【フルルドリス追悼】【幻覚SSスレ】

1二次元好きの匿名さん22/04/15(金) 23:04:02

　凄い人だと、ずっと思っていた。
　この人のようになりたいと、何度も思った。
　フルルドリスはエクレシアにとっての憧れであり、何より大切な人だった。
　エクレシアが大人になった時、フルルドリスはもっと大人になって側にいてくれるのだと無邪気に思っていた。こんなことになるだなんて、想像もしていなかった。もっとずっと先のことだろうと、目を背け続けていた。

「ねえ、さま」

　どんなに過酷な戦場にいようとも、その姿を見間違える筈がなかった。背格好も、髪の色も、記憶の中の彼女と同じだったのだから。
　駆け寄り、近くで見て気付く。
　──息を、していない。
　フルルドリスの身体は微動だにしていない。

「つかれて……ねている、だけ、なんですよね？」

　頭はその先を理解することを拒んでいた。エクレシアは目を閉じて地面に倒れている彼女へ触れる。
　何度も頭を撫でて、手を握ってくれた指。エクレシアより長くすらりとして綺麗な指が、もう、つめたくなりかけて、まるで……　
「ぁ、あ……」
　視界が揺らぐ。
　ぽろぽろと涙と一緒に何かが溢れていく。
　声にならない嗚咽が喉を震わせる。今にも叫び出したい気持ちを必死に押し殺して、エクレシアは祈るように縋る。
　
「目を……開けて、どうか、フルルドリス……！」

　名を呼ぶ。何度も。何度も。もう一度名を呼べば起き上がってくれるかもしれない。情けなく泣いている自分を戒めて、そうしてまた優しく抱きしめてくれるかもしれない。
　だけど、そんなことは、起きない。
　フルルドリスは、死んでいた。
　安らかに眠っているような死に顔だけが、救いだった。苦痛と苦悶に歪みきった最期ではなかったのだろうと思いを馳せることが、フルルドリスの亡骸を庇うように抱き寄せることだけが、今のエクレシアにできる全てだった。

　にっこりと、誰かが優しく微笑んだ。