔らかさは口に入れずとも目で見て味わうことができる。
    まずは前歯で嚙みちぎり、徐々に奥歯へ移動させてその触感を楽しむ。がぶりと食らいつけば衣の中に閉じ込められた肉汁が待っていたかのごとく溢れ出す。揚げたてでまだ熱いが、あえて大口で放り込む宿儺。その熱さに耐えつつ3,4回咀嚼し、熱さがひかぬうちに冷たいビールを流し込む。そこに塩味の強めに聞いた枝豆をひとつ二つと放り込む・・・。

    「魅せてくれたな・・・」

    海を満喫する若者たちとは別口で、存分に海を楽しむ宿儺であった。

  • 33二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 14:17:33

    キュンキュンと不穏と旨そうが同時に来るな

  • 34二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 21:36:13

    クールに決めてる呪いの王の口元ニッコニコなのかわいすぎる
    あとすっくん的には釘崎も小沢も美女に分類されてるのがなんかいいな

  • 35二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 07:16:52

    腕おじ新作嬉しい

  • 36二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 12:14:58

    一行が砂浜で興じているのと同時刻、多少遅れて身が空いた乙骨と真希の二人。
    とはいえ水着の用意などなかったため、二人して近場の水着屋に入ることとなったが、それは乙骨にとっては完全なイレギュラーである。

    女子と共に水着を選ぶ異常事態に焦る乙骨とは裏腹に、不思議と真希は上機嫌であった。

    真希の中にはすでに顔を赤らめている乙骨をからかう後ろ暗い快感が芽生えているが、それは本人以外にはあずかり知らぬこと。
    いきなり露出度の高い水着を見せるような無粋な真似はしない。
    白を基調にした清楚なものから、徐々に徐々に、布面積を減らしていきその度に代わる乙骨の表情と反応を愉しむ。これ以上の愉悦は存在しないだろうという確信が真希にはあった。

    全身を覆う火傷の後は真希にとって恥ではない。むしろ仲間たちと共に挑んだ戦いと勝利の象徴であるとして、誇りにすら思っている。
    そんな真希は気づいていない。
    乙骨を挑発するために選んでいった水着の数々、徐々に過激さを増していく水着のデザインが、

    もはや紐に等しいものに近づいていることに・・・。

  • 37二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 18:44:05

    紐ビキニですかはたまたスリングショットですか!?

  • 38二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 23:45:10

    真希ニキはヒモビキニ似合いそう

  • 39二次元好きの匿名さん25/07/13(日) 08:44:36

    ほし

  • 40二次元好きの匿名さん25/07/13(日) 09:27:33

    紐はダメだよ真希さん!
    おじさん、ハロウィンの時と違ってせっかく布面積の少なさへの苦言を飲み込んだのにそれはダメだよ…さすがに苦言呈されちゃうよ…!
    紐はアカン!!

    乙骨、真希さんを止めてくれ

  • 41二次元好きの匿名さん25/07/13(日) 17:24:43

    真希さんってあのキャラで全然女捨ててなくていいよね

  • 42二次元好きの匿名さん25/07/13(日) 19:57:34

    違和感に最初に気づいたのは呪術とのかかわりがない小沢優子であった。

    かすかに目の前の風景が揺れているような感覚。遠景ほど蜃気楼のように揺らめいているように感じる。
    次いで足元の浮遊感。そしてかすかな嘔吐感。

    その感覚は間違いではなかった。

    事実、砂浜で海水浴に興じていた一般客の中でもかなりの数が同時に不調を訴えだしたのである。
    症状としてはやはり小沢の感じたものと同じ。

    虎杖らはそもそもの体力が圧倒的であるため、なかなかその異変に気付かない。
    宿儺は塩が強めの枝豆を多めに咀嚼しながら、冷えたビールを流しこんでいた。

  • 43二次元好きの匿名さん25/07/13(日) 20:03:02

    すでに砂浜には相当数の体調不良者が出ていた。
    小沢優子も自身の不調を楽しさで押し流すには少々無理が出始めている。
    宿儺はすでに二本目のビール瓶を開けていた。

    「小沢?大丈夫?」
    本来なら大丈夫だと返したかったが、虎杖に対して強がりをするだけの余裕すらなくなり始めていた。

    「みんなちょっと日陰で涼もうぜ?」
    「そうね、ちょっと暑くなってきたわ」

    「花?大丈夫かい?私は正直だいぶ参っているよ」
    「わたしもちょっと・・・」

    面々の体調にあきらかな変化が出始めた時点で伏黒はわずかな呪力の波を感じた。

  • 44二次元好きの匿名さん25/07/13(日) 20:07:16

    「この症状、熱中症だろ。だが一般客が熱中症にかかるタイミングが揃いすぎてる・・・」
    「小沢優子、こっちに来い。わたしが冷やしてやる。宿儺さまも褒めてくださった冷却を見せてやろう」

    伏黒が周囲に警戒を拡げていくと同時に、虎杖もその意図に気づいた。

    「伏黒!・・・呪詛師か?」
    「わからねえ。だが何かしら居そうだ」

    宿儺は三本目のビールを開け、追加のつまみを何にするか熟慮している。

  • 45二次元好きの匿名さん25/07/13(日) 20:10:45

    「熱中症、の呪霊・・・とか?」
    「ありそうだな・・・」

    虎杖・伏黒両名ともに明確な焦りがあった。
    もはや野良の呪霊に不覚を取るような自分たちではないが、この場には一般客が居り、小沢優子という一般人もいる。
    かばいながらの戦闘になる可能性を考慮すると、旗色がいいとはいえない。

    そもそも相手が居るのかどうか、居るならばどこに居るのか、それすら全く分からないのだから警戒を高める以外に動きようがない。
    何か、呪力以外の索敵性能が求められるところであった。

  • 46二次元好きの匿名さん25/07/13(日) 20:18:37

    裏梅の超広範囲、精密冷却により事態の悪化は避けられていたが、熱中症とは熱だけによるものではない。水分の不足や塩分などの不足からも熱中症はあり得る。

    もし「熱中症」という概念そのものを術式化したような呪霊だとしたら、冷却だけでは足りない可能性がある。
    虎杖・伏黒はともにその思考に至っていた。
    宿儺はいつのまにか出店から鮭とばなどの乾きもの各種と梅干を大量に購入し、四本目のビールのつまみを確保している。

    一行の緊張が高まったそのとき、高速で飛来する二つの人影があった。
    砂煙も控えめに、現れたのは全裸に近い乙骨と同じく全裸に近い真希の二人。砂浜の異変を感じ取ったのかその表情には臨戦態勢の色が見て取れる。

    気迫を感じさせる二人の表情に虎杖らは、
    (すげえ恰好・・・)
    (すげえカッコ・・・)
    (さすが真希さん・・・)
    (スタイルすご)
    (ちょっと攻めすぎじゃ・・・)
    (万を思い出すな・・・)
    と、様々な思考を巡らせるのであった。

  • 47二次元好きの匿名さん25/07/13(日) 20:26:30

    万を思い出すほど…!?
    真依ちゃんが泣いてますよ

  • 48二次元好きの匿名さん25/07/13(日) 20:58:53

    どんどん事態が不穏になってくのにつまみとビールが止まらないすっくん草
    乙骨は真希さんを止められなかったか…
    全裸に近い水着ってどんなのだろう
    マイクロビキニ?動いたらまろび出ない?大丈夫??

  • 49二次元好きの匿名さん25/07/13(日) 22:11:49

    真希さんはいいとして、全裸に近い乙骨は何故に?そして誰得??

オススメ

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